説明

印刷はんだ検査装置、及び印刷はんだ検査方法

【課題】レジスト面からの反射光とレジスト裏面とパッド面との間の反射光とからレジストの厚さを求め、この厚さを基にパッド面からのはんだ高さを求める。
【解決手段】第1の光源OS1からの光を、ハーフミラーM2とレジスト1aとの間の測定光路と、ハーフミラーM2とミラーK5a間の参照光路に送り、各光路からの戻り光をハーフミラーM2で合成して、対物レンズK5,ハーフミラーM1を介して、第3の受光手段D4へ送る。基礎測定部6は、光路形成部2aを移動したときに第3の受光部で検出される干渉縞が2カ所で最大になるときの光路形成部の位置間の距離によりレジストの厚さを求める。測定部7は、基板のはんだ面からの散乱光を受けた受光手段D1,D2の出力、又は正反射光を受けた受光手段D3の出力による変位と、上記のレジストの厚さを基に、パッド面からのはんだ面の変位を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品等を表面実装するためのプリント板上にクリーム状はんだが印刷されたときのはんだの形成状態を測定し、検査する技術に関する。特に、プリント板には、はんだが印刷される予定の箇所(以下、「はんだ箇所」と言う。)であって、回路パターンが顕わにされ、部品が取り付け可能なパッド部と、回路パターンの上に半透明なレジストが塗布されたレジスト部(はんだが印刷されない部分)があるが、この発明は、実際に印刷されたはんだの高さをパッドの面からの高さとして測定できる技術に係る。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷はんだ検査装置としては、プリント板(以下、はんだが印刷されたプリント板を単に「基板」と言い、はんだが印刷されていないプリント板を「未印刷基板」と言う。)の表面をレーザ光等で照射し、基板の表面からの反射光を受光するセンサを有し、そのセンサにより測定(三角測量)した結果として得られた測定値、例えば、基板上の印刷されたはんだ箇所の変位(高さを含む)或いは輝度(基板から反射した光の量、受光量(光の強さ)を含む。)の測定値を基に、判定の基準となる基準データと比較して判定している(特許文献1、2)。
【0003】
特許文献1では、図8のような基板1のはんだ箇所において、はんだ1bの周辺のレジスト1a部分の平均高さを求めて、そのレジスト1a部分の平均高さを基準としてはんだ高さを測定している。特許文献1の技術では、はんだ箇所の周辺のレジスト部分の平均高さを求めるにあたっては、レジスト1a部分とはんだ1b箇所との間に隙間があるので、その部分を除いたレジスト部分の平均高さを求めて、これを基準としている。
【0004】
ところで、最近は、はんだを印刷している分野からは、印刷されたはんだ量を正確に知りたい、そのために、はんだを印刷する箇所であるパッド1cの面(以下、「パッド面」と言う。)からその上に実際に印刷されたはんだ1bの高さを測定したいという要望が、多くなってきた。そうすると、特許文献1の技術では、そのまま適用できない。
【0005】
そこで、特許文献2に示すように、予め未印刷基板で測定された各部の高さと、実際にはんだが印刷された基板を測定して得られた各部の高さとから、パッド1cの面からのはんだ1bの高さ(以下、「はんだ高さ」と言う。)を測定する技術を提供されている。
そして特許文献2では、レジスト1a面を仲介して、次のようにして求める。
はんだ高さ=(レジスト1a面からのはんだ高さ)+(パッド1c面からのレジスト1a面高さ)=パッド1c面からのはんだ高さ
したがって、この場合、レジスト1a面の高さが測定されて利用されているが、計算上、最終的にうち消すのでレジスト面の絶対高さの影響を抑えて測定可能である。
【0006】
【特許文献1】特開2002−228597号公報
【特許文献2】特願2006−159702号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、レジスト1a面は塗布の仕方により、例えば、図9(A)のようにそのはんだ1bとの境の端部では、一様に塗布されない傾向がある。図9(A)は紙面の右から左へかけてレジストが塗布された場合であり、右側のレジスト1a端部が薄く、左側のレジスト端部が厚く盛り上がっている。図9(C)は、理想的な塗布が行われた場合である。図9(B)では、レジスト1aの端部周辺の厚さ(高さ)の平均値(図9(B)の点線)が、はんだ箇所を挟んだレジスト1a面端部の右側と左側とで、異なる値を示すことが分かる。
【0008】
図9(B)のような場合であっても、レジスト1aの塗布の状態がその形のまま一定し、バラツキのない形状であれば良いが、基板によって塗布の状態がバラツキ、レジスト1aの形状が変動しやすいと、特許文献2の技術を用いても誤差になりやすい。それは、特許文献2の場合は、未印刷基板で、予め上記式の「パッド1c面からのレジスト1a面高さ」を測定し記憶しておいて、各はんだ1b箇所毎の測定の都度その記憶した値を求めるため、「パッド1c面からのレジスト1a面高さ」は各基板1において一定でなければならない。つまり、図9(B)のレジスト1aの端部の高さが基板1毎に変動すると誤差要因になりかねない。
【0009】
一方で、発明者は、レジスト1aの厚さを求められないかを調査・検討してみた。そして、垂直方向からレジスト1a面に光を入射させると、レジスト1aを透過して基板1の表面で反射する光と、1b表面で反射する光が在り、これらの反射位置の距離差に応じたデータを取得することができことが分かった。そうであれば、この距離差から、直接的に、レジスト1aの厚さとして測定できる。
【0010】
