説明

光センサおよび表示装置

【課題】簡単な構成で、ダイナミックレンジを広くすることができる光センサを提供する。
【解決手段】光センサは、光検出素子と、第1の電圧(V_SSR)に対して電位差ΔV_RST(V1)の第2の電圧(V_SS)を発生させるパルス信号を、リセット信号として供給するリセット信号配線と、読み出し信号を供給する読み出し信号配線と、センシング期間(T1)に、光検出素子が受光した光量に応じて電位が変化する蓄積ノードと、蓄積ノードの電位変化に応じた信号を、出力配線へ読み出すセンサスイッチング素子とを備える。リセット信号配線では、センシング期間の少なくとも一部において、第1の電圧(V_SSR)と第2の電圧(V_SS)との間の電圧が印加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトダイオードまたはフォトトランジスタ等の光検出素子を有する光センサまたは、画素領域内に光センサを備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばフォトダイオード等の光検出素子を備えたことにより、外光の明るさを検出したり、読み取り面に近接した物体の画像を取り込んだりすることが可能な、光センサが提案されている。このような光センサは、例えば、光検出素子、光検出素子の受光量に応じて電荷を蓄積するキャパシタ、制御線およびトランジスタを備える。この光センサにおいては、制御線を通じた信号により、キャパシタの電荷リセットや、キャパシタから電荷を読み出しが制御される(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
光センサにおいては、露光時間(シャッタースピード)を切り替えることにより、広い照度範囲に対応することが試みられてきた。例えば、シャッタースピードを短くすることにより、ダイナミックレンジを広くなる。しかし、シャッタースピードを短くすると、受光量が少ない(暗い)部分では、光を検出するのに十分な電荷が蓄積されず、出力画像において黒つぶれが発生する。逆に、シャッタースピードを長くすると、受光量が多い(明るい)部分については、白飛びが発生する。このように、露光時間の調整のみでは、広ダイナミックレンジの実現と、正確な画像を得ることの両立が困難であった。そのため、CMOSイメージセンサにおいて、広ダイナミックレンジを得るための駆動方法も提案されている(例えば、非特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2007/145346号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2007/145347号パンフレット
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】S.Decker et al., "A 256x256 CMOS Imaging Array with Wide Dynamic Range Pixels and Column-Parallel Digital Output", 1998 IEEE International Solid-State Circuits Conference (ISSCC98) p176,p177
【非特許文献2】Yoshinori Muramatsu "A Signal-Processing CMOS Image Sensor using a Simple Analog Operation" 2001 IEEE International Solid-State Circuits Conference (ISSCC 2001) p98
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の駆動方法では、画素センサ回路を構成する素子数と制御線が多くなる必要となる。例えば、上記CMOSイメージセンサでは、4つのトランジスタ、1つのコンデンサ、1つのダイオードの回路素子と、3本の制御線(VDD,GND,Column lineを除く)が必要となる。このように、素子数や制御線が多いと開口率を低くなる。
【0007】
ゆえに、本発明は、簡単な構成で、ダイナミックレンジを広くすることができる光センサおよびそれを用いた表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる光センサは、入射光を受光する光検出素子と、リセット信号として供給するリセット信号配線と、読み出し信号を供給する読み出し信号配線と、前記リセット信号配線に前記光検出素子を介して接続された蓄積ノードと、前記読み出し信号にしたがって、前記蓄積ノードの電位変化に応じた信号を、出力配線へ読み出すセンサスイッチング素子とを備える。リセット信号としては、第1の電圧に対して電位差ΔV_RSTの第2の電圧を発生させるパルス信号が、前記リセット信号配線により供給される。蓄積ノードでは、前記リセット信号が供給されてから前記読み出し信号が供給されるまでのセンシング期間に、前記光検出素子が受光した光量に応じて電位が変化する。前記リセット信号配線では、前記センシング期間の少なくとも一部において、前記第1の電圧と前記第2の電圧との間の電圧が印加される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡単な構成で、ダイナミックレンジを広くすることができる光センサおよびそれを用いた表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態にかかる表示装置の概略構成を示すブロック図
【図2】本発明の第1の実施形態にかかる表示装置における一画素の構成を示す等価回路図
【図3】光センサの動作例を説明するための図
【図4】センシング期間のリセット電圧を一定とした場合の動作例を説明するための図
【図5】光センサが図4に示す動作をした場合の感度特性の一例を示すグラフ
【図6】(a)は、光センサが図3に示す動作例と同様に動作した場合の感度特性を示すグラフである。(b)は、制御信号波形の例を示す図である。
【図7】第2の実施形態における光センサの動作例を説明するための図
【図8】第3の実施形態にかかる表示装置の概略構成を示すブロック図
【図9】光センサの感度特性を模式的に表すグラフ
【図10】光センサにおいて、可変キャパシタを用いた場合の例を示す図
【図11】可変キャパシタのCV特性図
【図12】光センサにおいて、pチャネルTFTを増幅素子として用いた場合の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の1実施形態にかかる光センサは、入射光を受光する光検出素子と、第1の電圧に対して電位差ΔV_RSTの第2の電圧を発生させるパルス信号を、リセット信号として供給するリセット信号配線と、読み出し信号を供給する読み出し信号配線と、前記リセット信号配線に前記光検出素子を介して接続されたノードであって、前記リセット信号が供給されてから前記読み出し信号が供給されるまでのセンシング期間に、前記光検出素子が受光した光量に応じて電位が変化する蓄積ノードと、前記読み出し信号にしたがって、前記蓄積ノードの電位変化に応じた信号を、出力配線へ読み出すセンサスイッチング素子とを備える。前記リセット信号配線では、前記センシング期間の少なくとも一部において、前記第1の電圧と前記第2の電圧との間の電圧が印加される。
