光伝送モジュール、電子機器、及び光伝送モジュールの製造方法
【課題】光学素子と光導波路とを光学接続する際に、接着剤の光路変換ミラー面への這い上がりを防止し、安定した光学特性が得られる光伝送モジュールを実現する。
【解決手段】光伝送モジュール1は、信号光を伝播するコア部10Aと、コア部10Aを囲う上クラッド層10B及び下クラッド層10Cとを含む複数の層が積層された積層構造を有し、コア部10Aの少なくとも一方の端部に、光反射により信号光の光路を変換する光路変換ミラー面10Dが形成された光導波路10と、光路変換ミラー面10Dにて光路変換された信号光と光学的に結合する光学素子11と、光導波路10と光学素子11との間を充填する、液状樹脂の硬化物からなる接着層12とを備えている。光伝送路における複数の層のうち接着層12と接する下クラッド層10Cが、光路変換ミラー面10Dよりも突出した突出部14を有し、突出部14は、光路変換ミラー面10Dと所定の角度φを形成するように設けられている。
【解決手段】光伝送モジュール1は、信号光を伝播するコア部10Aと、コア部10Aを囲う上クラッド層10B及び下クラッド層10Cとを含む複数の層が積層された積層構造を有し、コア部10Aの少なくとも一方の端部に、光反射により信号光の光路を変換する光路変換ミラー面10Dが形成された光導波路10と、光路変換ミラー面10Dにて光路変換された信号光と光学的に結合する光学素子11と、光導波路10と光学素子11との間を充填する、液状樹脂の硬化物からなる接着層12とを備えている。光伝送路における複数の層のうち接着層12と接する下クラッド層10Cが、光路変換ミラー面10Dよりも突出した突出部14を有し、突出部14は、光路変換ミラー面10Dと所定の角度φを形成するように設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号を伝送する光伝送モジュール、電子機器、及び光伝送モジュールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高速で大容量のデータ通信が可能な光通信網が拡大している。今後、この光通信網は民生機器への搭載が予想されている。そして、データ転送の高速大容量化、ノイズ対策、機器内の基板間をデータ伝送する用途として、現在の電気ケーブルと変わりなく使用することができる電気入出力の光データ伝送ケーブル(光ケーブル)が求められている。この光ケーブルとしては、フレキシブル性を考慮すると、フィルム光導波路を用いることが望ましい。
【0003】
光導波路とは、屈折率の大きいコアと、該コアの周囲に接して設けられる屈折率の小さいクラッドとにより形成され、コアに入射した光信号を該コアとクラッドとの境界で全反射を繰り返しながら伝搬するものである。また、フィルム光導波路は、コアおよびクラッドが柔軟な高分子材料からなるため柔軟性を有している。
【0004】
この柔軟性を有するフィルム光導波路が搭載された光伝送モジュールは、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1には、実装基板の端部が光を90度反射するミラーになっており、光の出射口が端部と面するように、面発光レーザが配置された光モジュールが配置された光モジュールが記載されている。そして、特許文献1の光モジュールでは、実装基板の内部に、実装基板の平面に沿って、先導波路(光導波路)が形成されている構成になっている。この構成により、光モジュールの小型化及び軽量化を図っている。
【0005】
また、従来、柔軟性を有するフィルム光導波路と光学素子とを光学接続する際、光学性能・信頼性性能を安定させるために、液状樹脂からなる接着剤が用いられている。この接着剤による光学接続は、特にフィルム光導波路において、光学部品との固定が図れるため、非常に有効な接続方法である。特許文献2には、光学素子と光導波路との隙間に屈折率の高い樹脂を充填し、この樹脂によって光導波路を接着固定する構成が開示されている。
【特許文献1】国際公開00/08505号パンフレット(平成12(2000)年 2月17日公開)
【特許文献2】特開2000−214351号公報(平成12(2000)年 8月 4日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2に開示された光モジュール実装構造(光伝送モジュール)では、光学素子と光導波路とを接着剤により光学接続するに際し、接着剤が光導波路のコア端部に回り込みが発生するという問題が生じる。
【0007】
図27に示されるように、従来の光伝送モジュールでは、光導波路110は、コア部110A、上クラッド層110B、及び下クラッド層110Cからなる積層構造になっている。そして、光路変換ミラー面110Dは、この積層構造を所定の傾斜角度で一括切断することにより形成されている。このため、下クラッド層110Cには、光路変換ミラー面110Dと同一となる傾斜面が形成され、光路変換ミラー面110Dが剥き出しになっている。それゆえ、光学素子111と光導波路110とを接着剤により光学接続するに際し、接着剤が光路変換ミラー面110Dへ這い上がりやすくなるという問題が生じる。
【0008】
そして、この這い上がった接着剤が硬化した接着層112により、光路変換ミラー面110Dにおける光の反射特性が劣化してしまう。
【0009】
さらに、この接着剤の光路変換ミラー面110Dへの這い上がりを防止するために、光学素子と光導波路とを光学接続する際に、接着剤塗布量を厳密に制御する必要があり、製造効率が低下する。さらには、接着剤の光路変換ミラー面110Dへの這い上がりにより製造工程の不良が発生し、歩留を悪化させるという問題が生じる。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、光学素子と光導波路とを光学接続する際に、接着剤の光路変換ミラー面への這い上がりを防止し、安定した光学特性が得られる光伝送モジュール、電子機器、及び光伝送モジュールの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る光伝送モジュールは、上記課題を解決するために、少なくとも、信号光を伝播するコア部と、コア部を囲う上クラッド層及び下クラッド層とを含む複数の層が積層された積層構造を有し、コア部の少なくとも一方の端部に、光反射により信号光の光路を変換する光路変換ミラー面が形成された光伝送路と、光路変換ミラー面により光路変換された信号光と光学的に結合する光学素子と、光伝送路と光学素子との間を充填する、液状樹脂の硬化物からなる樹脂層とを備えた光伝送モジュールであって、光伝送路における上記複数の層のうち樹脂層と接する近接層が、光路変換ミラー面よりも突出した突出部を有し、該突出部は、光路変換ミラー面と所定の角度を形成するように設けられていることを特徴としている。
【0012】
従来の光伝送モジュールにおいては、光伝送路における上記複数の層のうち樹脂層と接する近接層は、光路変換ミラー面よりも突出した突出部を有しているものの、この突出部は、光導波路を光路変換ミラー面の傾斜角度で切断した結果形成されたものである。すなわち、この突出部は、光路変換ミラー面と同一面となるように形成されており、光路変換ミラー面と所定の角度をなすように設けられていない。このため、光導波路と光学素子との間を液状樹脂により充填するに際し、液状樹脂がコア部の光路変換ミラー面へ這い上がりやすくなるという問題が生じる。
【0013】
これに対し、上記の構成では、光伝送路における上記複数の層のうち樹脂層と接する近接層が、光路変換ミラー面よりも突出した突出部を有し、該突出部は、光路変換ミラー面と所定の角度を形成するように設けられているので、光導波路と光学素子とを液状樹脂により充填するに際し、液状樹脂がコア部の光路変換ミラー面へ這い上がるのを防止することができる。その結果、液状樹脂の硬化物からなる樹脂層は、コア部の光路変換ミラー面に接触しなくなり、安定した光学特性が得られる。
【0014】
なお、上記「所定の角度」とは、突出部上面と光路変換ミラー面とにより形成された角度のことをいう。それゆえ、従来の光伝送モジュールのように、近接層に光路変換ミラー面と同一面となる斜面が形成された構成は、突出部上面と光路変換ミラー面とにより角度を成さない(この場合、「所定の角度」は180°になり、実質的に角度をなさないことになる)ので、本発明に係る光伝送モジュールに含まれない。
【0015】
それゆえ、上記「光路変換ミラー面よりも突出した突出部を有し、該突出部は、光路変換ミラー面と所定の角度を形成するように設けられている」ような構成とは、突出部上面と光路変換ミラー面とにより形成された角度が180°よりも小さくなるように形成された構成であるともいえる。
【0016】
また、本発明に係る光伝送モジュールは、上記光路変換ミラー面は、コア部の軸に対し傾斜して形成されており、突出部及び光路変換ミラー面により形成される上記所定の角度と、光路変換ミラー面の傾斜角度との合計が180°よりも大きくなっているとともに、上記突出部には、光路変換ミラー面側から突出部先端に渡って傾斜する傾斜面が形成されていることが好ましい。
【0017】
上記の構成では、突出部及び光路変換ミラー面により形成される上記所定の角度と、光路変換ミラー面の傾斜角度との合計が180°よりも大きくなっているとともに、上記突出部には、光路変換ミラー面側から突出部先端に渡って傾斜する傾斜面が形成されているので、光伝送路と光学素子との間を液状樹脂により充填するに際し、液状樹脂がコア部の光路変換ミラー面へ這い上がるのを防止することができる。
【0018】
また、本発明に係る光伝送モジュールは、上記光路変換ミラー面は、コア部の軸に対し傾斜して形成されており、突出部及び光路変換ミラー面により形成される上記所定の角度と、光路変換ミラー面の傾斜角度との合計が180°以下になっていることが好ましい。
【0019】
上記の構成では、突出部及び光路変換ミラー面により形成される上記所定の角度と、光路変換ミラー面の傾斜角度との合計が180°以下になっている、すなわち、突出部が樹脂層と反対側に折れ曲がった構成になっているので、光導波路と光学素子との間を液状樹脂により充填するに際し、液状樹脂がコア部の光路変換ミラー面へ這い上がるのをより確実に防止することができる。
【0020】
また、本発明に係る光伝送モジュールは、上記突出部に、樹脂層と反対側に延びる壁部が形成されていることが好ましい。
【0021】
上記の構成では、突出部に、樹脂層と反対側に延びる壁部が形成されているので、光伝送路と光学素子との間を液状樹脂により充填するに際し、液状樹脂がコア部の光路変換ミラー面へ這い上がるのをより確実に防止することができる。
【0022】
また、本発明に係る光伝送モジュールは、上記突出部の樹脂層と反対側の面に、凹部が形成されていることが好ましい。
【0023】
上記の構成において、突出部の樹脂層と反対側の面に形成された凹部は、光路変換ミラー面へ這い上がる液状樹脂を貯める役割がある。それゆえ、上記の構成によれば、光伝送路と光学素子との間を液状樹脂により充填するに際し、液状樹脂がコア部の光路変換ミラー面へ這い上がるのをより確実に防止することができる。
【0024】
また、本発明に係る光伝送モジュールは、上記突出部の樹脂層と反対側の面に、コア部と、コア部を囲う上クラッド層及び下クラッド層とを含む複数の層が積層されており、突出部に積層された複数の層の側面と光路変換ミラー面とにより、溝部が形成されていることが好ましい。
【0025】
上記の構成では、上記突出部の樹脂層と反対側の面に、コア部と、コア部を囲う上クラッド層及び下クラッド層とを含む複数の層が積層されているので、液状樹脂がコア部の光路変換ミラー面へ這い上がるのをより確実に防止することができる。
【0026】
さらに、突出部に積層された複数の層の側面と光路変換ミラー面とにより、溝部が形成されている構成になっているので、例えば、刃物切断により上面が露出した突出部を形成する場合と比較して、突出部の樹脂層と反対側の面に、コア部と、コア部を囲う上クラッド層及び下クラッド層とを含む複数の層を残存して製造することができるので、より簡潔な方法で、液状樹脂がコア部の光路変換ミラー面へ這い上がるのを防止する光伝送モジュールを製造できる。
【0027】
また、本発明に係る光伝送モジュールは、樹脂層と接する上記近接層が、下クラッド層になっている構成であってもよい。
【0028】
また、本発明に係る光伝送モジュールは、上記積層構造は、コア部と、コア部を囲う上クラッド層及び下クラッド層と、光伝送路を保護する保護層とを含む複数の層が積層された積層構造であって、樹脂層と接する上記近接層が、上記保護層になっている構成であってもよい。
【0029】
本発明に係る電子機器は、上述の光伝送モジュールを備えたことを特徴としている。
【0030】
これにより、光路変換ミラー面で安定した光学特性が得られる電子機器を提供することができる。
【0031】
本発明に係る光伝送モジュールの製造方法は、上記の課題を解決するために、少なくとも、信号光を伝播するコア部と、コア部を囲う上クラッド層及び下クラッド層とを含む複数の層が積層された積層構造を有し、コア部の少なくとも一方の端部に、光反射により信号光の光路を変換する光路変換ミラー面が形成された光伝送路と、光路変換ミラー面により光路変換された信号光と光学的に結合する光学素子とを液状樹脂からなる接着剤により接着する接着工程を含む光伝送モジュールの製造方法において、光伝送路における上記複数の層のうち上記接着剤と接触する近接層に、光路変換ミラー面よりも突出した突出部を形成し、この突出部が光路変換ミラー面と所定の角度を形成するようにする突出部形成工程を含むことを特徴としている。
【0032】
上記の構成によれば、突出部形成工程にて、光伝送路における上記複数の層のうち上記接着剤と接触する近接層に、光路変換ミラー面よりも突出した突出部を形成し、この突出部が光路変換ミラー面と所定の角度を形成するようにするので、光伝送路と光学素子とを液状樹脂からなる接着剤により接着する接着工程において、接着剤がコア部の光路変換ミラー面へ這い上がるのを防止することができる。
【0033】
