説明

凸版印刷用感光性樹脂構成体

【課題】水溶性保護層に対して適度な剥離性と適度な密着性とを発揮するカバーフィルム、およびカバーフィルムと水溶性保護層との間に適度な剥離性と適度な密着性とを兼ね備え、廃棄時の環境負荷が少ない水系凸版印刷用感光性樹脂構成体を提供すること。
【解決手段】表面に樹脂層42を有し、該樹脂層が、酸変性成分1〜10質量%および(メタ)アクリル酸エステル成分0.5〜40質量%の酸変性ポリオレフィン樹脂、架橋剤およびポリビニルアルコールを含有し、架橋剤がカルボジイミド化合物および/またはオキサゾリン化合物にて構成され、酸変性ポリオレフィン樹脂100重量部に対する架橋剤の含有量が1〜30質量部であり、ポリビニルアルコールの含有量が5〜100質量部であるカバーフィルム4。ベースフィルム1、水溶性感光性樹脂組成物層2、水溶性保護層3、および上記カバーフィルム4の順に積層された構造を有する水系凸版印刷用感光性樹脂構成体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製版時において水系の現像液が使用される水系凸版印刷用感光性樹脂構成体、および該水系凸版印刷用感光性樹脂構成体の一部を構成し、製版時において剥離されるカバーフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明でいう凸版印刷用感光性樹脂構成体(以下、感光性樹脂構成体とも言う)とは、一般的にベースフィルム、感光性樹脂組成物層、保護層、カバーフィルムの順に積層された構造を有しているものである。このような感光性樹脂構成体のカバーフィルムを剥がして、ネガフィルムを介して感光性樹脂組成物層を感光させることによりレリーフが形成される。レリーフを得る方法(以下、製版という)としては、感光性樹脂組成物層表面の保護層にネガフィルムを密着させ、活性光を照射してネガフィルムにより選択的に露光を行った後、保護層および感光性樹脂組成物層の未露光部を現像液で除去してレリーフを形成する方法が一般的である。
【0003】
保護層は現像液で除去可能な薄い層で感光性樹脂組成物層の表面を被覆している。これは、以下の理由による。一般的に感光性樹脂組成物層の表面は粘着性を帯びていることが多いため、保護層を有しないと、ネガフィルムを直接、感光性樹脂組成物層に密着させることになり、剥離する際に粘着により剥離不良が生じ、版、ネガフィルム双方を損傷してしまう。保護層を有しないと、ネガフィルムとの密着時に気泡が入り込み、均一な密着が行えず、画像の再現性も悪くなる。
【0004】
通常は、ベースフィルムに感光性樹脂組成物層を塗布したものと、カバーフィルムに保護層を塗布したものを作成し、感光性樹脂組成物層と保護層とが隣同士になるように貼り合せて熱をかけてプレスし、凸版印刷用感光性樹脂構成体を作成する。製版時には、感光性樹脂構成体のカバーフィルムを剥がして、そこにネガフィルムを介して感光させる。
【0005】
感光性樹脂組成物を構成する感光性樹脂組成物としては、環境的な側面から、水系処理液(現像液)で現像可能な感光性樹脂組成物が主流となってきている。水系処理液で現像可能な感光性樹脂組成物を用いる場合、その保護層も水系処理液で現像可能とするために、一般に、水溶性のポリマー、例えばポリビニルアルコール、水溶性セルロース等を含有する保護層が用いられている。あるいは、保護層の吸湿を防ぐ目的で疎水性ポリマー微粒子を含有した水溶性樹脂層が保護層として用いられている。(特許文献1)
【0006】
カバーフィルムとしては、一般に、PETフィルムが多く用いられているが、前記水溶性保護層との剥離性が悪く、カバーフィルムに保護層の一部が付着した状態で剥離されてしまい、結果として、感光性樹脂組成物の表面に保護層がない部分が出現するため好ましくないという問題がある。
【0007】
カバーフィルムの剥離性を向上させる方法としては、フィルムにコーティングにより、シリコーン樹脂を積層する方法(特許文献2〜3)、フッ素含有樹脂を積層する方法(特許文献4)が一般的である。しかし、フッ素含有樹脂やシリコーン樹脂をコーティングしたフィルムは剥離力が高すぎて、感光性樹脂構成体を作成する工程で、密着性が乏しくなり、工程の途中ではがれてしまう問題があった。さらに、シリコーン樹脂を積層する方法では、シリコーンが保護層に付着し、結果としてネガを汚染するという問題があった。また、フッ素化合物は環境問題で採用しにくいため、適度な剥離性と適度な密着性を併せ持ち、ネガフィルム汚染のない、環境面でも優れたカバーフィルムがなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−160884号公報
【特許文献2】特開平7−196984号公報
【特許文献3】特開2005−125656号公報
【特許文献4】特開2004−114620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、水溶性保護層に対して適度な剥離性と適度な密着性とを発揮するカバーフィルムを提供することを目的とする。
【0010】
本発明はまた、カバーフィルムと水溶性保護層との間に適度な剥離性と適度な密着性とを兼ね備え、廃棄時の環境負荷が少ない水系凸版印刷用感光性樹脂構成体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、水系凸版印刷用感光性樹脂構成体の一部を構成し、製版時において剥離されるカバーフィルムであって、
表面に樹脂層を有し、該樹脂層が、酸変性成分1〜10質量%および(メタ)アクリル酸エステル成分0.5〜40質量%の酸変性ポリオレフィン樹脂、架橋剤およびポリビニルアルコールを含有し、架橋剤がカルボジイミド化合物および/またはオキサゾリン化合物にて構成され、
酸変性ポリオレフィン樹脂100重量部に対する架橋剤の含有量が1〜30質量部であり、ポリビニルアルコールの含有量が5〜100質量部であることを特徴とするカバーフィルムに関する。
【0012】
本発明はまた、ベースフィルム、水溶性感光性樹脂組成物層、水溶性保護層、および上記カバーフィルムの順に積層された構造を有し、カバーフィルムは前記樹脂層が保護層と隣接するように積層されたことを特徴とする水系凸版印刷用感光性樹脂構成体に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のカバーフィルムは、水溶性保護層に対して適度な剥離性と適度な密着性とを発揮する。
本発明の水系凸版印刷用感光性樹脂構成体は、カバーフィルムと水溶性保護層との間に適度な剥離性と適度な密着性とを兼ね備えている。そのため、製造時において、水溶性保護層からカバーフィルムが剥がれることがない。また製版時において、剥離工程で、水溶性保護層にカバーフィルムの一部が付着したり、カバーフィルムに水溶性保護層の一部が付着したりすることなく、カバーフィルムを剥離できるため、感光時のトラブルがない。しかもカバーフィルムに所望の剥離性を発現させるにあたって、シリコーン化合物、フッ素化合物、ワックス類および界面活性剤などの離型剤を必要としない。このため、離型剤の保護層への付着によるネガフィルムの汚染がない。しかも、フッ素などハロゲン元素を含む離型剤を用いなくて済むので、廃棄時の環境への負荷が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る水系感光性樹脂構成体の構造を示す断面模式図である。
【図2】(A)〜(C)は本発明に係る水系感光性樹脂構成体を用いた製版方法を説明するための断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[感光性樹脂構成体]
本発明に係る水系凸版印刷用感光性樹脂構成体(以下、感光性樹脂構成体とも言う)は、ベースフィルム、水溶性感光性樹脂組成物層、水溶性保護層、およびカバーフィルムの順に積層された構造を有している。そのような構造を示す断面模式図の一例を図1に示す。図1において、1はベースフィルム、2は水溶性感光性樹脂組成物層、3は水溶性保護層、4はカバーフィルムを示すものとする。
【0016】
(カバーフィルム)
カバーフィルム4は水系感光性樹脂構成体の一部を構成し、製版時において剥離されるものである。カバーフィルムは表面に所定の樹脂層を有し、感光性樹脂構成体において当該樹脂層が保護層と隣接するように積層される。
【0017】
カバーフィルム4は通常、支持フィルム41上に樹脂層42が設けられてなり、支持フィルム41と樹脂層42との間に接着層(図示せず)を有していてもよい。以下、カバーフィルムを構成する支持フィルムを支持フィルム(A)、カバーフィルム表面に形成される所定の樹脂層42を樹脂層(B)と表現するものとする。
【0018】
支持フィルム(A)41に用いることができる樹脂材料としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、6−ナイロン、ポリ−m−キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)等のポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリルニトリル樹脂、ポリイミド樹脂、これらの樹脂の複層体(例えば、ナイロン6/MXD/ナイロン6、ナイロン6/エチレン−ビニルアルコール共重合体/ナイロン6)や混合体等が挙げられる。支持フィルムは延伸処理されていてもよい。支持フィルムは、公知の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、可塑剤、滑剤、酸化防止剤などを含んでいてもよい。支持フィルムは、樹脂層(B)と積層する場合の密着性を良くするために、表面に前処理としてコロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、薬品処理、溶剤処理等を施したものでもよい。中でも、寸法安定性、耐熱性、機械的性能に優れ、かつ、樹脂層(B)との接着性に優れたポリステルフィルムが好ましい。ポリエステルフィルムの具体例として、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレート、ポリ乳酸やこれらの共重合体からなるフィルムが挙げられる。中でも、コストと性能からポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。寸法安定性を考えると少なくとも一方向に延伸したフィルムが好ましく、さらに好ましくは二軸延伸フィルムである。
【0019】
支持フィルム(A)の厚みは通常、75〜250μmであり、さらに好ましくは100〜200μm、最も好ましくは100〜150μmである。支持フィルム(A)の厚みは、ベースフィルム1の厚み(μm)から支持フィルム(A)の厚み(μm)を減じた値が0〜100μmとなるような値であることが好ましい。そのような厚みの差が100μmを超えると感光性樹脂構成体を製造する工程で構成体がそるため好ましくない。一方、ベースフィルムの厚みが支持フィルム(A)の厚みより薄いと剥離しにくいため、好ましくない。
【0020】
支持フィルム(A)における樹脂層(B)形成側の面は、中心面平均粗さ(Sa)が解像度の向上の観点から、0.01〜0.3であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.1である。Saが0.01未満では、カバーフィルムと保護層が密着して剥離性が劣る場合があり、このましくない。Saが0.3を超えると、支持フィルムの表面粗さが積層される保護層に転写され、支持フィルムが剥離された後の感光工程で光が保護層の突起により光が散乱されて、結果として得られる画像再現の解像度が低下するため、好ましくない。
