説明

半導体素子の製造方法

【課題】 量子ドットの寸法と分布密度とを独立に制御することができ、かつ粒界に起因するポテンシャル障壁の影響を軽減させることができる半導体素子の製造方法を提供する。
【解決手段】 半導体基板の表面に、複数の半導体微粒子を供給することにより、表面に半導体微粒子を分布させる。半導体基板の表面に分布した半導体微粒子が変形する温度まで半導体微粒子を加熱する。変形した半導体微粒子を覆うように、半導体基板の上に半導体膜を成長させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の半導体微粒子を含む半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元的な量子閉じ込め効果を持つ半導体量子ドットを利用して、高性能なレーザダイオードや光増幅器等の光半導体素子が実現される。半導体量子ドットを含む活性層の形成には、一般的にStranski-Krastanov Growth mode(S−Kモード)が利用される。S−Kモードを利用した方法では、発光波長を決定するパラメータとなる量子ドットの寸法と、半導体光素子の利得を決定するパラメータとなる量子ドットの分布密度とを独立して制御することが困難である。
【0003】
有機溶媒中に分散させた半導体微粒子(ナノ結晶)を、ベースとなる半導体層の原料とともに基板上に供給することにより、半導体層内に半導体微粒子が分散した量子ドット構造を形成することができる。この量子ドット構造では、ベースとなる半導体層が多結晶になり、半導体微粒子と半導体層とがエピタキシャル関係を有しない。半導体層のキャリア密度を高くすることにより、粒界に起因するポテンシャル障壁が、キャリア移動の妨げにならない程度まで薄くされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2005/043656号公報
【特許文献2】国際公開第2005/071764号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】A. A. Guzelian et al., "Synthesis of Size-Selected, Surface-Passivated InP Nanocrystals", J. Phys. Chem., Vol.100, No.17 (1996), pp.7212-7219
【非特許文献2】B. O. Dabbousi et al., "(CdSe)ZnS Core-Shell Quantum Dots: Synthesis and Characterization of a Size Series of Highly Luminescent Nanocrystallites", J. Phys. Chem., Vol.101, No.46 (1997), pp.9463-9475
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、量子ドットの寸法と分布密度とを独立に制御することができ、かつ粒界に起因するポテンシャル障壁の影響を軽減させることができる半導体素子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する半導体素子の製造方法は、
半導体基板の表面に、複数の半導体微粒子を供給することにより、該表面に該半導体微粒子を分布させる工程と、
前記半導体基板の表面に分布した前記半導体微粒子が変形する温度まで該半導体微粒子を加熱する工程と、
変形した前記半導体微粒子を覆うように、前記半導体基板の上に半導体膜を成長させる工程と
を有する。
【発明の効果】
【0008】
半導体微粒子の寸法と分布密度とを独立に制御することができる。また、加熱時に半導体微粒子を固相エピタキシャル成長させると、粒界に起因するポテンシャル障壁の発生を防止することができる
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1−1】実施例1による製造方法の製造途中段階における半導体素子の断面図である。
【図1−2】実施例1による製造方法の製造途中段階における半導体素子の断面図、及び製造された半導体素子の断面図である。
【図2】実施例1による製造方法で用いる半導体微粒子供給装置の概略図である。
【図3】実施例2による製造方法の製造途中段階における半導体素子の断面図、及び製造された半導体素子の断面図である。
