説明

半導体装置の製造方法、半導体装置の洗浄方法および洗浄装置

【課題】半導体装置の回路基板と半導体素子との隙間の洗浄効果を高める。
【解決手段】回路基板2に半導体素子3を実装する半導体装置1の製造方法において、回路基板2に形成された電極21および半導体素子3に形成された半田バンプ31の少なくとも一方にフラックス7を供給する工程と、フラックス7を供給した後、電極21と半田バンプ31とを接合する工程と、電極21と半田バンプ31とを接合した後、回路基板2と半導体素子3との隙間に蒸気81を供給して、回路基板2と半導体素子3との隙間を洗浄する工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板に半導体素子を実装する半導体装置の製造方法、半導体装置の洗浄方法および半導体素子が実装された回路基板を洗浄する洗浄装置に関し、特に、半導体素子と回路基板の隙間に存在するフラックスを洗浄する半導体装置の製造方法、半導体装置の洗浄方法および洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話など電子機器の小型化、高密度化に伴い、半導体素子を回路基板に実装するための実装密度の向上が要求されている。この要求を満たすために、半導体素子の表面電極上に半田等で形成したバンプ(突起)を配置し、それを、回路基板表面に形成した電極に対して、半導体素子の表面を下に向けて直接接合するFC(Flip Chip:フリップチップ)と呼ばれる実装方法が広く使用されている。
【0003】
FCBGA(Flip Chip Ball Grid Array)では、半導体素子を半田バンプによって基板に接合する際に、フラックスが半田バンプおよび電極に塗布される。回路基板に半導体素子を接合した後に、回路基板と半導体素子との間にフラックスが残留していると、イオン成分による電極間のマイグレーションによってショートが発生するため、半導体装置の信頼性が低下してしまう。
【0004】
また、FCBGAでは、半田バンプの接続信頼性を向上させるために、半導体素子と回路基板の隙間にアンダーフィル樹脂を充填する実装方法が行われている。このアンダーフィル樹脂を充填する際にフラックスが残留していると、残留しているフラックスによってアンダーフィル樹脂の充填が阻害されることになる。この結果、アンダーフィル樹脂内にボイドが形成されて接続強度の低下およびショートが発生する可能性が増加し、半導体装置の信頼性が低下してしまう。さらに、FCBGAの場合、回路基板と半導体素子との隙間は50〜100μmと狭いため、隙間内のフラックスを洗浄することは困難である。
【0005】
これに対し、フラックスの残留に対する一般的な洗浄方法として、半導体装置を水などの洗浄液中に浸漬させながら揺動してフラックスを洗浄する方法、超音波によってフラックスを洗浄する方法などがある。
【0006】
また、FCBGAの回路基板と半導体素子との隙間に洗浄液を浸入させ、隙間に沿って洗浄液の高速な流れを形成することによって、隙間の内部に浸入している洗浄液を吸引させることにより、隙間の内部を洗浄する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−300294号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、半導体装置を洗浄液中に浸漬させながら揺動してフラックスを洗浄する方法でFCBGAの隙間内を洗浄しても、上記のように洗浄液がFCBGAの微小な隙間内に入りにくく、また、揺動してもFCBGAの隙間内の洗浄液自体がほとんど動かないため、有効な洗浄効果は得られにくいという問題点がある。
【0008】
また、超音波によってフラックスを洗浄する方法でFCBGAの隙間内を洗浄しても、一般的に使用されている低周波数帯の超音波を用いると、キャビテーションによる強力な洗浄効果が得られる一方、半導体素子にダメージを与えてしまう可能性があるという問題点がある。また、キャビテーションの発生しない高周波数帯の超音波を用いた半導体素子デバイスなどの洗浄用の洗浄機も開発されているが、これをFCBGAの隙間内の洗浄に用いても十分な洗浄効果が得られにくいという問題点がある。
【0009】
また、特許文献1に記載されている技術では、図15に示すように、洗浄槽内に低圧の水流1087を流すことにより、半導体装置1001の回路基板1002と半導体素子1003の隙間内のフラックス1007の洗浄について高い洗浄効果を期待できるが、この隙間以外に水流1087のパスがあると、水流1087がそのパスを流れてしまい隙間への液流が弱まるので、洗浄性が低下する。このため、ワーク毎に水流1087をコントロールする専用洗浄治具が必要となり、コストが高くなるという問題点がある。
【0010】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、回路基板と半導体素子との隙間の洗浄効果を高めることによって、信頼性が高い半導体装置の製造方法、ならびに回路基板と半導体素子との隙間の洗浄効果を高めた半導体装置の洗浄方法および洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この回路基板に半導体素子を実装する半導体装置の製造方法は、前記回路基板に形成された電極および前記半導体素子に形成された半田バンプの少なくとも一方にフラックスを供給する工程と、前記フラックスを供給した後、前記電極と前記半田バンプとを接合する工程と、前記電極と前記半田バンプとを接合した後、前記回路基板と前記半導体素子との隙間に蒸気を供給して、前記回路基板と前記半導体素子との隙間を洗浄する工程と、を含むことを要件とする。
【0012】
このような半導体装置の製造方法によれば、回路基板に形成された電極および半導体素子に形成された半田バンプの少なくとも一方にフラックスが供給される。次に、回路基板に形成された電極と半導体素子に形成された半田バンプとが接合される。次に、回路基板と半導体素子との隙間に蒸気が供給され、回路基板と半導体素子との隙間が洗浄される。
【0013】
また、この回路基板に半導体素子を実装して構成される半導体装置の洗浄方法によれば、前記回路基板と前記半導体素子との隙間に洗浄用の蒸気を供給して、前記回路基板と前記半導体素子との隙間を洗浄することを要件とする。
【0014】
このような半導体装置の洗浄方法によれば、回路基板と半導体素子との隙間に洗浄用の蒸気が供給されて、回路基板と半導体素子との隙間が洗浄される。
また、この洗浄装置は、半導体素子が実装された回路基板を保持する保持手段と、前記保持手段に保持された前記回路基板と前記半導体素子との隙間に洗浄用の蒸気を供給する供給手段とを備えることを要件とする。
【0015】
このような洗浄装置によれば、保持手段により、半導体素子が実装された回路基板が保持される。次に、供給手段により、保持手段によって保持された回路基板と半導体素子との隙間に洗浄用の蒸気が供給される。
【発明の効果】
【0016】
開示の製造方法、洗浄方法および洗浄装置によれば、洗浄液による半導体装置の隙間の内部の不純物の洗浄効果が高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、本発明の第1の実施の形態について説明する。
【0018】
最初に、本実施の形態における半導体装置の製造方法の要部について説明する。図1は、第1の実施の形態における半導体装置の製造方法の要部を説明する図である。
図1に示す、本実施の形態の半導体装置1の製造方法は、詳しくは図4において後述するが、フラックス7を供給する工程、電極21と半田バンプ31とを接合する工程、および蒸気81を供給して回路基板2と半導体素子3との隙間(FC−Gap)を洗浄する工程から構成される。
【0019】
本実施の形態における、回路基板2に半導体素子3を実装する半導体装置1の製造方法の最初の工程では、回路基板2に形成された電極21および半導体素子3に形成された半田バンプ31に対して、フラックス7を塗布によって供給する。次の工程では、回路基板2の電極21と半導体素子3の半田バンプ31とを接合する。
【0020】
電極21と半田バンプ31とを接合した後、次の工程では、回路基板2と半導体素子3との隙間に蒸気81を供給して、回路基板2と半導体素子3との隙間を洗浄する。ここで、本実施の形態では、ノズル8から高温の水蒸気などの洗浄液の蒸気81が回路基板2と半導体素子3との隙間を目掛けて噴射される。
【0021】
洗浄液(すなわち液体)では、表面張力により微小な回路基板2と半導体素子3との隙間内に浸入させることが困難である。一方、蒸気81(すなわち気体)では、微小な隙間内にも容易に浸入させることができる。半導体装置1の隙間の上部から隙間内に入った蒸気81は、フラックス7を膨潤させ、回路基板2の表面、回路基板2の表面に設けられた電極21およびソルダーレジスト22、半導体素子3表面などに接触することにより冷却され液化する。そしてフラックス7を洗浄しながら隙間の下部から排出される。
【0022】
このようにして、最初の工程において電極21および半田バンプ31に供給されたフラックス7、およびその他の隙間内に付着している不純物が除去される。
次に、本実施の形態の半導体装置の構成について説明する。図2は、第1の実施の形態の半導体装置を説明する平面模式図である。図3は、第1の実施の形態の半導体装置を説明する断面模式図である。また、図3(A)は、図2に示す半導体装置のA−A断面を示す図である。図3(B)は、図3(A)に示す半導体装置の断面のB部を拡大して示す図である。
【0023】
図2に示すように、本実施の形態の半導体装置1は、回路基板2、半導体素子3およびアンダーフィル樹脂6で構成されている。回路基板2は、電極21、ソルダーレジスト22、および半田ボール23を備えている。半導体素子3は、半田バンプ31を備えている。
【0024】
図3(A)に示すように、アンダーフィル樹脂6は、回路基板2および半導体素子3を保護するために、回路基板2と半導体素子3との隙間に充填されている。
半導体素子3は、シリコンなどが基材として用いられている。半導体素子3は、図示しない表面電極を備えており、半導体素子3の表面電極上には、図3(B)に示すように、例えば、錫(Sn)−鉛(Pb)系の半田で形成された半田バンプ31が複数設けられている。半導体素子3は、この半田バンプ31により、フリップチップ・ボンディングによってフェースダウンで回路基板2に搭載される。これによって、回路基板2と半導体素子3との間で電源供給および信号の入出力を行うための電気的接続が実現される。
【0025】
回路基板2は、ガラスエポキシ、セラミックなどの材料で製造されており、表面には図示しない配線が施されている。また、図3(B)に示すように、回路基板2には、半導体素子3の半田バンプ31と対になる部位に電極21を備える電極開口部が設けられている。
【0026】
また、回路基板2の電極開口部以外の箇所は、ソルダーレジスト22で被覆されている。ソルダーレジスト22は、半田バンプ31の半田付けの際に電極21以外の半田付けが不要な部分に半田が付着しないように、回路基板2の表面の銅箔などの配線部分の導体を覆う感光性と絶縁性および熱硬化性を備えたエポキシ系の合成樹脂被膜である。
【0027】
半田ボール23は、半田で形成されており、回路基板2における半導体素子3が搭載される面の裏面に複数設けられている。半田ボール23は、半導体装置1をマザーボードなどに実装する際に接続端子となる。
