説明

加工装置

【課題】簡易な手順で、可動電極と固定電極との固着を抑制した上で、陽極接合を実現する。
【解決手段】第1架橋部材が第1接触端子144によって第1帯状部14Aを接地し、第2架橋部材が第2接触端子143によって第2帯状部15Aに加工電圧を供給し、第3架橋部材が第3接触端子141によって第3帯状部54を接地し、第3帯状部54を通じて、他方の外側基板の第1帯状部14Bを接地する。また、第4架橋部材が第4接触端子によって第4帯状部に加工電圧を供給し、第4帯状部を通じて、他方の外側基板の第2帯状部15Bに加工電圧が供給される。中央基板6は、接地端子によって接地され、中央基板6と、外側基板8A,8Bの裏面側の一対の絶縁性基板7A,7Bの間には、加工電圧が加わり、陽極接合が実行される。このとき、第1帯状部14A,14Bおよび第1帯状部14A,14Bに接続される部分(固定電極2A,2B)は、接地されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陽極接合にて材料を接合する加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
静電容量型物理量センサは、加速度あるいは振動等を受けて変位する可動電極(ダイヤフラム)と、可動電極に間隙を隔てて対向する固定電極を有する。可動電極は、シリコンなどの基板に形成される。固定電極は、通常、絶縁材料に金属を成膜して形成されている。静電容量型物理量センサでは、可動電極を形成した基板と、固定電極の金属薄膜を形成した絶縁物を陽極接合して、素子を形成する。
【0003】
陽極接合では、可動電極を形成した基板と固定電極の金属薄膜を形成した絶縁物とを所定の温度に加熱した状態で接合部分を挟んで電圧を加える。その場合に、電圧の分布等に依存して、可動電極と固定電極との間の静電引力が発生し、可動状態を維持すべき可動電極が固定電極に固着してしまうことがあった。
【0004】
一方、従来、固定電極と可動電極との間で放電を生じないようにするため、固定電極と可動電極を短絡線で短絡して、これらを同電位とすることが提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−194771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、この技術を適用して、固定電極と可動電極とを同電位とすれば、可動電極と固定電極との間の静電引力を抑制でき、可動電極が固定電極に固着してしまうという現象の発生を低減できる可能性もある。
【0007】
しかし、上記従来の技術では、固定電極と可動電極とを短絡した短絡線を陽極接合の後で切断、除去する必要があり、工程が複雑となる。本発明の課題は、簡易な手順で、可動電極と固定電極との固着を抑制した上で、陽極接合を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記課題を解決するために、以下の手段を採用した。すなわち、本発明の一態様は、一対の絶縁性基板と、一対の絶縁性基板に挟まれ、絶縁性基板よりも導電性が高い中央基板と、一対の絶縁性基板の外面に接合され絶縁性基板よりも導電性が高い一対の外側基板と、を有し、一対の外側基板は、それぞれ、複数の溝状の間隙と、間隙に挟まれた少なくとも1つの第1帯状部と、間隙によって第1帯状部と絶縁された少なくとも1つの第2帯状部と、を有する加工対象物の加工装置として例示できる。
【0009】
本加工装置は、下部絶縁用基板と、下部絶縁用基板よりも導電性が高く、下部絶縁用基板に固定された導電用基板と、導電用基板に載置される加工対象物の一方の外側基板の第1帯状部に接地電圧を加える第1接触端子を配列し、導電用基板に載置された加工対象物の上方を架橋する第1架橋部材と、第1接触端子を加工対象物の一方の外側基板の第1帯状部に接触させた状態で第1架橋部材を固定する第1固定手段と、を備える。
【0010】
さらに、本加工装置は、導電用基板に載置される加工対象物の一方の外側基板の第2帯状部に加工電圧を加える第2接触端子を配列し、導電用基板に載置された加工対象物の上方を架橋する第2架橋部材と、第2接触端子を加工対象物の第2帯状部に接触させた状態で第2架橋部材を固定する第2固定手段と、を備える。
【0011】
さらに、本加工装置は、導電用基板に接地電圧を加える第3接触端子を配列し、導電用基板の上方を架橋する第3架橋部材と、第3架橋部材の第3接触端子を導電用基板上面に接触させた状態で固定する第3固定手段と、を備える。
【0012】
さらに、本加工装置は、導電用基板に加工電圧を加える第4接触端子を配列し、導電用基板の上方を架橋する第4架橋部材と、第4架橋部材の第4接触端子を導電用基板上面に接触させた状態で固定する第4固定手段と、加工対象物の中央基板に接地電圧を供給する接地端子と、加工対象物を加熱する加熱手段と、を備える。
【0013】
導電用基板は、第3架橋部材の架橋方向と直交方向に延伸する複数の溝状の間隙と、間隙に挟まれて形成され、第3接触端子から接地電圧を供給される少なくとも1つの第3帯状部と、間隙によって第3帯状部と絶縁され、第4接触端子から加工電圧を供給される少なくとも1つの第4帯状部と、を有する。
【0014】
また、加工対象物の他方の外側基板の溝部と導電用基板の溝部を重ね合わせることによって、加工対象物の他方の外側基板の第1帯状部を導電用基板の第4帯状部から絶縁した状態で第3帯状部に接触させるとともに、加工対象物の他方の外側基板の第2帯状部を導電用基板の第3帯状部から絶縁した状態で第4帯状部に接触させ、加工対象物を載置する。
【0015】
このような構成によって、第1架橋部材が第1接触端子によって第1帯状部を接地する。また、第2架橋部材が第2接触端子によって第2帯状部に加工電圧を供給する。また、第3架橋部材が第3接触端子によって第3帯状部を接地する。したがって、第3帯状部を通じて、他方の外側基板の第1帯状部が接地される。また、第4架橋部材が第4接触端子によって第4帯状部に加工電圧を供給する。したがって、第4帯状部を通じて、他方の外側基板の第2帯状部に加工電圧が供給される。一方、中央基板には、接地端子によって接地される。したがって、中央基板と、外側の裏面側の一対の絶縁性基板の間には、加工電圧が加わり、陽極接合が実行される。このとき、第1帯状部および第1帯状部に接続される部分は、接地されている。すなわち、本加工装置は、複数の溝状間隙で形成される第1帯状部を接地した状態で、第2帯状部に加工電圧を供給し、中央基板との間の陽極接合を実現する。
【0016】
