説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】ゲート絶縁膜にhigh−k膜を使用したMIS構造の半導体装置において、互いに異なる仕事関数を有する複数の同一導電型トランジスタを設けることを可能にする。
【解決手段】同じ導電型の第1のMISトランジスタ及び第2のMISトランジスタが同じ半導体基板50上に設けられている。第1のMISトランジスタにおけるゲート絶縁膜52aの界面層2Aの厚さは、第2のMISトランジスタにおけるゲート絶縁膜52bの界面層2bの厚さよりも厚い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及び半導体装置の製造方法に関し、特に、半導体基板上に形成されたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極とを有するMIS(metal insulator semiconductor )型の半導体装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路装置の高速化及び低消費電力化の要求に応じる為、MISFET(metal insulator semiconductor field-effect transitor:以下、MISトランジスタと称する)では、ゲート絶縁膜の薄膜化が行われている。このようなゲート絶縁膜の薄膜化において、従来から使用されているシリコン酸化膜を薄膜化した場合、トンネル電流に起因するゲートリーク電流が増大する。そこで、シリコン酸化膜に代えて、HfO2 膜等のいわゆる高誘電率絶縁膜をゲート絶縁膜に用いることによって、等価酸化膜厚(Equivalent oxide thickness:EOT)を薄膜化すると共に、ゲート電極となるポリシリコン膜とゲート絶縁膜との間に、ゲート電極の一部として金属含有膜を挟み込む所謂MIPS(Metal Inserted Poly Silicon )構造を用いることによって、ゲート電極の空乏化を防止することが試みられている(例えば非特許文献1参照)。尚、高誘電率絶縁膜とは、シリコン窒化膜の比誘電率よりも高い比誘電率を持つ絶縁膜、例えば比誘電率が8以上の絶縁膜を意味する。
【0003】
以下、同一基板上に設けられたn型MISトランジスタとp型MISトランジスタとから構成されたCMIS(Complementary metal insulator semiconductor )素子を備え、ゲート絶縁膜にはHfO2 膜を、ゲート電極にはMIPS構造をそれぞれ用いた従来の半導体装置の製造方法について、図11〜図13を参照しながら説明する。図11〜図13は、従来の半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図(ゲート長方向の断面図)である。尚、図11〜図13において、左側に示す「nMISトランジスタ領域」とは、N型MISトランジスタが形成される領域を示し、右側に示す「pMISトランジスタ領域」とは、P型MISトランジスタが形成される領域を示す。
【0004】
まず、図11に示すように、p型シリコンからなる半導体基板100の上部に、シャロートレンチ分離101を選択的に形成することによって、pMISトランジスタ領域とnMISトランジスタ領域とを区画する。ここで、pMISトランジスタ領域の半導体基板100におけるシャロートレンチ分離101に囲まれた部分が活性領域100aとなり、nMISトランジスタ領域の半導体基板100におけるシャロートレンチ分離101に囲まれた部分が活性領域100bとなる。
【0005】
次に、pMISトランジスタ領域の半導体基板100にn型ウェル領域121Nを形成し、nMISトランジスタ領域の半導体基板100にp型ウェル領域121Pを形成する。その後、フォトリソグラフィ法及びドライエッチング法により、pMISトランジスタ領域の活性領域100a上にゲート絶縁膜122aを介してゲート電極123aを形成すると共に、nMISトランジスタ領域の活性領域100b上にゲート絶縁膜122bを介してゲート電極123bを形成する。
【0006】
ここで、ゲート絶縁膜122aは、シリコン酸化膜からなる界面層102aと、界面層102a上に形成され且つHfO2 膜からなる高誘電率絶縁膜(以下、high−k膜と称する)103aと、high−k膜103a上に形成されたpMIS用キャップ膜104aとからなる。また、ゲート絶縁膜122bは、シリコン酸化膜からなる界面層102bと、界面層102b上に形成され且つHfO2 膜からなるhigh−k膜103bと、high−k膜103b上に形成されたnMIS用キャップ膜104bとからなる。pMIS用キャップ膜104a及びnMIS用キャップ膜104bによって各ゲート電極123a及び123bの仕事関数の制御が可能となる。
【0007】
また、ゲート電極123aは、メタル膜106aと、メタル膜106a上に形成されたポリシリコン膜107aとからなり、ゲート電極123bは、メタル膜106bと、メタル膜106b上に形成されたポリシリコン膜107bとからなる。
【0008】
次に、図12に示すように、pMISトランジスタ領域の半導体基板100にp型不純物を導入することによって、ゲート電極123aの両側にエクステンション領域108aを形成し、nMISトランジスタ領域の半導体基板100にn型不純物を導入することによって、ゲート電極123bの両側にエクステンション領域108bを形成する。
【0009】
次に、半導体基板100上の全面にシリコン酸化膜及びシリコン窒化膜を順次堆積した後、シリコン窒化膜及びシリコン酸化膜に対して異方性エッチングを行う。これにより、図13に示すように、ゲート電極123aの両側面上に、シリコン酸化膜109a及びシリコン窒化膜110aからなるサイドウォールスペーサ111aが形成されると共に、ゲート電極123bの両側面上に、シリコン酸化膜109b及びシリコン窒化膜110bからなるサイドウォールスペーサ111bが形成される。その後、pMISトランジスタ領域の半導体基板100にp型不純物を導入することによって、ゲート電極123a及びサイドウォールスペーサ111aの両側にソースドレイン領域112aを形成し、nMISトランジスタ領域の半導体基板100にn型不純物を導入することによって、ゲート電極123b及びサイドウォールスペーサ111bの両側にソースドレイン領域112bを形成する。以上の工程によって、CMIS素子が形成される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】T. Schram 他、Novel Process To Pattern Selectively Dual Dielectric Capping Layers Using Soft-Mask Only、2008. Symp. On VLSI techonology 、p.44