【0028】
アンダーフィル樹脂6は、回路基板2と半導体素子3との隙間に充填されている、エポキシ系組成物、ウレタン系組成物などによる、絶縁性および熱硬化性を備えた樹脂である。また、アンダーフィル樹脂6には、回路基板2と半導体素子3との熱膨張差を緩衝するための材料が微小粒子の状態で混入されている。
【0029】
このアンダーフィル樹脂6を回路基板2と半導体素子3との間の隙間に充填し、アンダーフィル樹脂6を加熱して硬化させることにより、回路基板2と半導体素子3との隙間が封止される。これにより、回路基板2と半導体素子3との接続強度が増加し、回路基板2と半導体素子3との熱膨張差から半導体装置1が保護される。また、半田バンプ31が、隙間内において半導体装置1の実装時における再加熱によって溶融した場合にも、他の半田バンプおよび/または導体部分とのショートを防止することができる。
【0030】
本実施の形態の半導体装置1の製造方法は、フラックス7の洗浄効果を高めることにより、このアンダーフィル樹脂6の充填を確実にして、半導体装置1の信頼性を向上させるものである。
【0031】
次に、本実施の形態の半導体装置1の製造工程について説明する。図4は、第1の実施の形態における半導体装置の製造工程の概要を説明する図である。
本実施の形態の半導体装置1は、回路基板2に形成された電極21および半導体素子3に形成された半田バンプ31にフラックス7を供給する工程と、電極21と半田バンプ31とを接合する工程と、回路基板2と半導体素子3との隙間に蒸気81を供給して、回路基板2と半導体素子3との隙間を洗浄する工程とによって製造される。
【0032】
まず、図4左上の製造ステップ41に示すように、回路基板2に形成された電極21および半導体素子に形成された半田バンプ31にフラックス7を塗布した後、半導体素子3を、回路基板2の表面に、フェースダウンで対面させる。
【0033】
次に、製造ステップ42に示すように、半田バンプ31と電極21とを位置合わせして、半導体素子3を回路基板2にマウントする。次に、製造ステップ43に示すように、再加熱(リフロー)により半田バンプ31を溶融させた後、半田バンプ31と電極21とを接合することにより、半導体素子3が、複数の半田バンプ31で、フリップチップ・ボンディングにより回路基板2に溶融接合される。
【0034】
次に、製造ステップ44に示すように、半導体素子3と回路基板2とに付着しているフラックス7を除去するために、噴射によって蒸気81を供給してフラックス7を洗浄する。この本実施の形態における蒸気81の供給によるフラックス7の洗浄については、詳しくは図5および図6において後述する。
【0035】
次に、製造ステップ45に示すように、半導体素子3と回路基板2との隙間にアンダーフィル樹脂6を充填する。次に、製造ステップ46に示すように、回路基板2の上下を反転して裏返し、回路基板2の裏面(図の製造ステップ45における上側の面)の電極(図示省略)にフラックス74を塗布した後、半田ボール23をマウントする。ここでは説明を省略するが、回路基板2の裏面も、表面と同様に電極(図示省略)およびソルダーレジスト(図示省略)を備えている。
【0036】
次に、製造ステップ47に示すように、回路基板2の裏面にマウントした半田ボール23を再加熱して溶融し、半導体装置1に接合する。
次に、製造ステップ48に示すように、蒸気86を噴射して半導体装置1の裏面および半田ボール23に残留しているフラックス74を洗浄する。次に、製造ステップ49に示すように、半導体装置1を再び反転させる。これにより、本実施の形態の半導体装置1の製造工程が終了する。
【0037】
なお、ここでは、回路基板2と半導体素子3との隙間のフラックス7と、半導体装置1の裏面のフラックス74とを、それぞれ別個に洗浄する場合の例について説明したが、フラックス7およびフラックス74を同時に洗浄してもよい。
【0038】
次に、本実施の形態における、半導体装置1の回路基板2と半導体素子3との隙間に蒸気81を供給する、半導体装置1の隙間の洗浄について説明する。図5は、第1の実施の形態における半導体装置が洗浄される様子を説明する図である。図6は、第1の実施の形態における半導体装置が洗浄される工程を説明する図である。
【0039】
まず、本実施の形態の半導体装置1の洗浄に用いる装置について説明する。図5に示すように、本実施の形態では、ノズル8、ベルトコンベア11、排液槽12、フィルター13、ポンプ14および循環パイプ15などの設備を用いて半導体装置1の洗浄を行う。
【0040】
ノズル8は、加熱により気化した水などの洗浄液(図示省略)の蒸気流82を噴射する。ベルトコンベア11は、半導体装置1を搬送する搬送機構である。
排液槽12は、蒸気流82として噴射された蒸気81(図1)が凝縮することにより生じた洗浄液と、洗浄液によって洗い流されたフラックスなどの不純物との混合液である廃液84を溜めて回収するための液槽である。
【0041】
フィルター13は、回路基板2および半導体素子3から除去されたフラックス7と洗浄液とをろ過によって分離する。このフィルター13により、排液槽12に回収された廃液84から洗浄液が分離される。
【0042】
ポンプ14は、廃液84および洗浄液を循環させるための機構である。このポンプ14により、排液槽12により回収された廃液84がフィルター13に送られ、フィルター13により分離された洗浄液がノズル8に循環される。
【0043】
循環パイプ15は、排液槽12からフィルター13、ポンプ14およびノズル8までを連通するためのパイプである。
これらの排液槽12、フィルター13、ポンプ14、および循環パイプ15は、洗浄に用いられた廃液84を洗浄液として再利用するための機構である。
【0044】
ここで、本実施の形態における洗浄について具体的な説明を行う。本実施の形態では、前工程(図4の製造ステップ43)で電極21と半田バンプ31とが接合された後、以上の設備により、まず、回路基板2を水平面に対して垂直に起立させて配置した半導体装置1がベルトコンベア11によってノズル8の下方に移動される。次に、上記のように半導体装置1の回路基板2と半導体素子3との隙間が垂直になるように半導体装置1を立てた状態で、半導体装置1の隙間の上方に設けられたノズル8から噴射された蒸気流82が上記の隙間に吹き付けられる。これにより、回路基板2と半導体素子3との隙間に、ノズル8から噴射された蒸気流82によって洗浄液の蒸気81が供給される。
【0045】
ここで、回路基板2と半導体素子3との隙間を目掛けてノズル8から噴射される、洗浄液の蒸気81からなる蒸気流82の圧力は、0〜5MPa(パスカル)の範囲であって、蒸気圧でFCBGAが吹き飛ばされない適切な圧力に設定することが望ましい。なお、蒸気流82を構成する洗浄液は、水を用いることができるが、水に代えて、準水系洗浄剤、炭化水素系洗浄剤、イソプロパノール(IPA:isopropyl alcohol)系洗浄剤、グリコールエーテル系洗浄剤などを用いてもよい。
【0046】
液体の洗浄液を用いた場合には、その表面張力により、100μm以下と微小である回路基板2と半導体素子3との間の隙間に満遍なく浸入させることは、非常に困難である。しかし、気体である蒸気の流れの蒸気流82を用いることによって、微小な隙間内にも十分に浸入させることを容易にすることができる。
【0047】
この半導体装置1の上側から隙間の上部に浸入した蒸気流82は、フラックス7を膨潤させるとともに、回路基板2、半田バンプ31、半導体素子3などの表面に接触して冷却される。この冷却された蒸気流82は、凝縮により液化して洗浄液となり、重力によって下方に流れていくが、このとき洗浄液は、隙間内に付着しているフラックス7などを洗浄しながら流れていき、隙間の下部から廃液84として排出されることになる。これにより、最初の工程において電極21および半田バンプ31に供給されたフラックス7およびその他の隙間内に付着している不純物が、洗浄液によって除去される。
【0048】
また、半導体装置1の隙間の下部から排出された廃液84は、一旦、ノズル8の下方に設けられた排液槽12に溜められる。次に、この廃液84は、ポンプ14の動作によって循環パイプ15を通じてフィルター13に送られ、フィルター13によりろ過されてフラックス7などの不純物と洗浄液とに分離される。その後、洗浄液は、ポンプ14および循環パイプ15によって装置内で循環して再利用される。
【0049】
また、本実施の形態において半導体装置1を洗浄する工程では、上記のノズル8、ベルトコンベア11、排液槽12、フィルター13、14および循環パイプ15などの他、図6に示す乾燥処理部16が用いられる。
【0050】
この乾燥処理部16は、ノズル8から噴射される蒸気流82による洗浄が完了した半導体装置1を加熱することにより、半導体装置1の表面および回路基板2と半導体素子3との隙間などに残留している洗浄液を乾燥させて除去する。
【0051】
なお、蒸気流82をノズル8から供給するとき、液化して半導体装置1に付着した洗浄液が回路基板2および半導体素子3の隙間から排出されれば、回路基板2は垂直でなくてもよく、回路基板2を水平面に対して傾斜させて配置してもよい。
【0052】
また、ノズル8から供給される蒸気流82の圧力を強めて、回路基板2と半導体素子3との隙間を、噴射された蒸気流82の圧力によって洗浄してもよい。
また、乾燥処理部16に代えて、遠心力によって洗浄液を飛散させて乾燥するスピン乾燥、または真空中で洗浄液を蒸発させて乾燥する真空乾燥などの、他の乾燥方法を用いて、半導体装置1の表面および回路基板2と半導体素子3との隙間などに残留している洗浄液を乾燥させてもよい。
【0053】
以上のように、第1の実施の形態では、半導体素子3が実装された回路基板2の、半導体素子3と回路基板2との隙間に蒸気81を供給する。これにより、供給された蒸気81が液化して、半導体素子3と回路基板と2の隙間に十分に浸入する。この結果、洗浄液による半導体装置1の隙間の内部の不純物の洗浄効果が高まる。
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態について説明する。上記の第1の実施の形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については同一の符号を用いるとともに説明を省略する。
【0054】
第2の実施の形態は、半導体装置1に対してノズル8から蒸気流82が噴射される位置において、半導体装置1の下方に冷却ユニット217が設置されている点で、第1の実施の形態と異なる。
【0055】
以下に、本実施の形態における半導体装置1の隙間の洗浄について説明する。図7は、第2の実施の形態における半導体装置が洗浄される工程を説明する図である。
まず、本実施の形態の半導体装置1の洗浄に用いる装置について説明する。図7に示すように、本実施の形態では、第1の実施の形態で用いるノズル8、ベルトコンベア11、排液槽12、フィルター13、ポンプ14、循環パイプ15、乾燥処理部16などの他、冷却ユニット217を用いて半導体装置1の洗浄を行う。
【0056】
ノズル8は、第1の実施の形態と同様に、洗浄液(図示省略)の蒸気流82を噴射する。ベルトコンベア11は、第1の実施の形態と同様に、半導体装置1を搬送する搬送機構である。
【0057】