【0021】
樹脂層(B)42は、少なくとも酸変性ポリオレフィン樹脂、架橋剤およびポリビニルアルコールを含有する。
樹脂層(B)に含まれる酸変性ポリオレフィン樹脂は、その酸変性成分の含有量が酸変性ポリオレフィン樹脂の1〜10質量%であることが必要で、1〜7質量%が好ましく、2〜5質量%がより好ましく、2〜3質量%が特に好ましい。酸変性成分の量が少なすぎる場合は、支持フィルム(A)との十分な接着性が得られないことがあり、保護層を汚染する可能性がある。さらに、この酸変性ポリオレフィン樹脂を水性分散化するのが困難になる傾向がある。一方、酸変性成分の量が多すぎる場合は、保護層との剥離性が低下する傾向がある。
【0022】
酸変性成分としては、不飽和カルボン酸成分があげられる。不飽和カルボン酸成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等が挙げられる。中でも、樹脂の分散安定性の面から、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸が特に好ましい。
【0023】
酸変性ポリオレフィン樹脂の主成分であるオレフィン成分は、特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、2−ブテン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の炭素数2〜6のアルケンが好ましい。これらの混合物であってもよい。この中で、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン等の炭素数2〜4のアルケンがより好ましく、エチレン、プロピレンがさらに好ましく、エチレンが最も好ましい。
【0024】
酸変性ポリオレフィン樹脂は、支持フィルム(A)、特にポリエステルフィルムとの接着性や保護層との接着性を向上させる理由から、(メタ)アクリル酸エステル成分を含有している必要がある。(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量は酸変性ポリオレフィン樹脂の0.5〜40質量%であり、支持フィルム(A)との良好な接着性を持たせるために、この範囲は1〜20質量%であることがより好ましく、3〜10質量%であることがさらに好ましい。(メタ)アクリル酸エステル成分としては、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜30のアルコールとのエステル化物が挙げられ、中でも入手のし易さの点から、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルコールとのエステル化物が好ましい。そのような化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらの混合物を用いてもよい。この中で、支持フィルム(A)との接着性の点から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチルがより好ましく、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルがさらに好ましく、アクリル酸エチルが特に好ましい。「(メタ)アクリル酸〜」とは、「アクリル酸〜またはメタクリル酸〜」を意味する。
【0025】
酸変性ポリオレフィンを構成する各成分は、酸変性ポリオレフィン樹脂中に共重合されていればよく、その形態は限定されない。共重合の状態としては、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)などが挙げられる。
【0026】
酸変性ポリオレフィン樹脂の組成および各成分の含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂の合成時において仕込量を調整することによって制御でき、また酸変性ポリオレフィン樹脂をH−NMR分析に供して、各成分特有のピークを観察することによって知見できる。
各成分の含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂を構成する全成分に対する当該成分の割合である。
【0027】
酸変性ポリオレフィン樹脂の融点は、60〜150℃、特に80〜150℃であることが好ましく、85〜130℃がより好ましく、90〜115℃がさらに好ましい。150℃を超えると樹脂層の形成に高温での処理が必要となり、60℃未満では剥離性が著しく低下する。
【0028】
酸変性ポリオレフィン樹脂のビカット軟化点は、30〜130℃、特に50〜130℃であることが好ましく、53〜110℃がより好ましく、55〜90℃がより好ましい。ビカット軟化点が30℃未満の場合は剥離性が低下し、130℃を超える場合は樹脂層の形成に高温での処理が必要となる。
【0029】
酸変性ポリオレフィン樹脂のメルトフローレートは、190℃、2160g荷重において1〜1000g/10分であることが好ましく、1〜500g/10分であることがより好ましく、2〜300g/10分であることがさらに好ましく、2〜200g/10分であることが特に好ましい。1g/10分未満のものは、樹脂の製造が困難なうえ、水性分散体とするのが困難である。1000g/10分を超えるものは、樹脂層(B)の支持フィルム(A)との接着性が低下して、保護層への樹脂層の移行が起こりやすくなる。
【0030】
本発明に用いることができる酸変性ポリオレフィン樹脂の商品名としては、アルケマ社製の無水マレイン酸ポリオレフィン樹脂であるボンダインシリーズが挙げられる。具体的な商品名として、「LX−4110」、「HX−8210」、「HX−8290」、「AX−8390」などがある。
【0031】
樹脂層(B)は、架橋剤およびポリビニルアルコールを含有する。これらの化合物が、樹脂層(B)にどのように働いて、結果として優れた剥離性および密着性を奏するのかは明らかではないが、酸変性ポリオレフィン樹脂と架橋剤とポリビニルアルコールを組み合わせることにより、樹脂層(B)が奏する高温での易接着性を適度に軽減して、温度依存性の少ない安定した剥離性を発揮させ、経時でも安定した適度な剥離性と適度な密着性とを発現することができる。また、保護層の種類や、用途によって剥離性のレベルを変えたい場合も対応することができる。架橋剤またはポリビニルアルコールの一方が含有されない場合は安定した、良好な剥離性と密着性を兼ね備えることはできない。架橋剤のみで、ポリビニルアルコールが配合されなければ、剥離性の温度依存性が高くなり、経時によって変化したり、高温処理によって、剥離しにくくなったりして好ましくない。また、ポリビニルアルコールのみで、架橋剤が配合されない場合は、樹脂層Bのコート液の液安定性が悪くなり、結果としてコート斑が生じて密着性が悪化する場合があり好ましくない。
【0032】
架橋剤は、カルボジイミド化合物および/またはオキサゾリン化合物である。カルボジイミド化合物およびオキサゾリン化合物のうち一方が含有されてもよいし、または両方が含有されてもよい。混合安定性および保存安定性の点で、より好ましいのはオキサゾリン化合物である。架橋剤は樹脂層(B)中、酸変性ポリオレフィン樹脂を架橋することによって、酸変性ポリオレフィン樹脂が奏する剥離性を適度に軽減して発揮させると同時に、自身が奏する密着性を発揮する。カルボジイミド化合物およびオキサゾリン化合物が含有されない場合、たとえ他の架橋剤が含有されても、適度な剥離性と適度な密着性を兼備させることはできない。
【0033】
カルボジイミド化合物は、分子中に1つ以上のカルボジイミド基を有しているものであれば特に限定されるものではない。カルボジイミド化合物は、1つのカルボジイミド部分において、酸変性ポリオレフィン樹脂の酸変性部分における2つのカルボキシル基とエステルを形成し、架橋を達成する)。カルボジイミド化合物の具体例として、例えば、p−フェニレン−ビス(2,6−キシリルカルボジイミド)、テトラメチレン−ビス(t−ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサン−1,4−ビス(メチレン−t−ブチルカルボジイミド)などのカルボジイミド基を有する化合物や、カルボジイミド基を有する重合体であるポリカルボジイミドが挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、取り扱いやすさから、ポリカルボジイミドが好ましい。
【0034】
ポリカルボジイミドの市販品としては、日清紡社製のカルボジライトシリーズが挙げられる。商品名を用いて説明すると、より具体的には、水溶性タイプの「SV−02」、「V−02」、「V−02−L2」、「V−04」;エマルションタイプの「E−01」、「E−02」;有機溶液タイプの「V−01」、「V−03」、「V−07」、「V−09」;無溶剤タイプの「V−05」が挙げられる。
【0035】
オキサゾリン化合物は、分子中にオキサゾリン基を2つ以上有しているものであれば、特に限定されるものではない。オキサゾリン化合物は、2つのオキサゾリン部分のそれぞれにおいて、酸変性ポリオレフィン樹脂の酸変性部分における1つのカルボキシル基とアミドエステルを形成し、架橋を達成する。オキサゾリン化合物の具体例として、例えば、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレン−ビス(2−オキサゾリン)、ビス(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィドなどのオキサゾリン基を有する化合物や、オキサゾリン基含有ポリマーが挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、取り扱いやすさからオキサゾリン基含有ポリマーが好ましい。
【0036】
オキサゾリン基含有ポリマーの市販品としては、日本触媒社製のエポクロスシリーズが挙げられる。商品名を用いて説明すると、より具体的には、水溶性タイプの「WS−500」、「WS−700」;エマルションタイプの「K−1010E」、「K−1020E」、「K−1030E」、「K−2010E」、「K−2020E」、「K−2030E」などが挙げられる。
【0037】
架橋剤の含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して1〜30質量部であることが必要で、3〜20質量部がより好ましく、5〜10質量部がさらに好ましい。1質量部未満では、樹脂層(B)のコート液の安定性も低下するために、コート液の塗布斑が生じやすくなり、結果として、均一に塗布できなくなり、保護層との密着性が劣る場合がある。30質量部を超えると、保護層に対する剥離性が低下する。カルボジイミド化合物とオキサゾリン化合物とは併用することもでき、その場合には、カルボジイミド化合物とオキサゾリン化合物の合計量が上記した架橋剤の含有量の範囲を満たしていればよい。
【0038】
ポリビニルアルコールは、特に限定されないが、ビニルエステルの重合体を完全または部分ケン化したものなどが挙げられる。ポリビニルアルコールは樹脂層(B)中、酸変性ポリオレフィン樹脂中に分散されることによって、酸変性ポリオレフィン樹脂が奏する剥離性を適度に軽減して発揮させると同時に、自身が奏する密着性を発揮する。本発明におけるポリビニルアルコールは、後述のように、液状物として使用する場合のために、水溶性を有していることが好ましい。
【0039】
ポリビニルアルコールの平均重合度は、特に限定されるものではなく、例えば、300〜5,000であってよく、樹脂層(B)のコート液の安定性向上の観点からは300〜2,000が好ましい。
