説明

半導体レーザ及びその製造方法

【課題】半導体レーザ(ストライプ状の活性層)が高密度に配置された半導体レーザを提供すること。
【解決手段】互いに離間してストライプ状に設けられた、複数の活性層10と、活性層10のそれぞれに対応して、活性層10の上側に設けられた複数の電極12と、半導体からなり、活性層10の間の領域にそれぞれに設けられ、電極12よりも高い位置にその上面が位置する支持部40と、複数の電極12のうち1つと電気的に接続されるとともに、複数の支持部40によって支えられて、当該複数の支持部40の間に位置する電極12と離間した構造を備える配線16と、を備えることを特徴とする半導体レーザ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
活性層を含む半導体レーザを並列に複数個配置した半導体アレイレーザが知られている。(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−90560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の半導体アレイレーザでは、並列に複数個配置されたストライプ状の活性層の上側にそれぞれストライプ状の電極が設けられ、当該電極は信号伝達用の電極パッドと電気的に接続されている。この電極パッドは、それぞれストライプ状の電極の近傍に形成される。しかし、この構成では電極パッドの大きさを確保するために、ストライプ状の活性層の間隔を一定以上離して形成する必要があり、ストライプ状の活性層を高密度に配置することが難しい。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、半導体レーザ(ストライプ状の活性層)が高密度に配置された構成を、容易に実現することが可能な半導体レーザ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、互いに離間してストライプ状に設けられた、複数の活性層と、前記活性層のそれぞれに対応して、前記活性層の上側に設けられた複数の電極と、半導体からなり、前記活性層の間の領域にそれぞれに設けられ、前記電極よりも高い位置にその上面が位置する支持部と、前記複数の電極のうち1つと電気的に接続されるとともに、前記複数の支持部によって支えられて、当該複数の支持部の間に位置する前記電極と離間した構造を備える配線と、を備えることを特徴とする半導体レーザである。
【0007】
上記構成において、前記複数の活性層が形成された領域と別の領域に形成され、前記複数の電極のいずれかと前記配線を介して電気的に接続された複数の電極パッドを備える構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記支持部の側面は、前記支持部の前記上面から前記電極に向かって傾斜するテーパ形状となっている構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記複数の活性層の間隔は、20μm以下である構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記複数の活性層が上側に形成された基板を備え、前記基板の表面は(100)面であり、前記支持部の側面の少なくとも一部が(111)B面を有している構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記電極と、前記電極の上部に形成された前記配線との間は中空である構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記電極と、前記電極の上部に形成された前記配線との間には、誘電率が4.0以下の低誘電体が充填されている構成とすることができる。
【0013】
本発明は、基板上に活性層を含むストライプ状のメサを複数形成する工程と、前記ストライプ状のメサのそれぞれに対応して、前記ストライプ状のメサの上側に電極を形成する工程と、半導体からなり、前記ストライプ状のメサの間の領域に前記電極より高い位置に上面が形成されてなるように支持部を形成する工程と、前記複数の電極のうち1つと電気的に接続されるとともに、前記複数の支持部によって支えられて、当該複数の支持部の間に位置する前記電極と離間した構造を備える配線を形成する工程と、を含むことを特徴とする半導体レーザの製造方法である。
【0014】
上記構成において、前記配線を形成する工程は、前記電極の上部にレジストを形成する工程と、前記ストライプ状のメサの間の領域に形成された前記支持部及び前記レジストの上部に延在するように配線を形成する工程と、前記レジストを除去する工程と、を含む構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、前記配線を形成する工程は、前記電極の上部に、誘電率が4以下の低誘電体層を形成する工程と、前記ストライプ状のメサの間の領域に形成された前記支持部及び前記低誘電体層の上部に延在するように配線を形成する工程と、を含む構成とすることができる。
