説明

半導体装置の製造方法、基板処理方法及び基板処理装置

【課題】 金属薄膜上に金属酸化膜を形成する際に、金属薄膜の酸化を抑制させる。
【解決手段】 原料と酸化剤とを用い、金属薄膜が形成された基板上に、ハフニウム、イットリウム、ランタン、アルミニウム、ジルコニウム、ストロンチウム、チタン、バリウム、タンタル、ニオブからなる群から選択される少なくとも1種類以上の元素を含む金属酸化膜を、酸化による結晶粒の異常成長が起こらない温度であって、かつ、アモルファス状態となる第1温度で形成するステップと、原料と酸化剤とを用い、アモルファス状態の金属酸化膜上に、アモルファス状態を維持しつつ、ハフニウム、イットリウム、ランタン、アルミニウム、ジルコニウム、ストロンチウム、チタン、バリウム、タンタル、ニオブからなる群から選択される少なくとも1種類以上の元素を含む金属酸化膜を、第1温度を超える第2温度で形成するステップと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する半導体装置の製造方法、及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、DRAM等の半導体装置は、キャパシタ絶縁膜として形成された金属酸化膜を備えている。金属酸化膜は、例えば、下部電極として形成された金属薄膜上に形成される。なお、金属酸化膜は、結晶化させた方が高い誘電率を得ることが出来るため、結晶化するような高温下で形成されてきた。例えば、製造工程で耐えられる範囲内の出来るだけ高い温度で形成されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、結晶化するような高温下で金属酸化膜を形成すると、下地の金属薄膜が酸化してしまう場合があった。例えば、40nm世代以降のキャパシタ絶縁膜として有望視されているSTO(チタン酸ストロンチウム(SrTiO))膜は、有機金属原料ガスとオゾン(O)ガスとを交互供給するALD法による成膜を400℃以上の高温下で行うことにより、結晶化させつつ形成させることが出来る。しかしながら、この場合、下地の金属薄膜を構成するルテニウム(Ru)が400℃以上でオゾン(O)ガスに曝されてRuOへと酸化してしまい、金属薄膜を構成する結晶粒が異常成長してSTO膜を突き破ってしまう場合があった。
【0004】
そこで、本発明は、金属薄膜上に金属酸化膜を形成する際に、金属薄膜の酸化を抑制させることが可能な半導体装置の製造方法、及び基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、表面に金属薄膜が形成された基板上に、ハフニウム、イットリウム、ランタン、アルミニウム、ジルコニウム、ストロンチウム、チタン、バリウム、タンタル、ニオブからなる群から選択される少なくとも1種類以上の元素を含む金属酸化膜を、前記金属薄膜の酸化が起こらない温度であって、かつ、前記金属酸化膜がアモルファス状態となる第1温度で形成する第1ステップと、前記第1ステップで形成した前記金属酸化膜上に、ハフニウム、イットリウム、ランタン、アルミニウム、ジルコニウム、ストロンチウム、チタン、バリウム、タンタル、ニオブからなる群から選択される少なくとも1種類以上の元素を含む金属酸化膜を、前記第1温度を超える第2温度で、目標の膜厚まで形成する第2ステップと、を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0006】
本発明の他の態様によれば、表面に金属薄膜が形成された基板上に、ハフニウム、イットリウム、ランタン、アルミニウム、ジルコニウム、ストロンチウム、チタン、バリウム、タンタル、ニオブからなる群から選択される少なくとも1種類以上の元素を含む金属酸化膜を、前記金属薄膜の酸化が起こらない温度であって、かつ、前記金属酸化膜がアモルファス状態となる第1温度で形成し、その後、前記金属酸化膜のアモルファス状態を維持しつつ前記金属酸化膜に対しアニールを施し前記金属酸化膜を緻密化する第1ステップと、前記第1ステップで形成した前記金属酸化膜上に、ハフニウム、イットリウム、ランタン、アルミニウム、ジルコニウム、ストロンチウム、チタン、バリウム、タンタル、ニオブからなる群から選択される少なくとも1種類以上の元素を含む金属酸化膜を、前記第1温度以上の第2温度で、目標の膜厚まで形成する第2ステップと、を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0007】
本発明の更に他の態様によれば、基板を処理する処理室と、ハフニウム原料、イットリウム原料、ランタン原料、アルミニウム原料、ジルコニウム原料、ストロンチウム原料、チタン原料、バリウム原料、タンタル原料、ニオブ原料からなる群から選択される少なくともいずれか一つの原料を供給する原料供給系と、酸化剤を供給する酸化剤供給系と、前記処理室内の基板を加熱するヒータと、前記処理室内に前記原料と前記酸化剤とを供給して、表面に金属薄膜が形成された基板上に、ハフニウム、イットリウム、ランタン、アルミニウム、ジルコニウム、ストロンチウム、チタン、バリウム、タンタル、ニオブからなる群から選択される少なくとも1種類以上の元素を含む金属酸化膜を、前記金属薄膜の酸化が起こらない温度であって、かつ、前記金属酸化膜がアモルファス状態となる第1温度で形成し、前記アモルファス状態の前記金属酸化膜上に、ハフニウム、イットリウム、ランタン、アルミニウム、ジルコニウム、ストロンチウム、チタン、バリウム、タンタル、ニオブからなる群から選択される少なくとも1種類以上の元素を含む金属酸化膜を、前記第1温度を超える第2温度で、目標の膜厚まで形成するよう、前記原料供給系、前記酸化剤供給系および前記ヒータを制御するコントローラと、を有する基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる半導体装置の製造方法及び基板処理装置によれば、金属薄膜上に金属酸化膜を形成する際に、金属薄膜の酸化を抑制させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態にかかる基板処理装置の有するガス供給系の構成図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる基板処理装置が有する各バルブの開閉タイミングを示すシーケンス図である。
【図3】本発明の他の実施形態にかかる基板処理装置が有する各バルブの開閉タイミングを示すシーケンス図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる基板処理装置のウェハ処理時における断面構成図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかる基板処理装置のウェハ搬送時における断面構成図である。
【図6】(a)は本発明の一実施形態にかかる基板処理工程のフロー図であり、(b)は、本発明の他の実施形態にかかる基板処理工程のフロー図である。
【図7】本発明の一実施形態にかかる気化器の概略構成図である。
【図8】本発明の他の実施形態にかかる基板処理工程のフロー図である。
【図9】本発明の他の実施形態にかかる縦型ALD装置の縦型処理炉の概略構成図であり、(a)は、処理炉部分を縦断面で示し、(b)は、処理炉部分を(a)のA−A線断面図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<本発明の第1の実施形態>
上述したとおり、金属酸化膜を高温下で形成すると、下地の金属薄膜が酸化してしまう場合があった。発明者は、下地の金属薄膜の酸化を抑制する方法について鋭意研究を行った。その結果、金属薄膜の酸化が起こらない温度であって金属酸化膜がアモルファス状態となる第1温度で金属酸化膜を形成した後、第1温度で形成した金属酸化膜上に第1温度以上の第2温度で目標の膜厚まで金属酸化膜を形成することにより、下地の金属薄膜の酸化を抑制することが可能であるとの知見を得た。通常、第2温度で金属薄膜上に直接に金属酸化膜を形成すると金属薄膜が酸化されてしまうことがあるが、上述の方法によれば、第1温度で予め形成した金属酸化膜が酸素の透過を抑制するバリアとして機能するため、
第2温度で金属酸化膜を形成する際にも下地の金属薄膜の酸化が抑制されるのである。本発明は、発明者が得た上述の知見に基づいてなされたものである。以下に、本発明の一実施形態について説明する。
【0011】
(1)基板処理装置の構成
まず、本実施形態にかかる基板処理装置の構成について、図4,5を参照しながら説明する。図4は、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置のウェハ処理時における断面構成図であり、図5は、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置のウェハ搬送時における断面構成図である。
【0012】
<処理室>
図4,5に示すとおり、本実施形態にかかる基板処理装置は、処理容器202を備えている。処理容器202は、例えば横断面が円形であり扁平な密閉容器として構成されている。また、処理容器202は、例えばアルミニウム(Al)やステンレス(SUS)など金属材料により構成されている。処理容器202内には、基板としてのウェハ200を処理する処理室201が構成されている。
【0013】
処理室201内には、ウェハ200を支持する支持台203が設けられている。ウェハ200が直接触れる支持台203の上面には、例えば、石英(SiO)、カーボン、セラミックス、炭化ケイ素(SiC)、酸化アルミニウム(Al)、又は窒化アルミニウム(AlN)などから構成された支持板としてのサセプタ217が設けられている。また、支持台203には、処理室201内のウェハ200を加熱する加熱手段としてのヒータ206が内蔵されている。なお、支持台203の下端部は、処理容器202の底部を貫通している。
【0014】
処理室201の外部には、昇降機構207bが設けられている。この昇降機構207bを作動(昇降)させることにより、サセプタ217上に支持されるウェハ200を昇降させることが可能となっている。支持台203は、ウェハ200の搬送時には図5で示される位置(ウェハ搬送位置)まで下降し、ウェハ200の処理時には図4で示される位置(ウェハ処理位置)まで上昇する。なお、支持台203の下端部、及び昇降機構207bの周囲は、ベローズ203aにより覆われており、処理室201内は気密に保持されている。
【0015】
また、処理室201の底面(床面)には、例えば3本のリフトピン208bが鉛直方向に設けられている。また、支持台203には、かかるリフトピン208bを貫通させるための貫通孔208aが、リフトピン208bに対応する位置にそれぞれ設けられている。そして、支持台203をウェハ搬送位置まで下降させた時には、リフトピン208bの上端部が支持台203の上面から突出して、リフトピン208bがウェハ200を下方から支持するように構成されている。また、支持台203をウェハ処理位置まで上昇させたときには、リフトピン208bは支持台203の上面から埋没して、支持台203上面に設けられたサセプタ217がウェハ200を下方から支持するように構成される。なお、リフトピン208bは、ウェハ200と直接触れるため、例えば、石英やアルミナなどの材質で形成することが望ましい。
【0016】
<ウェハ搬送口>
処理室201の内壁側面には、処理室201の内外にウェハ200を搬送するためのウェハ搬送口250が設けられている。ウェハ搬送口250にはゲートバルブ251が設けられており、ゲートバルブ251を開けることにより、処理室201内と搬送室(予備室)271内とが連通するように構成されている。搬送室271は密閉容器272内に形成されており、搬送室271内にはウェハ200を搬送する搬送ロボット273が設けられ
ている。搬送ロボット273には、ウェハ200を搬送する際にウェハ200を支持する搬送アーム273aが備えられている。支持台203をウェハ搬送位置まで下降させた状態で、ゲートバルブ251を開くことにより、搬送ロボット273により処理室201内と搬送室271内との間でウェハ200を搬送することが可能なように構成されている。処理室201内に搬送されたウェハ200は、上述したようにリフトピン208b上に一時的に載置される。
【0017】
<排気系>
処理室201の内壁側面であって、ウェハ搬送口250の反対側には、処理室201内の雰囲気を排気する排気口260が設けられている。排気口260には排気管261が接続されており、排気管261には、処理室201内を所定の圧力に制御するAPC(Auto Pressure Controller)等の圧力調整器262、原料回収トラップ263、及び真空ポンプ264が順に直列に接続されている。主に、排気口260、排気管261、圧力調整器262、原料回収トラップ263、真空ポンプ264により排気系(排気ライン)が構成される。
【0018】
<ガス導入口>
処理室201の上部に設けられる後述のシャワーヘッド240の上面(天井壁)には、処理室201内に各種ガスを供給するためのガス導入口210が設けられている。なお、ガス導入口210に接続されるガス供給系の構成については後述する。
【0019】
<シャワーヘッド>
ガス導入口210と、ウェハ処理位置におけるウェハ200との間には、ガス分散機構としてのシャワーヘッド240が設けられている。シャワーヘッド240は、ガス導入口210から導入されるガスを分散させるための分散板240aと、分散板240aを通過したガスをさらに均一に分散させて支持台203上のウェハ200の表面に供給するためのシャワー板240bとを備えている。分散板240aおよびシャワー板240bには、複数の通気孔が設けられている。分散板240aは、シャワーヘッド240の上面及びシャワー板240bと対向するように配置されており、シャワー板240bは、支持台203上のウェハ200と対向するように配置されている。なお、シャワーヘッド240の上面と分散板240aとの間、および分散板240aとシャワー板240bとの間には、それぞれ空間が設けられており、かかる空間は、ガス導入口210から供給されるガスを分散させるための分散室(第1バッファ空間)240c、および分散板240aを通過したガスを拡散させるための第2バッファ空間240dとしてそれぞれ機能する。
