説明

内燃機関の触媒早期暖機制御装置

【課題】複数種類の燃料を使用する内燃機関において、点火遅角制御を行なうことができる点火遅角制御条件をより適切に判断する。
【解決手段】始動後時間、エンジン水温、吸気温、大気圧、点火時期について、使用燃料の性状に合わせてそれぞれの判定値を設定し、始動後時間判断部101、エンジン水温判断部102、吸気温判断部103、大気圧判断部104、点火時期判断部105で、実際に検知された始動後時間、エンジン水温、吸気温、大気圧、点火時期を現在使用中と特定された燃料についての判定値に対して比較した結果として、点火遅角制御条件の成立を判断し、点火遅角制御条件が成立する場合に点火遅角制御部108が現在使用燃料の性状に合わせて点火遅角制御を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関の排気浄化装置に設置された触媒の早期暖機を制御する触媒早期暖機制御装置に関する。とくに、複数種類の燃料たとえばガソリン等の液体燃料とCNG(Compressed Natural Gas)等の気体燃料とを使用する内燃機関の触媒早期暖機制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の内燃機関の触媒早期暖機制御装置においては、特許文献1に示されるように、エンジン始動開始後アイドル時において、触媒温度を推定し、推定した触媒温度が触媒暖機完了温度に達した場合に、触媒が活性したと判断して、点火遅角制御および空燃比制御を終了している。
【0003】
ところで、最近においては、複数種類の燃料たとえばガソリン等の液体燃料とCNG等の気体燃料とを使用する内燃機関がある。一般的に、CNG等の気体燃料はガソリン等の液体燃料よりも安価であるから、なるべくCNG等の気体燃料を使用するようにすれば、燃費を抑えることができる。そして、ガソリン等の液体燃料とCNG等の気体燃料のように性状の大きく異なる燃料を用いる内燃機関であっても、始動時に用いる燃料が決められている場合には、上記の制御においても触媒温度を正確に推定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−321590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示された内燃機関の触媒早期暖機制御装置においては、複数種類の燃料を使用する内燃機関において、燃料の切替を運転者が任意のタイミングで人為的に行なうようにした場合には、適した早期暖機(触媒早期活性化)制御が必ずしも行なわれない不都合がある。すなわち、この触媒早期暖機制御装置においては、使用燃料を単一燃料と想定しているため、複数種類の燃料を使用する内燃機関の場合には、使用燃料によって触媒の温度上昇の度合いが異なるので、触媒温度を正確に推定することができない。このため、使用燃料によっては、触媒が活性化する前に触媒早期暖機制御が終了し、排ガス性能の低下を招いたり、既に触媒が活性したにも関わらず触媒早期暖機制御を続けることで、運転性能や燃費性能の悪化を招く可能性がある。
【0006】
本発明は上述の課題を解決するためになされたもので、複数種類の燃料を使用する内燃機関において、点火遅角制御を行なうことができる点火遅角制御条件をより適切に判断することができる内燃機関の触媒早期暖機制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するため、発明の実施態様は、複数種類の燃料を使用燃料とする内燃機関の触媒の暖機を制御する触媒早期暖機制御装置であって、始動後時間、エンジン水温、吸気温、大気圧、点火時期のうちの複数の変数について、上記内燃機関の上記使用燃料として想定した複数種類の燃料の性状に合わせてそれぞれの判定値を設定し、実際の上記内燃機関の状態として検知された上記変数を現在使用中と特定された現在使用燃料についての上記判定値に対して比較した結果として、点火遅角制御条件が成立する場合に、上記現在使用燃料の性状に合わせて点火遅角制御を行なうことを特徴とする。
【0008】
また、発明の実施態様は、上記点火遅角制御条件が成立する場合であって、触媒活性度判定によって触媒暖機完了が肯定されないときに、上記現在使用燃料の性状に合わせて上記点火遅角制御を行なうことを特徴とする。
【0009】
また、発明の実施態様は、上記触媒活性度判定によって定められた触媒活性度と上記現在使用燃料の性状に合わせた点火遅角量との関係を示すテーブルを記憶する記憶部と、上記テーブルを検索して上記点火遅角量を算出する点火遅角量算出部とを有することを特徴とする。
【0010】
また、発明の実施態様は、上記触媒の上流側のO濃度を検出する上流側酸素センサと、上記触媒の下流側のO濃度を検出する下流側酸素センサと、上記上流側酸素センサの出力から上記触媒の上流側のリッチリーン反転周期を算出する上流側リッチリーン反転周期算出部と、上記下流側酸素センサの出力から上記触媒の下流側のリッチリーン反転周期を算出する下流側リッチリーン反転周期算出部とを有し、上記触媒活性度判定は、上記触媒の上流側のリッチリーン反転周期と上記触媒の下流側のリッチリーン反転周期との差の絶対値に基づいて行なうことを特徴とする。
【0011】