【0016】
上記構成において、前記基板の表面は(100)面であり、前記ストライプ状のメサの側面は(011)面である構成とすることができる。
【0017】
上記構成において、前記支持部を形成する工程は、前記支持部の原料ガスに加えハロゲン系ガスを添加する工程を含む構成とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、半導体レーザ(ストライプ状の活性層)が高密度に配置された構成を容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、比較例1に係る半導体レーザの上面図である。
【図2】図2は、実施例1に係る半導体レーザの上面図である。
【図3】図3は、実施例1に係る半導体レーザの斜視図である。
【図4】図4は、実施例1に係る半導体レーザの断面図である。
【図5】図5は、実施例1に係る半導体レーザの製造方法を示す図である。
【図6】図6は、実施例2に係る半導体レーザの製造方法を示す図(その1)である。
【図7】図7は、実施例2に係る半導体レーザの製造方法を示す図(その2)である。
【図8】図8は、実施例3に係る半導体レーザの上面図である。
【図9】図9は、実施例3に係る半導体レーザの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
最初に、比較例に係る半導体レーザについて説明する。図1は、比較例1に係る半導体レーザの上面図である。図1に示すように、活性層及び上下のクラッド層(共に図1では不図示)を含むバー状の半導体レーザ(以下、ストライプ状のメサ110a〜110dと称する)が、複数個並列に配列されている。各ストライプ状のメサ110a〜110dは、それぞれストライプ状の活性層(不図示)を含む。当該ストライプ状の活性層の上部には、不図示のコンタクト層を介して電極112a〜112dが設けられ、各電極112a〜112dはそれぞれ電極パッド114a〜114dと電気的に接続されている。電極パッド114a〜114dは、電極112a〜112dの間に1つずつ設けられ、対応する電極112a〜112dの近傍に位置している。
【0021】
図1に示すように、ストライプ状の活性層を含む複数のストライプ状のメサ110a〜110dが並列に配置された半導体レーザにおいて、活性層の配置を高密度にするためには、ストライプ状のメサ110a〜110dの同士の間隔を小さく(狭く)することが望ましい。しかし、各ストライプ状のメサ110a〜110dの間に電極パッド114a〜114dが設けられた構成では、電極パッド114a〜114dを形成するための一定のスペースが必要となり、ストライプ状のメサ110a〜110dの間隔を小さくすることが難しい。例えば、電極パッド114a〜114dの直径はそれぞれ70μm以上、ストライプ状のメサ110a〜110d同士の間隔は100μm以上の大きさが必要である。この場合、半導体レーザのチップサイズは440μm×300μm(L1=440μm、L2=300μm)となり、これ以上小さくすることが難しい。
【0022】
以下の実施例では、半導体レーザ(ストライプ状の活性層)が高密度に配置された構成を容易に実現することのできる半導体レーザ及びその製造方法について説明する。
【実施例1】
【0023】
図2は、実施例1に係る半導体レーザの上面図である。本実施例では、半絶縁性埋め込みヘテロ構造(SIBH:Semi-Insulating Buried Heterostructure)を有するファブリーペロー(FP:Fabry-Perot)型レーザを例に説明する。図2に示すように、ストライプ状の活性層を含む複数のストライプ状のメサ10a〜10dが並列に配列されている。ストライプ状のメサ10a〜10dの上面には、電極12a〜12dが形成されている。また、ストライプ状のメサ10a〜10dの延長線(光の導波方向)と交差する半導体レーザの端面のうち、一の端面には第1端面膜20が、他の端面には第2端面膜22がそれぞれ形成されている。第1端面膜20は、例えば厚さ0.8μm、反射率80%とすることができ、第2端面膜22は、例えば厚さ0.4μm、反射率30%とすることができる。
【0024】
