説明

分子線源,分子線結晶成長装置,分子線結晶成長方法

【課題】ポートの数を増やすことなく,還元性ガスを分子線結晶成長装置の成長室内に導入することを可能にする分子線源を提供する。
【解決手段】本発明の分子線源は,結晶成長のための分子線を放出する分子線放出部と,前記分子線放出部に結合され,前記分子線を加熱して分解するクラッキングゾーンとを備え,前記分子線放出部と前記クラッキングゾーンの間に還元性ガスを導入するための還元性ガス導入部を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,分子線源,分子線結晶成長装置,及び分子線結晶成長方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分子線結晶成長方法は,半導体レーザや高速電子デバイスの半導体層を形成する方法の1つであり,現在まで盛んに研究開発され,実用化されている。分子線結晶成長方法は,通常,分子線結晶成長装置を用いて実施される。
【0003】
分子線結晶成長装置は,特許文献1等に示すように,内部に設けられた基板上に半導体結晶を成長させる成長室と,前記成長室に取り付けられた分子線源とを備えている。分子線源において結晶成長のための材料が蒸発・昇華されて分子線が生成され,この分子線が成長室内に放出され,この分子線が成長室内の基板に供給されて基板上に半導体結晶が成長し,半導体層が形成される。
【0004】
分子線結晶成長装置を用いて形成される半導体層としては,AlGaInPや,GaAs等種々の化合物半導体層が例示される。分子線結晶成長装置を用いて化合物半導体層を形成する場合,通常,分子線源は,化合物半導体を構成する元素の数以上準備される。
【0005】
分子線源は,通常,結晶成長のための材料を収容するるつぼと,るつぼ中の材料を加熱するためのヒーターを有しており,このヒーターによって,るつぼ内の材料を加熱することによって,るつぼ内の材料をガス化して分子線を生成する。
【0006】
材料がリンや砒素である場合,るつぼから蒸発する分子線は,大部分がP4やAs4の状態で存在するが,リンの場合は実際に結晶成長に寄与するのはP2であり,砒素の場合はAs2の状態の方が結晶成長時の付着係数が高く,効率的に成長ができる。従って,分子線中のP4やAs4をそれぞれP2やAs2に分解することが好ましい。
【0007】
分子線中のP4やAs4をそれぞれP2やAs2に分解するために,るつぼと成長室との間に,分子線を加熱してP4やAs4をそれぞれP2やAs2に分解するクラッキングゾーンが設けられる技術が知られている(例えば,特許文献2を参照)。
【0008】
また,結晶成長中又は成長前に成長室内に水素ガスを導入し,水素の還元作用を用いて形成される半導体層中の酸素濃度の低減することが知られている。さらに,特許文献1に記載のように、基板上に半導体層を成長させる前に、水素ガスを用いて基板表面の炭化物を除去する技術も知られている。
【特許文献1】特開平1−301584号公報
【特許文献2】特開昭62−60870号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載された方法で水素ガスを成長室内に同様するためには,水素ガス導入用のポートを準備する必要があり,既存の分子線結晶成長装置にこのようなポートを設けるためには成長室等の改造が必要であり,多大なコストが発生する。また,新たに設計される装置についても,ポートの数が増えると,成長室の強度低下や真空リークの可能性の増大といった問題が生じる場合がある。
【0010】
そこで,ポートの数を増やすことなく,水素ガス等の還元性ガスを成長室内に導入するための簡易な方法が望まれている。
【0011】
本発明は,このような事情に鑑みてなされたものであり,ポートの数を増やすことなく,還元性ガスを分子線結晶成長装置の成長室内に導入することを可能にする分子線源を提供するものである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0012】
本発明の分子線源は,結晶成長のための分子線を放出する分子線放出部と,前記分子線放出部に結合され,前記分子線を加熱して分解するクラッキングゾーンとを備え,前記分子線放出部と前記クラッキングゾーンの間に還元性ガスを導入するための還元性ガス導入部を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の分子線源を分子線結晶成長装置に用いれば,還元性ガスは,分子線放出部とクラッキングゾーンの間の還元性ガス導入部に導入され,導入された還元性ガスはクラッキングゾーンを介して分子線結晶成長装置の成長室内に導入される。従って,還元性ガス導入用に新たにポートを設けることなく,還元性ガスを成長室内に導入することができる。
【0014】
本発明は,好ましくは,以下の実施形態で実施される。
【0015】
好ましくは,前記還元性ガス導入部と前記分子線放出部との間に第1弁と,前記還元性ガス導入部と前記クラッキングゾーンの間に第2弁と,前記還元性ガス導入部を真空排気するための真空排気装置とをさらに備える。この場合,例えば,第1弁及び第2弁を閉じた状態で還元性ガス導入部内を真空排気することによって前工程等からの残留ガスを除去し,次に,成長室内に基板を設置した後に第2弁を開いて還元性ガス導入部内に還元性ガスを導入することによって成長室内の基板,成長室及び還元性ガス導入部等のクリーニングを行い,次に,第1弁を開いて分子線を放出させ,成長室内の基板上に半導体結晶を成長させることが可能になる。
