説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】トランジスタ特性を長期安定化して使用することができる半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る半導体装置は、半導体基板1上にゲート絶縁膜2を形成する工程と、前記ゲート絶縁膜2上にアモルファスシリコン膜3を形成する工程と、前記アモルファスシリコン膜3に不純物イオン4をイオン注入する工程と、前記アモルファスシリコン膜3を加工することにより、前記ゲート絶縁膜2上にゲート電極3aを形成する工程と、を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に係わり、特に長期使用によるゲート絶縁膜または、ゲート絶縁膜界面への電子捕獲を抑制することができる半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図9(a)〜(c)は従来の多結晶シリコン(ポリシリコン)膜の製造工程を示す断面図である。
【0003】
まず、図9(a)に示すように、シリコン基板51の表面上にゲート絶縁膜52となるゲート酸化膜を熱酸化法にて形成する。次いで、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により、ゲート絶縁膜52上にポリシリコン膜58を形成する。
【0004】
次に、図9(b)に示すように、不純物イオン54をポリシリコン膜58にイオン注入する。この際に、イオン注入する不純物イオン54にはボロンまたは、リンなどの比較的軽元素を用いている。不純物イオン54をゲート電極材となるポリシリコン膜58へイオン注入することにより、低抵抗化を行っている。
【0005】
その後、図9(c)に示すように、イオン注入後のポリシリコン膜58に熱処理を行うことによって、ポリシリコン膜58内に不純物イオン54が熱拡散される。(例えば特許文献1参照)
【0006】
その後、図9(d)に示すように、ポリシリコン膜58をフォトリソグラフィー法及びドライエッチング法を用いて加工し、ゲート電極58aを形成する。次いで、シリコン基板51に低濃度不純物層によるLDD(Lightly Doped Drain)領域56を形成する。次いで、ゲート電極58aの側壁にサイドウォール55を形成し、シリコン基板51にソース・ドレイン領域57を形成する。
【0007】
【特許文献1】特開2004−55793号公報(段落0003〜0005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
MOSトランジスタのゲート電極に電荷を印加して、高温で試験を行うと、Vthシフト(閾値電圧)が観察される。つまり、MOSトランジスタを長期使用すると、ゲート電極及びソース・ドレインの電界の影響によりゲート電極中のイオンがゲート絶縁膜中もしくはゲート絶縁膜界面に捕獲され、トランジスタ特性の劣化や変動の原因となる。その為、トランジスタの長期特性安定のためにこの現象の抑制が課題となっている。
【0009】
本発明に係る幾つかの態様は、長期使用によるゲート絶縁膜中または、ゲート絶縁膜界面へ不純物イオンが捕獲されることを抑制することによって、トランジスタ特性を長期安定化して使用することができる半導体装置及びその製造方法である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る半導体装置の製造方法は、半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上にアモルファスシリコン膜を形成する工程と、
前記アモルファスシリコン膜に不純物イオンをイオン注入する工程と、
前記アモルファスシリコン膜を加工することにより、前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程と、
を具備することを特徴とする。
【0011】
上記半導体装置の製造方法によれば、ゲート電極材としてアモルファスシリコン膜を使用することにより、ゲート電極中のイオン移動度を低減させている。それにより、ゲート電極中の不純物イオンはゲート絶縁膜中もしくはゲート絶縁膜界面に捕獲されにくくなる。その結果、トランジスタ特性の劣化や変動の抑制が可能となり、トランジスタ特性の長期安定化の効果が得られる。
【0012】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上にアモルファスシリコン膜を形成する工程と、
前記アモルファスシリコン膜上にポリシリコン膜を形成する工程と、
