説明

内燃機関制御装置

【課題】運転者に対して違和感を与えることを抑制しつつ、潤滑油の燃料希釈に起因して燃料噴射システムにリッチ異常が生じている旨の誤診断がなされることを抑制することのできる。
【解決手段】電子制御装置60は、機関駆動式のオルタネータ70を備える内燃機関10に適用され、混合気の空燃比を過度なリッチ状態とするリッチ異常が燃料噴射システムに生じているか否かを空燃比フィードバック制御の空燃比補正量に基づいて診断する。また、オルタネータ70により発電された電力が充電されるバッテリ80についてその充電状態が所定の高充電状態である場合にオルタネータ70による発電電圧を通常の発電電圧よりも低く設定する充電制御を行なう。また、バッテリ80の充電状態が上記所定の高充電状態であるとき、内燃機関10の潤滑油の燃料希釈度合が所定度合以上である場合には当該充電制御の実行を禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の混合気の空燃比を過度なリッチ状態とするリッチ異常が燃料噴射システムに生じているか否かを空燃比フィードバック制御の空燃比補正量に基づいて診断する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関では、実空燃比を目標空燃比(例えば理論空燃比)に一致させるべく、燃料噴射量の空燃比フィードバック制御が行なわれている。ここで、燃料噴射弁等の燃料噴射システムに何等かの異常が生じることで、実際に噴射供給される燃料量である実噴射量が目標噴射量を大きく上回るようになることがある。この場合、実空燃比が目標空燃比よりもリッチとなり、排気性状の悪化等を招くおそれがある。
【0003】
そこで、従来、例えば特許文献1に記載の技術では、空燃比フィードバック制御の実行に際して、空燃比補正量を監視するとともに、同空燃比補正量が過度に減少したときには目標噴射量に対して実噴射量が不要に多くなっているとして、混合気の空燃比を過度なリッチ状態とするリッチ異常が燃料噴射システムに生じている旨診断するようにしている。
【0004】
また、内燃機関には、気筒内からクランクケース内に漏出するブローバイガスを処理するためのブローバイガス処理装置が設けられている。このブローバイガス処理装置では、クランクケースの外部から新気を導入し、これをクランクケース内で循環させた後に吸気通路に戻すようにしている。そして、ブローバイガスを含む混合気を燃焼室で燃焼させることで、ブローバイガスが外部に排出されることなく処理されるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001―73853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、機関冷間時には、噴射燃料が霧化されにくくなるため、噴射燃料の一部が燃焼に供されずに気筒内周面(シリンダ内周面)に付着して、機関ピストンの潤滑のために気筒内周面に付着している潤滑油に混入するようになる。そして、燃料により希釈された気筒内周面の潤滑油は、機関ピストンが上下動するのに伴って掻き落とされ、クランクケースに戻されるようになる。
【0007】
ここで、潤滑油に混入している燃料の割合、すなわち燃料希釈度合が増大すると、それに伴って潤滑油から多量の燃料が蒸発するようになり、ブローバイガスの燃料濃度が大幅に上昇するようになる。そして、こうしたブローバイガスが吸気通路に戻されると、これに起因して混合気の実空燃比が目標空燃比よりもリッチとなり、空燃比フィードバック制御の空燃比補正量が過度に減少することとなる。その結果、燃料噴射システムに何ら異常が生じていないにも関わらず、リッチ異常が生じている旨の誤診断がなされるといった問題が生じる。
【0008】
尚、こうした問題に対して、潤滑油の燃料希釈度合が大きい場合に例えば新気の流量を増大させることで混合気に占める新気の割合を大きくし、ブローバイガスの影響を小さくすることが考えられる。これにより、空燃比フィードバック制御における空燃比補正量の減少幅が小さくなり、リッチ異常が生じている旨の誤診断がなされることが抑制されるようにはなる。しかしながら、この場合には、運転者の意図に反して機関回転速度が上昇する結果、運転者に対して違和感を与えるといった新たな問題が生じることとなる。
【0009】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、運転者に対して違和感を与えることを抑制しつつ、潤滑油の燃料希釈に起因して燃料噴射システムにリッチ異常が生じている旨の誤診断がなされることを抑制することのできる内燃機関制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、機関駆動式の発電機を備える内燃機関に適用され、混合気の空燃比を過度なリッチ状態とするリッチ異常が燃料噴射システムに生じているか否かを空燃比フィードバック制御の空燃比補正量に基づいて診断する制御装置であって、内燃機関の潤滑油の燃料希釈度合が所定度合以上である場合にはそうでない場合に比べて発電機による発電電圧を高く設定することをその要旨としている。
【0011】
