説明

内燃機関

【課題】大量の排気ガスを吸気経路に再循環させても排気ターボ過給機による過給効果を十分に得ること。
【解決手段】吸気経路20又は燃焼室11に燃料としての水素を噴射する水素燃料噴射装置60と、強制的に大量の空気を燃焼室11内へと供給する排気ターボ過給機40とを備えた内燃機関10において、排気経路30における排気ターボ過給機40のタービン44の下流側(第2排気通路33)から吸気経路20における排気ターボ過給機40のコンプレッサ42の上流側(第1吸気通路21)へと排気ガスを再循環させるEGR通路80を設けること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ターボ過給機を具備し、水素を燃料として使用する内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水素を燃料として使用することで排気ガス中の有害成分を大幅に低減させる内燃機関が知られている。例えば、水素を燃料とすることによって、この内燃機関は、CO(一酸化炭素),CO2(二酸化炭素)やHC(炭化水素)等の排出を無くすことができる。
【0003】
ここで、かかる内燃機関においては、低負荷で且つ希薄燃焼時(例えば、空気過剰率λ>2の超希薄燃焼時)に、熱効率を高めつつNOx(窒素酸化物)の排出量を低減することができ、高効率と低エミッションの両立が可能になる。
【0004】
一方、高負荷運転時には、空気過剰率λを1に近づけて着火遅れを短くし、燃焼速度の増加を図る必要があるが、水素特有の急速燃焼によって燃焼室内の燃焼温度が急激に上昇するので、燃焼室の壁面の冷却損失が増加し、熱効率の低下と共に、大量のNOxが排出されてしまう。
【0005】
これが為、高負荷運転時には、例えば、大量の排気ガスを吸気経路に再循環(所謂EGR:Exhaust Gas Recirculation)させながら空気過剰率λ=1での燃焼(ストイキ燃焼)を行ってNOxの排出を抑制し、その後、排気経路上の三元触媒で浄化させることにより低エミッションを実現することができる。また、かかる排気ガスの再循環により燃焼を緩慢にさせて、冷却損失を低減させることができる。例えば、水素を燃料として利用した内燃機関において排気ガスの再循環を行わせる技術としては、下記の特許文献1に開示されている。
【0006】
しかしながら、そのような大量の排気ガスの再循環が行われると、例えば気体の水素を吸気経路(具体的には、吸気ポート)へと噴射した場合に、新たに燃焼室内へと吸入する空気量が減少してしまい、出力の低下を招いてしまう。
【0007】
そこで、かかる内燃機関において排気ターボ過給機を具備することで、強制的に吸入空気量の増加を図る技術が存在している。例えば、水素を燃料とした内燃機関において、排気ターボ過給機を具備し、高負荷運転時に排気ガスの再循環を行うものが下記の特許文献2に開示されている。この特許文献2に開示された内燃機関においては、排気経路における排気ターボ過給機のタービンの上流側から吸気経路へと排気ガスを再循環させる技術が開示されている。
【0008】
尚、下記の特許文献3には、軽油を燃料とした内燃機関(ディーゼルエンジン)において、排気ターボ過給機のタービンの下流側から吸気経路へと排気ガスを再循環させる技術が開示されている。
【0009】
【特許文献1】特開2004−116398号公報
【特許文献2】特開平6−200771号公報
【特許文献3】特開平11−210449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献2に開示された内燃機関の如く、再循環させる排気ガス(以下、「EGRガス」ともいう。)の取り出し口が排気経路におけるタービンの上流側にあると、タービンハウジングの排気ガス入口の背圧が高くなり、内燃機関から排出された排気ガスがタービンハウジングへと流入する前にEGR通路から大量に吸気経路へと流れてしまうので、排気ターボ過給機により十分に出力を増加させることができない、という不都合があった。即ち、EGRガスの取り出し口がタービンよりも上流側にあると、タービンハウジングに十分な排気ガスが流れてこないので、所望の過給効果を得るだけのタービン回転数に達することができず、これが為、吸入空気量の大幅な増加が図れないので、出力を十分に増加させることができない。
【0011】
ここで、排気ターボ過給機を具備せずに、燃料たる水素ガスを吸気バルブの閉弁後に燃焼室内へと直接噴射することによって出力の向上を図ることも考えられるが、かかる場合には、水素ガスを更に高圧で噴射させなければならず、その高圧に耐え得る水素ガスの供給路や噴射装置を用意しなければならないので、製造原価等の観点からすれば好ましくない。また、そのように水素ガスを吸気バルブの閉弁後に燃焼室内へと直接噴射する場合、高負荷運転時には必要量の水素ガスを噴射しきれない虞があり、結局の所、排気ターボ過給機が必要になってしまう。
【0012】
そこで、本発明は、かかる従来例の有する不都合を改善し、大量の排気ガスを吸気経路に再循環させても排気ターボ過給機による過給効果を十分に得ることが可能な内燃機関を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成する為、請求項1記載の発明では、吸気経路又は燃焼室に水素を噴射する水素燃料噴射装置と、排気ターボ過給機とを備えた内燃機関において、排気経路における排気ターボ過給機のタービンの下流側から吸気経路における排気ターボ過給機のコンプレッサの上流側へと排気ガスを再循環させるEGR通路を設けている。
