説明

半導体基板の表面処理装置

【課題】パターンの倒壊を防止しつつ基板を洗浄・乾燥させる半導体基板の表面処理装置を提供する。
【解決手段】薬液を用いて半導体基板を洗浄し、純水を用いて前記薬液を除去し、前記半導体基板表面に撥水性保護膜を形成し、純水を用いて前記半導体基板をリンスし、前記半導体基板を乾燥させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体基板の表面処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程には、リソグラフィ工程、エッチング工程、イオン注入工程などの様々な工程が含まれている。各工程の終了後、次の工程に移る前に、ウェーハ表面に残存した不純物や残渣を除去してウェーハ表面を清浄にするためのクリーニング(洗浄)工程及び乾燥工程が実施されている。
【0003】
近年、素子の微細化に伴い、リソグラフィ工程(露光・現像)後のレジストパターンを現像し、乾燥させる際に毛細管現象により、レジストパターンが倒壊する問題が生じた。このような問題を解決するため、レジストパターンの表面を撥水化し、レジストパターンと現像液及びリンス純水との間に働く毛管力を低下させる方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。この方法では、レジストパターンの表面に有機物が付着するが、この有機物はレジストパターンと共に、リソグラフィ工程後のエッチング工程で除去される。
【0004】
また、例えば、エッチング工程後のウェーハの洗浄処理では、ウェーハの表面に洗浄処理のための薬液が供給され、その後に純水が供給されてリンス処理が行われる。リンス処理後は、ウェーハ表面に残っている純水を除去してウェーハを乾燥させる乾燥処理が行われる。乾燥処理を行う方法としては、例えばIPA(イソプロピルアルコール)を用いてウェーハ上の純水をIPAに置換してウェーハを乾燥させるものが知られている(例えば特許文献2参照)。この乾燥処理時に、液体の表面張力によりウェーハ上に形成されたデバイス実パターンが倒壊するという問題があった。また、IPAより表面張力の低いHFE(ハイドロフルオロエーテル)を用いてもパターン倒壊を抑制することは困難であった。このような問題を解決するため、表面張力がゼロとなる超臨界乾燥が提案されている。しかし、超臨界乾燥は量産工程に適用することが困難であり、また、超臨界雰囲気を実現するチャンバ内に水分等が持ち込まれた場合、パターンの倒壊を防止できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−142349
【特許文献2】特許第3866130号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はパターンの倒壊を防止しつつ基板を洗浄・乾燥させる半導体基板の表面処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による半導体基板の表面処理装置は、ドライエッチング処理によって複数の凸形状パターンが形成された半導体基板の表面処理装置であって、前記凸形状パターン表面を薬液を用いて洗浄及び改質し、改質された前記凸形状パターン表面に撥水性保護膜を形成し、前記撥水性保護膜形成後に水を用いて前記半導体基板をリンスし、前記半導体基板を乾燥させ、前記凸形状パターンを残存させて前記撥水性保護膜を除去するものである。
【0008】
本発明の一態様による半導体基板の表面処理装置は、ドライエッチング処理によって複数の凸形状パターンが形成された半導体基板の表面処理装置であって、前記凸形状パターン表面の加工残渣を第1薬液を用いて洗浄し、洗浄された前記凸形状パターン表面を第2薬液を用いて改質し、改質された前記凸形状パターン表面に撥水性保護膜を形成し、前記撥水性保護膜形成後に水を用いて前記半導体基板をリンスし、前記半導体基板を乾燥させ、前記凸形状パターンを残存させて前記撥水性保護膜を除去するものである。
【0009】
本発明の一態様による半導体基板の表面処理装置は、少なくともそれぞれの一部にシリコン系材料からなるシリコン系膜を有する複数の凸形状パターンが形成された半導体基板の表面処理装置であって、前記凸形状パターン表面を薬液を用いて洗浄及び改質し、改質された前記凸形状パターン表面に撥水性保護膜を形成し、前記撥水性保護膜形成後に水を用いて前記半導体基板をリンスし、前記半導体基板を乾燥させるものである。
【0010】
本発明の一態様による半導体基板の表面処理装置は、少なくともそれぞれの一部にシリコン系材料からなるシリコン系膜を有する複数の凸形状パターンが形成された半導体基板の表面処理装置であって、前記凸形状パターン表面の加工残渣を第1薬液を用いて洗浄し、洗浄された前記凸形状パターン表面を第2薬液を用いて改質し、改質された前記凸形状パターン表面に撥水性保護膜を形成し、前記撥水性保護膜形成後に水を用いて前記半導体基板をリンスし、前記半導体基板を乾燥させるものである。
【0011】
本発明の一態様による半導体基板の表面処理装置は、少なくともそれぞれの一部にシリコン系材料からなるシリコン系膜を有する複数の凸形状パターンが形成された半導体基板の表面処理装置であって、前記凸形状パターン表面を薬液を用いて改質し、改質された前記凸形状パターン表面に撥水性保護膜を形成し、前記撥水性保護膜形成後に水を用いて前記半導体基板をリンスし、前記半導体基板を乾燥させるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、パターンの倒壊を防止しつつ基板を洗浄・乾燥できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1及び第4の実施形態による表面処理方法を説明するフローチャートである。
【図2】同第1及び第4の実施形態による表面処理装置の概略構成図である。
【図3】パターンにかかる液体の表面張力を説明する図である。
【図4】撥水性保護膜の形成を行った場合と行わなかった場合の乾燥処理後のパターン状態を示す図である。
【図5】本発明の第2及び第5の実施形態による表面処理方法を説明するフローチャートである。
【図6】同第2及び第5の実施形態による表面処理装置の概略構成図である。
【図7】本発明の第3及び第6の実施形態による表面処理方法を説明するフローチャートである。
【図8】洗浄シーケンスとパターンに対する水の接触角との関係を示すグラフである。
【図9】本発明の第7の実施形態による半導体装置の製造方法を説明する工程断面図である。
【図10】図9に続く工程断面図である。
【図11】図10に続く工程断面図である。
【図12】図11に続く工程断面図である。
【図13】図12に続く工程断面図である。
【図14】図13に続く工程断面図である。
【図15】図14に続く工程断面図である。
【図16】図15に続く工程断面図である。
【図17】図16に続く工程断面図である。
