説明

圧電振動子の製造方法、該製造方法によって製造される圧電振動子、該圧電振動子を有する発振器、電子機器及び電波時計

【課題】各圧電振動子のベース基板とリッド基板の接合幅Lの値を小さくする。
【解決手段】ベース基板用ウエハ40に、2つの貫通電極7を備えたベース基板2を複数形成し、各ベース基板2に、圧電素子片4をマウントする。また、リッド基板用ウエハ50には、凹部3aを備えたリッド基板3を複数形成し、接合膜35を形成する。このベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とを突き合わせ、陽極接合することで複数の圧電振動子1からなるウエハ体60を作製する。その後、リッド基板用ウエハ50側に、各圧電振動子1の切断線に沿って、レーザを照射して切れ目を入れ、反対側から鋭利な押圧刃830で押圧することで、順次切断する。このようにレーザによる切れ目を反対側から押圧することで切断面を綺麗に割ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子の効率的製造、及びその製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファレンス信号源等として、水晶等を利用した圧電振動子が用いられている。
この圧電振動子は、互いに接合されたベース基板及びリッド(蓋)基板と、両基板の間に形成されたキャビティ(空洞部)C内に封止された圧電振動片と、を備えている。
【0003】
このような圧電振動子を製造する場合、圧電振動子を個別に製造するのではなく、連続した複数の圧電振動子を一度製造し、その後個別の圧電振動子に切断することで量産性を高めるようにしている。
具体的には、図19に示すように、複数のベース基板とリッド基板をそれぞれ形成したベース基板用ウエハと、リッド基板用ウエハからなる圧電振動子群ウエハ400を作成する。その後、点線で示した切断線M(仮想線)に添って切断することで、各々の圧電振動子を製造する。
【0004】
ところで、ガラス基板による圧電振動子群ウエハ400を切断する方法として特許文献1には、ブレードを使用して切断することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−88621
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、図19、20に示すように、ブレードを使用して各圧電振動子200を切断する場合、ブレード300の厚みによる切断しろとして、150μm〜200μm必要になる。このため、チップ(圧電振動子)の取り個数が少なくなるか、又はベース基板用ウエハとリッド基板用ウエハのサイズを大きくする必要がある。
また、ブレード300による切断の際の振動と衝撃により切断面にクラック209が発生する。さらにベース基板201とリッド基板202の接合が、振動や衝撃に対応出来るだけの強度を得るために、接合面の幅(図20のL)を広くする必要があり、従来では200μm以上の接合幅を必要としていた。
この接合面の幅Lが広くなると、各圧電素子のキャビティCが小さくなったり、ウエハサイズを大きくしなければならなくなるという問題がある。
【0007】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、各圧電振動子のベース基板とリッド基板を接合したウエハ体の切りしろを小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)請求項1記載の発明では、互いに接合されたベース基板とリッド基板との間に形成されたキャビティ内に圧電振動片が封止された圧電振動子を、ベース基板用ウエハとリッド基板用ウエハとを用いて複数製造する方法であって、前記リッド基板用ウエハ及び前記ベース基板用ウエハの少なくとも一方に、両ウエハが重ね合わされたときに前記キャビティを形成するキャビティ用の凹部を複数形成する凹部形成工程と、前記ベース基板用ウエハに、該ウエハを貫通する一対の貫通電極を複数形成する貫通電極形成工程と、前記複数の圧電振動片を、該圧電振動片に形成された一対の電極と前記一対の貫通電極とが電気的に接続する状態で、前記ベース基板用ウエハの上面に接合するマウント工程と、前記キャビティに前記圧電振動片を収納する状態で、前記ベース基板用ウエハと前記リッド基板用ウエハとを接合してウエハ体を形成する接合工程と、前記ベース基板用ウエハの下面に、前記一対の貫通電極にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極を複数形成する外部電極形成工程と、前記形成したウエハ体を切断して、前記圧電振動片を収納した複数の前記圧電振動子に小片化する切断工程と、を備え、前記切断工程は、前記ウエハ体における、前記ベース基板用ウエハ側の外面、又は前記リッド基板用ウエハ側の外面にレーザを照射して切断線に添った縦及び横方向の切れ目を複数形成する切れ目形成工程と、前記切れ目の形成面と逆の面側から前記ウエハ体に押圧力を加えることで、前記切れ目に沿って前記ウエハ体を順次切断するブレイク工程と、を備えることを特徴とする圧電振動子の製造方法を提供する。
(2)請求項2記載の発明では、前記ブレイク工程は、切断対象とする前記切れ目を順次決定し、前記切れ目の形成面と逆の面から、前記決定した切れ目に対応する位置を、前記ウエハ体の最大径よりも大きい長さの押圧刃で押圧することにより前記ウエハ体を順次切断する、ことを特徴とする請求項1に記載の圧電振動子の製造方法を提供する。
(3)請求項3記載の発明では、前記ブレイク工程は、前記ウエハ体を、前記圧電振動子の短手方向に形成した切れ目に沿って順次切断した後に、前記圧電振動子の長手方向に形成した切れ目に沿って順次切断する、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の圧電振動子の製造方法を提供する。
(4)請求項4記載の発明では、前記ブレイク工程は、互いに平行に並んだ複数の前記切れ目に対して、端から4本目の切れ目毎に切断する第1段階と、前記第1段階で切断された各切断片に形成されている3本の切れ目の中央を切断する第2段階と、前記第1段階で切断された各切断片に形成されている1本の切れ目を切断する第3段階と、から構成されることを特徴とする請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の圧電振動子の製造方法を提供する。
(5)請求項5記載の発明では、前記切断工程は、前記ウエハ体の、前記切れ目を形成した面に、伸縮性を有するフィルムを貼り付け、当該フィルム側を平面状の弾性体上に載置した状態で、前記フィルムと逆側の面を押圧して前記ウエハ体を切断する、ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1の請求項に記載した圧電振動子の製造方法を提供する。
(6)請求項6記載の発明では、前記切れ目形成工程は、前記凹部が形成されている側から前記ウエハ体の画像を取得し、該画像の濃淡から、切断する位置を決定する、ことを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1の請求項に記載した圧電振動子の製造方法を提供する。
(7)請求項7記載の発明では、請求項1から請求項6のうちのいずれか1の請求項に記載した圧電振動子の製造方法で製造されたことを特徴とする圧電振動子を提供する。
(8)請求項8記載の発明では、請求項7に記載の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器を提供する。
(9)請求項9記載の発明では、請求項7に記載の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器を提供する。
