説明

回路パターン検査装置、および回路パターンの検査方法

【課題】
半導体装置のメモリマット部の最周辺部や、繰り返し性の無い周辺回路まで高感度に欠陥判定できる検査技術を提供する。
【解決手段】
繰り返しパターンを有する複数のダイで構成された回路パターンの画像を取得する画像検出部、取得した検出画像について、繰り返しパターンの領域とそれ以外の領域とに応じて加算対象を切り替えて参照画像を合成し、検出画像と比較して欠陥を検出する欠陥判定部、検出された欠陥の画像を表示する表示装置を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置や液晶などの回路パターンを有する基板装置を光又は電子線を利用して検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶などの回路パターンの検査装置は、光又は電子線を照射して得られた画像と基準画像または隣接画像を参照画像として比較し、差がある画素を抽出して欠陥と判断し、その座標を出力する機能を有している。
【0003】
検査装置の対象とする回路パターンは、3年間に4倍の勢いで単位面積当たりのパターン密度を増やしている。これは、パターンを微細化することで実現しており、欠陥と正常部との間の差異は非常に小さいものとなってきている。そこで、欠陥の信号値と正常部の信号値の間にしきい値を設定し、欠陥を正常部から弁別することで、小さい欠陥を検出する。特に、メモリデバイスのメモリマット部は、メモリ1ビットに1個のメモリセルを割り当てる必要があるが、1個のメモリセルに欠陥があっても冗長回路技術がありデバイス全体としては正常に動作するため、微細化にさらに拍車がかかっている。一方、メモリマット部以外の周辺回路は、1か所でも不良があるとデバイスとして不良品になるため、パターン寸法はメモリマット部ほど微細化がすすんでいない。一方、パターン欠陥の発生個所の分布をみると、半導体装置1個あたりメモリマット部の欠陥発生の割合が高くなっている。特にメモリマット部の最周辺では、パターン密度が急激に変化することから、フォトリソグラフィ工程における製造が極めて難しく、欠陥の発生率が極めて高くなっている。
【0004】
メモリマット部のような周期パターン部と繰り返し性のない領域とを区別して検査する技術が知られている(特許文献1参照)。しかし両方を一度に高精度で欠陥検出可能な技術は知られていない。
【0005】
半導体装置が形成される半導体ウェーハの検査では、半導体装置、すなわちダイ同士を比較するダイ比較方式と、ひとつのダイの中のパターンの繰り返し性のあるセル領域について隣接セルの画像同士を比較するセル比較方式とがある。セル比較は、繰り返し性を利用しているために、繰り返し性の無い周辺回路や、繰り返し領域の端の部分が検査できない。
【0006】
【特許文献1】特開平3−232250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、半導体装置のメモリマット部の最周辺部や、繰り返し性の無い周辺回路まで高感度に欠陥判定できる検査技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の実施態様は、繰り返しパターンを有する複数のダイで構成された回路パターンの画像を取得する画像検出部、取得した検出画像について、繰り返しパターンの領域とそれ以外の領域とに応じて加算対象を切り替えて参照画像を合成し、検出画像と比較して欠陥を検出する欠陥判定部を備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、半導体装置のメモリマット部の最周辺部や、繰り返し性の無い周辺回路まで高感度に欠陥判定できる検査技術を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施例を、図面を参照しながら説明する。図1は、回路パターン検査装置の全体構成図であり、主要部は縦断面図として記載している。本実施例では、試料に電子線を照射して画像を得る走査型電子顕微鏡を応用した検査装置を説明する。本発明の主要部は、電子線のかわりに光を用いても同様であるので、ここでは光学式検査装置の実施例の説明は省略する。