【図18】本発明の第8の実施形態による半導体装置の製造方法を説明する工程断面図である。
【図19】図18に続く工程断面図である。
【図20】図19に続く工程断面図である。
【図21】図20に続く工程断面図である。
【図22】図21に続く工程断面図である。
【図23】図22に続く工程断面図である。
【図24】図23に続く工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
半導体装置の製造工程における洗浄工程の課せられた課題は半導体基板上に形成された微細パターン構造に欠陥(パターン欠落、傷、パターン細り、基板掘れ等)を生じさせることなく、半導体基板表面を清浄な表面状態に戻すことである。具体的には、洗浄する対象は一般的には半導体製造プロセスに用いられるリソグラフィプロセスで用いるレジスト材料、又はドライエッチングプロセス時に半導体ウェーハ表面に残存した反応副生成物(残渣)、各プロセス後にウェーハ表面に残る金属不純物、有機汚染物質等であり、これら洗浄対象物を残したまま、次工程の製造プロセスへウェーハを流品させることは、デバイス製造歩留まりを確実に低下させてしまう。
【0015】
従って、洗浄プロセスには半導体基板上に形成された微細パターン構造に欠陥(パターン欠落、傷、パターン細り、基板掘れ等)を生じさせることなく、洗浄後に清浄な半導体ウェーハ表面を形成するという重要な役割がある。素子の微細化に伴い、洗浄工程に要求される清浄度は高くなってきている。
【0016】
一方、昨今の高アスペクトで凸形状の微細パターンをもつ構造(例えばパターンサイズが30nm以下でかつ、アスペクト比が10以上の構造)においては、レジストプロセスで用いられている撥水化技術を適用するだけでは撥水度が不十分であったため、パターン倒壊を抑制することは困難であった。また、この方法ではパターン表面を汚染する問題もあった。以下の実施形態により高アスペクトで凸形状の微細パターンを持つ構造に対して、パターン表面を清浄に保ちつつ、従来よりも高い撥水度を実現し、パターン倒壊を抑制することができる。
【0017】
(第1の実施形態)本発明の第1の実施形態に係る半導体基板の表面処理方法を図1に示すフローチャート及び図2に示す表面処理装置の要部の断面図を用いて説明する。図2に示す表面処理装置は複数枚の半導体基板の洗浄・乾燥を一括して行うバッチ式のものである。
【0018】
(ステップS101)半導体基板1を基板保持部2で保持し、処理槽3に導入する。
【0019】
(ステップS102)処理薬液供給部(図示せず)から処理槽3へ薬液を供給し、半導体基板1の洗浄を行う。薬液には例えば硫酸と過酸化水素水の混合溶液(SPM)が用いられる。
【0020】
(ステップS103)処理薬液供給部から処理槽3へ純水を供給し、半導体基板1のリンスを行い、ステップS102で用いた薬液成分を除去する。
【0021】
(ステップS104)処理薬液供給部から処理槽3へ界面活性剤(水溶性界面活性剤)を供給し、半導体基板1表面に濡れ性が低い保護膜(撥水性保護膜)を形成する。界面活性剤は分子に疎水基と親水基の両方を持った物質である。
【0022】
(ステップS105)処理薬液供給部から処理槽3へ純水を供給し、残留している界面活性剤をリンスアウトする。
【0023】
(ステップS106)半導体基板1の乾燥処理を行う。例えば半導体基板1を処理槽3から引き上げて気体供給部(図示せず)からドライエアを供給し蒸発乾燥させる。減圧乾燥法を用いてもよい。
【0024】
また、処理槽3上部の空間に乾燥薬品供給部(図示せず)より乾燥薬品(IPA等)を液体、蒸気、又はミスト状で、単体又は窒素等のガスと共に供給し、半導体基板1を浸漬している純水を抜いて、徐々に液面を下げて乾燥を行うようにしてもよい。また、HFE等の表面張力の低い液体を用いて乾燥を行ってもよい。
【0025】
半導体基板1に形成されているパターンは撥水性保護膜に覆われているため、液体の接触角θが大きく(90°に近く)なる。
【0026】
図3に半導体基板1上に形成されているパターン4の一部が液体5に濡れた状態を示す。ここで、パターン4間の距離をSpace、液体5の表面張力をγとすると、パターン4にかかる力PはP=2×γ×cosθ・H/Space・・・(式1)となる。
【0027】
θが90°に近付くことで、cosθが0に近づき、乾燥処理時にパターンに作用する液体の表面張力Pが小さくなることが分かる。これにより乾燥処理の際にパターンが倒壊することを防止することができる。
【0028】
(ステップS107)ドライアッシングやオゾンガス処理等の灰化処理を行い、半導体基板1表面に形成された撥水性保護膜を除去する。
【0029】
このような撥水性保護膜の形成を行った場合と行わなかった場合の乾燥処理後のパターンの状態を図4に示す。ライン高さが150nm、170nm、200nmの3種類、ライン幅が普通、細、極細(普通>細>極細)の3種類のパターンについて表面処理を行った。
【0030】
図4(a)から分かるように、保護膜の形成を行わない場合、ライン幅が極細のパターンは150nm、170nm、200nmのいずれのライン高さにおいてもパターン倒壊が発生した。また、ライン幅が細で、ライン高さが200nmにおいてもパターン倒壊が発生した。
【0031】
一方、図4(b)から分かるように、撥水性保護膜の形成を行うと、ライン幅が極細で、ライン高さが200nmのパターン以外ではパターン倒壊を防止することができた。撥水性保護膜を形成することで、アスペクト比が高いパターンでも、洗浄・乾燥によるパターン倒壊を防止でき、倒壊マージンを向上させられることが分かる。
【0032】
このように、半導体基板1表面の洗浄を行う際に、基板表面に撥水性の保護膜を形成することで、乾燥処理時の微細パターン倒壊を防止することができる。
【0033】
(第2の実施形態)本発明の第2の実施形態に係る半導体基板の表面処理方法を図5に示すフローチャート及び図6に示す表面処理装置の要部の断面図を用いて説明する。図6に示す表面処理装置は半導体基板に処理液を供給して基板を1枚ずつ処理する枚葉式のものである。
【0034】
(ステップS201)処理対象の半導体基板10が搬送部(図示せず)により搬入され、スピンチャック11に受け渡される。スピンチャック11は半導体基板10をほぼ水平に保持して回転させる基板保持回転機構である。
【0035】
スピンチャック11は、略鉛直方向に延びた回転軸12、回転軸12の上端に取り付けられた円板状のスピンベース13、及びスピンベース13の周縁部に設けられ、基板を挟持するチャックピン14を有する。
【0036】
(ステップS202)半導体基板10を所定の回転速度で回転させ、スピンチャック11の上方に設けられたノズル15から半導体基板10の表面の回転中心付近に薬液を供給する。薬液は例えばSPMである。
【0037】
薬液が半導体基板10の回転による遠心力を受けて、半導体基板10表面全域に行き渡り、半導体基板10の薬液(洗浄)処理が行われる。
【0038】
