説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】グラフェンのバリスティック伝導性を利用した低抵抗配線を備え、配線と配線接続部材の接続部分の構成の複雑化を抑えた半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係る半導体装置100は、基板と、基板の上方に設けられ、積層された複数のグラフェンナノリボンシート122からなるグラフェンナノリボン層121を含む下層配線12と、複数のグラフェンナノリボンシート122の少なくとも1枚を貫通し、下層配線12と上層配線13とを接続するビア14およびバリアメタル15と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多層のグラフェンシートを配線に用いる技術が知られている。このような技術によれば、グラフェンシートを配線に用いることにより、グラフェンのバリスティック伝導性を利用して、理想的な抵抗の配線を得ることができる。
【0003】
しかし、積層されたグラフェンシートの間には直接に電気伝導が生じないため、従来のCu配線のように配線の上面または下面にビアやコンタクトプラグを接続した場合、最上層または最下層のグラフェンシートのみがビアやコンタクトプラグと接続されることになる。この場合、最上層または最下層以外のグラフェンシートを電流経路として用いることができず、また、例えば2つのビアが配線の上面と下面に接続される場合は、2つのビア間に電流を流すことができない。
【0004】
そのため、グラフェンシートを配線に用いる場合、従来のCu配線の構造とは異なる配線構造が要される。例えば、特許文献1に記載された配線構造体においては、配線とコンタクトプラグの接合部としてTiN電極膜が設けられている。このため、各層のグラフェンシートがTiN電極膜を介してコンタクトプラグに接続され、配線中の電流経路として機能する。
【0005】
しかし、特許文献1に記載された配線構造体によれば、配線とコンタクトプラグがTiN電極膜を介して間接的に接続されるため、配線とコンタクトプラグの接続部分の構成が複雑化するという問題がある。このため、接続部分における接続不良により電気抵抗が上昇するおそれがあり、また、TiN電極膜を形成するために工程数が増えるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−70911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、グラフェンのバリスティック伝導性を利用した低抵抗配線を備え、配線と配線接続部材の接続部分の構成の複雑化を抑えた半導体装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、基板と、前記基板の上方に設けられ、積層された複数のグラフェンナノリボンシートからなるグラフェンナノリボン層を含む配線と、前記複数のグラフェンナノリボンシートの少なくとも1枚を貫通し、前記配線と前記配線の上層または下層の導電部材とを接続する配線接続部材と、を有する半導体装置を提供する。
【0009】
また、本発明の他の態様は、基板の上方に、積層された複数のグラフェンナノリボンシートからなるグラフェンナノリボン層を含む配線を形成する工程と、前記複数のグラフェンナノリボンシートの少なくとも1枚を貫通する孔を形成する工程と、前記孔に導電部材を埋め込んで、前記配線と前記配線の上層または下層の導電部材とを接続する配線接続部材を形成する工程と、を含む半導体装置の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、グラフェンのバリスティック伝導性を利用した低抵抗配線を備え、配線と配線接続部材の接続部分の構成の複雑化を抑えた半導体装置およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)、(b)は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の垂直断面図および水平断面図。
【図2】図1(a)のGNR層の周辺を部分的に拡大した図。
【図3A】(a)〜(d)は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図3B】(e)〜(g)は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の垂直断面図。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置の垂直断面図。