【0011】
図1において、電子源1から発生した電子2は、試料である半導体ウェーハ6に照射される。電子2は、対物レンズ4などで細く絞られているため、偏向器3で偏向されて、半導体ウェーハ6の表面を走査する。半導体ウェーハ6は、電子2に照射されると、材料特性や構造の違いで電子が帯電する現象のため、得られる画像が白くなったり、逆に黒くなったりする場合があり、この帯電を制御するための帯電制御電極5が設けられている。
【0012】
半導体ウェーハ6は、試料台9を介してXYステージ7に置かれ、X方向およびY方向へ移動される。XYステージ7の位置が測定され、全体制御部18へ送られ、半導体ウェーハ6の所望の位置に電子2が照射されるように、偏向器3,対物レンズ4,XYステージ7が制御される。半導体ウェーハ6の表面の高さは、Zセンサ8で計測され、全体制御部18へ高さデータが送られ、電子2の焦点が半導体ウェーハ6に結ぶように制御される。
【0013】
電子2の照射により発生した二次電子や反射電子の二次信号10は、様々なエネルギーと方向を持っているので、検出器13で検出できるように収束させなければならない。本実施例では、反射板11と収束光学系12で、できるだけ多くの二次信号が検出できるようにしている。
【0014】
検出器13で検出されたアナログ信号は、AD変換器15でディジタル信号14に変換され、欠陥判定部17で画像処理され、欠陥情報16が抽出され、全体制御部18へ送られて、コンソール19のディスプレイに画像が表示される。コンソール19は、欠陥の画像や座標等の付帯情報を表示するとともに、ユーザの指示を全体制御部18に伝える機能を有する。
【0015】
試料台9の上方には光学顕微鏡20が設けられ、半導体ウェーハ6の光学像を撮像し、検査前の位置合せが行われる。XYステージ7には、電子光学条件の詳細調整をするための標準試料片21が設けられ、その高さは半導体ウェーハ6と同じ高さになるように設定されている。
【0016】
図2は、欠陥判定部17の構成図である。欠陥判定部17は、ディジタル信号14を二次元のディジタル画像と考えて画像処理するユニットであり、ディジタル信号14を記憶する画像メモリ30、画像メモリ30に記憶されたディジタル画像を、画像に関する領域の情報に従って分配する画像分配部31、分配された部分領域の画像について、部分領域に存在する欠陥を抽出する複数のPE32、複数のPE32で処理された部分欠陥情報33を統合して欠陥情報16とする情報統合部34で構成される。ここで、PEとは、Processor Elementの略である。情報統合部34は、全部のPE32からの部分欠陥情報33を集計し、FR−RIA(Full region reference image averaging)法、又はダイ比較のいずれかで欠陥と判定された欠陥の情報を欠陥情報16として出力する。
【0017】
図3は、半導体ウェーハの平面図であり、(a)は全体図、(b)はダイの拡大図、(c)はダイの中のセルの配置を示す図、(d)はセルの拡大図である。半導体ウェーハ6は、図3(a)に示すように、直径200mmから300mm、厚さ1mm程度の円盤形状であり、その表面に数百〜数千個の回路パターンが形成される。半導体装置はダイとよばれ、回路パターンが形成された後に切断され、1個ずつパッケージングされる。一般的なメモリデバイスの場合、ダイ40は、図3(b)に示すように、メモリマット群41が4個で構成されている。1個のメモリマット群41は、図3(c)に示すように、縦100個,横100個程度の数のメモリマット42で構成されている。メモリマット42は、図3(d)に示すように、二次元方向に繰り返し性を持った数100万個のメモリセル43で構成されている。
【0018】
図4は、レシピ作成手順および検査手順を示すフローチャートである。検査に先立って、検査条件を決め、装置へ登録する必要があるため、検査のレシピ作成が行われ、作成されたレシピに従って検査が行われる。
【0019】
