説明

内燃機関の制御装置

【課題】クランキング開始時にバルブタイミングが特定時期にない場合であっても、それに起因する機関始動性の悪化を抑制する。
【解決手段】ロック機構を有する油圧駆動式の可変動弁装置を備える。ロック機構は、ベーンロータのロックピンをハウジングの凹部に嵌入させることにより、それらの相対回転を機械的にロックしてバルブタイミングを機関始動に適した特定時期にロックする。ロック機構は、カム軸に作用する交番トルクによるベーンロータとハウジングとの相対回転に際して、周方向に沿って凹部に形成された複数の段部に対してロックピンを順次嵌入させてバルブタイミングを特定時期まで段階的に進角させるラチェット機能を有する。クランキングの実行に際してロック機構がロック状態にないときに、ロック状態であるときと比較してスロットルバルブの開度やISCバルブの開度を小さい開度に設定する(時刻T21〜T22)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のバルブタイミングを変更する油圧駆動式の可変機構と、同バルブタイミングを特定時期にロックするロック機構とを有する可変動弁装置を備える内燃機関の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関に搭載される装置として、カム軸により開閉駆動される吸気バルブや排気バルブのバルブタイミングを機関運転状態に応じて変更する油圧駆動式の可変機構が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載されるものをも含め、従来一般の可変動弁装置についてその構成を図8に示す。図8(a)は、カバーを取り外した状態での可変動弁装置100の内部構造を示し、図8(b)は、図8(a)のB−B線に沿った断面構造を示す。なお、図8(a)ではカム軸200の回転方向を矢印RCにて示している。
【0004】
同図8に示す可変動弁装置100は、同一の回転軸線回りに回転する二つの回転体として、クランク軸にチェーン(いずれも図示略)を介して駆動連結されたスプロケット101、及びこれに固定されたハウジング102と、カム軸200に駆動連結されたベーンロータ103とを備えている。ハウジング102の内部に形成された複数の収容室105の内部には、ベーンロータ103に設けられた複数のベーン103Aがそれぞれ収容され、各収容室105はベーン103Aによって進角室106と遅角室107とに区画されている。そして、これら進角室106及び遅角室107に供給される油圧により収容室105でベーン103Aが変位し、ハウジング102とベーンロータ103とが相対回転することにより、クランク軸に対するカム軸200の相対回転位相、換言すればバルブタイミングが変更される。
【0005】
また、この可変動弁装置100には、バルブタイミングを最遅角時期及び最進角時期を除くそれらの間の中間時期であって且つ機関始動に適した時期(以下、「特定時期」という)にロックするロック機構110が設けられている。図8(b)に示すように、このロック機構110は、スプロケット101に形成された凹部112と、この凹部112に対して近接離間可能な態様でベーン103Aに収容されたロックピン111とを備えている。さらに、ベーン103Aにおいてロックピン111を収容する空間には、ロックピンを付勢するばね113が設けられるとともに、所定油圧にて作動油が供給される解除室114が形成されている。ロックピン111は、ばね113により凹部112に挿入する方向に付勢される一方、解除室114に供給される作動油の圧力に基づく力により凹部112から脱出する方向に付勢される。
【0006】
そして、機関停止要求時など、バルブタイミングを特定時期にロックする条件が成立した場合には、解除室114から作動油が排出される。これに伴い解除室114の油圧が解除油圧よりも低下すると、ばね113の付勢力によりロックピン111が凹部112に挿入し、ベーンロータ103とハウジング102との相対回転が機械的にロックされる。その結果、バルブタイミングが特定時期にある状態でクランキングが開始されるため、良好な機関始動性を確保することができる。
【0007】
一方、バルブタイミングの変更要求時など、バルブタイミングを特定時期から解除する条件が成立した場合には、解除室114に作動油が供給される。これに伴い解除室114の油圧が解除油圧よりも上昇すると、この油圧に基づく付勢力によりロックピン111が凹部112から脱出し、ベーンロータ103とハウジング102との相対回転のロックが解除される。そして、作動油が進角室106及び遅角室107に対して選択的に供給されることで、特定時期にロックされていたバルブタイミングが機関運転状態に適した時期に変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−41012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、機関停止要求時においてバルブタイミングが特定時期にロックされなかった場合には、バルブタイミングが最遅角時期など、特定時期とは異なる時期となった状態で内燃機関の運転が停止する。このため、次回の機関始動時において、バルブタイミングが特定時期にない状態でクランキングが開始されることとなり、機関始動が不能となったり、機関始動に長時間を要したりするなど、機関始動性の低下を招くこととなる。
【0010】
本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、クランキング開始時にバルブタイミングが特定時期にない場合であっても、それに起因する機関始動性の悪化を抑制することのできる内燃機関の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の装置は、機関バルブのバルブタイミングを変更する油圧駆動式の可変機構と、バルブタイミングを最遅角時期及び最進角時期の中間の機関始動に適した特定時期にロックするロック機構と、を有する可変動弁装置を備えた内燃機関に適用される。可変機構は、クランク軸に駆動連結された第1の回転体とカム軸に駆動連結された第2の回転体とを作動油の圧力に基づき同一の回転軸線周りに相対回転させることにより前記カム軸で開閉駆動される機関バルブのバルブタイミングを変更する。またロック機構は、第1の回転体及び第2の回転体の一方に設けられたロックピンをそれら回転体の他方に設けられた凹部に嵌入させることにより両回転体の相対回転を機械的にロックしてバルブタイミングを特定時期にロックしたロック状態にする一方、凹部からロックピンを抜脱することにより両回転体を相対回転可能な状態とする。ロック機構は、カム軸に作用する交番トルクに基づいて両回転体が相対回転するときに、回転体の周方向に沿って前記凹部に形成された複数の段部に対してロックピンを順次嵌入させてバルブタイミングを特定時期まで段階的に進角又は遅角させるラチェット機能を有する。
【0012】
上記装置では、カム軸に設けられたカムによって機関バルブを開弁させる期間、すなわちバルブリフト量が増大する期間においては、バルブスプリングが収縮するため、バルブタイミングを遅角させる方向に第1の回転体と第2の回転体とを相対回転させようとするトルク(正トルク)がカム軸に作用するようになる。一方、機関バルブを閉弁させる期間、すなわちバルブリフト量が減少する期間においては、収縮したバルブスプリングが元の状態に復元するため、バルブタイミングが進角する方向に両回転体を相対回転させようとするトルク(負トルク)がカム軸に作用するようになる。
【0013】
そして、機関始動時にロック機構がロック状態にない場合であって、可変動弁装置の進角室及び遅角室の油圧が十分に上昇しておらずカム軸に作用する交番トルクに基づき両回転体が相対回転する状況のもとでは、バルブリフト量の減少期間においてバルブスプリングの付勢力がカムに作用すると、カム軸に駆動連結された第2の回転体の回転速度がクランク軸に駆動連結された第1の回転体の回転速度を上回るようになる。これによりバルブタイミングが進角する方向に両回転体が相対回転し、一方の回転体の設けられたロックピンが他方の回転体に設けられた凹部の段部に嵌入可能な位置にまでバルブタイミングが変位したときに、ロックピンを段部に嵌入可能な状態になる。