【図6A】(a)〜(d)は、本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図6B】(e)〜(g)は、本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔第1の実施の形態〕
(半導体装置の構成)
図1(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置100の垂直断面図である。図1(b)は、図1(a)の線分A−Aに沿った半導体装置100の水平断面図である。
【0013】
半導体装置100は、図示しない半導体基板上に形成される絶縁膜10Aと、絶縁膜10A上の層間絶縁膜11Aと、層間絶縁膜11A上の層間絶縁膜11Bと、層間絶縁膜11B上の絶縁膜10Bと、層間絶縁膜11A中の下層配線12と、層間絶縁膜11B中の上層配線13と、下層配線12と上層配線13を電気的に接続するビア14を有する。
【0014】
下層配線12は、触媒層120と、触媒層120上のGNR(Graphene Nano Ribbon)層121からなる。また、上層配線13は、触媒層130と、触媒層130上のGNR層131からなる。
【0015】
触媒層120、130は、GNR層121、131を構成するグラフェンの成長のための触媒として機能する触媒材料からなる。触媒材料として、例えば、Co、Ni、Ru、Feまたはこれらを含む化合物が用いられる。
【0016】
GNR層121、131は、触媒層120、130を触媒として成長する1〜数十層のGNRシートからなり、バリスティック伝導特性を有する。GNR層121、131においては、各GNRシート内で独立にバリスティック伝導が生じ、平行な複数の電流経路が形成される。
【0017】
ここで、GNRシートとは、単層のグラフェンシートを微細な線幅に加工したものをいう。GNR層121、131がより高い伝導特性を有するためには、GNRシートの層数は10層以下であることが好ましく、特に、より少ないことが好ましい。GNRシートの層数が10層よりも大きくなると、GNR層121、131の特性がグラファイトに近づき、伝導特性が劣化するおそれがある。
【0018】
グラフェン中の電子の平均自由工程は約100nm〜1μmであり、現在多くのLSIデバイスで用いられている低抵抗金属材料であるCu中の電子の平均自由工程(約40nm)と比較して、遙かに長いことが知られている。グラフェンは量子化伝導特性を有し、長距離の電気伝導により有利である。従来までの金属配線では配線の微細化が進むと、配線・絶縁膜界面における電子散乱効果の影響が顕著となり、界面電子散乱による抵抗上昇が避けられない。これに対し、グラフェンでは量子化伝導により界面散乱による抵抗上昇が少ない。このため、グラフェン層を配線材料に用いることにより、配線の低抵抗化を図ることができる。
【0019】
下層配線12および上層配線13は狭い線幅と低い電気抵抗を有するため、超微細配線構造に適している。
【0020】
ビア14は、例えば、W、Cu、Al等の金属からなる。
【0021】
バリアメタル15は、例えば、Ta、Ti、Ru、Mn、Co等の金属、またはこれらの金属を含む窒化物からなる。また、バリアメタル15は、ビア14中の金属の外部への拡散を防ぐ機能を有する。
【0022】
図2は、図1(a)のGNR層121周辺を部分的に拡大した図である。図2に示される例では、GNR層121は4層のGNRシート122から構成される。また、図示しないが、GNR層131もGNR層121と同様の構造を有する。
【0023】
ビア14およびバリアメタル15は、上層配線13のGNR層131および触媒層130、ならびに下層配線12のGNR層121の少なくとも1枚のGNRシート122を貫通し、GNR層131のGNRシートおよび少なくとも2枚のGNRシート122と接続される。
【0024】
図2に示されるように、GNR層121とバリアメタル15が反応することにより、GNR層121とバリアメタル15の界面に炭化物層150が形成され、GNR層121の積層されたGNRシート122が炭化物層150を介して電気的に接続されることが好ましい。これにより、GNR層121とビア14(バリアメタル15)の接続部分における電気抵抗をより低減することができる。例えば、バリアメタル15がTiからなる場合は、炭化物層150はTiCからなる。なお、GNR層131とビア14(バリアメタル15)の接続部分においても同様の構造が形成されることが好ましい。
【0025】
また、図2に示されるように、触媒層120は、下地層120C、助触媒層120B、表面層120Aから構成される多層構造であってもよい。表面層120Aは、Co、Ni、Ru、Fe等からなり、GNRシート122を成長させるための触媒として機能する。助触媒層120Bは、Ti等からなり、表面層120Aの助触媒として機能する。なお、助触媒層120Bは、Ti微粒子から構成される極薄の層であってもよい。下地層120Cは、TaN、TiN、RuN、WN、Ta、Ti、Ru、W等からなり、表面層120A中の金属の拡散を防ぐ機能を有する。
