説明

半導体ウェハー加熱用ステージヒーターの耐食処理

【課題】 近年、成膜速度が速くなるにつれて、半導体製造装置用のウェハーを載置するホルダーやプラズマ反応を起こす電極としてのステージヒーターの損傷が激しく寿命が短いため、より耐食性、熱衝撃に対しても耐久性の優れたものが求められるようになってきた。
本発明の目的はステージヒーターの外表面に耐食処理を施すことによって、ウェハーの処理品質の向上や長寿命化を図ることにある。
【解決手段】 ステージヒーターの基材の外表面にスパッタリング法やイオンプレーティング法によって、ニッケルやクロム、チタン、ハステロイ、インコネル等の耐食性皮膜を生成させて製作することにより、熱衝撃や腐食性ガスに対する耐久性、耐食性の向上を図ることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【発明の属する分野】
【0001】
本発明は主に半導体ウェハー加熱用ステージヒーターの耐久性に優れた耐食処理方法に関する。さらに詳しくは科学気相堆積(Chemical Vapor Deposition:以下CVDと略記する)装置の半導体製造装置においてウェハーを載せるホルダー、プラズマ反応を起こす電極としてのステージヒーターの耐食処理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CVD装置においてステージヒーターはウェハーを載せるホルダー、及びプラズマ反応を起こす電極として構成される。処理時には400℃〜700℃の装置内部の雰囲気に置かれるとともに処理後には装置外部の室温の雰囲気に曝される。
この熱サイクルが繰り返し行われるため、ステージヒーターは熱衝撃に対して高い耐久性が要求される。さらにステージヒーターはヒーターからの熱を効率よくウェハーに伝える必要があるとともに、成膜用ガス、エッチング用ガス等に対して耐食性があることが要求される。従来ステージヒーターの基材は窒化アルミニウム、アルマイト処理したアルミニウム、耐食処理されていないアルミニウム(A5052)材等が使用されていた。
近年、成膜速度が高くなるにつれて、ステージヒーターの損傷が激しく寿命が短いためより耐久性、熱衝撃に対して耐久性の高いものが求められるようになった。
周知のように半導体製造プロセスでのCVDプロセスにおいて使用されているガスはシラン(SiH)、ジシラン(Si)、フッ化ゲルマニウム(GeF)、六フッ化エタン(C)、三フッ化窒素(NF)、八フッ化プロパン(C)、三フッ化塩素(ClF)等がある。これらのガスがステージヒーターの基板に接触するとガス中のフッ素成分がアルミニウム成分と反応してフッ化物系皮膜を生成する。このフッ化物皮膜が剥離してCVD装置の内部を浮遊した後、ウェハー表面に付着する恐れがあった。またステージヒーター基材の腐食による汚染の問題があった。
CVD装置は真空チャンバー内のステージヒーターの上にウェハーを載置し低圧反応ガス雰囲気でプラズマを発生させCVD処理するもので、ウェハの処理条件に応じてステージヒーターを介して、ウェハーの加熱冷却が行われる。ウェハーの温度制御はウェハーの処理品質に大きく影響するため、ステージヒーターの表面損傷は過熱冷却の均一性に支障が生じる。またCVD装置の連続運転中、プラズマアタックによりステージヒーター表面に前述したようにAl系異物が発生する問題、反応ガスによる腐食の問題はウェハーの処理品質に重大な悪影響を及ぼす事になる。
以下に従来の基材を用いたステージヒーターの実施例を図5ないし図6で説明する。図5はプラズマ酸化膜CVD装置チャンバーの断面模式図である。真空チャンバー8内に設けられたステージヒーター9の上面に均熱板10が固定ネジ11で固定されて設けられステージヒーター9からのウェハー12への熱伝達を効率よく均一化できるように構成されている。ウェハー12はステージヒーター9の上面に設けられた均熱板10の上に載置される。
真空チャンバー8の上方に設けられたガス入口14から前述したような反応ガスがシャワープレート13を介してウェハー12表面に均一に流入し、図示していない真空ポンプでガス排気口15から排気され真空チャンバー8内は低圧雰囲気に保持される。シャワープレート13には図示していないDC電源装置によりプラス極、ステージヒーター9はマイナス極として直流電圧が印加されるように構成されている。このように真空チャンバー8内に電力を投入して、発生するプラズマ、即ち原子や分子がイオンと電子に解離した状態で反応ガスを分解しウェハ基板上に低温で材料を均一に堆積させ成膜することができる。
図5の別の工程として成膜時または、成膜後、例えば、八フッ化プロパン(C)等のクリーニングガスを真空チャンバー8内に導入し、ウェハー12及びステージヒーター9均熱板10、真空チャンバー8内に付着したAlF系異物等を排除する工程がある。