図1に示したコンソール19を用いて、ユーザはレシピを作成する。標準的な条件の標準レシピが予め記憶されているので、ユーザは標準レシピを全体制御部18へ読込ませ、次に実際に半導体ウェーハに電子を照射してレシピの内容を補正するために、半導体ウェーハを装置へロードする(ステップ401)。
【0020】
次に光学系条件を設定するが、標準レシピの設定値を確認するだけでもよい(ステップ402)。光学条件は、電子源1から電子2を引き出すためのパラメータ、対物レンズ4の強度を設定するパラメータ、偏向器3の制御パラメータ、帯電制御電極5へ印加される電圧などである。標準試料片21に電子2を照射して、その画像を生成し、ユーザは画像を見ながら光学条件の設定値に補正を加えて適正値に書き換え、新たなレシピを全体制御部18へ読込ませる。
【0021】
次に、ロードした半導体ウェーハ6のアライメント用のパターンとその座標を登録して、アライメント条件を設定する(ステップ403)。アライメント用のパターンは、ダイの4つの角などに予め形成されている。
【0022】
次に、検査対象とする検査領域情報を設定する(ステップ404)。予め読込まれた半導体ウェーハ6のパターンレイアウトをコンソール19のディスプレイへ表示させる。
【0023】
セル比較検査の場合は、メモリマット42を比較単位である繰り返し領域として指定する。ディスプレイで、例えば、メモリマット42を長方形で囲み、繰り返し領域であることを指定するボタンを押す等で、指定できるようにしておく。また、メモリマット42の比較検査をどこからどこまで行うかの領域指定も必要であり、例えば、図3(b)に示すような図で、メモリマット群41のひとつを指定する。
【0024】
ダイ比較の場合は、図3(a)に示すウェーハ全体の図で、任意のひとつのダイ40を比較単位である繰り返し領域として指定する。全てのダイを比較検査対象にする場合は、全ダイ比較検査というボタンを準備しておくと簡便である。特定の位置のダイのみを定点観察する場合には、その検査対象のダイを選択できるようにしておく。例えば、画面上でダイを直接クリックしたり、長方形で囲んで領域を指定したりするように、画面レイアウトを準備しておくとよい。
【0025】
次に、キャリブレーション条件を設定する(ステップ405)。半導体ウェーハ6ごとの検出光量のばらつきを防止するため、一定の条件で検査するように光量のキャリブレーションを行う。半導体ウェーハ6の任意の座標点を指定し、検出器13の初期ゲインを設定する。次に、画像処理の条件、例えば、画素寸法,フレーム加算回数を選択あるいは指定する。これらの設定された検査条件は、全体制御部18に設定される(ステップ406)。
【0026】
次に、設定された検査条件が適性かどうかを確認するために、実際に電子を照射して画像を取得する試し検査を行う(ステップ407)。試し検査の詳細は、図5で説明する。試し検査の結果に基づき、ユーザは検査条件が適性かどうかを判断する(ステップ409)。適正でなければステップ406へ戻り、適正であれば検査条件を新しいレシピとして、全体制御部18へ格納し、半導体ウェーハ6を装置からアンロードする(ステップ410)。
【0027】
図5は、試し検査における画像処理の内容を示す模式図である。図5(a)において、ダイの画像50A,50B,50Cのうち、ひとつのダイの画像50Bに、試し検査を行う試し検査座標54を指定する。そうして試し検査を実行すると、指定されたダイの画像50Bの前後1個のダイずつ、合計3個のダイ分の移動長さと電子の走査幅とを有する細長い長方形のストライプ領域51に電子が照射され、発生する二次信号10を検出器13で検出する。この時、Zセンサ8で検出した半導体ウェーハ6の高さに基づいて、対物レンズ4の励磁電流値が制御されて、電子の焦点位置が補正される。検出器13で検出されたアナログ信号は、AD変換器15でディジタル信号14に変換され、画像化される。
【0028】
図5(b)は、欠陥判定部17の図示しないメモリ領域55A,55B,55Cにストライプ領域51の各ダイの端から距離X0のところのチャンネル2に、領域52A,52B,52Cの画像データ53A,53B,53Cが格納された状態を示している。欠陥判定部17は、画像データ53Aと画像データの53B比較、画像データ53Bと画像データ53Cの比較を行い、どの画像データに欠陥が存在しているかを判定し、欠陥を含む画像データを全体制御部18へ送る。次に、領域52A,52B,52Cの隣りの領域について、同様に比較検査が行われる。このようにして、3個のダイのひとつのストライプ領域について比較検査が実行され、検査条件が適切かどうかが判断される。
