説明

内燃機関の制御装置

【課題】過給機付きの内燃機関の制御装置に関し、過給機の駆動要求を満たしつつ、触媒の失活を抑制する。
【解決手段】ターボ流し要求が出されているか否かが判断される(ステップ100)。触媒28が失活するおそれがあるか否かが判断される(ステップ104)。具体的には、触媒INガス温度Tcが所定値Bよりも大きいか否かが判定される。所定値Bは、触媒28が失活してしまう触媒INガスの温度の最大値として予め特定された値が使用される。その結果、ターボ流しによる触媒28の失活のおそれがあると判断された場合には、点火遅角補正の遅角量が特定される(ステップ106)。点火時期Cが演算される(ステップ108〜114)。ターボ流しへの切り替え許可が出される(ステップ116)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関の制御装置に係り、特に、過給機付きの内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特表2002−520535号公報に開示されるように、排気タービンに通じる第1の排気管を開閉する第1の排気弁と、排気タービンを通らない第2の排気管を開閉する第2の排気弁を備えた装置(独立排気エンジン)が知られている。この装置によれば、機関の冷間時に第1の排気弁を閉弁し第2の排気弁を開弁することにより、排気タービンをバイパスして排気ガスを流すことができるため、触媒の暖機性能を高めることができる。また、触媒の暖機完了後は、第2の排気弁を閉弁し第1の排気弁を開弁することにより、排気ガスの全量を排気タービンに導くことができるため、機関に対する出力要求に対応することができる。
【0003】
【特許文献1】特表2002−520535号公報
【特許文献2】特開平10−89106号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、始動時(特に冷間始動時)においては、熱容量の大きい排気タービンおよび該排気タービンが配置された第1の排気管は冷えた状態にある。このため、触媒の暖機が完了した後において、排気タービンの暖機要求や出力要求に対応すべく第1の排気弁を開弁すると、当該第1の排気弁を通過する際に排気ガスの温度が急激に低下してしまう。このような排気ガスが触媒に流入すると、該触媒の床温が急激に低下して触媒の活性が失われる現象(以下、「失活」と称する)が発生し、排気エミッション特性が悪化してしまうおそれがある。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、過給機の駆動要求を満たしつつ、触媒の失活を抑制することのできる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、内燃機関の制御装置であって、
過給機のタービンに通じる第1排気通路と、
前記第1排気通路を開閉する第1排気弁と、
前記タービンの下流に通じる第2排気通路と、
前記第2排気通路を開閉する第2排気弁と、を気筒毎に備え、
前記第1排気通路と前記第2排気通路との合流点よりも下流の排気通路に配置された触媒と、
前記触媒の温度と相関を有する触媒温度相関値を取得する触媒温度相関値取得手段と、
前記第1排気弁を開弁することにより前記過給機を駆動する過給機駆動手段と、
前記過給機駆動手段を実行する場合に、前記触媒温度相関値が所定値よりも小さい場合には、点火時期を遅角させる点火時期遅角手段と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、
前記点火時期遅角手段は、遅角量を演算する遅角量演算手段を含み、
前記遅角量演算手段は、前記触媒温度相関値が小さいほど前記遅角量を大きな値として演算することを特徴とする。
【0008】
第3の発明は、第1または第2の発明において、
前記タービンに流入する排気ガス(以下、ターボINガス)の温度を取得するターボINガス温度取得手段を更に備え、
前記点火時期遅角手段は、遅角量を演算する遅角量演算手段を含み、
前記遅角量演算手段は、前記ターボINガスの温度が小さいほど前記遅角量を大きな値として演算することを特徴とする。
【0009】
第4の発明は、第1乃至第3の何れか1つの発明において、
前記点火時期遅角手段は、
遅角量を演算する遅角量演算手段と、
前記遅角量に基づいて、最終点火時期を演算する最終点火時期演算手段と、
前記最終点火時期が所定のガード値よりも遅角となる場合に、前記最終点火時期を前記ガード値に変更するガード手段と、
を含むことを特徴とする。
【0010】
第5の発明は、第1乃至第4の何れか1つの発明において、
前記タービンに流入する排気ガス(以下、ターボINガス)の温度を取得するターボINガス温度取得手段と、
前記ターボINガスの温度が所定値よりも大きい場合に、前記点火時期遅角手段の実行を禁止する禁止手段と、
を更に備えることを特徴とする。
【0011】
第6の発明は、上記の目的を達成するため、内燃機関の制御装置であって、
過給機のタービンに通じる第1排気通路と、
前記第1排気通路を開閉する第1排気弁と、
前記タービンの下流に通じる第2排気通路と、
前記第2排気通路を開閉する第2排気弁と、を気筒毎に備え、
前記第1排気通路と前記第2排気通路との合流点よりも下流の排気通路に配置された触媒と、
前記内燃機関の冷間始動時に、前記第1排気弁を閉弁し且つ前記第2排気弁を開弁することにより、前記触媒を暖機する触媒暖機手段と、
前記触媒の暖機が完了した場合に、前記複数の気筒を2つの気筒群に分類し、何れか一方の気筒群を選択して前記第1排気弁を開弁することにより、前記過給機を駆動する過給機駆動手段と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
第7の発明は、第6の発明において、
前記気筒群毎に前記過給機と前記触媒とを備え、前記各気筒群の排気通路は、前記触媒の下流の合流点において合流しており、
前記合流点よりも更に下流の排気通路に配置された第2の触媒と、
前記第2の触媒の温度と相関を有する触媒温度相関値を取得する触媒温度相関値取得手段と、