【0014】
しかしながら、このようにして交番トルクに基づきロックピンを段部に嵌入可能な位置までバルブタイミングが変更される場合であっても、ロックピンを段部に嵌入可能な位置になっている期間が上記段部に嵌入するまでロックピンを移動させるのに要する期間よりも短い場合には、ロックピンを段部に対して適切に嵌入させることができない。そして、この場合にはラチェット機能を通じてバルブタイミングを特定時期まで進角することが困難になる。
【0015】
この点、請求項1に記載の装置では、機関始動装置によるクランキング操作の実行に際して、ロック機構がロック状態にないときに、ロック状態であるときと比較して吸気通路に設けられた吸気流量制御弁の開度が小さい開度に設定される。
【0016】
これにより、クランキング操作の実行時における吸気通路内の圧力が低くなってポンピングロスが大きくなるために、その分だけクランク軸及びカム軸の回転速度が低くなる。そのため、カムによる機関バルブの操作に伴いカム軸に作用する交番トルクの周期が長くなってバルブタイミングの変化速度が低くなることから、ロックピンを段部に嵌入可能な位置になっている期間が長くなって同ロックピンが段部に嵌入しやすくなる。したがって上記装置によれば、クランキング操作の開始時においてロック機構がロック状態になく、バルブタイミングが特定時期にない場合であっても、ロック機構のラチェット機能を通じてバルブタイミングを特定時期に迅速に進角させることができるようになる。これにより、バルブタイミングを早期に特定時期で固定することが可能になるため、機関始動性の悪化を抑制することができる。
【0017】
なお、バルブタイミングが特定時期よりも遅角側にあるときに、これを段階的に特定時期まで進角させる場合について説明したが、バルブタイミングが特定時期よりも進角側にあるときにこれを段階的に特定時期まで遅角させる場合にあっても、上述したようにクランキング操作の実行に際して吸気流量制御弁の開度を小さい開度に設定することにより、同バルブタイミングを特定時期にまで迅速に遅角させることができるようになる。
【0018】
機関温度の低い冷間始動時においては、噴射燃料が気化し難く同燃料の燃焼状態の悪化を招き易いために、機関始動性の悪化を招き易いと云える。
この点、請求項2に記載の装置によれば、機関温度が予め定められた所定温度以下であることを条件に吸気流量制御弁の開度が小さい開度に設定されるため、機関始動性の悪化を招き易い冷間始動時においてその悪化を好適に抑制することができる。
【0019】
機関始動が開始されてから完了するまでの期間が長くなると、点火プラグへの未燃燃料の付着に起因して失火が頻発することにより、機関始動性のさらなる悪化を招くおそれがある。
【0020】
この点、請求項3に記載の装置では、機関始動装置によるクランキング操作の実行に際してロック機構がロック状態にないときに、ロック状態であるときと比較して吸気流量制御弁の開度を小さい開度に設定するときには燃料噴射の実行が停止される。
【0021】
これにより、機関始動に際してバルブタイミングが特定時期になるまでの期間、言い換えれば機関始動性が低下している期間において燃料噴射が停止されるために、同期間において未燃燃料が点火プラグに付着することを回避できる。したがって、その後においてバルブタイミングが特定時期になって燃料噴射の実行が開始されたときにおいて、点火プラグへの未燃燃料の付着に起因する失火発生を抑えることができるため、機関始動性の低下を抑えることができる。
【0022】
機関始動装置によるクランキング操作が開始されてから、吸気通路内の圧力が吸気流量制御弁の開度に応じた低い圧力になるまでには、若干の時間を要する。そのため、ロック機構がロック状態にないときにおけるクランキング操作の実行に際して吸気流量制御弁の開度を小さい開度に設定した場合に、その効果が現われるようになるまでに若干の時間を要する。
【0023】
請求項4に記載の装置では、運転スイッチがオン操作されたときに機関始動装置によるクランキング操作が開始され、ロック機構がロック状態にないために吸気流量制御弁の開度を小さい開度に設定しているときであって、且つクランキング操作の開始後における経過時間が予め定められた所定時間未満であるときには運転スイッチがオフ操作された場合であっても同クランキング操作が継続される。
【0024】
こうした装置によれば、機関始動装置によるクランキング操作が開始された後において吸気通路内の圧力が十分に低くなる期間、言い換えれば吸気流量制御弁の開度を小さい開度に設定したことによる効果が見込まれる期間において同クランキング操作を確実に実行することができるために、バルブタイミングを特定時期にまで迅速に進角又は遅角させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明を具体化した一実施形態にかかる内燃機関の制御装置の概略構成を示す略図。
【図2】スプロケットを取り外した状態でスプロケット側から見た可変機構の内部構造を示す端面図。
【図3】図2のA−A線に沿った可変機構の断面構造を示す断面図。
【図4】カム軸の回転に伴い作用するカムトルクを説明する説明図であり、(a)はバルブリフト量の変化態様を示すグラフ、(b)はカムトルクの変化態様を示すグラフ、(c)はカムノーズ及びバルブスプリングの状態とカムトルクとの関係を示す図。
【図5】(a)〜(d)図2のA−A線に沿う断面構造を平面上に展開して模式的に示す図であり、機関始動時においてバルブタイミングが最遅角時期から特定時期まで進角する過程を順に示す断面図。
【図6】強制ロック処理の実行態様の一例を示すタイミングチャート。
【図7】強制ロック処理の実行手順を示すフローチャート。
【図8】(a)従来一般の可変機構の内部構造を示す端面図、(b)同可変機構の(a)におけるB−B線に沿った断面構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明にかかる内燃機関の制御装置を具体化した一実施形態について説明する。
図1に示すように、内燃機関10の気筒には、ピストン11が往復動可能に収容されている。このピストン11の頂面と気筒の内周面とによって燃焼室12が区画形成されている。燃焼室12には、同燃焼室12に吸入空気を供給する吸気通路13と、同燃焼室12から排気が排出される排気通路14とが接続されている。吸気通路13には、内部に燃料を噴射する燃料噴射弁15が取り付けられている。また燃焼室12には吸入空気と燃料との混合気を点火するための点火プラグ16が設けられている。
【0027】
内燃機関10の吸気通路13には、同吸気通路13の通路断面積を調節するためのスロットルバルブ17と、スロットルバルブ17を迂回して延びるアイドルスピードコントロール(以下「ISC」)通路18と、ISC通路18の通路断面積を調節するISCバルブ19とが設けられている。本実施形態の装置では、内燃機関10の運転状態に基づいてスロットルバルブ17の開度とISCバルブ19の開度とがそれぞれ調節されることにより、同内燃機関10の吸入空気量が運転状態に見合う量に調節される。
【0028】
内燃機関10のピストン11には、その往復運動を回転運動に変換するクランク軸20がコネクティングロッド23を介して連結されている。また、内燃機関10の上部には、吸気バルブ31を開閉する吸気用カム軸32と、排気バルブ41を開閉する排気用カム軸42とが設けられている。吸気用カム軸32の先端には、吸気バルブ31のバルブタイミングを変更する可変動弁装置30が設けられている。この可変動弁装置30に設けられた吸気用カム軸32のスプロケット35、排気用カム軸42のスプロケット45、及びクランク軸20のスプロケット21は、タイミングチェーン22を介して駆動連結されている。これにより、クランク軸20が回転すると、この回転がタイミングチェーン22を介してスプロケット35,45に伝達されて吸気用カム軸32及び排気用カム軸42がそれぞれ回転する。