第1接触端子は、端子部と、弾性体を介して端子部を第1架橋部材に装着する装着部とを有し、端子部は、第1架橋部材の下面から導電性基板に載置された加工対象物の方向に弾性的に押圧可能に突き出し、第2接触端子は、端子部と、弾性体を介して端子部を第2架橋部材に装着する装着部とを有し、端子部は、第2架橋部材の下面から導電性基板に載置された加工対象物の方向に弾性的に押圧可能に突き出しているものでもよい。弾性的に押圧可能となることで、第1接触端子および第2接触端子と、加工対象物との接触状態が良好となる。
【0017】
本加工装置は、下部絶縁用基板が載置される土台部をさらに備え、第1固定手段は、第1架橋部材と土台部とをねじ止めするねじ部を有し、ねじ部を構成する雄ねじ部と雌ねじとの相対移動によって第1接触端子の加工対象物上面への押圧力を調整可能であり、第2固定手段は、第2架橋部と土台部とをねじ止めするねじ部を有し、ねじ部を構成する雄ねじ部と雌ねじとの相対移動によって第2接触端子の加工対象物上面への押圧力を調整可能
としてもよい。ねじ部によって、第1接触端子および第2接触端子の加工対象物への押圧力を調整できる。
【0018】
また、本発明の第2の態様は、加工対象物の一方の外側基板の上面を延伸し、一方の外側基板に電圧を供給する第1載置接触部と、導電用基板の上面を延伸し、導電用基板に電圧を供給する第2載置接触部と、加工対象物の中央基板に接地電圧を供給する接地端子と、
加工対象物を加熱する加熱手段と、を備える加工装置であってもよい。
【0019】
ここで、導電用基板は、第2載置接触部の延伸方向と交差する方向に延伸する複数の溝状の間隙と、間隙に挟まれた少なくとも1つの第3帯状部と、間隙によって第3帯状部と絶縁された少なくとも1つの第4帯状部と、を有するようにすればよい。
【0020】
そして、加工対象物の他方の外側基板の溝部と導電用基板の溝部を重ね合わせることによって、加工対象物の他方の外側基板の第1帯状部を導電用基板の第4帯状部から絶縁した状態で第3帯状部に接触させるとともに、加工対象物の他方の外側基板の第2帯状部を導電用基板の第3帯状部から絶縁した状態で第4帯状部に接触させればよい。
【0021】
さらに、第1載置接触部は、加工対象物に対向する下面側に、前記加工対象物の前記一方の外側基板の第1帯状部の上面に接触し、第2帯状部から絶縁される第5帯状部と、第5帯状部に接地電圧を供給する第1接地伝導部と、加工対象物の前記一方の外側基板の第2帯状部の上面に接触し、第1帯状部から絶縁される第6帯状部と、第6帯状部に加工電圧を供給する第1電源伝導部と、を有するようにすればよい。
【0022】
また、第2載置接触部は、導電用基板に対向する下面側に、導電用基板の第3帯状部の上面に接触し、第4帯状部から絶縁される第7帯状部と、第7帯状部に接地電圧を供給する第2接地伝導部と、加工対象物の第4帯状部の上面に接触し、第3帯状部から絶縁される第8帯状部と、第8帯状部に加工電圧を供給する第2電源伝導部と、を有するようにすればよい。
【0023】
このような構成によっても、第1載置接触部の第5帯状部によって、第1帯状部を接地し、第6帯状部によって第2帯状部に加工電圧を供給できる。また、第2載置接触部の第7帯状部によって、導電用基板の第3帯状部を通じて、他方の外側基板の第1帯状部を接地し、第8帯状部によって、第4帯状部を通じて、他方の外側基板の第1帯状部に加工電圧を供給できる。このとき、中央基板には、接地端子から接地電圧が供給される。したがって、第2の態様によっても、第1の態様と同様に、第1帯状部を接地した状態で、陽極接合を実行できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、加工対象物の第1帯状部が固定電極に接続され、中央基板が可動電極に接続される素子の製造において、可動電極と固定電極とを同電位にすることで、簡易な手順で、可動電極と固定電極との固着を抑制した上で、陽極接合を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1A】物理量センサの斜視図である。
【図1B】物理量センサの断面図である。
【図2】複数の可動電極を構成したダイヤフラム基板の平面図を模式的に例示する図である。
【図3】加工対象の基板を外側から見た平面図である。
【図4】物理量センサ製造工程の概要を例示する図(その1)である。
【図5】物理量センサ製造工程の概要を例示する図(その2)である。
【図6】陽極接合工程の概念を例示する図である。
【図7】加工装置の斜視図の例である。
【図8】接合ベースおよび端子の接触状態を例示する拡大図である。
【図9】架橋部に取り付けられた端子が、シリコン基板の帯状部に接触した状態を示す斜視図である。
【図10】ばね内蔵突起ねじの外観図である。
【図11】ばね内蔵突起ねじの正面図である。
【図12】ばね内蔵突起ねじの断面図である
【図13】突起部が外殻部から最も長く延びた状態を示す図である。
【図14】突起部が外殻部の中に押し込まれた状態を示す図である。
【図15】加工装置を上方から見た平面図である。
【図16A】加工装置から架橋部を一部省略した側面図である。
【図16B】加工装置から架橋部を一部省略した側面図である。
【図17】加工装置の平面図である。
【図18】実施例2に係る陽極接合工程の概念図を示す図である。
【図19】実施例2に係る斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という)に係る静電容量型物理量センサ(以下、単に物理量センサという)の加工装置について説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成には限定されない。
【0027】
<物理量センサの概要>
図1Aに物理量センサ(素子21ともいう)の斜視図、図1Bに、図1Aにて、ラインL1をA1矢印方向に移動して物理量センサを切断したときの断面図をそれぞれ例示する。この物理量センサは、シリコンの基板(以下、ダイヤフラム基板6といい、本発明の中央基板に相当)と、ダイヤフラム基板6を両面から挟み込んで設けられ、ダイヤフラム基板6に接合されるガラス基板7A,7B(本発明の一対の絶縁性基板に相当)と、ガラス基板7A,7Bを外側両面から挟み込んで設けられ、ガラス基板7A,7Bにそれぞれ接合されるシリコンの外側基板8A,8Bとを有する。
【0028】
ダイヤフラム基板6は、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(以下、TMAHという)を用いてウェットエッチングして形成される梁部4(カンチレバーともいう)と、梁部4によってダイヤフラム基板6の基部16に片持ち状態で支持される可動電極1とを有する。図1Bに示すように、可動電極1の上下の表面には、ガラス基板7A,7Bの内面との間の間隙を維持するための絶縁物の突起3が設けられている。ただし、物理量センサに加速度等の外力が加わらず、梁部4が撓んでいない状態、すなわち、可動電極1がガラス基板7A,7Bに対して平行に維持された通常の状態では、突起3は、ガラス基板7A,7B、あるいは、ガラス基板7A,7B上に形成された固定電極2A,2Bから離間している。また、梁部4が突き出しているダイヤフラム基板6の基部16には、外部回路へのリード線を接続する金属の可動電極用パッド10が形成されている。