(ステップS203)ノズル15から半導体基板10の表面の回転中心付近に純水を供給する。純水が半導体基板10の回転による遠心力を受けて、半導体基板10表面全域に行き渡る。これにより、半導体基板10の表面に残留していた薬液を純水によって洗い流す純水リンス処理が行われる。
【0039】
(ステップS204)ノズル15から半導体基板10の表面の回転中心付近にIPA等のアルコールを供給する。IPAが半導体基板10の回転による遠心力を受けて、半導体基板10表面全域に行き渡る。これにより、半導体基板10の表面に残留していた純水をIPAに置換するアルコールリンス処理が行われる。
【0040】
(ステップS205)ノズル15から半導体基板10の表面の回転中心付近にシランカップリング剤を供給する。シランカップリング剤は、分子中に無機材料と親和性、反応性を有する加水分解基と、有機材料と化学結合する有機官能基とを有するものであり、例えばヘキサメチルジシラザン(HMDS)、テトラメチルシリルジエチルアミン(TMSDEA)等を用いることができる。
【0041】
シランカップリング剤が半導体基板10の回転による遠心力を受けて、半導体基板10表面全域に行き渡る。これにより、半導体基板10の表面に濡れ性が低い保護膜(撥水性保護膜)が形成される。
【0042】
この撥水性保護膜は、シランカップリング剤のエステル反応が起きることで、形成される。従って、アニール処理を行って液温を上昇させたり、紫外線を照射したりすることで、反応を促進させるようにしてもよい。
【0043】
(ステップS206)ノズル15から半導体基板10の表面の回転中心付近にIPA等のアルコールを供給する。IPAが半導体基板10の回転による遠心力を受けて、半導体基板10表面全域に行き渡る。これにより、半導体基板10の表面に残留していたシランカップリング剤をIPAに置換するアルコールリンス処理が行われる。
【0044】
(ステップS207)ノズル15から半導体基板10の表面の回転中心付近に純水を供給する。純水が半導体基板10の回転による遠心力を受けて、半導体基板10表面全域に行き渡る。これにより、半導体基板10の表面に残留していたIPAを純水によって洗い流す純水リンス処理が行われる。
【0045】
(ステップS208)半導体基板10の乾燥処理を行う。例えば半導体基板10の回転速度を所定のスピンドライ回転速度に上げて、半導体基板10の表面に残っている純水を振り切って乾燥させるスピンドライ処理を行う。
【0046】
半導体基板10に形成されているパターンは撥水性保護膜に覆われているため、液体の接触角θが大きく(90°に近く)なる。そのため、cosθが0に近づき、乾燥処理時にパターンに作用する液体の表面張力が小さくなり、パターン倒壊を防止することができる。
【0047】
(ステップS209)ドライアッシングやオゾンガス処理等の灰化処理を行い、半導体基板10表面に形成された撥水性保護膜を除去する。
【0048】
本実施形態による半導体基板の表面処理を行うことでも、上記第1の実施形態と同様の効果(図4参照)を得ることができる。
【0049】
このように、半導体基板10表面の洗浄を行う際に、基板表面に撥水性の保護膜を形成することで、乾燥処理時の微細パターン倒壊を防止することができる。
【0050】
本実施形態では撥水性保護膜の形成工程(ステップS205)の前後にアルコールリンス処理を行っていたが(ステップS204、S206)、これは撥水性保護膜の形成時に使用するシランカップリング剤が種類によっては純水と置換可能ではない場合があるためである。従って、使用するシランカップリング剤が純水と置換可能である物質の場合は、このアルコールリンス処理を省略することができる。
【0051】
(第3の実施形態)本発明の第3の実施形態に係る半導体基板の表面処理方法を図7に示すフローチャートを用いて説明する。また、図2に示す表面処理装置と同様の、複数枚の半導体基板の洗浄・乾燥を一括して行うバッチ式の表面処理装置を使用するものとする。
【0052】
(ステップS301)半導体基板1を基板保持部2で保持し、処理槽3に導入する。
【0053】
(ステップS302)処理薬液供給部(図示せず)から処理槽3へ薬液を供給し、半導体基板1の洗浄を行う。薬液には例えば硫酸と過酸化水素水の混合溶液(SPM)が用いられる。
【0054】
(ステップS303)処理薬液供給部から処理槽3へ純水を供給し、半導体基板1のリンスを行い、ステップS302で用いた薬液成分を除去する。
【0055】
(ステップS304)処理薬液供給部から処理層3へIPA(イソプロピルアルコール)を供給し、純水をIPAに置換するアルコールリンス処理を行う。
【0056】
(ステップS305)処理薬液供給部から処理層3へシンナーを供給し、IPAをシンナーに置換する。シンナーにはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)やシクロヘキサノンを用いることができる。
【0057】
(ステップS306)処理薬液供給部から処理槽3へシランカップリング剤を供給し、半導体基板1表面に濡れ性が低い保護膜(撥水性保護膜)を形成する。
【0058】
シランカップリング剤には、例えばヘキサメチルジシラザン(HMDS)、テトラメチルシリルジエチルアミン(TMSDEA)等を用いることができる。また、これらのシランカップリング剤をシンナーで希釈して用いてもよい。
【0059】
(ステップS307)処理薬液供給部から処理層3へIPAを供給し、シランカップリング剤をIPAに置換する。
【0060】
(ステップS308)処理薬液供給部から処理槽3へ純水を供給し、IPAを純水に置換する。
【0061】
(ステップS309)半導体基板1の乾燥処理を行う。例えば半導体基板1を処理槽3から引き上げて気体供給部(図示せず)からドライエアを供給し蒸発乾燥させる。減圧乾燥法を用いてもよい。
【0062】
また、処理槽3上部の空間に乾燥薬品供給部(図示せず)より乾燥薬品(IPA等)を液体、蒸気、又はミスト状で、単体又は窒素等のガスと共に供給し、半導体基板1を浸漬している純水を抜いて、徐々に液面を下げて乾燥を行うようにしてもよい。また、HFE等の表面張力の低い液体を用いて乾燥を行ってもよい。
【0063】
半導体基板10に形成されているパターンは撥水性保護膜に覆われているため、液体の接触角θが大きく(90°に近く)なる。そのため、cosθが0に近づき、乾燥処理時にパターンに作用する液体の表面張力が小さくなり、パターン倒壊を防止することができる。
【0064】
(ステップS310)ドライアッシングやオゾンガス処理等の灰化処理を行い、半導体基板1表面に形成された撥水性保護膜を除去する。
【0065】
このように、半導体基板10表面の洗浄を行う際に、基板表面に撥水性の保護膜を形成することで、乾燥処理時の微細パターン倒壊を防止することができる。
【0066】
撥水化処理(ステップS306)に用いられるシランカップリング剤は、ヒドロキシル基を有するIPAやH2Oが加わると、加水分解を起こし、撥水化能力が低下することが知られている。撥水化能力の低下はパターン倒壊防止効果を低減させる。