【0029】
吸気バルブ31は、吸気用バルブスプリング34によって閉弁方向に付勢されている。この吸気用バルブスプリング34が吸気用カム軸32の回転に伴いこの吸気用カム軸32に設けられた吸気用カム33で押圧されて収縮及び復元することにより、吸気バルブ31が開閉される。
【0030】
また、排気バルブ41は、排気用バルブスプリング44によって閉弁方向に付勢されている。この排気用バルブスプリング44が排気用カム軸42の回転に伴いこの排気用カム軸42に設けられた排気用カム43で押圧されて収縮及び復元することにより、排気バルブ41が開閉される。
【0031】
一方、内燃機関10の下部には、作動油を貯留するオイルパン25が取り付けられるとともに、クランク軸20の回転力により駆動されてオイルパン25の作動油を汲み上げるオイルポンプ24が設けられている。このオイルポンプ24により作動油が供給される作動油通路28には、上述した可変動弁装置30の各油室に対する作動油の給排状態を変更する油路制御弁(以下、「OCV)」)25が設けられている。なお、オイルパン25に貯留される作動油は、可変動弁装置30を駆動するための油圧を発生する作動油としての機能の他、内燃機関10の各部を潤滑するための潤滑油としての機能も併せ有している。
【0032】
また、クランク軸20には、内燃機関10の始動時に同クランク軸20を強制回転(クランキング)させる機関始動装置としてのスタータ26が接続されている。このスタータ26には、バッテリ27から電力が供給される。
【0033】
内燃機関10には、同内燃機関10の運転状態を検出するための各種センサが設けられている。各種センサとしては、例えばクランク角センサ81や、カム角センサ82、吸気温センサ84等がある。クランク角センサ81は、クランク軸20の近傍に設けられてクランク角CAを検出する。カム角センサ82は、吸気用カム軸32の近傍に設けられて同吸気用カム軸32の回転位置を検出する。吸気温センサ84は、吸気通路13に設けられて吸入空気の温度(吸気温Tair)を検出する。また、内燃機関10が搭載される車両には、内燃機関10の始動要求時に操作者により押動操作される運転スイッチとしてのプッシュ式スタートスイッチ85が設けられている。このスタートスイッチ85は、押動操作されたときにスタート信号STSWを出力する。これら各種センサから出力される信号は、内燃機関10の各種装置を統括して制御する制御部80に取り込まれる。
【0034】
制御部80は、演算ユニットをはじめ、各種制御プログラムや演算マップ、制御の実行に際して算出されるデータ等を記憶保持する複数のメモリ80Aを備えている。なお、メモリ80Aの一部は、バッテリ27から常時電力が供給されることにより、機関停止中においてもその記憶された情報を保持するバックアップメモリとして機能する。そして、制御部80は、上述した各種センサの検出結果に基づいて内燃機関10の運転状態を監視し、その運転状態に基づいて燃料噴射弁15の作動制御や、点火プラグ16の作動制御、スロットルバルブ17の作動制御、ISCバルブ19の作動制御、OCV29の作動制御、スタータ26の駆動制御(スタータ制御)等の各種制御を実行する。
【0035】
次に、可変動弁装置30の構成について詳しく説明する。
図2に示すように、可変動弁装置30は、吸気バルブ31のバルブタイミングを変更する可変機構50と、バルブタイミングについての最進角時期PA及び最遅角時期PRを除くそれらの中間時期(以下、「特定時期PM」)において同バルブタイミングを機械的にロックするロック機構51とを備えている。なお特定時期PMとしては、機関始動に適したバルブタイミングであって、特に極低温始動時においても機関始動可能なバルブタイミングが設定されている。なお図2は、可変機構50からスプロケット35を取り外した状態で同スプロケット35側から見た可変機構50の内部構造を示している。
【0036】
可変機構50のハウジング52、上述したスプロケット35及びカバー36は、図示しないボルトによって互いに固定され、吸気用カム軸32の回転軸線周りに一体回転する。これらハウジング52、スプロケット35及びカバー36は、クランク軸20に駆動連結された第1の回転体として機能する。なお、吸気用カム軸32及びハウジング52は、図2に矢印で示す回転方向RCに回転するものとする。
【0037】
ハウジング52には、その径方向内側に延びる3つの区画部54が設けられている。またハウジング52内部には、ハウジング52と同一の回転軸線周りに回転するベーンロータ53が回動可能に収容されている。ベーンロータ53は、吸気用カム軸32に一体回転可能に連結されるボス53Aと、ボス53Aの径方向外側に突出する3つのベーン53Bを有している。そして、ハウジング52の各区画部54とベーンロータ53のボス53Aによって収容室55が区画形成されるとともに、この収容室55は各ベーン53Bにより進角室56と遅角室57とにそれぞれ区画されている。なお、ベーンロータ53は、吸気用カム軸32に駆動連結された第2の回転体として機能する。
【0038】
ロック機構51は、互いに異なるベーン53Bにそれぞれ設けられた進角ロック機構60と遅角ロック機構70とを備えている。進角ロック機構60は、バルブタイミングが特定時期PMよりも進角側に変化する方向にハウジング52とベーンロータ53とが相対回転することを規制する機能を有している。一方、遅角ロック機構70は、バルブタイミングが特定時期PMよりも遅角する方向にハウジング52とベーンロータ53とが相対回転することを規制する機能を有している。また、進角ロック機構60及び遅角ロック機構70は、バルブタイミングを特定時期PMよりも遅角側から特定時期PMまで段階的に進角させるラチェット機能を併せ有している。そして、これら進角ロック機構60及び遅角ロック機構70の協働によりバルブタイミングが特定時期PMにロックされる。
【0039】
次に、ロック機構51の詳細な構成について説明する。
図3に、図2のA−A線に沿った可変動弁装置30の断面構造を示す。図3に示すように、以下では、吸気用カム軸32の軸方向において可変機構50のカバー36が配置される側を「先端側ZA」とし、スプロケット35が配置される側を「基端側ZB」とする。
【0040】
進角ロック機構60は、ベーン53Bに設けられた円筒状の第1のロックピン61と、第1のロックピン61が嵌入又は抜脱する第1の凹部63とを備えている。この第1の凹部63は、カバー36に形成されている。
【0041】
第1のロックピン61は、ベーン53Bに形成されたベーン孔66において先端側ZA及び基端側ZBに往復動するとともに、その一部がベーン53Bの外部に突出して第1の凹部63に嵌入する。ベーン孔66は、第1のロックピン61により、基端側ZBの第1のばね室68と、先端側ZAの第1の解除室67とに区画されている。第1のばね室68には、第1のロックピン61を先端側ZAに付勢する第1のばね62が収容されている。一方、第1の解除室67には、上述した作動油通路28(図1参照)を通じて作動油が供給される。この供給される作動油の圧力に基づく力により第1のロックピン61は基端側ZBに付勢される。
【0042】
第1の凹部63は、カバー36においてその周方向に沿った円弧状をなしている。詳しくは、第1の凹部63は、相対的に深さが浅く形成された第1の上段部64と、相対的に深さが深く形成された第1の下段部65とから構成されている。第1の上段部64は、第1の下段部65よりも遅角側に形成されている。
【0043】
遅角ロック機構70は、ベーン53Bに設けられた円筒状の第2のロックピン71と、第2のロックピン71が嵌入する第2の凹部73とを備えている。この第2の凹部73は、カバー36に形成されている。
【0044】