【0029】
図2を用いて、画像データの処理を説明する。欠陥判定部17は、以下の手順で動作する。即ち、電子が照射されたストライプ領域51のディジタル信号14を画像メモリ30に格納する。格納されたディジタル信号14のデータは、幅が128画素の複数のチャンネルに分割されている。画像分配部31はチャンネル内のダイ内の座標が一定値(X0)から128ライン分の各画像データを同一のPE32に分配し、メモリマット42内のメモリセル43の繰り返し性を利用したセル比較処理と、ダイ比較処理とを行って欠陥判定し、何れかで欠陥と判定された座標点を欠陥と判断するものである。
【0030】
図4(a)に示した試し検査により、レシピが作成されたら、次に、図4(b)に示すように、実際の検査を実行させる。ユーザは、検査対象の半導体ウェーハ6に適切なレシピを、コンソール19で選択する。全体制御部18は、選択されたレシピを読み込み(ステップ411)、半導体ウェーハ6をロードし(ステップ412)、試料台9に搭載する。光学系条件を設定し(ステップ413)、半導体ウェーハ6のアライメントを行う(ステップ414)。主な光学系条件は、電子源1の引き出し電圧、偏向器3の偏向電流、対物レンズ4の励磁電圧、帯電制御電極5へ印加する電圧、反射板11へ印加する電圧などである。次に、標準試料片21の画像を取得し、適正な画像になるように条件を補正する。アライメントの後で、キャリブレーション用の画像を取得し、光量不足や光量過多などの発生しない適切な光量になるように、検出器13のゲインなどの画像取得条件を設定する(ステップ415)。次に、予め設定された検査領域について画像を検出し、欠陥を判定する(ステップ416)。焦点補正は、Zセンサ8で検出した半導体ウェーハ6の高さに基づいて、対物レンズ4の励磁電流値を制御する。検出器13で検出された二次信号であるアナログ信号は、AD変換器15でディジタル信号14に変換される。取得した画像に基づいて、レシピ作成時と同様な手順で欠陥判定する。欠陥判定結果の欠陥情報16と検査条件などを含む結果を格納し(ステップ417)、半導体ウェーハ6をアンロードして(ステップ418)、検査が終了する。
【0031】
図6は、セル比較検査の内容を示すメモリマット部の平面図である。セル比較検査では、FR−RIA法で欠陥判定している。図6(a)において、メモリマット42を定義する長方形領域に対してL寸法61だけ拡張した領域62、領域62からM寸法63だけ縮小した領域を考える。L寸法61は設定した領域がずれる可能性のある上限をしめし、M寸法63はL寸法61の2倍とする。62の領域は3つの領域に分割できる。即ち、領域62の角からM寸法63内にある角領域64a,64b,64c,64d、上下の辺からM寸法内にある上下端領域65a,65b,65c,65b、それ以外の領域66である。角領域64は領域のずれを考慮するとメモリマット内の角が領域内の任意の場所に移動する可能性があり、繰り返し性が期待できない領域であり、上下端領域65は少なくともX方向には繰り返し性が期待できる領域、その他の領域66はY方向には繰り返し性が期待できる領域である。
【0032】
PE32に分配された128画素×128ラインの検出画像68が、領域A67の場合には、分配された画像の全ての画素はY方向に繰り返し性を持っている。そこで、Y方向に繰り返しピッチ分の画像を加算平均した画像を一旦作成し、加算平均した画像を再配置することで、加算平均画像69を生成するY−RIA70を行う。同様に、PEに分配された128画素×128ラインの検出画像68が、領域B72の場合には、分配された画像の全ての画素はX方向に繰り返し性を持っている。そこで、X方向に繰り返しピッチ分の画像を加算平均した画像を一旦作成し、加算平均した画像を再配置することで加算平均画像69を生成するX−RIA72を行う。検出画像68と加算平均画像69の差分として差画像73を演算する。差画像73の差分値が設定された欠陥判定しきい値より大きい領域を欠陥74として判定する。
