説明

向上した特性を有する多層プラスチック耐食コーティング

本発明はコーティング及び外面コーティング処理方法に関する。特に、本発明は、水に曝された状況下で架橋性ポリマを用いてパイプラインの外面をコーティングする処理方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング及び外面コーティングのための処理方法に関する。特に、本発明は、パイプラインの外面を、水に曝された状況下で架橋可能なポリマにより被覆する処理法に関する。
【0002】
本発明にいうパイプラインは、実体のある媒体、例えば気体、液体、又は固形物の輸送に適した中空体に関連する。
【背景技術】
【0003】
鋼鉄製パイプラインは、石油及び石油製品、ガス、水、蒸気、固形物及び他の媒体を、開発場所や生産現場から消費地へと経済的に輸送するために世界中で用いられている。鋼鉄製パイプラインは腐食から保護する必要があり、これは、長期間に亘るパイプラインの運用上の安全性を確保するためである。このため、パイプラインには通常、製造時に腐食保護が施される。最も一般的なコーティング技術は、以下の通りである。
・FBE(Fusion Bonded Epoxy)を用いた1層又は2層のコーティング。
・エポキシ、接着剤、非架橋PE(ポリエチレン)又はPP(ポリプロピレン)で形成した上層を用いた3層コーティング。このコーティングは、MAPECコーティングとも呼ばれる。
【0004】
長期間の腐食防止は、コーティングがパイプラインの輸送、設置、及び運用中に損傷を受けない場合にのみ与えられる。輸送及び設置中に、FBEコーティングへの損傷を防ぐために、コーティングは、細心の注意を払って取り扱うことを要する。充分な予防措置をとったにもかかわらず、補修の必要性は未だに高い。
【0005】
運用中に、付設されたFBEや3層被覆のパイプラインへの事後的な損傷を防止するために、これらは普通、パイプライン溝において、細かく粉砕された充填材、好ましくは砂又は他の粉末材料で埋め込まれる。これには、パイプラインへの損傷を防止するために、微細な、従ってコストのかかる充填材を要するという点で不都合がある。特定の状況において、上記の埋め込みは砂で行う必要がある。
【0006】
欧州特許出願EP619343A1はパイプラインの外面コーティングに関するものであり、その外層がシラン架橋ポリマ組成物を含み、これはポリプロピレンと、プロピレン、エチレン及び他のモノマのコポリマから形成される。架橋結合を得るために、この材料は、過酸化物及び不飽和シランを用いて同時押出しがなされる。次工程において、得られた材料は、架橋触媒を用いて再び同時押出しされる。最後に、この材料は、架橋結合を完全にするために、数日間水中で保管される。そして鋼鉄製パイプラインは、このような処理によって得られた材料で被覆される。
【0007】
上記処理は、上述の外面コーティングの製造にとって、より複雑で、従ってコスト高な処理工程を要する点で不利である。それだけなく、シラン架橋ポリオレフィンを、数日間、水中で保管する必要があり、これは生産能力を拘束する。生産能力が更に拘束される理由は、パイプラインに架橋ポリオレフィンの外層を付与する前に中間層を施し、その後にこれを保管しなければならないことである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明には、最新技術における1つ以上の前述した欠点を解決するという目的がある。特に本発明の目的は、パイプラインを、水に曝された状況下で架橋性ポリマにより被覆するための、簡素化された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、以下の工程を有する本発明に従い、パイプラインの外面を、水への暴露下にて架橋性ポリマで被覆する方法によって達成される。
a)パイプラインの外面を、水への暴露下で架橋可能な少なくとも1つのポリマで被覆する工程であって、使用する架橋性ポリマが、アルコキシシラングラフトHDPEを含むものとされる工程。
b)30%以上かつ80%以下の架橋度に達するまでの間、架橋ポリマ層の形成下にて、高温で水に曝すことにより前記架橋性ポリマの架橋結合を得る工程。
【0010】
架橋度は、例えば、40%以上であって70%以下とし、好ましくは45%以上であって65%以下とし、更に好ましくは約50%とすることができる。架橋度については、例えば、ISO10147に従って測定できる。
【0011】
水への暴露下で架橋可能な、使用ポリマは、アルコキシシラングラフトHDPE(高密度ポリエチレン)を、使用する架橋性ポリマの全重量に対して50質量百分率以上かつ100質量百分率以下の範囲で含むことができる。但し、HDPEの割合を、70質量百分率以上であって100質量百分率以下とし、又は、98質量百分率以上であって100質量百分率以下とすることもできる。
【0012】
本発明にいうHDPEは、架橋前の密度が0.940g/cm以上であって0.965g/cm以下とされ、好ましくは、0.945g/cm以上であって0.960g/cm以下、更に好ましくは0.950g/cm以上であって0.960g/cm以下、そして更に好ましくは0.952g/cm以上であって0.955g/cm以下の密度をもち、かつMFR(190/2.16)と表記されるメルトフローレートが、0.3g/10分以上であって10.0g/10分以下とされ、好ましくは1.0g/10分以上であって8.0g/10分以下、更に好ましくは3g/10分以上であって6.6g/10分以下、最も好適には3.5g/10分から6.5g/10分とされた、ポリエチレンを意味する。
【0013】
HDPEの密度は、例えば、ISO1183に従って決定できる。メルトフローレートはMFR(190/2.16)と表記され、例えば、ISO1133に従って測定される。
【0014】
HDPEは、Zieglerの触媒、Philipsの触媒又はメタロセン触媒、あるいはこれらの組み合わせと、共触媒の存在下で、後続の重合工程についての1工程又は複数工程での反応シーケンスを経て生成され、従って、単峰性又は多峰性の分子量分布を示すことができる。
【0015】