内燃機関では、潤滑油の燃料希釈度合が大きくなるほど、吸気通路に戻されるブローバイガスの燃料濃度が高くなり、こうしたブローバイガスが吸気通路に戻されることで混合気の空燃比はよりリッチになる。また、吸気通路に戻されるブローバイガスの流量は新気の流量が変化してもほとんど変化しない。これらのことから、潤滑油の燃料希釈度合が大きいときほど、また新気の流量が少ないときほど、混合気に占めるブローバイガス(特に燃料成分)の割合が大きくなり、潤滑油の燃料希釈に起因して燃料噴射システムにリッチ異常が生じている旨の誤診断が発生しやすくなる。
【0012】
上記構成によれば、潤滑油の燃料希釈度合が所定度合以上である場合にはそうでない場合に比べて発電機による発電電圧が高くされる。すなわち、潤滑油の燃料希釈度合に起因してリッチ異常が生じている旨の誤診断がなされる可能性の高い場合にはそうでない場合に比べて発電機の駆動に伴って機関負荷が増大される。これにより、新気の流量が多くなることで混合気に占める新気の割合が大きくなり、ブローバイガス(特に燃料成分)の影響が小さくなる。ここで、単に新気の流量を増大させる構成では、機関出力が増大するとともにその増大分が機関回転速度の上昇に変換されることとなり、運転者に対して違和感を与えるおそれがある。しかしながら、上記構成によれば、機関出力が増大してもその増大分が発電機の駆動を通じて電力に変換されることから、運転者に対して違和感を与えにくい。従って、運転者に対して違和感を与えることを抑制しつつ、潤滑油の燃料希釈に起因して燃料噴射システムにリッチ異常が生じている旨の誤診断がなされることを抑制することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関制御装置において、発電機により発電された電力が充電されるバッテリについてその充電状態が所定の高充電状態である場合に発電機による発電電圧を通常の発電電圧よりも低く設定する充電制御を行なう一方、バッテリの充電状態が前記所定の高充電状態であるとき、前記燃料希釈度合が前記所定度合以上である場合には当該充電制御の実行を制限することをその要旨としている。
【0014】
同構成によれば、バッテリの充電状態が所定の高充電状態であるときには発電機による発電電圧が通常の発電電圧よりも低く設定される。これにより、発電負荷が小さくされ、機関負荷が低減されることで燃費の節減を図ることができる。ただし、潤滑油の燃料希釈度合が所定度合以上である場合にまで上記充電制御が通常の態様で行なわれるものとすると、機関負荷が低減されることで新気の流量が少なくなり、混合気に占めるブローバイガス(特に燃料成分)の割合が大きくなってしまう。そのため、リッチ異常が生じている旨の誤診断が発生しやすくなる。
【0015】
この点、上記構成によれば、バッテリの充電状態が所定の高充電状態であっても、燃料希釈度合が所定度合以上である場合には、当該充電制御の実行が制限される。このため、機関負荷が低減されることはなく、或いは発電負荷の低減量が小さくされ、混合気に占めるブローバイガス(特に燃料成分)の割合が大きくなることが抑制されるようになる。従って、充電制御の実行を的確に制限することで、リッチ異常が生じている旨の誤診断がなされることを好適に抑制することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の内燃機関制御装置において、バッテリの充電状態が前記所定の高充電状態であるとき、前記燃料希釈度合が前記所定度合以上である場合には当該充電制御の実行を禁止するとともに発電機による発電電圧を通常の発電電圧よりも高く設定することをその要旨としている。
【0017】
同構成によれば、発電負荷が増大されて機関負荷が増大されることで新気の流量が多くなり、混合気に占めるブローバイガス(特に燃料成分)の割合が一層小さくなる。従って、リッチ異常が生じている旨の誤診断がなされることを一層抑制することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の内燃機関制御装置において、バッテリの充電状態が前記所定の高充電状態であるとき、前記燃料希釈度合が前記所定度合以上である場合には発電機による発電電圧を設定可能な範囲における最大値に設定することをその要旨としている。
【0019】
同構成によれば、発電機による発電電圧が設定可能な範囲における最大値に設定されるため、発電負荷が最大とされて発電機の駆動に伴う機関負荷の増大量が最大となる。これにより、混合気に占めるブローバイガス(特に燃料成分)の割合が一層好適に小さくなる。従って、リッチ異常が生じている旨の誤診断がなされることを一層好適に抑制することができる。
【0020】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の内燃機関制御装置は、請求項5に記載の発明によるように、内燃機関が低負荷運転時であることを条件に、前記燃料希釈度合が前記所定度合以上である場合にはそうでない場合に比べて発電機による発電電圧を高く設定するといった態様をもって具体化することができる。
【0021】
同構成によれば、潤滑油の燃料希釈に起因して燃料噴射システムにリッチ異常が生じている旨の誤診断が発生しやすい低負荷運転時にのみ請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の発明が適用される。このため、低負荷運転時において当該リッチ異常が生じている旨の誤診断がなされることを好適に抑制することができる。また、当該リッチ異常が生じている旨の誤診断が発生しにくい高負荷運転時等においては発電機による発電電圧が不要に高く設定されることはない。従って、発電機による発電負荷が不要に増大されることを抑制することができる。尚、ここでの低負荷運転時とはアイドル運転時を含むものとする。