排液槽12は、第1の実施の形態と同様に、蒸気流82として噴射された蒸気81(図1)が凝縮することにより生じた洗浄液と、洗浄液によって洗い流されたフラックス7などの不純物との混合液である廃液84を溜めて回収するための液槽である。
【0058】
フィルター13は、第1の実施の形態と同様に、回路基板2および半導体素子3から除去されたフラックス7と洗浄液とをろ過によって分離する。このフィルター13により、排液槽12に回収された廃液84から洗浄液が分離される。
【0059】
ポンプ14は、第1の実施の形態と同様に、廃液84および洗浄液を循環させるための機構である。このポンプ14により、排液槽12により回収された廃液84がフィルター13に送られ、フィルター13により分離された洗浄液がノズル8に循環される。
【0060】
循環パイプ15は、第1の実施の形態と同様に、排液槽12からフィルター13、ポンプ14およびノズル8までを連通するためのパイプである。
これらの排液槽12、フィルター13、ポンプ14、および循環パイプ15は、第1の実施の形態と同様に、洗浄に用いられた廃液84を洗浄液として再利用するための機構である。
【0061】
次に、本実施の形態における半導体装置1の洗浄について具体的な説明を行う。第1の実施の形態と同様に、前工程(図4の製造ステップ43)で電極21と半田バンプ31とが接合された後、以上の設備により、まず、回路基板2を水平面に対して垂直に起立させて配置した半導体装置1がベルトコンベア11によってノズル8の下方に移動される。次に、上記のように半導体装置1の回路基板2と半導体素子3との隙間が垂直になるように半導体装置1を立てた状態で、半導体装置1の隙間の上方に設けられたノズル8から噴射された蒸気流82が上記の隙間に吹き付けられる。これにより、回路基板2と半導体素子3との隙間に、ノズル8から噴射された蒸気流82によって洗浄液の蒸気81が供給される。
【0062】
ここで、第1の実施の形態と同様に、回路基板2と半導体素子3との隙間を目掛けてノズル8によって半導体装置1の上側から噴射された蒸気流82は、隙間の上部に浸入する。この半導体装置1の上側から隙間の上部に浸入した蒸気流82は、第1の実施の形態と同様に、フラックス7を膨潤させるとともに、回路基板2、半田バンプ31、半導体素子3などの表面に接触して冷却される。この冷却された蒸気流82は、凝縮により液化して洗浄液となり、重力によって下方に流れていくが、このとき洗浄液は、隙間内に付着しているフラックス7などを洗浄しながら流れていき、隙間の下部から排出されることになる。
【0063】
これにより、最初の工程において電極21および半田バンプ31に供給されたフラックス7およびその他の隙間内に付着している不純物が、洗浄液によって除去される。
ここで、本実施の形態では、半導体装置1の下方に冷却ユニット217を、半導体装置1に接触するように設置して、半導体装置1の下部を冷却する。これにより、半導体装置1の回路基板2および半導体素子3が、下方から冷却される。この結果、半導体装置1の隙間内における蒸気81の液化が促進される。この冷却ユニット217は、本実施の形態では、水を内部に循環させたラジエータを用いて構成する。
【0064】
また、第1の実施の形態と同様に、排出された洗浄液からなる廃液84は、一旦、ノズル8の下方に設けられた排液槽12に溜められる。次に、この廃液84は、ポンプ14の動作によって循環パイプ15を通じてフィルター13に送られ、フィルター13によりろ過されてフラックス7などの不純物と洗浄液とに分離される。その後、洗浄液は、ポンプ14および循環パイプ15によって装置内で循環して再利用される。
【0065】
次に、第1の実施の形態と同様に、乾燥処理部16によって、ノズル8から噴射される蒸気流82による洗浄が完了した半導体装置1が加熱されて洗浄液を蒸発させることにより、半導体装置1の表面および回路基板2と半導体素子3との隙間などに残留している洗浄液が乾燥して除去される。
【0066】
なお、冷却ユニット217は、ラジエータなどを用いた水冷式に限らず、空冷式または他の一般的な冷却方法を用いて構成することができる。また、冷却ユニット217は、回路基板2および半導体素子3のうち、いずれか一方のみを冷却してもよい。また、冷却ユニット217は、半導体装置1に接触させずに、半導体装置1の周囲の温度を低下させることによって、洗浄液の液化を促進してもよい。
【0067】
また、第1の実施の形態と同様に、蒸気流82をノズル8から供給するとき、液化して半導体装置1に付着した洗浄液が回路基板2および半導体素子3の隙間から排出されれば、回路基板2は垂直でなくてもよく、回路基板2を水平面に対して傾斜させて配置してもよい。
【0068】
また、第1の実施の形態と同様に、ノズル8から供給される蒸気流82の圧力を強めて、回路基板2と半導体素子3との隙間を、噴射された蒸気流82の圧力によって洗浄してもよい。
【0069】
また、乾燥処理部16に代えて、遠心力によって洗浄液を飛散させて乾燥するスピン乾燥、または真空中で洗浄液を蒸発させて乾燥する真空乾燥などの、他の乾燥方法を用いて、半導体装置1の表面および回路基板2と半導体素子3との隙間などに残留している洗浄液を乾燥させてもよい。
【0070】
以上のように、第2の実施の形態では、第1の実施の形態の効果に加えて、半導体装置1の下方に、冷却ユニット217を設置して、半導体装置1の下部を冷却する。これにより、半導体装置1の回路基板2および半導体素子3が下方から冷却され、ノズル8から半導体装置1の隙間に供給された蒸気81の液化が促進される。この結果、洗浄液による半導体装置1の隙間の内部の不純物の洗浄効果がさらに高まり、作業効率が向上する。
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態について説明する。上記の第1の実施の形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については同一の符号を用いるとともに説明を省略する。
【0071】
第3の実施の形態は、ノズル8に代えて、一度に複数の半導体装置1に対して蒸気流382を噴出可能なマルチノズル308を用いる点で、第1の実施の形態と異なる。
以下に、本実施の形態における半導体装置1の隙間の洗浄について説明する。図8は、第3の実施の形態における半導体装置が洗浄される工程を説明する図である。
【0072】
まず、本実施の形態の半導体装置1の洗浄に用いる装置について説明する。図8に示すように、本実施の形態では、第1の実施の形態で用いるベルトコンベア11、排液槽12、フィルター13、ポンプ14、循環パイプ15、乾燥処理部16などを用いて半導体装置1の洗浄を行う。また、本実施の形態では、上記のように、第1の実施の形態で用いるノズル8に代えて、マルチノズル308を用いる。
【0073】
本実施の形態では、マルチノズル308は、複数の噴射口(例えば、4個)を備え、一度に複数の半導体装置1に対して、洗浄液(図示省略)の蒸気流382を噴射することができる。ベルトコンベア11は、第1の実施の形態と同様に、半導体装置1を搬送する搬送機構である。
【0074】
排液槽12は、第1の実施の形態と同様に、蒸気流382として噴射された蒸気81(図1)が凝縮することにより生じた洗浄液と、洗浄液によって洗い流されたフラックス7などの不純物との混合液である廃液84を溜めて回収するための液槽である。
【0075】
フィルター13は、第1の実施の形態と同様に、回路基板2および半導体素子3から除去されたフラックス7と洗浄液とをろ過によって分離する。このフィルター13により、排液槽12に回収された廃液84から洗浄液が分離される。
【0076】
ポンプ14は、第1の実施の形態と同様に、廃液84および洗浄液を循環させるための機構である。このポンプ14により、排液槽12により回収された廃液84がフィルター13に送られ、フィルター13により分離された洗浄液がマルチノズル308に循環される。
【0077】
循環パイプ15は、第1の実施の形態と同様に、排液槽12からフィルター13、ポンプ14およびマルチノズル308までを連通するためのパイプである。
これらの排液槽12、フィルター13、ポンプ14、および循環パイプ15は、第1の実施の形態と同様に、洗浄に用いられた廃液84を洗浄液として再利用するための機構である。
【0078】
次に、本実施の形態における半導体装置1の洗浄について具体的な説明を行う。本実施の形態では、前工程(図4の製造ステップ43)で電極21と半田バンプ31とが接合された後、以上の設備により、まず、回路基板2を水平面に対して垂直に起立させた状態で複数個並べられた半導体装置1が、順次、ベルトコンベア11によってマルチノズル308が備える複数の噴射口の下方に移動される。
【0079】
次に、上記のように半導体装置1の回路基板2と半導体素子3との隙間が垂直になるように複数個の半導体装置1が並んで立てられた状態で、上方に設けられているマルチノズル308が備えるそれぞれの噴射口から蒸気流382が噴射される。このマルチノズル308から噴射された蒸気流382が、上記の隙間を目掛けて吹き付けられる。これにより、第1の実施の形態と同様に、複数の半導体装置1の回路基板2と半導体素子3との隙間に、マルチノズル308から噴射された蒸気流382によって洗浄液の蒸気81が供給される。
【0080】
この半導体装置1の上側から隙間の上部に入った蒸気流382は、第1の実施の形態と同様に、フラックス7を膨潤させるとともに、回路基板2、半田バンプ31、半導体素子3などの表面に接触して冷却される。この冷却された蒸気流382は、凝縮により液化して洗浄液となり、重力によって下方に流れていくが、このとき洗浄液は、隙間内に付着しているフラックス7などを洗浄しながら流れていき、隙間の下部から排出されることになる。これにより、最初の工程において電極21および半田バンプ31に供給されたフラックス7およびその他の隙間内に付着している不純物が、洗浄液によって除去される。
【0081】
また、第1の実施の形態と同様に、排出された洗浄液からなる廃液84は、一旦、マルチノズル308の下方に設けられた排液槽12に溜められる。次に、この廃液84は、ポンプ14の動作により循環パイプ15を通じてフィルター13に送られ、フィルター13によりろ過されてフラックス7などの不純物と洗浄液とに分離される。その後、洗浄液は、ポンプ14および循環パイプ15によって装置内で循環して再利用される。
【0082】
次に、第1の実施の形態と同様に、乾燥処理部16によって、マルチノズル308から噴射される蒸気流382による洗浄が完了した半導体装置1が加熱されて洗浄液を蒸発させることにより、半導体装置1の表面および回路基板2と半導体素子3との隙間などに残留している洗浄液が乾燥して除去される。
【0083】
なお、蒸気流382をマルチノズル308から供給するとき、液化して半導体装置1に付着した洗浄液が回路基板2および半導体素子3の隙間から排出されれば、回路基板2は垂直でなくてもよく、回路基板2を水平面に対して傾斜させて配置してもよい。
【0084】
また、マルチノズル308に限らず、例えば半導体装置1の上方に複数の噴射口が設けられた配管を配置して、この噴射口から洗浄液の蒸気流382が噴射されるようにしてもよい。
【0085】
また、マルチノズル308から供給される蒸気流382の圧力を強めて、回路基板2と半導体素子3との隙間を、噴射された蒸気流382の圧力によって洗浄してもよい。