【0033】
ここで、差分の演算を、図7を用いて捕捉説明する。図7は、画像の一例を示す画面図で、図7(a)は画像、図7(b)は図7(a)のX1からX2の間の線分で示された個所の画素毎の階調値の、基準画像と比較したときの差分を示すグラフである。図7(a)に示すように、一般的に、差画像73には欠陥74aと、欠陥ではないが画素の階調値の差の大きい領域74bとが含まれている。領域74bの原因としては、画像のノイズ成分による階調値のばらつきや、半導体ウェーハが帯電した場合の階調値の増加などがある。欠陥とそれ以外とを区別するために、図7(b)に示すように、差分にはしきい値75が設けられ、これより差分が大きい領域が欠陥と判定される。この差分値76と、対応する欠陥74aの座標とが、図2に示した部分欠陥情報33である。このようにして、図6(a)に示した角領域64以外の領域は、欠陥判定可能である。
【0034】
次に、ダイ比較検査を、図8を用いて説明する。図8は、画像処理の内容を示す模式図である。画像データ53A,53B,53Cが、図2に示した同一のPE32に分配されている。画像データ53A,53B,53Cは、それぞれがひとつの隣接しているダイであるとする。画像データ53A,53B,53Cは、128画素×128ラインである。ダイ比較では、中央のダイの画像データ53Bに欠陥があるかどうかを判定することが目的であるので、混乱を避けるために画像名称を再度定義する。画像データ53Bを検出画像80Aとし、画像データ53Aを参照画像F80Cとし、画像データ53Cを参照画像R80Bと呼ぶ。
【0035】
画像の撮像範囲、あるいは切り出しのときに、画像データ同士の座標は、機械的誤差などでずれることが多い。したがって、検出画像80Aに対して、参照画像F80C、参照画像R80Bのパターンは、位置がずれている可能性があり、そのまま比較することはできない。そこで、ずれ量演算部81B,81Cで相互相関又は差の絶対値等のずれ量を演算する手法を用いてずれ量を演算し、演算したずれ量に応じて画像ずらし部82B,82Cで参照画像R80B、参照画像F80Cをずらして、位置合せ参照画像83B,83Cを作成する。位置合せ参照画像83B,83Cは、検出画像80Aに対して同一の位置にパターンがあるようにしたので、画像合成部84でこれら画像を加算平均することで、ノイズの少ない合成参照画像85を得ることができる。次に、差画像演算部86で検出画像80Aと合成参照画像85の差分を演算して差画像87を得る。
【0036】
図9は、コンソール19のディスプレイに表示される画面図であり、欠陥情報の表示の一例を示す。検査装置は、前述のように、画素の階調値の差分値がしきい値を超えた画素の領域を欠陥と判定しているので、差分値が大きくても真の欠陥であるとは限らない。そこで、欠陥の画像を画像表示領域91に表示させて、ユーザが欠陥であるかどうかを判断できるような機能を検査装置に持たせている。また、図7(b)に示したしきい値75を固定値でなく可変値とした表示しきい値で、欠陥の検出の様子を画像で確認することができる。
【0037】
画面の左側には、ストライプ領域上の欠陥74を模式的に記号等で表示するストライプマップ90が配置され、右側には、欠陥の実際の画像を表示する画像表示領域91が配置されている。ストライプマップ90と画像表示領域91は、ひとつの画面上に並べて表示されているが、別々のディスプレイに表示されるようにしてもよい。さらに、画面には、欠陥情報表示領域92と表示しきい値調整ツールバー93が表示されている。欠陥情報表示領域92は、欠陥情報中の欠陥座標,投影長,差分値,濃淡差,背景光量等の情報、ユーザが入力する分類コード等を表示する。表示しきい値調整ツールバー93は、表示しきい値を調整するために使用される。
【0038】
ユーザは、ストライプマップ90上に表示された欠陥74を、マウスポインタなどの入力手段で指定することで、その欠陥74の画像情報を画像表示領域91に、座標情報などを欠陥情報表示領域92に表示することができる。欠陥74のより高精細な画像を再取得したり、画像メモリ30に格納されている画像データを、画像表示領域91に表示させることができるように、画面に指示ボタンを追加してもよい。