ストライプ状のメサ10a〜10d上の電極12a〜12dは、それぞれ電極パッド14a〜14dと電気的に接続されている。ここで、比較例と異なり、電極パッド14a〜14dは、ストライプ状のメサ10a〜10dの間ではなく、ストライプ状のメサ10a〜10dが形成された領域以外にまとめて形成されている。本実施例においては、図2示すように、1つ目の電極パッド14aが、ストライプ状のメサ10d(電極12d)から一定間隔を空けて形成され、2つ目から4つ目の電極パッド14b〜14dは、1つ目の電極パッド14aからみて斜め方向に配列するように、それぞれ一定間隔を空けて形成されている。電極パッド14a〜14dと電極12a〜12dのそれぞれは、ブリッジ配線16a〜16dにより接続されている。なお、図示しないが、電極パッド14a〜14dは、1つ目の電極パッド14aからみて斜め方向に配列するのではなく、電極パッド14cが、電極パッド14aと同様にストライプ状のメサ10d(電極12d)から一定間隔を空けて形成されている構成でもよく、電極パッド14dは、電極パッド14bと同様に3つ目の電極パッド14cからみて斜め方向に配列するように、一定間隔を空けて形成されている構成でもよい。
【0025】
本実施例では、ストライプ状のメサ同士の間隔d1を15μmとする。このとき、半導体レーザのチップサイズは、330μm×300μm(L1=330μm、L2=300μm)となり、比較例と比べて小さくすることができる。
【0026】
図3は、実施例1に係る半導体レーザの斜視図である。図3に示すように、ストライプ状のメサ10a〜10dのそれぞれは、基板30上に下部クラッド層32、活性層34、上部クラッド層36、及びコンタクト層38が順に積層された構成を有し、それぞれのストライプ状のメサ10a〜10dのコンタクト層38上に電極12a〜12dが形成されている。各ストライプ状のメサ10a〜10dの間及び外側には、ストライプ状のメサ同士を分離するための埋め込み層40a〜40eが形成されている。埋め込み層40a〜40eは、ストライプ状のメサ10a〜10dから盛り上がって形成されており、埋め込み層40a〜40eの上面の位置は電極12a〜12dより高い位置となっている。
【0027】
図2に示すように、電極パッド14a〜14dは、図3の電極12dの電極12a〜12cに向かって反対側に形成されている(図3では不図示)。このため、電極12dより左側にある電極12a〜12cからは、間にある電極12b〜12dと接触しないように、電極パッド14a〜14dと電気的な接続を図るための配線を形成する必要がある。
【0028】
図3に示すように、図2に示すブリッジ配線16a〜16dのうち、16a及び16bが図示されている。ブリッジ配線16aは、電極12aと電極パッド14a(図3では不図示)を結ぶ配線であり、埋め込み層40b〜40eの上にまたがって形成されている。同様に、ブリッジ配線16bは、電極12bと電極パッド14b(図3では不図示)を結ぶ配線であり、埋め込み層40c〜40eの上にまたがって形成されている。
【0029】
図4は、図2のA−A線に沿った断面図であり、ブリッジ配線16aの詳細な構成を示す図である。図4に示すように、ブリッジ配線16aは、埋め込み層40b〜40eの上面同士を接続する配線であり、電極12b〜12dとは離間して形成されている。ブリッジ配線16aと電極12b〜12dとの間は中空50となっている。埋め込み層40a〜40eは、ブリッジ配線16aを支持する支持部として機能する。埋め込み層40a〜40eの側面は、コンタクト層38の上面より下側では垂直であり、コンタクト層38の上面より上側では外側に向かって傾斜し、(111)B面(符号42)を形成している。このため、埋め込み層40a〜40eの間の開口部の形状は、電極側からブリッジ配線側に向かって大きくなるテーパ形状となっている。
【0030】
本実施例では、ストライプ状のメサ10a〜10d同士の間隔d1が15μm、ストライプ状のメサ10a〜10dの幅d2が2μm、ストライプ状のメサ10a〜10dの盛り上がり部分の高さd3が5μmとなっている。また、埋め込み層40a〜40eの上面の幅d4は6μm、開口部の幅d5は9μmとなっており、(111)B面(符号42)の傾斜角は54.7°となっている。
【0031】
次に、実施例1に係る半導体レーザの製造方法について説明する。
【0032】
図5(a)〜(d)は、実施例1に係る半導体レーザの製造方法を示す図である。図5(a)に示すように、基板30上に下部クラッド層32、活性層34、上部クラッド層36、コンタクト層38、及びストライプマスク39を順に形成する。基板30には、例えばn−InP基板を用いることができ、表面は(100)面となっている。下部クラッド層32には、例えば厚さ0.3μmのn−InPクラッド層を、上部クラッド層36には、例えば厚さ1.6μmのp−InPクラッド層をそれぞれ用いることができる。
【0033】
活性層34は、SCH(separated confinement heterostructure)層を含むMQW(multiple-quantum well)構造を有する。活性層34には、例えばInGaAsPを用い、その厚さは例えば0.3μmとすることができる。コンタクト層38は、例えば、厚さ0.2μmのp−InGaAsP中間層と、厚さ0.1μmのp−InGaAsコンタクト層とが、基板30側から順に積層された構成とすることができる。ストライプマスク39は、コンタクト層38の上部に<011>方向に延在するように形成される。ストライプマスク39には、例えばSiOを用いることができる。