【0026】
絶縁膜10A、10Bは、SiN等の絶縁膜からなる。また、層間絶縁膜11A、11Bは、SiOC系絶縁材料等の低誘電率絶縁材料からなることが好ましい。
【0027】
以下に、本実施の形態に係る半導体装置100の製造方法の一例を示す。
【0028】
(半導体装置の製造)
図3A(a)〜(d)、図3B(e)〜(g)は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置100の製造工程を示す断面図である。
【0029】
まず、図3A(a)に示すように、絶縁膜10A上に触媒層120の材料膜である触媒膜101、およびGNR層121の材料膜であるグラフェン膜102を形成する。
【0030】
触媒膜101は、CVD(Chemical Vapor Deposition)、PVD(Physical Vapor Deposition)等により形成される。
【0031】
グラフェン膜102の形成方法の具体例を以下に示す。まず、触媒膜101の凝集のよる微粒子化を抑制するために、プラズマ処理を行う。触媒膜101の微粒子化を防ぎ、触媒膜101表面の連続性を保つことにより、グラフェンの均一成長を促進させることができる。プラズマ処理に用いる放電ガスとしては水素ガスまたは希ガスが好ましいが、両方を含んだ混合ガスでもよい。処理温度はできるだけ低い方が効果は高く、室温で行うのが望ましい。また、このプラズマは比較的強いほうが好ましく、高パワーリモートプラズマやプラズマに曝露させるほうがより効果が高まる。
【0032】
次に、触媒膜101の炭化を行う。放電ガスには、メタン、アセチレン等の炭化水素系ガスまたはそれらの混合ガスを用いる。また、キャリアガスには、水素ガスや希ガス等を用いる。この処理は、後述するグラフェン形成時の処理温度よりも低い温度、かつグラファイト膜が形成されうる温度で行う必要があり、150〜600℃程度が好ましい。また処理時間は短くてよい。この処理も比較的強いプラズマを用いて行うのが好ましい。
【0033】
次に、触媒膜101の炭化層の良質化および触媒活性化のためのプラズマ処理を行う。放電ガスは希ガスを用いるのが好ましい。処理温度は、触媒膜101を炭化する際の処理温度と、後述するグラフェン形成の際の処理温度の中間程度でよい。この処理におけるプラズマは比較的弱くてもよく、リモートプラズマを使用するのがよい。
【0034】
最後に、グラフェン形成を行う。放電ガスは炭化水素系ガスまたはその混合ガスを用いる。処理温度は200℃〜1000℃程度であり、特に、350℃程度が好ましい。200℃を下回ると十分な成長速度が得られず、グラフェン成長がほとんど起こらない。200℃以上の温度下ではグラフェン成長が起こり、均一なグラフェン膜が成膜される。この処理温度は、通常のLSIデバイスの配線形成工程における処理温度と同等あるいはそれ以下であり、このグラフェン形成プロセスは半導体プロセスとの親和性に優れる。
【0035】
この処理ではイオン、電子を除去しラジカルのみを触媒膜101上に供給することが重要であることから、非常に弱いプラズマをリモート化して用いるのが望ましい。さらにイオン、電子を除去するために、基板上部に電極を設置し電圧を印加するのも効果的である。印加電圧は0〜±100V程度が好ましい。
【0036】
上記の多段処理により、グラフェン膜102が得られる。炭素源に炭化水素系ガスを用いた単一条件のCVD法による処理によりグラフェン膜102を形成することもできるが、上記のような多段処理を用いることにより、低温条件下で、より均一性に優れた低抵抗のグラフェン膜102を形成することができる。
【0037】
次に、図3A(b)に示すように、触媒膜101およびグラフェン膜102をフォトリソグラフィとRIE(Reactive Ion Etching)の組み合わせ等によりパターニングし、触媒層120およびGNR層121に加工する。これにより、下層配線12が得られる。
【0038】
なお、GNR層121を形成した後、パターニングにより露出したGNR層121の側部に終端処理を行うことが好ましい。ここで、終端処理とは、グラフェンの端部における結合を持たないダングリングボンドを終端させるための、水素シンターリング、シリル化処理、HDMSによる疎水化処理等の処理をいう。例えば、水素シンターリングを行う場合は、ダングリングボンドに水素を結合させることより、これを終端させることができ、シリル化処理、またはHDMSによる疎水化処理を行う場合は、ダングリングボンドにシリコン-メチル基等を結合させることより、これを終端させることができる。
【0039】