【0016】
好ましくは,前記分子線放出部から前記クラッキングゾーンの間の部材を加熱するヒーターをさらに備える。分子線が冷えると固化又は液化して壁面に付着することがあるが,本実施形態によれば,分子線放出部からクラッキングゾーンの間の部材が加熱されているので,分子線が冷えて液化又は固化してこの間の部材に付着することが防止される。
【0017】
本発明は,内部に設けられた基板上に半導体結晶を成長させる成長室と,前記クラッキングゾーンを通じて前記成長室内に前記還元性ガス及び前記分子線を導入する上記構成の分子線源とを備える分子線結晶成長装置も提供する。上記のように,本発明の分子線源を分子線結晶成長装置に用いれば,還元性ガス導入用に新たにポートを設けることなく,還元性ガスを成長室内に導入することができる。
【0018】
本発明は,上記構成の分子線結晶成長装置を用いた分子線結晶成長方法であって,前記成長室内に前記基板を設置し,前記分子線放出部から前記分子線を放出させ,前記クラッキングゾーンにおいて前記分子線を加熱して分解させ,分解された分子線を前記成長室内に導入して前記基板に接触させることによって前記基板上に前記半導体結晶を成長させる工程を備え,前記分子線の放出前に又は放出中に前記還元性ガス導入部内に還元性ガスを導入することを特徴とする分子線結晶成長方法も提供する。
本発明の分子線結晶成長方法では,還元性ガス導入部内に還元性ガスが導入され,導入された還元性ガスは,クラッキングゾーンを通って成長室内に導入される。分子線の放出前に還元性ガスが導入される場合,還元性ガスによって基板や成長室がクリーニングされる。分子線の放出中に還元性ガスが導入される場合,分子線中の分子中の酸化物もクリーニングされる。
【0019】
好ましくは,前記還元性ガスの導入前に前記還元性ガス導入部内を真空排気する工程をさらに備える。この場合,前工程からの残留ガスが還元性ガス導入部内に存在しても,この残留ガスを確実に除去することができる。
【0020】
好ましくは,前記還元性ガスは,第3弁を有する還元性ガス導入管を通じて前記還元性ガス導入部に導入され,第3弁の手前での前記還元性ガスの圧力は,1×104Pa以上である。還元性ガス導入部内の分子線の圧力は,通常102Pa以下であるので,第3弁の手前での前記還元性ガスの圧力を1×104Pa以上にすることによって,還元性ガス導入部内の分子線が還元性ガス導入管に流入するのを防止することができる。
【0021】
好ましくは,前記還元性ガスは,水素ガスである。水素ガスは,還元力に優れており,かつ還元された物質及び水素自体が結晶成長(エピタキシャル成長)に直接悪影響を及ぼさないからである。水素ガスの精製には,パラジウム式精製器を用いることが好ましい。パラジウム式精製器は,原理的に水素以外の酸素や水分などの不純物を導入することが無いので,パラジウム式精製器を用いることによって,水素ガスを超高純度に精製することができる。
【0022】
好ましくは,前記分子線は,V族の材料(例えば,リン又は砒素)又はVI族の材料(例
えば,硫黄、セレン)からなる。III−V族化合物半導体を作製するときは,通常,V族分子線を連続的に供給し,III族分子線の供給をシャッターで制御するので,V族分子線の供給に本発明の分子線源を用いれば,V族分子線と共に還元性ガスも連続的に供給することができる。また,II−VI族化合物半導体を作製するときは,通常,VI族分子線を連続的に供給し,II族分子線の供給をシャッターで制御するので,VI族分子線の供給に本発明の分子線源を用いれば,VI族分子線と共に還元性ガスも連続的に供給することができる。
【0023】
好ましくは,前記分子線は,リン(好ましくは,白リン)からなる。本発明の分子線源を用いれば,リンを還元性ガスによって純化することができる。また,分子線がリンからなる場合,好ましくは,分子線は,クラッキングゾーンにおいて1000〜1300℃に加熱される。分子線放出部から放出される分子線中のリンは,大部分がP4の状態で存在しているが,クラッキングゾーンにおいて1000℃以上に加熱されることによってP4→P2に分解される。また,加熱温度が1300℃以下の場合,還元性ガスを導入することによって成長室内の残留酸化物量を十分に少なくすることができることが実験的に明らかになったからである。
【0024】
好ましくは,前記分子線は,砒素からなる。本発明の分子線源を用いれば,砒素材料を還元性ガスによって純化することができる。砒素は,一般に純度が低いので還元性ガスによる純化の効果が大きい。また,分子線が砒素からなる場合,分子線は,クラッキングゾーンにおいて好ましくは400〜800℃,さらに好ましくは500〜800℃,さらに好ましくは600〜800℃に加熱される。400℃以上に加熱すると,砒素分子がクラッキングゾーンに付着することを防止でき,500℃以上に加熱すると,砒素分子をAs4からAs2に分解することができ,600℃以上に加熱すると,砒素分子をAs4からAs2により確実に分解することができるからである。また,加熱温度が800℃以下の場合,還元性ガスを導入することによって成長室内の残留酸化物量を十分に少なくすることができることが実験的に明らかになったからである。
【0025】