【0022】
請求項6に記載の発明は、機関駆動式の発電機を備える内燃機関に適用され、混合気の空燃比を過度なリッチ状態とするリッチ異常が燃料噴射システムに生じているか否かを空燃比フィードバック制御の空燃比補正量に基づいて診断する制御装置であって、内燃機関の潤滑油の燃料希釈度合が所定度合以上である場合には当該燃料希釈度合が大きいほど発電機による発電電圧を高く設定することをその要旨としている。
【0023】
上記構成によれば、潤滑油の燃料希釈度合が所定度合以上である場合には当該燃料希釈度合が大きいほど発電機による発電電圧が高くされる。すなわち、潤滑油の燃料希釈度合に起因してリッチ異常が生じている旨の誤診断がなされる可能性が高いときほど発電負荷が増大されて機関負荷が増大される。これにより、当該誤診断が生じている旨の誤診断がなされる可能性が高いときほどブローバイガス(特に燃料成分)の影響が小さくなる。ここで、単に新気の流量を増大させる構成では、機関出力が増大するとともにその増大分が機関回転速度の上昇に変換されることとなり、運転者に対して違和感を与えるおそれがある。しかしながら、上記構成によれば、機関出力が増大してもその増大分が発電機の駆動を通じて電力に変換されることから、運転者に対して違和感を与えにくい。従って、運転者に対して違和感を与えることを抑制しつつ、潤滑油の燃料希釈に起因して燃料噴射システムにリッチ異常が生じている旨の誤診断がなされることを抑制することができる。
【0024】
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の内燃機関制御装置は、請求項7に記載の発明によるように、フィードフォワード制御により発電機による発電電圧を設定するといった態様をもって具体化することができる。この場合、発電機による発電電圧を所定の大きさに設定することが容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る内燃機関制御装置の第1実施形態について、同装置が適用される車載内燃機関の概略構成を示す概略図。
【図2】同実施形態におけるオルタネータによる発電電圧の設定処理の手順を示すフローチャート。
【図3】同実施形態におけるオルタネータの発電電圧低減要求の有無、潤滑油の燃料希釈度合、アイドルスイッチの出力信号、及びオルタネータの発電電圧についてそれぞれの推移の一例を併せ示したタイミングチャート。
【図4】本発明に係る内燃機関制御装置の第2実施形態について、オルタネータによる発電電圧の設定処理の手順を示すフローチャート。
【図5】同実施形態におけるオルタネータの発電電圧低減要求の有無、潤滑油の燃料希釈度合、吸気量、及びオルタネータの発電電圧についてそれぞれの推移の一例を併せ示したタイミングチャート。
【図6】本発明に係る内燃機関制御装置の変形例について、潤滑油の燃料希釈度合とオルタネータの発電電圧との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第1実施形態]
図1〜図3を参照して、本発明に係る内燃機関制御装置を具体化した第1実施形態について説明する。尚、本実施形態の内燃機関は、気筒内に燃料を直接噴射する車載内燃機関(以下、内燃機関10)である。
【0027】
図1に、本実施形態の内燃機関10の概略構成を示す。
内燃機関10の燃焼室12には吸気通路22及び排気通路18がそれぞれ接続されている。
【0028】
吸気通路22には、スロットルモータ24によって開閉駆動されるスロットルバルブ26が設けられている。また、吸気通路22においてスロットルバルブ26の吸気下流側にはサージタンク28が設けられている。そして、スロットルバルブ26の開度を変更することによって燃焼室12に供給される吸気(新気)の流量が調節される。
【0029】
内燃機関10には、気筒(燃焼室12)内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁14が設けられている。また、内燃機関10には点火プラグ16が設けられており、点火プラグ16は、燃料噴射弁14によって噴射された燃料と吸気通路22を介して気筒内に吸入された吸気とが混合されて生成される混合気に対して点火を行なう。
【0030】
排気通路18には、排気を浄化するための触媒装置(図示略)が設けられている。
内燃機関10には、クランクケース40内のブローバイガスを吸気通路22に戻して処理するためのブローバイガス処理装置30が設けられている。このブローバイガス処理装置30は、吸気通路22においてスロットルバルブ26の吸気上流側とクランクケース40内とを接続する導入通路32と、吸気通路22においてスロットルバルブ26の吸気下流側とクランクケース40内とを接続する還元通路34とを備えている。還元通路34の途中には、クランクケース40から吸気通路22に戻されるブローバイガスの流量を調節するPCVバルブ36が設けられている。尚、本実施形態のPCVバルブ36は機械式(ばね式)のものである。
【0031】
