説明

回路接続材料、接続構造体及びその製造方法

【課題】
低温短時間硬化が可能で、かつ保存安定性に優れる回路接続用材料を提供すること。
【解決手段】
第一の基板の主面上に第一の回路電極が形成された第一の回路部材と、第二の基板の主面上に第二の回路電極が形成された第二の回路部材とを、前記第一の回路電極及び前記第二の回路電極を対向配置させた状態で接続するための回路接続材料であって、遊離ラジカルを発生する硬化剤と、ラジカル重合成物質と、2級チオール基を有する化合物とを含有し、2級チオール基を有する化合物の分子量が400以上2000未満である、回路接続材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対向する回路電極間に介在し、相対向する回路電極を加圧して加圧方向の電極間を電気的に接続する回路接続材料、並びに該回路接続材料を用いた接続構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
前記半導体素子や液晶表示素子用の回路接続材料としては、高接着性でかつ高信頼性を示すエポキシ樹脂を用いた熱硬化性樹脂が知られている(例えば、特許文献1参照)。樹脂の構成成分としては、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂と反応性を有するフェノール樹脂等の硬化剤、エポキシ樹脂と硬化剤の反応を促進する潜在性硬化剤が一般に用いられている。潜在性硬化剤は硬化温度及び硬化速度を決定する重要な因子となっており、室温での貯蔵安定性と加熱時の硬化速度の観点から種々の化合物が用いられている。
【0003】
また、近時、アクリレート誘導体やメタアクリレート誘導体(以下、「(メタ)アクリレート誘導体」と総称する。)とラジカル重合開始剤である過酸化物とを併用した、ラジカル硬化型接着剤が注目されている。ラジカル硬化は、反応活性種であるラジカルが反応性に富むため、短時間硬化が可能である(例えば、特許文献2、3参照)。
【0004】
そのため、現在では生産時間短縮に有利な短時間硬化型接着剤が普及しつつある。ラジカル硬化型接着剤の反応性を更に向上させる目的で、連鎖移動剤の適用が検討されている(例えば、特許文献4)。連鎖移動剤を使用することにより、速硬化の効果が得られ、低温短時間接続や、金属などの無機質への密着力向上が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−113480号公報
【特許文献2】特開2002−203427号公報
【特許文献3】国際公開WO98/044067号公報
【特許文献4】特開2003−221557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した連鎖移動剤の適用の利点、すなわち速硬化、低温短時間接続、金属などの無機質への密着力の向上などの効果を有効に得ることができる回路接続材料、並びに該回路接続材料を用いた接続構造体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、連鎖移動剤として、2級のチオール基を有する化合物を用いることにより、接着力向上の効果が得られ、かつ保存安定性を維持できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち本発明は、第一の基板の主面上に第一の回路電極が形成された第一の回路部材と、第二の基板の主面上に第二の回路電極が形成された第二の回路部材とを、第一の回路電極及び第二の回路電極を対向配置させた状態で接続するための回路接続材料であって、遊離ラジカルを発生する硬化剤と、ラジカル重合成物質と、2級チオール基を有する化合物とを含有する回路接続材料を提供する。
【0009】
本発明の回路接続材料において、2級チオール基を有する化合物の分子量は400以上であることが好ましい。
【0010】
また、本発明は、第一の基板の主面上に第一の回路電極が形成された第一の回路部材と、第二の基板の主面上に第二の回路電極が形成され、第二の回路電極と第一の回路電極とが対向するように配置された第二の回路部材と、第一の回路部材と第二の回路部材との間に設けられ、第一の回路部材と第二の回路部材とを電気的に接続する接着層と、を備え、該接着層が、第一の回路部材と第二の回路部材との間に上記本発明の回路接続材料を介在させ、その状態で加圧することにより形成されたものである接続構造体を提供する。
【0011】