【0040】
市販のポリビニルアルコールとしては、商品名を用いて説明すると、日本酢ビ・ポバール社の「J−ポバール」の、具体的な商品名「JC−05」、「VC−10」、「ASC−05X」、「UMR−10HH」;クラレ社の「クラレポバール」の具体的な商品名「PVA−103」、「PVA−105」や、「エクセバール」の具体的な商品名「AQ4104」、「HR3010」;電気化学工業社の「デンカ ポバール」の具体的な商品名「PC−1000」、「PC−2000」などが挙げられる。
【0041】
ポリビニルアルコールの含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して5〜100質量部であることが必要で、10〜60質量部が好ましく、20〜40質量部が最も好ましい。5質量部未満では熱セット温度(乾燥温度)により、剥離性が大きく影響を受け、特に熱セット温度が高くなると剥離性が低下する。100質量部を超えると、樹脂層(B)のコート液の安定性が低下するために、コート液の塗布斑が生じやすくなり、結果として、均一に塗布できなくなり、保護層との密着性が劣る場合がある。
【0042】
樹脂層(B)は、シリコーン化合物、フッ素化合物、ワックス類、界面活性剤の合計の含有量が、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して1質量部以下であることが好ましい。この量が少ないほど、樹脂層(B)と支持フィルム(A)との接着性が向上するとともに、保護層の汚染が抑制される。当該含有量は0.5質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以下であることがさらに好ましく、含んでいないことが最も好ましい。
【0043】
シリコーン化合物は、アミノ官能基、および/または、エポキシ基を有するオルガノポリシロキサンのエマルジョンや、アミノ官能基とエポキシ基を有するオルガノポリシロキサンのエマルジョンにエポキシ基またはアミノ基を有するシラン、必要により更に水酸基または加水分解性基を有するオルガノポリシロキサンのエマルジョンを添加したものなどが例示される。
【0044】
フッ素化合物は、含フッ素ポリメタクリレートあるいは含フッ素ポリアクリレート、フッ素系ブロック共重合体などが例示される。
【0045】
ワックス類とは、数平均分子量が10,000以下の、植物ワックス、動物ワックス、鉱物ワックス、石油化学ワックス等を意味する。具体的には、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、木蝋、ベリーワックス、ホホバワックス、シアバター、蜜蝋、セラックワックス、ラノリンワックス、鯨蝋、モンタンワックス、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、合成ポリエチレンワックス、合成ポリプロピレンワックス、合成エチレン−酢酸ビニル共重合体ワックス等が挙げられる。
【0046】
界面活性剤とは、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性(非イオン性)界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、反応性界面活性剤等が挙げられる。一般に乳化重合に用いられるもののほか、乳化剤類も含まれる。
【0047】
カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩 等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸およびその塩、アルキルベンゼンスルホン酸およびその塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体等のポリオキシエチレン構造を有する化合物や、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のソルビタン誘導体等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
反応性界面活性剤としては、アルキルプロペニルフェノールポリエチレンオキサイド付加物やこれらの硫酸エステル塩、アリルアルキルフェノールポリエチレンオキサイド付加物やこれらの硫酸エステル塩、アリルジアルキルフェノールポリエチレンオキサイド付加物やこれらの硫酸エステル塩等の、反応性2重結合を有する化合物が挙げられる。
【0048】
樹脂層(B)の厚みは、保護層に対する剥離性の観点から、0.01〜5μmの範囲とすることが好ましく、0.1〜4μmであることがより好ましく、0.2〜1μmであることがさらに好ましく、0.3〜0.7μmであることが特に好ましい。
【0049】
樹脂層(B)表面の濡れ張力は、30〜50mN/mであることが好ましく、32〜40mN/mであることがより好ましい。濡れ張力が30mN/m未満では、樹脂層(B)上に保護層を積層するのが困難になる場合がある。濡れ張力とは、Zismanによる臨界表面張力を意味する。これは、JIS K6768記載の方法で測定することができる。
濡れ張力は樹脂層(B)の酸変性成分の量やポリビニルアルコールの量を調製することによって制御できる。
【0050】
樹脂層(B)の保護層に対する剥離性および密着性の観点から、カバーフィルムの樹脂層(B)面にアクリル系粘着剤を用いた粘着材料を、70℃で20時間加熱圧着して測定したときの樹脂層(B)と粘着剤との間の剥離強度は、0.5〜3.5N/cmであることが好ましい。剥離強度は、より好ましくは1.0〜3.0N/cm、特に1.2〜2.5N/cmとすることができる。剥離強度が3.5N/cmを超えると、保護層との剥離性が悪く、カバーフィルムに保護層の一部が接着した状態で剥離されてしまい、結果として、感光性樹脂組成物の表面に保護層がない部分が出現するため好ましくない。一方、剥離強度が0.5/cm未満であると、感光性樹脂構成体を作成する工程で密着性が乏しく、工程の途中ではがれてしまうため好ましくない。
【0051】
カバーフィルムは、少なくとも酸変性ポリオレフィン樹脂、架橋剤およびポリビニルアルコールを含有する液状物を、支持フィルム(A)上に塗工したのち乾燥して樹脂層(B)を形成するという製造方法によって、工業的に簡便に得ることができる。
【0052】
前記液状物を製造する方法は、各成分が液状媒体中に均一に混合される方法であれば、特に限定されない。たとえば、次のような方法が挙げられる。
(i)酸変性ポリオレフィン樹脂の分散液または溶液に、架橋剤およびポリビニルアルコールの分散液または溶液を添加して混合する方法。
(ii)酸変性ポリオレフィン樹脂とポリビニルアルコールとの混合物の分散液又は溶液に、架橋剤の分散液または溶液を添加して混合する方法。
【0053】
上記(i)の方法の場合は、各成分の分散液または溶液を適宜混合すればよい。ポリビニルアルコールの分散液または溶液を用いる場合、その溶質濃度は特に制限されるものではない。しかし、取り扱いやすさの点から、5〜10質量%が好ましい。
【0054】
上記(ii)の方法の場合は、酸変性ポリオレフィン樹脂とポリビニルアルコールを一緒に液状媒体中に添加した後、架橋剤の分散液または溶液を添加すればよい。
【0055】
他の成分を添加する場合においても、(i)または(ii)の製法における任意の段階で添加を行うことができる。
【0056】
前記液状物における溶媒は、基材上への液状物の塗工が可能であれば、特に限定されないが、環境とポリビニルアルコールの溶解性の観点から、水、または水と両親媒性有機溶剤とを含む水性媒体を使用することが好ましい。
【0057】
水性媒体とは、水と両親媒性有機溶剤とを含み、水の含有量が2質量%以上である溶媒を意味する。両親媒性有機溶剤とは、20℃における有機溶剤に対する水の溶解性が5質量%以上である有機溶剤をいう〔20℃における有機溶剤に対する水の溶解性については、例えば「溶剤ハンドブック」(講談社サイエンティフィク、1990年第10版)等の文献に記載されている〕。具体的には、メタノール、エタノール(以下「EA」と略称する)、n−プロパノール(以下「NPA」と略称する)、イソプロパノール(以下「IPA」と略称する)等のアルコール類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジメチル等のエステル類;そのほか、アンモニアを含む、ジエチルアミン、トリエチルアミン(以下「TEA」と略称する)、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン(以下「DMEA」と略称する)、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−ジエタノールアミン等の有機アミン化合物;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンなどのラクタム類等を挙げることができる。
【0058】
酸変性ポリオレフィン樹脂を上記のような水性媒体に分散化する方法は、特に限定されないが、例えば、国際公開WO02/055598号に記載されたものが挙げられる。
水性媒体中の酸変性ポリオレフィン樹脂の分散粒子径は、他の成分との混合時の安定性および混合後の保存安定性の点から、数平均粒子径が1μm以下であることが好ましく、0.8μm以下であることがより好ましい。このような粒径はWO02/055598に記載の製法により達成可能である。
【0059】
液状物における固形分含有率は、積層条件、目的とする厚さや性能等により適宜選択でき、特に限定されるものではない。しかし、液状物の粘性を適度に保ち、かつ良好な樹脂層を形成させるためには、1〜60質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。
【0060】
液状物を基材に塗工する方法としては、公知の方法、例えばグラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等を挙げることができる。
【0061】
これらの方法により液状物を支持フィルム(A)の表面に均一に塗工し、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥処理又は乾燥のための加熱処理に供することにより、均一な樹脂層(B)を当該フィルムに密着させて形成することができる。本発明においては、乾燥と同時に架橋を行うために、乾燥のための加熱処理を行うことが好ましい。
支持フィルム(A)に樹脂層(B)を塗工し、乾燥したフィルムは、ロール状に一旦巻き取られる。フィルムロールは、樹脂層(B)の剥離性および密着性が経時変化しないように、エージングすることが好ましい。
【0062】
乾燥のための加熱時間および加熱温度、ならびにエージング温度およびエージング時間は剥離性および密着性に影響を与える。乾燥温度、乾燥時間、エージング温度、エージング時間が不十分であると、樹脂層(B)の架橋反応が不十分となり、経時によって剥離性や密着性が変化するため好ましくない。
【0063】
乾燥温度は特に制限されず、80℃〜160℃が好ましく、さらに好ましくは100〜140℃、最も好ましくは110〜130℃である。乾燥温度が80℃未満では、樹脂層(B)の架橋反応が十分に進行しないため、保護層との密着性が高くなり、カバーフィルムに保護層が付着したりして好ましくない。乾燥温度が160℃を超えるとカバーフィルムの基材である支持フィルムが収縮したりするため、好ましくない。