【0039】
欠陥情報表示領域92の分類コードとは、欠陥の画像をユーザが見て、欠陥の種類分けを行うために設けられたものである。分類には、異物,スクラッチ,配線パターンの断線やショート等があり、ユーザは分類情報を分類ボックスに記入する。ストライプマップ90上に表示された欠陥74を、分類ごとに色分け表示させることが可能である。分類を変更するとストライプマップ90上の欠陥74の表示形態が変化する。
【0040】
前述の表示しきい値が高いほど、ストライプマップ90上に表示される欠陥74の数が減り、欠陥の分類分け等の解析が容易になるが、真の欠陥であるにもかかわらず欠陥と判定されないものが増える可能性がある。一方、表示しきい値が低いほど、欠陥74の数は増え、見落としが少なくなるが、真の欠陥でないものが増える可能性がある。ストライプマップ90上には、表示しきい値以上の差分値を持った欠陥のみが表示されるので、表示しきい値を表示しきい調整値ツールバー93で変更することで、欠陥の画像と見比べながら、適切な表示しきい値を設定することができる。
【0041】
欠陥情報表示領域92には、図9(b)に示すメモリ繰り返し領域画像合成条件設定ダイアログ94や、図9(c)に示す全領域画像合成条件設定ダイアログ95を表示させることもでき、これらのダイアログで画像合成条件を設定することができる。
【0042】
これらの作業により検査条件を確認し、満足できるものであれば確認作業を終了し、満足できない場合には検査条件を再度設定して試し検査を行う。満足した場合にはレシピを保存し、半導体ウェーハをアンロードする。
【0043】
図10は、画像処理の内容を示す模式図である。図8に示した画像データ中の欠陥の抽出では、検査対象のダイの他に、その前後のダイを参照画像として3個の画像データを使用する。本実施例は、5個の画像データを使用する例である。画像データが多いほど、画像中のノイズを低減することができる。
【0044】
図10(a)に示す検出ダイの画像101Aの前後の画像101Bから画像101Eまでの4個のダイ分の画像データを用いて、参照画像を演算し、差画像101Sを演算する。検出ダイの画像101Aについての処理が完了したら、検出ダイの画像102Aの前後の画像102Bから画像102Eまでの4個のダイ分の画像データを用いて、参照画像を演算し、差画像102Sを演算する。これが検出ダイの画像について、順繰りに実施される。
【0045】
図10(b)は、各画像がどのように使用されるかを示しており、記号Rはずれ補正後の画像、記号Aは合成された参照画像、記号Sは検出ダイの画像と参照画像とを比較演算された差画像を示す。はじめに、画像101Bから画像101Eまでの4個の画像について、互いのずれ補正を行う。次にこの4個の画像を加算平均して合成参照画像を生成し、検出ダイの画像101Aと比較して、差画像101Sを得る。検出画像102Aについても、同様の方法で実行し、差画像102Sを得る。
【0046】
図11は、図10と同じく画像処理の内容を示す模式図である。図10の例では、検出ダイの画像101Aを使用しないで合成参照画像を生成し、生成した合成参照画像と検出ダイの画像101Aとを比較し、1個の差画像101Sを得ており、検出ダイの画像101Aに隣接する次の検出ダイの画像102Aに関する差画像102Sを生成するために、画像101Cを画像102Bとして、画像101Aを画像102Cとして、画像101Eを画像102Dとして再度使用して、差画像102Sを1個生成する。したがって、1個の検出ダイの画像につき1回の演算により1個の差画像が生成される。これに対して、本実施例は、複数個の画像につき1回の演算により複数個の差画像が生成でき、演算の時間が短縮できる大きな効果を得ることができる。
【0047】