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述のようなCMIS素子を使用して、異なる閾値電圧(Vth)を有する複数のトランジスタを半導体集積回路内に形成すると共に、高速動作が要求される回路では低Vthトランジスタを、低スタンバイリークが要求される回路では高Vthトランジスタを使用することによって、より高性能な半導体集積回路装置を形成することが可能となる。
【0012】
図14は、トランジスタにおける実効仕事関数と飽和電流との関係を示している。図14においては、実効仕事関数値を変化させながら、それぞれの実効仕事関数値で最も高い飽和電流が得られるようにトランジスタチャンネル内不純物を設定した場合のトランジスタ飽和電流を異なる2種類のソースオフリークについて破線で示している。
【0013】
図14に示すように、nMISトランジスタ及びpMISトランジスタのそれぞれにおいて、実効仕事関数に対して飽和電流が最大となる点が異なっていること、及び、同じ導電型のトランジスタであっても、ソースオフリークが異なるトランジスタの間では、飽和電流が最大となる実効仕事関数が異なっていることがわかる。
【0014】
尚、「実効仕事関数」とは、MISトランジスタの電気特性から求められる仕事関数であって、真空準位と金属のエネルギー準位との差を示す物性的な仕事関数に絶縁膜中の準位などの影響を加味することによって得られる。また、図14に示す「飽和電流」は、単位ゲート幅当たりの駆動電流であって、トランジスタの駆動力を表している。
【0015】
ところで、所望のソースオフリーク電流及びVth(閾値電圧)に対して実効仕事関数がnMISトランジスタにおいては低すぎ、pMISトランジスタにおいては高すぎる場合、チャンネル内不純物濃度を高く設定しなければならないので、トランジスタ飽和電流は低下する。また、所望のソースオフリーク電流及びVthに対して実効仕事関数がnMISトランジスタにおいては高すぎ、pMISトランジスタにおいては低すぎる場合、Vth調整のためのチャンネル内不純物を十分に導入できないため、サブスレッショルド特性が悪化するので、オフリーク電流一定条件下でのトランジスタ飽和電流は低下する。
【0016】
従って、複数のVthを必要とする半導体集積回路装置において、それぞれのVthでのトランジスタ駆動電流を極大にするためには、異なる仕事関数を有する複数のゲート構造を1チップ内に形成することが必要となる。
【0017】
しかしながら、前述の従来の半導体装置の製造方法においては、nMISトランジスタ及びpMISトランジスタのそれぞれにおいて一種類の仕事関数しか設定できない。
【0018】
前記に鑑み、本発明は、ゲート絶縁膜にhigh−k膜を使用したMIS構造の半導体装置において、互いに異なる仕事関数を有する複数の同一導電型トランジスタを設けることを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記の目的を達成するために、本願発明者らは、異なる仕事関数を有するゲート構造(ゲート絶縁膜とゲート電極とのスタック構造)を作り分ける方法として、nMIS用キャップ膜やpMIS用キャップ膜の膜厚を変える方法、及び、トランジスタ毎にメタル電極を作り分ける方法等を検討してみたが、こられの方法はいずれも製造工程の大幅な増加を招くので、実用的ではない。
【0020】
そこで、本願発明者らは、さらなる検討を行った結果、ゲート構造の形成後に、ゲート絶縁膜の最下層を構成する界面層の厚さを選択的酸化により増大させることによって、異なる仕事関数を有するゲート構造を作り分けることに想到した。
【0021】
具体的には、本発明に係る半導体装置は、同じ導電型の第1のMISトランジスタ及び第2のMISトランジスタを同じ半導体基板上に有する半導体装置であって、前記第1のMISトランジスタは、前記半導体基板における第1の活性領域上に形成された第1のゲート絶縁膜と、前記第1のゲート絶縁膜上に形成された第1のゲート電極とを備え、前記第2のMISトランジスタは、前記半導体基板における第2の活性領域上に形成された第2のゲート絶縁膜と、前記第2のゲート絶縁膜上に形成された第2のゲート電極とを備え、前記第1のゲート絶縁膜は、前記半導体基板と接する第1の界面層と、前記第1の界面層上に形成された第1の高誘電率絶縁膜とを含み、前記第2のゲート絶縁膜は、前記半導体基板と接する第2の界面層と、前記第2の界面層上に形成された第2の高誘電率絶縁膜とを含み、前記第1の界面層の厚さは、前記第2の界面層の厚さよりも厚い。
【0022】
本発明に係る半導体装置によると、第1のMISトランジスタにおけるゲート絶縁膜の界面層の厚さは、第1のMISトランジスタと同じ導電型の第2のMISトランジスタにおけるゲート絶縁膜の界面層の厚さよりも厚い。このため、第1のMISトランジスタのゲート絶縁膜のEOTが増大するので、第1のMISトランジスタの実効仕事関数が増大する。従って、ゲート絶縁膜にhigh−k膜を使用したMIS構造の半導体装置において、互いに異なる仕事関数を有する複数の同一導電型トランジスタを設けることが可能となる。
【0023】
本発明に係る半導体装置において、前記第1のゲート電極の側面上には第1の絶縁性スペーサを介して第1のサイドウォールスペーサが形成されており、前記第2のゲート電極の側面上には第2の絶縁性スペーサを介して第2のサイドウォールスペーサが形成されており、前記第1の絶縁性スペーサの厚さは、前記第2の絶縁性スペーサの厚さよりも薄くてもよい。このようにすると、ゲート構造の形成後、サイドウォールスペーサの形成前に、選択酸化を行うことによって、第1のMISトランジスタにおけるゲート絶縁膜の界面層を厚くすることができる。この場合、前記第1の絶縁性スペーサは、I字状の断面形状を持つオフセットスペーサであり、前記第2の絶縁性スペーサは、L字状の断面形状を持つ下地スペーサであってもよい。また、前記第1のゲート電極は、前記第1の高誘電率絶縁膜上に形成された第1の金属含有膜と、前記第1の金属含有膜上に形成された第1のシリコン膜とを含み、前記第2のゲート電極は、前記第2の高誘電率絶縁膜上に形成された第2の金属含有膜と、前記第2の金属含有膜上に形成された第2のシリコン膜とを含み、前記第1のシリコン膜と前記第1の絶縁性スペーサとの間にはシリコン酸化膜が介在しており、前記第2のシリコン膜と前記第2の絶縁性スペーサと接していてもよい。ここで、前記第1のシリコン膜上には第1の金属シリサイド層が形成されており、前記第2のシリコン膜上には第2の金属シリサイド層が形成されていてもよいし、或いは、前記第1の活性領域と前記第1のサイドウォールスペーサとの間にもシリコン酸化膜が介在していてもよい。また、前記第1の絶縁性スペーサ及び前記第2の絶縁性スペーサはシリコン窒化膜から構成されていてもよい。