HDPEは、複数の添加剤を含むことができる。これらの添加剤は、好ましくは熱及び処理安定剤、酸化防止剤、UV(紫外線)吸収剤、光保護剤、金属非活性化物、過酸化物を破壊する化合物、有機過酸化物、塩基性の共安定剤であり、その量は0以上10質量百分率以下とされ、好ましくは、0以上5質量百分率以下とされる。また添加剤は、煤煙、充填剤、顔料、又はこれらの組み合わせであって、総量が、組成物の全重量に対して、0以上30質量百分率以下とされる。
【0016】
本発明によれば、ポリマ鎖にグラフト化されるアルコキシシランを、例えば、ラジカル付加、付加環化、求電子付加又はエン反応によって、ポリマ鎖にグラフト化することができる。出発物質として好ましいのは、アルケニル基で置換されたアルコキシシランであり、例えば、ビニル・トリメトキシ・シラン、ビニル・ジメトキシ・メチル・シラン、ビニル・トリエトキシ・シラン、ビニル・トリアセトキシ・シラン、及び/又はビニル・トリス(2−メトキシ・エトキシ)シランから成る群から選択した、ビニル・シラン・エステルである。グラフトプロセスが、事前の別個の押出プロセス中において、又は、コーティング組成物の押出の間に、起こるかどうかは重要でない。後者の工程では、グラフト化されるシランとともに、有機スズ合成物を含む金属カルボン酸塩、好ましくはジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルジカプリル酸スズ、スズアセテート、及びカプリル酸スズの群から選択される架橋促進剤としてのルイス酸を用いることができる。
【0017】
本発明によると、水架橋性ポリマ、好ましくはHDPEが、ビニル・シラン・エステルの含有率を示し、これは、1質量百分率以上5質量百分率以下、好ましくは、1.4質量百分率以上2.5質量百分率以下、更に好ましくは1.8質量百分率での反応押出によってグラフト化されたものである。シラングラフトHDPEの架橋は、高温で水に曝されることにより起こる。特定の理論に縛られることなく、最初に、アルコキシシランがアルコール類の遊離下で、対応するシラノールへと、部分的に又は完全に加水分解されるものと想定される。更なる工程では、シラノールセンタが、シロキサンブリッジの形成及び水の遊離の下で凝縮する。本発明にいう「高温」とは、室温よりも高い温度を意味する。例えば、この温度は、50°C以上であって350°C以下とされ、好ましくは150°C以上であって300°C以下、更に好ましくは200°C以上であって260°C以下とされる。
【0018】
本発明に従う架橋度により、ポリマ層の、大幅に向上した弾性が可能となる。例えば、本発明によって製造されるポリマ層の架橋度は、向上した衝撃抵抗度及びノッチ付衝撃抵抗度をもたらす。このことは、被覆対象物が、大きな機械的応力を伴う環境に置かれる場合、例えば、パイプラインを岩の多い土壌や温度変化の大きい場所に設置する場合に有利である。
【0019】
本発明による処理法では、架橋のために、30%以上80%以下の架橋度に達するまでの間、水を架橋性ポリマ層に作用させる。しかしながら、水との反応時間を短くし又は長くすることによって、架橋度を低くし又は高くすることも可能である。例えば、架橋度は、25%以上80%以下、あるいは20%以上80%以下にできる。20%未満の架橋度は、有利な材料特性をもたらさず、被覆された製品の後処理が必要となる。80%を超える架橋度については、水を作用させるだけでは達成が難しい。この場合、ポリマ鎖におけるシランセンタの濃度が一因となるが、これは、自由なシランセンタの各々は、それが架橋可能な範囲内に別のシランセンタを有するとは限らないからである。更にまた、そのような架橋コーティングは、実質的に低下した機械的特性を示す。
【0020】
架橋度は、当業者にとって既知の方法、例えばIR(赤外線)分光分析又はNMR(核磁気共鳴)分析を用いて測定できる。本発明では、架橋度を、ISO規格10147に従ってゲル含有率を調べることで測定することが好ましい。
【0021】
本発明によるパイプラインは、金属製パイプライン、鋼鉄製パイプライン、及び/又はプラスチック製パイプラインから成る群より選択できる。本発明により被覆される鋼鉄製パイプラインは、石油及び石油製品、ガス、蒸気、水、固形物及び他の媒体を、開発場所や生産現場から消費地へと輸送するのに好適である。
【0022】
本発明の利点は、コーティングされるパイプラインに架橋性層を被覆した直後に、水架橋性ポリマの架橋が行われ、しかもこれをパイプラインのコーティング時に1つの処理工程内で行えることである。
【0023】
本発明による処理方法では意外にも、処理工程、つまり、コーティング及びパイプラインの冷却が特別に調整される場合であって、それらが互いに連続する場合に、インライン架橋(inline−cross−linking)が可能であることが判明した。
【0024】
従って、本発明に係る処理方法により、パイプラインの多層防食コーティングにおける外側の機能層としての、架橋性ポリマの経済的で興味深い大規模な適用が可能となる。
【0025】
本発明によれば、本発明に係るパイプラインには、2層以上の異なる外面コーティングが設けられ、好ましくは3層以上の異なる外面コーティング、更に好ましくは4層以上の異なる外面コーティングが設けられる。
【0026】
本発明による架橋ポリマ層、特にシラン架橋HDPEは、最外層のパイプラインコーティングとして、有利に指定される。追加的に付加される層を、エポキシ樹脂プライマ、粘着剤、及び/又はHDPEより成る群から選択できる。
【0027】
例えば、第1層をエポキシ樹脂に基づくコーティングとし、第2層を接着剤に基づくコーティングとし、その上にHDPEに基づく層を、パイプラインに施すことができる。最外層として、本発明によるポリマ層、好ましくはシラン架橋HDPEが、前述の層上に付与される。
【0028】
パイプラインの第1層としてエポキシ樹脂を用いることは有利であるが、その理由は、パイプラインの材料と、更に付与される層の材料との相性が互いに相容れないものであっても構わないからである。従って、エポキシ樹脂は、良好な下塗りを提供するとともに、更なる層との良好な接着性を提供する。更に有利なことに、エポキシ樹脂はパウダスプレープロセスによって均一に塗布することができる。このプロセスは溶剤がなく、よって、環境保護及び金銭的な観点で魅力的である。付与する層の厚さについては、一度に可能な限り少ないエポキシ樹脂を使用してパイプラインの完全なコーティングが可能となるように制御できる。例えば、エポキシ樹脂は、0.08mm以上であって0.16mm以下の層厚、好ましくは0.10mm以上であって0.13mm以下の層厚、更に好ましくは、0.125mmの層厚をもって施される。
