説明

光アイソレータおよび該光アイソレータを備える光モジュール

【課題】小型化を図るとともに、光アイソレーション特性の劣化を抑制することが可能な光アイソレータ、および該光アイソレータを備える光モジュールを提供する。
【解決手段】本発明に係る光アイソレータX1は、ファラデー回転子21、偏光子22および検光子23を含んで構成される複合素子20と、複合素子20のファラデー回転子21に磁界を印加するための磁石30,31と、複合素子20および磁石30,31を搭載するための基板10と、を備え、偏光子22の光入射面が基板10における光の入射側の側面10aに対して傾斜している。磁石30,31の側面30a〜30d,31a〜31dは、基板10の側面10a〜10cに略平行な面30a〜30c,31a〜31cと、複合素子20の側面20b,20cに対向し且つ略平行な面30d,31dとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源から出射された光を、各種光学素子や光ファイバに導入する際に生じる戻り光を抑制するための光アイソレータおよび該光アイソレータを備える光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザーダイオード(LD)等の光源から各種光学素子や光ファイバなどに向けて出射した光のうち一部が戻り光として該光源に戻るのを抑制するための光学部品としては、光アイソレータが挙げられる。このような光アイソレータは、例えば下記の特許文献1に記載されている。
【0003】
図5は、従来の光アイソレータX’を表す平面図である。図中の矢印は透過偏波方向を表す。光アイソレータX’は、基板10、複合素子20、磁石30’,31’を備える。基板10は、複合素子20および磁石30を一体化するための矩形状部材である。複合素子20は、ファラデー回転子21、偏光子22および検光子23を含んで構成される部材であり、略矩形状である。複合素子20は、基板10の側面10aに対して複合素子20の側面20aが4〜10°傾斜するように基板10上に配されている。ファラデー回転子21は、後述する磁石30’,31’による磁界の印加により、入射される光の偏波方向を45°回転させる機能を担う部材である。偏光子22および検光子23は、所定角度の偏波方向の光を選択的に透過する部材であり、複合素子20においては偏光子22の透光偏波方向と検光子23の透光偏波方向とは約45°ずらして配されている。磁石30’,31’は、ファラデー回転子21に磁界を印加するための部材であり、直方体状である。
【特許文献1】特開2005−25088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光アイソレータX’では、磁石30’は、基板10に搭載時において、磁石30’の側面30a’,30b’,30c’がそれぞれ基板10の側面10a,10b,10cに対して略平行となり、磁石30’の側面30d’が複合素子20の側面20bに対して4〜10°で傾斜することになる。同様に、光アイソレータX’では、磁石31’は、基板10に搭載時において、磁石31’の側面31a’,31b’,31c’がそれぞれ基板10の側面10a,10d,10cに対して略平行となり、磁石31’の側面31d’が複合素子20の側面20cに対して4〜10°で傾斜することになる。そして、このような傾斜に起因して、複合素子20と磁石30’,31’との間の間隔が比較的大きくなり、その分基板のサイズ(搭載面の面積)を大きくする必要があった。
【0005】
また、複合素子20は、基板10の側面10aに対して複合素子20の側面20bが4〜10°傾斜するように基板10上に配されているので、複合素子20と磁石30’および磁石31’との間の間隔が矢印CD方向において一様ではない。そのため、その間隔が狭い部位においてのみ、複合素子20や磁石30’,31’を基板に搭載(接着)する際に使用される接着剤が繋がってしまう場合がある。このような場合では、複合素子20ないしファラデー回転子21に作用する応力が矢印CD方向において偏りが生じるため、光アイソレータX’の光アイソレーション特性が劣化してしまう。
【0006】
さらに、基板10の線膨張係数は例えば70×10−7[1/℃]であり、複合素子20の線膨張係数は例えば60×10−7[1/℃]であり、磁石30’,31’の線膨張係数は例えば100×10−7[1/℃]である。そのため、複合素子20と磁石30’,31’とが直接的接着されると、温度変化に起因して複合素子20に作用する応力がより大きくなり、光アイソレータX’の光アイソレーション特性が劣化してしまう。