本発明の目的は、レジスト面の表面からの反射光とレジスト面とパッド面との間の反射光とから、レジストの厚さを求め、パッド面からのはんだ高さ(変位)を求める印刷はんだを検査する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、第1の光源(OS1)と、該第1の光源が被測定プリント板上の測定点を垂直に照射する第1の光路上にあって、前記測定点が被測定プリント板の半透明なレジストの表面であるときに該レジストの表面からの反射に基づく光と該レジスト下部のパッド面からの反射に基づく光とを取得するための光路を形成する光路形成部(2a)と、該測定点が被測定プリン板のはんだ面であるときに該測定点から該第1の光源の照射に対する散乱光を受ける第1の受光部(D1,D2)と、第2の光源(OS2)と、該第2の光源からの光を該同じ測定点を前記垂直に対し所定角度斜めの角度で照射されたときの正反射光を受ける第2の受光部(D3)と、を含む変位センサ(2)と、表面のパッド面にはんだが印刷された前記被測定プリント板の半透明のレジスト面を前記測定点として測定されているときに、前記光路形成手段に対して前記光路の距離を可変させて、前記レジストの表面からの反射に基づく光を取得したときの光路と該レジスト下部のパッド面からの反射に基づく光を取得したときの光路との差違を基に、該レジストの厚さを求める基礎測定部(6)と、前記被測定プリント板の前記はんだ面を前記測定点としたときに、前記第1の受光部が受けた散乱光に基づく第1の変位、及び前記第2の受光部が受けた正反射光に基づく第2の変位を算出するデータ処理部(3)と、前記データ処理部により得られた前記第1の変位又は前記第2の変位、及び該基礎測定段階で求めた前記レジストの厚さとを基に、該はんだ面の変位を前記パッド面の位置からの変位として求める測定部(7)と、を備えたことを特徴とする印刷はんだ検査装置。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において前記光路形成部は、該第1の光源からの光を分岐し一方をプリント板の表面の測定点に垂直な測定光路を通して該測定点を照射し、他方を遠端にミラーを有する参照光路へ送るとともに、該測定点からの反射光と前記ミラーからの反射光を合成した干渉光を出力する干渉光路形成手段(M2,K5,K5a)と、該干渉光を検出する干渉光受光手段(D4)とを有し、前記基礎測定部は、前記レジスト面を前記測定点として測定されているときに、前記測定光路もしくは前記参照光路の何れかの光路長を変化させたときに前記干渉光受光手段が前記レジストの表面からの反射に基づく干渉光を検出したときと、該レジスト下部のパッド面からの反射に基づく干渉光とを検出したときと、の間における前記光路長の変化量により、該レジストの厚さを求める構成とした。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記光路形成部は、該第1の光源からの光をプリント板の表面の測定点に垂直に集光させて該測定点を照射するとともに、該測定点からの反射光を集光する対物レンズと、所定位置に配置され該対物レンズが該所定位置に集光した光だけを通過させ、集光しきれない光を除外するピンホール手段(P)と、ピンホール手段を通過した光を検出する集光検出手段(D5)とを有し、前記基礎測定部は、前記レジスト面を前記測定点として測定されているときに、前記光路形成部を前記垂直方向に移動させたときに、前記集光検出手段が前記レジストの表面からの反射光に基づく集光を検出したときと、該レジスト下部のパッド面からの反射光に基づく集光とを検出したときと、の間における前記光路形成部の移動量により、該レジストの厚さを求める構成とした。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記データ処理部は、少なくともはんだ面を測定点としているときに、前記第1の受光部と第2の受光部とが受けるそれぞれの光の強さを比較し、前記測定部は、前記第1の変位又は前記第2の変位のうち前記データ処理部による比較により、受けた光が強い方の受光部のデータを基に算出された変位と、前記レジストの厚さとを基に、該はんだ面の変位を前記パッド面の位置からの変位として求める構成とした。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前前記第1の受光部は、2つの受光手段で成り、一つは、前記プリント板の測定点を垂直方向から照射する前記第1の光路の第1の光軸に対して第1の角度θ1で形成される第1の散乱光路上に配置された受光手段(D1)であり、他の一つは、該第1の光軸に対して該第1の散乱光路と反対側に第2の角度θ2で形成される第2の散乱光路上に配置された受光手段(D2)とであり、前記第1の変位は、前記2つの受光手段の出力の和を基に求められ、また、前記第2の光源は、該第1の光軸に対して斜めの角度θ3を成す第2の光軸で前記測定点を照射し、第2の受光部は、該測定点にて該第2の光源の第2の光軸に対して第3の角度2θ3で形成される正反射光路上に配置されており、前記第2の変位は、該第2の受光部の出力から求められる構成とした。
【0016】
請求項6に記載の発明は、第1の光源が被測定プリント板上の半透明なレジスト面を測定点として該測定点を垂直な第1の光路を介して照射する段階と、光路形成部を制御して該レジストの表面からの反射に基づく光を取得する光路長を形成させる第1の基礎測定段階と、前記光路形成部(2a)を移動させて該レジスト下部のパッド面からの反射に基づく光を取得する光路を形成させる第2の基礎測定段階と、前記第1の基礎測定段階と該第2の基礎測定段階における光路の距離の差違を基に前記レジストの厚さを求める第3の基礎測定段階と、前記測定点が被測定プリント板のはんだ面であるときに、第1の受光部(D1,D2)が、該測定点から該第1の光源の照射に対する散乱光を受ける第1の受光段階と、第2の受光部(D3)により、第2の光源からの光を該同じ測定点を前記垂直に対し所定角度斜めの角度で照射されたときの正反射光を受ける第2の受光段階と、前記第1の受光部が受けた散乱光に基づく第1の変位、又は前記第2の受光部が受けた正反射光に基づく第2の変位を算出するデータ処理段階と、前記データ処理段階で得られた前記第1の変位又は前記第2の変位、及び該基礎測定段階で求めた前記レジストの厚さとを基に、該はんだ面の変位を前記パッド面の位置からの変位として求める測定段階と、を備えた。
【発明の効果】
【0017】
請求項1,又は6に記載の発明によれば、レジストの透過性を用いて光路形成部により、例えば、干渉を利用(請求項2)し、或いは共焦点を利用(請求項3)して、パッド面の位置(レジスト面の厚さ)を測定できる。したがって、はんだ面を測定したときのレジスト面からの第1変位もしくは第2の変位と、パッド面の位置とから、パッド面の位置からのはんだ面の変位を求めることができる。
請求項4に記載の発明により、はんだの形状により正反射が得られなくとも、散乱光により変位測定ができる。