図11(a)に示すように、例えば7個のダイ全ての画像111Aから111Gについて比較を行い、差画像を生成する例を考える。図11(b)に示すように、画像111Aに対してずれ補正を行って、記号Rの画像を生成し、加算平均して記号Aの合成参照画像を得る。次に記号Aの合成画像と画像111Aから画像111Gまでの7個の画像との差をそれぞれ演算し、7個の記号Sの差画像を得る。
【0048】
図12は、図10と同じく、画像処理の内容を示す模式図である。図12(a)に示すように、7個の画像121Aから画像121Gについて、図12(b)に示すように、画像121Aに対するずれ量補正を行う。次に、図11のように、7個分の画像を単純に加算平均するのではなく、加算前の画像をまとめたシーケンス画像Is122を作成し、画像121Aから121Gとシーケンス画像Is122を比較することで、差分を演算するものである。単なる平均画像ではないので、平均値の代わりにメディアン、はずれ値を除去した平均、最大最小の平均等を用いることもできる。更に、平均値と分散を演算し、分散の3倍以上大きい差分をもつものを欠陥と判定する等の演算が可能である。また、画像シーケンスで求めると説明したが、合成参照画像に加えてこれらの値を演算するように構成することもできる。本変形によれば、高機能な演算により高感度な欠陥判定が可能である特徴がある。
【0049】
図13は、図10と同じく、画像処理の内容を示す模式図である。半導体ウェーハの中心部と端部では、画像データの階調値が異なる場合がある。例えば図13(a)に示す7個のダイの左端の画像121Aを含むダイが、半導体ウェーハの中心部を含み、右端の画像121Gを含むダイが、半導体ウェーハの端部を含むように画像を取得し、画像121A,121B,121C,121D,121E,121F,121Gについて比較検査を行う。ダイの絶縁膜の領域は、半導体ウェーハの中央部と端部とで厚さが異なるため、各画像の階調値分布は一様ではない。例えば、画像121Dの画像の階調値のヒストグラムは、図13(b)に示すヒストグラム131Dに、画像121Gの画像の階調値のヒストグラムは、図13(c)に示すヒストグラム131Gになる。
【0050】
階調値が異なる場合には、平均値をとっても画像同士の差が大きく、欠陥検出ができない。この対策として、入力に対してバンドパスフィルタをかけて所望の周波数成分だけにし、階調値変化の影響を除外するようにする。または、20画素角程度の平均階調値を一致させる補正処理を行う。または、図13(d)に示すように、半導体ウェーハの端部の画像121Gのヒストグラムが、他と異なる場合には、画像121Gを除外し、残りの画像で内挿補間又は外挿補間により、検出画像の階調値を推定する。
【0051】
以上により、FR−RIA法によれば、メモリマット部の欠陥を高感度に検出でき、メモリマット内,メモリマット最周辺部,周辺回路を含むダイ全面を高感度に欠陥判定できる回路パターン検査装置、および回路パターン検査方法を提供することができる。なお、上記実施例では、試料に電子線を照射して画像を生成する回路パターンの検査装置を用いて説明したが、試料に光を照射して画像を生成する回路パターンの検査装置でも、実施例に記載した発明を実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】回路パターン検査装置の全体構成図。
【図2】欠陥判定部の構成図。
【図3】半導体ウェーハの平面図。
【図4】レシピ作成手順および検査手順を示すフローチャート。
【図5】試し検査における画像処理の内容を示す模式図。
【図6】セル比較検査の内容を示すメモリマット部の平面図。
【図7】画像の一例を示す画面図。
【図8】画像処理の内容を示す模式図。
【図9】コンソールのディスプレイに表示される画面図。
【図10】画像処理の内容を示す模式図。
【図11】画像処理の内容を示す模式図。
【図12】画像処理の内容を示す模式図。
【図13】画像処理の内容を示す模式図。
【符号の説明】
【0053】
1 電子源
2 電子
3 偏向器
4 対物レンズ
5 帯電制御電極
6 半導体ウェーハ
7 XYステージ
8 Zセンサ
9 試料台
10 二次信号
11 反射板
12 収束光学系
13 検出器
14 ディジタル信号
15 AD変換器
16 欠陥情報
17 欠陥判定部
18 全体制御部
19 コンソール
20 光学顕微鏡