第2のロックピン71は、ベーン53Bに形成されたベーン孔76において先端側ZA及び基端側ZBに往復動するとともに、ベーン53Bの外部に突出して第2の凹部73に嵌入する。ベーン孔76は、第2のロックピン71により、基端側ZBの第2のばね室78と、先端側ZAの第2の解除室77とに区画されている。第2のばね室78には、第2のロックピン71を先端側ZAに付勢する第2のばね72が収容されている。一方、第2の解除室77には、上述した作動油通路28(図1参照)を通じて作動油が供給される。この供給される作動油の圧力に基づく力により第2のロックピン71は基端側ZBに付勢される。
【0045】
第2の凹部73は、カバー36においてその周方向に沿った円弧状をなしている。詳しくは、第2の凹部73は、相対的に深さが浅く形成された第2の上段部74と、相対的に深さが深く形成された第2の下段部75とから構成されている。第2の上段部74は、第2の下段部75よりも遅角側に形成されている。
【0046】
第1のロックピン61、第2のロックピン71、第1の凹部63に形成された第1の上段部64及び第1の下段部65、並びに第2の凹部73に形成された第2の上段部74及び第2の下段部75は、吸気用カム軸32に作用する交番トルクによりバルブタイミングを特定時期PMにまで段階的に進角させるラチェット機能を有する。すなわち、第1の凹部63に形成された第1の上段部64及び第1の下段部65は、第1のロックピン61がこれら段部64,65に嵌入したときに同ロックピン61の遅角側への変位をそれぞれ規制する。一方、第2の凹部73に形成された第2の上段部74及び第2の下段部75は、第2のロックピン71が嵌入したときに同ロックピン71の遅角側への変位をそれぞれ規制する。さらに、第1のロックピン61が第1の下段部65に嵌入するとともに第2のロックピン71が第2の下段部75に嵌入したときには、第1の下段部65の進角側の内壁により第1のロックピン61の進角側への変位が規制される。また、併せて第2の下段部75の遅角側の内壁により第2のロックピン71の遅角側への変位が規制される。これにより、バルブタイミングが特定時期PMでロックされる。なお、図3には、ロック機構51がロック状態であって、バルブタイミングが特定時期PMでロックされた状態を示している。
【0047】
次に、上述した可変動弁装置30の動作態様について説明する。
図1はたは図2に示すように、機関運転に伴いクランク軸20が回転するとその駆動力がタイミングチェーン22を介して可変機構50のスプロケット35に伝達され、この可変機構50とともに、吸気用カム軸32が回転する。これにより、吸気バルブ31が吸気用カム軸32に設けられた吸気用カム33により開閉される。
【0048】
また、可変機構50の進角室56及び遅角室57に対する作動油の供給又は排出がOCV29を通じて制御されると、進角室56及び遅角室57の油圧に基づき収容室55でベーン53Bが変位する。これにより、スプロケット35及びハウジング52に対するベーンロータ53の相対回転位置、すなわちクランク軸20に対する吸気用カム軸32の相対回転位置が変更され、吸気バルブ31のバルブタイミングが変更される。
【0049】
具体的には、可変機構50の進角室56に対して作動油が供給される一方で遅角室57の作動油が排出されることにより、ベーンロータ53がハウジング52に対して進角側方向に相対回転すると、バルブタイミングが進角される。そして、ベーン53Bが遅角室57の進角側の内壁に接触すると、バルブタイミングは最進角時期PAとなる。また、遅角室57に対して作動油が供給される一方で進角室56の作動油が排出されることにより、ベーンロータ53がハウジング52に対して遅角側方向に相対回転すると、バルブタイミングは遅角される。そして、ベーン53Bが進角室56の遅角側の内壁に接触すると、バルブタイミングは最遅角時期PRとなる。
【0050】
機関停止要求時には、バルブタイミングが特定時期PMになるようにOCV29を通じて進角室56及び遅角室57の油圧が制御される。そして、進角ロック機構60の第1の解除室67(図3)から作動油が排出されてこの第1の解除室67の油圧が解除油圧よりも低くなると、第1のばね62で付勢された第1のロックピン61が第1の凹部63(第1の下段部65)に嵌入する。併せて、遅角ロック機構70の第2の解除室77から作動油が排出されてこの第2の解除室77の油圧が解除油圧よりも低下すると、第2のばね72で付勢された第2のロックピン71が第2の凹部73(第2の下段部75)に嵌入する。これにより、第1のロックピン61の進角側への変位が第1の下段部65の進角側の内壁で規制されるとともに、第2のロックピン71の遅角側への変位が第2の下段部75の遅角側の内壁で規制されて、ロック機構51がロック状態になる。すなわち、バルブタイミングが特定時期PMにロックされる。以下、このようにロック機構51がロック状態に移行して機関停止することを「機関通常停止」という。
【0051】
ここで、上述した機関通常停止の後に、内燃機関10の始動要求があったときには、ロック機構51がロック状態にあってバルブタイミングが特定時期PMにロックされた状態でクランキングが開始される。上述したように、この特定時期PMは機関始動に適したバルブタイミングに設定されているため、内燃機関10を良好に始動することができる。
【0052】
そして、機関始動後に所定条件が成立すると、第1のロックピン61及び第2のロックピン71が第1の凹部63及び第2の凹部73からそれぞれ抜脱される。具体的には、進角ロック機構60の第1の解除室67に作動油が供給されてこの第1の解除室67の油圧が解除油圧よりも高くなると、第1のロックピン61が、第1の解除室67内の油圧に基づく付勢力により第1のばね62の付勢力に抗して基端側ZBに移動して第1の凹部63から抜脱する。また、遅角ロック機構70の第2の解除室77に対しても作動油が供給されてこの第2の解除室77の油圧が解除油圧よりも高くなると、第2のロックピン71が、第2の解除室77の油圧に基づく付勢力により第2のばね72の付勢力に抗して基端側ZBに移動して第2の凹部73から抜脱する。これにより、ハウジング52とベーンロータ53との相対回転が許容される。その後、バルブタイミングが機関運転状態に適した所望の時期となるように、OCV29の制御が実行される。
【0053】
一方、機関停止要求時においてロック機構51がロック状態に移行しなかったときには、バルブタイミングが特定時期PMと異なる時期である状態で内燃機関10の運転が停止する。以下、このようにロック機構51がロック状態に移行することなく機関停止することを「機関異常停止」という。
【0054】
そして、こうした機関異常停止の後に、内燃機関10の始動要求があったときには、バルブタイミングが特定時期PMにない状態でクランキングが開始されることとなり、機関始動が不能となったり、機関始動に長期間を要したりする等、機関始動性の悪化を招くおそれがある。ちなみに、こうした機関異常停止時においては、内燃機関10の停止が完了するまでの間に、進角室56及び遅角室57の各油圧の低下に伴いバルブタイミングが遅角する方向に向かってベーンロータ53とスプロケット35とが相対回転するために、バルブタイミングが最遅角時期PRまで変化することが多い。
【0055】
そこで本実施形態では、機関異常停止後の機関始動性を向上させるべく、ロック機構51が上述したラチェット機能を有している。すなわち、ロック機構51の第1の凹部63及び第2の凹部73に複数の段部64,65,74,75が形成されており、クランキング時に吸気用カム軸32に作用する交番トルクを利用してバルブタイミングを最遅角時期PRから特定時期PMにまで進角させるようにしている。
【0056】
以下、図4及び図5を参照して、ロック機構51のラチェット機能により、機関始動時においてバルブタイミングが最遅角時期PRから特定時期PMまで進角する過程について説明する。
【0057】
なお、図4は吸気用カム軸32の回転に伴い同吸気用カム軸32に作用する回転トルク(カムトルク)の推移を示したものであり、図5(a)〜(d)はバルブタイミングが最遅角時期PRから特定時期PMまで進角する過程について順に示したものである。図5(a)〜(d)では、進角ロック機構60の動作状態と遅角ロック機構70の動作状態との関係を容易に把握できるように、第1のロックピン61と第2のロックピン71とを同一のベーン53Bから互いに逆向きに突出するように示しており、また第1の凹部63と第2の凹部73とを軸方向に向き合うように示している。