ここまで示した好ましい実施形態は,適宜組み合わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下,本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図面や以下の記述中で示す構成は,例示であって,本発明の範囲は,図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0027】
1.第1実施形態
1−1.分子線源及び分子線結晶成長装置の構成
図1は,本発明の第1実施形態に係る,分子線源1と,分子線源1が取り付けられた成長室2とを備える分子線結晶成長装置3を示す。
【0028】
(1)分子線源の説明
まず,分子線源1について説明する。
【0029】
分子線源1は,結晶成長のための分子線を放出する分子線放出部5と,分子線放出部5に結合され,分子線を加熱して分解するクラッキングゾーン7とを備え,分子線放出部5とクラッキングゾーン7の間に還元性ガスを導入するための還元性ガス導入部9を有している。
【0030】
分子線放出部5は,結晶成長のための分子線を放出可能なものであれば,その構成は限定されない。分子線放出部5の構成の一例は,固体又は液体材料を収容するためのるつぼと,るつぼ中の材料を加熱するためのヒーターとを有するものである。この場合,分子線放出部5では,るつぼ中の材料がヒーターによって加熱されて気化(蒸発又は昇華)し,分子線が放出される。
また,クラッキングゾーン7は,分子線を加熱して分解することできるものであれば,その構成は限定されない。クラッキングゾーン7の構成の一例は,分子線が通過する分子線流路と,分子線流路中の分子線を加熱するためのヒーターとを有するものである。
【0031】
還元性ガス導入部9は,分子線放出部5とクラッキングゾーン7の間に配置され,還元性ガスを導入することができるものであれば,その構成は,限定されない。図1では,還元性ガス導入部9は,容器状に形成されているが,例えば,分子線放出部5とクラッキングゾーン7とを配管で直接接続し,この配管を還元性ガス導入部9として扱ってもよい。
分子線は,例えば,リンや砒素からなり,分子線放出部5において,それぞれP4及びAs4として分子化される。P4及びAs4は,クラッキングゾーン7において,それぞれP2及びAs2に分解される。
【0032】
還元性ガス導入部9と分子線放出部5との間の第1配管11に第1弁12が設けられており,第1弁12の開閉によって還元性ガス導入部9と分子線放出部5の間のガスの流れが制御される。還元性ガス導入部9とクラッキングゾーン7の間の第2配管13に第2弁14が設けられており,第2弁14の開閉によって還元性ガス導入部9とクラッキングゾーン7の間のガスの流れが制御される。
【0033】
還元性ガス導入部9には,第3弁17を有する還元性ガス導入管15が連結されており,還元性ガス導入管15を介して還元性ガスが還元性ガス導入部9内に導入される。還元性ガス導入管15には,還元性ガス供給ライン(図示せず)が接続されている。第3弁17の開閉によって還元性ガス供給ラインから還元性ガス導入部9へのガスの流れが制御される。還元性ガスの種類は,特に限定されないが,水素ガスやメタンガスが例示される。還元力が高い点や成膜に悪影響を与えにくいという観点から、水素ガスが好ましい。水素ガスを採用する場合,還元性ガスは,パラジウム式精製器を用いて精製することによって高純度化した後に還元性ガス導入部9内に導入することが好ましい。パラジウム式精製器としては,日本パイオニクス社製の水素高純度精製装置(型式 JLS−E,JS)等を使用することができる。
【0034】
還元性ガス導入部9には,還元性ガス導入部9を真空排気するための真空排気装置19が接続されている。真空排気装置19の種類は、特に限定されないが,真空排気装置19は、例えば,イオンポンプ又はターボポンプである。還元性ガス導入部9と真空排気装置19の間の真空排気管21には,第4弁23が設けられており,第4弁23によって還元性ガス導入部9と真空排気装置19の間のガスの流れが制御される。
【0035】
分子線放出部5からクラッキングゾーン7の間の部材の周囲には,ヒーター25が設けられ,分子線放出部5から放出された分子線が冷えて液化又は固化して付着するのが防止される。分子線放出部5からクラッキングゾーン7の間の部材とは,具体的には,第1配管11,第1弁12,還元性ガス導入部9,第2配管13及び第2弁14である。
【0036】
(2)成長室
次に,成長室2について説明する。
【0037】
成長室2は,内部に設けられた基板27上に半導体結晶を成長させることができるものであれば,その構成は,限定されない。分子線源1は,クラッキングゾーン7を通じて成長室2内に還元性ガス及び分子線28を成長室2内に導入する。
この分子線28が基板27に接触することによって基板27上に半導体結晶が成長する。基板27は,成長室2に設けられた基板マニピュレータ29上に設置される。基板マニピュレータ29は,基板27を保持,回転及び加熱することができる。
【0038】
成長室2内には,シュラウド31が設置されている。シュラウド31は,成膜中に液体窒素が充填されて冷却され,不純物ガス等を吸着する。成長室2には,残留ガス分析計32が設置されており,成長室2内の気相中に含まれる残留酸化物量を測定できるようになっている。成長室2内には,真空排気装置19とは別に真空排気装置(図示せず)が設けられており,この真空排気装置によって成長室2内が真空排気される。
【0039】