前記アモルファスシリコン膜及び前記ポリシリコン膜に不純物イオンをイオン注入する工程と、
前記アモルファスシリコン膜及び前記ポリシリコン膜を加工することにより、前記ゲート絶縁膜上に前記アモルファスシリコン膜及び前記ポリシリコン膜からなるゲート電極を形成する工程と、
を具備することを特徴とする。
【0013】
上記半導体装置の製造方法によれば、ゲート電極材にアモルファスシリコン膜及びポリシリコン膜を使用し、ゲート絶縁膜に接するゲート電極の下層部をアモルファスシリコン膜によって形成することにより、ゲート絶縁膜付近のアモルファスシリコン膜中のイオン移動度を低減させている。それにより、ゲート電極中の不純物イオンはゲート絶縁膜中もしくはゲート絶縁膜界面に捕獲されにくくなる。その結果、トランジスタ特性の劣化や変動の抑制が可能となり、トランジスタ特性の長期安定化の効果が得られる。また、ゲート電極を全てアモルファスシリコン膜で形成した場合よりゲート電極を低抵抗化することが可能となる。
【0014】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上にアモルファスシリコン膜を形成する工程と、
前記アモルファスシリコン膜に重元素の不純物イオンをイオン注入する工程と、
前記アモルファスシリコン膜上にポリシリコン膜を形成する工程と、
前記ポリシリコン膜に前記重元素より質量の小さい軽元素の不純物イオンをイオン注入する工程と、
前記アモルファスシリコン膜及び前記ポリシリコン膜を加工することにより、前記ゲート絶縁膜上に前記アモルファスシリコン膜及び前記ポリシリコン膜からなるゲート電極を形成する工程と、
を具備することを特徴とする。
【0015】
上記半導体装置の製造方法によれば、ゲート絶縁膜に接するゲート電極の下層部分のアモルファスシリコン膜に、軽元素イオンよりゲート絶縁膜中に捕獲されにくい重元素イオンをイオン注入している。それにより、アモルファスシリコン膜に軽元素イオンを注入した場合より一層ゲート電極中の不純物イオンはゲート絶縁膜中もしくはゲート絶縁膜界面に捕獲されにくくなる。その結果、トランジスタ特性の劣化や変動の抑制が可能となり、トランジスタ特性の長期安定化の効果が得られる。
【0016】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上にアモルファスシリコン膜を形成する工程と、
前記アモルファスシリコン膜上にポリシリコン膜を形成する工程と、
前記アモルファスシリコン膜及び前記ポリシリコン膜に、重元素の不純物イオン及び前記重元素より質量の小さい軽元素の不純物イオンをイオン注入することにより、前記アモルファスシリコン膜側に前記重元素イオンを導入するとともに前記ポリシリコン膜側に前記軽元素イオンを導入する工程と、
前記アモルファスシリコン膜及び前記ポリシリコン膜を加工することにより、前記ゲート絶縁膜上に前記アモルファスシリコン膜及び前記ポリシリコン膜からなるゲート電極を形成する工程と、
を具備することを特徴とする。
【0017】
なお、前記アモルファスシリコン膜及び前記ポリシリコン膜に、重元素の不純物イオン及び前記重元素より質量の小さい軽元素の不純物イオンをイオン注入することは、軽元素の不純物イオン及び重元素の不純物イオンを同時にイオン注入する場合も含むし、軽元素の不純物イオン及び重元素の不純物イオンを別々にイオン注入する場合も含む意味であり、イオン注入する手順は軽元素の不純物イオン及び重元素の不純物イオンのどちらが先でも良い。
【0018】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法において、前記アモルファスシリコン膜は前記ポリシリコン膜より薄く形成されることが好ましい。これにより、アモルファスシリコン膜を成膜する成膜時間はポリシリコン膜の成膜時間と比較して長い為、ゲート電極の形成工程の短縮化が可能となる。
【0019】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上にアモルファスシリコン膜を形成する工程と、
前記アモルファスシリコン膜に、重元素の不純物イオン及び前記重元素より質量の小さい軽元素の不純物イオンをイオン注入することにより、前記アモルファスシリコン膜の下層側に前記重元素イオンを導入するとともに前記アモルファスシリコン膜の上層側に前記軽元素イオンを導入する工程と、
前記アモルファスシリコン膜を加工することにより、前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程と、
を具備することを特徴とする。
【0020】