【0029】
コーティングの次工程は、ポリマ接着剤の塗布とすることができる。このような接着剤には、プライマ(従って基材)と更なる外層との間に、耐久性があって強い結合をもたらすという役割がある。接着剤層の厚さについては、ある面で接着剤層が剥がれることなく均一に塗布され、かつ別の面では接着剤の良好な性能が得られるように選択することが好ましい。層が薄過ぎると、付与時の剥離のために、接着剤が基材を完全に覆わない虞がある。また層が厚過ぎる場合には、接着剤の特性が、それぞれの基材境界での粘着力により支配されず、接着剤内での結合力によって支配される。従って、接着性が悪化することになる。例えば、接着剤を、0.15mm以上であって0.30mm以下の層厚、好ましくは、0.22mm以上であって0.27mm以下、更に好ましくは0.25mmの層厚をもって塗布することできる。
【0030】
次に、HDPE外層を適用できる。このような層は、その厚さが適当に選択される場合に、パイプラインの温度変化、電流及び漏出に対するバリアとして機能する。この目的を達成するために、HDPE上層については、2.8mm以上であって3.2mm以下の層厚、好ましくは2.9mm以上であって3.1mm以下の層厚、更に好ましくは3mmの層厚をもって適用できる。
【0031】
最外層は、本発明による架橋性ポリマ層、例えばシラン架橋性HDPE層とすることができる。既述のように、より高い衝撃抵抗度及びノッチ付衝撃抵抗度は、本発明によって被覆されるパイプラインが、大きな機械的応力を伴う環境で使用可能となるように、コーティングによって得られる。シラン架橋性HDPE層の厚さは、材料の経済的な使用及び機能性への要求によって決まり、例えば、その目的は、パイプライ用の鋭利なエッジをもつ埋め込み材料に対して充分な耐性を得ることにある。例えば、シラン架橋性HDPE層は、0.8mm以上であって1.2mm以下の層厚、好ましくは0.9mm以上であって1.1mm以下の層厚、更に好ましくは1mmの層厚をもって適用できる。
【0032】
シラン架橋性HDPE層の付与は、パイプラインに用いる通常のコーティング技術、例えば、ラッパー(wrapper)押出又はチューブ押出(クロスヘッド)で行える。架橋性の外層付与については、パイプラインのコーティング用の外層として通常用いる標準的なポリマとともに1つのノズルを用いた同時押出し形成で行うか、あるいは直前に押し出されて適用されるポリマ上層の上に、別に押し出されたコーティング材料を付与することで行える。水への暴露下で架橋可能とされるポリマの適用直後に、被覆されたパイプライン、従ってまた架橋性ポリマ層は水でスプレーされる。
【0033】
架橋結合のため、シラン架橋ポリマ層は、パイプラインの特性に対して有利な寄与をもたらす。本発明の更なる実施形態では、架橋ポリマ層の珪素含有率が、0.10質量百分率以上であって1.00質量百分率以下とされ、好ましくは、0.30質量百分率以上であって0.40質量百分率以下、更に好ましくは0.33質量百分率以上であって0.35質量百分率以下とされる。このような珪素含有率により、所望の特性、例えば、伸長量、破断伸び、衝撃抵抗度又はノッチ付衝撃抵抗度等が得られ、その際、過剰の珪素を含む材料を伴うことはない。珪素含有率の測定は、当業者には周知の方法、例えば基本的な分析又は原子吸収分析等を用いて行える。
【0034】
架橋結合を良好にするために、層流となるように水をパイプライン上に流すことが想起される。乱流を回避することで、幾つかの利点が得られる。第1に、水は全面を流れることが保証され、そして、乱流又は流れの剥離により水がその上を十分に流れなくなってしまうパイプライン表面の領域がなくなることが保証される。この状況ではまた、被覆したパイプラインが一様に冷却されて、水架橋性ポリマ層の架橋が一様に行われることになる。
【0035】
本発明の別の実施形態では、ポリマ層の架橋のための、水との反応工程の時間が、長手方向に移動するパイプラインの1メートル当たり、0.5分以上であって5.0分以下とされ、好ましくは1.0分以上であって3.0分以下、更に好ましくは1.9分以上であって2.1分以下とされる。例えば、長さ8mのパイプラインは、約16分の時間、水で処理される。この継続時間は、所望の架橋度が、生産能力についての不必要な拘束を伴わずに達成されることを保証する。
【0036】
本発明の更に好ましい実施形態では、水への暴露下で架橋性ポリマの架橋結合が、50°C以上であって350°C以下の温度、好ましくは150°C以上であって300°C以下の温度、更に好ましくは220°C以上であって260°C以下の温度で起こる。このような温度は、水で処理する前における、架橋性ポリマ層の温度を意味する。より低い温度では、架橋反応が十分に速く進行せず、シラン加水分解によって形成されるアルコール類の蒸発が完全でない。他方では、適用される架橋性ポリマ層が、より高い温度において十分に安定でなく、そして、均一なコーティングのためには粘性が低すぎる。
【0037】
本発明にかかる別の更に好ましい実施形態では、本発明による処理方法が、以下の工程を含む。
・パイプラインを、170°C以上であって230°C以下に加熱し、好ましくは180°C以上であって220°C以下に加熱し、更に好ましくは190°C以上であって210°C以下に加熱する工程。
・静電パウダスプレープロセスにより、0.08mm以上であって0.16mm以下の層厚、好ましくは0.10mm以上であって0.13mm以下の層厚、更に好ましくは0.125mmの層厚で、エポキシ樹脂を施す工程。
・ラッパー(wrapper)押出プロセスにより、0.15mm以上であって0.30mm以下の層厚、好ましくは0.22mm以上であって0.27mm以下の層厚、更に好ましくは0.25mmの層厚で、接着剤を塗布する工程。