乾燥時間は、5秒〜5分、好ましくは10秒〜1分である。乾燥時間が5秒未満では、樹脂層(B)の架橋反応が十分に進行しないため、保護層との密着性が高くなり、カバーフィルムに保護層が付着したりして好ましくない。乾燥時間が5分を越えるようにするためには、加工速度を極端に遅くする必要があり、経済的ではない。
【0064】
エージング温度は30〜80℃、好ましくは35〜70℃であり、エージング期間は半日〜7日、好ましくは1〜3日である。エージング温度が30℃未満の場合、もしくはエージング期間が半日未満の場合、エージングの効果に乏しく、80℃を越える場合、もしくは7日を超える場合は経済的ではない。
【0065】
(保護層)
保護層3は、感光性樹脂組成物層の表面を覆うことにより、製版時における感光性樹脂組成物層およびネガフィルムの汚染および損傷を防止するとともに、水溶性を有するので、製版時において水系の現像液によって溶解除去される。
【0066】
保護層の形成に用いられる水溶性樹脂としては、後で詳述する水系の現像液に溶解できる樹脂であればどのようなものでも良い。水溶性樹脂の具体例として、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性ナイロン、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンイミン、水溶性セルロース誘導体などが挙げられる。水に溶解させたときの安定性、膜の機械的強度の面からは、ポリビニルアルコールを用いることが好ましい。
【0067】
保護層3が吸湿して表面に小じわ(以下吸湿シワ)が発生することを防ぐために、水溶性樹脂に疎水性樹脂を含有させてもよい。
疎水性樹脂としては、吸水率が5%以下のポリマーが使用可能である。本明細書中、吸水率は以下の方法によって、測定された値を用いている。
樹脂を厚み100μm以下のフィルム状にして40℃、湿度0.1%以下で7日以上乾燥させた重量(x)を測定し、40℃、湿度80%RHで7日間吸湿させた時の重量(y)を測定する。吸水率Aは、A=100×(y−x)/xにより計算した。
【0068】
疎水性樹脂の具体例としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリスルフォン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、ユリヤ系樹脂、メラミン系樹脂、グアナミン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、セルロース系樹脂およびその変性物等が挙げられる。変性セルロース樹脂とは、セルロース・アセテート・ブチレートなどのセルロースが有する水酸基が酸によって変性されたものである。疎水性樹脂は保護層の形成時において水分散体の形態で使用され、その分散粒径は10μm以下が好ましい。
【0069】
水溶性樹脂と疎水性樹脂の含有量比は、5/95〜40/60、特に15/85〜30/70の範囲が望ましい。水溶性樹脂の含有量比が小さすぎると、製版時に水系の現像液に溶解・除去され難くなる。水溶性樹脂の含有量比が大きすぎると、吸湿によるシワが発生し易くなる。
【0070】
保護層の厚みは0.1〜20μm、好ましくは1〜10μmの範囲で選択される。この厚みが0.1μmより薄いと、製版時における感光性樹脂組成物層およびネガフィルムの汚染および損傷の防止が不十分となる。また、この厚みが20μmを越えると、保護効果が飽和するばかりか、かえってレリーフの解像度を低下させる。
【0071】
保護層は、保護層原料となる重合体を溶媒等に溶解または分散させ、カバーフィルムの樹脂層(B)面上に塗布、乾燥して得ることができる。この時、保護層の必要な特性を確保する目的で、紫外線吸収剤、離型剤、可塑剤、密着力調整剤などを適宜添加することもできる。
【0072】
上記保護層を第1保護層としたとき、保護層として第2保護層をさらに有しても良い。第2保護層は第1保護層とカバーフィルムの樹脂層(B)との間に形成され、第2保護層によって樹脂層(B)の保護層に対する剥離性のさらなる向上に寄与し、製版時において水系の現像液によって第1保護層とともに除去される。
【0073】
第2保護層は、第1保護層に含有されてもよい疎水性樹脂によって形成され、製版時における水系の現像液による除去性および樹脂層(B)の保護層に対する剥離性の観点から、変性セルロース系樹脂が好ましい。
【0074】
第2保護層の厚みは、0.1〜10μm、好ましくは1〜5μmの範囲である。この厚みが0.1μmより薄いと、樹脂層(B)の保護層に対する剥離性のさらなる向上効果が十分に得られない。この厚みが10μmを越えると、製版時において水系の現像液によって除去され難い。
【0075】
第2保護層は、第2保護層原料となる重合体を溶媒等に溶解または分散させ、カバーフィルムの樹脂層(B)面上に塗布、乾燥して得ることができる。
第1保護層は、第1保護層原料となる重合体を溶媒等に溶解または分散させ、第2保護層上に塗布、乾燥して得ることができる。
第1保護層および第2保護層の形成のための塗液には、保護層の必要な特性を確保する目的で、紫外線吸収剤、離型剤、可塑剤、密着力調整剤などを適宜添加することもできる。
【0076】
(ベースフィルム)
ベースフィルム1としては、感光性樹脂構成体の分野で従来からベースフィルムとして使用可能なものであれば特に制限されず、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、6−ナイロン、ポリ−m−キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)等のポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリルニトリル樹脂、ポリイミド樹脂、これらの樹脂の複層体(例えば、ナイロン6/MXD/ナイロン6、ナイロン6/エチレン−ビニルアルコール共重合体/ナイロン6)や混合体等が挙げられる。ベースフィルムは延伸処理されていてもよい。ベースフィルムは、公知の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、可塑剤、滑剤、酸化防止剤などを含んでいてもよい。中でも、その寸法安定性からはポリエステルフィルムが好ましい。ポリエステルフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレート、ポリ乳酸やこれらの共重合体が挙げられるが、中でも、コストと性能からポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。寸法安定性を考えると少なくとも一方向に延伸したフィルムが好ましく、さらに好ましくは二軸延伸フィルムである。フィルムの厚みは75〜500μm、さらに好ましくは100〜250μm、最も好ましくは100〜200μmである。
【0077】
ベースフィルムはポリエステルフィルム単体でもかまわないが、場合によっては感光性樹脂層と強固に接着させるためにベースフィルム上に接着層を設けてもよい。接着層としては、例えば、例えば、ウレタン系接着剤、ウレタンウレア系接着剤、ポリエステル系接着剤、アクリル系接着剤等が挙げられる。
接着層の厚みは通常、0.1〜10μmである。
【0078】
ベースフィルムを構成する樹脂材料には、公知の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、可塑剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを含んでいてもよい。ベースフィルムはその他の材料と積層する場合の接着性を良くするために、表面に前処理としてコロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、薬品処理、溶剤処理等を施してもよい。ベースフィルムは、シリカ、アルミナ等が蒸着されていてもよく、バリア層、帯電防止層、紫外線吸収層、などの他の層が積層されていてもよい。
【0079】
(感光性樹脂組成物層)
感光性樹脂組成物層2は水溶性を有するものであり、詳しくは製版時において露光部が現像によってレリーフ画像を形成し、かつ未露光部が水系の現像液によって溶解除去される。
【0080】
感光性樹脂組成物層は通常、親水性ポリマーおよび感光性材料を含有し、必要に応じて、光重合開始剤、エラストマー、可塑剤、保存安定剤、界面活性剤、耐オゾン性剤などをさらに含有してもよい。
【0081】
親水性ポリマーとしては、例えば、特許第2872783号公報に開示のスルホン基含有ポリウレタンやカルボキシル基、リン酸エステル基、スルホン酸基を導入したポリウレタンやポリエステルジオール、特開平9−216918号公報に開示のリン酸エステル基含有モノエチレン性不飽和単量体及びリン酸エステル基含有ジエチレン性不飽和単量体を必須成分とするリン酸エステル基含有共重合体、特開平5−204139号公報に開示のコア/シェル構造を有する架橋樹脂微粒子を含有する樹脂などが挙げられる。
【0082】
親水性ポリマーの含有量は通常、親水性ポリマーとエラストマーとの合計量100質量部に対して25〜80質量部である。
【0083】
エラストマーとしては、耐フレキソインキ性を有することが必要であり、例えば、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレンとブタジエンとを必須単量体単位とするSBランダム共重合体、アクリロニトリルとブタジエンとを必須単量体単位とするNBランダム共重合体、スチレン−イソプレンランダム共重合体、メタクリル酸メチル−ブタジエンランダム共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴムなどが挙げられ、これらを2種以上混合して使用することもできる。
【0084】
エラストマーの含有量は通常、親水性ポリマーとエラストマーとの合計量100質量部に対して20〜75質量部である。
【0085】
感光性材料は、光重合性基あるいは光反応性基を有する化合物が使用され、例えば、エチレン性不飽和モノマーやエチレン性不飽和プレポリマーが用いられる。
【0086】
エチレン性不飽和モノマーの具体的としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、クロロスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼンなどの芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのエチレン性不飽和ニトリル単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸グリシジル、エチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシプロピレングリコールメタクリレート、メトキシエチレングリコールメタクリレート、メトキシプロピレングリコールアクリレート、マレイン酸ジエチル、イタコン酸ジメチル、ジオクチルフマレートなどのエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体;アリルグリシジルエーテルなどのエチレン性不飽和グリシジルエーテル;アクリル酸、メタクリル酸などのエチレン性不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸などのエチレン性不飽和多価カルボン酸;マレイン酸モノエチル、イタコン酸モノメチルなどのエチレン性不飽和多価カルボン酸の部分エステル化物;燐酸エチレンアクリレート、燐酸トリメチレンアクリレート、燐酸プロピレンアクリレート、燐酸テトラメチレンアクリレート、燐酸ビスエチレンアクリレート、燐酸ビストリメチレンアクリレート、燐酸ビステトラメチレンアクリレート、燐酸ジエチレングリコールアクリレート、燐酸トリエチレングリコールアクリレート、燐酸ポリエチレングリコールアクリレート、燐酸ビスジエチレングリコールアクリレート、燐酸ビストリエチレングリコールアクリレート、燐酸ビスポリエチレングリコールアクリレートおよびこれらに対応するメタクリレートなどの燐酸エステル基含有エチレン性不飽和単量体などが挙げられる。