請求項5に記載の発明により、各受光手段の感度を良い状態にして測定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係るプリント板検査装置の実施形態を、図を用いて説明する。図1は実施形態の内、変位センサ及び測定部の機能構成を示す図である。図2は実施形態の内、検査部の機能構成を示す図である。図3は、図1の変位センサを構成する機能要素の配置を示す図である。図4は、各受光手段(受光部)の位置関係を示し、各受光手段の感度を説明するための図である。図5は、レジストの厚さを干渉により求める一形態を説明するための図である。図6は、レジストの厚さを干渉により求める他の一形態を説明するための図である。図7は、共焦点を利用してレジストの厚さを求める形態を説明するための図である。
【0019】
[変位センサの構成]
図1及び図3を用いて、変位センサ2について説明する。
【0020】
図1及び図3で変位センサ2は、一枚の板状の基板あるいは平板上の基台(以下、「基台」と言う。不図示)に、第1の光源OS1と、2つの第1の受光手段D1とD2(第1の受光部)と、第2の光源OS2と、第2の受光手段D3(第2の受光部)と、レジストの厚さを求めるための光路形成部2a、2b、2cと、を互いの位置関係を固定して、一体的に1筐体を成すように形成されている。後記するように変位測定の対象である基板1を走査するときに一体で走査できるようにするためである。
【0021】
変位センサ2は、主に、次の(I)〜(II)に示す機能を有する。(I)レジストの厚さを測定するための機能(第1のセンシング手段)、(II)変位測定機能。さらに(II)変位測定機能には、(II−1)散乱反射光による変位測定機能(第2のセンシング手段)、(II−2)正反射光による変位測定(第3のセンシング手段)がある。以下、それぞれについて詳細を説明する。
【0022】
(I)レジストの厚さ測定(第1のセンシング手段)
レジスト1aの厚さ測定は、図3における第1の光源OS1、及び第1の光源OS1が基板1上の半透明なレジストの表面を測定点としてその測定点を垂直に照射する第1の光路上にあって、そのレジストの表面からの反射に基づく光と該レジスト下部のパッド面からの反射に基づく光とを取得するための光路を形成し、それらの取得時の光路長(光路位置)を基に、レジストの厚さを測定する光路形成部(2a、2b、2c)と、を含んで構成されている。これらの要素を用いて、主に次の(I−1A)(I―1B)干渉光を利用した方法、(I−2)共焦点を利用した方法により、レジストの厚さを測定する。以下、それらを個別に説明する。
【0023】
(I−1A)干渉光を利用した一例(ミロー型干渉計を利用)
図5(A)に、干渉光を利用してレジストの厚さを測定する模擬的な構成を示す。図5は、図3から光路形成部2aを含む必要要素を抜き出して、他の光路等を省略して表現したものである。図5において、第1の光源OS1のレーザ光源OS1aからの光をレンズOS1bで平行光にして、光路形成部2aに送る。光路形成部2aにおいて、受けた平行光は、ハーフミラーM1を通過して基板1に対して垂直の第1の光路に配置された対物レンズK5により集光され、その一部は、ハーフミラーM2を介してレジスト1aの表面に垂直に照射される。レジスト1aの表面で反射した反射光はハーフミラーM2へ戻る。ここで、ハーフミラーM2とレジスト1aの表面との間の光路を「測定光路」と言う。測定光路の光路長をb1とする。
【0024】
一方、対物レンズK5により集光された光の他の一部は、ハーフミラーM2で正反射して、対物レンズK5内に組み込まれたミラーK5aに送られる。ミラーK5aは受けた光を正反射して再びハーフミラーM2へ戻す。ここで、ハーフミラーM2とミラーK5aとの間の光路を「参照光路」と言う。参照光路の光路長をa1とする。
【0025】
したがって、ハーフミラーM2では、測定光路からの戻り光(レジスト1aの表面で反射された反射光)と、参照光路からの戻り光(ミラーK5aからの反射光)とが合成される。合成された戻り光は、ハーフミラーM2から対物レンズK5により平行光に変換されてハーフミラーM1へ送られ、さらにハーフミラーM1で光路を変更されて集光レンズK4へ送られる。集光レンズK4は、合成された戻り光を第3の受光手段D4へ送る。ここで、合成された戻り光は、「測定光路の光路長b1=参照光路の光路長a1」であれば、干渉縞を生じさせるので、以下、「干渉光」と言うことがある。この干渉縞が生じているどうかの解析は、干渉光を受けた第3の受光手段D4からの信号を受けた基礎測定部6で行う。
【0026】
上記のような図5(A)の光学系において、基礎測定部6は、光路形成部2aもしくは変位センサ2をレジスト1aの上方から下方へ下げる移動を行って(光路形成部2aを制御して該レジスト1aの表面からの反射に基づく光を取得する光路長を形成させる第1の基礎測定段階)、第3の受光手段D4の出力を解析して、干渉縞が生じたときの位置(干渉縞の振幅の大きさが最大になった位置)、つまりa1=b1になったときの第1の移動位置を記憶する。
【0027】
基礎測定部6は、a1=b1になったときの移動位置より下方へ、さらに、光路形成部2aもしくは変位センサ2の位置を下げる移動を行って(前記光路形成部2aを移動させて該レジスト下部のパッド面からの反射に基づく光を取得する光路を形成させる第2の基礎測定段階)、第3の受光手段D4の出力を解析して、干渉縞が生じたときの位置(干渉縞の振幅の大きさが最大になった位置)、つまりa1=b2になったときの第2の移動位置を記憶する(図5(B)を参照)。このときの測定光路は、図5(B)のようにハーフミラーM2と半透明なレジスト1aの下部(つまりパッド1cの面)との光路であり、光路長b2である。
【0028】
基礎測定部6は、図5(A)(B)における、上記の第1の移動位置と第2の移動位置との差の距離Lを算出し、これをレジスト1aの厚さδL=Lとして求めることができる(第3の基礎測定段階)。
【0029】
(I−1B)干渉光を利用した他の例(マイケルソン型干渉計を利用)
図6に、干渉光を利用してレジストの厚さを測定する他の構成例を示す。図6は、図3から光路形成部2bを含む必要要素を抜き出して、他の光路等を省略して表現したものである。図6と図5の構成では、レジスト1a表面の反射光に基づく干渉縞と、レジスト1aの下部からの反射光に基づく干渉縞とを観察して、レジスト1aの厚さを求める点において同じであり、それらの干渉縞を生じさせる測定光路と参照光路の構成の仕方において異なる。そして、レジスト1aの厚さ測定では、図5では、測定光路の光路長を可変して干渉縞を見つけていたが、図6では、参照光路の光路長を可変して干渉縞の振幅の最大となる位置(ピーク位置)をサーチする。