【0012】
上記構成によれば、蓄積ノードの電位が光検出素子の受光量に応じて変化するセンシング期間の少なくとも一部で、第1の電圧と第2の電圧との間の電圧がリセット信号配線に印加される。これにより、リセット信号配線から光検出素子を介して蓄積ノードに電圧が印加される(この電圧をV_Mとする)。蓄積ノードの電位が、リセット信号供給からこの電圧印加時までに電圧V_Mに達するかまたは電圧V_Mを跨いで変化していた場合、蓄積ノードの電位は電圧V_M程度にリセットされる。一方、蓄積ノードの電位が、リセット信号供給時から電圧V_Mの印加までに、電圧V_Mに達していない場合は、そのときの電位が維持される。すなわち、光検出素子の受光量が多い場合には、受光に伴う蓄積ノードの電位の変化を抑えることができる。その結果、例えば、受光量が多いためにセンシング期間中に蓄積ノードの電位が飽和電圧に達してしてしまい、受光量の認識が不能となる事態が発生しにくくなる。ひいては、ダイナミックレンジを広くすることができる。このように、リセット信号配線から光検出素子を介して蓄積ノードの電位をリセットし、センシング期間においてリセット信号配線に印加する電圧を制御することにより、ダイナミックレンジを広くできる。その結果、光センサの素子や制御線の数を抑えつつも、広ダイナミックレンジを実現することができる。
【0013】
本発明の一実施形態において、前記リセット信号配線では、前記センシング期間において、前記電位差ΔV_RSTより小さい電位差のパルス信号が、少なくとも1回供給されてもよい。センシング期間におけるパルス電圧の印加により、ダイナミックレンジを広げることができるので、簡単な制御で光ダイナミックレンジを実現することができる。
【0014】
本発明の一実施形態において、前記リセット信号配線では、前記センシング期間において、前記第2の電圧から前記第1の電圧の間で段階的に変化する電圧が印加されてもよい。これにより、リセット信号配線の電圧の簡単な制御により、光ダイナミックレンジを実現することができる。
【0015】
本発明の一実施形態において、光センサは、前記センシング期間の少なくとも一部において印加される、前記第1の電圧と前記第2の電圧との間の前記電圧の値と印加タイミングとを制御する、リセット信号制御部をさらに備えてもよい。これにより、光検出素子のセンシング期間の受光量と蓄積ノードの電位変化との関係を制御することができる。すなわち、光センサの出力特性(感度特性)を制御することができる。
【0016】
本発明の一実施形態において、前記リセット信号制御部は、前記スイッチング素子により前記出力配線へ読み出された信号に基づいて、前記センシング期間の少なくとも一部において、前記リセット信号配線に印加される前記電圧の値および印加タイミングを制御する態様であってもよい。これにより、光検出素子の受光量に応じて光センサの出力特性を適切に制御することができる。
【0017】
本発明の一実施形態において、前記リセット信号制御部は、前記スイッチング素子により前記出力配線へ読み出された信号から得られる光検出素子の受光量に関する情報に基づいて、前記センシング期間の少なくとも一部において前記リセット信号配線に印加される前記電圧の値および印加タイミングを制御する態様であってもよい。これにより、センシング期間における光検出素子の受光量を基に光センサの出力特性を制御できるので、光センサが受光する光量(明るさ)に応じた適切な制御が可能になる。
【0018】
本発明の一実施形態において、光センサは、前記センシング期間の少なくとも一部において、前記第1の電圧と前記第2の電圧との間の電圧を前記リセット信号線に印加するか否かを切り替えるリセット信号制御部をさらに備えてもよい。これにより、ダイナミックレンジの切り替えが可能になる。
【0019】
本発明の一実施形態において、光センサは、キャパシタをさらに備え、前記キャパシタの一方の端子は前記蓄積ノードに接続され、他方の端子は前記読み出し信号配線に接続される態様であってもよい。また、光センサは、前記蓄積ノードに接続された可変キャパシタあるいはpチャネル薄膜トランジスタをさらに備えてもよい。
【0020】
上記の光センサを備えた表示装置であって、画素領域を含むアクティブマトリクス基板を備え、前記画素領域に前記光センサが設けられる表示装置も本発明の実施形態に含まれる。このような表示装置は、前記アクティブマトリクス基板に対向する対向基板と、前記アクティブマトリクス基板と対向基板との間に挟まれた液晶層とをさらに備えるものであってもよい。
【0021】
以下、本発明のより具体的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
また、以下で参照する各図は、説明の便宜上、本発明の実施形態の構成部材のうち、本発明を説明するために必要な主要部材のみを簡略化して示したものである。従って、本発明にかかる表示装置は、本明細書が参照する各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。また、各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法および各部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0023】
[第1の実施形態]
[光センサを含む表示装置の構成]
最初に、図1および図2を参照しながら、本発明の第1の実施形態にかかる液晶表示装置が備えるアクティブマトリクス基板の構成について説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態にかかる液晶表示装置が備えるアクティブマトリクス基板100の概略構成を示すブロック図である。図1に示すように、アクティブマトリクス基板100は、ガラス基板上に、画素領域1、ディスプレイゲートドライバ2、ディスプレイソースドライバ3、センサカラム(column)ドライバ4、センサロウ(row)ドライバ5、バッファアンプ6、FPCコネクタ7を少なくとも備えている。また、画素領域1内の光検出素子(後述)で取り込まれた画像信号を処理するための信号処理回路8が、前記FPCコネクタ7とFPC9とを介して、アクティブマトリクス基板100に接続されている。
【0025】