また、発明の実施態様は、上記触媒の温度を検知する触媒温度検知装置を有し、上記触媒活性度判定は、上記触媒温度検知装置が検知した上記触媒の温度に基づいて行なうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る内燃機関の触媒早期暖機制御装置においては、使用燃料の性状に合わせて始動後時間、エンジン水温、吸気温、大気圧、点火時期のうちの複数の変数の判定値を設定しているから、点火遅角制御を行なうことができる点火遅角制御条件をより適切に判断することができ、また現在使用燃料の性状に合わせて点火遅角制御を行なうから、現在使用されている燃料に対して点火遅角量が適切な値となるので、触媒早期暖機制御を適切に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は本発明の実施の形態に係る内燃機関の触媒早期暖機制御装置を有する内燃機関を示す図である。
【図2】図2は本発明の実施の形態に係る内燃機関の触媒早期暖機制御装置を示すブロック図である。
【図3】図3は図2に示した触媒早期暖機制御装置の点火遅角制御部を示すブロック図である。
【図4】図4は触媒活性度と点火遅角量との関係を示すテーブルである。
【図5】図5は図2に示した触媒早期暖機制御装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】図6は図3に示した触媒早期暖機制御装置の点火遅角制御部の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(内燃機関の構成)
図1により本発明の実施の形態に係る内燃機関の触媒早期暖機制御装置を有する内燃機関を説明する。内燃機関1はシリンダヘッド3、吸気ポート7、排気ポート8、吸気弁9、排気弁10、吸気カム軸11、排気カム軸12を有する。また、内燃機関1は、点火系として、各気筒毎のイグニションコイル45を有する。
【0015】
内燃機関1は、吸気系として、エアクリーナ13と吸気管14とサージタンク16と吸気マニホルド17とを順次に接続し、吸気ポート7に連通する吸気通路18を設けている。吸気通路18にはスロットルバルブ19を設けている。また、エンジン1は、排気系として、排気マニホルド20と触媒コンバータ(排気浄化装置)21と排気管22とを順次に接続し、排気ポート8に連通する排気通路23を設けている。触媒コンバータ21は触媒24を内蔵している。
【0016】
内燃機関1は、液体燃料であるガソリンと気体燃料であるCNGとの2種の燃料が供給される。内燃機関1は、液体燃料系として、液体燃料タンク25を有し、液体燃料タンク25に液体燃料供給管29が接続されている。液体燃料供給管29の他端側は、液体燃料分配管31に接続している。液体燃料分配管31には、吸気マニホルド17に取り付けられた各気筒毎の液体燃料噴射弁32を接続している。
【0017】
内燃機関1は、気体燃料系として、気体燃料タンク38を有し、気体燃料タンク38に一端側が接続される気体燃料供給管39を設けている。気体燃料供給管39の途中には、主止弁40と減圧弁41とを設けている。減圧弁41は、給気通路18の吸気圧力を導入してCNGを減圧する。気体燃料供給管39の他端側は、気体燃料分配管43に接続している。気体燃料分配管43には、吸気マニホルド17に取り付けられた各気筒毎の気体燃料噴射弁44を接続している。気体燃料噴射弁44は、液体燃料噴射弁32に近接して吸気マニホルド17に取り付けられている。
【0018】
内燃機関1は、制御装置51を備えている。制御装置51は、性状の異なる2種の燃料としてガソリンとCNGとを内燃機関1に供給可能とし、内燃機関1の運転中にこれらのガソリンとCNGとを切り替えて供給する多種燃料切替制御を行う作動制御装置52を備えている。作動制御装置52はコンピュータによって構成されている。
【0019】
作動制御装置52には、液体燃料噴射弁32と、主止弁40と、気体燃料噴射弁44と、イグニションコイル45とを接続している。また、作動制御装置52には、吸気温度を検出する吸気温センサ55と、触媒24の上流側のO濃度を検出する上流側酸素センサ58と、触媒24の下流側のO濃度を検出する下流側酸素センサ59と、エンジン水温を検出するエンジン水温センサ60と、エンジン回転数を検出するためクランク角を検出するクランク角センサ62と、吸気カム軸11(排気カム軸12)のカム角を検出するカム角センサ63と、人為操作される燃料切替スイッチ64とを接続している。
【0020】
このような内燃機関においては、ガソリンが使用されている状態すなわち液体燃料タンク25から液体燃料噴射弁32にガソリンが供給されている状態から、燃料切替スイッチ64が切り替えられると、CNGが使用されている状態すなわち気体燃料タンク38から気体燃料噴射弁44にCNGが供給されている状態となる。さらに、CNGが使用されている状態から燃料切替スイッチ64が切り替えられると、ガソリンが使用されている状態になる。
【0021】
(触媒早期暖機制御装置の構成)
図2により本発明の実施の形態に係る内燃機関の触媒早期暖機制御装置を説明する。内燃機関の触媒早期暖機制御装置100は、燃料判断部101、始動後時間判断部102、エンジン水温判断部103、吸気温判断部104、大気圧判断部105、点火時期判断部106、センサ診断結果判断部107、点火遅角制御部108を有する。触媒早期暖機制御装置100は作動制御装置52に設けられている。
【0022】
燃料判断部101は、燃料切替スイッチ64の出力から燃料としてCNGが使用されているか、ガソリンが使用されているかを判断する。
【0023】
始動後時間判断部102は始動後時間センサ111の出力から始動後時間が所定範囲に入っているか否かを判断する。すなわち、始動後時間センサ111は始動後時間Tstを計測する。また、燃料判断部101が燃料としてCNGが使用されていると判断した場合には、CNG短始動後時間をTstLgasとし、CNG長始動後時間をTstHgasとしたとき、始動後時間判断部102は始動後時間Tstが次式の範囲の値であるか否かを判断する。
TstLgas<Tst<TstHgas
