説明

可変容量素子および可変容量素子の製造方法

【課題】 可変容量素子の動作不良を防止し、可変容量素子の信頼性を向上する。
【解決手段】 可変容量素子は、固定電極と、固定電極上に積層された絶縁層を含む絶縁部と、絶縁層上に絶縁層から離れる方向に移動可能に積層された可動部および可動部の一端を絶縁部に固定する固定部を含む可動電極と、可動電極に間隔を空けて対向する対向電極とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変容量素子および可変容量素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、RF(Radio Frequency)回路等の高周波回路に用いる可変容量素子やスイッチ素子として、固定電極および可動電極を有するMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子が注目されている。この種のMEMS素子では、固定電極および可動電極間に電圧を印加することにより、固定電極および可動電極間に静電引力を発生させ、可動電極を固定電極側に引き寄せる(例えば、特許文献1、特許文献2、非特許文献1参照。)。なお、可動電極は、固定電極および可動電極間への電圧の印加を停止したときに、可動電極の弾性により、元の位置に戻る。
【0003】
MEMS素子で構成される可変容量素子では、誘電体層の上下にそれぞれ配置される可動電極および固定電極に金属を用いることができるため、MOS(Metal Oxide Semiconductor)容量素子等に比べて、抵抗損失を小さくできる。一般に、可動電極は、固定電極上の誘電体層から間隔を空けて配置されている。したがって、この種の可変容量素子では、可変容量素子の容量値を安定させるとき、可動電極を誘電体層に密着させた状態にする。例えば、可動電極を誘電体層に密着させるとき、固定電極および可動電極間には、高電圧が印加される。これにより、可動電極の弾性力より大きな静電引力が固定電極および可動電極間に発生し、可動電極が誘電体層に密着する。
【0004】
一方、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)プロセスでは、MOSトランジスタのゲート電極を金属で形成する方法として、多結晶シリコン(ポリシリコン)で形成したゲートをアルミニウムに置換する技術が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−181725号公報
【特許文献2】特開2003−258502号公報
【特許文献3】特開2004−165346号公報
【非特許文献1】Tamio Ikehashi et al, "An RF MEMS Variable Capacitor with Intelligent Bipolar Actuation," IEEE International Solid-State Circuits Conference (ISSCC'08), Dig. Tech. Papers, pp. 582-673, Feb. 2008.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
可動電極を誘電体層に密着させて使用する可変容量素子では、可動電極および固定電極間に高電圧が繰り返し印加されるため、誘電体層に電荷が徐々に蓄積される。特に、誘電体層を低温で積層した酸化膜で形成した構成では、誘電体層に電荷が蓄積しやすい。誘電体層に蓄積された電荷量が大きくなると、可動電極が誘電体層に固着し、可動電極を誘電体層から離した状態に戻すことができない。例えば、可動電極の弾性力より大きな引力を発生させる量の電荷が誘電体層に蓄積されたとき、可動電極は、誘電体層に固着する。この結果、可変容量素子は、動作不良になる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態では、可変容量素子は、固定電極と、固定電極上に積層された絶縁層を含む絶縁部と、絶縁層上に絶縁層から離れる方向に移動可能に積層された可動部および可動部の一端を絶縁部に固定する固定部を含む可動電極と、可動電極に間隔を空けて対向する対向電極とを有している。
【発明の効果】
【0008】
可変容量素子の動作不良を防止でき、可変容量素子の信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施形態における可変容量素子の例を示している。
【図2】別の実施形態における可変容量素子の例を示している。
【図3】図2に示した可変容量素子の電極のリード部の配置の例を示している。
【図4】図2に示した可変容量素子の製造方法の例を示している。
【図5】図4に示した製造方法の例の続きを示している。
【図6】図2に示した可変容量素子の回路構成の例を示している。
【図7】図2に示した可変容量素子の制御方法の例を示している。
【図8】別の実施形態における可変容量素子の例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態を図面を用いて説明する。
【0011】
図1は、一実施形態における可変容量素子VCAPの例を示している。なお、図1(a)は、可動電極MEDおよび対向電極OED間に電圧が印加されていないときの可変容量素子VCAPの断面を示している。また、図1(b)は、可動電極MEDおよび対向電極OED間に電圧が印加されたときの可変容量素子VCAPの断面を示している。
【0012】
可変容量素子VCAPは、固定電極FED、絶縁部IS、可動電極MEDおよび対向電極OEDを有している。固定電極FEDは、アルミニウム等の金属材料により半導体基板に形成された金属電極であり、キャパシタの電極として機能する。
【0013】
絶縁部ISは、例えば、固定電極FED上に固定電極FEDに接して形成された絶縁層ISaを有し、固定電極FEDと可動電極MEDとを互いに絶縁する。すなわち、絶縁部ISは、固定電極FED上に積層された絶縁層ISaを有している。なお、絶縁部ISは、絶縁層ISaの他に、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)やSTI(Shallow Trench Isolation)等により形成される素子分離領域を有してもよい。絶縁部ISの絶縁層ISaは、シリコン酸化膜等の絶縁膜であり、キャパシタの誘電体として機能する。
【0014】
絶縁層ISaは、例えば、摂氏800度以上の高温で単結晶シリコンを熱酸化して形成された高品質なシリコン酸化膜である。絶縁層ISaを高品質なシリコン酸化膜で形成した可変容量素子VCAPでは、可動電極MEDおよび固定電極FED間に電圧が繰り返し印加されたときにも、絶縁層ISaに電荷が蓄積することを低減できる。なお、単結晶シリコンを熱酸化する温度は、摂氏800度より低くてもよい。あるいは、絶縁層ISaは、多結晶シリコン(ポリシリコン)を熱酸化して形成されたシリコン酸化膜でもよいし、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成されたシリコン酸化膜でもよい。