(10)請求項10記載の発明では、請求項7に記載の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本願発明によれば、形成したウエハ体を切断して、圧電振動片を収納した複数の圧電振動子に切断する際に、ウエハ体の一方の外面にレーザを照射して切断線に添った縦及び横方向の切れ目を複数形成し、当該切れ目の形成面と逆の面側からウエハ体に押圧力を加えることで、切れ目に沿ってウエハ体を順次切断するので、ウエハ体の切りしろを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る圧電振動子の一実施形態を示す外観斜視図である。
【図2】図1に示す圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図である。
【図3】図2に示すA−A線に沿った圧電振動子の断面図である。
【図4】図1に示す圧電振動子の分解斜視図である。
【図5】図1に示す圧電振動子を構成する圧電振動片の上面図である。
【図6】図5に示す圧電振動片の下面図である。
【図7】図5に示す断面矢視B−B図である。
【図8】図1に示す圧電振動子を製造する際の流れを示すフローチャートである。
【図9】図8に示すフローチャートに沿って圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、リッド基板の元となるリッド基板用ウエハに複数の凹部及び接合膜を形成した状態を示す図である。
【図10】図8に示すフローチャートに沿って圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、ベース基板の元となるベース基板用ウエハに凹部、貫通電極及び引き回し電極を形成した状態を示す図である。
【図11】図10に示す状態のベース基板用ウエハの全体図である。
【図12】図8に示すフローチャートに沿って圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、陽極接合工程を説明する図である。
【図13】図8に示すフローチャートに沿って圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、圧電振動片をキャビティ内に収容した状態でベース基板用ウエハと接合膜とが陽極接合されたウエハ体の分解斜視図である。
【図14】図8に示すフローチャートに沿って圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、切断工程を説明する図である。
【図15】切断工程において、切断順番を説明するための図である。
【図16】本発明に係る発振器の一実施形態を示す構成図である。
【図17】本発明に係る電子機器の一実施形態を示す構成図である。
【図18】本発明に係る電波時計の一実施形態を示す構成図である。
【図19】従来のウエハに複数の圧電振動子を形成した状態の図である。
【図20】従来のウエハを切断した状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明における好適な実施の形態について、図1から図18を参照して、圧電振動子の製造方法、該製造方法によって製造される圧電振動子、該圧電振動子を有する発振器、電子機器及び電波時計を例に説明する。
(1)実施形態の概要
ガラス材、例えば、ソーダ石灰ガラスによるベース基板用ウエハ40と、リッド基板用ウエハ50を作成する。ベース基板用ウエハ40には、2つの貫通電極7を備えたベース基板2が複数形成される。リッド基板用ウエハ50には、キャビティCを形成する凹部3aを備えたリッド基板3が、各ベース基板2に対応して複数形成され、凹部3a側の面には接合膜35が形成される。
このベース基板用ウエハ40の各ベース基板2には、圧電振動片4がマウントされる。そして、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とが、凹部3aが形成するキャビティC内に圧電振動片4を収容するように突き合わせ、これを陽極接合することで複数の圧電振動子1からなるウエハ体60を作製する。
【0012】
その後、リッド基板用ウエハ50側に、各圧電振動子1の切断線に沿って、レーザを照射し、切れ目を入れる。
そして、切れ目と反対側、即ち、ベース基板用ウエハ40側から、切れ目に対応する位置を先端が鋭利な押圧刃832で押圧することで、順次切断する。このようにレーザによる切れ目を反対側から押圧することで切断面を綺麗に割ることができる。
なお、押圧刃832による切断は、縦方向(圧電振動子1の長手方向)の切断線に沿って順次切断し、全ての縦方向の切断が終了した後に横方向の切断線に沿って順次切断する。
【0013】
(2)実施形態の詳細
図1〜図4は、圧電振動子1の構成を表したものである。
この図に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、主としてベース基板2と、リッド基板3と、圧電振動片4とから構成されている。
圧電振動子1は、間にキャビティCを形成するように重ね合わせられたベース基板2およびリッド基板3を備えるパッケージ9と、キャビティC内に収容され後述する引き回し電極(内部電極)36,37に電気的に接続された圧電振動片4と、を備えた表面実装型(SMD、Surface Mount Device)のものである。
図示した本実施形態では、リッド基板3側に凹部3aを形成することでキャビティCを形成しているが、ベース基板2側に凹部を形成することで、またベース基板2とリッド基板3の両方に凹部を形成することでキャビティCを形成するようにしてもよい。
なお図3および図4においては、図面を見易くするために、圧電振動片4の励振電極15、引き出し電極19,20、マウント電極16,17及び重り金属膜21の図示を省略している。
【0014】
(A)圧電振動片
図5〜図7に示すように、圧電振動片4は、水晶やタンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動する。この圧電振動片4は、平行に配置された一対の振動腕部10、11と、該一対の振動腕部10、11の基端側を一体的に固定する基部12と、一対の振動腕部10、11の基端部の外表面上に形成されて一対の振動腕部10、11を振動させる第1励振電極13と第2励振電極14とからなる励振電極15と、第1励振電極13及び第2励振電極14に電気的に接続されたマウント電極16,17とを有している。また圧電振動片4は、一対の振動腕部10、11の両主面上に、該振動腕部10、11の長手方向に沿ってそれぞれ形成された溝部18を備えている。この溝部18は、振動腕部10、11の基端側から略中間付近まで形成されている。
圧電振動片4は、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された公知の音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
図5、6に示すように、圧電振動片4は、平行に配置された一対の振動腕部10、11と、振動腕部10、11の基端側を一体的に固定する基部12と、振動腕部10、11の外表面上に形成されて一対の振動腕部10、11を振動させる第1励振電極13と第2励振電極14とからなる励振電極15と、第1励振電極13及び第2励振電極14に電気的に接続されたマウント電極16、17とを有している。
また、本実施形態の圧電振動片4は、一対の振動腕部10、11の両主面上に、各振動腕部10、11の長手方向に沿ってそれぞれ形成された溝部18を備えている。この溝部18は、各振動腕部10、11の基端側から略中間付近まで形成されている。
【0015】