【0030】
以下、図6を図5と違う部分を中心に説明する。図6で図5と同一符号の要部は、同一機能を有する。図6でハーフミラーM4は、第1の光源OS1からの光を分岐し、一方は対物レンズK6を介してレジスト1aに送り、他方はミラーM5へ送る。そして、ハーフミラーM4は、レジスト1aとミラーM5のそれぞれから反射して来る戻り光を合成して干渉光として、ハーフミラーM1経由で第3の受光手段D4へ集光させる。つまり、ハーフミラーM4とレジスト1aとの間が測定光路である。ここでその光路長をcとする。そして、ハーフミラーM4とミラーM5との間が参照光路である。ここでその光路長をdとする。
【0031】
上記のような図6の光学系において、基礎測定部6は、光路形成部2bのミラーM5を当初は、図6で左側に置いて、それを順次、右方向へ移動させる。つまり参照光路の光路長を短い方から長くなる方向へ移動させる。基礎測定部6は、第3の受光手段D4からの信号を受けて解析し、最初に干渉縞を検出したときの光路長d1を記憶する。つまり参照光路長d1=測定光路長c1のときであり(図6の実線)、この光路長c1が、レジスト1aの表面からの反射位置を示す。続けて、基礎測定部6は、さらに参照光路の光路長を長くなる方向へ移動させていく。次の干渉縞を検出したとき(干渉縞の振幅が最大になったとき)の光路長d2を記憶する。つまり参照光路長d2=測定光路長c2ときであり(図6の点線)、この光路長c2が、レジスト1aの裏面(パッド1cの面)からの反射位置を示す。したがって、レジスト1aの厚さδL=d2−d1で示される。
【0032】
(I−2)共焦点を利用した方法
図7に、共焦点を利用してレジスト1aの厚さを測定する模擬的な構成を示す。図7(A)は、図3から光路形成部2cを含む必要要素を抜き出して、他を省略して表現したものである。
【0033】
詳しくは、図7(A)において、第1の光源OS1からの光の一部は、ハーフミラーM3を通過して対物レンズK7で集光されて、基板1上のレジスト1a上にほぼ垂直に照射される。そして、その照射に対してレジスト1aの表面からの垂直方向への反射光や、レジスト1aを透過した下部のパッド面1cから垂直方向への反射光や、その他の反射光が戻ってきて、対物レンズK7によって集光されて、ハーフミラーM3で光路変更されてピンホール手段Pへ送られる。ピンホール手段Pは、そのピンホール手段Pの配置位置で結像する光だけを通過させて、第3の受光手段D4へ送る。
【0034】
したがって、図7(A)に示すように、レジスト1aからの反射光(図7(A)の実線)が対物レンズK7で集光させられて、丁度、ピンホール手段Pの位置で結像するとき、その反射光は通過できるが、図7(A)に点線で示すような反射光があると、対物レンズK7による結像は、ピンホール手段Pの位置より長く(図7(A)で右側)なるので、ピンホール手段Pを通過できない。このような光学系の構成なので、光路形成部2cもしくは変位センサ2を反射位置に対して移動させることにより、反射光の位置を検出できる。
【0035】
上記のような図7(A)の光学系において、基礎測定部6は、光路形成部2cもしくは変位センサ2をレジスト1aの上方から下方へ下げる移動を行って(光路形成部2cを制御して該レジストの表面からの反射に基づく光を取得する光路長を形成させる第1の基礎測定段階)、第3の受光手段D4の出力の大きさが第1のピークを生じたときの移動位置を記憶する。
【0036】
基礎測定部6は、第1のピークが生じたときの移動位置より下方へ、さらに、光路形成部2cもしくは変位センサ2の位置を下げる移動を行って(前記光路形成部2aを移動させて該レジスト下部のパッド面からの反射に基づく光を取得する光路を形成させる第2の基礎測定段階)、第3の受光手段D4の出力が第2のピークになったときの移動位置を記憶する。
【0037】
基礎測定部6は、図7(A)(B)における、上記の第1のピークを取得したときの移動位置と第2のピークを取得したときの移動位置との差の距離Lを算出し、これをレジスト1aの厚さδL=Lとして求めることができる。
【0038】
図7でピンホール手段Pを用いているが、その代わりに、第3の受光手段D4の受光面を狭くして、ピンホール手段Pの孔と同じにしても良い。
【0039】
上記(I―1A)、(I―1B)、(I―2)において、レジスト1aの厚さを求めるには、光路形成部2a、2b、2cもしくは変位センサ2を移動させて測定していたが、その移動は、手動でも自動でも行える。手動の場合は、第3の受光手段D4の出力の波形(或いはパワー)を観測しながら手動で移動させて、干渉縞のパワー((I―1A)、(I―1B)の場合)、或いは第3の受光手段D4のパワー((I―2)の場合)が2つの極大値を示したときの移動位置の差を求めδLとする。自動で行う場合は、制御部がモータで光路形成部2a、2b、2cもしくは変位センサ2を移動させながら第3の受光手段D4の出力を解析して、干渉縞のパワー((I―1A)、(I―1B)の場合)、或いは第3の受光手段D4のパワー((I―2)の場合)が2つの極大値を示したときの移動位置の差を求めδLとする。極大値を求めるには、第3の受光手段D4の出力をパワーをパワーメータで読んで、移動位置に対応して記録する。つまり、横軸が位置座標、縦軸がパワーのデータが得られる。これを演算手段で微分して、変曲点を見つけることにより、2つの極大点とのその位置を見つけて、位置の距離差δLを求める構成にすればよい。
【0040】
(II)変位測定機能
図3を基に、変位測定機能を説明する。なお、図3では、第1の受光手段D1と測定点との間の第1の散乱反射光路、第1の受光手段D2と測定点との間の第2の散乱反射光路、及び第2の受光手段D3と測定点との間の正反射光路のそれぞれには、測定点から各反射光を集光して平行光に変換するコリメータレンズと、更にその平行光を測定点へ集光して結像させる集光レンズとを備えた集光機能素子K1,K2、K3を備えている。
【0041】
この実施形態では、散乱反射光を利用した変位測定と、正反射を利用した変位測定の各機能を有し、有利な方のいずれか一方を用いて測定している。一般的に平坦に近いところは、正反射光が強い後者による測定が有利である。凸凹の激しいと所、特に凸凹の内、図3の第2の光源OS2の照射方向に対して陰に成る部分があると、正反射光が得られないので、前者による測定が有利である。いずれの測定機能を用いるかは、正反射光と散乱反射光の強さを検知して、強さの大きい方の反射光を用いる。