【0087】
エチレン性不飽和プレポリマーとしては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などに、カルボキシル基、水酸基、イソシアネート基などの反応性基を有するエチレン性不飽和化合物を用いて、エチレン性不飽和基を導入したものが用いられる。そのようなエチレン性不飽和プレポリマーとして、不飽和ポリエステル類、不飽和ポリウレタン類、不飽和ポリエーテル類、不飽和エポキシ樹脂、不飽和アクリル樹脂が挙げられる。
【0088】
不飽和ポリエステル類の具体例としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸のような不飽和二塩基酸又はその酸無水物とエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトールなどの多価アルコールとのポリエステルや前記の酸成分の一部をコハク酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、トリメリット酸などの飽和多塩基酸に置き換えたポリエステルあるいは乾性油脂肪酸又は半乾性油脂肪酸で変性したポリエステルなどが挙げられる、さらに前記したような多塩基酸と多価アルコールのエステル反応系にアクリル酸又はメタクリル酸を共存させて、共縮合させそれぞれのモル比を調整して分子量500以上としたオリゴエステルアクリレート又はメタクリレートを挙げることができる。
【0089】
不飽和ポリウレタン類の具体例としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート(NDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、o−トルイレンジイソシアネート(TODI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどのポリイソシアネートと水酸基を有するエチレン性不飽和化合物、例えばアルキレングリコールモノアクリレート又はメタクリレート、ポリオキシアルキレングリコールモノアクリレート又はメタクリレート、アリルアルコールなどとを反応させたものや、ポリオールとポリイソシアネートとから誘導されたポリウレタン化合物の末端イソシアネート基あるいは水酸基を利用してエチレン性不飽和基を導入したもの、例えば前記した多価アルコールやポリカプロラクトンジオール、ポリバレロラクトンジオール、ポリエチレンアジペートジオール、ポリプロピレンアジペートジオールなどのポリエステルポリオール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコールなどのポリエーテルポリオール、末端水酸基を有する1,4−ポリブタジエン、水添又は非水添1,2−ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体などのポリマーポリオールなどとポリイソシアネートをイソシアネート基過剰で反応せしめた末端イソシアネート基を有するポリウレタン化合物に、水酸基、アミノ基などの活性水素を有するエチレン性不飽和化合物、例えばアルキレングリコールモノアクリレート又はメタクリレート、ポリオキシアルキレングリコールモノアクリレート又はメタクリレート、アリルアルコール、アミノアルキルアクリレート又はメタクリレートなどを反応せしめたものや、あるいは水酸基過剰で反応せしめた末端水酸基を有するポリウレタン化合物に、イソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物、例えばアリルイソシアネート、イソシアナトエチルメタクリレートなどを反応せしめたものなどを挙げることができるし、さらに前記の不飽和ポリエステルなどをポリイソシアネートで連結した化合物などが挙げられる。
【0090】
不飽和ポリエーテル類の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコールなどのポリエーテルグリコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのエステルが挙げられる。
【0091】
不飽和エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ化合物、フェノール又はクレゾールノボラック型エポキシ化合物、ハロゲン化ビスフェノール型エポキシ化合物、レゾルシン型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物などにカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物、例えばアクリル酸又はメタクリル酸を反応せしめたものが挙げられる。
【0092】
不飽和アクリル樹脂の具体例としては、例えば、カルボキシル基や水酸基又はグリシジル基をもつモノマーを共重合せしめたアクリル樹脂にそれらの官能基と反応しうる官能基をもつエチレン性不飽和化合物を反応せしめて不飽和基を導入したものがあり、例えばアクリル酸又はメタクリル酸と各種のアクリレート類、メタクリレート類、スチレン、酢酸ビニルなどとを共重合させたものにグリシジルアクリレート又はメタクリレートを付加させたものやその逆にグリシジルアクリレートなどを含む共重合体にアクリル酸などを付加させたものを挙げることができる。
【0093】
感光性材料の含有量は通常、親水性ポリマーとエラストマーとの合計量100質量部に対して5〜100質量部である。
【0094】
光重合開始剤としては、例えば、ジアセチル、ベンジルなどのα−ジケトン;ベンゾイン、ピバロインなどのアシロイン;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのアシロインエーテル;アントラキノン、1,4−ナフトキノンなどの多核キノン;メチル−o−ベンゾイルベンゾエートなどのベンゾフェノン;2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンなどのフェニルケトンなどが挙げられる。
【0095】
光重合開始剤の含有量は通常、親水性ポリマーとエラストマーとの合計量100質量部に対して0.1〜10質量部である。
【0096】
得られる版材のシート成形性や印刷版の柔軟性を良好にするために、適当な可塑剤を配合することもできる。この可塑剤については、前記した親水性ポリマー、感光性材料、エラストマー成分と均一に相溶し、かつ可塑化効果を示すものであればよく、特に制限はない。このような可塑剤としては、例えばグリセリン、ポリエチレングリコール、ベンゼンスルホンアミド、トルエンスルホンアミド、N−エチルトルエンスルホンアミド、N−メチルトルエンスルホンアミド、p−ヒドロキシル安息香酸エステル、各種オレフィン系オリゴマー、ビニル系オリゴマー、ジエン系オリゴマー、ナフチン油、パラフィン油などの炭化水素油、分子量3000以下のポリスチレン、石油樹脂、ポリアクリレート、液状1,2−ポリブタジエン、液状1,4−ポリブタジエンおよびこれらポリブタジエンの末端変性物、液状アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、液状スチレン−ブタジエン共重合体およびこれらのカルボキシル化物などを挙げることができる。
【0097】
可塑剤は、当業界で一般に使われる量であって感光性樹脂組成物の望ましい性能を阻害しない量で用いることができる。
【0098】
保存安定剤としては、例えば、ヒドロキノン、ピロガロール、p−メトキシフェノール、t−ブチルカテコール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,2−ジ−t−ブチル−p−クレゾールなどのフェノール類;ベンゾキノン、p−トルキノン、p−キシロキノンなどのキノン類;フェニル−α−ナフチルアミンなどのアミン類などが挙げられる。
【0099】
保存安定剤は、当業界で一般に使われる量であって感光性樹脂組成物の望ましい性能を阻害しない量で用いることができる。
【0100】
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤を用いることができる。これらの中で相溶性、水現像効果の観点から、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤が好ましく、アニオン界面活性剤が特に好ましい。これらの界面活性剤の添加量は、水現像性、相溶性、インキ溶剤の膨潤性等で適宜決められる。この添加量が少なすぎると、水現像性が悪くなり、多すぎると、相溶性、溶剤膨潤性の面で性能が悪くなる。一般的に、親水性ポリマーとエラストマーとの合計量100質量部に対して0.1〜10質量部である。
【0101】
感光性樹脂組成物層を作成するには、例えば、前記の感光性樹脂組成物を構成する各成分を、水または有機溶剤に溶解し、十分に混合して均質な溶液とした後、ベースフィルム上に均一厚さに流し留め、溶剤を蒸発除去して、該ベースフィルム上に厚さ0.1〜10mmの感光性樹脂組成物層を形成する方法を用いることができる。あるいは感光性樹脂組成物の溶剤を留去したものをベースフィルム上にプレス成形等により加熱加圧してベースフィルム上に感光性樹脂組成物層を形成する方法も用いることができる。さらに、感光性樹脂組成物を構成する各成分をニーダー、バンバリミキサー等で十分に混合したものをベースフィルム上にプレス成形して感光性樹脂組成物層を形成する方法や、その他キャスト成形、押出し成形等により感光性樹脂組成物層を形成する方法等も用いることができる。
【0102】
シート状に形成された感光性樹脂組成物層はベースフィルム上で直接成形して成形と同時に接着することもできるし、シート状に形成された感光性樹脂組成物層を接着剤を用いてベースフィルム上に接着してもよい。
ベースフィルムと感光性樹脂組成物層との間には接着層以外にアンチハレーション層を設けることも有利である。
【0103】
感光性樹脂構成体における感光性樹脂組成物層の厚みは特に制限されず、通常は例えば、0.1〜10mmである。
【0104】
[感光性樹脂構成体の製造方法]
感光性樹脂構成体は、ベースフィルム上に板状の感光性樹脂組成物層を重ね合わせ、さらにその上に、保護層が塗布されたカバーフィルムを、保護層塗布面が感光性樹脂側になるように重ね合わせ、プレス成形することによって、製造できる。感光性樹脂組成物層をベースフィルム上に形成した場合は、当該感光性樹脂組成物層付きベースフィルムの感光性樹脂組成物層上に、保護層が塗布されたカバーフィルムを、保護層塗布面が感光性樹脂側になるように重ね合わせ、プレス成形することによって、製造できる。
【0105】
[製版方法]
本発明の感光性樹脂構成体は製版時において現像液として水系のものを用いる水系の版材である。
以下、本発明の水系感光性樹脂構成体を用いて製版する方法について説明する。
【0106】
まず、感光性樹脂構成体において、図2(A)に示すように、カバーフィルム4を剥離した後、図2(B)に示すように、保護層3の表面にネガフィルム50を密着させ、露光を行い、感光性樹脂組成物層2における露光部20を硬化させる。
