説明

圧電体薄膜ウェハの製造方法、圧電体薄膜素子及び圧電体薄膜デバイス、並びに圧電体薄膜ウェハの加工方法

【課題】圧電体薄膜を微細加工するとともに制御性良く加工を停止させることを可能とした圧電体薄膜ウェハの製造方法、及び圧電体薄膜ウェハの加工方法、並びに圧電体薄膜素子、圧電体薄膜デバイスを提供する。
【解決手段】基板2上に組成式(K1-xNax)NbO3(0.7<x≦1.0)で表される下地層4を形成する工程と、下地層4上に組成式(K1-xNax)NbO3(0.4≦x≦0.7)で表されるアルカリニオブ酸化物系ペロブスカイト構造の圧電体薄膜5を形成する工程と、基板2上に形成された下地層4及び圧電体薄膜5に、Arを含むガスを用いてドライエッチングを行う工程と、ドライエッチングにおいて放出されるイオンプラズマ中のNaの発光ピーク強度の変化を検出してエッチング速度を変更する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電体薄膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧電体は、種々の目的に応じて様々な圧電体素子に加工され、特に電圧を加えて変形を生じさせるアクチュエータや、素子の変形から電圧を発生するセンサなどの機能性電子部品として広く利用されている。
【0003】
アクチュエータやセンサの用途に利用されている圧電体としては、大きな圧電特性を有する鉛系の誘電体、特にPZTと呼ばれるPb(Zr1-XTiX)O3系のペロブスカイト型の強誘電体が広く用いられている。この強誘電体は、各構成元素を含む酸化物の焼結により形成される。
【0004】
近年では、環境への配慮から鉛を含有しない非鉛圧電体の開発が望まれており、ニオブ酸カリウムナトリウム(一般式:(K1-xNax)NbO3(0<x<1))[以下、KNNと記す。]等が開発されている。このKNNは、PZTに匹敵する圧電特性を有することから、鉛を含有しない圧電材料の有力な候補として期待されている。この種の圧電材料を用いた非鉛圧電体薄膜の一例が、例えば、特開2007−19302号公報や特開2007−184513号公報に提案され、また、良好な圧電特性を得るために、圧電体薄膜を配向させて成膜することが有効であると考えられている。例えば、配向性を有する配向制御層や下地層上に圧電体薄膜を形成することで、圧電体薄膜を配向させることが検討されている。
【0005】
圧電体薄膜としてKNNのように非鉛圧電体薄膜を用いることで、環境負荷の小さいインクジェットプリンタ用ヘッドやジャイロセンサ、フィルタデバイスなどを作製することができる。
非鉛圧電体薄膜を用いてアクチュエータやセンサを作製する場合は、微細加工プロセスにより非鉛圧電体薄膜を梁や音叉の形状に加工する必要がある。これまで、この非鉛圧電体薄膜をエッチングする際には、反応ガスとしてCl系の反応ガスを用いることが提案されている。(非特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−19302号公報
【特許文献2】特開2007−184513号公報
【特許文献3】特許第4258530号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】C.M.Kang等の「Etching Characteristics of (Na0.5K0.5)NbO3 Thin Films in an Inductively Coupled Cl2/Ar Plasma」、Ferroelectrics,357,p.179-184(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記非特許文献1記載の方法では、非鉛圧電体薄膜層とその他の層との間でエッチング選択比を得ることが難しく、アクチュエータ、センサ、フィルタデバイス、又はMEMS(Micro Electro Mechanical System)デバイスにおいて求められる、高い精度で微細加工を行うことが困難であった。
【0009】
本発明の目的は、圧電体薄膜を短時間で微細加工する制御性よく加工の停止が可能な圧電体薄膜の加工方法の提供と、高い精度で微細加工を施した圧電体薄膜ウェハ、圧電体薄膜素子、及び圧電体薄膜デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本件発明者等は、ドライエッチングにより放出されるイオンプラズマ中のNaの発光ピーク強度の変化が、圧電体薄膜ウェハの加工中に発生していること、並びにエッチングの進行により層と層との間で発生するピーク強度の変化を検出できることを見つけ出した。
このNa発光ピーク強度の変化を圧電体薄膜のエッチングの進行度の検出や終点検出に使用することにより、圧電体薄膜に対して精度の良い微細加工が可能となることが分かり、本発明に至った。
【0011】