前記触媒温度相関値が所定値以上となった場合に、前記過給機駆動手段において選択されなかった気筒群の前記第1排気弁を開弁することにより、前記過給機を駆動する第2の過給機駆動手段と、
を更に備えることを特徴とする。
【0013】
第8の発明は、第6の発明において、
前記気筒群毎に前記過給機と前記触媒とを備え、
前記内燃機関に対する出力要求が所定値以上となった場合に、両方の前記気筒群の前記第1排気弁を開弁することにより、前記過給機を駆動する第2の過給機駆動手段を更に備えることを特徴とする。
【0014】
第9の発明は、第6乃至第8の何れか1つの発明において、
前記2つの気筒群における排気系の熱容量は同等であり、
前記過給機駆動手段は、前記2つの気筒群の中で、前回のトリップの前記過給機駆動手段において選択されなかった気筒群を制御対象として選択する選択手段を含むことを特徴とする。
【0015】
第10の発明は、第6乃至第8の何れか1つの発明において、
前記過給機駆動手段は、前記2つの気筒群の中で、排気系の熱容量が小さい気筒群を制御対象として選択する選択手段を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
内燃機関に対する出力要求や過給機の暖機要求により、第1排気弁を閉弁から開弁に切り替えて過給機を駆動する(以下、「ターボ流し」と称する)要求が出される場合がある。かかる場合においては、熱容量の大きい第1排気通路に排気ガスが流れるため、排気ガスの温度が触媒に到達する前に低下してしまい、触媒が失活してしまうおそれがある。第1の発明によれば、ターボ流し要求が出された場合に、触媒温度相関値が所定値よりも小さいときには、内燃機関の点火時期が遅角される。点火時期が遅角されると排気ガスの温度が上昇する。このため、本発明によれば、ターボ流し要求を満たしつつ、触媒が失活する事態を効果的に抑制することができる。
【0017】
第2の発明によれば、点火時期の遅角量は、触媒温度相関値が小さいほど大きな値として演算される。このため、本発明によれば、触媒の温度が小さいほど排気ガスの温度を上昇させることができるので、触媒が失活する事態を効果的に回避することができる。
【0018】
第3の発明によれば、点火時期の遅角量は、タービンに流入する排気ガス(ターボINガス)の温度が低いほど大きな値として演算される。ターボINガスの温度が低いほど触媒に流入する排気ガスの温度は低くなる。このため、本発明によれば、ターボINガスの温度が低いほど点火遅角量を大きくすることで、触媒が失活する事態を効果的に回避することができる。
【0019】
第4の発明によれば、遅角量に基づいて演算された最終点火時期が所定のガード値よりも遅角となる場合には、最終点火時期が当該ガード値に変更される。このため、本発明によれば、点火時期が必要以上に遅角されることによるドライバビリティの悪化や失火の発生を効果的に抑制することができる。
【0020】
第5の発明によれば、ターボINガスの温度が所定値よりも高いときには、点火時期の遅角制御が禁止される。ターボINガスの温度が高くなると、触媒に流入する排気ガスの温度も高くなる。このため、本発明によれば、触媒が失活するおそれがない場合には、点火遅角を禁止することができるので、必要以上に点火遅角が行われることにより、燃費が悪化する事態を効果的に回避することができる。
【0021】
排気ガスのターボ流し要求により熱容量の大きい第1排気通路に排気ガスが流入すると、排気ガスの温度が急激に低下する。このため、当該排気ガスが触媒に流入すると、触媒温度が急激に低下して失活してしまうおそれがある。第6の発明によれば、ターボ流し要求が出された場合に、2つに分類された気筒群の中から何れか一方の気筒群が選択され、当該選択された気筒群の第1排気弁が開弁される。このため、本発明によれば、排気ガスのターボ流し量が、すべての気筒群の第1排気弁が開弁される場合に比して制限されるので、排気ガスの温度が急激に低下して触媒が失活する事態を抑制しつつ、過給機の暖機要求或いは出力要求をある程度満たすことができる。
【0022】
第7の発明によれば、気筒群毎に過給機と触媒とを備える内燃機関において、各気筒群の排気通路の合流点の下流には、更に第2の触媒が配置されている。このような内燃機関において、先ず、選択された何れか一方の気筒群のターボ流しが行われ、その後、当該第2の触媒の暖機が完了した場合に、他方の気筒群のターボ流しが行われる。このため、本発明によれば、第2の触媒が暖機されるまでの期間は、ターボ流しを行っていない気筒群の排気ガス、すなわち過給機をバイパスした排気ガスを第2の触媒に導入することができるので、第2の触媒の暖機促進を図ることができる。これにより、排気エミッションの悪化を効果的に抑制することができる。
【0023】
第8の発明によれば、先ず、選択された何れか一方の気筒群のターボ流しが行われ、その後、出力要求が所定値以上となった場合に、全ての気筒群のターボ流しが行われる。高空気量で過給機の暖機を行うと排気ガス温度は低下し難い。このため、本発明によれば、出力要求を優先しつつ、排気ガス温度の低下による触媒の失活の発生を効果的に抑制することができる。
【0024】
第9の発明によれば、何れか一方の気筒群のターボ流し要求が出された場合に、前回のトリップにおいて選択された気筒群でない方の気筒群が選択されて、ターボ流しが実行される。このため、本発明によれば、各気筒群に備えられている触媒の劣化を平均化することができる。
【0025】
第10の発明によれば、何れか一方の気筒群のターボ流し要求が出された場合に、排気系の熱容量の小さい気筒群が選択されて、ターボ流しが実行される。このため、本発明によれば、第2の触媒のエミッション浄化率が低い期間に、排気ガス温度が低下する事態をできるだけ抑制し、触媒のエミッション浄化率を高く維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面に基づいてこの発明の幾つかの実施の形態について説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。また、以下の実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0027】
実施の形態1.
