説明

原料ガス分解機構、薄膜製造装置、薄膜製造方法、および薄膜積層体

【課題】高品質の薄膜を基板上に堆積させることを容易にする原料ガス分解機構を提供すること。
【解決手段】減圧下のチャンバ17内で基板21上に薄膜を気相堆積させる薄膜製造装置1に設けられ、薄膜の原料となる1種類または複数種類の原料ガスの分解種を分解して該原料ガスの分解種を生成する原料ガス分解機構に、反応室に連通される開口部を有し、該開口部を介して反応室に原料ガスを導入する1つまたは複数のガス導入管13と、上記の開口部での反応室側の開口面よりも基板側に変位した状態で、かつ上記の開口部に近接した状態で接配置される原料ガス分解用の触媒体10と、触媒体に導線11a,11bを介して通電することで該触媒体を昇温させる加熱電源12とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、原料ガス分解機構、薄膜形成装置、薄膜製造方法、および薄膜積層体に関するものである。
【0002】
この発明により、従来に比べて発光効率や絶縁破壊電界強度に優れる窒化物半導体薄膜を得ることができる。また、有機フィルムのような熱ダメージに弱い基板上に緻密な保護膜を形成することができる。
【背景技術】
【0003】
従来から、窒素原料と金属原料とを化合させて形成された窒化物薄膜は、半導体としての物理的性質を有する場合、優れた光デバイスや電子デバイスとしての性能を発揮するばかりでなく、絶縁体としての物理的性質を有する場合、優れた絶縁保護膜としての性能を発揮する。このため、窒化物薄膜は、多岐に渡る分野において注目されている。
【0004】
この窒化物薄膜を形成する場合、一般に窒素原料ガスと金属原料とを基板上に気相堆積する方法が採られている。この気相堆積方法においては、熱CVD法(Thermal Chemical Vapor Deposition)、有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)プラズマCVD法(PECVD:Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)、分子線エピタキシャル成長法(MBE:Molecular Beam Epitaxy)、および触媒CVD法(Catalytic Chemical Vapor Deposition)等が知られている。
【0005】
熱CVD法およびMOCVD法は、基板を高温に加熱するため基板に熱ダメージを与えるという問題点があり、PECVD法は、気相中のプラズマが基板にプラズマダメージを与えるという問題点がある。このため、基板を高温に加熱せずに、かつプラズマレスで窒化物薄膜が形成できる触媒CVD法が注目されている。この触媒CVDは、加熱した触媒体に原料ガスを接触させて接触分解し、基板上に窒化物薄膜を形成する方法であり、窒化物薄膜の他、多結晶シリコン薄膜やアモルファスシリコン薄膜の堆積にも有用であることが知られている(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−276976号公報
【特許文献2】特開平8−250438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、触媒CVD法は、触媒体を高温に加熱させて触媒体によって分解された原料ガスの分解種を基板に到達させるため、触媒体と基板とを接近させる必要がある。しかし、触媒体と基板との距離を近づけすぎると触媒体の輻射熱によって基板が高温になり、高品質な膜が形成されないという問題点があった。
【0008】
この発明は上記に鑑みてなされたものであって、高品質の薄膜を基板上に堆積させることを容易にする原料ガス分解機構、薄膜製造装置、および薄膜製造方法、ならびに高品質の薄膜積層体を提供することを目的とする。
【0009】
なお、本発明の原料ガス分解機構、薄膜製造装置、および薄膜製造方法は、窒化物薄膜以外の薄膜に対して適用しても、低温堆積のメリットが得られる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明にかかる原料ガス分解機構は、減圧下の反応室内で基板上に薄膜を気相堆積させる薄膜製造装置に設けられ、前記薄膜の原料となる1種類または複数種類の原料ガスを分解して該原料ガスの分解種を生成する原料ガス分解機構であって、前記反応室に連通される開口部を有し、該開口部を介して前記反応室に前記原料ガスを導入する1つまたは複数の原料ガス導入手段と、前記開口部での反応室側の開口面よりも前記基板側に変位した状態で、かつ前記開口部に近接した状態で配置される原料ガス分解用の触媒体と、前記触媒体に通電することで該触媒体を昇温させる触媒体加熱手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明にかかる薄膜製造装置は、減圧下の反応室内で基板上に薄膜を気相堆積させるにあたって、前記薄膜の原料となる1種類または複数種類の原料ガスを原料ガス分解機構によって分解して前記原料ガスの分解種を生成する薄膜製造装置であって、前記原料ガス分解機構は、前記反応室に連通される開口部を有し、該開口部を介して前記反応室に前記原料ガスを導入する1つまたは複数の原料ガス導入手段と、前記開口部での反応室側の開口面よりも前記基板側に変位した状態で、かつ前記開口部に近接した状態で配置される原料ガス分解用の触媒体と、前記触媒体に通電することで該触媒体を昇温させる触媒体加熱手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明にかかる薄膜製造方法は、減圧下の反応室内で基板上に薄膜を気相堆積させる薄膜製造方法であって、前記薄膜の原料となる1種類または複数種類の原料ガスを上記本発明の原料ガス分解機構によって分解して該原料ガスの分解種を生成する工程を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明にかかる薄膜積層体は、基板上に積層された複数の薄膜を有し、該複数の薄膜は、上記本発明の薄膜製造方法によって製造された薄膜を少なくとも一つ含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる原料ガス分解機構では、原料ガス導入手段における反応室側の開口部での開口面よりも基板側に変位した状態で、かつ上記の開口部に近接した状態で触媒体が配置されるので、上記の開口面よりも原料ガス導入手段の内側に触媒体を配置した場合に比べ、分解種同士の衝突が抑制される。このため、所望の分解種を基板に照射し易い。結果として、高品質の薄膜を基板に堆積させることが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施形態1にかかる薄膜製造装置を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施形態1にかかるタングステンワイヤの電気抵抗と温度との特性を示す特性図である。
【図3】この発明の実施形態1にかかるタングステンワイヤの温度と圧力との特性を示す特性図である。
【図4】この発明の実施形態1にかかるシャッタを示す模式図である。
【図5】この発明の実施形態1にかかるシャッタを示す模式図である。
【図6】この発明の実施形態1にかかるガス導入管を示す模式図である。
【図7】この発明の実施形態1にかかる触媒体形状を示す模式図である。
【図8】この発明の実施形態1にかかる触媒体形状を示す模式図である。
【図9】この発明の実施形態1にかかる触媒体形状を示す模式図である。
【図10】この発明の実施形態1にかかる触媒体形状を示す模式図である。
【図11】この発明の実施形態1にかかる触媒体形状を示す模式図である。
【図12】この発明の実施形態1にかかる触媒体形状を示す模式図である。
【図13】この発明の実施形態1にかかる触媒体形状を示す模式図である。
【図14】この発明の実施形態1にかかる触媒体形状を示す模式図である。
【図15】この発明の実施形態1にかかる触媒体形状を示す模式図である。
【図16】この発明の実施形態1にかかる触媒体形状を示す模式図である。
【図17】この発明の実施形態1の変形例にかかる窒化物薄膜製造装置を示すブロック図である。
【図18】この発明の実施形態2にかかる薄膜製造装置を示すブロック図である。
【図19】この発明の実施形態3にかかる薄膜製造装置を示すブロック図である。
【図20】この発明の実施形態4にかかる薄膜製造装置を示すブロック図である。
【図21】この発明の実施形態5にかかる薄膜製造装置を示すブロック図である。
【図22】この発明の実施形態にかかるRHEEDパターンを示す模式図である。
【図23】この発明の実施形態にかかるRHEEDパターンを示す模式図である。
【図24】この発明の実施形態にかかるXRDパターンを示す特性図である。
【図25】この発明の実施形態にかかるPLパターンを示す模式図である。
【図26】この発明の実施形態にかかる薄膜が積層された積層断面を示す断面模式図である。
【図27】この発明の実施形態にかかる薄膜のへこみを示す模式図である。
【図28】この発明の実施形態にかかる薄膜形成の工程を示す工程図である。
【図29】この発明の実施形態にかかる薄膜形成の工程を示す工程図である。
【図30】この発明の実施形態にかかるXRDパターンを示す特性図である。
【図31】この発明の実施形態にかかるPLパターンを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる薄膜製造装置および薄膜の製造方法および薄膜積層体の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0017】
(実施形態1)
図1は、この発明の実施形態1である窒化物薄膜製造装置1の概要構成を示すブロック図である。この窒化物薄膜製造装置1は、窒化物薄膜を形成する反応室であるチャンバ17と、チャンバ17を所定の圧力に減圧する真空ポンプ18と、チャンバ17に窒素原料ガスであるアンモニア(NH3)を導入するガス導入管13と、ガス導入管13の開口部に配置され、導入されたNH3を解離する触媒体10と、金属原料であるガリウム(Ga)を加熱して分子線として放出するクヌーセンセル22aと、窒化ガリウム(GaN)を形成するSi基板21と、Si基板21を保持する基板ホルダ19と、Si基板21を加熱するヒータ20と、Si基板21を冷却する冷媒供給パイプ81を有する。Si基板21の回りには、未分解原料ガスを吸着するシュラウド82が設けられる。Si基板21および堆積膜の状態を観察する反射高速電子線回折用電子銃(RHEED)24およびスクリーン25と、チャンバ17内の残留ガスを検出する4重極質量分析計(QMS)23とを有する。
