説明

内燃機関の過給システム

【課題】内燃機関の過給システムに関し、減筒運転時における過給機の過給不足を補完して燃費を向上させる。
【解決手段】排気エネルギにより駆動して吸気を圧送する過給機13を備え、複数気筒のうち任意の気筒を選択的に非稼働にする減筒運転が可能なエンジン10の過給システムしおいて、吸気通路11と、バイパス通路15と、バイパス通路15に設けられた機械式過給機14と、機械式過給機14の駆動時に吸気通路11を遮断するバルブ16と、エンジン10の減筒運転時に機械式過給機14を駆動させる補助過給制御部45とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の過給システムに関し、特に複数気筒のうち一部の気筒を選択的に非稼働にする減筒運転が可能な内燃機関の過給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの燃費を改善する方法として、複数気筒のうち一部の気筒の吸排気バルブの作動を休止させることで、エンジンのポンピングフリクションを効果的に低減させる減筒運転が知られている。また、ディーゼルエンジンにおいては、排気エネルギーにより駆動されて、吸気を燃焼室内に圧送するターボチャージャを備えたターボ過給システムが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、可変バルブ機構を備え、一部の気筒の吸排気バルブを休止させる減筒運転が可能なターボチャージャ付きエンジンのバルブ駆動制御方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−233788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ディーゼルエンジンはガソリンエンジンと異なり、燃焼の悪化を抑制するためには、燃焼室内に噴射された燃料の理論空気量に対して空気過剰な状態を確保する必要がある。そのため、ディーゼルエンジンに減筒運転を適用した場合、エンジンのポンピングフリクションは低減される一方、減筒運転時における過給不足により燃焼の悪化を引き起こすことで、燃費が悪化する可能性がある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みてなされたもので、その目的は、減筒運転によるポンピングフリクションの低減効果を維持しつつ、減筒運転時における運転気筒の過給不足を補完することで、燃費を効果的に向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明の内燃機関の過給システムは、排気エネルギにより駆動して吸気を圧送する少なくとも一つの過給機を備え、複数気筒のうち任意の気筒を選択的に非稼働にする減筒運転が可能な内燃機関の過給システムであって、前記内燃機関の吸気系に接続された第1の吸気通路と、前記第1の吸気通路の吸気上流側から分岐される共に、前記第1の吸気通路の吸気下流側に接続された第2の吸気通路と、前記第2の吸気通路に設けられた補助過給装置と、前記第1の吸気通路に前記第2の吸気通路との分岐部及び接続部の間に位置して設けられ、前記補助過給装置の駆動時に前記第1の吸気通路を遮断するバルブと、前記内燃機関の減筒運転時に前記補助過給装置を駆動させる補助過給装置制御部とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、前記補助過給装置制御部は、前記内燃機関の運転状態が低速高負荷領域にある場合においても、前記補助過給装置を駆動させるようにしてもよい。
【0009】
また、前記内燃機関の吸気マニホールドに設けられて前記内燃機関の過給圧を検出する過給圧センサと、前記内燃機関の運転状態に基づいて目標過給圧を設定する目標過給圧設定部とをさらに備え、前記補助過給装置制御部は、前記内燃機関の減筒運転時に、前記過給圧センサで検出される過給圧が前記目標過給圧設定部で設定された目標過給圧に達するまで前記補助過給装置を駆動させるようにしてもよい。
【0010】
