説明

半導体ウエハを乾燥させるための方法

【解決手段】板状物品を乾燥させるための方法が開示される。該方法は、水性すすぎ液によるすすぎと、有機溶媒による後続のすすぎとを含み、有機溶媒は、20重量%未満の含水量を有し、有機溶媒は、少なくとも30℃で、かつ60℃を超えない溶媒温度で供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円盤形物品の表面を乾燥させるための方法に関する。特に、本発明は、水性すすぎ液によるすすぎおよび後続の有機溶媒によるすすぎによって乾燥させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
円盤形物品の表面を乾燥させるための方法は、通常、半導体業界において、生産プロセス(例えば、フォト前洗浄、CMP後洗浄、およびプラズマ後洗浄)中にシリコンウエハを洗浄するために使用される。しかしながら、このような乾燥方法は、コンパクトディスク、フォトマスク、レチクル、磁気ディスク、またはフラットパネルディスプレイなどの、その他の板状物品にも適用されてよい。半導体業界において使用されるときは、(例えば、シリコン・オン・インシュレータ・プロセスにおける)ガラス基板、III−V基板(例えば、GaAs)、または集積回路を作成するために使用されるその他の任意の基板もしくはキャリアにも適用されてよい。
【0003】
半導体業界において、幾つかの乾燥方法が知られている。乾燥方法の多くは、明確な気液界面層を使用する。このような乾燥方法は、マランゴニ乾燥方法としてのほうが良く知られている。
【0004】
米国特許第5,882,433号は、マランゴニとスピンとを組み合わせた乾燥方法を開示している。したがって、ウエハに対して脱イオン水が供給されるのと同時に窒素と2−プロパノールとの混合が供給される。窒素中の2−プロパノールは、表面勾配を生じさせるという意味で、気液界面層に影響を及ぼし、これは、水がウエハ上にいかなる滴も残すことなくウエハから流れ去る効果(マランゴニ効果)をもたらす。気体供給器は、液体供給器がウエハの中心から縁へ移動される間およびウエハがスピンされる間、液体供給器のすぐ後に続く。そうして、気体は、ウエハから去る液体にそのまま取って代わる。代替として、米国特許第5,882,433号は、水性溶液が有機溶液によって除去される方法を開示している。
【0005】
後者は、ウエハを乾燥させるときに欠陥が増加するという問題を有する。ただし、ウォーターマークの増加は、常には生じなかった。しかしながら、200mm技術から300mmへの切り替えの際に、マイナス効果のほうが増した。
【0006】
したがって、本発明の目的は、乾燥時におけるウォーターマークの発生を回避すること、およびそれと同時に乾燥プロセスを制御しやすくすることにある。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、板状物品を乾燥させるための方法を提供することによって問題を解決する。該方法は、水性すすぎ液によるすすぎと、(液状の)有機溶媒による後続のすすぎとを含み、
【0008】
有機溶媒は、20重量%以下の含水量を有し、
【0009】
有機溶媒は、少なくとも30℃で、かつ60℃を超えない溶媒温度で供給される。
【0010】
水性溶液は、好ましくはDI水(脱イオン水)であるが、オゾン、フッ化水素酸、塩酸、炭酸、またはアンモニアの希釈液であってもよい。
【0011】
後続のすすぎは、有機溶媒によるすすぎの開始が水性溶液によるすすぎの開始よりも後であることを意味する。これは、これらの両すすぎ工程が相次いで実施されてよいこと、または2つのすすぎ工程間に時間的中断があってよいことを意味する。これらの両すすぎ工程は、時間的に重複していてもよい。
【0012】
好ましくは、有機溶媒は、水に対して混和性である。水に対して混和性であるという表現は、水が0重量%から少なくとも10重量%(よりいっそう好ましくは2重量%未満)までの含水量で溶媒に溶解可能であることとして理解されるものとする。
【0013】
方法の好ましい一実施形態では、相対湿度が測定され、その相対湿度から(例えばモリエ線図を使用して)露点が計算され、有機溶媒が板状物品に供給される温度は、計算された露点よりも20Kから35K高い範囲から選択される。
【0014】
理論に縛られることなく、水性すすぎ液を除去するための有機溶媒の使用は、有機溶媒の速い蒸発ゆえに、結果として板状物品の表面を冷却させると考えられる。さらに、板状物品は、それゆえに周囲空気の露点未満に冷却され、これは、水蒸気の凝結をもたらすと考えられる。したがって、水蒸気に由来する水滴がウォーターマークを生じさせる恐れがある。
【0015】
供給されるときの有機溶媒の最低温度を湿度に依存して選択することによって、乾燥のパフォーマンスは、劇的に向上されるはずである。
【0016】