本発明に係る光伝送モジュールの製造方法は、上記突出部形成工程は、上記積層構造を有する光伝送路端部を光路変換ミラー面の傾斜角度になるように斜め切断する第1の工程と、少なくとも、光路変換ミラー面が形成された時点で斜め切断を停止する第2の工程とを含むことが好ましい。
【0034】
本発明に係る光伝送モジュールの製造方法は、上記第2の工程では、斜め切断を停止した後、さらに、斜め切断を停止した切断停止位置を通過し、かつ、光路変換ミラー面の傾斜角度と異なる方向に、光伝送路端部を切断することが好ましい。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る光伝送モジュールは、以上のように、光伝送路における上記複数の層のうち樹脂層と接する近接層が、光路変換ミラー面よりも突出した突出部を有し、該突出部は、光路変換ミラー面と所定の角度を形成するように設けられている構成である。
【0036】
また、本発明に係る電子機器は、上記の光伝送モジュールを備えた構成である。
【0037】
さらに、本発明に係る光伝送モジュールの製造方法は、以上のように、光伝送路における上記複数の層のうち上記接着剤と接触する近接層に、光路変換ミラー面よりも突出した突出部を形成し、この突出部が光路変換ミラー面と所定の角度を形成するようにする突出部形成工程を含む構成である。
【0038】
これにより、光導波路と光学素子とを液状樹脂により充填するに際し、液状樹脂がコア部の光路変換ミラー面へ這い上がるのを防止することができる。その結果、液状樹脂の硬化物からなる樹脂層は、コア部の光路変換ミラー面に接触しなくなり、安定した光学特性が得られるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明の一実施形態について図面に基づいて説明すると以下の通りである。先ず、本実施の形態に係る光伝送モジュールの一構造例を図1を参照して説明する。
【0040】
図1に示す光伝送モジュール1は、その端部付近において、大略的に、光導波路10、光学素子11、及び電気回路基板13を備えて構成されている。光導波路10の端部では光導波路10と光学素子11との間に、液状樹脂の硬化物からなる接着層(樹脂層)12が形成されている。すなわち、光伝送モジュール1は、光導波路10と光学素子11とが、液状樹脂からなる接着剤(この接着剤の硬化物が接着層12となる)により接着された構成になっている。
【0041】
光導波路10は、コア部10A、上クラッド層10B、および下クラッド層10Cにより構成されている。すなわち、光導波路10は、上クラッド層10Bおよび下クラッド層10Cによってコア部10Aを挟み込む積層構造を有している。光導波路10によって伝達される光信号は、コア部10Aと上クラッド層10Bとの界面、またはコア部10Aと下クラッド層10Cとの界面で反射を受けながら、コア部10A内を進行する。尚、図1においては、光導波路10の端部付近において、光導波路10の長手方向(光軸方向)をX軸方向、コア部10A、上クラッド層10B、および下クラッド層10Cの積層方向をY軸方向とする。また、このY軸方向は、電気回路基板13における光導波路10の搭載面の法線方向とも一致する。
【0042】
光導波路10における端面は光軸(X軸)に対して垂直とならず、斜めに切断されて光路変換ミラー面10Dを形成する。具体的には、光導波路10の端面は、XY平面に対して垂直であり、かつ、X軸に対しては角度θ(θ<90°)をなすように傾斜されている。
【0043】
これにより、光導波路10における光の出射側では、コア部10Aを伝達する信号光は、光路変換ミラー面10Dにて反射して、その進行方向を変えて光路変換ミラー面10Dから光学素子11に向けて出射する。ここで、光導波路10における光の出射面(または入射面)は、光路変換ミラー面10Dが設けられていることによって下クラッド層10C(上クラッド層10Bでもよい)の外表面において存在し、光学素子11の受光面(または発光面)は、光導波路10における光の出射面(または入射面)と対向するように配置される。
【0044】
尚、光路変換ミラー面10Dの傾斜角度θは、該光路変換ミラー面10Dと光学素子11との位置合わせが容易となるように、通常は45°に設定されている。尚、光路変換ミラーは、光導波路10の端部に対してミラー部を外付けするものであってもよい。
【0045】
接着層12は光導波路10と光学素子11との隙間全体を充填しているものである。接着層12の役割は、光導波路10と光学素子11とを接着固定すること以外に、光学素子11を封止することによって、光学素子11を埃や湿気から守り、光ケーブルモジュール1の信頼性を高めることもある。また、接着層12は、光導波路10と光学素子11との間で伝達される光信号の拡散を防止し、光信号の拡散による光学的損失を抑制する作用もある。接着層12の材料としては、高い屈折率を有するエポキシ系、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系等の透明樹脂が好適に使用できる。また、接着層12の屈折率は、空気よりも屈折率の大きい材料であれば効果がある。
【0046】
また、電気回路基板13には、光導波路10の光路変換ミラー面10Dにて反射された光を光学素子11へ導くための光路孔13cが形成されている。電気回路基板13における面13aには、光学素子11が搭載されている。光学素子11は、バンプ15により電気回路基板13と電気的に接続している。電気回路基板13における、光学素子11が搭載される面13aと背向する面13bに光導波路10が搭載されている。
【0047】
本実施形態の光伝送モジュール1では、光導波路10の積層のうち、接着層12と接触する層、すなわち下クラッド層10Cが、光路変換ミラー面10Dよりも光軸方向に突出した突出部14を備え、突出部14は光路変換ミラー面10Dと角度φをなすように設けられている。そして、突出部14と光路変換ミラー面10Dとのなす角度φと光路変換ミラー面10Dの傾斜角度θとの合計が180°になっている(すなわち、突出部14が光路変換ミラー面10Dから水平方向(X方向)に突出している)。
【0048】
従来の光伝送モジュールにおいても、下クラッド層は、光路変換ミラー面よりも突出した突出部を有している。しかしながら、この突出部は、光導波路を光路変換ミラー面の傾斜角度で切断した結果形成されたものである。すなわち、この突出部は、光路変換ミラー面と同一面となるように形成されており、光路変換ミラー面と所定の角度をなすように設けられていない。このため、光導波路と光学素子とを液状樹脂からなる接着剤により接着するに際し、接着剤がコア部の光路変換ミラー面へ這い上がりやすくなるという問題が生じる。
【0049】
一方、本実施形態の光伝送モジュール1においては、光導波路10に突出部14が設けられているため、光導波路10と光学素子11とを液状樹脂からなる接着剤により接着するに際し、接着剤がコア部10Aの光路変換ミラー面10Dへ這い上がるのを防止することができる。その結果、接着剤の硬化物からなる接着層12は、コア部10Aの光路変換ミラー面10Dに接触しなくなり、安定した光学特性が得られる。
【0050】
図1に示す構成の光ケーブルモジュール1の製造手順としては、先ず、電気回路基板13における面13aの光路孔13c近傍に、バンプ15が形成された光学素子11を搭載する。そして、その上から液状樹脂からなる接着剤を、光路孔13cを充填するように流し込む。その後、電気回路基板13における面13b上に光導波路10を、光路変換ミラー面10Dが光路孔13cの真上になるように搭載する。これにより、光学素子11と光導波路10との間に液状樹脂からなる接着剤が充填され、両者が接着されることになる。そして、液状樹脂からなる接着剤を紫外線等により硬化することで、光学素子11と光導波路10との接着が固定される。
【0051】
本実施形態の光伝送モジュール1では、下クラッド層10Cが、光路変換ミラー面10Dよりも光軸方向に突出した突出部14を備え、突出部14は光路変換ミラー面10Dと角度φをなすように設けられているので、面13b上に光導波路10を搭載する際に、液状樹脂からなる接着剤が光路変換ミラー面10Dまで這い上がることを防止することが可能になる。
【0052】
以下、光伝送モジュール1において特徴的構成である、突出部14が光路変換ミラー面10Dと角度φをなすように設けられた光導波路10の製造手順の一例について、説明する。図2(a)〜(c)は、図1に示された光導波路10の製造手順の一例を概略的に示した断面図である。光導波路10は、大きく分けて、以下の2つの工程にて製造される。第1の工程は、コア部10Aとクラッド層(上クラッド層10B及び下クラッド層10C)との積層構造を形成した後、光路変換ミラー面10Dを形成する工程である。第2の工程は、突出部14を形成する工程である。
【0053】
第1の工程では、コア部10A、上クラッド層10B及び下クラッド層10Cの積層構造が形成された光導波路10を台上に固定し、台に対して傾斜した方向(傾斜角度θ)より切断刃(ブレード)を打ち下ろして刃物切断し、光導波路に切断端面を形成する(図2(a)参照)。
【0054】
第2の工程では、図2(b)に示されるように、上記の刃物切断によりコア部10Aが切断され光路変換ミラー面10Dが形成された時点で、刃物切断を停止する。そして、光路変換ミラー面10Dよりも端部側に残存しているコア部10A及び上クラッド層10Bを、下クラッド層10Cから引き剥がすことで、突出部14を形成することができる。
【0055】
第2の工程は、図2(c)に示された工程であってもよい。すなわち、上記の刃物切断によりコア部10Aが切断され光路変換ミラー面10Dが形成された時点で、切断角度(ブレード角度)を水平にして切断する。
【0056】
(変形例1)
本実施形態の光伝送モジュール1の構成において、図1に示す構成の変形例について説明する。図3は、この変形例1としての光伝送モジュール1の断面図を示している。
【0057】
図1に示す構成では、突出部14と光路変換ミラー面10Dとのなす角度φと光路変換ミラー面10Dの傾斜角度θとの合計が180°になっていたが、図3に示すように、角度φと光路変換ミラー面10Dの傾斜角度θとの合計が180°よりも大きくなった構成であってもよい。
【0058】
また、図3に示された光伝送モジュールでは、突出部14に、光路変換ミラー面10Dから先端側へ傾斜する傾斜面14aが形成されている。それゆえ、突出部14の先端部は、鋭角形状になっている。
【0059】
図6(a)及び(b)は、図3に示された形状の突出部14を有する光導波路の製造手順の一例を模式的に示した断面図である。図6(a)に示されるように、傾斜角度θよりブレードを打ち下ろして刃物切断し、切断端面を形成する。そして、ブレードが下クラッド層10Cに到達し、光路変換ミラー面10Dが形成された時点で、切断角度(ブレード角度)を変えながら切断することで、図3に示された形状の突出部14が形成される。
【0060】
また、図6(b)に示されるように、光路変換ミラー面10Dが形成された時点からさらに刃物切断を進めると、下グラッド層10Cの先端部が折れ曲がる。この先端部の折れ曲がりにより、ブレード角度を変えることなく、図3に示された形状の突出部14を形成することが可能になる。
【0061】
また、変形例1の構成としては、図3に示された構成の他に、図4に示された構成が挙げられる。図4に示される構成では、図3と同様に、角度φと光路変換ミラー面10Dの傾斜角度θとの合計が180°よりも大きくなっている。しかしながら、図3のように、突出部14の先端部は、鋭角形状になっていない。すなわち、図4に示された構成は、角度φと傾斜角度θとの合計が180°になっている突出部14が、上クラッド層10Bと反対側(光導波路10の接着面側)に折れ曲がった構造になっている。そして、電気回路基板13には、突出部14の折れ曲がり角度に傾斜した傾斜面13aが形成されている。
【0062】
(変形例2)
本実施形態の光伝送モジュール1の構成において、図1に示す構成のさらに他の変形例について説明する。図5は、この変形例2としての光伝送モジュール1の断面図を示している。
【0063】
図1に示す構成では、突出部14と光路変換ミラー面10Dとのなす角度φと光路変換ミラー面10Dの傾斜角度θとの合計が180°になっていたが、図5に示すように、角度φと光路変換ミラー面10Dの傾斜角度θとの合計が180°よりも小さくなった(突出部が上クラッド層10B側に折れ曲がった)構成であってもよい。
【0064】
このように、図5に示された構成では、突出部14が突出部が上クラッド層10B側に折れ曲がった構造になっているので、図1に示された構成と比較して、光導波路と光学素子とを液状樹脂からなる接着剤により接着するに際し、接着剤の光路変換ミラー面への這い上がりをより確実に防止することができる。
【0065】
ここで、変形例1の図4、または図5に示された突出部14を有する光導波路の製造手順の一例について、以下に説明する。図7(a)及び(b)は、変形例1の図4、または図5に示された突出部14を有する光導波路の製造手順の一例を模式的に示す断面図である。
【0066】
図7(a)に示されるように、まず、角度φと傾斜角度θとの合計が180°になっている突出部14を形成する。この形成方法は、図2(a)〜(c)に示された方法と同様である。図5に示された突出部14は、図7(b)に示されるように、図7(a)に示された突出部14を、上クラッド層10B側に折り曲げるか、熱収縮させることで形成される。また、変形例1の図4に示された突出部14は、図7(a)に示された突出部14を、上クラッド層10Bと反対側に折り曲げるか、熱収縮させることで形成される。
【0067】
(変形例3)
本実施形態の光伝送モジュール1の構成において、図1に示す構成のさらに他の変形例について説明する。図8は、この変形例3としての光伝送モジュール1の断面図を示している。
【0068】
図8に示された構成は、図1に示された突出部14の先端部に壁部14bが形成された構成になっている。壁部14bは、突出部14上面から、上クラッド層10B側へ垂直方向(Y方向)に延びるように形成されている。
【0069】
このように、図8に示された構成では、突出部14の先端部に壁部14bが形成されているので、図1に示された構成と比較して、光導波路と光学素子とを液状樹脂からなる接着剤により接着するに際し、接着剤の光路変換ミラー面への這い上がりをより確実に防止することができる。