第1励振電極13と第2励振電極14とからなる励振電極15は、一対の振動腕部10、11を互いに接近又は離間する方向に所定の共振周波数で振動させる電極であり、一対の振動腕部10、11の外表面に、それぞれ電気的に切り離された状態でパターニングされている。具体的には、第1励振電極13が、一方の振動腕部10の溝部18上と他方の振動腕部11の両側面上とに主に形成され、第2励振電極14が、一方の振動腕部10の両側面上と他方の振動腕部11の溝部18上とに主に形成されている。
【0016】
また、第1励振電極13及び第2励振電極14は、基部12の両主面上において、それぞれ引き出し電極19、20を介してマウント電極16、17に電気的に接続されている。そして、このマウント電極16、17を介して圧電振動片4に電圧が印加される。
なお、上述した励振電極15、マウント電極16、17及び引き出し電極19、20は、例えば、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)やチタン(Ti)等の導電性膜の被膜により形成されている。
【0017】
また、一対の振動腕部10、11の先端部には、自身の振動状態を所定の周波数の範囲内で振動するように質量調整(周波数調整)を行うための重り金属膜21が被膜されている。
なお、この重り金属膜21は、周波数を粗く調整する際に使用される粗調膜21aと、微小に調整する際に使用される微調膜21bとに分かれている。粗調膜21aは微調膜21bよりも振動腕部10、11の先端部側に形成されている。
これら粗調膜21a及び微調膜21bを利用して周波数調整を行うことで、一対の振動腕部10、11の周波数をデバイスの公称(目標)周波数の範囲内に収めることができる。
【0018】
このように構成された圧電振動片4は、図3に示すように、導電性接着剤でベース基板2の上面(キャビティC側の面)に接合されている。
具体的には、ベース基板2の内面(上面、リッド基板3が接合される接合面)にパターニング(形成)された引き回し電極36,37と、圧電振動片4の一対のマウント電極16,17とがそれぞれ金等のバンプBを利用してバンプ接合されている。
これにより、圧電振動片4は、ベース基板2の上面と離間して浮いた状態で支持されると共に、マウント電極16、17と引き回し電極36、37とがそれぞれバンプBを介して電気的に接続されている。
なお、図4では図面を見やすくするために、バンプBは省略されている。
【0019】
本実施形態では、バンプBにより圧電振動片4の振動腕部10、11がベース基板2から離間した状態としているが、ベース基板2の内側(リッド基板3に対向している側)にも、振動腕部10、11に対応する領域に凹部を形成し、この凹部による段差によって振動腕部10、11をベース基板2から離間させるようにしてもよい。
この場合、ベース基板2に形成した凹部もキャビティCを形成することになる。
【0020】
(B)圧電振動子
図1〜図4に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、ベース基板2とリッド基板3とが2層に積層されてなるパッケージ9を備えている。
ベース基板2は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明な絶縁基板であり、板状に形成されている。本実施形態のベース基板2は、例えば400μmの厚さに形成されている。
【0021】
図2および図3に示すように、このベース基板2には、該ベース基板2を厚さ方向に貫通してキャビティC内で開口する1つのスルーホール(貫通孔)30が形成されている。
スルーホール30は、圧電振動片4の基部12が配置される側に形成されている。スルーホール30は、基部12のベース基板2側に形成された両マウント電極16、17の少なくとも一部を含むように、長円形(もしくは楕円形)をしている。そして、スルーホール30は、ベース基板2の下面から上面(キャビティC側)に向かって漸次(水平方向断面が小さくなるように)縮径した断面テーパ形状に形成されている。
【0022】
なお、スルーホールの形状についてはこれに限られず、図3とは逆に、即ち、キャビティC側の面積が小さく、ベース基板2の下面(外側)に向かって大きくなるように形成してもよい。
また、例えば軸線方向(ベース基板2の厚さ方向)にわたって、水平断面のサイズが同一の略長円筒状のスルーホールでも構わない。本実施形態では、長円筒径とすることで、スルーホール30の容積を小さくすることができ、これによりスルーホール30内に充填する低融点ガラスの量を少なくすることができる。これは、後述するように1つのスルーホール30に2つの貫通電極7を配置するために、長円筒径とすることで、低融点ガラスを埋め込む際に必要な開口面積が充分確保できているためである。
【0023】
そしてスルーホール30内には、スルーホール30を埋めるように封止ガラス6と、マウント電極16,17と外部電極間を電気的に接続する2本の貫通電極7、7が配設されている。
封止ガラス6は、ペースト状のガラスフリットが焼成されたもので、焼成によって内部に配置された貫通電極を固定した状態でスルーホール30と強固に固着するとともに、スルーホール30を完全に塞いでキャビティC内の気密性を維持している。
貫通電極7、7は、例えば、42アロイ合金により円柱状に形成された導電性の芯材であり、封止ガラス6と同様に両端が平坦で且つベース基板2の厚みと略同じ厚さとなるように形成されている。
【0024】
ベース基板2の外面には、一方の貫通電極7に対する電気的に接続される外部電極38が形成されている。
またベース基板2の外面には、他方の貫通電極7に対する外部電極39が形成され、この貫通電極7と外部電極39間は、パターニング(形成)された引き回し電極37bによって電気的に接続されている。
【0025】
図1、図3及び図4に示すように、リッド基板3は、ベース基板2と同様にガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明の絶縁基板であり、図1〜図4に示すように、ベース基板2に対して重ね合わせ可能な大きさで板状に形成されている。
そして、リッド基板3の内面(下面、ベース基板2と対向する面)には、圧電振動片4が収まる矩形状の凹部3aが形成されている。この凹部3aは、両基板2、3が重ね合わされたときに、圧電振動片4を収容するキャビティCとなるキャビティ用の凹部である。 そして、リッド基板3は、この凹部3aをベース基板2側に対向させた状態でベース基板2に対して接合されている。
【0026】
また、図1〜図4に示すように、本実施形態のパッケージ9(圧電振動子1)は、リッド基板3においてベース基板2側を向く面に全面にわたって形成され、ベース基板2と接する部分でベース基板2と陽極接合された接合膜35を備えている。
図3に示すように、本実施形態の接合膜35は、リッド基板3の、ベース基板2に対向する側の面全面に形成されている。即ち、接合膜35は、凹部3aを画成する面と、リッド基板2の内面において凹部3aの外周縁に全周にわたって連なる周縁部と、の各全域にわたって形成されている。
そして、接合膜35のうち、リッド基板3の内面の周縁部に形成された部分がベース基板2に陽極接合されている。接合膜35は、陽極接合可能な材料(例えばアルミニウム、シリコン、クロムなど)で形成されている。
【0027】
なお、実施形態では、接合膜35の全面に形成する場合について説明したが、ベース基板2と当接するリッド基板3の外周面にだけ形成するようにしてもよい。
また、接合膜35をベース基板2の、リッド基板3に当接する外周面に形成するようにしてもよい。
【0028】