この際、プラズマアタックにより均熱板10とステージヒーター9との隙間及び外表面にAlF系異物18が発生しクリーニングが完全に出来ない、または腐食等の問題が発生することになる。この場合、短期間で図6のように固定ネジ11の周辺、特に均熱板10とステージヒーター9は腐食性反応ガス、高温雰囲気、プラズマ中での条件下で使用されるため短期間で損傷し、使用不可になるためウェハーの処理品質や経済的な問題の発生は避けられなかった。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は熱伝導率が高く、腐食性反応ガスや熱衝撃に対し耐食性、耐久性が良好な半導体製造装置用のウェハーを載置するホルダー、プラズマ反応を起こす電極としてのステージヒーターに耐食処理を施すことによってウェハーの処理品質の向上やステージヒーターの長寿命化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
従来のステージヒーターの基材としては、窒化アルミニウム、アルマイト処理したアルミニウム、耐食処理されていない、例えばA5052系アルミニウムが使用されていたが前述したような種々の問題があった。
本発明におけるステージヒーターは、スパッタリング法やイオンプレーティング法によりステージヒーターの外表面にニッケルやチタン、クロム、インコネル、ハステロイ等の薄膜を生成させ、耐食処理することにより製作することを特徴としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明における第一の発明としてスパッタリング法によるアルミニウム製のステージヒーターの外表面にニッケルの薄膜を生成する方法の実施例を図1に示す。
図中、1は真空容器、2A、2B,2C,2Dはニッケル材でできたターゲット(マイナス電極)、3は外表面がアルミニウム製のステージヒーター、4は真空容器1内でステージヒーター3を保持して、図示していない電動機等で回転駆動される回転保持部材、5は図示していない真空ポンプで真空容器1内のガスを排気する排気口である。また6はアルゴンガスを導入するアルゴンガス導入バルブ。7は真空容器1とターゲット2A、2B、2C、2Dに数百ボルトの電圧をかけるためのDC電源である。
ステージヒーター3は真空容器1内で回転保持部材4で保持され、回転駆動される。
アルミ材のターゲット2A、2B、2C、2Dはステージヒーター3の各々の外表面に対抗して位置するように設けられ、DC電源7により真空容器1はプラス極、ターゲット7はマイナス極として数百ボルトの直流電圧が印加される。真空容器1内は排気口5から図示していない真空ポンプで排気することにより真空状態になる。このときアルゴンガス導入バルブ6を開いて図示していないアルゴンガス供給源からアルゴンガスが真空容器1内に導入される。アルゴンガスが導入されることにより放電が発生し、そのエネルギーによってガス粒子がプラスの電気を帯び、プラスの粒子は非常に強い力でマイナス電極であるターゲット2A、2B、2C、2Dの一部が粒子になって弾き飛びステージヒーター3の表面にニッケルの薄膜が生成される。ステージヒーター3の外表面に対抗してニッケル材のターゲット2A、2B、2C、2Dを設けること、更にはステージヒーター3を回転させることによりステージヒーター3の外表面に均一なニッケルの薄膜を効率的に生成させることができる。
このようにして、生成されたニッケルの薄膜は熱エネルギーをもらって蒸発する蒸着の場合と異なり、かなり激しい衝突を経てたたき出されるのでスパッタされた原子のエネルギーは大きく、蒸着の場合に比較して約100倍である、スパッタリング法による薄膜の生成の特徴として▲1▼結晶性の良い良質の膜ができること▲2▼ステージヒーターへの付着度が高いこと等が上げられる。
本発明におけるスパッタリング法による耐食処理のターゲット材として、ニッケルの薄膜を生成する方法で説明してきたが、他のターゲット材としてのクロム、インコネル、ハステロイ、チタン等、耐食性のある材料を選択することによって、目的に合った耐食処理(コーティング処理)が実施できる。
本発明による第二の発明としてステージヒーターへの耐食コーティングとしてイオンプレーティング法で耐食性のある薄膜を生成させて製作することもできる。
イオンプレーティング法は真空蒸発法とスパッタリングの複合技術で真空チャンバー内で、電子ビームによって電解質材料を加熱させ蒸発させ、高周波によって発生したプラズマ中を蒸発した材料を通過させる。この時蒸発した粒子が結合しやすいイオンの状態になる。
イオン化すると同時にプラズマのアシストを受けてステージヒーターの基材の外表面に勢いよく衝突して緻密性の高い薄膜が生成される。
図2はかかる方法で成膜された外表面に耐食処理膜16を有するステージヒーターを示す。ステージヒーター9の上面にはネジ穴17を有し図3のように均熱板10が固定ネジ11で固定される。