本発明の圧電体薄膜ウェハの製造方法は、基板上に組成式(K1-xNax)NbO3(0.7<x≦1.0)で表される下地層を形成する工程と、該下地層上に組成式(K1-xNax)NbO3(0.4≦x≦0.7)で表されるアルカリニオブ酸化物系ペロブスカイト構造の圧電体薄膜を形成する工程と、前記基板上に形成された前記下地層と前記圧電体薄膜に、Arを含むガスを用いてドライエッチングを行う工程と、前記ドライエッチングにおいて放出されるイオンプラズマ中のNaの発光ピーク強度の変化を検出してエッチング速度を変更する工程とを有することを特徴とする。
前記エッチング速度を変更する工程は、前記ドライエッチングが前記下地層まで進行したときの前記Naの発光ピーク強度が強くなることを検出してもよい。
【0012】
また、前記基板と前記下地層との間に下部電極層を備え、前記エッチング速度を変更する工程は、前記ドライエッチングが前記下部電極層まで進行したときの前記Naの発光ピーク強度の減衰を検出してもよい。
前記下部電極層として、Pt下部電極層を形成してもよい。
【0013】
前記ドライエッチングは、前記Arを含むガスにフッ素系反応ガスを混合したガスを用いて行う反応性イオンエッチングを含むものであってもよい。
前記圧電体薄膜ウェハのエッチング断面にフッ素化合物を形成してもよい。
【0014】
本発明の圧電体薄膜素子は、前記圧電体薄膜ウェハの製造方法により得られる圧電体薄膜ウェハを素子分離して形成することを特徴とする。
【0015】
本発明の圧電体薄膜デバイスは、前記圧電体薄膜素子に、電圧印加手段又は電圧検知手段を設けたことを特徴とする。
【0016】
本発明の圧電体薄膜ウェハの加工方法は、基板上に形成された組成式(K1-xNax)NbO3(0.7<x≦1.0)で表される下地層と該下地層上に形成された組成式(K1-xNax)NbO3(0.4≦x≦0.7)で表されるアルカリニオブ酸化物系ペロブスカイト構造の圧電体薄膜にドライエッチングを行う工程と、前記ドライエッチングにおいて放出されるイオンプラズマ中のNaの発光ピーク強度の変化を検出してエッチング速度を変更する工程とを有し、前記エッチング速度を変更する工程は、前記ドライエッチングが前記下地層まで進行したときの前記Naの発光ピーク強度が強くなることを検出して行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ドライエッチングにより圧電体薄膜に対して精度よく微細加工することができる。また、高精度に加工された圧電体薄膜素子、圧電体薄膜デバイスを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る圧電体薄膜ウェハを模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る圧電体薄膜ウェハの加工工程を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る加工工程のNa発光ピーク強度とエッチング時間との関係を示すグラフである。
【図4】本発明により得られた圧電体薄膜素子を用いたカンチレバー型アクチュエータの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0020】
(圧電体薄膜ウェハの構成)
図1において、全体を示す符号1は、この実施の形態に係る圧電体薄膜ウェハの一構成例を模式的に示している。この圧電体薄膜ウェハ1は、シリコン(Si)基板2を備える。そのSi基板2の上面には、下部電極層3が形成されている。その下部電極層3は、一例として白金(Pt)薄膜からなる(以下、Pt下部電極層3ともいう)。そのPt下部電極層3が形成されたSi基板2上には、組成式(K1-xNax)NbO3(0.7<x≦1.0)で表されるペロブスカイト構造の下地層4(以下、誘電体下地層ともいう)が形成され、その下地層4上には、組成式(K1-xNax)NbO3(0.4≦x≦0.7)で表されるペロブスカイト構造の圧電体薄膜5(以下、KNN圧電体薄膜ともいう)が形成される。Si基板2の表面には、図示しない酸化膜(SiO2)を形成し、Si基板2とPt下部電極層3との密着性を向上させてもよい。
【0021】
(下部電極層及び圧電体薄膜の形成)
まず、Si基板2上にPt下部電極層3を形成する。Pt下部電極層3は、一例として、RFマグネトロンスパッタリング法を用い形成される。Pt下部電極層3は、(111)面に優先配向するよう、成膜条件を制御して形成するとよい。Pt下部電極層3を形成するにあたり、Si基板2とPt下部電極層3との密着性を高めると共に、Pt下部電極層3の良好は配向性を得るために、Si基板2とPt下部電極層3との間に図示しないチタン(Ti)密着層を形成しても良い。Ti密着層の膜厚は1nm〜30nmの範囲とするのがよい。Pt下部電極層3は、圧電薄膜素子が所望の特性を実現するため、所定の表面粗さに抑えることが好ましい。
【0022】