【0029】
ガラス基板7A,7Bは、接合面20A−20Dにおいて、ダイヤフラム基板6と接合される。また、ガラス基板7A,7Bと可動電極1の上下の表面との間には、間隙11A,11Bが存在する。間隙11A,11Bを挟んでガラス基板7A,7Bの可動電極1の上下の表面と対向するガラス基板7A,7Bの内面には、固定電極2A,2Bが形成されている。固定電極2A,2Bは、通常、ガラス基板7A,7Bの表面にスパッタ等にて金属を成膜することで形成する。固定電極2A,2Bが可動電極1の上下の表面との間で間隙を形成することで、可動電極1は、固定電極2A,2Bに挟まれた内面空間で変位する
。その変位によって、固定電極2A,2Bと可動電極1とが構成する静電容量が変化し、物理量が検出される。なお、可動電極1の表面に形成された突起3は、可動電極1が極度に変位しても、直接固定電極に接触すること抑制する。
【0030】
また、ガラス基板7A,7Bの梁部4に対向する部分には、フィードスルー構造5が形成されている。フィードスルー構造5は、ガラス基板7A,7Bに貫通穴を開けて形成される。フィードスルー構造5を通じて、固定電極2A,2Bの一部である金属薄膜がガラス基板7A,7Bから外部方向、すなわち、外側基板8A,8B方向に引き出される。この金属を固定電極引き出し金属と呼ぶ。なお、外側基板8A,8Bには、固定電極用パッド9A,9Bが設けられており、固定電極用パッド9A,9Bは、フィードスルー構造5を通る固定電極引き出し金属に接続される。
【0031】
外側基板8A,8Bは、それぞれガラス基板7A,7Bに接合されている。以下、接合された外側基板8A(8B)とガラス基板7A(7B)をキャップ層17A(17B)という。外側基板8A,8Bの固定電極用パッド9A,9Bを挟む位置には、絶縁用溝12A,12B,13A,13B(本発明の溝状の間隙に相当)が形成されている。例えば、絶縁用溝12A,12Bは、固定電極用パッド9Aおよび固定電極用パッド9Aが形成された外側基板8Aの山状部分14A(本発明の第1帯状部に相当)を外側基板8Aの他の部分15A(以下、帯状部分15Aともいい、本発明の第2帯状部に相当する)と電気的に分離している。すなわち、絶縁用溝12A,12Bは、深さ方向にガラス基板7A,7Bに達するまで形成されている。したがって、山状部分14A,14Bと帯状部分15A,15Bとは、ガラス基板7A,7Bの表面を介して接触するが、電気的には絶縁される。なお、外側基板8Aの山状部分14A,14Bに接触するガラス基板7A,7Bには、フィードスルー構造5の貫通穴が形成されるため、絶縁用溝12A,12Bは、フィードスルー構造5の貫通穴の直径よりも広い間隔で形成される。絶縁用溝13A,13Bも同様である。
【0032】
したがって、固定電極2A、引き出し金属、および固定電極用パッド9Aは、外側基板8Aの帯状部分15Aから絶縁されている。同様に、絶縁用溝13A,13Bは、固定電極用パッド9Bおよび固定電極用パッド9Bが形成された外側基板8Bの山状部分14Bを外側基板8Bの他の部分15B(以下、帯状部分15Bともいう)から電気的に分離している。
【0033】
このように、本実施形態に係る物理量センサの特徴は、絶縁用溝12A,12B,13A,13Bにより、固定電極2A,2B、引き出し金属、および固定電極用パッド9A,9Bが、外側基板8Aの帯状部分15A,15Bから分離していることにある。そのため、ダイヤフラム基板6と、両側のキャップ層17A,17Bを陽極接合する際、外側基板8A,8Bの帯状部分15A,15Bとは切り離して、固定電極2A,2B、引き出し金属、および固定電極用パッド9A,9Bを接地することが可能となる。
【0034】
すなわち、ダイヤフラム基板6と、両側のキャップ層17A,17Bとの陽極接合では、ダイヤフラム基板6を接地し、一方、両側のキャップ層17A,17Bは、マイナス数百ボルト程度まで電圧を加える。そのとき、固定電極2A,2B、引き出し金属、および固定電極用パッド9A,9Bが接地されていると、固定電極2A,2Bと、ダイヤフラム基板6の可動電極1とが同電位となる。したがって、可動電極1が固定電極2Aまたは2Bに静電引力で引き付けられるという現象を抑制できる。そのような工程を実現する加工装置について、実施例1で詳細に説明する。なお、この工程は、陽極接合時に、固定電極用パッド9A,9Bを接地すれば実現できるため、極めて簡易かつ安定して物理量センサを製造できる。
【0035】
図2に、複数の可動電極1を構成したダイヤフラム基板6の平面図を模式的に例示する。図1A,1Bは、最終的には、1つの物理量センサの素子となる素子部分21の構成図である。一方、図2のダイヤフラム基板6は、そのような素子21の可動電極1の部分を複数含む。図2の例では、梁部4は、一対の柱状部材で形成されて、側方から矩形状の可動電極1を保持する。ただし、梁部4は、このような構造に限定されるわけではなく、例えば、1本の柱状部材で形成してもよいし、3本以上の柱状部材で形成してもよい。なお、図2では、素子部分21を模式的に3×4の配列で示したが、実際のダイヤフラム基板6は、さらに多数の素子部分21を含む。
【0036】
図3に、図2のダイヤフラム基板6と陽極接合されるキャップ層17Aの基板を外側(ダイヤフラム基板6との接合面との反対側の外側基板8A)から見た平面図である。図3のように、外側基板8Aには、絶縁用溝12A,12Bによって、狭い帯状の山状部分14Aが形成される。また、山状部分14Aよりも広い帯状部分15Aは、絶縁用溝12Aによって、山状部分14Aと電気的に分離される。なお、図3では、広い帯状部分15Aと、狭い帯状の山状部分14Aの組を3組模式的に例示したが、実際の外側基板では、さらに、多くの帯状部分15Aと、山状部分14Aの組が形成される。また、本実施形態の構成では、山状部分14Aよりも帯状部分15Aを構成したが、可動電極1およびフィードスルー構造5の寸法に依存して、山状部分14Aよりも帯状部分15Aが狭くなることがありえる。その意味で、山状部分14Aを第1帯状部といい、帯状部分15Aを第2帯状部のように呼ぶ。
【0037】
<物理量センサ製造工程の概要>
図4および図5に、物理量センサ製造工程の概要を例示する。以下の(1)〜(10)の番号は、図4および図5の(1)〜(10)に対応する。(0)は、加工前のシリコン基板を示している。