【0024】
本発明に係る半導体装置において、前記第1のMISトランジスタ及び前記第2のMISトランジスタはpMISトランジスタであり、前記第1の高誘電率絶縁膜及び前記第2の高誘電率絶縁膜はアルミニウムを含有していてもよい。この場合、前記第1のゲート絶縁膜は、前記第1の高誘電率絶縁膜上に形成され且つアルミニウムを含有する第1のキャップ膜をさらに含み、前記第2のゲート絶縁膜は、前記第2の高誘電率絶縁膜上に形成され且つアルミニウムを含有する第2のキャップ膜をさらに含んでいてもよい。
【0025】
本発明に係る半導体装置において、前記第1のMISトランジスタ及び前記第2のMISトランジスタはnMISトランジスタであり、前記第1の高誘電率絶縁膜及び前記第2の高誘電率絶縁膜はランタンを含有していてもよい。この場合、前記第1のゲート絶縁膜は、前記第1の高誘電率絶縁膜上に形成され且つランタンを含有する第1のキャップ膜をさらに含み、前記第2のゲート絶縁膜は、前記第2の高誘電率絶縁膜上に形成され且つランタンを含有する第2のキャップ膜をさらに含んでいてもよい。尚、第1の高誘電率絶縁膜、第2の高誘電率絶縁膜、第1のキャップ膜、第2のキャップ膜が、ランタンに代えて、Dy(ジスプロシウム)、Sc(スカンジウム)、Gd(ガドリニウム)を含有していてもよい。
【0026】
本発明に係る半導体装置において、前記第1の高誘電率絶縁膜及び前記第2の高誘電率絶縁膜はハフニウム又はジルコニウムを含んでいてもよい。
【0027】
本発明に係る半導体装置において、前記第1の界面層及び前記第2の界面層はシリコン酸化膜から構成されていてもよい。
【0028】
本発明に係る半導体装置において、前記第1の高誘電率絶縁膜の厚さと、前記第2の高誘電率絶縁膜の厚さとは実質的に同じであってもよいし、或いは、前記第1のゲート電極の材料と、前記第2のゲート電極の材料とは実質的に同じであってもよい。すなわち、本発明に係る半導体装置において、第1のMISトランジスタ及び第2のMISトランジスタは、界面層の厚さを除いて、実質的に同じゲート構造を有していてもよい。
【0029】
本発明に係る半導体装置において、前記第1のMISトランジスタの実効仕事関数は、前記第2のMISトランジスタの実効仕事関数よりも高くてもよい。
【0030】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法は、第1の活性領域及び第2の活性領域を有する半導体基板上に、界面層、高誘電率絶縁膜及びゲート電極材料膜を順次形成する工程(a)と、前記ゲート電極材料膜、前記高誘電率絶縁膜及び前記界面層をパターニングすることによって、前記第1の活性領域上に、前記界面層及び前記高誘電率絶縁膜を含む第1のゲート絶縁膜を介して、前記ゲート電極材料膜からなる第1のゲート電極を形成すると共に、前記第2の活性領域上に、前記界面層及び前記高誘電率絶縁膜を含む第2のゲート絶縁膜を介して、前記ゲート電極材料膜からなる第2のゲート電極を形成する工程(b)と、前記工程(b)の後に、前記第1のゲート絶縁膜における前記界面層の厚さを選択的に厚くする工程(c)とを備えている。
【0031】
本発明に係る半導体装置の製造方法によると、第1のMISトランジスタにおけるゲート絶縁膜の界面層の厚さを選択的に厚くするため、第1のMISトランジスタのゲート絶縁膜のEOTが増大するので、第1のMISトランジスタの実効仕事関数が増大する。従って、ゲート絶縁膜にhigh−k膜を使用したMIS構造の半導体装置において、互いに異なる仕事関数を有する複数の同一導電型トランジスタを設けることが可能となる。
【0032】
本発明に係る半導体装置の製造方法において、前記工程(c)は、前記第1のゲート電極及び前記第2のゲート電極を絶縁膜によって覆った後、前記第1のゲート電極を覆う前記絶縁膜に対して選択的にエッチングを行い、その後、酸化処理によって前記第1のゲート絶縁膜における前記界面層を厚くする工程を含んでいてもよい。このようにすると、第1のMISトランジスタにおけるゲート絶縁膜の界面層の厚さを確実に選択的に厚くすることができる。この場合、第1のゲート電極及び第2のゲート電極を覆う絶縁膜は、例えばシリコン窒化膜であってもよい。また、第1のMISトランジスタにおけるゲート絶縁膜の界面層の厚さを選択的に厚くするための酸化処理は、例えば、酸素含有雰囲気中での熱処理又はプラズマ処理であってもよい。また、前記ゲート電極材料膜は、前記高誘電率絶縁膜上に形成された金属含有膜と、前記金属含有膜上に形成されたシリコン膜とを含み、前記工程(c)において、前記第1のゲート電極の側面上に残存する前記絶縁膜と、前記第1のゲート電極における前記シリコン膜との間に、シリコン酸化膜が形成されてもよい。
【0033】
尚、本発明に係る半導体装置の製造方法において、高誘電率絶縁膜を形成する工程と、ゲート電極材料膜を形成する工程との間に、高誘電率絶縁膜上に、閾値電圧(Vth)調整用金属を含むキャップ膜を形成する工程を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0034】
本発明によると、ゲート絶縁膜にhigh−k膜を使用したMIS構造の半導体装置において、互いに異なる仕事関数を有する複数の同一導電型トランジスタを設けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、一実施形態に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図(ゲート長方向の断面図)である。
【図2】図2は、一実施形態に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図(ゲート長方向の断面図)である。
【図3】図3は、一実施形態に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図(ゲート長方向の断面図)である。
【図4】図4は、一実施形態に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図(ゲート長方向の断面図)である。
【図5】図5は、一実施形態に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図(ゲート長方向の断面図)である。