ダングリングボンドが終端されずに残った場合、グラフェン端面における電子散乱を生じ易く、グラフェン層中の電子伝導特性に悪影響を及ぼすおそれがある。また、ダングリングボンドが残った状態では、意図しない結合がグラフェン端に形成される可能性があり、この場合もグラフェン中の電子伝導特性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0040】
次に、図3A(c)に示すように、層間絶縁膜11Aを形成する。層間絶縁膜11Aは、CVD等により下層配線12を覆うように形成された後、CMP(Chemical Mechanical Polishing)等の平坦化処理により平坦化される。
【0041】
次に、図3A(d)に示すように、層間絶縁膜11A上に上層配線13および層間絶縁膜11Bを形成する。上層配線13および層間絶縁膜11Bは、それぞれ下層配線12および層間絶縁膜11Aと同様の方法により形成される。
【0042】
次に、図3B(e)に示すように、フォトリソグラフィとRIEの組み合わせ等により、層間絶縁膜11B、GNR層131、触媒層130、層間絶縁膜11A、GNR層121中にビアホール103を形成する。
【0043】
触媒層120がGNR層121に対する十分なエッチング選択比を有するように、触媒層120およびGNR層121の材料を選択することができるため、触媒層320Bをエッチングストッパーとして用いてビアホール103を形成することができる。
【0044】
層間絶縁膜11A、11Bをエッチングするためのガスとして、フッ素系のガス等が用いられる。また、GNR層121、131をエッチングするためのガスとして、酸素系のガス等が用いられる。また、触媒層120、130をエッチングするためのガスとして、Cl(塩素)系のガス等が用いられる。
【0045】
次に、図3B(f)に示すように、CVD等により、ビアホール103を埋めるように、バリアメタル15の材料膜である金属膜104、およびビア14の材料膜である金属膜105を形成する。
【0046】
次に、図3B(g)に示すように、ビアホール103の外側の金属膜104、105をCMP等の平坦化処理により除去して、それぞれバリアメタル15およびビア14に加工する。
【0047】
その後、CVD等により層間絶縁膜11B上に絶縁膜10Bを形成する。これにより、図1に示した半導体装置100を得る。
【0048】
(第1の実施の形態の効果)
本発明の第1の実施の形態によれば、下層配線12および上層配線13がGNR層121、131を含むため、グラフェンのバリスティック伝導性を利用して電気抵抗を低減することができる。
【0049】
また、ビア14(バリアメタル15)がGNR層121、131の積層された各グラフェンナノリボンシートと直接接続されるため、下層配線12とビア14との接続部分、および上層配線13とビア14との接続部分を複雑化させずに、各グラフェンナノリボンシートを配線中の電流経路として機能させることができる。このため、下層配線12とビア14、および上層配線13とビア14を精度よく接続して電気抵抗を低減し、かつ配線構造の製造工程数を少なく抑えることができる。
【0050】
なお、配線と配線接続部材の構成は、本実施の形態において示される下層配線12、上層配線13、ビア14およびバリアメタル15からなるものに限られない。例えば、配線接続部材として、配線とその下層の素子を接続するコンタクトプラグおよびその表面のバリアメタルが用いられてもよい。この場合、配線とコンタクトプラグおよびバリアメタルとの接続部分の構造が、本実施の形態の上層配線13とビア14およびバリアメタル15との接続部分の構造と同様になる。
【0051】
〔第2の実施の形態〕
第2の実施の形態は、配線が積層された複数のGNR層を有する点において、第1の実施の形態と異なる。なお、第1の実施の形態と同様の点については、説明を省略または簡略化する。
【0052】
(半導体装置の構成)
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置200の垂直断面図である。
【0053】
半導体装置200は、図示しない半導体基板上に形成される絶縁膜10Aと、絶縁膜10A上の層間絶縁膜11Aと、層間絶縁膜11A上の層間絶縁膜11Bと、層間絶縁膜11B上の絶縁膜10Bと、層間絶縁膜11A中の下層配線22と、層間絶縁膜11B中の上層配線23と、下層配線22と上層配線23を電気的に接続するビア14を有する。
【0054】
下層配線22は、触媒層220A、220BおよびGNR層221A、221Bからなる、触媒層とGNR層の組を2つ重ねた構造を有する。なお、下層配線22は、触媒層とGNR層の組を3つ以上重ねた構造を有してもよい。
【0055】
上層配線23は、触媒層230A、230BおよびGNR層231A、231Bからなる、触媒層とGNR層の組を2つ重ねた構造を有する。なお、上層配線23は、触媒層とGNR層の組を3つ以上重ねた構造を有してもよい。