なお、アクティブマトリクス基板100上の上記の構成部材は、半導体プロセスによってガラス基板上にモノリシックに形成することも可能である。あるいは、上記の構成部材のうちのアンプやドライバ類を、例えばCOG(Chip On Glass)技術等によってガラス基板上に実装した構成としても良い。あるいは、図1においてアクティブマトリクス基板100上に示した上記の構成部材の少なくとも一部が、FPC9上に実装されることも考えられる。アクティブマトリクス基板100は、全面に対向電極が形成された対向基板(図示せず)と貼り合わされ、その間隙に液晶材料が封入される。
【0026】
画素領域1は、画像を表示するために、複数の画素が形成された領域である。本実施形態では、画素領域1における各画素内には、画像を取り込むための光センサが設けられている。図2は、アクティブマトリクス基板100の画素領域1における画素と光センサとの配置を示す等価回路図である。図2の例では、1つの画素回路18は、1つの画素と1つの光センサを含んでいる。この場合、画素領域1は、M行×N列のマトリクス状に配置された画素と、同じくM行×N列のマトリクス状に配置された光センサとを有する。なお、画素と光センサの配置割合は、この例のみに限定されず、任意である。例えば、1つの画素が、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色の絵素によって形成され、この3絵素で構成される1つの画素内に、1つの光センサが設けられてもよい。この場合、画素領域1における絵素数は、M×3Nとなる。また、複数画素に対して1つの光センサが配置されてもよい。
【0027】
図2に示すように、画素領域1は、画素用の配線として、マトリクス状に配置されたゲート線GLおよびソース線SLを有している。ゲート線GLは、ディスプレイゲートドライバ2に接続されている。ソース線SLは、ディスプレイソースドライバ3に接続されている。なお、ゲート線GLは、画素領域1内にM行設けられている。以下、個々のゲート線GLを区別して説明する必要がある場合は、GLi(i=1〜M)のように表記する。一方、ソース線SLは、上述のとおり、1つの画素内の3絵素にそれぞれ画像データを供給するために、1画素につき3本ずつ設けられている。ソース線SLを個々に区別して説明する必要がある場合は、SLj(j=1〜N)のように表記する。
【0028】
ゲート線GLとソース線SLとの交点には、画素用のスイッチング素子として、薄膜トランジスタ(TFT)M4が設けられている。薄膜トランジスタM4のゲート電極はゲート線GLへ、ソース電極はソース線SLへ、ドレイン電極は図示しない画素電極へ、それぞれ接続されている。これにより、図2に示すように、薄膜トランジスタM4のドレイン電極と対向電極(VCOM)との間に液晶容量CLCが形成される。また、ドレイン電極とTFTCOMとの間に補助容量C2が形成されている。
【0029】
光センサ10は、光検出素子としてのフォトダイオードD1、コンデンサ(キャパシタ)C1、トランジスタM1を備える。これらは、いずれも蓄積ノード11に接続されている。さらに、光センサ10は、リセット信号を供給するための配線RST(リセット信号配線の一例)、読み出し信号を供給するための配線RS(読み出し信号配線の一例)を備える。また、図2の例では、ソース線SLが、センサカラムドライバ4から定電圧VDDを光センサへ供給するための配線VDDを兼ねている。また、ソース線SLが、センサ出力用の配線OUT(出力配線の一例)を兼ねている。配線RSTおよび配線RSは、同じ行の光センサによって共有されている。
【0030】
具体的には、フォトダイオードD1のアノードに配線RSTが接続されている。フォトダイオードD1のカソードには、コンデンサC1の電極の一方と、トランジスタM2のゲートが接続されている。トランジスタM2のドレインは配線VDDに接続され、ソースは配線OUTに接続されている。図2に示す例では、フォトダイオードD1のカソードと、コンデンサC1の電極の一方と、トランジスタM2のゲートとの接続点が蓄積ノード11となる。コンデンサC1の電極の他方は、読み出し信号を供給するための配線RSに接続されている。
【0031】
光センサ10においては、配線RSTと蓄積ノード11との間に、フォトダイオードD1が設けられている。そのため、フォトダイオード越しにリセットされる構成となっている。すなわち、蓄積ノード11の電位をリセットする時、すなわちリセット期間においては、フォトダイオードD1に順バイアスをかけるための電圧(リセット信号)が配線RSTに印加される。これにより、蓄積ノード11を所定の電位に初期化される。ここで、配線RSTにリセット信号が供給されてから、配線RSに読み出し信号が供給されるまでの期間をセンシング期間とする。センシング期間においては、フォトダイオードD1に逆バイアスをかけるための電圧が配線RSTに印加される。これにより、センシング期間においては、フォトダイオードD1に流れる光電流に応じて蓄積ノード11の電位が変化する。センシング期間では、さらに、光センサの出力特性を制御しダイナミックレンジを広くするための電圧が配線RSTに印加される。
【0032】
また、光センサ10では、配線RSと蓄積ノード11の間にコンデンサC1が設けられている。センシング期間においては、フォトダイオードD1に流れる光電流に応じて蓄積ノード11の電位が変化することが可能になるように配線RSから電圧が印加される。読み出し期間においては、蓄積ノード11の電位を、トランジスタM1の閾値電極を越えるように突き上げるための電圧が配線RSに印加される。これにより、蓄積ノード11の電位に応じた信号が配線OUTへ出力される。なお、これらの配線RSTおよび配線RSで供給される電圧の詳細については後述する。
【0033】
配線RST,RSは、センサロウドライバ5に接続されている。これらの配線RST,RSは1行毎に設けられているので、以降、各配線を区別する必要がある場合は、RSTi,RSi(i=1〜M)のように表記する。
【0034】
センサロウドライバ5は、所定の時間間隔trowで、図2に示した配線RSTiとRSiとの組を順次選択していく。これにより、画素領域1において信号電荷を読み出すべき光センサの行(row)が順次選択される。
【0035】
なお、図2に示すように、配線OUTの端部には、絶縁ゲート型電界効果トランジスタM3のドレインが接続されている。また、このトランジスタM3のドレインには、出力配線SOUT(出力配線の一例)が接続され、トランジスタM3のドレインの電位VSOUTが、光センサからの出力信号としてセンサカラムドライバ4へ出力される。トランジスタM3のソースは、配線VSSに接続されている。トランジスタM3のゲートは、参照電圧配線VBを介して、参照電圧電源(図示せず)に接続されている。各列のトランジスタM1は、このバイアストランジスタM3と共に、ソースフォロアアンプとして機能する。光センサ10においては、トランジスタM3のドレインからの出力配線SOUTからの出力信号電圧は、積分期間におけるフォトダイオードD1の光電流の積分値を増幅したものに相当する。
【0036】