【0058】
先ず、機関運転中においては、吸気用カム33による吸気バルブ31の開閉駆動に伴い、バルブタイミングが遅角側に変化する方向にベーンロータ53とハウジング52とを相対回転させようとする正トルクと、バルブタイミングが進角側に変化する方向にベーンロータ53とハウジング52とを相対回転させようとする負トルクとが吸気用カム軸32に対して交互に作用する。
【0059】
すなわち、図4(c)の左図に示すように、バルブリフト量が増大する期間であるタイミングT11からタイミングT12までの期間では、吸気用カム軸32が回転方向RCに回転すると、吸気用カム33のカムノーズ33Aによりリフタ37を介して吸気用バルブスプリング34が押圧される。これにより、吸気用バルブスプリング34が収縮するため、正トルクF1が吸気用カム軸32に作用する。
【0060】
一方、図4(c)の右図に示すように、バルブリフト量が減少する期間であるタイミングT12からタイミングT13までの期間では、収縮した吸気用バルブスプリング34が元の状態に復元するため、負トルクF2が吸気用カム軸32に対して作用する。
【0061】
なお、図4(c)の中央図に示すように、吸気用バルブスプリング34が最も収縮するとともにカムノーズ33Aの頂点がリフタ37と接触しているタイミングT12では、正トルクF1及び負トルクF2のいずれも吸気用カム軸32に作用しない。
【0062】
これら正トルクF1及び負トルクF2とからなる交番トルクが、上述した機関異常停止後の機関始動時であって進角室56及び遅角室57の各油室の油圧が十分に上昇していない状況のもとで吸気用カム軸32に作用すると、ベーンロータ53及びハウジング52が相対回転する。すなわち、負トルクF2が作用する期間にはロックピン61,71はカバー36に対して進角側に変位し、正トルクF1が作用する期間にはロックピン61,71はカバー36に対して遅角側に変位する。
【0063】
例えばバルブタイミングが最遅角時期PRにあるときに上述したような負トルクF2が吸気用カム軸32に作用すると、吸気用カム軸32に駆動連結されたベーンロータ53の回転速度がクランク軸20に駆動連結されたハウジング52の回転速度を一時的に上回る。これにより、ベーンロータ53がハウジング52に対して進角側方向に相対回転し、第1のロックピン61及び第2のロックピン71が進角側に変位する。そして、図5(a)に示すように、第1のロックピン61が第1の上段部64に嵌入可能な位置にあるときに、すなわち第1のロックピン61が第1の上段部64の基端側ZBに位置するときに、第1のロックピン61が第1の上段部64に嵌入する。この状態において正トルクF1が吸気用カム軸32に作用することによりバルブタイミングが遅角する方向にハウジング52とベーンロータ53とが相対回転しようとするときには、第1の上段部64の遅角側の内壁に第1のロックピン61が接触する。そのため、バルブタイミングが遅角する方向にハウジング52とベーンロータ53とが相対回転することが規制される。これにより、最遅角時期PRよりも進角側の第1遅角時期PX1において、バルブタイミングの遅角が規制される。
【0064】
そして、この状態で、吸気用カム軸32に対してさらに作用する交番トルクに基づき、第2のロックピン71が第2の上段部74に嵌入し(図5(b))、その後において第1のロックピン61が第1の下段部65に嵌入し(図5(c))、さらにその後において第2のロックピン71が第2の下段部75に嵌入する(図5(d))。これにより、バルブタイミングの遅角が第2遅角時期PX2、第3遅角時期PX3、特定時期PMで順に規制されて、バルブタイミングが特定時期PMでロックされた状態に移行するようになる。
【0065】
ところで、上述したように第1のロックピン61が第1の上段部64や第1の下段部65に嵌入可能な位置まで変位した場合、あるいは第2のロックピン71が第2の上段部74や第2の下段部75に嵌入可能な位置まで変位した場合であっても、ロックピン61,71が段部64,65,74,75に適正に嵌入するとは限らない。ロックピン61,71を段部64,65,74,75に嵌入可能な位置にある期間が同ロックピン61,71が段部64,65,74,75に向けて変位して嵌入するのに要する期間よりも短い場合には、ロックピン61,71を段部64,65,74,75に適正に嵌入させることができない。そして、この場合にはロック機構51のラチェット機能を通じてバルブタイミングを特定時期PMまで進角させることが困難になる。
【0066】
そこで、本実施形態の装置では、スタータ26によるクランキング操作の実行に際して、ロック機構51がロック状態にないときには、ロック状態であるときと比較して吸気通路13に設けられたスロットルバルブ17の開度やISCバルブ19の開度を小さい開度に設定するようにしている。具体的には、このときスロットルバルブ17が閉じられるとともに(スロットル開度=「0」)、ISCバルブ19の開度がその設定範囲における最小開度に設定される。
【0067】
以下、こうしたロック機構51を強制的にロック状態にするための処理(強制ロック処理)を実行することによる作用について説明する。
図6は上記強制ロック処理の実行態様の一例を示している。
【0068】
図6に示す例では、時刻T21において、スタートスイッチ85が押動操作(オン操作)される。このときロック機構51がロック状態でなくバルブタイミングが特定時期PMでないために、スロットルバルブ17が閉じられるとともに、ISCバルブ19の開度が最小開度に設定される。すなわち、図6に一点鎖線で示す通常のスタータ制御の実行態様と比較して、スロットルバルブ17の開度とISCバルブ19の開度が小さい開度に設定される。そして、その状態でスタータ26が駆動されてクランキング操作が実行される(時刻T21〜T22)。
【0069】
このときスロットルバルブ17の開度やISCバルブ19の開度が小さいために、クランキング操作の実行時における吸気通路13内の圧力が低くなってポンピングロスが大きくなり、その分だけクランク軸20の回転速度(機関回転速度)及び吸気用カム軸32の回転速度が低くなる。これにより、吸気用カム33による吸気バルブ31の操作に伴って吸気用カム軸32に作用する交番トルクの周期が長くなってバルブタイミングの変化速度(詳しくは、ハウジング52及びベーンロータ53の相対回転速度)が低くなる。そのため、ロックピン61,71を段部64,65,74,75に嵌入可能な位置になっている期間が長くなり、これにより同期間が段部64,65,74,75にロックピン61,71が嵌入するのに要する期間より短くなることが抑えられるために、ロックピン61,71が段部64,65,74,75に嵌入し易くなる。したがって、ロック機構51のラチェット機能によってバルブタイミングを段階的に進角させる操作が速やかに行われるようになって、バルブタイミングが特定時期PMまで迅速に進角するようになる。
【0070】
このように本実施形態によれば、クランキング操作の開始時においてロック機構51がロック状態になくバルブタイミングが特定時期PMにない場合であっても、ロック機構51のラチェット機能を通じてバルブタイミングを特定時期PMに迅速に進角させることができるようになる。そして、これによりバルブタイミングを早期に特定時期PMで固定することができるために、機関始動性の悪化が抑制されるようになる。
【0071】
