説明

処置の方法およびその処置に有用な薬剤

本発明は概して、治療剤、それを含む製剤、ならびに神経膠腫脳腫瘍および関連する状態の処置、改善、および/または予防におけるその使用に関する。治療剤は、少なくとも1位に窒素および8位にヒドロキシルを持つ二融合6員環を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本発明は概して、治療剤、それを含む製剤、ならびに神経膠腫脳腫瘍および関連する状態の処置、改善、および/または予防におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術の説明
ガンは世界中で重大なヒトの健康問題であり、死亡率および罹患率の最大の単一原因の一つである。「ガン」という用語は、ガン遺伝子の活性化および/または腫瘍抑制遺伝子の不活性化をもたらす、累積的な多重遺伝子突然変異によって結び付けられる一連の異なる疾患をいう。これらの突然変異の原因(cause)および要因(source)は人体器官の異なったガンの間では異なる。
【0003】
ヒト脳内のガンは非常に特殊、深刻かつ一般に末期的な疾患となり、利用できる最適な処置の提供にもかかわらず、患者の中間生存期間は1年未満である。血液脳関門(BBB)によって隔てられる、脳の非常に独特の生物学的環境は、残りの人体のガンよりも、代替処置を必要とするこの器官での一連の部位特異的なガンに大きく寄与する。
【0004】
毎年米国だけでもおよそ17,000件の原発性脳腫瘍が患者に診断されている。これらのうち、およそ60%は、星状細胞と呼ばれる脳細胞またはその前駆細胞から生じる「星状細胞腫」または神経膠腫腫瘍である。星状細胞は、神経機能を支持する中枢神経系の細胞である。星状細胞腫は、悪性度の増大を意味する組織学的特徴によって、星状細胞腫、退形成星状細胞腫、または多形神経膠芽腫(GBM)に類別することができる。退形成星状細胞腫およびGBMは、高悪性度の神経膠腫と考えられているのに対し、星状細胞腫は低悪性度の神経膠腫であると考えられている。高悪性度の腫瘍は急速に増殖し、脳に容易に浸潤し、広がりうる。高悪性度の腫瘍はずっと攻撃的であり、極めて強い治療法が必要になる。小児の星状細胞腫瘍の大部分は低悪性度であるのに対し、成人での大部分は高悪性度である。星状細胞腫は脳および脊髄のどこにでも生じうるが、しかし大部分は大脳半球に位置している。
【0005】
脳のガンを有する患者は、発作および緩徐進行性の神経学的欠損、通常は運動麻痺を呈することが最も多い。あるいは、患者は頭痛、吐き気、および嘔吐、ならびに認識障害を含め、頭蓋内圧増大の全身症状を呈することもある。
【0006】
脳のガン疾患の検出および治療法では進歩がみられているが、一般的に功を奏する予防または処置の方法を現在利用することはできない。多くの脳のガンの最新治療法は化学療法または外科手術および放射線の組み合わせに一般的に基づいており、多くの患者では依然として不十分であることが分かっている。
【0007】
例えば、神経膠腫脳腫瘍の処置は、現在の処置が治癒的でないという点で困難なままである。処置は、腫瘍が臨床上またはエックス線写真上で最初に検出される時点で局所制御を超えていることに主に起因して、非治癒的である。脳のガンの処置での著しい進歩は過去25年に起こっていない。治療法なしでは、GBMを有する患者は3ヶ月以内で一様に死亡する。外科的切除、放射線療法、および化学療法を含めて、最適な治療法により、逆に、処置された患者は、およそ1年の中間生存期間を有する。したがって、脳のガンを有する患者の処置は対症療法的であることが多く、外科手術、放射線療法、および化学療法を包含する。
【0008】
外科手術に加えて放射線療法は外科手術だけに比べて脳のガンを有する患者において生存を引き延ばすことが明らかにされているが、しかし放射線療法に対するこれらのガンの反応性は様々である。多くの場合、放射線療法は、神経学的欠損の退縮または安定およびコントラスト増強性の腫瘤のサイズ縮小によって明らかにされることが多い、寛解相を誘導しうる。残念ながら、脳のガンでは、通常1年以内に腫瘍が再発するので、いずれの反応期間も長続きせず、さらなる臨床的悪化を引き起こすことが多い。
【0009】
脳のガンの化学療法計画によって、補助化学療法から顕著な生存便益を得るのは患者の25%に満たないことが示唆されている。カルムスチン(BCNU)およびcis-プラチナ(シスプラチン)は、悪性神経膠腫に対して使用される主要な化学療法化合物である。使われている薬剤は全て30〜40%よりも高い反応率を持っておらず、ほとんどは10〜20%の範囲に入る。脳腫瘍のために化学療法化合物を使用することの大きな障害は、BBBがCNSから多くの薬剤を効果的に排除するという事実である。静脈内にではなく動脈内の経路を介し化学療法化合物の送達を調べる最初の試みにもかかわらず、延命効果(survival advantage)は認められていない。
【0010】
外科手術の程度(生検 対 切除)が、生存期間に影響を与えることがいくつかの試験で明らかにされている。例えば、全切除を受けた、高悪性度の神経膠腫を有する患者は2年生存率が19%であったのに対し、部分切除の患者では2年生存率が0%であった。
【0011】
多くの脳のガンは外科手術で治すことができないので、外科的な目標は病理学的診断を確立すること、腫瘤効果(mass effect)を軽減すること、および可能なら、全切除を達成して補助療法を促進することである。
【0012】
定位生検術に続いて放射線療法がある特定の状況では考慮されている。これらには、脳の重要部位(eloquent area)に位置する腫瘍を有する患者、腫瘍が最小の腫瘤効果を有するまたは不連続な周縁部なしに浸潤している患者、および全身麻酔を妨げる、悪い病状の患者が含まれる。定位生検術および放射線療法後の中間生存期間は27〜47週であることが報告されている。
【0013】
上記に照らして、膠芽細胞腫および他の神経膠腫脳腫瘍の管理に向けた新しいアプローチが極めて不可欠である。
【発明の概要】
【0014】
概要
本発明は、一部には、特定の薬剤がヒトにおいて神経膠腫脳腫瘍および関連する状態の発生を阻害するのに有効であるという判定を前提とする。それゆえ、本発明は、ヒト被験体において神経膠腫脳腫瘍および具体的には膠芽細胞腫(GBM)の増殖を低減するための、少なくとも1位に窒素および8位にヒドロキシを持つ二融合6員環を有する化合物を含む薬剤の使用を企図する。本発明はGBMの発生の危険性を処置するもしくは予防するまたは別の方法で低減するのに特に有用であるが、しかし、本発明は、星状細胞腫、退形成星状細胞腫、混合膠腫、乏突起膠腫、および他の神経膠腫を含む任意の神経膠腫脳腫瘍の処置にまで及ぶ。
【0015】
本発明の薬剤は以下の特性の一つまたは複数を保有しうる: BBBを横断し、副作用の低減を示す; 水性環境において安定である; ガン細胞に対し選択的に細胞毒性を示す; および非悪性細胞に対し細胞毒性の低減を示す。好ましくは、本薬剤は上記に掲げた特性の2つもしくはそれ以上、3つもしくはそれ以上、または4つもしくはそれ以上、または5つもしくはそれ以上を有する。さらに、本薬剤は、化学療法薬、免疫薬、またはサイトカイン薬などの別の薬剤と相乗的に作用するということに基づいて選択されうる。
【0016】
有用な薬剤には、以下に詳細に記述される式(I)の化合物が含まれる。
【0017】
第一の局面において、式(I)の化合物、その塩、水和物、溶媒和物、誘導体、プロドラッグ、互変異性体、および/または異性体を含む薬剤の有効量を、その必要がある被験体に投与する段階を含む、神経膠腫脳腫瘍の処置、改善、および/または予防のための方法が提供される:

式中
R2は、
H; 置換されていてもよいC1〜6アルキル; 置換されていてもよいC2〜6アルケニル; 置換されていてもよいC2〜6アルキニル; 置換されていてもよいC3〜6シクロアルキル; 置換されていてもよいアリール; 置換されていてもよいヘテロシクリル; CN; R6が、H、置換されていてもよいC1〜6アルキル、置換されていてもよいC2〜6アルケニル、置換されていてもよいC2〜6アルキニル、置換されていてもよいC3〜6シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、もしくは置換されていてもよいヘテロシクリルである、OR6、SR6、COR6、CSR6、HCNOR6、またはHCNNR6; R8およびR9が、H、置換されていてもよいC1〜6アルキル、置換されていてもよいC2〜6アルケニル、置換されていてもよいC2〜6アルキニル、置換されていてもよいC3〜6シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、および置換されていてもよいヘテロシクリルより独立して選択される、NR8R9またはSO2NR8R9; R9が上記に定義の通りであり、R10が、置換されていてもよいC1〜6アルキル、置換されていてもよいC2〜6アルケニル、置換されていてもよいC2〜6アルキニル、置換されていてもよいC3〜6シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロシクリルである、CONR9R10; R8およびR9が上記に定義の通りである、CH2CONR8R9; ならびにR9が上記に定義の通りであり、R11が、置換されていてもよいC1〜6アルキル、置換されていてもよいC2〜6アルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいC3〜6シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロシクリル、およびSO2R12より選択され、SO2R12中のR12が、置換されていてもよいC1〜6アルキル、置換されていてもよいC2〜6アルケニル、置換されていてもよいC2〜6アルキニル、置換されていてもよいC3〜6シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロシクリルであり、nが1〜6である、(CH2)NR9R11
であり;
R3は、
H、置換されていてもよいC1〜6アルキル、置換されていてもよいC2〜6アルケニル、置換されていてもよいC2〜6アルキニル、置換されていてもよいC3〜6シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロシクリル、置換されていてもよいC1〜6アルコキシ、置換されていてもよいアシル、ヒドロキシ、置換されていてもよいアミノ、置換されていてもよいチオ、置換されていてもよいスルホニル、置換されていてもよいスルフィニル、置換されていてもよいスルホニルアミノ、ハロ、SO3H、アミン、CN、CF3、およびハロ
より選択され;
XはCHまたはNであり;
YはCH、CO、CS、またはNであり; かつ
qは1、2、または3である。
【0018】
本発明は特に、星状細胞腫、GBM、退形成星状細胞腫、混合膠腫、および乏突起膠腫などの脳腫瘍の神経膠腫型に及ぶ。
【0019】
神経膠腫のうち、特にGBMは、本明細書において開示する薬剤で処置可能である。規定のまたは特定の投与量を投与することができる。
【0020】
脳内の神経膠腫に関連する細胞の増殖または生存能力を阻害するための特定の投与量範囲も提供される。この投与量範囲には一投与あたり一被験体につき約1 ng〜約1 gが含まれる。投与は単回用量または一連の分割用量であってよい。
【0021】
神経膠腫脳腫瘍の処置、改善、および/または予防のための医用薬剤の製造における上記に定義の式(I)の化合物を含む薬剤の使用がさらに提供される。
【0022】
神経膠腫脳腫瘍の処置、改善、および/または予防のための上記に定義の式(I)の化合物を含む薬剤の使用がさらに提供される。
【0023】
組み合わせ療法も本発明の一部を形成し、二つまたはそれ以上の薬剤が投与されるか、あるいは薬剤と、化学療法化合物、サイトカイン、遺伝分子、抗酸化剤、および/または麻酔薬などの別の活性物質とが投与される。
【0024】
「化学療法化合物」への言及は、化学物質(chemical compound)、免疫学的化合物、天然産物、またはsRNAi複合体、または導入されたウイルスベクターの産物を含む。
【0025】
好ましい被験体はヒトであるが、本発明は獣医学および畜産産業での用途があり、それゆえ非ヒト動物にまで及ぶ。
【0026】
第二の局面において、神経膠腫脳腫瘍を処置する、改善する、および/または予防するための上記に定義の式(I)の化合物を含む薬剤を含む製剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】規準の用量5 mg/kgでSwiss OutbredマウスにIV投与した後の化合物の脳および血漿濃度を示すグラフである。データは平均1SD(n=3)として示されている。化合物は文字で指定されており、本明細書中で定義されている。
【図2】C6細胞に対する化合物の細胞毒性スクリーニングを示すグラフである。試験した化合物は文字で指定されており、本明細書中で定義されている。
【図3】U87MG細胞に対する異なる薬剤の細胞毒性スクリーニングを示すグラフ表示である。試験した化合物は文字で指定されており、本明細書中で定義されている。
【図4】SMA 560細胞に対する化合物の細胞毒性スクリーニングを示すグラフである。試験した化合物は文字で指定されており、本明細書中で定義されている。
【図5】3T3細胞に対する化合物の細胞毒性スクリーニングを示すグラフである。試験した化合物は文字で指定されており、本明細書中で定義されている。
【図6】図6a〜dは、C6神経膠腫モデル(a,c)およびSMA560神経膠腫モデル(b,d)における化合物A、B、S、およびHの効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
詳細な説明
化合物
式(I)の化合物は、好ましくは式(I')の化合物である:

式中
R2は、
H; 置換されていてもよいC1〜6アルキル; 置換されていてもよいC2〜6アルケニル; 置換されていてもよいC2〜6アルキニル; 置換されていてもよいC3〜6シクロアルキル; 置換されていてもよいアリール; 置換されていてもよいヘテロシクリル; CN; R6が、H、置換されていてもよいC1〜6アルキル、置換されていてもよいC2〜6アルケニル、置換されていてもよいC2〜6アルキニル、置換されていてもよいC3〜6シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、もしくは置換されていてもよいヘテロシクリルである、OR6、SR6、COR6、CSR6、HCNOR6、またはHCNNR6; R8およびR9が、H、置換されていてもよいC1〜6アルキル、置換されていてもよいC2〜6アルケニル、置換されていてもよいC2〜6アルキニル、置換されていてもよいC3〜6シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、および置換されていてもよいヘテロシクリルより独立して選択される、NR8R9またはSO2NR8R9; R9が上記に定義の通りであり、R10が、置換されていてもよいC1〜6アルキル、置換されていてもよいC2〜6アルケニル、置換されていてもよいC2〜6アルキニル、置換されていてもよいC3〜6シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロシクリルである、CONR9R10; R8およびR9が上記に定義の通りである、CH2CONR8R9; ならびにR9が上記に定義の通りであり、R11が、置換されていてもよいC1〜6アルキル、置換されていてもよいC2〜6アルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいC3〜6シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロシクリル、およびSO2R12より選択され、SO2R12中のR12が、置換されていてもよいC1〜6アルキル、置換されていてもよいC2〜6アルケニル、置換されていてもよいC2〜6アルキニル、置換されていてもよいC3〜6シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロシクリルであり、nが1〜6である、(CH2)NR9R11
であり;
R5およびR7は、H、置換されていてもよいC1〜6アルキル、およびハロより独立して選択され;
XはCHまたはNであり;
YはCH、CO、CS、またはNであり; かつ
qは1、2、または3である。
【0029】
式(I')の化合物は、XおよびYがCHであるもの; 3位のXがNであり、6位のXがCHであり、その他のXがCHであり、かつYがCOまたはCSであるもの; 3位および6位のXがCHであり、その他のXがNであり、かつYがCOであるもの; XがCHであり、かつYがNであるもの; 3位のYおよびXがCHであるもの; 6位のXがNであり、かつその他のXがCであるものを含む。
【0030】
一つの態様において、式(I')の化合物は式(IA)を有する:

式中
R2、R5、R7、R8、およびqは、上記に定義される通りである。
【0031】
R2は、好ましくは2位もしくは3位のいずれかまたは両方に位置し、以下より選択される: H; 置換されていてもよいC1〜4アルキル; 置換されていてもよいC2〜4アルケニル; 置換されていてもよいC3〜6シクロアルキル; 置換されていてもよい6員アリールまたはヘテロアリールと縮合していてもよい置換されていてもよい6員アリール; 置換されていてもよい6員アリールまたはヘテロアリールと縮合していてもよい置換されていてもよい飽和または不飽和5員または6員N含有ヘテロシクリル; nが上記に定義の通りであり、R13が、置換されていてもよいC1〜4アルキル、置換されていてもよいC3〜6シクロアルキル、置換されていてもよい飽和もしくは不飽和5員もしくは6員N含有ヘテロシクリル、または置換されていてもよい6員アリールである、(CH2)nR13; R14およびR15が、H、置換されていてもよいC1〜4アルキル、置換されていてもよいC3〜6シクロアルキル、置換されていてもよい飽和または不飽和5員または6員N含有ヘテロシクリル、および置換されていてもよい6員アリールより独立して選択される、NR14R15; R16が、H、置換されていてもよいC1〜4アルキル、置換されていてもよいC3〜6シクロアルキル、置換されていてもよい飽和もしくは不飽和5員もしくは6員N含有ヘテロシクリル、または置換されていてもよい6員アリールである、HCNOR16; R17およびR18が、H、置換されていてもよいC1〜6アルキル、置換されていてもよいC2〜6アルケニル、および置換されていてもよい6員アリールと縮合していてもよい置換されていてもよい5員または6員N含有ヘテロシクリルより独立して選択される、CH2CONR17R18; ならびにR19およびR20が、置換されていてもよいC1〜6アルキル、置換されていてもよいC3〜6シクロアルキル、およびSO2R21より独立して選択され、SO2R21中のR21が、置換されていてもよいC1〜6アルキル、および置換されていてもよい6員アリールより選択され、nが上記に定義の通りである、(CH2)nNR19R20
【0032】
より好ましくは、R2は、H、置換されていてもよいC1〜4アルキル、または(CH2)nNR19R20であり、ここでn、R19、およびR20は、上記に定義される通りである。
【0033】
好ましくは、R5およびR7は両方ともハロであり、より好ましくは、両方ともクロロであるか、または一方がクロロであり、もう一方がヨードである。
【0034】
式(IA)の化合物のサブクラスは式(Ia)を有する:

式中
R2、R5、およびR7は、上記に定義される通りである。
【0035】
式(Ia)の化合物のサブクラスは以下の通りである:

式中
R2は、H、または置換されていてもよい飽和もしくは不飽和6員N含有ヘテロシクリル、例えばピリジルより選択され; かつ
R7はClまたはIである。
【0036】
代表的な例を以下に示す。

【0037】

式中
R19およびR20は、Hおよび置換されていてもよいC1〜6アルキルより独立して選択される。
【0038】
代表的な例を以下に示す。

【0039】

式中
R9はHであり; かつ
R10は、置換されていてもよいC1〜6アルキル、より好ましくはイミダゾリルなどの不飽和5員N含有ヘテロシクリルで置換されていてもよいC1〜6アルキルより選択される。
【0040】
代表的な例を以下に示す。

【0041】

式中
R8およびR9は、H、置換されていてもよいC1〜6アルキルおよび置換されていてもよい飽和または不飽和5員または6員N含有ヘテロシクリル、例えばピリジニルより独立して選択される。
【0042】
代表的な例を以下に示す。

【0043】

式中
R16は、H、または置換されていてもよいC1〜6、好ましくはC1〜4アルキルである。
【0044】
代表的な例を以下に示す。

【0045】
別の態様において、式(I')の化合物は式(IB)を有する:

式中
R2、R5、R7、R8、およびYは、上記に定義される通りであり; かつ
rは1または2である。
【0046】
R2は、好ましくは2位もしくは3位のいずれかまたはその両方に位置し、以下より選択される: H; 置換されていてもよいC1〜4アルキル; 置換されていてもよいC1〜4アルケニル; 置換されていてもよいC3〜6シクロアルキル; 置換されていてもよい6員アリールまたはヘテロアリールと縮合していてもよい置換されていてもよい6員アリール; 置換されていてもよい6員アリールまたはヘテロアリールと縮合していてもよい置換されていてもよい飽和または不飽和5員または6員N含有ヘテロシクリル; nが上記に定義の通りであり、R13が、置換されていてもよいC1〜4アルキル、置換されていてもよいC3〜6シクロアルキル、置換されていてもよい飽和もしくは不飽和5員もしくは6員N含有ヘテロシクリル、または置換されていてもよい6員アリールである、(CH2)nR13; R14およびR15が、H、置換されていてもよいC1〜4アルキル、置換されていてもよいC3〜6シクロアルキル、置換されていてもよい飽和または不飽和5員または6員N含有ヘテロシクリル、および置換されていてもよい6員アリールより独立して選択される、NR14R15; R16が、置換されていてもよいC1〜4アルキル、置換されていてもよいC3〜6シクロアルキル、置換されていてもよい飽和もしくは不飽和5員もしくは6員N含有ヘテロシクリル、または置換されていてもよい6員アリールである、NHCOR16; R17およびR18が、H、置換されていてもよいC1〜6アルキル、置換されていてもよいC2〜6アルケニル、および置換されていてもよい6員アリールと縮合していてもよい置換されていてもよい5員または6員N含有ヘテロシクリルより独立して選択される、CH2CONR17R18; ならびにR19およびR20が、置換されていてもよいC1〜6アルキル、置換されていてもよいC3〜6シクロアルキル、およびSO2R21より独立して選択され、SO2R21中のR21が、置換されていてもよいC1〜6アルキル、および置換されていてもよい6員アリールより選択され、nが上記に定義の通りである、(CH2)nNR19R20
【0047】
より好ましくは、R2は以下より選択される: 置換されていてもよいC1〜4アルキル; 置換されていてもよいC1〜4アルケニル; 置換されていてもよい6員アリールまたはヘテロアリールと縮合していてもよい置換されていてもよい飽和または不飽和5員または6員N含有ヘテロシクリル; nが1〜3であり、R13が、置換されていてもよいC3〜6シクロアルキル、または置換されていてもよい飽和もしくは不飽和5員もしくは6員N含有ヘテロシクリルである、(CH2)nR13; R14がHであり、R15が、H、または置換されていてもよいC1〜4アルキル、または置換されていてもよい6員アリールである、NR14R15; R16が、置換されていてもよいC1〜4アルキル、または置換されていてもよい6員アリールである、NHCOR16
【0048】
好ましくは、R5はHまたはクロロであり、R7はクロロまたはヨードである。
【0049】
式(IB)の化合物のサブクラスは式(Ib)を有する:

式中
R2、R5、R7、Y、およびqは、上記に定義される通りである。
【0050】
式(Ib)の化合物のサブクラスは以下の通りである:

式中
R2は、置換されていてもよいC1〜6アルキルおよび置換されていてもよいC3〜6シクロアルキルより選択され;
R5はClまたはHであり;
R7はClまたはIであり; かつ
YはCOまたはCSである。
【0051】
代表的な例は以下の通りである。


【0052】

式中
R5およびR7は上記に定義される通りであり; かつ
R13は上記に定義される通りであり、好ましくは、置換されていてもよいC3〜6シクロアルキル、または置換されていてもよい5員もしくは6員ヘテロシクリル、例えばピリジニル、チアゾリル、またはイソキサゾリルである。
【0053】
代表的な例は以下の通りである。


【0054】

式中
R14およびR15は上記に定義される通りであり、好ましくは、H、および置換されていてもよい6員アリール、例えばハロで置換されたフェニルより独立して選択される。
【0055】
代表的な例は以下の通りである。

【0056】

式中
R2は、置換されていてもよいC1〜6アルキル、CH2NR9R11より選択され、ここでR9はHであり、R11は、置換されていてもよいC1〜6アルキルである。
【0057】
代表的な例を以下に示す。

【0058】
別の態様において、式(I')の化合物は式(IC)を有する:

式中
R2、R5、R7、およびrは、上記に定義される通りであり、
R2は、好ましくは3位に位置し、H、置換されていてもよいC1〜4アルキル、ならびにR9およびR10が上記に定義の通りであるCONR9R10より選択され、好ましくはR8はHであり、R7はクロロまたはヨードである。
【0059】
式(IC)の化合物のサブクラスは式(Ic)を有する:

式中
R2、R5、およびR7は、上記に定義される通りである。
【0060】
式(Ic)の化合物のサブクラスは以下の通りである:

式中
R2は、置換されていてもよいC1〜6アルキルであり; かつ
R7は上記に定義される通りであり、好ましくはHまたはIである。
【0061】
代表的な例を以下に示す。


【0062】

式中
R7は上記に定義される通りであり、好ましくはIであり;
R9はHであり; かつ
R10は、置換されていてもよいC1〜6アルキルである。
【0063】
代表的な例を以下に示す。

【0064】
別の態様において、式(I')の化合物は式(ID)を有する:

式中
R2、R5、R6、およびrは、上記に定義される通りである。
【0065】
式(ID)の化合物のサブクラスは式(Id)を有する:

式中
R2、R5、R6、およびR7は、上記に定義される通りである。
【0066】
R2は、好ましくは置換されていてもよいC1〜6アルキルであり、R5およびR7は両方ともクロロである。
【0067】
代表的な例は以下の通りである。

【0068】
別の態様において、式(I')の化合物は式(IE)を有する:

式中
R2、R5、およびqは、上記に定義される通りである。
【0069】
式(IE)の化合物のサブクラスは式(Ie)を有する:

式中
R2は上記に定義される通りであり; かつ
R7は、置換されていてもよいC1〜6アルキルである。
【0070】
代表的な例は以下の通りである。

【0071】
単独でまたは「置換されていてもよいC1〜4アルキル」のような複合語で使用される「C1〜6アルキル」または「C1〜4アルキル」という用語は、それぞれ1〜6個および1〜4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖炭化水素基をいう。そのようなアルキル基の例証となるのは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、またはヘキシル、好ましくはメチル、エチル、またはプロピルである。
【0072】
本明細書において用いられる「(CH2)n」という用語は、直鎖も分枝鎖も共に含む。
【0073】
「C2〜6アルケニル」という用語は、該当する場合にはEまたはZのいずれかの立体化学の少なくとも一つの二重結合および2〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖炭化水素基をいう。例としてはビニル、1-プロペニル、1-および2-ブテニル、ならびに2-メチル-2-プロペニルが挙げられる。
【0074】
単独でまたは「置換されていてもよいC2〜6アルキニル」のような複合語で使用される「C2〜6アルキニル」という用語は、2〜6個の炭素原子を有しかつさらに一つの三重結合を有する直鎖または分枝鎖炭化水素基をいう。そのような基の例証となるのは、エチニル、1-プロピニル、1-および2-ブチニル、2-メチル-2-プロピニル、2-ペンチニル、3-ペンチニル、4-ペンチニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、4-ヘキシニル、ならびに5-ヘキシニルである。
【0075】
単独でまたは「置換されていてもよいC3〜6シクロアルキル」のような複合語で使用される「C3〜6シクロアルキル」という用語は、3〜6個の炭素原子を有する飽和炭素環式基をいう。そのような基の例証となるのは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシル、好ましくはシクロプロピルである。
【0076】
「ヘテロシクリル」という用語は、窒素、硫黄、および酸素からなる群より選択される少なくとも一つのヘテロ原子を含有する飽和または不飽和の単環式または多環式の炭化水素基をいう。
【0077】
適切な複素環基は、N含有複素環基を含み、例えば以下を含む:
1〜4個の窒素原子を含有する不飽和5員または6員複素単環式基、例えば、ピロリル、ピロリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアゾリル、またはテトラゾリル;
1〜4個の窒素原子を含有する飽和5員または6員複素単環式基、例えば、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジノ、またはピペラジニル;
1〜5個の窒素原子を含有する不飽和縮合複素環基、例えば、インドリル、イソインドリル、インドリジニル、ベンゾイミダゾリル、キノリル、イソキノリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、またはテトラゾロピリダジニル;
1〜2個の酸素原子および1〜3個の窒素原子を含有する不飽和5員または6員複素単環式基、例えば、オキサゾリル、イソキサゾリル、またはオキサジアゾリル;
1〜2個の酸素原子および1〜3個の窒素原子を含有する飽和5員または6員複素単環式基、例えば、モルホリニル;
1〜2個の硫黄原子および1〜3個の窒素原子を含有する不飽和5員または6員複素単環式基、例えば、チアゾリルまたはチアジアゾリル; ならびに
1〜2個の硫黄原子および1〜3個の窒素原子を含有する飽和3員〜6員複素単環式基、例えば、チアゾリジニル。
【0078】
好ましくは、ヘテロシクリルは、ピラゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、もしくはイミダゾリルなどの、1〜3個の窒素原子を含有する不飽和5員もしくは6員複素単環式基; ピロリジニルもしくはピペラジニルなどの、1〜4個の窒素原子を含有する飽和5員もしくは6員複素単環式基; ベンゾイミダゾリルなどの、1〜5個の窒素原子を含有する不飽和縮合複素環基; モルホリニルなどの、1〜2個の酸素原子および1〜3個の窒素原子を含有する飽和5員もしくは6員複素単環式基; またはチアゾリルなどの、1〜2個の硫黄原子および1〜3個の酸素原子を含有する不飽和5員もしくは6員複素単環式基である。
【0079】
単独でまたは「置換されていてもよい6員アリールと縮合していてもよい置換されていてもよい不飽和または飽和5員または6員N含有ヘテロシクリル基」のような複合語で使用される「置換されていてもよい6員アリールと縮合していてもよい不飽和または飽和5員または6員N含有ヘテロシクリル基」という用語は、少なくとも一つの窒素原子および任意で、硫黄および酸素より選択される他のヘテロ原子を含有する単環式または多環式の複素環基をいう。
【0080】
「アリール」という用語は、芳香族炭化水素の単一残基、多核残基、共役残基、
または縮合残基をいう。例としてはフェニル、ビフェニル、テルフェニル、クアテルフェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、アントラセニル、ジヒドロアントラセニル、ベンズアントラセニル、ジベンズアントラセニル(dibenxanthracenyl)、およびフェナントレニルが挙げられる。好ましいアリールはフェニルである。
【0081】
単独でまたは「置換されていてもよい6員アリール」のような複合語で使用される「6員アリール」という用語は、6員の炭素環式芳香族基を意味する。そのようなアリール基の例証となるのはフェニルである。好ましくは、アリールは4-ハロフェニル、より好ましくは4-フルオロフェニルなどの、置換されていてもよいフェニルである。
【0082】
単独でまたは「置換されていてもよい6員ヘテロアリール」のような複合語で使用される「6員ヘテロアリール」という用語は、一つまたは複数のヘテロ原子を含有する6員の芳香族複素環を意味する。例としてはピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、およびピリダジニルが挙げられ、これらのそれぞれがメチルまたはメトキシにより置換されてもよい。
【0083】
「ハロ」という用語はフッ素、塩素、臭素、またはヨウ素、好ましくはフッ素、ヨウ素、または塩素、より好ましくは塩素またはヨウ素をいう。
【0084】
単独でまたは「置換されていてもよいアシル」、「アリールアシル」、もしくは「アルキルアシル」のような複合語で使用される「アシル」という用語は、1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜14個の炭素原子を有する、カルバモイル、脂肪族アシル基、芳香族アシルといわれる芳香環を含有するアシル基、または複素環アシルといわれる複素環を含有するアシル基を意味する。アシルの例としてはカルバモイル; ホルミル、アセチル、プロパノイル、ブタノイル、2-メチルプロパノイル、ペンタノイル、2,2-ジメチルプロパノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、ウンデカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ペンタデカノイル、ヘキサデカノイル、ヘプタデカノイル、オクタデカノイル、ノナデカノイル、もしくはイコサノイルなどの、直鎖もしくは分枝アルカノイル; メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t-ブトキシカルボニル、t-ペンチルオキシカルボニル、もしくはヘプチルオキシカルボニルなどの、アルコキシカルボニル; シクロプロピルカルボニル、シクロブチルカルボニル、シクロペンチル、カルボニル、もしくはシクロヘキシルカルボニルなどの、シクロアルキルカルボニル; メチルスルホニルもしくはエチルスルホニルなどの、アルキルスルホニル; メトキシスルホニルもしくはエトキシスルホニルなどの、アルコキシスルホニル; ベンゾイル、トルオイル、もしくはナフトイルなどの、アロイル; フェニルアルカノイル、例えば、フェニルアセチル、フェニルプロパノイル、フェニルブタノイル、フェニルイソブチル、フェニルペンタノイル、もしくはフェニルヘキサノイル、またはナフチルアルカノイル、例えば、ナフチルアセチル、ナフチルプロパノイル、もしくはナフチルブタノイルなどの、アラルカノイル; フェニルアルケノイル、例えば、フェニルプロペノイル、フェニルブテノイル、フェニルメタクリリル、フェニルペンテノイル、もしくはフェニルヘキセノイル、またはナフチルアルケノイル、例えば、ナフチルプロペノイル、ナフチルブテノイル、もしくはナフチルペンテノイルなどの、アラルケノイル; フェニルアルコキシカルボニル、例えば、ベンジルオキシカルボニルなどの、アラルコキシカルボニル; フェノキシカルボニルもしくはナフチルオキシカルボニルなどの、アリールオキシカルボニル; フェノキシアセチルもしくはフェノキシプロピオニルなどの、アリールオキシアルカノイル; フェニルカルバモイルなどの、アリールカルバモイル; フェニルチオカルバモイルなどの、アリールチオカルバモイル; フェニルグリオキシロイルもしくはナフチルグリオキシロイルなどの、アリールグリオキシロイル; フェニルスルホニルもしくはナフチルスルホニルなどの、アリールスルホニル; 複素環カルボニル; チエニルアセチル、チエニルプロパノイル、チエニルブタノイル、チエニルペンタノイル、チエニルヘキサノイル、チアゾリルアセチル、チアジアゾリルアセチル、もしくはテトラゾリルアセチルなどの、複素環アルカノイル; 複素環プロペノイル、複素環ブテノイル、複素環ペンテノイル、もしくは複素環ヘキセノイルなどの、複素環アルケノイル; あるいはチアゾリルグリオキシロイルもしくはチエニルグリオキシロイルなどの、複素環グリオキシロイルが挙げられる。
【0085】
「置換されていてもよいチオ」という用語は、二価の硫黄原子に付加している、1〜10個の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子、より好ましくは1〜4個の炭素原子の直鎖または分枝アルキルを含有するラジカルなどの任意の置換基をいう。アルキルチオラジカルの例としてはメチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ、およびヘキシルチオが挙げられる。
【0086】
「置換されていてもよいスルフィニル」という用語は、二価の-S(=O)-ラジカルに付加している、1〜10個の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子、より好ましくは1〜4個の炭素原子の直鎖または分枝アルキルラジカルを含有するラジカルなどの任意の置換基をいう。例としてはメチルスルフィニル、エチルスルフィニル、ブチルスルフィニル、およびヘキシルスルフィニルが挙げられる。
【0087】
「置換されていてもよいスルホニル」という用語は、二価の-SO2-ラジカルに付加している、1〜10個の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子、より好ましくは1〜4個の炭素原子の直鎖または分枝アルキルラジカルを含有するラジカルなどの任意の置換基をいう。例としてはメチルスルホニル、エチルスルホニル、およびプロピルスルホニルが挙げられる。
【0088】
「アルコキシ」という用語は、好ましくはそれぞれが1〜約6個の炭素原子のアルキル部分を有する、直鎖または分枝オキシ含有ラジカルをいう。アルコキシの例としてはメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、およびtert-ブトキシが挙げられる。
【0089】
「置換されていてもよい」という用語はC1〜6アルキル、C3〜6シクロアルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、アリール、ヘテロシクリル(heterocycylyl)、ハロ、ハロC1〜6アルキル、ハロC3〜6シクロアルキル、ハロC2〜6アルケニル、ハロC2〜6アルキニル、ハロアリール、ハロヘテロシクリル(haloheterocycylyl)、ヒドロキシ、C1〜6アルコキシ、C2〜6アルケニルオキシ、C2〜6アルキニルオキシ、アリールオキシ、ヘテロシクリルオキシ、カルボキシ、ハロC1〜6アルコキシ、ハロC2〜6アルケニルオキシ、ハロC2〜6アルキニルオキシ、ハロアリールオキシ、ニトロ、ニトロC1〜6アルキル、ニトロC2〜6アルケニル、ニトロアリール、ニトロヘテロシクリル、アジド、アミノ、C1〜6アルキルアミノ、C2〜6アルケニルアミノ、C2〜6アルキニルアミノ、アリールアミノ、複素環(heterocycl)アミノアシル、C1〜6アルキルアシル、C2〜6アルケニルアシル、C2〜6アルキニルアシル、アリールアシル、ヘテロシクリル(heterocycylyl)アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アルデヒド(aldehydo)、C1〜6アルキルスルホニル、アリールスルホニル、C1〜6アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、C1〜6アルキルスルホニルオキシ、アリールスルホニルオキシ、C1〜6アルキルスルフェニル、C2〜6アルキル(alkly)スルフェニル、アリールスルフェニル、カルボアルコキシ、カルボアリールオキシ、メルカプト、C1〜6アルキルチオ、アリールチオ、アシルチオ、シアノなどより選択される一つまたは複数の基によってさらに置換されていてもまたはされなくてもよい基をいう。好ましくは、任意の置換基はC1〜4アルキル、ハロC1〜4アルキル、ヒドロキシ、ハロ、C1〜4アルコキシ、またはC1〜4アルキルアシルである。
【0090】
好ましくは、誘導体は「薬学的に許容される誘導体」である。「薬学的に許容される誘導体」とは、任意の薬学的に許容される塩、水和物、エステル、エーテル、アミド、活性代謝物、類似体、残基、または生物学的にもしくは他の点で有害(undesirable)ではない、かつ、所望の薬理学的および/もしくは生理学的効果を誘導するその他の任意の化合物を意味する。