(II−1)散乱反射光による変位測定機能(第2のセンシング手段)
第1の光源OS1から発せられた光の一部が光路形成部2a,2b,2cを通過して基板1の表面の測定点(測定しようとする測定対象位置)を垂直方向から第1光軸に沿って照射する。第1の受光手段D1は測定点において該第1の光軸に対して第1の角度θ1で形成される第1の散乱光路上に配置されている。第1の受光手段D2は、第1の光軸に対して第1の散乱光路と反対側に第2の角度θ2で形成される第2の散乱光路上に配置されている。
【0042】
(II−2)正反射光による変位測定(第3のセンシング手段)。
第2の光源OS2は、第1の光軸に対して斜めの角度θ3を成す第2の光軸の光で測定点を照射する。そして第2の受光手段D3は、測定点にて第2の光源の第2の光軸に対して第3の角度2θ3で形成される正反射光路上に配置されている。
【0043】
上記(II−1)及び(II−2)において、第1の受光手段D1及びD2,第2の受光手段D3のそれぞれは、所定長さの受光面を有し、該所定長さ方向における受光位置に応じて光変位情報を検出する位置検出器(PSD:Position Sensitive Detector)が用いられている。PSDは、長さ方向に光検出素子が配置され、その長さ方向の両端からの位置を示す情報としてそれらの各端部からその位置に応じた電気量である片端からの出力A、他端からの出力Bが出力されるとその変位情報は(A−B)/(A+B)で示される。また、変位情報の出力に併せて、第1の受光手段D1、第1の受光手段D2、及び第2の受光手段D3は、測定点からの反射光量を測定して光量情報を出力する。PSDは、測定点の変位により受光位置が変わり、その受光位置に応じた電気量を出力する素子、つまり変位を電気量に表して出力する素子である。PSDの代わりに、フォトダイオード・アレイやCCD等で直接、受光位置を変位位置として出力する構成としても良い。
【0044】
[変位測定部の構成]
図1に示す位置の変位センサ2は、基台の面に平行な方向(図面に向かって左右方向)に要素間の位置関係を保持したまま、基板1に対してセンサ全体を移動して走査することにより、基板1の広い範囲に亘ってその表面の変位を測定できる構造にされている。
【0045】
図1で、走査機構4は、モータ等の駆動源及びベルト等の駆動機構を有し、基板1,もしくは変位センサ2、或いはそれらの双方を相対的に移動させることにより、走査させる。図1に示すように変位センサ2の平面方向、つまり、第1の受光手段D1等の各要素が配列された配列方向へ主走査させながら変位測定をさせ、次にその配列方向と直交方向に移動して(副走査)して、そこから主走査して変位測定を行う。この動作を繰り返すことにより、基板1の、所望範囲についての変位測定を行わせる。
【0046】
制御部12は、パネル等(不図示)からの指示により例えば、はんだ1bが印刷された基板1の所望測定範囲の指示を受け、その所望範囲についての走査指示を走査機構4へ送って上記のように走査させる。走査にあたっては、第1の光源OS1と第2の光源OS2が同一波長の光源を利用した場合は、基板1上の同一の走査位置(測定点)で第1の光源OS1と第2の光源OS2を交互に切り替える構成とする。異なる波長の光源を利用した場合は、必ずしも切り替える必要はなく、同時に出力させる構成としても良い。
【0047】
また制御部12は、基礎測定部6に基礎測定を行わせてレジスト1aの厚さを求めさせて、パッド1cの位置を求めさせる。また、測定部7に対してパッド1cの位置からはんだ1b表面の高さを測定させる。詳細は後記する。
【0048】
データ処理部3は、加算器3a、加算器3b、及び演算部3cを有し、各受光手段からの出力を基に測定点における変位(データ)を算出している。測定点がはんだ1bであれば、その表面の変位を、レジスト1aであればその表面の変位を測定する。変位は、高さ方向の相対的な情報である。加算器3aは、第1の受光手段D1の出力A1と第1の受光手段D2の出力A2を受けてそれらを加算し、その結果Ax=A1+A2を出力する。加算器3bは、第1の受光手段D1の出力B1と第1の受光手段D2の出力B2を受けてそれらを加算し、その結果Bx=B1+B2を出力する。演算部3cは、それらを基に乱反射による変位情報である出力L1=(Ax−Bx)/(Ax+Bx)を求める。または/及び、演算部3cは、第2の受光手段D3からの出力を受けて正反射による変位情報である出力L2=(A3−B3)/(A3+B3)を求める。
【0049】
このとき、演算部3cの出力L1及びL2は、次に説明するように基礎測定部6と測定部7との指示により、利用される態様が異なる。
【0050】
制御部12は、レジスト1aの厚さを測定するとき、つまりパッド1c面の位置を推定するときは基礎測定を基礎測定部6に対して行わせ、はんだ1b面の高さを測定するときは測定部7に行わせる。はんだ1b面における測定か、レジスト1a面における測定かは、レジスト1a面とはんだ1b面で反射光量が異なるので、変位センサ2からの光量情報に基づいて、反射量が大のときはレジスト1a面、少ないときははんだ1b面と判定して測定を切り替えられる。又、予め、設計に基づいて変位センサ位置を走査させるので、その設計情報に基づく位置情報からどちらの測定を行うかを判定することもできる。判定に応じてスイッチS1を基礎測定部6側、又は測定部7側に切り替える。
【0051】
(1)基礎測定
基礎測定部6は、上記(I)に記載したように、レジスト1aの厚さδLを求める。基礎測定部6は、このレジスト1aの厚さを測定部7へ送っても良いし、レジスト1aの厚さを測定しているときの演算部3cからレジスト1aの表面の正反射光による変位L2(レジスト1a面における上記出力L1、L2をL1R、L2で示す。)を受けて、パッド1c面の位置情報PD=L2−δLを演算して測定部7へ送っても良い。
【0052】
(2)変位測定