・押出により、2.8mm以上であって3.2mm以下の層厚、好ましくは2.9mm以上であって3.1mm以下の層厚、更に好ましくは3mmの層厚で、HDPE上層を施す工程。
・押出により、0.8mm以上であって1.2mm以下の層厚、好ましくは、0.9mm以上であって1.1mm以下の層厚、更に好ましくは1mmの層厚で、シラン架橋性HDPE層を施す工程。
・パイプラインを水で処理する工程であって、水温が、10°C以上であって40°C以下とされ、好ましくは20°C以上であって30°C以下とされ、更に好ましくは25°Cとされる工程。
【0038】
接着剤の塗布中での押出温度は重要であり、その理由は、高い温度ではプライマ層に対して、より速い結合が保証されるからである。従って、製造プロセス中における機械の休止を回避することが可能である。最高温度は、接着剤の熱的安定性及び粘性によって制限される。よって本発明の更に好ましい実施形態では、接着剤の塗布中の押出温度が、200°C以上であって250°C以下とされ、好ましくは210°C以上であって240°C以下、更に好ましくは220°C以上であって230°C以下とされる。
【0039】
同様に、HDPE上層の適用中の押出温度が重要であり、その理由は、高い温度では接着剤層に対して、より速い結合が保証されるからである。従って、製造プロセス中における休止を回避することが可能である。最高温度は、HDPE上層の熱的安定性及び粘性によって制限される。よって本発明の更に好ましい実施形態では、HDPE上層の適用中の押出温度が、220°C以上であって240°C以下とされ、好ましくは225°C以上であって235°C以下、更に好ましくは230°Cとされる。
【0040】
本発明による処理方法の利点は、パイプラインを短期間で被覆できることである。例えば、コーティング中の鋼鉄製パイプラインのライン速度を、0.5m(メートル)/分以上であって4m/分以下とし、好ましくは1m/分以上であって3m/分以下とし、更に好ましくは2m/分にできる。
【0041】
水での冷却を開始する前の、パイプラインの高い温度は、幾つかの理由により有利である。第1に、高いパイプライン温度は、PE上層とシラン架橋性HDPE層との良好な融着が保証される。これにより、耐久性をもった結合が得られ、コーティングにおけるギャップや孔が回避される。更に、高温は、後続の架橋工程における反応速度を高めるために有益である。本発明の更に好ましい実施形態では、水による冷却を開始する前のパイプライン温度が、170°C以上であって210°C以下とされ、好ましくは180°C以上であって200°C以下、更に好ましくは190°Cとされる。
【0042】
但し、上述の理由により、更に直接的には、水による冷却、従って架橋工程前のコーティング表面の高温が重要である。本発明の更に好ましい実施形態では、水による冷却を開始する前のコーティングの表面温度が、220°C以上であって260°C以下とされ、好ましくは230°C以上であって250°C以下、更に好ましくは240°Cとされる。
【0043】
水でのスプレー後に、架橋結合はまだ、ある程度まで更に進行する。反応を極力速く進行させるために、コーティング表面の高い温度が有効である。本発明の更に好ましい実施形態では、水での冷却後におけるコーティングの表面温度が、40°C以上であって80°C以下とされ、好ましくは50°C以上であって70°C以下、更に好ましく60°Cとされる。
【0044】
上記と同様に、水との接触後における、パイプライン自体の高い温度は、架橋反応を進めるために有利であり、その理由として、パイプラインは、架橋が行われるべき、深層部の材料を有利な温度に保つからである。従って、本発明の更に好ましい実施形態では、水での冷却後におけるパイプラインの温度が、40°C以上であって100°C以下とされ、好ましくは50°C以上であって90°C以下、更に好ましくは60°C以上であって80°C以下とされる。
【0045】
冷却工程におけるパイプライン全体での残余時間は、水での連続したスプレーによる、架橋反応の度合にとって決定的である。更にまた、パイプラインは冷却後に問題なく取り扱うことができ、これは、その温度が作業員又は機械に対して危害を及ぼさないからである。従って、本発明の更に好ましい実施形態では、冷却工程におけるパイプラインの残余時間が、14分以上であって18分以下とされ、好ましくは15分以上であって17分以下、更に好ましくは16分とされる。
【0046】
より小径のパイプラインには、チューブ押出し、すなわちリングノズルによってコーティングを行うことが有利である。これにより、非架橋性ポリマ層及び架橋性ポリマ層の同時押出しが可能である。より大きなパイプラインの場合、代替例としてラッピング(wrapping)押出しがある。
【0047】
本発明によって被覆されるパイプラインについての重要な利点は、極めて不利な状況でさえ、機械的な損傷に耐えられる耐久性にある。破断伸び及びESCR試験における挙動は、コーティングが長期間に亘って、不都合な輸送条件及び設置条件、あるいは環境条件(寒冷、紫外線照射、化学的に汚染された土壌、又は微生物)の下で如何に持ちこたえるかについての情報を与える。
【0048】
シラン架橋ポリマ層は、コーティングの特性、延いてはパイプラインの使用可能性に対して、有利な寄与をもたらす。本発明の好ましい実施態様において、−45°Cで測定したコーティングの破断伸びは、135%以上であって400%以下とされ、好ましくは200%以上であって300%以下、更に好ましくは240%以上であって260%以下とされる。これによって、低温環境、例えば永久凍土層の土壌でのパイプラインの使用が可能である。
【0049】
シラン架橋ポリマ層が寄与する、コーティングの他の有利な特性は、その耐応力亀裂性である。好適な本発明の他の有利な実施形態では、コーティングは、耐環境応力亀裂性(ESCR)試験(4.0MPa、80°CでのFNCT)において、100時間以上であって10000時間以下の期間、好ましくは500時間以上であって2000時間以下の期間、更に好ましくは900時間以上であって1100時間以下の期間に亘って安定性を保つ。このことは、鋭利なエッジを伴う環境での使用を可能にする。更にまた、輸送中の被覆パイプラインについて過敏性の度合が減少する。