【0070】
なお、図8に示された突出部14は、図9に示されるように、角度φと傾斜角度θとの合計が180°になっている突出部の先端部を上クラッド層10B側に折り曲げるか、熱収縮させることで形成される。
【0071】
(変形例4)
本実施形態の光伝送モジュール1の構成において、図1に示す構成のさらに他の変形例について説明する。図10は、この変形例4としての光伝送モジュール1の断面図を示している。
【0072】
図10に示された構成は、図1に示された突出部14上面に凹部14cが形成された構成になっている。この凹部14cは、光導波路と光学素子とを液状樹脂からなる接着剤により接着するに際し、突出部14上面に到達した接着剤を貯めるために設けられている。それゆえ、図1に示された構成と比較して、接着剤の光路変換ミラー面への這い上がりをより確実に防止することができる。
【0073】
なお、図10に示された突出部14の凹部14cは、角度φと傾斜角度θとの合計が180°になっている突出部上面に、エッチング、切削加工等を施すことにより形成される(図11参照)。
【0074】
図1〜図8に示された光伝送モジュールでは、下クラッド層10Cにおける突出部14が露出したような構成であった。しかしながら、本実施形態の光伝送モジュールは、このような構成に限定されるものではなく、突出部14が光路変換ミラー面10Dと角度φをなすように設けられている構成であればよい。例えば、下記変形例5及び6に記載するように、下クラッド層10Cにおける突出部14上面に複数の層が積層された構成であってもよい。
【0075】
(変形例5)
本実施形態の光伝送モジュール1の構成において、図1に示す構成のさらに他の変形例について説明する。図12及び13は、この変形例5としての光伝送モジュール1の断面図を示している。
【0076】
図12及び13に示された構成は、図1に示された突出部14上面に、コア部10A’、上クラッド層10B’がこの順に積層された構成になっている。
【0077】
このように図12及び13に示された構成では、光路変換ミラー面10Dよりも端部側にコア部10A’及び上クラッド層10B’が残存している構成になっているので、図1に示された構成と比較して、接着剤の光路変換ミラー面への這い上がりをより確実に防止することができる。
【0078】
次に、図12及び13に示された光導波路の製造手順について、図14(a)・(b)、及び図15(a)・(b)に基づいて説明する。図14(a)及び(b)はそれぞれ、図12に示された光導波路の製造手順の一例を模式的に示した断面図である。図15(a)及び(b)はそれぞれ、図13に示された光導波路の製造手順の一例を模式的に示した断面図である。
【0079】
図12に示された光導波路は、例えば図14(a)に示されるような方法で形成される。すなわち、上述した第1の工程における刃物切断(光路変換ミラー面10Dを形成するための刃物切断)を停止した後、第2の工程にて、第1の工程における刃物切断の傾斜角度(傾斜角度θ)とは異なる角度で、かつ切断停止位置Pを通過するように刃物切断する。そして、上記の2つの刃物切断により不要なコア部10A及び上クラッド層10Bを除去している。また、図13に示された光導波路は、例えば図15(a)に示されるように、第1の工程における第2の工程にて、切断停止位置Pを通過し、かつ垂直方向に刃物切断することにより形成される。それゆえ、図12及び図13に示されたコア部10A’及び上クラッド層10B’は、上記の2つの刃物切断の結果、光路変換ミラー面10Dよりも端部側に残存した層である。
【0080】
本変形例では、図1に示された構成と比較して、光路変換ミラー面10Dよりも端部側に残存しているコア部10A’及び上クラッド層10B’を除去する工程を必要としないので、突出部形成手順を簡略化できる。
【0081】
また、図12及び13に示された光導波路は、その端部に光路変換ミラー面10Dを含む溝部が形成された構成であるともいえる。この溝部の側壁面の一部として、光路変換ミラー面10Dが含まれている。コア部10A’及び上クラッド層10B’は、例えば図14(b)及び図15(b)に示される方法で形成されていてもよい。すなわち、溝部の側壁面に囲まれた形状にあうブレードを用いて形成することが可能である。「溝部の側壁面に囲まれた形状」とは、例えば図12に示された構成では、V形状であり、図13に示された構成では、レの字形状である。
【0082】
(変形例6)
本実施形態の光伝送モジュール1の構成において、図1に示す構成のさらに他の変形例について説明する。図16は、この変形例6としての光伝送モジュール1の断面図を示している。
【0083】
図16に示された構成は、図12及び13と同様に、図1に示された突出部14上面に、コア部10A’、上クラッド層10B’がこの順に積層された構成になっている。
【0084】
図16に示されたコア部10A’及び上クラッド層10B’は、上述した第1の工程における刃物切断(光路変換ミラー面10Dを形成するための刃物切断)を停止するのみで形成されている。すなわち、光路変換ミラー面10Dを形成するための刃物切断を切断停止位置Pで停止するのみで形成されている。さらに換言すると、図16に示された構成は、光路変換ミラー面10Dの傾斜角度θで傾斜した、ミラーカット溝が形成されている構成になっている。このような構成であっても、接着剤の光路変換ミラー面への這い上がりをより確実に防止することができる。
【0085】
次に、図16に示された光導波路の製造方法について、図17を参照して説明する。図17に示されるように、コア部10A、上クラッド層10B及び下クラッド層10Cの積層構造が形成された光導波路10を台上に固定し、台に対して傾斜した方向(傾斜角度θ)より切断刃(ブレード)を打ち下ろして刃物切断する(第1の工程)。そして、上記の刃物切断によりコア部10Aが切断され光路変換ミラー面10Dが形成された時点で、刃物切断を停止する。そして、光路変換ミラー面10Dよりも端部側のコア部10A’及び上クラッド層10B’をそのまま残す。
【0086】
このように、本変形例では、変形例5と比較して、コア部10A’及び上クラッド層10B’を、光路変換ミラー面10Dを形成するための刃物切断のみで形成でき、突出部形成手順を大幅に簡略化できる。
【0087】
なお、図16に示された構成では、切断停止位置Pが下クラッド層10C内部に位置しており、下クラッド層10C内部に光路変換ミラー面10Dと同一面を有する溝部が形成された構成になっている。このような場合、突出部14と光路変換ミラー面10Dとの成す角度φは、コア部軸方向断面において、突出部14のコア部10A’・上クラッド層10B’が積層される面(突出部14の上面)を延長させた線(図16の点線)と光路変換ミラー面10Dとのなす角度として規定される。
【0088】
図1〜図16に示された光伝送モジュールでは、下クラッド層10Cに突出部14が形成された構成であった。しかしながら、本実施形態の光伝送モジュールは、このような構成に限定されるものではなく、光導波路10における複数の層のうち接着層12と接する近接層が、光路変換ミラー面10Dよりも突出した突出部14を有する構成であればよい。
【0089】
(変形例7)
本実施形態の光伝送モジュール1の構成において、図1に示す構成のさらに他の変形例について説明する。図18は、この変形例7としての光伝送モジュール1の断面図を示している。
【0090】
図18に示される構成では、下クラッド層10Cのさらに接着層12側に、光導波路10を外部から保護する保護層16が設けられている。下クラッド層10Cは、傾斜面を有しており、この傾斜面は、光路変換ミラー面10Dと同一平面になっている。すなわち、コア部10A、上クラッド層10B及び下クラッド層10Cの積層構造のうち、下クラッド層10Cに対しても、光路変換ミラー面10Dを形成するための刃物切断がなされている。
【0091】
そして、保護層16は、光路変換ミラー面10Dよりも光軸方向に突出した突出部14を備え、突出部14は光路変換ミラー面10Dと角度φをなすように設けられている。これにより、光導波路を搭載する際に、液状樹脂からなる接着剤が光路変換ミラー面10Dまで這い上がることを防止することが可能になる。
【0092】
図19(a)は、図18に示された光導波路の製造手順の一例を模式的に示す断面図である。この製造手順では、まず、上から上クラッド層10B、コア部10A、下クラッド層10C、保護層16がこの順に積層された積層構造を形成する。そして、図19(a)に示されるように、この積層構造に対し傾斜角度θよりブレードを打ち下ろして刃物切断し、切断端面を形成する。そして、ブレードが保護層16に到達し、光路変換ミラー面10Dと同一面になった下グラッド層10C端面が形成された時点で、切断角度(ブレード角度)を変えて切断する。これらの手順により、図18に示された形状の突出部14が形成される。
【0093】
また、図18に示された光導波路の製造手順の他の例としては、図19(b)に示される手順が挙げられる。すなわち、同図に示されるように、下グラッド層10C端面が形成された時点からさらに刃物切断を進めると、保護層16の先端部が折れ曲がる。この先端部の折れ曲がりにより、ブレード角度を変えることなく、図18に示された形状の突出部14を形成することが可能になる。
【0094】
なお、図18に示された構成は、保護層16は、下クラッド層10Cのさらに接着層12側に設けられていたが、この保護層16は、上クラッド層10Bの上面に設けられていてもよい。この場合、下クラッド層10Cに突出部14が形成されている。
【0095】
図20(a)は、保護層16が上グラッド層10B上面に設けられた光導波路の製造手順の一例を模式的に示した断面図である。この製造手順では、まず、上から保護層16、上クラッド層10B、コア部10A、下クラッド層10Cがこの順に積層された積層構造を形成する。そして、図20(a)に示されるように、この積層構造に対し傾斜角度θよりブレードを打ち下ろして刃物切断し、切断端面を形成する。そして、ブレードが下グラッド層10Cに到達し、コア部10Aに光路変換ミラー面10Dが形成された時点で、切断角度(ブレード角度)を変えながら切断する。
【0096】
また、図20(b)に示されるように、光路変換ミラー面10Dが形成された時点からさらに刃物切断を進めると、下クラッド層10Cの先端部が折れ曲がる。この先端部の折れ曲がりにより、ブレード角度を変えることなく、突出部を形成することが可能になる。
【0097】
また、この変形例では、光導波路における接着層と近接する近接層として光導波路を保護する保護層16を適用した構成であったが、近接層は、保護層に限定されず、光が透過可能な基板であってもよい。
【0098】
上記「近接層」として光が透過可能な基板17を適用した場合、光導波路の製造手順としては、図21(a)〜(c)に示された3通りの方法が挙げられる。
【0099】
図21(a)に示された製造手順では、まず、上クラッド層10B、コア部10A、及び下クラッド層10Cの端面が光路変換ミラー面と同一になった光導波路を、刃物切断により製造する。そして、接着剤を用いて、製造された光導波路を基板17に貼り合わせる。
【0100】
また、図21(b)に示された製造手順では、まず、基板17上に、下クラッド層10Cコア部10A、上クラッド層10Bをこの順に積層する。そして、この積層構造に対し刃物切断を行い、切断端面を形成する。そして、ブレードが基板17に到達し、光路変換ミラー面10Dが形成された時点で、切断角度(ブレード角度)を変えて切断する。
【0101】
さらに、図21(c)に示された製造手順では、ブレードが基板17に到達し、光路変換ミラー面10Dが形成された時点で、余分な積層を引き剥がしている。
【0102】
(変形例8)
図1〜図18に示された光伝送モジュールでは、光学素子11と光導波路10との間を充填する樹脂層として、液状樹脂からなる接着剤が硬化した接着層12を適用していたが、樹脂層としては、接着層12に限定されず、例えば光学素子11を封止する封止樹脂からなっていてもよい。図22は、樹脂層として光学素子11を封止する封止樹脂を適用した場合の光伝送モジュール1の断面図を示している。
【0103】
図22に示されるように、光伝送モジュール1は、その光入射側もしくは光出射側端部において、光導波路10を支持する支持基板103を備えている。そして、光導波路10は、その端部付近において支持基板103に対して接着等によって固定されており、光導波路101の端部と光学素子11との相対的な位置関係は固定された状態にある。支持基板103は、光学素子11の搭載面と光導波路10の固定面(接着面)とが異なる面となるような段差を有している。
【0104】
そして、光学素子11と光導波路10との間には、液状の封止樹脂の硬化物からなる封止層12’が設けられている。封止層12’は、少なくとも下クラッド層10C下面に接するように設けられている。
【0105】
このような構成であっても、光導波路10を支持基板103に搭載した後光学素子11を封止樹脂で封止するに際し、封止樹脂の光路変換ミラー面への這い上がりを防止することができる。
【0106】
なお、図22に示された構成では、支持基板103が光導波路10を1点で支持する構成であったが、この構成に限定されず、支持基板103が光導波路10を複数の点で支持する構成であってもよい。
【0107】
(光学素子について)
本実施形態の光伝送モジュール1における光学素子11は、光路変換ミラー面10Dにより光路変換された光と光学的に結合することが可能な光学部材であれば、特に限定されるものではない。
【0108】
光学素子11に適用可能な光学部材としては、例えば、レーザダイオード等の発光素子(発光機能を備えた光素子)、フォトダイオード等の受光素子(受光機能を備えた光素子)、光導波路、光ファイバ、レンズ等の集光部材、光路変換ミラー面10Dにより光路変換された光をさらに光路変換するミラー、プリズム、回折格子、光透過が可能な基板、光路変換ミラー面10Dにより光路変換された光を通過する光路孔が形成された基板、または、光路孔に光透過が可能な部材が埋め込まれた基板等が挙げられる。
【0109】
