説明

半導体装置の製造方法

【課題】空孔を有する低誘電率絶縁膜上にバリアメタルを成膜する前におけるビア底の高抵抗層の除去手段として、プラズマを用いない新規な半導体装置の製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】層間膜に比誘電率の値が3未満の低誘電率膜102を用いた金属膜配線103を含む半導体装置の製造方法において、前記金属膜配線と前記層間膜の間に形成されるバリアメタル105を成膜する前に、100℃〜400℃に温調されたNH3ガスなどの還元性を有するガスもしくは還元性を有するガスを含む混合ガスで熱還元処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属膜配線に銅(Cu)などを用いた半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、低抵抗で高いエレクトロマイグレーション(EM)耐性を有するCu配線(金属膜配線)は、高集積化し微細化されたLSI配線用の高信頼性材料として期待されている。
微細加工の難しいCu配線を作製する有効な手法の一つに、あらかじめ溝・ビア加工を施した下地にCu膜の埋め込みを行うダマシン法がある。ダマシン法を用いてCu膜の埋め込みを行う手法として、現在実用化されている技術が、電解めっきである。
【0003】
図3に電解めっきを用いたダマシンCu配線の形成プロセスの一例を示す。このプロセスでは、まず、あらかじめ溝・ビア加工を施した下地基板301(含む下地配線302)(図3−1)を、不活性雰囲気(ArもしくはN)にて200〜350℃のアニール処理を行い、加工面(溝・ビアの側壁ならびに底面)に吸着している水分等を除去する。
次に、前記下地基板301(含む下地配線102)の下層配線表面にできた高抵抗層303(主として酸化銅)を除去する目的で、イオン化させたArを基板バイアスで引き込んで物理的除去を行う(図3−2)。次にバリアメタル304(TaN,TiN、WN等)の成膜を行ってから、電解めっき用シード層305としてCuの成膜を行なう(図3−3)。
さらに、電解めっきによりCuの埋め込み成膜を行い、めっき層306を形成する(図3−4)。
最後に、CMPにより上部の余分なCu層およびバリアメタルを除去し、平坦化を行う(図3−5)。以上の工程で、Cu配線の形成を行う。
【0004】
このようにして、あらかじめ溝・ビア加工を施した下地に、電解めっきにより、Cu膜の埋め込みが行なわれているが、今後のデバイスにおいては、絶縁膜が低誘電率膜、特に誘電率を下げるために、空孔を有する低誘電率膜の使用が検討されている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−16912号公報
【0006】
例えば、上述に示した、特許文献の如く、低誘電率絶縁膜特に空孔を有する低誘電率絶縁膜上にバリアメタルを成膜する場合、下層配線表面にできた高抵抗層をArイオンで物理的に除去すると、あらかじめ溝・ビア加工を施した間口部分がArイオンによりたたかれて広がってしまい(図3−2)、隣り合う配線間がショートしてしまうという問題がある。また、ビア底の高抵抗層を除去する際に、ArイオンでたたかれたCu成分が、ビア側壁に付着し、後のプロセス温度において、Cuが、絶縁膜中を拡散し、配線間のリーク電流が増大し、配線の性能を悪化させる原因となる。
また、Arイオンにより、低誘電率膜にダメージが入り、配線間容量の増加、膜の収縮率の問題が生じる。
【0007】
これを解決するために、水素もしくはアンモニアガスを含むガスをプラズマ励起させてCu表面の残渣物を還元除去する方法が考えられたが、特に、層間膜にLow−k材料を用いた場合においては、このプラズマ処理により、膜がダメージを受け、配線溝ならびにビア側壁の形状がボウイングするため、後のCu埋設が困難となり、配線ならびに配線同士を繋ぐビア内部にボイドを形成し、導通不良や配線の信頼性を劣化させてしまう。また、膜がダメージを受けることにより、Low−k膜が変質し、誘電率が上昇してしまう問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上説明したように、従来の方法では、配線ならびに配線同士を繋ぐビア内部にボイドを形成し、導通不良や配線の信頼性が乏しく、膜がダメージを受けることにより、Low−k膜が変質し、誘電率が上昇してしまうという問題があった。
【0009】
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、空孔を有する低誘電率絶縁膜上にバリアメタルを成膜する前におけるビア底の高抵抗層の除去手段として、プラズマを用いない新規な半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、層間膜に比誘電率の値が3未満の低誘電率膜を用いた金属膜配線を含む半導体装置の製造方法において、前記金属膜配線と前記層間膜の間に形成されるバリアメタルを成膜する前に、100℃〜400℃に温調された還元性を有するガスもしくは還元性を有するガスを含む混合ガスで熱還元処理を行うことを特徴とする。
【0011】
本発明の方法において、前記熱還元処理に用いるガスは、還元作用を有し、水素、アンモニア、CO、HS、HCl、SO、ヒドラジンのうち少なくとも1種を用いることが望ましい。
【0012】
また、本発明の方法において、前記還元処理に用いるガスは、還元性を有するガスと、不活性ガスの混合ガスであって、前記不活性ガスはヘリウム、窒素、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンのうちのいずれかであることが望ましい。
【0013】
さらに、本発明の方法において、前記還元性を有するガスもしくは還元性を有するガスを含む混合ガスの温調を、ガス導入配管を温調することにより行うことが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明において、プラズマを用いないでプレクリーン処理を行うことにより、特に層間膜にLow−k材料を用いた際においても、膜にダメージを与えることが無いために、誘電率の上昇が抑えられる。