[実施の形態1の構成]
図1は、本発明の実施の形態1にかかるシステムの構造を説明するための図である。本実施の形態のシステムは、過給機(ターボチャージャ)を有する独立排気エンジンシステムとして構成されている。
【0028】
図1に示すとおり、本実施の形態のシステムは内燃機関(エンジン)10を備えている。エンジン10は複数の気筒12を有する火花点火式のV型8気筒エンジンとして構成されている。尚、図1においては片バンク(4気筒)の構成のみを図示している。各気筒12の吸気ポートには吸気バルブが設けられている(図示せず)。吸気ポートは吸気マニホールドを介して吸気通路14に接続されている。吸気通路14の上流には、過給機16のコンプレッサ161が設けられている。コンプレッサ161は、図示しない連結軸を介してタービン162と連結されている。タービン162は、後述する第1排気通路22に設けられている。このタービン162が排気動圧(排気エネルギ)により回転駆動されることにより、コンプレッサ161が駆動され、吸気が過給される仕組みになっている。尚、吸気系の他の構成は本発明の本質的部分ではなく、また公知の技術であるため、その詳細な説明を省略する。
【0029】
各気筒12の排気ポートには、第1排気弁201と第2排気弁202とが配置されている。第1排気弁201の排気ポートは、過給機16におけるタービン162に通じる第1排気通路22に連通している。また、第2排気弁202の排気ポートは、タービン162を通らない第2排気通路24に連通している。第2排気通路24は、第1排気通路22における過給機16の下流側と合流している。合流点の下流の排気通路26には、排気浄化触媒(以下、単に「触媒」とも称す)28が配置されている。触媒28は三元触媒であって、排気ガス中の有害成分であるCO、HC(炭化水素)、およびNOを、理論空燃比近傍で同時に除去するものである。
【0030】
エンジン10の各気筒12には点火プラグ32が配置されている。また、排気通路26における触媒28の上流側近傍には、触媒28に流入する排気ガス(以下、「触媒INガス」と称する)の温度Tcを検知するための排気温センサ34が配置されている。また、第2排気通路24における過給機16の上流側近傍には、タービン162に導入される排気ガス(ターボINガス)の温度Ttを検知するための排気温センサ36が配置されている。
【0031】
本実施の形態のエンジン10には、その制御装置として、ECU(Electronic Control Unit)30が備えられている。ECU30の出力部には、上述した点火プラグ32等の種々の機器が接続されている。また、ECU30の入力部には、上述した排気温センサ34,36等の種々のセンサ類が接続されている。ECU30は、各センサの出力に基づいて、所定の制御プログラムに従って各機器を駆動する。
【0032】
[実施の形態1の動作]
次に、図1を参照して、本実施の形態の動作について説明する。図1に示すとおり、本実施の形態のシステムは、排気ガス中に含まれるCO、HC、およびNOxを浄化するための触媒28を備えている。触媒28は、活性温度(350〜400℃程度)に達しないと十分な浄化性能を発揮することができない。このため、触媒28は、エンジン10の始動後速やかに活性温度まで暖機されることが望ましい。
【0033】
ここで、エンジン10は、図1に示すとおり、独立排気エンジンとしての構成を有している。そこで、本実施の形態のエンジン10によれば、冷間始動時に第1排気弁201を閉弁(停止)するとともに、第2排気弁202を開弁することにより、タービン162をバイパスして排気ガスを触媒28に流すことができる。これにより、排気熱容量が小さくなるため、すなわち、自然吸気エンジンと同等の排気熱容量となるため、触媒28の暖機性能を向上させることができる。以下、このバルブ開弁特性を「NA流し」と称する。
【0034】
また、触媒28の暖機完了後は、ターボ流しの一態様として、第1排気弁201を開弁するとともに、第2排気弁202を閉弁(停止)することにより、排気ガスの全量をタービン162に導くことができる。これにより、過給圧を高めることができるため、ターボレスポンスを効果的に向上させることができる。
【0035】
しかしながら、始動時(特に冷間始動時)においては、熱容量の大きいタービン162および当該タービン162が配置されている第1排気通路22は冷えた状態にある。このため、触媒28の暖機完了後にターボ流しが行われると、触媒INガスの温度が急激に低下してしまう。したがって、このような低温の触媒INガスが触媒28に流入すると、該触媒28の床温が急激に低下して失活してしまい、排気エミッション特性が悪化してしまうおそれがある。
【0036】
そこで、本実施の形態では、冷間始動時のターボ流し期間に点火時期遅角補正を実行することとする。より具体的には、触媒INガスの温度Tcが、触媒28が失活してしまう温度である場合に点火遅角補正が行われる。これにより、ターボINガス温度を上昇させることができるので、触媒INガスの温度低下を抑制することができる。但し、点火時期が遅角されると排気温度が上昇する反面、出力低下や燃費の低下等を引き起こすおそれがある。このため、ターボ暖機状況等に応じて、点火時期遅角補正の実行要否および遅角量を適切に判断することが求められる。
【0037】
図2は、点火遅角補正を実行する場合の各種状態量の変化を示すタイミングチャートである。図2に示すとおり、時刻t1においてターボ流し要求が出されると、点火時期の遅角補正が開始されるとともに、ターボ流しが許可される。これにより、ターボINガス温度Ttは徐々に上昇し、触媒INガス温度Tcの温度低下が抑制される。時刻t2においてターボINガス温度Ttが所定値Aに達すると、点火遅角補正が停止される。所定値Aは、通常の点火時期としても触媒28が失活しない温度として予め特定された温度が使用される。これにより、必要以上に点火時期の遅角補正が行われ、燃費の悪化およびエミッションの悪化を効果的に回避することができる。
【0038】
また、点火時期の遅角量は、ターボINガスの温度Ttおよび触媒INガスの温度Tcに基づいて特定される。図3は、遅角量を特定するためにECU30が記憶しているマップを示す。遅角量はこのマップに従って特定される。具体的には、ターボINガスの温度Ttが小さいほど、遅角量は大きな値として特定される。また、触媒INガスの温度Tcが小さいほど、遅角量は大きな値として特定される。これにより、必要以上に点火時期の遅角補正が行われ、燃費の悪化およびエミッションの悪化を効果的に回避することができる。
【0039】
[実施の形態1における具体的処理]
次に、図4を参照して、本実施の形態において実行する処理の具体的内容について説明する。図4は、ECU30が実行するルーチンのフローチャートである。
【0040】
図3に示すルーチンでは、先ず、ターボ流し要求が出されているか否かが判断される(ステップ100)。ここでは、具体的には、過給機16を駆動することによる高出力要求、或いは第1排気通路22およびタービン162を暖機するためのターボ暖機要求が出されているか否かが判断される。またステップ100では、触媒28の暖機中でないか否かが判断される。具体的には、触媒暖機のための点火遅角補正が行われていないか否かが判断される。その結果、ターボ流し要求が出されていない、或いは触媒28の暖機中である場合には、本ルーチンは速やかに終了される。