こうしたブローバイガス処理装置30を備える内燃機関10では、導入通路32を介してクランクケース40内に新気が導入され、これがクランクケース40内で循環された後に還元通路34を介して吸気通路22に戻される。そして、ブローバイガスを含む混合気が燃焼室12で燃焼することで、ブローバイガスが外部に排出されることなく処理される。
【0032】
また、内燃機関10には、本発明に係る発電機として機能する機関駆動式のオルタネータ70が設けられている。オルタネータ70は、内燃機関10の出力軸であるクランクシャフト42により駆動されて発電を行なうものであり、発電された電力はバッテリ80に充電されるようになっている。
【0033】
また、内燃機関10には、その運転状態を検出するための各種センサが設けられている。
各種センサとしては、クランクシャフト42の回転速度である機関回転速度NEを検出する機関回転速度センサ51、アクセルペダル44の操作量であるアクセル開度ACCPを検出するアクセル開度センサ52、アクセルペダル44の操作の有無を検出するアイドルスイッチ57が設けられている。また、スロットルバルブ26の開度であるスロットル開度TAを検出するスロットル開度センサ53、スロットルバルブ26を通過する吸気の流量である吸気量GAを検出する吸気量センサ54が設けられている。また、機関冷却水の温度である冷却水温THWを検出する水温センサ55、排気の空燃比を検出する空燃比センサ56が設けられている。これら各センサ51〜57の検出信号は、内燃機関10の各種制御を実行する電子制御装置60に入力される。この電子制御装置60への通電の実行及び停止の切り換え、並びに内燃機関10の運転及び停止の切り換えはイグニッションスイッチ(以下、「I/Gスイッチ61」)の操作位置の変更に基づいて行われる。
【0034】
電子制御装置60は、各種制御を実行するためのプログラム及び演算用マップ、並びに制御の実行に際して算出される各種データ等を記憶するメモリ(揮発性メモリ及び不揮発性メモリ)を備えて構成されており、上記各センサ51〜57をはじめとする各種センサの出力値により把握される機関運転状態等に基づいて、例えば次の各制御を実行する。
【0035】
すなわち、内燃機関10のアイドル運転時に機関回転速度NEを所定のアイドル回転速度に維持するアイドルスピードコントロール制御(以下、ISC制御)を実行する。
また、空燃比センサ56により検出される実空燃比を目標空燃比(例えば理論空燃比)に一致させるべく、燃料噴射量の空燃比フィードバック制御を実行する。
【0036】
また、通常、オルタネータ70による発電電圧Valtは所定の電圧V1(例えば14V)に設定されている。ただし、バッテリ80の充電状態が所定の高充電状態である場合には、以下の充電制御を実行する。すなわち、充電制御では、発電負荷を低減して燃費の節減を図るべく、オルタネータ70による発電電圧Valtを通常の発電電圧V1よりも低い所定の電圧V2(例えば12V)に設定する(V2<V1)。
【0037】
ところで、燃料噴射弁14や燃料噴射弁14に対して高圧の燃料を供給する高圧ポンプ、余剰の燃料をリリーフするリリーフ機構からなる燃料噴射システムに何等かの異常が生じることで、実際に噴射供給される燃料量である実噴射量が目標噴射量を大きく上回るようになることがある。この場合、実空燃比が目標空燃比よりもリッチとなり、排気性状の悪化等を招くおそれがある。
【0038】
そこで、本実施形態では、空燃比フィードバック制御の実行に際して、以下のようにして、混合気の空燃比を過度なリッチ状態とするリッチ異常が燃料噴射システムに生じている旨診断するようにしている。すなわち、空燃比補正量を監視するとともに、同空燃比補正量が所定の判定値を下回って減少したときには目標噴射量に対して実噴射量が不要に多くなっているとして、リッチ異常が生じている旨診断する。尚、この診断態様は周知のものであり、上記所定の判定値は実験やシミュレーションを通じて予め設定されている。
【0039】
ところで、前述したように、機関冷間時には、噴射燃料が霧化されにくくなるため、噴射燃料の一部が燃焼に供されずに気筒内周面(シリンダ内周面)に付着して、機関ピストンの潤滑のために気筒内周面に付着している潤滑油に混入するようになる。そして、燃料により希釈された気筒内周面の潤滑油は、機関ピストンが上下動するのに伴って掻き落とされ、クランクケース40に戻されるようになる。
【0040】
ここで、潤滑油に混入している燃料の割合、すなわち燃料希釈度合が増大すると、それに伴って潤滑油から多量の燃料が蒸発するようになり、ブローバイガスの燃料濃度が大幅に上昇するようになる。そして、こうしたブローバイガスが吸気通路22に戻されると、これに起因して混合気の実空燃比が目標空燃比よりもリッチとなり、空燃比フィードバック制御の空燃比補正量が過度に減少することとなる。その結果、燃料噴射システムに何ら異常が生じていないにも関わらず、リッチ異常が生じている旨の誤診断がなされるといった問題が生じる。
【0041】
しかも、本実施形態では、前述したように、バッテリ80の充電状態が所定の高充電状態であるときにはオルタネータ70による発電電圧Valtを通常の電圧V1よりも低い電圧V2に設定する充電制御が行なわれる。このため、潤滑油の燃料希釈度合が大きい場合にまで上記充電制御が行なわれると、発電負荷が低減して機関負荷が低減されることで新気の流量が少なくなり、混合気に占めるブローバイガス(特に燃料成分)の割合が大きくなってしまう。そのため、上記リッチ異常が生じている旨の誤診断が一層発生しやすくなる。