光伝送モジュール1は、光伝送路である光導波路10の両端に、光学素子11として受光素子および発光素子を備えることで、光伝送モジュールとして機能できる。図23は、本実施形態に係る光伝送モジュール1の概略構成を示している。同図に示すように、光伝送モジュール1は、光送信処理部2、光受信処理部3、および光導波路10を備えている。
【0110】
光送信処理部2は、発光駆動部5および発光部6を備えた構成となっている。発光駆動部5は、外部から入力された電気信号に基づいて発光部6の発光を駆動する。この発光駆動部5は、例えば発光駆動用のIC(Integrated Circuit)によって構成される。なお、図示はしていないが、発光駆動部5には、外部からの電気信号を伝送する電気配線との電気接続部が設けられている。
【0111】
発光部6は、発光駆動部5による駆動制御に基づいて発光する。この発光部6は、例えばVCSEL(Vertical Cavity-Surface Emitting Laser)などの発光素子によって構成される。発光部6から発せられた光は、光信号として光導波路10の光入射側端部に照射される。
【0112】
光受信処理部3は、増幅部7および受光部8を備えた構成となっている。受光部8は、光伝送路4の光出射側端部から出射された光信号としての光を受光し、光電変換によって電気信号を出力する。この受光部8は、例えばPD(Photo-Diode)などの受光素子によって構成される。
【0113】
増幅部7は、受光部8から出力された電気信号を増幅して外部に出力する。この増幅部7は、例えば増幅用のICによって構成される。なお、図示はしていないが、増幅部7には、外部へ電気信号を伝送する電気配線との電気接続部が設けられている。
【0114】
光導波路10は、上述したように発光部6から出射された光を受光部8まで伝送する媒体である。
【0115】
(応用例)
本実施形態の光伝送モジュール1は、例えば以下のような応用例に適用することが可能である。
【0116】
まず、第一の応用例として、折り畳み式携帯電話,折り畳み式PHS(Personal Handyphone System),折り畳み式PDA(Personal Digital Assistant),折り畳み式ノートパソコン等の折り畳み式の電子機器におけるヒンジ部に用いることができる。
【0117】
図24(a)〜図24(c)は、光導波路10を折り畳み式携帯電話40に適用した例を示している。すなわち、図24(a)は光導波路10を内蔵した折り畳み式携帯電話40の外観を示す斜視図である。
【0118】
図24(b)は、図24(a)に示した折り畳み式携帯電話40における、光導波路10が適用されている部分のブロック図である。この図に示すように、折り畳み式携帯電話40における本体40a側に設けられた制御部41と、本体の一端にヒンジ部を軸として回転可能に備えられる蓋(駆動部)40b側に設けられた外部メモリ42,カメラ部(デジタルカメラ)43,表示部(液晶ディスプレイ表示)44とが、それぞれ光伝送路4によって接続されている。
【0119】
図24(c)は、図24(a)におけるヒンジ部(破線で囲んだ部分)の透視平面図である。この図に示すように、光伝送路4は、ヒンジ部における支持棒に巻きつけて屈曲させることによって、本体側に設けられた制御部と、蓋側に設けられた外部メモリ42,カメラ部43,表示部44とをそれぞれ接続している。
【0120】
光導波路10を、これらの折り畳み式電子機器に適用することにより、限られた空間で高速、大容量の通信を実現できる。したがって、例えば、折り畳み式液晶表示装置などの、高速、大容量のデータ通信が必要であって、小型化が求められる機器に特に好適である。
【0121】
第2の応用例として、光導波路10は、印刷装置(電子機器)におけるプリンタヘッドやハードディスク記録再生装置における読み取り部など、駆動部を有する装置に適用できる。
【0122】
図25(a)〜図25(c)は、光導波路10を印刷装置50に適用した例を示している。図25(a)は、印刷装置50の外観を示す斜視図である。この図に示すように、印刷装置50は、用紙52の幅方向に移動しながら用紙52に対して印刷を行うプリンタヘッド51を備えており、このプリンタヘッド51に光導波路10の一端が接続されている。
【0123】
図25(b)は、印刷装置50における、光導波路10が適用されている部分のブロック図である。この図に示すように、光導波路10の一端部はプリンタヘッド51に接続されており、他端部は印刷装置50における本体側基板に接続されている。なお、この本体側基板には、印刷装置50の各部の動作を制御する制御手段などが備えられる。
【0124】
図25(c)および図25(d)は、印刷装置50においてプリンタヘッド51が移動(駆動)した場合の、光導波路10の湾曲状態を示す斜視図である。この図に示すように、光導波路10をプリンタヘッド51のような駆動部に適用する場合、プリンタヘッド51の駆動によって光伝送路4の湾曲状態が変化するとともに、光導波路10の各位置が繰り返し湾曲される。
【0125】
したがって、本実施形態にかかる光伝送モジュール1は、これらの駆動部に好適である。また、光伝送モジュール1をこれらの駆動部に適用することにより、駆動部を用いた高速、大容量通信を実現できる。
【0126】
図26は、光導波路10をハードディスク記録再生装置60に適用した例を示している。
【0127】
この図に示すように、ハードディスク記録再生装置60は、ディスク(ハードディスク)61、ヘッド(読み取り、書き込み用ヘッド)62、基板導入部63、駆動部(駆動モータ)64、光導波路10を備えている。
【0128】
駆動部64は、ヘッド62をディスク61の半径方向に沿って駆動させるものである。ヘッド62は、ディスク61上に記録された情報を読み取り、また、ディスク61上に情報を書き込むものである。なお、ヘッド62は、光導波路10を介して基板導入部63に接続されており、ディスク61から読み取った情報を光信号として基板導入部63に伝搬させ、また、基板導入部63から伝搬された、ディスク61に書き込む情報の光信号を受け取る。
【0129】
このように、光導波路10をハードディスク記録再生装置60におけるヘッド62のような駆動部に適用することにより、高速、大容量通信を実現できる。
【0130】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明に係る光伝送モジュールは、各種機器間の光通信路にも適用可能であるとともに、小型、薄型の民生機器内に搭載される機器内配線としてのフレキシブルな光配線にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】本発明の実施形態を示すものであり、光伝送モジュールの要部構成を示す断面図である。
【図2】(a)〜(c)は、図1に示された光導波路10の製造手順の一例を概略的に示した断面図である。
【図3】変形例としての光伝送モジュールの要部構成を示す断面図である。
【図4】図3に示された光伝送モジュールの他の変形例を示す断面図である。
【図5】さらに他の変形例としての光伝送モジュールの要部構成を示す断面図である。
【図6】(a)及び(b)は、図3に示された光導波路の製造手順の一例を模式的に示した断面図である。
【図7】(a)及び(b)は、図4、または図5に示された光導波路の製造手順の一例を模式的に示す断面図である。
【図8】さらに他の変形例としての光伝送モジュールの要部構成を示す断面図である。
【図9】図8に示された光導波路の製造手順の一例を模式的に示す断面図である。
【図10】さらに他の変形例としての光伝送モジュールの要部構成を示す断面図である。
【図11】図10に示された光導波路の製造手順の一例を模式的に示す断面図である。
【図12】さらに他の変形例としての光伝送モジュールの要部構成を示す断面図である。
【図13】さらに他の変形例としての光伝送モジュールの要部構成を示す断面図である。
【図14】(a)及び(b)はそれぞれ、図12に示された光導波路の製造手順の一例を模式的に示した断面図である。
【図15】(a)及び(b)はそれぞれ、図13に示された光導波路の製造手順の一例を模式的に示した断面図である。
【図16】さらに他の変形例としての光伝送モジュールの要部構成を示す断面図である。
【図17】図16に示された光導波路の製造手順の一例を模式的に示した断面図である。
【図18】さらに他の変形例としての光伝送モジュールの要部構成を示す断面図である。
【図19】(a)及び(b)はそれぞれ、図18に示された光導波路の製造手順の一例を模式的に示した断面図である。
【図20】(a)及び(b)はそれぞれ、保護層が上グラッド層上面に設けられた光導波路の製造手順の一例を模式的に示した断面図である。
【図21】(a)〜(c)は、「近接層」として光が透過可能な基板を適用した場合における、光導波路の製造手順を示した断面図である。
【図22】さらに他の変形例としての光伝送モジュールの要部構成を示す断面図である。
【図23】さらに他の変形例としての光伝送モジュールの要部構成を示す断面図である。
【図24】(a)は、本実施形態に係る光伝送路を備えた折り畳み式携帯電話の外観を示す斜視図であり、(b)は、(a)に示した折り畳み式携帯電話における、上記光伝送路が適用されている部分のブロック図であり、(c)は、(a)に示した折り畳み式携帯電話における、ヒンジ部の透視平面図である。
【図25】(a)は、本実施形態に係る光伝送路を備えた印刷装置の外観を示す斜視図であり、(b)は、(a)に示した印刷装置の主要部を示すブロック図であり、(c)および(d)は、印刷装置においてプリンタヘッドが移動(駆動)した場合の、光伝送路の湾曲状態を示す斜視図である。
【図26】本実施形態に係る光伝送路を備えたハードディスク記録再生装置の外観を示す斜視図である。
【図27】従来の光モジュールの要部構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0133】
1 光伝送モジュール
10 光導波路(光伝送路)
10A コア部
10B 上クラッド層
10C 下クラッド層
11 光学素子
12 接着層(樹脂層)
12’ 封止層(樹脂層)
13 電気回路基板
14 突出部
14a 傾斜面
14b 壁部
14c 凹部
16 保護層
θ 傾斜角度(光路変換ミラー面の傾斜角度)
φ 角度(突出部及び光路変換ミラー面により形成される所定の角度)
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号を伝送する光伝送モジュール、電子機器、及び光伝送モジュールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高速で大容量のデータ通信が可能な光通信網が拡大している。今後、この光通信網は民生機器への搭載が予想されている。そして、データ転送の高速大容量化、ノイズ対策、機器内の基板間をデータ伝送する用途として、現在の電気ケーブルと変わりなく使用することができる電気入出力の光データ伝送ケーブル(光ケーブル)が求められている。この光ケーブルとしては、フレキシブル性を考慮すると、フィルム光導波路を用いることが望ましい。
【0003】
光導波路とは、屈折率の大きいコアと、該コアの周囲に接して設けられる屈折率の小さいクラッドとにより形成され、コアに入射した光信号を該コアとクラッドとの境界で全反射を繰り返しながら伝搬するものである。また、フィルム光導波路は、コアおよびクラッドが柔軟な高分子材料からなるため柔軟性を有している。
【0004】
この柔軟性を有するフィルム光導波路が搭載された光伝送モジュールは、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1には、実装基板の端部が光を90度反射するミラーになっており、光の出射口が端部と面するように、面発光レーザが配置された光モジュールが配置された光モジュールが記載されている。そして、特許文献1の光モジュールでは、実装基板の内部に、実装基板の平面に沿って、先導波路(光導波路)が形成されている構成になっている。この構成により、光モジュールの小型化及び軽量化を図っている。
【0005】
また、従来、柔軟性を有するフィルム光導波路と光学素子とを光学接続する際、光学性能・信頼性性能を安定させるために、液状樹脂からなる接着剤が用いられている。この接着剤による光学接続は、特にフィルム光導波路において、光学部品との固定が図れるため、非常に有効な接続方法である。特許文献2には、光学素子と光導波路との隙間に屈折率の高い樹脂を充填し、この樹脂によって光導波路を接着固定する構成が開示されている。
【特許文献1】国際公開00/08505号パンフレット(平成12(2000)年 2月17日公開)
【特許文献2】特開2000−214351号公報(平成12(2000)年 8月 4日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2に開示された光モジュール実装構造(光伝送モジュール)では、光学素子と光導波路とを接着剤により光学接続するに際し、接着剤が光導波路のコア端部に回り込みが発生するという問題が生じる。
【0007】
図27に示されるように、従来の光伝送モジュールでは、光導波路110は、コア部110A、上クラッド層110B、及び下クラッド層110Cからなる積層構造になっている。そして、光路変換ミラー面110Dは、この積層構造を所定の傾斜角度で一括切断することにより形成されている。このため、下クラッド層110Cには、光路変換ミラー面110Dと同一となる傾斜面が形成され、光路変換ミラー面110Dが剥き出しになっている。それゆえ、光学素子111と光導波路110とを接着剤により光学接続するに際し、接着剤が光路変換ミラー面110Dへ這い上がりやすくなるという問題が生じる。
【0008】
そして、この這い上がった接着剤が硬化した接着層112により、光路変換ミラー面110Dにおける光の反射特性が劣化してしまう。
【0009】