【0091】
式(I)の化合物の塩は、薬学的に許容されることが好ましいが、薬学的に許容されない塩も、これらが薬学的に許容される塩の調製における中間体として有用であるため、本発明の範囲内に入ることが理解されると考えられる。薬学的に許容される塩の例としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、およびアルキルアンモニウムなどの薬学的に許容される陽イオンの塩; 塩酸、オルトリン酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸、ホウ酸、スルファミン酸、および臭化水素酸などの薬学的に許容される無機酸の酸付加塩; または酢酸、プロピオン酸、酪酸、酒石酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フマル酸、クエン酸、乳酸、粘液酸、グルコン酸、安息香酸、コハク酸、シュウ酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、トリハロメタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、サリチル酸、スルファニル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、エデト酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パントテン酸、タンニン酸、アスコルビン酸、および吉草酸などの薬学的に許容される有機酸の塩が挙げられる。アミン基の塩は、アミノ窒素原子がアルキル、アルケニル、アルキニル、またはアラルキル部分などの適切な有機基を持った第四級アンモニウム塩を含みうる。
【0092】
これらの塩は従来の手段により、例えば、塩が不溶であるような溶媒もしくは媒体中にて、または真空でもしくは凍結乾燥によって除去される水などの溶媒中にて、化合物の遊離塩基形態を1当量またはそれ以上の当量の適切な酸と反応させることにより、あるいは適切なイオン交換樹脂上にて既存の塩の陰イオンを別の陰イオンと交換することにより形成することができる。
【0093】
さらに、本発明の化合物のいくつかは、水または一般的な有機溶媒と溶媒和物を形成しうる。このような溶媒和物は本発明の範囲内に包含される。
【0094】
「プロドラッグ」という用語は、必要とされる式(I)の化合物へとインビボにおいて容易に変換される式(I)の化合物の機能的誘導体をいう。適切なプロドラッグ誘導体の選択および調製のための従来の手順は、例えば、「Design of Prodrugs」H. Bundgaard (編), Elsevier, 1985に記述されている。
【0095】
プロドラッグは、活性化合物を放出するために体内での転換が必要な、かつ活性化合物に比べて送達特性が改善された、活性化合物の、薬理学的に不活性な誘導体でありうる。インビボにおける転換は、例えば、カルボン酸エステル、リン酸エステル、もしくは硫酸エステルの化学的もしくは酵素的加水分解、または感受性官能基の還元もしくは酸化などの、ある代謝過程の結果として存在しうる。一つの態様において、式(I)の化合物の8-ヒドロキシルを遮断してプロドラッグ、具体的にはエステルプロドラッグを形成することができる。8-ヒドロキシは化合物の主要な代謝部位に相当し、グルクロン酸または硫酸塩との結合によってそのまま排出される親水性種を生じる。
【0096】
「互変異性体」という用語は、2つの異性体間の平衡状態で存在できる式(I)の化合物を含むよう本明細書においてその最も広い意味で用いられる。このような化合物は、2つの原子または基を結び付ける結合および化合物中のこれらの原子または基の位置が異なっていてもよい。
【0097】
「異性体」という用語は、本明細書においてその最も広い意味で用いられており、構造異性体、幾何異性体、および立体異性体を含む。式(I)の化合物は一つまたは複数の不斉中心を持ちうるので、それは鏡像異性体の形態で存在することができる。
【0098】
本発明の範囲内に含まれるのは、検出可能な標識、親和性タグ、および光反応基の少なくとも一つが連結されている式Iの化合物である。
【0099】
処置、改善、および/または予防の方法
式(I)の化合物を含む薬剤を星状細胞腫、GBM、および退形成星状細胞腫、混合膠腫、および乏突起膠腫などの神経膠腫脳腫瘍の処置、改善、および/または予防において使用することができる。
【0100】
「薬剤」への言及には二つまたはそれ以上の活性薬剤の組み合わせが含まれる。「組み合わせ」は同様に、薬剤が別々に供与され、別々に与えられるかもしくは投薬される、または投薬の前に一緒に混合される二部分の組成物などの、多部分を含む。例えば、多部分の医薬パック(pharmaceutical pack)は、別々に維持される二つまたはそれ以上の薬剤を有することができる。それゆえ、本発明のこの局面は組み合わせ療法を含む。組み合わせ療法は、薬剤と、化学療法化合物、サイトカイン、遺伝分子、および/または麻酔薬などの別の活性物質との同時投与を含む。
【0101】
本明細書において用いられる薬剤の「有効量」および「治療的有効量」という用語は、所望の治療的または生理的効果または転帰をもたらすのに十分な薬剤量を意味する。そのような効果または転帰は、脳内の神経膠腫に関連する細胞の増殖または生存能力の阻害を含む。望ましくない効果、例えば、副作用が、所望の治療的効果と共に顕在化することが多い; それゆえ、施術者はどれくらいが適切な「有効量」であるかを判定する上で潜在的な利益と潜在的な危険性のバランスを取る。必要とされる的確な量は、被験体の種、年齢、および全身状態、投与方法などに応じ、被験体によって異なると考えられる。このように、的確な「有効量」を特定することは可能ではない可能性がある。しかしながら、当業者は日常の実験のみを用いて適切な「有効量」をどの個々の場合でも判定することができる。
【0102】
有効量は、神経膠腫に関連する細胞の増殖または生存能力を阻害するのに必要な量と考えられる。有効量は、一被験体あたり約1 ng〜約1 gの投与を含む。投与は単回用量または一連の分割用量であってよい。量は、一被験体あたり約5 ng〜約800 mgの投与を含む。実際の量は患者一個体あたり約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100 ng、もしくは200、300、400、500、600、700、800、900、1000 ng、または2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100 mg、もしくは200、300、400、500、600、700、800、900、1000 mgを含む。
【0103】
被験体の「処置」は、被験体の利益のための、罹患被験体における神経膠腫脳腫瘍の増殖の調節または改善のほか、発生しうるまたは成長している神経膠腫脳腫瘍の生化学的または免疫学的マーカーを有する、臨床的に無症候性の被験体の処置も含むことができる。一つの特定の態様において、本発明は神経膠腫に関連する細胞の増殖または生存能力の低減を企図する。
【0104】
「脳腫瘍」への言及には脳のガンが含まれる。「腫瘍」および「ガン」という用語は本明細書において互換的に用いることができる。「神経膠腫」への言及にはGMB、星状細胞腫、退形成星状細胞腫、混合膠腫、乏突起膠腫、または関連する脳のガンが含まれる。
【0105】
本明細書において用いられる「被験体」という用語は、本発明の製剤および方法から恩恵を受けうる動物、好ましくは哺乳類、より好ましくは下等霊長類を含む霊長類、さらにより好ましくはヒトをいう。被験体はヒトか非ヒト動物かにかかわらず、個体、患者、動物、宿主、または受容者ということができる。本発明の薬剤および方法はヒト医薬、獣医薬、および広くは、家畜化した動物または野生動物の飼育において適用される。便宜上、「動物」には家禽(アヒル、ニワトリ、シチメンチョウ、およびガチョウを含む)、鳥類舎の鳥、または猟鳥などの鳥類が含まれる。非ヒト動物における状態は、天然の状態ではなく、動物モデルにおけるように誘導されてもよい。
【0106】
上記のように、好ましい動物はヒト、非ヒト霊長類、例えばマーモセット、ヒヒ、オランウータン、下等霊長類、例えばツパイ(tupia)、家畜動物、実験室試験動物、ペット、または捕獲野生動物である。ヒトは最も好ましい標的である。しかしながら、非ヒト動物モデルが使用されてもよい。
【0107】
実験室試験動物の例としてはマウス、ラット、ウサギ、モルモット、およびハムスターが挙げられる。ウサギならびに齧歯類動物、例えばラットおよびマウスは、霊長類および下等霊長類と同様に、好都合な試験系または動物モデルになる。家畜動物はヒツジ、ウシ、ブタ、ヤギ、ウマ、およびロバを含む。非哺乳類動物、例えば鳥類、ゼブラフィッシュ、両生類(オオヒキガエルを含む)、およびキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)などのショウジョウバエ種も企図される。生きた動物モデルの代わりに、試験系は組織培養系を含むこともできる。
【0108】
薬学的製剤
本発明の製剤は、一つまたは複数の薬学的に許容される担体および任意でその他の治療剤と共に式(I)の化合物の少なくとも一つを含む。各担体は、製剤の他の成分と適合し被験体に有害でないという意味で薬学的に「許容され」なければならない。担体は賦形剤および他の添加物、例えば希釈剤、界面活性剤、着色剤、湿潤剤、または乳化剤、pH緩衝剤、保存料などを含むことができる。製剤には経口、直腸、鼻、局所(頬および舌下を含む)、膣、または非経口(皮下、筋内、静脈内、および皮内を含む)の投与に適したものが含まれる。製剤は、便宜上、投与単位剤形で与えられてもよく、製薬の技術分野において周知の方法により調製されてもよい。このような方法は、一つまたは複数の副成分を構成する担体と活性成分とを結びつける段階を含む。一般に、製剤は液体担体、希釈剤、アジュバント、および/もしくは賦形剤と、または微細に分割された固体担体と、あるいは両者と活性成分とを均一におよび密接に結びつけ、必要に応じて生成物を成形することにより調製される。
【0109】
式(I)の化合物は、従来の毒性のない薬学的に許容される担体、アジュバント、および媒質を含有する投与単位剤形で経口的に、局所的に、または非経口的に投与されてもよい。本明細書で用いられる非経口という用語は、皮下注射、肺もしくは鼻腔への投与用のエアロゾル、静脈内の、筋肉内の、くも膜下腔の、頭蓋内の注射または注入の技術を含む。
【0110】
本発明は同様に、本発明の新規な処置の方法において用いるのに適した局所用、経口用、および非経口用の薬学的製剤を提供する。本発明の化合物は錠剤、水性もしくは油性の懸濁剤、薬用キャンディー、トローチ剤、散剤、顆粒剤、乳剤、カプセル剤、シロップ剤、またはエリキシル剤として経口的に投与されてもよい。経口用の製剤は、薬学的に上質で口当たりのよい調製物を作出するため、甘味剤、香料添加剤、着色剤、および保存剤からなる群より選択される一つまたは複数の薬剤を含むことができる。適切な甘味料はスクロース、ラクトース、グルコース、アスパルテーム、またはサッカリンを含む。適切な崩壊剤はトウモロコシデンプン、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、キサンタンガム、ベントナイト、アルギン酸、または寒天を含む。適切な香料添加剤はペパーミント油、冬緑油、サクランボ、オレンジ、またはラズベリーの香料を含む。適切な保存剤は安息香酸ナトリウム、ビタミンE、アルファトコフェロール、アスコルビン酸、メチルパラベン、プロピルパラベン、または亜硫酸水素ナトリウムを含む。適切な滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、オレイン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、またはタルクを含む。適切な時間遅延剤は、モノステアリン酸グリセリン、またはジステアリン酸グリセリンを含む。錠剤は活性成分を、錠剤の製造に適した毒性のない薬学的に許容される賦形剤との混合剤として含む。
【0111】
これらの賦形剤は、例えば、(1) 炭酸カルシウム、ラクトース、リン酸カルシウム、またはリン酸ナトリウムなどの、不活性希釈剤; (2) トウモロコシデンプンまたはアルギン酸などの、顆粒剤および崩壊剤; (3) デンプン、ゼラチン、またはアカシアなどの、結合剤; ならびに(4) ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルクなどの、滑沢剤であってもよい。これらの錠剤はコーティングしなくてもよく、または公知の技術によりコーティングして、胃腸管での分解および吸収を遅らせ、それにより、さらに長い期間にわたって持続作用をもたらしてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリンなどの時間遅延材料が利用されてもよい。米国特許第4,256,108号; 同第4,160,452号; および同第4,265,874号に記述されている技術を利用し、コーティングを行って、制御放出用の浸透性治療錠剤を成形してもよい。
【0112】
上述の化合物および本発明の方法において有用な薬学的に活性な薬剤は、インビボにおける適用の場合、注射によりまたは経時的に漸次潅流により非経口的に独立してまたは一緒に投与することができる。投与は眼内、静脈内、動脈内、腹膜内、筋肉内、皮下、腔内、経皮、または例えば、浸透圧ポンプによる注入であってもよい。インビトロにおける研究の場合、その薬剤は、生物学的に許容される適切な緩衝液の中に添加されてもまたは溶解されてもよく、それから細胞または組織に添加されてもよい。
【0113】
非経口投与用の調製物は無菌の水溶液または非水溶液、懸濁液、および乳濁液を含む。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機酸エステルである。水性担体は生理食塩水および緩衝化媒体を含む、水、アルコール/水溶液、乳濁液、または懸濁液を含む。非経口媒質は塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース、および塩化ナトリウムを含み、乳酸加リンゲル静脈内媒質は液状栄養補給剤、電解質補充剤(例えばリンゲルデキストロースに基づくもの)などを含む。例えば、抗菌剤、抗酸化剤、遮蔽剤(attenuating agents)、増殖因子、および不活性ガスなどの、保存料およびその他の添加物が存在していてもよい。