また、本発明は、第一の基板の主面上に第一の回路電極が形成された第一の回路部材と、第二の基板の主面上に第二の回路電極が形成された第二の回路部材とを、第一の回路電極と第二の回路電極が相対向するように配置し、第一の回路部材と第二の回路部材との間に上記本発明の回路接続材料を介在させ、その状態で加圧することにより第一の回路電極と第二の回路電極とを電気的に接続する工程を備える接続構造体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低温短時間硬化が可能で、かつ保存安定性に優れる回路接続用材料、並びに該回路接続材料を用いた接続構造体及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】接続構造体の一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0015】
本発明の回路接続材料は、第一の基板の主面上に第一の回路電極が形成された第一の回路部材と、第二の基板の主面上に第二の回路電極が形成された第二の回路部材とを、第一の回路電極及び第二の回路電極を対向配置させた状態で接続するための回路接続材料であって、遊離ラジカルを発生する硬化剤と、ラジカル重合成物質と、2級チオール基を有する化合物とを含有する。
【0016】
本発明に用いる遊離ラジカルを発生する硬化剤としては、過酸化化合物、アゾ系化合物などの加熱により分解して遊離ラジカルを発生するものが好適であり、目的とする接続温度、接続時間等により適宜選定される。配合量は0.05〜10重量%程度であり0.1〜5重量%がより好ましい。具体的には、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシジカーボネート類、パーオキシエステル類、パーオキシケタール類、ジアルキルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類などから選定することができる。
【0017】
ジアシルパーオキサイド類としては、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシニックパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシトルエン、ベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。
【0018】
パーオキシジカーボネート類としては、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシメトキシパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシルパーオキシ)ジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネート等が挙げられる。
【0019】
パーオキシエステル類としては、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシノエデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2ーエチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート等が挙げられる。
【0020】
パーオキシケタール類としては、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1、1−(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)デカン等が挙げられる。
【0021】
ジアルキルパーオキサイド類としては、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド等が挙げられる。
【0022】
ハイドロパーオキサイド類としては、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0023】
これらの遊離ラジカル発生剤は単独又は混合して使用することができ、分解促進剤、抑制剤等を混合して用いてもよい。また、これらの硬化剤をポリウレタン系、ポリエステル系の高分子物質等で被覆してマイクロカプセル化したものは、保存性が延長されるために好ましい。
【0024】
本発明で用いるラジカル重合性物質としては、モノマー、オリゴマーいずれの状態で用いることが可能であり、モノマーとオリゴマーを併用することも可能である。ラジカル重合性物質の具体例としては、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、トリス(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。これらは単独又は併用して用いることができる。また、必要に応じて、ハイドロキノン、メチルエーテルハイドロキノン類などの重合禁止剤を適宜用いてもよい。また、ジシクロペンテニル基及び/又はトリシクロデカニル基及び/又はトリアジン環を有する場合は、耐熱性が向上するので好ましい。
【0025】