また、乾燥処理部16に代えて、遠心力によって洗浄液を飛散させて乾燥するスピン乾燥、または真空中で洗浄液を蒸発させて乾燥する真空乾燥などの、他の乾燥方法を用いて、半導体装置1の表面および回路基板2と半導体素子3との隙間などに残留している洗浄液を乾燥させてもよい。
【0086】
以上のように、第3の実施の形態では、第1の実施の形態の効果に加えて、半導体装置1の隙間の上方に、マルチノズル308を備える。これにより、一度に複数の半導体装置1に対して洗浄液の蒸気81を噴射することができる。この結果、半導体装置1の回路基板2と半導体素子3との隙間の洗浄に要する時間が短縮され、作業効率が向上する。
[第4の実施の形態]
次に、第4の実施の形態について説明する。上記の第1の実施の形態との相違点および第3の実施の形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については同一の符号を用いるとともに説明を省略する。
【0087】
第4の実施の形態は、第3の実施の形態における、複数の半導体装置1に対してマルチノズル308から蒸気流382が一度に噴射され得る位置において、半導体装置1の下方に冷却ユニット417が設置されている点で、第1の実施の形態および第3の実施の形態と異なる。
【0088】
以下に、本実施の形態における半導体装置1の隙間の洗浄について説明する。図9は、第4の実施の形態における半導体装置が洗浄される工程を説明する図である。
まず、本実施の形態の半導体装置1の洗浄に用いる装置について説明する。図9に示すように、本実施の形態では、第3の実施の形態で用いるベルトコンベア11、排液槽12、フィルター13、ポンプ14、循環パイプ15、乾燥処理部16、マルチノズル308などの他、冷却ユニット417を用いて半導体装置1の洗浄を行う。
【0089】
マルチノズル308は、第3の実施の形態と同様に、複数の噴射口(例えば、4個)を備え、一度に複数の半導体装置1に対して、洗浄液(図示省略)の蒸気流382を噴射することができる。ベルトコンベア11は、第1の実施の形態と同様に、半導体装置1を搬送する搬送機構である。
【0090】
排液槽12は、第1の実施の形態と同様に、蒸気流382として噴射された蒸気81(図1)が凝縮することにより生じた洗浄液と、洗浄液によって洗い流されたフラックス7などの不純物との混合液である廃液84を溜めて回収するための液槽である。
【0091】
フィルター13は、第1の実施の形態と同様に、回路基板2および半導体素子3から除去されたフラックス7と洗浄液とをろ過によって分離する。このフィルター13により、排液槽12に回収された廃液84から洗浄液が分離される。
【0092】
ポンプ14は、第1の実施の形態と同様に、廃液84および洗浄液を循環させるための機構である。このポンプ14により、排液槽12により回収された廃液84がフィルター13に送られ、フィルター13により分離された洗浄液がマルチノズル308に循環される。
【0093】
循環パイプ15は、第1の実施の形態と同様に、排液槽12からフィルター13、ポンプ14およびマルチノズル308までを連通するためのパイプである。
これらの排液槽12、フィルター13、ポンプ14、および循環パイプ15は、第1の実施の形態と同様に、洗浄に用いられた廃液84を洗浄液として再利用するための機構である。
【0094】
次に、本実施の形態における半導体装置1の洗浄について具体的な説明を行う。第3の実施の形態と同様に、前工程(図4の製造ステップ43)で電極21と半田バンプ31とが接合された後、以上の設備により、まず、回路基板2を水平面に対して垂直に起立させた状態で複数個並べられた半導体装置1が、順次、ベルトコンベア11によってマルチノズル308が備える複数の噴射口の下方に移動される。
【0095】
次に、上記のように半導体装置1の回路基板2と半導体素子3との隙間が垂直になるように複数個の半導体装置1が並んで立てられた状態で、上方に設けられているマルチノズル308が備えるそれぞれの噴射口から蒸気流382が噴射される。このマルチノズル308から噴射された蒸気流382が、上記の隙間を目掛けて吹き付けられる。これにより、第1の実施の形態と同様に、複数の半導体装置1の回路基板2と半導体素子3との隙間に、マルチノズル308から噴射された蒸気流382によって洗浄液の蒸気81が供給される。
【0096】
この半導体装置1の上側から隙間の上部に入った蒸気流382は、第1の実施の形態と同様に、フラックス7を膨潤させるとともに、回路基板2、半田バンプ31、半導体素子3などの表面に接触して冷却される。この冷却された蒸気流382は、凝縮により液化して洗浄液となり、重力によって下方に流れていくが、このとき洗浄液は、隙間内に付着しているフラックス7などを洗浄しながら流れていき、隙間の下部から排出されることになる。これにより、最初の工程において電極21および半田バンプ31に供給されたフラックス7およびその他の隙間内に付着している不純物が、洗浄液によって除去される。
【0097】
ここで、本実施の形態では、マルチノズル308が噴射する蒸気流382を半導体装置1に吹き付ける位置の下方に冷却ユニット417を、半導体装置1に接触するように設置する。この冷却ユニット417によって、マルチノズル308から噴射された蒸気流382が吹き付けられている半導体装置1の下部を冷却する。これにより、半導体装置1の回路基板2および半導体素子3が下方から冷却される。この結果、半導体装置1の隙間内における蒸気81の液化が促進される。この冷却ユニット417は、本実施の形態では、水を内部に循環させたラジエータを用いて構成する。
【0098】
また、第3の実施の形態と同様に、排出された洗浄液からなる廃液84は、一旦、マルチノズル308の下方に設けられた排液槽12に溜められる。次に、この廃液84は、ポンプ14の動作により循環パイプ15を通じてフィルター13に送られ、フィルター13によりろ過されてフラックス7などの不純物と洗浄液とに分離される。その後、洗浄液は、ポンプ14および循環パイプ15によって装置内で循環して再利用される。
【0099】
次に、第1の実施の形態と同様に、乾燥処理部16によって、マルチノズル308から噴射される蒸気流382による洗浄が完了した半導体装置1が加熱されて洗浄液を蒸発させることにより、半導体装置1の表面および回路基板2と半導体素子3との隙間などに残留している洗浄液が乾燥して除去される。
【0100】
なお、冷却ユニット417は、ラジエータなどを用いた水冷式に限らず、空冷式または他の一般的な冷却方法を用いて構成することができる。また、冷却ユニット417は、回路基板2および半導体素子3のうち、いずれか一方のみを冷却してもよい。また、冷却ユニット417は、半導体装置1に接触させずに、半導体装置1の周囲の温度を低下させることによって、洗浄液の液化を促進してもよい。
【0101】
また、第3の実施の形態と同様に、蒸気流382をマルチノズル308から供給するとき、液化して半導体装置1に付着した洗浄液が回路基板2および半導体素子3の隙間から排出されれば、回路基板2は垂直でなくてもよく、回路基板2を水平面に対して傾斜させて配置してもよい。
【0102】
また、第3の実施の形態と同様に、マルチノズル308に限らず、例えば半導体装置1の上方に複数の噴射口が設けられた配管を配置して、この噴射口から洗浄液の蒸気流382が噴射されるようにしてもよい。
【0103】
また、第3の実施の形態と同様に、マルチノズル308から供給される蒸気流382の圧力を強めて、回路基板2と半導体素子3との隙間を、噴射された蒸気流382の圧力によって洗浄してもよい。
【0104】
また、乾燥処理部16に代えて、遠心力によって洗浄液を飛散させて乾燥するスピン乾燥、または真空中で洗浄液を蒸発させて乾燥する真空乾燥などの、他の乾燥方法を用いて、半導体装置1の表面および回路基板2と半導体素子3との隙間などに残留している洗浄液を乾燥させてもよい。
【0105】
以上のように、第4の実施の形態では、第1の実施の形態の効果および第3の実施の形態の効果に加えて、マルチノズル308から噴射される洗浄液の蒸気流382が半導体装置1に吹き付けられる位置の下方に冷却ユニット417を設置して、半導体装置1の下部を冷却する。これにより、半導体装置1の回路基板2および半導体素子3が下方から冷却され、マルチノズル308から半導体装置1の隙間に供給された蒸気81の液化が促進される。この結果、洗浄液による半導体装置1の隙間の内部の不純物の洗浄効果がさらに高まり、作業効率が向上する。
[第5の実施の形態]
次に、第5の実施の形態について説明する。上記の第1の実施の形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については同一の符号を用いるとともに説明を省略する。
【0106】
第5の実施の形態は、ノズル8に代えて、一度に複数の半導体装置1に対して蒸気流582を噴出可能な蒸気噴射ユニット508を用いる点、および複数の半導体装置1に対してベルトコンベア11を用いずに洗浄槽518で一括して洗浄処理を行う点で、第1の実施の形態と異なる。
【0107】
以下に、本実施の形態における半導体装置1の隙間の洗浄について説明する。図10は、第5の実施の形態における半導体装置が洗浄される工程を説明する図である。
まず、本実施の形態の半導体装置1の洗浄に用いる装置について説明する。図10に示すように、本実施の形態では、第1の実施の形態で用いる排液槽12、フィルター13、ポンプ14、循環パイプ15などを用いて半導体装置1の洗浄を行う。また、本実施の形態では、上記のように、第1の実施の形態で用いるノズル8に代えて、蒸気噴射ユニット508を用い、ベルトコンベア11を用いずに大口径の洗浄槽518を用いる。また、半導体装置1を洗浄槽518に設置するために治具519を用いる。
【0108】
本実施の形態では、蒸気噴射ユニット508は、洗浄槽518に覆い被さるように設置されている。蒸気噴射ユニット508は、複数の噴射口(例えば、12個)を備え、一度に複数の半導体装置1に対して、洗浄液(図示省略)の蒸気流582を噴射することができる。
【0109】
洗浄槽518は、半導体装置1を内部に収容して蒸気流582により洗浄するための内部を密閉可能な槽である。治具519は、複数の半導体装置1を洗浄槽518に設置するための器具である。治具519は、半導体装置1を支持するとともに、位置決めなどを正確に行うために案内する。半導体装置1を洗浄槽518に設置するときには、設置するすべての半導体装置1を一旦治具519に取り付ける。次に、半導体装置1を治具519ごと洗浄槽518に配置する。半導体装置1を洗浄槽518から取り出すときには、治具519ごと取り出す。この治具519を用いることによって、一度に複数の半導体装置1を配置しおよび取り出すことができる。
【0110】
排液槽12は、第1の実施の形態と同様に、蒸気流582として噴射された蒸気81(図1)が凝縮することにより生じた洗浄液と、洗浄液によって洗い流されたフラックス7などの不純物との混合液である廃液84を溜めて回収するための液槽である。
【0111】
フィルター13は、第1の実施の形態と同様に、回路基板2および半導体素子3から除去されたフラックス7と洗浄液とをろ過によって分離する。このフィルター13により、排液槽12に回収された廃液84から洗浄液が分離される。
【0112】