図1では,分子線源1のみを示しているが,通常,成長室2には,互いに異なる種類の分子線を放出する複数の分子線源が取り付けられている。N元系化合物半導体結晶を成長させるには,N元素以上の分子線を導入する必要があるので,分子線源1を含めてN本以上の分子線源が取り付けられる。分子線源1以外の分子線源は,還元性ガス導入部9やクラッキングゾーン7を有するものであってもよく,単に材料を収容するるつぼとるつぼ中の材料を加熱するヒーターを備えるものであってもよい。また,各分子線源の前には通常,シャッターが設けられ,このシャッターによって各分子線源からの分子線の供給が制御される。
【0040】
N元素の分子線は,それぞれ固有の蒸気圧を有しているが,これらのうち最も高い蒸気圧を有する元素の分子線が還元性ガス導入部9及びクラッキングゾーン7を有する分子線源1から導入されるようにすることが好ましい。分子線源1は,成長室2や基板27のクリーニングのために還元性ガスのみを放出したり,分子線とともに還元性ガスを放出したりするので,放出するガスを切り替える必要があるが,分子線の蒸気圧が高いほど,この切り替えをスムーズに行えるからである。
【0041】
好ましくは,複数種類の分子線が,前記成長室内に導入され,本発明の分子線源から前記成長室内に導入される分子線は,前記複数種類の分子線のうち,蒸気圧が最も高い。この場合,還元性ガス導入部等に分子線が付着しにくく,また,前工程からの残留ガスを真空排気する場合,真空排気を比較的短時間で行うことができるからである。
【0042】
1−2.分子線結晶成長方法
次に,分子線結晶成長装置3を用いた分子線結晶成長方法について説明する。
【0043】
(1)基板設置工程
まず,成長室2内に基板27を設置する。より具体的には,真空装置を用いて真空排気された成長室2内に,図示しない搬送装置を用いて基板27を搬入し,基板マニピュレータ29上に固定し,基板27を所望温度に加熱する。このとき,いずれの分子線源からも分子線は,放出されないように弁又はシャッターが閉じられている。
【0044】
(2)クリーニング工程
次に,還元性ガス導入部9内に還元性ガスを導入し,この還元性ガスをクラッキングゾーン7を通じて成長室2に導入し,基板27に接触させる。これによって基板27及び成長室2のクリーニングを行う。この工程は,任意工程であり,クリーニングが不要な場合には省略してもよい。クリーニング工程は,より具体的には,(1)第1〜第3弁12,14,17を閉じた状態で第4弁23を開き,真空排気装置19を作動させることによって還元性ガス導入部9内を真空排気して前工程からの残留ガスを除去し,(2)次に,第4弁23を閉じ,第2及び第3弁14,17を開くことによって還元性ガス導入部9内に還元性ガスを導入し,導入した還元性ガスをクラッキングゾーン7を通じて成長室2に導入し,基板27に接触させることによって行う。このとき,クラッキングゾーン7において還元性ガスを1000〜1300℃に加熱して活性化してもよい。これによって,より効率的なクリーニングが可能になる。分子線放出部5内の固体又は液体の材料は,この時点では加熱していなくてもよいが,加熱しておいてもよい。
【0045】
(3)分子線放出工程
次に,分子線放出部5から分子線を放出させる。具体的には,分子線放出部5内に収容されている固体又は液体の材料を加熱することによって気化させ,第1弁12を開くことによって分子線放出部5から分子線を放出させることができる。分子線と共に還元性ガスを供給する場合には,第3弁17は,開いたままにしておき,分子線供給時には還元性ガスを供給しない場合は,第3弁17を閉じる。第3弁17を開いておく場合,分子線が還元性ガス導入管15内に流れ込まないように,第3弁17の手前での前記還元性ガスの圧力が,1×104Pa以上になるように構成することが好ましい。分子線放出部5からクラッキングゾーン7の間で分子線が冷えて液化又は固化して,この間の部材に付着しないように,ヒーター25を用いてこの間の部材を加熱しておくことが好ましい。ヒーター25の適切な温度は,材料の蒸気圧によるが,材料の付着を防止する観点からは,リン(白リン)の場合100℃以上,砒素の場合,250℃以上が好ましい。また,ヒーター25の温度を高くしすぎると,配管等から不純物が放出されたり,弁の内部機構に異常が生じたりすることがあるので,ヒーター25の温度は,350℃以下が好ましい。
【0046】
(4)分子線分解工程
次に,クラッキングゾーン7において分子線を加熱して分解させる。この工程は,具体的には,分子線の分解に必要な温度に加熱されたクラッキングゾーン7を分子線に通過させることによって行う。「分子線の分解」とは,例えば,P4やAs4といった4原子分子をP2やAs2といった2原子分子にすることを意味する。分子線の分解に必要な温度とは,リンの場合1000℃程度,砒素の場合500℃程度である。また,リンの場合,クラッキングゾーン7の温度が1300℃より低い場合,砒素の場合,クラッキングゾーン7の温度が800℃より低い場合に還元性ガスを導入することによって成長室2内の残留酸化物量を十分に少なくすることができることが実験的に分かっている。従って,クラッキングゾーン7の温度は,リンの場合は,1000℃〜1300℃,砒素の場合は,500〜800℃にすることが好ましい。
【0047】
(5)半導体結晶成長工程