上記の光センサ10で必要となる素子は、トランジスタ1つとコンデンサ1つとフォトダイオード1つである。また、必要な制御線は、VSS、GND、ソース線を除くと、配線RSTと配線RSの2本だけである。このように、光センサ10は、素子と制御線の数を少ないので、画素領域1において光センサ10が占めるスペースを小さくすることができる。その結果、解像度および/または開口率を高くすることが可能になる。
【0037】
図1に示すように、センサカラムドライバ4は、センサ画素読み出し回路41と、センサカラムアンプ42と、センサカラム走査回路43とを含む。センサ画素読み出し回路41には、画素領域1からセンサ出力VSOUTを出力する配線SOUT(図2参照)が接続されている。図1において、配線SOUTj(j=1〜N)により出力されるセンサ出力を、VSOUTjと表記している。
【0038】
センサ画素読み出し回路41は、センサ出力VSOUTjのピークホールド電圧VSjを、センサカラムアンプ42へ出力する。センサカラムアンプ42は、画素領域1のN列の光センサにそれぞれ対応するN個のカラムアンプを内蔵しており、個々のカラムアンプでピークホールド電圧VSj(j=1〜N)を増幅し、VCOUTとしてバッファアンプ6へ出力する。
【0039】
センサカラム走査回路43は、センサカラムアンプ42のカラムアンプをバッファアンプ6への出力へ順次接続するために、カラムセレクト信号CSj(j=1〜N)を、センサカラムアンプ42へ出力する。
【0040】
バッファアンプ6は、センサカラムアンプ42から出力されたVCOUTをさらに増幅し、パネル出力(光センサ信号)Voutとして信号処理回路8へ出力する。
【0041】
以上の構成により、本実施形態にかかる表示装置は、画素領域1において画素毎に形成されたフォトダイオードD1の受光量に応じたパネル出力VOUTを得る。パネル出力VOUTは、信号処理回路8に送られてA/D変換され、パネル出力データとしてメモリ(図示せず)に蓄積される。つまり、このメモリには、画素領域1の画素数(光センサ数)と同数のパネル出力データが蓄積されることとなる。信号処理回路8では、メモリに蓄積されたパネル出力データを用いて、画像取り込みやタッチ領域の検出等の各種信号処理を行う。
【0042】
[光センサ10の動作例]
図3は、光センサ10の動作例を説明するための図である。図3において、上段は、配線RSに印加される電圧の波形を示し、中段は、配線RSTに印加される電圧の波形、下段は、蓄積ノード11の電位VINTの変化を示す。なお、下段の電位VINTの変化については、例として、4つの波形h1〜h4が示されている。波形h1は、フォトダイオードD1に光の入射が少ない場合の電位VINTの変化を表す。波形h2は、波形h1の場合より、光の入射が多い場合の波形、波形h3は、波形h2の場合より光の入射が多い場合の波形、波形h4は、波形h3より光の入射が多い場合の波形をそれぞれ表している。
【0043】
図3に示す例では、まず、配線RSTに、高さV1のパルス信号P1が、リセット信号として供給される。具体的には、まず、センサロウドライバ5から配線RSTへ供給されるリセット信号がローレベル(V_SSR)から立ち上がってハイレベル(V_DDR)になると、フォトダイオードD1は順方向バイアスとなり、リセット期間が始まる。リセット期間において、蓄積ノード11の電位VINTは、例えば、下記の式(1)で表される。
【0044】
INT = V_SSR−VF ・・・(1)
式(1)において、VFはフォトダイオードD1の順方向電圧である。このときのVINTはトランジスタM2の閾値電圧より低いので、トランジスタM2はリセット期間において非導通状態となっている。
【0045】
次に、リセット信号がローレベルV_SSRに戻ると、リセット期間が終わり、センシング期間が始まる。ここでは、リセット信号がローレベルV_SSRに戻ってから配線RSの読み出し信号がハイレベル(V_DD)に立ち上がるまでの期間をセンシング期間とする。図3に示す例では、センシング期間T1の長さは16msである。リセット期間終了直後の蓄積ノード11の電位VINTは、例えば、下記の式(2)で表される。
【0046】
INT=V_SSR−VF−V1・CPD/CT
=VRST ……(2)
式(2)において、V1は、リセット信号のパルスの高さ(V_DDR−V_SSR)である。CPDはフォトダイオードD1の容量である。CTは、光センサ回路全体の容量、すなわち、蓄積ノード11の総容量であり、コンデンサC1の容量CINTと、フォトダイオードD1の容量CPDと、トランジスタM2の容量CTFTとの総和である(CT=CINT+CPD+CTFT)。ここで、CT>>CPD、CTFTとなる。
【0047】
リセット信号がローレベルV_SSRに戻ると、フォトダイオードD1には逆バイアスがかかるので、フォトダイオードD1への入射光量に比例した光電流がコンデンサC1に流れ込み、コンデンサC1を放電させる。これにより、蓄積ノード11の電位が、フォトダイオードD1の受光量に応じて変化する。ここでは、フォトダイオードD1の受光量に応じて蓄積ノード11の電位が変化しうる期間を積分期間とする。積分期間における蓄積ノード11の電位VINTは、下記の式(3)で表される。
【0048】
INT=VRST−IPHOTO・tINT/CT …(3)
式(3)において、IPHOTOは、フォトダイオードD1の光電流、tINTは、積分期間の長さである。積分期間においても、VINTがトランジスタM2の閾値電圧より低いので、トランジスタM2は非導通状態となっている。
【0049】
センシング期間が始まってから所定時間経過後(図3に示す例では、11ms経過後)に、配線RSTに、高さV2、幅1msのパルス電圧P2が印加される。ここでパルス電圧P2の高さV2は、V1より小さい。すなわち、リセット信号のハイレベルとローレベルとの間の電圧が一時的に印加される。このパルス電圧P2の印加により、蓄積ノード11には、例えば、VP2=V_SSR+V2−VFの電圧がかかる。このとき、蓄積ノード11の電位VINTがVP2に達していない場合(例えば、図3に示す波形h1または波形h2の場合)、蓄積ノード11の電位VINTは、そのまま維持される。一方、蓄積ノード11の電位VINTがVP2にすでに達しており、VP2より低くなっている場合(例えば、波形h3または波形h4の場合)、蓄積ノード11の電位VINTは、VP2に戻される。すなわち、V2のパルス電圧P2の印加により部分的にオーバーフロー動作が行われる。これにより、リセット信号供給時から11ms経過するまでの期間において、光の入射量が多くても、蓄積ノード11の電位VINTがVP2を超えて変化することはなくなる。その結果、後述するようにダイナミックレンジを広くすることができる。
【0050】