【0020】
<排気ダクト>
処理室201の内壁側面には、段差部201aが設けられている。そして、この段差部201aは、コンダクタンスプレート204をウェハ処理位置近傍に保持するように構成されている。コンダクタンスプレート204は、内周部にウェハ200を収容する穴が設けられた1枚のドーナツ状(リング状)をした円板として構成されている。コンダクタンスプレート204の外周部には、所定間隔を開けて周方向に配列された複数の排出口204aが設けられている。排出口204aは、コンダクタンスプレート204の外周部がコンダクタンスプレート204の内周部を支えることができるよう、不連続に形成される。
【0021】
一方、支持台203の外周部には、ロワープレート205が係止している。ロワープレート205は、リング状の凹部205bと、凹部205bの内側上部に一体的に設けられたフランジ部205aとを備えている。凹部205bは、支持台203の外周部と、処理室201の内壁側面との隙間を塞ぐように設けられる。凹部205bの底部のうち排気口260付近の一部には、凹部205b内から排気口260側へガスを排出(流通)させるためのプレート排気口205cが設けられている。フランジ部205aは、支持台203
の上部外周縁上に係止する係止部として機能する。フランジ部205aが支持台203の上部外周縁上に係止することにより、ロワープレート205が、支持台203の昇降に伴い、支持台203と共に昇降されるようになっている。
【0022】
支持台203がウェハ処理位置まで上昇したとき、ロワープレート205もウェハ処理位置まで上昇する。その結果、ウェハ処理位置近傍に保持されているコンダクタンスプレート204が、ロワープレート205の凹部205bの上面部分を塞ぎ、凹部205bの内部をガス流路領域とする排気ダクト259が形成されることとなる。なお、このとき、排気ダクト259(コンダクタンスプレート204及びロワープレート205)及び支持台203によって、処理室201内が、排気ダクト259よりも上方の処理室上部と、排気ダクト259よりも下方の処理室下部と、に仕切られることとなる。なお、コンダクタンスプレート204およびロワープレート205は、排気ダクト259の内壁に堆積する反応生成物をエッチングする場合を考慮して、高温保持が可能な材料、例えば、耐高温高負荷用石英で構成することが好ましい。
【0023】
ここで、ウェハ処理時における処理室201内のガスの流れについて説明する。まず、ガス導入口210からシャワーヘッド240の上部へと供給されたガスは、分散室(第1バッファ空間)240cを経て分散板240aの多数の孔から第2バッファ空間240dへと入り、さらにシャワー板240bの多数の孔を通過して処理室201内に供給され、ウェハ200上に均一に供給される。そして、ウェハ200上に供給されたガスは、ウェハ200の径方向外側に向かって放射状に流れる。そして、ウェハ200に接触した後の余剰なガスは、支持台203の外周に設けられた排気ダクト259上(すなわちコンダクタンスプレート204上)を、ウェハ200の径方向外側に向かって放射状に流れ、排気ダクト259上に設けられた排出口204aから、排気ダクト259内のガス流路領域内(凹部205b内)へと排出される。その後、ガスは排気ダクト259内を流れ、プレート排気口205cを経由して排気口260へと排気される。以上の通り、処理室201の下部への、すなわち支持台203の裏面や処理室201の底面側へのガスの回り込みが抑制される。
【0024】
続いて、上述したガス導入口210に接続されるガス供給系の構成について、図1,7を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置の有するガス供給系(ガス供給ライン)の構成図であり、図7は、本発明の一実施形態にかかる気化器の概略構成図である。
【0025】
本発明の一実施形態にかかる基板処理装置の有するガス供給系は、ハフニウム(Hf)原料、イットリウム(Y)原料、ランタン(La)原料、アルミニウム(Al)原料、ジルコニウム(Zr)原料、ストロンチウム(Sr)原料、チタン(Ti)原料、バリウム(Ba)原料、タンタル(Ta)原料、ニオブ(Nb)原料からなる群から選択される少なくともいずれか一つの原料を供給する原料供給系と、酸化剤を供給する酸化剤供給系とを備えている。本実施形態にかかる原料供給系は、液体原料を供給する第1液体原料供給源220s,第2液体原料供給源220b,第3液体原料供給源220tと、液体原料を気化する気化部229s,229b,229tと、気化部229s,229b,229tに液体原料を供給する液体原料供給管211s,211b,211tと、気化部229s,229b,229tにて液体原料を気化させた原料ガスを処理室201内に供給する原料ガス供給管213とを備えている。また、本実施形態にかかる酸化剤供給系は、酸素(O)ガスを供給する酸素ガス供給源230oと、酸素ガスから酸化剤としてのオゾン(O)ガスを生成させるオゾナイザ229oと、オゾナイザ229oに酸素ガスを供給する酸素ガス供給管211oと、オゾナイザ229oにて発生させたオゾンガスを処理室201内に供給する酸化剤供給管213oとを備えている。さらに、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置は、気化部に洗浄液を供給する洗浄液供給系と、パージガス供給系と
、ベント(バイパス)系とを備えている。以下に、原料として例えばストロンチウム原料、チタン原料、バリウム原料を供給する原料供給系、酸化剤として例えばオゾンガスを供給する酸化剤供給系の構成等について説明する。
【0026】
<原料供給系>
処理室201の外部には、液体原料としてのSr(ストロンチウム)元素を含む有機金属液体原料(以下第1液体原料という)を供給する第1液体原料供給源220s、Ba(バリウム)元素を含む有機金属液体原料(以下第2液体原料という)を供給する第2液体原料供給源220b、及びTi(チタニウム)元素を含む有機金属液体原料(以下第3液体原料という)を供給する第3液体原料供給源220tが設けられている。第1液体原料供給源220s、第2液体原料供給源220b、及び第3液体原料供給源220tは、内部に液体原料を収容(充填)可能なタンク(密閉容器)としてそれぞれ構成されている。なお、Sr,Ba,Ti元素を含む各有機金属液体原料は、例えば、ECH(エチルシクロヘキサン)やTHF(テトラヒドロフラン)などの溶媒(ソルベント)により0.05mol/L〜0.2mol/Lに希釈されてから、タンク内にそれぞれ収容される。
【0027】
ここで、第1液体原料供給源220s、第2液体原料供給源220b、及び第3液体原料供給源220tには、第1圧送ガス供給管237s、第2圧送ガス供給管237b、及び第3圧送ガス供給管237tがそれぞれ接続されている。第1圧送ガス供給管237s、第2圧送ガス供給管237b、及び第3圧送ガス供給管237tの上流側端部には、図示しない圧送ガス供給源が接続されている。また、第1圧送ガス供給管237s、第2圧送ガス供給管237b、及び第3圧送ガス供給管237tの下流側端部は、それぞれ第1液体原料供給源220s、第2液体原料供給源220b、及び第3液体原料供給源220t内の上部に存在する空間に連通しており、この空間内に圧送ガスを供給するように構成されている。なお、圧送ガスとしては、液体原料とは反応しないガスを用いることが好ましく、例えばArガス等の不活性ガスが好適に用いられる。
【0028】
また、第1液体原料供給源220s、第2液体原料供給源220b、及び第3液体原料供給源220tには、第1液体原料供給管211s、第2液体原料供給管211b、及び第3液体原料供給管211tがそれぞれ接続されている。ここで、第1液体原料供給管211s、第2液体原料供給管211b、及び第3液体原料供給管211tの上流側端部は、それぞれ第1液体原料供給源220s、第2液体原料供給源220b、及び第3液体原料供給源220t内に収容した液体原料内に浸されている。また、第1液体原料供給管211s、第2液体原料供給管211b、及び第3液体原料供給管211tの下流側端部は、液体原料を気化させる気化部としての気化器229s,229b,229tにそれぞれ接続されている。なお、第1液体原料供給管211s、第2液体原料供給管211b、及び第3液体原料供給管211tには、液体原料の供給流量を制御する流量制御手段としての液体流量コントローラ(LMFC)221s,221b,221tと、液体原料の供給を制御する開閉バルブvs1,vb1,vt1と、がそれぞれ設けられている。なお、開閉バルブvs1,vb1,vt1は、それぞれ気化器229s,229b,229tの内部に設けられている。
【0029】
上記構成により、開閉バルブvs1,vb1,vt1を開けるとともに、第1圧送ガス供給管237s、第2圧送ガス供給管237b、及び第3圧送ガス供給管237tから圧送ガスを供給することにより、第1液体原料供給源220s、第2液体原料供給源220b、及び第3液体原料供給源220tから気化器229s,229b,229tへと液体原料を圧送(供給)することが可能となる。主に、第1液体原料供給源220s、第2液体原料供給源220b、第3液体原料供給源220t、第1圧送ガス供給管237s、第2圧送ガス供給管237b、第3圧送ガス供給管237t、第1液体原料供給管211s、第2液体原料供給管211b、第3液体原料供給管211t、液体流量コントローラ2
21s,221b,221t、開閉バルブvs1,vb1,vt1により液体原料供給系(液体原料供給ライン)が構成される。
【0030】
液体原料を気化する気化部としての気化器229s,229b,229tは、図7にその詳細構造を示すように、液体原料をヒータ23s,23b,23tで加熱して気化させて原料ガスを発生させる気化室20s,20b,20tと、この気化室20s,20b,20tへ液体原料を吐出するまでの流路である液体原料流路21s,21b,21tと、液体原料の気化室20s,20b,20t内への供給を制御する上述の開閉バルブvs1,vb1,vt1と、気化室20s,20b,20tにて発生させた原料ガスを後述する第1原料ガス供給管213s、第2原料ガス供給管213b、第3原料ガス供給管213tへ供給するアウトレットとしての原料ガス供給口22s,22b,22tと、を有している。上述の第1液体原料供給管211s、第2液体原料供給管211b、及び第3液体原料供給管211tの下流側端部は、それぞれ開閉バルブvs1,vb1,vt1を介して液体原料流路21s,21b,21tの上流側端部に接続されている。液体原料流路21s,21b,21tには、それぞれキャリアガス供給系(キャリアガス供給ライン)としてのキャリアガス供給管24s,24b,24tが接続されており、気化室20s,20b,20t内にAr等のキャリアガスを供給するように構成されている。
【0031】
上記の気化器229s,229b,229tの原料ガス供給口22s,22b,22tには、処理室201内に原料ガスを供給する第1原料ガス供給管213s、第2原料ガス供給管213b、及び第3原料ガス供給管213tの上流側端部がそれぞれ接続されている。第1原料ガス供給管213s、第2原料ガス供給管213b、及び第3原料ガス供給管213tの下流側端部は、合流するように一本化して原料ガス供給管213となり、一本化した原料ガス供給管213は、ガス導入口210に接続されている。なお、第1原料ガス供給管213s、第2原料ガス供給管213b、及び第3原料ガス供給管213tには、処理室201内への原料ガスの供給を制御する開閉バルブvs3,vb3,vt3がそれぞれ設けられている。
【0032】
上記構成により、気化器229s,229b,229tにて液体原料を気化させて原料ガスを発生させるとともに、開閉バルブvs3,vb3,vt3を開けることにより、第1原料ガス供給管213s、第2原料ガス供給管213b、及び第3原料ガス供給管213tから原料ガス供給管213を介して処理室201内へと原料ガスを供給することが可能となる。主に、第1原料ガス供給管213s、第2原料ガス供給管213b、第3原料ガス供給管213t、原料ガス供給管213、開閉バルブvs3,vb3,vt3により、原料ガス供給系(原料ガス供給ライン)が構成される。そして、主に液体原料供給系、気化部、原料ガス供給系により原料供給系が構成される。
【0033】
<酸化剤供給系>
また、処理室201の外部には、酸素(O)ガスを供給する酸素ガス供給源230oが設けられている。酸素ガス供給源230oには、第1酸素ガス供給管211oの上流側端部が接続されている。第1酸素ガス供給管211oの下流側端部には、プラズマにより酸素ガスから反応ガス(反応物)すなわち酸化剤としてのオゾンガスを生成させるオゾナイザ229oが接続されている。なお、第1酸素ガス供給管211oには、酸素ガスの供給流量を制御する流量制御手段としての流量コントローラ221oが設けられている。
【0034】
オゾナイザ229oのアウトレットとしてのオゾンガス供給口22oには、酸化剤供給管としてのオゾンガス供給管213oの上流側端部が接続されている。また、オゾンガス供給管213oの下流側端部は、原料ガス供給管213に合流するように接続されている。すなわち、オゾンガス供給管213oは、酸化剤としてのオゾンガスを処理室201内に供給するように構成されている。なお、オゾンガス供給管213oには、処理室201
内へのオゾンガスの供給を制御する開閉バルブvo3が設けられている。
【0035】
なお、第1酸素ガス供給管211oの流量コントローラ221oよりも上流側には、第2酸素ガス供給管212oの上流側端部が接続されている。また、第2酸素ガス供給管212oの下流側端部は、オゾンガス供給管213oの開閉バルブvo3よりも上流側に接続されている。なお、第2酸素ガス供給管212oには、酸素ガスの供給流量を制御する流量制御手段としての流量コントローラ222oが設けられている。
【0036】