次に、Pt下部電極層3上に、下地層4を形成する。下地層4は、下地層4上に形成されるKNN圧電体薄膜5より、Na組成比が高くなるよう形成される。Na組成比は、下地層4の厚さ方向において一定としても、連続的又は段階的に変化させてもよい。
また、一例として、下地層4の厚さは、20nm〜120nmの厚さに形成される。これは、薄すぎると発光ピーク強度の変化の検出を確実に行うことができず、厚すぎても、成膜時間の増大や、エッチングの停止制御が難しくなるためである。
【0023】
次に、下地層4上に、KNN圧電体薄膜5を形成する。KNN圧電体薄膜5は、スパッタリング法や、ゾルゲル法、AD法などにより形成される。KNN圧電体薄膜5は、配向性を有するように成膜されるとよい。KNN圧電体薄膜5の厚さは、用途により適宜決定される。一例としては、200nm〜10μmの厚さで形成される。
【0024】
(マスクパターンの形成)
圧電体薄膜ウェハ1の一部を構成するKNN圧電体薄膜5の微細加工を行うにあたり、図2のように、KNN圧電体薄膜5の上にマスクパターンを形成する。RFマグネトロンスパッタリング法により、KNN圧電体薄膜5の上にTi膜を形成し、次に、フォトレジストを塗布し、露光及び現像を行い、Ti膜上にフォトレジストパターンを形成する。そして、フッ酸と硝酸の混合液を用いてTi膜をエッチングする。その後、アセトン洗浄を行うことで、フォトレジストパターンを除去し、パターンが形成されたTi層6(以下、Tiパターンともいう)をKNN圧電体薄膜5上に形成する。
このTiパターン6は、非鉛系の圧電体薄膜ウェハ1の微細加工における適切なマスク材料として用いられる。この実施の形態に係るニオブ酸化物系圧電体薄膜に対しても、所定のエッチング選択比を有しており、Arイオンエッチングにおけるマスク厚さの増加によるパターン精度の悪化を防止することができる。
【0025】
(ドライエッチング加工)
この実施の形態に係る圧電体薄膜ウェハ1を用い、センサやアクチュエータ、フィルタを作製する場合は、ドライエッチングによりKNN圧電体薄膜5を梁や音叉、櫛などの所望の形状に加工する。
図2は、圧電体薄膜ウェハ1上にTiパターン6を直線状に形成し、圧電体薄膜5に対し微細加工を施した圧電体薄膜ウェハ1を示す。Tiパターン6は、所定の幅、ピッチに形成され、圧電体薄膜ウェハ1のエッチングが行われる。図2では、Tiパターン6は圧電体薄膜5上に直接形成したが、上部電極層となる金属層を圧電体薄膜5上に形成し、Tiパターン6を金属層上に形成しても良い。
微細加工が施されたKNN圧電体薄膜5は、図2のように所定のテーパ角を備えた台形状のKNN素子部7を有する。各KNN素子部7の間には、Pt下部電極層3が露出して形成される。このKNN素子部7が形成された圧電体薄膜ウェハにダイシング等を行うことで、KNN素子部7を個片化した圧電体薄膜素子が得られる。
【0026】
本発明者等は、Si基板2上に形成されたPt下部電極層3、Pt下部電極層3上に形成された下地層4、KNN圧電体薄膜5を有する圧電体薄膜ウェハ1に対して、ArもしくはArとCHF3あるいはC48などの混合ガスを用いてドライエッチングを行うことで微細加工特性を評価した。
【0027】
その結果、エッチングの際のイオンプラズマ中のNa発光(586nm〜590nmの発光スペクトル)ピーク強度の時間変化が、エッチングの進行に伴い変化し、その変化を検出できることを見出した。そして、Na発光ピーク強度の変化を、エッチング制御に採用することを試み、本発明をするに至った。
特に、下地層4のNa組成比を、KNN圧電体薄膜5よりも高くすることで、Na発光ピーク強度の変化の良好な検出を実現した。
【0028】
この実施の形態の特徴とするところは、放出されるイオンプラズマ中のNaの発光ピーク強度の変化を検出して、エッチング速度を変更することにある。エッチングにより放出されるイオンプラズマ中のNaの発光ピーク強度が、KNN圧電体薄膜をエッチングしているときの定常値からの変化をKNN圧電体薄膜のエッチングの終点検知に使用する。
例えば、Naの発光ピーク強度が、定常値から上昇した後、急激に減少し、定常値に対し50〜70%程度まで減衰した状態の値でエッチングを停止することで、微細加工を達成する。
【0029】
ここで、Naの発光ピーク強度の定常値とは、KNN圧電体薄膜5をエッチングしているときの値をいい、本発明においては、Na発光ピーク強度が急激に変化する時間(図3のグラフの急峻な上傾斜部分であるエッチング時間55〜60分)に対し、Na発光ピーク強度が急激に変化し始める前(例えば、図3に示すグラフの20分から40分の間のエッチング時間)における発光ピーク強度の平均値とした。
【0030】
このKNN圧電体薄膜5の微細加工は、Arを含むガスを用いたドライエッチングを行うエッチング工程と、ドライエッチングにより放出されるイオンプラズマ中のNa発光ピーク強度の増減変化を検知すると共に、Na発光ピーク強度の時間変化を検出してエッチング速度を変更する工程により行う。このエッチング速度の変更工程では、図3に示すように、Na発光スペクトルの発光ピーク強度がエッチング工程における定常値から急激に変化(例えば、増減)したことを検出することで、Pt下部電極層3において制御性よくエッチングを停止させることができる。