【0050】
本発明の有利な実施形態によれば、パイプラインの外面は、2層以上の異なる層、好ましくは3層以上、更に好ましくは4層以上の異なる層によって被覆される。
【0051】
パイプラインはその最外層として、架橋ポリマ、特にシラン架橋HDPEのコーティングを含むことが好ましく、これは本発明に従って製造できる。
【0052】
付加される層は、エポキシ樹脂、接着剤、及び/又はHDPEより成る群から選択できる。好ましくは、パイプラインの外面において第1の内側のコーティングが、エポキシ樹脂に基づく第1層から成る。この第1層の上には、第2の外側のコーティングを施すことができ、これは接着剤に基づく。第1層又は第2層の上には、HDPEに基づく第3の外層を更に適用でき、その場合に、シラン架橋HDPEの層が最も外側の上層として存在する。
【0053】
本発明は更に、第1の架橋性ポリマに基づく、少なくとも1つの外面コーティングをもったパイプラインを提供し、この第1の架橋性ポリマがシラン架橋HDPEから成り、そして、架橋ポリマは30%以上であって80%以下の架橋度を有する。本発明にかかる架橋度により、外面コーティングの耐久性を、著しく向上させることができる。例えば、この架橋度は、向上した衝撃抵抗度及びノッチ付衝撃抵抗度をもたらし、これにより、大きな機械的応力を伴う環境でのパイプラインの使用が可能となる。
【0054】
本発明によるパイプラインは、多層の表面コーティングを含んでもよく、その第1の下層がエポキシ層であり、第2の中間層が接着剤層であり、第3の上層が、二峰性分子量分布を有するHDPE層であって、第4の外層がシラン架橋HDPE層とされる。この構造により、不利な環境条件での輸送、設置及び運用におけるパイプラインへの要求に対して、有利に応じることができる。
【0055】
パイプラインのシラン架橋ポリマ層は、特にその架橋結合により、パイプラインの特性に対して有利な寄与をもたらす。本発明の好ましい実施態様において、シラン架橋HDPE層はその珪素含有率が0.10質量百分率以上であって1.00質量百分率以下とされ、好ましくは0.30質量百分率以上であって0.40質量百分率以下、更に好ましくは0.33質量百分率以上であって0.35質量百分率以下とされる。このような珪素含有率において、伸長量、破断伸び、衝撃抵抗度、又はノッチ付衝撃抵抗度等について所望の特性が得られ、その際、過剰に珪素を含有する材料を伴わない。珪素含有率の測定については、基本分析又は原子吸光分析のような当業者にとって周知の方法で行える。
【0056】
既述のように、シラン架橋ポリマ層は、コーティング特性、延いてはパイプラインの使用に対して有利な寄与をもたらす。本発明の更に好ましい実施形態において、シラン架橋HDPE層は、その破断伸びが、−45°Cにて、135%以上であって400%以下とされ、好ましくは200%以上であって300%以下、更に好ましくは240%以上であって260%以下とされる。これにより、例えば永久凍土層でのパイプラインの使用が可能となる。
【0057】
本発明の更に好ましい実施形態では、シラン架橋HDPE層が、耐環境応力亀裂性(ESCR)試験(4.0MPa、80°CでのFNCT)にて、100時間以上であって10,000時間以下の期間に亘って、好ましくは、500時間以上であって2000時間以下の期間に亘って、更に好ましくは900時間以上であって1100時間以下の期間に亘って安定性を保つ。従って、パイプラインは不利な環境条件に対して耐性をもつ。
【0058】
本発明は更に、本発明に従って生産可能なコーティングを提供する。例えば、コーティングは、以下の組成物を含むことができる。
・0.08mm以上であって0.16mm以下の層厚、好ましくは0.10mm以上であって0.13mm以下の層厚、更に好ましくは0.125mmの層厚をもったエポキシ樹脂。
・0.15mm以上であって0.30mm以下の層厚、好ましくは0.22mm以上であって0.27mm以下の層厚、更に好ましくは0.25mmの層厚をもった接着剤。
・2.8mm以上であって3.2mm以下の層厚、好ましくは2.9mm以上であって3.1mm以下の層厚、更に好ましくは3mmの層厚をもったHDPE上層。
・0.8mm以上であって1.2mm以下の層厚、好ましくは0.9mm以上であって1.1mm以下の層厚、更に好ましくは1mmの層厚をもったシラン架橋性HDPE層。
【0059】
シラン架橋コーティングの利点は、その熱膨張量が小さいことである。本発明の更に好ましい実施形態において、架橋ポリマ層の熱膨張量(ホットセット)は、200°C、15分にて、70%以上であって90%以下、好ましくは80%以上であって85%以下、更に好ましくは83%とされる。これにより、パイプラインが高温の媒体を輸送し又は多量の熱を被る場合において、パイプラインの重量下でさえ、コーティングは変形し、柔軟性をもち、また流されない。
【0060】
シラン架橋コーティングによる更に有利な性質は、非極性溶媒による浸出に対する耐性である。十分に架橋が行われた材料は、機能的な安定性を保証するために、この種の溶媒による浸出後に残る。従って、本発明の更に好ましい実施形態では、架橋ポリマ層のゲル含有率が、50%以上であって70%以下とされ、好ましくは、60%以上であって65%以下、更に好ましくは64%とされる。従って、ガソリンのような溶媒に触れた場合に、コーティングに不具合が生じる危険性は少なくなる。
【0061】
本発明によるコーティングの利点はまた、該コーティングが非極性溶媒に触れた場合に、その膨潤が極めて小さいことであり、その理由は、コーティングの軟化が起こるからである。本発明の更に好ましい実施形態において、架橋ポリマ層の膨潤数(キシレン)は、5%以上であって10%とされ、好ましくは9%以上であって10%以下、更に好ましくは9.2%とされる。従って、ガソリンのような溶媒と触れた場合に、コーティングに不具合が生じる危険性が少なくなる。
【0062】