【0007】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、小型化を図るとともに、光アイソレーション特性の劣化を抑制することが可能な光アイソレータ、および該光アイソレータを備える光モジュールを提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の側面に係る光アイソレータは、ファラデー回転子、偏光子および検光子を含んで構成される複合素子と、複合素子のファラデー回転子に磁界を印加するための磁石と、複合素子および磁石を搭載するための基板とを備え、偏光子の光入射面が基板における光の入射側の側面に対して傾斜している。磁石の側面は、基板の側面に略平行な面と、複合素子の側面に対向し且つ略平行な面とを含むことを特徴としている。磁石の形状としては、三角柱、台形柱もしくは平行四辺形柱が好適である。
【0009】
好ましくは、複合素子と基板とは離間しており、複合素子は、磁石を介して基板に搭載されている。
【0010】
本発明の第2の側面に係る光モジュールは、本発明の第1の側面に係る光アイソレータと、プラグに対して光学的接続されるスタブと、プラグの少なくとも一部およびスタブの少なくとも一部を挿入するための貫通孔を有し、プラグとスタブとの間の調芯を得るためのスリーブと、スタブに向けて光を出射する、または、スタブを介して導出された光を受けるための光素子とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の側面に係る光アイソレータによると、例えば矩形状の基板上に磁石を搭載する場合に、複合素子の側面に対向する磁石の側面と該複合素子の側面とが略平行となるようにしても、基板の側面に略平行な側面を有しているので、従来のように直方体の磁石を搭載する場合に比べて、基板のサイズ(複合素子および磁石の搭載面における面積)を小さくすることができる。
【0012】
また、本光アイソレータでは、複合素子の側面に対向する磁石の側面と該複合素子の側面とが略平行となるように磁石が搭載されているので、複合素子と磁石との間の間隔が一様である。そのため、本光アイソレータでは、例えば接着剤を用いて基板上に複合素子および磁石を搭載する場合に、該接着剤が複合素子と磁石との間に侵入し固定されたとしても、温度変化時における接着剤の膨張および収縮に起因する応力の影響を均一分散化(低減)することができる。つまり、本光アイソレータでは、ファラデー回転子の特性である消光比の劣化を抑制することができる。
【0013】
以上のことから、本光アイソレータは、小型化を図るとともに、光アイソレーション特性の劣化を抑制するうえで好適である。
【0014】
複合素子と基板とを離間し、複合素子が磁石を介して基板に搭載されているような構成の光アイソレータによると、複合素子が例えば接着剤を介して接合される部材は磁石のみであるので、温度変化時における複合素子と基板との間の線膨張係数の違いに起因する応力の影響を抑制することができ、光アイソレーション特性の劣化を抑制するうえで好適である。
【0015】
本発明の第2の側面に係る光モジュールでは、本発明の第1の側面に係る光アイソレータを採用しているため、小型化を図るとともに、光アイソレーション特性の劣化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光アイソレータX1を表す平面図である。光アイソレータX1は、基板10、複合素子20および磁石30,31を備える。
【0017】
基板10は、複合素子20および磁石30を搭載して一体化するための部材であり、略矩形状である。基板10を構成する材料としては、セラミックス、ガラス、ファラデー回転子の線膨張係数に近いSUS430などの金属などが挙げられる。
【0018】
複合素子20は、ファラデー回転子21、偏光子22および検光子23を含んで構成される部材であり、略矩形状である。具体的には、ファラデー回転子21に対して偏光子22および検光子23が透明な接着剤(例えば、商品名:353−ND、エポテック製)により接着一体化されたものである。複合素子20は、偏光子基板と、ファラデー回転子基板と、検光子基板とを透明な接着剤により接着一体化した後、チップ状に切削加工することにより製造される。複合素子20は、基板10の側面10aに対して複合素子20の側面20aが4〜10°傾斜するように基板10上に配されている。
