説明

双方向フォトサイリスタチップ、光点弧カプラ、および、ソリッドステートリレー

【課題】転流特性の向上を図る。
【解決手段】 双方向フォトサイリスタチップ31の2つの動作チャンネルCH1,CH2が、交差しないように、互いに分離して配置されている。そして、N型シリコン基板上における左側のPゲート拡散領域23と右側のPゲート拡散領域23'との間であって、CH1とCH2との間に、リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜35aでなるチャネル分離領域29が形成されている。したがって、上記N型シリコン基板の表面におけるチャネル分離領域29近傍のシリコン界面準位(Qss)が増大し、N型シリコン基板内の少数キャリアである正孔が上記領域において消滅する。その結果、CH1がオフした時点でCH2側に逆位相の電圧が印加された場合に光入射が無いにも拘わらずCH2がオンする転流失敗を防止することができ、転流特性を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、双方向フォトサイリスタチップ、それを用いた点弧型カプラ、および、その点弧型カプラを用いたソリッドステートリレー(以下、SSRと略称する)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、図35〜図37に示すような構造の双方向フォトサイリスタがある。尚、図35は平面図であり、図36は図35におけるA‐A'矢視断面図であり、図37は等価回路図である。この双方向フォトサイリスタ4は、例えばN型シリコン基板1の上に形成された、CH(チャネル)1のフォトサイリスタとCH2のフォトサイリスタとで構成されている。このような双方向サイリスタ4は、光照射によってゲートトリガ信号を与えてSSRのオン・オフを制御する光点弧カプラ用として広く用いられている。
【0003】
尚、5,5'はアノード拡散領域(P型)、6,6'はPゲート拡散領域(P型)、7,7'はカソード拡散領域(N型)、8,8'はゲート抵抗、9,9'はAl電極、10はAl配線である。尚、電極T2は、Al電極9直上に形成されて、Al電極9を介してアノード拡散領域5およびカソード拡散領域7と接続されている。同様に、電極T1は、Al電極9'直上に形成されて、Al電極9'を介してアノード拡散領域5'およびカソード拡散領域7'と接続されている。そして、図中右側のアノード拡散領域5'から左側のカソード拡散領域7に向かって、図37におけるCH1のフォトサイリスタ2を構成するPNPN部が形成されている。また、図中左側のアノード拡散領域5から右側のカソード拡散領域7'に向かって、CH2のフォトサイリスタ3を構成するPNPN部が形成されている。
【0004】
図36は、本双方向フォトサイリスタにおけるパシベーション構造を示すN型シリコン基板1の断面図である。N型シリコン基板1上におけるAl配線10の左側のカソード拡散領域7上からAl配線10の右側のアノード拡散領域5'上にかけてSiO2膜15を形成している。さらに、このSiO2膜15上に酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜16を形成し、酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜16上にSiN膜17を化学気相成長法によって形成する。そして、上記左側においては、SiN膜17上からPゲート拡散領域6上にかけてAl電極9を形成して、電極T2に接続する。一方、上記右側においては、SiN膜17上からアノード拡散領域5'上にかけてAl電極9'を形成して、上記電極T1に接続する。さらに、SiN膜17上に、図35に示すように、本双方向フォトサイリスタの図中左側と右側とを分離するAl配線10を全幅に亙って形成し、N型シリコン基板1に接続している。こうして、酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜16の両端と中央とをAl電極9,9',10に接触させ、Al電極9,9'とAl電極10との間に電位勾配を形成してSi‐SiO2界面の電界集中を緩和する。こうして、高耐圧化が有利に行えるフィールドプレート構造としている。尚、18はN+層であり、19は空乏層である。
【0005】
一般的に、交流で使用する光点弧型カプラは以下のように動作する。すなわち、図37において、電極T1‐電極T2間に素子のオン電圧(約1.5V)よりも高い交流電圧がバイアスされている条件下で、先ず、電極T1側が電極T2側よりも正電位にある場合は、LED(発光ダイオード)(図示せず)からの光信号を双方向フォトサイリスタ4が受光すると、CH1側のNPNトランジスタQ2がオン状態となる。そうすると、CH1側のPNPトランジスタQ1のベース電流が引き出されることになり、このPNPトランジスタQ1がオンする。続いて、PNPトランジスタQ1のコレクタ電流によってCH1側のNPNトランジスタQ2にベース電流が供給され、正帰還によってCH1側のPNPN部がオンして、上記電極T1から電極T2へ交流回路の負荷に応じたオン電流が流れる。その場合、CH2側では、バイアス印加の向きが逆であるからPNPN部の正帰還が起こらず、1次光電流のみが流れる。次の半サイクルで、上記電極T2側が電極T1側よりも正電位にある場合には、CH2側のPNPN部が、上述の場合と全く同様に正帰還動作してオンし、CH1側では1次光電流のみが流れる。
【0006】
こうして、上記双方向フォトサイリスタ4は、上記LEDから光が継続的に照射されている場合にはオンする。一方、上記LEDから光がない場合には保持電流値(IHと称す)でオフする。こうして、スイッチの機能を果たすのである。尚、上述したような光点弧カプラに用いられる双方向フォトサイリスタに関する先行技術文献としては、例えば、特開平10‐242449号公報(特許文献1)等がある。
【0007】
しかしながら、上記従来双方向フォトサイリスタには、以下のような問題がある。すなわち、光感度を上げて高感度化すると、相反する耐ノイズ特性である転流特性とdv/dt特性とが低下する。つまり、転流特性およびdv/dt特性と光感度とは所謂トレードオフの関係があり、これが双方向フォトサイリスタの性能上最も重要な設計課題となっている。ここで、dv/dt特性とは「臨界オフ電圧上昇率」のことであり、双方向フォトサイリスタがディバイスとして正常に機能するためには1000V/μs以上の臨界オフ電圧上昇率が必要である。
【0008】
尚、上記高感度化は、使用機器から見た場合、少ない電流で制御することが出来るために、低消費電力化のメリットやマイコン等からダイレクト駆動できるメリット等があり、ユーザから強く要望される重要な特性である。
【0009】
ここで、上記転流特性について説明する。転流特性とは、正常動作の場合においては、図38(図35におけるA‐A'を含む全体の縦断面図)に示すように、CH1がオンしている交流の半サイクル期間中に光入射が無くなった場合は、この半サイクル期間中は上記PNPN部の電流保持特性によってオン状態が継続する。そして、図39(図35におけるアノード拡散領域5およびカソード拡散領域7'を含む全体の縦断面図)に示すごとく、次の半サイクルに移行すると、光入射が無い限りCH2はオンしない。しかしながら、スイッチングする交流回路にL負荷が存在する場合には、電極T1‐電極T2間に印加される交流電圧の位相よりもオン電圧の位相が遅れるため、CH1がオフする時点においては既に電極T1‐電極T2間には逆位相の交流電圧が印加されている。したがって、CH1がオフした時点でCH2側に急峻な立ち上がりを示す逆位相の電圧が印加されることになる。
【0010】
そのために、上記双方向フォトサイリスタ4のN型シリコン基板1中に残存している正孔11が、消滅する前に矢印(A)に示すようにフォトサイリスタ3側のPゲート拡散領域6'へ移動して、光入射が無いにも拘わらずCH2側のNPNトランジスタQ4をオンすると共にCH2側の正帰還作用を促して、CH2がオンするという誤動作(転流失敗)を招くのである。
【0011】
つまり、上記「転流特性」とは、上述したような転流失敗を起こさずに制御可能な最大の動作電流値Icomを表す特性なのである。そして、高感度化する程に、この転流特性が低下するというトレードオフの相関があり、この転流特性を如何に向上させるかが、高感度化の上での課題となる。
【0012】
ところで、上記転流失敗を防止する場合には、N型シリコン基板1中に残存している正孔11が、フォトサイリスタ2側からフォトサイリスタ3側のPゲート拡散領域6'へ移動するのを抑制すれば良い。ところが、図35〜図37に示すような構造を有する従来の双方向フォトサイリスタ4では、上述したように、そのパシベーション構造は、図36に示すように、Al電極9,9'とAl電極10との間に電位勾配を形成してSi‐SiO2界面の電界集中を緩和して、高耐圧化が有利に行えるフィールドプレート構造になっている。しかしながら、このような構造は、転流特性の改善とは直接関係はなく、フォトサイリスタ2側で生成されてN型シリコン基板1中に残存している正孔11が、フォトサイリスタ3側のPゲート拡散領域6'へ移動するのを抑制することはできないのである。
【0013】
次に、上記臨界オフ電圧上昇率dv/dt特性について説明する。アノード拡散領域5,5'とカソード拡散領域7,7'との間に急激な立ち上がりの電圧パルスが印加されると、光信号が無くても双方向フォトサイリスタ4がオンしてしまう誤動作が生じる。この理由は、本来光信号を受けるべきPゲート拡散領域6,6'に変位電流が流れ込み、これがトリガ電流として作用するためである。このような誤動作は、特に高温状態で生じる。つまり、上記誤動作が生じない最大の電圧上昇率が臨界オフ電圧上昇率dv/dtである。そして、この臨界オフ電圧上昇率dv/dt特性も高感度化する程低下するというトレードオフの相関がある。すなわち、このdv/dt特性を如何に向上させるかも、高感度化の上での課題となる。
【特許文献1】特開平10‐242449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、この発明の課題は、光感度と、この光感度とトレードオフの関係を有する転流特性および臨界オフ電圧上昇率dv/dt特性と、の向上を図ることができる双方向フォトサイリスタチップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、この発明の双方向フォトサイリスタチップは、
第1導電型の基板と、
上記第1導電型の基板の表面に設けられると共に、第2導電型の第1拡散層と、上記第2導電型の第2拡散層と、この第2拡散層内に形成された上記第1導電型の第3拡散層と、を含む一対のフォトサイリスタ部と
を備え、
上記一対のフォトサイリスタ部のうちの一方は上記半導体チップにおける一側に配置される一方、他方は上記半導体チップにおける他側に配置されており、
上記一方のフォトサイリスタ部を構成する上記第1拡散層は、上記他方のフォトサイリスタ部を構成する上記第2拡散層および第3拡散層と対向しており、
上記他方のフォトサイリスタ部を構成する上記第1拡散層は、上記一方のフォトサイリスタ部を構成する上記第2拡散層および第3拡散層と対向しており、
上記一対のフォトサイリスタ部間に発生する2つのチャネルは、互いに交差することなく平行であり、
上記基板上における上記一対のフォトサイリスタ部を構成する2つの上記第2拡散層の間に形成されて、キャリアの移動を抑制するキャリア移動抑制領域を
備え、
1つの半導体チップであることを特徴としている。
【0016】
上記構成によれば、印加される交流電圧の半サイクルにおいて、上記対を成す2つのチャネルのうちの一方が光信号によってオンした際に上記基板中に発生して残存していたキャリアの移動が、上記2つのフォトサイリスタ部を構成する2つの第2拡散層の間に形成されたキャリア移動抑制領域によって抑制される。その結果、次の半サイクルにおいて、上記基板中の残存キャリアが他方のチャネルを構成するフォトサイリスタ部の上記第2拡散層に移動して、光入射が無いにも拘わらず上記他方のチャネルがオンしてしまうことが防止される。したがって、転流失敗による誤動作を減少でき、転流特性が改善される。
【0017】
ここで、上記第1導電型および第2導電型とはN型あるいはP型を指し、上記第1導電型がN型である場合には上記第2導電型はP型であり、上記第1導電型がP型である場合には上記第2導電型はN型である。
【0018】
また、1実施例では、
上記キャリア移動抑制領域は、リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜を含んでおり、
上記リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜は、Al電極によって上記基板と電気的に接続されている。
【0019】
この実施例によれば、上記第1導電型がN型であり、上記第2導電型がP型であり、上記基板がシリコン基板である場合に、上記N型シリコン基板の表面における上記キャリア移動抑制領域のシリコン界面準位(Qss)が増大する。その結果、N型シリコン基板内の少数キャリアである正孔を上記リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜の領域において消滅させることができ、上記正孔のライフタイムの低減を促進できる。したがって、結果として転流特性を改善することができるのである。
【0020】
また、1実施例では、
上記キャリア移動抑制領域は、さらに
上記基板の表面に形成されたキャリア吸収用ダイオードを含んでいる。
【0021】
この実施例によれば、上記N型シリコン基板内の少数キャリアである正孔が上記キャリア吸収用ダイオードを構成するP型拡散領域に吸収されて、上記正孔のライフタイムが低減される。したがって、上述した上記リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜による効果と相俟って、より確実に転流特性を改善することができる。
【0022】
また、1実施例では、
上記キャリア吸収用ダイオードは、上記リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜の外径よりも小さい外径を有すると共に、上記基板側とは反対側が上記Al電極を介して上記基板と電気的に接続されている。
【0023】
この実施例によれば、上記N型シリコン基板の表面に、リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜の存在に起因してシリコン界面準位Qssが増大する領域を設けることができる。したがって、上記キャリア吸収用ダイオードによる効果と上記リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜による効果とを効果的に引き出すことができる。
【0024】
また、1実施例では、
上記第1拡散層に電気的に接続された第1電極と上記キャリア移動抑制領域との間隔および上記第3拡散層に電気的に接続された第2電極と上記キャリア移動抑制領域との間隔のうち、何れか狭い方の間隔が、少なくとも30μmである。
【0025】
この実施例によれば、上記キャリア移動抑制領域の構造を用いる場合に、400V以上の耐圧を得ることができる。
【0026】
また、1実施例では、
上記キャリア移動抑制領域は、上記2つのチャネルの間に各チャネルと交差しないように形成されている。
【0027】
この実施例によれば、領域面積の小さい上記キャリア移動抑制領域によって、上記基板中の残存キャリアがオフ側のチャネルを構成するフォトサイリスタ部の上記第2拡散層に移動するのを抑制して、転流特性を改善することができる。
【0028】
また、1実施例では、
上記キャリア移動抑制領域は、上記2つのチャネルの夫々と交差している。
【0029】
この実施例によれば、上記第1拡散領域と第3拡散領域との間に急激な立ち上がりの電圧パルスが印加された場合に、本来光信号を受けるべき上記第2拡散領域に変位電流が流れ込むことが、上記2つのチャネルの夫々と交差して形成されている上記リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜とAl電極とを含むキャリア移動抑制領域によって抑制される。その結果、光信号が無くても上記フォトサイリスタ部がオンすることが防止され、dv/dt特性を向上することができる。
【0030】
また、1実施例では、
上記第1拡散層に電気的に接続された第1電極と上記キャリア移動抑制領域との間隔および上記第3拡散層に電気的に接続された第2電極と上記キャリア移動抑制領域との間隔のうち、何れか狭い方の間隔が、少なくとも30μmである。
【0031】
この実施例によれば、上記2つのチャネルの夫々と交差しているキャリア移動抑制領域の構造を用いる場合に、400V以上の耐圧を得ることができる。
【0032】
また、1実施例では、
上記キャリア移動抑制領域は、上記2つのチャネルの夫々と交差している。
【0033】
この実施例によれば、上記第1拡散領域と第3拡散領域との間に急激な立ち上がりの電圧パルスが印加された場合に、本来光信号を受けるべき上記第2拡散領域に変位電流が流れ込むことが、上記2つのチャネルの夫々と交差して形成されている上記リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜とAl電極とを含むキャリア移動抑制領域によって抑制される。その結果、光信号が無くても上記フォトサイリスタ部がオンすることが防止され、dv/dt特性を向上することができる。
【0034】
また、1実施例では、
上記第1拡散層に電気的に接続された第1電極と上記キャリア移動抑制領域との間隔および上記第3拡散層に電気的に接続された第2電極と上記キャリア移動抑制領域との間隔のうち、何れか狭い方の間隔が、少なくとも30μmである。
【0035】
この実施例によれば、上記キャリア吸収用ダイオードを含むと共に上記2つのチャネルの夫々と交差しているキャリア移動抑制領域の構造を用いる場合に、400V以上の耐圧を得ることができる。
【0036】
また、1実施例では、
上記キャリア吸収用ダイオードは、上記リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜の外径よりも小さい外径を有すると共に、上記基板側とは反対側が上記Al電極を介して上記基板と電気的に接続されている。
【0037】
この実施例によれば、上記N型シリコン基板の表面に、リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜の存在に起因してシリコン界面準位Qssが増大する領域を設けることができる。したがって、上記キャリア吸収用ダイオードによる効果と上記リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜による効果とを効果的に引き出すことができる。
【0038】
また、この発明の双方向フォトサイリスタチップは、
第1導電型の基板と、
上記第1導電型の基板の表面に設けられると共に、第2導電型の第1拡散層と、上記第2導電型の第2拡散層と、この第2拡散層内に形成された上記第1導電型の第3拡散層と、を含む一対のフォトサイリスタ部と
を備え、
上記一対のフォトサイリスタ部のうちの一方は上記半導体チップにおける一側に配置される一方、他方は上記半導体チップにおける他側に配置されており、
