説明

合成樹脂成形部品の組み付け構造

【課題】合成樹脂成形部品の先端部に対し係合突起の突出方向である左右方向に動かす力が加わっても、係合孔に対する係合突起の係合状態を維持させることができる合成樹脂成形部品の組み付け構造の提供。
【解決手段】エアガイド2側の第1固定手段3が所定間隔hを空けて突出併設配置された2本の係合片31、31で構成される一方、ラジエータコアサポートサイド13側の第2固定手段4は、係合片31、31を挿通可能な縦長長方形状の係合孔41で構成され、2本の係合片31、31の先端部には互いに逆方向へ向けて突出されていて係合孔41を貫通させることにより、該係合孔41の開口縁部に弾性的に係合する山形の係合突起31a、31aが形成され、両係合片31、31の両側に、係合孔41に嵌合することにより係合孔41に対する係合突起31a、31a方向へのエアガイド2の動き阻止する嵌合片32、32がエアガイド2に一体に突出形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被組付部品に対し所定の弾性を有する合成樹脂成形部品が複数個所の固定手段で組み付け固定される合成樹脂成形部品の組み付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用熱交換器(コンデンサ、ラジエータ等)を通過した空気は、熱交換器の外周と電動ファンの外周との間の隙間を塞ぐファンシュラウドの車両後方側開口部を経由してエンジンルーム内に流れ込み、その後、アンダーカバー等の穴から排気される。ところが、アイドリング中や、極低速走行中には、熱交換器を通過して熱交換された熱気が、車体パネル(ラジエータコアサポート等)と熱交換器との隙間等から流出し、再び熱交換器に導かれる、いわゆる吹き返しと呼ばれる現象が発生することがあり、この吹き返しが多く発生した場合、熱交換器は吹き返し熱気で熱交換することとなるため、冷却性能が低下し、熱交換器の性能を十分に利用できなくなる(例えば、特許文献1参照。)・・従来例1。
【0003】
そこで、従来では、グリルからの導風機能とエンジンルーム内からの熱風吹き返し防止機能を目的とし、樹脂材(PP、LDPE)を用いた平板状のエアガイドを左右両ラジエータコアサポートサイドからバンパレインフォースおよびバンパフェイシアまで延ばすことによって隙間を塞ぐようにしていた。
【0004】
しかしながら、平板状のエアガイドの組み付けには、別体のクリップやボルトが用いられていたため、部品点数の増加によりコストアップを招くと共に、作業能率を悪化させるという問題もある。
【0005】
そこで、クリップを合成樹脂製のエアガイドと一体に成形した構造のものがあるが、このクリップ形状は、組み付け部から所定間隔を空けて平行に突出させた2本の係止片の先端部に、両係止片の対向面とは反対側に向けて突出させた係合爪を供えた構造であったため、3種類の成形金型が必要であり、このため、成形金型費用が高く付くという問題があった。
【0006】
そこで、本件出願人は、上述の問題点を解消するものとして、ラジエータコアサポート(被組付部品)に対し所定の弾性を有するエアガイド(合成樹脂成形部品)が複数個所の固定手段で組み付け固定されるエアガイドの組み付け構造であって、前記ラジエータコアサポートまたはエアガイドのいずれか一方の固定手段が該複数個所の固定手段を結ぶ線に略沿う状態で所定間隔を空けて併設配置された複数本の係合片で構成され、もう一方の固定手段が前記各係合片を挿通可能な係合孔で構成され、前記複数本の係合片の先端部には該係合片の併設方向および係合片の突出方向とは直交する方向で互いに逆方向へ向けて突出されていて各係合片の弾性を利用して前記係合孔を貫通させることにより該係合孔の両開口縁部にそれぞれ弾性的に係合する係合突起が形成されている構成としたものを出願した(特許文献2参照。)・・従来例2。
【特許文献1】特開2003−104235号公報
【特許文献2】特開2006−131135号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の従来例2にあっては、係合孔に差し込まれた複数の各係合片は、その先端から互いに逆方向へ向けて突出形成された係合突起が係合孔の両開口縁部に係合して抜けが阻止されているだけであるため、エアガイドの先端部に対し係合突起の突出方向に動かす力が加わると、各係合片が傾くことで、係合孔に対する係合突起の係合状態が解除される方向に動き、これにより、エアガイドが抜けやすくなるという問題があった。
【0008】