また、前記内燃機関の排気の少なくとも一部を前記内燃機関の吸気系に還流するEGR装置と、前記内燃機関の運転状態に応じて前記EGR装置による排気の還流量を制御するEGR量制御部とをさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の内燃機関の過給システムによれば、減筒運転によるポンピングフリクションの低減効果を維持しつつ、減筒運転時における運転気筒の過給不足を補完することで、燃費を効果的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る内燃機関の過給システムを示す模式的なブロック構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る内燃機関の過給システムの制御内容を示すフローチャートである。
【図3】本発明の他の実施形態に係る内燃機関の過給システムを示す模式的なブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1,2に基づいて、本発明の一実施形態に係る内燃機関の過給システムを説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る内燃機関の過給システムは、内燃機関としてのディーゼルエンジン(以下、単にエンジンという)10と、エンジン10の吸気系に接続された吸気通路11と、エンジン10の排気系に接続された排気通路12と、過給機としてのターボチャージャ13と、補助過給装置としての機械式過給機14と、機械式過給機14が設けられたバイパス通路15と、吸気の流路を切り替えるバルブ16と、排気の一部を吸気系に還流するEGR装置20と、一部の気筒の稼働を休止させる減筒用バルブ休止機構30と、ECU(電子制御ユニット)40とを備えている。なお、本実施形態において、吸気通路11は本発明の第1の吸気通路に相当し、バイパス通路15は本発明の第2の吸気通路に相当する。
【0015】
エンジン10は、複数気筒(本実施形態では直列6気筒)を備える多気筒エンジンである。また、エンジン10には、図示しない吸気バルブの開弁により各気筒の燃焼室内に新気を導入する吸気マニホールド10aと、図示しない排気バルブの開弁により各気筒の燃焼室内から排気を導出する排気マニホールド10bとが設けられている。この吸気マニホールド10aには、ブースト圧センサとしての過給圧センサ52が設けられている。
【0016】
吸気通路11は、その吸気下流側の端部を吸気マニホールド10aに接続されている。また、吸気通路11には、吸気上流側から順にエアフィルタ50と、MAFセンサ51と、バルブ16と、ターボチャージャ13のコンプレッサ13bと、インタークーラ53とが設けられている。
【0017】
排気通路12は、その排気上流側の端部を排気マニホールド10bに接続されている。また、排気通路12には、ターボチャージャ13のタービン13aが設けられている。
【0018】
ターボチャージャ13は、吸気通路11に設けられたコンプレッサ13bと、排気通路12に設けられた可変翼を持つVGT型のタービン13aとを備えている。すなわち、ターボチャージャ13は、エンジン10の排気エネルギーによりタービン13aが駆動すると共に、同軸に設けられたコンプレッサ13bが回転することで、吸気通路11内の吸気をエンジン10の各気筒の燃焼室内へと圧送するように構成されている。なお、本実施形態は、ターボ過給システムを一段過給システムとして説明しているが、例えば高圧段ターボと低圧段ターボとを備える多段過給システムに適用することもできる。
【0019】
バイパス通路15は、吸気通路11におけるバルブ16の上流側と下流側とを連通する。すなわち、バイパス通路15は、バルブ16よりも上流側の吸気通路11から分岐すると共に、バルブ16よりも下流側の吸気通路11に合流してバルブ16を迂回する。
【0020】
機械式過給機(補助過給装置)14は、例えば図示しない一対のロータをハウジング内に収容する公知のスーパチャージャであって、バイパス通路15に設けられている。この機械式過給機14は、エンジン10の回転力が電磁クラッチ14aを介して図示しない回転軸に伝達されることで回転駆動される。
【0021】
電磁クラッチ14aは、図示しないベルト(又はギヤ)を介してエンジン10のクランクシャフトと接続されている。また、電磁クラッチ14aは、ECU40と電気的に接続されており、ECU40から出力される作動信号に応じて断接がコントロールされている。すなわち、ECU40から作動信号が出力されて、電磁クラッチ14aが接続状態(ON)に制御されると、エンジン10の回転力は機械式過給機14の回転軸に伝達されるように構成されている。なお、機械式過給機14はエンジン10を動力源とするものに限られず、例えば、吸気を圧送するロータ付きモータを備える電動式過給機を用いることもできる。この場合、電磁クラッチ14aは不要となる。