上記一方のフォトサイリスタ部を構成する上記第1拡散層は、上記他方のフォトサイリスタ部を構成する上記第2拡散層および第3拡散層と対向しており、
上記他方のフォトサイリスタ部を構成する上記第1拡散層は、上記一方のフォトサイリスタ部を構成する上記第2拡散層および第3拡散層と対向しており、
上記一対のフォトサイリスタ部間に発生する2つのチャネルは、互いに交差することなく平行であり、
上記基板上であって、且つ、上記一対のフォトサイリスタ部を構成する2つの上記第1拡散層と上記基板との接合部近傍および上記一対のフォトサイリスタ部を構成する2つの上記第2拡散層と上記基板との接合部近傍に、上記チャネルと交差して形成されて、キャリアの移動を抑制するリンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜を
備え、
1つの半導体チップであることを特徴としている。
【0039】
上記構成によれば、上記基板中に残存していたキャリアの次にオンすべきチャネルの上記第2拡散層への移動が、上記2つのフォトサイリスタ部を構成する2つの第2拡散層の間に形成されたリンがドープされた上記酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜によって抑制される。その結果、次の半サイクルにおいて、光入射が無いにも拘わらず上記チャネルがオンしてしまうことが防止されて、転流特性が改善される。
【0040】
さらに、上記第1拡散領域と第3拡散領域との間に急激な立ち上がりの電圧パルスが印加された場合に、上記第2拡散領域に変位電流が流れ込むことが、上記2つのチャネルの夫々と交差して形成されている上記リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜によって抑制される。その結果、光信号が無くても上記フォトサイリスタ部がオンすることを防止でき、dv/dt特性を向上することができる。
【0041】
また、1実施例では、
上記対を成す2つのフォトサイリスタ部の間に、上記2つのチャネルの夫々と交差してAlによって形成されて,上記基板と電気的に接続されたAlガードリングを備えて、
上記各リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜と上記Alガードリングとの間隔は、少なくとも30μmである。
【0042】
この実施例によれば、上記リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜の構造を用いる場合に、400V以上の耐圧を得ることができる。
【0043】
また、この発明の双方向フォトサイリスタチップは、
第1導電型の基板と、
上記第1導電型の基板の表面に設けられると共に、第2導電型の第1拡散層と、上記第2導電型の第2拡散層と、この第2拡散層内に形成された上記第1導電型の第3拡散層と、を含む一対のフォトサイリスタ部と
を備え、
上記一対のフォトサイリスタ部のうちの一方は上記半導体チップにおける一側に配置される一方、他方は上記半導体チップにおける他側に配置されており、
上記一方のフォトサイリスタ部を構成する上記第1拡散層は、上記他方のフォトサイリスタ部を構成する上記第2拡散層および第3拡散層と対向しており、
上記他方のフォトサイリスタ部を構成する上記第1拡散層は、上記一方のフォトサイリスタ部を構成する上記第2拡散層および第3拡散層と対向しており、
上記一対のフォトサイリスタ部間に発生する2つのチャネルは、互いに交差することなく平行であり、
上記基板上における上記一対のフォトサイリスタ部を構成する2つの上記第2拡散層の間であって、且つ、上記2つの第2拡散層と上記基板との接合部近傍の夫々に、上記2つのチャネルの間に各チャネルと交差しないように形成されて、キャリアの移動を抑制するリンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜を
備え、
1つの半導体チップであることを特徴としている。
【0044】
上記構成によれば、上記基板中に残存していたキャリアの次にオンすべきチャネルの上記第2拡散層への移動が、上記2つのフォトサイリスタ部を構成する2つの第2拡散層の間に形成されたリンがドープされた上記酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜によって抑制される。その結果、次の半サイクルにおいて、光入射が無いにも拘わらず上記チャネルがオンしてしまうことが防止されて、転流特性が改善される。
【0045】
また、1実施例では、
上記第1拡散層に電気的に接続された第1電極と上記リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜との間隔および上記第3拡散層に電気的に接続された第2電極と上記リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜との間隔とのうち、何れか狭い方の間隔が、少なくとも30μmであり、
上記2つのリンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜における互いの間隔は、少なくとも30μmである。
【0046】
この実施例によれば、上記リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜の構造を用いる場合に、400V以上の耐圧を得ることができる。
【0047】
また、1実施例では、
上記基板上において、上記対を成すフォトサイリスタ部の夫々に関して、上記第1拡散層と上記基板との接合部近傍および上記第2拡散層と上記基板との接合部近傍を含むと共に、第1拡散層および上記第2拡散層を取り囲む環状領域に、リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜から成る透明ガードリングを形成している。
【0048】
この実施例によれば、第1拡散層および上記第2拡散層を取り囲む環状領域に透明ガードリングが形成されている。したがって、上記第1拡散層および上記第2拡散層を取り囲む領域の遮光面積を小さくでき、光感度を向上することができる。
【0049】
また、1実施例では、
上記各フォトサイリスタ部を構成する第2拡散層と基板との間に形成されたショットキーバリアダイオードを備えている。
【0050】
この実施例によれば、転流時において、オンしたチャネルを構成するフォトサイリスタ部の上記第2拡散層から上記N型の基板への少数キャリア(ホール)の注入が、上記ショットキーバリアダイオードによって抑制される。したがって、上記基板内の残存キャリア量が減少し、更なる転流特性の改善を図ることができる。
【0051】
また、1実施例では、
上記第1導電型はN型およびP型の何れか一方であり、
上記第2導電型はN型およびP型の他方であり、
上記夫々のフォトサイリスタ部において、上記第3拡散領域と第2拡散領域と基板あるいは上記第1拡散領域と基板と第2拡散領域でなるNPNトランジスタのベースとエミッタ電極との間にゲート抵抗とスイッチング素子とを並列に接続し、
上記スイッチング素子の制御端子を、上記第3拡散領域と第2拡散領域と基板あるいは上記第1拡散領域と基板と第2拡散領域でなるPNPトランジスタのベースに接続している。
【0052】
この実施例によれば、上記PNPトランジスタのエミッタ電極と上記NPNトランジスタのエミッタ電極との間にバイアスされている電源電圧のゼロクロス点近傍においては、上記スイッチング素子はオフしており、上記NPNトランジスタには上記ゲート抵抗の抵抗値に応じたベース・エミッタ電圧が印加される。これに対して、上記電源電圧のゼロクロス点から離れた時間においては、上記スイッチング素子はオンするため上記NPNトランジスタのベース・エミッタ間が短絡されて、光信号を受光しても上記NPNトランジスタはオンできなくなる。
【0053】
こうして、上記電源電圧のゼロクロス点近傍のみにおいてフォトサイリスタ部をオンさせるゼロクロス機能が実現される。
【0054】
また、1実施例では、
上記スイッチング素子は、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタであり、
上記金属酸化膜半導体電界効果トランジスタは、上記基板の表面に形成された上記第2導電型のウェル内に形成されており、
上記ウェルの拡散深さは、上記第2拡散層の拡散深さ以上である。
【0055】
この実施例によれば、上記金属酸化膜半導体電界効果トランジスタのドレイン拡散領域と上記ウェルと上記基板とで形成される寄生トランジスタの電流増幅率を、上記ウェルの拡散深さが上記第2拡散層の拡散深さよりも浅い通常のゼロクロス機能付き双方向サイリスタチップの場合よりも下げることができる。したがって、上記フォトサイリスタ部にパルス状ノイズ電圧が印加された場合に、上記ウェルと基板との接合容量を介して過渡的に上記寄生トランジスタに流れ込む変位電流の増幅を抑制することができる。
【0056】
すなわち、従来、上記寄生トランジスタによって増幅されてトリガ電流として作用していた上記変位電流を抑制し、上記フォトサイリスタ部が正常に動作可能な上記パルス状ノイズ電圧の最大値であるパルスノイズ耐量を向上させることができる。
【0057】
また、1実施例では、
上記ウェルの拡散深さは、上記第2拡散層の拡散深さの1倍以上且つ1.3倍以下である。
【0058】
この実施例によれば、上記ウェルの拡散深さを上記第2拡散層の拡散深さの1.3倍以下にしている。したがって、上記ウェルを形成する際に拡散温度や拡散時間を過度に大きくする必要がなく、上記寄生トランジスタにおける電流増幅率の抑制効果を簡単に得ることができる。
【0059】
また、1実施例では、
上記スイッチング素子は、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタであり、
上記金属酸化膜半導体電界効果トランジスタは、上記基板の表面に形成された上記第2導電型のウェル内に形成されており、
上記金属酸化膜半導体電界効果トランジスタにおける上記ウェル内に形成されたドレイン拡散領域の面積は、上記ウェル内に形成されたソース拡散領域の面積よりも小くなっている。
【0060】
この実施例によれば、上記寄生トランジスタのエミッタ面積を低減して、上記寄生トランジスタのコレクタ電流を低減することができる。したがって、上記変位電流の上記金属酸化膜半導体電界効果トランジスタのソース拡散領域への分流比を大きくして、上記変位電流が上記ソース拡散領域に流れ易くすることができる。すなわち、上記寄生トランジスタの電流増幅率の上記変位電流に対する影響を軽減してパルスノイズ耐量を向上できる。
【0061】
また、1実施例では、
上記ドレイン拡散領域は、上記ウェル内表面側に形成されており、
上記ソース拡散領域は、上記ウェル内表面側に、上記ドレイン拡散領域の周囲を取り囲んで形成されている。
【0062】
この実施例によれば、上記ソース拡散領域は、上記ドレイン拡散領域に対する面積比を大きくすると共に、上記ドレイン拡散領域を取り囲んで形成されている。したがって、上記変位電流のソース拡散領域への分流比を大幅に上げることができる。その結果、上記寄生トランジスタの電流増幅率の上記変位電流に対する影響をより軽減して、パルスノイズ耐量を向上させることができる。
【0063】
また、1実施例では、
上記スイッチング素子は、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタであり、
上記金属酸化膜半導体電界効果トランジスタのうちの少なくとも一部は、上記基板の表面に形成された上記第2導電型のウェル内に形成されており、
上記基板の表面における上記ウェルの周囲に、上記ウェルに密着すると共に、上記ウェルにおける不純物拡散濃度よりも高濃度の不純物拡散濃度を有する上記第2導電型の高濃度補償拡散層を形成し、
上記金属酸化膜半導体電界効果トランジスタのうち、上記ウェル内に形成されていない領域は、上記高濃度補償拡散層内に形成されている。
【0064】
この実施例によれば、上記ウェルの周囲には、このウェルに密着して高濃度補償拡散層が形成されている。したがって、上記寄生トランジスタのベースに接続されたシリーズ抵抗の抵抗値を小さくすることができ、上記変位電流が、上記ウェルおよび上記ソース拡散領域を介した経路に分流される割合を上げることができる。その結果、上記寄生トランジスタの電流増幅率の上記変位電流に対する影響をより軽減して、パルスノイズ耐量を向上させることができる。
【0065】
また、1実施例では、
上記高濃度補償拡散層における不純物拡散濃度は、1×1017cm-3以上である。
【0066】
この実施例によれば、上記ウェルの不純物濃度が5×1016cm-3である場合に、上記ウェルの表面濃度を十分に補って補償することができる。
【0067】
また、1実施例では、
上記金属酸化膜半導体電界効果トランジスタにおけるソース拡散領域は、上記ウェル内に形成されており、
上記金属酸化膜半導体電界効果トランジスタにおけるドレイン拡散領域は、上記ソース拡散領域に対向している一側部が上記ウェル内に形成される一方、残りの領域は上記高濃度補償拡散層内に形成されている。
【0068】
この実施例によれば、上記金属酸化膜半導体電界効果トランジスタのドレイン拡散領域と上記ウェルと上記基板とで形成される寄生トランジスタにおけるベース領域を狭くすることによって、上記寄生トランジスタのコレクタ電流を低減することができる。したがって、上記寄生トランジスタの電流増幅率の上記変位電流に対する影響をより軽減して、パルスノイズ耐量を向上させることができる。
【0069】
また、1実施例では、
上記金属酸化膜半導体電界効果トランジスタにおけるドレイン拡散領域は、上記ウェル内に形成されており、
上記金属酸化膜半導体電界効果トランジスタにおけるソース拡散領域は、上記ドレイン拡散領域に対向している一側部が上記ウェル内に形成される一方、残りの領域は上記高濃度補償拡散層内に形成されている。
【0070】
この実施例によれば、上記ウェルの周囲には、このウェルに密着して高濃度補償拡散層が形成されている。さらに、上記ソース拡散領域の一部は上記高濃度補償拡散層内に形成されている。したがって、上記寄生トランジスタのベースに接続されたシリーズ抵抗の抵抗値をさらに小さくすることができ、上記変位電流が、上記ウェルおよび上記ソース拡散領域を介した経路に分流される割合をさらに上げることができる。
【0071】
また、1実施例では、
上記ウェル内に形成される上記ドレイン拡散領域あるいはソース拡散領域における上記一側部のチャネル方向への長さは、0μm以上且つ10μm以下である。
【0072】
この実施例によれば、上記一側部の幅を10μm以下にしているので、上記ウェルの周囲に密着して形成された高濃度補償拡散層による上記効果を得ることができる。さらに、上記一側部の幅を0μm以上にしているので、上記金属酸化膜半導体電界効果トランジスタのチャネル濃度(つまり、上記金属酸化膜半導体電界効果トランジスタの閾値電圧)に影響を与えることがない。
【0073】
また、1実施例では、
上記金属酸化膜半導体電界効果トランジスタにおけるチャネル幅は300μm以上である。
【0074】
この実施例によれば、上記金属酸化膜半導体電界効果トランジスタのチャネル幅を長くして、オン抵抗を下げることができる。したがって、上記パルス状ノイズ電圧が上記フォトサイリスタ部に印加された場合でも上記金属酸化膜半導体電界効果トランジスタが動作可能になり、パルスノイズ耐量をより向上させることができる。
【0075】
また、1実施例では、
上記基板の表面に、上記2つのチャネルと交差するように形成されたキャリア吸収用ダイオードが形成されている。
【0076】
この実施例によれば、上記第1導電型がN型であり、上記第2導電型がP型であり、上記基板がシリコン基板である場合に、上記N型シリコン基板内の少数キャリアである正孔が上記キャリア吸収用ダイオードを構成するP型拡散領域に吸収されて、上記正孔のライフタイムが低減される。したがって、上記ウェルとN型シリコン基板と上記第2拡散層とで形成されるPNPトランジスタの電流増幅率を低減することができる。その結果、上記ゲート抵抗の抵抗値を上げることによって、上記第3拡散層と上記第2拡散層とN型シリコン基板とで形成されるノイズ特性に最も影響するNPNトランジスタの電流増幅率を所望の耐ノイズ特性が得られる値に設定すると共に、ゼロクロス機能付きの双方向フォトサイリスタとして必要な光感度と高速動作とを維持することができる。
【0077】
また、この発明の光点弧カプラは、
この発明の双方向フォトサイリスタチップと発光ダイオードとで構成された
ことを特徴としている。
【0078】
上記構成によれば、転流特性を改善できる双方向フォトサイリスタチップを用いて構成されている。したがって、点流失敗がなく、誤動作の少ない光点弧カプラを提供することができる。特に、上記2つの第1拡散層と上記基板との接合部近傍および上記2つの第2拡散層と上記基板との接合部近傍に上記チャネルと交差して形成されたリンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜を備えた双方向フォトサイリスタチップを用いて構成されている場合には、さらにdv/dt特性を向上することができ、より誤動作の少ない光点弧カプラを提供することができる。
【0079】
また、この発明のソリッドステートリレーは、
この発明の光点弧カプラとスナバ回路とで構成された
ことを特徴としている。
【0080】
上記構成によれば、点流失敗がなく誤動作の少ない光点弧カプラを使用しているので、誤動作の少ないソリッドステートリレーを提供することができる。特に、上記2つの第1拡散層と上記基板との接合部近傍および上記2つの第2拡散層と上記基板との接合部近傍に上記チャネルと交差して形成されたリンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜を設けた双方向フォトサイリスタチップで構成された光点弧カプラを用いた場合は、上記双方向フォトサイリスタチップのdv/dt特性を向上することができ、より誤動作の少ないソリッドステートリレーを提供することができる。
【発明の効果】
【0081】
以上より明らかなように、この発明の双方向フォトサイリスタチップは、基板上における対を成す2つのフォトサイリスタ部を構成する2つの上記第2拡散層の間に、キャリアの移動を抑制するキャリア移動抑制領域を備えたので、上記基板中の残存キャリアが次にオンすべきチャネルを構成するフォトサイリスタ部の上記第2拡散層に移動することを抑制できる。したがって、光入射が無いにも拘わらず上記チャネルがオンすることを防止でき、転流特性を改善することができるのである。
【0082】
また、この発明の双方向フォトサイリスタチップは、基板上であって、且つ、対を成す2つのフォトサイリスタ部を構成する2つの第1拡散層と上記基板との接合部近傍および2つの第2拡散層と上記基板との接合部近傍に、チャネルと交差して、リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜を備えたので、第1導電型がN型であり、第2導電型がP型であり、上記基板がシリコン基板である場合に、上記N型シリコン基板の表面における上記リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜の領域のシリコン界面準位Qssを増大することができる。したがって、N型シリコン基板内の少数キャリアである正孔を消滅させて上記正孔のライフタイムを低減でき、転流特性を改善することができる。