上記半導体装置の製造方法によれば、アモルファスシリコン膜の下層側にゲート絶縁膜又はゲート絶縁膜の界面に捕獲されにくい重元素イオンのイオン注入を行っている。それにより、アモルファスシリコン膜の下層側に軽元素イオンを注入した場合より一層ゲート電極中の不純物イオンはゲート絶縁膜中もしくはゲート絶縁膜界面に捕獲されにくくなる。その結果、トランジスタ特性の劣化や変動の抑制が可能となり、トランジスタ特性の長期安定化の効果が得られる。
【0021】
本発明に係る半導体装置は、半導体基板と、
前記半導体基板上に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成されたアモルファスシリコン膜からなるゲート電極と、
前記ゲート電極に導入された不純物イオンと、
を具備することを特徴とする。
【0022】
上記半導体装置によれば、ゲート電極材としてアモルファスシリコン膜を使用することにより、ゲート電極中のイオン移動度を低減させている。それにより、ゲート電極中の不純物イオンはゲート絶縁膜中もしくはゲート絶縁膜界面に捕獲されにくくなる。その結果、トランジスタ特性の劣化や変動の抑制が可能となり、トランジスタ特性の長期安定化の効果が得られる。
【0023】
また、本発明に係る半導体装置において、前記不純物イオンは、前記ゲート電極の下層側に導入された重元素の不純物イオンと、前記ゲート電極の上層側に導入された前記重元素より質量の小さい軽元素の不純物イオンとを有することが好ましい。
【0024】
本発明に係る半導体装置は、半導体基板と、
前記半導体基板上に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成された、下層側がアモルファスシリコン膜からなり上層側がポリシリコン膜からなるゲート電極と、
前記ゲート電極に導入された不純物イオンと、
を具備することを特徴とする。
【0025】
また、本発明に係る半導体装置において、前記不純物イオンは、前記アモルファスシリコン膜に導入された重元素の不純物イオンと、前記ポリシリコン膜に導入された前記重元素より質量の小さい軽元素の不純物イオンとを有することが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1(a)〜(d)は本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明する為の断面図である。
【0027】
まず、図1(a)に示すように、シリコン基板1の表面上にゲート絶縁膜2となるゲート酸化膜を熱酸化法にて形成する。次いで、CVD法により、ゲート絶縁膜2上にアモルファスシリコン膜3を形成する。この際に、アモルファスシリコン膜3の形成は、例えば200℃〜400℃程度の低温でシランまたはシランジシラン等の熱分解により行うことができる。
【0028】
次いで、図1(b)に示すように、アモルファスシリコン膜3に不純物イオン4をイオン注入する。この際に、アモルファスシリコン膜3に注入する不純物イオン4は軽元素イオンとし、軽元素イオンには例えばボロン又は、リンを用いる。その後、図1(c)に示すように、シリコン基板1に熱処理を施すことにより、アモルファスシリコン膜3に注入された不純物イオン4を拡散させる。
【0029】
次いで、図1(d)に示すように、アモルファスシリコン膜3をフォトリソグラフィー法及びドライエッチング法を用いて加工することにより、ゲート絶縁膜2上にはゲート電極3aが形成される。次いで、シリコン基板1に低濃度不純物層によるLDD領域6を形成する。次いで、ゲート電極3aの側壁にサイドウォール5を形成する。その後、シリコン基板1に不純物層によるソース・ドレイン領域7の拡散層を形成する。
【0030】
以上、本発明の第1の実施形態によれば、ゲート電極材としてアモルファスシリコン膜3を使用することにより、ゲート電極3a中のイオン移動度を低減させている。その為、ゲート電極3a中の不純物イオン4はゲート絶縁膜2中もしくはゲート絶縁膜界面に捕獲されにくくなる。その結果、トランジスタ特性の劣化や変動の抑制が可能となり、トランジスタ特性の長期安定化の効果が得られる。
【0031】
次に、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法について図2(a)〜(c)及び、図3(a)、(b)を参照しつつ説明する。
【0032】
まず、図2(a)に示すように、シリコン基板11の表面上にゲート絶縁膜12となるゲート酸化膜を熱酸化法にて形成する。次いで、CVD法により、ゲート絶縁膜12上にアモルファスシリコン膜13を薄く形成する。この際に、アモルファスシリコン膜13は30nm〜50nm程度の膜厚で成膜することが望ましい。
【0033】