また、燃料判断部101がガソリンを使用していると判断した場合には、ガソリン短始動後時間をTstLpetとし、ガソリン長始動後時間をTstHpetとしたとき、始動後時間判断部102は始動後時間Tstが次式の範囲の値であるか否かを判断する。
TstLpet<Tst<TstHpet
【0024】
エンジン水温判断部103はエンジン水温センサ60の出力からエンジン水温が所定範囲に入っているか否かを判断する。すなわち、エンジン水温センサ60はエンジン水温WTを計測する。また、燃料判断部101がCNGを使用していると判断した場合には、CNG低エンジン水温をWTLgasとし、CNG高エンジン水温をWTHgasとしたとき、エンジン水温判断部103はエンジン水温WTが次式の範囲の値であるか否かを判断する。
WTLgas<WT<WTHgas
また、燃料判断部101がガソリンを使用していると判断した場合には、ガソリン低エンジン水温をWTLpetとし、ガソリン高エンジン水温をWTHpetとしたとき、エンジン水温判断部103はエンジン水温WTが次式の範囲の値であるか否かを判断する。
WTLpet<WT<WTHpet
【0025】
吸気温判断部104は吸気温センサ55の出力から吸気温が所定範囲に入っているか否かを判断する。すなわち、吸気温センサ55は吸気温ATを計測する。また、燃料判断部101がCNGを使用していると判断した場合には、CNG低吸気温をWTLgasとし、CNG高吸気温をWTHgasとしたとき、吸気温判断部104は吸気温ATが次式の範囲の値であるか否かを判断する。
ATLgas<AT<ATHgas
また、燃料判断部101がガソリンを使用していると判断した場合には、ガソリン低吸気温をATLpetとし、ガソリン高吸気温をATHpetとしたとき、吸気温判断部104は吸気温ATが次式の範囲の値であるか否かを判断する。
ATLpet<AT<ATHpet
【0026】
大気圧判断部105は大気圧センサ112の出力から大気圧が所定値以上であるか否かを判断する。すなわち、大気圧センサ112は大気圧Patmを計測する。また、燃料判断部101がCNGを使用していると判断した場合には、次式のように、大気圧判断部105は大気圧PatmがCNG所定大気圧Patmgas以上であるか否かを判断する。
Patm≧Patmgas
また、燃料判断部101がガソリンを供給していると判断した場合には、次式のように、大気圧判断部105は大気圧Patmがガソリン所定大気圧Patmpet以上であるか否かを判断する。
Patm≧Patmpet
【0027】
点火時期判断部106は点火時期センサ113の出力から点火時期が所定点火時期より早いか否かを判断する。すなわち、点火時期センサ113は点火時期Stを計測する。また、燃料判断部101がCNGを使用していると判断した場合には、次式のように、点火時期判断部106は点火時期StがCNG所定点火時期Stmingasよりも早いか否かを判断する。
St≧Stmingas
また、燃料判断部101がガソリンを使用していると判断した場合には、次式のように、点火時期判断部106は点火時期Patmがガソリン所定点火時期Stminpetよりも早いか否かを判断する。
St≧Stminpet
【0028】
センサ診断結果判断部107は上流側酸素センサ58、下流側酸素センサ59の動作を診断するセンサ診断装置114の出力から上流側酸素センサ58、下流側酸素センサ59が正常に動作しているか否かを判断する。すなわち、センサ診断装置114は所定時間ごとに上流側酸素センサ58、下流側酸素センサ59の動作を診断する。センサ診断結果判断部107はセンサ診断装置114の最新の診断結果から上流側酸素センサ58、下流側酸素センサ59が正常に動作しているか否かを判断する。
【0029】
つぎに、図3により点火遅角制御部108を説明する。点火遅角制御部108は、上流側リッチリーン反転周期算出部121、下流側リッチリーン反転周期算出部122、周期差絶対値算出部123、触媒暖機完了判断部124、触媒活性度判定部125、記憶部126、点火遅角量算出部127、点火時期指令部128を有する。
【0030】
上流側リッチリーン反転周期算出部121は上流側酸素センサ58の出力から触媒24の上流側のOのリッチリーン反転周期TFを算出する。また、下流側リッチリーン反転周期算出部122は下流側酸素センサ59の出力から触媒24の下流側のOのリッチリーン反転周期TRを算出する。
周期差絶対値算出部123はリッチリーン反転周期TFとリッチリーン反転周期TRとの差の絶対値である周期差絶対値Tdaを算出する。
触媒暖機完了判断部124は、次式のように、周期差絶対値Tdaが所定値Tdafin以下であるか否かを判断することにより、触媒24の暖機が終了したか否かを判断する。
Tda≦Tdafin
【0031】
触媒活性度判定部125は、周期差絶対値Tdaが所定値Tdafin以下であると触媒暖機完了判断部124が判断したとき、すなわち触媒暖機完了判断部124が触媒24の暖機が終了していないと判断したとき、周期差絶対値Tdaに基づいて触媒活性度を判定する。すなわち、触媒活性度判定部125は、周期差絶対値Tdaに応じて触媒活性度1〜10を定める。この場合、周期差絶対値Tdaが大きい程触媒活性度を高くする。
【0032】
記憶部126には図4のテーブルに示す点火遅角量が触媒活性度1〜10に対応して記憶されている。ここで、ガソリン遅角量Apet、Bpet、Cpet、Dpet、Epet,Fpetの大小関係は次式の通りである。
Apet>Bpet>Cpet>Dpet>Epet>Fpet
そして、また、CNG遅角量Agas、Bgas、Cgas、Dgas、Egas、Fgas、Ggas、Hgasの大小関係は次式の通りである。
Agas>Bgas>Cgas>Dgas>Egas>Fgas>Ggas>Hgas