【0114】
本発明は疾患を改善するのに有用な種々の薬学的製剤を含む。本発明の一つの態様による薬学的製剤は、上述の化合物、その類似体、誘導体、もしくは塩、または上述の化合物と、一つもしくは複数の薬学的に活性な薬剤との組み合わせを担体、賦形剤、および添加剤または助剤を用いて被験体への投与に適した形にすることにより調製される。多くの場合に使われる担体または助剤は、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、ラクトース、マンニトール、およびその他の糖類、タルク、乳タンパク質、ゼラチン、デンプン、ビタミン、セルロース、およびその誘導体、動物油および植物油、ポリエチレングリコール、ならびに無菌水、アルコール、グリセロール、および多価アルコールなどの溶媒を含む。静脈内媒質は液状栄養補給剤を含む。保存料は抗菌剤、抗酸化剤、遮蔽剤、および不活性ガスを含む。その他の薬学的に許容される担体は、例えば、その内容が参照により本明細書に組み入れられるRemingtonのPharmaceutical Sciences、第20版、Williams and Wilkins (2000)およびThe British National Formulary 第43版 (British Medical Association and Royal Pharmaceutical Society of Great Britain, 2002; http://bnf.rhn.net)に記述されている通り、水溶液、毒性のない賦形剤、例えば、塩、保存料、緩衝液などを含む。薬学的製剤の各種成分のpHおよび的確な濃度は、当技術分野における日常的な技術により調整される。Goodman and GilmanのThe Pharmacological Basis for Therapeutics (第7版、1985)を参照されたい。
【0115】
薬学的製剤は、用量単位で調製され投与されることが好ましい。固体の用量単位は錠剤、カプセル剤、および坐剤とすることができる。被験体の処置の場合、化合物の活性、投与方法、障害の性質および重症度、被験体の年齢および体重に応じて、異なる日用量が使われてもよい。しかしながら、特定の状況下では、より高いまたはより低い日用量が適することがある。日用量の投与は、個々の用量単位あるいはいくつかの少用量単位の形での単回投与によっても、および同様に、細分化された用量を特定の間隔を置いて複数回投与することによっても行うことができる。
【0116】
本発明による薬学的製剤は、治療的に有効な用量で局所にまたは全身に投与してもよい。この用途に有効な量は、もちろん、疾患の重症度ならびに被験体の体重および一般的症状に依存すると考えられる。通常、インビトロにおいて使用される投与量は、薬学的組成物のインサイチュー投与に有用な量の有益なガイドとなることがあり、動物モデルを用いて、細胞毒性副作用の処置に有効な投与量を判断することができる。様々な検討材料が、例えば、Langer, Science, 249:1527, 1990に記述されている。
【0117】
経口用の製剤は、活性成分が、不活性な固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはカオリンと混合されている硬ゼラチンカプセルの形とすることができる。それらは、活性成分が水または油性媒体、例えば、ピーナッツ油、液体パラフィン、もしくはオリーブ油と混合されている軟ゼラチンカプセルの形であってもよい。
【0118】
水性懸濁液は通常、活性物質を水性懸濁液の製造に適した賦形剤との混合物として含む。このような賦形剤は(1) カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、およびアカシアゴムなどの懸濁剤; (2) (a) レシチンなどの天然に存在するリン脂質; (b) 脂肪酸、例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレンとアルキレンオキシドとの縮合生成物; (c) 長鎖脂肪族アルコール、例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノールとエチレンオキシドとの縮合生成物; (d) モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトールなどの脂肪酸およびヘキシトールに由来する部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、または(e) 脂肪酸およびヘキシトール無水物に由来する部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンでありうる分散剤または湿潤剤であってもよい。
【0119】
薬学的製剤は、無菌の注射可能な水性または油脂性の懸濁液の形であってもよい。この懸濁液はその適切な分散剤または湿潤剤および上で述べた懸濁剤を用いて公知の方法により製剤化することができる。無菌の注射可能な調製物は同様に、毒性のない非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の無菌の注射可能な溶液または懸濁液、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液などであってもよい。利用できる許容される媒質および溶媒の中には、水、リンゲル溶液、および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、無菌の不揮発性油は従来どおり、溶媒または懸濁媒体として利用される。このために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む、任意の無菌性の不揮発性油が使われてもよい。さらに、オレイン酸などの脂肪酸には注射物質の調製における用途が見つかる。
【0120】
上述の化合物は同様に、小さな単層媒質、大きな単層媒質、および多重層媒質などの、リポソーム送達系の形で投与されてもよい。リポソームはコレステロール、ステアリルアミン、またはホスファチジルコリンなどの、種々のリン脂質から形成することができる。
【0121】
上述の化合物は同様に、例えば、当技術分野において慣用される方法によって、調製されうる動物用製剤の形で用いるために提供されてもよい。このような動物用製剤の例としては、以下に適合するものが挙げられる:
(a) 経口投与、外用、例えば水薬(例えば、水性または非水性の溶液または懸濁液); 錠剤または丸薬; 飼料との混合用の粉末、顆粒、またはペレット; 舌への適用向けのペースト;
(b) 例えば、無菌の溶液もしくは懸濁液としての、例えば皮下、筋肉内、もしくは静脈内注射による非経口投与; または(適切な場合)懸濁液もしくは溶液が乳頭を介して乳房に導入される乳房内注射による非経口投与;
(c) 例えば、皮膚に適用されるクリーム、軟膏、もしくはスプレーとしての、局所適用; あるいは
(d) 例えば、腟坐薬、クリーム、もしくは泡状物質としての、経膣的投与。
【0122】
以下の非限定的な実施例により本発明をさらに記述する。
【0123】
実施例1
化合物の評価
以下のアッセイ法を、本発明の方法で用いる適正があるか化合物を評価するのに使用した。
【0124】
アッセイ1. 神経毒性アッセイ法
皮質神経細胞の初代培養
皮質培養物を既報(White et al., J Neuroscience 18:6207-6217, 1998)のように調製した。胚齢14日のBL6Jx129sv系マウスの皮質を摘出し、髄膜を含まないように切り裂き、0.025% (wt/vol)のトリプシン中で解離させた。解離した細胞を25% (vol/vol) FCSおよび5% (vol/vol) HS入りのMEM中2×106細胞/mLの密度で48ウェル培養プレート中に播種し、37℃で2時間インキュベートした。次いで、培地を神経細胞培養用基礎培地(Invitrogen Life Technologies)およびB27培地添加物(Invitrogen Life Technologies)と交換した。培養物を5% CO2中37℃で維持した。実験の前に、培地を抗酸化剤不含の神経細胞培養用基礎培地およびB27 (Invitrogen Life Technologies)と交換した。
【0125】
(a) 細胞生存能力についてのMTSアッセイ法
MTSアッセイ法を利用して、細胞の生存能力を判定する。培地を抗酸化剤不含のB27培地添加物入り新鮮神経細胞培養用基礎培地と交換する。1/10容量のMTS溶液(Cell Titre 96 Aqueous One, Promega Corporation)を添加し、37℃で2時間インキュベートする。分光光度計を用い、560 nmで200マイクロリットルの一定分量を測定する。
【0126】
(b) 試験化合物の細胞毒性についてのアッセイ法
神経皮質細胞をNB培地およびB27培地添加物の中でアッセイ2のように5日間培養した。
【0127】
6日目に試験化合物を抗酸化剤不含のNB培地およびB27培地添加物中の神経細胞培養物に添加した。
【0128】
試験化合物を100% DMSOに溶解して、2.5 mMの濃度にした(1バイアルにつき過剰の化合物が秤量された場合には10 mM、その後2.5 mMに希釈)。2.5 mMの原液を10分の1に連続的に希釈して、250μM、25μM、2.5μMの希釈標準溶液を得た。試験化合物を細胞に直接的には添加せず、その代わりに以下を含む48ウェル「薬物プレート」にそれらを添加した。
【0129】
「薬物プレート」の調製:
48ウェルプレートに以下を添加した。
ウェル1: NB+B27(抗酸化剤なし) 576μl + 2.5μM試験化合物 24μl
ウェル2: NB+B27(抗酸化剤なし) 576μl + 25μM試験化合物 24μl
ウェル3: NB+B27(抗酸化剤なし) 576μl + 250μM試験化合物 24μl
ウェル4: NB+B27(抗酸化剤なし) 576μl + 2.5μM試験化合物 24μl
ウェル5: NB+B27(抗酸化剤なし) 576μl + 25μM試験化合物 24μl
ウェル6: NB+B27(抗酸化剤なし) 576μl + 250μM試験化合物 24μl
ウェル7: NB+B27(抗酸化剤なし) 576μl + 試験化合物希釈液** 24μl
ウェル8: NB+B27(抗酸化剤なし) 600μl
この薬物プレートを37℃で15分間インキュベートした。各ウェルの200μlを対応する細胞プレートに三つ組で添加した。細胞プレートを37℃で4日間インキュベートした。
NB培地+B27(抗酸化剤なし)
**PBT希釈液 NB+B27(抗酸化剤なし)中10%のDMSO
【0130】
アッセイの完了時に、1/10容量のMTSをプレート1ウェルにつき添加した(すなわち、25μl/250μl)。プレートを37℃で2時間インキュベートし、その後、吸光度を560 nmで読み取った。
【0131】
アッセイ2. 溶解性アッセイ法
試験化合物の原液(1 mM)をジメチルスルホキシド中で調製した。溶解しなかった化合物を不溶性(N)と分類した。DMSO原液をPBS pH 7.4の中で100分の1に希釈した。清澄な溶液を生じた化合物を溶解性(Y)と分類し、その一方で、DMSO中での溶解後に半透明の懸濁液を生じた化合物を「クラッシュアウト(crashed out)」(C)と分類した。
【0132】
アッセイ3. 生理化学的特性
極性表面積(PSA)の計算
極性表面積値は、分子特性の計算用のパッケージ「モルインスピレーション(Molinspiration)」を通して利用可能なウェブベースのプログラムを用いて計算した。
【0133】
濁度溶解度測定
溶解性の概算はpH 2.0とpH 6.5の両方で測定した。これはヒトの近位胃腸管に沿って予測できるpH範囲内である。
【0134】
化合物を適切な濃度にまでDMSOに溶解し、その後0.01 M HCl (およそpH = 2.0)またはpH 6.5の等張性リン酸緩衝液のいずれかに添加(spike)し、DMSO終濃度を1%にした。次に、試料を比濁法により分析して、溶解範囲を測定した(Bevan and Lloyd, Anal. Chem. 72:1781-1787, 2000)。
【0135】
cLog P値
ACD Log Pソフトウェアを用いて理論的なLog P値を決定した。引用の値は未成熟なデータベースから計算されており、イオン化されていない種を表す。
【0136】
E Log D
pH 7.4のオクタノール飽和移動相を用いたSUPELCOSIL LC-ABZカラムを利用してクロマトグラフィー法により有効Log D値を測定した。F. Lombardo et al, J. Med. Chem. 2000, 43, 2922-2928を参照されたい。
【0137】
アッセイ4. 血液脳関門の透過
試験した各化合物は健常なBBBを横切る透過性を示す。
【0138】
試験化合物(40%プロピレングリコールおよび10%エタノールを含有する3 mg/mLの水溶液50μL)のそれぞれのボーラス注入を尾静脈注入により雄性Swiss Outbredマウス(5〜7週齢)に施した。
【0139】
投薬後5分および60分の時点(各時点でマウスn=3)で、心穿刺によって血液を回収し、頭蓋後部の切開によって脳全体を取り出した。血液および脳摘出のおよそ3〜4分前にケタミンおよびキシラジン(それぞれ、133 mg/kgおよび10 mg/kg)の腹腔内注入によってマウスを麻酔した。
【0140】
事前に秤量したポリプロピレンバイアルの中に脳全体を入れ、分析まで-20℃で貯蔵した。分析の当日に、脳全体を3部の水の中で(エクスビボでの脳分解の可能性を減らすため氷上にて)ホモジナイズし、脳ホモジネートおよび血漿の一定分量をLCMSにより化合物の濃度について分析した。ブランクの脳ホモジネートを添加(spike)することによってスタンダードを調製し、アセトニトリルを組織ホモジネートに添加し、遠心分離し、上清の一定分量をLCMSに注入することによって試料もスタンダードも共に処理した。
【0141】
脳からの化合物の完全な回収を確実とするために、規準の濃度500 ng/mLにまで脳ホモジネートに化合物(50%のアセトニトリル:50%の水中の)を添加(spike)した。その後、上清中の化合物の濃度をLCMSにより測定し、アセトニトリルでの沈殿の後に化合物を添加した場合の上清濃度と比較した。
【0142】
計算