【0015】
可動電極MEDは、例えば、金を含んで形成された金属電極であり、キャパシタの電極として機能する。なお、可動電極MEDは、金およびプラチナを含んで形成されてもよい。可動電極MEDの強度は、可動電極MEDにプラチナを含ませることにより、高くなる。可動電極MEDは、絶縁層ISa上に絶縁層ISaから離れる方向に移動可能に積層された可動部MEDbと、可動部MEDbの一端を絶縁部ISに固定する固定部MEDa(図1の破線で囲んだ領域)とを有している。すなわち、可動電極MEDは、絶縁部ISに固定された固定部MEDaと、絶縁層ISaから分離可能に形成された可動部MEDbとを有している。
【0016】
可動部MEDbが絶縁層ISaに接しているとき、可動電極MED、絶縁層ISaおよび固定電極FEDは、キャパシタを構成する。この実施形態では、キャパシタを構成する可動電極MEDおよび固定電極FEDが金属電極であるため、MOS(Metal Oxide Semiconductor)容量素子等に比べて、抵抗損失を小さくできる。
【0017】
可動部MEDbは、可動電極MEDに静電引力等の力が働かない状態では、絶縁層ISaに接している。例えば、固定電極FED、可動電極MEDおよび対向電極OEDに電圧が印加されていない状態では、可動部MEDbは、絶縁層ISaに接している。このように、この実施形態では、固定電極FEDおよび可動電極MED間に電圧を印加することなく、可動部MEDbを絶縁層ISaに密着させることができる。このため、この実施形態では、絶縁層ISaに電荷が蓄積することを防止でき、可動電極MEDが絶縁層ISaに固着することを防止できる。
【0018】
対向電極OEDは、可動電極MEDに対向し、可動電極MEDと間隔を空けて配置されている。なお、対向電極OEDは、半導体材料で形成されてもよいし、金属材料で形成されてもよい。
【0019】
この実施形態では、可動部MEDbを絶縁層ISaから離すときに、可動電極MEDおよび対向電極OED間に電圧が印加される。すなわち、可動部MEDbを絶縁層ISaから離すとき、可動電極MEDおよび対向電極OEDには、互いに異なる電圧値のバイアス電圧VMED、VOEDがそれぞれ印加される。可動電極MEDおよび対向電極OED間に印加された電圧により、可動電極MEDおよび対向電極OED間に静電引力が発生する。これにより、可動部MEDbは、対向電極OED側に引き寄せられ、絶縁層ISaから離れる(図1(b))。
【0020】
可動部MEDbが絶縁層ISaから離れているとき、可動電極MEDおよび固定電極FED間の静電容量は、可動部MEDbが絶縁層ISaに接しているときに比べて、十分小さくなる。このため、可動電極MEDおよび固定電極FED間は、高周波的に開放状態になる。
【0021】
可動電極MEDを元の状態(可動部MEDbおよび絶縁層ISaが互いに接している状態)に戻すとき、可動電極MEDおよび固定電極FED間には、電圧が印加されなくてもよいし、電圧が印加されてもよい。すなわち、可動電極MEDを元の状態に戻すとき、固定電極FEDのバイアス電圧VFEDおよび可動電極MEDのバイアス電圧VMEDは、互いに同じ電圧でもよいし、互いに異なる電圧でもよい。
【0022】
可動電極MEDおよび固定電極FED間に電圧を印加しなくても、可動電極MEDおよび対向電極OED間への電圧の印加を停止したとき、可動部MEDbは、可動電極MEDの弾性により、元の状態に戻る。このように、この実施形態では、固定電極FEDおよび可動電極MED間に電圧を印加することなく、可動部MEDbおよび絶縁層ISaが互いに接している状態に戻すことができるため、絶縁層ISaに電荷が蓄積することを防止できる。また、絶縁層ISaに電圧が印加されないため、絶縁層ISaの損傷は、抑制される。
【0023】
なお、可動電極MEDおよび対向電極OED間への電圧の印加を停止したときに、可動電極MEDおよび固定電極FED間に電圧を印加することにより、可動部MEDbは、絶縁層ISaに確実に密着する。このときに可動電極MEDおよび固定電極FED間に印加される電圧は、可動電極MEDの弾性を利用できるため、低くてよい。したがって、絶縁層ISaへの電荷の蓄積は、低減する。これにより、可動電極MEDが絶縁層ISaに固着することは、防止される。また、絶縁層ISaに印加される電圧が低いため、絶縁層ISaの損傷は、抑制される。
【0024】
以上、この実施形態では、可変容量素子VCAPの可動電極MEDは、絶縁層ISa上に絶縁層ISaから離れる方向に移動可能に積層された可動部MEDbと、可動部MEDbの一端を絶縁部ISに固定する固定部MEDaとを有している。これにより、この実施形態では、固定電極FEDおよび可動電極MED間に電圧を印加することなく、可動部MEDbを絶縁層ISaに密着させることができる。したがって、この実施形態では、可動部MEDbを絶縁層ISaに密着させた状態と可動部MEDbを絶縁層ISaから離した状態との切り替えを繰り返したときにも、絶縁層ISaに電荷が蓄積することを低減できる。この結果、可動部MEDbが絶縁層ISaに固着することを防止でき、可変容量素子VCAPの動作不良を防止できる。これにより、この実施形態では、可変容量素子VCAPの信頼性を向上できる。
【0025】
さらに、この実施形態では、固定電極FEDおよび可動電極MED間に高電圧を印加する必要がないため、絶縁層ISaの損傷を抑制できる。また、この実施形態では、可動電極MEDおよび対向電極OED間に電圧を印加することにより、可動部MEDbを絶縁層ISaから離したいときに、可動部MEDbを絶縁層ISaから離すことができる。
【0026】
図2は、別の実施形態における可変容量素子VCAPの例を示している。なお、図2は、可変容量素子VCAPの断面(後述する図3のA−A’線に沿う断面)を示している。上述した実施形態で説明した要素と同一の要素については、同一の符号を付し、これ等については、詳細な説明を省略する。図中の破線は、可動電極MEDおよび対向電極OED間に電圧が印加されたときの可動電極MEDの状態を示している。また、図中の一点鎖線は、第1基板部SUB1を第2基板部SUB2に貼り合わせる前の第1基板部SUB1と第2基板部SUB2との境界を示している。
【0027】
可変容量素子VCAPは、キャパシタの誘電体として機能する絶縁層IS1aを含む第1基板部SUB1と、第1基板部SUB1に対向する第2基板部SUB2とを有している。第1基板部SUB1は、シリコン基板SSUB1、埋め込み絶縁層BOX1、固定電極FED、絶縁部IS1、可動電極MED、密着層CT1、CT2および接続部COPを有している。