さらに、この接着剤の光路変換ミラー面110Dへの這い上がりを防止するために、光学素子と光導波路とを光学接続する際に、接着剤塗布量を厳密に制御する必要があり、製造効率が低下する。さらには、接着剤の光路変換ミラー面110Dへの這い上がりにより製造工程の不良が発生し、歩留を悪化させるという問題が生じる。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、光学素子と光導波路とを光学接続する際に、接着剤の光路変換ミラー面への這い上がりを防止し、安定した光学特性が得られる光伝送モジュール、電子機器、及び光伝送モジュールの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る光伝送モジュールは、上記課題を解決するために、少なくとも、信号光を伝播するコア部と、コア部を囲う上クラッド層及び下クラッド層とを含む複数の層が積層された積層構造を有し、コア部の少なくとも一方の端部に、光反射により信号光の光路を変換する光路変換ミラー面が形成された光伝送路と、光路変換ミラー面により光路変換された信号光と光学的に結合する光学素子と、光伝送路と光学素子との間を充填する、液状樹脂の硬化物からなる樹脂層とを備えた光伝送モジュールであって、光伝送路における上記複数の層のうち樹脂層と接する近接層が、光路変換ミラー面よりも突出した突出部を有し、該突出部は、光路変換ミラー面と所定の角度を形成するように設けられていることを特徴としている。
【0012】
従来の光伝送モジュールにおいては、光伝送路における上記複数の層のうち樹脂層と接する近接層は、光路変換ミラー面よりも突出した突出部を有しているものの、この突出部は、光導波路を光路変換ミラー面の傾斜角度で切断した結果形成されたものである。すなわち、この突出部は、光路変換ミラー面と同一面となるように形成されており、光路変換ミラー面と所定の角度をなすように設けられていない。このため、光導波路と光学素子との間を液状樹脂により充填するに際し、液状樹脂がコア部の光路変換ミラー面へ這い上がりやすくなるという問題が生じる。
【0013】
これに対し、上記の構成では、光伝送路における上記複数の層のうち樹脂層と接する近接層が、光路変換ミラー面よりも突出した突出部を有し、該突出部は、光路変換ミラー面と所定の角度を形成するように設けられているので、光導波路と光学素子とを液状樹脂により充填するに際し、液状樹脂がコア部の光路変換ミラー面へ這い上がるのを防止することができる。その結果、液状樹脂の硬化物からなる樹脂層は、コア部の光路変換ミラー面に接触しなくなり、安定した光学特性が得られる。
【0014】
なお、上記「所定の角度」とは、突出部上面と光路変換ミラー面とにより形成された角度のことをいう。それゆえ、従来の光伝送モジュールのように、近接層に光路変換ミラー面と同一面となる斜面が形成された構成は、突出部上面と光路変換ミラー面とにより角度を成さない(この場合、「所定の角度」は180°になり、実質的に角度をなさないことになる)ので、本発明に係る光伝送モジュールに含まれない。
【0015】
それゆえ、上記「光路変換ミラー面よりも突出した突出部を有し、該突出部は、光路変換ミラー面と所定の角度を形成するように設けられている」ような構成とは、突出部上面と光路変換ミラー面とにより形成された角度が180°よりも小さくなるように形成された構成であるともいえる。
【0016】
また、本発明に係る光伝送モジュールは、上記光路変換ミラー面は、コア部の軸に対し傾斜して形成されており、突出部及び光路変換ミラー面により形成される上記所定の角度と、光路変換ミラー面の傾斜角度との合計が180°よりも大きくなっているとともに、上記突出部には、光路変換ミラー面側から突出部先端に渡って傾斜する傾斜面が形成されていることが好ましい。
【0017】
上記の構成では、突出部及び光路変換ミラー面により形成される上記所定の角度と、光路変換ミラー面の傾斜角度との合計が180°よりも大きくなっているとともに、上記突出部には、光路変換ミラー面側から突出部先端に渡って傾斜する傾斜面が形成されているので、光伝送路と光学素子との間を液状樹脂により充填するに際し、液状樹脂がコア部の光路変換ミラー面へ這い上がるのを防止することができる。
【0018】
また、本発明に係る光伝送モジュールは、上記光路変換ミラー面は、コア部の軸に対し傾斜して形成されており、突出部及び光路変換ミラー面により形成される上記所定の角度と、光路変換ミラー面の傾斜角度との合計が180°以下になっていることが好ましい。
【0019】
上記の構成では、突出部及び光路変換ミラー面により形成される上記所定の角度と、光路変換ミラー面の傾斜角度との合計が180°以下になっている、すなわち、突出部が樹脂層と反対側に折れ曲がった構成になっているので、光導波路と光学素子との間を液状樹脂により充填するに際し、液状樹脂がコア部の光路変換ミラー面へ這い上がるのをより確実に防止することができる。
【0020】
また、本発明に係る光伝送モジュールは、上記突出部に、樹脂層と反対側に延びる壁部が形成されていることが好ましい。
【0021】
上記の構成では、突出部に、樹脂層と反対側に延びる壁部が形成されているので、光伝送路と光学素子との間を液状樹脂により充填するに際し、液状樹脂がコア部の光路変換ミラー面へ這い上がるのをより確実に防止することができる。
【0022】
また、本発明に係る光伝送モジュールは、上記突出部の樹脂層と反対側の面に、凹部が形成されていることが好ましい。
【0023】
上記の構成において、突出部の樹脂層と反対側の面に形成された凹部は、光路変換ミラー面へ這い上がる液状樹脂を貯める役割がある。それゆえ、上記の構成によれば、光伝送路と光学素子との間を液状樹脂により充填するに際し、液状樹脂がコア部の光路変換ミラー面へ這い上がるのをより確実に防止することができる。
【0024】
また、本発明に係る光伝送モジュールは、上記突出部の樹脂層と反対側の面に、コア部と、コア部を囲う上クラッド層及び下クラッド層とを含む複数の層が積層されており、突出部に積層された複数の層の側面と光路変換ミラー面とにより、溝部が形成されていることが好ましい。
【0025】
上記の構成では、上記突出部の樹脂層と反対側の面に、コア部と、コア部を囲う上クラッド層及び下クラッド層とを含む複数の層が積層されているので、液状樹脂がコア部の光路変換ミラー面へ這い上がるのをより確実に防止することができる。
【0026】
さらに、突出部に積層された複数の層の側面と光路変換ミラー面とにより、溝部が形成されている構成になっているので、例えば、刃物切断により上面が露出した突出部を形成する場合と比較して、突出部の樹脂層と反対側の面に、コア部と、コア部を囲う上クラッド層及び下クラッド層とを含む複数の層を残存して製造することができるので、より簡潔な方法で、液状樹脂がコア部の光路変換ミラー面へ這い上がるのを防止する光伝送モジュールを製造できる。
【0027】
また、本発明に係る光伝送モジュールは、樹脂層と接する上記近接層が、下クラッド層になっている構成であってもよい。
【0028】
また、本発明に係る光伝送モジュールは、上記積層構造は、コア部と、コア部を囲う上クラッド層及び下クラッド層と、光伝送路を保護する保護層とを含む複数の層が積層された積層構造であって、樹脂層と接する上記近接層が、上記保護層になっている構成であってもよい。
【0029】
本発明に係る電子機器は、上述の光伝送モジュールを備えたことを特徴としている。
【0030】
これにより、光路変換ミラー面で安定した光学特性が得られる電子機器を提供することができる。
【0031】
本発明に係る光伝送モジュールの製造方法は、上記の課題を解決するために、少なくとも、信号光を伝播するコア部と、コア部を囲う上クラッド層及び下クラッド層とを含む複数の層が積層された積層構造を有し、コア部の少なくとも一方の端部に、光反射により信号光の光路を変換する光路変換ミラー面が形成された光伝送路と、光路変換ミラー面により光路変換された信号光と光学的に結合する光学素子とを液状樹脂からなる接着剤により接着する接着工程を含む光伝送モジュールの製造方法において、光伝送路における上記複数の層のうち上記接着剤と接触する近接層に、光路変換ミラー面よりも突出した突出部を形成し、この突出部が光路変換ミラー面と所定の角度を形成するようにする突出部形成工程を含むことを特徴としている。
【0032】
上記の構成によれば、突出部形成工程にて、光伝送路における上記複数の層のうち上記接着剤と接触する近接層に、光路変換ミラー面よりも突出した突出部を形成し、この突出部が光路変換ミラー面と所定の角度を形成するようにするので、光伝送路と光学素子とを液状樹脂からなる接着剤により接着する接着工程において、接着剤がコア部の光路変換ミラー面へ這い上がるのを防止することができる。
【0033】
本発明に係る光伝送モジュールの製造方法は、上記突出部形成工程は、上記積層構造を有する光伝送路端部を光路変換ミラー面の傾斜角度になるように斜め切断する第1の工程と、少なくとも、光路変換ミラー面が形成された時点で斜め切断を停止する第2の工程とを含むことが好ましい。
【0034】
本発明に係る光伝送モジュールの製造方法は、上記第2の工程では、斜め切断を停止した後、さらに、斜め切断を停止した切断停止位置を通過し、かつ、光路変換ミラー面の傾斜角度と異なる方向に、光伝送路端部を切断することが好ましい。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る光伝送モジュールは、以上のように、光伝送路における上記複数の層のうち樹脂層と接する近接層が、光路変換ミラー面よりも突出した突出部を有し、該突出部は、光路変換ミラー面と所定の角度を形成するように設けられている構成である。
【0036】
また、本発明に係る電子機器は、上記の光伝送モジュールを備えた構成である。
【0037】
さらに、本発明に係る光伝送モジュールの製造方法は、以上のように、光伝送路における上記複数の層のうち上記接着剤と接触する近接層に、光路変換ミラー面よりも突出した突出部を形成し、この突出部が光路変換ミラー面と所定の角度を形成するようにする突出部形成工程を含む構成である。
【0038】
これにより、光導波路と光学素子とを液状樹脂により充填するに際し、液状樹脂がコア部の光路変換ミラー面へ這い上がるのを防止することができる。その結果、液状樹脂の硬化物からなる樹脂層は、コア部の光路変換ミラー面に接触しなくなり、安定した光学特性が得られるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明の一実施形態について図面に基づいて説明すると以下の通りである。先ず、本実施の形態に係る光伝送モジュールの一構造例を図1を参照して説明する。
【0040】
図1に示す光伝送モジュール1は、その端部付近において、大略的に、光導波路10、光学素子11、及び電気回路基板13を備えて構成されている。光導波路10の端部では光導波路10と光学素子11との間に、液状樹脂の硬化物からなる接着層(樹脂層)12が形成されている。すなわち、光伝送モジュール1は、光導波路10と光学素子11とが、液状樹脂からなる接着剤(この接着剤の硬化物が接着層12となる)により接着された構成になっている。
【0041】
光導波路10は、コア部10A、上クラッド層10B、および下クラッド層10Cにより構成されている。すなわち、光導波路10は、上クラッド層10Bおよび下クラッド層10Cによってコア部10Aを挟み込む積層構造を有している。光導波路10によって伝達される光信号は、コア部10Aと上クラッド層10Bとの界面、またはコア部10Aと下クラッド層10Cとの界面で反射を受けながら、コア部10A内を進行する。尚、図1においては、光導波路10の端部付近において、光導波路10の長手方向(光軸方向)をX軸方向、コア部10A、上クラッド層10B、および下クラッド層10Cの積層方向をY軸方向とする。また、このY軸方向は、電気回路基板13における光導波路10の搭載面の法線方向とも一致する。
【0042】
光導波路10における端面は光軸(X軸)に対して垂直とならず、斜めに切断されて光路変換ミラー面10Dを形成する。具体的には、光導波路10の端面は、XY平面に対して垂直であり、かつ、X軸に対しては角度θ(θ<90°)をなすように傾斜されている。
【0043】
これにより、光導波路10における光の出射側では、コア部10Aを伝達する信号光は、光路変換ミラー面10Dにて反射して、その進行方向を変えて光路変換ミラー面10Dから光学素子11に向けて出射する。ここで、光導波路10における光の出射面(または入射面)は、光路変換ミラー面10Dが設けられていることによって下クラッド層10C(上クラッド層10Bでもよい)の外表面において存在し、光学素子11の受光面(または発光面)は、光導波路10における光の出射面(または入射面)と対向するように配置される。
【0044】
尚、光路変換ミラー面10Dの傾斜角度θは、該光路変換ミラー面10Dと光学素子11との位置合わせが容易となるように、通常は45°に設定されている。尚、光路変換ミラーは、光導波路10の端部に対してミラー部を外付けするものであってもよい。
【0045】
接着層12は光導波路10と光学素子11との隙間全体を充填しているものである。接着層12の役割は、光導波路10と光学素子11とを接着固定すること以外に、光学素子11を封止することによって、光学素子11を埃や湿気から守り、光ケーブルモジュール1の信頼性を高めることもある。また、接着層12は、光導波路10と光学素子11との間で伝達される光信号の拡散を防止し、光信号の拡散による光学的損失を抑制する作用もある。接着層12の材料としては、高い屈折率を有するエポキシ系、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系等の透明樹脂が好適に使用できる。また、接着層12の屈折率は、空気よりも屈折率の大きい材料であれば効果がある。
【0046】
また、電気回路基板13には、光導波路10の光路変換ミラー面10Dにて反射された光を光学素子11へ導くための光路孔13cが形成されている。電気回路基板13における面13aには、光学素子11が搭載されている。光学素子11は、バンプ15により電気回路基板13と電気的に接続している。電気回路基板13における、光学素子11が搭載される面13aと背向する面13bに光導波路10が搭載されている。
【0047】