【0014】
この請求項1記載の内燃機関によれば、排気ガスを再循環させる際に排気経路におけるタービンの上流側の背圧が低下しないので、タービンを高速回転させることができ、排気ターボ過給機による過給効果が損なわれない。
【0015】
また、上記目的を達成する為、請求項2記載の発明では、上記請求項1記載の内燃機関において、排気経路における排気ターボ過給機のタービンの上流側から吸気経路における排気ターボ過給機のコンプレッサの下流側へと排気ガスを再循環させるEGR通路(第1EGR通路)を新たに設けると共に、その排気ターボ過給機の過給状態に応じて夫々のEGR通路(第1及び第2のEGR通路)を切り替えるEGR通路切替手段を設けている。
【0016】
例えば、そのEGR通路切替手段は、請求項3記載の発明の如く、排気ターボ過給機の要求過給圧が低いときにタービンの上流側のEGR通路へと切り替え、前記排気ターボ過給機の要求過給圧が高いときに前記タービンの下流側のEGR通路へと切り替えるよう構成する。
【0017】
ここで、そのタービンの上流側は排気経路の中でも背圧が高いので、排気ターボ過給機の要求過給圧が低いときにタービンの上流側のEGR通路を用いることにより、強制的に背圧を高くせずとも吸気経路へと排気ガスを再循環させることができる。更に、強制的に背圧を高くせずともよいので、排気の抜けの悪化が起こらず、出力の低下を抑制することができる。一方、排気ターボ過給機の要求過給圧が高いときにタービンの下流側のEGR通路へと切り替えることによって、上述した請求項1記載の内燃機関と同様の効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る内燃機関は、排気ターボ過給機の過給効果により大量の空気を燃焼室へと供給すべきときに、大量の排気ガスを吸気経路へと再循環させながらも必要とする過給圧を得ることが可能なので、NOxの排出量を低減しつつ排気ターボ過給機による十分な過給効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明に係る内燃機関の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0020】
本発明に係る内燃機関の実施例1を図1及び図2に基づいて説明する。
【0021】
最初に、本実施例1における内燃機関の構成について説明する。図1の符号10は、本実施例1の内燃機関を示す。尚、ここでは1気筒のみを図示しているが、本発明は、直列やV型等の形式に拘らず多気筒の内燃機関にも適用される。
【0022】
本実施例1の内燃機関10は、図1に示す如く、燃焼室11を形成するシリンダヘッド12,シリンダブロック13及びピストン14を備えている。ここで、そのシリンダヘッド12とシリンダブロック13は図1に示すヘッドガスケット15を介してボルト等で締結されており、これにより形成されるシリンダヘッド12の下面の凹部12aとシリンダブロック13のシリンダボア13aとの空間内にピストン14が往復移動可能に配置される。そして、上述した燃焼室11は、そのシリンダヘッド12の凹部12aの壁面とシリンダボア13aの壁面とピストン14の頂面14aとで囲まれた空間によって構成される。
【0023】
ここで、この内燃機関10においては、燃焼室11内に外部からの空気を導く吸気経路20と当該燃焼室11から排出された排気ガスが流れる排気経路30とが設けられており、その吸気経路20と排気経路30との間には燃焼室11内へと大量の空気を強制的に供給する排気ターボ過給機40が配備されている。
【0024】
その排気ターボ過給機40は、吸気経路20上に配置されたコンプレッサハウジング41内のコンプレッサ42と、排気経路30上に配置され、そのコンプレッサ42と同一軸にて回転するタービンハウジング43内のタービン44とを備えており、そのタービンハウジング43に流入した排気ガスでタービン44を高速回転させることによってコンプレッサ42を回転させ、その過給効果によって外部から大量の空気を燃焼室11側へと送出する。
【0025】
先ず、本実施例1の吸気経路20について詳述する。
【0026】
この吸気経路20は、大別すると、外部からの空気を吸入する第1吸気通路21と、この第1吸気通路21に排気ターボ過給機40のコンプレッサハウジング41を介して接続された第2吸気通路22と、この第2吸気通路22を介して外部からの空気が流入し、その空気を燃焼室11内へと供給するシリンダヘッド12の吸気ポート23とを備えている。
【0027】
これが為、外部からの空気は、その第1及び第2の吸気通路21,22を経て吸気ポート23へと流入し、この吸気ポート23から燃焼室11内へと吸入される。一方、排気ターボ過給機40の過給効果がある場合には、第1吸気通路21の空気がコンプレッサ42で過給されて第2吸気通路22へと送出され、その大量の空気が吸気ポート23を介して燃焼室11内に供給される。
【0028】
ここで、この吸気経路20を構成する第1吸気通路21上には、外部側から順に、吸入した空気から塵埃等の異物を除去するエアクリーナ24と、外部からの吸入空気量を検出するエアフロメータ25とが設けられている。そのエアフロメータ25の検出信号は内燃機関10の制御手段たる電子制御装置(ECU)50へと送られ、このECU50にて外部からの吸入空気量が検知される。
【0029】