本発明の解決しようとする課題は、組付部品に対し所定の弾性を有する合成樹脂成形部品が複数個所の固定手段で組み付け固定される合成樹脂成形部品の組み付け構造であって、成形金型費用の低減化が可能であり、かつ部品点数の減少によるコストの低減化と、組み付け作業能率の向上が図れると共に、合成樹脂成形部品の先端部に対し係合突起の突出方向である左右方向に動かす力が加わっても、係合孔に対する係合突起の係合状態を維持させることができる合成樹脂成形部品の組み付け構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため請求項1記載の合成樹脂成形部品の組み付け構造は、被組付部品に対し所定の弾性を有する合成樹脂成形部品が複数個所において組み付け固定される合成樹脂成形部品の組み付け構造であって、前記被組付部品または合成樹脂成形部品のいずれか一方の第1固定手段が前記複数個所の組付固定部を結ぶ線に略沿う状態で所定間隔を空けて併設配置された複数本の係合片で構成され、もう一方の第2固定手段が前記各係合片を挿通可能な係合孔で構成され、前記複数本の係合片の先端部には該係合片の併設方向および係合片の突出方向とは直交する方向で互いに逆方向へ向けて突出されていて各係合片の弾性を利用して前記係合孔を貫通させることにより該係合孔の両開口縁部にそれぞれ弾性的に係合する係合突起が形成され、前記複数個所の組付固定部を結ぶ線に沿う両側に前記係合孔に嵌合することにより前記係合孔に対する前記係合突起方向への前記合成樹脂成形部品の動き阻止する嵌合片が突出形成されていることを特徴とする手段とした。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の合成樹脂成形部品の組み付け構造では、上述のように、被組付部品または合成樹脂成形部品のいずれか一方の第1固定手段が複数個所の組付固定部を結ぶ線に略沿う状態で所定間隔を空けて併設配置された複数本の係合片で構成され、もう一方の第2固定手段が各係合片を挿通可能な係合孔で構成され、複数本の係合片の先端部には該係合片の併設方向および係合片の突出方向とは直交する方向で互いに逆方向へ向けて突出されていて各係合片の弾性を利用して前記係合孔を貫通させることにより該係合孔の両開口縁部にそれぞれ弾性的に係合する係合突起が形成されている構成としたため、複数本の係合片を係合孔に圧入させる操作のみで被組付部品に対する合成樹脂成形品の組み付けをワンタッチで行うことができるようになり、これにより、部品点数の減少によるコストの低減化と、組み付け作業能率の向上を図ることができる。
【0011】
また、一方の第1固定手段が複数個所の組付固定部を結ぶ線に略沿う状態で所定間隔を空けて併設配置された複数本の係合片で構成され、かつ、複数の係合片の先端部に形成される係合突起が係合片の併設方向および係合片の突出方向とは直交する方向で互いに逆方向へ向けて突出された構造としたことにより、係合片の併設方向の面を中心とする2分割の金型で係合片を成形することができるようになり、これにより、成形金型費用の低減化が可能になる。
【0012】
また、一方の第1固定手段である複数本の係合片が複数個所の組付固定部を結ぶ線に略沿う状態で所定間隔を空けて併設配置された構造であるため、幅方向に狭い部品にも適用することができる。
【0013】
また、複数個所の組付固定部を結ぶ線に沿う両側に前記係合孔に嵌合することにより前記係合孔に対する前記係合突起方向への前記合成樹脂成形部品の動き阻止する嵌合片が突出形成されている構成としたため、合成樹脂成形部品の先端部に対し係合突起の突出方向である左右方向に動かす力が加わっても、係合片が傾くことが阻止されるため、係合孔に対する係合突起の係合状態を維持させることができるようになるという追加の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下にこの発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0015】
この実施例1の合成樹脂成形部品の組み付け構造は、請求項1、2に記載の発明に対応する。
【0016】
まず、この実施例1の合成樹脂成形部品の組み付け構造を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1はこの実施例1の合成樹脂成形部品の組み付け構造が適用されたエアガイド組み付け状態のラジエータコアサポートを示す車両前方からの斜視図、図2はエアガイドを組み付ける前の状態を示す分解斜視図、図3は図2におけるA部の車両後方から見た拡大斜視図、図4は組付固定部の詳細を示す拡大横断面図、図5は図4のC−C線における縦断面図である。
【0018】
即ち、この実施例1では、被組付部材であるラジエータコアサポート1に対し、合成樹脂成形部品であるエアガイド2を組み付ける場合の組み付け構造について説明する。
【0019】