【0083】
さらに、上記第1拡散領域と第3拡散領域との間に電圧パルスが印加された場合に、上記第2拡散領域に変位電流が流れ込むことを抑制できる。したがって、光信号が無くても上記フォトサイリスタ部がオンするのを防止でき、dv/dt特性を向上することができる。
【0084】
また、この発明の双方向フォトサイリスタチップは、基板上における対を成す2つのフォトサイリスタ部を構成する2つの第2拡散層の間で、且つ、上記2つの第2拡散層と上記基板との接合部近傍の夫々に、2つのチャネルの間に、リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜を備えたので、第1導電型がN型であり、第2導電型がP型であり、上記基板がシリコン基板である場合に、上記N型シリコン基板の表面における上記リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜の領域のシリコン界面準位Qssを増大することができる。したがって、N型シリコン基板内の少数キャリアである正孔を消滅させて上記正孔のライフタイムを低減でき、転流特性を改善することができる。
【0085】
さらに、上記各双方向フォトサイリスタチップにおいて、上記第1拡散層および上記第2拡散層を取り囲む環状領域に透明ガードリングを形成すれば、上記第1拡散層および上記第2拡散層を取り囲む領域の遮光面積を小さくでき、光感度を向上することができる。
【0086】
また、この発明の双方向フォトサイリスタチップは、上記夫々のフォトサイリスタ部において、上記第3拡散領域と第2拡散領域と基板あるいは上記第1拡散領域と基板と第2拡散領域でなるNPNトランジスタのベースとエミッタ電極との間に、ゲート抵抗とスイッチング素子とを並列に接続し、上記スイッチング素子を、上記第2導電型のウェル内に形成されたMOSFETで成すと共に、上記ウェル拡散深さを上記第2拡散層の拡散深さ以上にすれば、上記MOSFETに形成される寄生トランジスタによる変位電流の増幅を抑制してパルスノイズ耐量を向上させたゼロクロス機能付きの双方向フォトサイリスタを提供することができる。
【0087】
また、この発明の光点弧カプラは、この発明の転流特性が改善された双方向フォトサイリスタチップと発光ダイオードとで構成されているので、点流失敗がなく、誤動作の少ない光点弧カプラを提供できる。特に、上記dv/dt特性を向上できる双方向フォトサイリスタチップを用いることによって、より誤動作の少ない光点弧カプラを提供できる。
【0088】
また、この発明のソリッドステートリレーは、この発明の点流失敗の少ない光点弧カプラとスナバ回路とで構成されているので、誤動作の少ないソリッドステートリレーを提供することができる。特に、上記dv/dt特性を向上できる双方向フォトサイリスタチップで構成された光点弧カプラを用いた場合には、より誤動作の少ないソリッドステートリレーを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0089】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0090】
(第1実施の形態)
図1は、本実施の形態の双方向フォトサイリスタチップにおける概略構成を示すパターンレイアウト図である。また、図2は、図1におけるB‐B'矢視断面図である。また、図3は、本実施の形態の双方向フォトサイリスタチップにおける等価回路図である。尚、この等価回路は、図36に示す従来の双方向フォトサイリスタチップと同じである。
【0091】
この双方向フォトサイリスタチップ31では、N型シリコン基板21の表面側に、図1において、2つのアノード拡散領域(P型)22,22'を、双方向フォトサイリスタチップ31の中心に対して略点対称の位置であって、且つ、アノード拡散領域22を左側に、アノード拡散領域22'を右側に配置している。また、2つのPゲート拡散領域(P型)23,23'を、上記中心に対して略点対称の位置であって、且つ、Pゲート拡散領域23を左側に、Pゲート拡散領域23'を右側に配置している。そして、アノード拡散領域22とPゲート拡散領域23'とが互いに対向する一方、アノード拡散領域22'とPゲート拡散領域23とが互いに対向するように配置している。そして、各Pゲート拡散領域23,23'内における対向しているアノード拡散領域22'22側に、カソード拡散領域(N型)24,24'を設けている。こうして、図中右側のアノード拡散領域22'から左側のカソード拡散領域24に向かって、図3におけるCH1のフォトサイリスタ32を構成するPNPN部が形成されている。さらに、図中左側のアノード拡散領域22から右側のカソード拡散領域24'に向かって、CH2のフォトサイリスタ33を構成するPNPN部が形成されている。すなわち、2つの動作チャンネルCH1,CH2が交差しないように、互いに分離して配置されているのである。また、アノード拡散領域22とPゲート拡散領域23とはゲート抵抗25で接続される一方、アノード拡散領域22'とPゲート拡散領域23'とはゲート抵抗25'で接続されている。
【0092】
ここで、上記N型シリコン基板21におけるN型不純物の濃度は1014cm-3程度であり、Pゲート拡散領域23,23'におけるP型不純物の濃度は1016cm-3〜1018cm-3程度であり、カソード拡散領域24,24'におけるN型不純物の濃度は1020cm-3〜1021cm-3程度である。
【0093】
尚、電極T2は、Al電極26直上に形成されて、Al電極26を介してアノード拡散領域22およびカソード拡散領域24と接続されている。また、電極T1は、Al電極26'直上に形成されて、Al電極26'を介してアノード拡散領域22'およびカソード拡散領域24'と接続されている。そして、上記右側のアノード拡散領域22'とN型シリコン基板21と左側のPゲート拡散領域23とでCH1側のPNPトランジスタQ1を構成し、上記左側のカソード拡散領域24およびPゲート拡散領域23とN型シリコン基板21とでCH1側のNPNトランジスタQ2を構成している。一方、左側のアノード拡散領域22とN型シリコン基板21と右側のPゲート拡散領域23'とでCH2側のPNPトランジスタQ3を構成し、右側のカソード拡散領域24'およびPゲート拡散領域23'とN型シリコン基板21とでCH2側のNPNトランジスタQ4を構成している。
【0094】
チップの周辺に沿ってチャネルストッパとしてのN型拡散領域27が形成されている。そして、N型シリコン基板27の表面にはSiO2膜(図示せず)が形成されており、必要な箇所においてAl電極26,26'との間を絶縁している。また、N型拡散領域27上の上記SiO2膜上には、破線で示すようにAl電極28が形成されている。
【0095】
本実施の形態においは、上記N型シリコン基板21上における左側のPゲート拡散領域23と右側のPゲート拡散領域23'との間であって、上記CH1とCH2との間に、チャネル分離領域29が形成されている。そして、このチャネル分離領域29によって、上記転流時において、N型シリコン基板21内の少数キャリアである正孔が吸い込まれてチャネル間の移動が制限されるようにしている。
【0096】
また、上記N型シリコン基板21の裏面には、カソード拡散と同時に高濃度のリンを拡散して、図2に示すように、N+層30を形成している。このように、上記N型シリコン基板21の裏面に高濃度の(例えば、1016cm-3程度の)N+層30を形成することによって、このN+層30でキャリアの反射が起り、等価的なライフタイムが大きくなる所謂BSF(Back Surface Field)効果によって光感度が上昇するのである。但し、PNPトランジスタの電流増幅率Hfe(pnp)が増大し、保持電流値IHが低下するため、上記転流特性においては不利である。尚、このような構造をとらずに、N型シリコン基板21の裏面をN−(N型基板のまま)にすると、キャリアはN型シリコン基板21の裏面で再結合し易いため、等価的ライフタイムは小さくなる。
【0097】
後者は、図3に示すようなフォトサイリスタの等価回路の定数設計時においては、上記等価的ライフタイムが小さいため転流特性においては有利であるが、上記電流増幅率Hfe(pnp)が低下して光感度の低下を招く。これを補うためには、回路定数設計において、ゲート抵抗25,25'やNPNトランジスタの電流増幅率Hfe(npn)を増大しなければならなくなり、臨界オフ電圧上昇率dv/dt特性が低下するというデバイスの主要特性を満足しない問題が生じる。尚、臨界オフ電圧上昇率dv/dt特性もN型シリコン基板21のライフタイムに依存し、(i)裏面N−の場合に、ホールのライフタイムτpが小であり、アノード拡散領域22,22'の拡散容量が低下してPNPトランジスタの動作応答が速くなり、臨界オフ電圧上昇率dv/dtが小となる。一方、(ii)裏面N+の場合、ホールのライフタイムτpが大で、アノード拡散領域22,22'の拡散容量が増加してPNPトランジスタの動作応答が鈍くなって、臨界オフ電圧上昇率dv/dtが大となる。
【0098】
そこで、この転流特性と臨界オフ電圧上昇率dv/dt特性とに関するトレードオフの相関を満たすために、N型シリコン基板21裏面のリン濃度を適正化して、PNPトランジスタの電流増幅率Hfe(pnp)の特性を任意の回路定数に設定する必要がある。
【0099】
図2は、本実施の形態におけるパシベーション構造を示すチャネル分離領域29付近の断面図である。図2において、N型シリコン基板21上におけるチャネル分離領域29の左側(つまり、CH1側)と右側(つまり、CH2側)とには、CH1側のPゲート拡散領域23上からCH2側のPゲート拡散領域23'上にかけてSiO2膜34を形成している。さらに、このSiO2膜34上に酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜35を形成し、酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜35におけるチャネル分離領域29近傍の領域35aにリンをドープする。こうすることによって、N型シリコン基板21の表面におけるチャネル分離領域29のシリコン界面準位(Qss)が増大するのである。
【0100】
さらに、上記酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜35におけるリンをドープしていない領域の上にSiN膜36を化学気相成長法によって形成する。そして、上記CH1側においては、SiN膜36上からPゲート拡散領域23上にかけてAl電極26を形成して、電極T2に接続する。一方、上記CH2側においては、SiN膜36上からPゲート拡散領域23'上にかけてAl電極26'を形成して、電極T1に接続する。さらに、酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜35におけるリンをドープした領域35aにはCH1側のSiN膜36上からCH2側のSiN膜36上にかけてAl電極37を形成し、N型シリコン基板21に接続している。こうして、酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜35の両端と中央とをAl電極26,26'とAl電極37とに接触させ、Al電極26,26'とAl電極37との間に電位勾配を形成してSi‐SiO2界面の電界集中を緩和する。こうして、高耐圧化が有利に行えるフィールドプレート構造としている。尚、図1において、Al電極37の両端は、CH1およびCH2と交差してチップの全幅に亘って延在して、Alガードリング38を構成している。
【0101】
このように、本実施の形態におけるチャネル分離領域29の構造は、N型シリコン基板21上に形成されたリンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜35aで構成されている。酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜にリンをドープすると酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜内の準位が増大し、その結果シリコン界面準位Qssが増大する。そのために、N型シリコン基板21内の少数キャリアである正孔39をチャネル分離領域29において消滅させることができ、正孔39のライフタイムの低減を促進することができるのである。40は空乏層である。
【0102】
尚、本実施の形態においては、図1に示す上記Al電極37とAl電極26,26'との間隔L1の値を30μmよりも大きくしている。この上記間隔L1の値は、このフィールドプレート構造を用いて所望の400V以上の耐圧を得るために必要な最小距離なのである。さらに耐圧を上げる場合には、その耐圧に応じて上記間隔L1値を拡大すればよい。
【0103】
また、実際のウエハプロセスにおいては、Al電極26,26'とAl電極37とを形成する前の図1に示す構造を作製した後に、酸素ドープ半絶縁性多結晶シリコン膜35の一部分にリンをドープするようにしている。
【0104】
(第2実施の形態)
本実施の形態における双方向フォトサイリスタチップは、上記第1実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ31におけるチャネル分離領域29に、上記キャリア吸収用ダイオードとしてのショートダイオードを負荷した構造を有している。
【0105】
図4は、本実施の形態の双方向フォトサイリスタチップにおける概略構成を示すパターンレイアウト図である。また、図5は、図4におけるC‐C'矢視断面図である。また、図6は、本実施の形態の双方向フォトサイリスタチップにおける等価回路図である。
【0106】
本実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ51におけるN型シリコン基板41,アノード拡散領域42,42',Pゲート拡散領域43,43',カソード拡散領域44,44',ゲート抵抗45,45',Al電極46,46',Al電極47,Alガードリング48,N+層49,CH1のフォトサイリスタ52およびCH2のフォトサイリスタ53は、上記第1実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ31におけるN型シリコン基板21,アノード拡散領域22,22',Pゲート拡散領域23,23',カソード拡散領域24,24',ゲート抵抗25,25',Al電極26,26',Al電極28,Alガードリング38,N+層30,CH1のフォトサイリスタ32およびCH2のフォトサイリスタ33と同じである。但し、本実施の形態においては、チップの周辺に沿ってチャネルストッパとして形成されるN型拡散領域は省略している。
【0107】
本実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ51においても上記第1実施の形態の場合と同様に、N型シリコン基板41上における左側のアノード拡散領域42と右側のアノード拡散領域42'との間であって、CH1とCH2との間に、チャネル分離領域50が形成されている。そして、このチャネル分離領域50によって、上記転流時において、N型シリコン基板41内の少数キャリアである正孔が吸い込まれてチャネル間の移動が制限されるようにしている。
【0108】
図5は、本実施の形態におけるパシベーション構造を示すチャネル分離領域50付近のN型シリコン基板41の断面図である。図5において、N型シリコン基板41の表面におけるチャネル分離領域50の領域にP型拡散領域54が形成され、P型拡散領域54における図中左側(つまり、CH1側)の側面の位置にN型シリコン基板41からP型拡散領域54にかけてチャネルストッパとしてのN型拡散領域55が形成され、P型拡散領域54における右側(つまり、CH2側)の側面の位置にも同様にN型拡散領域55'が形成されている。
【0109】
上記CH1側とCH2側との夫々において、上記Pゲート拡散領域43,43'上からN型拡散領域55,55'上にかけてSiO2膜56,56'を形成している。そして、SiO2膜56,56'上におけるPゲート拡散領域43,43'近傍からN型拡散領域55,55'上にかけて酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜57,57'を形成する。さらに、酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜57,57'におけるN型拡散領域55,55'側の領域57a,57a'にリンをドープする。さらに、酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜57,57'におけるリンをドープしてはいない領域上に、SiN膜58,58'を化学気相成長法によって形成する。そして、Pゲート拡散領域43,43'の表面からSiN膜58,58'の表面にかけてAl電極46,46'を形成して、Al電極46を電極T1に接続する一方、Al電極46'を電極T2に接続する。さらに、上記CH1側のSiN膜58の表面からCH2側のSiN膜58'の表面にかけてAl電極59を形成し、N型拡散領域55,55'およびN型シリコン基板41に接続している。こうして、上記酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜57,57'の両端をAl電極46,46'とAl電極59とに接触させて、Al電極46,46'とAl電極59との間に電位勾配を形成してSi‐SiO2界面の電界集中を緩和する。こうして、本実施の形態においてもフィールドプレート構造を形成している。尚、本実施の形態の場合においても、Al電極59とAl電極46,46'との間隔L1の値を30μmよりも大きくしている。
【0110】
上記構成によって、上記N型シリコン基板41の表面におけるチャネル分離領域50には、P型拡散領域54とN型拡散領域55とがAl電極59およびN型シリコン基板41を介して短絡されたショートダイオード60が形成されている。そのため、N型シリコン基板41内の少数キャリアである正孔61がショートダイオード60のP型拡散領域54に吸収されて、正孔61のライフタイムが低減されるのである。また、酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜57,57'におけるN型拡散領域55,55'側の領域57a,57a'にはリンをドープしている。したがって、上記N型シリコン基板41の表面におけるリンをドープした酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜57a,57a'直下のシリコン界面準位Qssが増大する。そのために、このシリコン界面準位Qssが増大した領域においても正孔61を消滅させることができ、ショートダイオード60による効果と相まって、より確実に正孔61のライフタイムの低減を促進することができるのである。
【0111】
尚、本実施例の場合、図4に示すように、上記ショートダイオード60の外径は、リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜57aの外径よりも小さく設定されている。こうすることによって、図5に示すように、N型シリコン基板41の表面に、リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜57a,57a'に起因してシリコン界面準位Qssが増大する領域を設けることができ、ショートダイオード60による効果とリンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜57a,57a'による効果とを効果的に引き出すことができるのである。
