説明

半導体ウエハ支持部材及び半導体ウエハ支持部材の評価方法

【課題】反応ガスがウエハ裏面へ回り込むのを抑制し、ウエハ裏面おける薄膜形成が抑制される半導体ウエハ支持部材及び及び半導体ウエハ支持部材の評価方法を提供する。
【解決手段】この半導体ウエハ支持部材は、半導体ウエハを搭載する凹形状のウエハ保持部を有する半導体ウエハ支持部材であって、前記ウエハ外周部が当接する部分の相対高さを周方向にわたって測定し、その測定結果を縦軸に高さ、横軸に位置角度をとった図に示し、前記図中で垂直方向に相対高さが高い2点と、垂直方向の相対高さが最も低い点とによって描かれる三角形の面積が、0.15cm2以下であることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハの支持部材及び半導体ウエハ支持部材の評価方法に関し、例えばエピタキシャル成長用サセプタ等の半導体ウエハ支持部材及び半導体ウエハ支持部材の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、数枚から数十枚の半導体ウエハを縦型反応炉で化学気相成長させる縦型の化学気相成長装置として、例えば、図7および図8に示す装置が知られている。
この装置は、装置内に外部より反応ガス17を導くガス導入ノズル11と、上記ガス導入ノズル11の先端部の側壁に穿設された吹出口12と、上記ガス導入ノズル11の基部周囲に設置され、半導体ウエハ18を支持するサセプタ13と、上記サセプタ13およびガス導入ノズル11の周囲を囲み、反応炉空間を形成する石英ガラスベルジャ14およびステンレス・ベルジャ15と、上記サセプタ13を高周波誘導コイルにより加熱するヒータ16とにより構成されている。
【0003】
上記縦型の化学気相成長装置では、高周波誘導コイルのヒータ16によりサセプタ13を加熱すると、サセプタ13の上に載置されている半導体ウエハ18が加熱される。上記半導体ウエハ18が所望の温度に達したとき、ベルジャ14にて形成された反応炉内に外部のガスライン19からガス導入ノズル11を介して反応ガス17を導く。反応ガス117は吹出口12から炉内に噴出され、炉内で分解して半導体ウエハ18の表面上に半導体薄膜を気相成長させる。
【0004】
一方、半導体ウエハ18を気相成長させるサセプタ3の構造は、例えば、図9および図10に示すように、円板状の炭素基材からなるサセプタ13の上面に、半導体ウエハ18を載置する多数の球面凹部13a,13b,…13nが等間隔に、また前記球面凹部13a,13b,…13nの側壁部外周域には平坦部3Aが形成されており、その球面凹部13a,13b,…13nの表面及び平坦部3Aの表面は炭化珪素(以下SiCと称す)膜14によって被覆されている。
【0005】
また、サセプタ13の上面に形成された球面凹部13a,13b,…13nの直径は、適用される半導体ウエハ18の直径よりやや大きく、その深さhはウエハの厚さとほぼ同じに設定されており、化学気相反応法により結晶成長を行うために加熱する場合のウエハ支持体としての機能を有している。
【特許文献1】特開平7−335572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、サセプタに載置された半導体ウエハは、前記したように、その表面に半導体薄膜が形成される一方、前記半導体ウエハの裏面はサセプタと接しているため、前記半導体薄膜が形成されることはない。
しかしながら、実際問題として、半導体ウエハ裏面に薄膜が形成されることがあり、その薄膜によって半導体ウエハ裏面の平坦性が損なわれるという技術的課題があった。
【0007】
本願発明者らは、この問題について鋭意研究した結果、サセプタの相対高さが影響していることを究明した。即ち、前記サセプタとウエハの外周部は、サセプタの表面が同一高さでないため実質的には3点で接している。そのため、サセプタとウエハの外周部の周方向には隙間(開口部)が生じ、前記反応ガスが前記隙間(開口部)を介してウエハ裏面に回り込み、ウエハ裏面に薄膜が形成されることを究明した。
【0008】