さらに、ガソリン遅角量Apet、Bpet、Cpet、Dpet、Epet、FpetとCNG遅角量Agas、Bgas、Cgas、Dgas、Egas、Fgasとの大小関係は次式の通りである。
Apet<Agas
Bpet<Bgas
Cpet<Cgas
Dpet<Dgas
Epet<Egas
Fpet<Fgas
【0033】
点火遅角量算出部127は、エンジン水温WTに基づいて決定される基本点火時期に対して点火時期を遅らせる量すなわち点火遅角量を図4に示したテーブルを検索して算出する。すなわち、点火遅角量算出部127は、燃料判断部101の判断および触媒活性度に基づいて点火遅角量を定める。たとえば、燃料判断部101がガソリンを使用していると判断しており、触媒活性度判定部125が触媒活性度は「4」であると定めた場合には、点火遅角量算出部127は点火遅角量を「Dpet」とする。
【0034】
点火時期指令部128は点火遅角量算出部127が算出した点火遅角量に応じてイグニションコイル45を制御し、内燃機関1の点火時期を点火遅角量算出部128が算出した点火遅角量に応じて指令する。たとえば、点火遅角量算出部127が点火遅角量を「Dpet」としたときには、点火時期指令部128は内燃機関1の点火時期を点火遅角量「Dpet」に応じて指令する。
【0035】
(触媒早期暖機制御装置の動作)
図5、図6により図2、図3に示した触媒早期暖機制御装置の動作すなわち触媒早期暖機制御方法について説明する。
まず、燃料判断部101が燃料としてCNGを使用しているか、ガソリンを使用しているかを判断する(ステップS1)。
【0036】
以下、まず燃料判断部101が燃料としてCNGを使用していると判断した場合について説明する。
始動後時間判断部102が始動後時間Tstは次式の範囲の値であるか否かを判断する(ステップS2)。
TstLgas<Tst<TstHgas
そして、始動後時間Tstが上記の範囲の値でないとき、すなわち始動後時間TstがCNG短始動後時間TstLgas以下の場合、始動後時間TstがCNG長始動後時間TstHgas以上の場合には、燃料がCNGの場合の通常の制御を行なう(ステップS9)。
【0037】
始動後時間Tstが上記の範囲の値であるとき、すなわち始動後時間TstがCNG短始動後時間TstLgasを超えており、かつ始動後時間TstがCNG長始動後時間TstHgas未満の場合には、エンジン水温判断部103がエンジン水温WTは次式の範囲の値であるか否かを判断する(ステップS3)。
WTLgas<WT<WTHgas
そして、エンジン水温WTが上記の範囲の値でないとき、すなわちエンジン水温WTがCNG低エンジン水温WTLgas以下の場合、エンジン水温WTがCNG高エンジン水温WTHgas以上の場合には、燃料がCNGの場合の通常の制御を行なう(ステップS9)。
【0038】
エンジン水温WTが上記の範囲の値であるとき、すなわちエンジン水温WTがCNG低エンジン水温WTLgasを超えており、かつエンジン水温WTがCNG高エンジン水温WTHgas未満の場合には、吸気温判断部104は吸気温ATが次式の範囲の値であるか否かを判断する(ステップS4)。
ATLgas<AT<ATHgas
そして、吸気温ATが上記の範囲の値でないとき、すなわち吸気温ATがCNG低吸気温ATLgas以下の場合、エンジン水温WTがCNG高吸気温ATHgas以上の場合には、燃料がCNGの場合の通常の制御を行なう(ステップS9)。
【0039】
吸気温ATが上記の範囲の値であるとき、すなわち吸気温ATがCNG低吸気温ATLgasを超えており、かつ吸気温ATがCNG高吸気温ATHgas未満の場合には、大気圧判断部105が大気圧PatmはCNG所定大気圧Patmgas以上であるか否かを判断する(ステップS5)。そして、大気圧PatmがCNG所定大気圧Patmgas未満である場合には、燃料がCNGの場合の通常の制御を行なう(ステップS9)。
【0040】
大気圧PatmがCNG所定大気圧Patmgas以上である場合には、点火時期判断部106は点火時期StがCNG所定点火時期Stmingasよりも早いか否かを判断する(ステップS6)。そして、点火時期StがCNG所定点火時期Stmingasよりも遅い場合には、燃料がCNGの場合の通常の制御を行なう(ステップS9)。
【0041】
点火時期StがCNG所定点火時期Stmingasよりも早い場合には、センサ診断結果判断部107がセンサ診断装置114の出力から上流側酸素センサ58、下流側酸素センサ59が正常に動作しているか否かを判断する(ステップS7)。そして、上流側酸素センサ58、下流側酸素センサ59が正常に動作していない場合には、燃料がCNGの場合の通常の制御を行なう(ステップS9)。
【0042】
上流側酸素センサ58、下流側酸素センサ59が正常に動作している場合には、点火遅角制御部108の上流側リッチリーン反転周期算出部121が上流側リッチリーン反転周期TFを算出し、また下流側リッチリーン反転周期算出部122が下流側リッチリーン反転周期TRを算出し、周期差絶対値算出部123が周期差絶対値Tdaを算出する(図6のステップS21)。
【0043】
つぎに、触媒暖機完了判断部124が周期差絶対値Tdaが所定値Tdafin以下であるか否かを判断することにより、触媒24の暖機が終了したか否かを判断する(ステップS22)。そして、周期差絶対値Tdaが所定値Tdafinを越えている場合、すなわち触媒24の暖機が終了したと判断した場合には、燃料がCNGの場合の通常の制御を行なう(ステップS26)。
【0044】