【図4】実施例3による製造方法の製造途中段階における半導体素子の断面図、及び製造された半導体素子の断面図である。
【図5−1】実施例4による製造方法の製造途中段階における半導体素子の断面図である。
【図5−2】実施例4による製造方法の製造途中段階における半導体素子の断面図、及び製造された半導体素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照しながら、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0011】
図1A〜図1E、及び図2を参照して、実施例1による半導体素子の製造方法について説明する。
【0012】
図1Aに示すように、GaAs下地基板10Aの上に、GaAsバッファ層10Bを、有機金属化学気層成長(MOCVD)により形成する。GaAs下地基板10AとGaAsバッファ層10Bとを、単に、「半導体基板」10と呼ぶこととする。GaAsバッファ層10Bの成長条件は、例えば下記の通りである。
・Ga原料 トリエチルガリウム(TEGa)
・As原料 アルシン(AsH
・基板温度 550℃〜650℃
・雰囲気 水素雰囲気
バッファ層10Bを形成した後、半導体基板10の温度を350℃〜500℃の範囲内に設定する。有機溶媒中に複数の半導体微粒子20が分散されたコロイド状溶液を原料として用い、半導体基板10の表面に、複数の半導体微粒子20を供給する。これにより、半導体基板10の表面に、複数の半導体微粒子20が分布する。
【0013】
図2に、半導体微粒子20を供給する装置の概略図を示す。原料容器30内に、半導体微粒子20がトルエン等の有機溶媒中に分散されたコロイド状溶液31が収容されている。半導体微粒子20の各々は、有機溶媒中で凝集することなく均一に分散されるように、トリ−n−オクチルフォスフィン(TOP)、トリ−n−オクチルフォスフィンオキシド(TOPO)、ヘキサデシルアミン(HDA)等の有機分子21で被覆されている。チャンバ33内にステージ34が格納されている。ステージ34上に半導体基板10が配置される。ステージ34は、半導体基板10を加熱することができる。
【0014】
原料容器30内に、水素ガス等のキャリアガスが導入されると、コロイド状溶液31が気化器32内に輸送される。原料容器30に導入されるキャリアガスとは別ルートで、気化器32に、水素ガス等のキャリアガスが導入される。気化器32は、コロイド状溶液を100℃〜300℃の範囲内の温度まで加熱する。有機溶媒のトルエン等が蒸発し、有機分子21で被覆された半導体微粒子20が、キャリアガスとともにチャンバ33内に導入される。チャンバ33内に導入された半導体微粒子20は、半導体基板10の表面に供給され、表面上に離散的に分布する。半導体基板10の表面における半導体微粒子20の分布密度は、半導体微粒子20の流量及び供給時間により制御することができる。
【0015】
半導体基板10の表面に堆積しなかった半導体微粒子20は、キャリアガスと共に、排気管35を通してチャンバ外に排出される。半導体膜形成のための原料が、配管36を経由してチャンバ33内に供給される。
【0016】
図1Bに、半導体基板10の表面に分散した半導体微粒子20の拡大断面図を示す。半導体微粒子20は、ほぼ球状のコア20Cと、それを被覆するシェル20Sとを含む。コア20CはInAsで形成され、シェル20SはGaAsで形成されている。コア20Cの直径は、例えば3nm〜10nmの範囲内である。ただし、コア20Cの直径は、この範囲内に広く分布しているのではなく、この範囲内の特定の値の近傍に集中して分布している。すなわち、特定の大きさの半導体微粒子20を半導体基板10の表面に分布させることができる。
【0017】
半導体微粒子20を半導体基板10の表面に供給する工程では、半導体基板10の温度を350℃〜500℃に維持した状態で、半導体基板10の表面に半導体微粒子20を供給する。所定量の半導体微粒子20が供給された後、チャンバ20内にキャリアガスのみを供給した状態で、1秒〜1分間待機する。待機中に、半導体微粒子20を被覆していた有機分子21が分解され除去される。除去された有機分子が半導体基板10の表面に残留することを防止するために、水素化物であるAsHをチャンバ33内に供給してもよい。
【0018】
図1Cに、有機分子21が除去された後の半導体微粒子20及び半導体基板10の断面図を示す。
【0019】