【0042】
こうした問題に対して、本実施形態では、内燃機関10の潤滑油の燃料希釈度合Dを推定するとともに、内燃機関10のアイドル運転時においてバッテリ80の充電状態が上記所定の高充電状態であるとき、推定される燃料希釈度合Dが所定度合Dth以上である場合には当該充電制御の実行を禁止するようにしている。これにより、上述したリッチ異常が生じている旨の誤診断がなされることを好適に抑制するようにしている。
【0043】
次に、図2を参照して、本実施形態におけるオルタネータ70による発電電圧Valtの設定処理の手順について説明する。尚、図2に示される一連の処理は、所定期間毎に繰り返し実行される。
【0044】
図2に示すように、この一連の処理では、まず、ステップS1において、バッテリ80の充電状態SOC(State of Charge)が所定値Sth以上であるか否か、すなわちオルタネータ70による発電電圧Valtを低減する要求が出される高充電状態であるか否かを判断する。ここで、バッテリ80の充電状態SOCが所定値Sth以上ではない場合(ステップS1:「NO」)には、充電制御を行なうタイミングではないとして、次に、ステップS6に移行し、発電電圧Valtを通常の発電電圧V1に設定して、この一連の処理を一旦終了する。
【0045】
一方、ステップS1においてバッテリ80の充電状態SOCが所定値Sth以上である場合(ステップS1:「YES」)には、次に、ステップS2に移行する。ステップS2では、潤滑油の燃料希釈度合Dの推定値が所定度合Dth以上であるか否かを判断する。尚、本実施形態では、内燃機関10の運転履歴(冷却水温THW、燃料噴射量等)に基づき周知の態様によって燃料希釈度合Dを推定するようにしている。すなわち、冷却水温THWが低い機関冷間時において燃料噴射量を積算するとともに、該積算値に基づいて燃料希釈度合Dを算出する。
【0046】
ここで、推定される燃料希釈度合Dが所定度合Dth以上である場合(ステップS2:「YES」)には、次に、ステップS3に移行して、内燃機関10がアイドル運転状態であるか否かを判断する。その結果、アイドル運転状態である場合(ステップS3:「YES」)には、次に、ステップS4に移行して、発電電圧Valtの低減を禁止して、すなわち発電電圧Valtを通常の発電電圧V1に設定して、この一連の処理を一旦終了する。
【0047】
一方、推定される燃料希釈度合Dが所定度合Dth以上ではない場合(ステップS2:「NO」)や、内燃機関10がアイドル運転状態ではない場合(ステップS3:「NO」)には、充電制御を行なうタイミングであるとして、次に、ステップS5に移行する。ステップS5では、発電電圧Valtを通常の発電電圧Valtよりも低い発電電圧V2(<V1)に設定して、この一連の処理を一旦終了する。
【0048】
ここで、上記所定度合Dthは、内燃機関10のアイドル運転時においてオルタネータ70の発電電圧Valtが充電制御時の電圧V2とされているときに、上記リッチ異常が生じている旨の誤診断が生じ得る燃料希釈度合Dの最小値とされており、実験等を通じて予め設定されている。
【0049】
次に、図3を参照して、本実施形態の作用について説明する。尚、図3に、オルタネータ70の発電電圧低減要求の有無、潤滑油の燃料希釈度合D、アイドルスイッチ57の出力信号、及びオルタネータ70の発電電圧Valtについてそれぞれの推移の一例を併せ示している。
【0050】
図3に示すように、例えば内燃機関が中負荷運転中であり、潤滑油の燃料希釈度合Dが所定度合Dthよりも大きい状態において(b)、時刻t1に、バッテリ80の充電状態SOCに基づいてオルタネータ70の発電電圧を低減する要求が出される(a)。これに伴い、オルタネータ70の発電電圧Valtは通常の発電電圧V1から所定の電圧V2に低減されるようになる(d)。
【0051】
そして、こうした状態から、時刻t2に、内燃機関10がアイドル運転状態となり、アイドルスイッチ57が「OFF」から「ON」とされる(c)。この場合、バッテリ80の充電状態SOCに基づきオルタネータ70の発電電圧の低減要求が出されているにもかかわらず、発電電圧Valtがそれまでの電圧V2から通常の発電電圧V1に戻されるようになる(d)。すなわち、発電電圧Valtの低減が禁止されるようになる。
【0052】
これに対して、従来の充電制御が行なわれた場合には、図3中に一点鎖線で示すように、時刻t2以降においても発電電圧Valtが所定の電圧V2に維持されることとなる。
以上説明した本実施形態に係る内燃機関制御装置によれば、以下に示す作用効果が得られるようになる。
【0053】
(1)電子制御装置60は、機関駆動式のオルタネータ70を備える内燃機関10に適用され、混合気の空燃比を過度なリッチ状態とするリッチ異常が燃料噴射システムに生じているか否かを空燃比フィードバック制御の空燃比補正量に基づいて診断するようにしている。また、オルタネータ70により発電された電力が充電されるバッテリ80についてその充電状態SOCが所定の高充電状態である場合にオルタネータ70による発電電圧Valtを通常の発電電圧V1よりも低く設定する充電制御を行なうようにしている。また、内燃機関10の潤滑油の燃料希釈度合Dを推定するとともに、バッテリ80の充電状態SOCが上記所定の高充電状態であるとき、推定される燃料希釈度合Dが所定度合Dth以上である場合には当該充電制御の実行を禁止するようにしている。