上記構成により、オゾナイザ229oに酸素ガスを供給してオゾンガスを発生させるとともに、開閉バルブvo3を開けることにより、処理室201内へオゾンガスを供給することが可能となる。なお、処理室201内へのオゾンガスの供給中に、第2酸素ガス供給管212oから酸素ガスを供給するようにすれば、処理室201内へ供給するオゾンガスを酸素ガスにより希釈して、オゾンガス濃度を調整することが可能となる。主に、酸素ガス供給源230o、第1酸素ガス供給管211o、オゾナイザ229o、流量コントローラ221o、オゾンガス供給管213o、開閉バルブvo3、第2酸素ガス供給管212o、流量コントローラ222oにより酸化剤供給系(酸化剤供給ライン)が構成される。
【0037】
<洗浄液供給系(溶媒供給系)>
また、処理室201の外部には、洗浄液としての溶媒(ソルベント)であるECH(エチルシクロヘキサン)を供給する洗浄液供給源220eが設けられている。洗浄液供給源220eは、内部に洗浄液を収容(充填)可能なタンク(密閉容器)として構成されている。なお、洗浄液としては、ECHに限定されず、THF(テトラヒドロフラン)などの溶媒を用いることが出来る。
【0038】
ここで、洗浄液供給源220eには、洗浄液圧送ガス供給管237eが接続されている。洗浄液圧送ガス供給管237eの上流側端部には、図示しない圧送ガス供給源が接続されている。また、洗浄液圧送ガス供給管237eの下流側端部は、洗浄液供給源220e内の上部に存在する空間に連通しており、この空間内に圧送ガスを供給するように構成されている。なお、圧送ガスとしては、Arガス等の不活性ガスが好適に用いられる。
【0039】
また、洗浄液供給源220eには洗浄液供給管212が接続されている。洗浄液供給管212の上流側端部は洗浄液供給源220e内に収容した洗浄液内に浸されている。洗浄液供給管212の下流側端部は、3本のライン、すなわち、第1洗浄液供給管212s、第2洗浄液供給管212b、及び第3洗浄液供給管212tに分岐するように接続されている。第1洗浄液供給管212s、第2洗浄液供給管212b、及び第3洗浄液供給管212tの下流側端部は、気化器229s,229b,229tの液体原料流路21s,21b,21tにそれぞれ接続されている。なお、第1洗浄液供給管212s、第2洗浄液供給管212b、及び第3洗浄液供給管212tには、洗浄液の供給流量を制御する流量制御手段としての液体流量コントローラ222s,222b,222tと、洗浄液の供給を制御する開閉バルブvs2,vb2,vt2とが、それぞれ設けられている。なお、開閉バルブvs2,vb2,vt2は、それぞれ気化器229s,229b,229tの内部に設けられている。
【0040】
上記構成により、洗浄液圧送ガス供給管237eから圧送ガスを供給するとともに、開閉バルブvs1,vb1,vt1を閉じ、開閉バルブvs2,vb2,vt2を開けることにより、気化器229s,229b,229tの液体原料流路21s,21b,21t内に洗浄液を圧送(供給)して、液体原料流路21s,21b,21t内を洗浄することが可能となる。主に、洗浄液供給源220e、洗浄液圧送ガス供給管237e、洗浄液供給管212、第1洗浄液供給管212s、第2洗浄液供給管212b、第3洗浄液供給管212t、液体流量コントローラ222s,222b,222t、開閉バルブvs2,v
b2,vt2により、洗浄液供給系(溶媒供給系)すなわち洗浄液供給ライン(溶媒供給ライン)が構成される。
【0041】
<パージガス供給系>
また、処理室201の外部には、パージガスとしてのArガスを供給するためのArガス供給源230aが設けられている。Arガス供給源230aには、パージガス供給管214の上流側端部が接続されている。パージガス供給管214の下流側端部は、4本のライン、すなわち、第1パージガス供給管214s、第2パージガス供給管214b、第3パージガス供給管214t、及び第4パージガス供給管214oに分岐するように接続されている。第1パージガス供給管214s、第2パージガス供給管214b、第3パージガス供給管214t、及び第4パージガス供給管214oの下流側端部は、第1原料ガス供給管213s、第2原料ガス供給管213b、第3原料ガス供給管213t、及びオゾンガス供給管213oの開閉バルブvs3,vb3,vt3,vo3の下流側にそれぞれ接続されている。なお、第1パージガス供給管214s、第2パージガス供給管214b、第3パージガス供給管214t、及び第4パージガス供給管214oには、Arガスの供給流量を制御する流量制御手段としての流量コントローラ224s,224b,224t,224oと、Arガスの供給を制御する開閉バルブvs4,vb4,vt4,vo4とが、それぞれ設けられている。主に、Arガス供給源230a、パージガス供給管214、第1パージガス供給管214s、第2パージガス供給管214b、第3パージガス供給管214t、及び第4パージガス供給管214o、流量コントローラ224s,224b,224t,224o、開閉バルブvs4,vb4,vt4,vo4によりパージガス供給系(パージガス供給ライン)が構成される。
【0042】
<ベント(バイパス)系>
また、第1原料ガス供給管213s、第2原料ガス供給管213b、第3原料ガス供給管213t、及びオゾンガス供給管213oの開閉バルブvs3,vb3,vt3,vo3の上流側には、第1ベント管215s、第2ベント管215b、第3ベント管215t、第4ベント管215oの上流側端部がそれぞれ接続されている。また、第1ベント管215s、第2ベント管215b、第3ベント管215t、第4ベント管215oの下流側端部は合流するように一本化してベント管215となり、ベント管215は排気管261の原料回収トラップ263よりも上流側に接続されている。第1ベント管215s、第2ベント管215b、第3ベント管215t、第4ベント管215oには、ガスの供給を制御するための開閉バルブvs5,vb5,vt5,vo5がそれぞれ設けられている。
【0043】
上記構成により、開閉バルブvs3,vb3,vt3,vo3を閉め、開閉バルブvs5,vb5,vt5,vo5を開けることで、第1原料ガス供給管213s、第2原料ガス供給管213b、第3原料ガス供給管213t、及びオゾンガス供給管213o内を流れるガスを、処理室201内に供給することなく処理室201をバイパスさせ、処理室201外へとそれぞれ排気することが可能となる。
【0044】
また、第1パージガス供給管214s、第2パージガス供給管214b、第3パージガス供給管214t、及び第4パージガス供給管214oの開閉バルブvs4,vb4,vt4,vo4よりも上流側であって流量コントローラ224s,224b,224t,224oよりも下流側には、第5ベント管216s、第6ベント管216b、第7ベント管216t、第8ベント管216oがそれぞれ接続されている。また、第5ベント管216s、第6ベント管216b、第7ベント管216t、第8ベント管216oの下流側端部は合流するように一本化してベント管216となり、ベント管216は排気管261の原料回収トラップ263よりも下流側であって真空ポンプ264よりも上流側に接続されている。第5ベント管216s、第6ベント管216b、第7ベント管216t、第8ベント管216oには、ガスの供給を制御するための開閉バルブvs6,vb6,vt6,v
o6がそれぞれ設けられている。
【0045】
上記構成により、開閉バルブvs4,vb4,vt4,vo4を閉め、開閉バルブvs6,vb6,vt6,vo6を開けることで、第1パージガス供給管214s、第2パージガス供給管214b、第3パージガス供給管214t、及び第4パージガス供給管214o内を流れるArガスを、処理室201内に供給することなく処理室201をバイパスさせ、処理室201外へとそれぞれ排気することが可能となる。なお、開閉バルブvs3,vb3,vt3,vo3を閉め、開閉バルブvs5,vb5,vt5,vo5を開けることで、第1原料ガス供給管213s、第2原料ガス供給管213b、第3原料ガス供給管213t、及びオゾンガス供給管213o内を流れるガスを、処理室201内に供給することなく処理室201をバイパスさせ、処理室201外へとそれぞれ排気する場合には、開閉バルブvs4,vb4,vt4,vo4を開けることにより、第1原料ガス供給管213s、第2原料ガス供給管213b、第3原料ガス供給管213t、及びオゾンガス供給管213o内にArガスを導入して、各原料ガス供給管内をパージするように設定されている。また、開閉バルブvs6,vb6,vt6,vo6は、開閉バルブvs4,vb4,vt4,vo4と逆動作を行うように設定されており、Arガスを各原料ガス供給管内に供給しない場合には、処理室201をバイパスしてArガスを排気するようになっている。主に、第1ベント管215s、第2ベント管215b、第3ベント管215t、第4ベント管215o、ベント管215、第5ベント管216s、第6ベント管216b、第7ベント管216t、第8ベント管216o、ベント管216、開閉バルブvs5,vb5,vt5,vo5、開閉バルブvs6,vb6,vt6,vo6によりベント系(バイパス系)、すなわちベントライン(バイパスライン)が構成される。
【0046】
<コントローラ>
なお、本実施形態にかかる基板処理装置は、基板処理装置の各部の動作を制御するコントローラ280を有している。コントローラ280は、ゲートバルブ251、昇降機構207b、搬送ロボット273、ヒータ206、圧力調整器(APC)262、気化器229s,229b,229t、オゾナイザ229o、真空ポンプ264、開閉バルブvs1〜vs6,vb1〜vb6,vt1〜vt6,vo3〜vo6、液体流量コントローラ221s,221b,221t、222s、222b、222t、流量コントローラ224s,224b,224t,221o,222o,224o等の動作を制御する。
【0047】
以上、述べたように、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置が構成される。
【0048】
(2)基板処理工程
続いて、本発明の一実施形態にかかる半導体装置の製造工程の一工程として、上述の基板処理装置を用いて、ALD法により例えばストロンチウム、チタンを含む金属酸化膜としてのSTO(SrTiO)膜を形成する基板処理工程について、図2及び図6(a)を参照しながら説明する。図6(a)は、本発明の一実施形態にかかる基板処理工程のフロー図である。図2は、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置が有する各バルブの開閉タイミングを示すタイミングチャートとしてのシーケンス図である。このタイミングチャートにおいて、Highレベルはバルブ開を、Lowレベルはバルブ閉を示している。なお、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作は、コントローラ280によって制御される。
【0049】
<基板搬入工程(S1)、基板載置工程(S2)>
まず、昇降機構207bを作動させ、支持台203を、図5に示すウェハ搬送位置まで下降させる。そして、ゲートバルブ251を開き、処理室201と搬送室271とを連通させる。そして、搬送ロボット273により搬送室271内から処理室201内へ処理対象のウェハ200を搬送アーム273aで支持した状態で搬入する(S1)。なお、ウェ
ハ200の表面には例えばSiO等の酸化膜が形成され、かかる酸化膜上には、例えば金属薄膜としてのルテニウム(Ru)薄膜が予め形成されている。ルテニウム薄膜は、後述する工程において、金属酸化膜としてのSTO膜を形成する下地となる。処理室201内に搬入したウェハ200は、支持台203の上面から突出しているリフトピン208b上に一時的に載置される。搬送ロボット273の搬送アーム273aが処理室201内から搬送室271内へ戻ると、ゲートバルブ251が閉じられる。
【0050】
続いて、昇降機構207bを作動させ、支持台203を、図4に示すウェハ処理位置まで上昇させる。その結果、リフトピン208bは支持台203の上面から埋没し、ウェハ200は、支持台203上面のサセプタ217上に載置される(S2)。
【0051】
<圧力調整工程(S3)、昇温工程(S4)>
続いて、圧力調整器(APC)262により、処理室201内の圧力が所定の処理圧力となるように制御する(S3)。また、ヒータ206に供給する電力を調整し、ウェハ200の表面温度が所定の処理温度となるように制御する(S4)。
【0052】
なお、基板搬入工程(S1)、基板載置工程(S2)、圧力調整工程(S3)、及び昇温工程(S4)においては、真空ポンプ264を作動させつつ、開閉バルブvs3,vb3,vt3,vo3を閉じ、開閉バルブvs4,vb4,vt4,vo4を開けることで、処理室201内にArガスを常に流しておく(idle)。これにより、ウェハ200上へのパーティクルの付着を抑制することが可能となる。
【0053】
工程S1〜S4と並行して、第1液体原料(Sr元素を含む有機金属液体原料)を気化させた原料ガス(以下、第1原料ガスという)を生成(予備気化)させておく(Set up)。すなわち、開閉バルブvs2を閉めたまま、開閉バルブvs1を開けるとともに、第1圧送ガス供給管237sから圧送ガスを供給して、第1液体原料供給源220sから気化器229sへと第1液体原料を圧送(供給)させ、気化器229sにて第1液体原料を気化させて第1原料ガスを生成させておく。この予備気化工程では、真空ポンプ264を作動させつつ、開閉バルブvs3を閉めたまま、開閉バルブvs5を開けることにより、第1原料ガスを処理室201内に供給することなく処理室201をバイパスして排気しておく。
【0054】
また、工程S1〜S4と並行して、酸化剤としてのオゾンガスを生成させておく(Set up)ことが好ましい。すなわち、酸素ガス供給源230oからオゾナイザ229oへと酸素ガスを供給して、オゾナイザ229oにてオゾンガスを生成させておく。この際、真空ポンプ264を作動させつつ、開閉バルブvo3を閉めたまま、開閉バルブvo5を開けることにより、オゾンガスを処理室201内に供給することなく処理室201をバイパスして排気しておく。
【0055】