図1Dに示した状態に至るまでの工程について説明する。チャンバ33内にAsHを供給しながら、半導体基板10を450℃〜600℃の範囲内の温度まで昇温する。昇温された状態を1分〜5分間維持する。これにより、半導体微粒子20が熱変形し、扁平状になる。この熱変形時に固相エピタキシャル成長が生じ、半導体基板10と半導体微粒子20とがエピタキシャル関係を有するようになる。熱変形時にAsHを供給しておくのは、半導体基板10及び半導体微粒子20からのAsの乖離を抑制するためである。熱処理温度及び熱処理時間を調節することにより、扁平の度合いを制御することができる。
【0020】
図1Eに示すように、変形した半導体微粒子20を覆うように、半導体基板10の上に、単結晶GaAsからなる半導体層25を、例えばMOCVDによりエピタキシャル成長させる。半導体微粒子20と半導体層25とは、エピタキシャル関係を有する。
【0021】
ここまでの工程により、半導体基板10の表面に複数の半導体微粒子20が分布する半導体素子が得られる。半導体微粒子20のコア20Cが、GaAs半導体基板10及びGaAs半導体層25よりも禁制帯幅の狭いInAsで形成されている。このため、半導体微粒子20が、キャリアを捕捉する量子ドットとして機能する。
【0022】
コロイド状溶液に分散させる半導体微粒子20の大きさを変えることにより、量子ドットの大きさを変化させることができる。また、半導体微粒子20を半導体基板10の表面に供給する工程において、供給量、すなわち流量と供給時間とを変化させることにより、量子ドットの分布密度を変化させることができる。このように、量子ドットの大きさと分布密度とを独立して制御することができる。
【0023】
半導体基板10及び半導体層25を構成する結晶と、半導体微粒子20を構成する結晶とは、エピタキシャル関係を有する。すなわち両者の界面に粒界が存在しない。このため、半導体基板10及び半導体層25から、半導体微粒子20内に、キャリアを効率よく注入することができる。
【0024】
実施例1では、半導体微粒子20として、コア20Cがシェル20Sで被覆された二重構造のものを用いたが、シェル20Sで覆われていないコア20Cのみのものを用いてもよい。ただし、半導体微粒子20の表面に有機分子21の一部が残留すると、半導体微粒子20と有機分子21との界面に、界面準位が発生してしまう。コア20Cをシェル20Sで被覆しておくと、コア20Cが界面準位の影響を受けにくくなる。
【0025】
また、実施例1では、量子ドットを埋め込んだ半導体層25、及び半導体基板10の表層部(バッファ層)10BにGaAsを用いたが、その他の半導体材料を用いてもよい。半導体層25、及びバッファ層10Bに用いられる半導体材料は、半導体微粒子20のコア20Cに用いられる半導体材料の禁制帯幅よりも広い禁制帯幅を持つ。また、下地基板10Aの材料と、バッファ層10B及び半導体層25の材料とを同一にする必要はない。例えば、下地基板10AとしてGaAs基板を用いた場合、バッファ層10B及び半導体層25に、AlGaAsやInGaAsを用いてもよい。バッファ層10B及び半導体層25にInGaAsを用いる場合には、その膜厚を、歪緩和が生じない範囲、すなわち臨界膜厚を越えない範囲とすることが好ましい。下地基板10AとしてInP基板を用いた場合には、バッファ層10B及び半導体層25に、InGaAsP、AlGaInAs等を用いてもよい。また、III−V族化合物半導体の他に、II−VI族化合物半導体を用いてもよい。
【0026】
コア20Cの材料と、シェル20Sの材料と、バッファ層10B及び半導体層25の材料の組み合わせの例を、下記の表に示す。
【0027】
【表1】


半導体微粒子20が有機溶媒中に分散されたコロイド状溶液は、例えばEvident Technologies Inc., Sigma-Aldrich, Nanoco Technologies Limited等から入手すすることができる。
【実施例2】
【0028】
図3A〜図3Dを参照して、実施例2による半導体素子(埋込型半導体レーザ素子)の製造方法について説明する。
【0029】
(100)面を主表面とするn型InPの半導体基板40の上に、n型InP下部クラッド層41をエピタキシャル成長させる。下部クラッド層41の厚さは、例えば300nm〜500nmとし、n型不純物濃度は、例えば5×1017cm−3とする。下部クラッド層41の形成は、例えば、MOCVDにより行われる。成膜条件は、例えば下記の通りである。
・原料 フォスフィン(PH)、トリメチルインジウム(TMIn)、ジシラン(Si
・基板温度 600℃〜650℃
・圧力 6.7×10Pa