前記ラジエータコアサポート1は、図1、2に示すように、ラジエータコアサポートアッパ11と、ラジエータコアサポートロア12と、左右両ラジエータコアサポートサイド13、13と、サイドメンバ取付けプレート14、14と、フードロックステー15とが合成樹脂により一体に成形されている。
【0020】
前記エアガイド2は、所定の弾性を有する合成樹脂材料により、板状に形成されていて、前記ラジエータコアサポート1のラジエータコアサポートサイド13と該ラジエータコアサポートサイドに対する組付固定部Dとなるエアガイド2の端面には、3箇所に1対の第1固定手段3と第2固定手段4が備えられている。
【0021】
前記エアガイド2側の第1固定手段3は、図3〜5にその詳細を示すように、少なくとも2箇所の組付固定部D−D間を結ぶ線(車両上下方向の線)に沿う状態で所定間隔hを空けて突出併設配置された2本の係合片31、31で構成される一方、ラジエータコアサポートサイド13側の第2固定手段4は、図3〜6にその詳細を示すように、前記係合片31、31を挿通可能な縦長長方形状の係合孔41で構成されている。
【0022】
そして、前記2本の係合片31、31の先端部には該係合片31、31の併設方向(車両上下方向)および係合片31、31の突出方向(車両前後方向)とは直交する方向(車両幅方向)で互いに逆方向へ向けて突出されていて各係合片31、31の弾性を利用して両係合孔41を貫通させることにより、該係合孔41の両開口縁部にそれ両係合片31、31を弾性的に係合する山形の係合突起31a、31aが形成されている。
【0023】
また、両組付固定部D−D間を結ぶ線に沿う両係合片31、31の両側に、係合孔41に嵌合することにより係合孔41に対する係合突起31a、31a方向へのエアガイド2の動き阻止する嵌合片32、32がエアガイド2に一体に突出形成されている。
【0024】
次に、この実施例1の作用・効果を説明する。
【0025】
この実施例1では、上述のように、エアガイド2側の第1固定手段3が少なくとも2箇所の組付固定部D−D間を結ぶ線(車両上下方向の線)に沿う状態で所定間隔hを空けて突出併設配置された2本の係合片31、31で構成される一方、ラジエータコアサポートサイド13側の第2固定手段4は、係合片31、31を挿通可能な縦長長方形状の係合孔41で構成され、2本の係合片31、31の先端部には該係合片31、31の併設方向(車両上下方向)および係合片31、31の突出方向(車両前後方向)とは直交する方向(車両幅方向)で互いに逆方向へ向けて突出されていて各係合片31、31の弾性を利用して両係合孔41を貫通させることにより、該係合孔41の両開口縁部にそれ両係合片31、31を弾性的に係合する山形の係合突起31a、31aが形成されている構成としたことにより、2本の係合片31、31を係合孔41に圧入させる操作のみでラジエータコアサポートサイド13に対するエアガイド2の組み付けをワンタッチで行うことができるようになり、これにより、部品点数の減少によるコストの低減化と、組み付け作業能率の向上を図ることができるようになる。
【0026】
また、エアガイド2側の第1固定手段3が少なくとも2箇所の組付固定部D−D間を結ぶ線(車両上下方向の線)に沿う状態で所定間隔hを空けて突出併設配置された2本の係合片31、31で構成され、かつ、係合突起31a、31aが2本の係合片31、31の先端部で該係合片31、31の併設方向(車両上下方向)および係合片31、31の突出方向(車両前後方向)とは直交する方向(車両幅方向)で互いに逆方向へ向けて突出された構成としたことにより、係合片31、31の併設方向の面を中心とする2分割の金型で係合片31、31をエアガイド2と一体に2分割の金型で成形することができるようになり、これにより、成形金型費用の低減化が可能になるという効果が得られる。
【0027】
また、両係合片31、31が上下方向に併設された構造であるため、幅方向に狭い部品である板状のエアガイド2の組み付けにも適用することができるようになる。
【0028】
また、両組付固定部D−D間を結ぶ線に沿う両係合片31、31の両側に、係合孔41に嵌合することにより係合孔41に対する係合突起31a、31a方向へのエアガイド2の動き阻止する嵌合片32、32がエアガイド2に一体に突出形成されている構成としたため、エアガイド2の先端部に対し係合突起31a、31aの突出方向である左右方向に動かす力が加わっても、係合片31、31が傾くことが防止されるため、係合孔41に対する係合突起31a、31の係合状態を維持させることができるようになるという追加の効果が得られる。
【0029】
次に、他の実施例について説明する。この他の実施例の説明にあたっては、前記実施例1と同様の構成部分については図示を省略し、もしくは同一の符号を付けてその説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【実施例2】
【0030】