【0019】
ファラデー回転子21は、所定の磁界を印加することにより、入射される光の偏波方向を所定角度回転させる機能を担う部材であり、例えばビスマス置換ガーネット結晶により構成される。ファラデー回転子21の厚さは、例えば入射される光の偏波方向が45°回転するように設定される。
【0020】
偏光子22および検光子23は、所定角度の偏波方向の光を選択的に透過するための部材であり、複合素子20においては偏光子22の透光偏波方向と検光子23の透光偏波方向とは所定角度(例えば45°)ずらして配されている。偏光子22および検光子23としては、例えば偏光ガラスが挙げられる。偏光ガラスは、ガラス中において長く延伸された金属粒子を一方向に配列させることにより偏光特性を持たせた部材であり、金属粒子の延伸方向に垂直な偏波方向を有する光を透過し、該延伸方向に平行な偏波方向を有する光を吸収する。
【0021】
磁石30,31は、複合素子20のファラデー回転子21に所定の磁界を印加するための部材であり、台形柱状である。本実施形態における磁石30は、基板10に搭載時において、磁石30の側面30a,30b,30cがそれぞれ基板10の側面10a,10b,10cに対して略平行となり、磁石30の側面30dが複合素子20の側面20bに対して略平行となるように構成されている。また、本実施形態における磁石31は、基板10に搭載時において、磁石31の側面31a,31b,31cがそれぞれ基板10の側面10a,10d,10cに対して略平行となり、磁石31の側面31dが複合素子20の側面20cに対して略平行となるように構成されている。なお、複合素子20の側面20bと磁石30の側面30dとの離隔距離、および、複合素子20の側面20cと磁石31の側面31dとの離隔距離は0.1mm以上とするのが好適である。このような構成にすると、基板10に複合素子20を搭載する際に使用される接着剤(エポキシ樹脂などの樹脂類、金属はんだ、低融点ガラスなど)と、基板10に磁石30,31を搭載する際に使用される接着剤とが連結して、基板10、複合素子20および磁石30,31が一体化してしまうのを防ぐうえで好適である。
【0022】
このような構成の光アイソレータX1においては、基板10上に磁石30,31を搭載する場合に、磁石30,31の側面30d,31dと複合素子20の側面20b,20cとが略平行となるようにしても、基板10の側面10a,10b,10cに略平行な側面30a,30b,30cおよび基板10の側面10a,10d,10cに略平行な側面31a,31b,31cを有しているので、従来のように直方体の磁石を搭載する場合に比べて、基板のサイズ(複合素子および磁石の搭載面における面積)を小さくすることができる。
【0023】
また、光アイソレータX1では、磁石30,31の側面30d,31dと複合素子20の側面20b,20cとが略平行となるように磁石30,31が搭載されているので、複合素子20と磁石30,31との離隔距離が一様である。そのため、光アイソレータX1では、接着剤を用いて基板10上に複合素子20および磁石30,31を搭載する場合に、該接着剤が複合素子20と磁石30,31との間に侵入し固定されたとしても、温度変化時における接着剤の膨張および収縮に起因する応力の影響を均一分散化(低減)することができる。つまり、光アイソレータX1では、ファラデー回転子21の特性である消光比の劣化を抑制することができる。
【0024】
以上のことから、光アイソレータX1は、小型化を図るとともに、光アイソレーション特性の劣化を抑制することができるのである。
【0025】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る光アイソレータX2を表す平面図である。光アイソレータX2は、基板10、複合素子20および磁石40〜43を備える。
【0026】