【0018】
Si基板21は、モリブデンなどで形成された基板保持具に取り付けられており、ロードロックシステム(図1に記載されていない)によって、チャンバ17を大気開放することなく、チャンバ17の内部の基板ホルダ19に真空中に搬送されて、取り付けられる。Si基板21は、基板ホルダ19に備えられたヒータ20および冷媒供給パイプ81により、任意の温度に調整することができる。なお、基板温度のモニタは、基板ホルダ19に備えられた熱電対(図示せず)を使用したり、基板からの熱輻射をパイロメータで観察する(図示せず)ことで達成される。また、窒化ガリウム基板のようなワイドギャップ材料を基板として使用する場合には、基板の裏面に高融点金属を予め堆積しておく必要がある。
【0019】
排気装置は、ターボ分子ポンプが好適であり、クライオポンプや液体窒素トラップを備えた油拡散ポンプも使用できる。また、原料ガスを流す前の真空度向上のためには、イオンポンプやチタンサブリメーションポンプを利用することができる。このような排気装置により、原料ガスを導入しない場合の到達真空度は、一般には1×10-10Torr程度の真空度となる。また、ここでは図示しないが、排気装置は、原料ガスに対応した除害設備を備えている。
【0020】
窒素原料ガスであるアンモニアは、シリンダキャビネットに保管されたボンベ16より、圧力制御装置で適当な圧力に調整されて、バルブ14a,14bと流量制御計(MFC)15とを介して所望の流量に調整されて、最終的にはガス導入管13を通してチャンバ17に導入される。この他に、ここには図示しないが、原料ガス供給系には、パージ手段や漏洩対策のための各種安全装置を設ける必要がある。
【0021】
窒化原料ガスとしてアンモニア(NH3)を用いる場合を説明するが、ヒドラジン(N24)、アジ化水素(N3H)などの水素化窒素原料が利用できる。また、これらの窒素原料ガスに水素を混合する場合や、窒素や希ガスなどの不活性ガスを混合することもできる。これらの原料ガス選択や水素の混合は、加熱触媒体10に供給される原料ガスの成分として、窒素/水素の割合を調整するために適宣選択される。一方、窒素や希ガスの混合は、加熱触媒体10における窒素原料ガスの反応を抑制する効果をもつ。
【0022】
混合ガスを使用する場合には、原料ガス導入管13を供給側で分岐し、これらのガスを供給する手段を設けることで達成される。原料ガス導入パイプに排気手段を設けてガス導入管13内でガス混合状態を調整することも有効である。
【0023】
ガス導入管13の先端の開口部には、触媒体10が備えられており、窒素原料ガスは、触媒体10に効率よく接触する。
【0024】
触媒体10は、銀コートされた銅(Cu)で形成された導線11a,11bを介して加熱電源12に接続され、通電により所望の温度に設定される。触媒体10は、純度99.999%のタングステン(W)ワイヤによってW字状に形成され、ガス導入管13の開口部の開口面に平行に配置される。
【0025】
図2は、触媒体10への通電加熱によるタングステンワイヤの電気抵抗特性を調べた結果である。高純度のタングステンワイヤを使用すると、タングステンワイヤの電気抵抗率によりタングステンワイヤの温度を推定することが可能である。タングステンワイヤの径がσ(mm)であり、長さL(cm)の場合、タングステンワイヤへの通電電流がI(A)で電圧がV(V)であれば、タングステンワイヤの電気抵抗率ρ(μΩm)は、
ρ=V/I×σ/L×102
で求めることができる。ρが1μΩmを超えると、タングステンワイヤの融点である3400℃近くとなるため、タングステンワイヤは切れてしまう。ρが0.7μΩm以上であると、タングステンワイヤの温度はおよそ2000℃以上となり、タングステンの蒸気圧が高くなり、蒸発が顕著となるため、タングステンワイヤが次第に細くなり切れやすくなることに加え、タングステンワイヤの蒸発物が基板に付着して不純物となるため好適ではない。また、タングステンワイヤのタングステン純度が低い場合には、抵抗−温度関係の再現性が変化することに加え、不純物の基板への混入が発生する場合がある。したがって、ワイヤのタングステン純度は、99.99%(4N)以上が好適で、望ましくは、99.999%(5N)以上がよい。現在は、これ以上の純度のタングステンを市場より得ることは、簡単ではないが将来は6Nの純度が容易に利用できる可能性がある。
【0026】
一方、原料ガスの分解は、タングステンワイヤが高温であるほど促進されることから、原料ガスの分解を促進したい場合は、ρが0.55μΩmに対応する、タングステンワイヤの温度1700℃の設定がよい。無通電を含む、これより低いタングステンワイヤの設定温度は、原料ガスの分解種の構成割合が変化することから、原料ガスの選択や工程の目的に応じて選択されて利用される。
【0027】
触媒体10は、Si基板21と対向して配置されており、触媒体10で分解した窒素原料は基板に効率よく照射される。未分解のままチャンバ17に導入された一部の窒素原料ガスは、チャンバ17内壁に備えられた液体窒素シュラウド82に吸着されるため、チャンバ17の圧力は、100sccm程度の窒素原料ガスを導入しても1×10-5Torr以下に設定することができる。
【0028】
図3にアンモニアを10sccm流した場合のタングステンフィラメント温度とチャンバ17圧力の関係を示す。なお、ここでは、ガス導入管13の開口径は、20mmであり、触媒体10とSi基板21との距離は、10cmである。
【0029】
未分解のまま導入されたアンモニアガスは、シュラウド82で吸着されるため、チャンバ17の圧力を上昇させない。触媒体10との接触反応において、分解が進行すると、最終的には多くの成分が水素と窒素ガスに変化し、これらは、シュラウド82で殆ど吸着されないので、チャンバ17に滞留したのち、排気装置により排気される。したがって図3に記載されたチャンバ圧力は、加熱触媒体10によりアンモニアガスの分解の程度を示す指標となる。なお、これらの原料ガス分解の挙動は、装置に取り付けられたQMS23によって詳細を調べることができる。
【0030】
図3に示されるようなアンモニアガスを10sccmとした場合、タングステンフィラメントを1700℃としてもチャンバ圧力は1×10-5Torr以下の低い状態が維持されている。チャンバ圧力とアンモニアガス流量は、この領域でほぼ比例し、100sccm以上の流量の場合も1×10-4Torr以下となる。この低いチャンバ圧力は、シュラウド82の効果であり、シュラウド82を冷却しない場合、アンモニアガスを10sccmとしてもチャンバ圧力は1×10-3Torrを超えてしまう。
【0031】
このチャンバ圧力値は、基板への原料ガス分解種、あるいは、金属原料の供給手段からの金属分子線の基板への到達の程度に影響を与える重要なパラメータである。一般に低圧の分子流の領域においては、気体ガス分子の平均自由工程λc(cm)は、気体ガス分子の圧力をPc(Torr)(すなわち、チャンバ圧力に相当する値)として、
λc=(5×10-3)/Pc
の関係をほぼ満たすことが知られている。
【0032】
まず、金属原料を供給するためのクヌーセンセルの開口位置は、基板から5cm以上の距離に配置することが一般的であり、同様の理由から、λcは、5cm以上、したがって、Pc<1×10-3Torrを満たす必要がある。λcが5cm以下となると、基板に到達するまえに金属分子線は、ガスと衝突し反応が阻害される場合がある。
【0033】
一方、加熱触媒体は、原料ガス分子の供給口にほぼ一致して配置されており、チャンバ17の圧力に比較し、必ず高いガス分子圧力下に保持されている。原料ガスの流量J(sccm)、気体ガス分子速度v(cm/s)、供給管の開口面積S(cm2)を使用すると、加熱触媒体近傍の圧力、Pcat(Torr)は、
Pcat=12.67J/S/v
により見積もることができる。室温におけるガス分子速度を4.7×104cm/sとして、開口径2cmの場合には、
Pcat=8.6×10-5JTorr
の関係となる。
【0034】
Jを100sccmとすると、Pcatは、8.6×10-3Torrに達し、対応する平均自由工程は、0.58cmとなる。この値は小さいが、基板との間の領域では、ガスが広がるため、触媒体10から基板に到達するまでの過程において、平均自由工程は上昇していくので、L=10cm以下であれば、触媒体10からの解離原料ガス分子線を基板に有効に照射することが可能である。Lを小さくするほど、基板到達前の空間で他のガス分子と衝突する寄与を低減することができる。
【0035】
一方、L(cm)を小さくしていくと、加熱触媒体10からの熱輻射が基板温度を上昇させてしまう。基板温度の上昇は、基板温度を冷却する手段81を使用することで、ある程度許容できるが、輻射の影響は、基板距離の2乗に比例して顕著となるため、少なくともLを1cm以上とする必要がある。したがって、本発明の窒素原料ガス供給手段において、触媒体10と基板の距離Lcmは、1≦L≦10を満たすように配置される。また、薄膜堆積のために原料ガス導入時における反応室圧力は1×10-3Torr以下に設定される。
【0036】
また、上記のパラメータLの最適化のためには、加熱触媒体における原料ガス圧力の設定が重要であり、これを制御するには、ガス導入管13の開口面積を変更することが有効である。開口面積の変更手段は、図4に示すように、カメラに設けられている絞り形状で、複数の金属片で構成されてもよいし、図5に示すように、開口部分が回転し、開口面積が可変できるような形状であってもよい。
【0037】
なお、この実施形態1では、ガス導入管13は、チャンバ17に固定されていたが、図6に示すように、ベローズフランジ88を介してチャンバ17に固定し、ガス導入管13先端のガス導入部83に取り付けられた触媒体10をハンドル87によって駆動され、ネジ86がガイド85に沿って可変し、Si基板21との間の距離を可変できるようにしてもよい。これにより、L自身もある程度調整が可能となり、最適堆積条件を設定することが容易にできる。また、ハンドル87の代わりにモータを用いることにより、自動化できる。