【0041】
一方、上記ステップ100において、ターボ流し要求が出され、且つ触媒28の暖機中でない場合には、次のステップに移行し、ターボ暖機が完了しているか否かが判断される(ステップ102)。ここでは、具体的には、ターボINガス温度Ttが所定値Aよりも小さいか否かが判定される。所定値Aは、ターボ暖機の完了を判断するためのターボINガスの最小温度として予め特定された値が使用される。また、ターボINガス温度Ttは、排気温センサ36により検知された温度が使用される。
【0042】
その結果、Tt<Aの成立が認められた場合には、未だターボ暖機が完了していないと判断されて、次のステップに移行し、触媒28が失活するおそれがあるか否かが判断される(ステップ104)。ここでは、具体的には、触媒INガス温度Tcが所定値Bよりも大きいか否かが判定される。所定値Bは、触媒28が失活してしまう触媒INガスの温度の最大値として予め特定された値が使用される。また、触媒INガス温度Tcは、排気温センサ34により検知された温度が使用される。その結果、Tc>Bの成立が認められた場合には、ターボ流しによる触媒28の失活のおそれがないと判断され、後述するステップ116においてターボ流しの切り替え許可が出される。
【0043】
一方、上記ステップ104においてTc>Bの成立が認められない場合には、ターボ流しによる触媒28の失活のおそれがあると判断され、次のステップに移行し、点火遅角補正の遅角量が特定される(ステップ106)。ECU30は、図3に示すマップを記憶している。ここでは、具体的には、上記ステップ102において検出されたターボINガス温度Tt、および上記ステップ104において検出された触媒INガス温度Tcに対応する遅角量が、当該マップに基づいて特定される。
【0044】
次に、点火時期Cが演算される(ステップ108)。ここでは、具体的には、エンジン10の運転状態に基づいて演算された点火時期から上記ステップ106において特定された遅角量を差し引いた値が点火時期Cとして演算される。
【0045】
次に、点火時期Cが点火時期のガード値以下であるか否かが判定される(ステップ110)。ここで、ガード値は、点火遅角による弊害、すなわち、燃費の悪化やエミッションの悪化を許容しうる限界値として予め特定された値が使用される。その結果、ガード値≧点火時期Cの成立が認められた場合には、最終点火時期が点火時期Cに変更される(ステップ112)。一方、ガード値≧点火時期Cの成立が認められない場合には、最終点火時期が当該ガード値に変更される(ステップ114)。
【0046】
次に、点火時期の遅角補正が実行される(ステップ116)。ここでは、具体的には、上記ステップ112または114において点火時期の遅角補正が実行されると、次のステップに移行し、ターボ流しへの切り替え許可が出される(ステップ116)。ここでは、具体的には、第1排気弁201が開弁される。これにより、点火遅角により昇温した排気ガスがタービン162に導かれ、本ルーチンは終了される。
【0047】
上記ルーチンが繰り返し実行されると、ターボ暖機が進行し、ターボINガスの温度Ttが次第に上昇する。そして、ターボINガスの温度Ttが、ターボ暖機の完了を判断するための所定値Aまで上昇すると、上述したステップ102において、Tt<所定値Aの成立が認められないと判定され、点火遅角補正を行わずに上記ステップ116においてターボ流しが許可される。
【0048】
以上説明したとおり、本実施の形態によれば、ターボ流し要求が出された場合に触媒28が失活するおそれがある場合には、点火時期が遅角された上でターボ流しへの切り替えが許可される。このため、触媒28が失活する事態を効果的に抑制することができる。
【0049】
また、本実施の形態によれば、触媒INガス温度Tcが小さいほど、およびターボINガス温度Ttが小さいほど点火遅角量が大きな値に演算されるので、触媒28の失活の発生を効果的に抑制することができる。
【0050】
また、本実施の形態によれば、点火時期が所定のガード値でガードされるので、点火時期が必要以上に遅角されることによるドライバビリティの悪化や失火の発生を効果的に抑制することができる。
【0051】
ところで、上述した実施の形態においては、触媒INガスの温度Tcを取得するために、排気温センサ34の検出信号を使用することとしているが、触媒INガスの温度Tcの温度を取得する方法はこれに限られない。すなわち、吸入した空気の積算ガス量とエンジン回転数およびエンジン負荷との相関関係から、触媒INガスの温度Tcを推定することとしてもよい。また、触媒INガス温度Tcに代えて、触媒28内に配置した温度センサから検出された触媒床温を直接制御に使用することとしてもよい。
【0052】
また、上述した実施の形態においては、ターボ流し要求が出された場合に、第1排気弁201を開弁するとともに、第2排気弁202を閉弁(停止)することにより、排気ガスの全量をタービン162に導くこととしているが、ターボ流しにおけるバルブの開弁特性はこれに限らず、第1排気弁201および第2排気弁202を開弁することにより、排気ガスの一部をタービン162に導くこととしてもよい。
【0053】
尚、上述した実施の形態1においては、触媒INガス温度Tcが前記第1の発明における「触媒温度相関値」に、排気温センサ34が前記第1の発明における「触媒温度相関値取得手段」に、それぞれ相当している。また、ECU30が、上記ステップ104乃至114の処理を実行することにより、前記第1の発明における「点火時期遅角手段」が、上記ステップ116の処理を実行することにより、前記第1の発明における「過給機駆動手段」が、それぞれ実現されている。
【0054】
また、上述した実施の形態1においては、ECU30が、上記ステップ106の処理を実行することにより、前記第2の発明における「遅角量演算手段」が実現されている。
【0055】
また、上述した実施の形態1においては、ターボINガス温度Ttが前記第3の発明における「ターボINガスの温度」に、排気温センサ36が前記第3の発明における「ターボINガス温度取得手段」に、それぞれ相当している。また、ECU30が、上記ステップ106の処理を実行することにより、前記第3の発明における「遅角量演算手段」が実現されている。
【0056】
また、上述した実施の形態1においては、ECU30が、上記ステップ106の処理を実行することにより、前記第4の発明における「遅角量演算手段」が、上記ステップ108の処理を実行することにより、前記第4の発明における「最終点火時期演算手段」が、上記ステップ110の処理を実行することにより、前記第4の発明における「ガード手段」が、それぞれ実現されている。
【0057】
また、上述した実施の形態1においては、ターボINガス温度Ttが前記第5の発明における「ターボINガスの温度」に、排気温センサ36が前記第5の発明における「ターボINガス温度取得手段」に、それぞれ相当している。また、ECU30が、上記ステップ102の処理を実行することにより、前記第5の発明における「禁止手段」が実現されている。
【0058】
実施の形態2.