磁石40〜43は、複合素子20のファラデー回転子21に所定の磁界を印加するための部材である。磁石40,41の形状は三角柱状であり、磁石42,43の形状は四角柱状(直方体状)である。本実施形態における磁石40は、基板10に搭載時において、磁石40の側面40aが基板10の側面10aに対して略平行となり、磁石40の側面40bが複合素子20の側面20bに対して略平行となるように構成されている。本実施形態における磁石41は、基板10に搭載時において、磁石41の側面41aが基板10の側面10cに対して略平行となり、磁石41の側面41bが複合素子20の側面20cに対して略平行となるように構成されている。本実施形態における磁石42は、基板10に搭載時において、磁石42の側面42a,42b,42cがそれぞれ基板10の側面10a,10b,10cに対して略平行となるように構成されている。本実施形態における磁石43は、基板10に搭載時において、磁石43の側面43a,43b,43cがそれぞれ基板10の側面10a,10d,10cに対して略平行となるように構成されている。なお、複合素子20の側面20bと磁石40の側面40bとの離隔距離、および、複合素子20の側面20cと磁石41の側面41bとの離隔距離、は0.1mm以上とするのが好適である。このような構成にすると、基板10に複合素子20を搭載する際に使用される接着剤と、基板10に磁石40,41を搭載する際に使用される接着剤とが連結して、基板10、複合素子20および磁石40,41が一体化してしまうのを防ぐうえで好適である。また、磁石40と磁石42との間、および、磁石41と磁石43との間は、離間していてもよいし、例えば接着剤を介して接合していてもよい。
【0027】
このような構成の光アイソレータX2は、光アイソレータX1で示したものと同様の効果を得ることができる。
【0028】
図3は、光アイソレータX1を備える光モジュールYの断面を表す。光モジュールYは、光アイソレータX1、スタブ50、スリーブ60、スリーブケース70、ホルダ80およびケース90を備える。
【0029】
スタブ50は、フェルール51および光ファイバ(図示せず)を有し、フェルール51の貫通孔51aに光ファイバを例えば接着剤により接着固定することにより構成される部材である。スタブ50は、図外のプラグ(光ファイバを有し且つスタブ50と同様の構成を有する部材)と光学的に接続される。スタブ50の先端面50aはアール面(例えば曲率半径が5〜30mm)である。このような構成は、前記プラグフェルールとの間の接続損失を低減するうえで好適である。スタブ50の後端面50bは、該スタブ50の軸心に対して所定の角度(例えば4〜10°)で傾斜する傾斜面である。このような構成は、光素子などから出射された光が光ファイバの端面で反射して反射光として該光素子などに戻るのを防ぐうえで好適である。また、スタブ50の後端部には、スタブ50に向けて光を出射するための光源への戻り光を抑制するための光アイソレータX1が設置される。
【0030】
スリーブ60は、スタブ50および前記プラグを挿入するための貫通孔61を有し、スタブ50と前記プラグとの間の調芯機能を担う部材である。スリーブ60には、開放端61aを介してスタブ50が挿入され、開放端61bを介して前記プラグが挿入される。本実施形態に係るスリーブ60は、長手方向(矢印AB方向)に延びるスリット62を有する、いわゆる割りスリーブである。このような構成のスリーブ60を採用する場合、スリーブ60内に挿入される前記プラグに対して作用する把持力を高めるべく、貫通孔61の孔径は前記プラグの外径より若干(例えば数μm)小さく設定するのが好ましい。スリーブ60としては、割りスリーブに代えて、いわゆる精密スリーブ(スリット無し)を採用してもよい。スリーブ60を構成する材料としては、燐青銅、ベリリウム銅、黄銅、ステンレスなどの金属、エポキシや液晶ポリマなどのプラスチック、セラミックなどが挙げられ、中でも耐摩耗性に優れ且つ適度に弾性変形するジルコニア系セラミックス(ジルコニアを主成分とするセラミックス)が好適である。さらに、ジルコニア系セラミックスの中でも、酸化ジルコニウム(ZrO)を主成分とし、Y、CaO、MgO、CeO、Dyなどからなる群より選択される少なくとも一種を安定化剤として含む部分安定化ジルコニアセラミックス(正方晶の結晶が主体)は、耐摩耗性および弾性変形性の観点から好適である。
【0031】
スリーブ60は、スリーブ60を構成する材料としてジルコニア系セラミックスを選択する場合、ジルコニア系セラミックスを所定の成形手段(例えば射出成形、プレス成形、押出成形)によってスリーブ60の原型となる円筒状成形体を得た後、該円筒状成形体を所定の温度(例えば1300〜1500℃)で焼成し、所定の寸法に研削加工または研磨加工を施すことにより、製造される。なお、研削加工または研磨加工は、焼成前に行ってもよい。また、スリーブ60を構成する材料としてプラスチックを採用した場合、成形型の形状を適当に構成することにより、所望の形状のスリーブ60を容易に製造することができる。
【0032】