【図6】図6は、一実施形態に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図(ゲート長方向の断面図)である。
【図7】図7は、一実施形態に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図(ゲート長方向の断面図)である。
【図8】図8は、一実施形態に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図(ゲート長方向の断面図)である。
【図9】図9は、一実施形態に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図(ゲート長方向の断面図)である。
【図10】図10は、一実施形態に係る半導体装置における等価酸化膜厚(EOT)とトランジスタの実効仕事関数との関係を示す図である。
【図11】図11は、従来の半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図(ゲート長方向の断面図)である。
【図12】図12は、従来の半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図(ゲート長方向の断面図)である。
【図13】図13は、従来の半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図(ゲート長方向の断面図)である。
【図14】図14は、チャネルドーズを変化させてソースオフリークを一定に設定したトランジスタにおける実効仕事関数と飽和電流との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の一実施形態に係る半導体装置及びその製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0037】
図1〜図9は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図(ゲート長方向の断面図)である。尚、図1〜図9において、一番右側の「第1のpMISトランジスタ領域」とは、第1のpMISトランジスタが形成される領域を示し、右側から2番目の「第2のpMISトランジスタ領域」とは、第2のpMISトランジスタが形成される領域を示し、右側から3番目の「第1のnMISトランジスタ領域」とは、第1のnMISトランジスタが形成される領域を示し、一番左側の「第2のnMISトランジスタ領域」とは、第2のnMISトランジスタが形成される領域を示す。
【0038】
尚、本実施形態においては、第1のpMISトランジスタ及び第2のnMISトランジスタは、例えば、高速動作が必要な低Vth(例えば0.1〜0.25V)トランジスタとして用いられる。また、第2のpMISトランジスタ及び第1のnMISトランジスタは、例えば、低スタンバイリークが必要な高Vth(例えば0.35〜0.5V)トランジスタとして用いられる。
【0039】
まず、図1に示すように、例えばp型シリコンからなる半導体基板50の上部に、例えばシリコン酸化膜が充填されたシャロートレンチからなる素子分離領域1を選択的に形成することによって、pMISトランジスタ領域とnMISトランジスタ領域とを区画する。ここで、第1のpMISトランジスタ領域の半導体基板50における素子分離領域1に囲まれた部分が活性領域50aとなり、第2のpMISトランジスタ領域の半導体基板50における素子分離領域1に囲まれた部分が活性領域50bとなり、第1のnMISトランジスタ領域の半導体基板50における素子分離領域1に囲まれた部分が活性領域50cとなり、第2のnMISトランジスタ領域の半導体基板50における素子分離領域1に囲まれた部分が活性領域50dとなる。
【0040】
次に、第1及び第2のpMISトランジスタ領域の半導体基板50に、例えば砒素等のn型不純物をイオン注入により導入することによって、n型ウェル領域51Nを形成する。また、第1及び第2のnMISトランジスタ領域の半導体基板50に、例えばボロン等のp型不純物をイオン注入により導入することによって、p型ウェル領域51Pを形成する。尚、第1のpMISトランジスタ領域に導入されるn型不純物の濃度と、第2のpMISトランジスタ領域に導入されるn型不純物の濃度とが異なっていてもよいし、第1のnMISトランジスタ領域に導入されるp型不純物の濃度と、第2のnMISトランジスタ領域に導入されるp型不純物の濃度とが異なっていてもよい。
【0041】
次に、各MISトランジスタ領域を含む半導体基板50上に、例えばシリコン酸化膜からなる厚さ0.8nm程度の界面層2、及び、例えばHf又はZrとOとを含む厚さ1.2nm程度の高誘電率絶縁膜(high−k膜)3を順次形成する。
【0042】
次に、high−k膜3上に、例えばAl及びOを含むpMIS用キャップ膜4を形成した後、第1及び第2のnMISトランジスタ領域からpMIS用キャップ膜4を除去し、その後、high−k膜3上及びpMIS用キャップ膜4上に、例えばLa及びOを含むnMIS用キャップ膜4’を形成した後、第1及び第2のpMISトランジスタ領域からnMIS用キャップ膜4’を除去する。ここで、pMIS用キャップ膜4は、pMISトランジスタの実効仕事関数を高くすることができる調整用金属として、例えばAl(アルミニウム)を含有している。また、nMIS用キャップ膜4’は、nMISトランジスタの実効仕事関数を高くすることができる調整用金属として、例えばLa(ランタン)を含有している。
【0043】
次に、pMIS用キャップ膜4上及びnMIS用キャップ膜4’上に、例えばTi、Ta又はRu等とNとを含む厚さ5nm程度の金属含有膜6、及び例えばポリシリコンからなる厚さ60nm程度のシリコン膜7を順次形成する。
【0044】
次に、フォトリソグラフィ法及びドライエッチング法により、シリコン膜7、金属含有膜6、pMIS用キャップ膜4、nMIS用キャップ膜4’、high−k膜3及び界面層2をパターニングする。これにより、図2に示すように、第1のpMISトランジスタ領域の活性領域50a上にゲート絶縁膜52aを介してゲート電極53aを形成し、第2のpMISトランジスタ領域の活性領域50b上にゲート絶縁膜52bを介してゲート電極53bを形成し、第1のnMISトランジスタ領域の活性領域50c上にゲート絶縁膜52cを介してゲート電極53cを形成し、第2のnMISトランジスタ領域の活性領域50d上にゲート絶縁膜52dを介してゲート電極53dを形成する。
【0045】