また、発光ピーク強度が増加するまでは、Arガスのみでドライエッチングを進めることで、短時間にKNN圧電体薄膜のエッチングを行い、発光ピーク強度の増加を検出した後は、フッ素系ガスを混合しエッチング速度を落としてエッチングを進めることができる。なお、フッ素系反応ガスを混合した場合、Pt下部電極層3とのエッチング選択比が高くなるため、Pt下部電極層3において、エッチングの停止制御が容易になり、結果的に加工精度を高めることができる。
【0031】
上記加工方法により、KNN圧電体薄膜5を短時間に精度良く微細加工することが可能となる。また、エッチング断面形状がSi基板2の面に向けて漸次拡大するテーパ状となるように上辺が短く、下辺が長い上短下長の台形状となるよう、KNN素子部7を形成することができる。また、短時間で精度よくエッチングを行うことで、テーパ角を急峻にすることができ、その後の工程における位置合わせや、個片化後の所望の特性の実現に効果をもたらす。
【実施例】
【0032】
以下に、本発明の具体的な実施の形態として、実施例を挙げて、図1,2を参照しながら、圧電体薄膜ウェハについて詳細に説明をする。なお、この実施例にあっては、圧電体薄膜ウェハの一例を挙げるものであり、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
【0033】
(下部電極層及びKNN圧電体薄膜の形成)
基板は、熱酸化膜付きのSi基板2((100)面方位、厚さ0.525mm、熱酸化膜厚さ200nm、サイズ4インチウェハ)を用いた。RFマグネトロンスパッタリング法を用いて、Si基板2上にPt下部電極層3(Pt、膜厚210nm)を形成するにあたり、Si基板2とPt下部電極層3との間に図示しないTi密着層(10nm)をスパッタにより形成した。
【0034】
Ti密着層とPt下部電極層3とは、基板温度100℃〜350℃、放電パワー200W、導入ガスAr雰囲気、圧力2.5Paの条件で成膜した。成膜時間は、それぞれ1〜3分、10分とした。Pt下部電極層3の面内表面粗さを測定したところ、算術平均粗さRaが0.86nm以下であった。また、X線回折測定により、Pt下部電極層は(111)に配向していることが確認された。
【0035】
このPt下部電極層3上に、組成式(K1-xNax)NbO3で表されるアルカリニオブ酸化物系ペロブスカイト構造の誘電体下地層と、誘電体下地層4よりもNa組成比の低い圧電体薄膜5をマグネトロンスパッタリング法により形成した。この誘電体下地層4、圧電体薄膜5は、Na/(K+Na)を調整した(K1-xNax)NbO3焼結体をターゲットに用い、基板温度520℃、放電パワー700W、導入ガスO2/Ar混合比0.005、チャンバー内圧力1.3Paの条件で成膜した。下地層4及びKNN圧電体薄膜5のスパッタ成膜時間は、それぞれの膜厚が100nm、3μmとなるように調整して行った。
【0036】
(マスクパターンの形成)
まず、KNN圧電体薄膜5の上に、Ti膜をRFマグネトロンスパッタリング法により約1.2μm成膜した。次に、OFPR−800などのフォトレジストを塗布し、露光及び現像を行い、Ti膜上にフォトレジストパターンを形成した。その後、フッ酸と硝酸の混合液(HF:HNO3:H2O=1:1:50)を用いてTi膜をエッチングした。アセトン洗浄によりフォトレジストパターンを除去し、Tiパターン6をKNN圧電体薄膜5上に形成した。Tiパターン6は、幅2.5mm、ピッチ5.0mmで形成した。
【0037】
なお、マスクの厚さについては、KNN膜のTiマスクとのエッチング選択比(エッチング速度比率)を考慮して決定した。ここでは、エッチングにより減少するTiマスク量(厚さ)とKNN膜量(厚さ)を測定し、エッチング選択比を求めた。
具体的には、基台上にKNN膜を形成し、さらにKNN膜の一部にTiマスクを形成した試料を作製し、Arガス、又はArを含むガスを用いたドライエッチングを施した。所定時間エッチングした後、残留したTiパターンフッ酸と硝酸の混合液を用いて除去し、段差を測定することでエッチング深さを求めた。そして、厚さの変化量(段差量)の測定からKNNとTiのエッチング選択比を求めた。変化量の測定から求めた「圧電体薄膜/マスク厚」のエッチング選択比は、最大で3程度であり、KNN圧電体薄膜5を加工する場合は、「圧電体薄膜/マスク厚」比を3程度とすることが好適であることが分かった。
【0038】
(ドライエッチングによる加工)
Tiパターン6を形成したKNN圧電体薄膜5上に、Arを含むガスを用いたドライエッチングにより微細加工を行う。この工程において、イオンプラズマ中のNa発光ピーク強度の時間変化を観測することで、下部電極層3において制御性良く加工を停止する微細加工を行った。ドライエッチング装置としては、ICP−RIE装置(サムコ製RIE−102L)を用いた。ガスとしては、Ar、もしくは、ArとCHF3、C26、CF4、SF6、C48などのフッ素系反応ガスとの混合ガスを用いることができる。