【0038】
(1)間隙(ギャップともいう)の形成
可動電極形成用シリコンウェハを熱酸化し、フォトリソグラフィによりフォトレジストにパターン転写後、フォトレジストをマスクにして酸化膜をパターンニングする。ここでは、TMAH(Tetra methyl ammonium hydroxide)によりシリコンをエッチングする。こ
のとき、フォトレジストにマスクされていないシリコンのエッチングされる部分が可動電極1と固定電極2A,2Bとの間の間隙となる。
【0039】
(2)突部3(ストッパ)の形成
さらに、熱酸化により酸化膜100を形成し、フォトリソグラフィ、酸化膜のパターンニングを実行し、可動電極1のストッパとなる突部3を形成する。
【0040】
(3)可動電極のパターン形成
フォトリソグラフィ、酸化膜のパターンニングを実行する。
【0041】
(4)梁部4のパターン形成
さらに、フォトリソグラフィ、酸化膜のパターンニングを実行する。TMAHにより、フォトレジストで被覆されていない部分のシリコンをエッチングし、梁部4(ビームともいう)となる部分をエッチングする。
【0042】
(5)可動電極1、梁部4の形成
さらに、酸化膜をパターンニングし、TMAHにより、フォトレジストで被覆されていない部分のシリコンを貫通エッチングする。これにより、可動電極1、絶縁性の突部3、および梁部4が形成される(図1参照)。
【0043】
(6)両側キャップ層の製作、陽極接合
シリコン基板(8A,8B)にチップ識別用のマーキングを行う(ここでは図示しない)。マークは、例えば、DRIE(Deep Reactive Ion Etching)で形成する。次に、外側
基板8A(または8B)とガラス基板7A(または7B)を陽極接合する。図5では、外側基板8Bとガラス基板7Bを例示している。以下、図5は、外側基板8Bとガラス基板7Bの部分を例示する。
【0044】
(7)電極取り出し穴(フィードスルー構造5)の形成
ドライフィルムを貼り付け、フォトリソグラフィによるレジストパターン形成後、サンドブラスを吐出し、ガラス基板(7A,7B)に穴(フィードスルー構造5)を形成する。
【0045】
(8)固定電極(2A,2B)形成
固定電極(2A,2B)の材料、例えば、金、白金、チタン等をスパッタし、リフトオフにより固定電極(2A,2B)をパターンニングする。例えば、ガラス基板(7A,7B)上で、金属膜が不要な部分をレジストで保護し、その上に金属を成膜する。レジストを除去すると必要な部分にパターンが残り、固定電極(2A,2B)が形成される。固定電極(2A,2B)につながる部分がフィードスルー構造5を通り、外側基板(8A,8B)に接続される。
【0046】
(9)電極の分離
ダイシングにより絶縁用溝(12A,12B,13A,13B)を形成し、これにより、固定電極(2A,2B)につながる金属部分および外側基板8B(8A)の山状部分14B(14A)を帯状部分15B(15A)から電気的に分離する。これにより、素子両側のキャップ層(17A,17B)が形成される。
(10)陽極接合、ダイシング、チップ化
ダイヤフラム基板6と、両側のキャップ層17A,17Bとの陽極接合を行い、ダイシングにより、物理量センサの素子をチップ化する。さらに、図1に示した電極パッド(可動電極用パッド10、固定電極用パッド9等)を素子側面に形成する。
【実施例1】
【0047】
以下、ダイヤフラム基板6と、両側のキャップ層17A,17Bとの陽極接合に用いる加工装置を例にして、本発明の実施例1を説明する。
【0048】
図6は、実施例1に係る陽極接合工程の概念を例示する図である。図6のように、陽極接合前、ダイヤフラム基板6と、その両側のキャップ層17A,17Bとを重ね合わせた基板は、接合ベース30に搭載される。ダイヤフラム基板6の梁部4の位置と、キャップ層17A,17Bのフィードスルー構造5とが重なるように位置合わせして、ダイヤフラム基板6とキャップ層17A,17Bと重ね合わせ、接合ベース30に搭載する。以下、本加工装置の加工対象であるダイヤフラム基板6とキャップ層17A,17Bとを重ね合わせたものを基板Wという。
【0049】
接合ベース30は、土台部50との絶縁を確保するガラス基板32(本発明の下部絶縁用基板に相当)と、ガラス基板32に接合(例えば、陽極接合)されたシリコン基板31(本発明の導電用基板に相当)を含む。シリコン基板31には、キャップ層17Bに含まれる外側基板8Bに形成された絶縁用溝13A,13Bと同様の絶縁用溝43A,43Bが、略同一の間隙幅、略同一の間隔(ピッチ)で形成されている。絶縁用溝43A,43Bが山状部分54(本発明の第3帯状部に相当)を形成し、山状部分54は、絶縁用溝43Aによって、シリコン基板31の他の部分(以下、帯状部分55といい、本発明の第4帯状部に相当する)と電気的に分離されている。
【0050】
したがって、外側基板8Bに形成された絶縁用溝13A,13Bと、シリコン基板31の絶縁用溝43A,43Bとが重複するようにキャップ層17Bを接合ベース30に搭載することで、外側基板8Bの山状部分14Bと帯状部分15Bとの絶縁を維持して、山状部分14Bと帯状部分15Bをそれぞれシリコン基板31の山状部分54と帯状部分55に接触させることができる。すなわち、山状部分14Bをシリコン基板31の帯状部分55から絶縁した状態で山状部分54に接触させるとともに、帯状部分15Bをシリコン基板31の山状部分54から絶縁した状態で帯状部分55に接触させ、外側基板8Bを含むキャップ層17Bを接合ベース30に搭載できる。
【0051】
この状態で、端子144により外側基板8Aの山状部分14Aを接地することで、固定電極2Aを含む金属部分を接地できる。同様に、端子141によりシリコン基板31の山状部分54を接地することで、外側基板8Bの山状部分14Bを通じて固定電極2Bを含む金属部分を接地できる。
【0052】
そして、端子47を通じて、ダイヤフラム基板6を接地するとともに、端子143により、外側基板8Aの帯状部分15Aにマイナス数百ボルトからマイナス1000ボルト(例えば、マイナス500ボルト)程度の電圧を加える。端子143は、複数の帯状部分15Aに対応して複数配列されるので、複数の端子143を区別する場合には、143−1,143−2のように呼ぶことにする。端子144についても、同様とする。
【0053】
同様に、端子142によりシリコン基板31の帯状部分55にマイナス数百ボルトからマイナス1000ボルト程度の電圧を加える。端子142は、複数の帯状部分55に対応して複数配列されるので、複数の端子142を区別する場合には、142−1,142−2のように呼ぶことにする。端子141についても、同様とする。
【0054】