ポンプ14は、第1の実施の形態と同様に、廃液84および洗浄液を循環させるための機構である。このポンプ14により、排液槽12により回収された廃液84がフィルター13に送られ、フィルター13により分離された洗浄液が蒸気噴射ユニット508に循環される。
【0113】
循環パイプ15は、第1の実施の形態と同様に、排液槽12からフィルター13、ポンプ14および蒸気噴射ユニット508までを連通するためのパイプである。
これらの排液槽12、フィルター13、ポンプ14、および循環パイプ15は、第1の実施の形態と同様に、洗浄に用いられた廃液84を洗浄液として再利用するための機構である。
【0114】
次に、本実施の形態における半導体装置1の洗浄について具体的な説明を行う。本実施の形態では、前工程(図4の製造ステップ43)で電極21と半田バンプ31とが接合された後、以上の設備により、まず、回路基板2を水平面に対して垂直に起立させた状態で複数個(例えば、12個)の半導体装置1が、半導体装置1の回路基板2と半導体素子3との隙間が垂直になるように治具519に立てられた状態で並べて取り付けられる。そしてこれらの半導体装置1は、治具519ごと洗浄槽518に配置される。次に、洗浄槽518を覆うように上方に設けられている蒸気噴射ユニット508が備えるそれぞれの噴射口から蒸気流582が噴射される。この蒸気噴射ユニット508から噴射された蒸気流582が、上記の隙間に吹き付けられる。
【0115】
また、本実施の形態では、洗浄槽518の内部が、蒸気噴射ユニット508から噴射された蒸気流582により、洗浄液の蒸気81で充満する。ここでさらに蒸気流582の噴射を続けることにより、洗浄槽518の内部の空気が、洗浄液の蒸気81で飽和状態になる。
【0116】
これらにより、第1の実施の形態と同様に、複数の半導体装置1の回路基板2と半導体素子3との隙間に、蒸気噴射ユニット508から噴射された蒸気流582によって洗浄液の蒸気81が供給される。
【0117】
この半導体装置1の上側から隙間の上部に入った蒸気流582は、第1の実施の形態と同様に、フラックス7を膨潤させるとともに、回路基板2、半田バンプ31、半導体素子3などの表面に接触して冷却される。この冷却された蒸気流582は、凝縮により液化して洗浄液となり、重力によって下方に流れていくが、このとき洗浄液は、隙間内に付着しているフラックス7などを洗浄しながら流れていき、隙間の下部から排出されることになる。これにより、最初の工程において電極21および半田バンプ31に供給されたフラックス7およびその他の隙間内に付着している不純物が、洗浄液によって除去される。
【0118】
また、第1の実施の形態と同様に、排出された洗浄液からなる廃液84は、一旦、洗浄槽518の下方に設けられた排液槽12に溜められる。次に、この廃液84は、ポンプ14の動作により循環パイプ15を通じてフィルター13に送られ、フィルター13によりろ過されてフラックス7などの不純物と洗浄液とに分離される。その後、洗浄液は、ポンプ14および循環パイプ15によって装置内で循環して再利用される。
【0119】
なお、蒸気噴射ユニット508から噴射される蒸気流582による洗浄が完了した半導体装置1を、洗浄槽518を用いて、または、例えば第1の実施の形態の乾燥処理部16のような、他の設備を用いて加熱し、洗浄液を蒸発させることにより、半導体装置1の表面および回路基板2と半導体素子3との隙間などに残留している洗浄液を乾燥して除去してもよい。さらに、遠心力によって洗浄液を飛散させて乾燥するスピン乾燥、または真空中で洗浄液を蒸発させて乾燥する真空乾燥などの、他の乾燥方法を用いて、半導体装置1の表面および回路基板2と半導体素子3との隙間などに残留している洗浄液を乾燥させてもよい。
【0120】
また、蒸気流582を蒸気噴射ユニット508から供給するとき、液化して半導体装置1に付着した洗浄液が回路基板2および半導体素子3の隙間から排出されれば、回路基板2は垂直でなくてもよく、回路基板2を水平面に対して傾斜させて配置してもよい。
【0121】
また、蒸気噴射ユニット508から供給される蒸気流582の圧力を強めて、回路基板2と半導体素子3との隙間を、噴射された蒸気流582の圧力によって洗浄してもよい。
以上のように、第5の実施の形態では、第1の実施の形態の効果に加えて、複数の半導体装置1を治具519に取り付け、これを洗浄槽518に配置する。この治具519に取り付けられた複数の半導体装置1に向けて、洗浄槽518の上方に設けられた蒸気噴射ユニット508から蒸気流582を噴射する。これにより、一度に複数の半導体装置1に対して洗浄液の蒸気81を噴射することができる。この結果、半導体装置1の回路基板2と半導体素子3との隙間の洗浄に要する時間が短縮され、作業効率が向上する。
[第6の実施の形態]
次に、第6の実施の形態について説明する。上記の第1の実施の形態との相違点および第5の実施の形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については同一の符号を用いるとともに説明を省略する。
【0122】
第6の実施の形態は、第5の実施の形態における、治具519に取り付けられた複数の半導体装置1に対して蒸気噴射ユニット508から蒸気流582が噴射され得る位置において、半導体装置1の下方に冷却ユニット617が設置されている点で、第1の実施の形態および第5の実施の形態と異なる。
【0123】
以下に、本実施の形態における半導体装置1の隙間の洗浄について説明する。図11は、第6の実施の形態における半導体装置が洗浄される工程を説明する図である。
まず、本実施の形態の半導体装置1の洗浄に用いる装置について説明する。図11に示すように、本実施の形態では、第5の実施の形態で用いる排液槽12、フィルター13、ポンプ14、循環パイプ15、蒸気噴射ユニット508、洗浄槽518、治具519などの他、冷却ユニット617を用いて半導体装置1の洗浄を行う。
【0124】
蒸気噴射ユニット508は、第5の実施の形態と同様に、洗浄槽518に覆い被さるように設置されている。蒸気噴射ユニット508は、複数の噴射口(例えば、12個)を備え、一度に複数の半導体装置1に対して、洗浄液(図示省略)の蒸気流582を噴射することができる。
【0125】
洗浄槽518は、第5の実施の形態と同様に、半導体装置1を内部に収容して蒸気流582により洗浄するための内部を密閉可能な槽である。治具519は、第5の実施の形態と同様に、複数の半導体装置1を洗浄槽518に設置するための器具である。治具519は、半導体装置1を支持するとともに、位置決めなどを正確に行うために案内する。半導体装置1を洗浄槽518に設置するときには、設置するすべての半導体装置1を一旦治具519に取り付ける。次に、半導体装置1を治具519ごと洗浄槽518に配置する。半導体装置1を洗浄槽518から取り出すときには、治具519ごと取り出す。この治具519を用いることによって、一度に複数の半導体装置1を配置しおよび取り出すことができる。
【0126】
排液槽12は、第1の実施の形態と同様に、蒸気流582として噴射された蒸気81(図1)が凝縮することにより生じた洗浄液と、洗浄液によって洗い流されたフラックス7などの不純物との混合液である廃液84を溜めて回収するための液槽である。
【0127】
フィルター13は、第1の実施の形態と同様に、回路基板2および半導体素子3から除去されたフラックス7と洗浄液とをろ過によって分離する。このフィルター13により、排液槽12に回収された廃液84から洗浄液が分離される。
【0128】
ポンプ14は、第1の実施の形態と同様に、廃液84および洗浄液を循環させるための機構である。このポンプ14により、排液槽12により回収された廃液84がフィルター13に送られ、フィルター13により分離された洗浄液が蒸気噴射ユニット508に循環される。
【0129】
循環パイプ15は、第1の実施の形態と同様に、排液槽12からフィルター13、ポンプ14および蒸気噴射ユニット508までを連通するためのパイプである。
これらの排液槽12、フィルター13、ポンプ14、および循環パイプ15は、第1の実施の形態と同様に、洗浄に用いられた廃液84を洗浄液として再利用するための機構である。
【0130】
次に、本実施の形態における半導体装置1の洗浄について具体的な説明を行う。第5の実施の形態と同様に、前工程(図4の製造ステップ43)で電極21と半田バンプ31とが接合された後、以上の設備により、まず、回路基板2を水平面に対して垂直に起立させた状態で複数個(例えば、12個)の半導体装置1が、半導体装置1の回路基板2と半導体素子3との隙間が垂直になるように治具519に立てられた状態で並べて取り付けられる。
【0131】
そしてこれらの半導体装置1は、治具519ごと洗浄槽518に配置される。次に、洗浄槽518を覆うように上方に設けられている蒸気噴射ユニット508が備えるそれぞれの噴射口から蒸気流582が噴射される。この蒸気噴射ユニット508から噴射された蒸気流582が、上記の隙間に吹き付けられる。
【0132】
また、第5の実施の形態と同様に、洗浄槽518の内部が、蒸気噴射ユニット508から噴射された蒸気流582により、洗浄液の蒸気81で充満する。ここでさらに蒸気流582の噴射を続けることにより、洗浄槽518の内部の空気が、洗浄液の蒸気81で飽和状態になる。
【0133】
これらにより、第5の実施の形態と同様に、複数の半導体装置1の回路基板2と半導体素子3との隙間に、蒸気噴射ユニット508から噴射された蒸気流582によって洗浄液の蒸気81が供給される。
【0134】
この半導体装置1の上側から隙間の上部に入った蒸気流582は、第1の実施の形態と同様に、フラックス7を膨潤させるとともに、回路基板2、半田バンプ31、半導体素子3などの表面に接触して冷却される。この冷却された蒸気流582は、凝縮により液化して洗浄液となり、重力によって下方に流れていくが、このとき洗浄液は、隙間内に付着しているフラックス7などを洗浄しながら流れていき、隙間の下部から排出されることになる。これにより、最初の工程において電極21および半田バンプ31に供給されたフラックス7およびその他の隙間内に付着している不純物が、洗浄液によって除去される。
【0135】
ここで、本実施の形態では、洗浄槽518内において治具519に取り付けられた複数の半導体装置1の下方に冷却ユニット617を、半導体装置1に接触させずに、冷却ユニット617と半導体装置1との距離が、半導体装置1の冷却に十分な近さの範囲内に設置する。この冷却ユニット617が半導体装置1の周囲の温度を低下させることによって、半導体装置1の回路基板2および半導体素子3が下方から冷却される。この結果、半導体装置1の隙間内における蒸気81の液化が促進される。この冷却ユニット617は、本実施の形態では、水を内部に循環させたラジエータを用いて構成する。
【0136】
また、第1の実施の形態と同様に、排出された洗浄液からなる廃液84は、一旦、洗浄槽518の下方に設けられた排液槽12に溜められる。次に、この廃液84は、ポンプ14の動作により循環パイプ15を通じてフィルター13に送られ、フィルター13によりろ過されてフラックス7などの不純物と洗浄液とに分離される。その後、洗浄液は、ポンプ14および循環パイプ15によって装置内で循環して再利用される。
【0137】
なお、冷却ユニット617は、ラジエータなどを用いた水冷式に限らず、空冷式または他の一般的な冷却方法を用いて構成することができる。また、冷却ユニット617は、回路基板2および半導体素子3のうち、いずれか一方のみを冷却してもよい。