また、膜がエッチングされないため、配線溝やビアホールを加工した形状が保たれ、後のバリアメタル・シードCu・めっき成長においても、配線やビア内部にボイド無くCuを埋め込むことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施形態につき、実施例を基に、図1及び2を用いて詳細に説明する。
【0016】
(実施例1)
まず、PVD装置を用いて、あらかじめ比誘電率の値が2.2のポーラスMSQ膜(低誘電率絶縁膜)102上に溝・ビア加工を施した基板(下地基板)101を、350℃に加熱したヒーターステージ上に載置し、NHを導入してチャンバー内圧力を666.5Pa(5Torr)に保ち、下層配線103表面の高抵抗層104除去の目的で、120秒間の還元処理を行った。
次に、真空を保持したまま、バリアメタル105として、TaN(例えば10nm)およびTa(例えば15nm)をPVD法にて成膜した。
さらに、真空を保持したまま、電解めっき用シード層106として、Cu(例えば100nm)をPVD法にて成膜を行った。その後、電解めっきによりCuの埋め込み成膜を行い、めっき層107を形成した。
最後に、CMPにより上部の余分なCu層を除去し、平坦化を行った。
【0017】
以上から形成されたCuデュアルダマシン配線の形状を確認したところ、あらかじめ溝・ビア加工した間口の形状を変化させることなく、且つ、高抵抗層の除去が確認できた。
次に、ヒーターステージ温度200℃、250℃、300℃、400℃、450℃についても同様に実験した。形状は、全水準ともに変化が見られなかったものの、温度200℃の場合、処理時間を300秒に延長しても、完全に高抵抗層を除去することができなかった。なお、250℃では処理時間200秒で、400℃では60秒で、450℃では45秒で、それぞれ高抵抗層を完全に除去することができた。
【0018】
(実施例2)
上記実施例1と同様の実験を、あらかじめ還元性ガスの配管のまわりをスパイラルの電熱線で取り巻き、250℃に温調した還元性ガスをチャンバー内に導入して圧力666.5Pa(5Torr)に保ち還元処理を行った。その結果、前記実施例1において高抵抗層除去の効果が見られなかったヒーターステージ温度200℃においても、100秒で完全に除去することができ、その他の温度、たとえば250℃では60秒で高抵抗層を除去することができ、還元効率が向上した。
【0019】
従って、デュアルダマシン配線の形状を変えることなく、且つMSQ膜にダメージを与えることなく、ビア底の高抵抗層を除去するためには、還元性ガスの温調を行わない場合には、ヒーターステージ温度として、250℃≦ヒーターステージ温度≦450℃をもちいることが望ましく、還元性ガスの温調を100℃〜400℃にしてチャンバーに導入した場合のヒーターステージ温度は、さらに低い150℃〜250℃でも十分効果が得られる。配線信頼性向上の観点では、プロセスの低温化が重要であり、還元性ガスの温調を行うことで、ステージ温度が低くても還元効果が得られるという点で、温調を行っての還元処理をおこなうことがより望ましい。
【0020】
なお、本実施例に用いた熱還元処理チャンバーの構造を図2に示す。まず、チャンバー201には、抵抗加熱方式のステージ202で、温度は500℃までコントロールすることができ、ここにウエハーをおいて、処理を行う。チャンバー内へは、ArとNHのガスライン203がつながっており、圧力はチャンバー201と排気ライン204の間に取り付けられたボールバルブ205の開閉度を制御することにより、13.33Pa(100mTorr)から2666Pa(20Torr)の範囲で制御が可能である。なお、アイドル時に真空度を保つため、ターボ分子ポンプ206からも排気が可能であるが、処理時には、ゲートバルブ207を閉じて処理を行う。
【0021】
上述した本実施形態によれば、高信頼なCu−lowK配線を作製することが可能となりULSIデバイスの高集積化に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態を説明するための工程図
【図2】本発明の実施形態に用いた熱還元処理チャンバーの構造を示す図
【図3】従来のダマシン法によるCu配線成膜方法を説明するための工程図
【符号の説明】
【0023】
101 基板(下地基板)
102 ポーラスMSQ(低誘電率絶縁膜)
103 下層配線(金属膜配線)
104 高抵抗層
105 バリアメタル
106 電解めっき用シード層
107 めっき層
201 処理チャンバー
202 ステージ
203 ガスライン
204 排気ライン
205 ボールバルブ
206 ターボ分子ポンプ
207 ゲートバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
層間膜に比誘電率の値が3未満の低誘電率膜を用いた金属膜配線を含む半導体装置の製造方法において、前記金属膜配線と前記層間膜の間に形成されるバリアメタルを成膜する前に、100℃〜400℃に温調された還元性を有するガスもしくは還元性を有するガスを含む混合ガスで熱還元処理を行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記熱還元処理に用いるガスは、還元作用を有し、水素、アンモニア、CO、HS、HCl、SO、ヒドラジンのうち少なくとも1種を具備することを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記還元処理に用いるガスは、還元性を有するガスと、不活性ガスの混合ガスであって、前記不活性ガスはヘリウム、窒素、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンのうちのいずれかであることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記還元性を有するガスもしくは還元性を有するガスを含む混合ガスの温調を、ガス導入配管を温調することにより行うことを特徴とする請求項1又は2記載の半導体装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−147899(P2006−147899A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−336970(P2004−336970)
【出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】