パルス電圧P2印加から所定時間経過後(図3に示す例では、2ms経過後)に、配線RSTに、高さV3、幅1msのパルス電圧P3がさらに印加される。ここでパルス電圧P3の高さV3は、V2より小さい。このパルス電圧P2の印加により、蓄積ノード11には、例えば、VP3=V_SSR+V3−VFの電圧がかかる。このとき、蓄積ノード11の電位VINTがVP3に達していない場合(例えば、図3に示す波形h1または波形h2の場合)、蓄積ノード11の電位VINTは、そのまま維持される。一方、蓄積ノード11の電位VINTがVP3にすでに達しており、VP3より低くなっている場合(例えば、波形h3または波形h4の場合)、蓄積ノード11の電位VINTは、VP3に戻される。すなわち、V3のパルス電圧P3の印加により部分的にオーバーフロー動作が行われる。これにより、リセット信号供給後12msから14msの期間においては、光の入射量が多くても、蓄積ノード11の電位VINTがVP3を超えて変化することはなくなる。
【0051】
センシング期間が始まってから16ms経過後に、配線RSへ供給される読み出し信号が立ち上がる。すなわち、配線RSの電圧は、ローレベル(V_SS)からハイレベル(V_DD)に立ち上がる。これにより、センシング期間が終わり、読み出し期間が始まる。ここで、コンデンサC1に対して電荷注入が起こる。すなわち、配線RSに供給される読み出し信号により、蓄積ノード11の電位がコンデンサC1を介して突き上げられる。このとき、蓄積ノードの電位VINTは、例えば、下記の式(4)で表される。
【0052】
INT=VRST−IPHOTO・tINT/CT+ΔVRS・CINT/CT …(4)
式(4)でΔVRSは、読み出し信号のローレベル(V_SS)とハイレベル(V_DD)との差である(ΔVRS=V_DD―V_SS)。この読み出し信号の印加により、蓄積ノード11の電位VINTがトランジスタM1の閾値電圧よりも高くなったとき、トランジスタM1は導通状態となり、電位VINTに応じた出力信号は、配線OUTへ出力される。
【0053】
すなわち、センシング期間では、RS配線にローレベルの電圧V_SSが印加されるので、トランジスタM1は非導通状態(OFF)となり、蓄積ノード11において、光電流の積分が可能になる。読み出し期間では、RS配線にハイレベルの電圧V_DDが印加されるので、蓄積ノード11の電位VINTが突き上げられ、トランジスタM1のゲートが閾値電圧より高くなる。
【0054】
ここで、突き上げられた電位VINTは、積分期間におけるフォトダイオードへの入射光量が反映されている。例えば、図3に示す例では、光入射量が異なる波形h1〜h4それぞれの読み出し期間における電位VINTは互いに異なっている。読み出し期間における電位VINTは、画素内で異なる積分時間(T1、T2およびT3)に応じた出力値を合成したものになる。この電位VINTに応じた出力信号が、トランジスタM1を介して配線OUTへ出力される。
【0055】
出力信号を配線OUTへ出力するトランジスタM1と、各列において配線OUTの端部に設けられているバイアストランジスタであるトランジスタM3とは、ソースフォロアアンプとして機能する。トランジスタM3のドレインからの出力配線SOUTからの出力信号電圧は、積分期間におけるフォトダイオードD1の光電流の積分値を増幅したものに相当する。
【0056】
配線RSがローレベル(V_SS)に戻ると読み出し期間が終わる。読み出し期間が終わると、蓄積ノード11の電位は、再びトランジスタM1の閾値電圧より低くなり、トランジスタM1は非導通状態になる。
【0057】
以上のような、リセットパルスによる初期化と、積分期間における光電流の積分と、読み出し期間におけるセンサ出力の読み出しとが1サイクルとして、各行について周期的に実行される。上記の光センサ10の動作例によれば、シャッタースピードの調整をしなくても、ダイナミックレンジを広くすることができる。
【0058】
[本実施形態における効果]
以下に、上記実施形態における光センサ10により得られる効果について詳しく説明する。図4は、センシング期間のRST配線の電圧をローレベルV_SSRのまま一定とした場合の動作例を説明するための図である。図4において、上段は、配線RSに印加される電圧の波形を示し、中段は、配線RSTに印加される電圧の波形、下段は、蓄積ノード11の電位VINTの変化を示す。なお、下段の電位VINTの変化を示す4つの波形J1〜J4は、図3に示した4つの波形h1〜h4の場合と同様の光が入射した場合の波形をそれぞれ示すものである。
【0059】
図4に示す波形J3、J4の場合、フォトダイオードD1の受光量が多いため、センシング期間内で蓄積ノード11の電位VINTが飽和している。このため、波形J3、J4いずれも、読み出し期間における電位VINTは同じであり、センシング期間におけるフォトダイオードD1の受光量を反映したものになっていない。すなわち、ダイナミックレンジが狭いために、フォトダイオードD1の受光量が多い場合に受光量を認識ができなくなっている。
【0060】
これに対して、図3に示すように、センシング期間において、RST配線に、高さが異なるパルス電圧P1、P2を段階的に印加することにより、蓄積ノードの電位VINTを段階的にリセットすることができる。すなわち、リセット期間後からこのパルス電圧印加までに蓄積ノードの電位VINTが、パルス電圧を跨いで変化している場合は、パルス電圧付近に戻される。例えば、波形h3、h4の場合のように、光検出素子の受光量が多い場合には、受光に伴う蓄積ノードの電位の変化を抑えることができる。その結果、例えば、受光量が多いためにセンシング期間中に蓄積ノードの電位が飽和電圧に達してしてしまい、受光量の認識が不能となる事態が発生しにくくなる。その結果、ダイナミックレンジを広くすることができる。
【0061】
図5は、光センサが図4に示す動作をした場合の感度特性(出力特性)の一例を示すグラフである。グラフの横軸は、光検出素子が受光する光の照度、縦軸は光センサの出力信号の電圧を示す。グラフにおけるプロットを結ぶ線K1〜K4は、それぞれ、センシング期間(シャッタースピード)T1が、16ms、8ms、4ms、2msの場合の感度特性を示す。図5のグラフが示すように、シャッタースピードを短くするとダイナミックレンジが広くなるが、感度特性は直線的なので、照度が弱い場合は、照度が出力電圧に反映されにくくなる。その結果、出力画像において暗い領域に黒つぶれが発生しやすくなる。また、シャッタースピードが長い場合も、感度特性が直線的であるため、照度が強い場合、出力電圧が飽和して、照度が出力電圧に現れなくなるなりやすい。その結果、出力画像において明るい領域には白飛びが発生しやすくなる。
【0062】
これに対して、図6(a)は、本実施形態の光センサ10が図3に示す動作例と同様に動作した場合の感度特性を示すグラフである。但し、図6(a)に示すグラフは、図6(b)に示すように、高さV1=V_DDR(+1V)−V_SSR(−7V)=8V、パルス幅6.08msのリセット信号およびパルス幅6.08msの読み出し信号の間のセンシング期間において、高さV2のパルス電圧P2がRST配線に1回印加された場合の感度特性の例を示す。グラフ中のプロットを結ぶ線G1〜G5は、それぞれ、パルス電圧V2のハイレベルが−1V、−2V、−3V、−4V、−5V(高さ6V、5V、4V、3V、2V)の場合の感度特性を示す。
