圧電振動片、圧電振動子、発振器、電子機器および電波時計
【課題】高いドライブレベル特性を確保することができる圧電振動片と、この圧電振動片を用いた圧電振動子、発振器、電子機器および電波時計を提供する。
【解決手段】溝部5の基端側の幅は、溝部5の先端側の幅よりも狭く形成されており、基部4は、圧電振動片1を実装するマウント電極12,13が外表面に形成されたマウント部4aと、マウント部4aと一対の振動腕部3a,3bとの間に位置するようにマウント部4aと一対の振動腕部3a,3bとに連設され、一対の励振電極10,11とマウント電極12,13とを接続する引き出し電極14a,14bが外表面に形成された中間部4bと、を有し、マウント部4aの幅は、中間部4bの幅よりも広く形成されており、マウント部4aの側面と中間部4bの側面とは、マウント部4aと中間部4bとの段差部において、長手方向に対して傾斜する傾斜面4cを介して連設されていることを特徴とする。
【解決手段】溝部5の基端側の幅は、溝部5の先端側の幅よりも狭く形成されており、基部4は、圧電振動片1を実装するマウント電極12,13が外表面に形成されたマウント部4aと、マウント部4aと一対の振動腕部3a,3bとの間に位置するようにマウント部4aと一対の振動腕部3a,3bとに連設され、一対の励振電極10,11とマウント電極12,13とを接続する引き出し電極14a,14bが外表面に形成された中間部4bと、を有し、マウント部4aの幅は、中間部4bの幅よりも広く形成されており、マウント部4aの側面と中間部4bの側面とは、マウント部4aと中間部4bとの段差部において、長手方向に対して傾斜する傾斜面4cを介して連設されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧電振動片、圧電振動子、発振器、電子機器および電波時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号のタイミング源、リファレンス信号源等として、水晶等を利用した圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが提供されているが、その1つとして、いわゆる音叉型の圧電振動片を有する圧電振動子が知られている。
【0003】
ところで、搭載される機器の小型化に伴って、圧電振動片のさらなる小型化が望まれている。一般に、圧電振動子のCI値(Crystal Impedance)を低く抑えつつ、圧電振動片の小型化を図る方法としては、圧電振動片の振動腕部の両主面に溝部を形成する方法が知られている。さらに、この振動腕部の溝部の形状については様々な提案がされている。
【0004】
例えば、特許文献1では、基部電極部(本願のマウント電極に相当)が形成されている基部と、前記基部から突出して形成される振動腕部と、前記振動腕部の表面及び/又は裏面に形成されている溝電極部(本願の励振電極に相当)を有する溝部と、前記振動腕部の前記溝部が形成されていない前記振動腕部の側面に形成されている側面電極部(本願の励振電極に相当)と、前記基部電極部と前記側面電極部とを接続する側面電極用接続電極部(本願の引き出し電極に相当)と、を有する振動片であって、前記溝部の開口部の基部側の幅が他の部分の幅より狭く形成されている。溝部の開口部の基部側の幅を狭く形成することで、各接続電極部を形成する領域を広く確保できる。これにより、溝電極用接続電極部又は側面電極用接続電極部が、溝電極部や側面電極部と短絡し振動片に不良が生じることを未然に防ぎつつ、CI値の増大を未然に防止できるとされている。
【0005】
一方、特許文献2では、基部近傍の溝部の幅を漸次テーパ状に狭くすることにより、溝部の基部側の幅を他の部分の幅よりも狭く形成している。特許文献1のように急激に溝部の幅を変化させて形成する場合と比較して、特許文献2のように溝部をテーパ状に形成する場合には、溝部にエッチング残りが発生しにくい。したがって、溝部の幅を漸次テーパ状に狭くすることにより、溝部を精度よく安定してエッチングすることができる。これにより、左右の溝部の形状のバラつきを少なくして脚部の剛性を均一化し、CI値が低下するとされている。
【0006】
また、圧電振動片を作動させた際、基部を通じて圧電振動片の振動が外部に漏洩する、いわゆる振動漏れ(振動エネルギーの漏洩)が発生することが知られている。この振動漏れは、CI値の上昇に繋がってしまうものであるので、できるだけ振動漏れを抑制する必要がある。
【0007】
振動漏れを抑制する方法としては、外部に実装するマウント電極が形成されたマウント部と、マウント部と振動腕部との間に位置する中間部と、を圧電振動片の基部に形成する。そして、マウント部の幅を中間部の幅よりも広く形成し、段差部を設けてマウント部と中間部とを接続することが知られている。ここで、振動漏れの特性は、振動腕部の長手方向における中間部の長さ(以下「実効値」という。)に依存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−87090号公報
【特許文献2】特許第4409979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述の溝部の形状および実効値は、CI値および振動漏れの特性を変化させ、圧電振動片の振動モードに変化を与えるため、圧電振動片のドライブレベル特性に影響を与えると考えられる。
図15はドライブレベル特性の説明図である。
ドライブレベル特性とは、駆動電圧の変動に対する振動周波数の変動特性をいう。具体的には、図15に示すように、圧電振動片に印加する電圧をV1からV2に上昇させると、周波数はf0からf1に上昇する。そして、圧電振動片に印加する電圧をV2から再度V1に戻したとき、周波数はf1からf0周波数に戻らずにf0よりも低い値f2となる。この振動周波数の変動値Δf(f0とf2との差)の特性のことをドライブレベル特性という。なお、Δfの振れ幅が小さいほど、ドライブレベル特性は良好であるといえる。
【0010】