【0038】
ここでは、触媒体10として、タングステンを原料としたワイヤを説明したが、その他の原料やワイヤ以外の形態の触媒体を利用することができる。
【0039】
ワイヤとすることのできる触媒体材料は、タングステン単体に加え、フィラメント材料として一般的に使用されているトリア含有タングステンがある。また、その他の高融点金属であるモリブデン、タンタル、チタン、バナジウム、オスミウム、高純度鉄、白金などのワイヤを利用することができる。これらの材料を使用する場合は、それぞれの材質の蒸気圧や抵抗率を鑑み、通電条件を設定する必要がある。
【0040】
また、タングステンフィラメントやその他のヒータと組み合わせることで、導電性がなくとも板状や管状の色々な形態の触媒体の利用が可能となる。この場合には、材質は、上記の高融点金属材料に加えて、窒化ボロン、窒化シリコン、窒化アルミニウムや炭化珪素などのセラミックス材料、および、シリコンや窒化ガリウムなどの半導体材料、および、これらのセラミックスや半導体に金属を複合させた、金属蒸着セラミックや窒化膜によってコーティングされた高融点金属、シリサイドなどを原料としてもよい。
【0041】
これらの材料の選択として、構成要素に酸素を含まないものがよい。酸素を含む場合には、触媒体の加熱温度は、分解温度以下とし、また、十分に焼きだしをしないと酸素が薄膜に混入する。炭素についても同様である。一般に薄膜構成要素以外の金属は、不純物として薄膜の性質に悪い影響を及ぼすため、触媒体への添加金属は、薄膜を構成する要素元素である、AlやIn、Ga、B(非金属であるが、ここでは一緒に定義する)などの原料やドーパントとして利用価値のある、SiやMg、Feなどの原料の窒化物セラミックス複合体が良好な加熱触媒体として利用できる。
【0042】
触媒体10の形状は、線材の場合、図7に示すように、コイル状、また、図8に示すように、W字状などのワイヤ状、また、図9に示すように、バネ状にしてもよい。また、これらの材料を板状に成型し、通電して加熱することもできる。図10に示すように、シート状、また、図11に示すように、リング状、また、図12に示すように、網状、とすることができる。一方、これらの通電加熱触媒体と、この熱により過熱される別の触媒体を組み合わせることもできる。図13に示す形態は、通電加熱されるバネ状触媒体と通電されない網状触媒体を組合わせた形状である。また、図14に示すように、バネとスリットとを組合わせた形状、また、図15に示すように、ドーナツ状の絶縁体触媒体に導体コイルを組み合わせた形状、また、図16に示すように、スリットにドーナツ状のコイルを組合わせた形状であってもよい。
【0043】
(実施形態1の変形例1)
次に、この実施形態1の変形例1について説明する。実施形態1では、窒化物薄膜製造装置1は、1個の触媒体10付きガス導入管13と1個のGaが装填されたクヌーセンセル22aを用いて、Si基板21上にGaNを形成するようにしていたが、この変形例では、インジウム(In)を装填したクヌーセンセルをさらに備え、Si基板に替え、GaAs基板21bの上にInGaNを形成するようにしている。
【0044】
図17は、この変形例である窒化物薄膜製造装置1Aの概要構成を示すブロック図である。この窒化物薄膜製造装置1Aは、実施の形態1で示したSi基板21をGaAs基板21Aに代え、チャンバ17にInが装填されたクヌーセンセル22bが備えている。なお、図1と同一の構成部分には同一の符号を付している。
【0045】
(実施形態1の変形例2)
この実施形態1の別の変形例として、Inが装填されたクヌーセンセル22bに加え、Alが装填されたクヌーセンセル22cを備える構成がある。また、n型のドーピングに使用するSiが装填されたクヌーセンセル22dを備え、さらに、p型のドーピングに使用されるMg原料となるジメチルマグネシウム(DMM)を供給するためのガス導入管が配置されている。基板21は、面方位(111)のn型Si基板を使用して、AlNバッファ層を成長後にn型GaN層およびアンドープInGaN層とp型GaN層を順次成膜することに利用される。
【0046】
(実施形態2)
次に、この発明の実施形態2について説明する。実施形態1およびその変形例では、クヌーセンセル22a、22b、22c、22d、および、p型ドーピングのためのガス導入管13bが基板を見込む面と同じ面に触媒体10付きガス導入管13aを配置するようにしていたが、この実施の形態2では、クヌーセンセルの分子線と干渉しないように、触媒体10付きガス導入管13aを配置するようにしている。
【0047】
図18は、この発明の実施形態2である窒化物薄膜製造装置2の概要構成を示すブロック図である。図18に示すように、この窒化物薄膜製造装置2は、触媒体10付きガス導入管13aは、クヌーセンセル22a〜22cが基板21Bを見込む面と垂直な面に配置されている。
【0048】
図1に示す実施の形態1で説明したように、NH3の分解種を基板21Bに到達させる場合、基板21Bと触媒体10との距離Lは、一般に1cm〜10cmとなる。一方、クヌーセンセル22a〜22cの先端と基板21Bとの距離は、20〜30cmである。
【0049】
そのため、例えば、基板21B上に4種類の化合物膜を形成する場合、クヌーセンセル22a〜22cを3個、ドーピング用クヌーセンセルを1個、また、ドーピング用ガスセルを1個に加え、触媒体10付きガス導入管13を1個、チャンバ17に配置する必要があるが、クヌーセンセル22a〜22cと触媒体10付きガス導入管13を同じ面内に配置すると、触媒体10付きガス導入管13の先端がクヌーセンセル22a〜22cから出射された分子線と干渉し、良好な膜が基板21B上に形成されない。
【0050】
そこで、クヌーセンセル22a〜22cが基板21Bを見込む面に垂直な面に触媒体10付きガス導入管13を配置することによって、クヌーセンセル22a〜22cから出射された分子線と干渉せずに、分解種を基板21Bに到達させることができる。
【0051】
この実施形態2では、クヌーセンセル22a〜22cから出射された分子線と干渉しないように触媒体10付きガス導入管13aを配置し、良好な膜を基板21B上に形成するようにした。
【0052】
この構成により、クヌーセンセルは、その他の薄膜構成元素やドーピングやサーファクタント添加元素に対応して、10本程度まで配置することが可能である。また、ガス供給管を複数設けることもできる。ガス供給管には、13aと同様に触媒体を配置することもできるが、この場合は、ガス導入管13aと同様に他のクヌーセンセルと干渉しない位置に配置することが好適である。触媒体をもたないガスセルには、ガス供給管の温度を上昇させるためだけの目的のヒータを備える構成とすることもできる。これらのガス導入管は、一般にはクヌーセンセルと同程度に離した距離に配置する。
【0053】
(実施形態3)
次に、この発明の実施形態3について説明する。実施形態1および変形例と実施形態2では、チャンバに1個の触媒体10付きガス導入管13を配置するようにしていたが、この実施の形態3では、同一のチャンバに複数の触媒体10付きガス導入管13を配置するようにしている。
【0054】
図19は、この発明の実施形態3である窒化物薄膜製造装置3の概要構成を示すブロック図である。図19に示すように、この窒化物薄膜製造装置3には、触媒体10a〜10cがそれぞれ付いたガス導入管13a〜13cが備えられ、各ガス導入管13a〜13cからは、NH3、シラン(SiH4)、水素(H2)が導入されるようになっている。実施形態1とその変形例に比較すると、金属原料を供給するクヌーセンセルを使用しない構成になっていることに特徴を有する。
【0055】
図19に示すように、ガス導入管13aからNH3を導入すると、触媒体10aによって、NH3が分解され、ガス導入管13bからSiH4を導入すると、触媒体10bによってSiH4が分解され、ガス導入管13cからH2を導入すると、触媒体10cによって、H2が分解されて、基板12Cに照射される。
【0056】
この結果、NH3の分解種およびH2の分解種を基板12C上に照射すると、基板表面のクリーニングを行うのに好適である。一方、NH3分解種とSiH4の分解種を照射することによって、基板21C上に高品質な窒化珪素(SiN)の膜を形成することができる。また、SiH4の代わりにジボラン(B24)を導入し、NH3の分解種とB24の分解種を基板に照射すると、基板21C上に高品質な窒化ホウ素(BN)の膜を形成することができる。シランを導入する触媒分解セルとジボランを導入する触媒分解セルを同時に備え、窒化珪素膜と窒化硼素膜の両方を堆積可能とすることも可能である。この場合、窒化珪素膜と窒化硼素膜の多層膜や混合組成をもつ膜の堆積が可能である。
【0057】
この実施形態3では、複数の触媒体10a〜10c付きガス導入管13a〜13cを備えることによって、基板21Cの表面クリーニング処理を行うとともに高品質なSiN、あるいは、BN膜を形成するようにしている。なお、この実施の形態3では、NH3の分解種とH2の分解種とによって、基板21Cの表面クリーニング処理を行っていたが、H2の分解種のみで表面クリーニング処理を行うようにしてもよい。また、触媒体10a〜10c付きのガス導入管13a〜13cをそれぞれ3個としたが、3個に限定する必要はない。
【0058】
(実施形態4)
次に、この発明の実施形態4について説明する。実施形態3では、比較的小面積の基板に対して、触媒体から分解種を供給し、基板上に所望の膜を形成するようにしていたが、この実施の形態4では、大面積の有機フィルムに所望の膜を形成するようにしている。
【0059】
図20は、この実施形態4である窒化物薄膜製造装置4の概要構成を示すブロック図である。図20に示すように、この窒化物薄膜製造装置4は、所望の膜を形成するチャンバ17Aと、チャンバ17Aにガスを導入するガス導入室13Aと、導入されたガスを分解する複数の触媒体10A〜10Dと、所望の膜を形成する有機フィルム21Dと、有機フィルム21Dを回転させ、新規な膜形成面を設定する回転ローラ27a、27bと、有機フィルム21Dを所定の温度に加熱するヒータ20Aとを有する。
【0060】
このように、複数の触媒体10A〜10Dを配置することによって、ガス導入室13Aから導入されたガスが触媒体10A〜10Dによって分解され、大面積の有機フィルム21D上に所望の膜を形成することができる。なお、複数の触媒体10A〜10Dを4個としたが、4個に限定する必要はない。