下部クラッド層41の上に、多重量子ドット構造を有する活性層43を形成する。活性層43は、厚さ100nmのバリア層43Bと、その表面に分布する複数の量子ドット43Dとを交互に積層することにより形成される。バリア層43Bは、InGaAsPで形成される。例えば、Inの組成比を0.85、Pの組成比を0.67とすることにより、遷移波長1.1μmの無歪のバリア層43Bが得られる。バリア層43Bの成膜条件は、例えば下記の通りである。
・原料 TMIn、TEGa、AsH、PH
・基板温度 600℃〜650℃
・圧力 6.7×10Pa
量子ドット43Dの形成には、InAsのコアとInPのシェルとを含む半導体微粒子が用いられる。以下、量子ドット43Dの形成方法について具体的に説明する。
【0030】
バリア層43Bを形成した後、基板温度を350℃〜450℃の範囲内まで低下させる。基板温度が安定した後、実施例1と同様の方法で、バリア層43Bの表面に半導体微粒子を分布させる。例えば、コロイド状溶液の濃度を1μmol/リットルとし、溶液の流量を10ccm、供給時間を6秒とすると、チャンバ内に6×1013個の半導体微粒子が導入される。基板の直径が2インチであり、チャンバ内に導入された半導体微粒子のうち基板表面に到達する比率が10%であるとすると、量子ドット43Dの分布密度は3×1011cm−2になる。量子ドットの直径が7nmである場合、発光波長は1.55μmになる。
【0031】
バリア層43Bの形成と、量子ドット43Dの形成とを複数回繰り返すことにより、活性層43が形成される。繰り返し回数は、例えば10回とする。なお、繰り返し回数を、5〜10回の範囲内としてもよい。
【0032】
活性層43の上に、酸化シリコン等のマスクパターン45を形成する。
【0033】
図3Bに示すように、マスクパターン45をエッチングマスクとして、活性層43及び下部クラッド層41の表層部分をエッチングすることにより、メサ46を形成する。メサ46は、半導体基板40の表面において一方向に延在する。
【0034】
図3Cに示すように、マスクパターン45を選択成長用のマスクとして、メサ46の両側にp型InPの埋込層48を形成する。埋込層48は、下部クラッド層41の上面及びメサ46の側面を覆う。さらに、埋込層48の上に、n型InPの電流ブロック層49を形成する。電流ブロック層49を形成した後、マスクパターン45を除去する。
【0035】
図3Dに示すように、メサ46及び電流ブロック層49の上に、p型InPの上部クラッド層50を形成する。さらにその上に、p型InGaAsのコンタクト層51を形成する。上部クラッド層50の不純物濃度は1×1018cm−3とし、コンタクト層51の不純物濃度は1×1019cm−3とする。
【0036】
半導体基板40の背面にn側電極53を形成し、コンタクト層51の上にp側電極54を形成する。n側電極53及びp側電極54から、量子ドット43D内に、それぞれ電子及び正孔が供給される。
【0037】
その後、半導体基板40をへき開し、へき開面に反射防止膜を形成する。一対のへき開面により光共振器が画定され、光共振器内に、量子ドット43D及びバリア層43Bを含む導波構造が画定される。
【0038】
量子ドット43Dの大きさの分散は、S−Kモードを利用して形成される量子ドットの大きさの分散よりも小さい。このため、発光波長のスペクトルの広がりを狭めることができる。量子ドット43Dの分布密度を、量子ドット43Dの大きさとは独立に設定することができるため、発光波長とは独立して所望の利得を得ることができる。
【0039】
また、実施例1では、量子ドット43Dと、その周囲のバリア層43Bとが、エピタキシャル関係を有する。粒界に起因するポテンシャル障壁が形成されないため、量子ドット43Dへの電流の注入効率の低下を抑制することができる。
【実施例3】
【0040】
図4A〜図4Cを参照して、実施例3による半導体素子(リッジ型半導体レーザ素子)の製造方法について説明する。
【0041】
図4Aに示すように、n型GaAs半導体基板60の上に、n型AlGaAsの下部クラッド層61を、MOCVDにより形成する。原料として、トリメチルアルミニウム(TMAl)、TEGa、AsH、及びSiを用いる。下部クラッド層61のAl組成比は、例えば0.4とする。下部クラッド層61の上に、多重量子ドット構造の活性層63を形成する。活性層63は、GaAsバリア層63Bと、その表面に分布する複数の量子ドット63Dとを交互に積層することにより形成される。バリア層63Bは、MOCVDにより形成される。量子ドット63Dの形成は、InAsのコア及びGaAsのシェルを含む半導体微粒子を用いて、実施例1と同様の方法で行う。