気化器229sにて第1原料ガスを安定して生成させたり、あるいはオゾナイザ229oにてオゾンガスを安定して生成させたりするには所定の時間を要する。このため、本実施形態では、第1原料ガスあるいはオゾンガスを予め生成させておき、開閉バルブvs3,vs5,vo3,vo5の開閉を切り替えることにより、第1原料ガスやオゾンガスの流路を切り替える。その結果、開閉バルブの切り替えにより、処理室201内への第1原料ガスやオゾンガスの安定した供給を迅速に開始あるいは停止できるようになり、好ましい。この予備気化工程の実施と同時に、開閉バルブvt2を開き、気化器229tの液体原料流路21t内の洗浄を開始する。なお、洗浄方法の詳細については後述する。
【0056】
<第1ステップ(S5)>
続いて、第1ステップ(S5)を実施する。第1ステップ(S5)では、表面に金属薄
膜としてのルテニウム薄膜が形成されたウェハ200上に、例えばストロンチウム、チタンを含む金属酸化膜としてのSTO(SrTiO)膜を、ルテニウム薄膜の酸化が起こらない温度であって、かつSTO膜がアモルファス状態となる第1温度で形成する。具体的には、ヒータ206に供給する電力を調整し、ウェハ200の表面温度が上述の第1温度となるように制御しつつ、以下に述べる第1原料ガスを用いたALD工程(S51)と第3原料ガスを用いたALD工程(S52)とを1サイクルとしてこのサイクルを所定回数繰り返すことにより、ルテニウム薄膜上に所望の膜厚のSTO膜を形成する。
【0057】
なお、本発明者等は、STO膜は、処理温度(成膜時のウェハ200の表面温度)を400℃とした場合に結晶化するが、375℃とした場合には結晶化しないことを見出した。すなわち、375〜400℃の間にSTO膜が結晶化する温度(ポイント)が存在するものと考えられ、少なくとも処理温度を375℃以下とすることでアモルファス状態のSTO膜を形成できるものと考えられる。また、下地のルテニウム薄膜は、処理温度を375℃とした場合に酸化するが、350℃とした場合には酸化を抑制できるようになり、300℃以下とした場合にはより確実に酸化を抑制できるようになることを見出した。但し、処理温度を300℃超〜350℃の範囲とした場合には、下地のルテニウム薄膜は酸化することもあれば酸化しないこともあり、酸化を抑制できるか否かが不安定となってしまう場合がある。
【0058】
以下に、第1原料ガスを用いたALD工程(S51)、第3原料ガスを用いたALD工程(S52)を順に述べる。
【0059】
第1原料ガスを用いたALD工程(S51)では、真空ポンプ264を作動させたまま、開閉バルブvs4,vs5を閉じ、開閉バルブvs3を開けて、処理室201内への第1原料ガスの供給を開始する(Sr)。第1原料ガスは、シャワーヘッド240により分散されて処理室201内のウェハ200上に均一に供給されて、ウェハ200表面に第1原料ガスのガス分子が吸着する。余剰な第1原料ガスは、排気ダクト259内を流れ、排気口260へと排気される。なお、処理室201内への第1原料ガスの供給時には、第2原料ガス供給管213b、第3原料ガス供給管213t、オゾンガス供給管213o内への第1原料ガスの侵入を防止するように、また、処理室201内における第1原料ガスの拡散を促すように、開閉バルブvb4,vt4,vo4は開けたままとし、処理室201内にArガスを常に流しておくことが好ましい。
【0060】
開閉バルブvs3を開け、第1原料ガスの供給を開始した後、所定時間が経過したら、開閉バルブvs3を閉じ、開閉バルブvs4,vs5を開けて、処理室201内への第1原料ガスの供給を停止する。また、同時に、開閉バルブvs1を閉めて、気化器229sへの第1液体原料の供給も停止する。
【0061】
ここで、開閉バルブvs3を閉め、第1原料ガスの供給を停止した後は、開閉バルブvs4,vb4,vt4,vo4は開けたままとし、処理室201内にArガスを常に流しておく。これにより、処理室201内に残留している第1原料ガスを除去し、処理室201内をArガスによりパージする(PS1)。
【0062】
また、開閉バルブvs1を閉め、第1液体原料の供給を停止した後は、気化器229s内の洗浄を開始する(PS1〜)。すなわち、洗浄液圧送ガス供給管237eから圧送ガスを供給するとともに、開閉バルブvs1を閉じたまま、開閉バルブvs2を開け、気化器229sの液体原料流路21s内に洗浄液を供給して、液体原料流路21s内を洗浄する。このとき開閉バルブvs1,vs3は閉、開閉バルブvs2,vs5は開とされるので、液体原料流路21s内に供給された洗浄液は、液体原料流路21s内を洗浄した後、気化室20s内へ供給されて気化される。このとき、液体原料流路21s内に残留してい
た第1液体原料及び溶媒も一緒に気化室20s内へ供給されて気化される。そして、気化された洗浄液、第1液体原料、及び溶媒は、第1原料ガス供給管213sを通り、処理室201内へ供給されることなく、ベント管215sより処理室201をバイパスして排気される。なお、気化器229sの液体原料流路21s内の洗浄は、例えば、次回の気化器229sへの第1液体原料の供給開始時まで(S52のTiまで)継続させる。
【0063】
処理室201内のパージが完了したら、開閉バルブvo4,vo5を閉じ、開閉バルブvo3を開けて、処理室201内へのオゾンガスの供給を開始する(OxS)。オゾンガスは、シャワーヘッド240により分散されて処理室201内のウェハ200上に均一に供給され、ウェハ200表面に吸着している第1原料ガスのガス分子と反応して、ウェハ200上にSr元素を含む薄膜としてSrO膜を生成する。余剰なオゾンガスや反応副生成物は、排気ダクト259内を流れ、排気口260へと排気される。なお、処理室201内へのオゾンガスの供給時には、第1原料ガス供給管213s、第2原料ガス供給管213b、第3原料ガス供給管213t内へのオゾンガスの侵入を防止するように、また、処理室201内におけるオゾンガスの拡散を促すように、開閉バルブvs4,vb4,vt4は開けたままとし、処理室201内にArガスを常に流しておくことが好ましい。
【0064】
開閉バルブvo3を開け、オゾンガスの供給を開始した後、所定時間が経過したら、開閉バルブvo3を閉じ、開閉バルブvo4,vo5を開けて、処理室201内へのオゾンガスの供給を停止する。
【0065】
開閉バルブvo3を閉め、オゾンガスの供給を停止した後は、開閉バルブvs4,vb4,vt4,vo4は開けたままとし、処理室201内にArガスを常に流しておく。これにより、処理室201内に残留しているオゾンガスや反応副生成物を除去し、処理室201内をArガスによりパージする(PS2)。
【0066】
なお、第1原料ガスを用いたALD工程(S51)においては、第3液体原料(Ti元素を含む有機金属液体原料)を気化させた原料ガス(以下、第3原料ガスという)を予め生成(予備気化)させておく(PS1〜)。すなわち、開閉バルブvt2を閉じ、開閉バルブvt1を開けるとともに、第3圧送ガス供給管237tから圧送ガスを供給して、第3液体原料供給源220tから気化器229tへと第3液体原料を供給させ、気化器229tにて第3液体原料を気化させて、第3原料ガスを生成させておく。第1原料ガスを用いたALD工程(S51)では、真空ポンプ264を作動させつつ、開閉バルブvt3を閉めたまま、開閉バルブvt5を開けることにより、第3原料ガスを処理室201内に供給することなく処理室201をバイパスして排気しておく。このように、第3原料ガスを予め生成させておき、後述の第3原料ガスを用いたALD工程(S52)において開閉バルブvt3,vt5の開閉を切り替えることで、第3原料ガスの流路を切り替える。これにより、第3原料ガスを用いたALD工程(S52)において処理室201内への第3原料ガスの安定した供給を迅速に開始あるいは停止できるようになり、好ましい。
【0067】
続いて、第3原料ガスを用いたALD工程(S52)を実施する。
【0068】
第3原料ガスを用いたALD工程(S52)では、真空ポンプ264を作動させたまま、開閉バルブvt4,vt5を閉じ、開閉バルブvt3を開けて、処理室201内への第3原料ガスの供給を開始する(Ti)。第3原料ガスは、シャワーヘッド240により分散されて処理室201内のウェハ200上に均一に供給されて、ウェハ200表面に第3原料ガスのガス分子が吸着する。余剰な第3原料ガスは、排気ダクト259内を流れ、排気口260へと排気される。なお、処理室201内への第3原料ガスの供給時には、第1原料ガス供給管213s、第2原料ガス供給管213b、オゾンガス供給管213o内への第3原料ガスの侵入を防止するように、また、処理室201内における第3原料ガスの
拡散を促すように、開閉バルブvs4,vb4,vo4は開けたままとし、処理室201内にArガスを常に流しておくことが好ましい。
【0069】
開閉バルブvt3を開け、第3原料ガスの供給を開始した後、所定時間が経過したら、開閉バルブvt3を閉じ、開閉バルブvt4,vt5を開けて、処理室201内への第3原料ガスの供給を停止する。また、同時に、開閉バルブvt1を閉めて、気化器229tへの第3液体原料の供給も停止する。
【0070】
ここで、開閉バルブvt3を閉め、第3原料ガスの供給を停止した後は、開閉バルブvs4,vb4,vt4,vo4は開けたままとし、処理室201内にArガスを常に流しておく。これにより、処理室201内に残留している第3原料ガスを除去し、処理室201内をArガスによりパージする(PT1)。
【0071】
また、開閉バルブvt1を閉め、第3液体原料の供給を停止した後は、気化器229t内の洗浄を開始する(PT1〜)。すなわち、洗浄液圧送ガス供給管237eから圧送ガスを供給するとともに、開閉バルブvt1を閉じたまま、開閉バルブvt2を開け、気化器229tの液体原料流路21t内に洗浄液を供給して、液体原料流路21t内を洗浄する。このとき開閉バルブvt1,vt3は閉、開閉バルブvt2,vt5は開とされるので、液体原料流路21t内に供給された洗浄液は、液体原料流路21t内を洗浄した後、気化室20t内へ供給されて気化される。このとき、液体原料流路21t内に残留していた第3液体原料及び溶媒も一緒に気化室20s内へ供給されて気化される。そして、気化された洗浄液、第3液体原料、及び溶媒は、第3原料ガス供給管213tを通り、処理室201内へ供給されることなく、ベント管215tより処理室201をバイパスして排気される。なお、気化器229tの液体原料流路21t内の洗浄は、例えば、次回の気化器229tへの第3液体原料の供給開始時まで(S51のSrまで)継続させる。
【0072】
処理室201内のパージが完了したら、開閉バルブvo4,vo5を閉じ、開閉バルブvo3を開けて、処理室201内へのオゾンガスの供給を開始する(OxT)。オゾンガスは、シャワーヘッド240により分散されて処理室201内のウェハ200上に均一に供給され、ウェハ200表面に吸着している第3原料ガスのガス分子と反応して、ウェハ200上にTi元素を含む薄膜としてTiO膜を生成する。余剰なオゾンガスや反応副生成物は、排気ダクト259内を流れ、排気口260へと排気される。なお、処理室201内へのオゾンガスの供給時には、第1原料ガス供給管213s、第2原料ガス供給管213b、第3原料ガス供給管213t内へのオゾンガスの侵入を防止するように、また、処理室201内におけるオゾンガスの拡散を促すように、開閉バルブvs4,vb4,vt4は開けたままとし、処理室201内にArガスを常に流しておくことが好ましい。
【0073】
開閉バルブvo3を開け、オゾンガスの供給を開始した後、所定時間が経過したら、開閉バルブvo3を閉じ、開閉バルブvo4,vo5を開けて、処理室201内へのオゾンガスの供給を停止する。
【0074】
開閉バルブvo3を閉め、オゾンガスの供給を停止した後は、開閉バルブvs4,vb4,vt4,vo4は開けたままとし、処理室201内にArガスを常に流しておく。これにより、処理室201内に残留しているオゾンガスや反応副生成物を除去し、処理室201内をArガスによりパージする(PT2)。
【0075】
上述した第1原料ガスを用いたALD工程(S51)と第3原料ガスを用いたALD工程(S52)とを1サイクルとしてこのサイクルを所定回数繰り返すことにより、ルテニウム薄膜上に所望の膜厚のSTO膜、すなわちSrTiO薄膜を形成する。
【0076】
なお、第1ステップ(S5)におけるウェハ200の処理条件としては、例えばSTO膜を形成する場合、
処理温度(第1温度):200〜350℃、好ましくは200〜300℃、
処理圧力:10〜1000Pa、好ましくは10〜500Pa、
第1液体原料(Sr(C1425(略称;Sr(METHD)) 0.1mol/L ECH希釈)供給流量:0.01〜0.5cc/min、
第3液体原料(Ti(C11)(C1119(略称;Ti(MPD)(THD)) 0.1mol/L ECH希釈)供給流量:0.01〜0.5cc/min、
酸化剤(オゾンガス)供給流量:500〜2000sccm(オゾン濃度20〜200g/Nm
洗浄液(ECH)供給流量:0.05〜0.5cc/min、
膜厚:3〜5nm(30〜50Å)、
サイクル数:60〜100サイクル
が例示される。それぞれの処理条件を、それぞれの範囲内でのある値で一定に維持することで、ウェハ200上に形成されたルテニウム薄膜上に、アモルファス状態のSTO膜が形成される。
【0077】
なお、処理温度が200℃を下回ると、原料ガスのガス分子が下地のルテニウム薄膜に吸着する際の吸着メカニズムは物理吸着となるため、形成されたSTO膜が下地のルテニウム薄膜から剥がれ易くなってしまう。また、O分解する確率(オゾンガスがウェハ200表面に吸着している原料ガスのガス分子と反応する確率)が低下し、成膜レートが低下してしまう場合がある。一方、処理温度が350℃を超えると、下地のルテニウム薄膜が酸化され易くなってしまう。これに対して、処理温度を200〜350℃とすれば、原料ガスのガス分子が下地のルテニウム薄膜に吸着する際の吸着メカニズムは化学吸着となるため、形成されたSTO膜が下地のルテニウム薄膜から剥がれ易くなることを抑制できる。また、処理温度を200〜350℃とすれば、O分解する確率の低下を抑制でき、成膜レートの低下を抑制でき、下地のルテニウム薄膜の酸化を抑制できる。また、このような温度範囲であれば、アモルファス状態のSTO膜を形成でき、形成したSTO膜を酸素透過バリアとして機能させることができるようになる。