【0061】
(実施形態5)
次に、この発明の実施形態5について説明する。実施形態1〜4では、触媒体の熱を遮蔽していなかったが、この実施の形態5では、触媒体と基板との間に熱遮蔽を行う熱遮蔽板を配置するようにしている。
【0062】
図21は、この実施形態5である窒化物薄膜製造装置5の概要構成を示すブロック図である。図21に示すように、この窒化物薄膜製造装置5は、所望の膜を形成するチャンバ17Cと、チャンバ17C内にガスを導入するガス導入室13Bとを有する。なお、ガス導入室13Bは、導入ガスを均一に分散させるガス分散板130を有し、チャンバ17Cは、触媒体10Aの熱を遮蔽する輻射熱遮蔽板32を有する。
【0063】
図21に示すように、輻射熱遮蔽板32によって、触媒体が発する熱が吸収され、基板に対する輻射熱の影響を抑制することができるため、低温で膜成長が行え、高品質な膜が基板上に形成される。輻射熱遮蔽板32は、触媒体10と同様に高融点の金属で形成することが好ましい。
【0064】
(実施形態6)
次に製法に関する実施形態6を説明する。実施形態1の形成装置を例に説明を行うが、実施形態1とその変形例および実施形態2の形成装置に対して適用することができる。また、実施形態3と4に関する場合も取り挙げ説明を加える。
【0065】
まず、実施形態6−1として、基板表面のクリーニング工程について説明する。基板は、大気中よりロードロック機構よってチャンバ17内に導入される。基板表面に予めウェット処理を施しても、完全には表面酸化物等の不純物を取り去ることはできず、ロードロック機構の中で500℃程度の予備加熱を施して、この不純物量を減少させることもできるが完全に取り去ることはできないため、導入直後の基板表面には、酸化物等の不純物が残留している。本発明のクリーニング工程は、この基板上の酸素や炭素を含む残留不純物を効果的に取り去るものである。
【0066】
Si基板21をホルダに配置後、基板温度を所望の温度に設定する。次に、触媒体10を1700℃程度に設定し、10〜100sccmのNH3を導入し、Si基板21表面に照射することにより、Si基板表面のクリーニング処理が実現する。Si基板21の温度は、300℃以上に設定することによって、クリーニング効果が得られる。Siの場合は、高温の基板温度としても熱ダメージが小さいので、700℃以上の設定にして、10分間処理するのが望ましい。このクリーニング処理に先立ち、NH3を導入しない状態でSi基板21温度700以上の熱清浄化を施してもよい。これらの処理により基板表面の清浄化が実施できる。
【0067】
Si基板21として、(111)面方位の基板を使用したときのクリーニング後の表面をRHEEDで観測すると、図22に模式的に示されるように、ストリークパターンとなる。図22は、700℃における観察例で、Si表面の超構造が観測されているが、基板温度を低温にするとSi結晶周期に起因するパターンとなる。これらのパターンは、Si基板21の表面が清浄化されていることを示している。
【0068】
上記のようにSi基板21温度を700℃以上に設定し、10分間以上のクリーニング処理を行うと、(2)や(3)の反応がSi基板21表面で発生し、Si基板21と堆積膜の界面領域に残留する炭素および酸素不純物濃度を低減することができる。これらの不純物は、単純な高温処理では、固相中を熱的に拡散する場合がある。また気相に放出されて、その後の堆積膜中に取り込まれる場合もあるので、本発明の分解種を照射した環境で、比較的長時間のクリーニング処理を行うことが望ましい。
【0069】
上記の拡散や再取り込まれが抑制されるため、基板と薄膜の界面を含む10nmから50nmの領域の不純物を低減することができる。この領域をSIMS法で観測すると、酸素および炭素不純物量は、ピーク値で、1×1017cm-3以下とすることができる。
【0070】
GaAs基板など熱ダメージが発生する場合は、基板21の温度を400℃程度に低下する必要がある。この場合は、クリーニング時間を比較的長時間とすることが有効である。なお、実施形態3および4の場合は、窒素原料ガスのみを流し、このガス導入管に設置された触媒体を加熱することでクリーニング効果が得られる。H2ガスを導入してもよい。
【0071】
基板21表面のクリーニング原理について説明する。NH3が加熱された触媒体10に接触すると、以下の反応(1)が生起し、分解種NHXと水素ラジカル(3−x)Hとが生成される。
NH3→NHX+(3−x)H ・・・(1)
但し、xは、0〜2
触媒体10温度1700℃以上に設定することにより、(1)の反応が促進される。ここで発生する水素ラジカルは、(2)や(3)の表面反応により、基板21表面から酸素や炭素を含む付着物を有効に取り去り、除去し、クリーニングをする効果を有する。
2H+O→H2O(脱離) ・・・(2)
4H+C→CH4(脱離) ・・・(3)
触媒体10から基板の距離は10cmに配置されており、反応容器の圧力はシュラウド82の効果で小さく保たれているので、反応容器内における分解種の平均自由工程は、十分に大きく、Si基板21に有効に到達する。
【0072】
(実施形態6−2)
次に実施形態6−2として、基板の表面処理工程について説明する。次に、Si基板21の表面処理について述べる。Si基板21温度を700℃にしたまま、アンモニアを100sccm導入し、触媒体10温度を300℃に設定すると、10分程度後に、RHEED像は、図23に示すようなハローパターンに変化する。これは、Si基板表面が窒化されたことを示している。
【0073】
この表面処理は、後で述べる堆積しようとする薄膜の品質設計を制御する手段の一つとなる。GaN堆積膜の場合は、表面処理工程を行うと500℃以下のSi基板21温度で立方晶GaNが得られる。表面処理工程を行わない場合と基板温度を550℃以上に設定すると六方晶GaNが支配的である。550℃以上の六方晶GaNにおいて、表面処理工程を行うと窒素極性が支配的となる。中間的な温度や表面処理が不十分の場合は、薄膜の状態が、これらの混合物により構成される場合がある。したがって、単に堆積を行う場合には、この表面処理工程は行わなくてもよい。
【0074】
なお、実施形態3および4の場合は、窒素原料ガスのみを供給し、これに取り付けられた触媒体を1000℃程度に設定して窒化が実現する。
【0075】
(実施形態6−3)
次に実施形態6−3として、基板への薄膜堆積工程について説明する。さらに、触媒体10を2000℃以下の任意の温度に設定し、NH3を10sccm以上導入し、300℃以上に保持されたSi基板21上に照射するとともに、ガリウム(Ga)が装填されたクヌーセンセル22aを加熱して、Ga分子線をSi基板21上に照射することにより、窒化ガリウムの堆積膜が得られる。
【0076】
触媒体の温度設定は、成長温度に影響を与える。この際、Ga分子線の供給量を調整することで窒化物の堆積物が得られる。Ga量が多すぎると金属ドロップレットが発生しやすいので注意を要す。
【0077】
次にSi基板21上へのGaN堆積工程について述べる。Si基板21温度を550℃に設定し、反応室にNH3を100sccm導入し、触媒体10温度を700℃に設定し、クヌーセンセル22aからのGa分子線の供給を開始すると、GaNの薄膜堆積が発生する。550℃以下のSi基板21温度では、NH3の流量を最適化しないとRHEEDパターンがスポット状に変化しやすい。このことは、GaN薄膜の表面平坦性が劣化していることを意味する。また、GaN堆積に先立ちAlNを堆積することでSi基板21温度を700℃以上の設定にしても平坦なGaN薄膜が堆積できる。
【0078】
GaNの堆積は、(1)で示したNH3の触媒体10での反応がやや抑制されるため、水素ラジカルによるエッチング効果が制限され、以下の反応(4)がSi基板21上で促進されるために発生する。
NHx+Ga→GaN+xH ・・・(4)
【0079】
Gaフラックス量を5×10-8Torrとし、Si基板21温度を500℃としたとき、GaNの成長速度は、0.1μm/hrであり、この方法で0.1μmのGaNを堆積した。窒化処理を行わない場合に観測されるX線回折結果を図24に示すように、GaNは、六方晶となっている。また、図25にPLスペクトルを示す。HeCdレーザ(325nm)で1mW/cm2程度の弱励起を行い、スリット幅を3000ミクロンに開放しているが、385nmのバンドギャップ起因の発光が支配的で、炭素不純物に関連する発光(Yellow発光)が十分に抑圧されている。また、酸素不純物に起因するキャリアも認められず、高純度のGaN層が形成されていることが分かる。
【0080】
実施形態3および4では、Gaの代わりにシラン、ジボランを供給する。これらのガス導入管の触媒体温度は、大凡1700℃の温度がよい。実施の形態1の変形例では、InやAlの供給をGaとともに適当に行い、色々な組成の多層膜が形成される。
【0081】
(実施形態6−4)
最後に実施形態6−4として、エッチング工程について述べる。窒化物堆積後にGaの供給を中止し、アンモニアを流したまま触媒体10温度を1700℃以上に設定するとGaN層のエッチングが起こる。NHxの寄与で表面のN原料分圧が上昇しているため、N空格子などの結晶欠陥の導入なしのエッチングが可能となる。
【0082】
この実施形態6−4では、触媒体10をガス導入管13の開口部先端に配置し、NH3を効率よく分解することによって、Si基板21にクリーニング処理を行うことができる。この後に実施形態6−3の構成により、Si基板21上に高品質のGaNを形成することができる。
【0083】
ここでは、堆積した窒化物薄膜のエッチングを示したが、例えばMOCVDなどの別の装置で形成されたGaNエピタキシャル層を基板として使用する場合や、ドライエッチングプロセスを施したGaN層を基板として使用する場合に、表面のダメージ層などを取り去る目的で、本発明のエッチング工程を利用することが有効である。
【0084】
(実施形態7)
次に実施形態6−1〜4で説明した各工程の組み合わせによる望ましい薄膜堆積工程の実施形態を説明する。
【0085】
そこで、導電性Si基板上に窒化物半導体による発光素子を形成する場合について説明する。
【0086】
(基板表面ウェット処理)