【0063】
図6(a)に示すように、本実施形態における光センサ10の感度特性は、いわゆる対数特性を示し、照度の弱い領域では、傾き(感度:出力電圧/照度)の絶対値が大きく、照度が強い領域では傾きの絶対値が小さくなっている。例えば、線G5の示す感度特性では、照度が0〜1000luxの領域における傾きと、照度が1000lux以上の領域の傾きとが異なっている。感度特性に現れるこれら二種類の傾きは、センシング期間T1全体を積分期間とした場合の感度と、パルス電圧P2印加後の積分期間T2の感度とに対応している。すなわち、線G1〜G5で示される感度特性は、T1に対応する感度特性線とT2の感度特性線とで表現されている。このように、センシング期間における電圧V2の印加により、感度特性において、照度が小さい場合の傾きと、照度が大きい場合の傾きを異ならせることができる。このように、対数特性を示す感度特性が実現されることにより、例えば、低照度の領域(暗い領域)での黒つぶれを抑制しながらも、広いダイナミックレンジを実現することができる。その結果、白飛びおよび黒つぶれを抑えつつも、広ダイナミックレンジを実現することができる。
【0064】
なお、T1に対応する感度特性線とT2の感度特性線の交点の高さはパルス電圧の高さV2により制御することができる。例えば、T2の傾き=T1の傾き×T2/T1で表すことができる。したがって、センシング期間で印加するパルス電圧の数、電圧の値、および各積分期間の長さを適切に設定することにより、適切な感度特性を実現することができる。
【0065】
このように、本実施形態の光センサ10は、図2に示すように、トランジスタを1つ、制御線を2本に抑えた簡単な構成において、白飛びおよび黒つぶれを抑えつつも、広ダイナミックレンジを実現することができる。
【0066】
[第2の実施形態]
上記第1の本実施形態では、センシング期間においてRST配線にパルス電圧を印加する例を説明したが、RST配線の信号波形は上記例に限られない。センシング期間の少なくとも一部で、リセット信号のローレベルV_SSRとハイレベルV_DDRの間の電圧を印加することで、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0067】
本実施形態では、配線RSTの電圧がセンシング期間で段階的に変化するように光センサ10が動作する場合の例である。
【0068】
図7は、第2の実施形態における光センサ10の動作例を説明するための図である。図7において、図3と同様に、上段は、配線RSに印加される電圧の波形を示し、中段は、配線RSTに印加される電圧の波形、下段は、蓄積ノード11の電位VINTの変化を示す。なお、下段の電位VINTの変化については、例として、4つの波形m1〜m4が示されている。波形m1は、フォトダイオードD1に光の入射が少ない場合の電位VINTの変化を表す。波形m2は、波形m1の場合より、光の入射が多い場合の波形、波形m3は、波形m2の場合より光の入射が多い場合の波形、波形m4は、波形m3より光の入射が多い場合の波形をそれぞれ表している。
【0069】
図7に示す動作例では、まず、センサロウドライバ5から配線RSTへ供給されるリセット信号がローレベル(V_SSR)から立ち上がってハイレベル(V_DDR)になると、フォトダイオードD1は順方向バイアスとなり、リセット期間が始まる。リセット期間において、配線RSTにパルス電圧P1が印加された後、配線RSTの電圧がローレベルからV2高い電圧(V_SSR+V2)に変化することでリセット期間が終わり、センシング期間が始まる。配線RSTの電圧をV_SSR+V2とすることで、フォトダイオードD1に逆バイアスがかかるので、フォトダイオードD1への入射光量に比例した光電流がコンデンサC1に流れ込み、コンデンサC1を放電させる。これにより、蓄積ノード11の電位が、フォトダイオードD1の受光量に応じて変化する。
【0070】
その後、配線RSTの電圧V_SSR+V2は、リセット期間終了から所定時間経過するまで(図7に示す例では、11ms経過後まで)維持される。これにより、前記所定期間においては、蓄積ノード11には、例えば、VP2=V_SSR+V2−VFの電圧がかかる。前記所定期間に、蓄積ノード11の電位VINTがVP2に達していない場合(例えば、図3に示す波形m1または波形m2の場合)、蓄積ノード11の電位VINTは、そのまま維持される。一方、蓄積ノード11の電位VINTがVP2にすでに達している場合(例えば、波形m3または波形m4の場合)、蓄積ノード11の電位VINTは、VP2に保たれる。すなわち、電圧V2の印加により部分的にオーバーフロー動作が行われる。これにより、リセット信号供給時から11ms経過するまでの期間において、光の入射量が多くても、蓄積ノード11の電位VINTがVP2を超えて変化することはなくなる。その結果、上記第1の実施形態と同様にダイナミックレンジを広くすることができる。
【0071】
配線RSTの電圧V_SSR+V2は、所定時間経過後、配線RSTの電圧V_SSR+V3に下げられる。ここで、V2>V3である。この電圧V_SSR+V3は、図7に示し例では3ms維持され、その後、ローレベルV_SSRに落とされる。これにより、蓄積ノード11には、3msの間、例えば、VP3=V_SSR+V3−VFの電圧がかかる。この3msの間に、蓄積ノード11の電位VINTがVP3に達していない場合(例えば、図3に示す波形m1または波形m2の場合)、蓄積ノード11の電位VINTは、そのまま維持される。一方、この3msの間に、蓄積ノード11の電位VINTがVP3に達した場合(例えば、波形m3または波形m4の場合)、蓄積ノード11の電位VINTは、VP3に戻される。
【0072】
このように、図7に示す例では、センシング期間において、リセット信号のハイレベルV_DDRからローレベルV_SSRの間で段階的に変化する電圧が印加される。これにより、上記第1の実施形態と同様に、ダイナミックレンジを広くすることができる。
【0073】
なお、図7に示す動作によれば、光センサ10の感度特性において、リセット信号から読み出し信号までの積分期間T1、配線RSTに電圧V2が印加されてから読み出し信号までの積分期間T2、および、電圧V3が印加されてから読み出し信号までの積分期間T3のそれぞれに対応する傾きの直線が現れることになる。
【0074】
なお、本実施形態のように、センシング期間において、段階的に配線RSTの電圧を変えることで、配線RSTの電圧の簡単な制御により、光ダイナミックレンジを実現することができる。
【0075】
[第3の実施形態]
上述したように、光センサ10の感度特性は、センシング期間に配線RSTに印加される電圧V2、V3の大きさや印加するタイミングにより影響を受ける。実施形態は、このような電圧V2、V3の大きさや印加するタイミングを制御することにより、光センサ10の感度特性を適切に設定することを可能にする表示装置に関する。