【0034】
次に、図5(b)に示すように、ストライプマスク39をマスクとして、コンタクト層38、上部クラッド層36、活性層34、下部クラッド層32、及び基板30の一部をドライエッチングし、ストライプ状のメサ10を形成する。これにより、ストライプメサ10の内部に、ストライプ状の活性層34が形成される。ストライプ状のメサ10の高さは、例えば4μmとすることができる。
【0035】
次に、図5(c)に示すように、ストライプ状のメサ10の両側に、支持部となる埋め込み層40を成長させる。埋め込み層40には、例えばS.I.−InP層(Semi-Insulating InP:半絶縁性インジウムリン)を用いることができ、この場合にはストライプ状のメサ10a〜10d同士を分離するための分離溝は不要となる。埋め込み層40の厚さは、(100)面換算において、例えばストライプ状のメサ10a〜10dの間隔を20μmとした場合には7μm、ストライプ状のメサ10a〜10dの間隔を15μmとした場合には6μmとすることができる。これにより、ストライプ状のメサ10の両側に、5μm程度の段差(d3)を形成することができる。
【0036】
ここで、埋め込み層40を成長させる工程では、埋め込み層40の原料ガスに加え、ハロゲン系ガス(例えば、塩素(Cl)を含むガス(塩化メチル等))を添加することが好ましい。ハロゲン系ガスは、埋め込み層40の結晶中に取り込まれるものではないが、埋め込み層40に(111)B面(符号)42)を形成する役割を果たす。これにより、埋め込み層40がストライプマスク39上に異常成長することを抑制することができる。
【0037】
次に、図5(d)に示すように、電極12及びブリッジ配線16の形成を行う。ストライプマスク39を除去した上で、埋め込み層40の表面で且つコンタクト層38の表面を除いた領域に、パッシベーション膜44を形成する。パッシベーション膜44には、例えば窒化シリコン(SiN)を用いることができる。次に、コンタクト層38の上部に電極12を形成する。電極12には、例えば金(Au)を用いることができる。次に、図の中空50に対応する電極12上の領域に、レジスト(不図示)を形成する。次に、埋め込み層40の上面のパッシベーション膜44上、及び前述のレジスト上に延在するブリッジ配線16を形成する。ブリッジ配線16には、例えば電極と同じくAuを用いることができる。最後に、レジストを除去することで、レジストが存在していた領域は中空50となり、エアブリッジ構造が完成する。このように、ブリッジ配線16は、中空50を介し、電極12と離間して形成されている。
【0038】
実施例1に係る半導体レーザによれば、ストライプ状の活性層34を含むストライプ状のメサ10の間の領域に、埋め込み層40が盛り上がって形成されると共に、埋め込み層40の上面同士を接続するブリッジ配線16が形成されている。これにより、一の活性層上の電極と電極パッドを結ぶブリッジ配線を、他の活性層上の電極と離間して交差させることができる。その結果、図2に示すように、ブリッジ配線16a〜16dを用いて、電極パッド14a〜14dをストライプ状のメサ10a〜10dの外側にまとめて形成することができる。その結果、ストライプ状の活性層同士(ストライプ状のメサ10a〜10d同士)の間隔を小さくすることができ、半導体レーザ(ストライプ状の活性層)が高密度に配置された構成を実現することができる。
【0039】
ストライプ状のメサ10a〜10d同士の間隔は、20μm以下であることが好ましいが、15μm以下であることがより好ましい。これは、ストライプ状のメサの間隔を狭くすることで、隣接するストライプ状のメサの段差部分が接合(干渉)するため、(100)面の膜厚が薄い場合でも、高い段差を形成することができるからである。
【0040】
上記構成に対して、ブリッジ配線及び電極の形成方法としては、配線と電極を同じ高さに形成し、配線が電極と交差する領域のみを、中空のブリッジ構造とすることも考えられる。しかし、この構造では、中空ブリッジの形状が上方に凸形状となるため、押し潰し等の圧力により、配線の中空ブリッジが壊れてしまう場合がある。これに対し、実施例1に係る半導体レーザによれば、埋め込み層40の段差の内部を中空50とする構成となっているため、ブリッジ配線16を平坦に形成することができる。これにより、押し潰し等の圧力により配線の中空ブリッジが壊れてしまうことを抑制することができる。
【0041】
また、実施例1に係る半導体レーザによれば、ストライプ状のメサ10の両脇の埋め込み層40を用いて段差を形成することにより、エッチング等により段差を形成する場合に比べ、製造工程を簡略化することができる。また、埋め込み層40(支持部)の側面を、埋め込み層40の上面から電極12に向かって傾斜するテーパ形状とすることにより、製造工程における埋め込み層40の異常成長を抑制することができる。