【0039】
(Na発光ピーク強度の観測、エッチング速度の確認)
上記ドライエッチング工程において、イオンプラズマ中のNa発光ピーク強度(以下、Naピーク強度ともいう)の時間変化の観測を行った。そのNaピーク強度は、スペクトルメータ(OceanOptics製USB2000)を用いて測定した。ドライエッチングは、RF出力415W、チャンバー内圧力33.3Pa(0.25Torr)、ガス総流量100sccmの条件とした。また、バイアス電力は0Wとした。KNN圧電体薄膜5のエッチングの終点検出には、上記イオンプラズマ中のNaピーク強度の時間変化により検出する方法を用いた。
【0040】
ガス組成と混合比とを変えてKNN圧電体薄膜5の微細加工を実施した。具体的には、Arガスに対し0%〜25%のフッ素系反応ガスを混合して微細加工を行った。エッチング速度は約20〜40nm/minの範囲となり、良好なエッチング速度が得られた。
また、エッチングにより露出したPt下部電極層は、いずれの試料においても厚さが120nm以上に保たれ、Pt下部電極層において、エッチングの停止ができていることを確認できた。また、KNN素子部のテーパ角は、46°〜60°の範囲であった。このテーパ角は、バイアス電力を制御することで、60°以上の急峻な角度にすることができる。
【0041】
図3には、Arガスのみを用いたドライエッチングを行った際の、イオンプラズマ中のNa発光スペクトルの中心波長に対応する588.5nmのNaピーク強度とエッチング時間との関係が示されている。図3において、グラフ右軸はエッチング速度から求めたエッチング深さの推定値とKNN圧電体薄膜5の膜厚を示す。
ここでは、KNN圧電体薄膜5においてエッチングが進行しているときから、誘電体下地層4へエッチングが進行したとき、Naピーク強度は定常値から増大していることが分かる。その後、下地層を削り切る付近において、イオンプラズマ中のNaピーク強度が大きく減少している。これは、エッチングの進行がPt下部電極層に移っていっていることを示している。このNa発光ピーク強度の増減部分をKNN圧電体薄膜5のエッチングの終点検出に使用が可能であることが理解できる。
【0042】
上記のようなNa発光スペクトルの観測に加えて、「KNN圧電薄膜厚さ/Pt下部電極層厚さ」比が15以下となるPt下部電極層を用いることで、より確実にPt下部電極層3における加工停止が容易となる。「KNN圧電薄膜厚さ/Pt下部電極層厚さ」の比を15以下としたのは、大口径の圧電薄膜ウェハ面内において、削り残しや削りすぎがないようにするためである。この実施例では、Pt下部電極層3を100nmほど削って加工を停止することが適当であり、KNN圧電体薄膜5が3μmであるのに対し、Pt下部電極層3を210nmとした。
微細加工された圧電薄膜素子を用いてデバイスを構成する場合、電圧の印加又は電圧の検知を行うために、エッチングにより露出させたPt下部電極層をパッドとして用いる形態がある。このような形態の場合には、エッチング後に露出した下部電極層の厚さが100nm以上となるように予め各層の膜厚やエッチング選択比を決定しておくことが好ましい。
【0043】
チャンバー内圧力を20Pa〜66.7Pa(0.15Torr〜0.50Torr)の範囲で変化させたときのエッチング速度を確認したところ、エッチング速度に20%程度の差が見られ、33.3Paの場合に、エッチング速度が最大となることが確認できた。これは、Arガスと、フッ素系反応ガス(例えば、C26、CF4、SF6、C48など)を用いた場合でも、Arガス単独の場合でも、同様の傾向が見られた。
【0044】
上述した通り、KNN圧電体薄膜5を短時間で高精度に微細加工するためには、Ar、もしくはArとCHF3、C26、CF4、SF6、C48などのフッ素系反応ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングが好適であることが理解できる。Ptなどの下部電極層3でエッチングを停止させるには、イオンプラズマ中のNa発光ピーク強度の時間変化を検出することが好適である。但し、Arガスに対して反応ガスの比率が多い場合は、KNNのエッチング速度が大きく落ちるため、Arと反応ガスとの比率には注意すべきである。具体的には、Arガス/反応ガスの混合比が1より小さい場合には、KNNのエッチング速度が大きく落ち、KNN素子部の形状が不安定になり易く、現実的な微細加工には不向きである。従って、Arガス/反応ガスの混合比を1以上に設定することが好ましく、さらに好ましくは、Arガス/反応ガスの混合比を2.5以上に設定することが望ましい。
【0045】
(微細加工及びエッチング停止)