表1は、有機溶媒溶液の供給温度として選択される好ましい範囲を、相対湿度の測定値から計算可能な露点の関数として示している。1列目には、25℃における周囲空気の相対密度が挙げられ、これらは、括弧()内に挙げられた20℃における相対密度と等価である。
【表1】

【0017】
有利には、有機溶媒は、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール)、ケトン(例えば、アセトン)、エステル、エーテルからなる群より選択される。これらの溶媒(とりわけ2−プロパノール)は、半導体業界において周知のものであるが、ヒドロフルオロエーテルなどの、その他の溶媒が使用されてもよい。
【0018】
好ましくは、溶媒温度は、少なくとも35℃であり、これは、より高い湿度を許容可能であるという選択肢を与える。
【0019】
好ましい一実施形態では、溶媒温度は、55℃以下であり、これは、有機溶媒が可燃性である場合の安全上の理由ゆえに好ましいとされる。
【0020】
有利には、有機溶媒は、10重量%未満の含水量を有する。これは、溶媒残留物が蒸発するときに、基本的に水の無い表面を残らせる。
【0021】
この効果は、含水量が5重量%未満であるとき、またはひいては2重量%未満であるときに、よりいっそう高まる。
【0022】
有利には、板状物品は、有機溶媒によるすすぎ中に回転されるが、直線状に移動されてもよい。
【0023】
有利には、有機溶媒は、20ml/分から400ml/分の範囲の体積流量で供給される。好ましくは、有機溶媒の流量は、200ml/分以下である。このような低流量の有機溶媒は、有機溶媒を高温で使用したときにのみ可能になった。
【0024】
もし、供給される有機溶媒の温度が露点よりも少なくとも25K高く維持されるならば、有機溶媒の流量は、ウォーターマークを生じさせることなく100ml/分未満に選択することができる。これは、環境的に望ましいのみならず、乾燥コストを低く維持するのにも役立つ。
【0025】
別の一実施形態では、乾燥が実施される前に、円盤形物品に対して(例えば、フッ化水素やフッ化アンモニウムを含有する)フッ素含有溶液が供給される。好ましくは、このようなフッ素含有溶液は、希釈フッ化水素であり、フッ化水素の分析濃度が1g/L未満の水溶液である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
好ましい一方法が、以下のように実施される。
【0027】
300mm半導体ウエハ(板状物品)がスピンチャック上に載置され、スピンチャックの把持ピンによって把持された後、そのウエハ上に異なる流体が続きで供給されるウェットプロセスが実施される。液体を供給するときに、供給ノズルは、選択された速度で、中心から縁に向かってそして再び中心に向かってウエハ上を通過することができる。この動きは、対応する液体が供給されている限り繰り返すことができる。洗浄液の供給時におけるスピン速度は、好ましくは300rpmから2000rpmの範囲で選択される。
【0028】
第1に、HF濃度が0.01g/Lの希釈フッ化水素酸が供給され、第2に、すすぎ液(例えば、脱イオン水)が供給され、第3に、すすぎ液がオフにされそれと同時に有機溶媒供給がオンにされ、第4に、有機溶媒および窒素が同時に供給され、第5に、スピンオフ(振り落し)工程が実施される。
【0029】
このプロセスに使用される媒体アームは、3つのノズルを含むノズルヘッドを含む。ノズルには、希釈フッ化水素または脱イオン水を供給するためのノズルと、有機溶媒(ここでの有機溶媒は、2−プロパノールである)を供給するためのノズルと、窒素を供給するためのノズルとがある。このようなノズルヘッドおよびそれに付随する媒体アームは、例えば、国際公開公報WO2008/041211A2においてさらに説明されている。
【0030】
乾燥方法の手順は、以下の順序で実施される。
【0031】
工程A:ウエハが、500〜1200rpmの範囲のスピン速度(例えば、800rpm)で回転している間に、最終ケミカル供給工程として、希釈フッ化水素(濃度が1g/Lから100g/L)が、30秒間から200秒間にわたって1.7〜2L/分の流量でウエハの中心に供給される。媒質の温度は、22℃である。
【0032】
工程B:ウエハが、500〜1200rpmの範囲のスピン速度(例えば、800rpm)で回転している間に、すすぎ工程(脱イオン水)がやはり、20秒間にわたって1.7〜2L/分の流量でウエハの中心に供給される。媒質の温度は、22℃である。
【0033】