本実施形態の光伝送モジュール1では、光導波路10の積層のうち、接着層12と接触する層、すなわち下クラッド層10Cが、光路変換ミラー面10Dよりも光軸方向に突出した突出部14を備え、突出部14は光路変換ミラー面10Dと角度φをなすように設けられている。そして、突出部14と光路変換ミラー面10Dとのなす角度φと光路変換ミラー面10Dの傾斜角度θとの合計が180°になっている(すなわち、突出部14が光路変換ミラー面10Dから水平方向(X方向)に突出している)。
【0048】
従来の光伝送モジュールにおいても、下クラッド層は、光路変換ミラー面よりも突出した突出部を有している。しかしながら、この突出部は、光導波路を光路変換ミラー面の傾斜角度で切断した結果形成されたものである。すなわち、この突出部は、光路変換ミラー面と同一面となるように形成されており、光路変換ミラー面と所定の角度をなすように設けられていない。このため、光導波路と光学素子とを液状樹脂からなる接着剤により接着するに際し、接着剤がコア部の光路変換ミラー面へ這い上がりやすくなるという問題が生じる。
【0049】
一方、本実施形態の光伝送モジュール1においては、光導波路10に突出部14が設けられているため、光導波路10と光学素子11とを液状樹脂からなる接着剤により接着するに際し、接着剤がコア部10Aの光路変換ミラー面10Dへ這い上がるのを防止することができる。その結果、接着剤の硬化物からなる接着層12は、コア部10Aの光路変換ミラー面10Dに接触しなくなり、安定した光学特性が得られる。
【0050】
図1に示す構成の光ケーブルモジュール1の製造手順としては、先ず、電気回路基板13における面13aの光路孔13c近傍に、バンプ15が形成された光学素子11を搭載する。そして、その上から液状樹脂からなる接着剤を、光路孔13cを充填するように流し込む。その後、電気回路基板13における面13b上に光導波路10を、光路変換ミラー面10Dが光路孔13cの真上になるように搭載する。これにより、光学素子11と光導波路10との間に液状樹脂からなる接着剤が充填され、両者が接着されることになる。そして、液状樹脂からなる接着剤を紫外線等により硬化することで、光学素子11と光導波路10との接着が固定される。
【0051】
本実施形態の光伝送モジュール1では、下クラッド層10Cが、光路変換ミラー面10Dよりも光軸方向に突出した突出部14を備え、突出部14は光路変換ミラー面10Dと角度φをなすように設けられているので、面13b上に光導波路10を搭載する際に、液状樹脂からなる接着剤が光路変換ミラー面10Dまで這い上がることを防止することが可能になる。
【0052】
以下、光伝送モジュール1において特徴的構成である、突出部14が光路変換ミラー面10Dと角度φをなすように設けられた光導波路10の製造手順の一例について、説明する。図2(a)〜(c)は、図1に示された光導波路10の製造手順の一例を概略的に示した断面図である。光導波路10は、大きく分けて、以下の2つの工程にて製造される。第1の工程は、コア部10Aとクラッド層(上クラッド層10B及び下クラッド層10C)との積層構造を形成した後、光路変換ミラー面10Dを形成する工程である。第2の工程は、突出部14を形成する工程である。
【0053】
第1の工程では、コア部10A、上クラッド層10B及び下クラッド層10Cの積層構造が形成された光導波路10を台上に固定し、台に対して傾斜した方向(傾斜角度θ)より切断刃(ブレード)を打ち下ろして刃物切断し、光導波路に切断端面を形成する(図2(a)参照)。
【0054】
第2の工程では、図2(b)に示されるように、上記の刃物切断によりコア部10Aが切断され光路変換ミラー面10Dが形成された時点で、刃物切断を停止する。そして、光路変換ミラー面10Dよりも端部側に残存しているコア部10A及び上クラッド層10Bを、下クラッド層10Cから引き剥がすことで、突出部14を形成することができる。
【0055】
第2の工程は、図2(c)に示された工程であってもよい。すなわち、上記の刃物切断によりコア部10Aが切断され光路変換ミラー面10Dが形成された時点で、切断角度(ブレード角度)を水平にして切断する。
【0056】
(変形例1)
本実施形態の光伝送モジュール1の構成において、図1に示す構成の変形例について説明する。図3は、この変形例1としての光伝送モジュール1の断面図を示している。
【0057】
図1に示す構成では、突出部14と光路変換ミラー面10Dとのなす角度φと光路変換ミラー面10Dの傾斜角度θとの合計が180°になっていたが、図3に示すように、角度φと光路変換ミラー面10Dの傾斜角度θとの合計が180°よりも大きくなった構成であってもよい。
【0058】
また、図3に示された光伝送モジュールでは、突出部14に、光路変換ミラー面10Dから先端側へ傾斜する傾斜面14aが形成されている。それゆえ、突出部14の先端部は、鋭角形状になっている。
【0059】
図6(a)及び(b)は、図3に示された形状の突出部14を有する光導波路の製造手順の一例を模式的に示した断面図である。図6(a)に示されるように、傾斜角度θよりブレードを打ち下ろして刃物切断し、切断端面を形成する。そして、ブレードが下クラッド層10Cに到達し、光路変換ミラー面10Dが形成された時点で、切断角度(ブレード角度)を変えながら切断することで、図3に示された形状の突出部14が形成される。
【0060】
また、図6(b)に示されるように、光路変換ミラー面10Dが形成された時点からさらに刃物切断を進めると、下グラッド層10Cの先端部が折れ曲がる。この先端部の折れ曲がりにより、ブレード角度を変えることなく、図3に示された形状の突出部14を形成することが可能になる。
【0061】
また、変形例1の構成としては、図3に示された構成の他に、図4に示された構成が挙げられる。図4に示される構成では、図3と同様に、角度φと光路変換ミラー面10Dの傾斜角度θとの合計が180°よりも大きくなっている。しかしながら、図3のように、突出部14の先端部は、鋭角形状になっていない。すなわち、図4に示された構成は、角度φと傾斜角度θとの合計が180°になっている突出部14が、上クラッド層10Bと反対側(光導波路10の接着面側)に折れ曲がった構造になっている。そして、電気回路基板13には、突出部14の折れ曲がり角度に傾斜した傾斜面13aが形成されている。
【0062】
(変形例2)
本実施形態の光伝送モジュール1の構成において、図1に示す構成のさらに他の変形例について説明する。図5は、この変形例2としての光伝送モジュール1の断面図を示している。
【0063】
図1に示す構成では、突出部14と光路変換ミラー面10Dとのなす角度φと光路変換ミラー面10Dの傾斜角度θとの合計が180°になっていたが、図5に示すように、角度φと光路変換ミラー面10Dの傾斜角度θとの合計が180°よりも小さくなった(突出部が上クラッド層10B側に折れ曲がった)構成であってもよい。
【0064】
このように、図5に示された構成では、突出部14が突出部が上クラッド層10B側に折れ曲がった構造になっているので、図1に示された構成と比較して、光導波路と光学素子とを液状樹脂からなる接着剤により接着するに際し、接着剤の光路変換ミラー面への這い上がりをより確実に防止することができる。
【0065】
ここで、変形例1の図4、または図5に示された突出部14を有する光導波路の製造手順の一例について、以下に説明する。図7(a)及び(b)は、変形例1の図4、または図5に示された突出部14を有する光導波路の製造手順の一例を模式的に示す断面図である。
【0066】
図7(a)に示されるように、まず、角度φと傾斜角度θとの合計が180°になっている突出部14を形成する。この形成方法は、図2(a)〜(c)に示された方法と同様である。図5に示された突出部14は、図7(b)に示されるように、図7(a)に示された突出部14を、上クラッド層10B側に折り曲げるか、熱収縮させることで形成される。また、変形例1の図4に示された突出部14は、図7(a)に示された突出部14を、上クラッド層10Bと反対側に折り曲げるか、熱収縮させることで形成される。
【0067】
(変形例3)
本実施形態の光伝送モジュール1の構成において、図1に示す構成のさらに他の変形例について説明する。図8は、この変形例3としての光伝送モジュール1の断面図を示している。
【0068】
図8に示された構成は、図1に示された突出部14の先端部に壁部14bが形成された構成になっている。壁部14bは、突出部14上面から、上クラッド層10B側へ垂直方向(Y方向)に延びるように形成されている。
【0069】
このように、図8に示された構成では、突出部14の先端部に壁部14bが形成されているので、図1に示された構成と比較して、光導波路と光学素子とを液状樹脂からなる接着剤により接着するに際し、接着剤の光路変換ミラー面への這い上がりをより確実に防止することができる。
【0070】
なお、図8に示された突出部14は、図9に示されるように、角度φと傾斜角度θとの合計が180°になっている突出部の先端部を上クラッド層10B側に折り曲げるか、熱収縮させることで形成される。
【0071】
(変形例4)
本実施形態の光伝送モジュール1の構成において、図1に示す構成のさらに他の変形例について説明する。図10は、この変形例4としての光伝送モジュール1の断面図を示している。
【0072】
図10に示された構成は、図1に示された突出部14上面に凹部14cが形成された構成になっている。この凹部14cは、光導波路と光学素子とを液状樹脂からなる接着剤により接着するに際し、突出部14上面に到達した接着剤を貯めるために設けられている。それゆえ、図1に示された構成と比較して、接着剤の光路変換ミラー面への這い上がりをより確実に防止することができる。
【0073】
なお、図10に示された突出部14の凹部14cは、角度φと傾斜角度θとの合計が180°になっている突出部上面に、エッチング、切削加工等を施すことにより形成される(図11参照)。
【0074】
図1〜図8に示された光伝送モジュールでは、下クラッド層10Cにおける突出部14が露出したような構成であった。しかしながら、本実施形態の光伝送モジュールは、このような構成に限定されるものではなく、突出部14が光路変換ミラー面10Dと角度φをなすように設けられている構成であればよい。例えば、下記変形例5及び6に記載するように、下クラッド層10Cにおける突出部14上面に複数の層が積層された構成であってもよい。
【0075】
(変形例5)
本実施形態の光伝送モジュール1の構成において、図1に示す構成のさらに他の変形例について説明する。図12及び13は、この変形例5としての光伝送モジュール1の断面図を示している。
【0076】
図12及び13に示された構成は、図1に示された突出部14上面に、コア部10A’、上クラッド層10B’がこの順に積層された構成になっている。
【0077】
このように図12及び13に示された構成では、光路変換ミラー面10Dよりも端部側にコア部10A’及び上クラッド層10B’が残存している構成になっているので、図1に示された構成と比較して、接着剤の光路変換ミラー面への這い上がりをより確実に防止することができる。
【0078】
次に、図12及び13に示された光導波路の製造手順について、図14(a)・(b)、及び図15(a)・(b)に基づいて説明する。図14(a)及び(b)はそれぞれ、図12に示された光導波路の製造手順の一例を模式的に示した断面図である。図15(a)及び(b)はそれぞれ、図13に示された光導波路の製造手順の一例を模式的に示した断面図である。
【0079】
図12に示された光導波路は、例えば図14(a)に示されるような方法で形成される。すなわち、上述した第1の工程における刃物切断(光路変換ミラー面10Dを形成するための刃物切断)を停止した後、第2の工程にて、第1の工程における刃物切断の傾斜角度(傾斜角度θ)とは異なる角度で、かつ切断停止位置Pを通過するように刃物切断する。そして、上記の2つの刃物切断により不要なコア部10A及び上クラッド層10Bを除去している。また、図13に示された光導波路は、例えば図15(a)に示されるように、第1の工程における第2の工程にて、切断停止位置Pを通過し、かつ垂直方向に刃物切断することにより形成される。それゆえ、図12及び図13に示されたコア部10A’及び上クラッド層10B’は、上記の2つの刃物切断の結果、光路変換ミラー面10Dよりも端部側に残存した層である。
【0080】
本変形例では、図1に示された構成と比較して、光路変換ミラー面10Dよりも端部側に残存しているコア部10A’及び上クラッド層10B’を除去する工程を必要としないので、突出部形成手順を簡略化できる。
【0081】
また、図12及び13に示された光導波路は、その端部に光路変換ミラー面10Dを含む溝部が形成された構成であるともいえる。この溝部の側壁面の一部として、光路変換ミラー面10Dが含まれている。コア部10A’及び上クラッド層10B’は、例えば図14(b)及び図15(b)に示される方法で形成されていてもよい。すなわち、溝部の側壁面に囲まれた形状にあうブレードを用いて形成することが可能である。「溝部の側壁面に囲まれた形状」とは、例えば図12に示された構成では、V形状であり、図13に示された構成では、レの字形状である。
【0082】
(変形例6)
本実施形態の光伝送モジュール1の構成において、図1に示す構成のさらに他の変形例について説明する。図16は、この変形例6としての光伝送モジュール1の断面図を示している。
【0083】
図16に示された構成は、図12及び13と同様に、図1に示された突出部14上面に、コア部10A’、上クラッド層10B’がこの順に積層された構成になっている。
【0084】
図16に示されたコア部10A’及び上クラッド層10B’は、上述した第1の工程における刃物切断(光路変換ミラー面10Dを形成するための刃物切断)を停止するのみで形成されている。すなわち、光路変換ミラー面10Dを形成するための刃物切断を切断停止位置Pで停止するのみで形成されている。さらに換言すると、図16に示された構成は、光路変換ミラー面10Dの傾斜角度θで傾斜した、ミラーカット溝が形成されている構成になっている。このような構成であっても、接着剤の光路変換ミラー面への這い上がりをより確実に防止することができる。
【0085】