【0067】
そこで、本実施形態では、純水リンス(ステップS303)、IPA置換(ステップS304)を行った後、撥水化処理(ステップS306)を行う前に、シンナー処理(ステップS305)を行い、ヒドロキシル基を含まないシンナーでIPAを置換している。
【0068】
そのため、シランカップリング剤の撥水化能力が低下せず、パターン倒壊を防止することができる。なお、シンナーが水と置換可能である場合にはIPA置換(ステップS304)を省略しても構わない。また、上記した第2の実施形態と同様に、使用するシランカップリング剤が純水と置換可能である場合は、ステップS307のアルコールリンス処理を省略することができる。
【0069】
上記第1、第3の実施形態ではバッチ式の表面処理装置を用いていたが、枚葉式にも適用できる。同様に、上記第2の実施形態では枚葉式の表面処理装置を用いていたが、バッチ式にも適用できる。
【0070】
上記実施形態では半導体基板の乾燥処理の後に撥水性保護膜を除去するための灰化処理を行っていたが、乾燥処理の後にRIE工程を行う場合などは、そのRIE工程で撥水性保護膜も除去されるため、灰化処理を行わなくてもよい。
【0071】
なお、上記実施形態で説明した撥水性保護膜形成は、例えば下地微細パターンの表面が酸化膜、窒化膜等の「親水性を示す物質」に対して「撥水性を示す保護膜」を形成するものである。下地微細パターンがポリシリコン、アモルファスシリコン等であり、この下地微細パターンにフッ化水素系薬液処理を施した場合、さらに撥水性を高める為に、上記実施形態で説明した界面活性剤又はシランカップリング剤を用いることができる。
【0072】
基板上に形成されたパターンの倒壊を防止するためには、パターンにかかる力(上記式1で表されるP)を低減する必要がある。上記式1のパラメータのうち、Spaceはパターン寸法で決まる固定パラメータであり、濡れ性cosθは微細パターン(の表面)を構成する物質と液体との関係で決まる固定パラメータであるため、従来の基板処理では表面張力γに着目し、γの小さい液体を用いることによりパターンにかかる力の低減を図っていた。しかし、γを下げるにも限界があり、パターン倒壊を防止できなくなっていた。
【0073】
これに対し、上述したように、本発明の実施形態による表面処理方法は、パターン表面に撥水性保護膜を形成し、濡れ性cosθを制御することで乾燥処理時にパターンにかかる力を極めて小さくし、パターン倒壊を防止可能とした。
【0074】
上記実施形態による表面処理方法は、アスペクト比が8以上の時のパターン倒壊防止に
特に効果がある。
【0075】
(第4の実施形態)本発明の第4の実施形態に係る半導体基板の表面処理方法を図1に示すフローチャート及び図2に示す表面処理装置の要部の断面図を用いて説明する。図2に示す表面処理装置は複数枚の半導体基板の洗浄・乾燥を一括して行うバッチ式のものである。
【0076】
(ステップS101)表面の所定の領域に複数の凸形状パターンを有する半導体基板1を基板保持部2で保持し、処理槽3に導入する。この凸形状パターンは、例えば、ラインアンドスペースパターン等であり、凸形状パターンの少なくとも一部は、シリコンを含む膜により形成されている。凸形状パターンは、例えば、RIE(Reactive Ion Etching)法等により形成される。
【0077】
(ステップS102)処理薬液供給部(図示せず)から処理槽3へ薬液を供給し、半導体基板1の洗浄を行う。薬液には例えば硫酸と過酸化水素水の混合溶液(SPM)やアンモニア過酸化水素水を含むSC−1(Standard Clean 1)等が用いられる。この洗浄によって半導体基板1表面に残存した不純物や残渣を除去する。
【0078】
(ステップS103)処理薬液供給部から処理槽3へ純水を供給し、半導体基板1のリンスを行い、ステップS102で用いた薬液成分を除去する。
【0079】
(ステップS104)処理薬液供給部から処理槽3へ界面活性剤(水溶性界面活性剤)を供給し、半導体基板1表面に濡れ性が低い保護膜(撥水性保護膜)を形成する。界面活性剤は分子に疎水基と親水基の両方を持った物質である。半導体基板1の表面が親水性の場合は界面活性剤の親水基が基板と結合し、疎水基が外方に向くため、結果として半導体基板1の表面は撥水性になる。一方、半導体基板1の表面が疎水性の場合は界面活性剤の疎水基が基盤と結合し、親水基が外方に向くため、結果として半導体基板1の表面は親水性になる。そのため、界面活性剤を用いて撥水性保護膜を形成する前に、酸化効果のある薬液を用いて表面を酸化するとよい。酸化効果のある薬液としてSC−1等がある。
【0080】
従って、酸化効果のある薬液を用いてステップS102の工程を行うことにより凸形状のパターン表面の洗浄及び酸化を行うことができるため望ましい。より好ましくは、洗浄工程と改質工程とを分けることにより、凸形状の微細パターンの被洗浄面を清浄化した後、清浄化された面に対し改質を行うため、酸化効果を有する薬液を用いる場合に対して改質効果をさらに向上させることができる。例えば、洗浄薬液としてSPMを、改質薬液としてSC1を用いることが考えられる。
【0081】
(ステップS105)処理薬液供給部から処理槽3へ純水を供給し、残留している界面活性剤をリンスアウトする。ここで、リンスアウトとはリンス処理により半導体基板1上に残留した薬液成分や界面活性剤等を除去する工程のことを指す。
【0082】
(ステップS106)撥水性保護膜が表面に形成された半導体基板1の乾燥処理を行う。例えば半導体基板1を処理槽3から引き上げて気体供給部(図示せず)からドライエアを供給し蒸発乾燥させる。減圧乾燥法を用いてもよい。
【0083】
また、処理槽3上部の空間に乾燥薬品供給部(図示せず)より乾燥薬品(IPA等)を液体、蒸気、又はミスト状で、単体又は窒素等のガスと共に供給し、半導体基板1を浸漬している純水を抜いて、徐々に液面を下げて乾燥を行うようにしてもよい。また、HFE等の表面張力の低い液体を用いて乾燥を行ってもよい。
【0084】
図3に半導体基板1上に形成されているパターン4の一部が液体5に濡れた状態を示す。式1のθが90°に近付くと、毛細管力に起因する力に対して垂直方向の表面張力成分も無視できなくなる。この場合、液面の高さをH、パターン4間の距離をSpace、液体5の表面張力をγとすると、パターン4にかかる力PはP=2×γ×cosθ・H/Space+γ×sinθ(式2)となる。前記式2において第1項は毛細管力に起因する力を示し、第2項は表面張力自身がパターンに与える力を示す。
【0085】
θが90°に近付くことで、cosθが0に近づき、乾燥処理時にパターンに作用する力Pが小さくなることが分かる。これにより乾燥処理の際にパターンが倒壊することを防止することができる。ただし、90°近くになると、第2項の力が無視できなくなるため、パターンにかかる力がゼロなる角度は95°前後となる。
【0086】
