説明

光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた光半導体装置

【課題】良好な透明性はもちろん、リードフレーム等の金属部材に対する高い接着力を備えた光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記の(A)〜(D)成分を含有し、かつ上記(D)成分の含有割合が、エポキシ樹脂組成物全体の0.1〜2.5重量%の範囲に設定されている光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物である。(A)複素環式エポキシ樹脂および特定の脂環式エポキシ樹脂の少なくとも一方。(B)硬化剤。(C)シランカップリング剤。(D)ポリエチレン構造単位およびポリエチレンオキシド構造単位を有する分子構造を備えた離型剤であって、下記構造式(3)で表される構造単位の占める割合が、離型剤を構成する分子構造全体の25〜95重量%に設定されてなる離型剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種光半導体素子の封止に用いられる光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物およびそれを用いて光半導体素子を封止してなる光半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、受光素子および発光素子等の光半導体素子の封止材料としては、透明性、耐湿性および耐熱性に優れていなければならないという観点から、エポキシ樹脂組成物が用いられている。そして、従来から用いられているエポキシ樹脂組成物は、透明性には優れ、光半導体素子を設置した成形金型中にてエポキシ樹脂組成物を成形、例えば、トランスファー成形し光半導体素子を樹脂封止して光半導体装置を作製する。
【0003】
このような光半導体素子を封止する際に用いられる封止用エポキシ樹脂組成物としては、一般に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と、硬化剤に酸無水物とを用いて得られるエポキシ樹脂組成物が汎用されている。
【0004】
現在、青色LED(発光ダイオード)等の短波長領域の光半導体素子を使用している光半導体装置を作製する際、その耐熱性、耐光性の観点から、エポキシ樹脂として短波長での吸収をより小さくするために脂環式エポキシ樹脂、もしくはトリグリシジルイソシアヌレート等の複素環式エポキシ樹脂が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−224305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、脂環式エポキシ樹脂、もしくはトリグリシジルイソシアヌレート等の複素環式エポキシ樹脂を有するエポキシ樹脂組成物を光半導体素子封止用材料として用いてなる光半導体装置は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物を封止材料として用いた場合に比べて、リードフレームに対する接着力が極端に低い値を示す。このため、耐湿信頼性試験,耐熱温度サイクル性試験等の信頼性試験において、悪影響を及ぼすという問題が生じる。また、通常、リードフレーム等の金属部材との接着力を向上させるために、メルカプト基,エポキシ基,アミノ基を有するシランカップリング剤を用いる手法が一般に採られているが、上記脂環式エポキシ樹脂やトリグリシジルイソシアヌレート等の複素環式エポキシ樹脂を有するエポキシ樹脂組成物系では期待できるような効果を発揮しないのが実情である。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、良好な透明性はもちろん、リードフレーム等の金属部材に対する高い接着力を備えた光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた、高い信頼性を備えた光半導体装置の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、下記の(A)〜(D)成分を含有してなる光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物であって、上記(D)成分の含有割合が、エポキシ樹脂組成物全体の0.1〜2.5重量%の範囲に設定されている光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物を第1の要旨とする。
【0008】
(A)複素環式エポキシ樹脂および下記一般式(1)で表される脂環式エポキシ樹脂の少なくとも一方。
【化1】

(B)硬化剤。
(C)シランカップリング剤。
(D)下記の構造式(2)で表される構造単位および構造式(3)で表される構造単位を有する分子構造を備えた離型剤であって、上記構造式(3)で表される構造単位の占める割合が、離型剤を構成する分子構造全体の25〜95重量%に設定されてなる離型剤。
【化2】