【0022】
バルブ16は、例えば公知の逆止弁であって、吸気通路11にバイパス通路15との分岐部及び合流部の間に位置して設けられている。このバルブ16に逆止弁を用いた場合、機械式過給機14の非駆動時は、逆止弁よりも下流側の吸気通路11内に負圧が生じ、上流側と下流側との差圧によって逆止弁は開弁される。すなわち、エアフィルタ50を通過した吸気は、バイパス通路15内を流通することなく、吸気通路11を流通してエンジン10の吸気マニホールド10aへと導かれる。一方、機械式過給機14が駆動するエンジン10の過渡運転時は、逆止弁とエンジン10との間の吸気圧力が上昇することで、逆止弁は閉弁される。すなわち、エアフィルタ50を通過した吸気は、バイパス通路15に流れ込むと共に、機械式過給機14で圧送されてエンジン10の吸気マニホールド10aへと導かれるように構成されている。
【0023】
EGR装置20は、可変翼タービン13aよりも上流側の排気通路12とインタークーラ53よりも下流側の吸気通路11とを連通するEGR通路21と、還流排気を冷却するEGRクーラ22と、還流排気量(以下、EGR量という)を調整可能なEGRバルブ23とを備える高圧EGR装置である。このEGR装置20によるEGR量は、EGRバルブ23の開度が電気的に接続されたECU40により調整されることでコントロールされる。なお、EGR装置20は、高圧EGR装置に限られず、例えば、ターボチャージャ13よりも排気下流側の排気通路12から、ターボチャージャ13よりも吸気上流側の吸気通路11に排気を還流する低圧EGR装置を適用することもできる。
【0024】
減筒用バルブ休止機構30は、各気筒の図示しない吸排気バルブに連なるロッカーアームとロッカーシャフトとの結合関係を解除することで、これら吸排気バルブの開閉動作を休止させる。また、減筒用バルブ休止機構30は、何れも図示しない油圧供給源と油圧式アクチュエータとを備えており、これら油圧供給源と油圧式アクチュエータとを連絡する油路を、ECU40に電気的に接続された電磁バルブ31により開閉することで作動する。この減筒用バルブ休止機構30により一部の気筒の吸排気バルブの開閉動作が休止されると、休止された気筒の燃料噴射も停止されることで、エンジン10の運転状態に応じた減筒運転が実現されるように構成されている。
【0025】
ECU40は、エンジン10の燃料噴射量や燃料噴射時期等の各種制御を行うもので、公知のCPUやROM、RAM、入力ポート、出力ポート等を備え構成されている。この各種制御を行うために、ECU40には、エンジン回転数センサ54、MAFセンサ51、過給圧センサ52、アクセル開度センサ(不図示)等の各種センサの出力信号がA/D変換された後に入力される。
【0026】
また、ECU40は、燃料噴射量算出部41と、目標過給圧・目標吸気量算出部42と、EGR制御部43と、減筒運転制御部44と、補助過給制御部45とを一部の機能要素として有する。これら各機能要素は、本実施形態では一体のハードウェアであるECU40に含まれるものとして説明するが、これらのいずれか一部を別体のハードウェアに設けることもできる。
【0027】
燃料噴射量算出部41は、エンジン10の運転状態に応じた燃料噴射量を算出する。ECU40の記憶部には、予め作成されたエンジン回転数とエンジン負荷とをパラメータとする図示しない燃料噴射量マップが記憶されている。燃料噴射量算出部41は、この燃料噴射量マップから、エンジン回転数センサ54で検出されたエンジン回転数及び、アクセル開度センサで検出されたエンジン負荷に対応する値を読み取ることで、エンジン10の運転状態に応じた燃料噴射量を算出する。
【0028】
目標過給圧・目標吸気量算出部42は、フィードバック制御の目標値としての目標過給圧及び、目標吸気量を算出する。ECU40の記憶部には、予め作成されたエンジン回転数と燃料噴射量とをパラメータとするいずれも図示しない過給圧基本マップと吸気量基本マップとが記憶されている。目標過給圧・目標吸気量算出部42は、この過給圧基本マップと吸気量基本マップとから、エンジン回転数センサ54で検出されたエンジン回転数及び、燃料噴射量算出部41で算出された燃料噴射量に対応する値を読み取ることで、目標過給圧と目標吸気量とを算出する。