このように構成された圧電振動子1を作動させるには、ベース基板2に形成された外部電極38,39に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片4の第1励振電極13及び第2励振電極14からなる励振電極15に電圧を印加することができ、一対の振動腕部10、11を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部10、11の振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0029】
(C)圧電振動子の製造方法
次に、ベース基板用ウエハ(ベース基板)40とリッド基板用ウエハ(リッド基板)50とを利用して、圧電振動子1を一度に複数製造する製造方法について以下に説明する。
図8は、圧電振動子1を複数製造する方法を表したフローチャートである。
【0030】
なお本実施形態では、ウエハ状の基板を利用して圧電振動子1を一度に複数製造するが、これに限られたものではなく、例えば予めベース基板2及びリッド基板3の外形に寸法を合わせたものを加工して、一度に一つのみ製造する等しても構わない。
この場合、本実施形態によるレーザによる切り欠きと押圧刃832の押圧による切断方法は、ベース基板用ウエハ40、リッド基板用ウエハ50を各ベース基板2、リッド基板3のサイズに切断する際に使用する。この場合の本実施形態による切断方法は、ベース基板用ウエハ40に複数のベース基板2を作製した後に使用し、またリッド基板用ウエハ50に複数のリッド基板3を作製した後に使用してもよい。
【0031】
圧電振動子1を複数製造する方法では、圧電振動片作製工程(S10)、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)、ベース基板用ウエハ作製工程(S30)を最初に行うが、これらの3工程については、どの順番で行ってもよく、同時並行して行ってもよい。
【0032】
初めに、図5から図7に示す圧電振動片4を作製する圧電振動片作製工程(S10)について説明する。
まず水晶のランバート原石を所定の角度でスライスして一定の厚みのウエハとする。
続いて、このウエハをラッピングして粗加工した後、加工変質層をエッチングで取り除き、その後ポリッシュ等の鏡面研磨加工を行って、所定の厚みのウエハとする。
続いて、ウエハに洗浄等の適切な処理を施した後、該ウエハをフォトリソグラフィ技術によって圧電振動片4の外形形状でパターニングすると共に、金属膜の成膜及びパターニングを行って、励振電極15、引き出し電極19、20、マウント電極16、17、重り金属膜21を形成する。
以上により、複数の圧電振動片4を作製することができる。
【0033】
また、圧電振動片4を作製した後、共振周波数の粗調を行っておく。これは、重り金属膜21の粗調膜21aにレーザ光を照射して一部を蒸発させ、重量を変化させることで行う。
なお、共振周波数をより高精度に調整する微調に関しては、マウント後に行う。これについては、後に説明する。
【0034】
次に、後にリッド基板3となるリッド基板用ウエハ50を、陽極接合を行う直前の状態まで作製するリッド基板用ウエハ作製工程(第1のウエハ作製工程)(S20)について説明する。
まず、ソーダ石灰ガラスを所定の厚みまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のリッド基板用ウエハ50を形成する(S21)。
次いで、図9に示すように、リッド基板用ウエハ50の内面に、エッチング、軟化点温度以上での型押し成形等により行列方向にキャビティC用の凹部3aを複数形成する凹部形成工程を行う(S22)。
なお、この凹部形成工程は、ベース基板2のスルーホールを形成する工程と同様に、リッド基板用ウエハ50の軟化点温度以上に加熱した状態で、凹部3aに対応した凸部を備えた成形型を押圧することで凹部3aを形成してもよい。
【0035】
次いで、凹部3aが形成されたリッド基板用ウエハ50の内面側の全域にわたって接合膜35を形成する接合膜形成工程を行う(S23)。
この際、例えば蒸着やスパッタリング等により接合膜35を形成する。
この時点で、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)が終了する。
【0036】
次に、後にベース基板2となるベース基板用ウエハ40を、陽極接合を行う直前の状態まで作製するベース基板用ウエハ作製工程(第2のウエハ作製工程)(S30)について説明する。
まず、ソーダ石灰ガラスを所定の厚みまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のベース基板用ウエハ40を形成する(S31)。
【0037】
次いで、ベース基板用ウエハ40に、一対の貫通電極7、7を複数形成する貫通電極形成工程を行う(S32)。
具体的には、まず、各キャビティCに対応する領域の長手方向一端側にスルーホール30を、サンドブラスト法、軟化点温度以上での型押し成形(プレス加工)等の方法で、各ベース基板2に対応して複数形成する。
そして、これら複数のスルーホール30内に、一対の貫通電極7、7を配置し、スルーホール30に粉末ガラス(低融点ガラス)を充填し焼成することで、貫通電極7、7を固定した状態でスルーホール30と強固に固着する。その後、貫通電極7、7の端面が表面に出るようにベース基板2の両面を研磨することで、ベース基板用ウエハ40の内面側と外面側との電気導通性が確保される。
次に、図10及び図11に示すように、ベース基板用ウエハ40の内面に導電性材料をパターニングして、各一対の貫通電極7、7にそれぞれ電気的に接続された引き回し電極36、37を複数形成する引き回し電極形成工程を行う(S33)。
なお、図10及び図11に示す点線Mは、後に行う切断工程で切断するラインを仮想的に表した切断線である。
この時点でベース基板用ウエハ作製工程(S30)が終了する。
【0038】
圧電振動子1を複数製造する方法では、圧電振動作製工程(S10)、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)及び、ベース基板用ウエハ作製工程(S30)の後、マウント工程(圧電振動片実装工程)を行う(S40)。
このマウント工程は、後述する重ね合わせ工程においてキャビティC内に圧電振動片4が収容されるように、圧電振動片4を引き回し電極36,37に電気的に接続する工程である。
本実施形態では、作製した複数の圧電振動片4を、それぞれ引き回し電極36、37、及びバンプBを介してベース基板用ウエハ40の内面側に接合する。これにより、圧電振動片4は、マウント電極16、17と引き回し電極36、37とが電気的に接続された状態となる。よって、この時点で圧電振動片4の一対の励振電極15は、一対の貫通電極7、7に対してそれぞれ導通した状態となる。
【0039】
次に、図12に示すように、リッド基板用ウエハ50の内面とベース基板用ウエハ40の内面とを重ね合わせ、ベース基板用ウエハ40の外面を陽極接合用の電極台部70上に配置する配置工程を行う(S50)。
【0040】
ここで、配置工程の説明にあたり、まず陽極接合用の電極台部70について説明する。
図12に示すように、電極台部70は、図示しない陽極接合装置の内部に設けられた陽極接合用の印加手段74が有する一対の電極のうち、マイナス端子として機能する一方の電極を構成している。また図示の例では、前記一対の電極のうちのプラス端子として機能する他方の電極は、接合膜35に電気的に接続される膜用電極74aとなっている。なお図12では、ベース基板用ウエハ40およびリッド基板用ウエハ50それぞれにおいて、1つ分の圧電振動子1に相当する部分を図示している。
【0041】
電極台部70は、平面視でベース基板用ウエハ40と同等もしくはベース基板用ウエハ40よりも大きくなるように形成された導電性の板状部材であり、例えばステンレス鋼(SUS)等で構成される。
なお、電極台部70のベース基板用ウエハ40が載置される面には、各貫通電極7、7に対応する位置に凹部を形成することで貫通電極7、7が電極台部70に接触しないようにすることもできる。