本発明者らは、この知見に基づいて鋭意研究した結果、半導体ウエハ支持部材とウエハの外周部との間に生じる隙間(開口部)は、垂直方向に相対高さが高い2点と、垂直方向の相対高さが最も低い点とによって形成される隙間(開口部)が最も大きな隙間(開口部)となり、前記隙間(開口部)が反応ガスの回り込みに大きな影響を与えていることが判明した。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、反応ガスがウエハ裏面へ回り込むのを抑制し、ウエハ裏面おける薄膜形成が抑制される半導体ウエハ支持部材及び及び半導体ウエハ支持部材の評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するためになされた本発明にかかる半導体ウエハ支持部材は、半導体ウエハを搭載する凹形状のウエハ保持部を有する半導体ウエハ支持部材において、前記ウエハ外周部が当接する部分の相対高さを周方向にわたって測定し、その測定結果を縦軸に高さ、横軸に位置角度をとった図に示し、前記図中で垂直方向に相対高さが高い2点と、垂直方向の相対高さが最も低い点とによって描かれる三角形の面積が、0.15cm2以下であることを特徴としている。
【0011】
このように、ウエハ外周部が当接する部分の相対高さを周方向にわたって測定し、その測定結果を縦軸に高さ、横軸に位置角度をとった図に示し、前記図中で垂直方向に相対高さが高い2点と、垂直方向の相対高さが最も低い点とによって描かれる三角形の面積が、0.15cm2以下である場合に、反応ガスの回り込み現象が抑制され、ウエハ裏面側の薄膜の形成を抑制できる効果を得ることができる。
【0012】
ここで、前記ウエハ外周部が当接する部分の相対高さは、20°間隔で測定された高さであることが望ましい。
【0013】
また、上記目的を達成するためになされた本発明にかかる半導体ウエハ支持部材の評価方法は、半導体ウエハを搭載する凹形状のウエハ保持部を有する半導体ウエハ支持部材の評価方法において、ウエハ外周部が当接する部分の相対高さを周方向にわたって測定する工程と、前記測定結果を平面に展開した展開図に示し、前記展開図の中で垂直方向に相対高さが高い2点と、垂直方向の相対高さが最も低い点とによって描かれる三角形の面積を求める工程と、前記三角形の面積が、0.15cm2以下である場合に良品とする判定工程とを含むことを特徴としている。
【0014】
このような半導体ウエハ支持部材の評価方法によれば、容易に評価することができ、反応ガスの回り込み現象が抑制され、ウエハ裏面側の薄膜の形成を抑制することができる半導体ウエハ支持部材を得ることができる。
【0015】
ここで、前記ウエハ外周部が当接する部分の相対高さの測定は、20°間隔で行なわれることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明にかかる半導体ウエハ支持部材によれば、半導体ウエハ支持部材とウエハの外周部との隙間(開口部)を介して、ウエハ裏面への反応ガスの回り込みを抑制し、ウエハ裏面の薄膜形成を抑制することができる。
また、本発明にかかる半導体ウエハ支持部材の評価方法によれば、ウエハ裏面の薄膜形成を抑制することができる半導体ウエハ支持部材の良否を容易に判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施形態について図1乃至図6に基づいて説明する。
図1に示すように、この半導体ウエハ支持部材1は、半導体ウエハを搭載する凹形状のウエハ保持部1aを有し、そのウエハ保持部1aの外側円周上には半導体ウエハ外周部が当接する半導体ウエハ当接部1bを有している。
【0018】
そして、ウエハ外周部が当接する半導体ウエハ当接部1bの相対高さを周方向にわたって、例えば20°間隔で測定した結果を、縦軸に高さ、横軸に位置角度をとった図2に示す。なお、この相対高さの測定は、3DCNC画像測定機(株式会社ミツトヨ製:形式QV−606−PRO)を用いて測定した。
【0019】
この図2に示すように、半導体ウエハ当接部1bの表面は、0.02mmから−0.02mmの高低差を有している。そして、測定結果を表した図2の中で、垂直方向に相対高さが高い2点(80°位置と220°位置)と、垂直方向の相対高さが最も低い点(150°位置)によって描かれる三角形の面積を求める。
【0020】
この図2に示すように、垂直方向の相対高さが最も低い点が垂直方向に相対高さが高い2点の間に位置する場合以外に、垂直方向の相対高さが最も低い点が、垂直方向に相対高さが高い2点の間に位置しない場合が生じることがある。