【化3】

【0009】
また、本発明は、上記光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物を用いて光半導体素子を樹脂封止してなる光半導体装置を第2の要旨とする。
【0010】
すなわち、本発明者らは、優れた透明性とともに、リードフレーム等の金属部材に対して高い接着力を備えた光半導体素子の封止材料を得るべく鋭意検討を重ねた。そして、前述の脂環式エポキシ樹脂やトリグリシジルイソシアヌレート等の複素環式エポキシ樹脂を有するエポキシ樹脂組成物を用いた際の接着力の低下を補うべく、エポキシ樹脂成分以外の他の配合成分を中心に研究を重ねた。そして、通常、上記脂環式エポキシ樹脂や複素環式エポキシ樹脂とともに配合される離型剤に着目し、この離型剤として前記特定の分子構造を有する化合物を用い、これとともに前記シランカップリング剤を用いると、上記特定の離型剤とともにシランカップリング剤が樹脂表面にブリードするという作用を奏し、優れた透明性に加えて金属部材に対する接着力の向上が実現することを見出し本発明に到達した。
【発明の効果】
【0011】
このように、本発明は、シランカップリング剤〔(C)成分〕とともに前記特定の離型剤〔(D)成分〕を特定の割合で含有する光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物である。このため、優れた耐熱性,耐光性とともに高い光透過性を備え、しかもリードフレーム等の金属部材に対する優れた接着性の向上が実現する。したがって、上記エポキシ樹脂組成物によって光半導体素子を封止することにより、信頼性の高い光半導体装置が得られることとなる。
【0012】
そして、上記(D)成分である特定の離型剤の含有量が、エポキシ樹脂組成物全体の0.1〜2.5重量%の範囲に設定されるため、初期透過率,耐熱性,耐光性およびガラス転移温度の低下を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物(以下、単に「エポキシ樹脂組成物」という)は、特定のエポキシ樹脂(A成分)と、硬化剤(B成分)と、特定のシランカップリング剤(C成分)と、特定の離型剤(D成分)とを用いて得られるものであり、通常、液状、あるいは粉末状、もしくはその粉末を打錠したタブレット状にして封止材料に供される。
【0014】
上記特定のエポキシ樹脂(A成分)は、複素環式エポキシ樹脂、下記一般式(1)で表される脂環式エポキシ樹脂である。これらは単独で用いてもよいし併用してもよい。上記複素環式エポキシ樹脂としては、具体的には、トリグリシジルイソシアヌレート等があげられる。
【0015】
【化4】

【0016】
そして、上記特定のエポキシ樹脂(A成分)のなかでも、耐熱性、短波長領域の吸収がより低い複素環式エポキシ樹脂、例えば、トリグリシジルイソシアヌレートを用いることが好ましい。
【0017】
さらに、エポキシ樹脂成分として、一般的に使用されているクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂等の水添型エポキシ樹脂、上記以外の脂環式エポキシ樹脂等の各種エポキシ樹脂を併用してもよい。これら各種エポキシ樹脂を併用する場合は、エポキシ樹脂成分全体の5重量%以下となるように設定することが好ましい。
【0018】
上記A成分とともに用いられる硬化剤(B成分)としては、エポキシ樹脂組成物の硬化体が変色しにくいという点から、特に酸無水物系硬化剤を用いることが好ましい。例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタン酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等の無色ないし淡黄色の酸無水物があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これら酸無水物系硬化剤のなかでも、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸を用いることが好ましい。そして、上記酸無水物系硬化剤のなかでも、短波長領域の吸収がより低いヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸を用いることが好ましい。
【0019】
さらに、上記酸無水物系硬化剤以外に、上記酸無水物系硬化剤をグリコール類でエステル化したもの、または、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボン酸類等の硬化剤を単独で使用してもよいし、あるいはこれらを2種以上併用してもよい。
【0020】
上記特定のエポキシ樹脂(A成分)と硬化剤(B成分)との配合割合は、例えば、硬化剤(B成分)として酸無水物系硬化剤を用いる場合、エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1当量に対して、酸無水物における酸無水物当量を0.5〜1.5当量となるように設定することが好ましい。特に好ましくは0.7〜1.2当量である。すなわち、上記配合割合において、酸無水物当量が下限値未満では、得られるエポキシ樹脂組成物の硬化後の色相が悪くなり、逆に上限値を超えると、耐湿性が低下する傾向がみられるからである。
【0021】
また、上記硬化剤(B成分)として、酸無水物系硬化剤以外に前述のヘキサヒドロフタル酸等のカルボン酸類等の硬化剤を単独でもしくは2種以上併用する場合においても、その配合割合は、上記酸無水物系硬化剤を使用した配合割合(当量比)に準ずる。
【0022】
上記A成分およびB成分とともに用いられるシランカップリング剤(C成分)としては、例えば、下記の一般式(4)で表される化合物があげられる。
【0023】
【化5】