なお本実施形態では、スロットルバルブ17の開度やISCバルブ19の開度を小さい開度に設定するときにおいて(時刻T21〜T22)、燃料噴射が実行されない。これは次のような理由による。クランキング操作の実行中において常に燃料噴射が実行される装置においては、内燃機関10の始動が完了するまでの期間が長くなると、点火プラグ16への未燃燃料の付着量が多くなるために、これに起因して失火が頻発することによって機関始動性の悪化を招くおそれがある。この点をふまえて本実施形態では、クランキング操作の実行に際してスロットルバルブ17の開度やISCバルブ19の開度が小さい開度に設定される期間であってバルブタイミングが特定時期PMになるまでの期間、言い換えれば機関始動性が不要に低下している期間において燃料噴射が停止される。そのため、同期間における未燃燃料の点火プラグ16への付着を回避することができる。したがって、その後においてバルブタイミングが特定時期PMになって通常のスタータ制御による燃料噴射の実行が開始されたときにおいて、点火プラグ16への未燃燃料の付着に起因する失火発生を抑えることができるために、機関始動性の低下を抑えることができる。
【0072】
そして、上述したラチェット機能を通じてロック機構51がロック状態になると(時刻T22)、その後において通常のスタータ制御が実行される。具体的には、スタートスイッチ85がオン操作されていることを条件に、スタータ26の駆動が継続されてクランキング操作が継続されるとともに、スロットルバルブ17の開度及びISCバルブ19の開度が機関始動に適した比較的大きい開度に変更され、さらには燃料噴射の実行が開始される。
【0073】
このとき、ロック機構51がロック状態でありバルブタイミングが特定時期PMで固定されているために、内燃機関10の始動が適正に行われる(時刻T22以降)。そして、その後において内燃機関10が完爆状態になって機関回転速度が所定速度(例えば400回転/分)を上回ると、スタータ26の駆動が停止されてクランキング操作が停止される(時刻T23)。
【0074】
<発明の詳細>
以下、上記強制ロック処理の実行手順について図7を参照して詳細に説明する。
なお図7のフローチャートに示される一連の処理は、上記強制ロック処理の実行手順を概念的に示したものであり、実際の処理は所定周期毎の割り込み処理として制御部80により実行される。
【0075】
図7に示すように、この処理では先ず、始動要求があるか否かが判断される(ステップS11)。ここでは、操作者による押動操作に伴いプッシュ式スタートスイッチ85からスタート信号STSWが出力されたときに始動要求があると判断される。そして、始動要求がないと判断されると(ステップS11:NO)、本処理は終了される。
【0076】
一方、始動要求があると判断される場合には(ステップS11:YES)、極低温始動時であるか否かが判断される(ステップS12)。具体的には、吸気温センサ84により検出される吸気温Tairが予め定められた所定温度(例えば、摂氏マイナス30度)以下であるときに極低温始動時であると判断される。
【0077】
ここで、吸入空気の温度がごく低く内燃機関10の温度が低い極低温始動時においては、作動油の温度が低くその粘性が高くなる。そのため、ロックピン61,71の段部64,65,74,75への嵌入に際して同ロックピン61,71がベーン53Bから突出するときに生じる作動油の抵抗力が大きくなる。その結果、ロックピン61,71が段部64,65,74,75に向けて変位して嵌入するのに要する期間が長くなるため、クランキングの実行中にバルブタイミングを特定時期PMまで変更してロック機構51をロック状態に移行させ難くなる。また、そうした極低温始動時には、噴射燃料の気化が促進されず燃焼し難い状態になるため、クランキング開始から内燃機関10が完爆状態に移行するまでの期間が長くなる。したがって、こうした極低温始動時におけるクランキング開始に際してロック機構51がロック状態になっておらずバルブタイミングが特定時期PMになっていない場合には、機関始動性の悪化がより顕著なものとなる。
【0078】
一方、そうした極低温始動時ではなく、内燃機関10の温度が比較的高い場合には、たとえロック機構51がロック状態になっておらずバルブタイミングが特定時期PMにロックされていない場合であっても、機関始動を完了させることができる可能性が高いと云える。これは次のような理由による。すなわち、内燃機関10の温度が比較的高く作動油の粘性が低いときには、ロックピン61,71のベーン53Bからの突出時に生じる作動油の抵抗力が小さいために、ロックピン61,71が段部64,65,74,75に嵌入し易くなる。そのため、ラチェット機能を通じて比較的良好にバルブタイミングを進角させて特定時期PMにまで移行させることができる。また、内燃機関10の温度が比較的高い場合には、燃焼室12における噴射燃料の気化が比較的良好に行われるために、同燃料が燃焼しやすい状況になるためである。
【0079】
そこで、本処理において極低温始動時ではないと判断される場合には(ステップS12:NO)、ロック機構51のロック状態であるか否かに関わらず、通常のスタータ制御が実行される(ステップS18)。すなわち、スタータ26によるクランキングが実行されるとともに、スロットルバルブ17の開度やISCバルブ19の開度が機関始動に適した比較的大きい開度に設定され、さらには燃料噴射が実行されて本処理は終了される。
【0080】
一方、極低温始動時であると判断される場合には(ステップS12:YES)、ロック機構51がロック状態にあるか否かが判定される(ステップS13)。なお本実施形態の装置では、内燃機関10の運転停止に際して、カム角センサ82によって検出される吸気バルブ31のバルブタイミングが特定時期PMになったか否かが監視されるとともに、その監視結果が制御部80に記憶されている。そして、直前の機関停止に際して吸気バルブ31のバルブタイミングが特定時期PMになったことをもって、ロック機構51がロック状態にあると判断される。
【0081】
そして、ロック機構51がロック状態にあると判断される場合には(ステップS13:YES)、極低温始動時であるとはいえ通常のスタータ制御を通じた機関始動が可能であるとして、この場合にも通常のスタータ制御が実行される(ステップS18)。
【0082】
一方、ロック機構51がロック状態ではないと判断されると(ステップS13:NO)、前述したようにスロットルバルブ17が閉じられるとともにISCバルブ19の開度が最小開度に設定され、さらには燃料噴射の実行が停止される(ステップS14)。そして、この状態でスタータ26の駆動によるクランキング操作が開始される(ステップS15)。
【0083】
本処理では、単にスタートスイッチ85がオフ操作されたとしても(ステップS16:NO)、こうしたクランキング操作の実行が停止されずに継続される。スタートスイッチ85がオフ操作されており、且つ上記クランキング操作の実行(ステップS15)が所定時間TL(例えば、数十秒)以上にわたって継続されている場合には(ステップS16:YES)、クランキング操作の実行が中断されて、本処理は終了される。
【0084】
スロットルバルブ17の開度やISCバルブ19の開度を小さい開度に設定したところで、クランキング操作の開始後において吸気通路13内の圧力がスロットルバルブ17の開度やISCバルブ19の開度に応じた低い圧力になるまでには若干の時間を要する。吸気通路13内の圧力が高いときには、ポンピングロスが小さいためにクランク軸20や吸気用カム軸32の回転速度が高く、ロック機構51のロックピン61,71を段部64,65,74,75に適正に嵌入させることができない可能性が高い。こうしたことから、ロック機構51がロック状態にないときにおけるクランキング操作の実行に際してスロットルバルブ17の開度やISCバルブ19の開度を小さい開度に設定した場合には、その効果が現われるようになるまでに若干の時間を要すると云える。
【0085】
本実施形態では、クランキング操作の実行中においてスロットルバルブ17の開度やISCバルブ19の開度が小さい開度に設定されており、且つクランキング操作の開始後における経過時間が予め定められた所定時間TL未満であるときには、スタートスイッチ85がオフ操作された場合であってもクランキング操作が継続される。そのため、スタータ26によるクランキング操作が開始された後において吸気通路13内の圧力が十分に低くなる期間、言い換えればスロットルバルブ17の開度やISCバルブの開度を小さい開度に設定したことによる効果が見込まれる期間において同クランキング操作を確実に実行することができるようになる。これにより、バルブタイミングを特定時期PMにまで迅速に進角させることができるようになる。