測定部7は、レジスト1aの面からはんだ1b面までの高さ(変位)を測定する。そのとき、第1の受光手段D1、第1の受光手段D2及び第2の受光手段D3それぞれから光量情報を受けており、演算部3cからは出力L1と出力L2(はんだ1b面における上記出力L1、L2をL1H、L2で示す。)の内、散乱反射変位測定系(OS1―D1,D2系統)による光量と正反射変位測定系(OS2―D3系統)による光量の大きさを比較し、光量の大きい方の変位測定系で測定した変位情報(出力L1,出力L2のいずれか)を選択的に受領する。なお、ここでは、はんだ箇所の高さを示す変位出力L1と出力L2は、いずれもレジスト1aを測定したときのレジスト1aの変位出力L2(出力L1を用いても良いが、レジスト1a面ははんだ箇所に比べほとんど平坦であるから正反射光を用いて測定できるので、その方が光量が多くより正確であるため。)を基準とした変位である。このようにはんだ1b面の変位情報がレジスト1a面を基準とした変位情報であるから、測定部7は、受領した変位情報を、基礎測定部6から受けたレジスト1aの厚さδLで補正して、パッド1c面からのはんだ1b面の高さ(変位)情報Lとして、L=L1+δLもしくはL=L2+δLに補正して図2の画像処理部8へ出力する。或いは、パッド1c面の位置情報PD=L2−δLで、演算部3cからのはんだ1b面における変位L1H、L2を校正してパッド1c面の位置情報PDからのはんだ1b面の変位[L1]’、[L2]’を直接に求める構成にしても良い。
【0053】
なお、散乱反射変位測定系による光量と正反射変位測定系による光量のうち大きい方の出力L1又は出力L2を選択しているのは、例えば、基板1上の凸上のはんだ1bの形状があった場合に、第2の光源OS2の斜めの第2の光軸では該凸の側壁うちその光軸が当たる側の側壁は測定できるかもしれないが、その反対側の側壁からは正反射光を受光できない恐れがある。そのときは、2つの第1の受光手段D1,D2の出力を基にした変位情報が使える。つまり、より光量の高い方の変位情報を利用して、より確かな変位情報を得るためである。逆に、明らかに基板1のはんだ1bの形状が平坦に近い場合は、正反射変位測定系のみを使用することとしても良い。
【0054】
[検査部の構成]
図2は、主に検査部200の機能構成を示す。その図2で画像処理部8は、制御部12から基板1のレイアウト情報(配置図)と走査して測定しているときの位置情報とを受け、測定部7からその位置情報における高さ(変位)Lを受けて、レイアウト上に変位に応じてはんだ1bの量的な形状を表す立体画像を形成することにより、画像として再現出力する。このとき、測定部7からは、はんだ1bの変位情報としてパッド1c面からの変位情報が得られるので、パッド1c面からの立体形状を形成して表示することができる。
【0055】
つまり、画像処理部8は、測定部7の出力Lと、制御部12からの基板1の測定点(測定点の座標)とから測定したエリア(測定点の集合領域:例えば、基板1上に印刷されたクリームはんだ1b面)における面積(例えば、はんだ印刷された面積)や体積(例えば、はんだ量)等のはんだ1bの形状を表す画像データを生成する。比較部9は、制御部12からそのエリアにおける、設計値等をレファレンス(面積や体積)として受けて、画像データとレファレンスとの差を演算し出力する。なお、画像データに変換することなく、その測定点において測定した変位(高さ:例えば、はんだ1bの高さ)とレファレンス(この場合は、例えば、測定点における設計上の高さ)との差を出力しても良い。
【0056】
判定部10は、レファレンスに対応する許容値を制御部12から受けて、比較部9からの出力と比較し、比較部9の出力が、許容値内であれば合格とし、許容値外であれば不良(否)と判定する。
【0057】
表示部11は、判定部10の判定結果を表示する。また、制御部12からレイアウト情報(例えば、基板1のはんだ箇所の配置図)を受けて表示し、レイアウトのどの位置におけるはんだが不良(否)であり、合格であるかを識別可能に表示してもよい。また、それらと別に或いは併せて、画像処理部8で生成した画像データに基づく画像を表示させて、どの箇所のはんだ状態が不良であり、合格であるかを識別可能に表示させることもできる。
【0058】
上記の変位センサ2を用いて被測定物の表面形状を検査すると、単に頂点やフラット部分のならず傾斜部分の形状も含めて良否判定の検査ができる。
【0059】
[変位センサの他の実施形態]
次に変位センサ2について特徴的構成例を説明する。
【0060】
図3で、第1の光源OS1は、例えば、レーザであって、基板1の面に対して垂直方向に光を照射する。つまり第1の光軸は被測定物1の面に垂直である。第2の光源OS2は、例えば、レーザであって、第1の光軸に対して図3の右方向から(左からでも良い)角度θ3で交叉するように光を照射する。この交叉する位置が測定しようとする基板1の測定点である。第1の光源OS1から測定点までの第1の照射光路、及び第2の光源OS2から測定点までの第2の照射光路のそれぞれには、図示しないが、各光源からの光を集光して平行光に変換するコリメータレンズ、更にその平行光を測定点へ集光させる集光レンズを備えても良い(つまり、この場合、測定点は、第1の光源OS1及び後記の第2の光源OS2のそれぞれからの光が集光される位置でもある。)。また、第1の光源OS1と第2の光源OS2とは、同一波長の場合は、同一光源から分岐して取り出した光であっても良い。
【0061】
被測定物1上の照射位置(測定点)において、第1の光軸に対して左に角度θ1を成した位置(第1の散乱光路上の位置)に第1の受光手段D1が配置され、第1の光軸に対して右に角度θ2を成した位置(第2の散乱光路上の位置)に第1の受光手段D2が配置されている。第1の受光手段D1及びD2は、第1の光源OS1が照射した光によって反射された反射光の内、それぞれ角度θ1、角度θ2で乱反射した光(ビーム)を受光する。第2の受光手段D3は、第2の光源OS2の第2の光軸に対して角度2θ3を成す光路上(正反射光路上)で正反射した光(ビーム)を受光する。
【0062】
第1の光源OS1,第1の受光手段D1及びD2を用いた散乱反射による変位測定系は、基板1の面が傾斜を有するときに有効であり、第2の光源OS2,及び第2の受光手段D3を用いた正反射による変位測定系は、基板1の面が平坦であるときに有効である。図3では、角度θ3は角度θ1或いは角度θ2より小さいが、角度θ1或いは角度θ2より大きくても良い。
【0063】
正反射光と散乱反射光の相互干渉を避けるため、第1の光源OS1,第1の受光手段D1及びD2を用いた乱反射変位測定系の変位測定動作と、第2の光源OS2,及び第2の受光手段D3を用いた正反射変位測定系による変位測定動作とは、別々の波長で同時に行うか、或いは同一波長で交互にタイムシェアリングで行う。別々な波長で行う場合は、第1の受光手段D1及びD2と、第2の受光手段D3とにそれぞれが受光する波長を通過させ、他の波長を遮る光学フィルターを挿入する必要がある。
【0064】