この場合には、測定結果を図に表す際、測定開始点を所定角度ずらし、垂直方向に相対高さが高い2点の間に、垂直方向の相対高さが最も低い点が位置するように図に表す。そして、三角形を描き、その面積を求める。
【0021】
このようにして描かれた三角形の面積が、0.15cm2以下である場合に、反応ガスの回り込み現象が抑制され、ウエハ裏面側の薄膜の形成を抑制できる。なお、図2に描かれた三角形の面積は、0.093cm2であった。
【0022】
また、ウエハ外周部が当接する半導体ウエハ当接部1bの相対高さは、20°以下の間隔で測定することが望ましい。
ここで、同一の半導体ウエハ支持部材を20°間隔、45°間隔で測定した結果を図3、図4に示す。そして、図3に描かれた三角形の面積を求めると、0.191cm2であり、図4に描かれた三角形の面積を求めると、0.118cm2であった。
即ち、図3に示した20°間隔で測定した場合に比べて、図4に示した45°間隔の三角形の面積は小さくなる。
【0023】
このことから判るように、測定間隔が広くなると、半導体ウエハ支持部材とウエハの外周部との間に形成された隙間(開口部)の測定洩れが生じ、良品と誤判定する可能性が生じる。したがって、相対高さは、20°以下の間隔で測定することが望ましい。
【0024】
一方、測定間隔をより細かく5°間隔で測定した場合を図5に示す。この図5に描かれた三角形の面積を求めると、0.185cm2であった。即ち、測定間隔を狭くしても、20°間隔の場合と求める三角形の面積はさほど変わらず、かえって測定に時間がかかるという弊害が生じる。したがって、測定間隔は5°以上、20°以下の間隔で測定するのが好ましい。
【0025】
また、図6に示すように、半導体ウエハ外周部が当接するウエハ当接部1bは斜面部として形成されているのが好ましい。
特に、図6に示すように、ウエハ当接部1bが前記ウエハ保持部の外周端から0.3mm以上6mm以下内側の位置に周状に配置されており、前記ウエハ保持部の外周端から1.4mm以上2mm以下内側(中心側に)寄った位置X1における高さY1が、外周端上面よりも0.01〜0.03mm低く、かつ、前記ウエハ保持部の外周端から3.8mm〜4.4mm内側(中心側に)によった位置X2の高さY2が、外周端よりも0.05〜0.08mm低く形成されている半導体ウエハの支持部材であることが望ましい。
【0026】
このような所定形状を有する斜面にて半導体ウエハ当接部1bを形成することにより、前記した半導体ウエハ支持部材とウエハの外周部と隙間(開口部)を半導体ウエハの変形によってより小さくでき、反応ガスの回り込み現象が抑制され、ウエハ裏面側の薄膜の形成を抑制できる。
【実施例】
【0027】
〔実施例1〕
次に、図1に示す半導体ウエハ支持部材1のウエハ保持部1aにおけるリング状のウエハ当接部1bを下記位置、形状とした半導体ウエハ支持部材を、黒鉛基材にCVD−SiC膜を被覆した材質で製造した。
また同条件で製造した支持部材であって、ウエハ当接部1bの研磨条件を変更することで、表1に示す前記三角形の面積を変えた試料1〜15を製造した。
ここで、前記したリング状のウエハ当接部1bの位置、形状は、図6に示すX1=1.7mm、X2=4mm、Y1=0.02mm、Y2=0.06mmとした。
【0028】
この半導体ウエハ支持部材1の具体的製造方法は、次の通りである。
まず、始めに直径400mm、厚さ4mmの等方性炭素基材に、直径304mmの凹形状のウエハ保持部1bを形成する。このとき、ウエハ外周部と実質的に当接する部分を、図6に示すような2つの傾斜部1b1,1b2を有する2段傾斜形状に加工する。
次に、上記加工後、2000℃以上でハロゲンガスを流した炉内で純化処理を行う。この際には、純化時に熱をかけることで歪みが発生するのを防止するため、前記基材はケース状の治具に入れて上から蓋をしてしっかり締め込んで固定し、純化処理する。
この後、1600〜1800℃の温度で、20〜0.1Torrの減圧に保持された反応室内の反応ゾーンに処理される前記基材を配置し、一酸化珪素ガスを反応室内に導入し、基材表面にCVD−SiC膜を形成する。この処理を所定のSiC膜になるまで繰り返す。炉内で一酸化珪素ガスの供給元に近い位置ではSiCが厚く付きやすいので、毎回、炉詰め位置・向きを変え、表裏・面内の膜厚バラつきを最終的に30μm以下になるようにする。膜厚のばらつきを小さくすることで、製造された半導体ウエハ支持部材1にかかる応力が均一になり、歪みが小さくなる。