【0086】
なお本実施形態では、各種の実験やシミュレーションの結果をもとに上記効果が見込まれる期間においてクランキング操作が確実に実行されるようになる同クランキング操作の継続時間が予め求められるとともに、同時間が所定時間TLとして制御部80に記憶されている。
【0087】
そして本処理では、スタートスイッチ85がオフ操作されていない場合、あるいはスタートスイッチ85がオフ操作されているとはいえクランキング操作の継続時間が所定時間TL未満の場合には(ステップS16:NO)、バルブタイミングが特定時期PMになるまでの間(ステップS17:NO)、上述した実行態様でのクランキング操作が継続される(ステップS14,S15)。
【0088】
その後において本処理が繰り返し実行されて、ロック機構51がロック状態になってバルブタイミングが特定時期PMになると(ステップS17:YES)、通常のスタータ制御が実行される(ステップS18)。すなわち、スタートスイッチ85がオン操作されていることを条件に、スタータ26の駆動が継続されるとともに、スロットルバルブ17の開度及びISCバルブ19の開度が機関始動に適した比較的大きい開度に設定され、さらには燃料噴射が実行される。
【0089】
以上説明したように本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られるようになる。
(1)スタータ26によるクランキング操作の実行に際してロック機構51がロック状態にないときに、ロック状態であるときと比較して吸気通路13に設けられたスロットルバルブ17の開度やISCバルブ19の開度を小さい開度に設定するようにした。これにより、バルブタイミングを早期に特定時期PMで固定することができるため、機関始動性の悪化を抑制することができる。
【0090】
(2)吸気温Tairが所定温度以下であることを条件に、スロットルバルブ17の開度とISCバルブ19の開度を小さい開度に設定する処理を実行するようにした。そのため、噴射燃料が気化し難く同燃料の燃焼状態の悪化を招き易いために機関始動性の悪化を招き易い冷間始動時において、その悪化を好適に抑制することができる。
【0091】
(3)スロットルバルブ17の開度やISCバルブ19の開度を小さい開度に設定するときにおいて、燃料噴射を実行しないようにした。これにより、バルブタイミングが特定時期PMになるまでの期間、言い換えれば機関始動性が不要に低下している期間において、未燃燃料が点火プラグ16に付着することを回避できる。したがって、その後においてバルブタイミングが特定時期PMになって通常のスタータ制御による燃料噴射の実行が開始されたときにおいて、点火プラグ16への未燃燃料の付着に起因する失火発生を抑えることができるために、機関始動性の低下を抑えることができる。
【0092】
(4)クランキング操作の実行中においてスロットルバルブ17の開度やISCバルブ19の開度が小さい開度に設定されており、且つクランキング操作の開始後における経過時間が予め定められた所定時間TL未満であるときには、スタートスイッチ85がオフ操作された場合であっても同クランキング操作を継続するようにした。そのため、スタータ26によるクランキング操作が開始された後において吸気通路13内の圧力が十分に低くなる期間、言い換えればスロットルバルブ17の開度やISCバルブの開度を小さい開度に設定したことによる効果が見込まれる期間において同クランキング操作を確実に実行することができる。これにより、バルブタイミングを特定時期PMにまで迅速に進角させることができるようになる。
【0093】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・上記実施形態で示したロック機構51の構成は一例であって適宜変更することができる。例えば、上記実施形態では進角ロック機構60及び遅角ロック機構70として特定時期PMよりも遅角側にあるバルブタイミングを進角させるラチェット機能を有する例を示したが、これに代えて特定時期PMよりも進角側にあるバルブタイミングを遅角させる機能も併せて有するように進角ロック機構60及び遅角ロック機構70を構成してもよい。
【0094】
・上記実施形態では、ロック機構51が進角ロック機構60と遅角ロック機構70とにより構成される例を示した。これに対して、単一の機構によりロック機構51が構成されていてもよい。この場合であっても、深さが異なる複数の段部が単一のロック機構の凹部に形成されることにより、このロック機構にバルブタイミングを自律的に変更することのできるラチェット機能を発揮させることが可能である。
【0095】
・上記実施形態では、凹部63,73がカバー36に形成された例を示したが、これら凹部63,73をスプロケット35に形成するようにしてもよい。
・上記実施形態では、第1のロックピン61及び第2のロックピン71がいずれもベーンロータ53に設けられる一方、第1の凹部63及び第2の凹部73がいずれもカバー36に設けられる例を示した。これに対し、ロックピン61,71がいずれもカバー36に設けられる一方、凹部63,73がいずれもベーンロータ53に設けられる構成を採用してもよい。また、ロックピン61,71が互いに異なる回転体に設けられる構成を採用してもよい。例えば、第1のロックピン61をベーンロータ53に設けるとともに第1の凹部63をカバー36に設ける一方、第2のロックピン71をカバー36に設けるとともに第2の凹部73をベーンロータ53に設けるようにしてもよい。
【0096】
・上記実施形態では、ベーンロータ53に設けられたロックピン61,71が先端側ZA(図3参照)及び基端側ZBに往復動するとともに、これらロックピン61,71がそれぞれ嵌入する凹部63,73がカバー36に形成された例を示した。これに対し、ベーンロータ53の外周面から突出する態様でロックピンを設ける一方、このロックピンが嵌入する凹部をハウジング52の内周面に設ける構成を採用してもよい。
【0097】
・上記実施形態では、スプロケット35がクランク軸20に駆動連結され、ベーンロータ53が吸気用カム軸32に駆動連結された例を示した。これに代えて、スプロケット35が吸気用カム軸32に駆動連結され、ベーンロータ53がクランク軸20に駆動連結される態様にて可変動弁装置30を構成することもできる。
【0098】
・ロック機構51がロック状態にあるか否かの判定を、例えばロックピン61,71の移動位置を検出するためのセンサを新たに設けるとともに同センサの検出結果に基づき行うようにするなど、カム角センサ82以外のセンサの検出結果に基づき行うようにしてもよい。
【0099】
・上記実施形態では、吸気温センサ84により検出される吸気温Tairが予め定められた所定温度以下であるときに極低温始動時であると判断される例を示した。極低温始動時であることを判断する条件は、この例に限らず適宜変更することができる。例えば、吸気通路13に吸気温を検出するためのセンサを内蔵したエアフロメーターを設けるとともに、このエアフロメーターにより吸気温Tairを検出するようにしてもよい。
【0100】
また、極低温始動時であると判断する際の吸気温Tairの閾値(上記実施形態では摂氏マイナス30度)についても任意に変更することができる。この閾値は内燃機関10の特性等を考慮して設定するようにすればよい。
【0101】
さらに、上記実施形態で示した吸気温Tairが低温であることを条件とする態様に代えて、内燃機関10の冷却水温の温度が所定温度以下であることを条件としたり作動油の温度が所定温度以下であることを条件としたりすることもできる。要は、機関温度が低くなっていることを精度良く判断することのできる条件であればよい。ここで、たとえ吸気温Tairが低温であっても、内燃機関10が停止されてから再度始動されるまでの期間が短い場合には、内燃機関10の温度が比較的高く維持されている。この場合には、作動油の粘度が比較的低いためにロックピン61,71の移動速度が高く、内燃機関10の温度が高いために噴射燃料が気化し易い。そのため、バルブタイミングが特定時期PMでない状態で通常のスタータ制御を通じて機関始動が実行されたとしても、その始動が比較的良好に完了する可能性がある。上記構成によれば、内燃機関10の温度に基づいて、スロットルバルブ17の開度やISCバルブ19の開度を小さい開度に設定する処理の実行機会を適切に判断することができる。