上記ラジカル重合性物質中に、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンオキサイド、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイソシアネート樹脂、フェノキシ樹脂などのポリマーを含有させると、取扱い性もよく硬化時の応力緩和に優れるため好ましく、ポリマーが水酸基等の官能基を有する場合接着性が向上するためより好ましい。各ポリマーをラジカル重合性の官能基で変性したものがより好ましい。これらポリマーの重量平均分子量は10000以上が好ましく、混合性の点から10000以上1000000以下がより好ましい。本願で規定する重量平均分子量とは、以下の条件に従ってゲルパーミエイションクロマトグラフィー法(GPC)により標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定したもののことをいう。
[GPC条件]
使用機器:日立L−6000 型〔(株)日立製作所]、カラム :ゲルパックGL−R420+ゲルパックGL−R430+ゲルパックGL−R440(計3本)〔日立化成工業(株)製商品名]、溶離液:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流量:1.75ml/min、検出器:L−3300RI〔(株)日立製作所]
【0026】
さらに、ラジカル重合性物質は、充填材、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、カップリング剤及びフェノール樹脂やメラミン樹脂、イソシアネート類等を含有することもできる。充填材を含有した場合、接続信頼性等の向上が得られるので好ましい。充填材の最大径が導電粒子の粒径未満であれば使用でき、5〜60体積%の範囲が好ましい。60体積%以上では信頼性向上の効果が飽和する。カップリング剤としては、ビニル基、アクリル基、アミノ基、エポキシ基、及びイソシアネート基含有物が、接着性の向上の点から好ましい。
【0027】
本発明に用いる、2級チオール基を有する化合物としては、下記式(1)〜(5)で表される化合物が好適である。
【化1】


【化2】


【化3】


【化4】


【化5】

【0028】
また、2級チオール基を有する化合物の好ましい例としては、アリルベンゼンチオールスルホネート、ベンゼンチオール、o−エトキシベンゼンチオール、p−エトキシベンゼンチオール、2−ベンズイミダゾールチオール、o−メルカプト安息香酸、o−メルカプト安息香酸メチルエステル、2−ベンゾチアゾールチオール、2級のブタンチオール、2,3−ブタンジチオール、ヘキサ−5−エン−3−チオール、2級のドデカンチオール、2級のヘプタンチオール、2級のヘキサンチオール、ナフタレンメタンチオール、メルカプトベンゾオキサゾール、ナフタレンチオール、2級オクタデカンチオール、2級オクタンチオール、2−メチル−2−プロパンチオール、トルエンチオール、チオビスベンゼンチオール、p−メトキシ−トルエンチオール等が挙げられる。2級チオール基を有する化合物は、アルコール類と比べて、連鎖移動剤としての反応性が高く、実用上優れている。
【0029】
2級チオール基を有する化合物の分子量は、90以上5000未満であることが好ましく、150以上2000未満であることがより好ましい。分子量が90未満の場合、接続時の加温により化合物の沸点に到達して蒸発してしまい、十分な量の2級チオール基を有する化合物を反応に寄与させることができなくなる傾向にある。一方、分子量が5000以上の場合は、樹脂の排除性が悪化し、接続抵抗が上昇する傾向にある。
【0030】
また、2級チオール基を有する化合物のチオール当量としては、50以上500未満が好ましく、120以上400未満がより好ましい。チオール当量が50未満の場合、架橋密度が低くなり、回路接続材料における抵抗の信頼性が低下する傾向にある。一方、チオール当量が500以上の場合、接着力向上効果が得られにくい傾向にある。
【0031】
また、製造時の作業性や製品の取り扱い性の面からは、2級チオール基を有する化合物の分子量が400以上であることがより好ましい。分子量が400未満では、材料を配合する際や、製品の取り扱いの際に、臭気が強く、作業性や取り扱い性が低下する傾向にある。一方、分子量が400以上の場合、臭気が抑えられ作業性・取り扱い性に支障はない。
【0032】
2級チオール基を有する化合物の添加量としては、ラジカル重合性物質100重量部に対して、1〜20重量部が好ましく、2〜10重量部が特に好ましい。1重量部未満では、接着力向上の効果が得られにくく、20重量部以上では、架橋密度が低くなり、回路接続材料における抵抗の信頼性が悪化する傾向にある。
【0033】
本発明の回路接続材料は、遊離ラジカルを発生する硬化剤と、ラジカル重合成物質と、2級チオール基を有する化合物とのみからなるものであってもよいが、必要に応じて以下の成分を更に含有することができる。
【0034】