(ステップS107)ドライアッシングやオゾンガス処理等の灰化処理を行い、半導体基板1表面に形成された撥水性保護膜を除去する。本実施形態は半導体基板の表面を洗浄・乾燥させるものであるので、撥水性保護膜の除去を行うことにより清浄化工程が終了となる。なお、この工程の後の工程で撥水化保護膜が除去される場合には乾燥後、すぐに撥水化保護膜を除去しなくても構わない。
【0087】
このように、半導体基板1表面の洗浄を行う際に、基板表面に撥水性の保護膜を形成することで、乾燥処理時の凸形状の微細パターン倒壊を防止することができる。
【0088】
(第5の実施形態)本発明の第5の実施形態に係る半導体基板の表面処理方法を図5に示すフローチャート及び図6に示す表面処理装置の要部の断面図を用いて説明する。図6に示す表面処理装置は半導体基板に処理液を供給して基板を1枚ずつ処理する枚葉式のものである。
【0089】
(ステップS201)表面の所定の領域に複数の凸形状パターンを有する処理対象の半導体基板10が搬送部(図示せず)により搬入され、スピンチャック11に受け渡される。スピンチャック11は半導体基板10をほぼ水平に保持して回転させる基板保持回転機構である。この凸形状パターンは、例えば、ラインアンドスペースパターン等であり、凸形状パターンの少なくとも一部は、シリコンを含む膜により形成されている。凸形状パターンは、例えば、RIE(Reactive Ion Etching)法等により形成される。
【0090】
スピンチャック11は、略鉛直方向に延びた回転軸12、回転軸12の上端に取り付けられた円板状のスピンベース13、及びスピンベース13の周縁部に設けられ、基板を挟持するチャックピン14を有する。
【0091】
(ステップS202)半導体基板10を所定の回転速度で回転させ、スピンチャック11の上方に設けられたノズル15から半導体基板10の表面の回転中心付近に薬液を供給する。薬液は例えばSPMやSC−1である。
【0092】
薬液が半導体基板10の回転による遠心力を受けて、半導体基板10表面全域に行き渡り、半導体基板10の薬液(洗浄)処理が行われる。
【0093】
(ステップS203)ノズル15から半導体基板10の表面の回転中心付近に純水を供給する。純水が半導体基板10の回転による遠心力を受けて、半導体基板10表面全域に行き渡る。これにより、半導体基板10の表面に残留していた薬液を純水によって洗い流す純水リンス処理が行われる。
【0094】
(ステップS204)ノズル15から半導体基板10の表面の回転中心付近にIPA等のアルコールを供給する。IPAが半導体基板10の回転による遠心力を受けて、半導体基板10表面全域に行き渡る。これにより、半導体基板10の表面に残留していた純水をIPAに置換するアルコールリンス処理が行われる。
【0095】
(ステップS205)ノズル15から半導体基板10の表面の回転中心付近にシランカップリング剤を供給する。シランカップリング剤は、分子中に無機材料と親和性、反応性を有する加水分解基と、有機材料と化学結合する有機官能基とを有するものであり、例えばヘキサメチルジシラザン(HMDS)、テトラメチルシリルジエチルアミン(TMSDEA)等を用いることができる。
【0096】
シランカップリング剤が半導体基板10の回転による遠心力を受けて、半導体基板10表面全域に行き渡る。これにより、半導体基板10の表面に濡れ性が低い保護膜(撥水性保護膜)が形成される。
【0097】
この撥水性保護膜は、シランカップリング剤のエステル反応が起きることで、形成される。従って、アニール処理を行って液温を上昇させたり、紫外線を照射したりすることで、反応を促進させるようにしてもよい。
【0098】
なお、従来のレジストパターンの現像工程の場合における撥水化とは異なり、本実施形態では例えば、洗浄工程後のシリコン系の部材からなる微細パターンについて処理を行っている。たとえば、シリコン窒化膜やポリシリコン等のシリコン系膜の場合はシランカップリング剤を用いたシリル化処理を行ってもシリル化反応が不十分となり、パターンの倒壊を抑制するために十分な撥水性を得られない場合がある。しかし、本実施形態ではパターンを、シリコン系材料の表面を酸化可能な酸化剤を含む処理薬液による処理を追加することで、シリコン系材料の表面をシリコン酸化物系の化学酸化膜に変えることができる。その後に、シリル化処理を行っているため、シリル化処理後の撥水性を向上させることができる。
【0099】
たとえばシリコン系膜の場合には、図8(a)に示すように、dHF処理のみを行って撥水性保護膜を形成すると、水の接触角は89度である。これにH処理を加えると、接触角は95度まで向上する。これはシリコン系膜の表面に適度な酸化膜が形成されたためと考えられる。
【0100】
また、シリコン窒化膜の場合には、図8(b)に示すように、dHF処理のみを行って撥水性保護膜を形成すると、水の接触角は約46度である。これにH処理を加えると54度まで向上し、SPM処理を追加すると、59度まで向上する。これは洗浄後の基板表面に撥水処理が施されやすいように最適な改質処理を加えること、つまりSiN表面が酸化剤によりSiO化され、撥水性保護膜を形成されやすくなったためと考えられる。
【0101】
また、RIE(Reactive Ion Etching)加工後には加工残渣が多く発生する。加工残渣が残った状態では撥水性保護膜は形成されにくい。そこで、SPM処理等で残渣を除去することは、撥水性保護膜を形成する上でも有効である。さらに、RIE加工で表面にプラズマダメージが蓄積され、ダングリングボンドができる。そこで、酸化効果のある薬液で改質処理すると、ダングリングボンドはOH基で修飾される。OH基が多く存在すると、シリル化反応確率が高くなり、水性保護膜が形成されやすくなるため、より高い撥水度を得ることができる。この例では、微細パターンがシリコン酸化膜でも効果が得られる。
【0102】
なお、上記に記載した説明では、半導体基板10の洗浄後に、洗浄薬液とはことなる処理薬液により半導体基板10の表面を改質する例について説明した。洗浄薬液が改質効果を兼ねる、すなわち酸化効果を持つものであれば別途改質処理を行わなくても構わない。しかし、洗浄工程と改質工程とを分けることにより、凸形状の微細パターンの被洗浄面を清浄化した後、清浄化された面に対し改質を行うため、酸化効果を有する薬液を用いる場合に対して改質効果をさらに向上させることができるため望ましい。
【0103】
(ステップS206)ノズル15から半導体基板10の表面の回転中心付近にIPA等のアルコールを供給する。IPAが半導体基板10の回転による遠心力を受けて、半導体基板10表面全域に行き渡る。これにより、半導体基板10の表面に残留していた未反応のシランカップリング剤をIPAに置換するアルコールリンス処理が行われる。
【0104】
(ステップS207)ノズル15から半導体基板10の表面の回転中心付近に純水を供給する。純水が半導体基板10の回転による遠心力を受けて、半導体基板10表面全域に行き渡る。これにより、半導体基板10の表面に残留していたIPAを純水によって洗い流す純水リンス処理が行われる。