最後に、凹形状のウエハ保持部1bのうち、実質的にウエハ外周部と当接する部分を500メッシュ以下のダイヤモンド砥粒を備えた回転式研磨機で研磨する。このとき、研磨工具の接触角度を変えて2回研磨することで、2段傾斜部を研磨し、仕上げる。尚、下記表1に示す三角形の面積は、前記ウエハ当接部1bのうち、ウエハ外周側が当接する1b1での測定値であり、これらは前記回転式研磨機の回転速度、押圧等の研磨条件を変更することで変えたものである。
【0029】
そして、前記試料1〜15の半導体ウエハ支持部材を用い、1100℃、25torr、SiCl4+H2気流下で、1時間、気相成長処理を行い、ウエハ裏面の薄膜形成状況を検証した。その結果を表1に示す。





【0030】
【表1】

【0031】
この表1から明らかなように、三角形の面積が0,15cm2を超えると、反応ガスのウエハ裏面側への回りこみによる薄膜の形成が認められた。この結果から、三角形の面積は0.15cm2以下であることが望ましいことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明にかかる半導体製造分野おける半導体ウエハの支持部材及び半導体ウエハ支持部材の評価方法として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明にかかる半導体ウエハ支持部材を示す図であって、平面図及び断面図である。
【図2】図1に示した半導体ウエハ支持部材におけるウエハ当接部の相対高さを表した図である。
【図3】ウエハ当接部の相対高さを20°間隔で測定した結果を表した図である。
【図4】ウエハ当接部の相対高さを45°間隔で測定した結果を表した図である。
【図5】ウエハ当接部の相対高さを5°間隔で測定した結果を表した図である。
【図6】ウエハ当接部を斜面として形成した場合を示す一部断面図である。
【図7】従来の縦型の化学気相成長装置を示す斜視図である。
【図8】図7に示した装置の断面図である。
【図9】図7に示した装置に用いられているサセプタ(半導体ウエハ支持部材)の平面図である。
【図10】図9のI−I断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 半導体ウエハ支持部材
1a ウエハ保持部
1b ウエハ当接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエハを搭載する凹形状のウエハ保持部を有する半導体ウエハ支持部材において、
前記ウエハ外周部が当接する部分の相対高さを周方向にわたって測定し、その測定結果を縦軸に高さ、横軸に位置角度をとった図に示し、前記図中で垂直方向に相対高さが高い2点と、垂直方向の相対高さが最も低い点とによって描かれる三角形の面積が、0.15cm2以下であることを特徴とする半導体ウエハ支持部材。
【請求項2】
前記ウエハ外周部が当接する部分の相対高さは、20°間隔で測定された高さであることを特徴とする請求項1に記載された半導体ウエハ支持部材。
【請求項3】
半導体ウエハを搭載する凹形状のウエハ保持部を有する半導体ウエハ支持部材の評価方法において、
前記ウエハ外周部が当接する部分の相対高さを周方向にわたって測定する工程と、前記測定結果を縦軸に高さ、横軸に位置角度をとった図に示し、前記図中で垂直方向に相対高さが高い2点と、垂直方向の相対高さが最も低い点とによって描かれる三角形の面積を求める工程と、前記三角形の面積が、0.15cm2以下である場合に良品とする判定工程とを含むことを特徴とする半導体ウエハ支持部材の評価方法。
【請求項4】
前記ウエハ外周部が当接する部分の相対高さの測定は、20°間隔で行なわれることを特徴とする請求項3に記載された半導体ウエハ支持部材の評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−123803(P2007−123803A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−86919(P2006−86919)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000221122)東芝セラミックス株式会社 (294)
【Fターム(参考)】