【0112】
(第3実施の形態)
本実施の形態における双方向フォトサイリスタチップは、上記第1実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ31におけるチャネル分離領域29を更に引き伸ばし、CH1およびCH2と交差してチップ全幅に亘って形成した構造を有している。
【0113】
図7は、本実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ71における概略構成を示すパターンレイアウト図である。尚、本双方向フォトサイリスタチップ71におけるチャネル分離領域の断面図は図2と略同じである。また、等価回路は図3と同じである。
【0114】
本実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ71におけるアノード拡散領域72,72',Pゲート拡散領域73,73',カソード拡散領域74,74',ゲート抵抗75,75',Al電極76,76'およびAl電極77は、上記第1実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ31におけるアノード拡散領域22,22',Pゲート拡散領域23,23',カソード拡散領域24,24',ゲート抵抗25,25',Al電極26,26'およびAl電極28と同じである。但し、本実施の形態においては、チップの周辺に沿ってチャネルストッパとして形成されるN型拡散領域、および、上記BSF効果によって光感度を上昇させるためにN型シリコン基板の裏面に形成されるN+層は省略している。
【0115】
本実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ71におけるチャネル分離領域80は、上記第1実施の形態において図2に示すCH1側のPゲート拡散領域23上からCH2側のPゲート拡散領域23'上にかけてのパシベーション構造を、各CH1およびCH2を横断して双方向フォトサイリスタチップ71の全幅に亘って延在させて形成している。したがって、図7に示すように、リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜78およびAl電極79は、上記第1実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ31におけるAlガードリング38の位置に相当する位置に、双方向フォトサイリスタチップ71の全幅に亘って形成されている。尚、本実施の形態の場合においても、Al電極79とAl電極76,76'との間隔L1の値を30μmよりも大きくしている。
【0116】
ところで、転流特性を向上する1つの方法として保持電流IHを上げる事がある。このIH特性は、双方向サイリスタがオンを保持できる最小動作電流値を表し、オフできる最大動作電流であるとも言える。このIH値が大きい程転流特性は向上する。その理由は、上記IH値は、AC動作時におけるCH1側の半サイクル動作がオフした時点から逆のCH2側の半サイクル動作がオンするまでの時間に影響する。そして、この時間が長い程転流失敗に至るまでの時間的猶予を稼ぐことができるため、この時間内に逆チャンネルへ移動するキャリアを効果的に消滅させる事が可能になるためである。
【0117】
このIH特性のパラメータとして、(1)電流増幅率Hfe(pnp)、(2)電流増幅率Hfe(npn)、(3)RGK(ゲート抵抗)の回路定数がある。このうち、(1)の電流増幅率Hfe(pnp)を下げることが、IH特性とトレードオフの関係にある光感度(IFT)にあまり影響を与えずにIH特性を上げることができる最も効果的な方法である。尚、上記(2)の電流増幅率Hfe(npn)や(3)のRGKの回路定数を下げることによってもIH特性を上げることができるが、光感度特性(IFT)が大きく低下するという弊害がある。
【0118】
本実施の形態においては、PNPトランジスタQ1,Q3のベースを構成するN型シリコン基板上に、局所的にリンをドープした酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜78を形成している。このリンをドープした酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜78は、Si‐SiO2界面の準位Qssを増大させるために表面再結合を増加させる作用があり、電流増幅率Hfe(pnp)を効果的に下げることができる。
【0119】
したがって、転流失敗に至るまでの時間的猶予を稼ぐことができ、逆チャンネルへ移動するキャリアを効果的に消滅させることができるのである。尚、酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜に注入するリン濃度は、高い程Qssが増大するために電流増幅率Hfe(pnp)を下げるには効果的であるが、あまりリン濃度を上げ過ぎると信頼性への悪影響を及ぼすことになる。
【0120】
また、本実施の形態における双方向フォトサイリスタチップ71においては、上記リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜78を、CH1およびCH2と交差してチップ全幅に亘って形成している。したがって、アノード拡散領域72,72'とカソード拡散領域74',74との間に急激な立ち上がりの電圧パルスが印加された場合に、Pゲート拡散領域73,73'に変位電流が流れ込むことが抑制される。その結果、光信号が無くても双方向フォトサイリスタ71がオンする誤動作は生じない。すなわち、本実施の形態によれば、dv/dt特性を向上できるのである。
【0121】
(第4実施の形態)
本実施の形態における双方向フォトサイリスタチップは、上記第2実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ51におけるチャネル分離領域50のリンをドープした酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜57aおよびAl電極59を更に引き伸ばし、CH1およびCH2と交差してチップ全幅に亘って形成した構造を有している。
【0122】
図8は、本実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ81における概略構成を示すパターンレイアウト図である。尚、本双方向フォトサイリスタチップ81の中央部におけるチャネル分離領域の断面図は図5と略同じである。また、等価回路は図6と同じである。
【0123】
本実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ81におけるアノード拡散領域82,82',Pゲート拡散領域83,83',カソード拡散領域84,84',ゲート抵抗85,85',Al電極86,86'およびAl電極87は、上記第1実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ31におけるアノード拡散領域22,22',Pゲート拡散領域23,23',カソード拡散領域24,24',ゲート抵抗25,25',Al電極26,26'およびAl電極28と同じである。但し、本実施の形態においては、チップの周辺に沿ってチャネルストッパとして形成されるN型拡散領域、および、上記BSF効果によって光感度を上昇させるためにN型シリコン基板の裏面に形成されるN+層は省略している。
【0124】
本実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ81におけるチャネル分離領域は、上記第2実施の形態において図4および図5に示すチャネル分離領域50のうち、リンをドープした酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜57aおよびAl電極59を、各CH1およびCH2を横断して双方向フォトサイリスタチップ51の全幅に亘って延在させた構成を有している。したがって、図8に示すように、リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜88およびAl電極89は、上記第2実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ51におけるAlガードリング48の位置に相当する位置に、双方向フォトサイリスタチップ81の全幅に亘って形成されている。尚、本実施の形態の場合においても、Al電極89とAl電極86,86'との間隔L1の値を30μmよりも大きくしている。
【0125】
但し、ショートダイオード90は、上記第2実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ51におけるショートダイオード59の場合と同様に、N型シリコン基板上における左側のアノード拡散領域82と右側のアノード拡散領域82'との間であって、且つ、CH1とCH2との間に、形成されている。
【0126】
したがって、本実施の形態によれば、上記第3実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ71の場合と同様に、電流増幅率Hfe(pnp)を効果的に下げて転流失敗に至るまでの時間的猶予を稼ぐことができ、逆チャンネルへ移動するキャリアをN型シリコン基板の表面におけるシリコン界面準位Qssが増大した領域で効果的に消滅させることができる。加えて、N型シリコン基板内の少数キャリアである正孔が上記ショートダイオード90のP型拡散領域に吸収されて、正孔のライフタイムが低減されるのである。
【0127】
また、本実施の形態における双方向フォトサイリスタチップ81においては、上記リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜88を、CH1およびCH2と交差してチップ全幅に亘って形成している。したがって、アノード拡散領域82,82'とカソード拡散領域84',84との間に急激な立ち上がりの電圧パルスが印加された場合に、Pゲート拡散領域83,83'に変位電流が流れ込むことを抑制でき、光信号が無くても双方向フォトサイリスタ81がオンする誤動作を防止できる。すなわち、本実施の形態によれば、dv/dt特性を向上できるのである。
【0128】
(第5実施の形態)
本実施の形態における双方向フォトサイリスタチップは、上記第4実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ81におけるショートダイオード90を更に引き伸ばし、CH1およびCH2と交差してチップ全幅に亘って形成した構造を有している。
【0129】
図9は、本実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ91における概略構成を示すパターンレイアウト図である。尚、本双方向フォトサイリスタチップ91におけるチャネル分離領域の断面図は図5と略同じである。また、等価回路は図6と同じである。
【0130】
本実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ91におけるアノード拡散領域92,92',Pゲート拡散領域93,93',カソード拡散領域94,94',ゲート抵抗95,95',Al電極96,96'およびAl電極97は、上記第1実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ31におけるアノード拡散領域22,22',Pゲート拡散領域23,23',カソード拡散領域24,24',ゲート抵抗25,25',Al電極26,26'およびAl電極28と同じである。但し、本実施の形態においては、チップの周辺に沿ってチャネルストッパとして形成されるN型拡散領域、および、上記BSF効果によって光感度を上昇させるためにN型シリコン基板の裏面に形成されるN+層は省略している。
【0131】
本実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ91のチャネル分離領域101は、上記第2実施の形態において図4および図5に示すチャネル分離領域50を、CH1およびCH2を横断して双方向フォトサイリスタチップ91の全幅に亘って延在させた構成を有している。そのため、図9に示すように、リンをドープした酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜98,Al電極99およびショートダイオード100は、双方向フォトサイリスタチップ91の全幅に亘って形成されている。尚、本実施の形態の場合においても、Al電極99とAl電極96,96'との間隔L1の値を30μmよりも大きくしている。
【0132】
したがって、本実施の形態によれば、上記第4実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ81の場合よりも効果的に上記N型シリコン基板内の少数キャリアである正孔を吸収することができ、正孔のライフタイムを低減できるのである。
【0133】
また、本実施の形態における双方向フォトサイリスタチップ91においては、上記リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜98を、CH1およびCH2と交差してチップ全幅に亘って形成している。したがって、アノード拡散領域92,92'とカソード拡散領域94',94との間に急激な立ち上がりの電圧パルスが印加された場合に、Pゲート拡散領域93,93'に変位電流が流れ込むことを抑制でき、光信号が無くても双方向フォトサイリスタ91がオンする誤動作を防止できる。すなわち、本実施の形態によれば、dv/dt特性を向上できる。
【0134】
(第6実施の形態)
図10は、本実施の形態の双方向フォトサイリスタチップにおける概略構成を示すパターンレイアウト図である。また、図11は、図10におけるD‐D'矢視断面図である。また、等価回路は図3と同じである。
【0135】
本実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ120におけるN型シリコン基板111,アノード拡散領域112,112',Pゲート拡散領域113,113',カソード拡散領域114,114',ゲート抵抗115,115',Al電極116,116',Al電極117,Alガードリング118およびN+層119は、上記第1実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ31におけるN型シリコン基板21,アノード拡散領域22,22',Pゲート拡散領域23,23',カソード拡散領域24,24',ゲート抵抗25,25',Al電極26,26',Al電極28,Alガードリング38およびN+層30と同じである。但し、本実施の形態においては、チップの周辺に沿ってチャネルストッパとして形成されるN型拡散領域は省略している。
【0136】
本実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ120においては、互いに対向しているPゲート拡散領域113とアノード拡散領域112'との対向辺、および、アノード拡散領域112とPゲート拡散領域113'との対向辺に沿って、言い換えれば、2つのアノード拡散領域112,112'とN型シリコン基板111との接合部近傍、および、2つのPゲート拡散領域113,113'とN型シリコン基板111との接合部近傍に、リンをドープした酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜122a,122a',124,124'を形成している。
【0137】
以下、図11にしたがって、上記Pゲート拡散領域113とアノード拡散領域112'との対向辺に関して説明する。図11において、N型シリコン基板111上におけるAlガードリング118より左側のカソード拡散領域114上から右側のアノード拡散領域112'上にかけてSiO2膜121を形成している。さらに、このSiO2膜121上におけるPゲート拡散領域113およびアノード拡散領域112'の外側に酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜122を形成し、酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜122におけるPゲート拡散領域113およびアノード拡散領域112'に近い側の領域122a,122a'にリンをドープする。こうすることによって、上記N型シリコン基板21の表面におけるリンをドープした酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜122a,122a'直下のシリコン界面準位(Qss)が増大するのである。
【0138】
さらに、上記酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜122におけるリンをドープしていない領域の上にSiN膜123を化学気相成長法によって形成する。そして、上記左側においては、リンをドープした酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜122a上からPゲート拡散領域113上にかけてAl電極116を形成して、電極T2に接続する。一方、上記右側においては、リンをドープした酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜122a'上からアノード拡散領域112'上にかけてAl電極116'を形成して、電極T1に接続する。さらに、SiN膜123を2分割するようにAl電極を形成し、N型シリコン基板111に接続してAlガードリング118としている。こうして、酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜122の両端と中央とをAl電極116,116'とAl電極118とに接触させ、Al電極116,116'とAl電極118との間に電位勾配を形成してSi‐SiO2界面の電界集中を緩和する。こうして、高耐圧化が有利に行えるフィールドプレート構造としている。
【0139】
以上のごとく、本双方向フォトサイリスタチップ120においては、互いに対向しているPゲート拡散領域113とアノード拡散領域112'との対向辺に沿って、リンをドープした酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜122a,122a'を形成している。さらに、互いに対向しているアノード拡散領域112とPゲート拡散領域113'との対向辺に沿って、上記リンをドープした酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜124,124'を形成している。したがって、N型シリコン基板111の表面におけるPゲート拡散領域113とアノード拡散領域112'との対向辺近傍およびアノード拡散領域112とPゲート拡散領域113'との対向辺近傍のシリコン界面準位(Qss)を増大することができる。