以上のように、外側基板8A,8Bの帯状部分15A,15Bにマイナス数百ボルトからマイナス1000ボルト程度の電圧を加えるとともに、ダイヤフラム基板6を接地することで、外側基板8A,8Bに隣接するガラス基板7A,7Bとダイヤフラム基板6との間にも同程度の電圧を加える結果となり、外側基板8A,8Bがダイヤフラム基板6と陽極接合される。この過程で、固定電極2A,2Bは、接地されている。
【0055】
なお、図6では、省略しているが、陽極接合の過程では、加熱手段によって、加工対象のダイヤフラム基板6とキャップ層17A,17Bに含まれるガラス基板7A,7Bとの陽極接合部分は、加熱される。加熱手段は、例えば、接合ベース30の下方に接地され、接合ベース30を通じて陽極接合部分を加熱するヒータである。また、加熱手段は、加工対象のダイヤフラム基板6とキャップ層17A,17Bに放射熱を発する加熱ランプでもよい。
【0056】
図7は、実施例1に係る加工装置の斜視図の例である。本加工装置は、土台部50の上に構築される。土台部50の上には、接合ベース30が搭載される。接合ベース30は、図6に示したようにガラス基板32により土台から絶縁されている。さらに、接合ベース30の上には、基板W(ダイヤフラム基板6、およびその両側のキャップ層17A,17Bを含む)が搭載される。
【0057】
そして、接合ベース30の上側に、橋梁状の架橋部材71,72が配置される。架橋部材71,72は、例えば、ステンレス製で、所定の厚みの板材を切り出した角材の形状である。架橋部材71(本発明の第3架橋部材に相当)は、両端を固定具161(本発明の第3固定手段に相当)によって土台部50に固定されている。固定具161は、円盤上の押さえ構造161Aと、押さえ構造161A上のワッシャ161Bと、ワッシャ上のねじ部161Cを含む。なお、固定具161および架橋部材71を下方から支持する支持部1
61D(図16A、図17参照)は、いずれも、例えば、ステンレス製である。また、固定具161および支持部161Dの少なくとも表面をステンレスよりもさらに導電性の高い材料で被覆してもよい。なお、ワッシャ161Bは必須ではなく、省略しても構わない。
【0058】
すなわち、ねじ部161Cがワッシャ161Bを介して押さえ構造161Aを押圧し、押さえ構造161Aが架橋部材71を、支持部161Dを介して接合ベース30に押圧する。図7の例では、ねじ部161Cは、雄ねじであり、土台部50に設けたねじ孔にねじ着されている。ただし、ねじ部161Cを雌ねじとしてもよい。その場合には、土台部50から上方に、雄ねじを立てればよい。このようにして架橋部材71は、固定具161と接触し、土台部50を通じて接地されている。
【0059】
一方、架橋部材72(本発明の第4架橋部材に相当)は、絶縁物の支持部162D(図13B参照)を介して土台部50に搭載され、固定具162(本発明の第4固定手段に相当)によって土台部50に固定される。固定具162も、固定具161と同様、円盤上の押さえ構造162Aと、押さえ構造162A上のワッシャ162Bと、ワッシャ上のねじ部162Cを含む。ねじ部162Cの構造は、ねじ部161Cと同様である。ただし、押さえ構造162Aは、絶縁物であり、架橋部材72は、ねじ部161C、ワッシャ161Bおよび土台部50から絶縁されている(図13B参照)。さらに、固定具162は、高圧導電板65を架橋部材72に押圧している。高圧導電板65には、図示しない高圧電源からマイナス数百ボルトからマイナス1000ボルトの電圧を投入可能となっている。
【0060】
そして、架橋部材71には、突起状の端子141が配置され、シリコン基板31の山状部分54を接地可能となっている。また、架橋部材72には、端子142が配置され、シリコン基板31の帯状部分55に、マイナス数百ボルトからマイナス1000ボルトの電圧を伝達可能となっている。
【0061】
同様に、基板Wの上側に、橋梁状の架橋部材73,74が配置される。架橋部材73(本発明の第2架橋部材に相当)の構造および作用は、架橋部材72と同様である。すなわち、架橋部材73は、絶縁物を介して土台部50に搭載され、固定具163(本発明の第2固定手段に相当)によって、高圧導電板65とともに、土台部50に固定されている。固定具163の構造は、固定具162と同様であるので、その説明を省略する。
【0062】
また、架橋部材74(本発明の第1架橋部材に相当)は、土台部50に搭載され、固定具164(本発明の第1固定手段に相当)によって、土台部50に固定されている。固定具164の構造は、固定具161と同様であるので、その説明を省略する。
【0063】
さらに、土台部50には、接地電極86(本発明の接地端子に相当)を支持する金属製の支持部85が設けられている。支持部85は、L字アングル状であり、接合ベース30の上方を架橋し、接地電極86を基板W内のダイヤフラム基板6の端子位置までガイドする。接地電極86は、支持部85および土台部50を通じて、ダイヤフラム基板6を接地する。
【0064】
図8に、接合ベース30、端子141、および端子142の接触状態を例示する拡大図を示す。図8は、図7のA2矢印方向から、加工装置を見た拡大図である。図8では、接合ベース30上のシリコン基板31の帯状部分55に、高圧(マイナス数百ボルトからマイナス1000ボルト)につながる端子142が接触している。また、接地電位につながる端子141は、山状部分54(帯状部分55よりも狭い帯状の部分)に接触している。
【0065】
図9−図14により、端子141,142,143,144の構造の詳細を例示する。
図9は、架橋部材72に取り付けられた端子142(本発明の第4接触端子に相当)が、シリコン基板31の帯状部分55に接触した状態を示す斜視図である。ここでは、端子142を例に詳細構造を説明するが、端子141,143,144についても、その構造は同様である。端子141が本発明の第3接触端子に相当し、端子143が本発明の第2接触端子に相当し、端子144が本発明の第1接触端子に相当する。
【0066】
図10は、端子141,142,143,144を構成するばね内蔵突起ねじ100の外観図である。図11は、ばね内蔵突起ねじ100の正面図である。また、図12は、正面図に示された平面P1にて、ばね内蔵突起ねじ100を切断した断面をA3矢印方向に見た断面図である。図12のように、ばね内蔵突起ねじ100は、外面にねじ山(雄ねじ)が形成された筒状の外殻部101(本発明の装着部に相当)と、外殻部101内にて、外殻部101の円筒長さ方向に伸縮可能なばね102(本発明の弾性体に相当)と、ばね102によって、端面を外殻部101の円筒長さ方向に弾性的に押圧される突起部104(本発明の端子部に相当)を含む。突起部104のばね102と接触する端面には、円盤状のつば部103が形成され、ばね102の押圧力を受けている。突起部104は、つば部103から延伸し、つば部103より、半径の小さい軸部を含む。なお、図12では、ばね102は、つる巻き状のばねであるが、本発明の実施は、このようなばねの形状には限定されない。例えば、ばね102が板ばねであってもよい。