スリーブケース70は、前記プラグの挿入時に該プラグを案内するための開口部70aを有し、スリーブ60を収容するための円筒状部材である。スリーブケース70におけるスリーブ60を収容するための空間の径は、スリーブ60の外径より若干大きく構成されている。開口部70aはテーパ状に構成されており、その開口径は前記プラグの外径より若干大きく構成されている。
【0033】
ホルダ80は、保持部81および保持部82を有し、スタブ50およびスリーブケース70を保持するための部材である。保持部81は、スタブ50を保持するための部位であり、スタブ50が嵌合可能に構成されている。保持部81におけるスタブ50との当接面の算術平均粗さは、スタブ50の保持状態の安定性の観点から、0.1μm以上に設定するのが好適である。保持部82は、スリーブケース70を保持するための部位であり、スリーブケース70が嵌合可能に構成されている。保持部82におけるスリーブケース70との当接面の算術平均粗さは、スリーブケース70の保持状態の安定性の観点から、0.1μm以上に設定するのが好適である。なお、本実施形態においてホルダ80は、スリーブケース70と別体に構成されているが一体としてもよい。
【0034】
以上のスタブ50、スリーブ60、スリーブケース70およびホルダ80は、いわゆる光レセプタクルを構成する。
【0035】
ケース90は、光素子91およびレンズ92を備え、前記光レセプタクルに対して例えば溶接により接合されている。ケース90を構成する材料としては、ステンレス、銅、鉄、ニッケルなどの溶接可能なものが挙げられ、中でも耐腐食性や溶接性の観点からステンレスが好適である。光素子91は、スタブ50の光ファイバ52に向けて光を出射するための発光素子、または、スタブ50の光ファイバ52を介して導出された光を受けるための受光素子である。発光素子としては、半導体レーザやLEDなどの発光ダイオードなどが挙げられ、受光素子としては、受信用のPD(フォトダイオード)などが挙げられる。レンズ92は、光素子91が発光素子の場合は該発光素子から出射された光を集光してスタブ50の光ファイバ52に導入する機能を担い、光素子91が受光素子の場合はスタブ50の光ファイバ52を介して導出された光を集光して該受光素子に導入する機能を担う部材である。
【0036】
以上、本発明の具体的な実施形態を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の思想から逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
【0037】
本発明に係る光アイソレータの磁石の形状および組み合わせとしては、上述したものには限られない。具体的には、三角柱状の磁石のみ、三角柱状の磁石と台形柱状の磁石との組み合わせ、台形柱状の磁石と直方体状の磁石との組み合わせ、平行四辺形状の磁石のみ、平行四辺形状の磁石と三角柱状の磁石との組み合わせ、あるいは、平行四辺形状の磁石と台形柱状の磁石との組み合わせ、などが挙げられる。
【0038】
次に、本発明の実施例および比較例について説明する。
【実施例1】
【0039】
<光アイソレータサンプルの作製>まず、ファラデー回転子基板の主面の一方にエポキシ系熱硬化型樹脂を用いて偏光子基板を接着固定し、且つ、ファラデー回転子基板の主面の他方にエポキシ系熱硬化型樹脂を用いて検光子基板(偏光子基板と同様)を接着固定することにより、複合基板を作製した。ファラデー回転子基板の厚さは約0.4mmとし、偏光子基板および検光子基板の厚みはいずれも約0.5mmとした。ファラデー回転子としては、飽和磁界強度中における偏波回転角が45°である、ビスマス置換ガーネットを採用した。偏光子基板および検光子基板としては、所定方向に透過偏波を有するガラス偏光子を採用した。次に、作製した複合基板をダイシング加工機で切削加工することにより、1.25mm角のチップ化された複合素子を切り出した。切り出された複合素子は、ファラデー回転子、偏光子および検光子から構成されている。次に、熱硬化型接着剤(商品名:353−ND、エポテック製)を用いて、図1に示すように、偏光子の光入射面が基板における光の入射側の側面に対して8°傾斜するように基板上に複合素子を搭載した。基板としては、2.0mm×4.0mm、厚さ0.5mmのジルコニアセラミックス板を採用した。次に、2つの台形柱状の磁石を、熱硬化型接着剤(商品名:353−ND、エポテック製)を用いて、図1に示すような配置で基板上に固定した。具体的には、基板における光入射側の側面に対して、一方の磁石における複合素子に対向する側面の傾斜角度は82°とし、他方の磁石における複合素子に対向する側面の傾斜角度は98°とした。また、複合素子と磁石との間の離隔距離は0.1mmとした。