次に、図16に示された光導波路の製造方法について、図17を参照して説明する。図17に示されるように、コア部10A、上クラッド層10B及び下クラッド層10Cの積層構造が形成された光導波路10を台上に固定し、台に対して傾斜した方向(傾斜角度θ)より切断刃(ブレード)を打ち下ろして刃物切断する(第1の工程)。そして、上記の刃物切断によりコア部10Aが切断され光路変換ミラー面10Dが形成された時点で、刃物切断を停止する。そして、光路変換ミラー面10Dよりも端部側のコア部10A’及び上クラッド層10B’をそのまま残す。
【0086】
このように、本変形例では、変形例5と比較して、コア部10A’及び上クラッド層10B’を、光路変換ミラー面10Dを形成するための刃物切断のみで形成でき、突出部形成手順を大幅に簡略化できる。
【0087】
なお、図16に示された構成では、切断停止位置Pが下クラッド層10C内部に位置しており、下クラッド層10C内部に光路変換ミラー面10Dと同一面を有する溝部が形成された構成になっている。このような場合、突出部14と光路変換ミラー面10Dとの成す角度φは、コア部軸方向断面において、突出部14のコア部10A’・上クラッド層10B’が積層される面(突出部14の上面)を延長させた線(図16の点線)と光路変換ミラー面10Dとのなす角度として規定される。
【0088】
図1〜図16に示された光伝送モジュールでは、下クラッド層10Cに突出部14が形成された構成であった。しかしながら、本実施形態の光伝送モジュールは、このような構成に限定されるものではなく、光導波路10における複数の層のうち接着層12と接する近接層が、光路変換ミラー面10Dよりも突出した突出部14を有する構成であればよい。
【0089】
(変形例7)
本実施形態の光伝送モジュール1の構成において、図1に示す構成のさらに他の変形例について説明する。図18は、この変形例7としての光伝送モジュール1の断面図を示している。
【0090】
図18に示される構成では、下クラッド層10Cのさらに接着層12側に、光導波路10を外部から保護する保護層16が設けられている。下クラッド層10Cは、傾斜面を有しており、この傾斜面は、光路変換ミラー面10Dと同一平面になっている。すなわち、コア部10A、上クラッド層10B及び下クラッド層10Cの積層構造のうち、下クラッド層10Cに対しても、光路変換ミラー面10Dを形成するための刃物切断がなされている。
【0091】
そして、保護層16は、光路変換ミラー面10Dよりも光軸方向に突出した突出部14を備え、突出部14は光路変換ミラー面10Dと角度φをなすように設けられている。これにより、光導波路を搭載する際に、液状樹脂からなる接着剤が光路変換ミラー面10Dまで這い上がることを防止することが可能になる。
【0092】
図19(a)は、図18に示された光導波路の製造手順の一例を模式的に示す断面図である。この製造手順では、まず、上から上クラッド層10B、コア部10A、下クラッド層10C、保護層16がこの順に積層された積層構造を形成する。そして、図19(a)に示されるように、この積層構造に対し傾斜角度θよりブレードを打ち下ろして刃物切断し、切断端面を形成する。そして、ブレードが保護層16に到達し、光路変換ミラー面10Dと同一面になった下グラッド層10C端面が形成された時点で、切断角度(ブレード角度)を変えて切断する。これらの手順により、図18に示された形状の突出部14が形成される。
【0093】
また、図18に示された光導波路の製造手順の他の例としては、図19(b)に示される手順が挙げられる。すなわち、同図に示されるように、下グラッド層10C端面が形成された時点からさらに刃物切断を進めると、保護層16の先端部が折れ曲がる。この先端部の折れ曲がりにより、ブレード角度を変えることなく、図18に示された形状の突出部14を形成することが可能になる。
【0094】
なお、図18に示された構成は、保護層16は、下クラッド層10Cのさらに接着層12側に設けられていたが、この保護層16は、上クラッド層10Bの上面に設けられていてもよい。この場合、下クラッド層10Cに突出部14が形成されている。
【0095】
図20(a)は、保護層16が上グラッド層10B上面に設けられた光導波路の製造手順の一例を模式的に示した断面図である。この製造手順では、まず、上から保護層16、上クラッド層10B、コア部10A、下クラッド層10Cがこの順に積層された積層構造を形成する。そして、図20(a)に示されるように、この積層構造に対し傾斜角度θよりブレードを打ち下ろして刃物切断し、切断端面を形成する。そして、ブレードが下グラッド層10Cに到達し、コア部10Aに光路変換ミラー面10Dが形成された時点で、切断角度(ブレード角度)を変えながら切断する。
【0096】
また、図20(b)に示されるように、光路変換ミラー面10Dが形成された時点からさらに刃物切断を進めると、下クラッド層10Cの先端部が折れ曲がる。この先端部の折れ曲がりにより、ブレード角度を変えることなく、突出部を形成することが可能になる。
【0097】
また、この変形例では、光導波路における接着層と近接する近接層として光導波路を保護する保護層16を適用した構成であったが、近接層は、保護層に限定されず、光が透過可能な基板であってもよい。
【0098】
上記「近接層」として光が透過可能な基板17を適用した場合、光導波路の製造手順としては、図21(a)〜(c)に示された3通りの方法が挙げられる。
【0099】
図21(a)に示された製造手順では、まず、上クラッド層10B、コア部10A、及び下クラッド層10Cの端面が光路変換ミラー面と同一になった光導波路を、刃物切断により製造する。そして、接着剤を用いて、製造された光導波路を基板17に貼り合わせる。
【0100】
また、図21(b)に示された製造手順では、まず、基板17上に、下クラッド層10Cコア部10A、上クラッド層10Bをこの順に積層する。そして、この積層構造に対し刃物切断を行い、切断端面を形成する。そして、ブレードが基板17に到達し、光路変換ミラー面10Dが形成された時点で、切断角度(ブレード角度)を変えて切断する。
【0101】
さらに、図21(c)に示された製造手順では、ブレードが基板17に到達し、光路変換ミラー面10Dが形成された時点で、余分な積層を引き剥がしている。
【0102】
(変形例8)
図1〜図18に示された光伝送モジュールでは、光学素子11と光導波路10との間を充填する樹脂層として、液状樹脂からなる接着剤が硬化した接着層12を適用していたが、樹脂層としては、接着層12に限定されず、例えば光学素子11を封止する封止樹脂からなっていてもよい。図22は、樹脂層として光学素子11を封止する封止樹脂を適用した場合の光伝送モジュール1の断面図を示している。
【0103】
図22に示されるように、光伝送モジュール1は、その光入射側もしくは光出射側端部において、光導波路10を支持する支持基板103を備えている。そして、光導波路10は、その端部付近において支持基板103に対して接着等によって固定されており、光導波路101の端部と光学素子11との相対的な位置関係は固定された状態にある。支持基板103は、光学素子11の搭載面と光導波路10の固定面(接着面)とが異なる面となるような段差を有している。
【0104】
そして、光学素子11と光導波路10との間には、液状の封止樹脂の硬化物からなる封止層12’が設けられている。封止層12’は、少なくとも下クラッド層10C下面に接するように設けられている。
【0105】
このような構成であっても、光導波路10を支持基板103に搭載した後光学素子11を封止樹脂で封止するに際し、封止樹脂の光路変換ミラー面への這い上がりを防止することができる。
【0106】
なお、図22に示された構成では、支持基板103が光導波路10を1点で支持する構成であったが、この構成に限定されず、支持基板103が光導波路10を複数の点で支持する構成であってもよい。
【0107】
(光学素子について)
本実施形態の光伝送モジュール1における光学素子11は、光路変換ミラー面10Dにより光路変換された光と光学的に結合することが可能な光学部材であれば、特に限定されるものではない。
【0108】
光学素子11に適用可能な光学部材としては、例えば、レーザダイオード等の発光素子(発光機能を備えた光素子)、フォトダイオード等の受光素子(受光機能を備えた光素子)、光導波路、光ファイバ、レンズ等の集光部材、光路変換ミラー面10Dにより光路変換された光をさらに光路変換するミラー、プリズム、回折格子、光透過が可能な基板、光路変換ミラー面10Dにより光路変換された光を通過する光路孔が形成された基板、または、光路孔に光透過が可能な部材が埋め込まれた基板等が挙げられる。
【0109】
光伝送モジュール1は、光伝送路である光導波路10の両端に、光学素子11として受光素子および発光素子を備えることで、光伝送モジュールとして機能できる。図23は、本実施形態に係る光伝送モジュール1の概略構成を示している。同図に示すように、光伝送モジュール1は、光送信処理部2、光受信処理部3、および光導波路10を備えている。
【0110】
光送信処理部2は、発光駆動部5および発光部6を備えた構成となっている。発光駆動部5は、外部から入力された電気信号に基づいて発光部6の発光を駆動する。この発光駆動部5は、例えば発光駆動用のIC(Integrated Circuit)によって構成される。なお、図示はしていないが、発光駆動部5には、外部からの電気信号を伝送する電気配線との電気接続部が設けられている。
【0111】
発光部6は、発光駆動部5による駆動制御に基づいて発光する。この発光部6は、例えばVCSEL(Vertical Cavity-Surface Emitting Laser)などの発光素子によって構成される。発光部6から発せられた光は、光信号として光導波路10の光入射側端部に照射される。
【0112】
光受信処理部3は、増幅部7および受光部8を備えた構成となっている。受光部8は、光伝送路4の光出射側端部から出射された光信号としての光を受光し、光電変換によって電気信号を出力する。この受光部8は、例えばPD(Photo-Diode)などの受光素子によって構成される。
【0113】
増幅部7は、受光部8から出力された電気信号を増幅して外部に出力する。この増幅部7は、例えば増幅用のICによって構成される。なお、図示はしていないが、増幅部7には、外部へ電気信号を伝送する電気配線との電気接続部が設けられている。
【0114】
光導波路10は、上述したように発光部6から出射された光を受光部8まで伝送する媒体である。
【0115】
(応用例)
本実施形態の光伝送モジュール1は、例えば以下のような応用例に適用することが可能である。
【0116】
まず、第一の応用例として、折り畳み式携帯電話,折り畳み式PHS(Personal Handyphone System),折り畳み式PDA(Personal Digital Assistant),折り畳み式ノートパソコン等の折り畳み式の電子機器におけるヒンジ部に用いることができる。
【0117】
図24(a)〜図24(c)は、光導波路10を折り畳み式携帯電話40に適用した例を示している。すなわち、図24(a)は光導波路10を内蔵した折り畳み式携帯電話40の外観を示す斜視図である。
【0118】
図24(b)は、図24(a)に示した折り畳み式携帯電話40における、光導波路10が適用されている部分のブロック図である。この図に示すように、折り畳み式携帯電話40における本体40a側に設けられた制御部41と、本体の一端にヒンジ部を軸として回転可能に備えられる蓋(駆動部)40b側に設けられた外部メモリ42,カメラ部(デジタルカメラ)43,表示部(液晶ディスプレイ表示)44とが、それぞれ光伝送路4によって接続されている。
【0119】
図24(c)は、図24(a)におけるヒンジ部(破線で囲んだ部分)の透視平面図である。この図に示すように、光伝送路4は、ヒンジ部における支持棒に巻きつけて屈曲させることによって、本体側に設けられた制御部と、蓋側に設けられた外部メモリ42,カメラ部43,表示部44とをそれぞれ接続している。
【0120】
光導波路10を、これらの折り畳み式電子機器に適用することにより、限られた空間で高速、大容量の通信を実現できる。したがって、例えば、折り畳み式液晶表示装置などの、高速、大容量のデータ通信が必要であって、小型化が求められる機器に特に好適である。
【0121】
第2の応用例として、光導波路10は、印刷装置(電子機器)におけるプリンタヘッドやハードディスク記録再生装置における読み取り部など、駆動部を有する装置に適用できる。
【0122】
図25(a)〜図25(c)は、光導波路10を印刷装置50に適用した例を示している。図25(a)は、印刷装置50の外観を示す斜視図である。この図に示すように、印刷装置50は、用紙52の幅方向に移動しながら用紙52に対して印刷を行うプリンタヘッド51を備えており、このプリンタヘッド51に光導波路10の一端が接続されている。
【0123】
図25(b)は、印刷装置50における、光導波路10が適用されている部分のブロック図である。この図に示すように、光導波路10の一端部はプリンタヘッド51に接続されており、他端部は印刷装置50における本体側基板に接続されている。なお、この本体側基板には、印刷装置50の各部の動作を制御する制御手段などが備えられる。
【0124】
図25(c)および図25(d)は、印刷装置50においてプリンタヘッド51が移動(駆動)した場合の、光導波路10の湾曲状態を示す斜視図である。この図に示すように、光導波路10をプリンタヘッド51のような駆動部に適用する場合、プリンタヘッド51の駆動によって光伝送路4の湾曲状態が変化するとともに、光導波路10の各位置が繰り返し湾曲される。
【0125】
したがって、本実施形態にかかる光伝送モジュール1は、これらの駆動部に好適である。また、光伝送モジュール1をこれらの駆動部に適用することにより、駆動部を用いた高速、大容量通信を実現できる。
【0126】
図26は、光導波路10をハードディスク記録再生装置60に適用した例を示している。
【0127】
この図に示すように、ハードディスク記録再生装置60は、ディスク(ハードディスク)61、ヘッド(読み取り、書き込み用ヘッド)62、基板導入部63、駆動部(駆動モータ)64、光導波路10を備えている。
【0128】