【0105】
(ステップS208)半導体基板10の乾燥処理を行う。例えば半導体基板10の回転速度を所定のスピンドライ回転速度に上げて、半導体基板10の表面に残っている純水を振り切って乾燥させるスピンドライ処理を行う。
【0106】
(ステップS209)ドライアッシングやオゾンガス処理等の灰化処理を行い、半導体基板10表面に形成された撥水性保護膜を除去する。本実施形態は半導体基板の表面を洗浄・乾燥させるものであるので、撥水性保護膜の除去を行うことにより清浄化工程が終了となる。なお、この工程の後の工程で撥水化保護膜が除去される場合には乾燥後、すぐに撥水化保護膜を除去しなくても構わない。
【0107】
このように、本実施形態による半導体基板の表面処理を行うことでも、半導体基板10表面の洗浄を行う際に、基板表面に撥水性の保護膜を形成することで、乾燥処理時の凸形状の微細パターン倒壊を防止することができる。
【0108】
本実施形態では撥水性保護膜の形成工程(ステップS205)の前後にアルコールリンス処理を行っていたが(ステップS204、S206)、これは撥水性保護膜の形成時に使用するシランカップリング剤が種類によっては純水と置換可能ではない場合があるためである。従って、使用するシランカップリング剤が純水と置換可能である物質の場合は、このアルコールリンス処理を省略することができる。
【0109】
(第6の実施形態)本発明の第6の実施形態に係る半導体基板の表面処理方法を図7に示すフローチャートを用いて説明する。また、図2に示す表面処理装置と同様の、複数枚の半導体基板の洗浄・乾燥を一括して行うバッチ式の表面処理装置を使用するものとする。
【0110】
(ステップS301)表面の所定の領域に複数の凸形状パターンを有する半導体基板1を基板保持部2で保持し、処理槽3に導入する。この凸形状パターンは、例えば、ラインアンドスペースパターン等であり、凸形状パターンの少なくとも一部は、シリコンを含む膜により形成されている。凸形状パターンは、例えば、RIE(Reactive Ion Etching)法等により形成される。
【0111】
(ステップS302)処理薬液供給部(図示せず)から処理槽3へ薬液を供給し、半導体基板1の洗浄を行う。薬液には例えば硫酸と過酸化水素水の混合溶液(SPM)やSC−1等が用いられる。
【0112】
(ステップS303)処理薬液供給部から処理槽3へ純水を供給し、半導体基板1のリンスを行い、ステップS302で用いた薬液成分を除去する。
【0113】
(ステップS304)処理薬液供給部から処理層3へIPA(イソプロピルアルコール)を供給し、純水をIPAに置換するアルコールリンス処理を行う。
【0114】
(ステップS305)処理薬液供給部から処理層3へシンナーを供給し、IPAをシンナーに置換する。シンナーにはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)やシクロヘキサノンを用いることができる。
【0115】
(ステップS306)処理薬液供給部から処理槽3へシランカップリング剤を供給し、半導体基板1表面に濡れ性が低い保護膜(撥水性保護膜)を形成する。
【0116】
シランカップリング剤には、例えばヘキサメチルジシラザン(HMDS)、テトラメチルシリルジエチルアミン(TMSDEA)等を用いることができる。また、これらのシランカップリング剤をシンナーで希釈して用いてもよい。
【0117】
なお、本実施形態においても例えば、洗浄工程後のシリコン窒化膜やシリコン系の部材からなる微細パターンについて処理を行っている。そのため、本実施形態においてもシリル化処理後の撥水性を向上させることができる。
【0118】
(ステップS307)処理薬液供給部から処理層3へIPAを供給し、未反応のシランカップリング剤をIPAに置換する。
【0119】
(ステップS308)処理薬液供給部から処理槽3へ純水を供給し、IPAを純水に置換する。
【0120】
(ステップS309)半導体基板1の乾燥処理を行う。例えば半導体基板1を処理槽3から引き上げて気体供給部(図示せず)からドライエアを供給し純水を蒸発乾燥させる。減圧乾燥法を用いてもよい。
【0121】
また、処理槽3上部の空間に乾燥薬品供給部(図示せず)より乾燥薬品(IPA等)を液体、蒸気、又はミスト状で、単体又は窒素等のガスと共に供給し、半導体基板1を浸漬している純水を抜いて、徐々に液面を下げて乾燥を行うようにしてもよい。また、HFE等の表面張力の低い液体を用いて乾燥を行ってもよい。
【0122】
(ステップS310)ドライアッシングやオゾンガス処理等の灰化処理を行い、半導体基板1表面に形成された撥水性保護膜を除去する。本実施形態は半導体基板の表面を洗浄・乾燥させるものであるので、撥水性保護膜の除去を行うことにより清浄化工程が終了となる。なお、この工程の後の工程で撥水化保護膜が除去される場合には乾燥後、すぐに撥水化保護膜を除去しなくても構わない。
【0123】
このように、半導体基板10表面の洗浄を行う際に、基板表面に撥水性の保護膜を形成することで、乾燥処理時の凸形状の微細パターン倒壊を防止することができる。
【0124】
上記実施形態では半導体基板の乾燥処理の後に撥水性保護膜を除去するための灰化処理を行っていたが、乾燥処理の後にRIE(反応性イオンエッチング)工程を行う場合などは、そのRIE工程で撥水性保護膜も除去されるため、灰化処理を行わなくてもよい。
【0125】
なお、上記実施形態で説明した撥水性保護膜形成は、例えば下地微細パターンの表面が酸化膜、窒化膜等の「親水性を示す物質」に対して「撥水性を示す保護膜」を形成するものである。下地微細パターンがポリシリコン、アモルファスシリコン等であり、この下地微細パターンにフッ化水素系薬液処理を施した場合、さらに撥水性を高める為に、上記実施形態で説明した界面活性剤又はシランカップリング剤を用いることができる。
【0126】
基板上に形成されたパターンの倒壊を防止するためには、パターンにかかる力(上記式1で表されるP)を低減する必要がある。上記式1のパラメータのうち、Spaceはパターン寸法で決まる固定パラメータであり、濡れ性cosθは微細パターン(の表面)を構成する物質と液体との関係で決まる固定パラメータであるため、従来の基板処理では表面張力γに着目し、γの小さい液体を用いることによりパターンにかかる力の低減を図っていた。しかし、γを下げるにも限界があり、パターン倒壊を防止できなくなっていた。
【0127】
これに対し、上述したように、本発明の実施形態による表面処理方法は、パターン表面に撥水性保護膜を形成し、濡れ性cosθを制御することで乾燥処理時にパターンにかかる力を極めて小さくし、パターン倒壊を防止可能とした。
【0128】
上記実施形態による表面処理方法は、アスペクト比が8以上の時のパターン倒壊防止に特に効果がある。
【0129】
(第7の実施形態)上記第4〜第6の実施形態に係る半導体基板の表面処理方法を用いた半導体装置の製造方法を図9〜図17に示す工程断面図を用いて説明する。ここでは、NAND型フラッシュメモリにおけるSTI構造の素子分離領域の加工を例として説明を行う。