【0029】
EGR制御部43は、排気中の窒素化合物(NOx)を効果的に低減すべく、エンジン10の運転状態に応じたEGR量を制御する。ECU40の記憶部には、予め作成されたエンジン回転数と燃料噴射量とをパラメータとする図示しないEGR基本マップが記憶されている。EGR制御部43は、このEGR基本マップから、エンジン回転数センサ54で検出されたエンジン回転数及び、燃料噴射量算出部41で算出された燃料噴射量に対応する値を読み取って目標EGR量を算出すると共に、実際のEGR量が目標EGR量となるようにEGRバルブ23の開度をフィードバック制御する。
【0030】
減筒運転制御部44は、エンジン10の運転状態に応じて一部の気筒における吸排気バルブの開閉動作を休止させる減筒運転を制御する。ECU40の記憶部には、予め作成されたエンジン回転数とエンジン出力とをパラメータとする図示しない減筒運転基本マップが記憶されている。また、この減筒運転基本マップ上には、エンジン全負荷に対して各気筒のうち半分の気筒(本実施形態では3つの気筒)の稼働を休止させて運転可能な減筒運転領域が設定されている。さらに、この減筒運転領域は、アイドル運転時の振動を防ぐべくアイドル運転領域を含まず、かつ、エンジンブレーキ力の低下を防ぐべくエンジン減速運転領域を含まないように設定されている。
【0031】
そして、減筒運転制御部44は、エンジン回転数センサ54で検出されたエンジン回転数及び、燃料噴射量算出部41で算出された燃料噴射量が減筒運転基本マップ上の減筒運転領域にある時は、エンジン10の運転状態に応じて一部の気筒の吸排気バルブの開閉動作を休止させるように減筒用バルブ休止機構30を制御する。すなわち、減筒運転を実施する時は、対象気筒の吸排気バルブに連なるロッカーアームとロッカーシャフトとの結合関係を解除すべく、電磁バルブ31に作動信号を出力して開弁させると同時に、対象気筒の燃料噴射を停止させるように構成されている。
【0032】
補助過給制御部45は、エンジン10の実過給圧及び実吸気量が、目標過給圧・目標吸気量算出部42で算出された目標過給圧及び目標吸気量となるように、機械式過給機14の駆動を制御する。ECU40の記憶部には、予め作成されたエンジン回転数とエンジン出力とをパラメータとする図示しない補助過給基本マップが記憶されている。また、この補助過給基本マップ上には、上述の減筒運転基本マップ上の減筒運転領域に一致する領域と、エンジン10の低速高負荷領域との双方を含む運転領域が補助過給実行領域として設定されている。ここで、補助過給実行領域に減筒運転領域が含まれる理由は、減筒運転時におけるターボチャージャ13の過給不足を補完するためである。また、補助過給実行領域に低速高負荷領域が含まれる理由は、車両発進時等の過渡運転時における吸気量不足を補完するためである。
【0033】
そして、補助過給制御部45は、エンジン回転数と燃料噴射量とが補助過給基本マップ上の補助過給実行領域にあり、かつ、実過給圧及び実吸気量が目標過給圧及び目標吸気量に達していない場合は、電磁クラッチ14aを接(ON)にする作動信号を出力して機械式過給機14を回転駆動させる。その後、実過給圧が目標過給圧に達し、かつ、実吸気量が目標吸気量に達すると、補助過給制御部45は、電磁クラッチ14aを断(OFF)にする作動信号を出力して機械式過給機14の駆動を停止させるように構成されている。
【0034】
次に、本実施形態に係る内燃機関の過給システムによる制御フローを図2に基づいて説明する。なお、本制御はエンジン10の始動(イグニッションスイッチのキースイッチON)と同時にスタートする。
【0035】
ステップ(以下、ステップを単にSと記載する)100では、エンジン回転数センサ54で検出されたエンジン回転数及び、アクセル開度センサ(不図示)で検出されたエンジン負荷がECU40に読み込まれる。次にS110では、燃料噴射量算出部41により、エンジン回転数とエンジン負荷とに対応する燃料噴射量が燃料噴射量マップから読み取られることで、エンジン10の運転状態に応じた燃料噴射量を算出する。
【0036】