Si基板前処理として有機洗浄とフッ酸処理を施すことにより、基板表面の洗浄とSi基板表面を水素で終端化することにより安定な表面を形成する。付着した水素は、反応室で清浄化工程を行うことにより脱離し、きれいな表面を形成できる。
【0087】
(基板のホルダへの基板装着)
ウェット処理を施したSi基板をモリブデンで形成された基板保持具に取り付ける。
【0088】
(装置への基板導入)
Si基板を固定した基板保持具を反応室とは別に設けられた準備室に導入する。薄膜製造装置には、反応室の他に基板を導入する準備室と反応室に導入する前に予備加熱を行う導入室の2室を有しており、これらはロードロックシステムによって、反応室を大気開放することがない構成になっている。準備室に導入後、準備室内を真空ポンプにより1×10-7Torr以下に真空排気する。
【0089】
(予備加熱)
導入室を真空排気した後、ゲートバルブを開けて導入室に基板を搬送する。導入室内は、反応室と同様に大気開放することがなく、常に1×10-10Torr程度の超高真空に保持されている。搬送後に、Si基板を導入室内に設置された基板ホルダに基板を取り付けて、ヒータで600℃まで加熱し、600℃に到達した後30分間保持することにより予備加熱し、大気中から持ち出した基板及び基板保持具に付着した水分等を取り除く。その後、室温まで温度を下げていく。この工程は、導入室で行ってもよい。
【0090】
(反応室への基板導入)
予備加熱後に基板が室温まで降温した後、ゲートバルブを開けて反応室に基板を導入する。
【0091】
(排気:到達真空度)
反応室内は、シュラウドに液体窒素が導入され、十分に冷却された状態であり、1×10-10Torr程度の超高真に到達している。金属原料が所望の供給量に相当する温度に予め設定してあり、シャッタにより反応室内には放出されていない状態である。
【0092】
(クリーニング工程) 700℃ 実施形態6−1
Si基板表面のクリーニングを行うために、基板温度を700℃まで加熱する。表面状態は、RHEEDにより、その場観察しており、表面に付着していた水素が取り除かれ、Si結晶周期に起因するパターンが観測される。これにより、Si基板表面が清浄されたことが確認できる。
【0093】
(表面処理工程)300℃ 実施形態6−2
表面を窒化処理するために、基板温度は700℃にしたまま、NH3を導入し、触媒体温度を300℃に設定し、保持する。これにより、RHEEDでハローパターンに変化し、基板表面が窒化されていることが確認できる。
【0094】
(堆積工程1 バッファ層)650℃ AlN 実施形態6−3
表面窒化処理後に、基板温度を650℃に降温する。650℃に保持された時点で、Alが装填されているクヌーセンセルのシャッタを開けて、Alを基板に照射して基板表面にAlNバッファ層が堆積される。
【0095】
(堆積工程2 n−クラッド層)700℃ GaN 実施形態6−3
バッファ層が堆積された後、基板温度を700℃に昇温する。700℃に保持された時点で、Gaが装填されているクヌーセンセルのシャッタを開けて、Gaを基板に照射して、GaN薄膜が積層される。
【0096】
(堆積工程3 QW層) 500℃ InGaN 実施形態6−3
GaN層が積層された後、基板温度を500℃に降温する。500℃に保持された時点で、InとGaが装填されているクヌーセンセルのシャッタを開けて、InとGaを基板に照射して、InGaN薄膜が積層される。
【0097】
(堆積工程4 p−クラッド層)600℃ GaN 実施形態6−3
InGaN層が積層された後、基板温度を600℃に昇温する。600℃に保持された時点で、Gaが装填されているクヌーセンセルのシャッタを開けて、Gaを基板に照射してGaN薄膜が積層される。
【0098】
(堆積工程5 コンタクト層)700℃ GaN 実施形態6−3
GaN層が積層された後、基板温度を700℃に昇温する。700℃に保持された時点で、Gaが装填されているクヌーセンセルのシャッタを開けて、Gaを基板に照射してGaN薄膜が積層される。
【0099】
(取り出し)
薄膜堆積後、基板温度を基板ホルダの保持温度である150℃まで降温する。使用した金属原料のクヌーセンセルの温度も保持温度である150℃まで降温する。基板温度が150℃に到達したら、ゲートバルブを開けて基板ホルダを導入室に搬送する。さらに、準備室まで搬送させ、準備室を大気圧に窒素を導入してリークする。大気圧になったら、基板ホルダを準備室から取り出す。
【0100】
(実施形態8)
次に実施形態8について説明する。この実施形態8では、絶縁性GaN基板上に窒化物半導体による電界効果トランジスタを形成する場合について説明する。
【0101】
(基板表面ウェット処理)
絶縁性GaN基板を有機洗浄および塩酸系と硫酸系溶液を用いてエッチングする。
【0102】
(基板のホルダへの基板装着)
ウェット処理を施したGaN基板をモリブデンで形成された基板保持具に取り付ける。
【0103】
(装置への基板導入)
GaN基板を固定した基板保持具を反応室とは別に設けられた準備室に導入する。薄膜製造装置には、反応室の他に基板を導入する準備室と反応室に導入する前に予備加熱を行う導入室の2室を有しており、これらはロードロックシステムによって、反応室を大気開放することがない構成になっている。準備室に導入後、準備室内を真空ポンプにより1×10-7Torr以下に真空排気する。
【0104】
(予備加熱)
導入室を真空排気した後、ゲートバルブを開けて導入室に基板を搬送する。導入室内は、反応室と同様に大気開放することがなく、常に1×10-10Torr程度の超高真空に保持されている。搬送後に、GaN基板を導入室内に設置された基板ホルダに基板を取り付けて、ヒータで600℃まで加熱し、600℃に到達した後30分間保持することにより予備加熱し、大気中から持ち出した基板および基板保持具に付着した水分等を取り除く。その後、室温まで温度を下げていく。
【0105】
(反応室への基板導入)
予備加熱後に基板が室温まで降温した後、ゲートバルブを開けて反応室に基板を導入する。
【0106】
(排気:到達真空度)
反応室内は、シュラウドに液体窒素が導入され、十分に冷却された状態であり、1×10-10Torr程度の超高真に到達している。金属原料が所望の供給量に相当する温度に予め設定してあり、シャッタにより反応室内には放出されていない状態である。
【0107】
(クリーニング工程) 700℃ 実施形態6−1
GaN基板表面のクリーニングを行うために、基板温度を700℃まで加熱する。表面状態は、RHEEDにより、その場観察しており、表面に付着していた水素が取り除かれ、GaN結晶周期に起因するパターンが観測される。これにより、GaN基板表面が清浄されたことが確認できる。
【0108】
(エッチング工程)300℃ 実施形態6−4
GaN基板表面をエッチング処理するために、基板温度は550℃に設定し、550℃に保持された時点で、NH3を導入し、触媒体温度を1700℃に設定し、保持する。これにより、GaN基板表面がエッチングされる。RHEEDはストリークパターンのままである。
【0109】
(堆積工程1 高純度GaN層)700℃ 実施形態6−3
GaN基板のエッチング後に、基板温度を700℃に昇温する。700℃に保持された時点で、Gaが装填されているクヌーセンセルのシャッタを開けて、Gaを基板に照射して基板表面にGaN薄膜が堆積される。
【0110】
(堆積工程2 AlGaN層)700℃ 実施形態6−3
GaN層堆積後に、基板温度は700℃にしたまま、AlとGaが装填されているクヌーセンセルのシャッタを開けて、AlとGaを基板に照射して基板表面にAlGaN薄膜が堆積される。
【0111】
(取り出し)
薄膜堆積後、基板温度を基板ホルダの保持温度である150℃まで降温する。使用した金属原料のクヌーセンセルの温度も保持温度である150℃まで降温する。基板温度が150℃に到達したら、ゲートバルブを開けて基板ホルダを導入室に搬送する。さらに、準備室まで搬送させ、準備室を大気圧に窒素を導入してリークする。大気圧になったら、基板ホルダを準備室から取り出す。
【0112】
(実施形態9)
次に、実施形態9について説明する。実施形態9では、有機EL素子上に窒化物絶縁体によるパッシベーション膜を形成する場合について説明する。
【0113】
(基板表面ウェット処理)
(基板のホルダへの基板装着)
有機EL素子を基板保持具に取り付ける。
【0114】
(装置への基板導入)
有機EL素子を固定した基板保持具を反応室とは別に設けられた準備室に導入する。薄膜製造装置には、反応室の他に基板を導入する準備室と反応室に導入する前に予備加熱を行う導入室の2室を有しており、これらはロードロックシステムによって、反応室を大気開放することがない構成になっている。準備室に導入後、準備室内を真空ポンプにより1×10-4Torr以下に真空排気する。
【0115】
(予備加熱)
導入室を真空排気した後、ゲートバルブを開けて導入室に基板を搬送する。導入室内は、反応室と同様に大気開放することがなく、常に1×10-7Torr程度の高真空に保持されている。搬送後に、有機EL基板を導入室内に設置された基板ホルダに基板を取り付けて、ヒータで150℃まで加熱し、150℃に到達した後30分間保持することにより予備加熱し、大気中から持ち出した基板および基板保持具に付着した水分等を取り除く。その後、室温まで温度を下げていく。この工程は、導入室で行ってもよい。2室構成のロードロックシステムで構成することもできる。
【0116】
(反応室への基板導入)
予備加熱後に基板が室温まで降温した後、ゲートバルブを開けて反応室に基板を導入する。
【0117】
(排気:到達真空度)
反応室内は、シュラウドに液体窒素が導入され、十分に冷却された状態であり、1×10-7Torr程度の高真に到達している。
【0118】
(クリーニング工程) 150℃ 実施形態6−1
有機EL基板表面のクリーニングを行うために、基板温度を150℃まで加熱する。ここで、H2を導入できるガス導入開口部に配置された触媒体の温度を1200℃に設定して、H2を流すことにより、触媒体とH2との接触分解反応により原子状水素を生成して、基板表面に照射することにより、有機EL基板表面が清浄できる。
【0119】
ここで、NH3を導入できるガス導入開口部に配置された触媒体の温度を1700℃に設定して、NH3を流すことにより、原子状水素を生成して、基板表面に照射することにより、有機EL基板表面を清浄することも可能である。
【0120】
(表面処理工程)150℃ 実施形態6−2