次に,上記工程で分解された分子線28を成長室2内に導入して基板上27に供給することによって基板27上に半導体結晶を成長させる。成長室2内には,分子線源1以外の図示しない分子線源からも,それぞれのるつぼに収容された材料の分子線を放出させ,分子線源1からの分子線と共に基板27に供給する。
【0048】
分子線28と共に還元性ガスを成長室2内に導入する場合,還元性ガスは,成長室2内の還元性ガスの分圧が1×10-5Pa〜1×10-2Paになるように導入されることが好ましい。この範囲が好ましい理由は,成長室2内の還元性ガスの分圧が1×10-5Pa以上になるように還元性ガスを導入した場合,成長室2内での残留酸化物量が十分に少なくなることが実験的に明らかになったこと,及び成長室内での還元性ガスの分圧が1×10-2Pa以下の場合にはイオンポンプ又はターボポンプが安定して稼動することである。
【0049】
2.第2実施形態
図2は,本発明の第2実施形態に係る,分子線源1と,分子線源1が取り付けられた成長室2とを備える分子線結晶成長装置3を示す。
【0050】
第2実施形態は,第1実施形態に類似しているが,ヒーター25が設けられている領域の回りに断熱部材33が設けられている点が異なっている。分子線放出部5から放出される分子線の種類によっては,付着防止のためにヒーター25を高温する必要があるが,本実施形態では,ヒーター25が設けられている領域の回りに断熱部材33が設けられているので,オペレータが誤ってヒーター25に触れることが防止され,安全性が向上する。
【0051】
以上の実施形態で示した種々の特徴は,互いに組み合わせることができる。1つの実施形態中に複数の特徴が含まれている場合,そのうちの1又は複数個の特徴を適宜抜き出して,単独で又は組み合わせて,本発明に採用することができる。
【0052】
以下,本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0053】
実施例1では,図1に示す分子線結晶成長装置3を用いて基板27上にAlGaInP化合物半導体結晶からなる半導体層を形成した。図1の分子線源1からは,Al,Ga,In及びPの中で最も蒸気圧が高く,かつV族材料であるPからなる分子線を放出させた。また,成長室2に,Al,Ga及びInからなる分子線を放出する分子線源をそれぞれ取り付けた。これらの分子線源の前には、分子線の放出を制御するためのシャッターが設置されている。本実施例では、成長室2やシュラウド31に対して還元性ガスを導入するためのポートを設ける等の改造を施すことなく、図1に示す還元性ガス導入部9を有する分子線源1を採用することによって、成長室2内に還元性ガスを導入することを可能にした。これによって、成長室2やシュラウド31の改造のための費用を節約することができた。
【0054】
1.本実施例の製造工程について
(1)排気,基板設置工程
まず,成長室2用の真空装置を用いて圧力が1.0×10-7Paになるように成長室2内を真空排気した。次に,図示しない搬送装置を用いてGaAsからなる基板27を成長室2内に搬入し,基板マニピュレータ29上に固定し,基板27を500℃に加熱した。このとき,分子線源1の第1〜第4弁12,14,17及び23を全て閉じ,また,これ以外の分子線源のシャッターを閉じて,基板27に何れの分子線も供給されないようにした。
【0055】
(2)クリーニング工程
次に,分子線放出部5の温度を85℃に,クラッキングゾーン7の温度を1100℃に,ヒーター25の温度を100℃にした。
【0056】
次に,第4弁23を開き,真空排気装置19を作動させることによって,圧力が1.0×10-4Paになるように還元性ガス導入部9内を真空排気した。次に,第4弁23を閉じ,第2及び第3弁14,17を開くことによって還元性ガス導入部9内に水素ガスからなる還元性ガスを導入し,導入した還元性ガスをクラッキングゾーン7を通じて成長室2内に導入し,基板27及び成長室2のクリーニングを行った。還元性ガスは,成長室2内の圧力が1×10-4Paになるように導入した。還元性ガスは,パラジウム式精製器を用いて精製することによって高純度化した後に還元性ガス導入部9内に導入した。第3弁17の手前での還元性ガスの圧力は,1×105Paにした。
【0057】
(3)分子線放出,分子線分解,半導体結晶成長工程
次に,第1弁12を開き,分子線放出部5から分子線を放出させた。本実施例では,分子線放出部5には,リンが収容されており,分子線放出部5から放出された分子線は,大部分がP4である。このとき,第3弁17は,開いたままにして,還元性ガス導入部9に還元性ガスを引き続き導入した。還元性ガス導入部9において分子線と還元性ガスが混合され,混合された分子線と還元性ガスは,クラッキングゾーン7を通過するときに加熱された。このとき,分子線中のP4がP2に分解される。
【0058】
クラッキングゾーン7を通過した分子線と還元性ガスを,他の分子線(Al,Ga,及びIn)と共に基板27に接触させ,基板27上にAlGaInP結晶を成長させ,AlGaInP膜を1μm形成した。還元性ガスの導入量は,成長室2内の全圧が,2×10-4Paになるように調節した。Al,Ga,及びInからなる分子線を放出する分子線源の温度やシャッターの開閉は,形成されるAlGaInP膜がGaAs基板に格子整合するように調節した。
【0059】
(4)SIMS測定工程
AlGaInP膜が形成された基板27を分子線結晶成長装置3から取り出し,AlGaInP膜の二次イオン質量分析を行った。その結果,基板27とAlGaInP膜の界面近傍では,酸素濃度が1×1018cm-3となり,それ以外の部分では,酸素濃度が1.4×1016cm-3で一定であった。