S120では、目標過給圧・目標吸気量算出部42により、エンジン回転数及び燃料噴射量に対応する目標過給圧及び目標吸気量が吸気量基本マップから読み取られることで、フィードバック制御の目標値としての目標過給圧及び目標吸気量を算出する。
【0037】
S130では、EGR制御部43により、エンジン回転数と燃料噴射量とに対応する目標EGR量がEGR基本マップから読み取られることで、排気中のNOxを効果的に低減する目標EGR量を算出する。その後、S140では、EGR制御部43により、EGRバルブ23の開度が目標EGR量となるようにフィードバック制御される。
【0038】
S150では、減筒運転制御部44により、エンジン回転数と燃料噴射量とが減筒運転基本マップ上の減筒運転領域にあるか否かが確認される。エンジン10の運転状態が減筒運転基本マップ上の減筒運転領域にある場合は、S160において、減筒用バルブ休止機構30が一部の気筒の稼働を休止するように制御される。一方、エンジン10の運転状態が減筒運転基本マップ上の減筒運転領域にない場合はS170へと進む。
【0039】
S170では、補助過給制御部45により、エンジン回転数と燃料噴射量とが補助過給基本マップ上の補助過給実行領域にあるか否かが確認される。エンジン10の運転状態が補助過給実行領域としての低速高負荷領域もしくは減筒運転領域にある場合はS180へと進む。一方、エンジン10の運転状態が補助過給実行領域にない場合はリターンされる。
【0040】
S180では、過給圧センサ52で検出された実過給圧及び、MAFセンサ51で検出された実吸気量がECU40に読み込まれる。その後、S190では、読み込まれた実過給圧が目標過給圧に達しているか否かが判定され、S200では、読み込まれた実吸気量が目標吸気量に達しているか否かが判定される。
【0041】
実過給圧及び実吸気量のうち何れか一方でも目標値に達していない場合(NO)は、S210へと進み、機械式過給機14を駆動させる補助過給が実行される。すなわち、実過給圧が目標過給圧に達すると共に、実吸気量が目標吸気量に達するまで、機械式過給機14による補助過給は継続される。一方、実過給圧及び実吸気量の何れもが目標値に達している場合(YES)は、S220で機械式過給機14を駆動させることなく、もしくは機械式過給機14を停止させて本制御はリターンされる。その後、S100〜220の制御フローは、エンジン10が停止(イグニッションスイッチのキースイッチOFF)するまで繰り返し行われる。
【0042】
なお、図2に示す制御フローでは省略されているが、例えば機械式過給機14を駆動させるステップの前に、ターボチャージャ13の可変翼を絞ることで吸気量を増加させるステップを設け、係る可変翼を絞る制御によっても実過給圧及び実吸気量の何れもが目標値に達しない場合に機械式過給機14を初めて駆動させるように構成してもよい。
【0043】
以上のような構成により、本実施形態に係る内燃機関の過給システムによれば以下のような作用効果を奏する。
【0044】
エンジン10の運転状態が、エンジン全負荷に対して半分の気筒で運転可能な減筒運転領域にある時は、所定気筒の吸排気バルブの開閉動作を休止させる減筒運転が実行される。このように減筒運転が実行されると、排気エネルギの低下によりターボチャージャ13の過給不足が生じるが、本実施形態の内燃機関の過給システムによれば、実過給圧が目標過給圧を維持し、かつ、実吸気量が目標吸気量を維持するように機械式過給機14が回転駆動される。すなわち、減筒運転時に機械式過給機14による補助過給を行うことで、ターボチャージャ13の過給不足は効果的に補完され、稼働気筒の燃焼は良好に維持されることになる。
【0045】
したがって、減筒運転によるポンピングフリクションの低減効果を維持しつつ、過給不足による燃焼の悪化や排気中の粒子状物質を抑制することができ、エンジン10の燃費性能及び排ガス性能を効果的に向上させることができる。
【0046】
また、本実施形態の内燃機関の過給システムによれば、減筒運転を実行しない全気筒運転時であっても、車両の発進時等、エンジン10の運転状態が低速高負荷領域にある場合は、空気量不足を補完すべく機械式過給機14による補助過給が実行される。
【0047】
したがって、低速高負荷領域のエンジン出力を向上させつつ、過渡運転時の空気量不足によるスモークの大量発生を抑制することが可能となり、低速高負荷領域におけるエンジン10の燃費性能及び排ガス性能を効果的に向上させることができる。