C = 脳実質中の化合物の濃度(ng/g)
C脳ホモジネート = 脳ホモジネート中の化合物の濃度(ng/g)
C脳血管系 = 脳血管系中の化合物の濃度(ng/g)
C血漿 = 血漿中の化合物の濃度(ng/mL)
Vp = 脳血漿量(雄性Swiss Outbredマウスの場合26μL/g)
B:P = 脳対血漿比
P見掛け = 血液脳関門を透過する化合物の見掛け上の透過係数

(この時間内に脳から血漿への逆拡散はないと仮定すれば、投薬5分後の血漿中濃度に等しい)
A = 血液脳関門を形成する毛細血管の表面積(マウスの場合240 cm2/g脳重量)
【0143】
規準の用量5 mg/kgで雄性Swiss OutbredマウスにIV投与後の化合物の脳および血漿中濃度を図1に示す。試験した各化合物は健常なBBBを横切る透過性のレベルを示す。
【0144】
実施例2
化合物の特性
以下の表は本発明の化合物の特性および構造を提供する。









































a - 濃度1μMおよび10μMの試験化合物の存在下における初代皮質神経培養細胞(神経細胞)またはM17ヒト神経芽腫細胞(M17細胞)の生存能力。
b - 目視観測
c - 一つまたは二つの時点(30分〜4時間の間)での血漿中の化合物の存在の確認。規準の用量5 mg/kgで雄性Swiss OutbredマウスにIV投与した後の試験化合物の脳への取り込み。結果は投薬後5分および60分での脳:血漿比として表す。
【0145】
実施例3
インビトロおよびインビボにおける有効性についての化合物の試験
12種の化合物をインビトロにおける有効性についてスクリーニングし、4種をインビボにおける有効性について試験した。
【0146】
乳濁液担体をインビトロおよびインビボにおける試験系の対照として使用した。3種の神経膠腫細胞株および対照の細胞株を用い全ての化合物をインビトロにおける試験により最初に試験して、有効性プロファイルを測定した。この結果を図2〜5に示す。
【0147】
実験計画
インビトロにおける有効性のプロトコル
被験物質のインビトロにおける有効性をMTT細胞生存アッセイ法によって分析した。
【0148】
以下の細胞株を用いて、被験物質に暴露されたときの細胞の生存能力を測定した: C6 - ラット神経膠腫細胞株(図1)、VMDK - マウス神経膠腫細胞株(図3)、U87MG - ヒト神経膠腫細胞株(図2)、3T3 - 対照の細胞株(図4)。
【0149】
細胞を細胞培地100μlと共に96ウェルプレートの中に入れ、24時間にわたり接着させて、およそ50%の集密度を可能とした。24時間の時点で、細胞培地を、化合物または担体乳濁液を含有する新鮮な細胞培地と交換した。
【0150】
その後、細胞を指定の時間(72時間)インキュベートし増殖し、その後にMTT溶液をウェルに加え、37℃で1〜2時間インキュベートした。各ウェルの吸光度を570 nmでプレートリーダにより測定する。実験の間に化合物の非存在下でインキュベートした細胞に関連して、有効性プロファイルを計算した。
【0151】
インビボにおける有効性のプロトコル
最大耐用量および最大耐用量未満の一レベルで、2用量を使用した。
【0152】
三つのマウスモデルを使用する。
・ C6 - 異種移植マウスモデル(神経膠腫モデル)
・ SMA560 - VMDKマウスモデル(神経膠腫モデル)
・ U87MG - ヌードマウスモデル
【0153】
C6 - CBA異種移植モデル(ATCC番号: CCL-107)
このモデルを用いて4種の化合物をスクリーニングする。
【0154】
SMA560 - VMDKマウスモデル(ATCC番号: CCL-163)
このモデルを用いて、C6異種移植モデルにより先にスクリーニングした4種の化合物をスクリーニングする。
【0155】
U87MGヌードマウスモデル(ATCC番号: CRL-9589)
このモデルを用いて2種の化合物をスクリーニングする。
【0156】
最初に、CBAマウスを用いてC6神経膠腫細胞の頭蓋内接種を受けさせる。手短に言えば、細胞1×106個を標準的な方法により脳左半球に接種する。C6細胞接種後5日目に、マウスに担体乳濁液中の被験物質または対照として担体乳濁液のみの連日腹腔内(ip)投与を12日目まで8日間受けさせる。14日目に、CO2吸入によりマウスを安楽死させ、組織学的処理のために脳を取り出す。
【0157】
次にVMDKマウス系統を用いて、CBAマウスのC6異種移植モデルのように同一の被験物質および担体乳濁液をスクリーニングする。VMDKマウスに標準的な方法により脳左半球へのSMA560細胞1×105個の接種を受けさせた。SMA560細胞接種後5日目に、マウスに担体乳濁液中の薬剤または対照として担体乳濁液のみの連日ip投与を16日目まで12日間受けさせる。C6異種移植モデルにおいて使用したのと同じ用量の被験物質および担体乳濁液をSMA560モデルで使用する。18日目に、CO2吸入によりマウスを安楽死させ、組織学的処理のために脳を取り出す。
【0158】
U87MGヒト神経膠腫細胞株を利用したヌードマウスモデルを用いて、薬剤をスクリーニングする。ヌードマウスNu/nu系統に脳左半球へのU87MG細胞1×106個の接種を受けさせる。U87MG細胞接種後5日目に、マウスに薬剤または対照として担体乳濁液のみの連日ip投与を16日目まで12日間受けさせる。18日目に、CO2吸入によりマウスを安楽死させ、組織学的処理のために脳を取り出す。
【0159】
対照マウスと比べて腫瘍増殖に及ぼす試験化合物の有効性を判定するために、ヘマトキシリンおよびエオシン染色した切片を用いて腫瘍の寸法を測定する。
【0160】
化合物A、B、S、およびHの効果の結果を図6a〜dに示す。
【0161】
グラフを次のようにまとめることができる。
Y-軸は腫瘍領域を画素数で指す。
グラフ棒中の数字は各群におけるマウスの合計を指す(ごく初期に死んでいると分かったマウスまたは他のマウスによって頭部がかみ砕かれていたために脳をサンプリングできなかったマウスは含まれなかった)。
星印の付いた数字は、マウスが病気であるため1日もしくは2日早く選別され得たかまたは死んでいると分かり得た群を指す。これらは、その腫瘍がかなり大きかったことや、それらが最終選別点の寸前で選別されたので、最終の計算の中に含まれた。
【0162】
実施例4
化合物Bの臨床開発
単回用量の投与(ステージA)および複数回用量の投与(ステージB)を含む2部の試験において化合物Bを健常志願者に投与した。全体的に見て、化合物Bは若年男性志願者においておよび最大7日の処置まで高齢健常志願者において単回用量として一般に耐容性が良好であった。
【0163】
第I相試験の目的は健常志願者において化合物Bの単回および複数回経口用量の安全性、耐容性、および薬物動態を判定することであった。二重盲検試験をオランダの第I相試験施設で行った。このプロトコルには潜在的なヒト副作用をとらえるためにデザインされた安全策が含まれた。計65人の健常被験体を化合物Bのいくつかの用量に暴露した(単回用量41人、複数回用量24人)。
【0164】
被験体の配置 - ステージAおよびB