【0138】
また、第5の実施の形態と同様に、蒸気噴射ユニット508から噴射される蒸気流582による洗浄が完了した半導体装置1を、洗浄槽518を用いて、または、例えば第1の実施の形態の乾燥処理部16のような、他の設備を用いて加熱し、洗浄液を蒸発させることにより、半導体装置1の表面および回路基板2と半導体素子3との隙間などに残留している洗浄液を乾燥して除去してもよい。さらに、遠心力によって洗浄液を飛散させて乾燥するスピン乾燥、または真空中で洗浄液を蒸発させて乾燥する真空乾燥などの、他の乾燥方法を用いて、半導体装置1の表面および回路基板2と半導体素子3との隙間などに残留している洗浄液を乾燥させてもよい。
【0139】
また、第5の実施の形態と同様に、蒸気流582を蒸気噴射ユニット508から供給するとき、液化して半導体装置1に付着した洗浄液が回路基板2および半導体素子3の隙間から排出されれば、回路基板2は垂直でなくてもよく、回路基板2を水平面に対して傾斜させて配置してもよい。
【0140】
また、第5の実施の形態と同様に、蒸気噴射ユニット508から供給される蒸気流582の圧力を強めて、回路基板2と半導体素子3との隙間を、噴射された蒸気流582の圧力によって洗浄してもよい。
【0141】
以上のように、第6の実施の形態では、第1の実施の形態の効果および第5の実施の形態の効果に加えて、治具519に取り付けられた複数の半導体装置1の下方に冷却ユニット617を設置して、半導体装置1の下部を冷却する。これにより、半導体装置1の回路基板2および半導体素子3が下方から冷却され、蒸気噴射ユニット508から半導体装置1の隙間に供給された蒸気81の液化が促進される。この結果、洗浄液による半導体装置1の隙間の内部の不純物の洗浄効果がさらに高まり、作業効率が向上する。
[第7の実施の形態]
次に、第7の実施の形態について説明する。上記の第1の実施の形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については同一の符号を用いるとともに説明を省略する。
【0142】
第7の実施の形態は、複数の半導体装置1に対してベルトコンベア11を用いずに洗浄槽718で一括して洗浄処理を行う点、およびノズル8によって蒸気流82を噴出させるのではなく、洗浄槽718の下部に溜められている洗浄液783をヒーター720で加熱して飽和蒸気785とする点で、第1の実施の形態と異なる。
【0143】
以下に、本実施の形態における半導体装置1の隙間の洗浄について説明する。図12は、第7の実施の形態における半導体装置が洗浄される工程を説明する図である。
まず、本実施の形態の半導体装置1の洗浄に用いる装置について説明する。図12に示すように、本実施の形態では、第1の実施の形態で用いるフィルター13、ポンプ14などを用いて半導体装置1の洗浄を行うが、本実施の形態では、上記のように、第1の実施の形態で用いるベルトコンベア11を用いずに大口径の洗浄槽718を用いる。また、半導体装置1を洗浄槽718に設置するために治具719を用いる。
【0144】
また、本実施の形態の循環パイプ715は、第1の実施の形態の循環パイプ15と異なり、洗浄槽718から回収した洗浄液783をフィルター13でろ過した後は、ポンプ14によって洗浄槽718に供給する。
【0145】
本実施の形態の洗浄槽718は、半導体装置1を内部に収容して飽和蒸気785により洗浄するための内部を密閉可能な槽である。洗浄槽718は、下部に洗浄液783を溜めることができる。
【0146】
本実施の形態では、ヒーター720が、洗浄槽718の下部において溜められた洗浄液783に浸るように設けられている。ヒーター720は、洗浄槽718の下部に溜められている洗浄液783を加熱して蒸発させ、飽和蒸気785を発生させることができる。
【0147】
治具719は、複数の半導体装置1を洗浄槽718に設置するための器具である。治具719は、半導体装置1を支持するとともに、位置決めなどを正確に行うために案内する。半導体装置1を洗浄槽718に設置するときには、設置するすべての半導体装置1を一旦治具719に取り付ける。次に、半導体装置1を治具719ごと洗浄槽718に配置する。半導体装置1を洗浄槽718から取り出すときには、治具719ごと取り出す。この治具719を用いることによって、一度に複数の半導体装置1を配置しおよび取り出すことができる。
【0148】
フィルター13は、回路基板2および半導体素子3から除去されたフラックス7と洗浄液783とをろ過によって分離する。このフィルター13により、洗浄槽718の下部に回収された洗浄液783からフラックス7が除去される。ポンプ14は、洗浄液783を循環させるための機構である。このポンプ14により、フィルター13によりフラックス7が除去された洗浄液783が再び洗浄槽718に循環される。循環パイプ715は、洗浄槽718からフィルター13およびポンプ14を介して、再び洗浄槽718まで連通するためのパイプである。これらのフィルター13、ポンプ14、および循環パイプ715は、洗浄に用いられた洗浄液783からフラックス7を除去することにより、洗浄液783を浄化するための機構である。
【0149】
次に、本実施の形態における半導体装置1の洗浄について具体的な説明を行う。本実施の形態では、前工程(図4の製造ステップ43)で電極21と半田バンプ31とが接合された後、以上の設備により、まず、回路基板2を水平面に対して垂直に起立させた状態で複数個(例えば、10個)の半導体装置1が、治具719に取り付けられる。このとき、半導体装置1は、回路基板2と半導体素子3との隙間が垂直になるように立てられた状態で並べて治具719に取り付けられる。そしてこれらの半導体装置1は、治具719ごと洗浄槽718に配置される。
【0150】
次に、本実施の形態では、洗浄槽718の下部に設けられているヒーター720を加熱して洗浄槽718の下部に溜められている洗浄液783を蒸発させることにより、洗浄液783の飽和蒸気785が発生する。ここでさらにヒーター720によって洗浄液783を加熱し続けることにより、洗浄槽718の内部の空気が、洗浄液の飽和蒸気785で満たされることになる。また、ヒーター720によって加熱されている飽和蒸気785は、洗浄槽718の内部を上昇する。この飽和蒸気785が半導体装置1の付近まで上昇し、半導体装置1の回路基板2と半導体素子3との隙間に蒸気81(図1)として、隙間の下側を中心にすべての方向から隙間に供給される。
【0151】
本実施の形態では、この半導体装置1の隙間にすべての方向から入った飽和蒸気785は、フラックス7を膨潤させるとともに、回路基板2、半田バンプ31、半導体素子3などの表面に接触して冷却される。この冷却された飽和蒸気785は、凝縮により液化して洗浄液783となり、重力によって下方に流れていくが、このとき洗浄液783は、隙間内に付着しているフラックス7などを洗浄しながら流れていき、隙間の下部から排出されることになる。これにより、最初の工程において電極21および半田バンプ31に供給されたフラックス7およびその他の隙間内に付着している不純物が、洗浄液783によって除去される。
【0152】
洗浄槽718の下部には、飽和蒸気785が凝縮することにより生じた洗浄液と、この洗浄液によって洗い流されたフラックス7などの不純物との混合状態の洗浄液783が溜められる。この混合状態の洗浄液783の一部は、ポンプ14の動作によって循環パイプ715を通じてフィルター13に送られ、フィルター13によりろ過されてフラックス7などの不純物が除去される。その後、洗浄液783は、ポンプ14および循環パイプ715によって洗浄槽718に送られ、装置内で循環して再利用される。
【0153】
なお、洗浄槽718内の飽和蒸気785による洗浄が完了した半導体装置1を、洗浄槽718を用いて、または、例えば第1の実施の形態の乾燥処理部16のような、他の設備を用いて加熱し、洗浄液を蒸発させることにより、半導体装置1の表面および回路基板2と半導体素子3との隙間などに残留している洗浄液を乾燥して除去してもよい。さらに、遠心力によって洗浄液を飛散させて乾燥するスピン乾燥、または真空中で洗浄液を蒸発させて乾燥する真空乾燥などの、他の乾燥方法を用いて、半導体装置1の表面および回路基板2と半導体素子3との隙間などに残留している洗浄液を乾燥させてもよい。
【0154】
また、洗浄槽718において飽和蒸気785を供給するとき、液化して半導体装置1に付着した洗浄液783が回路基板2および半導体素子3の隙間から排出されれば、回路基板2は垂直でなくてもよく、回路基板2を水平面に対して傾斜させて配置してもよい。
【0155】
以上のように、第7の実施の形態では、第1の実施の形態の効果に加えて、複数の半導体装置1を治具719に取り付け、これを洗浄槽718に配置する。この治具719に取り付けられた複数の半導体装置1を洗浄槽718に収容する。この洗浄槽718の下部に溜まっている洗浄液783をヒーター720で加熱することにより、洗浄液783の飽和蒸気785を洗浄槽718に充満させる。これにより、大量の半導体装置1を洗浄する場合にも、一度の処理で大量の半導体装置1に洗浄液の蒸気81を供給することができる。この結果、大量の半導体装置1の回路基板2と半導体素子3との隙間の洗浄に要する時間が短縮され、作業効率が向上する。
[第8の実施の形態]
次に、第8の実施の形態について説明する。上記の第1の実施の形態との相違点および第7の実施の形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については同一の符号を用いるとともに説明を省略する。
【0156】
第8の実施の形態は、第7の実施の形態における、治具719に取り付けられた複数の半導体装置1を収容する洗浄槽718の上方に冷却ユニット817が設置されている点で、第1の実施の形態および第7の実施の形態と異なる。
【0157】
以下に、本実施の形態における半導体装置1の隙間の洗浄について説明する。図13は、第8の実施の形態における半導体装置が洗浄される工程を説明する図である。
まず、本実施の形態の半導体装置1の洗浄に用いる装置について説明する。図13に示すように、本実施の形態では、第7の実施の形態で用いるフィルター13、ポンプ14、循環パイプ715、洗浄槽718、治具719などの他、冷却ユニット817を用いて半導体装置1の洗浄を行う。
【0158】
洗浄槽718は、第7の実施の形態と同様に、半導体装置1を内部に収容して飽和蒸気785により洗浄するための内部を密閉可能な槽である。洗浄槽718は、下部に洗浄液783を溜めることができる。
【0159】
ヒーター720は、第7の実施の形態と同様に、洗浄槽718の下部において溜められた洗浄液783に浸るように設けられている。ヒーター720は、洗浄槽718の下部に溜められている洗浄液783を加熱して蒸発させ、飽和蒸気785を発生させることができる。
【0160】
治具719は、第7の実施の形態と同様に、複数の半導体装置1を洗浄槽718に設置するための器具である。治具719は、半導体装置1を支持するとともに、位置決めなどを正確に行うために案内する。半導体装置1を洗浄槽718に設置するときには、設置するすべての半導体装置1を一旦治具719に取り付ける。次に、半導体装置1を治具719ごと洗浄槽718に配置する。半導体装置1を洗浄槽718から取り出すときには、治具719ごと取り出す。この治具719を用いることによって、一度に複数の半導体装置1を配置しおよび取り出すことができる。