本発明の回路接続材料は、分子内に1つ以上のアミノキシル構造を有する化合物をさらに含有することができる。本発明の回路接続材料がアミノキシル構造を有する化合物を含有すると、回路接続材料の保存安定性をより向上させることができる。
【0035】
また本発明の回路接続材料は、熱可塑性樹脂をさらに含有することができる。熱可塑性樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、キシレン樹脂、ポリウレタン樹脂等が使用できる。これら熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、製膜性などの観点から10000以上であることが好ましく、混合性の観点から10000以上1000000未満であることがより好ましい。熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、ラジカル重合性物質に含まれ得るポリマーの重合平均分子量と同様にして測定される。
【0036】
また、熱可塑性樹脂としては、Tg(ガラス転移温度)が40℃以上であり、重量平均分子量が10000以上である水酸基含有樹脂(例えばフェノキシ樹脂)を好ましく使用することができる。水酸基含有樹脂は、エポキシ基含有エラストマー、ラジカル重合性の官能基によって変性されていてもよい。ラジカル重合性の官能基で変性したものは耐熱性が向上するため好ましい。
【0037】
フェノキシ樹脂は、二官能フェノール類とエピハロヒドリンを高分子量まで反応させるか、又は二官能エポキシ樹脂と二官能フェノール類を重付加反応させることにより得ることができる。
【0038】
さらに、本発明の回路接続材料には、充填材、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、カップリング剤及びフェノール樹脂やメラミン樹脂、イソシアネート類等を含有することもできる。
【0039】
カップリング剤としては、ビニル基、アクリル基、アミノ基、エポキシ基又はイソシアネート基の少なくとも1種を有する化合物が、接着性の向上の点から好ましい。
【0040】
本発明の回路接続材料は、導電性粒子を含有せずとも接続時に相対向する回路電極の直接接触により接続を得ることができるものであるが、導電性粒子をさらに含有すると、より安定した接続を得ることができる。
【0041】
導電性粒子としては、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属粒子やカーボン等が挙げられる。また、Ni等の遷移金属類の表面をAu等の貴金属類で被覆したものでもよい。十分なポットライフを得るためには、表層はNi、Cu等の遷移金属類ではなく、Au、Ag、白金族の貴金属類とすることが好ましく、Auがより好ましい。また、ガラス、セラミック、プラスチック等の非導電性粒子の表面を前記した導電性物質で被覆する等の方法により、非導電性粒子表面に導通層を形成し、さらに最外層を貴金属類で構成したものや、熱溶融金属粒子の場合、加熱加圧により変形性を有するので接続時に電極との接触面積が増加し信頼性が向上するので好ましい。
【0042】
導電性粒子の配合量は用途により適宜設定されるが、通常は、接着剤樹脂成分100体積部に対して0.1〜30体積部の範囲である。過剰な導電性粒子による隣接回路の短絡等を防止するためには0.1〜10体積部とするのがより好ましい。
【0043】
また、回路接続材料を2層以上に分割し、硬化剤を含有する層と導電性粒子を含有する層に分離した場合、ポットライフの向上が得られる。
【0044】
次に、本発明の接続構造体及びその製造方法について説明する。
【0045】
図1は、接続構造体の一実施形態を示す概略断面図である。図1に示す接続構造体1は、第一の回路基板21及びこれの主面21a上に形成された第一の回路電極(第一の接続端子)22を有する第一の回路部材20と、第二の回路基板31及びこれの主面31a上に形成された第二の回路電極(第二の接続端子)32を有する第二の回路部材30と、第一の回路部材20と第二の回路部材30との間に介在してこれらを接着している接着層10とを備える。第二の回路部材30は、第二の回路電極32が第一の回路電極22と対向するように第一の回路部材20と対向配置されている。
【0046】
接着層10は、上記本発明の回路接続材料を第一の回路部材20と第二の回路部材30との間に介在させ、その状態で加圧することにより形成されたものである。なお、本実施形態では、導電性を有する回路接続材料を用いて接着剤層10を形成した場合の一例を示しており、接着層10は、絶縁層11と、絶縁層11内に分散している導電性粒子7とから構成される。絶縁層11は、接着剤のうち導電性粒子以外の成分に由来し、ラジカル重合性化合物のラジカル重合により形成された硬化体である。
【0047】