図3では、さらに、第1の受光手段D1と測定点との間の第1の乱反射光路、第1の受光手段D2と測定点との間の第2の乱反射光路、及び第2の受光手段D3と測定点との間の正反射光路のそれぞれには、測定点から各反射光を集光して平行光に変換するコリメータレンズと、更にその平行光を測定点へ集光して結像させる集光レンズとを備えた集光機能素子K1,K2、K3を備えている。ここでは「集光機能素子」と言う表現を用いているが、基本的には各反射光(ビーム)を集光して各受光手段へ結像させる機能であり、これと同一機能を単一のレンズ或いは複数のレンズで達成できることから、それら全体を表すための表現である。そして、図4のように、各集光機能素子K1,K2,K3のそれぞれが配置された光軸を中心として反射光を平行光に変換する位置までの距離をL1n、L2n、L3nとし、各受光手段へ集光させるまでの距離をL1m、L2m及びL3mとする。集光機能素子K1,K2、K3が平行光として維持している距離(集光機能素子の長さ)は、各受光素子の測定点に対する位置を決めるのに用いられる。
【0065】
また、第1の受光手段D1、D2及び第2の受光手段D3のそれぞれは、上記したように所定長さの受光面を有し、該所定長さ方向における受光位置に応じて光変位情報を検出する位置検出器(PSD)が用いられている。そこで、第1の受光手段D1が第1の散乱光路となす角度α1、第1の受光手段D2が第2の散乱光路となす角度α2及び第2の受光手段D3が前記正反射光路となす角度α3とに設定される。これらの角度は、感度調整のために設定される。
【0066】
本実施形態では、上記第1の受光手段D1が第1の散乱光路となす角度α1がtan―1(L1n/L1m×tanθ1)、第1の受光手段D2が第2の散乱光路となす角度α2がtan―1(L2n/L2m×tanθ2)、及び第2の受光手段D3が正反射光路となす角度α3がtan―1(L3n/L3m×tan2θ3)になる配置にしていることにより、各受光手段は、その長さ方向における光をセンシングする感度がほぼ同じ感度、つまり受光手段の長さ方向(センシングする素子が配列されている方向)の感度の差を軽減して測定することができる。
【0067】
これらの基になる原理は、シャインプルークの原理(Scheimpflug Principle)と呼ばれ、ある像をレンズで被写体面へ写すとき、像の面とレンズの面と被写体の面の3つの面のそれぞれの延長線が同一点で交われば、像の面全体でピントが合うとされているものである。本実施形態では、この条件を利用して、3つの受光手段における感度を適切に合わせている。図4において、範囲Rが、被測定物1の測定可能な変位範囲を示し、受光手段D(各受光手段D1,D2,D3を代表する。)の長さ方向の面を示す。範囲Rの延長線(この場合は、光源からの光軸と同じ)と、集光機能素子K(各集光機能素子K1,K2,K3を代表する。)の面の延長線と、受光手段Dの面の延長線とが一点で交わるように、配置構成することにより、ピントの合った、つまり、受光手段の長さ方向において(いわば範囲R全体において)、適切な感度で変位測定ができる。
【0068】
そして、上記式で、さらに、距離の比L1n/L1m、L2n/L2m及びL3n/L3mが同一値で、第1の角度θ1、第2の角度θ2及び第3の角度2θ3が同一値(θ)であることにより、範囲Rに対して角度α1、角度α2及び角度α3も同じ値(α)になり、受光手段間の感度の差も少なくして測定することができる。
【0069】
なお、上記式で、距離の比L1n/L1m、L2n/L2m及びL3n/L3mが同一値であるか無いかに関わらず、第1の角度θ1、第2の角度θ2及び第3の角度2θ3を同一値(θ)とし、角度α1、角度α2及び角度α3も同一値(α)として配置することにより、受光手段内部ではピントの合うところと合わないところが出るが、受光手段間の感度のバラツキは抑えることができる。なお、本発明における距離や角度は、測定範囲におけるほぼセンターの値で説明している。
【0070】
以上のように、変位センサ2は、対称な2つの方向の乱反射を利用した乱反射変位測定系を用いていること、その乱反射変位測定系と正反射変位測定系とで分かれており、互いの干渉の無い状態で測定できること、さらに、第1の角度θ1、第2の角度θ2及び第3の角度2θ3が同一値(θ)であるため、各変位計測を同じ感度にすることができるので、被測定物1の反射率に関係無く感度補正無しで、正反射の陰の部分も測定でき、乱反射変位測定系と正反射変位測定系とでの変位測定の差を軽減して、精度の高い測定ができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】実施形態の内、変位センサ及び測定部の機能構成を示す図である。素子の本発明に係るプリント板検査装置の内、検査部の機能構成を示す図である。
【図2】実施形態の内、検査部の機能構成を示す図である。
【図3】図1の変位センサを構成する機能要素の配置を示す図である。
【図4】各受光手段の位置関係を示し、各受光手段の感度を説明するための図である。
【図5】レジストの厚さを干渉により測定する技術を説明するための図である。
【図6】レジストの厚さを干渉により求める他の一形態を説明するための図である。
【図7】共焦点を利用してレジストの厚さを求める形態を説明するための図である。
【図8】レジスト厚さのバラツキとその影響を説明するための図である。
【図9】理想的なレジスト面を説明するための図である。
【符号の説明】
【0072】
1 基板(プリント板)、 2 変位センサ、 2a,2b,2c 光路形成部
3 データ処理部、 3a,3b 加算器、 3c 演算部、 4 走査機構、
6 基礎測定部、7 測定部、 8 画像処理部、 9 比較部、10 判定部、
11 表示部、12 制御部、 100 変位測定部、200 検査部
D1,D2 第1の受光手段、D3 第2の受光手段、D4 第3の受光手段、
K1,K2,K3 集光機能素子、 K4 集光レンズ、 K5 対物レンズ
K5a ミラー、 K6,K7 対物レンズ、
M1,M2,M3,M4 ハーフミラー、 M5 ミラー
L1 演算部の出力(散乱反射による変位情報)
L2 演算部の出力(正反射による変位情報)
OS1 第1の光源、 OS1a レーザ光源、 OS1b レンズ