【0078】
但し、第1ステップ(S5)において処理温度を300℃超〜350℃とした場合、下地のルテニウム薄膜は酸化することもあれば酸化しないこともあり、酸化を抑制できるか否かが不安定となってしまう場合がある。これに対し、処理温度を300℃以下とすれば、下地のルテニウム薄膜の酸化をより確実に抑制できるようになる。すなわち、処理温度を200〜300℃とすれば、形成されたアモルファス状態のSTO膜が下地のルテニウム薄膜から剥がれ易くなることを抑制でき、成膜レートの低下を抑制でき、下地のルテニウム薄膜の酸化をより確実に抑制できるようになる。
【0079】
また、処理圧力が10Paを下回ると、下地のルテニウム薄膜への原料ガスの吸着が妨げられ、下地のルテニウム薄膜への吸着種の量、すなわち下地のルテニウム薄膜に吸着する原料ガスのガス分子の量が少なくなってしまい、成膜レートを高めることが困難となってしまう。一方、処理圧力が1000Paを超えると、分圧にもよるが原料ガスの再液化が発生してしまう場合がある。これに対し、処理圧力を10〜1000Paとすれば、下地のルテニウム薄膜への原料ガスのガス分子の吸着を促進でき、成膜レートを高めることができ、原料ガスの再液化を抑制することができる。なお、処理圧力を500Pa以下とすれば、原料ガスの再液化の発生をさらに抑制することができる。
【0080】
また、液体原料供給流量が0.01cc/minを下回ると、成膜レートを高めることが困難となってしまう。一方、液体原料供給流量が大きくなるほど液体原料を気化させる
のが困難となってしまう。従って、液体原料供給流量は、1度に1枚のウェハ200を処理する枚葉式の基板処理の場合、0.01〜0.5cc/min程度とするのが好ましく、1度に複数枚のウェハ200を処理するバッチ式の基板処理の場合、0.01〜2cc/min程度とするのが好ましい。
【0081】
また、洗浄液供給流量が0.01cc/minを下回ると、気化器229s,229b,229tの洗浄効果が低下して、気化器229s,229b,229tの詰まりの抑制効果が不十分となったり、気化器229s,229b,229tの洗浄に要する時間が長くなったりしてしまう場合がある。一方、洗浄液供給流量が大きくなるほど洗浄液を気化させるのが困難となってしまう。従って、洗浄液供給流量は、1度に1枚のウェハ200を処理する枚葉式の基板処理の場合、0.01〜0.5cc/min程度とするのが好ましく、1度に複数枚のウェハ200を処理するバッチ式の基板処理の場合、0.01〜2cc/min程度とするのが好ましい。
【0082】
また、形成するアモルファス状態のSTO膜の膜厚が3nm未満だと、薄すぎて酸素透過バリアとしての機能が低下してしまう場合がある。また、膜厚が薄すぎると、後述する緻密化工程(S5a)においてSTO膜を緻密化させることが困難となってしまう。一方、膜厚が5nmを超えると、後述する結晶化工程(S7)においてSTO膜を結晶化させることが困難となってしまう。これに対して、膜厚を3〜5nmとすれば、形成したSTO膜を酸素透過バリアとして十分に機能させることが可能となり、後述する緻密化工程(S5a)においてSTO膜を十分に緻密化させ、後述する結晶化工程(S7)においてSTO膜を十分に結晶化させることが可能となる。
【0083】
第1ステップ(S5)においては、ウェハ200の表面温度を上述の第1温度としているため、上述のようにアモルファス状態のSTO膜を形成でき、下地のルテニウム薄膜の酸化を抑制できる。なお、本実施形態では、各液体原料を希釈する溶媒、および洗浄液として、同一の物質(ECH)を用いている。
【0084】
<第2ステップ(S6)>
続いて、第2ステップ(S6)を実施する。第2ステップ(S6)では、第1ステップ(S5)で形成したSTO膜上に、例えばストロンチウム、チタンを含む金属酸化膜としてのSTO膜を、第1温度を超える(上回る)第2温度で目標の膜厚まで形成する。具体的には、ヒータ206に供給する電力を調整し、ウェハ200の表面温度が上述の第2温度となるように制御しつつ、第1原料ガスを用いたALD工程(S61)と第3原料ガスを用いたALD工程(S62)とを1サイクルとしてこのサイクルを所定回数繰り返すことにより、第1ステップで形成したSTO膜上に所望の膜厚のSTO膜を形成する。なお、第1原料ガスを用いたALD工程(S61)及び第3原料ガスを用いたALD工程(S62)のシーケンスは、上述した第1原料ガスを用いたALD工程(S51)及び第3原料ガスを用いたALD工程(S52)のシーケンスと同様である。
【0085】
上述したように、第1ステップ(S5)で形成するSTO膜はアモルファス状態とする必要があった。これに対し、第2ステップ(S6)で形成するSTO膜は、アモルファス(非晶質)状態であってもよいし、ポリ状態(多結晶)であってもよいが、ポリ状態とする方が好ましい。第1ステップ(S5)及び第2ステップ(S6)でSTO膜を形成した後、後述するように結晶化工程(S7)でSTO膜全体をアニールして結晶化させるが、第2ステップ(S6)でポリ状態のSTO膜を形成しておけば、結晶化工程(S7)においてSTO膜全体を結晶化させ易くなる。この場合、例えば、第1ステップ(S5)での処理温度(第1温度)を300℃としてアモルファス状態のSTO膜を形成し、第2ステップ(S6)での処理温度(第2温度)を400℃としてポリ状態のSTO膜を形成するようにすればよい。
【0086】
なお、第2ステップ(S6)でアモルファス状態のSTO膜を形成する場合は、第2ステップ(S6)での処理温度(第2温度)を第1ステップ(S5)での処理温度(第1温度)よりも高くすることが好ましい。第2ステップ(S6)での処理温度(第2温度)を第1ステップ(S5)での処理温度(第1温度)よりも高くすることで、後述する結晶化工程(S7)において比較的結晶化し易いアモルファス状態のSTO膜を形成することができる。この場合、例えば、第1ステップ(S5)での処理温度(第1温度)を300℃としてアモルファス状態のSTO膜を形成し、第2ステップ(S6)での処理温度(第2温度)を350℃としてアモルファス状態のSTO膜を形成するようにすればよい。
【0087】
このように、第2ステップ(S6)では、ポリ状態のSTO膜、または、第1ステップ(S5)で形成したアモルファス状態のSTO膜よりも結晶化し易い(第1ステップ(S5)で形成したアモルファス状態のSTO膜よりも低い温度で結晶化する)アモルファス状態のSTO膜を形成するのが好ましい。すなわち、第2温度は第1温度以上の温度とするのが好ましく、第1温度と同じ温度とすることもできるが、第1温度よりも高い温度とすることが好ましい。
【0088】
また、第2ステップ(S6)で形成するSTO膜は、第1ステップ(S5)で形成するSTO膜よりも膜厚が厚くなるように成膜するのが好ましい。すなわち、第1ステップ(S5)で薄くSTO膜を形成し、第2ステップ(S6)で厚くSTO膜を形成するのが好ましい。
【0089】
なお、第2ステップ(S6)におけるウェハ200の処理条件としては、例えばSTO膜を形成する場合、
処理温度(第2温度):300〜400℃、好ましくは350〜400℃、
処理圧力:10〜1000Pa、好ましくは10〜500Pa、
第1液体原料(Sr(C1425(略称;Sr(METHD)) 0.1mol/L ECH希釈)供給流量:0.01〜0.5cc/min、
第3液体原料(Ti(C11)(C1119(略称;Ti(MPD)(THD)) 0.1mol/L ECH希釈)供給流量:0.01〜0.5cc/min、
酸化剤(オゾンガス)供給流量:500〜2000sccm(オゾン濃度20〜200g/Nm)、
洗浄液(ECH)供給流量:0.05〜0.5cc/min、
膜厚:12〜15nm(120〜150Å)、
サイクル数:240〜300サイクル
が例示される。それぞれの処理条件を、それぞれの範囲内でのある値で一定に維持することで、第1ステップ(S5)で形成したアモルファス状態のSTO膜上に、STO膜がさらに形成される。
【0090】
なお、第1ステップ(S5)と第2ステップ(S6)とで条件が異なるのは、処理温度のみであり、処理圧力等の他の条件は第1ステップ(S5)と同様である。第2ステップ(S6)において処理温度が300℃を下回ると、成膜レートが低下してしまう場合があり、また、後述する結晶化工程(S7)を実施しても結晶化させることが困難なアモルファス状態のSTO膜が形成されてしまう場合がある。一方、処理温度が400℃を超えると、原料ガスが自己分解してALD成膜を適切に行えなくなる場合がある。これに対して、処理温度を300〜400℃とすれば、成膜レートの低下を抑制でき、結晶化しにくいアモルファス状態のSTO膜が形成されてしまうことを抑制でき、また、ALD成膜を適切に行うことができる。なお、300〜400℃の範囲内においても、処理温度を高くするほど高い成膜レートを得ることができ、結晶化しやすいアモルファス状態のSTO膜や
結晶化したポリ状態のSTO膜を形成でき、STO膜の膜質を向上させることもできる。そのため、処理温度は350〜400℃とするのがより好ましい。
【0091】
なお、第2ステップ(S6)でSTO膜を形成する際には、第1ステップ(S5)にて予め形成したアモルファス状態のSTO膜が酸素の透過を抑制するバリアとして機能するため、下地のルテニウム薄膜の酸化が抑制される。ここで、第1ステップ(S5)で形成したSTO膜が多結晶状態である場合、第2ステップ(S6)でSTO膜を形成する際に、第1ステップ(S5)で形成したSTO膜の結晶粒界を介して酸素が透過し、下地のルテニウム薄膜が酸化してしまうことが考えられる。これに対し、第1ステップ(S5)で形成したSTO膜がアモルファス状態である場合、アモルファス状態のSTO膜には結晶粒界が存在しないので、酸素が透過するパスは形成されず、第2ステップ(S6)でSTO膜を形成する際に、酸素の透過をブロックでき、下地のルテニウム薄膜の酸化を抑制することができる。なお、本実施形態では、各液体原料を希釈する溶媒、および洗浄液として、同一の物質(ECH)を用いている。
【0092】
<結晶化工程(S7)>
続いて、ヒータ206に供給する電力を調整し、第1ステップ(S5)及び第2ステップ(S6)で形成したSTO膜全体をアニールして結晶化させる。
【0093】
なお、結晶化工程(S7)におけるウェハ200の処理条件としては、例えばSTO膜を結晶化する場合、
処理温度:500〜600℃、
処理圧力:50〜2000Pa、
処理ガス:ArまたはN 供給流量:0.5〜5000sccm、
処理時間:1〜60分
が例示され、それぞれの処理条件を、それぞれの範囲内でのある値で一定に維持することで、第1ステップ(S5)及び第2ステップ(S6)で形成したSTO膜全体が結晶化する。その結果、STO膜全体の誘電率が増加する。
【0094】
<基板搬出工程(S8)>
その後、上述した基板搬入工程(S1)、基板載置工程(S2)に示した手順とは逆の手順により、所望膜厚の薄膜を形成した後のウェハ200を処理室201内から搬送室271内へ搬出して、本実施形態にかかる基板処理工程を完了する。
【0095】
なお、金属酸化膜の形成工程をALD法により行う場合、処理温度(第1温度、及び第2温度)を原料ガスが自己分解しない程度の温度帯となるように制御する。この場合、各原料ガスを用いたALD工程(S51,52,61,62)において各原料ガスを供給する際には、原料ガスはウェハ200上に吸着する。また、オゾンガスを供給する際には、ウェハ200上に吸着している原料ガス分子とオゾンガスとが反応することにより、ウェハ200上に1原子層未満(1Å未満)程度の薄膜が形成される。なお、このとき、オゾンガスにより薄膜中に混入するC,H等の不純物を脱離させることが出来る。
【0096】
(3)本実施形態にかかる効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又はそれ以上の効果を奏する。
【0097】
本実施形態によれば、第2ステップ(S6)でSTO膜を形成する前に、第1ステップ(S5)でSTO膜を予め形成している。第1ステップ(S5)にて形成したSTO膜は酸素の透過を抑制するバリアとして機能するため、第2ステップ(S6)にて第2温度(例えば300〜400℃、好ましくは350〜400℃)でSTO膜を形成する際、下地のルテニウム薄膜に酸素含有ガスが接触し難くなり、ルテニウム薄膜の酸化を抑制するこ
とが可能となる。
【0098】
また、本実施形態にかかる第1ステップ(S5)では、ルテニウム薄膜上に、下地のルテニウム薄膜の酸化が起こらない温度であってSTO膜がアモルファス状態となる第1温度(例えば200〜350℃、好ましくは200〜300℃)でSTO膜を形成している。STO膜をこのような温度領域で形成することにより、下地のルテニウム薄膜の酸化を抑制することが可能となる。
【0099】
また、本実施形態によれば、第1温度でSTO膜を形成した後は、第1温度を超える(上回る)第2温度(300〜400℃、好ましくは350〜400℃)で目標の膜厚までSTO膜を形成している。第1温度でSTO膜を形成した後、STO膜をこのような温度領域で形成することにより、下地のルテニウム薄膜の酸化を抑制しつつ、STO膜の形成速度を速めることが可能となり、基板処理の生産性を向上させることが可能となる。
【0100】
また、本実施形態によれば、第2温度で目標の膜厚までSTO膜を形成した後、結晶化工程(S7)を実施することにより、第1ステップ(S5)及び第2ステップ(S6)で形成したSTO膜全体をアニールして結晶化させている。その結果、STO膜の誘電率を増加させることが可能となる。なお、本実施形態では、第1ステップ(S5)及び第2ステップ(S6)におけるSTO膜の形成と、結晶化工程(S7)におけるSTO膜のアニールとを同一の処理室201内で連続的に行う例について説明したが、結晶化工程(S7)は、第1ステップ(S5)及び第2ステップ(S6)を行う処理室201とは異なる処理室、すなわちアニール用の処理室で行うようにしてもよい。