【0042】
バリア層63Bの形成と、量子ドット63Dの形成とを複数回繰り返すことにより、活性層63が形成される。繰り返し回数は、例えば10回とする。なお、繰り返し回数を5〜10回の範囲内としてもよい。
【0043】
活性層63の上に、p型AlGaAsの上部クラッド層65、及びp型GaAsのコンタクト層66を形成する。コンタクト層66の上に、酸化シリコン等のマスクパターン67を形成する。
【0044】
図4Bに示すように、マスクパターン67をエッチングマスクとして、コンタクト層66及び上部クラッド層65をエッチングする。上部クラッド層65の底面に達する前にエッチングを停止させる。これにより、上部クラッド層65及びコンタクト層66を含むリッジ70が形成される。リッジ70を形成した後、マスクパターン67を除去する。
【0045】
図4Cに示すように、上部クラッド層65の上面、及びリッジ70の表面を覆う保護膜71を形成する。保護膜71には、コンタクト層66を露出させる開口が設けられている。この開口内のコンタクト層66の上に、p側電極73を形成する。半導体基板60の背面にn側電極74を形成する。
【0046】
半導体基板60をへき開し、へき開面に反射防止膜を形成する。一対のへき開面により光共振器が画定される。この光共振器内に、量子ドット63D及びバリア層63Bを含む導波構造が画定される。
【0047】
実施例3においても、実施例2と同様に発光波長のスペクトルの広がりを狭めることができ、かつ発光波長とは独立して利得を設定することができる。
【実施例4】
【0048】
図5A〜図5Gを参照して、実施例4による半導体素子(垂直キャビティ型面発光レーザ素子)の製造方法について説明する。シリコンの半導体基板80の上に、酸化シリコン膜と多結晶シリコン膜とが交互に積層された分布ブラッグ反射(DBR)ミラー81を形成する。例えば波長1.3μmにおける反射率を99%にするためには、多結晶シリコン膜の厚さを96nmとし、酸化シリコン膜の厚さを225nmとし、繰り返し数を4以上にすればよい。なお、その他の誘電体材料を用いてDBRミラーを構成することも可能である。DBRミラー81の表面に、単結晶シリコン基板85をボンディングする。
【0049】
図5Bに示すように、単結晶シリコン基板85を研磨することによって、薄膜化する。これにより、単結晶シリコンの半導体層85aが形成される。
【0050】
図5Cに示すように、半導体層85aの上に、n型SiGeCのn型層86を、MOCVDにより形成する。原料として、例えばSi、ゲルマン(GeH)、及びモノメチルシラン(SiHCH)を用いる。n型層86の成長温度は、例えば650℃とする。n型層86には、n型不純物としてAsがドープされており、その濃度は1×1018cm−3である。
【0051】
n型層86の上に、活性層87を形成する。活性層87は、SiGeCの厚さ50nmのバリア層87Bと、その表面に分布する複数の量子ドット87Dとを交互に積層することにより形成される。量子ドット87は、例えばInSbのコア及びInAsのシェルを含む半導体微粒子を用い、実施例1による方法と同様の方法で形成される。バリア層87Bの形成と、量子ドット87Dの形成との繰り返し回数は、例えば7回とする。なお、繰り返し回数を3〜7回の範囲内としてもよい。
【0052】
活性層87の上に、p型SiGeCのp型層88を、MOCVDにより形成する。p型層88には、p型不純物としてBがドープされており、その濃度は1×1018cm−3である。
【0053】
図5Dに示すように、エッチングマスクを用いてp型層88、活性層87、及びn型層86の表層部をエッチングすることにより、メサ90を形成する。
【0054】
図5Eに示すように、n型層86及びメサ90の上に、酸化シリコン等の絶縁膜92を堆積させる。p型層88が露出するまで、絶縁膜90の表面の平坦化を行う。
【0055】
図5Fに示すように、メサ90、及び平坦化された絶縁膜92の上に、多結晶p型Siのp型層93を、MOCVDにより形成する。p型層93には、p型不純物としてBがドープされており、その不純物濃度は、例えば1×1019cm−3である。p型層93の厚さは、例えば100nmとする。p型層93の上に、DBRミラー95を形成する。DBRミラー95は、下側のDBRミラー81と同一の多層構造を有する。
【0056】