【0028】
シリコン基板SSUB1および埋め込み絶縁層BOX1は、例えば、SOI(Silicon On Insulator)基板の支持基板および埋め込み酸化膜(BOX、Buried oxide)である。埋め込み絶縁層BOX1上には、例えば、SOI基板のシリコン層(SOI層)の一部をアルミニウムに置換することにより形成された固定電極FEDが配置される。固定電極FED上には、絶縁部IS1の絶縁層IS1aと密着層CT2とが形成される。
【0029】
絶縁部IS1は、固定電極FEDと可動電極MEDとを互いに絶縁する。絶縁部IS1は、例えば、単結晶シリコンを高温で熱酸化して形成された高品質な絶縁層IS1aと、LOCOSやSTI等により形成された素子分離領域IS1bとを有している。素子分離領域IS1bは、シリコン酸化膜等により形成され、固定電極FEDを囲むように配置される。これにより、固定電極FEDは、他の素子から分離される。
【0030】
絶縁部IS1の絶縁層IS1aは、固定電極FED上に積層されている。すなわち、絶縁層IS1aは、密着層CT2の形成領域を除く固定電極FED上に固定電極FEDに接して形成される。例えば、絶縁層IS1aは、密着層CT2側の縁部を除いて、素子分離領域IS1bに接している。また、絶縁層IS1aの密着層CT2側の縁部は、密着層CT2および接続部COPから離れている。なお、絶縁層IS1aの密着層CT2側の縁部は、密着層CT2や接続部COPに接してもよい。
【0031】
可動電極MEDは、金を含んで形成された金属電極であり、素子分離領域IS1bに固定された固定部MEDaと絶縁層IS1aに接して配置された可動部MEDbとを有している。すなわち、可動電極MEDは、絶縁層IS1a上に絶縁層IS1aから離れる方向に移動可能に積層された可動部MEDbおよび可動部MEDbの一端を絶縁部IS1に固定する固定部MEDaを有している。
【0032】
可動電極MEDの固定部MEDaは、例えば、素子分離領域IS1b上にチタンにより形成された密着層CT1と、密着層CT1上に金により形成された層とを有している。なお、密着層CT1は、チタンおよびプラチナを含んで形成されてもよい。あるいは、密着層CT1は、チタン以外の金属材料により形成されてもよい。固定部MEDaは、密着層CT1により、絶縁部IS1(より詳細には、素子分離領域IS1b)に固定される。すなわち、密着層CT1は、可動電極MEDと絶縁部IS1とを固定する固定層に含まれる。
【0033】
可動電極MEDの可動部MEDbは、例えば、金により形成され、絶縁層IS1aから分離可能に形成される。すなわち、可動電極MEDは、金を含んで形成される。なお、可動電極MEDは、金およびプラチナを含んで形成されてもよい。例えば、可動電極MEDの密着層CT1を除く部分は、金とプラチナとの多層膜により構成されてもよいし、金とプラチナの合金により形成されてもよい。可動電極MEDの密着層CT1を除く部分が金とプラチナとの多層膜により形成された可動電極MEDでは、絶縁部IS1側に配置される層は、金により形成された層でもよいし、プラチナにより形成された層でもよい。
【0034】
密着層CT2は、チタン等の金属材料により形成される。なお、密着層CT2は、チタンおよびプラチナを含んで形成されてもよいし、チタン以外の金属材料により形成されてもよい。そして、金属材料で形成された密着層CT2は、固定電極FEDに電気的に接続されている。すなわち、密着層CT2は、絶縁層IS1aの形成領域を除く部分で、固定電極FEDに接している。例えば、密着層CT2は、可動電極MEDに接しない位置で、素子分離領域IS1b上および固定電極FED上に配置される。また、密着層CT2が配置される部分の素子分離領域IS1bは、例えば、密着層CT1下の素子分離領域IS1bと固定電極FEDを挟んで対向している。
【0035】
接続部COPは、密着層CT2上に金等の金属材料により形成される。すなわち、接続部COPは、可動電極MEDに接しない位置で、密着層CT2に接して形成される。これにより、接続部COPは、固定電極FEDに電気的に接続される。また、接続部COPは、密着層CT2により、素子分離領域IS1bおよび固定電極FEDに固定される。なお、接続部COPは、複数種の金属材料を含んで形成されてもよい。例えば、接続部COPは、金およびプラチナを含んで形成されてもよい。
【0036】
第2基板部SUB2は、シリコン基板SSUB2、埋め込み絶縁層BOX2、対向電極OED、絶縁部IS2、密着層CT3、CT4およびリード部LD1、LD2を有している。シリコン基板SSUB2および埋め込み絶縁層BOX2は、例えば、SOI基板の支持基板および埋め込み酸化膜である。埋め込み絶縁層BOX2上(図2では下側)には、例えば、SOI基板のシリコン層(SOI層)の一部をアルミニウムに置換することにより形成された対向電極OEDが配置される。
【0037】
絶縁部IS2は、例えば、単結晶シリコンを高温で熱酸化して形成された高品質な絶縁層IS2aと、LOCOSやSTI等により形成された素子分離領域IS2bとを有している。絶縁層IS2aは、対向電極OED上(図2では下側)に対向電極OEDに接して形成される。また、素子分離領域IS2bは、シリコン酸化膜等により形成され、対向電極OEDを囲むように配置される。これにより、対向電極OEDは、他の素子から分離される。例えば、対向電極OEDは、第2基板部SUB2を含むSOI基板に形成されるRF回路等の高周波回路の素子から分離される。
【0038】
密着層CT3は、例えば、密着層CT1に対向する素子分離領域IS2b上(図2では下側)に、チタンにより形成される。なお、密着層CT3は、チタンおよびプラチナを含んで形成されてもよいし、チタン以外の金属材料により形成されてもよい。密着層CT3上(図2では下側)には、金等の金属材料により形成されたリード部LD1が配置される。なお、リード部LD1は、複数種の金属材料を含んで形成されてもよい。例えば、リード部LD1は、金およびプラチナを含んで形成されてもよい。
【0039】
リード部LD1は、密着層CT3により、素子分離領域IS2bに固定される。さらに、リード部LD1は、可動電極MEDの固定部MEDaに接続される。すなわち、リード部LD1は、可動電極MEDに電気的に接続される。例えば、可変容量素子VCAPを用いる回路は、リード部LD1を介して可動電極MEDに電圧を印加する。
【0040】
密着層CT4は、例えば、密着層CT2に対向する素子分離領域IS2b上(図2では下側)に、チタンにより形成される。なお、密着層CT4は、チタンおよびプラチナを含んで形成されてもよいし、チタン以外の金属材料により形成されてもよい。密着層CT4上(図2では下側)には、金等の金属材料により形成されたリード部LD2が配置される。なお、リード部LD2は、複数種の金属材料を含んで形成されてもよい。例えば、リード部LD2は、金およびプラチナを含んで形成されてもよい。