ここで、ゲート絶縁膜52aは、界面層2aとhigh−k膜3aとpMIS用キャップ膜4aとからなり、ゲート絶縁膜52bは、界面層2bとhigh−k膜3bとpMIS用キャップ膜4bとからなり、ゲート絶縁膜52cは、界面層2cとhigh−k膜3cとnMIS用キャップ膜4cとからなり、ゲート絶縁膜52dは、界面層2dとhigh−k膜3dとnMIS用キャップ膜4dとからなる。
【0046】
また、ゲート電極53aは、金属含有膜6aとシリコン膜7aとからなり、ゲート電極53bは、金属含有膜6bとシリコン膜7bとからなり、ゲート電極53cは、金属含有膜6cとシリコン膜7cとからなり、ゲート電極53dは、金属含有膜6dとシリコン膜7dとからなる。
【0047】
次に、図3に示すように、ゲート電極53a、53b、53c、53dの上を含む半導体基板50上の全面に、例えばシリコン窒化膜からなる厚さ6nm程度の絶縁膜8を形成する。
【0048】
次に、第2のpMISトランジスタ領域に開口を有するレジストパターン(図示省略)を用いて、例えばボロン等のp型不純物を半導体基板50にイオン注入により導入することによって、図4に示すように、活性領域50bにおけるゲート電極53bの側方下に位置する領域にp型エクステンション領域9bを形成した後、前記レジストパターンを除去する。ここで、イオン注入条件は、例えば、注入エネルギーが0.8keV、ドーズ量が1×1015cm-2である。尚、ボロン等のp型不純物のイオン注入の前に、ゲルマニウム(Ge)及び炭素(C)を第2のpMISトランジスタ領域の半導体基板50に注入してもよい。この場合、Geの注入条件は、例えば、注入エネルギーが5keV、ドーズ量が5×1014cm-2であり、Cの注入条件は、例えば、注入エネルギーが2keV、ドーズ量が5×1014cm-2である。
【0049】
次に、第2のnMISトランジスタ領域に開口を有するレジストパターン(図示省略)を用いて、例えば砒素等のn型不純物を半導体基板50にイオン注入により導入することによって、活性領域50dにおけるゲート電極53dの側方下に位置する領域にn型エクステンション領域9dを形成した後、前記レジストパターンを除去する。ここで、イオン注入条件は、例えば、注入エネルギーが1.2keV、ドーズ量が1×1015cm-2である。尚、砒素等のn型不純物のイオン注入の前に、ゲルマニウム(Ge)及び炭素(C)を第2のnMISトランジスタ領域の半導体基板50に注入してもよい。この場合、Geの注入条件は、例えば、注入エネルギーが5keV、ドーズ量が5×1014cm-2であり、Cの注入条件は、例えば、注入エネルギーが2keV、ドーズ量が5×1014cm-2である。
【0050】
次に、図5に示すように、フォトリソグラフィ法により、第2のpMISトランジスタ領域及び第2のnMISトランジスタ領域を覆うレジストパターン11を形成した後、レジストパターン11をマスクとして、ドライエッチング法により、絶縁膜8に対してエッチングを行う。これにより、第1のpMISトランジスタ領域のゲート電極53aの側面上に、I字状の断面形状を持つオフセットスペーサ8aが形成されると共に、第1のnMISトランジスタ領域のゲート電極53cの側面上に、I字状の断面形状を持つオフセットスペーサ8cが形成される。このとき、オフセットスペーサ8a及び8cの幅は、元の絶縁膜8の厚さ(例えば6nm程度)と比較して、例えば2.5nm程度まで薄くなる。
【0051】
次に、レジストパターン11を除去した後、例えば酸素を含むガスからなるプラズマ中において、半導体基板50に対して、例えば400℃程度で酸化処理を行う。これにより、図6に示すように、第1のpMISトランジスタ領域におけるゲート絶縁膜52aの界面層2aがそのエッジ側から0.3nm程度厚くなって界面層2Aとなると共に、第1のnMISトランジスタ領域におけるゲート絶縁膜52cの界面層2cがそのエッジ側から0.3nm程度厚くなって界面層2Cとなる。ここで、厚い界面層2A及び界面層2Cの形成後においても、high−k膜3a及び3cの厚さには実質的な変化はない。すなわち、厚い界面層2A及び界面層2Cの形成後においても、high−k膜3a、3b、3c、3dは実質的に同じ厚さを有している。
【0052】
また、図6に示す工程においては、第1のpMISトランジスタ領域におけるゲート電極53aのシリコン膜7aの上部及び両側部に厚さ0.3nm程度のシリコン酸化膜13aが形成されると共に、第1のnMISトランジスタ領域におけるゲート電極53cのシリコン膜7cの上部及び両側部に厚さ0.3nm程度のシリコン酸化膜13cが形成される。すなわち、第1のpMISトランジスタ領域におけるゲート電極53aのシリコン膜7aとオフセットスペーサ8aとの間に介在するようにシリコン酸化膜13aが形成されると共に、第1のnMISトランジスタ領域におけるゲート電極53cのシリコン膜7cとオフセットスペーサ8cとの間に介在するようにシリコン酸化膜13cが形成される。また、ゲート電極53aの両側に位置する部分の活性領域50aの表面部にも厚さ0.3nm程度のシリコン酸化膜13aが形成されると共に、ゲート電極53cの両側に位置する部分の活性領域50cの表面部にも厚さ0.3nm程度のシリコン酸化膜13cが形成される。
【0053】
尚、ゲート絶縁膜52aの界面層2a及びゲート電極53aのシリコン膜7a側部は、オフセットスペーサ8aを透過した酸素によって酸化されており、ゲート絶縁膜52cの界面層2c及びゲート電極53cのシリコン膜7c側部は、オフセットスペーサ8cを透過した酸素によって酸化されている。
【0054】
一方、図6に示す工程において、第2のpMISトランジスタ領域及び第2のnMISトランジスタ領域のそれぞれのゲート構造は厚さ6nm程度の絶縁膜8により覆われているため、第2のpMISトランジスタ領域のゲート絶縁膜52bの界面層2b、及び第2のnMISトランジスタ領域のゲート絶縁膜52dの界面層2dが厚くなることはない。
【0055】
尚、本実施形態において、界面層2a及び2cを酸化させるために、酸素含有雰囲気中でプラズマ処理を行ったが、これに代えて、酸素含有雰囲気中で例えば600℃程度の熱処理を行ってもよい。
【0056】
次に、第1のpMISトランジスタ領域に開口を有するレジストパターン(図示省略)を用いて、例えばボロン等のp型不純物を半導体基板50にイオン注入により導入することによって、図7に示すように、活性領域50aにおけるゲート電極53aの側方下に位置する領域にp型エクステンション領域9aを形成した後、前記レジストパターンを除去する。ここで、イオン注入条件は、例えば、注入エネルギーが0.8keV、ドーズ量が1×1015cm-2である。尚、ボロン等のp型不純物のイオン注入の前に、ゲルマニウム(Ge)及び炭素(C)を第1のpMISトランジスタ領域の半導体基板50に注入してもよい。この場合、Geの注入条件は、例えば、注入エネルギーが5keV、ドーズ量が5×1014cm-2であり、Cの注入条件は、例えば、注入エネルギーが2keV、ドーズ量が5×1014cm-2である。