有機EL基板を表面処理するために、基板温度は150℃に保持された状態で、NH3を導入し、保持する。これにより、有機EL基板表面を窒化することもできる。
【0121】
(堆積工程 SiN)150℃ 実施形態6−3
有機EL基板の表面処理の後に、基板温度は150℃に保持された状態で、SiH4を導入できるガス導入部に配置された触媒体の温度を1700℃に、NH3を導入できるガス導入部に配置された触媒体の温度を1200℃にそれぞれ設定し、SiH4とNH3を導入することにより、SiH4とNH3がそれぞれ触媒体との接触分解反応により生成された分解種を有機EL基板上に照射することにより、SiN薄膜が堆積される。
【0122】
(取り出し)
薄膜堆積後、ガス導入を停止し、触媒体温度を室温まで降温する。また、同時に基板温度を基板ホルダの室温まで降温する。基板温度が下がったら、ゲートバルブを開けて基板ホルダを導入室に搬送する。さらに、準備室まで搬送させ、準備室を大気圧に窒素を導入してリークする。大気圧になったら、基板ホルダを準備室から取り出す。
【0123】
(実施形態10)
次に、実施形態10について説明する。実施形態10では、形成される窒化物半導体薄膜積層体の実施形態について説明する。
【0124】
Si基板21を用いて窒化物薄膜を形成したが、ゲルマニウム、シリコンカーバイト、ガリウム砒素、ガリウム燐、インジウム燐、セレン化亜鉛、硫化カドミウム、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、サファイア、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、のいずれかの単結晶基板を用いてもよい。また、Si基板21は、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、のいずれかを原料として形成してもよい。
【0125】
単結晶基板上に堆積した様々な組成のAlGaInN薄膜の多層膜であり、基板と薄膜界面の炭素および酸素不純物濃度が1×1017cm-3以下である。
【0126】
単結晶基板上に堆積した様々な組成のAlGaInN薄膜の多層膜。基板と薄膜界面の炭素および酸素不純物濃度が1×1017cm-3以下である。AlGaInN薄膜の多層膜の少なくとも一層が単結晶である。薄膜堆積前にクリーニング処理を施してもよい。薄膜堆積前に表面処理を施してもよい。また、薄膜堆積前にエッチング処理を施してもよい。また、薄膜堆積前にバッファ層を形成してもよい。バッファ層が有る場合は、バッファ層を含み、基板と薄膜界面の炭素および酸素不純物濃度が1×1017cm-3以下である。
【0127】
単結晶基板上に堆積した様々な組成のAlGaInN薄膜の多層膜。基板と薄膜界面の炭素および酸素不純物濃度が1×1017cm-3以下である。AlGaInN薄膜の多層膜の少なくとも一層が多結晶である。薄膜堆積前にクリーニング処理を施してもよい。薄膜堆積前に表面処理を施してもよい。また、薄膜堆積前にエッチング処理を施してもよい。また、薄膜堆積前にバッファ層を形成してもよい。バッファ層が有る場合は、バッファ層を含み、基板と薄膜界面の炭素および酸素不純物濃度が1×1017cm-3以下である。
【0128】
単結晶基板上に堆積した様々な組成のAlGaInN薄膜の多層膜。基板と薄膜界面の炭素および酸素不純物濃度が1×1017cm-3以下である。AlGaInN薄膜の多層膜の少なくとも一層がアモルファスである。薄膜堆積前にクリーニング処理を施してもよい。薄膜堆積前に表面処理を施してもよい。また、薄膜堆積前にエッチング処理を施してもよい。また、薄膜堆積前にバッファ層を形成してもよい。バッファ層が有る場合は、バッファ層を含み、基板と薄膜界面の炭素および酸素不純物濃度が1×1017cm-3以下である。
【0129】
単結晶基板上に堆積した様々な組成のAlGaInN薄膜の多層膜。基板と薄膜界面の炭素および酸素不純物濃度が1×1017cm-3以下である。AlGaInN薄膜の多層膜の少なくとも一層が立方晶である。薄膜堆積前にクリーニング処理を施してもよい。薄膜堆積前に表面処理を施してもよい。また、薄膜堆積前にエッチング処理を施してもよい。また、薄膜堆積前にバッファ層を形成してもよい。バッファ層が有る場合は、バッファ層を含み、基板と薄膜界面の炭素および酸素不純物濃度が1×1017cm-3以下である。
【0130】
単結晶基板上に堆積した様々な組成のAlGaInN薄膜の多層膜。基板と薄膜界面の炭素および酸素不純物濃度が1×1017cm-3以下である。AlGaInN薄膜の多層膜の少なくとも一層が六方晶である。薄膜堆積前にクリーニング処理を施してもよい。薄膜堆積前に表面処理を施してもよい。また、薄膜堆積前にエッチング処理を施してもよい。また、薄膜堆積前にバッファ層を形成してもよい。バッファ層が有る場合は、バッファ層を含み、基板と薄膜界面の炭素および酸素不純物濃度が1×1017cm-3以下である。
【0131】
(実施形態11)
次に実施形態11について説明する。実施形態11では、電子デバイスエピについて説明する。GaN基板、または、GaNエピタキシャル層上に電子デバイスを作製するための実施形態について説明する。
【0132】
ここでは、プレーナ型のFETを作製する構成を説明する。サファイア基板上に高抵抗GaNエピタキシャル層を予め形成しておき、テンプレート基板とする。
【0133】
高抵抗GaN層は高純度で厚さが1〜3μm程度が望ましい。サファイア上のGaN層に替え、GaN基板を使用することもできる。
【0134】
実施形態11では、GaN基板層とこの層状に実施形態1ないしは2で形成される高純度GaN層との界面には、実施形態6−1のクリーニング法を適用することで、不純物が残留しない。GaN基板はドライエッチングなどの手法で加工されていてもよい。この場合には、実施形態6−4のエッチング法を適用することでダメージ層が取り除かれている。この実施形態の基板と成長層の界面をSIMSで測定すると、界面の領域において検出される酸素および炭素不純物量は、1×1017cm-3以下となる。この界面上に高品質のSiドープn型GaN層が実施形態6−3の方法で0.1μm形成されており、電子走行層となる。アンドープGaN層を0.1μm形成し、さらにアンドープAlGaN層を20〜30nm連続積層することにより、分極効果による2次元電子を発生させて、これをキャリアとするHEMTの構成としてもよい。この場合、AlGaN層のAlNモル組成は、0.2〜0.3に設定される。
【0135】
(実施形態12)
次に実施形態12について説明する。実施形態12では、SIN膜を表面保護膜として実施形態3の装置を用いて形成された有機EL素子の構成を述べる。
【0136】
有機EL素子を構成する材料は、この実施形態(図26)では、厚さ0.5mmのアクリル系透明フィルム上にEL素子が形成されている。この他にも基板は、ガラスやシリコン、ポリイミド、ポリフタレートなどのプラスチックフィルムが使用可能である。まず、陽極のアルミニウムが0.2μm真空蒸着で基板上に形成され、この上層に電子輸送層、発光層、正孔輸送層の有機フィルムが順次、一般の蒸着やコーティング法で堆積されている。発光層は、発光色の選択にあわせて適宜えらばれる。可視域の発光特性を有する一般の蛍光系や燐光系の発光ポリマーが利用可能である。正孔輸送層の上層に、酸化インジウム錫(ITO)が形成されている。酸化亜鉛系の陽極でもよい。実施形態12では、予めITO膜まで形成ずみの有機EL素子の最上層に保護膜として0.1μmのSiN膜が積層されている。陽極、陰極からの配線引き出しも予め作製しておいてもよい。本発明の製法を用いると堆積時に基板温度を150℃以下の設定とできるため、フィルムの縮みや熱膨張率の差による反りがないSiN保護膜つき有機EL素子が構成されている。反りの大きさは、素子サイズ10cm角に対し、曲率半径100cm以上とほぼ平坦であった(図27)。素子中央のへこみ量は約25μm以下とすることができる。このため、ガラス基板などを使わなくても薄い自立型の表示素子を構成できる。これに加えて、従来は、パッシベーション膜の堆積時に高温にする必要があり、有機ELフィルムに凹凸が発生したり、素子抵抗が増大する不具合があった。実施形態12では、フィルムに実施例6−3の堆積に先立ち、実施例6−2の表面処理が実施されており、SiN膜の密着性が向上している。SiN膜の組成は、化学量論組成に対しややSiリッチのSi/N比の0.75〜0.9の組成とする。SiN膜の厚さは、0.05〜0.5μmで保護膜としの効果が得られる。この構成による有機EL素子は、緻密なSiNが保護膜となり、大気中からの水分などの浸入を防ぐため、長時間の使用に耐える有機EL素子ができる。
【0137】
(実施例1)
具体的な窒化物薄膜製造装置について説明する。反応室を所定の圧力に減圧するための真空ポンプとして、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプ、ターボ分子ポンプおよびロータリーポンプを有している。イオンポンプおよびチタンサブリメーションポンプは原料ガスを流す前に真空度向上のために利用する。
【0138】
反応室内には、基板を保持するための基板ホルダを配置しており、ホルダには所望の温度に基板を加熱するためのヒータおよび冷却パイプを有している。基板温度のモニタは設置している熱電対を使用したり、基板からの熱輻射をパイロメータで観測する。また、基板ホルダには回転機構を有しており、薄膜堆積中に回転することが可能である。基板は、モリブデンで形成された基板保持具に取り付けられ、反応室内まで搬送し、基板ホルダに固定する。
【0139】
反応室の側壁、原料ガスセル周辺およびチタンポンプ付近にシュラウドを配置しており、液体窒素を流し、冷却することにより、放出ガスを吸着することにより、反応室内を高真空に保つことができる。この中で反応室の側壁に設けたシュラウドにより、未分解の導入したNH3を吸着し、反応室内を滞留させないことができる。
【0140】
反応室内には、窒素原料ガスであるNH3を導入するガス導入管とガス導入管の開口部とほぼ一致した部分に配置され、導入したNH3を解離する純度99.999%のタングステンから成る触媒体が設置されている。触媒体は銀コートされた銅で形成された導線に接続しており、本薄膜堆積装置の外部に設置した加熱電源を用いて、通電により所望の温度に設定する。