【0060】
2.関連実験について
上記実施例に関連する種々の関連実験を行った。以下、これらの関連実験について説明する。
【0061】
(1)クラッキングゾーンの温度が残留酸化物量に与える影響について
上記実施例において,クラッキングゾーン7の温度を1000〜1500℃の範囲において100℃単位で変化させ,上記実施例と同様の工程を行い、クラッキングゾーン7の温度が残留酸化物量に与える影響について調べた。それぞれの温度について,還元性ガスを導入した場合と,導入しなかった場合について,半導体結晶成長工程での成長室2内の気相中に含まれる残留酸化物量を測定した。還元性ガスは,成長室2内の全圧が2×10-4Paになるように導入した。
【0062】
残留酸化物量の測定は,成長室2に付属の残留ガス分析計32(具体的には,四重極質量分析計)を用いて行った。残留酸化物量の測定は,具体的には,質量数28の酸化炭素量を測定することによって行った。一般に真空中の不純物には炭素系の酸化物が多く含まれており、残留酸化炭素量を残留酸化物量の指標とすることができるからである。
【0063】
残留酸化物量の測定結果を図3に示す。図3によると,クラッキングゾーン7の温度が高い程,成長室2内の残留酸化物量が増加すること分かった。また,還元性ガスを導入することによって残留酸化物量が大きく減少することが分かった。また,還元性ガスを導入した場合,クラッキングゾーン7の温度が1000〜1300℃の場合に,成長室2内の残留酸化物量が検出限界(1×10-15)以下になることが分かった。クラッキングゾーン7の温度が高い程,成長室2内の残留酸化物量が増加する理由は、この温度が高いとクラッキングゾーン7の近くに配置されたシュラウド等の部材も加熱され、その表面に吸着している酸素、水又は二酸化炭素等の不純物が放出されるためであると考えられる。
なお,図3及び後述する図4及び5において,残留酸化物量は,任意単位で表している。これは,使用した残留ガス分析計32では,「atoms/cm-3」が正確に測定できないためである。しかし,図3〜5で示した残留酸化物量は,相対値として意味のある量であり、残留酸化物量が検出限界以下であることは、残留酸化物量が十分に少ないことを示している。
【0064】
(2)還元性ガスの導入量が残留酸化物量に与える影響について
上記実施例の半導体結晶成長工程での還元性ガスの導入量を変化させて,上記実施例と同様の工程を行い、還元性ガスの導入量が残留酸化物量に与える影響について調べた。それぞれの場合について,半導体結晶成長工程での成長室2内の気相中に含まれる残留酸化物量を測定した。それぞれの場合において、還元性ガス以外のガスの分圧は、実質的に一定で,3〜8×10-5Pa程度であった。
残留酸化物量の測定は,実施例2と同様の方法で行った。その結果を図4に示す。図4によると,還元性ガスの導入量が1×10-5Pa以上になるように還元性ガスを導入することによって成長室2内の残留酸化物量が検出限界以下になることが分かった。
【0065】
(3)クリーニング工程がAlGaInP膜中の酸素濃度に与える影響について
上記実施例のクリーニング工程を行わずに,それ以外は上記実施例と同様の工程を行い、クリーニング工程がAlGaInP膜中の酸素濃度に与える影響について調べた。クリーニング工程を行わないで基板27上に形成されたAlGaInP膜の二次イオン質量分析を行った。その結果,基板27とAlGaInP膜の界面近傍では,酸素濃度が2×1018cm-3となり,それ以外の部分では,酸素濃度が1.4×1016cm-3で一定であった。
【0066】
上記実施例での結果との対比により、結晶成長前に基板27のクリーニングを行うことによって,基板27とAlGaInP膜の界面近傍での酸素濃度を1/2程度にすることができることが分かった。
【0067】
(4)半導体結晶成長工程での還元性ガスの導入がAlGaInP膜中の酸素濃度に与える影響について
上記実施例の半導体結晶成長工程で還元性ガスを導入せず,それ以外は上記実施例と同様の工程を行い、半導体結晶成長工程での還元性ガスの導入がAlGaInP膜中の酸素濃度に与える影響について調べた。半導体結晶成長工程で還元性ガスを導入しないで基板27上に形成されたAlGaInP膜の二次イオン質量分析を行った。その結果,基板27とAlGaInP膜の界面近傍では,酸素濃度が1×1018cm-3となり,それ以外の部分では,酸素濃度が2.0×1016cm-3で一定であった。
【0068】
上記実施例での結果との対比により、半導体結晶成長工程で還元性ガスを導入することによって,基板27とAlGaInP膜の界面近傍以外の部分での酸素濃度を30%程度小さくすることができることが分かった。
【実施例2】
【0069】
実施例2では,図2に示す分子線結晶成長装置3を用いて基板27上にGaAs化合物半導体結晶からなる半導体層を形成した。図2の分子線源1からは,GaとAsの中で最も蒸気圧が高く,かつV族材料であるAsからなる分子線を放出させた。また,成長室2に,Gaからなる分子線を放出する分子線源を取り付けた。この分子線源の前には、分子線の放出を制御するためのシャッターが設置されている。本実施例では、成長室2やシュラウド31に対して還元性ガスを導入するためのポートを設ける等の改造を施すことなく、図1に示す還元性ガス導入部9を有する分子線源1を採用することによって、成長室2内に還元性ガスを導入することを可能にした。これによって、成長室2やシュラウド31の改造のための費用を節約することができた。