【0040】
<挿入損失およびアイソレーションの測定>図4は、光アイソレータの挿入損失およびアイソレーションを測定するための測定装置100の概略構成を表す。測定装置100は、波長可変光源101、コリメータ102、基準偏光子103、ディテクタ104およびパワーメータ105を備え、光アイソレータサンプル106の挿入損失およびアイソレーションを測定するための装置である。挿入損失とは、光アイソレータサンプル106における光入射側から入る光の光学的パワーの損失量を表し、この損失量が大きいほど光を通さないことを意味するので、光アイソレータとしては挿入損失が小さいほど好適である。アイソレーションとは、光アイソレータサンプル106における光出射側から入る光(戻り光)の光学的パワーの損失量を表し、この損失量が大きいほど光(戻り光)を通さないことを意味するので、光アイソレータとしてはアイソレーションが大きいほど好適である。波長可変光源101は、波長の異なる光を出射することが可能な部材である。コリメータ102は、光を平行光にするための部材である。ディテクタ103は、光を検知(受光)するための部材である。パワーメータ104は、ディテクタ103により検知された光学的パワーを測定するための部材である。基準偏光子105は、コリメータ102を介して出射された平行光のうち、所定角度の偏波面の光を選択的に透過するための部材である。このような構成測定装置を用いて、作製した光アイソレータサンプルの挿入損失およびアイソレーションを測定した。その測定結果は、挿入損失が0.3dB以下であり、アイソレーションが40dB以上であった。つまり、実施例1の光アイソレータは、光アイソレーション特性が良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光アイソレータを表す平面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る光アイソレータを表す平面図である。
【図3】図1に示す光アイソレータを備える光モジュールを表す断面図である。
【図4】光アイソレータの挿入損失およびアイソレーションを測定するための測定装置の概略構成を表す。
【図5】従来の光アイソレータを表す平面図である。
【符号の説明】
【0042】
X1,X2 光アイソレータ
10 基板
10a〜10d (基板10の)側面
20 複合素子
21 ファラデー回転子
22 偏光子
23 検光子
30,31 磁石
30a〜30d,31a〜31d (磁石30の)側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファラデー回転子、偏光子および検光子を含んで構成される複合素子と、前記複合素子の前記ファラデー回転子に磁界を印加するための磁石と、前記複合素子および前記磁石を搭載するための基板と、を備え、前記偏光子の前記光入射面が前記基板における前記光の入射側の側面に対して傾斜している光アイソレータであって、
前記磁石の側面は、前記基板の側面に略平行な面と、前記複合素子の側面に対向し且つ略平行な面とを含むことを特徴とする、平面実装型光アイソレータ。
【請求項2】
前記磁石の形状は三角柱、台形柱もしくは平行四辺形柱である、請求項1に記載の光アイソレータ。
【請求項3】
前記複合素子と前記基板とは離間しており、
前記複合素子は、前記磁石を介して前記基板に搭載されている、請求項1または2に記載の光アイソレータ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の光アイソレータと、プラグに対して光学的接続されるスタブと、前記プラグの少なくとも一部および前記スタブの少なくとも一部を挿入するための貫通孔を有し、前記プラグと前記スタブとの間の調芯を得るためのスリーブと、前記スタブに向けて光を出射する、または、前記スタブを介して導出された光を受けるための光素子と、を備えることを特徴とする光モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−308737(P2006−308737A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−129314(P2005−129314)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】