上述した通り、Arを含むガスを用いたドライエッチングでKNN圧電体薄膜5を加工し、イオンプラズマ中のNa発光ピーク強度の変化を検知することにより、Pt下部電極層3において制御性よく加工を停止することで、KNN圧電体薄膜5の微細加工を行い、KNN素子部7を形成すると共に、Pt下部電極層3を露出させ、かつPt下部電極層3においてエッチングを停止できる。
【0046】
微細加工後のKNN圧電体薄膜5におけるエッチング断面には、図2に模式的に示した通り、外方に向けてテーパ上に拡がる傾斜部が形成されている。その傾斜部は、ウェハ表面側に相当する素子の上辺が短く、基板側となる下辺が長い上短下長の台形状断面を有している。KNN圧電体薄膜層5の上面端と底面端とを結んだ方面と、KNN圧電体薄膜5の底面とがなす角度θは、初期の目的とする45°より大きく90°より小さい方面角度θ(以下、テーパ角θともいう)となっている。
【0047】
バイアス電力を制御することで、KNN圧電体薄膜5のテーパ角θを45°より大きく、90°より小さい範囲において制御できる。上記した実施例では、バイアス電力を12〜15Wの範囲で制御することで、70°程度のテーパ角を実現することができ、さらに、100〜150Wの範囲まで上昇させることで、80°以上90°以下の範囲で制御できることが確認できた。
【0048】
さらに、バイアス電力の制御に加えて、炉内圧力を制御することで、KNN圧電薄膜を加工した、KNN素子部7のテーパ角θの調整が可能であることを確認した。その一例としては、炉内圧力を下げるように制御すると、KNN素子部7のテーパ角θは高角度になる傾向があることを確認した。この炉内圧力の制御と共に、バイアス電力の制御と組み合わせて実施することで、テーパ角を精度良く制御することができる。
【0049】
KNN素子部7のテーパ角θが45°以下であると、圧電体薄膜素子が設計どおりの特性を発揮できなくなるので好ましくない。また、後工程における位置合わせの精度が悪くなるおそれがある。一方、KNN素子部7のテーパ角θが90°以上であると、構造的に不安定であり、素子信頼性に欠ける。また、後工程でデバイスに加工する際、上部電極を形成する際に、歩留りの低下を引き起すおそれがある。
【0050】
KNN素子部7のテーパ角度(法面角度)θを45°より大きく90°を超えない範囲で制御した圧電薄膜素子を用い、20V電圧を印加して動作確認を行った。具体的には、上記実施例により得られた微細加工され、KNN素子部7に素子分離された圧電体薄膜ウェハの個片化を行い圧電体薄膜素子を形成する。圧電体薄膜素子を用いて図4に記載のカンチレバー型アクチュエータ10を作製し、動作の安定性と、1億回動作後の圧電定数の劣化率を評価した。いずれもデバイスとして用いるのに問題なく、良好な結果が得られた。
【0051】
ここで図4のカンチレバー型アクチュエータ10について説明する。
KNN素子部7の上部にPt上部電極8を形成し、長さ20mm、幅2.5mmの短冊型素子9を切り出した。短冊型素子9の長手方向の端をクランプ11で固定することで、簡易型のカンチレバー型アクチュエータ10を作製した。この状態で上部電極、下部電極間に、電圧を印加することで、KNN圧電体薄膜5に変位を生じさせ、伸縮させるように動作させることで、レバー全体を屈曲動作させた。この先端部の位置をレーザドップラー変位計12で測定することにより圧電定数を求めることができる。
上部電極は、エッチングによる圧電体薄膜ウェハ1の微細加工後にTi膜を除去し、Ti膜が除去されたKNN素子部上に形成してもよいが、工程の簡略化には、エッチング前に圧電体薄膜上に形成しても良い。この場合は、微細加工前に、圧電体薄膜上に上部電極層を形成し、その上にTiなどのマスクを設けて、エッチングを行う。
【0052】
以上の説明から明らかなように、本発明の圧電体薄膜ウェハを上記実施の形態及び実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施の形態、実施例及び図示例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能であり、次に示すような変形例も可能である。
【0053】
上記実施例では、基板として、熱酸化膜付き(100)面Si基板2を用いたが、異なる面方位のSi基板、熱酸化膜なしのSi基板、SOI基板でも、上記実施例と同様の効果が得られる。また、Si基板に代えて、石英ガラス基板、GaAs基板、サファイア基板、あるいはステンレスなどの金属基板、MgO基板、SrTiO3基板、又は圧電性基板などを用いてもよい。KNN圧電体薄膜層5は、特に他の元素を添加していないが、5原子数%以下のLi(リチウム)、Ta、Sb(アンチモン)、Ca(カルシウム)、Cu(銅)、Ba(バリウム)、Ti等をKNN圧電体薄膜に添加してもよい。
【0054】