【0054】
内燃機関10では、潤滑油の燃料希釈度合Dが大きくなるほど、吸気通路22に戻されるブローバイガスの燃料濃度が高くなり、こうしたブローバイガスが吸気通路22に戻されることで混合気の空燃比はよりリッチになる。また、吸気通路22に戻されるブローバイガスの流量は新気の流量が変化してもほとんど変化しない。これらのことから、潤滑油の燃料希釈度合Dが大きいときほど、また新気の流量が少ないときほど、混合気に占めるブローバイガス(特に燃料成分)の割合が大きくなり、潤滑油の燃料希釈に起因して燃料噴射システムにリッチ異常が生じている旨の誤診断が発生しやすくなる。
【0055】
上記構成によれば、バッテリ80の充電状態SOCが所定の高充電状態であるときにはオルタネータ70による発電電圧Valtが通常の発電電圧V1よりも低い発電電圧V2に設定される(V2<V1)ことから、発電負荷が小さくされ、機関負荷が低減されることで燃費の節減を図ることができる。また、バッテリ80の充電状態SOCが所定の高充電状態であっても、推定される燃料希釈度合Dが所定度合Dth以上である場合には、当該充電制御の実行が禁止される。このため、機関負荷が低減されることはなく、新気の流量が少なくなることが回避され、混合気に占めるブローバイガス(特に燃料成分)の割合が大きくなることが回避されるようになる。ここで、単に新気の流量を増大させる構成では、機関出力が増大するとともにその増大分が機関回転速度NEの上昇に変換されることとなり、運転者に対して違和感を与えるおそれがある。しかしながら、本実施形態の上記構成によれば、機関出力が増大してもその増大分がオルタネータ70の駆動を通じて電力に変換されることから、運転者に対して違和感を与えにくい。従って、運転者に対して違和感を与えることを抑制しつつ、充電制御の実行を的確に制限することで、潤滑油の燃料希釈に起因して燃料噴射システムにリッチ異常が生じている旨の誤診断がなされることを好適に抑制することができる。
【0056】
(2)内燃機関10がアイドル運転時であることを条件に、推定される燃料希釈度合Dが所定度合Dth以上である場合に当該充電制御の禁止処理を行なうようにしている。
こうした構成によれば、潤滑油の燃料希釈に起因して燃料噴射システムにリッチ異常が生じている旨の誤診断が発生しやすいアイドル運転時にのみ当該充電制御の禁止処理が行なわれる。このため、内燃機関10のアイドル運転時において当該リッチ異常が生じている旨の誤診断がなされることを好適に抑制することができる。また、当該リッチ異常が生じている旨の誤診断が発生しにくい内燃機関10の高負荷運転時等においてはオルタネータ70による発電電圧Valtが不要に高く設定されることはない。従って、オルタネータ70による発電負荷が不要に増大されることを抑制することができ、燃費の悪化を抑制することができる。
【0057】
[第2実施形態]
図4及び図5を参照して、本発明に係る内燃機関制御装置の第2実施形態について説明する。
【0058】
本実施形態では、バッテリ80の充電状態SOCが所定の高充電状態であるとき、推定される燃料希釈度合Dが所定度合Dth以上である場合には充電制御の実行を禁止する点では先の第1実施形態と共通している。ただし、更にオルタネータ70による発電電圧Valtを設定可能な範囲における最大値V3(例えば16V)に設定する点が先の第1実施形態と相違している。尚、その他の構成については先の第1実施形態と基本的に同一であることから以下において重複する説明を割愛する。
【0059】
次に、図4を参照して、本実施形態におけるオルタネータ70による発電電圧の設定処理の手順について説明する。尚、図4に示される一連の処理は、所定期間毎に繰り返し実行される。
【0060】
図4に示すように、この一連の処理においても、まず、バッテリ80の充電状態SOCが所定値Sth以上であるか否かを判断する(ステップS11)。ここで、バッテリ80の充電状態SOCが所定値Sth以上ではない場合(ステップS11:「NO」)には、次に、発電電圧Valtを通常の発電電圧V1に設定して(ステップS16)、この一連の処理を一旦終了する。
【0061】
一方、バッテリ80の充電状態SOCが所定値Sth以上である場合(ステップS11:「YES」)には、次に、潤滑油の燃料希釈度合Dの推定値が所定度合Dth以上であるか否かを判断する(ステップS12)。ここで、推定される燃料希釈度合Dが所定度合Dth以上である場合(ステップS12:「YES」)には、次に、ステップS13に移行して、吸気量GAが所定量Gth以下であるか否か、すなわち低吸気量であるか否かを判断する。その結果、吸気量GAが所定量Gth以下である場合(ステップS13:「YES」)には、次に、ステップS14に移行して、発電電圧Valtの低減を禁止するとともに発電電圧Valtを設定可能な範囲における最大電圧V3(>V1)に設定して、この一連の処理を一旦終了する。
【0062】
一方、推定される燃料希釈度合Dが所定度合Dth以上ではない場合(ステップS12:「NO」)や、吸気量GAが所定量Gth以下ではない場合(ステップS13:「NO」)には、充電制御を実行すべく、発電電圧Valtを通常の発電電圧V1よりも低い発電電圧V2(<V1)に設定して、この一連の処理を一旦終了する。
【0063】