【0101】
<本発明の第2の実施形態>
上述の実施形態においては、第1温度で形成したアモルファス状態のSTO膜は酸素の透過を抑制するバリアとして機能していた。これに対し本実施形態では、第1温度で形成したアモルファス状態のSTO膜に対して更にアニールを施してそのアモルファス状態を維持しつつSTO膜を緻密化させる。これにより、STO膜の密度を高くすることができ、アモルファス状態のSTO膜における酸素の透過を抑制するバリア効果をさらに高めることが可能である。以下に、本実施形態について図6(b)を参照しながら説明する。
【0102】
図6(b)に示すように、本実施形態では、第1ステップ(S5)において、第1温度で形成したアモルファス状態のSTO膜に対し、そのアモルファス状態を維持しつつ、アニールを施してSTO膜を緻密化する緻密化工程(S5a)をさらに有する点が、上述の実施形態と異なる。すなわち、第1ステップ(S5)において、第1原料ガスを用いたALD工程(S51)と第3原料ガスを用いたALD工程(S52)とを1サイクルとしてこのサイクルを所定回数繰り返すことにより所望の膜厚のSTO膜を形成した後、ヒータ206に供給する電力を調整してSTO膜に対する緻密化工程(S5a)を実施し、緻密化工程(S5a)の完了後に第2ステップ(S6)を実施する点が、上述の実施形態と異なる。その他は、上述の実施形態と同様である。
【0103】
なお、緻密化工程(S5a)におけるウェハ200の処理条件としては、例えばSTO膜を緻密化する場合、
処理温度:400〜600℃、
処理圧力:50〜2000Pa、
処理ガス:ArまたはN 供給流量:0.5〜5000sccm、
処理時間:1〜10分
が例示され、それぞれの処理条件を、それぞれの範囲内でのある値で一定に維持することで、アモルファス状態のSTO膜が、アモルファス状態が維持されたまま緻密化される。
【0104】
なお、処理温度が400℃を下回ると、アモルファス状態のSTO膜を緻密化させるのが困難となる。一方、処理温度が600℃を超えると、アモルファス状態のSTO膜が結晶化され易くなってしまい、下地のルテニウム薄膜が酸化され易くなってしまう。これに対して、処理温度を400〜600℃とすれば、アモルファス状態のSTO膜を結晶化させることなくアモルファス状態のまま十分に緻密化でき、下地のルテニウム薄膜の酸化を抑制できる。なお、アモルファス状態のSTO膜をアモルファス状態のまま緻密化することにより、アモルファス状態のSTO膜を構成する分子間の距離を縮めることができ、これにより酸素の透過を抑制するバリア効果を一層高めることができる。また、この緻密化により、後述する結晶化工程(S7)においてSTO膜全体を結晶化させ易くすることができる。
【0105】
また、処理圧力が低すぎると、形成したSTO膜からの脱ガスが発生し易くなり、STO膜表面にて面荒れが生じ易くなる。これに対して、処理圧力を50〜2000Paとすれば、形成したSTO膜からの脱ガスの発生を抑制でき、STO膜表面における面荒れの発生を抑制することができる。
【0106】
また、処理時間が短すぎるとアモルファス状態のSTO膜が十分に緻密化し難くなる。例えば、処理温度を400〜600℃とした場合において処理時間を1分未満とすると、アモルファス状態のSTO膜の緻密化が不十分となる場合がある。一方、処理時間が長すぎるとアモルファス状態のSTO膜が結晶化し易くなり、下地のルテニウム薄膜が酸化され易くなる。例えば、処理温度を400〜600℃とした場合において処理時間が10分を超えると、アモルファス状態のSTO膜が結晶化してしまい、酸素透過バリアとしての機能を果たさなくなり、下地のルテニウム薄膜が酸化され易くなる。これに対して、処理温度を400〜600℃とした場合において処理時間を1〜10分とすれば、アモルファス状態のSTO膜を結晶化させることなく十分に緻密化でき、下地のルテニウム薄膜の酸化を十分に抑制できる。
【0107】
なお、緻密化工程(S5a)でのアニール温度を、結晶化工程(S7)でのアニール温度と同じ温度とした場合であっても、アニール時間を調整することで、具体的には緻密化工程(S5a)でのアニール時間を結晶化工程(S7)でのアニール時間よりも短くすることで、STO膜を結晶化させることなくアモルファス状態を維持したまま緻密化できる。
【0108】
上述したとおり、第1温度で予め形成したSTO膜は、第2温度でSTO膜を形成する際に酸素の透過を抑制するバリアとして機能するが、本実施形態によれば、第1温度で予め形成したSTO膜に対し、さらに緻密化工程(S5a)を実施してアモルファス状態のSTO膜をアモルファス状態のまま緻密化することにより、酸素の透過を抑制するバリア効果をさらに高めることが可能となる。その結果、下地のルテニウム薄膜の酸化をさらに抑制することが可能となる。なお、本実施形態では、第1ステップ(S5)における第1原料ガスを用いたALD工程(S51)と第3原料ガスを用いたALD工程(S52)との繰り返しによるSTO膜の形成と、緻密化工程(S5a)とを同一の処理室201内で連続的に行う例について説明したが、緻密化工程(S5a)は、STO膜の形成を行う処理室201とは異なる処理室、すなわちアニール用の処理室で行うようにしてもよい。
【0109】
以下に、第1の実施形態で説明した基板処理装置を用いつつ、第2の実施形態のフローによりルテニウム薄膜上へのSTO膜の成膜を行った実施例について説明する。なお、本実施例における各ステップの処理条件は以下の通りである。
【0110】
まず、ステップ1(S5)で第1原料ガスを用いたALD工程(S51)と第3原料ガスを用いたALD工程(S52)とを繰り返す工程では、処理温度:275℃、処理圧力
:10〜500Pa、膜厚:5nm(50Å)とし、ルテニウム薄膜上にアモルファス状態のSTO膜を形成した。
【0111】
緻密化工程(S5a)では、処理温度:580℃、処理圧力:50〜2000Pa、処理ガス:Ar、処理ガス供給流量:0.5〜5000sccm、処理時間:2分とし、形成したSTO膜を、アモルファス状態を維持したまま緻密化した。
【0112】
ステップ2(S6)で第1原料ガスを用いたALD工程(S61)と第3原料ガスを用いたALD工程(S62)とを繰り返す工程では、処理温度:400℃、処理圧力:10〜500Pa、膜厚:5nm(50Å)とし、緻密化したSTO膜上にポリ状態のSTO膜を形成した。なお、ステップ1(S5)とステップ2(S6)とで形成したSTO膜の合計厚さは10nmとなった。
【0113】
結晶化工程(S7)では、処理温度:580℃、処理圧力:50〜2000Pa、処理ガス:Ar、処理ガス供給流量:0.5〜5000sccm、処理時間:5分とし、ステップ1(S5)とステップ2(S6)とで形成したSTO膜を結晶化した。
【0114】
上述の成膜実験の結果、本実施例の方法では下地のルテニウム薄膜が酸化しないことが確認できた。また、結晶化工程(S7)を実施することにより、ステップ1(S5)とステップ2(S6)との2段階で形成したSTO膜が結晶化して1層の膜になっていることが確認できた。
【0115】
<本発明の第3の実施形態>
上述の実施形態では、金属酸化膜としてSTO(SrTiO)膜を形成する場合を例にとって説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されない。以下に、本発明の他の実施形態として、例えばストロンチウム、チタン、バリウムを含む金属酸化膜としてBST((Ba,Sr)TiO)膜を形成する場合について、図3及び図8を参照しながら説明する。図8は、本発明の他の実施形態にかかる基板処理工程のフロー図である。図3は、本発明の他の実施形態にかかる基板処理装置が有する各バルブの開閉タイミングを示すタイミングチャートとしてのシーケンス図である。このタイミングチャートにおいても、Highレベルはバルブ開を、Lowレベルはバルブ閉を示している。なお、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作は、コントローラ280によって制御される。
【0116】
図8に示すとおり、本実施形態では、第1ステップ(S5)において、第1原料ガスを用いたALD工程(S51)、第3原料ガスを用いたALD工程(S52)、第2原料ガスを用いたALD工程(S53)、第3原料ガスを用いたALD工程(S54)を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数繰り返すことにより、ルテニウム薄膜上に所望の膜厚のBST膜を形成する点が、上述の実施形態と異なる。また、第2ステップ(S6)において、第1原料ガスを用いたALD工程(S61)、第3原料ガスを用いたALD工程(S62)、第2原料ガスを用いたALD工程(S63)、第3原料ガスを用いたALD工程(S64)を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数繰り返すことにより、第1ステップ(S5)で形成したBST膜上に所望の膜厚のBST(チタン酸バリウムストロンチウム)膜を形成する点が、上述の実施形態と異なる。その他は、上述の実施形態と同様である。以下に、本実施形態にかかる第1ステップ(S5)、第2ステップ(S6)について説明する。
【0117】
<第1ステップ(S5)>
まず、ヒータ206に供給する電力を調整し、ウェハ200の表面温度が上述の第1温度となるように制御しつつ、上述の実施形態と同様の第1原料ガスを用いたALD工程(
S51)、第3原料ガスを用いたALD工程(S52)を順に実施する。なお、基板搬入工程(S1)〜昇温工程(S4)での第1液体原料の予備気化、第1原料ガスを用いたALD工程(S51)での第3液体原料の予備気化は、上述の実施形態と同様に行う。また、第1液体原料の予備気化の実施と同時に開閉バルブvb2,vt2を開き、気化器229b,229tの液体原料流路21b,21t内の洗浄を開始する。
【0118】
なお、第3原料ガスを用いたALD工程(S52)においては、第2液体原料(Ba元素を含む有機金属液体原料)を気化させた原料ガス(以下、第2原料ガスという)を予め生成(予備気化)させておく(PT1〜)。すなわち、開閉バルブvb2を閉じ、開閉バルブvb1を開けるとともに、第2圧送ガス供給管237bから圧送ガスを供給して、第2液体原料供給源220bから気化器229bへと第2液体原料を供給させ、気化器229bにて第2液体原料を気化させて、第2原料ガスを生成させておく。第3原料ガスを用いたALD工程(S52)では、真空ポンプ264を作動させつつ、開閉バルブvb3を閉めたまま、開閉バルブvb5を開けることにより、第2原料ガスを処理室201内に供給することなく処理室201をバイパスして排気しておく。このように、第2原料ガスを予め生成させておき、後述の第2原料ガスを用いたALD工程(S53)において開閉バルブvb3,vb5の開閉を切り替えることにより、第2原料ガスの流路を切り替える。これにより、第2原料ガスを用いたALD工程(S53)において処理室201内への第2原料ガスの安定した供給を迅速に開始あるいは停止できるようになり、好ましい。
【0119】
続いて、第2原料ガスを用いたALD工程(S53)を実施する。
【0120】
第2原料ガスを用いたALD工程(S53)では、真空ポンプ264を作動させたまま、開閉バルブvb4,vb5を閉じ、開閉バルブvb3を開けて、処理室201内への第2原料ガスの供給を開始する(Ba)。第2原料ガスは、シャワーヘッド240により分散されて処理室201内のウェハ200上に均一に供給されて、ウェハ200表面に第2原料ガスのガス分子が吸着する。余剰な第2原料ガスは、排気ダクト259内を流れ、排気口260へと排気される。なお、処理室201内への第2原料ガスの供給時には、第1原料ガス供給管213s、第3原料ガス供給管213t、オゾンガス供給管213oへの第2原料ガスの侵入を防止するように、また、処理室201内における第2原料ガスの拡散を促すように、開閉バルブvs4,vt4,vo4は開けたままとし、処理室201内にArガスを常に流しておくことが好ましい。
【0121】
開閉バルブvb3を開け、第2原料ガスの供給を開始した後、所定時間が経過したら、開閉バルブvb3を閉じ、開閉バルブvb4,vb5を開けて、処理室201内への第2原料ガスの供給を停止する。また、同時に、開閉バルブvb1を閉めて、気化器229bへの第2液体原料の供給も停止する。
【0122】
ここで、開閉バルブvb3を閉め、第2原料ガスの供給を停止した後は、開閉バルブvs4,vb4,vt4,vo4は開けたままとし、処理室201内にArガスを常に流しておく。これにより、処理室201内に残留している第2原料ガスを除去し、処理室201内をArガスによりパージする(PB1)。
【0123】
また、開閉バルブvb1を閉め、第2液体原料の供給を停止した後は、気化器229b内の洗浄を開始する(PB1〜)。すなわち、洗浄液圧送ガス供給管237eから圧送ガスを供給するとともに、開閉バルブvb1を閉じたまま、開閉バルブvb2を開け、気化器229bの液体原料流路21b内に洗浄液を供給して、液体原料流路21b内を洗浄する。このとき開閉バルブvb1,vb3は閉、開閉バルブvb2,vb5は開とされるので、液体原料流路21b内に供給された洗浄液は、液体原料流路21b内を洗浄した後、気化室20b内へ供給されて気化される。このとき、液体原料流路21b内に残留してい
た第2液体原料及び溶媒も一緒に気化室20b内へ供給されて気化される。そして、気化された洗浄液、第2液体原料、及び溶媒は、第2原料ガス供給管213bを通り、処理室201内へ供給されることなく、ベント管215bより処理室201をバイパスして排気される。なお、気化器229bの液体原料流路21b内の洗浄は、例えば、次回の気化器229bへの第2液体原料の供給開始時まで(次回のS52のTiまで)継続させる。
【0124】