【0070】
1.本実施例の製造工程について
(1)排気,基板設置工程
まず,成長室付属の真空装置を用いて圧力が1.0×10-7Paになるように成長室2内を真空排気した。次に,図示しない搬送装置を用いてGaAsからなる基板27を搬入し,基板マニピュレータ29上に固定し,基板27を500℃に加熱した。このとき,分子線源1の第1〜第4弁12,14,17及び23を全て閉じ,また,これ以外の分子線源のシャッターを閉じて,基板27に何れの分子線も供給されないようにした。
【0071】
(2)クリーニング工程
次に,分子線放出部5の温度を330℃に,クラッキングゾーン7の温度を600℃に,ヒーター25の温度を300℃にした。
【0072】
次に,第4弁23を開き,真空排気装置19を作動させることによって,圧力が1×10-4Paになるように還元性ガス導入部9内を真空排気した。次に,第4弁23を閉じ,第2及び第3弁14,17を開くことによって還元性ガス導入部9内に水素ガスからなる還元性ガスを導入し,導入した還元性ガスをクラッキングゾーン7を通じて成長室2に導入し,基板27及び成長室2のクリーニングを行った。還元性ガスは,成長室2内の圧力が1×10-3Paになるように導入した。還元性ガスは,パラジウム式精製器を用いて精製することによって高純度化した後に還元性ガス導入部9内に導入した。
【0073】
(3)分子線放出,分子線分解,半導体結晶成長工程
次に,第1弁12を開き,分子線放出部5から分子線を放出させた。本実施例では,分子線放出部5には,砒素が収容されており,分子線は,大部分がAs4である。このとき,第3弁17は,開いたままにして,還元性ガス導入部9に還元性ガスを引き続き導入した。還元性ガス導入部9において分子線と還元性ガスが混合され,混合された分子線と還元性ガスは,クラッキングゾーン7を通過するときに加熱された。このとき,分子線中のAs4がAs2に分解される。
【0074】
クラッキングゾーン7を通過した分子線と還元性ガスを,Gaの分子線と共に基板27に接触させ,基板27上にGaAs結晶を成長させ,GaAs膜を1μm形成した。還元性ガスの導入量は,成長室2内の全圧が,1×10-3Paになるように調節した。Gaの分子線を放出する分子線源の温度やシャッターの開閉は,供給されるGaの原子数が供給されるAsの分子数の半分になるように調節した。
【0075】
(4)SIMS測定工程
GaAs膜が形成された基板27を分子線結晶成長装置3から取り出し,GaAs膜の二次イオン質量分析を行った。その結果,基板27とGaAs膜の界面近傍では,酸素濃度が1.0×1018cm-3となり,それ以外の部分では,酸素濃度が5.0×1015cm-3で一定であった。
【0076】
2.関連実験について
上記実施例に関連する種々の関連実験を行った。以下、これらの関連実験について説明する。
【0077】
(1)クラッキングゾーンの温度が残留酸化物量に与える影響について
上記実施例において,クラッキングゾーン7の温度を400〜1000℃の範囲において100℃単位で変化させ,上記実施例と同様の工程を行い、クラッキングゾーン7の温度が残留酸化物量に与える影響について調べた。それぞれの温度の場合について,半導体結晶成長工程での成長室2内の気相中に含まれる残留酸化物量を測定した。還元性ガスは,成長室2内の全圧が1×10-3Paになるように導入した。
【0078】
残留酸化物量の測定は,上記実施例と同様の方法で行った。残留酸化物量の測定結果を図5に示す。図5によると,クラッキングゾーン7の温度が高い程,成長室2内の残留酸化物量が増加すること分かった。また,還元性ガスを導入することによって残留酸化物量が大きく減少することが分かった。また,還元性ガスを導入した場合,クラッキングゾーン7の温度が400〜800℃の場合に,成長室2内の残留酸化物量が検出限界以下になることが分かった。
【0079】
(2)クリーニング工程がGaAs膜中の酸素濃度に与える影響について
上記実施例のクリーニング工程を行わずに,それ以外は上記実施例と同様の工程を行い、クリーニング工程がGaAs膜中の酸素濃度に与える影響について調べた。クリーニング工程を行わないで基板27上に形成されたGaAs膜の二次イオン質量分析を行った。その結果,基板27とGaAs膜の界面近傍では,酸素濃度が1.2×1018cm-3となり,それ以外の部分では,酸素濃度が5.0×1015cm-3で一定であった。
【0080】
上記実施例での結果との対比により、結晶成長前に基板27のクリーニングを行うことによって,基板27とGaAs膜の界面近傍での酸素濃度を20%程度小さくすることができることが分かった。
【0081】
(3)半導体結晶成長工程での還元性ガスの導入がGaAs膜中の酸素濃度に与える影響について
上記実施例の半導体結晶成長工程で還元性ガスを導入せず,それ以外は上記実施例と同様の工程を行い、半導体結晶成長工程での還元性ガスの導入がGaAs膜中の酸素濃度に与える影響について調べた。半導体結晶成長工程で還元性ガスを導入しないで基板27上に形成されたGaAs膜の二次イオン質量分析を行った。その結果,基板27とGaAs膜の界面近傍では,酸素濃度が1.0×1018cm-3となり,それ以外の部分では,酸素濃度が1.0×1016cm-3で一定であった。