ここで、特許文献1および特許文献2では、基端側の溝部の幅を先端側の溝部の幅よりも狭く形成しているので、振動時に歪の大きい振動腕部の基端側の剛性が高くなる。これにより、CI値を低く抑制するのと同時に、圧電振動片の振動モードが変化する。したがって、ドライブレベル特性も変化すると考えられる。
【0011】
ところで、圧電振動片は、水晶のウエハをエッチング加工することにより形成される。段差部を設けてマウント部と中間部とを接続したとき、段差部の角部のエッチング残りはエッチング時間によりばらつく。これにより、エッチング時間により中間部の長さ、すなわち実効値がばらつくため、振動漏れの特性が変化し、圧電振動片の振動モードが変化する。したがって、ドライブレベル特性も変化すると考えられる。
このように、段差部を設けてマウント部と中間部とを接続したときには、エッチング時間により実効値がばらつくため、ドライブレベル特性を高めるのには限界がある。
【0012】
そこで本発明は、高いドライブレベル特性を確保することができる圧電振動片と、この圧電振動片を用いた圧電振動子、発振器、電子機器および電波時計の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、本発明の圧電振動片は、幅方向に並んで配置された一対の振動腕部と、前記振動腕部の両主面上に、前記振動腕部の長手方向の基端側から前記長手方向の先端側に向かって形成された溝部と、前記振動腕部および前記溝部の外表面に形成された励振電極と、前記一対の振動腕部の前記基端側が接続された基部と、を備えた圧電振動片であって、前記溝部の前記基端側の幅は、前記溝部の前記先端側の幅よりも狭く形成されており、前記基部は、前記圧電振動片を外部に実装するマウント電極が外表面に形成されたマウント部と、前記マウント部と前記一対の振動腕部との間に位置するように前記マウント部と前記一対の振動腕部とに連設され、前記一対の励振電極と前記マウント電極とを接続する引き出し電極が外表面に形成された中間部と、を有し、前記マウント部の幅は、前記中間部の幅よりも広く形成されており、前記マウント部の側面と前記中間部の側面とは、マウント部と中間部との段差部において、平面視した際に前記長手方向に対して傾斜する傾斜面を介して連設されていることを特徴とする。
本発明によれば、振動腕部に形成された溝部の基端側の幅は、溝部の先端側の幅よりも狭く形成されている。これにより、振動腕部の基端側の剛性を確保できる。また、本発明では、マウント部と中間部との段差部において、ウエハの結晶方向に沿いやすい傾斜面で連接されているので、マウント部と中間部との傾斜面におけるエッチング残りのばらつきを少なくできる。これにより、中間部を精度よく形成することができる。したがって、良好なドライブレベル特性が得られる理想的な長さに実効値を調整できるので、高いドライブレベル特性を確保することができる。さらに、実効値を理想的な長さとすることで振動漏れを抑制できる。
【0014】
また、前記溝部の前記基端側の端部は、前記基部と前記一対の振動腕部との接続部よりも前記先端側に配置されていることが望ましい。
本発明によれば、溝部の基端側の端部は基部と振動腕部との接続部よりも先端側に配置されているため、振動腕部の基端側の剛性を上げることができる。したがって、ドライブレベル特性をさらに向上することができる。
【0015】
また、前記振動腕部の前記基端側の幅は、前記振動腕部の前記先端側の幅よりも広く形成されていることが望ましい。
本発明によれば、振動腕部の基端側の幅を振動腕部の先端側の幅よりも広く形成することで、振動腕部の基端側の剛性をさらに上げることができる。したがって、ドライブレベル特性をさらに向上することができる。
【0016】
また、本発明の圧電振動子は、上述の圧電振動片を有することを特徴とする。
本発明によれば、高いドライブレベル特性を確保することができる圧電振動子を提供することができる。
【0017】
本発明の発振器は、上述の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする。
本発明の電子機器は、上述の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする。
本発明の電波時計は、上述の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする。
【0018】
本発明にかかる発振器、電子機器および電波時計によれば、高いドライブレベル特性を確保することができる圧電振動子を備えているので、性能が良好な発振器、電子機器および電波時計を製造することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、振動腕部に形成された溝部の基端側の幅は、溝部の先端側の幅よりも狭く形成されている。これにより、振動腕部の基端側の剛性を確保できる。また、本発明では、マウント部と中間部との段差部において、ウエハの結晶方向に沿いやすい傾斜面で連接されているので、マウント部と中間部との傾斜面におけるエッチング残りのばらつきを少なくできる。これにより、中間部を精度よく形成することができる。したがって、良好なドライブレベル特性が得られる理想的な長さに実効値を調整できるので、高いドライブレベル特性を確保することができる。さらに、実効値を理想的な長さとすることで振動漏れを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】圧電振動片の平面図である。
【図2】圧電振動片の基部の拡大図である。
【図3】図1のA−A線における断面図である。
【図4】エッチング時間とドライブレベル特性の関係を表すグラフである。
【図5】第1変形例の圧電振動片の平面図である。
【図6】第2変形例の圧電振動片の平面図である。
【図7】第3変形例の圧電振動片の平面図である。
【図8】圧電振動子の外観斜視図である。
【図9】圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態の平面図である。
【図10】図9のB−B線における断面図である。