【0165】
安全性および耐容性 ステージA - 単回用量
ステージAでは、年齢18〜50才の健常男性被験体55人に無作為化(3:1)を行って、プラセボまたは化合物Bのいずれかの単回経口用量を7用量レベル(25、50、100、200、300、500、または800 mg)のうちの1つで投与した。
【0166】
ステージAの分析から、化合物Bは、単回経口用量として投与された場合、年齢18〜50才の健常男性被験体において耐容性良好であることが示された。化合物B治療群(43.9%)とプラセボ治療群(42.9%)との間で有害事象の発生率に違いは認められなかった。
【0167】
安全性および耐容性 ステージB - 複数回用量
ステージBでは、年齢45〜75才の健常男性および女性被験体32人(1用量レベルにつき被験体8人)に無作為化(3:1)を行って、プラセボまたは化合物Bのいずれかの7日間連続の連日経口用量を4用量レベル(200、400、600、または800 mg)のうちの1つで投与した。各用量レベルは男性4人および女性4人; 被験体1人/性別にプラセボを投与し、被験体3人/性別に化合物Bを投与したことを確実にする無作為化スケジュールで構成された。
【0168】
ステージBの分析から、化合物Bは健常高齢被験体において一般に耐容性良好であったことが示唆される。
【0169】
先行技術の刊行物が本明細書において参照される場合、このような参照は、この刊行物がオーストラリアまたはその他任意の国において当技術分野における共通の一般知識の一部を形成することを認めるものではないことが理解されるべきである。
【0170】
後に続く特許請求の範囲においておよび本発明の前述の説明において、言語または必要な含意を表現する目的で文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含む(comprise)」という用語または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変化形は、包括的な意味で使われており、すなわち、記述した特徴の存在を明記するために使われるが、本発明の種々の態様におけるさらなる特徴の存在または追加を除外するために使われるものではない。
【0171】
本明細書において記述される本発明は、具体的に記述されるもの以外の変形および変更を許容することを当業者は理解すると考えられる。本発明はそのような全ての変形および変更を含むものと理解されるべきである。本発明は同様に、本明細書において言及または表示される段階、特徴、組成物、および化合物の全てを個別的にまたは集合的に含み、その段階または特徴のいずれかの二つまたはそれ以上のありとあらゆる組み合わせを含む。
【0172】
参考文献

【図1−1】

【図1−2】

【図1−3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1位に窒素および8位にヒドロキシを持つ二融合6員環を有する化合物を含む薬剤またはこのような薬剤を含む製剤の有効量を、その必要がある被験体に投与する段階を含む、神経膠腫脳腫瘍の処置、改善、および/または予防のための方法。
【請求項2】
有効量が特定の投与量である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
特定の投与量が、一被験体あたり約200〜約800 mgである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
特定の投与量が、一被験体あたり約500 mgである、請求項3記載の方法。
【請求項5】
神経膠腫脳腫瘍が、星状細胞腫、多形神経膠芽腫(GBM)、退形成星状細胞腫、混合膠腫、および乏突起膠腫より選択される、請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
神経膠腫が星状細胞腫である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
神経膠腫がGBMである、請求項5記載の方法。
【請求項8】
神経膠腫が退形成星状細胞腫である、請求項5記載の方法。
【請求項9】
薬剤が、式(I)の化合物、その塩、水和物、溶媒和物、誘導体、プロドラッグ、互変異性体、および/または異性体を含む、請求項1〜8のいずれか一項記載の方法:

式中
R2が、
H; 置換されていてもよいC1〜6アルキル; 置換されていてもよいC2〜6アルケニル; 置換されていてもよいC2〜6アルキニル; 置換されていてもよいC3〜6シクロアルキル; 置換されていてもよいアリール; 置換されていてもよいヘテロシクリル; CN; R6が、H、置換されていてもよいC1〜6アルキル、置換されていてもよいC2〜6アルケニル、置換されていてもよいC2〜6アルキニル、置換されていてもよいC3〜6シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、もしくは置換されていてもよいヘテロシクリルである、OR6、SR6、COR6、CSR6、HCNOR6、またはHCNNR6; R8およびR9が、H、置換されていてもよいC1〜6アルキル、置換されていてもよいC2〜6アルケニル、置換されていてもよいC2〜6アルキニル、置換されていてもよいC3〜6シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、および置換されていてもよいヘテロシクリルより独立して選択される、NR8R9またはSO2NR8R9; R9が上記に定義の通りであり、R10が、置換されていてもよいC1〜6アルキル、置換されていてもよいC2〜6アルケニル、置換されていてもよいC2〜6アルキニル、置換されていてもよいC3〜6シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロシクリルである、CONR9R10; R8およびR9が上記に定義の通りである、CH2CONR8R9; ならびにR9が上記に定義の通りであり、R11が、置換されていてもよいC1〜6アルキル、置換されていてもよいC2〜6アルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいC3〜6シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロシクリル、およびSO2R12より選択され、SO2R12中のR12が、置換されていてもよいC1〜6アルキル、置換されていてもよいC2〜6アルケニル、置換されていてもよいC2〜6アルキニル、置換されていてもよいC3〜6シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロシクリルであり、nが1〜6である、(CH2)NR9R11
であり;
R3が、
H、置換されていてもよいC1〜6アルキル、置換されていてもよいC2〜6アルケニル、置換されていてもよいC2〜6アルキニル、置換されていてもよいC3〜6シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロシクリル; 置換されていてもよいC1〜6アルコキシ、置換されていてもよいアシル、ヒドロキシ、置換されていてもよいアミノ、置換されていてもよいチオ、置換されていてもよいスルホニル、置換されていてもよいスルフィニル、置換されていてもよいスルホニルアミノ、ハロ、SO3H、アミン、CN、CF3、およびハロ
より独立して選択され;
XがCHまたはNであり;
YがCH、CO、CS、またはNであり; かつ
qが1、2、または3である。
【請求項10】
式(I)の化合物が式(I')を有する、請求項9記載の方法:

式中
R2が、
H; 置換されていてもよいC1〜6アルキル; 置換されていてもよいC2〜6アルケニル; 置換されていてもよいC2〜6アルキニル; 置換されていてもよいC3〜6シクロアルキル; 置換されていてもよいアリール; 置換されていてもよいヘテロシクリル; CN; R6が、H、置換されていてもよいC1〜6アルキル、置換されていてもよいC2〜6アルケニル、置換されていてもよいC2〜6アルキニル、置換されていてもよいC3〜6シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、もしくは置換されていてもよいヘテロシクリルである、OR6、SR6、COR6、CSR6、HCNOR6、またはHCNNR6; R8およびR9が、H、置換されていてもよいC1〜6アルキル、置換されていてもよいC2〜6アルケニル、置換されていてもよいC2〜6アルキニル、置換されていてもよいC3〜6シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、および置換されていてもよいヘテロシクリルより独立して選択される、NR8R9またはSO2NR8R9; R9が上記に定義の通りであり、R10が、置換されていてもよいC1〜6アルキル、置換されていてもよいC2〜6アルケニル、置換されていてもよいC2〜6アルキニル、置換されていてもよいC3〜6シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロシクリルである、CONR9R10; R8およびR9が上記に定義の通りである、CH2CONR8R9; ならびにR9が上記に定義の通りであり、R11が、置換されていてもよいC1〜6アルキル、置換されていてもよいC2〜6アルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいC3〜6シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロシクリル、およびSO2R12より選択され、SO2R12中のR12が、置換されていてもよいC1〜6アルキル、置換されていてもよいC2〜6アルケニル、置換されていてもよいC2〜6アルキニル、置換されていてもよいC3〜6シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロシクリルであり、nが1〜6である、(CH2)NR9R11
であり;
R5およびR7が、H、置換されていてもよいC1〜6アルキル、およびハロより独立して選択され;
XがCHまたはNであり;
YがCH、CO、CS、またはNであり; かつ
qが1、2、または3である。
【請求項11】
式(I')の化合物が、式(IA)〜(IE)の化合物からなる群より選択される、請求項10記載の方法:


式中
R2、R5、R7、およびqが、請求項9に定義の通りであり、rが1または2である。
【請求項12】
式(I')の化合物が、以下の化合物A〜ZAからなる群より選択される、請求項10記載の方法:





【請求項13】
神経膠腫脳腫瘍の処置、改善、および/または予防に関する医用薬剤の製造のための、少なくとも1位に窒素および8位にヒドロキシルを持つ少なくとも二つの融合6員環を有する化合物を含む薬剤の使用。
【請求項14】
医用薬剤が特定の投与量である、請求項13記載の使用。
【請求項15】
特定の投与量が、一被験体あたり約200〜約800 mgである、請求項14記載の使用。
【請求項16】
特定の投与量が、一被験体あたり約500 mgである、請求項15記載の使用。
【請求項17】
神経膠腫脳腫瘍が、星状細胞腫、GBM、退形成星状細胞腫、混合膠腫、および乏突起膠腫より選択される、請求項13記載の使用。
【請求項18】
神経膠腫が星状細胞腫である、請求項17記載の使用。
【請求項19】
神経膠腫がGBMである、請求項17記載の使用。
【請求項20】
神経膠腫が退形成星状細胞腫である、請求項17記載の使用。
【請求項21】
薬剤が請求項9記載の式(I)の化合物を含む、請求項13〜20のいずれか一項記載の使用。
【請求項22】
式(I)の化合物が請求項10記載の式(I')を有する、請求項21記載の使用。
【請求項23】
式(I')の化合物が、請求項11記載の式(IA)〜(IE)の化合物からなる群より選択される、請求項22記載の使用。
【請求項24】
式(I)の化合物が、請求項12記載の化合物A〜ZAからなる群より選択される、請求項22記載の使用。
【請求項25】
神経膠腫脳腫瘍を処置する、改善する、および/または予防するための、少なくとも1位に窒素および8位にヒドロキシルを持つ二融合6員環を有する化合物を含む薬剤を含む製剤。
【請求項26】
神経膠腫脳腫瘍を処置する、改善する、および/または予防するための、請求項9記載の式(I)の化合物を含む薬剤を含む製剤。
【請求項27】
式(I)の化合物が請求項10記載の式(I')を有する、請求項26記載の製剤。
【請求項28】
式(I')の化合物が、請求項12記載の式(IA)〜(IE)の化合物からなる群より選択される、請求項27記載の製剤。
【請求項29】
式(I)の化合物が、請求項12記載の化合物A〜ZAからなる群より選択される、請求項27記載の製剤。
【請求項30】
別の活性薬剤をさらに含む、請求項25〜29のいずれか一項記載の製剤。
【請求項31】
さらなる活性薬剤が、化学療法化合物、サイトカイン、および麻酔薬より選択される、請求項30記載の製剤。
【請求項32】
化学療法化合物が、化学物質(chemical compound)、免疫学的化合物、天然産物、またはsRNAi複合体、または導入されたウイルスベクターの産物より選択される、請求項31記載の製剤。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【公表番号】特表2009−541223(P2009−541223A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515675(P2009−515675)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【国際出願番号】PCT/AU2007/000876
【国際公開番号】WO2007/147217
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(503004149)プラナ バイオテクノロジー リミティッド (9)
【Fターム(参考)】