説明

吸音材

【課題】製造工程の簡素化が可能で、積層一体化にともなう熱収縮や変形、シワ等が発生しにくく、吸音性および成形性、耐久性に優れた吸音材を提供する。
【解決手段】短繊維もしくは長繊維不織布またはウレタンフォームからなる吸音層と、ホットメルトスプレー法によって直接吹き付け形成され、前記吸音層の繊維に被着された合成樹脂繊維からなる表皮層とを備えている、通気性を有する吸音材。該吸音材を成形加工した吸音材。これらの吸音材は、車両用内装材をはじめ、電化製品、スピーカー用振動板、電動機具、土木・建築用の壁材等の吸音性が求められる用途に好適に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアーコンデイショナー、電気冷蔵庫、電気器具、自動車、建築用壁材などの分野において使用され、特に、自動車、電車、航空機などの騒音源を有する車両などに用いられる吸音材に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に搭載されるエンジン及び駆動系は、駆動時に騒音を発生する。この騒音が乗員に不快感を与えることがないように、エンジンフード、ダッシュパネル、天井材、ドアトリム、キャブフロア等の壁材の壁面には、騒音対策として、吸音材が積層状に付設されることが多い。
【0003】
このため、不織布またはウレタンフォームなどの多孔質材からなる吸音層に、通気性のある不織布または樹脂膜などの表皮層を積層一体化し、積層構造体を形成させることが知られている(特許文献1〜6等)。
【0004】
特許文献1には、少なくとも一部が熱接着性の短繊維である短繊維ウエブに、布帛(不織布)を積層し、ウエブ厚さ方向から圧縮して熱処理することにより、両者を接着させ一体化する方法が開示されている。同様に、特許文献2には、フェルト、ウレタンフォーム等からなる吸音層に、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の熱可塑性合成樹脂からなる繊維性不織布または樹脂膜を熱融着することにより、積層体を形成した吸音材が開示されている。
【0005】
特許文献3には、表皮材と吸音材との間に不織布を積層し、該不織布の全部または一部を溶融させて両者を接着した遮音シートが開示され、同様に、特許文献4には、表皮材と不織布との間に、熱接着性の不織布等を介在させ、熱溶融により貼り合せた積層クッションシートが開示されている。また、特許文献5には、繊維層と熱可塑性樹脂シート層との間に、ホットメルトフィルムまたは低融点樹脂製不織布を積層し、加熱、加圧して積層一体化した自動車内装基材が開示されている。
【0006】
さらに、特許文献6には、不織布からなる吸音層と、表皮材層とを、熱可塑性樹脂パウダーを加熱溶融して接着した車輌用カーペットが開示されている。
【特許文献1】特開2003−20555号公報
【特許文献2】特開2005−263118号公報
【特許文献3】特開平10−95059号公報
【特許文献4】特開2000−248453号公報
【特許文献5】特開2005−226178号公報
【特許文献6】特開2002−219989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の方法では、吸音層と表皮とを別個に製造し、それらを熱可塑性樹脂パウダー、熱接着性の繊維、樹脂、不織布あるいはフィルム等を用いて接着するか、或いは、熱接着性の繊維を混合した吸音層を作製し、これを溶融させて表皮と接着することにより、両者を積層一体化している。従って、接着時にシワが発生したり、高温で加熱・融着した場合は繊維が収縮し、積層体が変形する等の問題点があった。また、得られた積層体を温度の高い場所に使用した場合は、接着樹脂の軟化あるいは溶融によって吸音層と表皮層とが剥離し、所望の遮音・吸音性能が発揮されなくなり、耐久性が低下するという問題点があった。また、従来の方法では特に表皮層に伸度の小さい材料を用いた場合、成形時に不織布層(吸音層)は成形型に追従して変形するが、表皮層は破れる等の問題があった。さらに、予め表皮層を準備し、これを吸音層と積層一体化する必要があるため、製造工程も複雑となり、製造コストが高くなるという問題点があった。