【0056】
触媒層220A、220B、230A、230Bは、第1の実施の形態の触媒層120、130と同様の特徴を有し、同様の方法により形成される。また、GNR層221A、221B、231A、231Bは、第1の実施の形態のGNR層121、131と同様の特徴を有、同様の方法により形成される。
【0057】
GNR層221A、221B、231A、231Bは、第1の実施の形態のGNR層121、131と同様に、10層以下のGNRシートから構成されることが好ましい。そのため、1つのGNR層のGNRシートの層数を増やしても伝導特性の向上は望めないが、本実施の形態のように、積層された複数の触媒層とGNR層の組を形成することにより、配線の伝導特性を向上させることができる。
【0058】
(第2の実施の形態の効果)
本発明の第2の実施の形態によれば、下層配線22が、触媒層220A、220BおよびGNR層221A、221Bからなる、触媒層とGNR層の組を2つ重ねた構造を有するため、下層配線22の伝導特性をより向上させることができる。また、上層配線23が、触媒層230A、230BおよびGNR層231A、231Bからなる、触媒層とGNR層の組を2つ重ねた構造を有するため、上層配線23の伝導特性をより向上させることができる。
【0059】
〔第3の実施の形態〕
第3の実施の形態は、複数の上層配線が下層配線に接続される点において、第2の実施の形態と異なる。なお、第2の実施の形態と同様の点については、説明を省略または簡略化する。
【0060】
(半導体装置の構成)
図5は、本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置300の垂直断面図である。
【0061】
半導体装置300は、図示しない半導体基板上に形成される層間絶縁膜31Aと、層間絶縁膜31A上の層間絶縁膜31Bと、層間絶縁膜31B上の層間絶縁膜31Cと、層間絶縁膜31C上の層間絶縁膜31Dと、層間絶縁膜31D上の絶縁膜10Bと、層間絶縁膜31B中の下層配線32と、層間絶縁膜31D中の上層配線33A、33Bと、下層配線32と上層配線33Aを電気的に接続するビア34Aと、下層配線32と上層配線33Bを電気的に接続するビア34Bと、下層配線32とその下層の導電部材を接続するビア34Cを有する。
【0062】
下層配線32は、第2の実施の形態の下層配線22と同様の特徴を有する。また、上層配線33A、33Bは、第2の実施の形態の上層配線23と同様の特徴を有する。
【0063】
ビア34A、34B、34Cは、第1の実施の形態のビア14と同様の材料からなる。また、バリアメタル35A、35B、35Cは、第1の実施の形態のバリアメタル15と同様の材料からなる。
【0064】
ビア34Aおよびバリアメタル35Aは、上層配線33AのGNR層331A、331Bおよび触媒層330A、330B、ならびに下層配線32のGNR層321A、321Bおよび触媒層320Bを貫通する。
【0065】
ビア34Bおよびバリアメタル35Bは、上層配線33BのGNR層331C、331Dおよび触媒層330C、330D、ならびに下層配線32のGNR層321Bを貫通する。
【0066】
ビア34Cおよびバリアメタル35Cは、下層配線32のGNR層321A、321Bおよび触媒層320A、320Bを貫通する。
【0067】
ビア34Aおよびバリアメタル35A、ならびにビア34Bおよびバリアメタル35Bの両方がGNR層321A、321Bを貫通していた場合、ビア34Bの存在がビア34Cとビア34Aの間のバリスティック伝導の妨げとなる。なお、半導体装置300が超微細配線構造を有する場合、グラフェンナノリボンからなるGNR層321A、321Bは線幅が狭いため、バリスティック伝導を妨げないようにビア34Bの直径をGNR層321A、321Bの線幅に対して十分に小さくすることは困難である。
【0068】
本実施の形態においては、下層配線32のGNR層321Aには、ビア34Aおよびバリアメタル35Aが接続され、ビア34Bおよびバリアメタル35Bが接続されない。このため、GNR層321A中においては、ビア34Cとビア34Aの間のバリスティック伝導が妨げられず、ビア34Cとビア34Aとの間の抵抗をビア34Cとビア34Bの間の抵抗と同様に低く設定することができる。
【0069】
なお、バリスティック伝導は、GNR層321A、321B内の各GNRシート内で独立に生じるため、ビア34Aの底面の高さがビア34Bの底面の高さよりも低ければ、ビア34Cとビア34Aの間にバリスティック伝導が妨げられない経路が形成される。即ち、例えば、バリアメタル35Bの底面の高さがGNR層321Aの上面と下面の高さの間、またはGNR層321Bの上面と下面の高さの間にあってもよい。