また、この吸気経路20を構成する第2吸気通路22上には、燃焼室11内に吸入される空気量を調節するスロットルバルブ26が配備されている。このスロットルバルブ26は、ECU50により開弁角度の制御指令が為された図1に示すスロットルバルブアクチュエータ27によって開閉駆動され、内燃機関10の運転状態等に応じた所望の空気量を燃焼室11内へと吸入させる。
【0030】
また、この吸気経路20を構成する吸気ポート23は、その一端が燃焼室11に開口しており、これが為、第1及び第2の吸気通路21,22を経て流入してきた空気を燃焼室11内へと導く。
【0031】
ところで、その吸気ポート23には、燃焼室11との間の開口を開閉させ得る吸気バルブ28が配設されている。これが為、その吸気バルブ28を開弁させることによって吸気ポート23から燃焼室11内に空気が吸入され、その吸気バルブ28を閉弁させることによって燃焼室11内への空気の流入が遮断される。
【0032】
尚、その吸気ポート23における燃焼室11内への開口の数量は1つでも複数でもよく、その開口毎に上述した吸気バルブ28が配備される。
【0033】
更に、本実施例1にあっては、その吸気ポート23内に燃料が供給され、その吸気ポート23にて燃料と空気とが混合された後、その混合気が燃焼室11内へと吸入される。これが為、本実施例1のシリンダヘッド12には、その吸気ポート23内に燃料を供給する燃料噴射装置60が配設されている。本実施例1にあってはその燃料として水素を使用するので、以下、その燃料噴射装置60を「水素燃料噴射装置60」という。
【0034】
その水素燃料噴射装置60には、図1に示す水素燃料タンク61から水素燃料供給路62を介して水素が送られる。例えば、その水素燃料タンク61には圧縮された高圧の水素ガスが貯蔵されており、その水素ガスが水素燃料噴射装置60へと供給される。
【0035】
ここで、その水素燃料タンク61と水素燃料供給路62との接続部分には、圧力センサ63が設けられている。また、その水素燃料供給路62上には、水素燃料タンク61側から順に、水素燃料タンク61から水素ガスを吸い上げて所定の圧力に加圧した後に水素燃料供給路62の下流側へと排出する水素ポンプ64と、水素燃料供給路62を流れる水素ガスの流量を検出する水素流量計65と、内燃機関10の運転状態等に応じた所望の圧力に水素ガスを調節する水素レギュレータ66とが設けられている。その圧力センサ63と水素流量計65の検出信号は、ECU50へと送られる。一方、その水素ポンプ64と水素レギュレータ66は、圧力センサ63と水素流量計65からの検出値や内燃機関10の運転状態等に応じてECU50により動作が制御される。
【0036】
これにより、その水素燃料タンク61内の水素ガスは、水素ポンプ64により吸い上げられた後に所定の圧力に加圧され、更に、水素レギュレータ66により内燃機関10の運転状態等に応じた所望の圧力に調節されて水素燃料噴射装置60に供給される。そして、この水素燃料噴射装置60がECU50により指示された噴射時期や噴射量で水素ガスを吸気ポート23内に噴射すると、その水素ガスが吸気ポート23内の空気と混合されて燃焼室11内に吸入される。
【0037】
その燃焼室11内に吸入された水素ガスと空気との混合気は、シリンダヘッド12に設けた点火プラグ70によって着火される。この点火プラグ70は、その点火時期が上述したECU50により制御される。尚、本実施例1にあっては、その点火プラグ70が燃焼室11の略中央に配設されているものとして例示するが、その配設位置は必ずしもこれに限定するものではない。
【0038】
尚、上述した水素燃料タンク61には、水素吸蔵合金や水素吸着材料により水素を吸蔵しておいてもよく、また、液化された水素を充填していてもよい。更に、メタノールやガソリン等を水蒸気改質して水素ガスを生成する水素生成装置を設け、この水素生成装置から水素燃料噴射装置60に水素を供給してもよい。
【0039】
次に、本実施例1の排気経路30について詳述する。
【0040】
この排気経路30は、大別すると、燃焼室11との間の開口から燃焼後の排気ガスが流入するシリンダヘッド12の排気ポート31と、この排気ポート31を介して燃焼後の排気ガスが流入する第1排気通路32と、この第1排気通路32に排気ターボ過給機40のタービンハウジング43を介して接続された第2排気通路33と、この第2排気通路33を通過した排気ガス中の有害成分を浄化する触媒装置34とを備えている。
【0041】
これが為、燃焼後の排気ガスは、その排気ポート31と第1及び第2の排気通路32,33を経て触媒装置34へと流入し、この触媒装置34において有害成分が浄化される。一方、その排気ポート31及び第1排気通路32を流れる排気ガスが所定の圧力に達している(即ち、排気ターボ過給機40の過給効果が得られる所定の過給圧に達している)場合には、その排気ガスがタービン44を高速回転させるので、同一軸上のコンプレッサ42の回転によって第1吸気通路21の空気が過給され、大量の空気が燃焼室11内へと供給される。
【0042】
ここで、この排気経路30を構成する排気ポート31には、燃焼室11との間の開口を開閉させ得る排気バルブ35が配設されている。これが為、その排気バルブ35を開弁させることによって燃焼室11内から排気ポート31に排気ガスが排出され、その排気バルブ35を閉弁させることによって筒内ガスの排気ポート31への排出が遮断される。
【0043】
尚、その排気ポート31における燃焼室11内への開口の数量は1つでも複数でもよく、その開口毎に上述した排気バルブ35が配備される。
【0044】