【0048】
また、本実施形態の内燃機関の過給システムは、エンジン10のアイドル運転時及び減速運転時は、一部の気筒の稼働を休止する減筒運転を実行しないように構成されている。
【0049】
したがって、減筒運転によるアイドル運転時のエンジン振動及び、減筒運転によるエンジンブレーキ力の低下の双方を効果的に抑止することができる。
【0050】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0051】
例えば、上述の実施形態において、機械式過給機14やバルブ16はターボチャージャ13よりも吸気上流側に設けられるものとして説明したが、図3に示すように、ターボチャージャ13よりも吸気下流側に設けてもよい。この場合は、バイパス通路15をターボチャージャ13とバルブ16との間の吸気通路11から分岐させると共に、インタークーラ53よりも吸気上流側の吸気通路11に合流させればよい。
【0052】
また、バルブ16は逆止弁に限られず、例えば、図3に示すように、公知のバタフライバルブを適用することもできる。この場合は、ECU40の機能要素にバルブ制御部46を追加して、機械式過給機14の駆動と同時にバルブ16を閉弁させるように制御すればよい。
【0053】
また、本実施形態の内燃機関の過給システムは、ディーゼルエンジンに限定されず、ガソリンエンジン等に広く適用することが可能である。
【0054】
また、エンジン10は直列6気筒に限られず、4気筒エンジン等の複数気筒エンジンに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
10 エンジン(内燃機関)
11 吸気通路(第1の吸気通路)
12 排気通路
13 ターボチャージャ(過給機)
14 機械式過給機(補助過給装置)
15 バイパス通路(第2の吸気通路)
16 バルブ
20 EGR装置
30 減筒用バルブ休止機構
40 ECU
43 EGR制御部
44 減筒運転制御部
45 補助過給制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気エネルギにより駆動して吸気を圧送する少なくとも一つの過給機を備え、複数気筒のうち任意の気筒を選択的に非稼働にする減筒運転が可能な内燃機関の過給システムであって、
前記内燃機関の吸気系に接続された第1の吸気通路と、
前記第1の吸気通路の吸気上流側から分岐される共に、前記第1の吸気通路の吸気下流側に接続された第2の吸気通路と、
前記第2の吸気通路に設けられた補助過給装置と、
前記第1の吸気通路に前記第2の吸気通路との分岐部及び接続部の間に位置して設けられ、前記補助過給装置の駆動時に前記第1の吸気通路を遮断するバルブと、
前記内燃機関の減筒運転時に前記補助過給装置を駆動させる補助過給装置制御部とを備える
ことを特徴とする内燃機関の過給システム。
【請求項2】
前記補助過給装置制御部は、
前記内燃機関の運転状態が低速高負荷領域にある場合においても、前記補助過給装置を駆動させる請求項1に記載の内燃機関の過給システム。
【請求項3】
前記内燃機関の吸気マニホールドに設けられて前記内燃機関の過給圧を検出する過給圧センサと、
前記内燃機関の運転状態に基づいて目標過給圧を設定する目標過給圧設定部とをさらに備え、
前記補助過給装置制御部は、
前記内燃機関の減筒運転時に、前記過給圧センサで検出される過給圧が前記目標過給圧設定部で設定された目標過給圧に達するまで前記補助過給装置を駆動させる請求項1又は2に記載の内燃機関の過給システム。
【請求項4】
前記内燃機関の排気の少なくとも一部を前記内燃機関の吸気系に還流するEGR装置と、
前記内燃機関の運転状態に応じて前記EGR装置による排気の還流量を制御するEGR量制御部とをさらに備える請求項1から3の何れかに記載の内燃機関の過給システム。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−57289(P2013−57289A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195890(P2011−195890)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】