この実施例2は、実施例1における装置の変形例を示すものであり、図6の斜視図に示すように、両嵌合片32、32が両係合片31、31の先端部まで延長され、その先端部で接続された略コ字状に形成されている点が、上記実施例1とは相違したものである。
【0031】
即ち、この実施例2では、両両嵌合片32、32の先端が一体に接続されることで、剛性が高められ、これにより、係合孔41に対する係合突起31a、31の係合状態を確実に維持させることができるようになる。
【0032】
以上本実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例1に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
【0033】
例えば、実施例では、ラジエータコアサポート1に対し、合成樹脂成形部品であるエアガイド2を組み付ける場合の組み付け構造について説明したが、すべての部材における組み付け構造に適用することができる。
【0034】
また、実施例では、複数個所の組付固定部に本発明を適用したが、1箇所のみに適用するようにしてもよい。
【0035】
また、実施例では、係合片31を2個設けた例を示したが3個以上設けるようにしてもよい。この場合、係合用突起31aの突出方向が交互に逆方向になるようにすることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例1の合成樹脂成形部品の組み付け構造が適用されたエアガイド組み付け状態のラジエータコアサポートを示す車両前方からの斜視図である。
【図2】実施例1の合成樹脂成形部品の組み付け構造が適用されたエアガイドを組み付ける前の状態を示す分解斜視図である。
【図3】図2におけるA部の車両後方から見た拡大斜視図である。
【図4】組付固定部の詳細を示す拡大横断面図である。
【図5】図4のC−C線における縦断面図である。
【図6】実施例2の合成樹脂成形部品の組み付け構造が適用されたエアガイド側の第1固定手段を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
1 ラジエータコアサポート(被組付部品)
11 ラジエータコアサポートアッパ
12 ラジエータコアサポートロア
13 ラジエータコアサポートサイド
14 サイドメンバ取付けプレート
15 フードロックステー
2 エアガイド(組付部品)
3 第1固定手段
31 係合片
32 嵌合片
31a 係合突起
4 第2固定手段
41 係合孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被組付部品に対し所定の弾性を有する合成樹脂成形部品が複数個所において組み付け固定される合成樹脂成形部品の組み付け構造であって、
前記被組付部品または合成樹脂成形部品のいずれか一方の第1固定手段が前記複数個所の組付固定部を結ぶ線に略沿う状態で所定間隔を空けて併設配置された複数本の係合片で構成され、
もう一方の第2固定手段が前記各係合片を挿通可能な係合孔で構成され、
前記複数本の係合片の先端部には該係合片の併設方向および係合片の突出方向とは直交する方向で互いに逆方向へ向けて突出されていて各係合片の弾性を利用して前記係合孔に貫通させることにより該係合孔の両開口縁部にそれぞれ弾性的に係合する係合突起が形成され、
前記複数個所の組付固定部を結ぶ線に沿う両側に前記係合孔に嵌合することにより前記係合孔に対する前記係合突起方向への前記合成樹脂成形部品の動き阻止する嵌合片が突出形成されていることを特徴とする合成樹脂成形部品の組み付け構造。
【請求項2】
請求項1に記載の合成樹脂成形部品の組み付け構造において、
前記被組付部品が自動車におけるラジエータコアサポートであり、
前記合成樹脂成形部品が前記ラジエータコアサポートにおけるラジエータコアサポートサイドに組付け固定されるエアガイドであり、
該エアガイド側に複数設けられる一方の第1固定手段の少なくとも1箇所が前記係合片で構成され、
前記ラジエータコアサポート側に複数設けられるもう一方の第2固定手段が前記係合孔で構成されていることを特徴とする合成樹脂成形部品の組み付け構造。
【請求項3】
請求項1または2記載の合成樹脂成形部品の組み付け構造において、
前記両嵌合片の先端が一体に接続されることを特徴とする合成樹脂成形部品の組み付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−157279(P2008−157279A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−343678(P2006−343678)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】