また、この排気経路30を構成する第2排気通路33上には、排気ガス中の酸素濃度を検出するO2センサ36が設けられている。このO2センサ36の検出信号はECU50へと送られ、このECU50にて実際の空燃比が算出される。このECU50は、その算出した実際の空燃比の値を用いて空気過剰率λ(=実際の空燃比/理論空燃比)の算出を行う。
【0045】
ところで、本実施例1にあっては、前述したが如く水素を燃料として使用しているので、CO,CO2やHC等の排出を無くすことができる。
【0046】
また、排気ガス中のNOxについては、前述したが如く、低負荷で且つ希薄燃焼時であれば、その排出量を低減させることができる。これが為、本実施例1の内燃機関10にあっては、低負荷運転時に排気ターボ過給機40の過給効果で大量の空気を燃焼室11内へと送り込み、空気過剰率λ>2の超希薄燃焼を行わせる。
【0047】
その一方で、高負荷運転時には前述したが如く空気過剰率λを1に近づけて燃焼させる必要があるので、大量にNOxが排出されてしまう。これが為、本実施例1の内燃機関10にあっては、高負荷運転時に大量の排気ガスを吸気経路20へと再循環(EGR)させながら、その際の新気の減少を排気ターボ過給機40の過給効果により補って空気過剰率λ=1で運転(ストイキ運転)させ、NOxの排出量を低減させる。
【0048】
尚、本実施例1の内燃機関10においては、前述したエアフロメータ25の検出信号に基づいてECU50が判断している。
【0049】
本実施例1にあっては、高負荷運転時に排気ガスを吸気経路20へと再循環(EGR)させる為に、その吸気経路20と排気経路30との間に図1に示すEGR通路80を設けている。
【0050】
本実施例1のEGR通路80は、その吸気経路20における排気ターボ過給機40のコンプレッサ42の上流側と排気経路30における排気ターボ過給機40のタービン44の下流側との間に設け、その吸気経路20と排気経路30とを連通させる。具体的に、このEGR通路80は、その吸気経路20の第1吸気通路21におけるエアフロメータ25の下流側に一端(EGRガス供給口)を連通させる一方、その排気経路30の第2排気通路33に他端(EGRガス取出口)を連通させる。
【0051】
これにより、本実施例1にあっては、タービンハウジング43の排気ガス入口と連通している第1排気通路32の背圧(過給圧)を低下させることなく、その排気ガスをタービンハウジング43内に流入させることができる。即ち、EGR通路80をタービン44の下流側の第2排気通路33と連通させ、この第2排気通路33から排気ガスを吸気経路20へと再循環させるので、本実施例1の排気ターボ過給機40は、排気ガスの再循環を行う際に、その過給圧を低下させることなくタービン44を高速回転させることができる。これが為、大量の排気ガスを再循環させたとしても、排気ターボ過給機40による十分な過給効果を得ることができる。
【0052】
一方、排気経路30におけるタービン44の上流側(第1排気通路32)と下流側(第2排気通路33)とを比較してみてみると、その上流側に対して下流側の方が背圧は低くなっている。これが為、本実施例1の如くタービン44の下流側から排気ガスを再循環させる構成を採った場合には、タービンハウジング43から排出された第2排気通路33の排気ガスが触媒装置34側へと大量に流動してしまい、その排気ガスをEGR通路80へと大量に分流させることができない虞がある。このことは、特に第1排気通路32の背圧が低いとき(排気ターボ過給機40の要求過給圧が低いとき)に顕著に表れ、また、EGR通路80のEGRガス取出口が第2排気通路33におけるタービンハウジング43の排気ガス出口から離隔するにつれて顕著になる。
【0053】
そこで、本実施例1にあっては、その第2排気通路33におけるEGR通路80のEGRガス取出口の下流側直後に図1に示す背圧調整バルブ81を設ける。この背圧調整バルブ81は、ECU50により開弁角度の制御指令が為された図1に示す背圧調整バルブアクチュエータ82によって開閉駆動され、内燃機関10の運転状態(ここでは、高負荷運転又は低負荷運転)に応じて第2排気通路33におけるタービンハウジング43の排気ガス出口から背圧調整バルブ81までの間の背圧を調節するものである。
【0054】
更に、本実施例1にあっては、EGR通路80のEGRガス取出口を可能な限り第2排気通路33におけるタービンハウジング43の排気ガス出口に近づけて配置し、少しでも背圧の高い場所から排気ガスの再循環を行わせることが好ましい。
【0055】
ここで、本実施例1にあっては、上述したが如く高負荷運転時に排気ガスの再循環を行わせるが、低負荷運転時には排気ガスの再循環を行わない。これが為、EGR通路80のEGRガス供給口と第1吸気通路21との間に図1に示すEGRバルブ83を設け、このEGRバルブ83を再循環可能な排気ガス量に応じてECU50に開閉駆動させる。
【0056】
ところで、本実施例1の内燃機関10においては、低負荷運転であるか高負荷運転であるかに拘わらずNOxの排出量を完全にゼロにすることは難しい。これが為、本実施例1にあっては、上述した触媒装置34として三元触媒を用意し、これを用いて排出されたNOxの還元を行う。ここで、水素は強還元剤であり反応性に富むので、本実施例1の触媒装置34は、多少触媒温度が低くても有効にNOxを還元させることができる。これが為、冷間始動時等においても有効に排気ガス中の有害成分を浄化することができる。
【0057】
以下に、本実施例1の内燃機関10の動作について説明する。
【0058】
先ず、低負荷運転時の動作について詳述する。