【0130】
図9に示すように、シリコン基板401上に、例えば膜厚5nmのゲート酸化膜(シリコン酸化膜)402、膜厚100nmのポリシリコン膜403、膜厚100nmのシリコン窒化膜404、膜厚250nmのシリコン酸化膜405を順に積層する。ポリシリコン膜403が後にフローティングゲート電極を構成する。
【0131】
図10に示すように、シリコン酸化膜405上に、フォトリソグラフィ技術を用いて、ライン/スペースパターンを持つレジスト層406を形成する。ライン幅/スペース幅は例えば20nm/20nmである。ライン/スペースパターンは素子分離領域形成用のパターンであり、ビットライン方向と平行になっている。
【0132】
図11に示すように、レジスト層406をマスクとして、シリコン酸化膜405をRIEによって加工する。シリコン窒化膜404がエッチングストッパとなる。
【0133】
図12に示すように、例えばSPM(硫酸と過酸化水素水の混合溶液)を用いてレジスト層406を除去する。例えば基板をHSO:H=4:1、120℃のSPMに10分浸漬させる。
【0134】
続いて、純水を用いてSPMをリンスアウトした後、SC−1処理を行う。例えば、基板をNHOH:H:H2O=1:1:5、60℃のアンモニア過酸化水素水に10分浸漬させる。
【0135】
続いて、純水でSC−1をリンスアウトした後に、純水をIPAに置換する。
【0136】
図13に示すように、シランカップリング剤を用いて、シリコン酸化膜405のパターン表面に撥水性保護膜407を形成する。シランカップリング剤としては、HMDSやTMSDEAを用いることができる。パターン表面は図12に示す工程におけるSPM処理によってOH基リッチな状態になっているため、撥水性保護膜407が形成されやすくなっている。
【0137】
また、図12に示す工程において純水をIPAに置換しているため、シランカップリング剤と純水との接触に伴う加水分解の進行を抑制し、反応性劣化(失活)を防止できる。使用されるシランカップリング剤がIPAとの接触でも失活する場合は、IPAをさらにシンナーと置換することが好適である。
【0138】
続いてシランカップリング剤をIPAで置換し、さらにIPAを純水で置換する。
【0139】
その後、スピン乾燥や引き上げ乾燥等を用いて、基板を乾燥させる。撥水性保護膜407によりパターン表面は高撥水化しているため、表面張力が小さくなり、パターン倒壊を防止できる。
【0140】
図14に示すように、オゾンアッシング、ベーキング、UV照射等によって、撥水性保護膜407を除去し、清浄な状態のパターン表面が得られる。
【0141】
図15に示すように、シリコン酸化膜405(ハードマスク)を用いて、シリコン窒化膜404、ポリシリコン膜403、ゲート酸化膜402、及びシリコン基板401をRIEによって加工し、溝410を形成する。加工深さは例えば200nmである。続いて、シリコン酸化膜405を除去する。
【0142】
次に、RIE処理によって発生した加工残渣を、希釈フッ酸(dHF)を用いて除去する。その後、純水を用いてdHFをリンスアウトする。
【0143】
図16に示すように、シランカップリング剤や界面活性剤を用いて、溝410の表面に撥水性保護膜411を形成する。
【0144】
続いて、撥水性保護膜411の形成に用いたシランカップリング剤又は界面活性剤を純水で置換する。
【0145】
その後、スピン乾燥や引き上げ乾燥等を用いて、基板を乾燥させる。撥水性保護膜411によりパターン表面は高撥水化しているため、表面張力が小さくなり、パターン倒壊を防止できる。
【0146】
図17に示すように、オゾンアッシング、ベーキング、UV照射等によって、撥水性保護膜411を除去し、清浄な状態のパターン表面が得られる。その後の工程は公知の方法と同様であるため、説明を省略する。
【0147】
このように、加工パターンの洗浄時に、パターン表面を撥水化処理することで、乾燥処理におけるパターン倒壊を防止でき、製造歩留まりを向上できる。
【0148】
図15に示す工程において、dHF処理の後に、さらにH処理やオゾン含有水処理を行うことが好適である。dHF処理された溝410の表面はSi面がむき出しになっており、H処理やオゾン含有水処理によって薄い酸化膜を形成した方が、撥水性保護膜411の形成に伴う撥水性が向上するためである。
【0149】
(第8の実施形態)上記第4〜第6の実施形態に係る半導体基板の表面処理方法を用いた半導体装置の製造方法を図18〜図24に示す工程断面図を用いて説明する。上記第7の実施形態では、ポリシリコン膜やシリコン酸化膜等が加工対象であったが、本実施形態では金属が加工対象に含まれる場合について説明する。
【0150】
図18に示すように、金属膜からなる配線層501上に、金属層502、ポリシリコン層503、シリコン酸化膜層504を順に積層する。
【0151】
図19に示すように、シリコン酸化膜層504上に、フォトリソグラフィ技術を用いて、所望のパターンを持つレジスト層505を形成する。
【0152】
図20に示すように、レジスト層505をマスクとして、シリコン酸化膜層504をRIEによって加工する。
【0153】
図21に示すように、レジスト層505をアッシングプロセスにより除去する。
【0154】
図22に示すように、シリコン酸化膜層504をマスクとして、ポリシリコン層503及び金属層502をRIEによって加工する。
【0155】
次に、RIE処理によって発生した加工残渣を配線層501や金属層502に影響しない程度に希釈したSPM、SC−1、SC−2、フッ酸等の薬液を用いて除去する。その後、純水を用いて薬液をリンスアウトする。
【0156】
図23に示すように、シランカップリング剤や界面活性剤を用いて、シリコン酸化膜層504及びポリシリコン層503の表面に撥水性保護膜506を形成する。図22に示す工程において、SPM、SC−1、SC−2等の酸化効果のある薬液を用いた場合、図18で説明したように、さらに高い撥水化状態を実現できる。
【0157】
配線層501や金属層502の表面はOH基が十分に存在しない等の理由により、撥水性保護膜506はほとんど形成されない。
【0158】
続いて、撥水性保護膜506の形成に用いたシランカップリング剤又は界面活性剤を純水で置換する。IPA置換した後に純水置換を行ってもよい。
【0159】
その後、スピン乾燥や引き上げ乾燥等を用いて、基板を乾燥させる。撥水性保護膜506によりパターン表面は高撥水化しているため、表面張力、毛管力が小さくなり、パターン倒壊を防止できる。
【0160】
また、撥水化処理されていない金属層502の側部に液面があるときは、液面の高さが低いため、毛管力は小さくなっており、パターン倒壊のおそれはほとんどない。
【0161】
図24に示すように、オゾンアッシング、ベーキング、UV照射等によって、撥水性保護膜506を除去し、清浄な状態のパターン表面が得られる。
【0162】