【0057】
次に、第1のnMISトランジスタ領域に開口を有するレジストパターン(図示省略)を用いて、例えば砒素等のn型不純物を半導体基板50にイオン注入により導入することによって、活性領域50cにおけるゲート電極53cの側方下に位置する領域にn型エクステンション領域9cを形成した後、前記レジストパターンを除去する。ここで、イオン注入条件は、例えば、注入エネルギーが1.2keV、ドーズ量が1×1015cm-2である。尚、砒素等のn型不純物のイオン注入の前に、ゲルマニウム(Ge)及び炭素(C)を第1のnMISトランジスタ領域の半導体基板50に注入してもよい。この場合、Geの注入条件は、例えば、注入エネルギーが5keV、ドーズ量が5×1014cm-2であり、Cの注入条件は、例えば、注入エネルギーが2keV、ドーズ量が5×1014cm-2である。
【0058】
次に、半導体基板50上の全面にシリコン酸化膜及びシリコン窒化膜を順次堆積した後、当該シリコン窒化膜及び当該シリコン酸化膜に対してエッチバックを行う。これにより、図8に示すように、ゲート電極53a、53b、53c及び53dの両側面上にサイドウォールスペーサ18a、18b、18c、18dが形成される。ここで、サイドウォールスペーサ18a、18b、18c、18dは、L字状の断面形状を持ち且つシリコン酸化膜からなる内側サイドウォールスペーサ16a、16b、16c、16dと、内側サイドウォールスペーサ16a、16b、16c、16d上に形成され且つシリコン窒化膜からなる外側サイドウォールスペーサ17a、17b、17c、17dとからなる。
【0059】
尚、図8に示す工程においては、第2のpMISトランジスタ領域及び第2のnMISトランジスタ領域のそれぞれに残存していた絶縁膜8もエッチバックされる。その結果、ゲート電極53bとサイドウォールスペーサ18b(内側サイドウォールスペーサ16b)との間に、L字状の断面形状を持つ下地スペーサ8bが形成されると共に、ゲート電極53dとサイドウォールスペーサ18d(内側サイドウォールスペーサ16d)との間に、L字状の断面形状を持つ下地スペーサ8dが形成される。ここで、下地スペーサ8bはゲート電極53bのシリコン膜7bと接していると共に、下地スペーサ8dはゲート電極53dのシリコン膜7dと接している。また、下地スペーサ8b及び8dの幅は、元の絶縁膜8の厚さ(例えば6nm程度)と同程度であって、オフセットスペーサ8a及び8cの幅(例えば2.5nm程度)よりも厚い。
【0060】
また、図8に示す工程においては、ゲート電極53a上及び活性領域50a上のシリコン酸化膜13a、並びにゲート電極53c上及び活性領域50c上のシリコン酸化膜13cもエッチバックされる。その結果、ゲート電極53aの側面とサイドウォールスペーサ18aとの間にはオフセットスペーサ8a及び残存するシリコン酸化膜13aが介在すると共に、活性領域50a(p型エクステンション領域9a)とサイドウォールスペーサ18aとの間には残存するシリコン酸化膜13aが介在する。また、ゲート電極53cの側面とサイドウォールスペーサ18cとの間にはオフセットスペーサ8c及び残存するシリコン酸化膜13cが介在すると共に、活性領域50c(p型エクステンション領域9c)とサイドウォールスペーサ18cとの間には残存するシリコン酸化膜13cが介在する。
【0061】
次に、第1及び第2のp型MISトランジスタ領域に開口を有するレジストパターン(図示省略)を用いて、例えばボロン等のp型不純物を半導体基板50にイオン注入により導入することによって、図9に示すように、活性領域50aにおけるサイドウォールスペーサ18aの外側方下に位置する領域にをp型ソースドレイン領域19a形成する一方、活性領域50bにおけるサイドウォールスペーサ18bの外側方下に位置する領域にp型ソースドレイン領域19bを形成した後、前記レジストパターンを除去する。ここで、イオン注入条件は、例えば、注入エネルギーが1.6keV、ドーズ量が1×1015cm-2である。尚、ボロン等のp型不純物のイオン注入の前に、ゲルマニウム(Ge)を第1及び第2のpMISトランジスタ領域の半導体基板50に注入してもよい。この場合、Geの注入条件は、例えば、注入エネルギーが10keV、ドーズ量が5×1015cm-2である。
【0062】
次に、第1及び第2のnMISトランジスタ領域に開口を有するレジストパターン(図示省略)を用いて、例えば砒素等のn型不純物を半導体基板50にイオン注入により導入することによって、活性領域50cにおけるサイドウォールスペーサ18cの外側方下に位置する領域にn型ソースドレイン領域19cを形成する一方、活性領域50dにおけるサイドウォールスペーサ18dの外側方下に位置する領域にn型ソースドレイン領域19dを形成した後、前記レジストパターンを除去する。ここで、イオン注入条件は、例えば、注入エネルギーが10keV、ドーズ量が5×1015cm-2である。
【0063】
その後、例えば1000℃程度でアニールを行うことによって、イオン注入により導入された不純物を活性化する。このとき、high−k膜3a及び3b中にpMIS用キャップ膜4a及び4b中のAlが拡散して、Al含有high−k膜3A及び3Bとなると共に、high−k膜3c及び3d中にnMIS用キャップ膜4c及び4d中のLaが拡散して、La含有high−k膜3C及び3Dとなる。
【0064】
その後、半導体基板50上の全面に、例えばNi等からなる金属膜を堆積した後、例えば260℃程度でアニール処理を行い、ゲート電極53a、53b、53c、53dのシリコン膜7a、7b、7c、7dの表面部、p型ソースドレイン領域19a及び19bの表面部、並びにn型ソースドレイン領域19c及び19dの表面部のそれぞれと、前記金属膜とを反応させて金属シリサイド層20a、20b、20c、20dを形成し、その後、未反応の金属膜を除去する。以上の工程によって、CMIS構造が形成される。
【0065】
図10は、本実施形態のトランジスタにおける等価酸化膜厚(EOT)と実効仕事関数との関係を示す。図10に示すように、第2のpMISトランジスタ及び第2のnMISトランジスタと比較して、第1のpMISトランジスタ及び第1のnMISトランジスタでは、厚い界面層2A及び2Cによって等価酸化膜厚が厚膜化すると同時に、実効仕事関数が上昇している。以下、その理由について述べる。
【0066】