【0024】
そして、上記シランカップリング剤として、より具体的には、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0025】
そして、上記C成分の含有量は、エポキシ樹脂組成物全体の0.001〜10重量%の範囲に設定することが好ましく、より好ましくは0.05〜4重量%、特に好ましくは0.2〜2重量%の範囲に設定することである。すなわち、下限値未満では、被着体に対して充分な接着力を発揮することが困難となる場合がみられ、上限値を超えると、エポキシ樹脂組成物を硬化した場合の機械的特性が低下する、特にガラス転移温度が低下する傾向がみられるからである。
【0026】
上記A〜C成分とともに用いられる上記特定の離型剤(D成分)は、下記の構造式(2)で表される構造単位および構造式(3)で表される構造単位を有する分子構造を備えた離型剤である。
【0027】
【化6】

【0028】
【化7】

【0029】
そして、上記構造式(2)で表される構造単位における繰り返し数mは8〜100の正数であって、かつ、上記構造式(3)で表される構造単位の占める割合は、離型剤を構成する分子構造全体の25〜95重量%の範囲に設定される。より好ましくは、構造式(2)で表される構造単位における繰り返し数mは13〜60の正数であって、かつ、上記構造式(3)で表される構造単位の占める割合は、離型剤を構成する分子構造全体の35〜85重量%の範囲である。特に好ましくは、構造式(2)で表される構造単位における繰り返し数mは17〜40の正数であって、かつ、上記構造式(3)で表される構造単位の占める割合は、離型剤を構成する分子構造全体の40〜70重量%の範囲である。また、上記構造式(2)で表される構造単位および構造式(3)で表される構造単位は、分子構造内において連続して存在してもよいし、ランダム等不連続にて存在してもよく、その存在形態に関しては特に限定するものではないが、連続して存在する形態、いわゆるブロック状であることが好ましい。さらに、上記構造式(2)で表される構造単位および構造式(3)で表される構造単位は、分子構造内において各々1個のみでなく複数個存在してもよい。
【0030】
そして、上記離型剤(D成分)を構成する単位として、上記構造式(2)で表される構造単位および構造式(3)で表される構造単位以外に、アルキル基、アルキレン基、カルボキシル基、エステル結合、ケトン結合、ベンゼン環、水素原子、金属原子等があげられる。ただし、上記特定の離型剤(D成分)において、分子構造全体中の上記構造式(2)で表される構造単位および構造式(3)で表される構造単位の占める割合は、通常、70〜99重量%となることが好ましい。
【0031】
上記特定の離型剤(D成分)の数平均分子量は、通常、300〜12000であることが好ましく、より好ましくは600〜5000、特に好ましくは900〜2500である。なお、上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリスチレン換算により求める値である。また、上記離型剤(D成分)の分子構造の特定方法としては、つぎの方法があげられる。すなわち、 1H−NMRにて、隣接する酸素を有する炭素に結合する水素〔−(CH2 CH2 O)−〕と、炭素間に挟まれた炭素に結合する水素〔−(CH2 CH2 )−〕の積算スペクトル比にて、各構造単位の比率を求め、分子量の値から繰り返し数を算出することにより特定することができる。
【0032】
上記特定の離型剤(D成分)の含有割合は、エポキシ樹脂組成物全体の0.1〜2.5重量%の範囲に設定する必要がある。特に好ましくは0.1〜1.0重量%である。このような含有割合に設定することにより、初期透過率,耐熱性,耐光性およびガラス転移温度の低下を効果的に防止することができるようになる。すなわち、特定の離型剤(D成分)の含有割合が上記範囲を外れ上限値を超えて多過ぎると、光透過率が低下するからである。