【0041】
リード部LD2は、密着層CT4により、素子分離領域IS2bに固定される。さらに、リード部LD2は、接続部COPに接続される。すなわち、リード部LD2は、接続部COPおよび密着層CT2を介して、固定電極FEDに電気的に接続される。例えば、可変容量素子VCAPを用いる回路は、リード部LD2を介して固定電極FEDに電圧を印加する。
【0042】
対向電極OEDが可動電極MEDに間隔を空けて対向するように、第1基板部SUB1と第2基板部SUB2とを貼り合わせることにより、可変容量素子VCAPが構成される。上述したように、リード部LD1、LD2を固定部MEDaおよび接続部COPにそれぞれ接続することにより、第1基板部SUB1と第2基板部SUB2とが互いに貼り合わせられる。このように、可動電極MEDの固定部MEDa、接続部COP、リード部LD1、LD2は、第1基板部SUB1と第2基板部SUB2とを互いに貼り合わせるためのボンディング部としても機能する。
【0043】
この実施形態の可変容量素子VCAPにおいても、上述した実施形態と同様に、可動電極MEDの可動部MEDbは、可動電極MEDに静電引力等の力が働かない状態で、絶縁層ISaに接している。そして、可動電極MEDおよび固定電極FED間に電圧が印加されたとき、可動電極MEDの可動部MEDbは、絶縁層IS1aから離れる(図2の破線)。すなわち、可変容量素子VCAPは、可動電極MEDの可動部MEDbを絶縁層IS1aに密着させた状態と、可動電極MEDの可動部MEDbを絶縁層IS1aから離した状態とを切り替え可能に構成されている。
【0044】
例えば、可動電極MEDの可動部MEDbが絶縁層IS1aに接しているとき、可動電極MED、絶縁層IS1aおよび固定電極FEDは、キャパシタを構成する。また、可動電極MEDの可動部MEDbが絶縁層IS1aから離れているとき、可変容量素子VCAPの容量値(可動電極MEDおよび固定電極FED間の静電容量)は、可動部MEDbが絶縁層IS1aに接しているときに比べて、十分小さい。なお、可動部MEDbが絶縁層IS1aから離れている状態では、可動電極MED(より詳細には、可動部MEDb)は、絶縁層IS2aに接してもよい。
【0045】
この実施形態では、可動電極MEDの固定部MEDaが絶縁部IS1に固定されているため、可動部MEDbと絶縁層IS2aとの接触面積が大きくなることを防止できる。すなわち、この実施形態では、可動電極MEDの可動部MEDbを絶縁層IS1aから離した状態にするときに、可動電極MEDが絶縁層IS2aに接しても、可動電極MEDおよび対向電極OED間の静電容量が大きくなることを防止できる。なお、可変容量素子VCAPの制御方法は、図7で説明する。
【0046】
図3は、図2に示した可変容量素子VCAPの電極のリード部LD1、LD2、LD3の配置の例を示している。なお、図3は、図2の下側から見た電極FED、MED、OED、リード部LD1、LD2、LD3の状態を示している。図中の網掛け部分(濃い網掛け部分も含む)は、リード部LD1、LD2、LD3を示している。さらに、濃い網掛け部分は、第1基板部SUB1と第2基板部SUB2との接続部分を示している。また、図の太線は、第1基板部SUB1および第2基板部SUB2の周縁部を示している。
【0047】
電極FED、MED、OEDは、例えば、四角形状に形成される。なお、電極FED、MED、OEDは、四角形状でなくてもよい。例えば、電極FED、MED、OEDは、図2に示した四角形状の角が円弧状に形成されてもよい。可動電極MEDの幅W1は、例えば、可変容量素子VCAPを使用する際に可動電極MEDを接地することを想定している場合、固定電極FEDの幅W2より広く形成される。なお、可動電極MEDの幅W1は、固定電極FEDの幅W2より狭くてもよいし、固定電極FEDの幅W2と同じでもよい。
【0048】
リード部LD1は、可動電極MEDの1辺(図3では、右側の辺)の周辺に配置される。また、リード部LD2は、固定電極FEDの1辺(図3では、左側の辺)の周辺に配置される。例えば、第1基板部SUB1を下側(図2の下側)から見たとき、リード部LD1およびリード部LD2は、第1基板部SUB1の互いに対向する縁部の周辺に配置される。これにより、第1基板部SUB1の互いに対向する縁部(図3の濃い網掛け部分)で、第1基板部SUB1と第2基板部SUB2とが互いに貼り合わせられる。
【0049】
リード部LD3は、第2基板部SUB2に設けられ、対向電極OEDに電気的に接続される。例えば、リード部LD3は、チタン等により形成された密着層を介して、対向電極OEDに電気的に接続される。なお、リード部LD3は、密着層を介さずに、対向電極OEDに直接接続されてもよい。あるいは、対向電極OEDの一部の領域が、リード部LD3として用いられてもよい。リード部LD3が対向電極OEDに電気的に接続されることにより、例えば、可変容量素子VCAPを用いる回路は、リード部LD3を介して対向電極OEDに電圧を印加できる。
【0050】
また、リード部LD3は、例えば、第1基板部SUB1を下側(図2の下側)から見たとき、リード部LD2およびリード部LD1の形成領域と異なる位置(図3では、対向電極OEDの上側の辺)に配置される。これにより、この実施形態では、リード部LD1、LD2、LD3をそれぞれ介して、可動電極MED、固定電極FEDおよび対向電極OEDに電圧をそれぞれ印加できる。なお、リード部LD3は、2箇所に設けられてもよい。例えば、第1基板部SUB1を下側(図2の下側)から見たとき、2つのリード部LD3は、対向電極OEDの互いに対向する辺(図3では、上側および下側の辺)にそれぞれ配置されてもよい。
【0051】
図4、図5は、図2に示した可変容量素子VCAPの製造方法の例を示している。なお、図4、図5は、可変容量素子VCAPの断面(図3のA−A’線に沿う断面)を示している。
【0052】
先ず、図4(a)に示すように、SOI基板を用意する。SOI基板は、シリコン基板SSUB1、埋め込み絶縁層BOX1およびシリコン層SLを有している。そして、図4(b)に示すように、LOCOS等により、素子分離領域IS1bが固定電極FEDの形成領域の周囲に形成される。次に、図4(c)に示すように、シリコン層SLを高温(例えば、摂氏800度以上)で熱酸化することにより、高品質な酸化膜(絶縁層IS1a)がシリコン層SLの表面に形成される。例えば、絶縁層IS1aは、40nm程度の膜厚に形成される。絶縁層IS1aを高品質な酸化膜で形成した構成では、絶縁層IS1aに電荷が蓄積されることをさらに低減できる。なお、絶縁層IS1aは、シリコン層SLを低温で熱酸化することにより、形成されてもよい。
【0053】