このように、金属層を含むパターンに対しても、加工後に撥水化処理を施してから乾燥を行うことで、パターン倒壊を防止することができる。
【0163】
本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0164】
1 半導体基板
2 基板保持部
3 処理槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライエッチング処理によって複数の凸形状パターンが形成された半導体基板の表面処理装置であって、
前記凸形状パターン表面を薬液を用いて洗浄及び改質し、
改質された前記凸形状パターン表面に撥水性保護膜を形成し、
前記撥水性保護膜形成後に水を用いて前記半導体基板をリンスし、
前記半導体基板を乾燥させ、
前記凸形状パターンを残存させて前記撥水性保護膜を除去する半導体基板の表面処理装置。
【請求項2】
ドライエッチング処理によって複数の凸形状パターンが形成された半導体基板の表面処理装置であって、
前記凸形状パターン表面の加工残渣を第1薬液を用いて洗浄し、
洗浄された前記凸形状パターン表面を第2薬液を用いて改質し、
改質された前記凸形状パターン表面に撥水性保護膜を形成し、
前記撥水性保護膜形成後に水を用いて前記半導体基板をリンスし、
前記半導体基板を乾燥させ、
前記凸形状パターンを残存させて前記撥水性保護膜を除去する半導体基板の表面処理装置。
【請求項3】
少なくともそれぞれの一部にシリコン系材料からなるシリコン系膜を有する複数の凸形状パターンが形成された半導体基板の表面処理装置であって、
前記凸形状パターン表面を薬液を用いて洗浄及び改質し、
改質された前記凸形状パターン表面に撥水性保護膜を形成し、
前記撥水性保護膜形成後に水を用いて前記半導体基板をリンスし、
前記半導体基板を乾燥させる半導体基板の表面処理装置。
【請求項4】
少なくともそれぞれの一部にシリコン系材料からなるシリコン系膜を有する複数の凸形状パターンが形成された半導体基板の表面処理装置であって、
前記凸形状パターン表面の加工残渣を第1薬液を用いて洗浄し、
洗浄された前記凸形状パターン表面を第2薬液を用いて改質し、
改質された前記凸形状パターン表面に撥水性保護膜を形成し、
前記撥水性保護膜形成後に水を用いて前記半導体基板をリンスし、
前記半導体基板を乾燥させる半導体基板の表面処理装置。
【請求項5】
少なくともそれぞれの一部にシリコン系材料からなるシリコン系膜を有する複数の凸形状パターンが形成された半導体基板の表面処理装置であって、
前記凸形状パターン表面を薬液を用いて改質し、
改質された前記凸形状パターン表面に撥水性保護膜を形成し、
前記撥水性保護膜形成後に水を用いて前記半導体基板をリンスし、
前記半導体基板を乾燥させる半導体基板の表面処理装置。
【請求項6】
前記凸形状パターンを残存させて前記撥水性保護膜を除去する請求項3乃至5のいずれかに記載の半導体基板の表面処理装置。
【請求項7】
前記シリコン系膜は、ポリシリコン、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、アモルファスシリコン膜の少なくともいずれか1つを有する請求項3乃至5に記載の半導体基板の表面処理装置。
【請求項8】
前記改質は前記凸形状パターン表面を親水性にすることであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の半導体基板の表面処理装置。
【請求項9】
前記改質は前記凸形状パターン表面を酸化することであることを特徴とする請求項8に記載の半導体基板の表面処理装置。
【請求項10】
前記撥水性保護膜の形成に用いられる撥水化剤は界面活性剤であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の半導体基板の表面処理装置。
【請求項11】
前記撥水性保護膜の形成に用いられる撥水化剤はシランカップリング剤であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の半導体基板の表面処理装置。
【請求項12】
前記凸形状パターン表面の改質後かつ前記撥水性保護膜の形成前、及び前記撥水性保護膜の形成後かつ前記水を用いたリンスの前の少なくともいずれか一方において、アルコールを用いて前記半導体基板をリンスすることを特徴とする請求項11に記載の半導体基板の表面処理装置。
【請求項13】
前記凸形状パターン表面の改質後かつ前記撥水性保護膜の形成前に、アルコールを用いて前記半導体基板をリンスし、前記アルコールをシンナーに置換することを特徴とする請求項11に記載の半導体基板の表面処理装置。
【請求項14】
前記凸形状パターンの少なくとも一部は、シリコンを含む膜により形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体基板の表面処理装置。
【請求項15】
前記シリコンを含む膜は、ポリシリコン、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、アモルファスシリコン膜の少なくともいずれか1つを有することを特徴とする請求項14に記載の半導体基板の表面処理装置。
【請求項16】
前記半導体基板を乾燥させる手段は、スピン乾燥法、蒸発乾燥法、減圧乾燥法のいずれか、またはイソプロピルアルコールもしくはハイドロフルオロエーテルを含む溶剤を用いて前記半導体基板上の水を前記溶剤に置換し、前記溶剤を蒸発乾燥させることであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の半導体基板の表面処理装置。
【請求項17】
前記装置は前記半導体基板を1枚毎に処理する枚葉式であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の半導体基板の表面処理装置。
【請求項18】
前記装置は複数の前記半導体基板を一括して処理するバッチ式であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の半導体基板の表面処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2010−114440(P2010−114440A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−243787(P2009−243787)
【出願日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【分割の表示】特願2009−140992(P2009−140992)の分割
【原出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【特許番号】特許第4455670号(P4455670)
【特許公報発行日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】