【0042】
実施例1では、ストライプ状の活性層34を含むストライプ状のメサ10a〜10dの本数が4つの場合を例に説明したが、ストライプ状のメサ10の本数は任意の数とすることができる。本実施例の構成は、ストライプ状のメサ10、電極12、及びブリッジ配線16をそれぞれ複数備える半導体レーザに対し特に好適である。このとき、複数のストライプ状のメサ10のうち一のストライプ状のメサ10の上部に形成された配線16が、他のストライプ状のメサ10の上面に形成された電極12と接続される構成とすることにより、電極パッド14と電極12との接続を行うことができる。
【0043】
また、実施例1では、電極12とブリッジ配線16との間を中空50としたが、中空50の代わりに誘電率4.0以下の低誘電体を充填する構成としてもよい。この低誘電体は、例えば、窒化シリコン(SiN)または酸化シリコン(SiO)からなる材料で形成されている。この場合、図5(d)の工程において、レジストを形成する代わりに、電極12上に低誘電体層を形成し、ブリッジ配線16の形成後に低誘電体層を除去せずにそのまま残す。これにより、図4の中空50に相当する領域に、低誘電体が充填され、中空50の場合と同様に、電極12とブリッジ配線16間における信号の干渉を抑制することができる。
【実施例2】
【0044】
実施例2は、実施例1とは異なる方法で支持部を形成する例である。
【0045】
図6及び図7は、実施例2に係る半導体レーザの製造方法を示す図である。本実施例では、pn埋め込みヘテロ構造(pnBH:pn-Buried Heterostructure)を有するファブリーペロー(FP)型レーザを例に説明する。最初に、図6(a)に示すように、基板30上に下部クラッド層32、活性層34、上部クラッド層36、及びストライプマスク39を順に形成する。基板30には、例えばn−InP基板を用いることができ、表面は(100)面となっている。下部クラッド層32には、例えば厚さ0.3μmのn−InPクラッド層を、上部クラッド層36には、例えば厚さ0.2μmのp−InPクラッド層をそれぞれ用いることができる。ここで、上部クラッド層36の厚さは、実施例1に比べて小さく(薄く)設定されている。また、実施例1と異なり、この段階でコンタクト層の形成は行わない。
【0046】
活性層34は、実施例1と同じくSCH層を含むMQW構造を有し、材料には例えばInGaAsPを用い、その厚さは例えば0.3μmとすることができる。ストライプマスク39は、上部クラッド層36の上部に<011>方向に延在するように形成される。ストライプマスク39には、例えばSiOを用いることができる。
【0047】
次に、図6(b)に示すように、ストライプマスク39をマスクとして、上部クラッド層36、活性層34、下部クラッド層32、及び基板30の一部をドライエッチングし、ストライプ状のメサ10を形成する。ストライプ状のメサ10の高さは、例えば2μmとすることができる。
【0048】
次に、図6(c)に示すように、ストライプ状のメサ10の両側に、支持部となる第1ブロック層60、第2ブロック層62、及び第3ブロック層64を順に成長させる。第1ブロック層60の表面は、ストライプ状のメサ10の上面(上部クラッド層36の表面)より下側に位置する。第1ブロック層60には、例えばp−InPブロック層を用いることができ、その厚さは例えば1.0μmとすることができる。第2ブロック層62及び第3ブロック層64の表面は、ストライプ状のメサ10の上面より上側に位置する。第2ブロック層には、例えばn−InPブロック層を用いることができ、その厚さは例えば2.0μmとすることができる。第3ブロック層には、例えばp−InPブロック層を用いることができ、その厚さは例えば0.5μmとすることができる。n−InP層である第2ブロック層62及びその上の第3ブロック層64の側面は、実施例1における埋め込み層40の側面と同じく、電極12に向かって傾斜するテーパ形状となっている。
【0049】
次に、図7(a)に示すように、ストライプマスク39を除去し、第3ブロック層64及びストライプ状のメサ10(上部クラッド層36)の上面に追加クラッド層70を形成し、さらにその上にコンタクト層72を形成する。追加クラッド層70には、例えば厚さ2.0μmのp−InPクラッド層を用いることができる。コンタクト層72は、例えば、厚さ0.2μmのp−InGaAsP中間層と、厚さ0.5μmのp−InGaAsコンタクト層とが、基板30側から順に積層された構成とすることができる。これまでの工程により、ストライプ状のメサ10の上部におけるコンタクト層72の表面に、第1ブロック層60〜第3ブロック層64の側面形状に対応した凹部74が形成される。凹部の段差は、例えば2.0μmとなる。
【0050】
図7(b)に示すように、コンタクト層72の上部に電極12、パッシベーション膜44、及びブリッジ配線16を形成する。これらの形成には、実施例1と同様の方法を用いることができるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0051】