例えばHfO2 からなるhigh−k膜では、工程中の熱処理により、high−k膜中の酸素が拡散してhigh−k膜中から抜け出るため、high−k膜と界面層との間に界面ダイポールが形成されるので、pMISトランジスタにおいてもnMISトランジスタにおいても実効仕事関数が低くシフトしてしまうと考えられている。
【0067】
一方、図6に示す工程で説明したように、第1のpMISトランジスタ及び第1のnMISトランジスタでは、ゲート電極53a及び53cのそれぞれの側面に薄いオフセットスペーサ8a及び8cを形成した状態で酸化雰囲気に晒すことによって、界面層2a及び界面層2cが厚くなって界面層2A及び界面層2Cとなる。このため、十分な酸素が含まれている界面層2A及び界面層2Cからhigh−k膜(キャップ膜中の金属が拡散する前)3a及び3cに十分に酸素が供給されるので、high−k膜3a及び3cからの酸素脱離が抑制される。これにより、前述の界面ダイポールが形成されにくくなる結果、各MISトランジスタにおいて実効仕事関数を高く設定することができる。
【0068】
実効仕事関数が高く設定された第1のnMISトランジスタでは、閾値電圧(Vth)が上昇するので、ソースオフリーク電流が低減される。すなわち、第1のnMISトランジスタは、低リーク用途に使用可能である。また、実効仕事関数が高く設定された第1のpMISトランジスタでは、閾値電圧(Vth)が低下するので、駆動力が向上する。すなわち、第1のpMISトランジスタは、高駆動力用途に使用可能である。
【0069】
以上に説明したように、本実施形態によると、第1のpMISトランジスタ及び第1のnMISトランジスタにおけるゲート絶縁膜52a及び52cの界面層2a及び2cの厚さを選択的に厚くする。このため、第1のpMISトランジスタ及び第1のnMISトランジスタにおけるゲート絶縁膜52a及び52cのEOTが増大するので、第1のpMISトランジスタ及び第1のnMISトランジスタの実効仕事関数が増大する。従って、ゲート絶縁膜にhigh−k膜を使用したMIS構造の半導体装置において、互いに異なる仕事関数を有する複数の同一導電型トランジスタを設けることが可能となる。このように、複数の仕事関数を持つMISトランジスタを集積回路内に混載させることが可能となると、低VthのMISトランジスタ及び高VthのMISトランジスタのそれぞれにおいてトランジスタ駆動電流を極大化することができる結果、高速且つ低リークの集積回路を実現することができる。
【0070】
尚、本実施形態において、界面層2a(2A)、2b、2c(2C)、2dとして、シリコン酸化膜を形成したが、これに代えて、例えばシリコン酸窒化膜を形成してもよい。
【0071】
また、本実施形態では、半導体装置の最終構造においてもpMIS用キャップ膜4a及び4b並びにnMIS用キャップ膜4c及び4dを残存させている。しかし、半導体装置の最終構造としては、Al含有high−k膜3A及び3B並びにLa含有high−k膜3C及び3Dが形成されていれば良く、pMIS用キャップ膜4a及び4b並びにnMIS用キャップ膜4c及び4dについては必ずしも残存させる必要はない。例えば、図1に示す工程において、金属含有膜6を形成する前に、Al含有high−k膜及びLa含有high−k膜を形成すれば、金属含有膜6を形成する際に、pMIS用キャップ膜4及びnMIS用キャップ膜4’を残存させておく必要はない。
【0072】
また、本実施形態において、nMIS用キャップ膜4’として、La(ランタン)を含有するキャップ膜を用いたが、これに代えて、Dy(ジスプロシウム)、Sc(スカンジウム)又はGd(ガドリニウム)等を含有するキャップ膜を用いてもよい。
【0073】
また、本実施形態においては、各MISトランジスタにおけるゲート構造(界面層厚さを除く)を実質的に同じにしたが、これに代えて、例えば、キャップ膜厚さやゲート電極材料をトランジスタ毎に変えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上に説明したように、本発明は、異なる閾値電圧(Vth)を持つ複数のMISトランジスタを備えたCMIS構造の半導体装置及びその製造方法として有用である。
【符号の説明】
【0075】
1 素子分離領域
2、2a、2b、2c、2d 界面層
2A、2C 厚い界面層
3、3a、3b、3c、3d high−k膜
3A、3B Al含有high−k膜
3C、3D La含有high−k膜
4、4a、4b pMIS用キャップ膜
4’、4c、4d nMIS用キャップ膜
6、6a、6b、6c、6d 金属含有膜
7、7a、7b、7c、7d シリコン膜
8 絶縁膜
8a、8c オフセットスペーサ
8b、8d 下地スペーサ
9a、9b p型エクステンション領域
9c、9d n型エクステンション領域
11 レジストパターン
13a、13c シリコン酸化膜
16a、16b、16c、16d 内側サイドウォールスペーサ
17a、17b、17c、17d 外側サイドウォールスペーサ
18a、18b、18c、18d サイドウォールスペーサ
19a、19b p型ソースドレイン領域
19c、19d n型ソースドレイン領域
20a、20b、20c、20d 金属シリサイド層
50 半導体基板
50a、50b、50c、50d 活性領域
51N n型ウェル領域
51P p型ウェル領域
52a、52b、52c、52d ゲート絶縁膜
53a、53b、53c、53d ゲート電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同じ導電型の第1のMISトランジスタ及び第2のMISトランジスタを同じ半導体基板上に有する半導体装置であって、
前記第1のMISトランジスタは、前記半導体基板における第1の活性領域上に形成された第1のゲート絶縁膜と、前記第1のゲート絶縁膜上に形成された第1のゲート電極とを備え、
前記第2のMISトランジスタは、前記半導体基板における第2の活性領域上に形成された第2のゲート絶縁膜と、前記第2のゲート絶縁膜上に形成された第2のゲート電極とを備え、
前記第1のゲート絶縁膜は、前記半導体基板と接する第1の界面層と、前記第1の界面層上に形成された第1の高誘電率絶縁膜とを含み、
前記第2のゲート絶縁膜は、前記半導体基板と接する第2の界面層と、前記第2の界面層上に形成された第2の高誘電率絶縁膜とを含み、
前記第1の界面層の厚さは、前記第2の界面層の厚さよりも厚いことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1のゲート電極の側面上には第1の絶縁性スペーサを介して第1のサイドウォールスペーサが形成されており、
前記第2のゲート電極の側面上には第2の絶縁性スペーサを介して第2のサイドウォールスペーサが形成されており、