更にまた、シラン架橋層は、環境の影響に対する安定性にとって有利な寄与をもたらす。本発明の更に好ましい実施形態において、架橋ポリマ層のESCR(耐環境応力亀裂性)値(F値)は、6000時間を超えた後でも破断を示さない。本発明の別の好ましい実施形態において、架橋ポリマ層は、ESCR(耐環境応力亀裂性)試験(4.0MPa、80°CでのFNCT)において1000時間を超えた後でも損傷を示さない。耐応力亀裂性が高いことは、砂漠域のように強い太陽光照射を受ける場所において、パイプライン用のコーティングの使用を可能にする。
【0063】
シラン架橋コーティングによる更なる利点は、低いクリープ傾向を示すこと、つまり張力の下で殆ど伸長しないことである。本発明の更に好ましい実施形態では、23°C/96時間での、時間対伸長量試験において、架橋ポリマ層の伸長量が、0.3%以上であって0.9%以下とされ、好ましくは0.5%以上であって0.7%以下、更に好ましくは0.6%とされる。このようなコーティングを支持部材に施した場合に、コーティングのクリープ、従って弱化の懸念がなくなる。
【0064】
シラン架橋コーティングの更なる利点を、以下に列挙する。本発明の更に好ましい実施形態において、架橋ポリマ層の衝撃抵抗度は、−100°Cにて破断を示さない。本発明の更に好ましい実施形態において、架橋ポリマ層のノッチ付衝撃抵抗度は、−40°Cにて破断を示さない。これらの衝撃抵抗度及びノッチ付衝撃抵抗度によって、本発明によるコーティングを問題なく輸送できるようになるが、その理由は、より軽度の注意を払えば済むからである。また、このようなコーティングは損傷を受け難いので、落石の起き易い場所では、更に長持ちする。
【0065】
本発明の更に好ましい実施形態では、23°Cでの架橋ポリマ層の引裂強度が、15MPa以上であって20MPa以下とされ、好ましくは16MPa以上であって17MPa以下、更に好ましくは16.5MPaとされる。引裂強度が大きいことは、例えば、シラン架橋層が突然のせん断応力を被る場合に有利であり、このようなせん断応力は、本発明によるコーティングで被覆されたパイプラインであって、地上には設置されないパイプラインに作用する強い風力を伴う例で見られる。
【0066】
本発明の更に好ましい実施形態では、架橋ポリマの破断伸びが、−45°Cにおいて、230%以上であって270%以下とされ、好ましくは240%以上であって260%以下、更に好ましくは250%とされる。このような低温での破断伸びが大きいことは、例えば、シラン架橋層が永久凍土層の土壌に設置され、シラン架橋層がもろくならないように防ぐ必要がある場合に有利である。
【0067】
本発明を、図1乃至3において更に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0068】
図1は、事前にブラストされて加熱されたパイプライン(1)を示しており、該パイプラインは第1工程で、静電パウダスプレーシステム(2)においてエポキシ樹脂(3)のプライマ(下塗り)層で覆われる。次に、標準的な接着剤(5)の層が、ラッピング(wrapping)押出機(4)を用いて付与される。更に、パイプラインの移動方向において、材料は、ポリエチレン(8)を移送する別の押出機(7)と、シラン架橋性ポリエチレン(10)を移送する別の押出機(9)から、リングノズル(6)を通って流れる。これらの2つの材料の流れは、パイプライン(11)上に同時押出しされる。最終工程では、スプレー装置(12)が、水を用いて最外部のポリマ層への噴射を遂行し、これは、シラン架橋層(13)の形成において、架橋性ポリマの架橋結合を得るためである。
【0069】
図2は、事前にブラストされて加熱されたパイプライン(1)を示しており、該パイプラインは第1工程で、静電パウダスプレーシステム(2)においてエポキシ樹脂(3)のプライマ層で覆われる。次工程では、標準的な接着剤(5)の層が、ラッピング(wrapping)押出機(4)を用いて付与される。更に、パイプラインの移動方向において、別のラッピング押出機(14)によりポリエチレン層(8)が付与される。そして別のラッピング押出機(15)を用いて、シラン架橋性ポリエチレン(10)の層が付与される。最終工程は、スプレーシステム(12)での、水を用いた最外部のポリマ層への噴射工程であり、これは、シラン架橋層(13)の形成において、架橋性ポリマの架橋結合を得るためである。
【0070】
これにより、被覆済みパイプラインは、冷却ステーションを出た後で、50%を超える架橋度を呈するようになり、よって、更に追加的な架橋結合を行う必要性がなくなる。
【0071】
図3は、本発明に従って被覆されたパイプラインの横断面を示す。事前にブラストされて加熱されたパイプライン(1)上には、先ず、エポキシ樹脂(3)のプライマ層がある。この層の上には、標準的な接着剤(5)の層がある。その上がポリエチレン層(8)である。最外層として、シラン架橋層(13)が与えられる。
【0072】
本発明による処理方法について、実施例1及び比較例を用いて更に説明する。
【0073】
実施例1 ブラストされた鋼鉄製パイプライン(直径48インチ、約1.22m)を200°Cに加熱した。この鋼鉄製パイプライン上に、以下の層を、順次に付与した。
・第1層として、標準的なエポキシ樹脂を、約0.12mmの厚さで、静電パウダスプレープロセスにより付与した。
・上記の層に対して直接的に、標準的な接着剤を、約0.25mmの厚さで、ラッピング押出しプロセスにより塗布した。
・この層の上に、約3mmの厚さをもった、標準的なHDPE上層材料を押出しにより与えた。
・その後、直接的に位置される第2のノズルを用いて、本発明に従い、シラン架橋性の最終層が、事前に付与されて尚も融解した状態のPE上層材料の上に、約1mmの厚さで付与された。
【0074】
このプロセスにより、PEX層と、事前に付与された熱可塑性PE層との良好な結合が保証される。PEX層は適用時点で未だ架橋が行われていないので、ラッピング押出プロセスでの、付与された薄層との重なり領域にて良好な結合が与えられる。
【0075】
プロセスパラメータ及びこれに従って被覆されたパイプラインの特性については、表1及び表2に要約した。
【0076】
比較例
実施例1で説明した処理と同様に、パイプラインが同一のプロセスパラメータをもって、但し、PEX層なしで被覆された。PEX層を用いた実験とは対照的に、この場合に、被覆済みパイプラインは、より急速に冷却する必要があったが、これは冷却領域における熱可塑性PE層への損傷を回避するためである。