【図11】圧電振動子の分解斜視図である。
【図12】発振器の一実施形態を示す構成図である。
【図13】電子機器の一実施形態を示す構成図である。
【図14】電波時計の一実施形態を示す構成図である。
【図15】ドライブレベル特性の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(圧電振動片)
最初に、圧電振動片について図面を参照して説明する。
図1は圧電振動片の平面図である。
図2は圧電振動片の基部の拡大図である。
図3は図1のA−A線における断面図である。
なお、以下の説明では、圧電振動片の長手方向をX方向とし、先端側を+X側とし、基端側を−X側とする。また、圧電振動片の幅方向をY方向とし、一方側を+Y側とし、他方側を−Y側とする。
図1に示すように、圧電振動片1は、水晶やタンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
【0022】
(振動腕部)
図1に示すように、本実施形態の圧電振動片1は、一対の振動腕部3a,3bを備えている。一対の振動腕部3a,3bは、中心軸Oに沿ってX方向に延在し、Y方向に平行配置されている。一対の振動腕部3a,3bの主面(表面および裏面)上には、振動腕部3a,3bのX方向の−X側から+X側に向かって、縦長の一対の溝部5が形成されている。
溝部5は、X方向に沿って、振動腕部3a,3bと基部4との接続部から、振動腕部3a,3bの中間部を若干越える範囲にわたって形成されている。これにより、一対の振動腕部3a,3bは、それぞれ図3に示すようにA−A線における断面形状がH型となっている。
【0023】
また、溝部5の−X側端部の幅は、溝部5の+X側端部の幅よりも狭く形成されている。具体的には、溝部5の+X側において、溝部5の全長の約2/3程度にわたって、溝部5の幅が一定に形成されている。また、溝部5の−X側において、溝部5の全長の約1/3程度にわたって、溝部5の幅が+X側から−X側に向かって漸次テーパ状に狭くなるように形成されている。
溝部5の−X側を狭く形成することにより、振動腕部3a,3bと基部4との接続部付近で、振動腕部側面3c,3dと溝部側面5aとの間に形成される領域S1〜S4を広く確保することができる。したがって、後述する引き出し電極14a,14bを領域S1〜S4に形成する際に、隣接する励振電極10,11が短絡するのを確実に防止することができる。また、溝部5の−X側を狭く形成することにより、領域S1〜S4のY方向における肉厚を厚くすることができるので、振動腕部3a,3bの−X側の剛性が向上する。このため、溝部5を一定幅で形成した場合と比較して、CI値を低く抑制するのと同時に、後述するようにドライブレベル特性を向上させることができる。
【0024】
図1に示すように、振動腕部3a,3bおよび溝部5の外表面には、励振電極10,11(第1の励振電極10および第2の励振電極11)が形成されている。励振電極10,11は、例えば、クロム(Cr)等の単層の導電性膜により形成される。励振電極10,11は、電圧が印加されときに振動腕部3a,3bを互いに接近又は離間する方向に所定の共振周波数で振動させる電極である。一対の励振電極10,11は、一対の振動腕部3a,3bの表面にそれぞれ電気的に切り離された状態でパターニングされて形成されている。具体的には、図1に示すように、第1の励振電極10が、主に−Y側の振動腕部3aの溝部5内と+Y側の振動腕部3bの側面上とに形成され、第2の励振電極11が、主に+Y側の振動腕部3bの溝部5内と−Y側の振動腕部3aの側面上とに形成されている。前述のとおり、領域S1〜S4を広く確保することができるので、振動腕部3a,3bと基部4との接続部付近において、隣接する第1の励振電極10、第2の励振電極11および引き出し電極14a,14bが短絡するのを確実に防止することができる。
【0025】
また、図1に示すように、振動腕部3a,3bの先端部には、所定の周波数の範囲内で振動するように調整(周波数調整)を行うための粗調膜15aおよび微調膜15bからなる重り金属膜15が形成されている。この重り金属膜15を利用して周波数調整を行うことで、一対の振動腕部3a,3bの周波数をデバイスの公称周波数の範囲内に収めることができるようになっている。
【0026】
(基部)
本実施形態の圧電振動片1は、一対の振動腕部3a,3bの−X側を一体的に固定する基部4を有している。基部4は、振動腕部3a,3bに隣接している。そして、基部4に、振動腕部3a,3bの−X側を接続することにより、振動腕部3a,3bが支持されている。
基部4の−X側にはマウント部4aが配置されている。マウント部4aの外表面上には、一対のマウント電極12,13が形成されている。マウント電極12,13は、クロムと金との積層膜であり、水晶と密着性の良いクロムを下地層として成膜した後に、表面に金の薄膜を仕上げ層として成膜することにより形成される。ただし、この場合に限られず、例えば、クロムとニクロムを下地層として成膜した後に、表面にさらに金の薄膜を仕上げ層として成膜しても構わない。
【0027】
また、基部4の+X側には中間部4bが配置されている。中間部4bの外表面上には、マウント電極12,13と励振電極10,11とを接続する引き出し電極14a,14bが形成されている。引き出し電極14a,14bは、マウント電極12,13の下地層と同じ材料のクロムにより、単層膜で形成されている。これにより、マウント電極12,13の下地層を成膜するのと同時に、引き出し電極14a,14bを成膜することができる。ただし、この場合に限られず、例えば、ニッケルやアルミニウム、チタン等により引き出し電極14a,14bを成膜しても構わない。
【0028】