【0070】
ただし、触媒層320BがGNR層321Bに対する十分なエッチング選択比を有するように、触媒層320BおよびGNR層321Bの材料を選択することができるため、製造工程上、触媒層320Bをエッチングストッパーとして用いてビア34Bおよびバリアメタル35Bのビアホールを形成することが容易である。この場合、図5に示されるように、バリアメタル35Bの底面がGNR層321Bに接する。
【0071】
また、下層配線32を構成する触媒層とGNR層の組が1組、または3組以上の場合でも、ビア34Aの底面の高さがビア34Bの底面の高さよりも低ければ、ビア34Cとビア34Aの間にバリスティック伝導が妨げられない経路が形成される。
【0072】
また、下層配線32と上層の導電部材とを接続するビアが3つ以上形成される場合も、それらのビアを底面の高さが高いものから順に、ビア34Cに近い位置から並べることにより、ビア34Cと各ビアの間にバリスティック伝導が妨げられない経路を形成すことができる。
【0073】
また、ビア34A、34Bが上層配線33A、33Bの代わりに下層配線32の下方の導電部材にそれぞれ接続される場合は、ビア34Bの上面の高さをビア34Aの上面の高さよりも低くする(ビア34Cに近い位置から、上面の高さが低いものから順に並べる)ことにより、ビア34Cとビア34Aの間、およびビア34Cとビア34Bの間にバリスティック伝導が妨げられない経路を形成すことができる。
【0074】
なお、ビア34Aが下層配線32とその上方の導電部材とを接続する場合も、ビア34Cとビア34Aの間、およびビア34Cとビア34Bの間にバリスティック伝導が妨げられない経路を形成するための条件は同じである。
【0075】
以上をまとめると、下層配線32が、ビア34A、34B、34Cが接続されたGNRシートと、ビア34A、34Cのみが接続されたGNRシートを含む場合に、ビア34Cとビア34Aの間、およびビア34Cとビア34Bの間にバリスティック伝導が妨げられない経路を形成するといえる。
【0076】
層間絶縁膜31A、31B、31C、31Dは、第1の実施の形態の層間絶縁膜11A、11Bと同様の材料からなる。
【0077】
以下に、本実施の形態に係る半導体装置300の製造方法の一例を示す。
【0078】
(半導体装置の製造)
図6A(a)〜(d)、図6B(e)〜(g)は、本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置300の製造工程を示す断面図である。
【0079】
まず、図6A(a)に示すように、層間絶縁膜31A上に下層配線32および層間絶縁膜31Bを形成する。
【0080】
下層配線32は、触媒層320A、320BおよびGNR層321A、321Bの材料膜を第1の実施の形態の触媒膜101およびグラフェン膜102と同様に形成し、これらをパターニングすることにより形成される。層間絶縁膜31Bは、CVD等により下層配線32を覆うように形成された後、CMP等の平坦化処理により平坦化される。
【0081】
まず、図6A(b)に示すように、フォトリソグラフィとRIEの組み合わせ等により、層間絶縁膜31B、GNR層321B、触媒層320B、GNR層321A、触媒層320A、および層間絶縁膜31A中にビアホール301を形成する。
【0082】
次に、図6A(c)に示すように、ビアホール301中にバリアメタル35Cおよびビア34Cを形成する。バリアメタル35Cおよびビア34Cは、第1の実施の形態のバリアメタル15およびビア14と同様の方法により形成される。
【0083】
次に、図6A(d)に示すように、CVD等により層間絶縁膜31B上に層間絶縁膜31Cを形成する。
【0084】
次に、図6B(e)に示すように、層間絶縁膜31C上に上層配線33A、33Bおよび層間絶縁膜31Bを形成する。
【0085】
上層配線33A、33Bは、触媒層330A、330Cの材料膜、GNR層331A、331Cの材料膜、触媒層330B、330Dの材料膜、およびGNR層331B、331Dの材料膜を積層し、これらをパターニングすることにより形成される。層間絶縁膜31Dは、CVD等により上層配線33A、33Bを覆うように形成された後、CMP等の平坦化処理により平坦化される。
【0086】
まず、図6B(f)に示すように、フォトリソグラフィとRIEの組み合わせ等により、ビアホール302A、302Bを形成する。
【0087】
ビアホール302Aは、触媒層320Aをエッチングストッパーとして用いたエッチングにより、層間絶縁膜31D、上層配線33A、層間絶縁膜31C、層間絶縁膜31B、ならびに下層配線32のGNR層321B、触媒層320BおよびGNR層321A中に形成される。そのため、ビアホール302Aの底面には、触媒層320Aが露出する。
【0088】