【0102】
・図7のステップS12の処理を省略してもよい。すなわち、極低温始動時であるか否かに関わらず、ロック機構51がロック状態でないと判断されるときに、ステップS14及びステップS15に示した実行態様でクランキング操作を実行するようにしてもよい。
【0103】
・ロック機構51がロック状態でない状況でのクランキング操作の実行に際して燃料噴射を実行するようにしてもよい。
・スタートスイッチ85がオフ操作されたときに、クランキング操作の実行継続時間によることなく、同クランキング操作を停止させるようにしてもよい。
【0104】
・上記実施形態では、スタータ26によるクランキング操作の実行に際してロック機構51がロック状態にないときに、スロットルバルブ17を閉じるとともにISCバルブ19の開度を最小開度に設定する例を示した。これに代えて、スロットルバルブ17を若干開くようにしたり、ISCバルブ19の開度を最小開度よりも若干大きい開度に設定したりしてもよい。要は、クランキング操作の実行に際してロック機構51がロック状態にないときに、ロック状態であるときと比較してスロットルバルブ17の開度やISCバルブ19の開度を小さい開度に設定することができればよい。
【0105】
・上記実施形態は、ISC通路18及びISCバルブ19を備える内燃機関10に限らず、それらISC通路18及びISCバルブ19を備えていない内燃機関にも、その構成を適宜変更した上で適用することができる。
【0106】
・上記実施形態では、吸気バルブ31のバルブタイミングを変更する可変動弁装置30を備える内燃機関の制御装置として具体化した例を示した。その他、排気バルブ41のバルブタイミングを変更する可変動弁装置を備える内燃機関の制御装置や、吸気バルブ31のバルブタイミングを変更する可変動弁装置と排気バルブ41のバルブタイミングを変更する可変動弁装置とを共に備える内燃機関の制御装置において、本発明を具体化することも可能である。
【0107】
・上記実施形態では、バルブタイミングが特定時期よりも遅角側にあるときに、これを段階的に特定時期まで進角させる場合について説明した。これに限らず、バルブタイミングが特定時期よりも進角側にあるときにこれを段階的に特定時期まで遅角させる場合にあっても、吸気通路に設けられる吸気流量制御弁(スロットルバルブやISCバルブ)の開度を小さい開度に設定することにより、バルブタイミングを特定時期にまで迅速に遅角させることができる。
【0108】
・車両駆動源として内燃機関の他、電動発電機(モータジェネレータ)を備えるハイブリッド車両にあっては、内燃機関の始動操作がこの電動発電機を通じて行われることとなる。上記実施形態において説明した一連の制御は、こうした電動発電機によって内燃機関の始動操作が行われる場合であっても適用することができる。なお、本発明において適用可能な機関始動装置は内燃機関を停止状態から完爆状態に移行させることが可能なものであれば、上述したスタータや電動発電機に限定されない。
【符号の説明】
【0109】
10…内燃機関、11…ピストン、12…燃焼室、13…吸気通路、14…排気通路、15…燃料噴射弁、16…点火プラグ、17…スロットルバルブ、18…ISC通路、19…ISCバルブ、20…クランク軸、21…クランク軸用スプロケット、22…タイミングチェーン、23…コネクティングロッド、24…オイルポンプ、25…オイルパン、26…スタータ(機関始動装置)、27…バッテリ、28…作動油通路、29…油路制御弁(OCV)、30…可変動弁装置、31…吸気バルブ、32,200…吸気用カム軸、33…吸気用カム、33A…吸気用カムノーズ、34…吸気用バルブスプリング、35,101…スプロケット(第1の回転体)、36…カバー(第1の回転体)、37…リフタ、41…排気バルブ、42…排気用カム軸、43…排気用カム、44…排気用バルブスプリング、45…排気用カム軸用スプロケット、50,100…可変機構、51,110…ロック機構、52,102…ハウジング(第1の回転体)、53,103…ベーンロータ(第2の回転体)、53A…ボス、53B,103A…ベーン、54…区画部、55,105…収容室、56,106…進角室、57,107…遅角室、60…進角ロック機構、61…第1のロックピン、62…第1のばね、63…第1の凹部、64…第1の上段部、65…第1の下段部、66,76…ベーン孔、67…第1の解除室、68…第1のばね室、70…遅角ロック機構、71…第2のロックピン、72…第2のばね、73…第2の凹部、74…第2の上段部、75…第2の下段部、77…第2の解除室、78…第2のばね室、80…制御部、80A…メモリ、81…クランク角センサ、82…カム角センサ、84…吸気温センサ、85…スタートスイッチ、111…ロックピン、112…凹部、113…ばね、114…解除室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸に駆動連結された第1の回転体とカム軸に駆動連結された第2の回転体とを作動油の圧力に基づき同一の回転軸線周りに相対回転させることにより前記カム軸で開閉駆動される機関バルブのバルブタイミングを変更する油圧駆動式の可変機構と、
前記両回転体の一方に設けられたロックピンを前記両回転体の他方に設けられた凹部に嵌入させることにより前記両回転体の相対回転を機械的にロックしてバルブタイミングを最遅角時期及び最進角時期の中間の機関始動に適した特定時期にロックしたロック状態にする一方、前記凹部から前記ロックピンを抜脱することにより前記両回転体を相対回転可能な状態とするものであり、前記カム軸に作用する交番トルクに基づいて前記両回転体が相対回転するときに前記回転体の周方向に沿って前記凹部に形成された複数の段部に対して前記ロックピンを順次嵌入させてバルブタイミングを前記特定時期まで段階的に進角又は遅角させるラチェット機能を有するロック機構と
を有する可変動弁装置を備えた内燃機関の制御装置において、
機関始動装置によるクランキング操作の実行に際して、前記ロック機構がロック状態にないときには、前記ロック状態であるときと比較して吸気通路に設けられた吸気流量制御弁の開度を小さい開度に設定する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、
当該装置は、機関温度が予め定められた所定温度以下であることを条件に、前記吸気流量制御弁の開度を小さい開度に設定する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の内燃機関の制御装置において、
当該装置は、前記吸気流量制御弁の開度を小さい開度に設定するときには燃料噴射の実行を停止する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置において、
当該装置は、運転スイッチがオン操作されたときに前記機関始動装置によるクランキング操作を開始するものであり、前記吸気流量制御弁の開度を小さい開度に設定しているときであって、且つ前記クランキング操作の開始後における経過時間が予め定められた所定時間未満であるときには前記運転スイッチがオフ操作された場合であっても前記クランキング操作を継続するものである
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−68086(P2013−68086A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205046(P2011−205046)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】