次いで、図2(b)に示すように、アモルファスシリコン膜13上にCVD法によりポリシリコン膜18を形成する。この際に、ポリシリコン膜18の形成は、例えば400℃〜750℃の温度でモノシランの熱分解により行うことができる。また、ポリシリコン膜18の膜厚は、アモルファスシリコン膜13と合わせて150nm〜300nmになるように成膜することが望ましい。
【0034】
その後、図2(c)に示すように、アモルファスシリコン膜13及びポリシリコン膜18に不純物イオン14をイオン注入する。この際に、アモルファスシリコン膜13及びポリシリコン膜18に注入する不純物イオン14は軽元素イオンとし、軽元素イオンには例えばボロン又は、リンを用いる。その後、図3(a)に示すように、シリコン基板11に熱処理を施すことにより、不純物イオン14をアモルファスシリコン膜13及びポリシリコン膜18内に拡散させる。
【0035】
次いで、図3(b)に示すように、アモルファスシリコン膜13及びポリシリコン膜18をフォトリソグラフィー法及びドライエッチング法を用いて加工する。これにより、ゲート絶縁膜12上にはアモルファスシリコン膜13a及びポリシリコン膜18aの2層構造からなるゲート電極が形成される。次いで、シリコン基板11に低濃度不純物層によるLDD領域16を形成する。次いで、ゲート電極の側壁にサイドウォール15を形成する。その後、シリコン基板11に不純物層によるソース・ドレイン領域17の拡散層を形成する。
【0036】
以上、本発明の第2の実施形態においても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。詳細には、ゲート絶縁膜12に接するゲート電極の下層部をアモルファスシリコン膜13aによって形成することにより、ゲート絶縁膜12付近のアモルファスシリコン膜13a中のイオン移動度を低減させることができる。その結果、アモルファスシリコン膜13a中の不純物イオン14がゲート絶縁膜12中もしくはゲート絶縁膜界面に捕獲されるのを抑制できる。
【0037】
さらに、ゲート電極はアモルファスシリコン膜13a及びポリシリコン膜18aの2層構造を有している。その結果、ゲート電極の上層部においてポリシリコン膜18aを形成することにより、ゲート電極を全てアモルファスシリコン膜で形成した場合よりゲート電極を低抵抗化することができる。
【0038】
また、アモルファスシリコン膜を成膜する成膜時間はポリシリコン膜の成膜時間と比較して長い為、アモルファスシリコン膜を30nm〜50nm程度の薄膜としている。その結果、ゲート電極の形成工程の短縮化が可能となる。
【0039】
次に、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法について図4(a)〜(c)及び図5(a)〜(c)を参照しつつ説明する。
【0040】
まず、図4(a)に示すように、シリコン基板21の表面上にゲート絶縁膜22となるゲート酸化膜を熱酸化法にて形成する。次いで、CVD法により、ゲート絶縁膜22上にアモルファスシリコン膜23を薄く形成する。この際に、アモルファスシリコン膜23は30nm〜50nm程度の膜厚で成膜することが望ましい。
【0041】
次いで、図4(b)に示すように、アモルファスシリコン膜23に不純物イオン29をイオン注入する。この際に、アモルファスシリコン膜23に注入する不純物イオン29は重元素イオン29とし、重元素イオン29には例えばインジウム又は、アンチモンを用いる。
【0042】
次いで、図4(c)に示すように、アモルファスシリコン膜23上にCVD法によりポリシリコン膜28を形成する。その後、図5(a)に示すように、ポリシリコン膜28に不純物イオン24をイオン注入する。この際に、ポリシリコン膜28に注入する不純物イオン24は軽元素イオン24とし、軽元素イオン24には例えばボロン又は、リンを用いる。
【0043】
その後、図5(b)に示すように、シリコン基板21に熱処理を施すことにより、アモルファスシリコン膜23及びポリシリコン膜28に注入された軽元素イオン24及び重元素イオン29を拡散させる。この熱処理により、軽元素イオン24は主にポリシリコン膜28側で熱拡散され、重元素イオン29は主にアモルファスシリコン膜23側で熱拡散される。
【0044】
次いで、図5(c)に示すように、アモルファスシリコン膜23及びポリシリコン膜28をフォトリソグラフィー法及びドライエッチング法を用いて加工する。これにより、ゲート絶縁膜22上にはアモルファスシリコン膜23a及びポリシリコン膜28aの2層構造からなるゲート電極が形成される。次いで、シリコン基板21に低濃度不純物層によるLDD領域26を形成する。次いで、ゲート電極の側壁にサイドウォール25を形成する。その後、シリコン基板21に不純物層によるソース・ドレイン領域27の拡散層を形成する。