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、製造工程の簡素化が可能で、積層一体化にともなう熱収縮や変形、シワ等が発生しにくく、吸音性および成形性、耐久性に優れた吸音材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究の結果、不織布からなる吸音層に、カーテンスプレー法を利用して合成樹脂繊維からなる不織布層を積層することにより、別個に表皮材を準備する必要がなく、表皮層の形成と積層一体化とが同時に可能になることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明は、不織布からなる吸音層と、ホットメルトスプレー法によって直接吹き付け形成され、前記吸音層の繊維に被着された合成樹脂繊維からなる表皮層とを有することを特徴とする吸音材を提供する。
【0011】
また、本発明は、ポリウレタンフォームからなる吸音層と、ホットメルトスプレー法によって直接吹き付け形成され、前記吸音層の繊維に被着された合成樹脂繊維からなる表皮層とを有することを特徴とする吸音材を提供する。
【0012】
また、本発明は、前記の吸音材を成形加工したことを特徴とする吸音材を提供する。
【0013】
また、本発明は、前記の吸音材およびそれが成形加工されてなる吸音材を用いたことを特徴とする車両用内装材を提供する。
【0014】
本発明の吸音材においては、前記不織布が、短繊維ウエブであることが好ましく、ニードルパンチ不織布または、ウエブに含まれる低融点繊維を高温風で吹き付けて、周囲の繊維と溶融接着するエァーレイド不織布であることがより好ましい。また、前記不織布が、メルトブローン不織布であることも好ましい。前記不織布を構成する繊維は、熱可塑性繊維、溶融温度もしくは熱分解温度が370℃以上の耐熱性繊維から選ばれる1種または2種以上の繊維であることが好ましい。
【0015】
また、前記合成樹脂の融点が200℃以下で、200℃時の溶融粘度が40000mPa・s以下であることが好ましく、前記合成樹脂が、着色材、難燃化剤および撥水化剤のうちの少なくとも1種を含有するものであっても良い。
【0016】
前記不織布を構成する繊維と前記表皮層を構成する繊維が、同一系統の合成繊維で構成されていると、リサイクルが容易である。
【0017】
本発明の吸音材においては、JIS L 1096に基づいて測定される通気量が0.01〜50cc/cm/secであることが好ましい。これにより、吸音性に優れた吸音材となる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したとおり、本発明によれば、製造工程が簡素化されるので、吸音性能および耐久性に優れた吸音材を低コストで提供することができ、得られた吸音材は従来の貼り合せ製品のようなシワが無く、しなやかで、成形も容易である。また、本発明によれば、合成樹脂に着色材、難燃化剤、撥水化剤等を配合しておけば、着色、難燃化あるいは撥水化された表皮層を有する吸音材を、1工程で製造することができる。また、本発明によれば、吸音性能および成形性、耐久性に優れると共に、リサイクル性に優れた吸音材を提供することができる。
【0019】
さらに、本発明の吸音材は上記の特性を有するので、特に、車両用内装材に好適に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の吸音材は、不織布からなる吸音層と、ホットメルトスプレー法によって直接吹き付け形成され、前記吸音層の熱接着性繊維に被着された合成樹脂繊維からなる表皮層とを備えている。
【0021】
不織布を構成する繊維としては、合成繊維や、レーヨン等の化学繊維や、木綿、麻、ジュート、羊毛等の天然繊維、あるいはこれらの反毛(回収再生繊維)等の1種または2種以上を使用することができる。これらのうち、耐熱性、耐摩耗性等の点から合成繊維が好ましい。かかる合成繊維としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維等の熱可塑性繊維;アラミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリベンズチアゾール繊維、ポリベンズイミダゾール(PBI)繊維、ポリイミド繊維、ポリエーテルイミド繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリエーテルケトン繊維、ポリエーテルケトンケトン繊維、ポリアミドイミド繊維、耐炎化繊維等の溶融温度または熱分解温度が370℃以上である耐熱性繊維が挙げられる。これらの合成繊維は、従来公知のものや、公知の方法またはそれに準ずる方法に従って製造したものを使用することができる。なお、耐炎化繊維は、主にアクリル繊維を空気等の活性雰囲気中で200〜500℃で焼成して製造される炭素繊維の前駆体で、例えば、旭化成社製造の商品名「ラスタン」(登録商標)、東邦テナックス社製造の商品名「パイロメックス」(登録商標)等がある。