【0076】
図8は、第3の実施形態にかかる表示装置の概略構成を示すブロック図である。図8に示す表示装置101は、画素領域1、LCD制御IC(LCD control IC)20、DSP(Digital Signal Processor:信号処理IC)21を備える。なお、画素領域1は、図1に示す画素領域1と同様であり、LCD制御IC20は、図1に示すディスプレイゲートドライバ2、ディスプレイソースドライバ3、センサカラムドライバ4、センサロウドライバ5、バッファアンプ6の機能を備えてもよい。また、LCD制御IC20には、光センサのデータをアナログ値からデジタル値に変換するA/D変換器が内蔵されており、光センサの受光データをDSP21に送る。
【0077】
DSP21は、最適な配線RST駆動波形を決定するリセット信号制御部22と、LCD制御IC20から光センサ信号を受け取って明るさを判断する解析部23とを備える。解析部23は、LCD制御IC20から、光センサ信号として、例えば、上記第1の実施形態で示したパネル出力Voutを受け取る。パネル出力VOUTは、信号処理回路8に送られてA/D変換され、パネル出力データとしてメモリ(図示せず)に蓄積される。解析部23は、このパネル出力データから、各画素の画像の明るさを認識する。解析部23は、認識結果として、例えば、各画素の明るさを示すデータをリセット信号制御部22へ送る。リセット信号制御部22では、各画素の明るさに応じた最適な配線RSTの波形を決定する。決定した配線RSTは、LCD制御IC20へフィードバックされる。
【0078】
このように、解析部23は、LCD制御IC20から受け取った光センサ信号を基に、光検出素子の受光量に関する情報を生成し、リセット信号制御22に渡す。本実施形態では、受光量に関する情報が各画素の明るさを示すデータである場合を説明するか、当該情報はこれに限られない。例えば、各画素について電位の飽和の有無や、画像領域における飽和画素の割合等の情報等も当該情報に含まれる。
【0079】
リセット信号制御部22は、例えば、画素領域1の画素群において、暗く飽和領域がない場合、センシング期間における電圧はローレベルV_SSRで一定とする駆動波形を選択し、画素領域1のいずれかの画素において、明るくて信号が飽和している場合は、図3または図7に示すように、センシング期間において段階的に電圧を付加する駆動波形を選択することができる。このように、画素の明るさに応じて、配線RSTの駆動波形を切り替えることにより、明るさに応じてダイナミックレンジを適切に切り替えることができる。
【0080】
また、リセット信号制御部22は、さらに、各画素の明るさに基づいて配線RSTの最適な波形を決定してもよい。例えば、図3に示すRST配線の信号波形で駆動させる場合、リセット信号制御部22は、パラメータとして、パルス電圧P2、P3それぞれの高さV2、V3および積分期間T1、T2、T3の長さを設定し、これらのパラメータの最適値を各画素に基づいて決定することができる。例えば、パルス電圧の高さV2、V3および積分期間T1、T2、T3の長さの値の様々な組み合わせパターンの信号波形で光センサを駆動させ、光センサデータを取得して、画素の明るさ分布が最も好ましいと判断できる状態になったときの前記値の組み合わせパターンを最適値として設定することができる。
【0081】
ここで、センシング期間に付加される電圧の値と感度特性との関係について説明する。図9は、図6(b)に示す波形の電圧を配線RSTに印加した場合の、光センサ10の感度特性を模式的に表すグラフである。図9に示すグラフにおいて、横軸は、光の照度、縦軸は光センサの出力信号の電圧を示す。照度が小さい領域における直線n1は、積分期間T1における感度特性を示し、照度が大きい領域における直線n2は、積分期間T2における感度特性を示す。これらの直線n1、n2は、変局点pで接続されている。ここで、直線n1、n2の傾き(出力信号の電圧/照度)は、例えば、下記の式(5)および式(6)でそれぞれ表すことができる。
【0082】
直線n1の傾き=ΔVOUT/ΔIPHOTO・t1/CT …(5)
直線n2の傾き=ΔVOUT/ΔIPHOTO・t2/CT …(6)
上記式(5)、(6)において、ΔVOUTは、VOUT(図2のトランジスタM1から配線OUTへ出力される電圧)の所定時間における変化量、ΔIPHOTOは、光電流の前記所定時間における変化量、t1は積分期間T1の長さ、t2は積分期間T2の長さである。
【0083】
ここで、VOUTは、VOUT=VINT−VTNで近似できるので、
照度が0のときのVOUT0は、下記の式(7)表すことができる。
【0084】
OUT0=V1−ΔVRS・CINT/CT …(7)
変局点PにおけるVOUTPは、下記の式(8)表すことができる。
【0085】
OUTP=V2−ΔVRS・CINT/CT …(8)
上記(7)および式(8)により、下記 VOUT0とVOUTPとの差ΔVは、V1−V2となり、V1とV2の差分で決まる。よって、センシング期間において追加する電圧高さと積分時間によって、感度特性の変局点を制御することができる。リセット信号制御部22は、この関係を用いて、光センサ10の感度特性の変局点が適切に設定されるように、前記追加する電圧高さと積分時間を決定することができる。例えば、画素領域1の画素のうち所定数以上において、照度が強すぎて出力電圧の値が飽和している場合は、変局点Pを所定量上げるように、V1、V2を決定することができる。
【0086】
なお、リセット信号制御部23による信号波形の最適化処理は上記例に限られない。例えば、公知の最適化アルゴリズムを用いて、上記パラメータの最適値を計算することもできる。以上のように、本実施形態によれば、画素における明るさに応じて適切なリセット波形を決定し、パネルのLCD制御IC20にフィードバックすることができる。すなわち、フィードバックシステムを構築することで、画像に応じた最適なダイナミックレンジを実現することができる。
【0087】
[第4の実施形態]
上記第1〜3の実施形態では、光センサ10において、フォトダイオードD1の光電流に応じた電位を保持する蓄積ノード11を形成するために、コンデンサC1が設けられていた。本発明の適用可能な光センサの構成はこれに限られない。例えば、コンデンサC1の代わりに可変キャパシタまたはp型薄膜トランジスタ等を用いることもできる。 図10は、図2に示す光センサ10aにおいて、コンデンサC1の代わりに可変キャパシタを用いた場合の例を示す図である。図10に示す光センサ10aは、フォトダイオードD1、可変キャパシタC10、トランジスタM2を備える。この構成において、可変キャパシタC10は、増幅素子として機能する。可変キャパシタC10は、例えば、pチャネルMOSコンデンサで形成することができる。
【0088】