また、本実施形態における電極台部70は、印加手段74が有する一対の電極のうちのマイナス端子として機能する場合について説明したが、プラス端子として機能しても良い。
【0042】
次に、配置工程(S50)について詳細に説明する。
まず、図12に示すように、ベース基板用ウエハ40に対してリッド基板用ウエハ50を重ね合わせる重ね合わせ工程を行う(S51)。なお、図12については、1つ分の圧電振動子1について表示しているので、ベース基板用ウエハ40に代えてベース基板2、リッド基板用ウエハ50に代えてリッド基板3の状態を表している。
具体的には、図示しない基準マーク等を指標としながら、両ウエハ40、50を正しい位置にアライメントする。これにより、マウントされた圧電振動片4が、両ウエハ40、50で囲まれるキャビティC内に収容された状態となる。
【0043】
次いで、重ね合わせた両ウエハ40、50を前記陽極接合装置に入れ、ベース基板用ウエハ40を電極台部70上に載置(配置)するセット工程を行う(S52)。
この際、接合膜35においてベース基板用ウエハ40と接する部分はその全域にわたって、電極台部70との間にベース基板用ウエハ40を挟み込んでいる。
また本実施形態では、セット工程時に、印加手段74の膜用電極74aを接合膜35に電気的に接続する。
以上で配置工程が終了する。
【0044】
次いで、接合温度に加熱しつつ、接合膜35と電極台部70との間に接合電圧(例えば、600V〜800V)を印加して、接合膜35とベース基板用ウエハ40とを陽極接合する陽極接合工程を行う(S55)。
ここで、本実施形態の陽極接合工程では、接合温度に加熱しつつ電極台部70と接合膜35との間に接合電圧を印加する。
【0045】
すると、接合膜35とベース基板用ウエハ40との界面に電気化学的な反応が生じ、両者が陽極接合することとなる。これにより、圧電振動片4はキャビティC内に封止され、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とが接合した図13に示すウエハ体60を得ることができる。
なお、図13においては、図面を見易くするために、ウエハ体60を分解した状態を図示しており、図13に示す点線Mは、後に行う切断工程で切断する切断線を図示している。
【0046】
陽極接合工程が終了した後、外部電極形成工程(S60)を行う。
この外部電極形成工程では、ベース基板用ウエハ40の外面に導電性材料をパターニングして、一対の貫通電極7、7にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極38、39を複数形成する。
なお、外部電極38、39はそれぞれ圧電振動子1毎に、その長手方向の両端側に配置されている。一方、一対の貫通電極7、7は圧電振動片4の基部12側、すなわち、外部電極側に形成されている。そのため、一方の貫通電極7は直接外部電極38に接続され、他方の貫通電極7は外部の引き回し電極37bを介して外部電極38と接続されている。
引き回し電極37bも、外部電極38、39と同様に導電性材料のパターニングにより形成される。
この工程により、外部電極38、及び、引き回し電極37bと外部電極39を利用してキャビティC内に封止された圧電振動片4を作動させることができる。
【0047】
次に、ウエハ体60の状態で、キャビティC内に封止された個々の圧電振動片4の周波数を微調整して所定の範囲内に収める微調工程を行う(S70)。具体的に説明すると、ベース基板用ウエハ40の外面に形成された一対の外部電極38、39に電圧を印加して圧電振動片4を振動させる。そして、周波数を計測しながらベース基板用ウエハ40を通して外部からレーザ光を照射し、重り金属膜21の微調膜21bを蒸発させる。これにより、一対の振動腕部10、11の先端側の重量が変化するので、圧電振動片4の周波数を、公称周波数の所定範囲内に収まるように微調整することができる。
【0048】
なお、この微調工程(S70)は、後述する切断工程(S80)により個々の圧電振動子1に小片化した後に行う工程順序でも構わない。
但し、上述したように、微調工程(S70)を先に行うことで、ウエハ体60の状態で微調を行うことができるので、複数の圧電振動子1をより効率よく微調することができる。よって、スループットの向上化を図ることができるので好ましい。
【0049】
周波数の微調が終了した後、接合されたウエハ体60を図13に示す切断線Mに沿って切断して小片化する切断工程を行う(S80)。
図14は、切断工程を表したものである。なお、図14では、図面を見やすくするために、短手方向に並んだ2つの圧電振動子1の断面についてその一部を表示している。
切断工程では、切断線Mに添って切れ目を入れるスクライブ工程(S81)、切れ目を入れた側の面にセパレータを貼り付けるセパレータ貼り工程(S82)、及び切れ目の反対側から切れ目に添って押圧することで切断するブレイク工程(S83)が行われる。
以下各工程について詳説する。
【0050】
(a)スクライブ工程(S81)
このスクライブ工程では、図14(a)に示すように、リング811の一方の面に貼られたUVテープの接着面にウエハ体60を貼り付ける。この場合、ベース基板用ウエハ40側を接着し、リッド基板用ウエハ50側を上側、即ち、切り欠き側とする。
次に、図示しないカメラで撮像した画像(ビジョン)で切断箇所を次の方法で決定する。即ち、リッド基板用ウエハ50には凹部3aが形成されているため、リッド基板用ウエハ50側の画像には、キャビティCの部分と陽極接合している部分とで濃淡がでる。このため、濃い部分の中心を切断箇所(切れ目)とすることで、切断位置を正確に特定することができる。
【0051】
そして、画像の濃淡から切断箇所を順次確認しながら、切断線Mに添ってレーザ光を照射することで、リッド基板用ウエハ50の上面に切れ目(微少な切り欠き)813を形成する。このレーザによる切り欠き幅は10μm(±3μm)程度である。
なお、図11、図13に示した仮想の切断線Mは、圧電振動子1の切り取りサイズを表すためのものであるため、圧電振動子1に関与しない基板用ウエハの周囲部分について表示していないが、レーザ照射による切り欠きは切断線Mを延長したウエハ全体(全長)に渡って形成される。
【0052】
切断箇所の確定については、上記濃淡による方法に限らず、ウエハ体60の位置および向きを確認し、ウエハ体60に形成された所定の基準点からの距離によって切断箇所を決定するようにしてもよい。
この方法によれば、リッド基板用ウエハ50から撮像した画像の濃淡から決定する場合に比べて位置精度は低くなる。しかし、キャビティC用の凹部が形成されていないために濃淡がです、また引き回し電極37bと外部電極38、39による電極パターンが写ってしまうベース基板用ウエハ40側に、レーザによる切れ目813を形成することができる。
ベース基板用ウエハ40側に切れ目813を形成した場合には、後述のブレイク工程では、切れ目813の反対側であるリッド基板用ウエハ50側を押圧して切断する。即ち、図14における、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50の両面を逆にした工程を行うことになる。
【0053】
(b)セパレータ貼り工程(S82)
このセパレータ貼り工程では、まずスクライブ工程により出た切り欠き屑を取り除くため、リッド基板用ウエハ50上を洗浄し、乾燥させる。なお、表面の切り屑は、エアを吹き付けるエアブロウによって取り除くようにしてもよく(エア洗浄)、この場合には乾燥は不要である。
表面を洗浄した後、切れ目813を付けたリッド基板用ウエハ50の全面を覆うように、伸縮性を有する透明のセパレータ821を貼り付ける。このセパレーターとしては、UVテープを使用するが、他の粘着材が塗布されたテープを使用してもよい。
【0054】
(c)ブレイク工程(S83)