【0140】
すなわち、本実施の形態によれば、上記第3実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ71の場合と同様に、電流増幅率Hfe(pnp)を効果的に下げて転流失敗に至るまでの時間的猶予を稼ぐことができ、逆チャンネルへ移動するキャリアをN型シリコン基板111の表面におけるシリコン界面準位Qssが増大した領域122a,122a',124,124'で効果的に消滅させることができるのである。尚、125は空乏層である。
【0141】
また、本実施の形態における双方向フォトサイリスタチップ120においては、上記リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜122a,122a',124,124'を、上記CH1およびCH2と交差して形成している。したがって、アノード拡散領域112,112'とカソード拡散領域114',114との間に急激な立ち上がりの電圧パルスが印加された場合に、Pゲート拡散領域113,113'に変位電流が流れ込むことを抑制でき、光信号が無くても双方向フォトサイリスタ120がオンする誤動作を防止できる。すなわち、本実施の形態によれば、dv/dt特性を向上できるのである。
【0142】
尚、本実施の形態においては、図10に示す上記Alガードリング118とリンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜122a,122a',124,124'との間隔L2の値を30μmよりも大きくしている。この上記間隔L2の値は、このフィールドプレート構造を用いて所望の400V以上の耐圧を得るために必要な最小距離なのである。さらに耐圧を上げる場合には、その耐圧に応じて上記間隔L2値を拡大すればよい。
【0143】
また、上記リンをドープした酸素ドープ半絶縁性多結晶シリコン膜122a,122a',124,124'は、電極T1(アノード電極)や電極T2(カソード電極)と接続されて、フィールドプレート構造の一部を構成する透明電極でもある。したがって、上記リンをドープした酸素ドープ半絶縁性多結晶シリコン膜に代えてAl膜を採用する場合よりも、光を遮光するものが無い分受光感度を高めることができる。
【0144】
(第7実施の形態)
図12は、本実施の形態の双方向フォトサイリスタチップにおける概略構成を示すパターンレイアウト図である。また、等価回路は図3と同じである。
【0145】
本実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ131におけるアノード拡散領域132,132',Pゲート拡散領域133,133',カソード拡散領域134,134',ゲート抵抗135,135',Al電極136,136'およびAl電極137は、上記第1実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ31におけるアノード拡散領域22,22',Pゲート拡散領域23,23',カソード拡散領域24,24',ゲート抵抗25,25',Al電極26,26'およびAl電極28と同じである。但し、本実施の形態においては、チップの周辺に沿ってチャネルストッパとして形成されるN型拡散領域、および、上記BSF効果によって光感度を上昇させるためにN型シリコン基板の裏面に形成されるN+層は省略している。
【0146】
本実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ131においては、チップ中心に対して点対称の位置に配置されているPゲート拡散領域133,133'を互いに結ぶ線上であって且つCH1とCH2とを分離する位置に、リンをドープした酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜138,138'をチップ中心に対して点対称に形成している。したがって、N型シリコン基板の表面におけるリンをドープした酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜138,138'領域のシリコン界面準位(Qss)を増大することができる。
【0147】
すなわち、本実施の形態によれば、上記N型シリコン基板内の少数キャリアである正孔をシリコン界面準位Qssが増大した領域において消滅させることができ、確実に正孔のライフタイムの低減を促進することができるのである。
【0148】
尚、本実施の形態においては、図12に示す上記リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜138,138'とAl電極136,136'との間隔L3の値と、2つのリンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜138,138'における互いの間隔L4の値とを、30μmよりも大きくしている。この上記間隔L3および間隔L4の値は、このフィールドプレート構造を用いて所望の400V以上の耐圧を得るために必要な最小距離なのである。さらに耐圧を上げる場合には、その耐圧に応じて上記間隔L3および間隔L4の値を拡大すればよい。
【0149】
(第8実施の形態)
本実施の形態における双方向フォトサイリスタチップは、上記第4実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ81におけるAl電極86,86'の周囲にもリンをドープした酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜を形成した構造を有している。
【0150】
図13は、本実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ152における概略構成を示すパターンレイアウト図である。また、図14は図13におけるE‐E'矢視断面図である。また、等価回路は図6と同じである。
【0151】
本実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ152におけるN型シリコン基板141,アノード拡散領域142,142',Pゲート拡散領域143,143',カソード拡散領域144,144',ゲート抵抗145,145',Al電極147およびN+層151は、上記第1実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ31におけるN型シリコン基板21,アノード拡散領域22,22',Pゲート拡散領域23,23',カソード拡散領域24,24',ゲート抵抗25,25',Al電極28およびN+層30と同じである。また、リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜148,Al電極149およびショートダイオード150は、第4実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ81におけるリンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜88,Al電極89およびショートダイオード90と同じである。但し、本実施の形態においては、チップの周辺に沿ってチャネルストッパとして形成されるN型拡散領域は省略している。
【0152】
本実施の形態においては、図13に示すように、Al電極146,146'を、Pゲート拡散領域143,143',ゲート抵抗145,145'およびアノード拡散領域142,142'を完全に覆うことが可能な最小の矩形状に形成する。つまり、上記各実施の形態におけるAl電極26,46,76,86,96,116,136よりも小さく形成する。そして、図14に示すように、N型シリコン基板141の表面に形成されたSiO2膜155上に形成されて、一部がリンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜148となっている酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜156において、Al電極146を取り囲む所定幅の領域156aにリンをドープしている。そして、酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜156上におけるリンがドープされていない領域に、SiN膜157,158を化学気相成長法によって形成している。さらに、SiN膜157上からリンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜156a上にかけてAlガードリング159を形成している。尚、本実施の形態の場合においては、Al電極149とAlガードリング159,159'との間隔L1の値を30μmよりも大きくしている。
【0153】
このように、本実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ152においては、リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜148を、CH1およびCH2と交差してチップ全幅に亘って形成している。したがって、転流特性を改善することができる。さらに、Al電極146,146'をPゲート拡散領域143,143',ゲート抵抗145,145'およびアノード拡散領域142,142'を完全に覆うことが可能な最小の矩形状に形成し、このAl電極146,146'を取り囲んでリンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜156a,156a'から成る透明膜のガードリングとAlガードリング159,159'とを形成して2重ガードリング構造としている。したがって、Pゲート拡散領域143,143'とN型シリコン基板141との接合領域の遮光面積が小さくなり、光感度を向上することができるのである。
【0154】
尚、本実施の形態においては、上記Al電極146,146'を取り囲んで、リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜156a,156a'とAlガードリング159,159'とで成る2重ガードリング構造を、上記第4実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ81に適用している。しかしながら、その他の実施の形態に適用して、光感度の向上を図っても一向に構わない。
【0155】
(第9実施の形態)
本実施の形態における双方向フォトサイリスタチップは、上記第4実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ81におけるPゲート拡散領域83,83'にショットキーバリアダイオードを形成した構造を有している。尚、以下の説明においては、上記第4実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ81と同じ部材には上記第4実施の形態の部材番号と同じ部材番号を付して、説明は省略する。
【0156】
図15は、本実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ161における概略構成を示すパターンレイアウト図である。また、図16は等価回路図である。
【0157】
上記Pゲート拡散領域83,83'におけるカソード拡散領域84,84'が形成されていない領域には、カソード拡散領域84,84'に並行してP型不純物が拡散されていない矩形の開口部(図示せず)を設けている。また、SiO2膜56(図5参照)におけるPゲート拡散領域84,84'の上記開口部の位置には、この開口部を取り囲むように開口(図示せず)を形成している。さらに、Al電極86,86'におけるSiO2膜56の上記開口の位置には、この開口を取り囲むように開口部164,164'を形成している。そして、Al電極86,86'の開口部164,164'内で且つSiO2膜56の上記開口内には、Al電極86,86'の開口部164,164'に沿って矩形のAl電極165,165'を形成している。その際に、Al電極86,86'とAl電極165,165'との間には、電気的に絶縁可能な空間が形成されている。
【0158】
以上のごとく、上記Al電極165,165'は、SiO2膜56の上記開口を介して、Pゲート拡散領域83,83'の上記開口部内におけるN型シリコン基板(図示せず)に直接接触している。こうして、Pゲート拡散領域83,83'と上記N型シリコン基板との間に、ショットキーバリアダイオード166,166'を形成している。ここで、転流時(交流電圧に対応して負荷電流が減衰し、保持電流IHのタイミングでフォトサイリスタがオフする過程)において、フォトサイリスタがオフする直前までPゲート拡散領域(NPNトランジスタQ2,Q4ベース領域)83,83'は飽和の状態であるが、その状態において、Pゲート拡散領域83,83'からN型シリコン基板への少数キャリア(ホール)の注入がショットキーバリアダイオード166,166'によって抑制される。したがって、N型シリコン基板内の残存キャリア量が減少し、更なる転流特性の改善を図ることができるのである。但し、上記Pゲート拡散領域83,83'の受光領域が減少するため、光感度が低下するデメリットがある。
【0159】
尚、上述の説明においては、ショットキーバリアダイオード166,166'を構成する金属材料としてAlを用いている。しかしながら、Alの代りにCr,Mo,Ti,Pt等の金属材料を用いても差し支えない。
【0160】
(第10実施の形態)
本実施の形態における双方向フォトサイリスタチップは、上記第8実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ152におけるPゲート拡散領域143,143'にショットキーバリアダイオードを形成した構造を有している。尚、以下の説明においては、上記第8実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ152と同じ部材には上記第8実施の形態の部材番号と同じ部材番号を付して、説明は省略する。
【0161】
図17は、本実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ171における概略構成を示すパターンレイアウト図である。また、等価回路は図16と同じである。
【0162】
本実施の形態においては、上記第8実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ152の場合と同様に、Al電極146,146'を必要最小限の大きさの矩形状に形成し、このAl電極146,146'を取り囲んでリンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜156a,156a'から成る透明膜のガードリングを形成している。したがって、Pゲート拡散領域143,143'とN型シリコン基板141との接合領域の遮光面積を小さくして、光感度を向上することができる。
【0163】
さらに、Pゲート拡散領域143,143'におけるカソード拡散領域144,144'が形成されていない領域には、上記第9実施の形態と同様の構成を有するショットキーバリアダイオード172,172'を形成している。したがって、Pゲート拡散領域143,143'からN型シリコン基板への少数キャリア(ホール)の注入が抑制される。その結果、上記N型シリコン基板内の残存キャリア量が減少し、更なる転流特性の改善を図ることができる。
【0164】
さらに、上記リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜148を、上記CH1およびCH2と交差して形成している。したがって、アノード拡散領域142,142'とカソード拡散領域144',144との間に電圧パルスが印加された場合に、光信号が無くても双方向フォトサイリスタ171がオンする誤動作を防止できる。すなわち、本実施の形態によれば、dv/dt特性を向上できる。
【0165】
すなわち、本実施の形態によれば、転流特性の改善およびdv/dt特性の向上と光感度の向上との両立を図ることができるのである。
【0166】
(第11実施の形態)
本実施の形態は、ゼロクロス機能を持たせた双方向フォトサイリスタチップに関する。図18は、本実施の形態の双方向フォトサイリスタチップを用いた光点弧カプラの等価回路図である。本実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ181は、上記第2実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ51と同様に、PNPトランジスタQ1とNPNトランジスタQ2とを有するCH1側のフォトサイリスタ182と、PNPトランジスタQ3とNPNトランジスタQ4とを有するCH2側のフォトサイリスタ183とを備え、PNPトランジスタQ1,Q3のベースにショートダイオード184を接続している。
【0167】
そして、上記CH1側のNPNトランジスタQ2のベースと電極T2との間に、ゲート抵抗185と並列にN型FET(電界効果トランジスタ)186を接続している。同様に、上記CH2側のNPNトランジスタQ4のベースと電極T1との間に、ゲート抵抗187と並列にN型FET188を接続している。そして、N型FET186のゲートをPNPトランジスタQ1のベースに接続する一方、N型FET187のゲートをPNPトランジスタQ3のベースに接続している。189はLEDである。
【0168】
したがって、上記電極T1‐電極T2間にバイアスされている電源電圧のゼロクロス点近傍においては、N型FET186,188はオフしており、NPNトランジスタQ2,Q4にはゲート抵抗185,187の抵抗値に応じたベース・エミッタ電圧が印加され、LED189からの光信号を受光するとPゲート拡散領域に発生する光電流の寄与によってNPNトランジスタQ2,Q4はオンする。これに対して、上記電源電圧のゼロクロス点から離れた時間においては、N型FET186,188はオンするため、NPNトランジスタQ2,Q4のベース・エミッタ間が短絡され、LED189からの光信号を受光してもNPNトランジスタQ2,Q4はオンできなくなる。
【0169】
こうして、上記電極T1‐電極T2間にバイアスされる電源電圧のゼロクロス点近傍のみにおいてフォトサイリスタ182,183をオンさせるゼロクロス機能が実現される。さらに、転流特性Icomを約100mArms以上にまで改善可能な上記第2実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ51を用いている。したがって、光点弧カプラの点流失敗をなくし、誤動作を少なくすることができる。
【0170】
尚、図18に示すゼロクロス機能を持たせた双方向フォトサイリスタチップ181の構成に、NPNトランジスタQ2,Q4のベース‐コレクタ間にショットキーバリアダイオードを形成して、ショットキーバリアダイオードを形成したゼロクロス機能を有する双方向フォトサイリスタチップを構成することも可能である。
【0171】
また、上記N型FET186,188は、制御端子を有する他のスイッチング素子で構成しても一向に構わない。
【0172】