【0067】
外殻部101は、円筒形状であり、円筒形状の内部空間を有する。円筒長手方向の一端は、閉じられており、他端には、円筒形状の内部空間の内面半径より小さい穴部106が設けられている。穴部106を通じて、突起部104の軸部が突き出している。そして、ばね部102は、つば部103を突起部104の軸部が延伸する方向に付勢し、内壁空間の側壁に押圧している。
【0068】
外部から、突起部104をばね102の弾性力に抗する方向に付勢すると、突起部104を外殻部101に弾性的に押し込むことができる。そして、突起部104へのばね102の弾性力に抗する方向の付勢をやめると、再び、突起部104が外殻部101から円筒長さ方向に突き出す。このときの突起部104が外殻部101から外側に突き出す弾性力は、ばね102の縮んだ長さに比例にして強くなる。図13は、突起部104が外殻部101から最も長く延びた状態(弾性力が最小の状態)を示し、図14は、突起部104が外殻部101の中に押し込まれた状態(弾性力が最大の状態)を示している。
【0069】
端子142を構成するばね内蔵突起ねじ100は、図9に示すように、架橋部材71に形成されたねじ穴(雌ねじ)にねじ着されている。なお、図には、明示しないが、内蔵突起ねじ100の外面のねじ山には、ゆるみ止め防止の接着剤を塗布するようにしてもよい。そして、架橋部材72をシリコン基板31に押圧し、固定具162で固定すると、ばね102の弾性力によって、突起部104が弾性的に、シリコン基板31を押圧することになる。この構造は、端子141と架橋部材71、端子143と架橋部材73、端子144と架橋部材74についても同様である。
【0070】
図15−図17により、加工装置の詳細構成を説明する。図15は、加工装置を上方(基板Wを載置する側)から見た平面図である。図16Aは、図15のB1矢印方向から見た側面図(ただし、架橋部材71、72の中央右側は省略している)である。図16Bは、架橋部材71部を取り外した状態で、図12のB1矢印方向から見た側面図(ただし、架橋部材72の中央右側は省略している)である。図17は、図15のB2矢印方向から見た正面図である。ただし、図15では、接合ベース30および基板Wは、省略されている。
【0071】
図15のように、土台部50には、架橋部材71,72,73,74が配置され、それ
ぞれ固定具161,162,163,164によって土台部50に固定される。架橋部材71には、シリコン基板31上の複数の山状部分54が形成される間隔と同一の間隔で、山状部分54が配置される位置に端子141が架橋部材71の長手方向に配列される。同様に、架橋部材72には、シリコン基板31上の複数の帯状部分55が形成される間隔と同一の間隔で帯状部分55が配置される位置に端子142が架橋部材72の長手方向に配列される。
【0072】
また、架橋部材74には、基板Wの表面の外側基板8A上の複数の山状部分14Aが形成される間隔と同一の間隔で山上部14Aが配置される位置に端子144が架橋部材74の長手方向に配列される。同様に、架橋部材73には、基板Wの表面の外側基板8A上の複数の帯状部分15Aが形成される間隔と同一の間隔で帯状部分15Aが配置される位置に端子143が架橋部材74の長手方向に配列される。
【0073】
図16A、図17に示すように、架橋部材71(74)は、固定具161(164)、および土台部50を通じて接地されている。一方、図16B、図17に示すように、架橋部材72は、絶縁性の押さえ構造162Aおよび支持部162Dによって電気的には、土台部50から絶縁された状態で固定されている。この構造は、架橋部材72についても同様である。このように、架橋部材71(74)は、土台部50によって接地されている。また、架橋部材72(73)には、高圧導電板65から高電圧の供給が可能となっている。
【0074】
さらに、図5に示すように、土台部50には、接地電極86を支持する金属製の支持部85が設けられている。また、土台部50の側方には、基板Wのオオリエンテーションフラットを検出するオリエンテーションフラット検出部81,82が設けられている。
【0075】
さらに、土台部50の下方には、加熱手段90が設けられている。加熱手段90は、例えば、内部に電熱線を含むヒータである。
【0076】
以上の構成により、本加工装置は、土台部50に、接合ベース30を搭載し、さらに、基板Wを搭載する。本加工装置は、加熱手段90により、基板Wが所定温度に加熱されている。以下の工程は、この加熱状態で実行される。
【0077】
基板Wの外側基板8Bの絶縁用溝13A,13Bと、接合ベース30のシリコン基板31の絶縁用溝43A,43Bとを位置合わせして、基板Wを接合ベース30に搭載する。このとき、リエンテーションフラット検出部81,82に対して、基板Wのオリエンテーションフラットを合わせることで、位置合わせが容易、かつ、確実となる。
【0078】
そして、架橋部材71を端子141が接合ベース30のシリコン基板31の山状部分54に接触するように載置し、固定具161にて、ねじ止めする。これによって、ばね102の弾性力により、端子141が安定して山状部分54に押圧される。その結果、固定電極2Bが確実に接地される。
【0079】
また、架橋部材72を端子142が接合ベース30のシリコン基板31の帯状部分55に接触するように載置し、固定具162にて、ねじ止めする。これによって、ばね102の弾性力により、端子142が安定して帯状部分55に押圧される。
【0080】
さらに、架橋部材74を端子144が基板Wの外側基板8Aの山状部分14Aに接触するように載置し、固定具164にて、ねじ止めする。これによって、ばね102の弾性力により、端子144が安定して山状部分14Aに押圧される。その結果、固定電極2Aが確実に接地される。
【0081】
また、架橋部材73を端子143が基板Wの外側基板8Aの帯状部分15Aに接触するように載置し、固定具163にて、ねじ止めする。これによって、ばね102の弾性力により、端子143が安定して帯状部分15Aに押圧される。
【0082】
また、支持部85を通じて、接地電極86をダイヤフラム基板6のパッド10に押圧する。これによって、ダイヤフラム基板6は、接地電極86を通じて接地される。
【0083】