【0161】
フィルター13は、第7の実施の形態と同様に、回路基板2および半導体素子3から除去されたフラックス7と洗浄液783とをろ過によって分離する。このフィルター13により、洗浄槽718の下部に回収された洗浄液783からフラックス7が除去される。
【0162】
ポンプ14は、第7の実施の形態と同様に、洗浄液783を循環させるための機構である。このポンプ14により、フィルター13によりフラックス7が除去された洗浄液783が再び洗浄槽718に循環される。
【0163】
循環パイプ715は、第7の実施の形態と同様に、洗浄槽718からフィルター13およびポンプ14を介して、再び洗浄槽718まで連通するためのパイプである。
これらのフィルター13、ポンプ14、および循環パイプ715は、第7の実施の形態と同様に、洗浄に用いられた洗浄液783からフラックス7を除去することにより、洗浄液783を浄化するための機構である。
【0164】
次に、本実施の形態における半導体装置1の洗浄について具体的な説明を行う。第7の実施の形態と同様に、前工程(図4の製造ステップ43)で電極21と半田バンプ31とが接合された後、以上の設備により、まず、回路基板2を水平面に対して垂直に起立させた状態で複数個(例えば、10個)の半導体装置1が、治具719に取り付けられる。このとき、半導体装置1は、回路基板2と半導体素子3との隙間が垂直になるように立てられた状態で並べて治具719に取り付けられる。そしてこれらの半導体装置1は、治具719ごと洗浄槽718に配置される。
【0165】
次に、第7の実施の形態と同様に、洗浄槽718の下部に設けられているヒーター720を加熱して洗浄槽718の下部に溜められている洗浄液783を蒸発させることにより、洗浄液783の飽和蒸気785が発生する。ここでさらにヒーター720によって洗浄液783を加熱し続けることにより、洗浄槽718の内部の空気が、洗浄液の飽和蒸気785で満たされることになる。また、ヒーター720によって加熱されている飽和蒸気785は、洗浄槽718の内部を上昇する。この飽和蒸気785が半導体装置1の付近まで上昇し、半導体装置1の回路基板2と半導体素子3との隙間に蒸気81(図1)として、隙間の下側を中心にすべての方向から隙間に供給される。
【0166】
この半導体装置1の隙間にすべての方向から入った飽和蒸気785は、第7の実施の形態と同様に、フラックス7を膨潤させるとともに、回路基板2、半田バンプ31、半導体素子3などの表面に接触して冷却される。この冷却された飽和蒸気785は、凝縮により液化して洗浄液783となり、重力によって下方に流れていくが、このとき洗浄液783は、隙間内に付着しているフラックス7などを洗浄しながら流れていき、隙間の下部から排出されることになる。これにより、最初の工程において電極21および半田バンプ31に供給されたフラックス7およびその他の隙間内に付着している不純物が、洗浄液783によって除去される。
【0167】
ここで、本実施の形態では、洗浄槽718内において治具719に取り付けられた複数の半導体装置1の上方に冷却ユニット817を、半導体装置1に接触させずに、冷却ユニット817と半導体装置1との距離が、半導体装置1の冷却に十分な近さの範囲内に設置する。この冷却ユニット817が半導体装置1の周囲の温度を低下させることによって、半導体装置1の回路基板2および半導体素子3の周囲の空気の温度が低下する。この結果、半導体装置1の隙間内における蒸気81の液化が促進される。この冷却ユニット817は、本実施の形態では、水を内部に循環させたラジエータを用いて構成する。
【0168】
洗浄槽718の下部には、第7の実施の形態と同様に、飽和蒸気785が凝縮することにより生じた洗浄液と、この洗浄液によって洗い流されたフラックス7などの不純物との混合状態の洗浄液783が溜められる。この混合状態の洗浄液783の一部は、ポンプ14の動作によって循環パイプ715を通じてフィルター13に送られ、フィルター13によりろ過されてフラックス7などの不純物が除去される。その後、洗浄液783は、ポンプ14および循環パイプ715によって洗浄槽718に送られ、装置内で循環して再利用される。
【0169】
なお、冷却ユニット817は、ラジエータなどを用いた水冷式に限らず、空冷式または他の一般的な冷却方法を用いて構成することができる。また、冷却ユニット817は、回路基板2および半導体素子3のうち、いずれか一方のみを冷却してもよい。また、冷却ユニット817は、半導体装置1に接触させずに、半導体装置1の周囲の温度を低下させることによって、洗浄液の液化を促進してもよい。
【0170】
また、第7の実施の形態と同様に、洗浄槽718内の飽和蒸気785による洗浄が完了した半導体装置1を、洗浄槽718を用いて、または、例えば第1の実施の形態の乾燥処理部16のような、他の設備を用いて加熱し、洗浄液を蒸発させることにより、半導体装置1の表面および回路基板2と半導体素子3との隙間などに残留している洗浄液を乾燥して除去してもよい。さらに、遠心力によって洗浄液を飛散させて乾燥するスピン乾燥、または真空中で洗浄液を蒸発させて乾燥する真空乾燥などの、他の乾燥方法を用いて、半導体装置1の表面および回路基板2と半導体素子3との隙間などに残留している洗浄液を乾燥させてもよい。
【0171】
また、第7の実施の形態と同様に、洗浄槽718において飽和蒸気785を供給するとき、液化して半導体装置1に付着した洗浄液783が回路基板2および半導体素子3の隙間から排出されれば、回路基板2は垂直でなくてもよく、回路基板2を水平面に対して傾斜させて配置してもよい。
【0172】
以上のように、第8の実施の形態では、第1の実施の形態の効果および第7の実施の形態の効果に加えて、治具719に取り付けられた複数の半導体装置1の上方に冷却ユニット817を設置して、半導体装置1を上方から冷却する。これにより、半導体装置1の回路基板2および半導体素子3の周囲の気温が低下し、洗浄槽718において半導体装置1の隙間に供給された蒸気81の液化が促進される。この結果、洗浄液による半導体装置1の隙間の内部の不純物の洗浄効果がさらに高まり、作業効率が向上する。
[第9の実施の形態]
次に、第9の実施の形態について説明する。上記の第1の実施の形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については同一の符号を用いるとともに説明を省略する。
【0173】
第9の実施の形態は、複数の半導体装置1に対してベルトコンベア11を用いずに洗浄槽918で一括して洗浄処理を行う点、およびノズル8によって蒸気流82を噴出させるのではなく、まず、洗浄槽918に飽和蒸気985を充満させて半導体装置1の隙間内に供給して洗浄液を浸入させてから、洗浄液流986によって洗浄する点で、第1の実施の形態と異なる。
【0174】
以下に、本実施の形態における半導体装置1の隙間の洗浄について説明する。図14は、第9の実施の形態における半導体装置が洗浄される工程を説明する図である。また、図14(A)は、半導体装置を収容する洗浄槽が飽和蒸気で満たされた様子を示す図である。図14(B)は、半導体装置を収容する洗浄槽に洗浄液流を流した様子を示す図である。
【0175】
まず、本実施の形態の半導体装置1の洗浄に用いる装置について説明する。図14に示すように、本実施の形態では、上記のように、洗浄槽918およびトレイ921を用いる。
【0176】
本実施の形態の洗浄槽918は、半導体装置1を内部に収容して飽和蒸気985および洗浄液流986により洗浄するための内部を密閉可能な槽である。洗浄槽918は、上部に蓋部922を備え、下部に弁923を備えている。
【0177】
洗浄槽918は、図14(A)に示す飽和蒸気985の供給時には、蓋部922および弁923を開くことにより、洗浄槽918は、洗浄液を蒸発させて得られた飽和蒸気985の供給を受けたり、排出したりすることができる。また、蓋部922および弁923を閉じることにより、内部に飽和蒸気985を充満させることができる。
【0178】
また、洗浄槽918は、図14(B)に示す洗浄液流986による洗浄時には、蓋部922および弁923を開くことにより、洗浄槽918は、洗浄液流986を上部の蓋部922から流入させて、下部の弁923から流出させることができる。
【0179】
トレイ921は、複数の半導体装置1を洗浄槽918に設置するための器具である。トレイ921は、半導体装置1を支持するとともに、位置決めなどを正確に行うために案内する。半導体装置1を洗浄槽918に設置するときには、設置するすべての半導体装置1を一旦トレイ921に固定して並べる。次に、半導体装置1をトレイ921ごと洗浄槽918に配置する。半導体装置1を洗浄槽918から取り出すときには、トレイ921ごと取り出す。このトレイ921を用いることによって、一度に複数の半導体装置1を配置しおよび取り出すことができる。
【0180】
次に、本実施の形態における半導体装置1の洗浄について具体的な説明を行う。本実施の形態では、前工程(図4の製造ステップ43)で電極21と半田バンプ31とが接合された後、以上の設備により、図14(A)に示すように、まず、複数個(例えば、18個)の半導体装置1がトレイ921に並べられた状態で取り付けられる。そしてこれらの半導体装置1は、トレイ921ごと洗浄槽918に配置される。
【0181】
次に、本実施の形態では、洗浄槽918の蓋部922および弁923から洗浄液の飽和蒸気985を供給する。その後、洗浄槽918の内部が飽和蒸気985で充満したら、蓋部922および弁923を閉じる。この供給された飽和蒸気985が半導体装置1の付近まで入り込み、半導体装置1の回路基板2と半導体素子3との隙間に蒸気81(図1)として供給される。
【0182】
本実施の形態では、この半導体装置1の隙間に入り込んだ飽和蒸気985は、フラックス7を膨潤させるとともに、回路基板2、半田バンプ31、半導体素子3などの表面に接触して冷却される。この冷却された飽和蒸気985は、凝縮により液化して洗浄液となり、半導体装置1の隙間内に十分に浸入する。
【0183】
次に、本実施の形態では、洗浄槽918の蓋部922および弁923を開き、図14(B)に示すように、蓋部922から洗浄液流986を流入させる。流入した洗浄液流986は、トレイ921の周囲を流れた後、弁923から流出する。このとき、予め半導体装置1をトレイ921に取り付けるときに、半導体装置1の隙間が洗浄液流986の流れる方向と平行になり、洗浄液流986が隙間に流入し易いように配置する。これにより、洗浄液流986は、半導体装置1の回路基板2と半導体素子3との隙間に流れ込む。
【0184】
このとき洗浄液流986は、隙間内に付着しているフラックス7などを洗浄しながら流れていき、隙間の下部から排出されることになる。これにより、最初の工程において電極21および半田バンプ31に供給されたフラックス7およびその他の隙間内に付着している不純物が、洗浄液によって除去される。
【0185】
ここで、この隙間には予め飽和蒸気985を供給したときに洗浄液が浸入している。このため、この隙間に洗浄液流が浸入し易い。この結果、隙間の内部の洗浄効果がさらに高まる。
【0186】