また、上記第11実施の形態における光点弧カプラは、上記第2実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ51を用いているが、上記第1実施の形態,第3実施の形態〜第10実施の形態における双方向フォトサイリスタチップ31,71,81,91,120,131,152,161,171の何れか1つを用いても構わない。
【0173】
図19〜図21は、上記第1実施の形態〜第10実施の形態における双方向フォトサイリスタチップ31,51,71,81,91,120,131,152,161,171と図35および図36に示す従来の双方向フォトサイリスタチップ4とに関して、転流特性Icomとdv/dt特性と光感度IFTとを比較したものである。
【0174】
図19は、上記光感度IFTと転流特性Icomとの関係を示す図である。尚、図中の番号は実施形態の番号を表し、例えば「1」は「第1実施の形態」を意味している。また、従来の双方向フォトサイリスタチップ4については△で示している。表1に、各実施の形態および従来の双方向フォトサイリスタチップ4に関する光感度IFT(mA),転流特性Icom(mA)およびdv/dt(V/μs)特性の値を示す。但し、dv/dtの測定限界は3200V/μsであり、図20および図21においては、グラフを見やすくするために上記測定限界を超える値については3200V/μs以上の適当な値で示している。
【0175】
表1

【0176】
図19から分かるように、総ての実施の形態において、従来の双方向フォトサイリスタチップ4に比して上記転流特性値Icomが増大している。これは、総ての実施の形態において、上記CH1側のPゲート拡散領域23,43,73,83,93,113,133,143とCH2側のPゲート拡散領域23',43',73',83',93',113',133',143'との間に、リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜35a,57a,78,88,98,122a,124,138,138',148,156a,156a'が形成されている。したがって、上記N型シリコン基板の表面における上記CH1側のPゲート拡散領域と上記CH2側のPゲート拡散領域との間のシリコン界面準位(Qss)が増大し、N型シリコン基板内の少数キャリアである正孔を上記リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜の領域において消滅させることができ、上記正孔のライフタイムの低減を促進することができる。したがって、結果として転流特性が改善されるのである。
【0177】
また、上記第8,10実施の形態において、上記光感度値IFTが減少している。これは、Al電極146,146'を上記Pゲート拡散領域,ゲート抵抗およびアノード拡散領域を完全に覆うことが可能な最小の矩形状に形成し、このAl電極146,146'を取り囲んでリンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜156a,156a'から成る透明膜のガードリングを形成している。したがって、Al電極146,146'周囲の遮光面積を小さくでき、結果として光感度が向上されるのである。
【0178】
図20は、上記光感度IFTとdv/dt特性との関係を示す図である。尚、図中の番号は実施形態の番号を表している。図20から分かるように、第3,4,5,6,9,10実施の形態において上記dv/dt特性値が増大している。これは、第3,4,5,6,9,10実施の形態において、上記N型シリコン基板上に、上記CH1およびCH2と交差して、リンをドープした酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜78,88,98,122a,122a',124,124',148,156a,156a'が形成されている。したがって、上記アノード拡散領域とカソード拡散領域との間に急激な立ち上がりの電圧パルスが印加された場合に、本来光信号を受けるべき上記Pゲート拡散領域に変位電流が流れ込むことが抑制される。その結果、光信号が無くても双方向フォトサイリスタ71,81,91,120,161,171がオンする誤動作は生じなく、dv/dt特性を向上できるのである。
【0179】
図21は、上記転流特性Icomとdv/dt特性との関係を示す図である。尚、図中の番号は実施形態の番号を表している。図21から分かるように、総ての実施の形態において上記転流特性値Icomが増大し、第3,4,5,6,9,10実施の形態において上記dv/dt特性値が増大している。
【0180】
(第12実施の形態)
本実施の形態は、上記第1実施の形態〜第11実施の形態の双方向フォトサイリスタチップとLEDとで構成された光点弧カプラを用いたSSRに関する。
【0181】
図22は、上記SSRの等価回路図である。SSR198は、LED等の発光素子191と点弧用の双方向フォトサイリスタ192とから成る光点弧カプラ193と、負荷を実制御するための双方向サイリスタ(メインサイリスタ)194と、抵抗器195や容量196等で成るスナバ回路197とで構成されている。ここで、点弧用の双方向フォトサイリスタ192として、上記第1実施の形態〜第11実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ31,51,71,81,91,120,131,152,161,171,181を用いている。上記回路構成において、実際に負荷電流を制御するのはメインサイリスタ194であり、双方向フォトサイリスタ192は、メインサイリスタ194を光で点弧するために用いられるのである。
【0182】
本実施の形態においては、上記点弧用の双方向フォトサイリスタ192として、上記転流特性Icomを約100mArms以上にまで改善可能な上記第1実施の形態〜第11実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ31,51,71,81,91,120,131,152,161,171,181を用いている。したがって、点流失敗のない光点弧カプラ193を用いた、誤動作の少ないSSR198を得ることができるのである。
【0183】
さらに、上記点弧用の双方向フォトサイリスタ192として、上記第3実施の形態〜第6実施の形態,第9実施の形態および第10実施の形態のdv/dt特性が向上している双方向フォトサイリスタチップ71,81,91,120,161,171を用いれば、更に誤動作の少ないSSR198を得ることができる。さらに、点弧用の双方向フォトサイリスタ192として、上記第8実施の形態および第10実施の形態の転流特性の改善と光感度の向上とが図られた双方向フォトサイリスタチップ152,171を用いれば、更に光感度の高いSSR198を得ることができる。
【0184】
(第13実施の形態)
ところで、上記第11実施の形態に示すようなゼロクロス機能付き双方向フォトサイリスタの場合には、上述した一般的な非ゼロクロス型双方向サイリスタの課題に加えて、以下に述べるような2つの特有な課題がある。
【0185】
先ず、第1に、図18に示す等価回路において、NPNトランジスタQ2,Q4の電流増幅率Hfe(npn)を、非ゼロクロス型双方向サイリスタの場合に比して約5〜10倍に高くする必要がある。その理由は、ゼロクロス点近傍の電圧以下でのみトリガできるという時間的制限がある関係上、高速動作応答の必要があるためである。特に、上記SSRを構成する双方向フォトサイリスタチップとして用いられる際にスイッチングする交流回路中にL負荷が存在する場合には、位相ズレによる動作遅れが生じてオンできない場合が生ずるからである。しかしながら、耐ノイズ特性は、電流増幅率Hfe(npn)と強い相関があり、電流増幅率Hfe(npn)を高くするほど低下するという問題がある。
【0186】
第2に、上記N型FET186,188をMOS(金属酸化膜半導体)FETで構成する場合に、このMOSFETに寄生するトランジスタの動作を抑制し、短いパルス状のノイズ電圧が印加された場合でも上記MOSFETを完全動作させる必要がある。
【0187】
上述したように、ゼロクロス機能とは、フォトサイリスタ182,183のPゲート‐カソード間にNチャネルのエンハンスメントMOSFET186,188を付加して、約30V以上のAC電圧では上記Pゲート‐カソード間を短絡してフォトサイリスタ182,183が動作できないようにするものである。これによって、トリガするタイミングが低電圧時に限定されるために、トリガ時に流れる動作電流も低く制限されることになる。したがって、ゼロクロス機能を備えることは、制御回路を設計する上での安全設計につながるというメリットがある。
【0188】
さらに、上記MOSFET186,188は、上記ゼロクロス機能の他に、機器の電源投入時に発生し易い1KV/μsec程度の高いdv/dtのノイズ電圧が誤印加された場合であっても、フォトサイリスタ182,183のPゲート‐カソード間を短絡して誤動作を防止する過電圧保護回路としても機能する。しかしながら、MOSFET186,188を内蔵していても、パルス状のノイズ電圧が印加された場合には上記誤動作を防ぎきれない場合がある。
【0189】
ここで、上記パルス状のノイズ電圧とは、ACラインに重畳される立ち上がりが急激で短いパルス状のノイズ電圧のことである。尚、この場合のパルス状の条件は、パルス幅が0.1μsec〜1.0μsecであり、電圧が4KV以下程度である。したがって、このような短いパルス状の電圧が誤印加された場合には、過電圧保護回路としてのMOSFET186,188が動作しきれず、この間にサイリスタ182,183が誤動作してしまうためノイズ耐量が低下するという問題がある。
【0190】
これは、立上りが急峻な電圧が印加された状態において、上記MOSFET186,188のN型基板‐P型ウエル‐N型ドレイン拡散で構成される寄生トランジスタの経路にも変位電流が流れ込み、その変位電流が寄生トランジスタで増幅されて配線を通ってサイリスタ182,183のPゲートに流れ込むことになる。この電流がサイリスタ182,183のトリガ電流として作用するために、双方向フォトサイリスタの誤動作に至るのである。
【0191】
本第13実施の形態〜第18実施の形態は、高速動作応答を得るためにNPNトランジスタQ2,Q4の電流増幅率Hfe(npn)を高くすると耐ノイズ特性が低下すること、MOSFET186,188に形成された寄生トランジスタに変位電流が流れ込んで誤動作に至ること等の、ゼロクロス機能付きの双方向フォトサイリスタ特有の問題を解決するものである。
【0192】
図23は、図18に示すゼロクロス機能付き双方向フォトサイリスタチップ181のフォトサイリスタ182におけるNPNトランジスタQ2およびゼロクロス機能を果たすN型MOSFET186の箇所の断面図である。N型シリコン基板201の表面に形成されたPゲート拡散領域202と、Pゲート拡散領域202内表面に形成されたカソード拡散領域(N型)203と、N型シリコン基板201とによって、NPNトランジスタQ2を構成している。さらに、N型シリコン基板201の表面にPウェル拡散領域204が形成され、このPウェル拡散領域204の表面には、N型MOSFET186のソース拡散領域(N型)205とドレイン拡散領域(N型)206とが形成されている。尚、ゲート電圧を制御するVP(Voltage Probe)回路209に接続されたゲート領域207は、簡略化して描かれている。
【0193】
そして、上記第11実施の形態で述べたように、上記カソード拡散領域203とPウェル拡散領域204とソース拡散領域205とは、ゲート抵抗185の一端および電極T2に接続されると共に接地されている。また、ゲート抵抗185の他端には、Pゲート拡散領域202とドレイン拡散領域206とが接続されている。
【0194】
本実施の形態においては、上記Pウェル拡散領域204の深さaをPゲート拡散領域202の深さb以上に深く、1.3倍の深さに形成している。こうすることによって、N型MOSFET186のドレイン拡散領域206とPウェル拡散領域204とN型シリコン基板201とで形成される寄生トランジスタ208の電流増幅率Hfeを、Pウェル拡散領域の深さがPゲート拡散領域の深さよりも浅い通常のゼロクロス機能付き双方向サイリスタチップの場合よりも下げることができる。
【0195】
したがって、上記Pウェル拡散領域204とN型シリコン基板201との間に、パルス幅が0.1μsec〜1.0μsecであり電圧が4KV以下程度の短いパルス状の逆電圧のノイズ電圧が印加された場合に、Pウェル拡散領域204とN型シリコン基板201との接合容量を介して過渡的に寄生トランジスタ208に流れ込む上記変位電流の増幅が抑制される。すなわち、本実施の形態によれば、従来、Pゲート拡散領域202に流れ込んでトリガ電流として作用していた上記変位電流を抑制して、サイリスタ182が正常に動作可能な上記パルス状のノイズ電圧の最大値であるパルスノイズ耐量を向上させることができるのである。
【0196】
ところで、上記Pウェル拡散領域204の深さaを、Pゲート拡散領域202の深さbの1.3倍を越えると、Pウェル拡散領域204を形成する際に拡散温度を上げて長時間拡散する必要が生ずるため好ましくない。したがって、Pウェル拡散領域204の深さaとしては、Pゲート拡散領域202の深さbの1倍以上且つ1.3倍以下が望ましい。
【0197】
(第14実施の形態)
図24(a)は、図18に示すゼロクロス機能付き双方向フォトサイリスタチップ181のフォトサイリスタ182におけるゼロクロス機能を果たすN型MOSFET186の他の平面図である。また、図24(b)は、図24(a)におけるF‐F'矢視断面である。第13実施の形態と同じ部材には同じ番号を付している。本実施の形態では、N型MOSFET186のPウェル拡散領域204の表面に形成されるドレイン拡散領域(N型)210の面積を、ソース拡散領域(N型)211の面積よりも小さくしている。
【0198】
尚、上記ドレイン拡散領域210とPウェル拡散領域204とN型シリコン基板201とによって寄生トランジスタ212が形成され、N型シリコン基板201の容量成分によって寄生トランジスタ212のコレクタに接続された寄生容量213が形成され、Pウェル拡散領域204の抵抗成分によって寄生トランジスタ212のベースに接続された寄生抵抗(シリーズ抵抗)214が形成される。ここで、寄生容量213は、寄生トランジスタ212に流れ込もうとする上記変位電流の大きさを決定するものであって、容量値はできるだけ小さい方が上記変位電流の値が低くなるので好ましい。また、シリーズ抵抗214は、寄生トランジスタ212を流れようとする上記変位電流を、GNDに接続されている経路(Pウェル拡散領域204を介した経路、および、Pウェル拡散領域204とソース拡散領域211とを介した経路)に分岐する割合を決定するものであり、抵抗値ができるだけ小さい(Pウェル拡散領域204の不純物濃度が高い、GNDまでの距離が短い)方が好ましい。
【0199】
ところで、上記N型シリコン基板201とPウェル拡散領域204との接合容量で発生し、寄生トランジスタ212に流れ込んだ変位電流は、以下に示す3つの経路に分流される。
(a)GNDに接続されているPウェル拡散領域204を介した経路
(b)GNDに接続されているPウェル拡散領域204およびソース拡散領域211を介した経路
(c)ドレイン拡散領域210を介してPゲート拡散領域に至る経路
そして、上記変位電流が上記各経路に分流される比率は、Pウェル拡散領域204とソース拡散領域211とドレイン拡散領域210との面積比と、シリーズ抵抗214の抵抗値とによって決定される。
【0200】
本実施の形態においては、上記寄生トランジスタ212のエミッタ面積を低減して、寄生トランジスタ212のコレクタ電流を低減している。これによって、上述したように、上記変位電流のソース拡散領域211(GND電位)への分流比が大きくなり、ソース拡散領域211に流れ易くすることができる。その結果、寄生トランジスタ212の電流増幅率Hfeの上記変位電流に対する影響を軽減して、パルスノイズ耐量を向上させることができるのである。
【0201】
(第15実施の形態)
図25(a)は、図18に示すゼロクロス機能付き双方向フォトサイリスタチップ181のフォトサイリスタ182におけるゼロクロス機能を果たすN型MOSFET186の他の平面図である。また、図25(b)は、図25(a)におけるG‐G'矢視断面である。第13実施の形態と同じ部材には同じ番号を付している。
【0202】
本実施の形態においては、図25に示すように、Pウェル拡散領域204の表面に、平行に配列された2本の拡散領域215a,215bの一端を連結拡散領域215cで連結されてなる平面「U」字状のソース拡散領域(N型)215を形成し、ソース拡散領域215の2本の拡散領域215a,215bの間に、拡散領域215a,215bと平行に1本のドレイン拡散領域(N型)216を形成している。こうして、ドレイン拡散領域216をソース拡散領域215で囲む構成を有している。そして、ゲート領域217は、Alで形成されると共に、ドレイン拡散領域216とソース拡散領域215との隙間上に、ゲート領域217の縁部がドレイン拡散領域216およびソース拡散領域215の縁部と重なるように形成されている。そして、本実施の形態においても、第14実施の形態の場合と同様に、ドレイン拡散領域216の面積をソース拡散領域215の拡散領域215a,215bの面積よりも小さくしている。
【0203】
本実施の形態によれば、上記第14実施の形態の場合と同様に、N型MOSFET186における寄生トランジスタ218のエミッタ面積を低減して、寄生トランジスタ218のコレクタ電流を低減することができる。さらに、ソース拡散領域215は、ドレイン拡散領域216に対する面積比を上記第14実施の形態の場合に比して大きくすると共に、ドレイン拡散領域216を取り囲むように形成されている。したがって、上記変位電流のソース拡散領域215(GND電位)への分流比を、上記第14実施の形態の場合に比して大幅に上げることができる。その結果、寄生トランジスタ218の電流増幅率Hfeの上記変位電流に対する影響をより軽減して、パルスノイズ耐量を向上させることができるのである。また、Pウェル拡散領域204におけるゲート領域217の延在方向への長さを、例えば、上記第14実施の形態と同じにした場合は、ゲート領域217およびソース拡散領域215の長さを略2倍にすることができる。したがって、ゲート領域217およびソース拡散領域215の長さを上記第14実施の形態と同じにすれば、双方向フォトサイリスタチップ181のサイズの縮小化を図ることができるのである。
【0204】
(第16実施の形態)
図26(a)は、図18に示すゼロクロス機能付き双方向フォトサイリスタチップ181のフォトサイリスタ182におけるゼロクロス機能を果たすN型MOSFET186の他の平面図である。また、図26(b)は、図26(a)におけるH‐H'矢視断面である。上記第13実施の形態と同じ部材には同じ番号を付している。
【0205】
本実施の形態においては、図26に示すように、上記第13実施の形態におけるPウェル拡散領域204の周囲をP+の補償拡散領域に置き換えた構成を有している。すなわち、図26において、N型MOSFET186のソース拡散領域205は、Pウェル拡散領域221内表面に形成されている。これに対して、ドレイン拡散領域206は、幅L1だけPウェル拡散領域221の表面内に位置して形成されている。そして、N型シリコン基板201の表面におけるPウェル拡散領域221の周囲には、GNDに接続されたP+補償拡散領域222が形成されている。こうして、ドレイン拡散領域206におけるPウェル拡散領域221とオーバーラップしていない領域は、P+補償拡散領域222によって囲まれているのである。ここで、ドレイン拡散領域206とPウェル拡散領域221とのオーバーラップ長L1は10μmである。また、P+補償拡散領域222のP型不純物の濃度は1×1019cm-3である。尚、Pウェル拡散領域221のP型不純物の濃度は5×1016cm-3である。また、ゲート領域217は、Alで形成されている。