そして、高圧導電板65、架橋部材72,73、およびシリコン基板31の帯状部分55を通じてキャップ層17A,17Bの帯状部15A,15Bに、高圧電源から例えば、マイナス数百ボルトからマイナス1000ボルト程度の電圧を投入することで、陽極接合を実行する。このとき、ダイヤフラム基板6およびダイヤフラム基板6の可動電極1に対向する固定電極2A,2Bがともに接地されているので、ダイヤフラム基板6に作用する静電引力は、ほとんど存在しないか、極めて微弱なレベルに抑制できる。したがって、可動電極1の固定電極2A,2Bへの固着を抑制した状態で、陽極接合を実行できる。さらに、陽極接合実行後は、電源から高圧導電板65への高電圧を遮断し、基板Wを加工装置から取り外し、基板Wをダイシング工程にて切断し、個々の素子21(図1,図2参照)を形成すればよい。したがって、陽極接合後の特別の工程を追加することなく、安定して陽極接合を実行できる。
【実施例2】
【0084】
上記実施例1では、端子141,142,143,144にばねを設け、架橋部材71,72,73,74から弾力性を保持して、基板W(山状部分14A、帯状部分15A)、および接合ベース30(山状部分54、帯状部分55)を押圧した。このような構成に代えて、端子141,142,143,144をばねのない構成としてもよい。すなわち、固定具161,162をねじ締めしたときの押圧力によって、端子141,142を接合ベース30に押圧するとともに、固定具163,164をねじ締めしたときの押圧力によって、端子143,144を基板Wに押圧するようにしてもよい。この場合に、ばね102のない分だけ、加工装置の構成は簡略化される。しかし、端子141,142,143,144に弾性力がないため、固定具161,162、163,164の押圧力の調整が難しくなる。また、接触不良を生じる可能性が高くなる。
【実施例3】
【0085】
図18および図19を参照して、本発明の実施例3を説明する。上記実施例1では、端子141,142,143,144にばねを設け、架橋部材71,72,73,74から弾力性を保持して、基板W(山状部分14A、帯状部分15A)、および接合ベース30(山状部分54、帯状部分55)を押圧した。そのような構成に代えて、キャップ層17A,17Bと同様の構成による電圧供給用の部品(以下、接合用部品217A,217Bという)を設けて、電圧を供給するようにしてもよい。実施例3の他の構成および作用は、実施例1、2と同様である。そこで、同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0086】
図18に、実施例2に係る陽極接合工程の概念図を示す。また、図19に、本実施例の加工装置の斜視図を示す。図18のように、本実施例では、キャップ層17Aに接触する接合用部品217Aを設ける。接合用部品217Aの構造は、キャップ層17Aの構成と類似する。すなわち、接合用部品217Aは、シリコン基板207Aとガラス基板208Aとを接合した構造である。
【0087】
シリコン基板207Aには、深さがガラス基盤208Aに達する溝部によって山状部分214A(本発明の第5帯状部に相当)と、帯状部分215A(本発明の第6帯状部に相
当)が形成されている。接合用部品217Aを基板Wに載置したときに、基板Wのシリコン基板7Aに形成した絶縁用溝12A,12Bがそのまま維持され、山状部分214Aと山状部分14Aとが接触し、帯状部分215Aと帯状部分15Aが接触する。ガラス基板208Aには、山状部分214Aに接地電位を供給する端子244(本発明の第1接地伝導部に相当)と、帯状部分215Aにマイナスの高圧を供給する端子243(本発明の第1電源伝導部に相当)が設けられている。端子244と、端子243は、ガラス基板208Aを貫通する孔部を通る金属の導電路によって、それぞれ山状部分214Aと、帯状部分215Aとに接続されている。
【0088】
同様に、シリコン基板207Bには、深さがガラス基盤208Bに達する溝部によって山状部分254(本発明の第7帯状部に相当)と、帯状部分255(本発明の第8帯状部に相当)が形成されている。接合用部品217Bを接合ベース30に載置したときに、接合ベース30のシリコン基板31に形成した絶縁用溝43A,43Bがそのまま維持され、山状部分254と山状部分54とが接触し、帯状部分255と帯状部分55が接触する。ガラス基板208Bには、山状部分254に接地電位を供給する端子241(本発明の第2接地伝導部に相当)と、帯状部分255にマイナスの高圧を供給する端子242(本発明の第2電源伝導部に相当)が設けられている。
【0089】
したがって、接合用部品217Aのシリコン基板207Aの帯状部分215Aと、キャップ層17Aのシリコン基板7Aの帯状部分15Aが一体になって、接地電位から絶縁され、端子243を通じて、マイナスの高電圧を供給可能である。また、接合用部品217Bのシリコン基板207Bの帯状部分255と、キャップ層17Bのシリコン基板7Bの帯状部分55が一体になって、接地電位から絶縁され、端子242を通じて、マイナスの高電圧を供給可能である。
【0090】
同様に、端子244から、互いに接触して一体となる山状部分214Aおよび山状部分14Aを通じて、固定電極2Aに接地電位を供給可能である。また、端子241から、互いに接触して一体となる山状部分54および山状部分254を通じて、固定電極2Bに接地電位を供給可能である。
【0091】
一方、ダイヤフラム基板6には、実施例1と同様に、設置電極86が接地電位を供給する。したがって、以上の構成によっても、固定電極2A,2Bを接地した状態で、ダイヤフラム基板6と、その領外のキャップ層17A,17Bの陽極接合が可能である。
【実施例4】
【0092】
上記実施例1,2では、架橋部材71,72,73,74をそれぞれ固定具161,162,163,164でねじ締めすることで、土台部50に対して上下方向に移動し、端子141,142,143,144をそれぞれ山状部分54,帯状部分55,帯状部分15A,山状部分14Aに押圧した。しかし、このような構成に代えて、例えば、土台部50に対して上下方向に移動可能なアクチュエータによって、架橋部材71,72,73,74を移動し、端子141,142,143,144をそれぞれ山状部分54,帯状部分55,帯状部分15A,山状部分14Aに押圧してもよい。
【符号の説明】
【0093】
1 可動電極
2 固定電極
4 梁部
6 ダイヤフラム基板
7A,7B ガラス基板
8A,8B 外側基板
17A,17B キャップ層
21 素子
30 接合ベース
50 土台
65 高圧導電板
71,72,73,74 架橋部
141,142,143,144 端子
161,162,163,164 固定部
161C (導電性の)押さえ構造
161D (導電性の)支持部
162C (絶縁性の)押さえ構造
162D (絶縁性の)支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の絶縁性基板と、