周期差絶対値Tdaが所定値Tdafin以下の場合、すなわち触媒24の暖機が終了していないと判断した場合には、触媒活性度判定部125が周期差絶対値Tdaに基づいて触媒活性度を定める(ステップS23)。つぎに、点火遅角量算出部127が触媒活性度に応じて点火遅角量を算出する(ステップS24)。たとえば、触媒活性度が「4」の場合には、記憶部126に記憶された図4に示すテーブルを検索して点火遅角量を「Dgas」とする。つぎに、点火時期指令部128は点火遅角量算出部127が算出した点火遅角量たとえば「Dgas」に応じてイグニションコイル45を制御し、内燃機関1の点火時期を点火遅角量算出部125が算出した点火遅角量たとえば「Dgas」に応じて指令する(ステップS25)。
【0045】
つぎに、燃料判断部101が燃料としてガソリンを使用していると判断した場合について説明する。
始動後時間判断部102が始動後時間Tstは次式の範囲の値であるか否かを判断する(ステップS10)。
TstLpet<Tst<TstHpet
そして、始動後時間Tstが上記の範囲の値でないとき、すなわち始動後時間Tstがガソリン短始動後時間TstLpet以下の場合、始動後時間Tstがガソリン長始動後時間TstHpet以上の場合には、燃料がガソリンの場合の通常の制御を行なう(ステップS17)。
【0046】
始動後時間Tstが上記の範囲の値であるとき、すなわち始動後時間Tstがガソリン短始動後時間TstLpetを超えており、かつ始動後時間Tstがガソリン長始動後時間TstHpet未満の場合には、エンジン水温判断部103がエンジン水温WTは次式の範囲の値であるか否かを判断する(ステップS11)。
WTLpet<WT<WTHpet
そして、エンジン水温WTが上記の範囲の値でないとき、すなわちエンジン水温WTがガソリン低エンジン水温WTLpet以下の場合、エンジン水温WTがガソリン高エンジン水温WTHpet以上の場合には、燃料がガソリンの場合の通常の制御を行なう(ステップS17)。
【0047】
エンジン水温WTが上記の範囲の値であるとき、すなわちエンジン水温WTがガソリン低エンジン水温WTLpetを超えており、かつエンジン水温WTがガソリン高エンジン水温WTHpet未満の場合には、吸気温判断部104は吸気温ATが次式の範囲の値であるか否かを判断する(ステップS12)。
ATLpet<AT<ATHpet
そして、吸気温ATが上記の範囲の値でないとき、すなわち吸気温ATがガソリン低吸気温ATLpet以下の場合、吸気温ATがガソリン高吸気温ATHpet以上の場合には、燃料がガソリンの場合の通常の制御を行なう(ステップS17)。
【0048】
吸気温ATが上記の範囲の値であるとき、すなわち吸気温ATがガソリン低吸気温ATLpetを超えており、かつ吸気温ATがガソリン高吸気温ATHpet未満の場合には、大気圧判断部105が大気圧Patmはガソリン所定大気圧Patmpet以上であるか否かを判断する(ステップS13)。そして、大気圧Patmがガソリン所定大気圧Patmpet未満である場合には、燃料がガソリンの場合の通常の制御を行なう(ステップS17)。
【0049】
大気圧Patmがガソリン所定大気圧Patmpet以上である場合には、点火時期判断部106は点火時期Stがガソリン所定点火時期Stminpetよりも早いか否かを判断する(ステップS14)。そして、点火時期Stがガソリン所定点火時期Stminpetよりも遅い場合には、燃料がガソリンの場合の通常の制御を行なう(ステップS17)。
【0050】
点火時期Stがガソリン所定点火時期Stminpetよりも早い場合には、センサ診断結果判断部107がセンサ診断装置114の出力から上流側酸素センサ58、下流側酸素センサ59が正常に動作しているか否かを判断する(ステップS15)。そして、上流側酸素センサ58、下流側酸素センサ59が正常に動作していない場合には、燃料がガソリンの場合の通常の制御を行なう(ステップS17)。
【0051】
上流側酸素センサ58、下流側酸素センサ59が正常に動作している場合には、点火遅角制御部108の上流側リッチリーン反転周期算出部121が上流側リッチリーン反転周期TFを算出し、また下流側リッチリーン反転周期算出部122が下流側リッチリーン反転周期TRを算出し、周期差絶対値算出部123が周期差絶対値Tdaを算出する(図6のステップS21)。
【0052】
つぎに、触媒暖機完了判断部124が周期差絶対値Tdaが所定値Tdafin以下であるか否かを判断することにより、触媒24の暖機が終了したか否かを判断する(ステップS22)。そして、周期差絶対値Tdaが所定値Tdafinを越えている場合、すなわち触媒24の暖機が終了したと判断した場合には、燃料がガソリンの場合の通常の制御を行なう(ステップS26)。
【0053】
周期差絶対値Tdaが所定値Tdafin以下の場合、すなわち触媒24の暖機が終了していないと判断した場合には、触媒活性度判定部125が周期差絶対値Tdaに基づいて触媒活性度を定める(ステップS23)。つぎに、点火遅角量算出部127が触媒活性度に応じて点火遅角量を算出する(ステップS24)。たとえば、触媒活性度が「4」の場合には、記憶部126に記憶された図4に示すテーブルを検索して点火遅角量を「Dpet」とする。つぎに、点火時期指令部128は点火遅角量算出部127が算出した点火遅角量たとえば「Dpet」に応じてイグニションコイル45を制御し、内燃機関1の点火時期を点火遅角量算出部125が算出した点火遅角量たとえば「Dpet」に応じて指令する(ステップS25)。
【0054】