対向する第一の回路電極22及び第二の回路電極32は、導電性粒子7を介して電気的に接続されている。一方、同一の回路基板上に形成された第一の回路電極22同士、及び第二の回路電極32同士は絶縁されている。
【0048】
第一の回路基板31及び第二の回路基板21としては、半導体チップ、抵抗体チップ、コンデンサチップ等のチップ部品、プリント基板等の基板等が挙げられる。通常、回路部材には多数の接続端子が設けられているが、接続端子は場合によっては単数でもよい。
【0049】
より具体的には、半導体、ガラス及びセラミック等の無機材料の基板、プラスチック基板、又はガラス/エポキシ基板が用いられる。プラスチック基板としては、ポリイミドフィルム、ポリカーボネートフィルム及びポリエステルフィルムが挙げられる。第一の回路電極及び第二の回路電極は、銅などの金属から形成される。より良好な電気的接続を得るためには、第一の回路電極及び第二の回路電極の少なくとも一方の表面を、金、銀、錫及び白金族から選ばれる金属にすることが好ましい。表面層は金、銀、白金族、又は錫のいずれかから選択され、これらを組み合わせて用いてもよい。また、銅/ニッケル/金のように複数の金属を組み合わせて多層構成としてもよい。
【0050】
また、第一の回路部材20及び第二の回路部材30のうち一方は、ガラス基板又はプラスチック基板を回路基板として有し、ITO等から形成された接続端子を有する液晶ディスプレイパネルであってもよい。また、第一の回路部材20及び第二の回路部材30のうち一方は、ポリイミドフィルムを回路基板として有するフレキシブルプリント配線板(FPC)、テープキュリアパッケージ(TCP)若しくはチップオンフィルム(COF)、又は半導体基板を回路基板として有する半導体シリコンチップであってもよい。これらの各種の回路部材を、必要により適宜組み合わせて接続構造体が構成される。
【0051】
なお、回路電極を設けた基板は接続時の加熱による揮発成分による接続への影響を排除するために、回路接続材料による接続工程の前に予め加熱処理することが好ましい。
【0052】
接続構造体1は、例えば、第一の回路部材20、フィルム状の接着剤及び第二の回路部材30を、この順で、第一の接続端子22及び第二の接続端子32が相対峙するように重ね合わせ、その状態で加圧あるいは更に加熱することにより形成される。圧力は、被着体に損傷を与えない範囲であれば、特に制限は受けないが、一般的には0.1〜10MPaが好ましい。加熱温度は、特に制限は受けないが、100〜250℃が好ましい。これらの加圧及び加熱は、0.5秒〜120秒間の範囲で行うことが好ましく、140〜200℃、3MPa、10秒の加熱でも接着させることが可能である。
【実施例】
【0053】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0054】
[1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンの合成]
1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン120mmol(31.35g)、3−メルカプト酪酸(淀化学(株)製)378mmol(45.42g)、p−トルエンスルホン酸・1水和物(純正化学(株)製)8.1mmol(1.51g)、及び、トルエン63gを100mlナスフラスコに仕込み、Dean−Stark装置及び冷却管を装着した。内容物を撹拌しながらオイルバス温度140℃で加熱して4時間反応させた。その後放冷し、10%炭酸水素ナトリウム水溶液100mlで、反応液を中和した。さらに反応液をイオン交換水にて3回洗浄した後、無水硫酸マグネシウム(純正化学(株)製)にて脱水・乾燥を行った。次にトルエンを留去し、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(上記式(1)で表される、チオール基を有する化合物)を得た。得られた化合物は高粘度の無色透明の液体であった。
【0055】
[ペンタエリストール テトラキス(3−メルカプトブチレート)の合成]
2,2−ビス(ヒドロキシメチル)1,2−プロパンジオール(ペンタエリストール、広栄化学工業(株)製)60mmol(8.17g)、3−メルカプト酪酸(淀化学(株)製)252mmol(30.28g)、p−トルエンスルホン酸・1水和物(純正化学(株)製)5.2mmol(0.98g)、及び、トルエン40gを100mlナスフラスコに仕込み、Dean−Stark装置及び冷却管を装着した。内容物を撹拌しながらオイルバス温度140℃で加熱して4時間反応させた。その後放冷し、10%炭酸水素ナトリウム水溶液100mlで、反応液を中和した。さらに反応液をイオン交換水にて3回洗浄した後、無水硫酸マグネシウム(純正化学(株)製)にて脱水・乾燥を行った。次にトルエンを留去し、ペンタエリストール テトラキス(3−メルカプトブチレート)(上記式(2)で表される、チオール基を有する化合物)を得た。得られた化合物は高粘度の無色透明の液体であった。