OS2 第2の光源、 P ピンホール手段、 R 範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光源(OS1)と、該第1の光源が被測定プリント板上の測定点を垂直に照射する第1の光路上にあって、前記測定点が被測定プリン板の半透明なレジストの表面であるときに該レジストの表面からの反射に基づく光と該レジスト下部のパッド面からの反射に基づく光とを取得するための光路を形成する光路形成部(2a)と、該測定点が被測定プリント板のはんだ面であるときに該測定点から該第1の光源の照射に対する散乱光を受ける第1の受光部(D1,D2)と、第2の光源(OS2)と、該第2の光源からの光を該同じ測定点を前記垂直に対し所定角度斜めの角度で照射されたときの正反射光を受ける第2の受光部(D3)と、を含む変位センサ(2)と、
表面のパッド面にはんだが印刷された前記被測定プリント板の半透明のレジスト面を前記測定点として測定されているときに、前記光路形成手段に対して前記光路の距離を可変させて、前記レジストの表面からの反射に基づく光を取得したときの光路と該レジスト下部のパッド面からの反射に基づく光を取得したときの光路との差違を基に、該レジストの厚さを求める基礎測定部(6)と、
前記被測定プリント板の前記はんだ面を前記測定点としたときに、前記第1の受光部が受けた散乱光に基づく第1の変位、及び前記第2の受光部が受けた正反射光に基づく第2の変位を算出するデータ処理部(3)と、
前記データ処理部により得られた前記第1の変位又は前記第2の変位、及び該基礎測定段階で求めた前記レジストの厚さとを基に、該はんだ面の変位を前記パッド面の位置からの変位として求める測定部(7)と、を備えたことを特徴とする印刷はんだ検査装置。
【請求項2】
前記光路形成部は、該第1の光源からの光を分岐し一方をプリント板の表面の測定点に垂直な測定光路を通して該測定点を照射し、他方を遠端にミラーを有する参照光路へ送るとともに、該測定点からの反射光と前記ミラーからの反射光を合成した干渉光を出力する干渉光路形成手段(M2,K5,K5a)と、該干渉光を検出する干渉光受光手段(D4)とを有し、
前記基礎測定部は、前記レジスト面を前記測定点として測定されているときに、前記測定光路もしくは前記参照光路の何れかの光路長を変化させたときに前記干渉光受光手段が前記レジストの表面からの反射に基づく干渉光を検出したときと、該レジスト下部のパッド面からの反射に基づく干渉光とを検出したときと、の間における前記光路長の変化量により、該レジストの厚さを求めることを特徴とする請求項1に記載の印刷はんだ検査装置。
【請求項3】
前記光路形成部は、該第1の光源からの光をプリント板の表面の測定点に垂直に集光させて該測定点を照射するとともに、該測定点からの反射光を集光する対物レンズと、所定位置に配置され該対物レンズが該所定位置に集光した光だけを通過させ、集光しきれない光を除外するピンホール手段(P)と、ピンホール手段を通過した光を検出する集光検出手段(D5)とを有し、
前記基礎測定部は、前記レジスト面を前記測定点として測定されているときに、前記光路形成部を前記垂直方向に移動させたときに、前記集光検出手段が前記レジストの表面からの反射光に基づく集光を検出したときと、該レジスト下部のパッド面からの反射光に基づく集光とを検出したときと、の間における前記光路形成部の移動量により、該レジストの厚さを求めることを特徴とする請求項1に記載の印刷はんだ検査装置。
【請求項4】
前記データ処理部は、少なくともはんだ面を測定点としているときに、前記第1の受光部と第2の受光部とが受けるそれぞれの光の強さを比較し、
前記測定部は、前記第1の変位又は前記第2の変位のうち前記データ処理部による比較により、受けた光が強い方の受光部のデータを基に算出された変位と、前記レジストの厚さとを基に、該はんだ面の変位を前記パッド面の位置からの変位として求めることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の印刷はんだ検査装置。
【請求項5】
前記第1の受光部は、2つの受光手段で成り、一つは、前記プリント板の測定点を垂直方向から照射する前記第1の光路の第1の光軸に対して第1の角度θ1で形成される第1の散乱光路上に配置された受光手段(D1)であり、他の一つは、該第1の光軸に対して該第1の散乱光路と反対側に第2の角度θ2で形成される第2の散乱光路上に配置された受光手段(D2)とであり、前記第1の変位は、前記2つの受光手段の出力の和を基に求められ、また、
前記第2の光源は、該第1の光軸に対して斜めの角度θ3を成す第2の光軸で前記測定点を照射し、第2の受光部は、該測定点にて該第2の光源の第2の光軸に対して第3の角度2θ3で形成される正反射光路上に配置されており、前記第2の変位は、該第2の受光部の出力から求められることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の印刷はんだ検査装置。
【請求項6】
第1の光源が被測定プリント板上の半透明なレジスト面を測定点として該測定点を垂直な第1の光路を介して照射する段階と、
光路形成部を制御して該レジストの表面からの反射に基づく光を取得する光路長を形成させる第1の基礎測定段階と、
前記光路形成部(2a)を移動させて該レジスト下部のパッド面からの反射に基づく光を取得する光路を形成させる第2の基礎測定段階と、
前記第1の基礎測定段階と該第2の基礎測定段階における光路の距離の差違を基に前記レジストの厚さを求める第3の基礎測定段階と、
前記測定点が被測定プリント板のはんだ面であるときに、第1の受光部(D1,D2)が、該測定点から該第1の光源の照射に対する散乱光を受ける第1の受光段階と、
第2の受光部(D3)により、第2の光源からの光を該同じ測定点を前記垂直に対し所定角度斜めの角度で照射されたときの正反射光を受ける第2の受光段階と、
前記第1の受光部が受けた散乱光に基づく第1の変位、又は前記第2の受光部が受けた正反射光に基づく第2の変位を算出するデータ処理段階と、
前記データ処理段階で得られた前記第1の変位又は前記第2の変位、及び該基礎測定段階で求めた前記レジストの厚さとを基に、該はんだ面の変位を前記パッド面の位置からの変位として求める測定段階と、とを備えたことを特徴とする印刷はんだ検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−115536(P2009−115536A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−287210(P2007−287210)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】