また、Si基板2とPt下部電極層3との間にTi密着層を形成したが、Tiに代えて、Taを密着層に用いてもよい。また、Ti密着層の厚さを1〜30nmの範囲としたが、基板の露出を防ぐための層として用いる場合には、30nmよりも厚く形成することができる。その一例としては、例えば、適用するデバイスによっては、Pt下部電極層を薄く形成したい場合がある。このような場合には、反応性ガスの混合比を制御することにより、KNN圧電体薄膜とPt下部電極層とのエッチング選択比を制御し、Pt下部電極層の削りすぎによる基板の露出を防ぐことが好ましいが、基板とPt下部電極層との間に50nmのTi層を設けることで、エッチングによる基板の露出を防ぐこともできる。
【0055】
また、KNN圧電体薄膜をArガスのみでエッチングする一例を示したが、例えば、KNN圧電体薄膜5の厚さを1μm未満としたときは、KNN圧電体薄膜5の面内の一部に削りムラ(削れ過ぎや削り残し)が見られる場合がある。これは、Arガスのみでのエッチングは、その反応(エッチング速度)が、1μm未満の厚さのKNN圧電体薄膜に対して速すぎ、エッチング制御が難しいためと考えられる。
このため、圧電体薄膜5の厚さが1μm未満である場合は、C48などのフッ素系反応ガスを混合して反応性イオンエッチングを行うことで、削りムラの少ない良好なエッチングが可能となる。また、エッチングガスの流量を制御することで、Na発光ピーク強度の時間変化の検知やエッチングの制御性の改善が可能となり、圧電体薄膜5の厚さが1μm未満であっても、初期の目的とする微細加工が得られる。
特に、厚さが200nm〜500nmと薄い圧電体薄膜を加工する際には、Arとフッ素系反応ガスとの割合を1:1とし、エッチング速度を落とすと共に、Pt下部電極層において選択的にエッチングを止めることで、良好な微細加工が可能になる。
【0056】
上記した実施の形態、又は実施例では、KNN圧電体薄膜をRFマグネトロンスパッタリング法により成膜した例を示したが、KNN圧電体薄膜の成膜はスパッタリング法に限定されるものではなく、下記変形例1、2のように、ゾルゲル法や、AD法により成膜された圧電体薄膜であっても、本発明の適用は可能である。
【0057】
[変形例1]
(ゾルゲル法により形成したKNN圧電体薄膜の加工)
ゾルゲル法やMOD法により圧電体層を形成する場合には、所望の組成式となるよう材料の組成比を調製した前駆体溶液を用いて塗布層を形成し、塗布層を結晶化することで圧電体層を形成する。例えば、Naを含む有機金属化合物としてナトリウムエトキシド、カリウムを含む有機金属化合物としてカリウムエトキシド、ニオブを含む有機金属化合物としてニオブエトキシドを用い、これらを所望のモル比となるよう混合し、さらにアルコールなどの有機溶媒を用いて溶解、分散して、前駆体溶液を作製する。
【0058】
変形例1では、カリウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、ニオブエトキシドを所定のモル比で混合して作製した前駆体溶液を、MgO基板上に塗布し、誘電体下地層、KNN圧電体薄膜を形成する。
具体的には、まず、誘電体下地層を形成するための下地層用前駆体溶液と、KNN圧電体薄膜を形成するためのKNN膜用前駆体溶液を用意する。次に、NbドープのSrTiO3基板上にスピンコート法により下地層用前駆体溶液を塗布し、ホットプレート上で乾燥、仮焼結した後、700℃でアニール処理を施す。次に、SrTiO3基板上に形成された誘電体下地層上に、スピンコート法によりKNN膜用前駆体溶液を、スピンコート法により塗布し、ホットプレートで乾燥、仮焼結後、700〜800℃でアニール処理を施し、結晶化させる。
各工程は、必要とする膜厚が得られるまで繰り返し行われ、例えば、50nm厚さの下地層、4μm厚さのKNN圧電体薄膜を有する圧電体薄膜ウェハを形成する。
【0059】
このゾルゲル法により形成したKNN圧電体薄膜に対し、マスクとしてTa(タンタル)を1.5μm厚さ形成し、本発明の加工方法を行ったところ、MgO基板の表面でエッチングを停止することができた。なお、変形例1では、下部電極を備えないフィルタデバイスを目的として加工を行っている。また、得られたKNN素子部の傾斜部のテーパ角θも、上記実施例と同様の範囲に形成された。また、バイアス電力、炉内圧力の調整によりテーパ角θの制御も可能であった。
【0060】
[変形例2]
(AD法により形成したKNN圧電体薄膜の加工)
次に、エアロゾルデポジション法(AD法)により形成したKNN圧電体薄膜の加工を検討した。主原料としては、所望のKNN圧電体薄膜の組成と同じ組成比の原料粉末を用い、ヘリウムガスを搬送ガスとして成膜を行った。また、副原料としてエアロゾルデポジション法で成膜されやすい誘電体の結晶粉体を混合してもよい。この場合、Al23などの副原料の混合は、主原料に対し重量比で3〜10%程度とする。
【0061】
変形例2においては、所望の下地層の組成比に合わせた下地層用原料粉末と、所望のKNN圧電体薄膜の組成比に合わせたKNN膜用原料粉末とを用意する。また、KNN膜用原料粉末には、Al23を副原料として混合しておく。