絶縁層IS1aおよび素子分離領域IS1bを含む絶縁部IS1が形成された後、図4(d)に示すように、窒化チタン等のバリアメタルBMが絶縁部IS1上に堆積される。そして、図4(e)に示すように、シリコン層SLの一部が露出するように、絶縁部IS1(より詳細には、絶縁層IS1a)およびバリアメタルBMの一部が除去される。これにより、シリコン層SLの一部を露出する開口部OPが形成される。すなわち、固定電極FEDの形成領域の一部(開口部OPを除く部分)の表面に、シリコン層SLを熱酸化した絶縁層IS1aが形成される。
【0054】
開口部OPが形成された後、図4(f)に示すように、金属材料MMがシリコン層SLの開口部OP上およびバリアメタルMM上に堆積される。例えば、金属材料MMは、アルミニウムであり、シリコン層SLに接触するように、SOI基板に堆積される。以下、金属材料MMをアルミニウムMMとも称する。すなわち、アルミニウムMMは、絶縁層IS1aに覆われていない部分(開口部OP)のシリコン層SLに接触するように、SOI基板に堆積される。これにより、絶縁層IS1aが形成されていない固定電極FEDの形成領域上にアルミニウムが堆積される。
【0055】
図5(g)に示すように、アルミニウムMMが堆積されたSOI基板をアニールすることにより、固定電極FEDの形成領域のシリコン層SLは、アルミニウムの層(アルミニウムの固定電極FED)に置換される。すなわち、アルミニウムMMが堆積されたSOI基板をアニールすることにより、絶縁層IS1a下のシリコン層SLのシリコンもアルミニウムに置換される。なお、この実施形態では、SOI基板を用いているため、シリコン層SLのシリコンをアルミニウムに置換する際に、アルミニウムの深さ方向(図5(g)の下側)への移動を埋め込み絶縁層BOX1により簡易に制限できる。
【0056】
図5(g)に示した金属材料MM’は、SOI基板のシリコン層SLのシリコンをアルミニウムに置換した際に残ったアルミニウム(固定電極FED以外のアルミニウム)等を示している。また、シリコン層SL’は、SOI基板のシリコン層SLのシリコンをアルミニウムに置換した際に、金属材料MM’上に移動したシリコン層SLのシリコン等を示している。
【0057】
そして、図5(h)に示すように、シリコン層SL’、金属材料MM’およびバリアメタルBMが除去される。これにより、埋め込み絶縁層BOX1上に固定電極FEDが形成される。例えば、固定電極FEDの膜厚(アルミニウム層の膜厚)は、1μm程度である。
【0058】
シリコン層SL’、金属材料MM’およびバリアメタルBMが除去された後、図5(i)に示すように、密着層CT1、CT2、可動電極MEDの固定部MEDaの一部(固定部MEDa’)および接続部COPの一部(接続部COP’)がそれぞれ形成される。密着層CT1、CT2、固定部MEDa’および接続部COP’は、例えば、リフトオフ法により、所望の領域に形成される。
【0059】
リフトオフ法では、例えば、密着層CT1、CT2の形成領域以外を覆うレジストが形成されたSOI基板上に、チタンおよび金が順次堆積される。そして、レジスト上のチタンおよび金とともにレジストが除去されることにより、密着層CT1、CT2の形成領域にチタンと金の多層膜が形成される。例えば、チタン層(密着層CT1、CT2)は、20nm程度の膜厚に形成される。
【0060】
密着層CT1の形成領域の絶縁部IS1(より詳細には、素子分離領域IS1b)上に堆積されたチタン層は、可動電極MEDの固定部MEDaを絶縁部IS1に固定する密着層CT1として機能する。すなわち、密着層CT1は、チタンを含む金属膜であり、絶縁部IS1上の一部に形成される。なお、密着層CT1(チタン層)上に堆積された金の層は、可動電極MEDの固定部MEDaの一部(固定部MEDa’)である。
【0061】
また、固定電極FED上および絶縁部IS1(より詳細には、素子分離領域IS1b)上に形成されたチタン層は、接続部COPを固定電極FEDおよび絶縁部IS1に固定する密着層CT2として機能する。すなわち、密着層CT2は、チタンを含む金属膜である。なお、密着層CT2(チタン層)上に堆積された金の層は、接続部COPの一部(接続部COP’)である。密着層CT2により、接続部COPは、固定電極FEDと電気的に接続される。
【0062】
そして、図5(j)に示すように、可動電極MEDは、固定部MEDa’上および可動電極MEDの形成領域の絶縁部IS1上に金を蒸着することにより形成される。また、接続部COPは、接続部COP’上に金を蒸着することにより形成される。例えば、金の層(可動電極MEDおよび接続部COP)は、リフトオフ法により、可動電極MEDの形成領域および接続部COPの形成領域に形成される。例えば、金の層(可動電極MEDおよび接続部COP)の膜厚は、500nm程度である。
【0063】
なお、図5(j)の破線で囲んだ可動電極MEDの領域は、固定部MEDaを示している。すなわち、可動電極MEDの固定部MEDaは、チタンの密着層CT1と金の層とを有し、密着層CT1により、絶縁部IS1に固定されている。また、可動電極MEDのうち、密着層CT1が形成されていない部分(金の層が絶縁層IS1aに直接接している部分)は、絶縁層IS1aから分離可能に形成された可動部MEDbとして機能する。
【0064】
絶縁層IS1a上および密着層CT1上に金を含む層を形成することにより、密着層CT1の一端を支点として絶縁層IS1aから離れる方向に移動可能な可動電極MEDが形成される。この実施形態では、可動電極MEDが絶縁部IS1上に金等の金属材料を蒸着することにより形成されるため、可動電極MEDを絶縁層IS1aに確実に接触させることができる。
【0065】
このようにして、可動電極MED、絶縁部IS1、固定電極FEDおよび接続部COP等を有する第1基板部SUB1が形成される。なお、対向電極OEDおよびリード部LD1、LD2等を有する第2基板部SUB2は、例えば、第1基板部SUB1と同様の工程により、形成される。
【0066】
そして、図5(k)に示すように、対向電極OEDが可動電極MEDに間隔(例えば、1μm程度)を空けて対向するように、第1基板部SUB1と第2基板部SUB2とを貼り合わせることにより、可変容量素子VCAPが構成される。例えば、リード部LD1、LD2を可動電極MED(より詳細には、可動電極MEDの固定部MEDa)および接続部COPにそれぞれ接続することにより、第1基板部SUB1と第2基板部SUB2とが互いに貼り合わせられる。
【0067】
ここで、第2基板部SUB2は、対向電極OEDが形成された対向基板に含まれる。また、可動電極MEDが形成されたSOI基板(第1基板部SUB1)は、半導体基板に含まれる。すなわち、可変容量素子VCAPは、固定電極FED、絶縁層IS1aおよび可動電極MED等が形成された半導体基板と、対向電極OED等が形成された対向基板とを貼り合わせることにより、構成される。