【0056】
[実施例1]
熱可塑性樹脂としてビスフェノールA・F共重合型フェノキシ樹脂(ZX−1356−2, 東都化成製)をトルエン/酢酸エチル=50/50の混合溶媒に溶解して得られた40重量%溶液を87.5重量部(固形分換算で35重量部)、ポリウレタン樹脂(T−6075N、ディーアイシーバイエル ポリマー(株)製)をメチルエチルケトンに溶解して得られた15重量%溶液を100重量部(固形分換算で15重量部)、スチレンー無水マレイン酸共重合体(D−250、ノヴァケミカル・ジャパン(株)製)をトルエンに溶解して得られた20重量%溶液を25重量部(固形分換算で5重量部)、ラジカル重合性物質として、ウレタンアクリレートオリゴマー(UA5500T、新中村化学製)のトルエン溶解品70重量%溶液を42.86重量部(不揮発分換算で30重量部)、ジシクロペンタジエン型ジアクリレート(DCP−A、東亞合成製)を15重量部、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート(P−2M、共栄社化学製)を3重量部、2級チオール基を有する化合物として1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(分子量567.7)を2重量部、遊離ラジカルを発生する硬化剤として、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイル)ヘキサン(パーヘキサ25O,日本油脂(株)製)を4重量部(パーヘキサ25Oは50%溶液であり、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイル)ヘキサンの実際の配合は8重量部)配合し、さらに、毬栗状の表面形状を有する、平均粒径2〜3.3μmのNi粉体を5重量部配合した。この混合溶液をアプリケータでPETフィルム上に塗布し、70℃10分の熱風乾燥により、接着剤層の厚み35μmの回路接続材料を得た。
【0057】
[実施例2]
1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンに代えてペンタエリストール テトラキス(3−メルカプトブチレート)(分子量:544.77)2重量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして回路接続材料を得た。
【0058】
[実施例3]
1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(分子量567.7)の使用量を3重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして回路接続材料を得た。
【0059】
[比較例1]
2級チオール基を有する化合物を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして回路接続材料を得た。
【0060】
[比較例2]
1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンに代えて、1級チオール基を有する化合物であるトリス[(3−メルカプトプロピオニロキシ)−エチル]イソシアヌレート(TEMPIC、分子量:525.62、堺化学工業(株)製)2重量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして回路接続材料を得た。
【0061】
[比較例3]
1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンに代えて、1級チオール基を有する化合物であるペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(PEMP、分子量:488.66、堺化学工業(株)製)2重量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして回路接続材料を得た。
【0062】
[比較例4]
1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンに代えて、3級チオール基を有する化合物であるエチレングリコールビス(2−メルカプトイソブチレート)(EGMIB、特開2004−149755号公報に記載の合成法に従い合成、分子量:266.38)2重量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして回路接続材料を得た。
【0063】
[比較例5]
1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンに代えて、ジスルフィド化合物であるジフェニルジスルフィド(住友精化(株)製、分子量:218.34)2重量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして回路接続材料を得た。