次に、図5を参照して、本実施形態の作用について説明する。尚、図5に、オルタネータ70の発電電圧低減要求の有無、潤滑油の燃料希釈度合D、吸気量GA、及びオルタネータ70の発電電圧Valtについてそれぞれの推移の一例を併せ示している。
【0064】
図5に示すように、例えば内燃機関が中負荷運転中であり、潤滑油の燃料希釈度合Dが所定度合Dthよりも大きい状態において(b)、時刻t11に、バッテリ80の充電状態SOCに基づいてオルタネータ70の発電電圧を低減する要求が出される(a)。これに伴い、オルタネータ70の発電電圧Valtは通常の発電電圧V1から所定の電圧V2に低減されるようになる(d)。
【0065】
そして、こうした状態から、時刻t12に、吸気量GAが低下して所定量Gth以下となると(c)、バッテリ80の充電状態SOCに基づきオルタネータ70の発電電圧Valtの低減要求が出されているにもかかわらず、発電電圧Valtがそれまでの電圧V2から最大電圧V3に高められるようになる(d)。
【0066】
一方、従来の充電制御が行なわれた場合には、図5中に一点鎖線で示すように、時刻t12以降においても発電電圧Valtが所定の電圧V2に維持されることとなる。
以上説明した本実施形態に係る内燃機関制御装置によれば、先の第1実施形態の作用効果(1)、(2)に加え、更に以下に示す作用効果が得られるようになる。
【0067】
(3)バッテリ80の充電状態SOCが所定の高充電状態であるとき、推定される燃料希釈度合Dが所定度合Dth以上である場合には充電制御の実行を禁止するとともにオルタネータ70による発電電圧Valtを設定可能な範囲における最大値V3(>V1)に設定するようにしている。こうした構成によれば、発電負荷が最大とされてオルタネータ70の駆動に伴う機関負荷の増大量が最大となることで新気の流量が一層多くなる。これにより、混合気に占めるブローバイガス(特に燃料成分)の割合が一層好適に小さくなる。従って、リッチ異常が生じている旨の誤診断がなされることを一層好適に抑制することができる。
【0068】
尚、本発明に係る内燃機関制御装置は、上記実施形態にて例示した構成に限定されるものではなく、これを適宜変更した例えば次のような形態として実施することもできる。
・上記各実施形態では、機械式のPCVバルブ36について例示したが、これに代えて、電動式のPCVバルブを採用することもできる。この場合であっても、吸気通路22に戻されるブローバイガスの流量が新気の流量によらずほとんど変化しない構成である以上、上記課題が同様にして生じ得る。従って、こうした構成を備える場合であっても、上記各実施形態にて例示した制御を実行することにより上記作用効果(1)〜(3)に準じた作用効果を奏することができる。
【0069】
・上記各実施形態では、バッテリ80の充電状態SOCが上記所定の高充電状態であるとき、推定される燃料希釈度合Dが所定度合Dth以上である場合には当該充電制御の実行を禁止するとともに、オルタネータ70の発電電圧Valtを通常の発電電圧V1或いは最大電圧V3に設定するものについて例示した。しかしながら、本発明はこのようにオルタネータ70の発電電圧Valtを所定の電圧V1(或いはV3)(固定値)に設定するものに限定されるものではない。他に例えば、図6に示すように、推定される燃料希釈度合Dが所定度合Dth以上である場合には当該燃料希釈度合Dが大きいほどオルタネータ70による発電電圧Valtを高く設定するようにしてもよい。この場合、潤滑油の燃料希釈度合Dに起因してリッチ異常が生じている旨の誤診断がなされる可能性が高いときほど発電負荷が増大されて機関負荷が増大される。これにより、当該誤診断が生じている旨の誤診断がなされる可能性が高いときほどブローバイガス(特に燃料成分)の影響を小さくすることができる。またこの場合、フィードフォワード制御によりオルタネータ70による発電電圧Valtを設定することが好ましい。これにより、オルタネータ70による発電電圧Valtを燃料希釈度合Dに応じた適切な大きさに設定することが容易にできる。またこの場合、燃料希釈度合Dが上記所定度合Dthを僅かに下回っている状態であっても当該燃料希釈度合Dに応じてオルタネータ70による発電電圧Valtを可変設定するようにしてもよい。
【0070】
・上記各実施形態では、アイドルスイッチ57が「ON」である場合、すなわち内燃機関10がアイドル運転時である場合(第1実施形態)や、吸気量GAが所定量Gth以下である場合(第2実施形態)に、内燃機関10が低負荷運転時であると判断するようにした。しかしながら、内燃機関10が低負荷運転時であるか否かを判断する方法はこれに限定されるものではなく、機関負荷率KLを算出するとともに、同機関負荷率KLが所定値以下であることをもって内燃機関10が低負荷運転時であると判断するようにしてもよい。
【0071】
・上記第2実施形態では、バッテリ80の充電状態SOCが所定の高充電状態であるとき、推定される燃料希釈度合Dが所定度合Dth以上である場合には充電制御の実行を禁止するとともにオルタネータ70による発電電圧Valtを最大電圧V3に設定するようにした。これに代えて、通常の発電電圧V1よりは高いものの、上記最大電圧V3よりは低い所定の発電電圧V4(V1<V4<V3)に設定するようにしてもよい。
【0072】