また、図2に示すように、マウント部4aの幅W1は、中間部4bの幅W2よりも広く形成されている。そのため、マウント部4aと中間部4bとの接続部では、マウント部4aのX方向に沿った側面と中間部4bのY方向に沿った端部とが交差して、段差部6が形成される。ここで、本実施形態では、この段差部6をテーパ状として、X方向に対して傾斜角度θを有する傾斜面4cを形成している。傾斜角度θは、ウエハの結晶方向に沿いやすい30°から60°の範囲内で設定される。本実施形態では、傾斜角度θは45°で設定されている。これにより、ウエハの結晶方向により一致させることができる。よって、後述するようにエッチング時間が変化したとしても、エッチング残り量のばらつきを小さくすることができる。したがって、中間部4bの長さをさらに均一な長さに調整することができ、振動漏れによる特性への影響をより安定させることができる。
【0029】
傾斜面4cを形成する理由は以下のとおりである。
圧電振動片1は、水晶のウエハをエッチング加工することにより形成される。このとき、段差部6を形成しようとすると、段差部6の隅部にエッチング残り6aが発生するおそれがある。具体的には、エッチング加工は、圧電振動片の外形に対応して形成されたエッチング保護膜をマスクとし、マスクされていない領域を選択的に除去している。時間の経過とともにエッチングが進行して、マスク形状にならって段差部6の隅部が形成される。ここで、段差部6を形成するマウント部4aの+X側の側面はX方向に略直交しており、ウエハの結晶方向に逆らっているため、エッチングが進行しにくい。このため、エッチング時間が短い場合には段差部6の隅部にエッチング残り6aが多く発生し、エッチング時間が長い場合には段差部6の隅部にエッチング残り6aが多少発生する。
【0030】
上述のように、エッチング残り6aのばらつきが発生すると、実効値Lにバラつきが生じる。特に、エッチング時間によりエッチング残り6aの量が変化するため、エッチング時間によって得られる実効値Lが変化する。これにより、中間部4bの長さを均一な長さに調整するのが困難となり、振動漏れによる特性への影響が安定しないという問題が発生する。そして、実効値Lのばらつきにより振動漏れの特性が変化すると、圧電振動片1の振動モードも変化し、さらにドライブレベル特性も変化する。このように、実効値Lにバラつきが生じ、狙った実効値Lとは異なった実効値L1が得られると、ドライブレベル特性が悪化すると考えられる。
【0031】
図4は、エッチング時間とドライブレベル特性の関係を表すグラフである。
図4において、F1は段差部6に傾斜面4cを設けた場合(本実施形態)のドライブレベル特性のグラフであり、F2は段差部6に傾斜面4cを設けていない場合(従来手法)のドライブレベル特性のグラフである。Tはエッチング時間を表し、Δfは振動周波数の変動値を表している。なお、Δfの絶対値が小さいほどドライブレベル特性が良好である。
従来手法の場合は、エッチング時間Tがばらつくと実効値Lのばらつきが発生する。そのため、従来手法の場合のドライブレベル特性F2は、特定のエッチング時間T2でのみ最適な実効値Lが得られ、良好なドライブレベル特性が得られる。したがって、特定のエッチング時間T2からエッチング時間がずれると、Δfがマイナス側に大きくなりドライブレベル特性が悪化する。
【0032】
一方、本実施形態の場合は、段差部6をテーパ状としているため、マウント部4aと中間部4bとは、ウエハの結晶方向に沿いやすい傾斜面4cで連接される。したがって、マウント部4aと中間部4bとの傾斜面4cにおいて、エッチング時間の変化に伴って傾斜面4cの形成具合が左右され難い。つまり、エッチング時間を長く或いは短くしても、傾斜面4cの傾斜角度が変化し難く、エッチング時間のばらつきによるエッチング残りのばらつきを少なくできる。そのため、本実施形態の場合のドライブレベル特性F1は、エッチング時間T1からT3の広範囲に渡って最適な実効値Lが得られ、良好なドライブレベル特性が得られる。このように、傾斜面4cを形成することで、良好なドライブレベル特性が得られる。以上の理由から、段差部6をテーパ状として傾斜面4cを形成している。
【0033】
本実施形態によれば、図1に示すように、振動腕部3a,3bに形成された溝部5の−X側の幅は、溝部5の+X側の幅よりも狭く形成されている。これにより、振動腕部3a,3bの−X側の剛性を確保できる。また、本発明では、図2に示すように、マウント部4aと中間部4bとの段差部6において、ウエハの結晶方向に沿いやすい傾斜面4cで連接されているので、マウント部4aと中間部4bとの傾斜面4cにおけるエッチング残りのばらつきを少なくできる。これにより、中間部4bを精度よく形成することができる。したがって、振動腕部3a,3bの−X側の剛性を確保しつつ、良好なドライブレベル特性が得られる理想的な長さに実効値Lを調整できるので、高いドライブレベル特性を確保することができる。さらに、エッチング時間による実効値Lのばらつきを抑制して、実効値Lを理想的な長さとすることができるので、効果的に振動漏れを抑制できる。
【0034】
(実施形態の第1変形例、溝部の基端側における端部の位置変更)
次に、実施形態の第1変形例について説明する。
図5は、実施形態の第1変形例の説明図である。
上述の実施形態では、溝部5の−X側の端部5bが基部4と振動腕部3a,3bとの接続部近傍に配置されていた(図1参照)。しかし、第1変形例では、図5に示すように溝部5の−X側の端部5bが基部4と振動腕部3a,3bとの接続部よりも若干+X側に配置されている点で異なっている。なお、溝部5以外の構成は上述した実施形態と同一であるため説明を省略する。
第1変形例では、溝部5の−X側の端部5bは、基部4と振動腕部3a,3bとの接続部よりも+X側に配置されている。具体的には、図5に示すように、基部4と振動腕部3a,3bとの接続部から、+X側に距離αだけ離間した位置に溝部5の−X側の端部5bが配置されている。このため、基部4と振動腕部3a,3bとの接続部から+X側に向かって距離αの範囲には溝部5が形成されていないので、+Y方向および厚み方向で振動腕部3a,3bの肉厚を厚く確保することができる。これにより、振動腕部3a,3bの−X側に溝部5が形成されている場合と比較して、前記距離αの範囲において振動腕部3a,3bの剛性を向上させることができる。したがって、振動腕部3a,3bの−X側の剛性をさらに確保しつつ、高いドライブレベル特性が確保できる長さに実効値Lを調整できるので、ドライブレベル特性をさらに向上することができる。