前記第1の絶縁性スペーサの厚さは、前記第2の絶縁性スペーサの厚さよりも薄いことを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体装置において、
前記第1の絶縁性スペーサは、I字状の断面形状を持つオフセットスペーサであり、
前記第2の絶縁性スペーサは、L字状の断面形状を持つ下地スペーサであることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の半導体装置において、
前記第1のゲート電極は、前記第1の高誘電率絶縁膜上に形成された第1の金属含有膜と、前記第1の金属含有膜上に形成された第1のシリコン膜とを含み、
前記第2のゲート電極は、前記第2の高誘電率絶縁膜上に形成された第2の金属含有膜と、前記第2の金属含有膜上に形成された第2のシリコン膜とを含み、
前記第1のシリコン膜と前記第1の絶縁性スペーサとの間にはシリコン酸化膜が介在しており、
前記第2のシリコン膜と前記第2の絶縁性スペーサと接していることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体装置において、
前記第1のシリコン膜上には第1の金属シリサイド層が形成されており、
前記第2のシリコン膜上には第2の金属シリサイド層が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の半導体装置において、
前記第1の活性領域と前記第1のサイドウォールスペーサとの間にもシリコン酸化膜が介在していることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記第1の絶縁性スペーサ及び前記第2の絶縁性スペーサはシリコン窒化膜からなることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記第1のMISトランジスタ及び前記第2のMISトランジスタはpMISトランジスタであり、
前記第1の高誘電率絶縁膜及び前記第2の高誘電率絶縁膜はアルミニウムを含有することを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体装置において、
前記第1のゲート絶縁膜は、前記第1の高誘電率絶縁膜上に形成され且つアルミニウムを含有する第1のキャップ膜をさらに含み、
前記第2のゲート絶縁膜は、前記第2の高誘電率絶縁膜上に形成され且つアルミニウムを含有する第2のキャップ膜をさらに含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記第1のMISトランジスタ及び前記第2のMISトランジスタはnMISトランジスタであり、
前記第1の高誘電率絶縁膜及び前記第2の高誘電率絶縁膜はランタンを含有することを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
請求項10に記載の半導体装置において、
前記第1のゲート絶縁膜は、前記第1の高誘電率絶縁膜上に形成され且つランタンを含有する第1のキャップ膜をさらに含み、
前記第2のゲート絶縁膜は、前記第2の高誘電率絶縁膜上に形成され且つランタンを含有する第2のキャップ膜をさらに含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記第1の高誘電率絶縁膜及び前記第2の高誘電率絶縁膜はハフニウム又はジルコニウムを含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記第1の界面層及び前記第2の界面層はシリコン酸化膜からなることを特徴とする半導体装置。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記第1の高誘電率絶縁膜の厚さと、前記第2の高誘電率絶縁膜の厚さとは実質的に同じであることを特徴とする半導体装置。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記第1のゲート電極の材料と、前記第2のゲート電極の材料とは実質的に同じであることを特徴とする半導体装置。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記第1のMISトランジスタの実効仕事関数は、前記第2のMISトランジスタの実効仕事関数よりも高いことを特徴とする半導体装置。
【請求項17】
第1の活性領域及び第2の活性領域を有する半導体基板上に、界面層、高誘電率絶縁膜及びゲート電極材料膜を順次形成する工程(a)と、
前記ゲート電極材料膜、前記高誘電率絶縁膜及び前記界面層をパターニングすることによって、前記第1の活性領域上に、前記界面層及び前記高誘電率絶縁膜を含む第1のゲート絶縁膜を介して、前記ゲート電極材料膜からなる第1のゲート電極を形成すると共に、前記第2の活性領域上に、前記界面層及び前記高誘電率絶縁膜を含む第2のゲート絶縁膜を介して、前記ゲート電極材料膜からなる第2のゲート電極を形成する工程(b)と、
前記工程(b)の後に、前記第1のゲート絶縁膜における前記界面層の厚さを選択的に厚くする工程(c)とを備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項18】
請求項17に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(c)は、前記第1のゲート電極及び前記第2のゲート電極を絶縁膜によって覆った後、前記第1のゲート電極を覆う前記絶縁膜に対して選択的にエッチングを行い、その後、酸化処理によって前記第1のゲート絶縁膜における前記界面層を厚くする工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項19】
請求項18に記載の半導体装置の製造方法において、
前記ゲート電極材料膜は、前記高誘電率絶縁膜上に形成された金属含有膜と、前記金属含有膜上に形成されたシリコン膜とを含み、
前記工程(c)において、前記第1のゲート電極の側面上に残存する前記絶縁膜と、前記第1のゲート電極における前記シリコン膜との間に、シリコン酸化膜が形成されることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−64648(P2012−64648A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205599(P2010−205599)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】