【0064】
[接続構造体の作製(COFとPWBの接続)]
実施例1〜3及び比較例1〜5の各回路接続材料を用いて、厚み38μmのポリイミド上に直接形成された、ライン幅100μm、ピッチ200μm、厚み8μmの銅回路を有するフレキシブル回路板(COF−TEG)と、ライン幅100μm、ピッチ200μm、厚み35μmの銅回路を形成したガラスエポキシ多層プリント配線板(PWB−TEG)上とを、120℃−2MPa−10秒、幅2.0mmで接続した。この際、ガラスエポキシ多層プリント配線版上に、回路接続材料の接着面を貼り付けた後、70℃、1MPa,3秒間加熱加圧して仮接続し、その後、PETフィルムを剥離してCOF−TEGと接続した。上記の工程において、臭気の有無に基づき、各回路接続材料の作業性及び取扱性を評価した。得られた結果を表1に示す。
【0065】
[接着強度の測定]
作製した回路部材の接続構造について、90°で剥離するときの接着強度を、剥離速度50mm/minで測定した。測定は、初期の回路接続材料、及び40℃で5日処理した後の回路接続材料のそれぞれについて行った。得られた結果を表1に示す。
【0066】
[接続抵抗の測定]
回路の接続後、上記接続部を含むFPC−PWBの隣接回路間の抵抗値を初期と、回路接続材料を40℃で5日処理した後に、マルチメーターで測定した。抵抗値は隣接回路間の抵抗値150点のx+3σとした。初期抵抗に対する40℃5日処理後の抵抗の上昇倍率が1.2倍以内を保存安定性が良好なレベルとした。得られた結果を表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
表1に示したように、実施例1〜3においては、初期及び40℃、5日処理後のいずれにおいても、接着力と抵抗の両立を達成することができた。一方、比較例1、4、5の場合は、初期から接着力が低かった。なお、比較例4、5における低い接着力は、3級チオール又はジフェニルジスルフィドの立体障害が大きく、連鎖移動剤としての反応性に乏しいためと考えられる。また、比較例2、3では、40℃5日処理後の抵抗値の上昇倍率が1.2倍を超えており、保存安定性に劣る結果となった。
【符号の説明】
【0069】
1…接続構造体、7…導電性粒子、10…接着層、11…絶縁層、20…第一の回路部材、21…第一の回路基板、22…第一の回路電極(第一の接続端子)、30…第二の回路部材、31…第二の回路基板、32…第二の回路電極(第二の接続端子)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の基板の主面上に第一の回路電極が形成された第一の回路部材と、第二の基板の主面上に第二の回路電極が形成された第二の回路部材とを、前記第一の回路電極及び前記第二の回路電極を対向配置させた状態で接続するための回路接続材料であって、
遊離ラジカルを発生する硬化剤と、ラジカル重合成物質と、2級チオール基を有する化合物とを含有し、
前記2級チオール基を有する化合物の分子量が400以上2000未満である、回路接続材料。
【請求項2】
導電性粒子をさらに含有する、請求項1に記載の回路接続材料。
【請求項3】
第一の基板の主面上に第一の回路電極が形成された第一の回路部材と、
第二の基板の主面上に第二の回路電極が形成され、前記第二の回路電極と前記第一の回路電極とが対向するように配置された第二の回路部材と、
前記第一の回路部材と前記第二の回路部材との間に設けられ、前記第一の回路部材と前記第二の回路部材とを電気的に接続する接着層と、を備え、
前記接着層が、前記第一の回路部材と前記第二の回路部材との間に請求項1又は2に記載の回路接続材料を介在させ、その状態で加圧することにより形成されたものである接続構造体。
【請求項4】
第一の基板の主面上に第一の回路電極が形成された第一の回路部材と、第二の基板の主面上に第二の回路電極が形成された第二の回路部材とを、前記第一の回路電極と前記第二の回路電極が相対向するように配置し、前記第一の回路部材と前記第二の回路部材との間に請求項1又は2記載の回路接続材料を介在させ、その状態で加圧することにより前記第一の回路電極と前記第二の回路電極とを電気的に接続する工程を備える接続構造体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−146988(P2012−146988A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−29822(P2012−29822)
【出願日】平成24年2月14日(2012.2.14)
【分割の表示】特願2009−538971(P2009−538971)の分割
【原出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】