駆動部64は、ヘッド62をディスク61の半径方向に沿って駆動させるものである。ヘッド62は、ディスク61上に記録された情報を読み取り、また、ディスク61上に情報を書き込むものである。なお、ヘッド62は、光導波路10を介して基板導入部63に接続されており、ディスク61から読み取った情報を光信号として基板導入部63に伝搬させ、また、基板導入部63から伝搬された、ディスク61に書き込む情報の光信号を受け取る。
【0129】
このように、光導波路10をハードディスク記録再生装置60におけるヘッド62のような駆動部に適用することにより、高速、大容量通信を実現できる。
【0130】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明に係る光伝送モジュールは、各種機器間の光通信路にも適用可能であるとともに、小型、薄型の民生機器内に搭載される機器内配線としてのフレキシブルな光配線にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】本発明の実施形態を示すものであり、光伝送モジュールの要部構成を示す断面図である。
【図2】(a)〜(c)は、図1に示された光導波路10の製造手順の一例を概略的に示した断面図である。
【図3】変形例としての光伝送モジュールの要部構成を示す断面図である。
【図4】図3に示された光伝送モジュールの他の変形例を示す断面図である。
【図5】さらに他の変形例としての光伝送モジュールの要部構成を示す断面図である。
【図6】(a)及び(b)は、図3に示された光導波路の製造手順の一例を模式的に示した断面図である。
【図7】(a)及び(b)は、図4、または図5に示された光導波路の製造手順の一例を模式的に示す断面図である。
【図8】さらに他の変形例としての光伝送モジュールの要部構成を示す断面図である。
【図9】図8に示された光導波路の製造手順の一例を模式的に示す断面図である。
【図10】さらに他の変形例としての光伝送モジュールの要部構成を示す断面図である。
【図11】図10に示された光導波路の製造手順の一例を模式的に示す断面図である。
【図12】さらに他の変形例としての光伝送モジュールの要部構成を示す断面図である。
【図13】さらに他の変形例としての光伝送モジュールの要部構成を示す断面図である。
【図14】(a)及び(b)はそれぞれ、図12に示された光導波路の製造手順の一例を模式的に示した断面図である。
【図15】(a)及び(b)はそれぞれ、図13に示された光導波路の製造手順の一例を模式的に示した断面図である。
【図16】さらに他の変形例としての光伝送モジュールの要部構成を示す断面図である。
【図17】図16に示された光導波路の製造手順の一例を模式的に示した断面図である。
【図18】さらに他の変形例としての光伝送モジュールの要部構成を示す断面図である。
【図19】(a)及び(b)はそれぞれ、図18に示された光導波路の製造手順の一例を模式的に示した断面図である。
【図20】(a)及び(b)はそれぞれ、保護層が上グラッド層上面に設けられた光導波路の製造手順の一例を模式的に示した断面図である。
【図21】(a)〜(c)は、「近接層」として光が透過可能な基板を適用した場合における、光導波路の製造手順を示した断面図である。
【図22】さらに他の変形例としての光伝送モジュールの要部構成を示す断面図である。
【図23】さらに他の変形例としての光伝送モジュールの要部構成を示す断面図である。
【図24】(a)は、本実施形態に係る光伝送路を備えた折り畳み式携帯電話の外観を示す斜視図であり、(b)は、(a)に示した折り畳み式携帯電話における、上記光伝送路が適用されている部分のブロック図であり、(c)は、(a)に示した折り畳み式携帯電話における、ヒンジ部の透視平面図である。
【図25】(a)は、本実施形態に係る光伝送路を備えた印刷装置の外観を示す斜視図であり、(b)は、(a)に示した印刷装置の主要部を示すブロック図であり、(c)および(d)は、印刷装置においてプリンタヘッドが移動(駆動)した場合の、光伝送路の湾曲状態を示す斜視図である。
【図26】本実施形態に係る光伝送路を備えたハードディスク記録再生装置の外観を示す斜視図である。
【図27】従来の光モジュールの要部構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0133】
1 光伝送モジュール
10 光導波路(光伝送路)
10A コア部
10B 上クラッド層
10C 下クラッド層
11 光学素子
12 接着層(樹脂層)
12’ 封止層(樹脂層)
13 電気回路基板
14 突出部
14a 傾斜面
14b 壁部
14c 凹部
16 保護層
θ 傾斜角度(光路変換ミラー面の傾斜角度)
φ 角度(突出部及び光路変換ミラー面により形成される所定の角度)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、信号光を伝播するコア部と、コア部を囲う上クラッド層及び下クラッド層とを含む複数の層が積層された積層構造を有し、コア部の少なくとも一方の端部に、光反射により信号光の光路を変換する光路変換ミラー面が形成された光伝送路と、
光路変換ミラー面により光路変換された信号光と光学的に結合する光学素子と、
光伝送路と光学素子との間を充填する、液状樹脂の硬化物からなる樹脂層とを備えた光伝送モジュールであって、
光伝送路における上記複数の層のうち樹脂層と接する近接層が、光路変換ミラー面よりも突出した突出部を有し、該突出部は、光路変換ミラー面と所定の角度を形成するように設けられていることを特徴とする光伝送モジュール。
【請求項2】
上記光路変換ミラー面は、コア部の軸に対し傾斜して形成されており、
突出部及び光路変換ミラー面により形成される上記所定の角度と、光路変換ミラー面の傾斜角度との合計が180°よりも大きくなっているとともに、
上記突出部には、光路変換ミラー面側から突出部先端に渡って傾斜する傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光伝送モジュール。
【請求項3】
上記光路変換ミラー面は、コア部の軸に対し傾斜して形成されており、
突出部及び光路変換ミラー面により形成される上記所定の角度と、光路変換ミラー面の傾斜角度との合計が180°以下になっていることを特徴とする請求項1に記載の光伝送モジュール。
【請求項4】
上記突出部に、樹脂層と反対側に延びる壁部が形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の光伝送モジュール。
【請求項5】
上記突出部の樹脂層と反対側の面に、凹部が形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の光伝送モジュール。
【請求項6】
上記突出部の樹脂層と反対側の面に、コア部と、コア部を囲う上クラッド層及び下クラッド層とを含む複数の層が積層されており、
突出部に積層された複数の層の側面と光路変換ミラー面とにより、溝部が形成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の光伝送モジュール。
【請求項7】
樹脂層と接する上記近接層が、下クラッド層になっていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の光伝送モジュール。
【請求項8】
上記積層構造は、コア部と、コア部を囲う上クラッド層及び下クラッド層と、光伝送路を保護する保護層とを含む複数の層が積層された積層構造であって、
樹脂層と接する上記近接層が、上記保護層になっていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の光伝送モジュール。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項に記載の光伝送モジュールを備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項10】
少なくとも、信号光を伝播するコア部と、コア部を囲う上クラッド層及び下クラッド層とを含む複数の層が積層された積層構造を有し、コア部の少なくとも一方の端部に、光反射により信号光の光路を変換する光路変換ミラー面が形成された光伝送路と、
光路変換ミラー面により光路変換された信号光と光学的に結合する光学素子とを液状樹脂からなる接着剤により接着する接着工程を含む光伝送モジュールの製造方法において、
光伝送路における上記複数の層のうち上記接着剤と接触する近接層に、光路変換ミラー面よりも突出した突出部を形成し、この突出部が光路変換ミラー面と所定の角度を形成するようにする突出部形成工程を含むことを特徴とする光伝送モジュールの製造方法。
【請求項11】
上記突出部形成工程は、
上記積層構造を有する光伝送路端部を光路変換ミラー面の傾斜角度になるように斜め切断する第1の工程と、
少なくとも、光路変換ミラー面が形成された時点で斜め切断を停止する第2の工程とを含むことを特徴とする請求項10に記載の光伝送モジュールの製造方法。
【請求項12】
上記第2の工程では、斜め切断を停止した後、さらに、斜め切断を停止した切断停止位置を通過し、かつ、光路変換ミラー面の傾斜角度と異なる方向に、光伝送路端部を切断することを特徴とする請求項11に記載の光伝送モジュールの製造方法。
【請求項1】
少なくとも、信号光を伝播するコア部と、コア部を囲う上クラッド層及び下クラッド層とを含む複数の層が積層された積層構造を有し、コア部の少なくとも一方の端部に、光反射により信号光の光路を変換する光路変換ミラー面が形成された光伝送路と、
光路変換ミラー面により光路変換された信号光と光学的に結合する光学素子と、
光伝送路と光学素子との間を充填する、液状樹脂の硬化物からなる樹脂層とを備えた光伝送モジュールであって、
光伝送路における上記複数の層のうち樹脂層と接する近接層が、光路変換ミラー面よりも突出した突出部を有し、該突出部は、光路変換ミラー面と所定の角度を形成するように設けられていることを特徴とする光伝送モジュール。
【請求項2】
上記光路変換ミラー面は、コア部の軸に対し傾斜して形成されており、
突出部及び光路変換ミラー面により形成される上記所定の角度と、光路変換ミラー面の傾斜角度との合計が180°よりも大きくなっているとともに、
上記突出部には、光路変換ミラー面側から突出部先端に渡って傾斜する傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光伝送モジュール。
【請求項3】
上記光路変換ミラー面は、コア部の軸に対し傾斜して形成されており、
突出部及び光路変換ミラー面により形成される上記所定の角度と、光路変換ミラー面の傾斜角度との合計が180°以下になっていることを特徴とする請求項1に記載の光伝送モジュール。
【請求項4】
上記突出部に、樹脂層と反対側に延びる壁部が形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の光伝送モジュール。
【請求項5】
上記突出部の樹脂層と反対側の面に、凹部が形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の光伝送モジュール。
【請求項6】
上記突出部の樹脂層と反対側の面に、コア部と、コア部を囲う上クラッド層及び下クラッド層とを含む複数の層が積層されており、
突出部に積層された複数の層の側面と光路変換ミラー面とにより、溝部が形成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の光伝送モジュール。
【請求項7】
樹脂層と接する上記近接層が、下クラッド層になっていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の光伝送モジュール。
【請求項8】
上記積層構造は、コア部と、コア部を囲う上クラッド層及び下クラッド層と、光伝送路を保護する保護層とを含む複数の層が積層された積層構造であって、
樹脂層と接する上記近接層が、上記保護層になっていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の光伝送モジュール。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項に記載の光伝送モジュールを備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項10】
少なくとも、信号光を伝播するコア部と、コア部を囲う上クラッド層及び下クラッド層とを含む複数の層が積層された積層構造を有し、コア部の少なくとも一方の端部に、光反射により信号光の光路を変換する光路変換ミラー面が形成された光伝送路と、
光路変換ミラー面により光路変換された信号光と光学的に結合する光学素子とを液状樹脂からなる接着剤により接着する接着工程を含む光伝送モジュールの製造方法において、
光伝送路における上記複数の層のうち上記接着剤と接触する近接層に、光路変換ミラー面よりも突出した突出部を形成し、この突出部が光路変換ミラー面と所定の角度を形成するようにする突出部形成工程を含むことを特徴とする光伝送モジュールの製造方法。
【請求項11】
上記突出部形成工程は、
上記積層構造を有する光伝送路端部を光路変換ミラー面の傾斜角度になるように斜め切断する第1の工程と、
少なくとも、光路変換ミラー面が形成された時点で斜め切断を停止する第2の工程とを含むことを特徴とする請求項10に記載の光伝送モジュールの製造方法。
【請求項12】
上記第2の工程では、斜め切断を停止した後、さらに、斜め切断を停止した切断停止位置を通過し、かつ、光路変換ミラー面の傾斜角度と異なる方向に、光伝送路端部を切断することを特徴とする請求項11に記載の光伝送モジュールの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2008−176071(P2008−176071A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−9572(P2007−9572)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
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