【0022】
上記の熱可塑性繊維の中では、耐久性、耐摩耗性に優れる点から、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアミド繊維が好ましく、これらの繊維は単独で、または任意の割合で混合して使用することができる。特に、廃不織布の熱溶融により原料ポリエステルを容易にリサイクル使用することが可能で、経済性に優れ、不織布の風合いも良く、成形性に優れる点より、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、生分解性ポリエステル繊維などのポリエステル繊維が最も好ましい。
【0023】
また、同素材であっても融点の異なる繊維を適宜混合することにより、ヒートセット時の不織布形状形成性や成形加工時に形状保持性が向上するので好ましい。
【0024】
上記の耐熱性繊維の中では、低収縮性で加工性が良い点から、高温で溶融しない、アラミド繊維、ポリアリレート繊維およびポリベンズオキサゾール繊維が好ましく、アラミド繊維およびポリベンズオキサゾール繊維が最も好ましい。熱可塑性繊維に耐熱性繊維を任意の配合比で混合することにより、吸音材の耐久性、耐熱性を向上させることが可能となり、耐熱性繊維のみを使用することにより、高度の耐熱性が要求される用途に好適な吸音材を得ることができる。
【0025】
上記のアラミド繊維には、パラ系アラミド繊維とメタ系アラミド繊維とがあるが、加熱収縮が少ない点よりパラ系アラミド繊維が好ましい。パラ系アラミド繊維としては、例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(米国デュポン株式会社、東レ・デュポン株式会社製、商品名「KEVLAR」(登録商標))、コポリパラフェニレン−3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人株式会社製、商品名「テクノーラ」(登録商標))等の市販品を用いることができる。
【0026】
不織布を構成する繊維の繊維長及び繊度は、特に限定されないが、繊維長は10mm以上が好ましい。フィラメントでもステープルでもよいが、ステープルの場合は、繊維長10〜100mmが好ましく、特に20〜80mmが好ましい。繊維長10mm以上の短繊維を使用することにより、交絡させた短繊維が不織布から脱落しにくくなる。一方、繊維長が長いとカード通過性が劣る傾向にあることより、100mm以下が好ましい。繊度は0.5〜30dtex、特に1.0〜10dtexのものが好適に用いられる。短繊維は、それぞれ1種または2種以上を混合して用いることができ、同種または異種の繊維で繊度や繊維長の異なるものを混合して用いることもできる。
【0027】
吸音層を構成する不織布は、メルトブローン不織布やスパンボンド不織布等の長繊維不織布、および、高温熱風によって、ウエブ中の低融点繊維を溶融して、周囲の繊維に溶着させたエァーレイド不織布、ニードルパンチ、ウオータージェットパンチによって短繊維を交絡させた短繊維ウエブを用いることができ、雑フェルトも不織布として用いることができる。またこれらの不織布の中でも、繊維間の空隙が広く、表皮層を構成する合成樹脂繊維が吸音層に吹き付けされた際に絡み合い易いことから、短繊維ウエブが好ましい。なお、ウエブは、従来と同様のウエブ形成装置を用いて、従来のウエブ形成方法に従って作製することができる。例えば、混綿した短繊維を、カード機を用いて開繊した後に、ウエブに形成する。ニードルパンチ等を行い繊維同士を交絡させた後、従来と同様に乾燥し、必要に応じてヒートセットすることにより不織布を得ることができる。
【0028】
吸音層を構成する不織布の目付は、150〜2500g/mの範囲が好ましい。目付が小さすぎるとウエブ層の形態保持性が不良となり、目付が大きすぎると繊維の交絡に要するエネルギーが大きくなり、あるいは交絡が不十分となり不織布製造時に変形するなどの不都合が生じる。不織布の密度は、小さすぎると吸音性が低下し、大きすぎても耐摩耗性、加工性が低下するため、0.01〜0.2g/cmの範囲が好ましく、より好ましくは0.01〜0.1g/cmの範囲である。