【0068】
このように、この実施形態では、キャパシタを構成する可動電極MED、絶縁層IS1aおよび固定電極FEDが第1基板部SUB1に形成される。これにより、この実施形態では、可動電極MED、絶縁層IS1aおよび固定電極FEDの互いの位置を精度よく合わせることができ、可変容量素子VCAPの容量値(電極FED、MED間の静電容量)の精度を向上できる。
【0069】
なお、上述の工程により製造された可変容量素子VCAPは、例えば、窒素等の不活性ガスの雰囲気中でパッケージされる。これにより、窒素等の不活性ガスは、可変容量素子VCAPのパッケージ内に封入される。パッケージ内に窒素等の不活性ガスが封入された構成では、湿気による絶縁部IS1、IS2等の品質低下を防止できる。この結果、この実施形態では、可変容量素子VCAPの動作不良を防止でき、可変容量素子VCAPの信頼性を向上できる。なお、パッケージ内は、真空でもよい。あるいは、オイル等の液体がパッケージ内に封入されてもよい。パッケージ内を真空にした構成やパッケージ内にオイル等の液体が封入された構成でも、湿気による絶縁部IS1、IS2等の品質低下を防止できる。
【0070】
可変容量素子VCAPの製造方法は、この例に限定されない。例えば、密着層CT1、CT2は、チタン以外の金属材料により形成されてもよい。あるいは、密着層CT1、CT2は、チタンおよびプラチナを含んで形成されてもよい。例えば、密着層CT1、CT2は、20nm程度の膜厚に形成されたチタン層と、50nm程度の膜厚に形成されたプラチナ層とにより構成されてもよい。また、可動電極MEDおよび接続部COPは、例えば、金およびプラチナを含んで形成されてもよい。
【0071】
さらに、第1基板部SUB1にSOI基板を用いない構成では、固定電極FEDは、アルミニウム以外の金属材料で形成されてもよい。例えば、シリコン基板(図2のシリコン基板SSUB1に対応)上に、層間絶縁膜(図2の埋め込み絶縁層BOX1に対応)としてのシリコン酸化膜、固定電極FEDとしての金属膜、絶縁層IS1aとしてのシリコン酸化膜をCVD法等により順次堆積することにより、第1基板部SUB1が形成されてもよい。また、絶縁層IS1aは、単結晶シリコンを熱酸化して形成されてもよく、多結晶シリコン(ポリシリコン)を熱酸化して形成されてもよい。
【0072】
図6は、図2に示した可変容量素子VCAPの回路構成の例を示している。なお、図6は、信号線SIGLと接地線GNDとの間に接続された可変容量素子VCAP(図の太い破線枠)と、固定電極FEDにバイアス電圧VFEDを印加するためのバイアスティBATE(図の細い破線枠)とを示している。図中の信号線SIGLは、RF信号(高周波信号)等の信号が伝達される信号線の一部を示している。また、図中の括弧内の電極FED、MED、OEDは、可変容量キャパシタCvおよびキャパシタC1を構成する電極を示している。
【0073】
可変容量素子VCAPは、例えば、可動電極MEDおよび固定電極FEDを一対の電極とする可変容量キャパシタCvと、可動電極MEDおよび対向電極OEDを一対の電極とするキャパシタC1とを有している。すなわち、可動電極MEDは、可変容量キャパシタCvおよびキャパシタC1の電極として機能する。なお、電極MED、FED、OEDには、リード部LD1、LD2、LD3をそれぞれ介して、バイアス電圧がそれぞれ印加される。
【0074】
例えば、信号線SIGLと接地線GNDとの間の容量を可変にするとき、可変容量キャパシタCvおよびキャパシタC1の可動電極MEDは、リード部LD1を介して接地線GNDに接続される。すなわち、可動電極MEDには、バイアス電圧としての接地電圧GNDがリード部LD1を介して印加される。また、可変容量キャパシタCvの固定電極FEDは、リード部LD2を介して信号線SIGLに接続される。なお、固定電極FEDには、抵抗R1、バイアスティBATE、信号線SIGLおよびリード部LD2を介して、バイアス電圧VFEDが印加される。また、対向電極OEDには、リード部LD3を介して、バイアス電圧VOEDが印加される。
【0075】
バイアスティBATEは、キャパシタC2およびコイルL1を有している。キャパシタC2の一方の端子は、RF信号(高周波信号)の入力端子RFINに接続されている。そして、キャパシタC2の他方の端子は、コイルL1の一方の端子に接続されている。さらに、キャパシタC2の他方の端子(コイルL1の一方の端子)は、可変容量素子VCAPのリード部LD2に信号線SIGLを介して接続されている。また、コイルL1の他方の端子は、抵抗R1を介して、バイアス電圧VFEDを受ける。
【0076】
これにより、例えば、バイアスティBATEは、RF信号の高周波特性に影響を与えることなく、抵抗R1を介して受けたバイアス電圧VFEDを固定電極FEDに印加できる。なお、キャパシタC3は、DCカット用のキャパシタである。これにより、RF信号の出力端子RFOUTに影響を与えることなく、バイアス電圧VFEDが固定電極FEDに印加される。
【0077】
バイアス電圧VFED、VOEDを制御することにより、可動電極MED(より詳細には、図2に示した可動部MEDb)の状態が変化する。これにより、可変容量キャパシタCvの容量値(電極FED、MED間の静電容量)が変化する。なお、キャパシタC1の容量値(電極FED、OED間の静電容量)は、可動電極MEDの状態に拘わらず、十分小さい。このため、可変容量素子VCAPに対するキャパシタC1の影響は、無視できる。すなわち、可変容量素子VCAPの容量値は、可変容量キャパシタCvの容量値に応じて変化する。
【0078】
なお、可変容量素子VCAPと信号線SIGLとの接続関係は、この例に限定されない。また、RF信号等が伝達される信号線に、複数の可変容量素子VCAPが並列に接続されてもよい。例えば、図6に示した回路を2つ用意し、一方の回路の出力端子RFOUTを他方の回路の入力端子RFINに接続することにより、2つの可変容量素子VCAPは、RF信号等が伝達される信号線に並列に接続される。
【0079】
図7は、図2に示した可変容量素子VCAPの制御方法の例を示している。なお、図7は、図6に示すように接続された可変容量素子VCAPの制御方法の例を示している。したがって、図7では、特に図示していないが、可動電極MEDには、接地電圧GNDが印加されている。図中のオン期間TONは、可変容量素子VCAPのキャパシタの機能を有効にする期間である。また、図中のオフ期間TOFFは、可変容量素子VCAPのキャパシタの機能を無効にする期間である。例えば、オフ期間TOFFは、可動電極MEDおよび固定電極FED間を高周波的に開放状態にする期間である。すなわち、図6に示した回路構成の例では、オフ期間TOFFは、信号線SIGLと接地線GNDとの間を高周波的に開放状態にする期間である。
【0080】