プロセスパラメータ及びこれに従って被覆されたパイプラインの特性については、表1及び表2に要約した。
【0077】
表1:プロセスパラメータ。
【表1】

【0078】
表2:コーティングの特性
コメント:別途に示されない場合、実施例1の特性はPEX層に関連する。
【表2】

【0079】
以下の節では、上記で使用した測定方法を説明する。
【0080】
1. 熱膨張量(ホットセット)
コーティングの熱膨張量(ホットセット)は、DIN VDE規格 0472 T615と同様に測定された。長方形(100×10mm)をしたサンプル体が架橋層から採取されて、200°Cでのオーブンにおいて自由に吊り下げられて懸架され、20N/cmの力がかけらけた。15分後に、サンプル体の伸びを測定する。熱膨張量は、百分率で表した、サンプル体の長さ変化である。
【0081】
2.架橋度
コーティングの架橋度は、以下のように、ISO規格10147と同様に測定された。長方形(20×5mm)のサンプル体を架橋層から採取し、その重量を1mgの精度で計量し、ワイヤメッシュの容器に入れた。サンプルを含む容器は、還流冷却器を付設した2リットルのガラス製フラスコに入れた。約500mlの技術的に純粋なキシレンをガラス製フラスコに加えて、沸騰させた。8時間の還流後に、容器をガラス製フラスコから取り出した。サンプルを慎重に容器から取り出して、150°Cで少なくとも3時間、真空乾燥オーブンで乾燥させる。室温への冷却後に、サンプルの重量を、1mgの精度で測定する。架橋度Gは、事前に調べておいた総重量に対する、サンプルの残余重量であり、百分率で示す。
【0082】
3.膨潤数
矩形サンプル(20×5mm)を架橋層から採取し、その重量を1mgの精度で計量し、試験管に入れた。試験管には、技術的に純粋なキシレンを、容量の約1/3まで満たし、コルク栓で封止する。試験管は、温度調節装置を用いて2時間に亘って140°Cの温度とする。試験管の内容物を、微細に編んだワイヤメッシュ(メッシュ密度400/cm)に注いだ後で、膨張したサンプルを慎重にワイヤメッシュから取り出し、ペトリ皿に置き、その重量を計測する。膨潤数は、膨張していないサンプルの重量に対する、膨張したサンプルの重量から算出される。
【0083】
4.ASTM D 1693による耐応力亀裂性ESCR
架橋層の耐応力亀裂性は、ASTM D 1693に従って測定された。与えられた値はF値であり、これはサンプル本体の破損が観察されなかったテスト時間を示す。
【0084】
5. 耐応力亀裂性ESCR(FNCT)
架橋層の耐応力亀裂性(FNCT)は、内部測定基準に従って測定され、数時間で与えられた。この検査方法は、M.Fleiβnerによって「journal Kunststoffe 77(1987年)」の第45頁に公表されており、以下のように、当面適用可能なISO/CD規格16770に対応する。破損までの時間短縮については、媒体としてのArkopalにつけたノッチ(1.6mm/かみそりの刃)による初期の亀裂が、80°Cの温度で4MPaの抗張力において応力亀裂を波及させることによる時間短縮によって得られる。サンプルは、架橋層から、10×10×90mmの寸法をもった3つのサンプル体を採取することで得られる。サンプル体には、特別に用意されたノッチ付け装置(上記刊行物の画像5を参照)のかみそり刃でノッチ(刻み目)がつけられる。ノッチの深さは、1.6mmである。
【0085】
6. 時間−テンション試験での伸び
時間−テンション試験における伸びは、DIN EN ISO規格899に記載された規定に従って、23°Cにて5MPaのテンション(張力)で96時間後に測定された。
【0086】
7. −100°Cでの衝撃抵抗度
衝撃抵抗度は、ISO規格180/Uに従って、−100°Cで測定された。
【0087】
8. −40°Cでのノッチ付衝撃抵抗度
ノッチ付衝撃抵抗度は、ISO規格179−1/1eA/DIN規格53453に従って−40°Cで測定された。このために、10×4×80mmの寸法をもったサンプル体がPEXb層から用意され、45°の角度をもつV字状ノッチであって、その深さが2mmで、ノッチの底面半径が0.25mmとされたノッチをつけた。
【0088】
9. 23°Cでの引裂強度
引裂強度は、ISO規格527第2部に従って、23°Cにて、厚さ1mmのサンプルタイプ1Aについて測定された。サンプルは、50mm/分の速度で引っ張られた。
【0089】
10. −45°Cでの破断伸び
破断伸びは、ISO規格527第2部に従い、−45°Cにて、厚さ1mmのサンプルタイプ1Aについて測定された。サンプルは、10mm/分の速度で引っ張られた。
【0090】
11. メルトフローレート 190°C/2.16kg
使用したポリマの、190°C/2.16kgでのメルトフローレートは、ISO規格1133に従って測定された。
【0091】
12. 引張係数
使用したポリマの引張係数は、ISO規格527第2部に従って、厚さ1mmのサンプル体1Aについて測定された。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】対象物のコーティングのための本発明による処理方法を説明する図である。
【図2】対象物のコーティングのための本発明による別の処理方法を説明する図である。
【図3】本発明に従って被覆されたパイプラインの断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプラインの外面を、水に曝された状況下にて架橋可能なポリマで被覆する処理方法であって、
a)前記パイプラインの外面を、水への暴露下で架橋可能な少なくとも1つのポリマにより被覆する工程であって、使用する架橋性ポリマが、アルコキシシラングラフトHDPEを含むものとされる工程と、
b)30%以上かつ80%以下の架橋度に達するまでの間、架橋ポリマ層の形成下にて、高温で水に曝すことにより前記架橋性ポリマの架橋結合を得る工程、を有する処理方法。
【請求項2】