[実施の形態2の構成]
図5は、本発明の実施の形態2にかかるシステムの構造を説明するための図である。本実施の形態のシステムは、2つの過給機(ターボチャージャ)を有する独立排気エンジンシステムとして構成されている。
【0059】
図5に示すとおり、本実施の形態のシステムは内燃機関(エンジン)50を備えている。エンジン50は複数の気筒52を有するV型6気筒エンジンとして構成されている。各気筒52の吸気ポートには吸気バルブが設けられている(図示せず)。吸気ポートは吸気マニホールドを介して吸気通路54に接続されている。吸気通路54の上流には、スロットル72が配置されている。また、吸気通路54におけるスロットル72の上流は、第1吸気通路54aと第2吸気通路54bとに分岐されている。第1吸気通路54aの上流には、過給機56aのコンプレッサ561aが設けられている。また、第2吸気通路54bの上流には、過給機56bのコンプレッサ561bが設けられている。コンプレッサ561a,561bは、図示しない連結軸を介してタービン562a,562bと連結されている。タービン562a,562bは、後述する第1排気通路62a,62bに設けられている。これらのタービン562a,562bが排気動圧(排気エネルギ)により回転駆動されることにより、コンプレッサ561a,561bが駆動され、吸気が過給される仕組みになっている。尚、吸気系の他の構成は本発明の本質的部分ではなく、また公知の技術であるため、その詳細な説明を省略する。
【0060】
各気筒12の排気ポートには、第1排気弁601と第2排気弁602とが配置されている。エンジン50における片バンク(バンクa側)における第1排気弁601の排気ポートは、過給機56aにおけるタービン562aに通じる第1排気通路62aに連通している。また、第2排気弁602の排気ポートは、タービン562aを通らない第2排気通路64aに連通している。第2排気通路64aは、第1排気通路62aにおける過給機56aの下流側と合流している。合流点の下流の排気通路66aには、始動時触媒(以下、「S/C触媒」とも称す)68aが配置されている。S/C触媒68aは三元触媒であって、排気ガス中の有害成分であるCO、HC、およびNOを、理論空燃比近傍で同時に除去するものである。排気通路66aにおけるS/C触媒68aの上流側近傍には、S/C触媒68aに流入する排気ガス(以下、「S/C触媒INガス」と称する)の温度Tscaを検知するための排気温センサ74aが配置されている。また、図5に示すとおり、エンジン50におけるバンクb側には、バンクa側と同様の排気系の構成、すなわち、第1排気通路62b、第2排気通路64b、排気通路66b、S/C触媒68b、および排気温センサ74bを有している。
【0061】
排気通路66aにおけるS/C触媒68aの下流側は、排気通路66bにおけるS/C触媒68bの下流側と合流している。合流点の下流の排気通路66には、下流側触媒(以下、「U/F触媒」とも称する)69が配置されている。U/F触媒69は、S/C触媒68同様に三元触媒として構成されている。排気通路66におけるU/F触媒69の上流側近傍には、U/F触媒69に流入する排気ガス(以下、「U/F触媒INガス」と称する)の温度Tufを検知するための排気温センサ76が配置されている。
【0062】
本実施の形態のエンジン50には、その制御装置として、ECU(Electronic Control Unit)70が備えられている。ECU70の出力部には種々の機器が接続されている。また、ECU70の入力部には、上述した排気温センサ74a,74b,76等の種々のセンサ類が接続されている。ECU70は、各センサの出力に基づいて、所定の制御プログラムに従って各機器を駆動する。
【0063】
[実施の形態2の特徴的動作]
次に、図5を参照して、本実施の形態の動作について説明する。上述した実施の形態1におけるシステムでは、ターボ流し要求が出された場合に触媒28が失活するおそれがある場合には、点火時期が遅角された上でターボ流しへの切り替えが許可される。これにより、触媒28の温度低下による失活を効果的に抑制することができる。
【0064】
一方、本実施の形態2においては、冷間始動時のターボ流しに起因する触媒の失活を抑制するために、バンク毎にターボ流しの開始条件を設定することとする。以下、本実施の形態の動作について詳細に説明する。
【0065】
図5に示すとおり、本実施の形態のシステムは、バンク毎にS/C触媒68a,68bを備えている。エンジン50の冷間始動時においては、先ず、これらのS/C触媒68の暖機が行われる。具体的には、バンクaおよびバンクbのバルブの開弁特性がNA流しに設定される。これにより、各バンクの排気経路を自然吸気エンジンと同等の排気熱容量とすることができ、S/C触媒68a,68bの暖機性能を向上させることができる。
【0066】
NA流しによりS/C触媒68a,68bの暖機が完了した後は、タービン562a,562bの暖機要求或いは出力要求に基づくターボ流し要求が出される。ここで、両バンクのターボ流しが同時に行われると、S/C触媒68a,68bの浄化性能が同時に低下してしまい、エミッションが悪化するおそれがある。また、U/F触媒69に導入される排気ガスの温度が急激に低下することにより、U/F触媒69の暖機を妨げてしまうおそれがある。
【0067】
そこで、本実施の形態のシステムでは、タービン562の暖機要求が出された場合に、両バンクのターボ流しを同時に開始するのではなく、バンク毎に開始条件を設定することとする。より具体的には、選択されたバンク(例えば、バンクa)のターボ流しを開始した場合に、バンクbはNA流しを維持することとする。これにより、S/C触媒68bの温度低下の抑制、およびU/F触媒69の暖機を行うことができるので、エミッションの悪化を半減しつつ、タービン562aの暖機を行うことができる。
【0068】
バンクbにおけるターボ流しは、U/F触媒69の暖機完了後に開始される。U/F触媒69の暖機完了後においては、S/C触媒68bの温度が低下して浄化性能が低下した場合でも、エミッションの高浄化率を保持することができる。したがって、エミッションの悪化を抑制しつつ、タービン562a,562bの暖機を行うことができる。
【0069】
尚、バンクbにおけるターボ流しは、要求出力が所定値以上となった場合においても開始することができる。すなわち、高空気量でターボ流しを行うと、S/C触媒の温度低下を抑制しつつターボ暖機を行うことができる。このため、U/F触媒69の暖機が完了していなくても、エミッションの悪化を抑制しつつ、タービン562a,562bの暖機を行うことができる。
【0070】
[実施の形態2における具体的処理]
次に、図6を参照して、本実施の形態において実行する処理の具体的内容について説明する。図6は、エンジン50の冷間始動時にECU70が実行するルーチンのフローチャートである。
【0071】
図6に示すルーチンでは、先ず、バルブの開弁特性がNA流しに設定される(ステップ200)。ここでは、具体的には、バンクaおよびバンクbの第1排気弁601が閉弁され、第2排気弁602が開弁される。これにより、両バンクのNA流しが同時に行われる。次に、S/C触媒68a,68bの暖機制御が実施される(ステップ202)。ここでは、具体的には、触媒の暖機を促進するための制御として、例えば、点火時期の遅角制御、A/Fのリッチ制御、空気量の制御等が行われる。