【0045】
以上、本発明の第3の実施形態においても第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0046】
さらに、ゲート電極の下層部分であるアモルファスシリコン膜に重元素イオンをイオン注入後、ゲート電極の上層部分であるポリシリコン膜に軽元素イオンをイオン注入している。つまり、ゲート絶縁膜に接するゲート電極の下層部分のアモルファスシリコン膜に、軽元素イオンよりゲート絶縁膜中に捕獲されにくい重元素イオンをイオン注入している。その為、アモルファスシリコン膜に軽元素イオンを注入した場合より一層ゲート電極中の不純物イオンはゲート絶縁膜中もしくはゲート絶縁膜界面に捕獲されにくくなる。
【0047】
次に、本発明の第4の実施形態に係る半導体装置の製造方法について図6(a)〜(c)及び図7(a)、(b)を参照しつつ説明する。
【0048】
まず、図6(a)に示すように、シリコン基板31の表面上にゲート絶縁膜32となるゲート酸化膜を熱酸化法にて形成する。次いで、CVD法により、ゲート絶縁膜32上にアモルファスシリコン膜33を薄く形成する。この際に、アモルファスシリコン膜33は30nm〜50nm程度の膜厚で成膜することが望ましい。
【0049】
次いで、図6(b)に示すように、アモルファスシリコン膜33上にCVD法によりポリシリコン膜38を形成する。この際に、アモルファスシリコン膜33及びポリシリコン膜38は工程を分けることなく同一のCVD装置で連続して形成することも可能である。
【0050】
その後、図6(c)に示すように、アモルファスシリコン膜33及びポリシリコン膜38に軽元素イオン34、重元素イオン39による不純物イオンを同時にイオン注入する。この際に、導入イオンガスを複数のイオン種にし、重元素イオン39はアモルファスシリコン膜33に深くイオン注入し、軽元素イオン34はポリシリコン膜38に浅くイオン注入する。なお、本実施形態では、軽元素イオン34及び重元素イオン39を同時にイオン注入しているが、軽元素イオン34及び重元素イオン39は分けてイオン注入することも可能であり、イオン注入する手順は軽元素イオン34及び重元素イオン39のどちらが先でも良い。
【0051】
その後、図7(a)に示すように、シリコン基板31に熱処理を施すことにより、アモルファスシリコン膜33及びポリシリコン膜38に注入された軽元素イオン34及び重元素イオン39を拡散させる。この熱処理により、軽元素イオン34は主にポリシリコン膜38側で熱拡散され、重元素イオン39は主にアモルファスシリコン膜33側で熱拡散される。
【0052】
次いで、図7(b)に示すように、アモルファスシリコン膜33及びポリシリコン膜38をフォトリソグラフィー法及びドライエッチング法を用いて加工する。これにより、ゲート絶縁膜32上には、アモルファスシリコン膜33a及びポリシリコン膜38aの2層構造からなるゲート電極が形成される。次いで、シリコン基板31に低濃度不純物層によるLDD領域36を形成する。次いで、ゲート電極の側壁にサイドウォール35を形成する。その後、シリコン基板31に不純物層によるソース・ドレイン領域37の拡散層を形成する。
【0053】
以上、本発明の第4の実施形態においても第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、アモルファスシリコン膜及びポリシリコン膜にそれぞれ重元素イオン及び軽元素イオンを同時にイオン注入を行っている。その為、工程を分ける必要がない。
【0054】
次に、本発明の第5の実施形態に係る半導体装置の製造方法について図8(a)〜(d)を参照しつつ説明する。
【0055】
まず、図8(a)に示すように、シリコン基板41の表面上にゲート絶縁膜42となるゲート酸化膜を熱酸化法にて形成する。次いで、CVD法により、ゲート絶縁膜42上にアモルファスシリコン膜43を形成する。
【0056】
次いで、図8(b)に示すように、アモルファスシリコン膜43内に重元素イオン49及び軽元素イオン44による不純物イオンを同時に注入する。この際に、導入イオンガスを複数のイオン種にし、重元素イオン49はアモルファスシリコン膜43に深くイオン注入し、軽元素イオン44はアモルファスシリコン膜43に浅くイオン注入する。なお、本実施形態では、軽元素イオン44及び重元素イオン49を同時にイオン注入しているが、軽元素イオン44及び重元素イオン49は分けてイオン注入することも可能であり、イオン注入する手順は軽元素イオン44及び重元素イオン49のどちらが先でも良い。