このとき、洗浄槽918の下部には、飽和蒸気985が凝縮することにより生じた洗浄液と、この洗浄液によって洗い流されたフラックス7などの不純物との混合状態の洗浄液が流れることになる。この混合状態の洗浄液は、洗浄槽918の下部の弁923から排出される。
【0187】
なお、洗浄液流986による洗浄が完了した半導体装置1を、洗浄槽918を用いて、または、例えば第1の実施の形態の乾燥処理部16のような、他の設備を用いて加熱し、洗浄液を蒸発させることにより、半導体装置1の表面および回路基板2と半導体素子3との隙間などに残留している洗浄液を乾燥して除去してもよい。さらに、遠心力によって洗浄液を飛散させて乾燥するスピン乾燥、または真空中で洗浄液を蒸発させて乾燥する真空乾燥などの、他の乾燥方法を用いて、半導体装置1の表面および回路基板2と半導体素子3との隙間などに残留している洗浄液を乾燥させてもよい。
【0188】
また、洗浄槽918において飽和蒸気985を供給するとき、液化して半導体装置1に付着した洗浄液が回路基板2および半導体素子3の隙間から排出されれば、回路基板2は垂直でなくてもよく、回路基板2を水平面に対して傾斜させて配置してもよい。
【0189】
また、洗浄槽918から排出された飽和蒸気985および洗浄液流986を回収して、フィルターでろ過し、飽和蒸気985および洗浄液流986の少なくともいずれか一方に再利用してもよい。
【0190】
また、飽和蒸気985を供給する工程と洗浄液流986で洗浄する工程とを同一の洗浄槽918で行ったが、これに限らず異なる槽で行ってもよい。
また、洗浄液流986で半導体装置1の隙間を洗浄するときに、半導体装置1の隙間に洗浄液流986を直接流入させているが、これに限らず、他の洗浄方法を用いることができる。
【0191】
以上のように、第9の実施の形態では、第1の実施の形態の効果に加えて、複数の半導体装置1をトレイ921に取り付け、これを洗浄槽918に配置する。このトレイ921に取り付けられた複数の半導体装置1を洗浄槽918に収容する。この洗浄槽918の上部の蓋部922から洗浄液の飽和蒸気985を供給することにより、飽和蒸気985を洗浄槽918に充満させて、半導体装置1の隙間に洗浄液を浸入させる。その後、洗浄液流986で半導体装置1の隙間を洗浄する。これにより、大変微小であって洗浄液を浸入させにくい半導体装置1の隙間に、予め洗浄液が浸入している。この結果、大量の半導体装置1の回路基板2と半導体素子3との隙間の洗浄に要する時間が短縮され、作業効率が向上する。
【0192】
なお、上記については単に本発明の原理を示すものである。さらに、多数の変形、変更が当業者にとって可能であり、本発明は上記に示し、説明した正確な構成および応用例に限定されるものではなく、対応するすべての変形例および均等物は、添付の請求項およびその均等物による本発明の範囲とみなされる。
【0193】
以上の第1の実施の形態から第9の実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1) 回路基板に半導体素子を実装する半導体装置の製造方法において、
前記回路基板に形成された電極および前記半導体素子に形成された半田バンプの少なくとも一方にフラックスを供給する工程と、
前記フラックスを供給した後、前記電極と前記半田バンプとを接合する工程と、
前記電極と前記半田バンプとを接合した後、前記回路基板と前記半導体素子との隙間に蒸気を供給して、前記回路基板と前記半導体素子との隙間を洗浄する工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0194】
(付記2) 前記隙間を洗浄するとき、前記隙間に供給された前記蒸気が凝縮することにより生じた液体によって洗浄することを特徴とする付記1記載の半導体装置の製造方法。
【0195】
(付記3) 前記隙間を洗浄するとき、前記回路基板および前記半導体素子の少なくとも一方を冷却することを特徴とする付記1または2記載の半導体装置の製造方法。
(付記4) 前記蒸気を供給するとき、前記回路基板を水平面に対して垂直に起立させて配置することを特徴とする付記1から3のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【0196】
(付記5) 前記蒸気を供給するとき、前記回路基板を水平面に対して傾斜させて配置することを特徴とする付記1から3のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
(付記6) 前記蒸気を供給するとき、前記蒸気を前記隙間の上方から供給することを特徴とする付記5記載の半導体装置の製造方法。
【0197】
(付記7) 前記蒸気を供給するとき、前記回路基板と前記半導体素子との隙間に対して前記蒸気を噴射して供給し、
前記噴射された前記蒸気の圧力によって前記回路基板と前記半導体素子との隙間を洗浄することを特徴とする付記1から6のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【0198】
(付記8) 前記蒸気を供給するとき、マルチノズルを用いて、複数の前記回路基板に対して前記蒸気を供給することを特徴とする付記7記載の半導体装置の製造方法。
(付記9) 前記蒸気を供給するとき、前記蒸気が充満した槽内に、前記回路基板および前記半導体素子を配置することにより、前記回路基板と前記半導体素子との隙間に前記蒸気を供給することを特徴とする付記1から5のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【0199】
(付記10) 回路基板に半導体素子を実装して構成される半導体装置の洗浄方法であって、
前記回路基板と前記半導体素子との隙間に洗浄用の蒸気を供給して、前記回路基板と前記半導体素子との隙間を洗浄することを特徴とする半導体装置の洗浄方法。
【0200】
(付記11) 半導体素子が実装された回路基板を保持する保持手段と、
前記保持手段に保持された前記回路基板と前記半導体素子との隙間に洗浄用の蒸気を供給する供給手段とを備えることを特徴とする洗浄装置。
【0201】
(付記12) 前記回路基板および前記半導体素子の少なくとも一方を冷却する冷却手段を備えることを特徴とする付記11記載の洗浄装置。
(付記13) 前記供給手段は、前記蒸気を噴射する噴射手段であることを特徴とする付記11または12記載の洗浄装置。
【0202】
(付記14) 前記供給手段は、前記回路基板および前記半導体素子を収容するとともに、前記蒸気が充満する槽であることを特徴とする付記11から13のいずれか1つに記載の洗浄装置。
【0203】
(付記15) 前記回路基板または前記半導体素子から除去されたフラックスと、前記蒸気が凝縮することにより生じた液体とを含む廃液を回収する回収槽と、
前記回収槽に回収した前記廃液から前記液体を分離する分離手段と、
前記分離手段により分離された前記液体を前記供給手段に循環させる循環手段と、
を備えることを特徴とする付記11から14のいずれか1つに記載の洗浄装置。
【図面の簡単な説明】
【0204】
【図1】第1の実施の形態における半導体装置の製造方法の要部を説明する図である。
【図2】第1の実施の形態の半導体装置を説明する平面模式図である。
【図3】第1の実施の形態の半導体装置を説明する断面模式図である。
【図4】第1の実施の形態における半導体装置の製造工程の概要を説明する図である。
【図5】第1の実施の形態における半導体装置が洗浄される様子を説明する図である。
【図6】第1の実施の形態における半導体装置が洗浄される工程を説明する図である。
【図7】第2の実施の形態における半導体装置が洗浄される工程を説明する図である。
【図8】第3の実施の形態における半導体装置が洗浄される工程を説明する図である。
【図9】第4の実施の形態における半導体装置が洗浄される工程を説明する図である。
【図10】第5の実施の形態における半導体装置が洗浄される工程を説明する図である。
【図11】第6の実施の形態における半導体装置が洗浄される工程を説明する図である。
【図12】第7の実施の形態における半導体装置が洗浄される工程を説明する図である。
【図13】第8の実施の形態における半導体装置が洗浄される工程を説明する図である。
【図14】第9の実施の形態における半導体装置が洗浄される工程を説明する図である。
【図15】従来の半導体装置の製造方法の概要を示す図である。
【符号の説明】
【0205】
1 半導体装置
2 回路基板
3 半導体素子
6 アンダーフィル樹脂
7,74 フラックス
8 ノズル
11 ベルトコンベア
12 排液槽
13 フィルター
14 ポンプ
15,715 循環パイプ
16 乾燥処理部
21 電極
22 ソルダーレジスト
23 半田ボール
31 半田バンプ
41〜49 製造ステップ
81,86 蒸気
82,382,582 蒸気流
84 廃液
217,417,617,817 冷却ユニット
308 マルチノズル
508 蒸気噴射ユニット
518,718,918 洗浄槽
519,719 治具
720 ヒーター
783 洗浄液
785,985 飽和蒸気
921 トレイ
922 蓋部
923 弁
986 洗浄液流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板に半導体素子を実装する半導体装置の製造方法において、
前記回路基板に形成された電極および前記半導体素子に形成された半田バンプの少なくとも一方にフラックスを供給する工程と、
前記フラックスを供給した後、前記電極と前記半田バンプとを接合する工程と、
前記電極と前記半田バンプとを接合した後、前記回路基板と前記半導体素子との隙間に蒸気を供給して、前記回路基板と前記半導体素子との隙間を洗浄する工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記隙間を洗浄するとき、前記回路基板および前記半導体素子の少なくとも一方を冷却することを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記蒸気を供給するとき、前記蒸気が充満した槽内に、前記回路基板および前記半導体素子を配置することにより、前記回路基板と前記半導体素子との隙間に前記蒸気を供給することを特徴とする請求項1または2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
回路基板に半導体素子を実装して構成される半導体装置の洗浄方法であって、
前記回路基板と前記半導体素子との隙間に洗浄用の蒸気を供給して、前記回路基板と前記半導体素子との隙間を洗浄することを特徴とする半導体装置の洗浄方法。
【請求項5】
半導体素子が実装された回路基板を保持する保持手段と、
前記保持手段に保持された前記回路基板と前記半導体素子との隙間に洗浄用の蒸気を供給する供給手段とを備えることを特徴とする洗浄装置。
【請求項6】
前記回路基板および前記半導体素子の少なくとも一方を冷却する冷却手段を備えることを特徴とする請求項5記載の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−164431(P2009−164431A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1658(P2008−1658)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】