つぎに、点火遅角制御が行なわれている状態で、燃料切替スイッチ64が切り替えられた場合について説明する。現在使用燃料がCNGであり、ステップS1〜S8の操作が行なわれている状態で、燃料切替スイッチ64が切り替えられ、現在使用燃料がガソリンとなると、燃料判断部101が燃料が切り替えられたと判断し、ステップS1、S10〜S17の操作が行なわれる。また、現在使用燃料がガソリンであり、ステップS1、S10〜S16の操作が行なわれている状態で、燃料切替スイッチ64が切り替えられ、現在使用燃料がCNGとなると、燃料判断部101が燃料が切り替えられたと判断し、ステップS1〜S9の操作が行なわれる。このように、点火遅角制御が行なわれている状態で、燃料切替スイッチ64が切り替えられた場合には、現在使用燃料の性状に合った始動後時間、エンジン水温、吸気温、大気圧および点火時期の判定値を用いて、点火遅角制御条件の成立を判定する。
【0055】
(触媒早期暖機制御装置の効果)
このような内燃機関の触媒早期暖機制御装置100においては、CNG、ガソリンの性状に合わせて始動後時間、エンジン水温、吸気温、大気圧、点火時期の判定値(始動後時間判定値、エンジン水温判定値、吸気温判定値、大気圧判定値、点火時期判定値)を設定しているから、点火遅角制御を行なうことができる点火遅角制御条件をより適切に判断することができる。すなわち、現在使用燃料がCNGであるときには、変数の判定値として始動後時間判定値であるCNG短始動後時間TstLgas、CNG長始動後時間TstHgas、エンジン水温判定値であるCNG低エンジン水温WTLgas、CNG高エンジン水温WTHgas、吸気温判定値であるCNG低吸気温ATLgas、CNG高吸気温ATHgas、大気圧判定値であるCNG所定大気圧Patmgas、点火時期判定値であるCNG所定点火時期Stmingasを用いており、一方現在使用燃料がガソリンであるときには、変数の判定値として始動後時間判定値であるガソリン短始動後時間TstLpet、ガソリン長始動後時間TstHpet、エンジン水温判定値であるガソリン低エンジン水温WTLpet、ガソリン高エンジン水温WTHpet、吸気温判定値であるガソリン低吸気温ATLpet、ガソリン高吸気温ATHpet、大気圧判定値であるガソリン所定大気圧Patmpet、点火時期判定値であるガソリン所定点火時期Stminpetを用いているから、点火遅角制御条件をより適切に判断することができる。
【0056】
また、触媒暖機完了判断部124が周期差絶対値Tdaは所定値Tdafin以下であるか否かを判断することにより、触媒24の暖機が終了したか否かを判断して、触媒24の暖機が終了したと判断した場合には、通常の制御を行なうから、不要な点火遅角制御を行なうことがなく、出力低下や運転性能の悪化を招くことがない。
【0057】
また、記憶部126に記憶されたテーブルの点火遅角量は、使用燃料であるCNG、ガソリンに応じて定められており、燃料の切替に伴って、現在使用燃料に対して点火遅角量が適切な値となるから、適切に触媒24を暖機することができる。すなわち、点火遅角量算出部127は、記憶部126に記憶された図4に示すテーブルにより点火遅角量を算出しており、ガソリン遅角量Apet、Bpet、Cpet、Dpet、Epet,FpetはCNG遅角量Agas、Bgas、Cgas、Dgas、Egas、Fgasよりも小さい。ここで、CNGの単位当りの熱量はガソリンと比較して80パーセントほどしかない。1回の燃焼に使われるCNGの重量とガソリンの重量とは同じではないが、組成の違いにより触媒24を昇温させる性能としては、ガソリンよりもCNGの方が低くなり、触媒24の暖機完了までの所要時間が長くなる傾向である。したがって、点火遅角量算出部127が、図4に示すテーブルにより点火遅角量を算出したときには、適切に触媒24を暖機することができる。
【0058】
また、周期差絶対値算出部123がリッチリーン反転周期TFとリッチリーン反転周期TRとの差の絶対値である周期差絶対値Tdaを算出し、触媒活性度判定部125が周期差絶対値Tdaに基づいて触媒活性度を定めるから、触媒24の活性度と相関のある触媒温度を直接検知できる触媒温度検知装置を備えておらず、しかも燃料の切替があったとしても、触媒活性度を正しく判定することができる。また、触媒温度検知装置が不要であるから、多くに機種に利用することができる。
【0059】
また、触媒24の暖機が十分になるほど、触媒24の上流側のOのリッチリーン反転周期TFは短周期となり、触媒24の下流側のOのリッチリーン反転周期TRが長周期となる。したがって、触媒24の暖機が十分になるほど、周期差絶対値Tdaが大きくなる。したがって、周期差絶対値Tdaに応じて触媒活性度を定めれば、適正に触媒活性度を定めることができる。
【0060】
また、始動後時間TstがCNG短始動後時間TstLgas、ガソリン短始動後時間TstLpet以下の場合には、通常の制御を行なうから、オープン制御時に点火遅角制御が行なわれることがない。すなわち、始動開始直後は燃料噴射量が予め設定されるオープン制御となる始動時噴射制御を行なっており、エンジン回転数が所定回転数以上となることを境に、回転数フィードバック(閉ループ制御)による燃料補正を行なう始動後燃料噴射制御を行なっている。そして、始動後時間TstがCNG短始動後時間TstLgas、ガソリン短始動後時間TstLpet以下の場合には、通常の制御を行なうから、回転数フィードバックによる燃料補正を行なう前に、点火遅角制御が行なわれることがないので、オープン制御を正常に行なうことができる。また、始動後時間TstがCNG長始動後時間TstHgas、ガソリン長始動後時間TstHpet以上の場合には、通常の制御を行なうから、触媒24の暖機が十分行なわれたのちにさらに暖機が行なわれることがない。
【0061】