【0033】
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物には必要により硬化促進剤を含有することができる。上記硬化促進剤としては、例えば、三級アミン類、イミダゾール類、四級アンモニウム塩および有機金属塩類、リン化合物等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート等のリン化合物、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、トリ−2,4,6−ジメチルアミノメチルフェノール等の三級アミン類を用いることが好ましい。
【0034】
上記硬化促進剤の含有量は、上記特定のエポキシ樹脂(A成分)100重量部(以下「部」と略す)に対して0.05〜7.0部に設定することが好ましく、より好ましくは0.2〜3.0部である。すなわち、下限値未満では、充分な硬化促進効果が得られ難く、また上限値を超えると、得られるエポキシ樹脂組成物の硬化体に変色がみられるおそれがあるからである。
【0035】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物には、前記A〜D成分および硬化促進剤以外に、エポキシ樹脂組成物の硬化体の透明性を損なわない範囲であれば必要に応じて従来から用いられている、例えば、劣化防止剤、変性剤、染料、顔料等の公知の各種添加剤を適宜配合することができる。
【0036】
上記劣化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、アミン系化合物、有機硫黄系化合物、ホスフィン系化合物等の従来から公知の劣化防止剤があげられる。
【0037】
上記変性剤としては、従来公知のグリコール類、シリコーン類、アルコール類等の従来から公知の変性剤があげられる。
【0038】
なお、光分散性が必要な場合には、上記成分以外にさらに充填剤を配合してもよい。上記充填剤としては、石英ガラス粉末、タルク、シリカ粉末、アルミナ粉末、炭酸カルシウム等の無機質充填剤等があげられる。
【0039】
そして、本発明のエポキシ樹脂組成物は、例えば、つぎのようにして製造することができる。すなわち、上記A〜D成分および必要に応じて、硬化促進剤、劣化防止剤、変性剤、染料、顔料、充填剤等の公知の各種添加剤を所定の割合で配合する。そして、これを常法に準じてドライブレンド法または溶融ブレンド法を適宜採用して混合,混練する。ついで、冷却・粉砕し、さらに必要に応じてその粉末を打錠することによりエポキシ樹脂組成物を製造することができる。
【0040】
このようにして得られたエポキシ樹脂組成物を用いての光半導体素子の封止は、特に制限されることはなく、通常のトランスファー成形や注型等の公知のモールド方法により行うことができる。
【0041】
なお、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化体は、その用途の点から、厚み1mmにおいて、分光光度計の測定により、波長400nmの光透過率が90%以上のものが好ましい。ただし、上記充填剤、染料、あるいは顔料を用いた場合の光透過率に関してはこの限りではない。
【0042】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0043】
まず、エポキシ樹脂組成物の作製に先立って下記に示す各成分を準備した。
【0044】
〔エポキシ樹脂a〕
トリグリシジルイソシアヌレート(エポキシ当量100)
【0045】
〔エポキシ樹脂b〕
下記の構造式(b)で表される脂環式エポキシ樹脂
【化8】