まず、Pt下部電極層が形成された基板を用意し、基板温度500℃として、下地層用原料粉末の吹き付けを行う。次に、基板温度を500℃に保ったまま、KNN膜用原料粉末の吹き付けを行う。その後、700℃〜800℃でアニール処理を行うことで、100nm厚さの下地層と、10μm厚さのKNN圧電体薄膜を有する圧電体薄膜ウェハを形成した。なお、基板としては、500nm厚さのPt層を形成したMgO基板を用いた。
【0062】
このAD法により形成したKNN圧電体薄膜に対し、マスクとしてW(タングステン)を2.0μm厚さ形成し、本発明の加工方法を行ったところ、上記スパッタにより成膜した圧電体薄膜と同様に、Pt層においてエッチングを制御性良く停止することができた。また、得られたKNN素子部の傾斜部のテーパ角θも、上記実施例と同様の範囲に形成された。また、バイアス電力、炉内圧力の調整によりテーパ角θの制御も可能であった。
【0063】
上述した圧電体薄膜ウェハの製造・加工方法を用いることにより、良好な微細加工が施されたアクチュエータ、センサ、フィルタデバイス、又はMEMSデバイスに適用できる圧電体薄膜素子が得られ、電圧検知手段又は印加手段を設けた圧電薄膜デバイスを従来品と同等以上の信頼性と、安価な製造コストとで作製することができる。アクチュエータとしては、インクジェットプリンタ用ヘッド、スキャナー、超音波発生装置などに用いることができる。センサとしては、ジャイロ、超音波センサ、圧カセンサ、速度・加速度センサなどに用いることができる。
【符号の説明】
【0064】
1 圧電体薄膜ウェハ
2 基板
3 下部電極層
4 下地層
5 圧電体薄膜層
6 マスクパターン
7 素子部
8 上部電極層
9 短冊型素子
10 カンチレバー型アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に組成式(K1-xNax)NbO3(0.7<x≦1.0)で表される下地層を形成する工程と、該下地層上に組成式(K1-xNax)NbO3(0.4≦x≦0.7)で表されるアルカリニオブ酸化物系ペロブスカイト構造の圧電体薄膜を形成する工程と、
前記基板上に形成された前記下地層及び前記圧電体薄膜に、Arを含むガスを用いてドライエッチングを行う工程と、
前記ドライエッチングにおいて放出されるイオンプラズマ中のNaの発光ピーク強度の変化を検出してエッチング速度を変更する工程とを有することを特徴とする圧電体薄膜ウェハの製造方法。
【請求項2】
前記エッチング速度を変更する工程は、前記ドライエッチングが前記下地層まで進行したときの前記Naの発光ピーク強度が強くなることを検出する工程を含む請求項1に記載の圧電体薄膜ウェハの製造方法。
【請求項3】
前記基板と前記下地層との間に下部電極層を備え、前記エッチング速度を変更する工程は、前記ドライエッチングが前記下部電極層まで進行したときの前記Naの発光ピーク強度の減衰を検出する工程を含む請求項2に記載の圧電体薄膜ウェハの製造方法。
【請求項4】
前記下部電極層として、Pt下部電極層を形成した請求項3に記載の圧電体薄膜ウェハの製造方法。
【請求項5】
前記ドライエッチングは、前記Arを含むガスにフッ素系反応ガスを混合したガスを用いて行う反応性イオンエッチングを含む請求項1〜4のいずれかに記載の圧電体薄膜ウェハの製造方法。
【請求項6】
前記圧電体薄膜ウェハのエッチング断面にフッ素化合物を形成する請求項5に記載の圧電体薄膜ウェハの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の前記圧電体薄膜ウェハの製造方法により得られる圧電体薄膜ウェハを個片化して形成することを特徴とする圧電体薄膜素子。
【請求項8】
請求項7に記載の前記圧電体薄膜素子と、電圧印加手段又は電圧検知手段とを備えることを特徴とする圧電体薄膜デバイス。
【請求項9】
基板上に形成された組成式(K1-xNax)NbO3(0.7<x≦1.0)で表される下地層と該下地層上に形成された組成式(K1-xNax)NbO3(0.4≦x≦0.7)で表されるアルカリニオブ酸化物系ペロブスカイト構造の圧電体薄膜にドライエッチングを行う工程と、
前記ドライエッチングにおいて放出されるイオンプラズマ中のNaの発光ピーク強度の変化を検出してエッチング速度を変更する工程とを有し、
前記エッチング速度を変更する工程は、前記ドライエッチングが前記下地層まで進行したときの前記Naの発光ピーク強度が強くなることを検出して行うことを特徴とする圧電体薄膜ウェハの加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−59852(P2012−59852A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200484(P2010−200484)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】