【0029】
本発明の吸音材では、吸音層がポリウレタンフォームから構成されていても良い。ポリウレタンフォームは、軟質ポリウレタンフォーム、硬質ポリウレタンフォームのいずれであっても良く、例えば、シート状に成形したものや、成形品をシート状に裁断したもの等を用いることができる。
【0030】
不織布およびポリウレタンフォームの厚みは、厚いほど吸音性が良くなるが、経済性、扱い易さ、吸音材としてのスペース確保等の点から、好ましくは2〜100mm、より好ましくは3〜50mmである。
【0031】
一方、表皮層は、熱可塑性の合成樹脂を溶融させ、これをホットメルトスプレー法によって吸音層に直接吹き付け形成された合成樹脂繊維が、吸音層の繊維に絡まり合うように被着されることで、形成される。このホットメルトスプレー法とは、一般に接着剤用途に用いられているカーテンスプレーを使用する方法で、溶融樹脂タンクからポンプ等によって圧送された溶融樹脂を、多数の小孔が一列に並んだスプレーノズルから押し出し、小孔の列を挟むように設けたスリットから高温高速気流によって紡糸するとともに延伸し、吸音層となる不織布上に直接吹き付けて積層させ、不織布を形成する方法である。
【0032】
この場合吸音層となる不織布は予め熱ロール等で圧縮して表面を平滑にすると、スプレーノズルから押し出し、スリットから高温高速気流によって紡糸、延伸した表皮の繊維の付着ムラが少なくなり、好ましい。また、表皮の繊維を吹き付けた直後に熱ロールなどでプレスすると、表皮と不織布層との接着性がより向上するので好ましい。
【0033】
図1は、本発明の吸音材の製造方法を概略的に示す側面図である。図1において、1は樹脂塗布ライン、2は吸音層(不織布)、3は溶融樹脂、Rは溶融樹脂流、4は加圧空気、Aは加圧加熱空気流であり、塗布装置にはヒーター5が内装されている。塗布ライン1を矢印方向に移動させながら、溶融樹脂流と加熱加圧空気流を吹き付け、吸音層上に溶融樹脂繊維からなる表皮層を形成する。
【0034】
前記合成樹脂は、溶融可能な樹脂であれば特に限定はなく、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、エチレンプロピレン共重合樹脂、ポリエステル共重合樹脂等を挙げることができる。これらの合成樹脂の中でも、スプレー時の吐出性に優れる点より、好ましくは融点200℃以下、より好ましくは融点150℃以下の合成樹脂が好ましく使用される。また、溶融粘度の低い樹脂、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル共重合樹脂等が好ましく使用される。
【0035】
表皮層を構成する合成樹脂繊維の平均繊維径は、0.1〜100μmが好ましく、1〜50μmがより好ましい。表皮層の目付は、10〜200g/mの範囲が好ましい。
【0036】
本発明の吸音材は、JIS L 1096に基づいて測定される通気量が0.01〜50cc/cm/secであり、好ましくは0.05〜30cc/cm/secである。通気量が0.01cc/cm/sec未満ではエンジンガスなど気体の透過性が低く、50cc/cm/secを超えると吸音性能が低下するので好ましくない。
【0037】
表皮層を構成する合成樹脂繊維と、吸音層の不織布を構成する繊維は、同一系統の素材で構成されていると、リサイクルが容易になる。すなわち、たとえば自動車などの車両内装材として使用される吸音材などは大量に使用され、かつ、リサイクルが可能であることが要求される。したがって、異なる素材を使うと、分解作業の必要が出てきてリサイクルしにくくなる。
【0038】
本発明の吸音材はさらに成形加工することにより、さらに吸音材必要部位に密着して取り付けることができる。成形加工は従来から行われている吸音材を加熱して成形型に入れ、熱プレスしたのち冷却する圧縮成形や、加熱した後オス、またはメス型に入れ、真空装置を用いてオス、またはメス型と密着させて成形、冷却する真空成形などでよい。また、真空ポンプを運転中に真空バッグ上から熱をかけながら成形する方法でも良い。成形温度は吸音材使用素材の融点を考慮し、適宜決定される。
【0039】