【0059】
本実施例1のECU50は、エアフロメータ25の検出信号から低負荷運転であると判断した際、背圧調整バルブ81とEGRバルブ83とを制御して、その背圧調整バルブ81を全開にさせると共にEGRバルブ83を全閉にさせる。これにより、EGR通路80を介した第2排気通路33から第1吸気通路21への排気ガスの流入が阻止される。
【0060】
しかる後、このECU50は、スロットルバルブ26の開弁角度を調節すると共に水素燃料噴射装置60からの水素ガスの噴射量を調節し、O2センサ36の検出信号に基づき算出された空気過剰率λをみながら通常の希薄燃焼を実行させる。
【0061】
ここで、本実施例1の内燃機関10は排気ターボ過給機40を具備しているので、その過給圧が得られる低負荷での運転条件の場合には、第1吸気通路21からコンプレッサハウジング41に流入してきた空気が過給されて大量の空気が燃焼室11内へと供給される。これが為、かかる場合には、ECU50が算出された空気過剰率λをみながらスロットルバルブ26の開弁角度と水素燃料噴射装置60の水素ガスの噴射量を調節し、通常の超希薄燃焼(λ>2燃焼)を行わせる。その際、排気ターボ過給機40の過給効果を利用して、可能な限り空気過剰率λを大きくした超希薄燃焼を行うことが好ましい。
【0062】
このように、この内燃機関10の低負荷運転時においては、図2に示す如く希薄燃焼を行い、更に、排気ターボ過給機40の過給効果が得られるときには超希薄燃焼を行うので、熱効率を高めつつNOxの排出量を低減することができる。
【0063】
ところで、本実施例1にあっては、その際に排出されたNOxは前述したが如く触媒装置34により還元される。また、水素を燃料として使用しているので、前述したが如くCO,CO2やHC等が排出されない。これが為、この内燃機関10の低負荷運転時には、高効率と低エミッションの双方を両立することができる。
【0064】
一方、高負荷運転時には次の様に動作させる。
【0065】
本実施例1のECU50は、エアフロメータ25の検出信号から高負荷運転であると判断した際、背圧調整バルブ81とEGRバルブ83とを制御し、その背圧調整バルブ81を閉弁方向に調節させると共にEGRバルブ83を開弁方向に調節させて排気ガス(EGRガス)を排気経路30へと再循環させる。
【0066】
ここで、その背圧調整バルブ81の閉弁角度は、内燃機関10の負荷や機関回転数等に基づいて、第2排気通路33における背圧調整バルブ81の上流側の背圧が当該第2排気通路33からEGR通路80へと排気ガスが流入し得る背圧となるように調節する。例えば、その閉弁角度は、予め実験やシミュレーションにより求め、かかる対応関係からなる背圧調整バルブ閉弁角度マップから求めてもよい。また、その第2排気通路33における背圧調整バルブ81の上流側に圧力センサを設け、その検出値に基づいて背圧調整バルブ81の閉弁角度を設定してもよい。
【0067】
一方、EGRバルブ83の開弁角度は、算出された空気過剰率λをみながら、ストイキ燃焼(λ=1燃焼)が行われるように燃焼室11への吸入空気量と水素ガスの噴射量と共に調節される。即ち、本実施例1のECU50は、上記の如く背圧調整バルブ81を制御すると共に、EGRバルブ83,スロットルバルブ26及び水素燃料噴射装置60を夫々制御して、ストイキ燃焼(λ=1燃焼)を実行させる。
【0068】
ここで、本実施例1の内燃機関10は、排気ターボ過給機40を具備しており、前述したが如く排気ガス(EGRガス)を吸気経路20に再循環させてもその過給効果が損なわれないので、EGR運転中であっても大量の空気を燃焼室11内に供給して高負荷運転を行うことができ、高出力化が可能になる。更に、この内燃機関10は、ECU50が背圧調整バルブ81とEGRバルブ83とを制御することによって大量の排気ガスを第1吸気通路21へと供給することができるので、NOxの排出量を低減することができる。ここでも、その際に排出されたNOxは、触媒装置34によって還元される。
【0069】
このように、この内燃機関10においては、図2に示す如く大量の排気ガスを吸気経路20へと再循環させながらもストイキ燃焼(λ=1燃焼)による高負荷運転を実現することができ、高出力化と低エミッション化を両立させることができる。
【0070】
以上示した如く、本実施例1の水素を燃料とする内燃機関10によれば、低負荷運転時においては希薄燃焼又は超希薄燃焼を行うことにより、所望の出力を得つつ低エミッション化を図ることができる。また、高負荷運転が求められているときには、大量の排気ガスを吸気経路20へと再循環させても排気ターボ過給機40の過給効果を得て高負荷運転を行うことができるので、所望の高出力を得つつ低エミッション化を図ることができる。このように、本実施例1の内燃機関10は、水素を燃料としながらも、低負荷から高負荷までの間において必要とする出力を発生させ且つ低エミッション化を図ることができる。
【0071】
尚、本実施例1にあってはストイキ燃焼(λ=1燃焼)を行わせて高負荷運転させているが、例えば、ストイキ燃焼の近傍で燃焼させて(λ≒1燃焼)高負荷運転を行ってもよく、これによっても同様の効果を奏することができる。
【0072】
また、本実施例1にあっては吸気ポート23に燃料(水素)を噴射しているが、その燃料は燃焼室11内に直接噴射してもよく、これによっても同様の効果を奏することができる。
【実施例2】
【0073】
次に、本発明に係る内燃機関の実施例2を図3及び図4に基づいて説明する。図3の符号100は、本実施例2の内燃機関を示す。