実施例2に係る半導体レーザによれば、実施例1と同様に、ストライプ状のメサ10の両側に支持部を形成し、当該支持部上にブリッジ配線16を形成することにより、ブリッジ配線16を電極12と離間して形成することができる。実施例2において、第1ブロック層60、第2ブロック層62、第3ブロック層64、追加クラッド層70、及びコンタクト層72は、共に支持部の一例である。また、実施例2に係る半導体レーザによれば、第1ブロック層60、第2ブロック層62、及び第3ブロック層64を用いて段差の形成を行うため、実施例1のようにハロゲン系ガスを用いなくとも、段差の形成を行うことができる。なお、上記支持部は、ブリッジ配線16を支えることにより電極12と離間させることのできる構成であれば、実施例1〜2に示した以外の形態であってもよい。ただし、支持部としては半導体を用いることが好ましい。
【0052】
実施例1〜2では、ファブリーペロー(FP)型の半導体レーザを例に説明を行ったが、実施例1〜2に係る構成は、これ以外の型の半導体レーザ(例えば、分布帰還(DFB:Distributed-Feedback)型半導体レーザ)においても採用することができる。DFBレーザの場合、基板30上に下部クラッド層32を形成する前に、基板30上に回折格子を形成する。回折格子の形成後の工程は、実施例1〜2で説明した工程と同様である。
【実施例3】
【0053】
実施例3は、変調器を備えた半導体レーザの例である。
【0054】
図8は、実施例3に係る半導体レーザの上面図である。半導体レーザは、レーザ発振を行うレーザ部80と、レーザ変調を行う変調部90とを備える。レーザ部80と変調部90の間は、分離部81により分離されている。
【0055】
レーザ部80は、並列に配置された複数のストライプ状の活性層(不図示)を含むストライプ状のメサ82a〜82d、ストライプ状の活性層上に形成された複数の電極84a〜84d、電極84a〜84dのそれぞれに対応して形成された複数の電極パッド86a〜86d、及び電極84a〜84dと電極パッド86a〜86dを結ぶブリッジ配線88a〜88dを備える。変調部90も同様に、ストライプ状の光導波路(不図示)を含むストライプ状のメサ92a〜92d、電極94a〜94d、電極パッド96a〜96d、ブリッジ配線98a〜98dを備える。レーザ部80側の端面には第1端面膜89が、変調部90側の端面には第2端面膜99が、それぞれ形成されている。第1端面膜89及び第2端面膜99は、例えば共に膜厚0.4μm、反射率0.1%とすることができる。
【0056】
本実施例では、実施例1と同じく、ストライプ状のメサ同士の間隔d1を15μmとする。このとき、半導体レーザのチップサイズは、330μm×550μm(L1=330μm、L2=550μm)となっており、L1の長さが比較例と比べて小さくなっている。
【0057】
図9は、図8のA−A線に沿った断面図である。図9に示すように、レーザ部80は、基板30上に、下部クラッド層32、活性層34、上部クラッド層36、及びコンタクト層38が順に形成されている。変調部90は、レーザ部80の活性層34aと光結合されてなる光導波路35を有する。活性層34及び光導波路35は、それぞれストライプ状に形成されている。レーザ部80における基板30と下部クラッド層32との境界には、回折格子48が形成されている。コンタクト層38上において、レーザ部80には電極84aが、変調部90には電極94aがそれぞれ形成されている。コンタクト層38の上面における電極84a及び94aの端部には、それぞれパッシベーション膜44が形成され、電極84a及び94aの一部から、それぞれブリッジ配線88a及び98aが引き出されている。また、基板30の裏面には、裏面電極46が形成されている。なお、裏面電極46の厚さは例えば3μm、パッシベーション膜44の厚さは例えば0.6μmとすることができる。
【0058】
実施例3のように、変調器を備えた半導体レーザにおいても、実施例1〜2で述べた構成を採用することができる。その結果、図8のようにブリッジ配線88a〜88d、98a〜98dを用いて、電極パッド86a〜86d、96a〜96dをストライプ状のメサ82a〜82d、92a〜92dの領域外にまとめて形成し、ストライプ状の活性層(ストライプ状のメサ)を高密度に配置することができる。
【0059】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0060】
10 ストライプ状のメサ
12 電極
14 電極パッド
16 ブリッジ配線
20 第1端面膜
22 第2端面膜
30 基板
32 下部クラッド層
34 活性層
35 光導波路
36 上部クラッド層
38 コンタクト層
40 埋め込み層
44 パッシベーション膜
46 裏面電極