オン期間TONでは、固定電極FEDに印加されるバイアス電圧VFEDは、電圧VFEDpに維持される。また、対向電極OEDに印加されるバイアス電圧VOEDは、接地電圧GNDに維持される。接地電圧GNDが可動電極MEDに印加されているため、可動電極MEDおよび固定電極FED間には、電圧VFEDpが印加される。
【0081】
これにより、可動電極MEDおよび固定電極FED間に静電引力が発生し、可動電極MEDの可動部MEDbは、固定電極FED側に引き寄せられる。このように、オン期間TONでは、可動電極MEDを元の状態(可動電極MEDの可動部MEDbが絶縁層IS1aに接した状態)に戻すために、電圧VFEDpが固定電極FEDに印加される。なお、可動電極MEDを元の状態に戻す際に可動電極MEDの弾性を利用できるため、電圧VFEDpは、後述するオフ期間TOFFに対向電極OEDに印加される高電圧VOEDpより、低くてよい。したがって、この実施形態では、絶縁層IS1aに電荷が蓄積することを低減できる。また、電圧VFEDpが低いため、絶縁層IS1aの損傷は、抑制される。
【0082】
また、可動電極MEDおよび対向電極OEDに互いに同じ電圧(接地電圧GND)が印加されているため、可動電極MEDおよび対向電極OED間には、可動電極MEDの可動部MEDbを対向電極OED側に引き寄せる程の静電引力は、発生しない。したがって、可動電極MEDの可動部MEDbは、絶縁層IS1aに確実に接する。可動電極MEDの可動部MEDbが絶縁層IS1aに接しているとき、可変容量キャパシタCvの容量値(可動電極MEDおよび固定電極FED間の静電容量)は、大きい。
【0083】
すなわち、可動電極MEDの可動部MEDbが絶縁層IS1aに接しているとき(オン期間TON)、可変容量素子VCAPは、静電容量の大きなキャパシタとして機能する。このように、この実施形態では、可変容量素子VCAPをキャパシタとして使用するとき、可動電極MEDの可動部MEDbを絶縁層IS1aに接した状態にするため、可動電極MEDの状態が不安定になることを防止できる。したがって、この実施形態では、信号線SIGLに伝達される交流信号等の影響を受けることなく、可変容量素子VCAPの容量値を安定させた状態で使用できる。
【0084】
オフ期間TOFFでは、固定電極FEDに印加されるバイアス電圧VFEDは、接地電圧GNDに維持される。また、対向電極OEDに印加されるバイアス電圧VOEDは、電圧VFEDpより高い高電圧VOEDp(例えば、30V程度)に維持される。接地電圧GNDが可動電極MEDに印加されているため、可動電極MEDおよび対向電極OED間には、高電圧VOEDpが印加される。
【0085】
これにより、可動電極MEDおよび対向電極OED間に静電引力が発生し、可動電極MEDの可動部MEDbは、対向電極OED側に引き寄せられる。このように、オフ期間TOFFでは、可動電極MEDの可動部MEDbを絶縁層IS1aから離すために、高電圧VOEDpが対向電極OEDに印加される。なお、可動電極MEDおよび対向電極OED間に高電圧VOEDpが印加されているため、可動部MEDbは、信号線SIGLに伝達される交流信号に拘わらず、絶縁層IS1aから離れた状態を維持する。これにより、オフ期間TOFFでは、可変容量素子VCAPは、信号線SIGLに伝達される交流信号の影響を受けることなく、交流信号に対する高インピーダンス状態を維持する。
【0086】
また、可動電極MEDおよび固定電極FEDに互いに同じ電圧(接地電圧GND)が印加されているため、可動電極MEDおよび固定電極FED間には、可動電極MEDの可動部MEDbを固定電極FED側に引き寄せる程の静電引力は、発生しない。したがって、可動電極MEDの可動部MEDbは、絶縁層IS1aから確実に離れる。可動電極MEDの可動部MEDbが絶縁層IS1aから離れているとき、可変容量キャパシタCvの容量値は、十分小さい。したがって、オフ期間TOFFでは、可変容量素子VCAPは、交流信号に対して高インピーダンス状態になる。すなわち、オフ期間TOFFでは、可動電極MEDおよび固定電極FED間は、高周波的に開放状態になる。
【0087】
このように、可変容量素子VCAPは、例えば、バイアス電圧VFED、VOEDを制御することにより、キャパシタとして機能するオン期間TONと交流信号に対して高インピーダンス状態を維持するオフ期間TOFFとに切り替えられる。このため、この実施形態では、例えば、互いに独立に制御される複数の可変容量素子VCAPを信号線に並列に接続することにより、デジタル的に制御される可変容量素子群を構成できる。
【0088】
なお、可変容量素子VCAPの制御方法は、この例に限定されない。例えば、オン期間TONに固定電極FEDに印加されるバイアス電圧VFEDは、接地電圧GNDでもよい。このときにも、可動部MEDbは、可動電極MEDの弾性により、元の状態に戻る。固定電極FEDおよび可動電極MED間に電圧が印加されないため、絶縁層IS1aへの電荷の蓄積は、さらに低減する。また、絶縁層IS1aに電圧が印加されないため、絶縁層IS1aの損傷は、さらに抑制される。
【0089】
以上、この実施形態においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、この実施形態では、可動電極MEDの固定部MEDaは、例えば、素子分離領域IS1b上にチタンにより形成された密着層CT1を有している。これにより、この実施形態では、可動電極MEDの固定部MEDaを絶縁部IS1に確実に固定できる。
【0090】
図8は、別の実施形態における可変容量素子VCAPの例を示している。上述した実施形態で説明した要素と同一の要素については、同一の符号を付し、これ等については、詳細な説明を省略する。この実施形態の可変容量素子VCAPは、上述した図2に示した第2基板部SUB2の代わりに、第2基板部SUB2Bが設けられている。その他の構成および可変容量素子VCAPの制御方法は、上述した実施形態と同じである。なお、図中の破線および一点鎖線の意味は、上述した図2と同じである。
【0091】
第2基板部SUB2Bは、例えば、対向電極OED2として機能する領域を含むシリコン層SSUB3、絶縁部IS2、密着層CT3、CT4およびリード部LD1、LD2を有している。シリコン層SSUB3は、例えば、シリコン基板に形成されたウエル領域(n型ウエル領域やp型ウエル領域)であり、対向電極OED2として機能する領域を有している。シリコン層SSUB3の対向電極OED2には、上述した図7に示したバイアス電圧VOED等が印加される。
【0092】
絶縁部IS2は、例えば、シリコン層SSUB3上(図8では下側)に形成された絶縁層IS2aと、LOCOSやSTI等により形成された素子分離領域IS2bとを有している。例えば、絶縁層IS2aは、単結晶シリコンを熱酸化して形成されたシリコン酸化膜である。なお、絶縁層IS2aは、多結晶シリコン(ポリシリコン)を熱酸化して形成されたシリコン酸化膜でもよいし、CVD法により形成されたシリコン酸化膜でもよい。