また、表皮層を構成する合成樹脂には、着色材、難燃化剤および撥水化剤のうちの少なくとも1種を、従来公知の配合量で配合しても良い。前記の着色材としては顔料、染料等の公知の着色材が、難燃化剤としてはリン酸エステル系、ハロゲン系、水和金属化合物等の公知の難燃化剤が、撥水剤としてはフッ素系、シリコーン系等の公知の撥水・撥油剤が、それぞれ使用できる。
【0040】
本発明の吸音材は、その使用に際し、片面または両面に、通気性を有するフィルム、紙、織物、編物等が1層または2層以上積層されていても良い。
【0041】
本発明の吸音材は、これに車両用内装材に通常用いられる表層材等を積層することにより、自動車の天井材、フロアー材、オプションマット、リアパッケージ、ドアトリムなどの車両用内装材に好ましく適用することができる。表層材は、吸音材の撥水性や耐水性、吸音性を損なわないようにするため、表皮層側に積層されることが好ましい。表皮層に表層材を積層する場合は、表皮層に表層材を直に積層しても良く、或いは、他の層(例えば、グレイ層)を介して積層しても良い。
【0042】
表層材としては、例えば、不織布、織物、モケット、トリコット、ジャージ、絨毯、皮革、人工皮革、合成樹脂シート等が例示される。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例における各特性値の測定方法は次の通りである。
【0044】
〔通気量〕
JIS L−1096のフラジール法に基づいてスイス、TEXTEST社製FX3300を用い、不織布に表皮層を積層した状態で測定した。
【0045】
また、残響室吸音率は福井県工業試験センターの定常音圧発生器 ME−RE3300(松下インターテクノ(株))とYS7046型音響インテンシティ測定装置を用い、サンプル面積5.0mで測定した。
【0046】
〔吸音率〕
自動垂直入射吸音率測定器(株式会社ソーテック製)を用い、JIS−A−1405「管内法における建築材料の垂直入射吸音率測定方法」による各周波数における垂直入射吸音率を測定した。測定は吸音材の表皮層が音源側になるように取り付けて行った。
【0047】
(実施例1)
東レ株式会社製のポリエチレンテレフタレートステープル(1.7dtex×51mm)70%と、融点が110℃の”サフメット”30%を混綿して開繊し、カード工程の後ニードルパンチし、150℃で3分間熱処理して厚さ10mm、目付400g/mのポリエステル不織布を作製した(密度:0.04g/cm)。
【0048】
上記の不織布の上に、融点120℃の共重合ポリエステル樹脂(190℃における粘度が30000mPa・s)を、溶融樹脂温度155℃、スプレーヘッド温度160℃、熱風温度160℃、不織布とノズルの距離80mm、の条件で塗布し表皮層を形成した。表1に示す量で塗布量を変更し、そのときの吸音材の通気度と、吸音性(垂直入射)を測定した。
【0049】
(参考例)
市販のポリエステルペーパー(厚さ98μm、目付43g/m)の表面に、エチレン−酢酸ビニル共重合体の粉末(東京インキ(株)製、2030−M)を塗布(10g/m)し、この面に実施例1で作製したポリエチレンテレフタレート不織布を重ね合わせ、加熱炉にて貼り合わせて(135℃×1分)、吸音材を作製した。
【0050】
実施例および参考例で作製した吸音材の通気度を表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
実施例1で作製した塗布量30g/m、60g/mの吸音材の垂直入射吸音率を、参考例の吸音特性と合わせ、図2に示した。この結果から明らかなように、本発明の吸音材は、ポリエステルペーパーを貼り合せたものと同程度の吸音性を有していた。
【0053】
また、本発明の吸音材は、表面がしなやかであり、ポリエステルペーパーを貼り合せたときのようなシワが無かった。
【0054】
また、上記塗布量60g/m(通気量10.8cc/cm/sec)のサンプルの残響室吸音率を測定した。この参考品として、表皮に参考例のポリエステルペーパーを表皮に用いたものを測定した。結果を図3に示す。
【0055】
(実施例2)
実施例1と同繊維を用い、ニードルパンチ方式により、厚さ20mm、目付800g/mの不織布を作製し(密度0.04g/cm)、その上に実施例1と同条件で共重合ポリエステル樹脂を塗布して表皮層を形成した。このときの表皮層と不織布との積層体の通気量は9.5cc/cm/secであった。残響室吸音率測定結果を図3に示す。
【0056】