次に、ウエハ体60の上下を逆にして、透明ラバー830の上に載せる。すなわちリッド基板用ウエハ50に貼ったセパレータ821を下側にし、ベース基板用ウエハ40に貼ったUVテープ812を反対側(上側)にして、透明ラバー上に載置する。
透明ラバー830は、ウエハ体60が押圧された場合のクッションとして機能する材料、例えば、シリコンが使用される。また、下側からカメラ831によりリッド基板用ウエハ50に付けた切れ目813を認識できるようにするために透明な材料が使用される。
【0055】
つぎに、透明ラバー830の下側からカメラ831でリッド基板用ウエハ50を撮影し、その画像から、切断方向の切れ目813を検出し、検出した切れ目の反対側の位置に押圧刃832を移動して位置合わせを行う。
押圧刃832を徐々に下げベース基板用ウエハ40を切れ目813の反対側から押圧する(圧力をかける)。これにより、ベース基板用ウエハ40に接触した押圧刃832を支点としてウエハ体60がたわみ、レーザによる切れ目813に添って綺麗に割ることができる。
ここで使用する押圧刃832は、先端が鋭利な直線状の刃を有している。そして、ウエハ体60の最大径よりも長い刃長を有しているので1本の切れ目813の全長に渡って1度に押圧し、割ることができる。
この切断の際、ウエハ体60の両側面にはUVテープ812、セパレータ821が密着状態で貼り付けられているので、割れた際のガラス片が各圧電振動子1の表面を傷つけたり、周りに散乱することが防止される。
また、切断の際、切れ目813部分がたわむが、セパレータは伸縮性を有するため破れることはなく、従って、破れた箇所からガラス片が散ることもない。
【0056】
以上の方法により、1本の切れ目(切り欠き)813について切断する。
次に、ブレイク工程S83において、縦横に形成した複数の切れ目813に添って切断する順番について、図15を参照して説明する。
押圧刃832の押圧による切断は、最初に圧電振動子1の短手方向(以下横向という)に添って切断する。横方向の全ての切断が終了した後、ウエハ体60を90度回転し、圧電振動子1の長手方向(以下縦向という)に添って切断する。これにより全圧電振動子1の切断が完了する。
【0057】
このように本実施形態のブレイク工程(S83)では、横方向を先に切断した後に縦方向の切断を行うが、その逆、即ち、縦方向を先に切断した後に横方向を切断するようにしてもよい。
ただし、以上の理由により横方向を先に切断するのが好ましい。
即ち、縦方向のピッチ(圧電振動子1の短手方向の幅に該当)は、例えば1.5mmであるのに対し、横方向のピッチ(圧電振動子1の長手方向の幅)の方が例えば、3.2mmと長い。
そして、縦方向を切断する場合、縦方向切断の最後の段階で(後述する)縦2列の中心を押圧して切断することになる(横方向も同じ)。
このため、縦方向を先に切断すると、各圧電振動子1が縦方向に連なった(切断前の)状態で縦2列の中心を押圧して切断することになる。この場合、押圧刃に対する横方向の幅が狭いために押圧力を僅かに大きくする必要があり、各圧電振動子1に不要な歪みや圧力を加えてしまう可能性がある。
これに対して、縦方向を後に切断する場合には、既に各圧電振動子1は縦方向に連なっていない(既に切断されている)ため、押圧刃832による押圧力は1対の圧電振動子1毎に作用させることができるため、通常の押圧力でも充分に切断することができる。
なお、横方向を先に切断する場合も同様に、各圧電振動子1が横方向に連なった(切断前の)状態で横2列の中心を押圧して切断することになるが、この場合には、押圧刃に対する横方向の幅が大きいため通常の押圧力でも充分に連なった状態での切断をすることができる。
【0058】
次に、横方向の切断をする場合の順番、及び、縦方向の切断をする順番について図15を参照して説明する。なお、図15に示したウエハ体60の右側には、横方向から切断する順番を、下側には縦方向から切断する順番を、それぞれ図示してある。
横方向に切断する場合、横方向の各切れ目に添って、何れか一方の端(図15の上側、又は下側)から順番に切断することも可能である。
しかし、端から順に切断すると、押圧刃832に対して一方の側は圧電振動子が1列であるのに対して、反対側は残り複数列となる。このため、押圧力が左右の圧電振動子1に均等に掛からなくなり、切れ目813に添って綺麗に切断できなくなる確立が上がる可能性がでてくる。
そこで、本実施形態では、切断面(押圧刃832)の左右の圧電振動子1にかかる押圧力が出来るだけ均等になるように、次の順番で切断している。
【0059】
圧電振動子1が形成されていないウエハ体60の周囲部分を、圧電振動子1が所定列分だけ存在するものと仮定する。この所定列分として、本実施形態では1列分を例に説明するが、実際の周囲の幅に応じて2列分、4列分としてもよい。
そして、端から4列おきに順次切断する。即ち、図15に示すように、端の切れ目813から数えて4本目毎に、1−1、1−2、1−3…の順番に切断する。この第1段階での切断では、切断刃813の左右の幅が異なるが、狭い側が4列分あるので左右の押圧力はほぼ均等になる。
【0060】
全体を横の4列ずつに切断した後、次に左右2列ずつとなるように4列の中央に位置する切れ目813で第2段階の切断をする。即ち、図15における2−1、2−2、2−3、…の順番に切断する。但し、この第2段階の切断では、全てが4列ずつになっているので、どの順番でもよいが、作業効率を考慮して端から順に切断している。
以上の第2段階により横2列ずつになるので、次の第3段階では2列の中央の切れ目813で切断をする。即ち、図15における3−1、3−2、3−3、…の順番に切断する。これにより横方向の全ての切れ目813についての切断が終了する。但し、この第3段階の切断では、全てが2列ずつになっているので、どの順番でもよいが、作業効率を考慮して端から順に切断している。
【0061】
なお、第2段階、第3段階の切断では、何れも中央を切断することになるため、第2段階の切断を全て行った後に第3段階の切断を行う必要はない。
例えば、図15における2−1で切断(第2段階)した後、この切断で押圧刃832の両側にできた2つの2列に対して3−1、3−2で切断(第3段階)する。同様に、2−2で切断(第2段階)、3−3、3−4で切断(第3段階)、というように切断していってもよい。即ち、第2段階の切断でできた両側の2列に対して第3段階の切断2回を1セットとして、順次切断していくことも可能である。
【0062】
横方向の全ての切れ目813についての切断が終了した後、次に縦方向に付いて順次切断していく。
なお、横方向の切断が全て終了した時点でも、横方向に連なった(未分割の)各圧電振動子1は、UVテープ812、セパレータ821で粘着固定されているので、縦方向の切れ目がずれることはない。このため、縦方向の切れ目813に添って1度に切断することができる。
縦方向の切断順番については、横方向と同様な順番で切断を行う。
即ち、図15に示すように、切れ目813の4本目毎に、第1段階の切断4−1、4−2、…を行う。次いで、第2段階の切断5−1、5−2、…の後、第3段階の切断6−1、6−2、…を行う。
なお、横方向の切断における第2段階、第3段階の切断順の変形例にいては、縦方向の切断について採用してもよい。
【0063】
以上により全ての圧電振動子1を個別に切り離した後、ブレイク工程(S83)の最後に、UVテープ812に紫外線(UV)を照射して粘着力を低下させたうえでUVテープを各圧電振動子1から剥がす。
その後各圧電振動子1をセパレータ821から個別に剥がし取る。
なお、セパレータ821もUVテープを使用している場合には、セパレータ821の粘着力を紫外線照射で低下したうえで圧電振動子1を剥がす。このように、セパレータ821もUVテープである場合には、どちらを先に剥がしてもよいが、両面同時に紫外線を照射するのではなく、先に剥がす側の面だけに紫外線を照射することで、反対側の粘着力を維持した状態で照射した側を容易に剥がすことができる。