【0093】
また、素子分離領域IS2bは、例えば、シリコン酸化膜であり、対向電極OED2として機能する領域を囲むようにシリコン層SSUB3に形成される。これにより、対向電極OED2は、他の素子から分離される。例えば、対向電極OED2は、第2基板部SUB2Bを含むシリコン基板に形成されるRF回路等の高周波回路の素子から分離される。
【0094】
密着層CT3、CT4およびリード部LD1、LD2は、図2に示した密着層CT3、CT4およびリード部LD1、LD2と同じである。例えば、リード部LD1、LD2を固定部MEDaおよび接続部COPにそれぞれ接続することにより、第1基板部SUB1と第2基板部SUB2Bとが互いに貼り合わせられる。これにより、可変容量素子VCAPの対向電極OEDは、可動電極MEDに間隔を空けて対向するように配置される。
【0095】
以上、この実施形態においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0096】
以上の実施形態において説明した発明を整理して、付記として開示する。
(付記1)
固定電極と、
前記固定電極上に積層された絶縁層を含む絶縁部と、
前記絶縁層上に前記絶縁層から離れる方向に移動可能に積層された可動部および前記可動部の一端を前記絶縁部に固定する固定部を含む可動電極と、
前記可動電極に間隔を空けて対向する対向電極と
を備えていることを特徴とする可変容量素子。
(付記2)
前記固定部は、前記可動電極と前記絶縁部とを固定する固定層を含んでいること
を特徴とする付記1記載の可変容量素子。
(付記3)
前記絶縁層は、単結晶シリコンを熱酸化したシリコン酸化膜で形成されていること
を特徴とする付記1または付記2記載の可変容量素子。
(付記4)
前記可動電極および前記対向電極間に印加された電圧により、前記可動電極および前記対向電極間に静電引力が発生し、前記可動部は、前記対向電極側に引き寄せられ、
前記電圧の印加を停止したとき、前記可動部は弾性により前記固定電極側に戻ること
を特徴とする付記1ないし付記3のいずれか1項に記載の可変容量素子。
(付記5)
前記可動電極は常に接地していること
を特徴とする付記1ないし付記4のいずれか1項に記載の可変容量素子。
(付記6)
半導体基板のシリコン層に形成される固定電極の領域の周囲に、素子分離領域を形成し、
前記固定電極上の一部に、前記シリコン層を熱酸化して絶縁層を形成し、
前記絶縁層が形成されていない前記固定電極上にアルミニウムを堆積し、
前記半導体基板をアニールすることにより、前記固定電極の表面の前記シリコン層をアルミニウムの層に置換し、
前記素子分離領域上の一部に、チタンを含む金属膜を形成し、
前記絶縁層上および前記金属膜上に金を含む層を形成することにより、前記金属膜の一端を支点として前記絶縁層から離れる方向に移動可能な可動電極を形成し、
対向電極が前記可動電極に間隔を空けて対向するように、前記対向電極が形成された対向基板と前記半導体基板とを貼り合わせること
を特徴とする可変容量素子の製造方法。
(付記7)
前記半導体基板は、SOI基板であること
を特徴とする付記6記載の可変容量素子の製造方法。
【0097】
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲がその精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図するものである。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずであり、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物に拠ることも可能である。
【符号の説明】
【0098】
BOX1、BOX2‥埋め込み絶縁層;COP‥接続部;CT1、CT2、CT3、CT4‥密着層;FED‥固定電極;IS、IS1、IS2‥絶縁部;ISa、IS1a、IS2a‥絶縁層;ISb、IS1b、IS2b‥素子分離領域;LD1、LD2、LD3‥リード部;MED‥可動電極;MEDa‥可動電極の固定部;MEDb‥可動電極の可動部;OED、OED2‥対向電極;SSUB1、SSUB2‥シリコン基板;SSUB3‥シリコン層;SUB1‥第1基板部;SUB2、SUB2B‥第2基板部;VCAP‥可変容量素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定電極と、
前記固定電極上に積層された絶縁層を含む絶縁部と、
前記絶縁層上に前記絶縁層から離れる方向に移動可能に積層された可動部および前記可動部の一端を前記絶縁部に固定する固定部を含む可動電極と、
前記可動電極に間隔を空けて対向する対向電極と
を備えていることを特徴とする可変容量素子。
【請求項2】
前記絶縁層は、単結晶シリコンを熱酸化したシリコン酸化膜で形成されていること
を特徴とする請求項1記載の可変容量素子。
【請求項3】
前記可動電極および前記対向電極間に印加された電圧により、前記可動電極および前記対向電極間に静電引力が発生し、前記可動部は、前記対向電極側に引き寄せられ、
前記電圧の印加を停止したとき、前記可動部は弾性により前記固定電極側に戻ること
を特徴とする請求項1または請求項2記載の可変容量素子。
【請求項4】
前記可動電極は常に接地していること
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の可変容量素子。
【請求項5】
半導体基板のシリコン層に形成される固定電極の領域の周囲に、素子分離領域を形成し、
前記固定電極上の一部に、前記シリコン層を熱酸化して絶縁層を形成し、
前記絶縁層が形成されていない前記固定電極上にアルミニウムを堆積し、
前記半導体基板をアニールすることにより、前記固定電極の表面の前記シリコン層をアルミニウムの層に置換し、
前記素子分離領域上の一部に、チタンを含む金属膜を形成し、
前記絶縁層上および前記金属膜上に金を含む層を形成することにより、前記金属膜の一端を支点として前記絶縁層から離れる方向に移動可能な可動電極を形成し、
対向電極が前記可動電極に間隔を空けて対向するように、前記対向電極が形成された対向基板と前記半導体基板とを貼り合わせること
を特徴とする可変容量素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−228355(P2011−228355A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94300(P2010−94300)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】