前記一対の絶縁性基板に挟まれ、前記絶縁性基板よりも導電性が高い中央基板と、
前記一対の絶縁性基板の外面に接合され前記絶縁性基板よりも導電性が高い一対の外側基板と、を有し、
前記一対の外側基板は、それぞれ、複数の溝状の間隙と、
前記間隙に挟まれた少なくとも1つの第1帯状部と、
前記間隙によって前記第1帯状部と絶縁された少なくとも1つの第2帯状部と、を有する加工対象物の加工装置であり、
下部絶縁用基板と、
前記下部絶縁用基板よりも導電性が高く、前記下部絶縁用基板に固定された導電用基板と、
前記導電用基板に載置される加工対象物の一方の外側基板の前記第1帯状部に接地電圧を加える第1接触端子を配列し、前記導電用基板に載置された前記加工対象物の上方を架橋する第1架橋部材と、
前記第1接触端子を前記加工対象物の前記一方の外側基板の第1帯状部に接触させた状態で前記第1架橋部材を固定する第1固定手段と、
前記導電用基板に載置される加工対象物の前記一方の外側基板の前記第2帯状部に加工電圧を加える第2接触端子を配列し、前記導電用基板に載置された前記加工対象物の上方を架橋する第2架橋部材と、
前記第2接触端子を前記加工対象物の第2帯状部に接触させた状態で前記第2架橋部材を固定する第2固定手段と、
前記導電用基板に接地電圧を加える第3接触端子を配列し、前記導電用基板の上方を架橋する第3架橋部材と、
前記第3架橋部材の第3接触端子を前記導電用基板上面に接触させた状態で固定する第3固定手段と、
前記導電用基板に加工電圧を加える第4接触端子を配列し、前記導電用基板の上方を架橋する第4架橋部材と、
前記第4架橋部材の第4接触端子を前記導電用基板上面に接触させた状態で固定する第4固定手段と、
前記加工対象物の中央基板に接地電圧を供給する接地端子と、
前記加工対象物を加熱する加熱手段と、を備え、
前記導電用基板は、前記第3架橋部材の架橋方向と直交方向に延伸する複数の溝状の間隙と、
前記間隙に挟まれて形成され、前記第3接触端子から接地電圧を供給される少なくとも1つの第3帯状部と、
前記間隙によって前記第3帯状部と絶縁され、前記第4接触端子から加工電圧を供給される少なくとも1つの第4帯状部と、を有し、
前記加工対象物の他方の外側基板の溝部と前記導電用基板の溝部を重ね合わせることによって、前記加工対象物の前記他方の外側基板の第1帯状部を前記導電用基板の第4帯状部から絶縁した状態で第3帯状部に接触させるとともに、前記加工対象物の前記他方の外側基板の第2帯状部を前記導電用基板の第3帯状部から絶縁した状態で第4帯状部に接触させ、前記加工対象物を載置する加工装置。
【請求項2】
前記第1接触端子は、端子部と、弾性体を介して前記端子部を前記第1架橋部材に装着する装着部とを有し、前記端子部は、前記第1架橋部材の下面から前記導電性基板に載置された前記加工対象物の方向に弾性的に押圧可能に突き出し、
前記第2接触端子は、端子部と、弾性体を介して前記端子部を前記第2架橋部材に装着する装着部とを有し、前記端子部は、前記第2架橋部材の下面から前記導電性基板に載置
された前記加工対象物の方向に弾性的に押圧可能に突き出している請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
前記下部絶縁用基板が載置される土台部をさらに備え、
第1固定手段は、前記第1架橋部材と前記土台部とをねじ止めするねじ部を有し、前記ねじ部を構成する雄ねじ部と雌ねじとの相対移動によって第1接触端子の前記加工対象物上面への押圧力を調整可能であり、
第2固定手段は、前記第2架橋部と前記土台部とをねじ止めするねじ部を有し、前記ねじ部を構成する雄ねじ部と雌ねじとの相対移動によって第2接触端子の前記加工対象物上面への押圧力を調整可能である請求項1または2に記載の加工装置。
【請求項4】
一対の絶縁性基板と、
前記一対の絶縁性基板に挟まれ、前記絶縁性基板よりも導電性が高い中央基板と、
前記一対の絶縁性基板の外面に接合され前記絶縁性基板よりも導電性が高い一対の外側基板と、を有し、
前記一対の外側基板は、それぞれ、複数の溝状の間隙と、
前記間隙に挟まれた少なくとも1つの第1帯状部と、
前記間隙によって前記第1帯状部と絶縁された少なくとも1つの第2帯状部と、を有する加工対象物の加工装置であり、
下部絶縁用基板と、
前記下部絶縁用基板よりも導電性が高く、前記下部絶縁用基板に固定された導電用基板と、
前記加工対象物の一方の外側基板の上面を延伸し、前記一方の外側基板に電圧を供給する第1載置接触部と、
前記導電用基板の上面を延伸し、前記導電用基板に電圧を供給する第2載置接触部と、
前記加工対象物の中央基板に接地電圧を供給する接地端子と、
前記加工対象物を加熱する加熱手段と、を備え、
前記導電用基板は、前記第2載置接触部の延伸方向と交差する方向に延伸する複数の溝状の間隙と、
前記間隙に挟まれた少なくとも1つの第3帯状部と、
前記間隙によって前記第3帯状部と絶縁された少なくとも1つの第4帯状部と、を有し、
前記加工対象物の他方の外側基板の溝部と前記導電用基板の溝部を重ね合わせることによって、前記加工対象物の前記他方の外側基板の第1帯状部を前記導電用基板の第4帯状部から絶縁した状態で第3帯状部に接触させるとともに、前記加工対象物の前記他方の外側基板の第2帯状部を前記導電用基板の第3帯状部から絶縁した状態で第4帯状部に接触させ、
前記第1載置接触部は、前記加工対象物に対向する下面側に、前記加工対象物の前記一方の外側基板の第1帯状部の上面に接触し、第2帯状部から絶縁される第5帯状部と、
前記第5帯状部に接地電圧を供給する第1接地伝導部と、
前記加工対象物の前記一方の外側基板の第2帯状部の上面に接触し、第1帯状部から絶縁される第6帯状部と、
前記第6帯状部に加工電圧を供給する第1電源伝導部と、を有し、
前記第2載置接触部は、前記導電用基板に対向する下面側に、前記導電用基板の第3帯状部の上面に接触し、第4帯状部から絶縁される第7帯状部と、
前記第7帯状部に接地電圧を供給する第2接地伝導部と、
前記加工対象物の第4帯状部の上面に接触し、第3帯状部から絶縁される第8帯状部と、
前記第8帯状部に加工電圧を供給する第2電源伝導部と、を有する加工装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−171203(P2010−171203A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12332(P2009−12332)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【出願人】(504117958)独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構 (101)
【Fターム(参考)】