【0141】
基板と触媒体との距離は10cmである。窒素ガス原料であるアンモニア(NH3)は、シリンダキャビネットに保管されたボンベより圧力制御装置で適当な圧力に調整されて、流量制御計(MFC)を介して、所望の流量を反応室に導入される。
【0142】
金属原料としては、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、アルミニウム(Al)が、ドーパント原料としては、シリコン(Si)、マグネシウム(Mg)、ベリリウム(Be)がそれぞれ加熱して分子線として放出するクヌーセンセルを反応室に有している。
また、反応室には、基板や堆積された薄膜の状態を堆積中にその場で観察できる反射高速電子線回折用電子銃(RHEED)およびスクリーン、チャンバ内の残留ガスを検出できる4重極質量分析計(QMS)とを有している。
【0143】
(実施例2)
具体的な窒化物薄膜の製造方法について、図28および図29を参照して説明する。図28は、Si基板上にGaN薄膜堆積の工程図である。図28に示すように、Si基板を800℃に加熱し、30分間保持する。この結果Si基板表面が清浄化される。
【0144】
ここで、Si基板を300℃でNH3を100sccm導入し、加熱触媒体温度を1700℃で10分間保持することにより、同様にSi基板表面が清浄化される。Si基板表面の清浄化工程の後、窒化処理を行ってもよい。窒化処理により、Si基板上に立方晶構造を有するGaN薄膜の堆積が可能になる。
【0145】
その後、Si基板を500℃に降温し、NH3を100sccm導入し、加熱触媒体温度を1200℃として、クヌーセンセルを加熱して、Gaフラックス量を5×10-8Torrにし、1時間保持する。なお、この時のチャンバ内の圧力は、1×10-5Torr程度であり、GaN薄膜の成長速度は、0.1μm/hr程度である。
【0146】
ここで、GaN薄膜堆積には、触媒体温度は1200℃以下で行ってもよい。また、アンモニアと触媒体による窒素供給を用いる代わりに、窒素プラズマガンにより窒素を供給してもよい。
【0147】
この薄膜堆積により、膜厚100nmのGaNがSi基板上に形成され、このGaN薄膜に対してX線回折(XRD)分析とフォトルミネッセンス(PL)分析とを行った。図24は、Si基板上のGaN薄膜のXRD結果を示す。図24に示すように、GaN薄膜が六方晶(ウルツァイト)のGaN薄膜が堆積されていることが分かる。
【0148】
また、図25は、Si基板上のPL結果を示す。図25に示すように、波長385nm付近に青色の強いピークが観測されるとともに、不純物による発光(Yellow Band)が観測されず、高品質のGaN薄膜が堆積されていることが分かる。
【0149】
基板として、シリコンに限らず、ゲルマニウム、ガリウム砒素、インジウム燐、セレン化亜鉛、硫化カドミウム、硫化亜鉛、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、の単結晶を用いた場合も同様なGaN薄膜堆積が可能である。
【0150】
堆積する薄膜として、金属原料をAlまたはInまたはGaを少なくとも1種類用いることによりGaN以外の2元(AlN,InN)、3元(AlGaN,AlInN,InGaN)、4元(AlInGaN)のいずれかの単層膜もしくはその多層膜も堆積可能である。
【0151】
(実施例3)
図29は、Si基板上にInGaN SQW(Single Quantum Well 単一量子井戸)構造を堆積する工程図である。前記の窒化物半導体装置を用いて実施した。図29に示すように、基板温度を300℃まで加熱し、NH3を100sccm導入して、タングステン触媒体温度を1700℃で、30分間保持し、表面の清浄化を行う。
【0152】
この際に、基板温度を800℃まで上げて30分保持することによりサーマルクリーニングを用いてもよい。表面の清浄化の後、温度制御を行い、基板温度を800℃まで加熱し、基板温度が800℃に保持された時点でNH3を100sccm導入して、10分間保持することにより、基板表面を窒化してもよい。
【0153】
基板温度を550℃まで加熱する。基板が550℃に保持された時点で、予めクヌーセンセルを加熱してフラックス量を5×10-8TorrにしていたAlセルのシャッタを開け、Alを基板に照射し、10分間保持する。この結果、基板にAlNバッファ層が10nm程度堆積される。
【0154】
バッファ層が堆積された後、温度制御を行い、基板温度を800℃にする。基板温度が800℃に保持された時点で、予めクヌーセンセルを加熱してフラックス量を1×10-7TorrにしておいたGaセルのシャッタを開け、Gaを基板に照射し、30分間保持する。この結果、GaN薄膜が100nm程度積層される。
【0155】
GaN薄膜が積層された後、温度制御を行い、基板温度を550℃にする。基板温度が550℃に保持された時点でInとGaが装填されたクヌーセンセルのシャッタを開け、InとGaを基板に照射し、15分間保持する。この際のInフラックス量は5×10-8Torr、Gaフラックス量は5×10-8Torrである。この結果、In組成が5%のInGaN薄膜が20nm程度積層される。
【0156】
InGaN薄膜が積層された後、温度制御を行い、基板温度を800℃に加熱する。基板温度が800℃に保持された時点で、予めクヌーセンセルを加熱してフラックス量を1×10-7TorrにしておいたGaセルのシャッタを開け、Gaを基板に照射し、15分間保持する。この結果、GaN薄膜が50nm積層される。
【0157】
GaN薄膜が積層された後、Gaが装填されたクヌーセンセルのシャッタを閉じ、NH3を停止し、基板加熱を停止し、基板を室温に戻す。この結果、基板上にGaN/InGaN/GaN積層膜が堆積される。
【0158】
積層された積層膜をX線回折とフォトルミネッセンス分析を行った。図30は、Si基板上のInGaN SQW構造の積層膜のXRD結果を示す。図30に示すように、六方晶のGaN薄膜とIn組成5%のInGaN薄膜が堆積されているのが分かった。
【0159】
また、図31は、Si基板上のInGaN SQW構造の積層膜のフォトルミネッセンス結果を示す。図31に示すように、380nm付近にGaNと400nm付近にInGaNからの発光が観測された。また、不純物による発光(Yellow Band)が観測されず、高品質のGaN薄膜が堆積されていることが分かる。
【0160】
堆積された薄膜を二次イオン質量分析(SIMS)により、分析したところ、AlNバッファ層を含む堆積した薄膜と基板の界面付近に存在する炭素および酸素濃度が1×1017cm-3以下であることが分かった。
【0161】
前記InGaN SQW構造の積層膜堆積において、触媒体温度は2000℃以下で行ってもよい。また、アンモニアと触媒体による窒素供給を用いる代わりに、窒素プラズマガンにより窒素を供給してもよい。
【0162】
前記InGaN SQW構造の積層膜において、基板にn型Si導電性基板を用いて、下層のGaN薄膜にn型ドーピングし、上層のGaN薄膜にp型ドーピングした窒化物薄膜に基板下部と積層体上部の上下部に電極(Ni/Au)を真空蒸着法により蒸着することによりオーミック性コンタクトを形成し、発光デバイスが実現できる。
【0163】
前記InGaN SQW構造の積層膜において、基板にp型Si導電性基板を用いて、下層のGaN薄膜にp型ドーピングし、上層のGaN薄膜にn型ドーピングした窒化物薄膜に基板下部と積層体上部の上下部に電極(Ni/Au)を真空蒸着法により蒸着することによりオーミック性コンタクトを形成し、発光デバイスが実現できる。
【0164】
前記InGaN SQW構造の積層膜において、量子井戸構造の井戸層と障壁層は、金属原料をAlまたはInまたはGaを少なくとも1種類用いることにより、2元(GaN,AlN,InN)、3元(AlGaN,AlInN,InGaN)、4元(AlInGaN)のいずれかの組み合わせた窒化物半導体から構成され、MQW構造(Multi Quntum Well 多重量子井戸)であってもよい。
【0165】
(実施例4)
有機フィルム上にSiN薄膜製造装置を説明する。反応室を所定の圧力に減圧するための真空ポンプとして、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプ、ターボ分子ポンプおよびロータリーポンプを有している。イオンポンプおよびチタンサブリメーションポンプは原料ガスを流す前に真空度向上のために利用する。
【0166】
反応室内には、基板を保持するための基板ホルダを配置しており、ホルダには所望の温度に基板を加熱するためのヒータおよび冷却パイプを有している。基板温度のモニタは設置している熱電対を使用したり、基板からの熱輻射をパイロメータで観測する。また、基板ホルダには回転機構を有しており、薄膜堆積中に回転することが可能である。基板は、モリブデンで形成された基板保持具に取り付けられ、反応室内まで搬送し、基板ホルダに固定する。
【0167】
反応室の側壁、原料ガスセル周辺およびチタンポンプ付近にシュラウドを配置しており、液体窒素を流し、冷却することにより、放出ガスを吸着することにより、反応室内を高真空に保つことができる。この中で反応室の側壁に設けたシュラウドにより、未分解の導入したNH3を吸着し、反応室内を滞留させないことができる。
【0168】
反応室内には、窒素原料ガスであるNH3とシリコン原料ガスであるSiH4を導入する2つのガス導入管と、それぞれのガス導入管に、ガス導入管の開口部とほぼ一致した部分に配置され、導入したNH3を解離する純度99.999%のタングステンから成る触媒体が設置されている。触媒体は銀コートされた銅で形成された導線に接続しており、本薄膜堆積装置の外部に設置した加熱電源を用いて、通電により所望の温度に設定する。基板と触媒体との距離は10cmである。
【0169】
窒素ガス原料であるアンモニア(NH3)は、シリンダキャビネットに保管されたボンベより圧力制御装置で適当な圧力に調整されて、流量制御計(MFC)を介して、所望の流量を反応室に導入される。
【0170】
シリコン原料であるシラン(SiH4)は、シリンダキャビネットに保管されたボンベより圧力制御装置で適当な圧力に調整されて、流量制御計(MFC)を介して、所望の流量を反応室に導入される。
【0171】