【0074】
ここで、前述した実施例1にて説明したように、排気経路30におけるタービン44の上流側(第1排気通路32)と下流側(第2排気通路33)との間においては、その上流側に対して下流側の背圧が低くなっている。これが為、例えば、その第1排気通路32の背圧が低いとき(排気ターボ過給機40の要求過給圧が低いとき)には、第2排気通路33の背圧が更に低くなるので、この第2排気通路33からEGR通路80へと排気ガスが流入し難くなり、排気ガスを再循環させることができなくなってしまう。
【0075】
そこで、前述した実施例1の内燃機関10においては、排気ガスを吸気経路20へと再循環させる為に背圧調整バルブ81を閉弁制御している。しかしながら、その背圧調整バルブ81が僅かでも閉弁方向へと調整されることにより、第2排気通路33の背圧が増加して内燃機関10の性能低下(出力低下)を招いてしまう虞がある。特に、第1排気通路32の背圧が低いとき(排気ターボ過給機40の要求過給圧が低いとき)には、その背圧が高いときよりも排気の抜けが悪いにも拘わらず、背圧調整バルブ81を閉弁方向へと作動させることにより更に排気の抜けが悪くなってしまい、内燃機関10の性能が低下してしまう虞がある。
【0076】
そこで、本実施例2の内燃機関100においては、前述した実施例1の内燃機関10に別経路のEGR通路を更に追加し、2つのEGR通路を適宜使い分けることにより内燃機関10の性能低下を回避する。
【0077】
本実施例2にあっては、排気経路30における排気ターボ過給機40のタービン44の上流側と吸気経路20における排気ターボ過給機40のコンプレッサ42の下流側との間にEGR通路84を設ける。具体的に、このEGR通路84は、その排気経路30の第1排気通路32に一端(EGRガス取出口)を連通させる一方、その吸気経路20の第2吸気通路22におけるスロットルバルブ26と水素燃料噴射装置60との間に他端(EGRガス供給口)を連通させる。
【0078】
ここで、本実施例2にあっても、EGR通路84のEGRガス供給口と第2吸気通路22との間には図3に示すEGRバルブ85が設けられており、このEGRバルブ85を内燃機関10の運転状態に応じてECU50に開閉駆動させる。
【0079】
以下、本実施例2にあっては、そのEGR通路84を「第1EGR通路84」といい、吸気経路20における排気ターボ過給機40のコンプレッサ42の上流側と排気経路30における排気ターボ過給機40のタービン44の下流側との間に設けたEGR通路80を「第2EGR通路80」という。また、その第1EGR通路84からの排気ガスの再循環を調節するEGRバルブ85については「第1EGRバルブ85」といい、その第2EGR通路80からの排気ガスの再循環を調節するEGRバルブ83については「第2EGRバルブ83」という。
【0080】
ここでは、ECU50と第1及び第2のEGRバルブ85,83とにより、排気ターボ過給機40の過給状態に応じて第1EGR通路84と第2EGR通路80とを切り替えるEGR通路切替手段が構成されている。
【0081】
以下に、本実施例2の内燃機関100の動作について説明する。
【0082】
最初に、低負荷運転時の動作について詳述する。
【0083】
本実施例2のECU50は、エアフロメータ25の検出信号から低負荷運転であると判断した際、背圧調整バルブ81と第1及び第2のEGRバルブ85,83とを制御して、その背圧調整バルブ81を全開にさせると共に第1及び第2のEGRバルブ85,83を全閉にさせる。これにより、第1及び第2のEGR通路84,80を介した排気経路30から吸気経路20への排気ガスの再循環が阻止される。
【0084】
しかる後、このECU50は、実施例1の場合と同様に、算出された空気過剰率λをみながら、スロットルバルブ26の開弁角度を調節すると共に水素燃料噴射装置60からの水素ガスの噴射量を調節して通常の希薄燃焼を実行させる。その際、この内燃機関100は、排気ターボ過給機40の過給圧が得られる低負荷での運転条件であれば、ECU50が算出された空気過剰率λをみながらスロットルバルブ26の開弁角度と水素燃料噴射装置60の水素ガスの噴射量を調節し、通常の超希薄燃焼(λ>2燃焼)を行わせる。かかる場合にあっても、実施例1と同様に、排気ターボ過給機40の過給効果を利用して、可能な限り空気過剰率λを大きくした超希薄燃焼を行うことが好ましい。
【0085】
このように、本実施例2の内燃機関100にあっても、低負荷運転時においては、図4に示す如く希薄燃焼を行い、更に、排気ターボ過給機40の過給効果が得られれば超希薄燃焼を行うので、実施例1と同様に熱効率を高めつつNOxの排出量を低減することができる。また、その際に排出されたNOxについても実施例1と同様に触媒装置34により還元される。これが為、この内燃機関100の低負荷運転時には、高効率と低エミッションの双方を両立することができる。
【0086】
次に、高負荷運転時の動作について詳述する。
【0087】
先ず、ECU50がエアフロメータ25の検出信号から高負荷運転であると判断し且つ然程排気ターボ過給機40の過給効果を必要としない(即ち、要求過給圧が低い)範囲であると判断した際には、そのECU50が背圧調整バルブ81と第1及び第2のEGRバルブ85,83とを制御して、その背圧調整バルブ81を全開にさせると共に、第1EGRバルブ85を開弁方向に調節させ且つ第2EGRバルブ83を全閉にさせる。
【0088】