【0035】
(実施形態の第2変形例、振動腕部の基端側の形状変更)
次に、実施形態の第2変形例について説明する。
図6は、実施形態の第2変形例の説明図である。
上述の実施形態では、振動腕部3a,3bは略同一の幅で形成されていた(図1参照)。しかし、第2変形例では、図6に示すように、振動腕部3a,3bの−X側の幅が+X側の幅よりも広く形成されている点で異なっている。なお、振動腕部3a,3b以外の構成は上述した実施形態と同一であるため説明を省略する。
第2変形例では、基部4と振動腕部3a,3bとの接続部から+X側に向かって距離βの範囲において、+X側からに−X側に行くに従い振動腕部3a,3bの幅が漸次広がるように形成されている。このように、振動腕部3a,3bの−X側の幅を振動腕部3a,3bの+X側の幅よりも広く形成することで、前記距離βの範囲において振動腕部3a,3bの剛性を上げることができる。したがって、振動腕部3a,3bの−X側の剛性をさらに確保しつつ、高いドライブレベル特性が確保できる長さに実効値Lを調整できるので、ドライブレベル特性をさらに向上することができる。
【0036】
(実施形態の第3変形例、段差状の溝部)
次に、実施形態の第3変形例について説明する。
図7は、実施形態の第3変形例の説明図である。
上述の実施形態では、溝部5の幅を漸次テーパ状に狭くすることにより、溝部5の−X側の幅を他の部分の幅よりも狭く形成していた。しかし、第3変形例では、図7に示すように、溝部5の−X側の幅を所定位置から段差状に狭くなるように形成している点で異なっている。なお、溝部5の形状以外の構成は上述した実施形態と同一であるため説明を省略する。
第3変形例では、溝部5の−X側の幅は、基部4と振動腕部3a,3bとの接続部から+X側に向かって、距離γの位置から段差状に急激に狭くなるように形成されている。このように溝部5の幅を段差状に狭くしても、実施形態の溝部5の幅を漸次テーパ状に狭くしたときと同様の効果が得られる。すなわち、溝部5の−X側を狭く形成することにより、振動腕部3a,3bと基部4との接続部付近で、振動腕部側面3c,3dと溝部側面5aとの間に形成される領域S1〜S4を広く確保することができる。また、領域S1〜S4のY方向における肉厚を厚くすることができるので、振動腕部3a,3bの−X側の剛性が向上する。したがって、溝部5を一定幅で形成した場合と比較して、CI値を低く抑制するのと同時に、ドライブレベル特性を向上させることができる。
【0037】
(圧電振動子)
次に、本実施形態の圧電振動片を用いた圧電振動子について説明する。
図8は圧電振動子の外観斜視図である。
図9は圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態の平面図である。
図10は図2のB−B線における断面図である。
図11は図1に示す圧電振動子の分解斜視図である。
なお、ベース基板31のリッド基板32との接合面を第1面Uとし、ベース基板31の外側の面を第2面Sとして説明する。また、図11においては、図面を見易くするために励振電極10,11、引き出し電極14a,14b、マウント電極12,13および重り金属膜15の図示を省略している。
図8から図11に示すように、本実施形態の圧電振動子30は、ベース基板31およびリッド基板32が接合膜37を介して陽極接合されたパッケージと、パッケージのキャビティCに収納された圧電振動片1と、を備えた表面実装型の圧電振動子30である。
図8、図10および図11に示すように、ベース基板31およびリッド基板32は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる陽極接合可能な基板であり、略板状に形成されている。リッド基板32におけるベース基板31との接合面側には、圧電振動片1を収容するキャビティ用凹部32aが形成されている。
【0038】
リッド基板32におけるベース基板31との接合面側の全体に、陽極接合用の接合膜37が形成されている。すなわち接合膜37は、キャビティ用凹部32aの内面全体に加えて、キャビティ用凹部32aの周囲の額縁領域に形成されている。本実施形態の接合膜37はシリコン膜で形成されているが、接合膜37をアルミニウム(Al)やCr等で形成することも可能である。後述するように、この接合膜37とベース基板31とが陽極接合され、キャビティCが真空封止されている。
【0039】
図10に示すように、圧電振動子30は、ベース基板31を厚さ方向に貫通し、キャビティCの内側と圧電振動子30の外側とを導通する貫通電極35,36を備えている。貫通電極35,36は、ベース基板31を貫通する貫通孔33,34内に配置されている。
貫通孔33,34の中心軸に垂直な方向の断面形状は、円形状となるように形成されている。また、図9および図10に示すように、貫通孔33,34は、圧電振動子30を形成したときにキャビティC内に収まるように形成される。より詳しく説明すると、貫通孔33,34は、圧電振動片1の基部4側に対応した位置に一方の貫通孔33が形成され、振動腕部3a,3bの+X側に対応した位置に他方の貫通孔34が形成される。
【0040】
貫通電極35,36は、例えば貫通孔33,34に金属ピン(不図示)を挿入したのち、貫通孔33,34と金属ピンとの間にガラスフリットを充填して焼成することで形成される。このように、金属ピンとガラスフリットとで貫通孔33,34を完全に塞ぐことができるので、キャビティC内の気密を維持しつつ、後述する引き回し電極38,39と外部電極40,41とを導通させる役割を担っている。
【0041】
図9から図11に示すように、ベース基板31の第1面U側には、一対の引き回し電極38,39がパターニングされている。一対の引き回し電極38,39のうち、一方の引き回し電極38は、一方の貫通電極35の真上に位置するように形成されている。また、他方の引き回し電極39は、一方の引き回し電極38に隣接した位置から、振動腕部3a,3bに沿って+X側に引き回しされた後、他方の貫通電極36の真上に位置するように形成されている。