また、エンジン水温WTがCNG低エンジン水温WTLgas、ガソリン低エンジン水温WTLpet以下の場合には、通常の制御を行なうから、燃料噴射量が非常に少ないときに点火遅角制御が行なわれることがないので、エンジン制御を正常に行なうことができる。また、エンジン水温WTがCNG高エンジン水温WTHgas、ガソリン高エンジン水温WTHpet以上の場合には、通常の制御を行なうから、内燃機関が再始動しているときに点火遅角制御が行なわれることがないので、エンジン制御を正常に行なうことができる。
【0062】
また、吸気温ATがCNG低吸気温ATLgas、ガソリン低吸気温ATLpet以下の場合には、通常の制御を行なうから、燃料噴射量が非常に少ないときに点火遅角制御が行なわれることがないので、エンジン制御を正常に行なうことができる。また、エンジン水温ATがCNG高吸気温ATHgas、ガソリン高吸気温ATHpet以上の場合には、通常の制御を行なうから、内燃機関が再始動しているときに点火遅角制御が行なわれることがないので、エンジン制御を正常に行なうことができる。
【0063】
また、大気圧PatmがCNG所定大気圧Patmgas、ガソリン所定大気圧Patmpet未満である場合には、通常の制御を行なうから、大気圧が低い高地で走行しているときに、点火遅角制御が行なわれて、車両としての走行機能を失うことがなく、走行性を確保することができる。
【0064】
また、点火時期StがCNG所定点火時期Stmingas、ガソリン所定点火時期Stminpetよりも遅い場合には、通常の制御を行なうから、既に点火遅角量が十分遅いときには、点火遅角制御が行なわれないから、出力低下や運転性能の悪化を招くことがない。
【0065】
また、上流側酸素センサ58、下流側酸素センサ59が正常に動作していない場合には、通常の制御を行なうから、異常な点火遅角制御すなわち点火遅角量が適正でない点火遅角制御が行なわれることがないので、エンジン制御を正常に行なうことができる。
【0066】
また、点火遅角制御が行なわれている状態で、燃料切替スイッチ64が切り替えられた場合には、現在使用燃料の性状に合った始動後時間、エンジン水温、吸気温、大気圧および点火時期の判定値を用いて、点火遅角制御条件の成立を判定するから、触媒24を暖機している途中で燃料が切替られたとしても、触媒活性不足による排ガス性能の悪化や点火時期過補正による運転性、燃費性能の悪化を防ぐことができる。
【0067】
(その他の実施の形態)
なお、上述実施の形態においては、気体燃料であるCNGと液体燃料であるガソリンとを使用燃料とする内燃機関の触媒早期暖機制御装置について説明したが、本発明は複数種類の燃料を使用燃料とする内燃機関の触媒早期暖機制御装置に適用することができる。
【0068】
また、上述実施の形態においては、点火遅角制御条件を判断するための変数として、始動後時間、エンジン水温、吸気温、大気圧および点火時期を用いたが、始動後時間、エンジン水温、吸気温、大気圧、点火時期のうちの複数の変数を用いてもよい。
【0069】
また、上述実施の形態においては、周期差絶対値Tdaに基づいて触媒活性度判定を行ない、点火遅角量を求めたが、触媒24の温度を検知する触媒温度検知装置を設け、触媒温度検知装置が検知した触媒24の温度に基づいて触媒活性度判定を行ない、点火遅角量を求めてもよい。
【0070】
この場合には、触媒24の活性度と相関のある触媒温度から直接触媒活性度を定めることができるから、燃料の切替があったとしても、触媒活性度を適切に定めることができる。
【0071】
また、上述実施の形態においては、触媒活性度と点火遅角量との関係を示すテーブルを検索して点火遅角量を算出したが、使用燃料ごとの周期差絶対値Tdaと点火遅角量との関係を示す式を用いて演算することにより、点火遅角量を算出してもよい。
【0072】
また、複数種類の燃料を使用燃料とする内燃機関の触媒の暖機を制御する触媒早期暖機制御装置であって、燃料切替スイッチの出力から現在使用燃料を判断する燃料判断部を有し、始動後時間センサによって計測された始動後時間が上記複数種類の燃料の性状に合わせて設定された始動後時間判定値に対して比較して所定範囲に入るか否かを判断する始動後時間判断部、エンジン水温センサによって計測されたエンジン水温が上記複数種類の燃料の性状に合わせて設定されたエンジン水温判定値に対して比較して所定範囲に入るか否かを判断するエンジン水温判断部、吸気温センサによって計測された吸気温が上記複数種類の燃料の性状に合わせて設定された吸気温判定値に対して比較して所定範囲に入るか否かを判断する吸気温判断部、大気圧センサによって計測された大気圧が上記複数種類の燃料の性状に合わせて設定された大気圧判定値に対して比較して所定範囲に入るか否かを判断する大気圧判断部、点火時期センサによって計測された点火時期が上記複数種類の燃料の性状に合わせて設定された点火時期判定値に対して比較して所定範囲に入るか否かを判断する点火時期判断部のうちの複数の判断部を有し、上記複数の判断部が上記所定範囲に入ると判断したとき、上記現在使用燃料の性状に合わせて点火遅角制御を行なう点火遅角制御部を有していてもよい。
【0073】
また、上記点火遅角制御部が、上記複数の判断部が上記所定範囲に入ると判断して点火遅角制御条件が成立する場合に、触媒の暖機が完了したか否かを判断する触媒暖機完了判断部を有し、上記触媒暖機完了判断部によって触媒暖機完了が肯定されないときに、上記現在使用燃料の性状に合わせて上記点火遅角制御を行なってもよい。
【0074】
また、上記点火遅角制御部が、触媒活性度判定によって定められた触媒活性度と上記複数種類の燃料の性状に合わせた点火遅角量との関係を示すテーブルを記憶する記憶部と、上記テーブルを検索して上記点火遅角量を算出する点火遅角量算出部とを有していてもよい。
【0075】