図11は、可変キャパシタC10のCV特性図である。図11において、横軸は可変コンデンサC10の電極間電圧VCAP、縦軸は静電容量を表す。図11に示すように、可変キャパシタC10は、電極間電圧VCAPが小さい間は一定の静電容量を有するが、電極間電圧VCAPの閾値の前後で静電容量が急峻に変化する特性を有する。したがって、配線RSからの読み出し信号の電位によって、可変キャパシタC10の特性を動的に変化させることができる。このような特性を有する可変キャパシタC10を用いることにより、光センサ10aは、積分期間における蓄積ノードの電位変化を増幅して読み出すことができる。
【0089】
図12は、図10の光センサ10aにおける可変キャパシタC10の代わりに、pチャネルTFT(トランジスタM4)を増幅素子として用いた場合の構成を示す図である。図12に示す光センサ10bは、なお、トランジスタM4を増幅素子として用いた光センサ10bの動作は、図10の光センサ10aと同様にすることができる。したがって、光センサ10bによっても、蓄積ノード11の電位VINTを増幅して読み出すことができる。なお、pチャネルTFTの代わりに、nチャネルTFTを用いてもよい。
【0090】
[その他の形態等]
以上の第1〜第4の実施形態は、本発明にかかる表示装置を液晶表示装置として実施する場合の構成例を示したものであるが、本発明にかかる表示装置は液晶表示装置に限定されず、アクティブマトリクス基板を用いる任意の表示装置に適用可能である。なお、本発明にかかる表示装置は、光センサを有することにより、画面に近接する物体を検知して入力操作を行うタッチパネル付き表示装置や、表示機能と撮像機能とを具備した双方向通信用表示装置等としての利用が想定される。
【0091】
また、本発明の光センサは、光センサ付き表示装置に限られず、例えば、イメージスキャナなどその他の装置にも適用可能である。また、光センサの構成も上記の第1〜4の実施形態に限られない。本発明は、リセット信号配線から光検出素子越しに蓄積ノードの電位をリセットする構成の光センサに対して適用することができる。また、リセット信号は、パルス電圧は、リセット期間開始時にローレベルからハイレベルに立ち上げる形態に限られず、ハイレベルからローレベルへ落とすことによって、リセット期間が始まる形態であってもよい。この場合、蓄積ノード11の電位は、光電流に応じて上昇するようにフォトダイオードが接続される形態であることが好ましい。
【0092】
また、光検出素子としては、フォトダイオード以外にも、例えば、フォトトランジスタなどを用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、アクティブマトリクス基板の画素領域内に光センサを有する表示装置として、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0094】
C1、C2 キャパシタ
C10 可変キャパシタ
D1 フォトダイオード
M1〜M4 トランジスタ
RS、RST 配線
10 光センサ
11 蓄積ノード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を受光する光検出素子と、
第1の電圧に対して電位差ΔV_RSTの第2の電圧を発生させるパルス信号を、リセット信号として供給するリセット信号配線と、
読み出し信号を供給する読み出し信号配線と、
前記リセット信号配線に前記光検出素子を介して接続されたノードであって、前記リセット信号が供給されてから前記読み出し信号が供給されるまでのセンシング期間に、前記光検出素子が受光した光量に応じて電位が変化する蓄積ノードと、
前記読み出し信号にしたがって、前記蓄積ノードの電位変化に応じた信号を、出力配線へ読み出すセンサスイッチング素子とを備え、
前記リセット信号配線では、前記センシング期間の少なくとも一部において、前記第1の電圧と前記第2の電圧との間の電圧が印加される、光センサ。
【請求項2】
前記リセット信号配線では、前記センシング期間において、前記電位差ΔV_RSTより小さい電位差のパルス信号が、少なくとも1回供給される、請求項1に記載の光センサ。
【請求項3】
前記リセット信号配線では、前記センシング期間において、前記第2の電圧から前記第1の電圧の間で段階的に変化する電圧が印加される、請求項1に記載の光センサ。
【請求項4】
前記センシング期間の少なくとも一部において印加される、前記第1の電圧と前記第2の電圧との間の前記電圧の値と印加タイミングとを制御する、リセット信号制御部をさらに備える請求項1〜3のいずれか1項に記載の光センサ。
【請求項5】
前記リセット信号制御部は、前記スイッチング素子により前記出力配線へ読み出された信号に基づいて、前記センシング期間の少なくとも一部において、前記リセット信号配線に印加される前記電圧の値および印加タイミングを制御する、請求項4に記載の光センサ。
【請求項6】
前記リセット信号制御部は、前記スイッチング素子により前記出力配線へ読み出された信号から得られる光検出素子の受光量に関する情報に基づいて、前記センシング期間の少なくとも一部において前記リセット信号配線に印加される前記電圧の値および印加タイミングを制御する、請求項5に記載の光センサ。
【請求項7】
前記センシング期間の少なくとも一部において、前記第1の電圧と前記第2の電圧との間の電圧を前記リセット信号線に印加するか否かを切り替えるリセット信号制御部をさらに備える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光センサ。
【請求項8】
キャパシタをさらに備え、前記キャパシタの一方の端子は前記蓄積ノードに接続され、他方の端子は前記読み出し信号配線に接続される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の光センサ。
【請求項9】
前記蓄積ノードに接続された可変キャパシタをさらに備える請求項1〜7のいずれか1項に記載の光センサ。
【請求項10】
前記蓄積ノードに接続されたpチャネル薄膜トランジスタをさらに備える請求項1〜7のいずれか1項に記載の光センサ。
【請求項11】
請求項1〜10に記載の光センサを備えた表示装置であって、
画素領域を含むアクティブマトリクス基板を備え、
前記画素領域に前記光センサが設けられる、表示装置。
【請求項12】
前記アクティブマトリクス基板に対向する対向基板と、
前記アクティブマトリクス基板と対向基板との間に挟まれた液晶層とをさらに備える、請求項11に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−160772(P2012−160772A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135308(P2009−135308)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】