その際、そのECU50は、算出された空気過剰率λをみながら、その第1EGRバルブ85の開弁角度をストイキ燃焼(λ=1燃焼)が行われるように燃焼室11への吸入空気量と水素ガスの噴射量と共に調節する。ここで、排気ターボ過給機40の過給効果により燃焼室11内への吸入空気量が増加する場合には、これを加味した上でストイキ燃焼(λ=1燃焼)が行われるように夫々を調節する。
【0089】
即ち、本実施例2の内燃機関100においては、排気ターボ過給機40をあまり作動させずとも排気ガスを再循環させつつストイキ燃焼(λ=1燃焼)させて高負荷運転ができる場合(以下、「第1状態」という。)、背圧調整バルブ81を全開にさせると共に、第1EGR通路84からのみ排気ガスの吸気経路20への再循環(以下、「第1EGR」という。)を行わせる。
【0090】
このように、この第1状態においては背圧調整バルブ81を全開にしているので、第2排気通路33の背圧が増加せず、内燃機関100の性能低下を招くことなく高出力化を図ることができる。また、上記の第1EGRにより大量の排気ガスを第2吸気通路22へと供給することができるので、NOxの排出量を低減することができる。ここでも、その際に排出されたNOxは、触媒装置34によって還元される。
【0091】
これにより、この内燃機関100は、排気ターボ過給機40の過給効果を然程必要としない低要求過給圧の範囲内において、図4に示す如く大量の排気ガスを吸気経路20へと再循環させながらもストイキ燃焼(λ=1燃焼)による高負荷運転を実現することができ、高出力化と低エミッション化を両立させることができる。
【0092】
続いて、上述した第1状態と比して多少なりとも排気ターボ過給機40の過給効果が必要な中要求過給圧の場合,換言すれば、多少なりとも排気ターボ過給機40の過給効果を得なければ排気ガスを再循環させつつストイキ燃焼(λ=1燃焼)させて高負荷運転できない場合(以下、「第2状態」という。)について説明する。
【0093】
かかる場合、ECU50は、背圧調整バルブ81と第1及び第2のEGRバルブ85,83とを制御して、その背圧調整バルブ81を閉弁方向へと調節させると共に、第1及び第2のEGRバルブ85,83を開弁方向に調節させる。
【0094】
ここでは、第2EGR通路80からの排気ガスの再循環が可能になる程度の閉弁角度へと背圧調整バルブ81を僅かに閉弁させると共に、第1EGRバルブ85を上記の第1状態よりも絞られた開弁角度に開弁させ且つ第2EGRバルブ83を開弁させる。その第1及び第2のEGRバルブ85,83の夫々の開弁角度は、算出された空気過剰率λをみながら、ストイキ燃焼(λ=1燃焼)が行われるようECU50により燃焼室11への吸入空気量と水素ガスの噴射量と共に調節される。その際、排気ターボ過給機40の過給効果により燃焼室11内への吸入空気量が増加する場合には、これを加味した上でストイキ燃焼(λ=1燃焼)が行われるように夫々を調節する。
【0095】
このように、この第2状態においては第1状態よりも第1EGRバルブ85の開弁角度を絞っているので、第1排気通路32の背圧が増加して排気ターボ過給機40に過給圧を掛けることができ、大量の空気を燃焼室11内に供給して高出力化を図ることができる。また、上記の第1EGRに加えて第2EGR通路80からも排気ガスの吸気経路20への再循環(以下、「第2EGR」という。)を行い、大量の排気ガスを吸気経路20へと供給することができるので、NOxの排出量を低減することができる。ここでも、その際に排出されたNOxは、触媒装置34によって還元される。
【0096】
これにより、この内燃機関100は、多少なりとも排気ターボ過給機40の過給効果を必要とする中要求過給圧の範囲内において、図4に示す如く大量の排気ガスを吸気経路20へと再循環させながらも排気ターボ過給機40の過給効果を得ながらストイキ燃焼(λ=1燃焼)による高負荷運転を実現することができ、高出力化と低エミッション化を両立させることができる。
【0097】
続いて、第1EGR通路84から排気ガスが再循環されると(第1EGRが為されると)排気ターボ過給機40の過給効果を得ることができない高要求過給圧の場合(以下、「第3状態」という。)について説明する。
【0098】
かかる場合、ECU50は、背圧調整バルブ81と第1及び第2のEGRバルブ85,83とを制御して、その背圧調整バルブ81を閉弁方向へと調節させると共に、第1EGRバルブ85を全閉にさせ且つ第2EGRバルブ83を開弁方向に調節させる。
【0099】
ここでは、その背圧調整バルブ81の閉弁角度と第2EGRバルブ83の開弁角度とを前述した実施例1の高負荷運転時と同様に調節する。その際、その第2EGRバルブ83の開弁角度は、ストイキ燃焼(λ=1燃焼)が行われるように燃焼室11への吸入空気量と水素ガスの噴射量と共に調節され、排気ターボ過給機40の過給効果により燃焼室11内への吸入空気量が増加する場合には、これを加味した上でストイキ燃焼(λ=1燃焼)が行われるように夫々を調節する。
【0100】
これにより、この内燃機関100においては、実施例1の高負荷運転時と同様に、排気ターボ過給機40の過給効果を損なうことなく排気ガスの再循環(第2EGR)を行うことができるので、EGR運転中であっても大量の空気を燃焼室11内に供給して高負荷運転を行うことができ、NOxの排出量の低減と高出力化の両立が可能になる。ここでも、その際に排出されたNOxは、触媒装置34によって還元される。
【0101】