【0206】
以上のごとく、本実施の形態においては、上記N型MOSFET186におけるPウェル拡散領域221の周囲に接続するように、P+補償拡散領域222を形成すると共に、ソース拡散領域205をPウェル拡散領域221の内部に形成する一方、ドレイン拡散領域206をその一部がP+補償拡散領域222に接触するように形成している。したがって、ドレイン拡散領域206とPウェル拡散領域221とのオーバーラップ長、つまり、N型MOSFET186のチャネル端からP+補償拡散領域222までの距離L1を10μm程度に小さくでき、寄生トランジスタ223を構成するベース領域を狭くすることができる。その結果、寄生トランジスタ223のコレクタ電流を大幅に低減することができるのである。
【0207】
また、上記Pウェル拡散領域221の周囲には、Pウェル拡散領域221に接続されたP+補償拡散領域222を形成すると共に、GNDに接続している。したがって、寄生トランジスタ223のベースに接続されたシリーズ抵抗224の抵抗値を小さくすることができる。
【0208】
したがって、上記変位電流が、上記GNDに接続されている経路に分流される割合を、上記第14実施の形態の場合に比して大幅に上げることができる。その結果、寄生トランジスタ223の電流増幅率Hfeの上記変位電流に対する影響をより軽減して、パルスノイズ耐量を向上させることができるのである。
【0209】
尚、上記P+補償拡散領域222のP型不純物の濃度は、高い程シリーズ抵抗224の抵抗値が小さくなるため有効である。但し、P+補償拡散領域222は、P型不純物の濃度が5×1016cm-3であるPウェル拡散領域221の表面濃度を補償する(濃度を補う)であるから、そのP型不純物の濃度は1×1017cm-3以上である必要がある。また、現実的な製造方法を考えると、P型不純物の濃度は1×1019cm-3程度が好ましいと言える。
【0210】
上記オーバーラップ長、つまり、N型MOSFET186のチャネル端からP+補償拡散領域222までの距離L1は、10μmを超えると寄生トランジスタ223を構成するベース領域を狭くすることができず、本実施の形態の効果を得ることができない。また、0μmを下回ると、N型MOSFET186のチャネル濃度(つまり、N型MOSFET186の閾値電圧)に影響を与えることになる。したがって、上記オーバーラップ長L1は、0μm以上且つ10μm以下である必要がある。
【0211】
(第17実施の形態)
図27(a)は、図18に示すゼロクロス機能付き双方向フォトサイリスタチップ181のフォトサイリスタ182におけるゼロクロス機能を果たすN型MOSFET186の他の平面図である。また、図27(b)は、図27(a)におけるI‐I'矢視断面である。上記第13実施の形態および第15実施の形態と同じ部材には、同じ番号を付して詳細な説明は省略する。
【0212】
本実施の形態におけるN型MOSFET186は、上記第15実施の形態と上記第16実施の形態とを併用した構成を有している。すなわち、図27において、ドレイン拡散領域216は、Pウェル拡散領域225内表面に形成されている。また、ソース拡散領域215は、拡散領域215aの一側部がPウェル拡散領域225の一側部と幅L1だけオーバーラップして形成され、拡散領域215bの一側部がPウェル拡散領域225の他側部と幅L1だけオーバーラップして形成され、連結拡散領域215cはPウェル拡散領域225内表面に形成されている。そして、N型シリコン基板201の表面におけるPウェル拡散領域225の周囲には、GNDに接続されたP+補償拡散領域226が形成されている。こうして、ソース拡散領域215におけるPウェル拡散領域225とオーバーラップしていない領域は、P+補償拡散領域226によって囲まれると共に、P+補償拡散領域226と接触しているのである。
【0213】
ここで、上記ソース拡散領域215とドレイン拡散領域216との間で構成されるN型MOSFET186のチャネル領域は、図27(a)において、a点からドレイン拡散領域216の周囲を回ってb点に至る経路に形成されており、その長さは600μmである。また、ソース拡散領域215とPウェル拡散領域225とのオーバーラップ長L1は10μmである。また、P+補償拡散領域226におけるP型不純物の濃度は1×1019cm-3である。尚、Pウェル拡散領域225におけるP型不純物の濃度は5×1016cm-3である。また、ゲート領域217は、Alで形成されている。
【0214】
以上のごとく、本実施の形態によれば、上記第15実施の形態の場合と同様に、寄生トランジスタ227のエミッタ面積を低減して、寄生トランジスタ227のコレクタ電流を低減することができる。さらに、ソース拡散領域215は、ドレイン拡散領域216に対する面積比を大きくすると共に、上記ドレイン拡散領域216を取り囲むように形成されている。したがって、上記変位電流のソース拡散領域215(GND電位)への分流比を、上記第14実施の形態の場合に比して大幅に上げることができる。また、上記第16実施の形態の場合と同様に、Pウェル拡散領域225の周囲には、Pウェル拡散領域225に接続されたP+補償拡散領域226を形成すると共に、GNDに接続している。したがって、寄生トランジスタ227のベースに接続されたシリーズ抵抗228の抵抗値を小さくすることができる。以上の結果、寄生トランジスタ227の電流増幅率Hfeの上記変位電流に対する影響をより軽減して、パルスノイズ耐量を向上させることができる。
【0215】
さらに、上記N型MOSFET186のソース拡散領域215を、ドレイン拡散領域216の周囲を取り囲んで「U」字状に形成することによって、600μmのチャネル領域の幅さを確保している。したがって、上記第14実施の形態のごとくソース拡散領域211を矩形に形成する場合に比して、同じN型MOSFET186の面積に対してチャネル領域の幅を長くして、オン抵抗を下げることができる。その結果、上記パルス状のノイズ電圧がN型シリコン基板201と電極T1,T2との間に印加された場合でもN型MOSFET186が動作可能になり、パルスノイズ耐量をより向上させることができる。N型MOSFET186のオン抵抗は、例えば図24に示すようなパターンサイズを単調に拡大していけば低減することができる。しかしながら、その場合には、チップサイズも大きくなることと、ドレイン拡散領域のサイズが大きくなって上記寄生トランジスタの電流増幅率Hfeが増大することのデメリットが生ずる。そのため、本実施の形態におけるN型MOSFET186の構造は、非常に有効であるといえる。
【0216】
また、本実施の形態においては、N型MOSFET186のチャネル領域の幅を600μmとしているが、300μm以上であればオン抵抗を下げる効果を得ることができる。上限は特にないが、得ようとする双方向フォトサイリスタチップのチップサイズによって制限されることになる。
【0217】
(第18実施の形態)
ところで、上述したように、ゼロクロス機能付きの双方向フォトサイリスタ特有の問題として、MOSFET186,188に形成された寄生トランジスタに変位電流が流れ込んで誤動作に至ることの他に、高速動作応答を得るためNPNトランジスタQ2,Q4の電流増幅率Hfe(npn)を高くすると耐ノイズ特性が低下することがある。本実施の形態は、上記2つの問題の解決を図ることができるゼロクロス機能付き双方向フォトサイリスタチップに関する。
【0218】
図28は、本実施の形態の双方向フォトサイリスタチップにおける概略構成を示すパターンレイアウト図である。また、図29は、図28におけるJ‐J'矢視断面図である。また、図30は、本実施の形態の双方向フォトサイリスタチップにおける等価回路図である。
【0219】
本実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ251におけるN型シリコン基板231,Pゲート拡散領域233,233',カソード拡散領域234,234'およびゲート抵抗235,235'は、上記第1実施の形態の双方向フォトサイリスタチップ31におけるN型シリコン基板21,Pゲート拡散領域23,23',カソード拡散領域24,24'およびゲート抵抗25,25'と、形状は異なっているが同じ機能を有している。
【0220】
また、チャネル分離領域236は、上記第2実施の形態において図4に示すCH1側のPゲート拡散領域43上からCH2側のPゲート拡散領域43'上にかけてのパシベーション構造を、各CH1のフォトサイリスタ252およびCH2のフォトサイリスタ253を横断して双方向フォトサイリスタチップ251の全幅に亘って延在させて形成している。したがって、上記リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜およびAl電極が双方向フォトサイリスタチップ251の全幅に亘って形成されている。さらに、N型シリコン基板231の表面におけるチャネル分離領域236の下側に、P型拡散領域238とN型拡散領域239とがAl電極(図示せず)およびN型シリコン基板231を介して短絡されたショートダイオード237が形成されている。尚、図29の断面図においては、チャネル分離領域236を含むパシベーション構造は省略している。
【0221】
本実施の形態におけるアノード拡散領域232,232'は、図29に示すように、上記第17実施の形態におけるN型MOSFET186の場合と同様に、Pウェル拡散領域240とP+補償拡散領域241とによって構成されている。その場合、上記第13実施の形態と同様に、Pウェル拡散領域240の深さcを、Pゲート拡散領域233'の深さdの1.3倍にしている。そして、このアノード拡散領域232,232'の表面に、上記第17実施の形態におけるN型MOSFET186と同じ構造を有するゼロクロス用のN型MOSFET242,242'が形成されている。したがって、N型MOSFET242に生ずる寄生トランジスタ244における電流増幅率Hfeの上記変位電流に対する影響を軽減すると共に、N型MOSFET242,242'のチャネル領域の幅を長くしてオン抵抗を下げることができ、上記パルスノイズ耐量を向上させることができるのである。尚、243,243'は、N型MOSFET242,242'のゲート領域に接続されたVP回路である。
【0222】
ところで、上述したように、上記NPNトランジスタQ2,Q4の電流増幅率Hfe(npn)を高く(つまり、光感度を高く)して高速動作応答を行おうとすると耐ノイズ特性が低下し、耐ノイズ特性と光感度とはトレードオフの関係にある。そこで、耐ノイズ特性と光感度とを適正化する(光感度を下げずに耐ノイズ特性を上げる)には、ノイズ特性に最も影響するNPNトランジスタQ2,Q4の電流増幅率Hfe(npn)を適正値に固定し、PNPトランジスタQ1,Q3の電流増幅率Hfe(pnp)を下げると共に、ゲート抵抗235,235'の抵抗値を上げることが有効である。
【0223】
そこで、本実施の形態においては、以下のごとく、PNPトランジスタQ1,Q3の電流増幅率Hfe(pnp)を下げるのである。すなわち、本実施の形態においては、双方向フォトサイリスタチップ251の全幅に亘って、ショートダイオード237を形成している。したがって、N型シリコン基板231内の少数キャリアである正孔が、ショートダイオード237を構成するP型拡散領域238に吸収されて、上記正孔のライフタイムが低減される。その結果、アノード拡散領域232,232'とN型シリコン基板231とPゲート拡散領域233,233'とで形成されるPNPトランジスタQ1,Q3の電流増幅率Hfe(pnp)を低減することができるのである。
【0224】
すなわち、本実施の形態によれば、ノイズ特性に最も影響するNPNトランジスタQ2,Q4の電流増幅率Hfe(npn)を所望の耐ノイズ特性が得られる値に設定すると共に、ゼロクロス機能付きの双方向フォトサイリスタとして必要な光感度と高速動作とを維持することができる。さらに、N型MOSFET242に生ずる寄生トランジスタ244の電流増幅率Hfeの上記変位電流に対する影響を軽減すると共に、N型MOSFET242のオン抵抗を下げて、パルスノイズ耐量を向上させることができるのである。
【0225】
上記第13実施の形態〜第18実施の形態によるゼロクロス機能付き双方向フォトサイリスタに特有の問題の解決方法は、単独で実行してもよいし、適宜組み合わせて実行しても差し支えない。
【0226】
尚、上記第13実施の形態〜第18実施の形態では、通常のN型MOSFETとは異なる構造のN型MOSFET186について述べている。ここで、上記「通常のN型MOSFET」とは、図31にパターンレイアウトを示し、図32に断面を示すような、Pウェル拡散領域262の深さeがPゲート拡散領域263の深fさよりも浅く、ソース拡散領域264の面積とドレイン拡散領域265の面積とが略同じであり、ソース拡散領域264およびゲート領域266が直線状であり、Pウェル拡散領域262の周囲にP+補償拡散領域が形成されていないN型MOSFET261を指す。しかしながら、上記第1実施の形態〜第12実施の形態に示すような構造のチャネル分離領域267を有していれば、図31および図32に示すような通常のN型MOSFETを用いていても、図18に示すゼロクロス機能付き双方向フォトサイリスタチップ181の範疇であることは言うまでもない。
【0227】
以下、上記第13実施の形態〜第18実施の形態に示す構造のN型MOSFET186を用いたゼロクロス機能付き双方向フォトサイリスタチップ181と、図31および図32に示す構造の通常のN型MOSFETを用いた標準のゼロクロス機能付き双方向フォトサイリスタチップ(上記チャネル分離領域を持たない)とを用いたSSRに対して行ったパルスノイズ評価について述べる。図33に、印加したパルスノイズのパルス幅と耐量(耐電圧)とを示す。この評価は、図34に示すパルスノイズ試験回路を用いて行った。図34中、271は、上記第13実施の形態〜第18実施の形態に示す構造のN型MOSFET186に上記通常のN型MOSFETを加えた合計7種類のN型MOSFETを用いたゼロクロス機能付き双方向フォトサイリスタチップの何れか一つであり、LED272と組み合わせて光点弧カプラ273を形成し、パルスノイズ発生器274から0.1μsec〜1μsecの10段階のノイズ幅のパルスノイズを電圧0V〜4KVで変化させて印加し、正常に動作する最大電圧値を得た。尚、図33中のアルファベットは実施の形態を表し、「a〜f」は「第13実施の形態〜第18実施の形態」に対応している。
【0228】
表2には、上記各実施の形態および通常のN型MOSFETを用いたゼロクロス機能付き双方向フォトサイリスタチップに関するノイズ幅(μsec)別のパルスノイズ耐量(V)を示す。但し、パルスノイズの電圧の測定限界は4KVであり、図33においては、グラフを見やすくするために上記測定限界を超える値については4KV以上の適当な値で示している。
【0229】
表2

【0230】
図33および表2より、全体的に、パルス幅が短い場合にはパルスノイズ耐量が低く、パルス幅が長くなるに連れてパルスノイズ耐量が高くなる。これは、パルス幅が短いとN型MOSFETを駆動するゲート電圧の幅も短く、上記過電圧保護回路として機能するN型MOSFETの動作応答が不十分である(パルスノイズに対して追従できない)のに対して、パルス幅が長くなるに連れてN型MOSFETの動作応答が改善されているためである。
【0231】
また、上記通常のN型MOSFETを用いたゼロクロス機能付き双方向フォトサイリスタチップの場合には、全ノイズ幅において、パルスノイズ耐量が低く、高々1850Vである。これに対して、上記第13実施の形態〜第18実施の形態に示す構造のN型MOSFET186を用いたゼロクロス機能付き双方向フォトサイリスタチップの場合には、N型MOSFETの構造の差異に基づく効果の程度に応じて、全体的にパルスノイズ耐量が改善されており、パルス幅が短い場合であっても上記通常のN型MOSFETを用いた場合に比して高いパルスノイズ耐量を呈している。なかでも、上記第17実施の形態および第18実施の形態の場合には、上記第13実施の形態〜第16実施の形態を組み合わせた構造のN型MOSFETを用いているため、その効果の改善も大きいと言える。
【図面の簡単な説明】
【0232】
【図1】この発明の双方向フォトサイリスタチップにおけるパターンレイアウト図である。
【図2】図1におけるB‐B'矢視断面図である。
【図3】図1に示す双方向フォトサイリスタチップにおける等価回路図である。
【図4】図1とは異なる双方向フォトサイリスタチップにおけるパターンレイアウト図である。
【図5】図4におけるC‐C'矢視断面図である。
【図6】図4に示す双方向フォトサイリスタチップにおける等価回路図である。
【図7】図1および図4とは異なる双方向フォトサイリスタチップにおけるパターンレイアウト図である。
【図8】図1,図4および図7とは異なる双方向フォトサイリスタチップにおけるパターンレイアウト図である。
【図9】図1,図4,図7および図8とは異なる双方向フォトサイリスタチップにおけるパターンレイアウト図である。
【図10】図1,図4,図7〜図9とは異なる双方向フォトサイリスタチップにおけるパターンレイアウト図である。
【図11】図10におけるD‐D'矢視断面図である。
【図12】図1,図4,図7〜図10とは異なる双方向フォトサイリスタチップにおけるパターンレイアウト図である。
【図13】図1,図4,図7〜図10および図12とは異なる双方向フォトサイリスタチップにおけるパターンレイアウト図である。
【図14】図13におけるE‐E'矢視断面図である。
【図15】図1,図4,図7〜図10,図12および図13とは異なる双方向フォトサイリスタチップにおけるパターンレイアウト図である。
【図16】図15に示す双方向フォトサイリスタチップにおける等価回路図である。
【図17】図1,図4,図7〜図10,図12,図13および図15とは異なる双方向フォトサイリスタチップにおけるパターンレイアウト図である。
【図18】図1,図4,図7〜図10,図12,図13,図15および図17とは異なる双方向フォトサイリスタチップを用いた光点弧カプラの等価回路図である。
【図19】光感度IFTと転流特性Icomとの関係を示す図である。
【図20】光感度IFTとdv/dt特性との関係を示す図である。
【図21】転流特性Icomとdv/dt特性との関係を示す図である。
【図22】SSRの等価回路図である。
【図23】図18に示すゼロクロス機能付き双方向フォトサイリスタチップにおけるN型MOSFETの箇所の断面図である。
【図24】図23とは異なるN型MOSFETの平面図および断面図である。
【図25】図23および図24とは異なるN型MOSFETの平面図および断面図である。
【図26】図23〜図25とは異なるN型MOSFETの平面図及び断面図である。
【図27】図23〜図26とは異なるN型MOSFETの平面図及び断面図である。
【図28】図27に示すN型MOSFETを用いたゼロクロス機能付き双方向フォトサイリスタチップにおけるパターンレイアウト図である。