【0107】
感光性樹脂組成物層を露光硬化させる紫外線光源としては、例えば、高圧水銀灯、紫外線蛍光灯、カーボンアーク灯、キセノンランプ、太陽光などが使用可能である。
ネガフィルムを介して感光性樹脂層に紫外線を露光することにより所望のレリーフ層を得ることができるが、レリーフ像の高さを調整するためには、ベースフィルム1側から全面に紫外線を照射する。このレリーフ形成露光とベースフィルム1側からの露光はどちらを先におこなっても良く、さらに同時におこなっても良いが、画像再現性の観点よりベースフィルム1側からの露光を先に行うのが好ましい。
【0108】
露光により露光部20の十分な硬化を行った後は、現像液により未露光部を溶解除去する。
【0109】
現像液は水系のものであり、水、またはアルカリ物質および/または水溶性有機溶剤の水溶液が使用される。
アルカリ物質としては、例えば、ホウ酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム等が使用できる。
水溶性有機溶剤は後述の含有量で水と均一系を形成できる程度の水溶性を有していればよい。そのような水溶性有機溶剤として、例えば、エーテル類、およびアルコール類が使用できる。エーテル類の具体例として、例えば、オクチルフェノキシポリオキシエーテル 等が挙げられる。アルコール類の具体例として、例えば、メタノール、エタノール等が挙げられる。
【0110】
水溶液中のアルカリ物質または/および水溶性有機溶剤の含有量は、保護層および感光性樹脂組成物層未露光部が溶解・除去されれば特に制限されず、通常は水100重量部に対して0.1〜50重量部が適当である。
【0111】
現像液には界面活性剤、消泡剤、分散剤、乳化剤、腐食抑制剤、腐敗防止剤、pH調整剤等が添加されてもよい。
【実施例】
【0112】
以下に実施例によって本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0113】
(1)酸変性ポリオレフィン樹脂の組成
H−NMR分析装置(バリアン社製 GEMINI2000/300、300MHz)により求めた。オルトジクロロベンゼン(d)を溶媒とし、120℃で測定した。
【0114】
(2)酸変性ポリオレフィン樹脂の融点
樹脂10mgをサンプルとし、DSC(示差走査熱量測定)装置(パーキンエルマー社製 DSC7)を用いて、昇温速度10℃/分の条件で測定を行い、得られた昇温曲線から融点を求めた。
【0115】
(3)酸変性ポリオレフィン樹脂のビカット軟化点
JIS K7206に記載の方法で測定した。
【0116】
(4)酸変性ポリオレフィン樹脂のメルトフローレート(MFR)
JIS K6730記載(190℃、2160g荷重)の方法で測定した。
【0117】
(5)水性分散体の有機溶剤含有率
島津製作所社製、ガスクロマトグラフGC−8A[FID検出器使用、キャリアーガス:窒素、カラム充填物質(ジーエルサイエンス社製):PEG−HT(5%)−Uniport HP(60/80メッシュ)、カラムサイズ:直径3mm×3m、試料投入温度(インジェクション温度):150℃、カラム温度:60℃、内部標準物質:n−ブタノール]を用い、水性分散体または水性分散体を水で希釈したものを直接装置内に投入して、有機溶剤の含有率を求めた。検出限界は0.01質量%であった。
【0118】
(6)液状物の固形分濃度
液状物を適量秤量し、これを150℃で残存物(固形分)の質量が恒量に達するまで加熱することで、固形分濃度を求めた。
【0119】
(7)酸変性ポリオレフィン樹脂粒子の数平均粒子径
日機装社製、マイクロトラック粒度分布計UPA150(MODEL No.9340、動的光散乱法)を用い、数平均粒子径を求めた。粒子径算出に用いた樹脂の屈折率は1.57とした。
【0120】
(8)樹脂層(B)コート液の液安定性
ポリエステル(A)に樹脂層(B)分散液をコートする際の分散液の貯蔵安定性を下記のように評価した。○が好ましいが、△でも使用は可能である。×は操業上問題がある。
×;23℃で一週間以内にゲル化または増粘;
△;23℃で一ヶ月以内にゲル化または増粘;
○;23℃で一ヶ月以上変化なし。
【0121】
(9)樹脂層の厚み
支持フィルム(A)に樹脂層(B)を積層したフィルム(以下「カバーフィルム」という)の全体の厚さを接触式膜厚計により測定し、その測定値から支持フィルム(A)の厚さを減じて、求めた。
【0122】
(10)フィルムの中心面平均粗さ Sa(μm)
テーラーホブソン社製タリサーフCCI6000(非接触式表面粗測定装置)を使用して、スライドガラス上に固定した試料を対物レンズ20倍で実態計測し、ロバストガウシアンフィルター0.25mmを使用して、試料の表面粗さを解析して、平均値からの偏差の算術平均を中心面平均粗さSa(μm)とした。
【0123】
(11)カバーフィルム(樹脂層(B)面)の濡れ張力
JIS K6768に記載の測定法に準じて、表面張力が順を追って異なるように調整した標準液(エチレングリコールモノエチルエーテル/ホルムアミド)を処理面に塗布し、樹脂層面をぬらすと判定された標準液の表面張力によって示した。
【0124】
(12)カバーフィルムの剥離強度
得られたカバーフィルムの樹脂層(B)側に巾50mm、長さ150mmのポリエステル粘着テープ(日東電工社製、No.31B/アクリル系粘着剤)をゴムロールで圧着して、試料とした。試料を、金属板/ゴム板/試料/ゴム板/金属板の形で挟み、2kPa荷重、70℃の雰囲気で20時間放置し、その後30分以上冷却して常温に戻して、剥離強度測定用試料を得た。この剥離強度測定用試料の、粘着テープと離型フィルムとの剥離強度を、25℃の恒温室で、引張試験機(インテスコ社製、精密万能材料試験機、2020型)にて測定した。剥離角度は180℃、剥離速度は300mm/分とした。剥離強度は0.5〜3.5N/cmが実用上問題のない範囲であり、1.0〜3.0N/cmが好ましい範囲である。
【0125】
(13)カバーフィルムと保護層との剥離性
感光性樹脂構成体においてカバーフィルムのみをはがしたときの剥離の状態を評価した。○が望ましいが、△でも一応は実用上使用できる。)
○;カバーフィルムだけを簡便に剥離できる。このとき、カバーフィルムには保護層の付着がなく、保護層にも樹脂層(B)の付着がない。
△;剥離する速度と力に注意すれば、カバーフィルムだけを剥離できる。このとき、剥離する速度と力に注意して剥離すれば、カバーフィルムには保護層の付着がなく、保護層にも樹脂層(B)の付着がない。
×;剥離する速度と力に注意しても、カバーフィルムだけを剥離できない。このとき、カバーフィルムに保護層の付着が認められる、もしくは、保護層面に樹脂層(B)の付着が認められる。
【0126】
(14)カバーフィルムと保護層との密着性
感光性樹脂構成体の製造時における熱圧着工程での密着の状態を評価した。○が望ましい、×は使用に問題がある。
○;保護層をカバーフィルムに均一に塗布することができ、かつ熱圧着工程でカバーフィルムの保護層からの剥離が起こらない。
×;保護層をカバーフィルムに塗布する際にハジキや斑が発生して均一に塗布することができない。または熱圧着工程でカバーフィルムの一部が保護層から剥離する。
【0127】
(15)解像度
感光性樹脂構成体においてカバーフィルムを露光機上で剥離し、保護層上に線数150Line/inch、濃度1%の網点、500μm幅の凹線の画像が組み込まれた解像度試験用ネガフィルムを真空中で均一に密着させ、350Wの紫外線ランプで10分間照射後、ホウ酸ソーダ2部、オクチルフェノキシポリオキシエーテル2部、水100部を混合した現像液により40℃で現像した後、現像液を流水により洗い流した。乾燥後、得られたフレキソ印刷用の印刷版の500μm幅の凹線の深さを深度顕微鏡で測定し、当該深度が100μm以上を合格(○)とした。
【0128】
<カバーフィルムの樹脂層(B)を製造するための酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体の製造>
〔水性分散体E−1〕
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの「ボンダイン LX−4110」(アルケマ社製、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂)、90.0gのIPA(和光純薬社製)、3.0gのTEA(和光純薬社製)および147.0gの蒸留水をガラス容器内に仕込んだ。そして、撹拌翼の回転速度を300rpmとし、系内温度を140〜145℃に保って、30分間撹拌した。その後、水浴につけて、回転速度300rpmのまま撹拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した。さらに、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧ろ過(空気圧0.2MPa)した。これによって、乳白色の均一な酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−1を得た。
【0129】
〔水性分散体E−2〕
酸変性ポリオレフィン樹脂として「ボンダイン HX−8210」(アルケマ社製、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂)を用い、水性分散体E−1の製造の際と同様の操作を行って、酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−2を得た。
【0130】
〔水性分散体E−3〕
酸変性ポリオレフィン樹脂として「ボンダイン HX−8290」(アルケマ社製、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂)を用い、水性分散体E−1の製造の際と同様の操作を行って、酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−3を得た。
【0131】
〔水性分散体E−4〕
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの「ボンダイン AX−8390」(アルケマ社製、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂)、100.0gのNPA(和光純薬社製)、2.5gのTEA(和光純薬社製)および137.5gの蒸留水をガラス容器内に仕込んだ。そして、撹拌翼の回転速度を300rpmとし、系内温度を120℃に保って、20分間撹拌した。その後、空冷にて、回転速度300rpmのまま撹拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した。さらに、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧ろ過(空気圧0.2MPa)した。これによって、乳白色の均一なポリオレフィン樹脂水性分散体E−4を得た。
【0132】
〔水性分散体E−5〕
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの「プリマコール5980I」(ダウケミカル社製、アクリル酸変性ポリオレフィン樹脂)、16.8gのTEA、および223.2gの蒸留水をガラス容器内に仕込んだ。そして、撹拌翼の回転速度を300rpmとし、系内温度を140〜145℃に保って、30分間撹拌した。その後、水浴につけて、回転速度300rpmのまま撹拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した。さらに、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧ろ過(空気圧0.2MPa)して、微白濁の水性分散体E−5を得た。この際、フィルター上に樹脂は殆ど残っていなかった。