48 回折格子
50 中空
60 第1ブロック層
62 第2ブロック層
64 第3ブロック層
70 追加クラッド層
72 コンタクト層
80 レーザ部
81 分離部
82 ストライプ状のメサ(レーザ部)
84 電極(レーザ部)
86 電極パッド(レーザ部)
88 ブリッジ配線(レーザ部)
90 変調部
92 ストライプ状のメサ(変調部)
94 電極(変調部)
96 電極パッド(変調部)
98 ブリッジ配線(変調部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに離間してストライプ状に設けられた、複数の活性層と、
前記活性層のそれぞれに対応して、前記活性層の上側に設けられた複数の電極と、
半導体からなり、前記活性層の間の領域にそれぞれに設けられ、前記電極よりも高い位置にその上面が位置する支持部と、
前記複数の電極のうち1つと電気的に接続されるとともに、前記複数の支持部によって支えられて、当該複数の支持部の間に位置する前記電極と離間した構造を備える配線と、
を備えることを特徴とする半導体レーザ。
【請求項2】
前記複数の活性層が形成された領域と別の領域に形成され、前記複数の電極のいずれかと前記配線を介して電気的に接続された複数の電極パッドを備えることを特徴とする請求項1に記載の半導体レーザ。
【請求項3】
前記支持部の側面は、前記支持部の前記上面から前記電極に向かって傾斜するテーパ形状となっていることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体レーザ。
【請求項4】
前記複数の活性層の間隔は、20μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体レーザ。
【請求項5】
前記複数の活性層が上側に形成された基板を備え、
前記基板の表面は(100)面であり、前記支持部の側面の少なくとも一部が(111)B面を有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体レーザ。
【請求項6】
前記電極と、前記電極の上部に形成された前記配線との間は中空であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体レーザ。
【請求項7】
前記電極と、前記電極の上部に形成された前記配線との間には、誘電率が4.0以下の低誘電体が充填されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の半導体レーザ。
【請求項8】
基板上に活性層を含むストライプ状のメサを複数形成する工程と、
前記ストライプ状のメサのそれぞれに対応して、前記ストライプ状のメサの上側に電極を形成する工程と、
半導体からなり、前記ストライプ状のメサの間の領域に前記電極より高い位置に上面が形成されてなるように支持部を形成する工程と、
前記複数の電極のうち1つと電気的に接続されるとともに、前記複数の支持部によって支えられて、当該複数の支持部の間に位置する前記電極と離間した構造を備える配線を形成する工程と、
を含むことを特徴とする半導体レーザの製造方法。
【請求項9】
前記配線を形成する工程は、
前記電極の上部にレジストを形成する工程と、
前記ストライプ状のメサの間の領域に形成された前記支持部及び前記レジストの上部に延在するように配線を形成する工程と、
前記レジストを除去する工程と、
を含むことを特徴とする請求項8に記載の半導体レーザの製造方法。
【請求項10】
前記配線を形成する工程は、
前記電極の上部に、誘電率が4以下の低誘電体層を形成する工程と、
前記ストライプ状のメサの間の領域に形成された前記支持部及び前記低誘電体層の上部に延在するように配線を形成する工程と、
を含むことを特徴とする請求項8に記載の半導体レーザの製造方法。
【請求項11】
前記基板の表面は(100)面であり、前記ストライプ状のメサの側面は(011)面であることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の半導体レーザの製造方法。
【請求項12】
前記支持部を形成する工程は、前記支持部の原料ガスに加えハロゲン系ガスを添加する工程を含むことを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載の半導体レーザの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−77753(P2013−77753A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217700(P2011−217700)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000154325)住友電工デバイス・イノベーション株式会社 (291)
【Fターム(参考)】