処理室201内のパージが完了したら、開閉バルブvo4,vo5を閉じ、開閉バルブvo3を開けて、処理室201内へのオゾンガスの供給を開始する(OxB)。オゾンガスは、シャワーヘッド240により分散されて処理室201内のウェハ200上に均一に供給され、ウェハ200表面に吸着している第2原料ガスのガス分子と反応して、ウェハ200上にBa元素を含む薄膜としてBaO膜を生成する。余剰なオゾンガスや反応副生成物は、排気ダクト259内を流れ、排気口260へと排気される。なお、処理室201内へのオゾンガスの供給時には、第1原料ガス供給管213s、第2原料ガス供給管213b、第3原料ガス供給管213t内へのオゾンガスの侵入を防止するように、また、処理室201内におけるオゾンガスの拡散を促すように、開閉バルブvs4,vb4,vt4は開けたままとし、処理室201内にArガスを常に流しておくことが好ましい。
【0125】
開閉バルブvo3を開け、オゾンガスの供給を開始した後、所定時間が経過したら、開閉バルブvo3を閉じ、開閉バルブvo4,vo5を開けて、処理室201内へのオゾンガスの供給を停止する。
【0126】
開閉バルブvo3を閉め、オゾンガスの供給を停止した後は、開閉バルブvs4,vb4,vt4,vo4は開けたままとし、処理室201内にArガスを常に流しておく。これにより、処理室201内に残留しているオゾンガスや反応副生成物を除去し、処理室201内をArガスによりパージする(PB2)。
【0127】
なお、第2原料ガスを用いたALD工程(S53)においては、第3液体原料(Ti元素を含む有機金属液体原料)を気化させた原料ガス(以下、第3原料ガスという)を予め生成(予備気化)させておく(PB1〜)。すなわち、開閉バルブvt2を閉じ、開閉バルブvt1を開けるとともに、第3圧送ガス供給管237tから圧送ガスを供給して、第3液体原料供給源220tから気化器229tへと第3液体原料を供給させ、気化器229tにて第3液体原料を気化させて、第3原料ガスを生成させておく。第2原料ガスを用いたALD工程(S53)では、真空ポンプ264を作動させつつ、開閉バルブvt3を閉めたまま、開閉バルブvt5を開けることにより、第3原料ガスを処理室201内に供給することなく処理室201をバイパスして排気しておく。このように、第3原料ガスを予め生成させておき、後述の第3原料ガスを用いたALD工程(S54)において開閉バルブvt3,vt5の開閉を切り替えることにより、第3原料ガスの流路を切り替える。これにより、第3原料ガスを用いたALD工程(S54)において処理室201内への第3原料ガスの安定した供給を迅速に開始あるいは停止できるようになり、好ましい。
【0128】
続いて、第3原料ガスを用いたALD工程(S54)を実施して、ウェハ200上にTi元素を含む薄膜としてTiO膜を生成する。なお、第3原料ガスを用いたALD工程(S54)のシーケンスは、第3原料ガスを用いたALD工程(S52)のシーケンスと同様である。
【0129】
第3原料ガスを用いたALD工程(S54)の後、工程S51〜S54までを1サイクルとしてこのサイクルを所定回数繰り返すことにより、ルテニウム薄膜上に所望の膜厚のBST膜、すなわち(Ba,Sr)TiO薄膜を形成する。なお、第1ステップ(S5)においては、ウェハ200の表面温度を第1温度としているため、BST膜がアモルファス状態となるとともに、下地のルテニウム薄膜の酸化が抑制される。
【0130】
<第2ステップ(S6)>
続いて、第2ステップ(S6)を実施する。第2ステップ(S6)では、第1ステップ(S5)で形成したBST膜上に、例えばストロンチウム、チタン、バリウムを含む金属酸化膜としてのBST膜を、第1温度を超える第2温度で目標の膜厚まで形成する。具体的には、ヒータ206に供給する電力を調整し、ウェハ200の表面温度が第2温度となるように制御しつつ、第1原料ガスを用いたALD工程(S61)、第3原料ガスを用いたALD工程(S62)、第2原料ガスを用いたALD工程(S63)、第3原料ガスを用いたALD工程(S64)を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数繰り返すことにより、第1ステップで形成したBST膜上に所望の膜厚のBST膜を形成する。なお、第1原料ガスを用いたALD工程(S61)、第3原料ガスを用いたALD工程(S62)、第2原料ガスを用いたALD工程(S63)、第3原料ガスを用いたALD工程(S64)のシーケンスは、上述した第1原料ガスを用いたALD工程(S51)、第3原料ガスを用いたALD工程(S52)、第2原料ガスを用いたALD工程(S53)、第3原料ガスを用いたALD工程(S54)のシーケンスと同様である。ここで、第2温度は、第1温度以上の温度とするのが好ましく、第1温度と同じ温度としてもよいが、第1温度よりも大きな温度とする方が好ましい。また、第2ステップ(S6)で形成されるBST膜は、アモルファス(非晶質)状態であってもよいが、ポリ(多結晶)状態とする方が好ましい。すなわち、成膜しながら結晶化するのが好ましい。また、第2ステップ(S6)で形成するBST膜は、第1ステップ(S5)で形成するBST膜よりも膜厚が厚くなるように成膜するのが好ましい。すなわち、第1ステップ(S5)で薄くBST膜を形成し、第2ステップ(S6)で厚くBST膜を形成するのが好ましい。第2ステップ(S6)でBST膜を形成する際には、第1ステップ(S5)にて予め形成したアモルファス状態のBST膜が酸素透過バリアとして機能するため、下地のルテニウム薄膜の酸化が抑制される。ここで、第1ステップ(S5)で形成したBST膜が多結晶状態である場合、第2ステップ(S6)でBST膜を形成する際に、第1ステップ(S5)で形成したBST膜の結晶粒界を介して酸素が透過し、下地のルテニウム薄膜が酸化してしまうことが考えられる。これに対し、第1ステップ(S5)で形成したBST膜がアモルファス状態である場合、アモルファス状態のBST膜には結晶粒界が存在しないので、酸素が透過するパスは形成されず、第2ステップ(S6)でBST膜を形成する際に、酸素の透過をブロックでき、下地のルテニウム薄膜の酸化を抑制することができる。なお、本実施形態に対して上述した第2の実施形態の方法を適用してもよい。すなわち、第1温度で形成したアモルファス状態のBST膜に対して更にアニールを施してそのアモルファス状態を維持しつつBST膜を緻密化させてもよい。これにより、アモルファス状態のBST膜における酸素の透過を抑制するバリア効果をさらに高めることが可能となる。
【0131】
<本発明の他の実施形態>
上述の実施形態では、金属酸化膜として、STO(SrTiO)膜あるいはBST((Ba,Sr)TiO)膜を形成する場合を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されない。すなわち、表面に金属薄膜が形成された基板上に、ハフニウム、イットリウム、ランタン、アルミニウム、ジルコニウム、ストロンチウム、チタン、バリウム、タンタル、ニオブからなる群から選択される少なくとも1種類以上の元素を含む金属酸化膜を形成する場合にも、本発明は好適に適用可能である。また、上述の実施形態では、下地の金属薄膜としてルテニウム薄膜が形成されている場合を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されない。すなわち、ルテニウム薄膜以外の金属薄膜が形成された基板上に金属酸化膜を形成する場合にも、本発明は好適に適用可能である。例えば、窒化チタニウム(TiN)薄膜を下地として(ZrO(Y1−n膜を形成したり、窒化チタニウム薄膜を下地として(ZrO(Al1−n膜を形成したりする場合にも、本発明は好適に適用可能である。
【0132】
また、上述の実施形態では、第1ステップ(S5)と第2ステップ(S6)とで同じ種類の膜を形成する例について説明したが、本発明はかかる形態に限定されない。例えば、第1ステップ(S5)でSTO膜を形成し、第2ステップ(S6)でBST膜を形成する等、第1ステップ(S5)と第2ステップ(S6)とで異なる種類の膜を形成するようにしてもよい。つまり、第1ステップ(S5)と第2ステップ(S6)とで異なる種類の膜が積層された積層膜を形成するようにしてもよい。
【0133】
また、上述の実施形態では、金属酸化膜をALD法により形成する場合を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、金属酸化膜をCVD法により形成する場合にも、本発明は好適に適用可能である。
【0134】
また、上述の実施形態では、基板処理装置として1度に1枚の基板を処理する枚葉式のALD装置を用いて成膜する例について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されない。例えば、基板処理装置として1度に複数枚の基板を処理するバッチ式の縦型ALD装置を用いて成膜するようにしてもよい。以下、この縦型ALD装置について説明する。
【0135】
図9は、本実施形態で好適に用いられる縦型ALD装置の縦型処理炉の概略構成図であり、(a)は、処理炉302部分を縦断面で示し、(b)は、処理炉302部分を図7(a)のA−A線断面図で示す。
【0136】
図7(a)に示されるように、処理炉302は加熱手段(加熱機構)としてのヒータ307を有する。ヒータ307は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。
【0137】
ヒータ307の内側には、ヒータ307と同心円状に反応管としてのプロセスチューブ303が配設されている。プロセスチューブ303は、例えば石英(SiO)や炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。プロセスチューブ303の筒中空部には処理室301が形成されており、基板としてのウェハ200を、後述するボート317によって水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能に構成されている。
【0138】
プロセスチューブ303の下方には、プロセスチューブ303と同心円状にマニホールド309が配設されている。マニホールド309は、例えばステンレス等からなり、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド309は、プロセスチューブ303に係合しており、プロセスチューブ303を支持するように設けられている。なお、マニホールド309とプロセスチューブ303との間には、シール部材としてのOリング320aが設けられている。マニホールド309がヒータベースに支持されることにより、プロセスチューブ303は垂直に据え付けられた状態となっている。プロセスチューブ303とマニホールド309とにより反応容器が形成される。
【0139】
マニホールド309には、第1ガス導入部としての第1ノズル333aと、第2ガス導入部としての第2ノズル333bとが、マニホールド309の側壁を貫通するように、また、その一部が処理室301内に連通するように接続されている。第1ノズル333aと第2ノズル333bは、それぞれ水平部と垂直部とを有するL字形状であり、水平部がマニホールド309に接続され、垂直部が処理室301を構成している反応管303の内壁とウェハ200との間における円弧状の空間に、反応管303の下部より上部の内壁にウェハ200の積載方向に沿って設けられている。第1ノズル333a、第2ノズル333bの垂直部の側面には、ガスを供給する供給孔である第1ガス供給孔348a、第2ガス供給孔348bがそれぞれ設けられている。この第1ガス供給孔348a、第2ガス供給孔348bは、それぞれ下部から上部にわたって同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピ
ッチで設けられている。
【0140】
第1ノズル333a、第2ノズル333bに接続されるガス供給系は、上述の実施形態と同様である。ただし、本実施形態では、第1ノズル333aに原料ガス供給管213が接続され、第2ノズル333bにオゾンガス供給管213oが接続される点が、上述の実施形態と異なる。すなわち、本実施形態では、原料ガス(第1原料ガス、第2原料ガス、第3原料ガス)と、オゾンガスとを、別々のノズルにより供給する。なお、さらに各原料ガスを別々のノズルにより供給するようにしてもよい。
【0141】
マニホールド309には、処理室301内の雰囲気を排気する排気管331が設けられている。排気管331のマニホールド309との接続側と反対側である下流側には、圧力検出器としての圧力センサ345及び圧力調整器としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ342を介して、真空排気装置としての真空ポンプ346が接続されており、処理室301内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気し得るように構成されている。なお、APCバルブ342は弁を開閉して処理室301の真空排気・真空排気停止ができ、更に弁開度を調整して処理室301内の圧力を調整することができるよう構成されている開閉弁である。
【0142】
マニホールド309の下方には、マニホールド309の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ319が設けられている。シールキャップ319は、マニホールド309の下端に垂直方向下側から当接されるようになっている。シールキャップ319は、例えばステンレス等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ319の上面には、マニホールド309の下端と当接するシール部材としてのOリング320bが設けられる。シールキャップ319の処理室301と反対側には、後述するボート317を回転させる回転機構367が設置されている。回転機構367の回転軸355は、シールキャップ319を貫通して、ボート317に接続されており、ボート317を回転させることでウェハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ319は、プロセスチューブ303の外部に垂直に配置された昇降機構としてのボートエレベータ315によって、垂直方向に昇降されるように構成されており、これによりボート317を処理室301に対し搬入搬出することが可能となっている。