【0072】
次に、S/C触媒68a,68bの暖機が完了したか否かが判定される(ステップ204)。ここでは、具体的には、排気温センサ74a,74bの検出信号に基づいて、S/C触媒68a,68bの暖機状態が判断される。その結果、未だ暖機が完了していないと判定された場合には、本ルーチンは速やかに終了される。一方、S/C触媒68の暖機が完了したと判定された場合には、ターボ暖機制御を実行可能と判断されて、次のステップに移行し、ターボ流しを実行するバンクが選択される(ステップ206)。ここでは、具体的には、前回のトリップにおけるステップ206において選択されたバンクと異なるバンクが選択される。
【0073】
次に、上記ステップ206において選択されたバンク(例えば、バンクa)のターボ流しが実行される(ステップ208)。ここでは、具体的には、バンクaの第1排気弁601が開弁されて、ターボ暖機が実行される。一方、上記ステップ206において選択されなかったバンクbは、NA流しが維持される(ステップ210)。これにより、S/C触媒68bの暖機保持、およびU/F触媒69の暖機が行われる。
【0074】
次に、U/F触媒69の暖機が完了したか否かが判定される(ステップ212)。ここでは、具体的には、排気温センサ76の検出信号に基づいて、U/F触媒69の暖機状態が判断される。その結果、U/F触媒69の暖機が既に完了していると判定された場合には、バンクbのターボ流しを実行しても問題ないと判断されて、次のステップに移行し、バンクbのターボ流しが開始される(ステップ214)。ここでは、具体的には、バンクbの第1排気弁601が開弁されて、ターボ暖機が実行される。
【0075】
一方、上記ステップ212においてU/F触媒69の暖機が未だ完了していないと判定された場合には、バンクbのターボ流しを開始するとエミッションが悪化すると判断されて、次のステップに移行し、要求出力が所定値以上か否かが判定される(ステップ216)。高空気量でターボ流しを行うと、S/C触媒68の温度低下を抑制しつつターボ暖機を行うことができる。ここでは、具体的には、先ず、アクセル開度ACCP等に基づいて、要求出力(要求空気量)が演算される。次いで、演算された要求出力と所定値が比較される。所定値は、片バンクターボにおける最大空気量に相当する出力値が使用される。その結果、要求出力≧所定値の成立が認められない場合には、高空気量でのターボ流しを行うことができないと判断されて、本ルーチンは速やかに終了される。一方、上記ステップ212において要求出力≧所定値の成立が認められた場合には、高空気量でのターボ流しが可能と判断されて、上記ステップ214においてバンクbのターボ流しが実行される。
【0076】
以上説明したとおり、本実施の形態2によれば、エンジン50の冷間始動後にターボ暖機を行う場合に、両バンク(全ての気筒)のターボ流しが同時に開始されるのではなく、先ず、一方のバンク(例えば、バンクa)のターボ流しのみが開始される。つまり、バンクaのターボ暖機中に、他方のバンク(例えば、バンクb)のNA流しが維持されるので、S/C触媒68bの暖機保持、およびU/F触媒69の暖機を効果的に行うことができる。これにより、ターボ暖機中にエミッションが悪化する事態を効果的に抑制することができる。
【0077】
また、本実施の形態2によれば、U/F触媒69の暖機が完了した後に、NA流しが維持されていたバンクのターボ流しが開始されるので、エミッションの悪化を抑制しつつ、ターボ暖機を行うことができる。
【0078】
また、本実施の形態2によれば、前回のトリップにおいて先行してターボ暖機が開始されたバンクと異なるバンクのターボ暖機が先行して開始されるため、各バンクに設けられたS/C触媒68a,68bの劣化を平均化することができる。
【0079】
また、本実施の形態2によれば、要求出力が所定値以上となった場合に、NA流しが維持されていたバンクのターボ流しが開始される。高空気量でターボ流しを行うと、S/C触媒の温度低下を抑制しつつターボ暖機を行うことができる。このため、エミッションの悪化を抑制しつつ、ターボ暖機を行うことができる。
【0080】
ところで、上述した実施の形態2においては、S/C触媒INガスの温度Tsc、U/F触媒INガスの温度Tufを取得するために、排気温センサ74a、74b、および76の検出信号を使用することとしているが、Tsc、Tufの温度を取得する方法はこれに限られない。すなわち、吸入した空気の積算ガス量とエンジン回転数およびエンジン負荷との相関関係から、Tsc、Tufを推定することとしてもよい。また、S/C触媒INガスの温度Tsc、U/F触媒INガスの温度Tufに代えて、触媒28内に配置した温度センサから検出された触媒床温を直接制御に使用することとしてもよい。この点は、以下に説明する他の実施形態においても同様である。
【0081】
また、上述した実施の形態2においては、ターボ流し要求が出された場合に、第1排気弁201および第2排気弁202を開弁することにより、排気ガスをタービン562に導くこととしているが、ターボ流しにおけるバルブの開弁特性はこれに限らず、第1排気弁201を開弁するとともに、第2排気弁202を閉弁(停止)することにより、排気ガスの全量をタービン562に導くこととしてもよい。この点は、以下に説明する他の実施形態においても同様である。
【0082】
また、上述した実施の形態2においては、2つの過給機56a,56bを備えるツインターボエンジンにおいて、本発明を実施することとしているが、システム構成はこれに限られない。すなわち、単一の過給機を備えるシングルターボのエンジンにおいて、気筒群毎にターボ流しの開始時期を設定することとしてもよい。また、気筒群はバンク毎の気筒で分類する場合に限らず、他の条件で分類することとしてもよい。この点は、以下に説明する他の実施形態においても同様である。
【0083】
尚、上述した実施の形態2においては、S/C触媒68a,68bが、前記第6の発明における「触媒」に相当しているとともに、ECU70が、上記ステップ200の処理を実行することにより、前記第6の発明における「触媒暖機手段」が、上記ステップ208および210の処理を実行することにより、前記第6の発明における「過給機駆動手段」が、それぞれ実現されている。
【0084】
また、上述した実施の形態2においては、U/F触媒69が、前記第7の発明における「第2の触媒」に、U/F触媒INガス温度Tufが、前記第7の発明における「触媒温度相関値」にそれぞれ相当している。また、ECU70が、上記ステップ212の処理を実行することにより、前記第7の発明における「触媒温度相関値取得手段」が、上記ステップ212および214の処理を実行することにより、前記第7の発明における「第2の過給機暖機手段」が、それぞれ実現されている。
【0085】
また、上述した実施の形態2においては、ECU70が、上記ステップ214および216の処理を実行することにより、前記第8の発明における「第2の過給機暖機手段」が実現されている。
【0086】
また、上述した実施の形態2においては、ECU70が、上記ステップ206の処理を実行することにより、前記第9の発明における「選択手段」が実現されている。
【0087】
実施の形態3.