【0133】
〔水性分散体E−6〕
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、30.0gのレクスパールEAA「A210K」(日本ポリエチレン社製、アクリル酸変性ポリエチレン樹脂)、105.0gのNPA(和光純薬社製)、7.8gのTEA(和光純薬社製)、および157.2gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとした。そして系内温度を170℃に保って30分間撹拌した。回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、微白濁の水性分散体E−6を得た。この際、フィルター上に樹脂は殆ど残っていなかった。
【0134】
水性分散体E−1〜E−6の製造に使用した酸変性ポリオレフィン樹脂の組成および物性を表1に示す。得られた水性分散体の組成および物性を表2に示す。
【0135】
【表1】

【0136】
【表2】

【0137】
表1に示すように、水性分散体E−1に用いた酸変性ポリオレフィン樹脂「ボンダインLX−4110」と、水性分散体E−2に用いた酸変性ポリオレフィン樹脂「ボンダインLX−8210」と、水性分散体E−3に用いた酸変性ポリオレフィン樹脂「ボンダインHX−8290」と、水性分散体E−4に用いた酸変性ポリオレフィン樹脂「ボンダインAX−8390」とは、いずれも酸変性成分が1〜10質量%の範囲で、本発明に適合するものであった。これに対し、水性分散体E−5に用いた酸変性ポリオレフィン樹脂「プリマコール5980I」は、酸変性成分が10質量%を超えており、本発明に適合しないものであった。また、水性分散体E−6に用いた酸変性ポリオレフィン樹脂「レクスパールEAA A210K」は、(メタ)アクリル酸エステル成分を含有しておらず、本発明に適合しないものであった。
【0138】
<支持フィルム(A)の製造>
支持フィルム(A)としては、所定の市販のフィルムまたは以下に記載のポリエステルフィルムを使用した。
【0139】
〔ポリエステルフィルム(A−1)の作成〕
二軸延伸ポリエステル樹脂フィルム(ユニチカ社製「エンブレットSA−100」、厚さ100μm、Sa 0.037μm)のコロナ処理面にウレタン系接着剤(三井化学ポリウレタン社製 タケラック A−525/タケネートA−52 二液型)を塗布し、塗布したフィルムを、80℃の熱風乾燥機で10秒間乾燥させて、接着塗布量が3g/mとなるようにした。その接着剤塗布面と二軸延伸ポリエステル樹脂フィルム(ユニチカ社製「エンブレットPTHA−25」、厚さ25μm、Sa0.27μm)のコロナ処理面をニップロールにて貼り合わせ(ニップ条件80℃)て、巻き取り、貼り合わせたフィルムを40℃の雰囲気下で72時間エージングを実施してラミネートフィルムを作製した。
【0140】
〔ポリエステルフィルム(A−2)の作成〕
二軸延伸ポリエステル樹脂フィルム(ユニチカ社製「エンブレットSA−100」、厚さ100μm、Sa 0.037μm)のコロナ処理面にウレタン系接着剤(三井化学ポリウレタン社製 タケラック A−525/タケネートA−52 二液型)を塗布し、塗布したフィルムを、80℃の熱風乾燥機で10秒間乾燥させて、接着塗布量が3g/mとなるようにした。その接着剤塗布面と二軸延伸ポリエステル樹脂フィルム(ユニチカ社製「エンブレットSM−25(A)」、厚さ25μm、Sa0.44μm)のコロナ処理面をニップロールにて貼り合わせ(ニップ条件80℃)て、巻き取り、貼り合わせたフィルムを40℃の雰囲気下で72時間エージングを実施してラミネートフィルムを作製した。
【0141】
<カバーフィルムの製造>
実験例1
酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−1と、酸変性ポリオレフィン樹脂固形分100質量部に対して、固形分が50質量部となる量のポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール社製「VC−10」、重合度1,000)を10質量%の水溶液として添加し、かつ、酸変性ポリオレフィン樹脂固形分100質量部に対して、オキサゾリン化合物固形分が5質量部となるようにオキサゾリン化合物の水性溶液(日本触媒社製、「エポクロス WS−500」、固形分濃度40質量%)とを混合して、液状物を得た。この液状物を、二軸延伸ポリエステル樹脂フィルム(ユニチカ社製「エンブレットSA−100」、厚さ100μm、Sa0.037μm)のコロナ処理面に、マイヤーバーを用いてコートした後、120℃で50秒間乾燥させ、70℃で2日間エージング処理をおこない、ポリエステルフィルム上に0.6μmの樹脂層を形成したカバーフィルムを得た。得られたカバーフィルムの物性を表3に示す。
【0142】
実験例2〜5
実験例1における、酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−1の代わりに、E−2〜E−5を用いた。それ以外は実験例1と同様の操作を行って、カバーフィルムを得た。得られたカバーフィルムの物性を表3または表5に示す。
【0143】
実験例6〜13
オキサゾリン化合物水性溶液「WS−500」の使用量とポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール社製「VC−10」、重合度1,000)の使用量を、表3に記載の量に変更した以外は実験例1と同様にして液状物を得た。この液状物を用いて実験例1と同様の操作によりカバーフィルムを得た。得られたカバーフィルムの物性を表3に示す。
【0144】
実験例14
酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−1と、酸変性ポリオレフィン樹脂固形分100質量部に対して、オキサゾリン化合物固形分が5質量部となるようにオキサゾリン化合物の水性溶液(日本触媒社製、「エポクロス WS−500」、固形分濃度40質量%)とを混合して、液状物を得た。この液状物を、二軸延伸ポリエステル樹脂フィルム(ユニチカ社製「エンブレットSA−100」、厚さ100μm)のコロナ処理面に、マイヤーバーを用いてコートした後、160℃で50秒間乾燥させ、70℃で2日間エージング処理をおこない、ポリエステルフィルム上に0.6μmの樹脂層を形成したカバーフィルムを得た。得られたカバーフィルムの物性を表5に示す。
【0145】
実験例15〜17
オキサゾリン化合物水性溶液「WS−500」の使用量とポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール社製「VC−10」、重合度1,000)の使用量を、表3記載の量に変更した以外は実験例1と同様にして液状物を得た。この液状物を用いて実験例1と同様の操作によりカバーフィルムを得た。得られたカバーフィルムの物性を表5に示す。
【0146】
実験例18
ポリビニルアルコールを日本酢ビ・ポバール社製「JC−40」(重合度4,000)に変更した以外は実験例1と同様にして液状物を得た。この液状物を用いて実験例1と同様の操作によりカバーフィルムを得た。得られたカバーフィルムの物性を表4に示す。
【0147】
実験例19
実験例1におけるオキサゾリン化合物水性溶液に代えて、カルボジイミド化合物の水分散体を用いた。詳細には、酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−1とカルボジイミド化合物の水分散体(日清紡社製、「カルボジライト E−02」、固形分濃度40質量%)とを、酸変性ポリオレフィン樹脂固形分100質量部に対してカルボジイミド化合物固形分が5質量部となるように混合して液状物を得た。この液状物を用いて実験例1と同様の操作によりカバーフィルムを得た。得られたカバーフィルムの物性を表4に示す。
【0148】
実験例20
二軸延伸ポリエステル樹脂フィルムの代わりにポリエステルフィルム(A−1)のPTHA面に塗布した以外は実験例1と同様の操作によりカバーフィルムを得た。得られたカバーフィルムの物性を表4に示す。
【0149】
実験例21
二軸延伸ポリエステル樹脂フィルムの代わりにユニチカ社製「エンブレットPET−12」(厚さ12μm、Sa 0.029μm)のコロナ処理面に塗布した以外は実験例1と同様の操作によりカバーフィルムを得た。得られたカバーフィルムの物性を表4に示す。
【0150】
実験例22〜25
樹脂層(B)コート後の乾燥条件およびエージング条件を表4に記載した条件に変更した以外は実験例1と同様の操作によりカバーフィルムを得た。得られたカバーフィルムの物性を表4に示す。
【0151】
実験例26
実験例1における、酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−1の代わりに、E−6を用いた。それ以外は実験例1と同様の操作を行って、カバーフィルムを得た。得られたカバーフィルムの物性を表5に示す。
【0152】
実験例27
実験例1における、架橋剤WS−500の代わりに、イソシアネート化合物の水性溶液(第一工業製薬製、「E−37」、固形分濃度40質量%)を用いた。それ以外は実験例1と同様の操作を行って、カバーフィルムを得た。得られたカバーフィルムの物性を表5に示す。
【0153】
<保護層用塗液の製造>
〔保護層用塗液P−1の製造〕
セルロース・アセテート・ブチレート(以下CABと略す)(イーストマン・コダック社製:グレード;CAB−551−0.2)を9.5質量部とポリオキシアンモニウム塩を0.5質量部を、トルエン:65質量部、キシレン:7質量部、酢酸セルソルブ:10質量部、エタノール:18質量部の溶媒に溶かした。
【0154】
〔保護層用塗液P−2の製造〕
ポリビニルアルコール(以下PVAと略す)(日本合成化学製:グレード;KH−17)20質量部、アクリルエマルジョン(固形分:76質量部)(ハリマ化成製:グレード;TA−523 エマルジョンの粒径は0.06μm、エマルジョン乾燥後の吸水率は2%)、紫外線吸収剤(オリエント化学製:VF−Y4126)4質量部の固形分を、水:700質量部、エタノール:300質量部に溶かした。
【0155】
〔保護層用塗液P−3の製造〕
ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達製:グレード;HPC−L)20質量部、アクリルエマルジョン(固形分:76質量部)(ハリマ化成製:グレード;TA−523)、紫外線吸収剤(オリエント化学製:VF−Y4126)4質量部の固形分を、水:700質量部、エタノール:300質量部に溶かした。
【0156】
<感光性樹脂構成体の製造>
実施例1
・感光性樹脂組成物層付きベースフィルムの製造
(1)スルホン酸基含有ポリエステルジオールの合成
かきまぜ機、窒素導入口及び流出管を取り付けた1,000mlセパラブルフラスコに、5−スルホイソフタル酸ナトリウムジメチルエステル296g、エチレングリコール310g、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロシンナマミド)[IRGANOX1098:チバガイギー製]0.43g、酢酸亜鉛0.43gを仕込み、窒素雰囲気中において、200℃で5時間反応させた後、減圧下で未反応のエチレングリコールを留去して末端に水酸基を有する淡黄色のスルホン酸基含有ポリエステルジオールを得た。このものの数平均分子量は水酸基価の測定より492であった。