【0143】
基板保持具としてのボート317は、例えば石英や炭化珪素等の耐熱材料からなり、複数枚のウェハ200を水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて多段に保持するように構成されている。なお、ボート317の下部には、例えば石英や炭化珪素等の耐熱材料からなる断熱部材318が設けられており、ヒータ307からの熱がシールキャップ319側に伝わりにくくなるよう構成されている。なお、断熱部材318は、石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなる複数枚の断熱板と、これら断熱板を水平姿勢で多段に保持する断熱板ホルダとにより構成してもよい。プロセスチューブ303内には、温度検出器としての温度センサ363が設置されており、温度センサ363により検出された温度情報に基づきヒータ307への通電具合を調整することにより、処理室301内の温度が所定の温度分布となるように構成されている。温度センサ363は、第1ノズル333a及び第2ノズル333bと同様に、プロセスチューブ303の内壁に沿って設けられている。
【0144】
制御部(制御手段)であるコントローラ380は、APCバルブ342、ヒータ307、温度センサ363、真空ポンプ346、ボート回転機構367、ボートエレベータ315、開閉バルブvs1〜vs6、vb1〜vb6、vt1〜vt6、vo3〜vo6、液体流量コントローラ221s,221b,221t,222s,222b,222t、流量コントローラ224s,224b,224t,221o,222o,224o等の動作を制御する。
【0145】
次に、上記構成にかかる縦型ALD装置の処理炉302を用いて、半導体装置の製造工程の一工程として、ALD法によりウェハ200上に薄膜を形成する基板処理工程について説明する。なお、以下の説明において、縦型ALD装置を構成する各部の動作は、コントローラ380により制御される。
【0146】
複数枚のウェハ200をボート317に装填(ウェハチャージ)する。そして、図7(a)に示すように、複数枚のウェハ200を保持したボート317を、ボートエレベータ315によって持ち上げて処理室301内に搬入(ボートロード)する。この状態で、シールキャップ319はOリング320bを介してマニホールド309の下端をシールした状態となる。
【0147】
処理室301内が所望の圧力(真空度)となるように、真空排気装置346によって真空排気する。この際、処理室301内の圧力を圧力センサ345で測定して、この測定された圧力に基づき、圧力調節器342をフィードバック制御する。また、処理室301内が所望の温度となるように、ヒータ307によって加熱する。この際、処理室301内が所望の温度分布となるように、温度センサ363が検出した温度情報に基づきヒータ307への通電具合をフィードバック制御する。続いて、回転機構367によりボート317を回転させることで、ウェハ200を回転させる。
【0148】
その後、例えば上述の第1から第3の実施形態と同様に、第1ステップ(S5)、第2ステップ(S6)、結晶化工程(S7)を行うことにより、ウェハ200上に所望の膜厚のSrTiO薄膜や(Ba,Sr)TiO薄膜を形成する。
【0149】
その後、ボートエレベータ315によりシールキャップ319を下降させて、マニホールド309の下端を開口させるとともに、所望膜厚の薄膜が形成された後のウェハ200を、ボート317に保持させた状態でマニホールド309の下端からプロセスチューブ303の外部に搬出(ボートアンロード)する。その後、処理済ウェハ200をボート317より取り出す(ウエハディスチャージ)。
【0150】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0151】
本発明の一態様によれば、表面に金属薄膜が形成された基板上に、ハフニウム、イットリウム、ランタン、アルミニウム、ジルコニウム、ストロンチウム、チタン、バリウム、タンタル、ニオブからなる群から選択される少なくとも1種類以上の元素を含む金属酸化膜を、前記金属薄膜の酸化が起こらない温度であって、かつ、前記金属酸化膜がアモルファス状態となる第1温度で形成する第1ステップと、前記第1ステップで形成した前記金属酸化膜上に、ハフニウム、イットリウム、ランタン、アルミニウム、ジルコニウム、ストロンチウム、チタン、バリウム、タンタル、ニオブからなる群から選択される少なくとも1種類以上の元素を含む金属酸化膜を、前記第1温度を超える(上回る)第2温度で、目標の膜厚まで形成する第2ステップと、を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0152】
本発明の他の態様によれば、表面に金属薄膜が形成された基板上に、ハフニウム、イットリウム、ランタン、アルミニウム、ジルコニウム、ストロンチウム、チタン、バリウム、タンタル、ニオブからなる群から選択される少なくとも1種類以上の元素を含む金属酸化膜を、前記金属薄膜の酸化が起こらない温度であって、かつ、前記金属酸化膜がアモルファス状態となる第1温度で形成し、その後、前記金属酸化膜のアモルファス状態を維持しつつ前記金属酸化膜に対しアニールを施し前記金属酸化膜を緻密化する第1ステップと、前記第1ステップで形成した前記金属酸化膜上に、ハフニウム、イットリウム、ランタ
ン、アルミニウム、ジルコニウム、ストロンチウム、チタン、バリウム、タンタル、ニオブからなる群から選択される少なくとも1種類以上の元素を含む金属酸化膜を、前記第1温度以上の第2温度で、目標の膜厚まで形成する第2ステップと、を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0153】
好ましくは、前記第2ステップで形成する前記金属酸化膜は、ポリ状態の金属酸化膜、もしくは、前記第1ステップで形成したアモルファス状態の前記金属酸化膜よりも結晶化し易いアモルファス状態の金属酸化膜である。
【0154】
好ましくは、前記金属薄膜がルテニウム薄膜であり、前記金属酸化膜が、チタン酸ストロンチウム(STO)膜またはチタン酸バリウムストロンチウム(BST)膜である。
【0155】
また、好ましくは、前記第1温度が200〜350℃であり、前記第2温度が300〜400℃である。
【0156】
また、好ましくは、前記第1温度が200〜300℃であり、前記第2温度が350〜400℃である。
【0157】
また、好ましくは、前記金属酸化膜は、ALD法またはCVD法により形成される。
【0158】
また、好ましくは、前記金属酸化膜は、ALD法により形成される。
【0159】
また、好ましくは、前記金属酸化膜は、ハフニウム、イットリウム、ランタン、アルミニウム、ジルコニウム、ストロンチウム、チタン、バリウム、タンタル、ニオブからなる群から選択される少なくとも1種類以上の元素を含む原料と酸化剤とを交互に供給することで形成される。
【0160】
また、好ましくは、前記目標の膜厚まで前記金属酸化膜を形成した後、前記金属酸化膜に対しアニールを施し、前記第1ステップおよび前記第2ステップで形成した前記金属酸化膜全体を結晶化する。
【0161】
本発明の更に他の態様によれば、基板を処理する処理室と、ハフニウム原料、イットリウム原料、ランタン原料、アルミニウム原料、ジルコニウム原料、ストロンチウム原料、チタン原料、バリウム原料、タンタル原料、ニオブ原料からなる群から選択される少なくともいずれか一つの原料を供給する原料供給系と、酸化剤を供給する酸化剤供給系と、前記処理室内の基板を加熱するヒータと、前記処理室内に前記原料と前記酸化剤とを供給して、表面に金属薄膜が形成された基板上に、ハフニウム、イットリウム、ランタン、アルミニウム、ジルコニウム、ストロンチウム、チタン、バリウム、タンタル、ニオブからなる群から選択される少なくとも1種類以上の元素を含む金属酸化膜を、前記金属薄膜の酸化が起こらない温度であって、かつ、前記金属酸化膜がアモルファス状態となる第1温度で形成し、前記アモルファス状態の前記金属酸化膜上に、ハフニウム、イットリウム、ランタン、アルミニウム、ジルコニウム、ストロンチウム、チタン、バリウム、タンタル、ニオブからなる群から選択される少なくとも1種類以上の元素を含む金属酸化膜を、前記第1温度を超える(上回る)第2温度で、目標の膜厚まで形成するよう、前記原料供給系、前記酸化剤供給系および前記ヒータを制御するコントローラと、を有する基板処理装置が提供される。
【符号の説明】
【0162】
200 ウェハ(基板)
201 処理室
206 ヒータ
280 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料と酸化剤とを用いて、表面に金属薄膜が形成された基板上に、ハフニウム、イットリウム、ランタン、アルミニウム、ジルコニウム、ストロンチウム、チタン、バリウム、タンタル、ニオブからなる群から選択される少なくとも1種類以上の元素を含む金属酸化膜を、前記金属薄膜の酸化による前記金属薄膜を構成する結晶粒の異常成長が起こらない温度であって、かつ、前記金属酸化膜がアモルファス状態となる第1温度で形成する第1ステップと、
原料と酸化剤とを用いて、前記第1ステップで形成したアモルファス状態の前記金属酸化膜上に、前記金属酸化膜のアモルファス状態を維持しつつ、ハフニウム、イットリウム、ランタン、アルミニウム、ジルコニウム、ストロンチウム、チタン、バリウム、タンタル、ニオブからなる群から選択される少なくとも1種類以上の元素を含む金属酸化膜を、前記第1温度を超える第2温度で、目標の膜厚まで形成する第2ステップと、を有する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第2ステップで形成する前記金属酸化膜は、ポリ状態の金属酸化膜、もしくは、アモルファス状態の金属酸化膜である
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1ステップで形成する前記金属酸化膜および前記第2ステップで形成する前記金属酸化膜は、いずれもALD法またはCVD法により形成される
ことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1ステップで形成する前記金属酸化膜および前記第2ステップで形成する前記金属酸化膜は、ハフニウム、イットリウム、ランタン、アルミニウム、ジルコニウム、ストロンチウム、チタン、バリウム、タンタル、ニオブからなる群から選択される少なくとも1種類以上の元素を含む原料と、酸化剤と、を交互に供給することで形成される
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1ステップおよび前記第2ステップにより前記目標の膜厚まで前記金属酸化膜を形成した後、この金属酸化膜に対しアニールを施し、前記第1ステップおよび前記第2ステップで形成した前記金属酸化膜全体を結晶化する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
原料と酸化剤とを用いて、表面に金属薄膜が形成された基板上に、ハフニウム、イットリウム、ランタン、アルミニウム、ジルコニウム、ストロンチウム、チタン、バリウム、タンタル、ニオブからなる群から選択される少なくとも1種類以上の元素を含む金属酸化膜を、前記金属薄膜の酸化による前記金属薄膜を構成する結晶粒の異常成長が起こらない温度であって、かつ、前記金属酸化膜がアモルファス状態となる第1温度で形成する第1ステップと、
原料と酸化剤とを用いて、前記第1ステップで形成したアモルファス状態の前記金属酸化膜上に、前記金属酸化膜のアモルファス状態を維持しつつ、ハフニウム、イットリウム、ランタン、アルミニウム、ジルコニウム、ストロンチウム、チタン、バリウム、タンタル、ニオブからなる群から選択される少なくとも1種類以上の元素を含む金属酸化膜を、前記第1温度を超える第2温度で、目標の膜厚まで形成する第2ステップと、を有する
ことを特徴とする基板処理方法。
【請求項7】
基板を処理する処理室と、
ハフニウム原料、イットリウム原料、ランタン原料、アルミニウム原料、ジルコニウム原料、ストロンチウム原料、チタン原料、バリウム原料、タンタル原料、ニオブ原料から
なる群から選択される少なくともいずれか一つの原料を供給する原料供給系と、
酸化剤を供給する酸化剤供給系と、
前記処理室内の基板を加熱するヒータと、
前記処理室内に前記原料と前記酸化剤とを供給して、
表面に金属薄膜が形成された基板上に、ハフニウム、イットリウム、ランタン、アルミニウム、ジルコニウム、ストロンチウム、チタン、バリウム、タンタル、ニオブからなる群から選択される少なくとも1種類以上の元素を含む金属酸化膜を、前記金属薄膜の酸化による前記金属薄膜を構成する結晶粒の異常成長が起こらない温度であって、かつ、前記金属酸化膜がアモルファス状態となる第1温度で形成する第1ステップと、原料と酸化剤とを用いて、前記第1ステップで形成したアモルファス状態の前記金属酸化膜上に、前記金属酸化膜のアモルファス状態を維持しつつ、ハフニウム、イットリウム、ランタン、アルミニウム、ジルコニウム、ストロンチウム、チタン、バリウム、タンタル、ニオブからなる群から選択される少なくとも1種類以上の元素を含む金属酸化膜を、前記第1温度を超える第2温度で、目標の膜厚まで形成する第2ステップと、を行うよう、前記原料供給系、前記酸化剤供給系および前記ヒータを制御するコントローラと、
を有することを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−160757(P2012−160757A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−99529(P2012−99529)
【出願日】平成24年4月25日(2012.4.25)
【分割の表示】特願2008−181943(P2008−181943)の分割
【原出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】