図4は従来例の図5ないし図6のように真空チャンバー8内に本発明におけるスパッタリング法、あるいはイオンプレーティング法により耐食処理されたステージヒーター9に均熱板10を組み付けた(図3)ものを設けたプラズマ酸化膜CVD装置チャンバーの断面模式図である。CVD処理中、とくに八フッ化プロパン(C)ガスクリーニング時に、従来例に見られたプラズマアタックによるステージヒーター9と均熱板10の隙間部分、及び外表面にAlF系の異物の発生が見られなかった。このようにステージヒーター9の外表面に耐食膜16を生成させてステージヒーター9を製作することによりAlF系異物の発生を抑えることが実証できた。
【発明の効果】
【0006】
本発明の目的とするところの熱伝導性、腐食性ガスや熱衝撃に対し耐久性のある、かつ特にフッ素系ガスに対する耐食性の良好なステージヒーターがスパッタリング法、あるいは、イオンプレーティング法でアルミニウム製の基材にニッケル、インコネル、ハステロイ、チタン等の皮膜を生成させ耐食処理することにより実現できた。特にターゲット材にニッケル材を用いることによってニッケルコーティングされたステージヒーターをCVD装置で八フソ化プロパン(C)クリーニング時にAlF系異物の発生を抑えることが実証できた。
かかるステージヒーターの耐食処理の発明により、ステージヒーターの長寿命化、ウェハーの処理品質の向上が図れる等、経済効果大である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】 本発明におけるスパッタリング法によるニッケルの成膜法の実施例
【図2】 スパッタリング法により成膜されたステージヒーターの模式図
【図3】 均熱板を固定ネジで組付けたステージヒーターの模式図
【図4】 本発明により成膜されたステージヒーターを組付けたプラズマ酸化膜CVD装置チャンバーの断面模式図
【図5】 従来の基材を用いたステージヒーターを組付けたプラズマ酸化膜CVD装置チャンバーの断面模式図
【図6】 プラズマアタックによるステージヒーターの損傷部のZ部の拡大図
【符号の説明】
【0008】
1:真空容器
2A.2B.2C.2D:ターゲット
3:ステージヒーター 4:回転保持部材
5:排気口 6:アルゴンガス導入バルブ 8:DC電源
9:ステージヒーター 10:均熱板 11:固定ネジ 12:ウェハー
13:シャワープレート 14:ガス入口 15:ガス排気口
16:耐食処理膜 17:ネジ穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面にスパッタリング法により耐食性皮膜を生成させてなることを特徴とする半導体ウェハ加熱用ステージヒーター。
【請求項2】
基材の表面にイオンプレーティング法により耐食性皮膜を生成させてなることを特徴とする半導体ウェハ加熱用ステージヒーター。
【請求項3】
請求項1に記載の耐食性皮膜がニッケルであることを特徴とする半導体加熱用ステージヒーター。
【請求項4】
請求項1に記載の耐食性皮膜がクロムであることを特徴とする半導体加熱用ステージヒーター。
【請求項5】
請求項1に記載の耐食性皮膜がチタンであることを特徴とする半導体加熱用ステージヒーター。
【請求項6】
請求項1に記載の耐食性皮膜がハステロイであることを特徴とする半導体加熱用ステージヒーター。
【請求項7】
請求項1に記載の耐食性皮膜がインコネルであることを特徴とする半導体加熱用ステージヒーター。
【請求項8】
請求項1に記載の耐食性皮膜がアルミニウムであることを特徴とする半導体加熱用ステージヒーター。
【請求項9】
請求項2に記載の耐食性皮膜がニッケルであることを特徴とする半導体加熱用ステージヒーター。
【請求項10】
請求項2に記載の耐食性皮膜がクロムであることを特徴とする半導体加熱用ステージヒーター。
【請求項11】
請求項2に記載の耐食性皮膜がチタンであることを特徴とする半導体加熱用ステージヒーター。
【請求項12】
請求項2に記載の耐食性皮膜がハステロイであることを特徴とする半導体加熱用ステージヒーター。
【請求項13】
請求項2に記載の耐食性皮膜がインコネルであることを特徴とする半導体加熱用ステージヒーター。
【請求項14】
請求項1に記載の耐食性皮膜がアルミニウムであることを特徴とする半導体加熱用ステージヒーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−78592(P2008−78592A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−281909(P2006−281909)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(501376338)株式会社エイ・ディー・ディー (5)
【Fターム(参考)】