【0042】
そして、これら一対の引き回し電極38,39上にそれぞれ金等からなる先細り形状のバンプBが形成されており、バンプBを利用して圧電振動片1の一対のマウント電極12,13が実装されている。これにより、圧電振動片1の一方のマウント電極13が、一方の引き回し電極38を介して一方の貫通電極35に導通し、他方のマウント電極12が、他方の引き回し電極39を介して他方の貫通電極36に導通するようになっている。
【0043】
またベース基板31の第2面Sには、一対の外部電極40,41が形成されている。一対の外部電極40,41は、ベース基板31のX方向の両端部に形成され、一対の貫通電極35,36に対してそれぞれ電気的に接続されている。
【0044】
このように構成された圧電振動子30を作動させる場合には、ベース基板31に形成された外部電極40,41に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片1の第1の励振電極10および第2の励振電極11に電圧を印加することができるので、一対の振動腕部3a,3bを接近および離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部3a,3bの振動を利用して、時刻源や制御信号のタイミング源、リファレンス信号源等として圧電振動子30を利用することができる。
【0045】
(発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図12を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器110は、図12に示すように、圧電振動子30を、集積回路111に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器110は、コンデンサ等の電子素子部品112が実装された基板113を備えている。基板113には、発振器用の集積回路111が実装されており、この集積回路111の近傍に、圧電振動子30の圧電振動片が実装されている。これら電子素子部品112、集積回路111及び圧電振動子30は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0046】
このように構成された発振器110において、圧電振動子30に電圧を印加すると、圧電振動子30内の圧電振動片が振動する。この振動は、圧電振動片が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路111に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路111によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子30が発振子として機能する。
また、集積回路111の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0047】
本実施形態の発振器110によれば、高いドライブレベル特性を確保することができる圧電振動子30を備えているので、性能が良好な発振器110を製造することができる。
【0048】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図13を参照して説明する。なお電子機器として、前述した圧電振動子30を有する携帯情報機器120を例にして説明する。
始めに本実施形態の携帯情報機器120は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0049】
次に、本実施形態の携帯情報機器120の構成について説明する。この携帯情報機器120は、図13に示すように、圧電振動子30と、電力を供給するための電源部121とを備えている。電源部121は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部121には、各種制御を行う制御部122と、時刻等のカウントを行う計時部123と、外部との通信を行う通信部124と、各種情報を表示する表示部125と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部126とが並列に接続されている。そして、電源部121によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0050】
制御部122は、各機能部を制御して音声データの送信や受信、現在時刻の計測、表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部122は、予めプログラムが書き込まれたROMと、該ROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、該CPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0051】
計時部123は、発振回路やレジスタ回路、カウンタ回路、インターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子30とを備えている。圧電振動子30に電圧を印加すると圧電振動片が振動し、該振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部122と信号の送受信が行われ、表示部125に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0052】
通信部124は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部127、音声処理部128、切替部129、増幅部130、音声入出力部131、電話番号入力部132、着信音発生部133及び呼制御メモリ部134を備えている。