ビアホール302Bは、触媒層320Bをエッチングストッパーとして用いたエッチングにより、層間絶縁膜31D、上層配線33B、層間絶縁膜31C、層間絶縁膜31B、および下層配線32のGNR層321B中に形成される。そのため、ビアホール302Bの底面には、触媒層320Bが露出する。
【0089】
次に、図6B(g)に示すように、ビアホール302A中にバリアメタル35Aおよびビア34Aを形成し、ビアホール302B中にバリアメタル35Bおよびビア34Bを形成する。
【0090】
ビア34A、34Bおよびバリアメタル35A、35Bは、ビアホール302A、302B中にバリアメタル35A、35Bの材料膜およびビア34A、34Bの材料膜を形成した後、ビアホール302A、302Bの外側の材料膜をCMP等の平坦化処理により除去することにより形成される。
【0091】
その後、CVD等により層間絶縁膜31D上に絶縁膜10Bを形成する。これにより、図5に示した半導体装置300を得る。
【0092】
(第3の実施の形態の効果)
本発明の第3の実施の形態によれば、下層配線32が、ビア34A、34B、34Cが接続されたGNRシートと、ビア34A、34Cのみが接続されたGNRシートを含むことにより、ビア34Cとビア34Aの間、およびビア34Cとビア34Bの間にバリスティック伝導が妨げられない経路を形成することができる。
【0093】
〔他の実施の形態〕
本発明は、上記実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。
【0094】
また、発明の主旨を逸脱しない範囲内において上記各実施の形態の構成要素を任意に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0095】
100、200、300 半導体装置、 12、22、32 下層配線、 13、23、33A、33B 上層配線、 120、130、220A、220B、230A、230B、320A、320B、330A、330B、330C、330D 触媒層、 121、131、221A、221B、231A、231B、321A、321B、331A、331B、331C、331D GNR層、 14、34A、34B、34C ビア、 15、35A、35B、35C バリアメタル、 103、301、302A、302B ビアホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上方に設けられ、積層された複数のグラフェンナノリボンシートからなるグラフェンナノリボン層を含む配線と、
前記複数のグラフェンナノリボンシートの少なくとも1枚を貫通し、前記配線と前記配線の上層または下層の導電部材とを接続する配線接続部材と、
を有する半導体装置。
【請求項2】
前記配線は、積層された2つ以上の前記グラフェンナノリボン層を含み、
前記2つ以上のグラフェンナノリボン層はそれぞれ触媒層上に設けられている、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記配線接続部材は、第1の配線接続部材、第2の配線接続部材、および前記第1の配線接続部材と前記第2の配線接続部材の間に位置する第3の配線接続部材を含み、
前記複数のグラフェンナノリボンシートは、前記第1、第2および第3の配線接続部材が接続されたグラフェンナノリボンシートと、前記第1、第2および第3の配線接続部材のうち前記第1および第2の配線接続部材のみが接続されたグラフェンナノリボンシートを含む、
請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
基板の上方に、積層された複数のグラフェンナノリボンシートからなるグラフェンナノリボン層を含む配線を形成する工程と、
前記複数のグラフェンナノリボンシートの少なくとも1枚を貫通する孔を形成する工程と、
前記孔に導電部材を埋め込んで、前記配線と前記配線の上層または下層の導電部材とを接続する配線接続部材を形成する工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記配線は、積層された2つ以上の前記グラフェンナノリボン層を含み、
前記2つ以上のグラフェンナノリボン層はそれぞれ触媒層上に設けられ、それぞれ前記触媒層を触媒として成長したグラフェンからなる、
請求項4に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【公開番号】特開2011−96980(P2011−96980A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252189(P2009−252189)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】