工程C:乾燥工程:ノズルヘッドが、ウエハを中心から縁に向かって10mm/秒の平均速度で1回通過する。通過速度は、中心では20mm/秒であり、縁に向かって移動するにつれて5mm/秒に減少する。通過中に、中心から縁まで2−プロパノールが供給される。2−プロパノールが供給されるとともに、同時に窒素が吹き付けられる。2−プロパノールは、ウエハの縁でオフに切り替えられる。2−プロパノールは、45℃の温度を有する。2−プロパノールは、熱交換器によって加熱される。温度は、ノズルヘッドから5cm手前の距離で測定される。2−プロパノールの流量は、好ましくは、50ml/分から160ml/分の間に設定される。ノズル開口部の断面積は、(8分の1インチ管から得られる)8mm2である。したがって、流速は、0.1m/秒から0.33m/秒の範囲である。暖かい2−プロパノールは、ウエハ温度を上昇させ、これは、ウォーターマークの数を劇的に減少させる。これは、ウエハ表面の温度が周囲空気の露点よりも高く維持可能であるゆえの、凝結の減少に起因すると考えられる。窒素流量は、ノズルヘッドが中心から縁へ移動される間に、(最大窒素流量の50%から100%へ)増加する。最大時(縁付近)において、窒素流量は、30L/分前後である。有機溶媒供給ノズルが円盤形物品の中心から縁に向かって移動する間に、チャック速度は、1100rpmから450rpmへ線形的に減少する。もし、供給される2−プロパノールの温度が45℃(またはそれよりも高く)維持されるならば、2−プロパノールの流量は、ウォーターマークを生じさせることなく100ml/分未満に選択することができ、これは、2−プロパノールの消費を大幅に減らすことができる。
【0034】
工程D:最終工程は、いかなるケミカル供給も伴うことなく10秒間にわたって1500rpmの回転スピン速度で回転させることである。この工程は、必須ではないが、ウエハの裏側および/またはウエハを回転させるチャックに付着する恐れがあるあらゆる液滴の跳ね戻りを防ぐ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状物品を乾燥させるための方法であって、
水性すすぎ液によるすすぎと、有機溶媒による後続のすすぎとを備え、
前記有機溶媒は、20重量%未満の含水量を有し、
前記有機溶媒は、少なくとも30℃で、かつ60℃を超えない溶媒温度で供給される、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
相対湿度が測定され、前記相対湿度から露点が計算され、前記板状物品に前記有機溶媒が供給される温度は、前記計算された露点よりも20Kから35K高い範囲から選択される、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
前記有機溶媒は、水に対して混和性である、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、
前記有機溶媒は、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール)、ケトン(例えば、アセトン)、エステル、エーテルからなる群より選択される、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、
前記溶媒温度は、少なくとも35℃である、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、
前記溶媒温度は、55℃以下である、方法。
【請求項7】
請求項3に記載の方法であって、
前記有機溶媒は、10重量%未満の含水量を有する、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、
前記板状物品は、前記有機溶媒によるすすぎ中に回転される、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、
前記有機溶媒は、20ml/分から400ml/分の範囲の体積流量で供給される、方法。
【請求項10】
請求項10に記載の方法であって、
前記供給される有機溶媒の温度は、前記露点よりも少なくとも25K高く維持され、前記有機溶媒の流量は、ウォーターマークを生じさせることなく100ml/分未満に選択される、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、
乾燥が実施される前に、前記円盤形物品に対してフッ素含有溶液が供給される、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、
前記フッ素含有溶液は、濃度1g/L未満でフッ化水素を含有する水溶液である、方法。

【公表番号】特表2012−533875(P2012−533875A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520132(P2012−520132)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際出願番号】PCT/IB2010/053020
【国際公開番号】WO2011/007287
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(510141648)ラム・リサーチ・アーゲー (11)
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH AG
【Fターム(参考)】