【0046】
〔硬化剤〕
ヘキサヒドロ無水フタル酸
【0047】
〔硬化促進剤〕
テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート
【0048】
〔変性剤〕
エチレングリコール
【0049】
〔シランカップリング剤a〕
γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン
【0050】
〔離型剤a〕
下記の構造式(A)で表される離型剤
【化9】

【0051】
〔離型剤b〕
下記の構造式(B)で表される離型剤
【化10】

【0052】
〔実施例1〜10、比較例1〜3〕
下記の表1〜表2に示す各成分を同表に示す割合で配合し、ミキシングロールで溶融混練(80〜130℃)を行い、熟成した後、室温で冷却して粉砕することにより目的とする粉末状のエポキシ樹脂組成物を作製した。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
このようにして得られた実施例および比較例のエポキシ樹脂組成物を用いて、下記の方法にしたがって各種特性評価を行った。その結果を後記の表3〜表5に併せて示す。
【0056】
〔光透過率〕
上記各エポキシ樹脂組成物を用い、トランスファー成形(成形条件:150℃×4分間)し、さらに、150℃×3時間の条件でアフターキュアすることにより、光透過率測定用の試料(厚み1mmの硬化物)を作製した。この試料を、石英セル中の流動パラフィンに浸漬し、試料表面の光散乱を抑制した状態で、室温(25℃)にて波長400nmにおける光透過率を分光光度計(島津製作所社製、UV3101)を用いて測定した。
【0057】
〔接着力〕
上記各エポキシ樹脂組成物を用い、トランスファー成形(成形条件:150℃×4分間)し、さらに、150℃×3時間の条件でアフターキュアすることにより、図1に示すように、リードフレームと同じ材質の金属フレーム板(材質:42アロイ合金素体の表面全面に厚み0.2μmの銀メッキ層を形成したもの)1の左端表面に、円錐台形状の樹脂硬化体2が設けられた接着力測定サンプルを成形した(接着部の面積は0.25cm2 )。
【0058】
これを用いて、図1に示すように、樹脂硬化体2の側方から矢印A方向に測定治具であるプッシュプルゲージ(図示せず)を用いて荷重を加えながら金属フレーム板1表面の樹脂硬化体2が金属フレーム板1から剥離する際の剪断力を測定しこの値を接着力とした。なお、測定条件は、温度25℃、測定治具の進行速度100mm/分に設定した。さらに測定は、各試料につき8回行い、その平均値を測定値とした。
【0059】
〔界面剥離〕
上記各エポキシ樹脂組成物を用いて光半導体素子(SiNフォトダイオード:1.8mm×2.3mm×厚み0.25mm)をトランスファー成形(150℃×4分間成形、150℃×3時間後硬化)でモールドすることにより表面実装型光半導体装置を得た。この表面実装型光半導体装置は、図2に示すように、8ピンのスモールアウトラインパッケージ(SOP−8:4.9mm×3.9mm×厚み1.5mm)3で、リードフレーム4として、42アロイ合金素体の表面全面に銀メッキ層(厚み0.5μm)を形成したものを用いた。
【0060】
このようにして得られた光半導体装置20個について、顕微鏡により目視にてリードフレームと封止樹脂界面の剥離の有無を観察し、剥離が生じた光半導体装置の個数をカウントした。
【0061】
〔レッドインク試験〕
また、上記光半導体装置20個について、レッドインク試験を行い、そのインクの浸入したパッケージ数をカウントした。すなわち、上記レッドインク試験方法は、光半導体装置をレッドインク液に浸漬し、5分間、真空引きした後、光半導体装置を洗浄し、顕微鏡にてレッドインクが浸入したパッケージ数をカウントした。
【0062】
【表3】

【0063】
【表4】

【0064】
【表5】

【0065】
上記結果から、実施例品は、光透過率が90%以上と高く、接着力も全て3.0N/mm2 を超えて優れた接着性を示した。さらに、リードフレームの界面剥離も発生せず、レッドインク試験においても液の浸入がみられなかった。
【0066】
これに対して、特定の離型剤を用いなかった比較例1,2品は、光透過率が高いものが得られたが接着力が著しく低いものであった。また、特定の離型剤を所定の範囲を超えて多く配合した比較例3品は、接着力が高いものが得られたが、逆に光透過率が低いものであった。しかも、接着力の低い比較例1,2品は、当然ながら、リードフレームの界面剥離が発生し、レッドインク試験において液の浸入が確認される結果となった。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】エポキシ樹脂組成物硬化体の接着力を測定するための測定方法を模式的に示す斜視図である。
【図2】表面実装型光半導体装置の一例であるSOP−8を示す斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)〜(D)成分を含有してなる光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物であって、上記(D)成分の含有割合が、エポキシ樹脂組成物全体の0.1〜2.5重量%の範囲に設定されていることを特徴とする光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物。
(A)複素環式エポキシ樹脂および下記一般式(1)で表される脂環式エポキシ樹脂の少なくとも一方。
【化1】

(B)硬化剤。
(C)シランカップリング剤。
(D)下記の構造式(2)で表される構造単位および構造式(3)で表される構造単位を有する分子構造を備えた離型剤であって、上記構造式(3)で表される構造単位の占める割合が、離型剤を構成する分子構造全体の25〜95重量%に設定されてなる離型剤。
【化2】

【化3】

【請求項2】
上記(C)成分であるシランカップリング剤が、下記の一般式(4)で表される化合物である請求項1記載の光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物。
【化4】

【請求項3】
請求項1または2記載の光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物を用いて光半導体素子を樹脂封止してなる光半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−222741(P2008−222741A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−58845(P2007−58845)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】