・上記第1実施形態では、バッテリ80の充電状態SOCが上記所定の高充電状態であるとき、推定される燃料希釈度合Dが所定度合Dth以上である場合には当該充電制御の実行を禁止するようにした。これに代えて、通常の発電電圧V1よりは低いものの、上記所定の電圧V2よりは高い所定の発電電圧V5(V2<V5<V1)に設定するようにしてもよい。すなわち、バッテリ80の充電状態が所定の高充電状態であるとき、推定される燃料希釈度合Dが所定度合Dth以上である場合には当該充電制御の実行を制限するものであればよい。
【0073】
・上記実施形態では、内燃機関10の運転履歴(冷却水温THW、燃料噴射量等)に基づき燃料希釈度合Dを推定するようにした。しかしながら、本発明は、このように燃料希釈度合Dを実際に推定(算出)するものに限定されるものではない。他に例えば、機関温度(冷却水温THW、潤滑油の温度)が所定温度以下である機関冷間時においてアイドル運転が所定時間継続されたことをもって燃料希釈度合が所定度合以上であると判断するようにしてもよい。
【0074】
・本発明は上記充電制御を行うものに限定されない。充電制御が行なわれていないときであっても、燃料希釈度合が所定度合以上である場合にはそうでない場合に比べて発電機による発電電圧を高く設定するようにしてもよい。このことによって、運転者に対して違和感を与えることを抑制しつつ、潤滑油の燃料希釈に起因して燃料噴射システムにリッチ異常が生じている旨の誤診断がなされることを抑制することができる。
【符号の説明】
【0075】
10…内燃機関、11…シリンダブロック、12…燃焼室、14…燃料噴射弁、16…点火プラグ、18…排気通路、22…吸気通路、24…スロットルモータ、26…スロットルバルブ(吸気制御バルブ)、28…サージタンク、30…ブローバイガス処理装置、32…導入通路、34…還元通路、36…PCVバルブ、40…クランクケース、42…クランクシャフト、44…アクセルペダル、51…機関回転速度センサ、52…アクセル開度センサ、53…スロットル開度センサ、54…吸気量センサ、55…水温センサ、56…空燃比センサ、60…電子制御装置、61…I/Gスイッチ、70…オルタネータ、80…バッテリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機関駆動式の発電機を備える内燃機関に適用され、混合気の空燃比を過度なリッチ状態とするリッチ異常が燃料噴射システムに生じているか否かを空燃比フィードバック制御の空燃比補正量に基づいて診断する制御装置であって、
内燃機関の潤滑油の燃料希釈度合が所定度合以上である場合にはそうでない場合に比べて発電機による発電電圧を高く設定する
ことを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関制御装置において、
発電機により発電された電力が充電されるバッテリについてその充電状態が所定の高充電状態である場合に発電機による発電電圧を通常の発電電圧よりも低く設定する充電制御を行なう一方、
バッテリの充電状態が前記所定の高充電状態であるとき、前記燃料希釈度合が前記所定度合以上である場合には当該充電制御の実行を制限する
ことを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の内燃機関制御装置において、
バッテリの充電状態が前記所定の高充電状態であるとき、前記燃料希釈度合が前記所定度合以上である場合には当該充電制御の実行を禁止するとともに発電機による発電電圧を通常の発電電圧よりも高く設定する
ことを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の内燃機関制御装置において、
バッテリの充電状態が前記所定の高充電状態であるとき、前記燃料希釈度合が前記所定度合以上である場合には発電機による発電電圧を設定可能な範囲における最大値に設定する
ことを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の内燃機関制御装置において、
内燃機関が低負荷運転時であることを条件に、前記燃料希釈度合が前記所定度合以上である場合にはそうでない場合に比べて発電機による発電電圧を高く設定する
ことを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項6】
機関駆動式の発電機を備える内燃機関に適用され、混合気の空燃比を過度なリッチ状態とするリッチ異常が燃料噴射システムに生じているか否かを空燃比フィードバック制御の空燃比補正量に基づいて診断する制御装置であって、
内燃機関の潤滑油の燃料希釈度合が所定度合以上である場合には当該燃料希釈度合が大きいほど発電機による発電電圧を高く設定する
ことを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の内燃機関制御装置において、
フィードフォワード制御により発電機による発電電圧を設定する
ことを特徴とする内燃機関制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−233422(P2012−233422A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101546(P2011−101546)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】