架橋ポリマ層の珪素含有率を、0.10質量百分率以上であって1.00質量百分率以下とし、好ましくは0.30質量百分率以上であって0.40質量百分率以下とし、更に好ましくは0.33質量百分率以上であって0.35質量百分率以下とした、ことを特徴とする請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
ポリマ層の架橋結合のために、水と反応させる工程の時間を、長手方向に移動する前記パイプラインの1メートル当たり、0.5分以上であって5.0分以下とし、好ましくは1.0分以上であって3.0分以下とし、更に好ましくは1.9分以上であって2.1分以下とした、ことを特徴とする請求項1又2に記載の処理方法。
【請求項4】
水への暴露下で前記架橋性ポリマの架橋結合が、50°C以上であって350°C以下の温度で生じ、好ましくは150°C以上であって300°C以下の温度で生じ、更に好ましくは220°C以上であって260°C以下の温度で生じる、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の処理方法。
【請求項5】
前記パイプラインを、170°C以上であって230°C以下に加熱し、好ましくは180°C以上であって220°C以下に加熱し、更に好ましくは190°C以上であって210°C以下に加熱する工程と、
静電パウダスプレープロセスにより、0.08mm以上であって0.16mm以下の層厚、好ましくは0.10mm以上であって0.13mm以下の層厚、更に好ましくは0.125mmの層厚で、エポキシ樹脂を施す工程と、
ラッピング押出プロセスにより、0.15mm以上であって0.30mm以下の層厚、好ましくは0.22mm以上であって0.27mm以下の層厚、更に好ましくは0.25mmの層厚で、接着剤を塗布する工程と、
押出により、2.8mm以上であって3.2mm以下の層厚、好ましくは2.9mm以上であって3.1mm以下の層厚、更に好ましくは3mmの層厚で、HDPE上層を施す工程と、
押出により、0.8mm以上であって1.2mm以下の層厚、好ましくは0.9mm以上であって1.1mm以下の層厚、更に好ましくは1mmの層厚で、シラン架橋性HDPE層を施す工程と、
前記パイプラインを水で処理する工程であって、水温が、10°C以上であって40°C以下とされ、好ましくは20°C以上であって30°C以下とされ、更に好ましくは25°Cとされる工程を、更に有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の処理方法。
【請求項6】
−45°Cで測定した、コーティングの破断伸びが、135%以上であって400%以下とされ、好ましくは200%以上であって300%以下、更に好ましくは240%以上であって260%以下とされる、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の処理方法。
【請求項7】
耐環境応力亀裂性(ESCR)試験(4.0MPa、80°CでのFNCT)において、コーティングが、100時間以上であって10000時間以下の期間に亘って、好ましくは500時間以上であって2000時間以下の期間に亘って、更に好ましくは900時間以上であって1100時間以下の期間に亘って安定性を維持する、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の処理方法。
【請求項8】
前記パイプラインの外面を、2層以上の異なる層、好ましくは3層以上、更に好ましくは4層以上の異なる層で被覆する、ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の処理方法。
【請求項9】
第1の架橋性ポリマに基づく1つ以上の外面コーティングを有し、前記第1の架橋性ポリマがシラン架橋HDPEを含み、架橋ポリマの架橋度が30%以上であって80%以下とされる、パイプライン。
【請求項10】
前記パイプラインが多層の表面コーティングを有し、第1の下層がエポキシ層であり、第2の中間層が接着剤層であり、第3の上層が二峰性分子量分布を有するHDPE層であり、第4の外層がシラン架橋HDPE層である、請求項9に記載のパイプライン。
【請求項11】
前記シラン架橋HDPE層の珪素含有率が、0.10質量百分率以上であって1.00質量百分率以下とされ、好ましくは0.30質量百分率以上であって0.40質量百分率以下、更に好ましくは0.33質量百分率以上であって0.35質量百分率以下とされた、請求項9又は10に記載のパイプライン。
【請求項12】
前記架橋HDPE層の破断伸びが、−45°Cにて、135%以上であって400%以下とされ、好ましくは、200%以上であって300%以下、更に好ましくは240%以上であって260%以下とされる、請求項9から11のいずれか1項に記載のパイプライン。
【請求項13】
前記シラン架橋HDPE層が、耐環境応力亀裂性(ESCR)試験(4.0MPa、80°CでのFNCT)において、100時間以上であって10000時間以下の期間に亘って、好ましくは、500時間以上であって2000時間以下の期間に亘って、更に好ましくは900時間以上であって1100時間以下の期間に亘って安定性を維持する、請求項9から12のいずれか1項に記載のパイプライン。
【請求項14】
請求項1から9のいずれか1項に従って生産可能なコーティング。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−543540(P2008−543540A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516290(P2008−516290)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【国際出願番号】PCT/EP2006/063061
【国際公開番号】WO2006/134077
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(500289758)バーゼル・ポリオレフィン・ゲーエムベーハー (118)
【出願人】(507406792)ミュールハイム パイプコーティングス ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】