[実施の形態3の特徴]
図7は、本発明の実施の形態3にかかるシステムの構造を説明するための図である。本実施の形態のシステムは、2つの過給機(ターボチャージャ)を有する独立排気エンジンシステムとして構成されている。尚、図7において、図5に示すシステムと共通の要素については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略あるいは簡略化することとする。
【0088】
図7に示すとおり、本実施の形態のシステムは内燃機関(エンジン)80を備えている。エンジン80は複数の気筒52を有するL型4気筒エンジンとして構成されている。第1気筒(#1)と第4気筒(#4)とから構成される第1気筒群における第1排気弁601の排気ポートは、過給機56aにおけるタービン562aに通じる第1排気通路62aに連通している。また、第2気筒(#2)と第3気筒(#3)から構成される第2気筒群における第1排気弁601の排気ポートは、過給機56bにおけるタービン562bに通じる第1排気通路62bに連通している。尚、第1排気通路62aの通路長さは、第2排気通路62bのそれに比して長い構成となっている。また、各気筒52における第2排気弁602の排気ポートは、タービン562a,562bを通らない第2排気通路64に連通している。
【0089】
このような構成のシステムにおいて、冷間始動時のターボ流しを行う場合に、上述した実施の形態2と同様に、気筒群毎にターボ流しの開始条件が設定される。但し、本実施の形態3においては、タービンの暖機要求が出された場合に、先ず、第2気筒群のターボ流しを開始し、第1気筒群はNA流しを維持することとする。上述したとおり、第1気筒群は第2気筒群に比して排気系の熱容量が大きい。このため、U/F触媒69の暖機が進行していないターボ流しの初期段階に、S/C触媒68の温度低下の抑制、およびU/F触媒69の暖機を効果的に行うことができる。したがって、エミッションの悪化を半減しつつ、タービンの暖機を行うことができる。
【0090】
[実施の形態3における具体的処理]
次に、図8を参照して、本実施の形態において実行する処理の具体的内容について説明する。図8は、エンジン80の冷間始動時にECU70が実行するルーチンのフローチャートである。
【0091】
図8に示すルーチンでは、先ず、バルブの開弁特性がNA流しに設定される(ステップ300)。次に、S/C触媒68a,68bの暖機制御が実施される(ステップ302)。次に、S/C触媒68a,68bの暖機が完了したか否かが判定される(ステップ304)。ここでは、具体的には、図6に示すステップ200乃至204と同様の処理が実行される。その結果、未だ暖機が完了していないと判定された場合には、本ルーチンは速やかに終了される。一方、S/C触媒68の暖機が完了したと判定された場合には、ターボ暖機制御を実行可能と判断されて、次のステップに移行し、第2気筒群のターボ流しが実行される(ステップ306)。ここでは、具体的には、第2気筒群の第1排気弁601が開弁されて、ターボ暖機が実行される。一方、第2気筒群は、NA流しが維持される(ステップ308)。これにより、S/C触媒68a,68bの暖機保持、およびU/F触媒69の暖機が行われる。
【0092】
次に、U/F触媒69の暖機が完了したか否かが判定される(ステップ310)。その結果、U/F触媒69の暖機が既に完了していると判定された場合には、第1気筒群のターボ流しを実行しても問題ないと判断されて、次のステップに移行し、第1気筒群のターボ流しが開始される(ステップ312)。一方、上記ステップ310においてU/F触媒69の暖機が未だ完了していないと判定された場合には、第1気筒群のターボ流しを開始するとエミッションが悪化すると判断されて、次のステップに移行し、要求出力が所定値以上か否かが判定される(ステップ314)。ここでは、具体的には、図6に示すステップ212乃至216と同様の処理が実行される。その結果、要求出力≧所定値の成立が認められない場合には、高空気量でのターボ流しを行うことができないと判断されて、本ルーチンは速やかに終了される。一方、上記ステップ314において要求出力≧所定値の成立が認められた場合には、高空気量でのターボ流しが可能と判断されて、上記ステップ312において第1気筒群のターボ流しが実行される。
【0093】
以上説明したとおり、本実施の形態3によれば、エンジン80の冷間始動後にターボ暖機を行う場合に、全ての気筒のターボ流しが同時に開始されるのではなく、先ず、S/C触媒までの排気経路の短い第2気筒群のターボ流しのみが開始される。つまり、第2気筒群のターボ暖機中に、排気系の熱容量の大きい第1気筒群のNA流しが維持されるので、S/C触媒68bの暖機保持、およびU/F触媒69の暖機を効果的に行うことができる。これにより、ターボ暖機中にエミッションが悪化する事態を効果的に抑制することができる。
【0094】
尚、上述した実施の形態3においては、S/C触媒68a,68bが、前記第6の発明における「触媒」に相当しているとともに、ECU70が、上記ステップ300の処理を実行することにより、前記第6の発明における「触媒暖機手段」が、上記ステップ306および308の処理を実行することにより、前記第6の発明における「過給機駆動手段」が、それぞれ実現されている。
【0095】
また、上述した実施の形態3においては、U/F触媒69が、前記第7の発明における「第2の触媒」に、U/F触媒INガス温度Tufが、前記第7の発明における「触媒温度相関値」にそれぞれ相当している。また、ECU70が、上記ステップ310の処理を実行することにより、前記第7の発明における「触媒温度相関値取得手段」が、上記ステップ310および312の処理を実行することにより、前記第7の発明における「第2の過給機暖機手段」が、それぞれ実現されている。
【0096】
また、上述した実施の形態3においては、ECU70が、上記ステップ312および314の処理を実行することにより、前記第8の発明における「第2の過給機暖機手段」が実現されている。
【0097】
また、上述した実施の形態3においては、ECU70が、上記ステップ306の処理を実行することにより、前記第10の発明における「選択手段」が実現されている。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の実施形態1のシステムの概略構成を説明するための図である。
【図2】点火遅角補正を実行する場合の各種状態量の変化を示すタイミングチャートである。