【0064】
以上説明した切断工程(S80)では、外部電極38、39は、導電性材料をパターニングにより形成しているため、押圧刃832で押圧した際にウエハ体60と共に切断される。ただし、外部電極38、39をパターニングする際に、切断線Mに対応した領域を避けて外部電極を形成するようにしてもよい。
なお、外部電極38、39については、打ち抜き加工やエッチングすることで、各圧電振動子1に対応する複数の外部電極38、39が一体形成された、ウエハ体60と略同サイズのリードフレーム板を作製し、各外部電極38、39を一方の貫通電極7と、他方の貫通電極に接続された引き回し電極37bとに接続するようにしてもよい。このように金属板による外部電極38、39を配置する場合には、各圧電振動子1の切断線Mに対応する部分を先にブレードで切断する。そして切断した隙間から、押圧刃832を挿入することで切断線Mに添って押圧することで順次ウエハ体60を切断する。
【0065】
以上の切断工程(S80)により、パッケージ9のキャビティC内に圧電振動片4が封止された図1に示す2層構造タイプの表面実装型の圧電振動子1を一度に複数製造することができる。
【0066】
その後、内部の電気特性検査を行う(S90)。即ち、圧電振動片4の共振周波数、共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数及び共振抵抗値の励振電力依存性)等を測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性等を併せてチェックする。そして、最後に圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質等を最終的にチェックする。これをもって圧電振動子1の製造が終了する。
【0067】
以上説明したように、本実施形態に係る圧電振動子の製造方法によれば、レーザによる切れ目813を形成し、押圧刃832で押圧することで各圧電振動子1をウエハ体60から切断するので、次の様な効果を得ることができる。
(a)従来は最低でもブレード幅だけの切りしろ(150μm〜200μm程度)を必要としていたのに対し、本実施形態によれば最大でもレーザによる切り欠き幅(10μm±3μm程度)よりも小さい切りしろとすることができる。
(b)また、ブレード切断に比べて、切断時に圧電振動子1に与える振動や衝撃を小さくできるので、切断面に発生するクラックがなくなり綺麗な切断面を得ることができる。
(c)上記(b)の効果に伴い、ベース基板2とリッド基板3の接合面の幅(接合面のとりしろ)を小さくすることができる。即ち、図20、図2に示すように、従来の接合幅Lは200μm以上必要であったのが、本実施形態によれば接合幅Lを100μm〜15μmにすることができる。
これにより、圧電振動子1を小型化することが可能になる。
(d)上記(a)の切りしろと、(c)の接合幅Lを小さくすることに伴い、同一サイズのベース基板用ウエハ40、リッド基板用ウエハ50に対してより多くの圧電振動子1を製造することができる。
また、同一個数の圧電振動子1を作る場合にはベース基板用ウエハ40、リッド基板用ウエハ50のサイズを小さくすることができる。
(e)また、切断時の振動や衝撃が低減されるので、接合幅Lを従来と同じにする場合には、接合強度が高い陽極接合ではなく、より接合強度の低い他の接合方法でもベース基板2とリッド基板3の接合を維持したまま切断することができる。
他の接合方法としては、例えば、ガラスにメタライズして金属で接合する方法、更に強度が弱くなるが低融点ガラスによる接合も可能である。
【0068】
また本実施形態では、貫通電極7、7を1つのスルーホール内に配置し一体化した封止ガラスで固定している。
このため、2つのスルーホールが、圧電振動子1の長手方向の両側に配置される場合にくらべて、曲げ強度の高い圧電振動子1を得ることができる。
【0069】
(D)発振器
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図16を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、図16に示すように、圧電振動子1を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上記集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子1が実装されている。これら電子部品102、集積回路101及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0070】
このように構成された発振器100において、圧電振動子1に電圧を印加すると、該圧電振動子1内の圧電振動片4が振動する。この振動は、圧電振動片4が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0071】
そして本実施形態では、高品質化した圧電振動子1を備えているので、発振器100の高品質化を図ることができる。
【0072】
(E)電子機器
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図17を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子1を有する携帯情報機器110を例にして説明する。始めに本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0073】
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。この携帯情報機器110は、図17に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0074】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、該ROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、該CPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0075】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片4が振動し、該振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0076】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123及び呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0077】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0078】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119及び着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。更に、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0079】
即ち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0080】
そして本実施形態では、高品質化した圧電振動子1を備えているので、携帯情報機器110の高品質化を図ることができる。
【0081】
(F)電波時計
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図18を参照して説明する。