【図29】図28におけるJ‐J'矢視断面図である。
【図30】図28に示すゼロクロス機能付き双方向フォトサイリスタチップにおける等価回路図である。
【図31】通常のN型MOSFETを用いたゼロクロス機能付き双方向フォトサイリスタチップにおけるパターンレイアウト図である。
【図32】図31における断面図である。
【図33】印加したパルスノイズのパルス幅とパルスノイズ耐量との関係を示す図である。
【図34】パルスノイズ試験回路を示す図である。
【図35】従来の双方向フォトサイリスタにおけるパターンレイアウト図である。
【図36】図35におけるA‐A'矢視断面図である。
【図37】図35に示す双方向フォトサイリスタチップにおける等価回路図である。
【図38】光入力によってCH1がオンしている状態を示す断面図である。
【図39】光入力が無いのにCH2がオン(転流失敗)した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0233】
21,41,111,141,201,231…N型シリコン基板、
22,22',42,42',72,72',82,82',92,92',112,112',132,132',142,142'…アノード拡散領域(P型)、
23,23',43,43',73,73',83,83',93,93',113,113',133,133',143,143',202,233,233',263…Pゲート拡散領域(P型)、
24,24',44,44',74,74',84,84',94,94',114,114',134,134',144,144',203,234,234'…カソード拡散領域(N型)、
25,25',45,45',75,75',85,85',95,95',115,115',135,135',145,145',185,187,235,235'…ゲート抵抗、
26,26',37,46,46',59,76,76',79,86,86',89,96,96',99,116,116',136,136',146,146',149,165,165'…Al電極、
29,50,80,101,236,267…チャネル分離領域、
30,49,119,151…N+層、
31,51,71,81,91,120,131,152,161,171,181,192,251…双方向フォトサイリスタチップ、
32,52,162,182,252…CH1のフォトサイリスタ、
33,53,163,183,253…CH2のフォトサイリスタ、
34,56,56',121,155…SiO2膜、
35,57,57',122,156…酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜、
35a,57a,57a',78,88,98,122a,122a',124,124',138,138',148,156a,156a'…リン・酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜、
36,58,58',123,157,158…SiN膜、
38,48,118,159…Alガードリング、
39,61…正孔、
54,238…P型拡散領域、
55,55',239…N型拡散領域、
60,90,100,184,150,237…ショートダイオード、
166,166',172,172'…ショットキーバリアダイオード、
186,188,261…N型FET、
189,191…LED、
193…光点弧カプラ、
194…メインサイリスタ、
197…スナバ回路、
198…SSRP、
204,221,225,240,262…ウェル拡散領域、
205,211,215,264…ソース拡散領域(N型)、
206,210,216,265…ドレイン拡散領域(N型)、
207,217,266…ゲート領域、
208,212,218,223,227,244…寄生トランジスタ、
214,224,228…シリーズ抵抗、
222,226,241…P+補償拡散領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の基板と、
上記第1導電型の基板の表面に設けられると共に、第2導電型の第1拡散層と、上記第2導電型の第2拡散層と、この第2拡散層内に形成された上記第1導電型の第3拡散層と、を含む一対のフォトサイリスタ部と
を備え、
上記一対のフォトサイリスタ部のうちの一方は上記半導体チップにおける一側に配置される一方、他方は上記半導体チップにおける他側に配置されており、
上記一方のフォトサイリスタ部を構成する上記第1拡散層は、上記他方のフォトサイリスタ部を構成する上記第2拡散層および第3拡散層と対向しており、
上記他方のフォトサイリスタ部を構成する上記第1拡散層は、上記一方のフォトサイリスタ部を構成する上記第2拡散層および第3拡散層と対向しており、
上記一対のフォトサイリスタ部間に発生する2つのチャネルは、互いに交差することなく平行であり、
上記基板上における上記一対のフォトサイリスタ部を構成する2つの上記第2拡散層の間に形成されて、キャリアの移動を抑制するキャリア移動抑制領域を
備え、
1つの半導体チップであることを特徴とする双方向フォトサイリスタチップ。
【請求項2】
請求項1に記載の双方向フォトサイリスタチップにおいて、
上記キャリア移動抑制領域は、リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜を含んでおり、
上記リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜は、Al電極によって上記基板と電気的に接続されている
ことを特徴とする双方向フォトサイリスタチップ。
【請求項3】
請求項2に記載の双方向フォトサイリスタチップにおいて、
上記キャリア移動抑制領域は、さらに
上記基板の表面に形成されたキャリア吸収用ダイオードを含んでいる
ことを特徴とする双方向フォトサイリスタチップ。
【請求項4】
請求項3に記載の双方向フォトサイリスタチップにおいて、
上記キャリア吸収用ダイオードは、上記リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜の外径よりも小さい外径を有すると共に、上記基板側とは反対側が上記Al電極を介して上記基板と電気的に接続されている
ことを特徴とする双方向フォトサイリスタチップ。
【請求項5】
請求項1に記載の双方向フォトサイリスタチップにおいて、
上記第1拡散層に電気的に接続された第1電極と上記キャリア移動抑制領域との間隔および上記第3拡散層に電気的に接続された第2電極と上記キャリア移動抑制領域との間隔のうち、何れか狭い方の間隔が、少なくとも30μmである
ことを特徴とする双方向フォトサイリスタチップ。
【請求項6】
請求項2に記載の双方向フォトサイリスタチップにおいて、
上記キャリア移動抑制領域は、上記2つのチャネルの間に各チャネルと交差しないように形成されている
ことを特徴とする双方向フォトサイリスタチップ。
【請求項7】
請求項2に記載の双方向フォトサイリスタチップにおいて、
上記キャリア移動抑制領域は、上記2つのチャネルの夫々と交差している
ことを特徴とする双方向フォトサイリスタチップ。
【請求項8】
請求項7に記載の双方向フォトサイリスタチップにおいて、
上記第1拡散層に電気的に接続された第1電極と上記キャリア移動抑制領域との間隔および上記第3拡散層に電気的に接続された第2電極と上記キャリア移動抑制領域との間隔のうち、何れか狭い方の間隔が、少なくとも30μmである
ことを特徴とする双方向フォトサイリスタチップ。
【請求項9】
請求項3に記載の双方向フォトサイリスタチップにおいて、
上記キャリア移動抑制領域は、上記2つのチャネルの夫々と交差している
ことを特徴とする双方向フォトサイリスタチップ。
【請求項10】
請求項9に記載の双方向フォトサイリスタチップにおいて、
上記第1拡散層に電気的に接続された第1電極と上記キャリア移動抑制領域との間隔および上記第3拡散層に電気的に接続された第2電極と上記キャリア移動抑制領域との間隔のうち、何れか狭い方の間隔が、少なくとも30μmである
ことを特徴とする双方向フォトサイリスタチップ。
【請求項11】
請求項9に記載の双方向フォトサイリスタチップにおいて、
上記キャリア吸収用ダイオードは、上記リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜の外径よりも小さい外径を有すると共に、上記基板側とは反対側が上記Al電極を介して上記基板と電気的に接続されている
ことを特徴とする双方向フォトサイリスタチップ。
【請求項12】
第1導電型の基板と、
上記第1導電型の基板の表面に設けられると共に、第2導電型の第1拡散層と、上記第2導電型の第2拡散層と、この第2拡散層内に形成された上記第1導電型の第3拡散層と、を含む一対のフォトサイリスタ部と
を備え、
上記一対のフォトサイリスタ部のうちの一方は上記半導体チップにおける一側に配置される一方、他方は上記半導体チップにおける他側に配置されており、
上記一方のフォトサイリスタ部を構成する上記第1拡散層は、上記他方のフォトサイリスタ部を構成する上記第2拡散層および第3拡散層と対向しており、
上記他方のフォトサイリスタ部を構成する上記第1拡散層は、上記一方のフォトサイリスタ部を構成する上記第2拡散層および第3拡散層と対向しており、
上記一対のフォトサイリスタ部間に発生する2つのチャネルは、互いに交差することなく平行であり、
上記基板上であって、且つ、上記一対のフォトサイリスタ部を構成する2つの上記第1拡散層と上記基板との接合部近傍および上記一対のフォトサイリスタ部を構成する2つの上記第2拡散層と上記基板との接合部近傍に、上記チャネルと交差して形成されて、キャリアの移動を抑制するリンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜を
備え、
1つの半導体チップであることを特徴とする双方向フォトサイリスタチップ。
【請求項13】
請求項12に記載の双方向フォトサイリスタチップにおいて、
上記対を成す2つのフォトサイリスタ部の間に、上記2つのチャネルの夫々と交差してAlによって形成されて、上記基板と電気的に接続されたAlガードリングを備えて、
上記各リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜と上記Alガードリングとの間隔は、少なくとも30μmである
ことを特徴とする双方向フォトサイリスタチップ。
【請求項14】
第1導電型の基板と、
上記第1導電型の基板の表面に設けられると共に、第2導電型の第1拡散層と、上記第2導電型の第2拡散層と、この第2拡散層内に形成された上記第1導電型の第3拡散層と、を含む一対のフォトサイリスタ部と
を備え、
上記一対のフォトサイリスタ部のうちの一方は上記半導体チップにおける一側に配置される一方、他方は上記半導体チップにおける他側に配置されており、
上記一方のフォトサイリスタ部を構成する上記第1拡散層は、上記他方のフォトサイリスタ部を構成する上記第2拡散層および第3拡散層と対向しており、
上記他方のフォトサイリスタ部を構成する上記第1拡散層は、上記一方のフォトサイリスタ部を構成する上記第2拡散層および第3拡散層と対向しており、
上記一対のフォトサイリスタ部間に発生する2つのチャネルは、互いに交差することなく平行であり、
上記基板上における上記一対のフォトサイリスタ部を構成する2つの上記第2拡散層の間であって、且つ、上記2つの第2拡散層と上記基板との接合部近傍の夫々に、上記2つのチャネルの間に各チャネルと交差しないように形成されて、キャリアの移動を抑制するリンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜を
備え、
1つの半導体チップであることを特徴とする双方向フォトサイリスタチップ。
【請求項15】
請求項14に記載の双方向フォトサイリスタチップにおいて、
上記第1拡散層に電気的に接続された第1電極と上記リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜との間隔および上記第3拡散層に電気的に接続された第2電極と上記リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜との間隔とのうち、何れか狭い方の間隔が、少なくとも30μmであり、
上記2つのリンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜における互いの間隔は、少なくとも30μmである
ことを特徴とする双方向フォトサイリスタチップ。
【請求項16】
請求項1,請求項12および請求項14の何れか一つに記載の双方向フォトサイリスタチップにおいて、
上記基板上において、上記対を成すフォトサイリスタ部の夫々に関して、上記第1拡散層と上記基板との接合部近傍および上記第2拡散層と上記基板との接合部近傍を含むと共に、第1拡散層および上記第2拡散層を取り囲む環状領域に、リンがドープされた酸素ドープ半絶縁多結晶シリコン膜から成る透明ガードリングを形成した
ことを特徴とする双方向フォトサイリスタチップ。
【請求項17】
請求項1,請求項12および請求項14の何れか一つに記載の双方向フォトサイリスタチップにおいて、
上記各フォトサイリスタ部を構成する第2拡散層と基板との間に形成されたショットキーバリアダイオードを備えた
ことを特徴とする双方向フォトサイリスタチップ。
【請求項18】
請求項1,請求項12および請求項14の何れか一つに記載の双方向フォトサイリスタチップにおいて、
上記第1導電型はN型およびP型の何れか一方であり、
上記第2導電型はN型およびP型の他方であり、
上記夫々のフォトサイリスタ部において、上記第3拡散領域と第2拡散領域と基板あるいは上記第1拡散領域と基板と第2拡散領域でなるNPNトランジスタのベースとエミッタ電極との間に、ゲート抵抗とスイッチング素子とを並列に接続し、
上記スイッチング素子の制御端子を、上記第3拡散領域と第2拡散領域と基板あるいは上記第1拡散領域と基板と第2拡散領域でなるPNPトランジスタのベースに接続した
ことを特徴とする双方向フォトサイリスタチップ。
【請求項19】
請求項18に記載の双方向フォトサイリスタチップにおいて、
上記スイッチング素子は、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタであり、
上記金属酸化膜半導体電界効果トランジスタは、上記基板の表面に形成された上記第2導電型のウェル内に形成されており、
上記ウェルの拡散深さは、上記第2拡散層の拡散深さ以上である
ことを特徴とする双方向フォトサイリスタチップ。
【請求項20】
請求項19に記載の双方向フォトサイリスタチップにおいて、
上記ウェルの拡散深さは、上記第2拡散層の拡散深さの1倍以上且つ1.3倍以下である
ことを特徴とする双方向フォトサイリスタチップ。
【請求項21】
請求項18に記載の双方向フォトサイリスタチップにおいて、
上記スイッチング素子は、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタであり、
上記金属酸化膜半導体電界効果トランジスタは、上記基板の表面に形成された上記第2導電型のウェル内に形成されており、
上記金属酸化膜半導体電界効果トランジスタにおける上記ウェル内に形成されたドレイン拡散領域の面積は、上記ウェル内に形成されたソース拡散領域の面積よりも小くなっている
ことを特徴とした双方向フォトサイリスタチップ。
【請求項22】
請求項21に記載の双方向フォトサイリスタチップにおいて、
上記ドレイン拡散領域は、上記ウェル内表面側に形成されており、
上記ソース拡散領域は、上記ウェル内表面側に、上記ドレイン拡散領域の周囲を取り囲んで形成されている
ことを特徴とした双方向フォトサイリスタチップ。
【請求項23】
請求項18に記載の双方向フォトサイリスタチップにおいて、
上記スイッチング素子は、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタであり、
上記金属酸化膜半導体電界効果トランジスタのうちの少なくとも一部は、上記基板の表面に形成された上記第2導電型のウェル内に形成されており、
上記基板の表面における上記ウェルの周囲に、上記ウェルに密着すると共に、上記ウェルにおける不純物拡散濃度よりも高濃度の不純物拡散濃度を有する上記第2導電型の高濃度補償拡散層を形成し、
上記金属酸化膜半導体電界効果トランジスタのうち、上記ウェル内に形成されていない領域は、上記高濃度補償拡散層内に形成されている
ことを特徴とする双方向フォトサイリスタチップ。
【請求項24】
請求項23に記載の双方向フォトサイリスタチップにおいて、
上記高濃度補償拡散層における不純物拡散濃度は、1×1017cm-3以上であることを特徴とする双方向フォトサイリスタチップ。
【請求項25】
請求項23に記載の双方向フォトサイリスタチップにおいて、
上記金属酸化膜半導体電界効果トランジスタにおけるソース拡散領域は、上記ウェル内に形成されており、
上記金属酸化膜半導体電界効果トランジスタにおけるドレイン拡散領域は、上記ソース拡散領域に対向している一側部が上記ウェル内に形成される一方、残りの領域は上記高濃度補償拡散層内に形成されている
ことを特徴とする双方向フォトサイリスタチップ。
【請求項26】
請求項23に記載の双方向フォトサイリスタチップにおいて、
上記金属酸化膜半導体電界効果トランジスタにおけるドレイン拡散領域は、上記ウェル内に形成されており、
上記金属酸化膜半導体電界効果トランジスタにおけるソース拡散領域は、上記ドレイン拡散領域に対向している一側部が上記ウェル内に形成される一方、残りの領域は上記高濃度補償拡散層内に形成されている
ことを特徴とする双方向フォトサイリスタチップ。
【請求項27】
請求項25あるいは請求項26に記載の双方向フォトサイリスタチップにおいて、
上記ウェル内に形成される上記ドレイン拡散領域あるいはソース拡散領域における上記一側部のチャネル方向への長さは、0μm以上且つ10μm以下であることを特徴とする双方向フォトサイリスタチップ。
【請求項28】
請求項19,請求項21および請求項23の何れかひとつに記載の双方向フォトサイリスタチップにおいて、
上記金属酸化膜半導体電界効果トランジスタにおけるチャネル幅は300μm以上であることを特徴とする双方向フォトサイリスタチップ。
【請求項29】
請求項19,請求項21および請求項23の何れかひとつに記載の双方向フォトサイリスタチップにおいて、
上記基板の表面に、上記2つのチャネルと交差するように形成されたキャリア吸収用ダイオードが形成されていることを特徴とする双方向フォトサイリスタチップ。
【請求項30】
請求項1,請求項12および請求項14の何れか一つに記載の双方向フォトサイリスタチップと発光ダイオードとで構成された
ことを特徴とする光点弧カプラ。
【請求項31】
請求項30に記載の光点弧カプラとスナバ回路とで構成された
ことを特徴とするソリッドステートリレー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図39】
image rotate


【公開番号】特開2006−228956(P2006−228956A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−40675(P2005−40675)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】