図2、図3の結果から明らかなように、本発明の吸音材は塗布量を増やすことにより、良好な吸遮音特性を示すことがわかる。
【0057】
実施例1で作成した吸音材をオス型の型枠にかぶせ、その上からシリコーンシートからなる真空用バッグで覆い、真空ポンプで空気を吸引しながら吸音材と型枠とを密着させた状態に保った状態で真空バッグの外から赤外ランプ光を照射して成形し、10分間冷却ののち真空バッグから取り出して成型品を得た。成型品は表皮部分、不織布部分ともシワ、破れがなく、形状保持性も良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の吸音材は、その目的や用途に合せて公知の方法等を適用して適宜な大きさ、形状等に加工することにより、吸音性が求められる種々の用途に用いることができ、例えば、自動車、貨車、航空機などの車両や船舶の内装材をはじめ、その他、自動車、電車、航空機などのダッシュボードにおけるインシュレータ;冷蔵庫、掃除機、エアコンなどの電化製品;スピーカー用振動板;芝刈り機、電気ドリル、電動掘削機等の電動機具、土木・建築用の壁材等の各種用途に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の吸音材の製造方法を概略的に示す側面図である。
【図2】本発明の吸音材の吸音特性を示すグラフである。
【図3】本発明の吸音材の残響室吸音率を示すグラフである。
【符号の説明】
【0060】
1 樹脂塗布ライン
2 吸音層(不織布)
3 溶融樹脂
4 加圧空気
5 ヒーター
R 溶融樹脂流
A 加圧加熱空気流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布からなる吸音層と、
ホットメルトスプレー法によって直接吹き付け形成され、前記吸音層の繊維に被着された合成樹脂繊維からなる表皮層と
を有することを特徴とする吸音材。
【請求項2】
前記不織布が、短繊維ウエブである請求項1に記載の吸音材。
【請求項3】
前記不織布が、ニードルパンチ不織布である請求項1または2に記載の吸音材。
【請求項4】
前記不織布が、エァーレイド不織布である請求項1または2に記載の吸音材。
【請求項5】
前記不織布が、メルトブローン不織布である請求項1に記載の吸音材。
【請求項6】
前記不織布を構成する繊維が、熱可塑性繊維、溶融温度もしくは熱分解温度が370℃以上の耐熱性繊維から選ばれる1種または2種以上の繊維である請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸音材。
【請求項7】
ポリウレタンフォームからなる吸音層と、
ホットメルトスプレー法によって直接吹き付け形成され、前記吸音層の繊維に被着された合成樹脂繊維からなる表皮層と
を有することを特徴とする吸音材。
【請求項8】
前記合成樹脂の融点が200℃以下で、200℃時の溶融粘度が40000mPa・s以下である請求項1〜7のいずれか1項に記載の吸音材。
【請求項9】
前記合成樹脂が、着色材、難燃化剤および撥水化剤のうちの少なくとも1種を含有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の吸音材。
【請求項10】
前記不織布を構成する繊維と前記表皮層を構成する繊維が、同一系統の合成繊維で構成されている請求項1〜9のいずれか1項に記載の吸音材。
【請求項11】
JIS L 1096に基づいて測定される通気量が0.01〜50cc/cm/secである請求項1〜10のいずれか1項に記載の吸音材。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の吸音材を、成形加工したことを特徴とする吸音材。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の吸音材を用いたことを特徴とする車両用内装材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−279649(P2007−279649A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−152194(P2006−152194)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000219266)東レ・デュポン株式会社 (288)
【Fターム(参考)】