無線部127は、音声データ等の各種データを、アンテナ135を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部128は、無線部127又は増幅部130から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部130は、音声処理部128又は音声入出力部131から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部131は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0053】
また、着信音発生部133は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部129は、着信時に限って、音声処理部128に接続されている増幅部130を着信音発生部133に切り替えることによって、着信音発生部133において生成された着信音が増幅部130を介して音声入出力部131に出力される。
なお、呼制御メモリ部134は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部132は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0054】
電圧検出部126は、電源部121によって制御部122等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部122に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部124を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部126から電圧降下の通知を受けた制御部122は、無線部127、音声処理部128、切替部129及び着信音発生部133の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部127の動作停止は、必須となる。更に、表示部125に、通信部124が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0055】
すなわち、電圧検出部126と制御部122とによって、通信部124の動作を禁止し、その旨を表示部125に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部125の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部124の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部136を備えることで、通信部124の機能をより確実に停止することができる。
【0056】
本実施形態の携帯情報機器120によれば、高いドライブレベル特性を確保することができる圧電振動子30を備えているので、性能が良好な携帯情報機器120を製造することができる。
【0057】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図14を参照して説明する。
本実施形態の電波時計140は、図14に示すように、フィルタ部141に電気的に接続された圧電振動子30を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、前述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0058】
以下、電波時計140の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ142は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ143によって増幅され、複数の圧電振動子30を有するフィルタ部141によって濾波、同調される。
本実施形態における圧電振動子30は、前記搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部148、149をそれぞれ備えている。
【0059】
更に、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路144により検波復調される。
続いて、波形整形回路145を介してタイムコードが取り出され、CPU146でカウントされる。CPU146では、現在の年や積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC148に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部148、149は、前述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0060】
なお、前述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計140を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子30を必要とする。
【0061】
本実施形態の電波時計140によれば、高いドライブレベル特性を確保することができる圧電振動子30を備えているので、性能が良好な電波時計140を製造することができる。
【0062】
なお、この発明は上述した実施の形態に限られるものではない。
本実施形態では、表面実装型の圧電振動子に本発明の圧電振動片を採用している。しかし、これに限らず、例えばシリンダーパッケージタイプの圧電振動子に本発明の圧電振動片を採用しても構わない。
【符号の説明】
【0063】
1・・・圧電振動片 4・・・基部 4a・・・マウント部 4b・・・中間部 4c・・・傾斜面 3(3a,3b)・・・振動腕部 5・・・溝部 6・・・段差部 10,11・・・励振電極 12,13・・・マウント電極 14a,14b・・・引き出し電極 30・・・圧電振動子 110・・・発振器 120・・・携帯情報機器(電子機器) 140・・・電波時計 S40・・・実装工程