【0157】
(2)スルホン酸基含有ポリウレタンの合成
かきまぜ機、窒素導入口及び流出管を取り付けた3,000mlセパラブルフラスコに(1)で得たスルホン酸基含有ポリエステルジオール39.9g、数平均分子量2,439の両末端に水酸基を有するポリイソプレンジオール[ポリIP:出光石油化学製]377.7g、オクチル化ジフェニルアミン[NOCRAC AD:大内新興化学製]1.4gを仕込んだ後、ジメチルアセトアミド1000gと2−クロルトルエン1000gを加えて110℃で均一溶液とした。次にジブチルチンジラウレート0.11gとスタナウスオクトエート0.34gを添加し、更にキシリレンジイソシアナート43.1gを滴下しながら110℃で3時間反応させた後、ジメチルアセトアミドと2−クロルトルエンを減圧留去して均一透明なスルホン酸基含有ポリウレタンを得た。
【0158】
(3)感光性樹脂組成物の作製
親水性ポリマーとして(2)で得たスルホン酸基含有ポリウレタン49.5gを窒素雰囲気下、150℃で加圧ニーダーを用いて、エラストマーとしてスチレン・イソプレンブロックコポリマー[カリフリックスTR1107:シェル化学製]20g、界面活性剤としてラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム2g、不飽和ポリウレタン類としてポリブタジエンジアクリレート[BAC−45:大阪有機化学製]5g、脂肪族ジアクリレート[C−2000:サートマー製]1g、エチレン性不飽和モノマーとしてジオクチルフマレート2g、不飽和ポリウレタン類としてマレイン化変性ポリブタジエン[ME−1000−80:日本石油化学製]10g、光重合開始剤として2,2−ジメトキシフェニルアセトフェノン2g、可塑剤としてN−エチルトルエンスルホンアミド7.5g、保存安定剤として2,2−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.1gと混練し、均一透明な感光性樹脂組成物を得た。
【0159】
(3)で得た感光性樹脂組成物を、易接着ポリエステルフィルム(ユニチカ社製「エンブレットUVL−125」、厚さ125μm)の易接着面と二軸延伸ポリエステルフィルム(ユニチカ社製「エンブレットS−50LS、厚さ50μm)との間に挟み、2mmのスペーサーを用いて、130℃で油圧200kg/cm2の条件でプレス成形を行い、一定厚みの凸版印刷用感光性樹脂構成体の前駆体を得た。当該前駆体から二軸延伸ポリエステルフィルムを剥離して、感光性樹脂組成物層付きベースフィルムを得た。
【0160】
・保護層付きカバーフィルムの製造
実験例1で得られたカバーフィルムの樹脂層(B)塗付面に保護層用塗液P−1をグラビアロールで乾燥厚み1.5μmになるようコーティングして乾燥させた。このフィルムの吸水率は3%であった。次いで、保護層用塗液P−1の塗膜の上に同じくグラビアロールで保護層用塗液P−2を塗布してこの層の厚みとして3.5μmの膜を得、保護層付きカバーフィルムを得た。
【0161】
・感光性樹脂構成体の製造
前記感光性樹脂組成物層付きベースフィルムの感光性樹脂組成物層表面に、保護層付きカバーフィルムを、保護層と感光性樹脂組成物層とが接するように重ね合わせ、2mmのスペーサーを用いてプレス機で、130℃で油圧200kg/cmの条件で4分間かけて成形し、凸版印刷版用感光性樹脂構成体を得た。感光性樹脂組成物層の厚みは2mmであった。
【0162】
実施例2〜実施例20、実施例23、/比較例1〜5、10〜11
実施例1で使用したカバーフィルムの代りに所定の実験例で得られたカバーフィルムを用いたこと、所定の保護層用塗液を用いたこと、以外は、実施例1と同様にして凸版印刷用感光性樹脂構成体を得た。
実施例23で得られた構成体は、カバーフィルムとベースフィルムの厚みの差が大きいため、得られた構成体は若干カールしていた。
比較例1で得られた構成体は、樹脂層(B)において本発明で規定する変性ポリオレフィン以外の樹脂を用いたために、剥離強度の高いカバーフィルムとなった。そのため、カバーフィルムが保護層と強固に密着しており、カバーフィルムを剥離する際に、カバーフィルムに保護層の付着が認められ、保護層との良好な剥離性は発現しなかった。
比較例2で得られた構成体は、樹脂層(B)にPVAを配合しなかったために、樹脂層塗布後の160℃の乾燥で密着度が増し、剥離強度が高いカバーフィルムとなった。そのため、カバーフィルムが保護層と強固に密着しており、カバーフィルムを剥離する際に、カバーフィルムに保護層の付着が認められ、保護層との剥離性に劣った。
比較例3で得られた構成体は、樹脂層(B)に配合したPVAの量が多いために、コート液の安定性が悪く、一部増粘した。そのため、均一に塗布することができず、その結果保護層との密着性が部分的に悪いものとなった。
比較例4で得られた構成体は、樹脂層(B)に架橋剤を配合しなかったために、コート液の安定性が悪く、一部増粘した。そのため、均一に塗布することができず、その結果保護層との密着性が部分的に悪いものとなった。
比較例5で得られた構成体は、樹脂層(B)に配合した架橋剤の量が多すぎたために剥離強度の高いカバーフィルムとなった。そのため、保護層との剥離性に劣るものとなった。
比較例10で得られた構成体は、樹脂層(B)において本発明で規定する変性ポリオレフィン以外の樹脂を用いたために、保護層との密着性に劣るカバーフィルムとなった。そのため、感光性樹脂構成体を製造する工程で、カバーフィルムが保護層から一部剥離する問題が生じた。
比較例11で得られた構成体は、樹脂層(B)において本発明で規定する架橋剤以外の架橋剤を用いたために、保護層との密着性に劣るカバーフィルムとなった。そのため、感光性樹脂構成体を製造する工程で、カバーフィルムが保護層から一部剥離する問題が生じた。
【0163】
実施例21
実験例1で得られたカバーフィルムの樹脂層(B)塗付面に保護層用塗液P−2をグラビアロールで乾燥厚み3.5μmになるようコーティングして乾燥させ、保護層付きカバーフィルムを得た。実施例1と同様の方法により、凸版印刷用感光性樹脂構成体を得た。
若干、剥離時の作業性が悪くなるが、特に問題となるレベルではなかった。
【0164】
実施例22
保護層用塗液P−2の代わりに保護層用塗液P−3を用いたこと以外、実施例21と同様の方法により、凸版印刷用感光性樹脂構成体を得た。
若干、剥離時の作業性が悪くなるが、特に問題となるレベルではなかった。
【0165】
比較例6
二軸延伸ポリエステル樹脂フィルム(ユニチカ社製「エンブレットSA−100」、厚さ100μm、Sa 0.037μm)のコロナ処理面に保護層用塗液P−1をグラビアロールでに乾燥厚み1.5μmになるようコーティングして乾燥させた。次いで、保護層用塗液P−1の塗膜の上に同じくグラビアロールで保護層用塗液P−2を塗布してこの層の厚みとして3.5μmの膜を得、保護層付きフィルムを得た。
【0166】
この保護層付きフィルムを保護層付きカバーフィルムの代わりに用いたこと以外、実施例1と同様の方法により、凸版印刷版用感光性樹脂構成体を得た。
樹脂層(B)をコートしなかったために、剥離強度の高いカバーフィルムとなった。そのため、保護層との剥離性に劣るものとなった。
【0167】
比較例7
ポリエステルフィルム(A−2)のSM−25(A)面に保護層用塗液P−1をグラビアロールでに乾燥厚み1.5μmになるようコーティングして乾燥させた。次いで、保護層用塗液P−1の塗膜の上に同じくグラビアロールで保護層用塗液P−2を塗布してこの層の厚みとして3.5μmの膜を得、保護層付きフィルムを得た。
【0168】
この保護層付きフィルムを保護層付きカバーフィルムの代わりに用いたこと以外、実施例1と同様の方法により、凸版印刷版用感光性樹脂構成体を得た。
樹脂層(B)をコートしなかったために、剥離強度の高いカバーフィルムとなった。そのため、保護層との剥離性に劣るものとなった。またポリエステルフィルム(A−2)の表面粗度が高いために表面粗さが保護層に転写されて、感光工程で光が散乱されるため画像再現の解像度が低下した。
【0169】
比較例8
カバーフィルムとして、フッ素塗布離型フィルム(ユニチカ社製「エンブレットFFT−100」厚さ100μm)を用いた。フッ素塗付面に保護層用塗液P−1をコートしたが、ハジキが認められ、均一にコートすることができなかった。
【0170】
比較例9
カバーフィルムとして、シリコーン塗布離型フィルムユニチカ社製「エンブレットSC−125」厚さ125μmを用いた。シリコーン塗付面に保護層用塗液P−1をコートしたが、ハジキが認められ、均一にコートすることができなかった。
【0171】
【表3】

【0172】
【表4】

【0173】
【表5】

【符号の説明】
【0174】
1:ベースフィルム
2:感光性樹脂組成物層
3:保護層
4:カバーフィルム
20:露光部
41:支持フィルム(A)
42:樹脂層(B)
50:ネガフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水系凸版印刷用感光性樹脂構成体の一部を構成し、製版時において剥離されるカバーフィルムであって、
表面に樹脂層を有し、該樹脂層が、酸変性成分1〜10質量%および(メタ)アクリル酸エステル成分0.5〜40質量%の酸変性ポリオレフィン樹脂、架橋剤およびポリビニルアルコールを含有し、架橋剤がカルボジイミド化合物および/またはオキサゾリン化合物にて構成され、
酸変性ポリオレフィン樹脂100重量部に対する架橋剤の含有量が1〜30質量部であり、ポリビニルアルコールの含有量が5〜100質量部であることを特徴とするカバーフィルム。
【請求項2】
ポリエステルフィルム上に前記樹脂層が設けられてなる請求項1に記載のカバーフィルム。
【請求項3】
前記樹脂層におけるシリコーン化合物、フッ素化合物、ワックス類および界面活性剤の合計含有量が、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して1質量部以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のカバーフィルム。
【請求項4】
カバーフィルムの前記樹脂層面にアクリル系粘着剤を用いた粘着材料を、70℃で20時間加熱圧着して測定したときの樹脂層と粘着剤との間の剥離強度が0.5〜3.5N/cmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカバーフィルム。
【請求項5】
ベースフィルム、水溶性感光性樹脂組成物層、水溶性保護層、および請求項1〜4のいずれかに記載のカバーフィルムの順に積層された構造を有し、カバーフィルムは前記樹脂層が保護層と隣接するように積層されたことを特徴とする水系凸版印刷用感光性樹脂構成体。
【請求項6】
保護層が、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性ナイロン、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンイミン、および水溶性セルロース誘導体から成る群から選ばれる1種類以上の重合体を含有することを特徴とする請求項5に記載の水系凸版印刷用感光性樹脂構成体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−191352(P2010−191352A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37857(P2009−37857)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】