このように、この内燃機関100は、第1EGRが為されると排気ターボ過給機40の過給効果を得ることができない第3状態において、図4に示す如く大量の排気ガスを吸気経路20へと再循環させながらもストイキ燃焼(λ=1燃焼)による高負荷運転を実現することができ、高出力化と低エミッション化を両立させることができる。
【0102】
例えば、この内燃機関100を徐々に負荷を高くしていく(換言すれば、第1状態から第3状態へと遷移させる)場合には、先ず第1EGR通路84からのみ排気ガスの再循環(第1EGR)を行わせ、次に多少なりとも排気ターボ過給機40の過給効果を必要とするときに第1EGR通路84と第2EGR通路80の双方から排気ガスの再循環(第1EGRと第2EGRの併用)を行わせる。そして、第1排気通路32の背圧が低下(過給圧が低下)して排気ターボ過給機40の過給効果が得られ難くなったときに第2EGR通路80からのみ排気ガスの再循環(第2EGR)を行わせる。
【0103】
上述したが如く、この内燃機関100の高負荷運転時においては、その運転状態(即ち、排気ターボ過給機40に要求されている過給状態)に応じて第1EGR通路84と第2EGR通路80とを使い分けることにより、高負荷運転の全領域において高出力化と低エミッション化を両立させている。
【0104】
以上示した如く、本実施例2の水素を燃料とする内燃機関100によれば、低負荷運転時においては希薄燃焼又は超希薄燃焼を行うことにより、所望の出力を得つつ低エミッション化を図ることができる。また、高負荷運転が求められているときには、排気ターボ過給機40に要求されている過給状態に応じた過給効果を得ながらも大量の排気ガスを吸気経路20へと再循環させることができるので、所望の高出力を得つつ低エミッション化を図ることができる。このように、本実施例2の内燃機関100は、水素を燃料としながらも、低負荷から高負荷までの間において必要とする出力を効率良く発生させ且つ低エミッション化を図ることができる。
【0105】
尚、本実施例2にあってもストイキ燃焼(λ=1燃焼)を行わせて高負荷運転させているが、例えば、ストイキ燃焼の近傍で燃焼させて(λ≒1燃焼)高負荷運転を行ってもよく、これによっても同様の効果を奏することができる。
【0106】
また、本実施例2にあっても吸気ポート23に燃料(水素)を噴射しているが、その燃料は燃焼室11内に直接噴射してもよく、これによっても同様の効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
以上のように、本発明に係る内燃機関は、水素を燃料とするものに有用であり、特に、大量の排気ガスを吸気経路へと再循環させながら排気ターボ過給機による過給効果を十分に発揮させる技術に適している。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明に係る内燃機関の実施例1の構成を示す図である。
【図2】実施例1の内燃機関における負荷に応じた運転状態を示す図である。
【図3】本発明に係る内燃機関の実施例2の構成を示す図である。
【図4】実施例2の内燃機関における負荷に応じた運転状態を示す図である。
【符号の説明】
【0109】
10,100 内燃機関
11 燃焼室
20 吸気経路
21 第1吸気通路
22 第2吸気通路
23 吸気ポート
25 エアフロメータ
26 スロットルバルブ
30 排気経路
31 排気ポート
32 第1排気通路
33 第2排気通路
34 触媒装置
36 O2センサ
40 排気ターボ過給機
41 コンプレッサハウジング
42 コンプレッサ
43 タービンハウジング
44 タービン
60 水素燃料噴射装置
80 EGR通路(第2EGR通路)
81 背圧調整バルブ
82 背圧調整バルブアクチュエータ
83 EGRバルブ(第2EGRバルブ)
84 第1EGR通路
85 第1EGRバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気経路又は燃焼室に水素を噴射する水素燃料噴射装置と、排気ターボ過給機とを備えた内燃機関であって、
排気経路における前記排気ターボ過給機のタービンの下流側から前記吸気経路における前記排気ターボ過給機のコンプレッサの上流側へと排気ガスを再循環させるEGR通路を設けたことを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
前記排気経路における前記排気ターボ過給機のタービンの上流側から前記吸気経路における前記排気ターボ過給機のコンプレッサの下流側へと排気ガスを再循環させるEGR通路を新たに設けると共に、前記排気ターボ過給機の過給状態に応じて前記夫々のEGR通路を切り替えるEGR通路切替手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の内燃機関。
【請求項3】
前記EGR通路切替手段は、前記排気ターボ過給機の要求過給圧が低いときに前記タービンの上流側のEGR通路へと切り替え、前記排気ターボ過給機の要求過給圧が高いときに前記タービンの下流側のEGR通路へと切り替えるよう構成したことを特徴とする請求項2記載の内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−299890(P2006−299890A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−121252(P2005−121252)
【出願日】平成17年4月19日(2005.4.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】