【0057】
その後、図8(c)に示すように、シリコン基板41に熱処理を施すことにより、アモルファスシリコン膜43に注入された軽元素イオン44及び重元素イオン49を拡散させる。これにより、アモルファスシリコン膜43内の軽元素イオン44による不純物は上層側で主に熱拡散され、重元素イオン49による不純物イオンは下層側で主に熱拡散される。その結果、アモルファスシリコン膜43内に拡散された不純物は、アモルファスシリコン膜43の上層側は軽元素イオン44の比率が高くなり、アモルファスシリコン膜43の下層側は重元素イオン49の比率が高くなり、軽元素イオン44と重元素イオン49からなる2層構造となる。
【0058】
次いで、図8(d)に示すように、アモルファスシリコン膜43をフォトリソグラフィー法及びドライエッチング法を用いて加工する。これにより、ゲート絶縁膜42上には、ゲート電極43aが形成される。次いで、シリコン基板41に低濃度不純物層によるLDD領域46を形成する。次いで、ゲート電極43aの側壁にサイドウォール45を形成する。その後、シリコン基板41に不純物層によるソース・ドレイン領域47の拡散層を形成する。
【0059】
以上、本発明の第5の実施形態においても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0060】
さらに、アモルファスシリコン膜43に不純物をイオン注入する工程において、下層側にゲート絶縁膜42又はゲート絶縁膜42の界面に捕獲されにくい重元素イオン49のイオン注入を行っている。その為、アモルファスシリコン膜の下層側に軽元素イオンを注入した場合より一層ゲート電極中の不純物イオンはゲート絶縁膜中もしくはゲート絶縁膜界面に捕獲されにくくなる。
【0061】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、上記第1〜第5の実施形態では、アモルファスシリコン膜形成後に不純物イオンのイオン注入を行っているが、アモルファスシリコン形成ガスと、導入したいイオン種のガスを同時に反応させるCVD法により成膜することにより、アモルファスシリコン成膜と同工程において不純物イオンのイオン導入を行うことが可能である。また、同様にしてポリシリコン成膜と同工程において不純物イオンのイオン導入を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】(a)、(b)、(c)及び(d)は第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明する為の断面図。
【図2】(a)、(b)及び(c)は第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明する為の断面図。
【図3】(a)及び(b)は図2の次の工程を説明する為の断面図。
【図4】(a)、(b)及び(c)は第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明する為の断面図。
【図5】(a)、(b)及び(c)は図4の次の工程を説明する為の断面図。
【図6】(a)、(b)及び(c)は第4の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明する為の断面図。
【図7】(a)及び(b)は図6の次の工程を説明する為の断面図。
【図8】(a)、(b)、(c)及び(d)は第5の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明する為の断面図。
【図9】(a)、(b)、(c)及び(d)は従来の半導体装置の製造方法を説明する為の断面図。
【符号の説明】
【0063】
1,11,21,31,41,51・・・シリコン基板、2,12,22,32,42,52・・・ゲート絶縁膜、3,13,23,33,43,3a,13a,23a,33a,43a・・・アモルファスシリコン膜(ゲート電極)、4,14,24,34,44,54・・・不純物イオン(軽元素イオン)、5,15,25,35,45,55・・・サイドウォール、7,17,27,37,47,57・・・ソース・ドレイン領域、18,28,38,58,18a,28a,38a,58a・・・ポリシリコン膜(ゲート電極)、29,39,49・・・不純物イオン(重元素イオン)、6,16,26,36,46,56・・・LDD領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上にアモルファスシリコン膜を形成する工程と、
前記アモルファスシリコン膜に不純物イオンをイオン注入する工程と、