また、反応室には、基板や堆積された薄膜の状態を堆積中にその場で観察できる反射高速電子線回折用電子銃(RHEED)およびスクリーン、チャンバ内の残留ガスを検出できる4重極質量分析計(QMS)とを有している。
【0172】
(実施例5)
有機フィルム上にSiN薄膜製造方法を説明する。初めに有機フィルム基板を150℃まで加熱する。その際、温度制御には、ヒータと水冷を用いている。150℃に保持された時点で、タングステン触媒体温度を1700℃に過熱した状態で、NH3を20sccm導入して、10分間保持し、表面クリーニング処理を行う。SiH4とNH3はそれぞれ別々の開口部にタングステン触媒体を有するガス導入部が設けられており、基板が150℃に保持された時点で、SiH4を10sccm、NH3を100sccmそれぞれ導入して、NH3を導入するガス導入部の開口部のタングステン触媒体温度を1200℃程度に加熱し、SiH4を導入するガス導入部の開口部のタングステン触媒体温度を1700℃に加熱した状態でSiH4を導入し、NH3とSiH4をそれぞれ分解する。反応室内の圧力は、1×10-5Torr程度である。これら加熱触媒体で分解された分解種を有機フィルム基板上に照射させることにより、SiN薄膜を100nm堆積させた。
【0173】
堆積させた薄膜は、平坦性に優れていて、反りが1mm以下であることが分かった。また、外部からの水分を防げることや表面のひっかき強度が強いことから、幅広い応用例がある。
【0174】
前記の有機フィルムとして、保護膜の堆積前に予め電極および配線の配設が行われた有機EL素子が形成されているフィルムを用いることにより、堆積した薄膜は、有機EL素子のガスバリア保護膜として用いられる。
【0175】
(実施例6)
基板表面の清浄化工程についての変形例を以下に説明する。Si基板を前処理としてフッ酸処理を行い、Si基板表面を水素で終端化したものを、チャンバ内に導入した。Si基板を300℃程度まで加熱し、300℃に保持された時点で、NH3を100sccm導入して、タングステン触媒体温度を1700℃にして、10分間保持する。これにより、表面が清浄化されてRHEEDでストリークパターンになることが分かった。基板温度は300℃以上でもよい。また、触媒体温度は1200℃以上、2000℃以下でよい。ガスは、水素、ヒドラジンまたはアジ化水素でもよい。
【0176】
基板は、シリコンに限らず、ゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウム燐、インジウム燐、セレン化亜鉛、硫化カドミウム、硫化亜鉛、チッ化ガリウム、チッ化アルミニウム、の単結晶でもよい。各々の基板は、チャンバ内に導入する前に所望の有機洗浄およびウェットエッチングによる前処理を施すのが望ましい。
【0177】
(実施例7)
基板表面の窒化処理工程についての変形例を以下に説明する。Si基板を前処理としてフッ酸処理を行い、Si基板表面を水素で終端化したものを、チャンバ内に導入した。Si基板を加熱していくと、Si基板表面の水素が除去されてRHEEDパターンがストリークになる。800℃程度まで加熱し、30分間程度保持した後に、800℃に保持された時点で、NH3を100sccm導入して、30分間保持する。これにより、Si基板表面が窒化されてハローパターンになることが、RHEED観察により分かった。基板温度は、800℃以下でもよい。基板は、シリコンに限らず、ガリウム砒素、ガリウム燐、インジウム燐、セレン化亜鉛、硫化カドミウム、硫化亜鉛、チッ化ガリウム、チッ化アルミニウム、の単結晶でもよい。各々の基板は、チャンバ内に導入する前に所望の有機洗浄およびウェットエッチングによる前処理を施すのが望ましい。
【0178】
(実施例8)
窒化物薄膜のエッチング工程についての変形例を以下に説明する。Si基板上GaN薄膜を基板温度550℃まで加熱し、550℃に保持された時点で、NH3を100sccm導入して、加熱触媒体温度を1700℃にして1時間保持する。これにより、100nm程度GaN薄膜をエッチングした。触媒体温度は1700℃以上、2000℃以下でもよい。基板は、シリコンに限らず、ガリウム砒素、ガリウム燐、インジウム燐、セレン化亜鉛、硫化カドミウム、硫化亜鉛、チッ化ガリウム、チッ化アルミニウム、の単結晶でもよい。また、堆積膜もAlまたはInまたはGaまたはこれらの組み合わせを含む窒化物薄膜およびこれらの多層膜でもよい。
【符号の説明】
【0179】
1,1A,2,3,4,5 薄膜製造装置
10,10A,10B,10C,10D,10E 触媒体
11a,11b 導線
12 加熱電源
13,13a,13b,13c ガス導入管
13A ガス導入室
14a,14b,32a,32b,32c バルブ
15 MFC
16,31 ボンベ
17,17A,17B チャンバ
18 真空ポンプ
19,19B 基板ホルダ
19A フィルムホルダ
20,20A,20B ヒータ
21 Si基板
21B,21C,21E,21F 基板
21D 有機フィルム
22 輻射熱遮蔽板
22a,22b,22c クヌーセンセル
23 QMS
24 RHEED
25 スクリーン
27a,27b 回転ローラ
28 誘導コイル
29 電源
29a,29b,29c バブラ
30a,30b,30c 有機金属原料
33 有機金属ガス原料発生部
81 冷媒供給パイプ
82 シュラウド
83 ガス導入口
84 ベローズ
85 ガイド
86 ネジ
87 ハンドル
130 ガス分散板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
減圧下の反応室内で基板上に薄膜を気相堆積させる薄膜製造装置に設けられ、前記薄膜の原料となる1種類または複数種類の原料ガスを分解して該原料ガスの分解種を生成する原料ガス分解機構であって、
前記反応室に連通される開口部を有し、該開口部を介して前記反応室に前記原料ガスを導入する1つまたは複数の原料ガス導入手段と、
前記開口部での反応室側の開口面よりも前記基板側に変位した状態で、かつ前記開口部に近接した状態で配置される原料ガス分解用の触媒体と、
前記触媒体に通電することで該触媒体を昇温させる触媒体加熱手段と、
を備えることを特徴とする原料ガス分解機構。
【請求項2】
前記触媒体は、高融点金属、高融点金属化合物、薄膜構成原料と高融点材料との複合体のいずれかを原料とすることを特徴とする請求項1に記載の原料ガス分解機構。
【請求項3】
前記触媒体は、純度99.99%以上のタングステン(W)であることを特徴とする請求項1に記載の原料ガス分解機構。
【請求項4】
前記触媒体は、コイル状、ワイヤ状、網状、リング状、シート状、またはこれらの形状を組合わせた形状を呈することを特徴とする請求項1に記載の原料ガス分解機構。
【請求項5】
前記原料ガス導入手段は、前記開口面の面積を可変する開口面積可変手段を有することを特徴とする請求項1に記載の原料ガス分解機構。
【請求項6】
前記原料ガス導入手段は、前記基板との距離を可変にする可変手段を有することを特徴とする請求項1に記載の原料ガス分解機構。
【請求項7】
前記原料ガス導入手段は、前記開口面よりも内側にガス分散板を有することを特徴とする請求項1に記載の原料ガス分解機構。
【請求項8】
減圧下の反応室内で基板上に薄膜を気相堆積させるにあたって、前記薄膜の原料となる1種類または複数種類の原料ガスを原料ガス分解機構によって分解して前記原料ガスの分解種を生成する薄膜製造装置であって、
前記原料ガス分解機構は、
前記反応室に連通される開口部を有し、該開口部を介して前記反応室に前記原料ガスを導入する1つまたは複数の原料ガス導入手段と、
前記開口部での反応室側の開口面よりも前記基板側に変位した状態で、かつ前記開口部に近接した状態で配置される原料ガス分解用の触媒体と、
前記触媒体に通電することで該触媒体を昇温させる触媒体加熱手段と、
を備えることを特徴とする薄膜製造装置。
【請求項9】
前記触媒体は、該触媒体と前記基板との距離が1cm以上10cm以下となるように配置されることを特徴とする請求項8に記載の薄膜製造装置。
【請求項10】
金属を加熱し、該金属を分子線として前記基板に照射する金属原料導入手段を更に備えることを特徴とする請求項8に記載の薄膜製造装置。
【請求項11】
前記触媒体と前記基板との間に輻射熱遮蔽板を更に備えることを特徴とする請求項8に記載の薄膜製造装置。
【請求項12】
減圧下の反応室内で基板上に薄膜を気相堆積させる薄膜製造方法であって、
前記薄膜の原料となる1種類または複数種類の原料ガスを請求項1に記載の原料ガス分解機構によって分解して該原料ガスの分解種を生成する工程を含むことを特徴とする薄膜製造方法。
【請求項13】
前記薄膜の気相堆積前に、前記原料ガス分解機構によって所定の原料ガスの分解種を生成し、該分解種によって前記基板の表面を清浄化する工程を更に含むことを特徴とする請求項12に記載の薄膜製造方法。
【請求項14】
前記原料ガス分解機構によって所定の原料ガスの分解種を生成し、該分解種によって前記基板の表面または前記薄膜の表面をエッチング処理する工程を更に含むことを特徴とする請求項12に記載の薄膜製造方法。
【請求項15】
基板上に積層された複数の薄膜を有し、該複数の薄膜は、請求項12に記載の薄膜製造方法によって製造された薄膜を少なくとも一つ含むことを特徴とする薄膜積層体。
【請求項16】
前記基板と該基板に接する薄膜との界面での炭素不純物濃度が1×1017cm-3以下、酸素不純物濃度が1×1017cm-3以下であることを特徴とする請求項15に記載の薄膜積層体。
【請求項17】
前記基板は有機フィルムであることを特徴とする請求項15に記載の薄膜積層体。
【請求項18】
前記請求項12に記載の薄膜製造方法によって製造された薄膜は、前記基板上に形成された有機EL素子を覆う保護膜であることを特徴とする請求項15に記載の薄膜積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2011−40771(P2011−40771A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216015(P2010−216015)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【分割の表示】特願2005−93948(P2005−93948)の分割
【原出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】