本実施形態の電波時計130は、図18に示すように、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0082】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。本実施形態における圧電振動子1は、上記搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部(圧電振動片)138、139をそれぞれ備えている。
【0083】
更に、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0084】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0085】
そして本実施形態では、高品質化した圧電振動子1を備えているので、電波時計130の高品質化を図ることができる。
【0086】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、圧電振動片4の一例として振動腕部10、11の両面に溝部18が形成された溝付きの圧電振動片4を例に挙げて説明したが、溝部18がないタイプの圧電振動片でも構わない。但し、溝部18を形成することで、一対の励振電極15に所定の電圧を印加させたときに、一対の励振電極15間における電界効率を上げることができるため、振動損失をより抑えて振動特性をさらに向上することができる。つまり、CI値(Crystal Impedance)をさらに低くすることができ、圧電振動片4のさらなる高性能化を図ることができる。この点において、溝部18を形成する方が好ましい。
また、説明した実施形態における圧電振動子として音叉型の水晶振動子を例に説明したが、他の圧電振動子、例えば、AT振動子や、複数の振動モードが結合した結合振動子等の各種振動子を使用することができる。
【0087】
また、上記実施形態では、本発明に係るパッケージの製造方法を、パッケージ9のキャビティC内の引き回し電極36,37に圧電振動片4が収容された圧電振動子1を製造する圧電振動子の製造方法に適用した場合を説明したが、引き回し電極36,37に圧電振動片4とは異なる配線が電気的に接続された構成を製造する場合にも適用することが可能である。
【0088】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1…圧電振動子
2…ベース基板
3…リッド基板
4…圧電振動片
7…貫通電極
9…パッケージ
30…スルーホール
35…接合膜
36、37…引き回し電極(内部電極)
37b…引き回し電極(外部電極)
40…ベース基板用ウエハ(ベース基板)
50…リッド基板用ウエハ(リッド基板)
70…電極台部
100…発振器
101…発振器の集積回路
110…携帯情報機器(電子機器)
113…電子機器の計時部
130…電波時計
131…電波時計のフィルタ部
811…リング
812…UVテープ
813…切れ目(切り欠き)
821…セパレータ
830…透明ラバー
831…カメラ
832…押圧刃
C…キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接合されたベース基板とリッド基板との間に形成されたキャビティ内に圧電振動片が封止された圧電振動子を、ベース基板用ウエハとリッド基板用ウエハとを用いて複数製造する方法であって、
前記リッド基板用ウエハ及び前記ベース基板用ウエハの少なくとも一方に、両ウエハが重ね合わされたときに前記キャビティを形成するキャビティ用の凹部を複数形成する凹部形成工程と、
前記ベース基板用ウエハに、該ウエハを貫通する一対の貫通電極を複数形成する貫通電極形成工程と、
前記複数の圧電振動片を、該圧電振動片に形成された一対の電極と前記一対の貫通電極とが電気的に接続する状態で、前記ベース基板用ウエハの上面に接合するマウント工程と、
前記キャビティに前記圧電振動片を収納する状態で、前記ベース基板用ウエハと前記リッド基板用ウエハとを接合してウエハ体を形成する接合工程と、
前記ベース基板用ウエハの下面に、前記一対の貫通電極にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極を複数形成する外部電極形成工程と、
前記形成したウエハ体を切断して、前記圧電振動片を収納した複数の前記圧電振動子に小片化する切断工程と、を備え、
前記切断工程は、
前記ウエハ体における、前記ベース基板用ウエハ側の外面、又は前記リッド基板用ウエハ側の外面にレーザを照射して切断線に添った縦及び横方向の切れ目を複数形成する切れ目形成工程と、
前記切れ目の形成面と逆の面側から前記ウエハ体に押圧力を加えることで、前記切れ目に沿って前記ウエハ体を順次切断するブレイク工程と、
を備えることを特徴とする圧電振動子の製造方法。
【請求項2】
前記ブレイク工程は、切断対象とする前記切れ目を順次決定し、前記切れ目の形成面と逆の面から、前記決定した切れ目に対応する位置を、前記ウエハ体の最大径よりも大きい長さの押圧刃で押圧することにより前記ウエハ体を順次切断する、ことを特徴とする請求項1に記載の圧電振動子の製造方法。
【請求項3】
前記ブレイク工程は、前記ウエハ体を、前記圧電振動子の短手方向に形成した切れ目に沿って順次切断した後に、前記圧電振動子の長手方向に形成した切れ目に沿って順次切断する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の圧電振動子の製造方法。
【請求項4】
前記ブレイク工程は、互いに平行に並んだ複数の前記切れ目に対して、
端から4本目の切れ目毎に切断する第1段階と、
前記第1段階で切断された各切断片に形成されている3本の切れ目の中央を切断する第2段階と、
前記第1段階で切断された各切断片に形成されている1本の切れ目を切断する第3段階と、
から構成されることを特徴とする請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の圧電振動子の製造方法。
【請求項5】
前記切断工程は、前記ウエハ体の、前記切れ目を形成した面に、伸縮性を有するフィルムを貼り付け、当該フィルム側を平面状の弾性体上に載置した状態で、前記フィルムと逆側の面を押圧して前記ウエハ体を切断する、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1の請求項に記載した圧電振動子の製造方法。
【請求項6】
前記切れ目形成工程は、前記凹部が形成されている側から前記ウエハ体の画像を取得し、該画像の濃淡から、切断する位置を決定する、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1の請求項に記載した圧電振動子の製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のうちのいずれか1の請求項に記載した圧電振動子の製造方法で製造されたことを特徴とする圧電振動子。
【請求項8】
請求項7に記載の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項9】
請求項7に記載の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項10】
請求項7に記載の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−209617(P2012−209617A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71422(P2011−71422)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】