また、上記触媒の上流側のO濃度を検出する上流側酸素センサと、上記触媒の下流側のO濃度を検出する下流側酸素センサとを有し、上記点火遅角制御部が、上記上流側酸素センサの出力から上記触媒の上流側のリッチリーン反転周期を算出する上流側リッチリーン反転周期算出部と、上記下流側酸素センサの出力から上記触媒の下流側のリッチリーン反転周期を算出する下流側リッチリーン反転周期算出部とを有し、上記触媒活性度判定を、上記触媒の上流側のリッチリーン反転周期と上記触媒の下流側のリッチリーン反転周期との差の絶対値に基づいて行なってもよい。
【0076】
また、上記触媒の温度を検知する触媒温度検知装置を有し、上記点火遅角制御部が、上記触媒活性度判定を、上記触媒温度検知装置が検知した上記触媒の温度に基づいて行なってもよい。
【0077】
また、複数種類の燃料を使用燃料とする内燃機関の触媒の暖機を制御する触媒早期暖機制御方法であって、始動後時間、エンジン水温、吸気温、大気圧、点火時期のうちの複数の変数について、上記内燃機関の上記使用燃料として想定した複数種類の燃料の性状に合わせてそれぞれの判定値を設定し、実際の上記内燃機関の状態として検知された上記変数を現在使用中と特定された燃料についての上記判定値に対して比較した結果として、点火遅角制御条件が成立する場合に、複数種類の燃料の性状に合わせて点火遅角制御を行なう内燃機関の触媒早期暖機制御方法を行なってもよい。
【0078】
本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施の形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施の形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、各請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【符号の説明】
【0079】
1…内燃機関、24…触媒、45…イグニションコイル、52…作動制御装置、55…吸気温センサ、58…上流側酸素センサ、59…下流側酸素センサ、60…エンジン水温センサ、64…燃料切替スイッチ、100…内燃機関の触媒早期暖機制御装置、101…燃料判断部、102…始動後時間判断部、103…エンジン水温判断部、104…吸気温判断部、105…大気圧判断部、106…点火時期判断部、107…センサ診断結果判断部、108…点火遅角制御部、111…始動後時間センサ、112…大気圧センサ、113…点火時期センサ、114…センサ診断装置、121…上流側リッチチーン反転周期算出部、122…下流側リッチチーン反転周期算出部、123…周期差絶対値算出部、124…触媒暖機完了判断部、125…触媒活性度判定部、126…記憶部、127…点火遅角量算出部、128…点火時期指令部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の燃料を使用燃料とする内燃機関の触媒の暖機を制御する触媒早期暖機制御装置であって、
始動後時間、エンジン水温、吸気温、大気圧、点火時期のうちの複数の変数について、上記内燃機関の上記使用燃料として想定した複数種類の燃料の性状に合わせてそれぞれの判定値を設定し、
実際の上記内燃機関の状態として検知された上記変数を現在使用中と特定された現在使用燃料についての上記判定値に対して比較した結果として、点火遅角制御条件が成立する場合に、上記現在使用燃料の性状に合わせて点火遅角制御を行なう
ことを特徴とする内燃機関の触媒早期暖機制御装置。
【請求項2】
上記点火遅角制御条件が成立する場合であって、触媒活性度判定によって触媒暖機完了が肯定されないときに、上記現在使用燃料の性状に合わせて上記点火遅角制御を行なうことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の触媒早期暖機制御装置。
【請求項3】
上記触媒活性度判定によって定められた触媒活性度と上記現在使用燃料の性状に合わせた点火遅角量との関係を示すテーブルを記憶する記憶部と、上記テーブルを検索して上記点火遅角量を算出する点火遅角量算出部とを有することを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の触媒早期暖機制御装置。
【請求項4】
上記触媒の上流側のO濃度を検出する上流側酸素センサと、上記触媒の下流側のO濃度を検出する下流側酸素センサと、上記上流側酸素センサの出力から上記触媒の上流側のリッチリーン反転周期を算出する上流側リッチリーン反転周期算出部と、上記下流側酸素センサの出力から上記触媒の下流側のリッチリーン反転周期を算出する下流側リッチリーン反転周期算出部とを有し、
上記触媒活性度判定は、上記触媒の上流側のリッチリーン反転周期と上記触媒の下流側のリッチリーン反転周期との差の絶対値に基づいて行なう
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の内燃機関の触媒早期暖機制御装置。
【請求項5】
上記触媒の温度を検知する触媒温度検知装置を有し、
上記触媒活性度判定は、上記触媒温度検知装置が検知した上記触媒の温度に基づいて行なう
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の内燃機関の触媒早期暖機制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−72313(P2013−72313A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210538(P2011−210538)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】