【図3】遅角量を特定するためにECU30が記憶しているマップを示す。
【図4】本発明の実施の形態1において実行されるルーチンのフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態2のシステムの概略構成を説明するための図である。
【図6】本発明の実施の形態2において実行されるルーチンのフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態3のシステムの概略構成を説明するための図である。
【図8】本発明の実施の形態3において実行されるルーチンのフローチャートであ
【符号の説明】
【0099】
10,50,80 内燃機関(エンジン)
12 気筒
14,54,54a,54b吸気通路
16,56a,56b 過給機
162,562a,562b タービン
201,601 第1排気弁
202,602 第2排気弁
22,62a,62b 第1排気通路
24,64a,64b 第2排気通路
26,66,66a,66b 排気通路
28 触媒
30,70 ECU(Electronic Control Unit)
32 点火プラグ
34,36,74a,74b,76 排気温センサ
68a,68b S/C触媒
69 U/F触媒
Tc 触媒INガス温度
Tt ターボINガス温度
Tsc S/C触媒INガス温度
Tuf U/F触媒INガス温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過給機のタービンに通じる第1排気通路と、
前記第1排気通路を開閉する第1排気弁と、
前記タービンの下流に通じる第2排気通路と、
前記第2排気通路を開閉する第2排気弁と、を気筒毎に備え、
前記第1排気通路と前記第2排気通路との合流点よりも下流の排気通路に配置された触媒と、
前記触媒の温度と相関を有する触媒温度相関値を取得する触媒温度相関値取得手段と、
前記第1排気弁を開弁することにより前記過給機を駆動する過給機駆動手段と、
前記過給機駆動手段を実行する場合に、前記触媒温度相関値が所定値よりも小さい場合には、点火時期を遅角させる点火時期遅角手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記点火時期遅角手段は、遅角量を演算する遅角量演算手段を含み、
前記遅角量演算手段は、前記触媒温度相関値が小さいほど前記遅角量を大きな値として演算することを特徴とする請求項1記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記タービンに流入する排気ガス(以下、ターボINガス)の温度を取得するターボINガス温度取得手段を更に備え、
前記点火時期遅角手段は、遅角量を演算する遅角量演算手段を含み、
前記遅角量演算手段は、前記ターボINガスの温度が小さいほど前記遅角量を大きな値として演算することを特徴とする請求項1または2記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記点火時期遅角手段は、
遅角量を演算する遅角量演算手段と、
前記遅角量に基づいて、最終点火時期を演算する最終点火時期演算手段と、
前記最終点火時期が所定のガード値よりも遅角となる場合に、前記最終点火時期を前記ガード値に変更するガード手段と、
を含むことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記タービンに流入する排気ガス(以下、ターボINガス)の温度を取得するターボINガス温度取得手段と、
前記ターボINガスの温度が所定値よりも大きい場合に、前記点火時期遅角手段の実行を禁止する禁止手段と、
を更に備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の内燃機関の制御装置。
【請求項6】
過給機のタービンに通じる第1排気通路と、
前記第1排気通路を開閉する第1排気弁と、
前記タービンの下流に通じる第2排気通路と、
前記第2排気通路を開閉する第2排気弁と、を気筒毎に備え、
前記第1排気通路と前記第2排気通路との合流点よりも下流の排気通路に配置された触媒と、
前記内燃機関の冷間始動時に、前記第1排気弁を閉弁し且つ前記第2排気弁を開弁することにより、前記触媒を暖機する触媒暖機手段と、
前記触媒の暖機が完了した場合に、前記複数の気筒を2つの気筒群に分類し、何れか一方の気筒群を選択して前記第1排気弁を開弁することにより、前記過給機を駆動する過給機駆動手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項7】
前記気筒群毎に前記過給機と前記触媒とを備え、前記各気筒群の排気通路は、前記触媒の下流の合流点において合流しており、
前記合流点よりも更に下流の排気通路に配置された第2の触媒と、
前記第2の触媒の温度と相関を有する触媒温度相関値を取得する触媒温度相関値取得手段と、
前記触媒温度相関値が所定値以上となった場合に、前記過給機駆動手段において選択されなかった気筒群の前記第1排気弁を開弁することにより、前記過給機を駆動する第2の過給機駆動手段と、
を更に備えることを特徴とする請求項6記載の内燃機関の制御装置。
【請求項8】
前記気筒群毎に前記過給機と前記触媒とを備え、
前記内燃機関に対する出力要求が所定値以上となった場合に、両方の前記気筒群の前記第1排気弁を開弁することにより、前記過給機を駆動する第2の過給機駆動手段を更に備えることを特徴とする請求項6記載の内燃機関の制御装置。
【請求項9】
前記2つの気筒群における排気系の熱容量は同等であり、
前記過給機駆動手段は、前記2つの気筒群の中で、前回のトリップの前記過給機駆動手段において選択されなかった気筒群を制御対象として選択する選択手段を含むことを特徴とする請求項6乃至8の何れか1項記載の内燃機関の制御装置。
【請求項10】
前記過給機駆動手段は、前記2つの気筒群の中で、排気系の熱容量が小さい気筒群を制御対象として選択する選択手段を含むことを特徴とする請求項6乃至8の何れか1項記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−174393(P2009−174393A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−12906(P2008−12906)
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】