図5Gに示すように、上側のDBRミラー95をパターニングする。さらに、平面視において、p型層93及び絶縁膜92が上側のDBRミラー95を内包するように、p型層93及び絶縁膜92をパターニングする。露出したp型層93の表面に、p側電極96を形成する。露出したn型層86の表面に、n側電極97を形成する。
【0057】
実施例4においても、実施例2と同様に発光波長のスペクトルの広がりを狭めることができ、かつ発光波長とは独立して利得を設定することができる。
【0058】
上記実施例2〜4では、実施例1による量子ドットの形成方法を、半導体レーザ素子の製造に適用した。この量子ドットの形成方法は、半導体レーザ素子以外の半導体光素子、例えば半導体光増幅器等の製造に適用することも可能である。
【0059】
TE偏光及びTM偏光に対して同じ増幅特性を有する偏波無依存の半導体光増幅器においては、量子ドットの形状が球形に近いことが好ましい。図1Dに示した熱変形工程において、加熱温度を低くし、加熱時間を短く設定することにより、球形に近い量子ドットを形成することができる。逆に、半導体レーザ素子においては、一方の偏光、例えばTE偏光の利得を相対的に大きくするために、量子ドットの扁平の度合いを大きくすることが好ましい。実施例1による方法では、量子ドットの形状の扁平率を制御することが可能である。
【0060】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0061】
10 半導体基板
10A 下地基板
10B バッファ層(表層部)
20 半導体微粒子
20C コア
20S シェル
21 有機分子
25 半導体層
30 原料容器
31 コロイド状溶液
32 気化器
33 チャンバ
34 ステージ
35 排気管
36 配管
40 半導体基板
41 下部クラッド層
43 活性層
43B バリア層
43D 量子ドット
45 マスクパターン
46 メサ
48 埋込層
49 電流ブロック層
50 上部クラッド層
51 コンタクト層
53 n側電極
54 p側電極
60 半導体基板
61 下部クラッド層
63 活性層
63B バリア層
63D 量子ドット
65 上部クラッド層
66 コンタクト層
67 マスクパターン
70 リッジ
71 絶縁膜
73 p側電極
74 n側電極
80 半導体基板
81 DBRミラー
85 シリコン基板
85a 単結晶シリコン層
86 n型層
87 活性層
87B バリア層
87D 量子ドット
88 p型層
90 メサ
92 絶縁膜
93 p型層
95 DBRミラー
96 p側電極
97 n側電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の表面に、複数の半導体微粒子を供給することにより、該表面に該半導体微粒子を分布させる工程と、
前記半導体基板の表面に分布した前記半導体微粒子が変形する温度まで該半導体微粒子を加熱する工程と、
変形した前記半導体微粒子を覆うように、前記半導体基板の上に半導体膜を成長させる工程と
を有する半導体素子の製造方法。
【請求項2】
前記半導体微粒子を分散させる工程が、
有機分子で被覆された前記半導体微粒子が有機溶媒中にコロイド状に分散されたコロイド溶液を気化させ、前記半導体微粒子を前記半導体基板の表面に供給する工程を含む請求項1に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項3】
前記加熱する工程において、変形した前記半導体微粒子と前記半導体基板の表層部とが、エピタキシャル関係を持つように加熱する請求項1または2に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項4】
前記半導体膜を成長させる工程において、該半導体膜と前記半導体基板とがエピタキシャル関係を持つように該半導体膜を成長させる請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項5】
前記半導体膜を成長させる工程において、該半導体膜と前記半導体微粒子とがエピタキシャル関係を有するように該半導体膜を成長させる請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【公開番号】特開2010−225879(P2010−225879A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71840(P2009−71840)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】