21 標準試料片
30 画像メモリ
31 画像分配部
32 PE
33 部分欠陥情報
34 情報統合部
40 ダイ
41 メモリマット群
42 メモリマット
43 メモリセル
51 ストライプ領域
54 試し検査座標
55 メモリ領域
90 ストライプマップ
91 画像表示領域
92 欠陥情報表示領域
93 表示しきい値調整ツールバー
94 繰り返しパターン合成条件設定ダイアログ
95 全領域画像合成条件設定ダイアログ
101,102 画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰り返しパターンを有する複数のダイで構成された回路パターンの画像を取得する画像検出部、該取得した検出画像について、前記繰り返しパターンの領域とそれ以外の領域とに応じて加算対象を切り替えて参照画像を合成し、検出画像と比較して欠陥を検出する欠陥判定部を備えたことを特徴とする回路パターン検査装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記検出された欠陥の画像を表示する表示装置を備えたことを特徴とする回路パターン検査装置。
【請求項3】
請求項1の記載において、前記加算対象は前記検出画像を含まない複数のダイの画像であることを特徴とする回路パターン検査装置。
【請求項4】
請求項1の記載において、前記加算対象は前記検出画像を含む複数のダイの全部又は一部の画像であることを特徴とする回路パターン検査装置。
【請求項5】
請求項1の記載において、前記合成された参照画像は、複数の前記検出画像の加算,平均,メディアン、又は、はずれ値を除外した平均値、最大と最小の平均値などの任意の統計量演算手法で生成されることを特徴とする回路パターン検査装置。
【請求項6】
請求項1の記載において、前記合成された参照画像は、前記検出画像との位置関係に着目し、合成対象である前記複数ダイの画像の内挿、又は外挿法により生成されることを特徴とする回路パターン検査装置。
【請求項7】
請求項1の記載において、前記合成された参照画像は、前記複数のダイの画像を位置合せした画像を対象とすることを特徴とする回路パターン検査装置。
【請求項8】
繰り返しパターンを有する複数のダイで構成された回路パターンの画像を取得し、該取得した検出画像について、前記繰り返しパターンの領域とそれ以外の領域とに応じて加算対象を切り替えて参照画像を合成し、検出画像と比較して欠陥を検出することを特徴とする回路パターン検査方法。
【請求項9】
請求項8の記載において、前記加算対象は前記検出画像を含まない複数のダイの画像であることを特徴とする回路パターン検査方法。
【請求項10】
請求項8の記載において、前記加算対象は検出画像を含む1回のステージ走査により得られた複数のダイの全部、又は、一部の画像であることを特徴とする回路パターン検査方法。
【請求項11】
請求項8の記載において、前記加算対象は繰り返しパターン、又は複数のダイのパターンを含むことを特徴とする回路パターン検査方法。
【請求項12】
請求項8の記載において、前記合成された参照画像は、複数の前記検査画像の加算,平均,メディアン、又ははずれ値を除外した平均値、最大と最小の平均値などの任意の統計量演算手法で生成されることを特徴とする回路パターン検査方法。
【請求項13】
請求項8の記載において、前記合成された参照画像は、前記検出画像との位置関係に着目し、合成対象の複数ダイの画像の内挿、又は外挿法により合成画像を生成することを特徴とする回路パターン検査方法。
【請求項14】
請求項8の記載において、前記合成された参照画像は、前記複数のダイの画像を位置合せした画像を対象とすることを特徴とする回路パターン検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−32403(P2010−32403A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−195606(P2008−195606)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】