前記アモルファスシリコン膜を加工することにより、前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程と、
を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上にアモルファスシリコン膜を形成する工程と、
前記アモルファスシリコン膜上にポリシリコン膜を形成する工程と、
前記アモルファスシリコン膜及び前記ポリシリコン膜に不純物イオンをイオン注入する工程と、
前記アモルファスシリコン膜及び前記ポリシリコン膜を加工することにより、前記ゲート絶縁膜上に前記アモルファスシリコン膜及び前記ポリシリコン膜からなるゲート電極を形成する工程と、
を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上にアモルファスシリコン膜を形成する工程と、
前記アモルファスシリコン膜に重元素の不純物イオンをイオン注入する工程と、
前記アモルファスシリコン膜上にポリシリコン膜を形成する工程と、
前記ポリシリコン膜に前記重元素より質量の小さい軽元素の不純物イオンをイオン注入する工程と、
前記アモルファスシリコン膜及び前記ポリシリコン膜を加工することにより、前記ゲート絶縁膜上に前記アモルファスシリコン膜及び前記ポリシリコン膜からなるゲート電極を形成する工程と、
を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上にアモルファスシリコン膜を形成する工程と、
前記アモルファスシリコン膜上にポリシリコン膜を形成する工程と、
前記アモルファスシリコン膜及び前記ポリシリコン膜に、重元素の不純物イオン及び前記重元素より質量の小さい軽元素の不純物イオンをイオン注入することにより、前記アモルファスシリコン膜側に前記重元素イオンを導入するとともに前記ポリシリコン膜側に前記軽元素イオンを導入する工程と、
前記アモルファスシリコン膜及び前記ポリシリコン膜を加工することにより、前記ゲート絶縁膜上に前記アモルファスシリコン膜及び前記ポリシリコン膜からなるゲート電極を形成する工程と、
を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか一項において、前記アモルファスシリコン膜は前記ポリシリコン膜より薄く形成されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上にアモルファスシリコン膜を形成する工程と、
前記アモルファスシリコン膜に、重元素の不純物イオン及び前記重元素より質量の小さい軽元素の不純物イオンをイオン注入することにより、前記アモルファスシリコン膜の下層側に前記重元素イオンを導入するとともに前記アモルファスシリコン膜の上層側に前記軽元素イオンを導入する工程と、
前記アモルファスシリコン膜を加工することにより、前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程と、
を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成されたアモルファスシリコン膜からなるゲート電極と、
前記ゲート電極に導入された不純物イオンと、
を具備することを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項7において、前記不純物イオンは、前記ゲート電極の下層側に導入された重元素の不純物イオンと、前記ゲート電極の上層側に導入された前記重元素より質量の小さい軽元素の不純物イオンとを有することを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成された、下層側がアモルファスシリコン膜からなり上層側がポリシリコン膜からなるゲート電極と、
前記ゲート電極に導入された不純物イオンと、
を具備することを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
請求項9において、前記不純物イオンは、前記アモルファスシリコン膜に導入された重元素の不純物イオンと、前記ポリシリコン膜に導入された前記重元素より質量の小さい軽元素の不純物イオンとを有することを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−295802(P2009−295802A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148156(P2008−148156)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】