【0082】
上記実施例での結果との対比により、半導体結晶成長工程で還元性ガスを導入することによって基板27とGaAs膜の界面近傍以外の部分での酸素濃度を50%程度小さくすることができることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1実施形態に係る,分子線源と,分子線源が成長室に取り付けられた分子線結晶成長装置を示す。
【図2】本発明の第2実施形態に係る,分子線源と,分子線源が成長室に取り付けられた分子線結晶成長装置を示す。
【図3】本発明の実施例1に係る,クラッキングゾーンの温度と,成長室内の残留酸化物量との関係を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例1に係る,還元性ガスの分圧と,成長室内の残留酸化物量との関係を示すグラフである。
【図5】本発明の実施例2に係る,クラッキングゾーンの温度と,成長室内の残留酸化物量との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0084】
1:分子線源 2:成長室 3:分子線結晶成長装置 5:分子線放出部 7:クラッキングゾーン 9:還元性ガス導入部 11:第1配管 12:第1弁 13:第2配管 14:第2弁 15:還元性ガス導入管 17:第3弁 19:真空排気装置 21:真空排気管 23:第4弁 25:ヒーター 27:基板 28:分子線 29:基板マニピュレータ 31:シュラウド 32:残留ガス分析計 33:断熱部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶成長のための分子線を放出する分子線放出部と,前記分子線放出部に結合され,前記分子線を加熱して分解するクラッキングゾーンとを備え,
前記分子線放出部と前記クラッキングゾーンの間に還元性ガスを導入するための還元性ガス導入部を有することを特徴とする分子線源。
【請求項2】
前記還元性ガス導入部と前記分子線放出部との間に第1弁と,前記還元性ガス導入部と前記クラッキングゾーンの間に第2弁と,前記還元性ガス導入部を真空排気するための真空排気装置とをさらに備える請求項1に記載の分子線源。
【請求項3】
前記分子線放出部から前記クラッキングゾーンの間の部材を加熱するヒーターをさらに備える請求項1に記載の分子線源。
【請求項4】
内部に設けられた基板上に半導体結晶を成長させる成長室と,前記クラッキングゾーンを通じて前記成長室内に前記還元性ガス及び前記分子線を導入する請求項1に記載の分子線源とを備える分子線結晶成長装置。
【請求項5】
請求項4に記載の分子線結晶成長装置を用いた分子線結晶成長方法であって,
前記成長室内に前記基板を設置し,
前記分子線放出部から前記分子線を放出させ,
前記クラッキングゾーンにおいて前記分子線を加熱して分解させ,
分解された分子線を前記成長室内に導入して前記基板に接触させることによって前記基板上に前記半導体結晶を成長させる工程を備え,
前記分子線の放出前に又は放出中に前記還元性ガス導入部内に還元性ガスを導入することを特徴とする分子線結晶成長方法。
【請求項6】
前記還元性ガスの導入前に前記還元性ガス導入部内を真空排気する工程をさらに備える請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記還元性ガスは,第3弁を有する還元性ガス導入管を通じて前記還元性ガス導入部に導入され,
第3弁の手前での前記還元性ガスの圧力は,1×104Pa以上である請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記還元性ガスは,水素ガスである請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記分子線は,V族又はVI族の材料からなる請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記分子線は,リンからなる請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記分子線は,クラッキングゾーンにおいて1000〜1300℃に加熱される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記分子線は,砒素からなる請求項5に記載の方法。
【請求項13】
前記分子線は,クラッキングゾーンにおいて400〜800℃に加熱される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
複数種類の分子線が,前記成長室内に導入され,
請求項1に記載の分子線源から前記成長室内に導入される分子線は,前記複数種類の分子線のうち,蒸気圧が最も高い請求項5に記載の方法。
【請求項15】
前記還元性ガスは,前記還元性ガスの分圧が成長室内で1×10-5Pa〜1×10-2Paになるように導入される請求項5に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−120632(P2008−120632A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−306842(P2006−306842)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】