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧電振動片、圧電振動子、発振器、電子機器および電波時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号のタイミング源、リファレンス信号源等として、水晶等を利用した圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが提供されているが、その1つとして、いわゆる音叉型の圧電振動片を有する圧電振動子が知られている。
【0003】
ところで、搭載される機器の小型化に伴って、圧電振動片のさらなる小型化が望まれている。一般に、圧電振動子のCI値(Crystal Impedance)を低く抑えつつ、圧電振動片の小型化を図る方法としては、圧電振動片の振動腕部の両主面に溝部を形成する方法が知られている。さらに、この振動腕部の溝部の形状については様々な提案がされている。
【0004】
例えば、特許文献1では、基部電極部(本願のマウント電極に相当)が形成されている基部と、前記基部から突出して形成される振動腕部と、前記振動腕部の表面及び/又は裏面に形成されている溝電極部(本願の励振電極に相当)を有する溝部と、前記振動腕部の前記溝部が形成されていない前記振動腕部の側面に形成されている側面電極部(本願の励振電極に相当)と、前記基部電極部と前記側面電極部とを接続する側面電極用接続電極部(本願の引き出し電極に相当)と、を有する振動片であって、前記溝部の開口部の基部側の幅が他の部分の幅より狭く形成されている。溝部の開口部の基部側の幅を狭く形成することで、各接続電極部を形成する領域を広く確保できる。これにより、溝電極用接続電極部又は側面電極用接続電極部が、溝電極部や側面電極部と短絡し振動片に不良が生じることを未然に防ぎつつ、CI値の増大を未然に防止できるとされている。
【0005】
一方、特許文献2では、基部近傍の溝部の幅を漸次テーパ状に狭くすることにより、溝部の基部側の幅を他の部分の幅よりも狭く形成している。特許文献1のように急激に溝部の幅を変化させて形成する場合と比較して、特許文献2のように溝部をテーパ状に形成する場合には、溝部にエッチング残りが発生しにくい。したがって、溝部の幅を漸次テーパ状に狭くすることにより、溝部を精度よく安定してエッチングすることができる。これにより、左右の溝部の形状のバラつきを少なくして脚部の剛性を均一化し、CI値が低下するとされている。
【0006】
また、圧電振動片を作動させた際、基部を通じて圧電振動片の振動が外部に漏洩する、いわゆる振動漏れ(振動エネルギーの漏洩)が発生することが知られている。この振動漏れは、CI値の上昇に繋がってしまうものであるので、できるだけ振動漏れを抑制する必要がある。
【0007】
振動漏れを抑制する方法としては、外部に実装するマウント電極が形成されたマウント部と、マウント部と振動腕部との間に位置する中間部と、を圧電振動片の基部に形成する。そして、マウント部の幅を中間部の幅よりも広く形成し、段差部を設けてマウント部と中間部とを接続することが知られている。ここで、振動漏れの特性は、振動腕部の長手方向における中間部の長さ(以下「実効値」という。)に依存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−87090号公報
【特許文献2】特許第4409979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述の溝部の形状および実効値は、CI値および振動漏れの特性を変化させ、圧電振動片の振動モードに変化を与えるため、圧電振動片のドライブレベル特性に影響を与えると考えられる。
図15はドライブレベル特性の説明図である。
ドライブレベル特性とは、駆動電圧の変動に対する振動周波数の変動特性をいう。具体的には、図15に示すように、圧電振動片に印加する電圧をV1からV2に上昇させると、周波数はf0からf1に上昇する。そして、圧電振動片に印加する電圧をV2から再度V1に戻したとき、周波数はf1からf0周波数に戻らずにf0よりも低い値f2となる。この振動周波数の変動値Δf(f0とf2との差)の特性のことをドライブレベル特性という。なお、Δfの振れ幅が小さいほど、ドライブレベル特性は良好であるといえる。
【0010】
ここで、特許文献1および特許文献2では、基端側の溝部の幅を先端側の溝部の幅よりも狭く形成しているので、振動時に歪の大きい振動腕部の基端側の剛性が高くなる。これにより、CI値を低く抑制するのと同時に、圧電振動片の振動モードが変化する。したがって、ドライブレベル特性も変化すると考えられる。
【0011】
ところで、圧電振動片は、水晶のウエハをエッチング加工することにより形成される。段差部を設けてマウント部と中間部とを接続したとき、段差部の角部のエッチング残りはエッチング時間によりばらつく。これにより、エッチング時間により中間部の長さ、すなわち実効値がばらつくため、振動漏れの特性が変化し、圧電振動片の振動モードが変化する。したがって、ドライブレベル特性も変化すると考えられる。
このように、段差部を設けてマウント部と中間部とを接続したときには、エッチング時間により実効値がばらつくため、ドライブレベル特性を高めるのには限界がある。
【0012】
そこで本発明は、高いドライブレベル特性を確保することができる圧電振動片と、この圧電振動片を用いた圧電振動子、発振器、電子機器および電波時計の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、本発明の圧電振動片は、幅方向に並んで配置された一対の振動腕部と、前記振動腕部の両主面上に、前記振動腕部の長手方向の基端側から前記長手方向の先端側に向かって形成された溝部と、前記振動腕部および前記溝部の外表面に形成された励振電極と、前記一対の振動腕部の前記基端側が接続された基部と、を備えた圧電振動片であって、前記溝部の前記基端側の幅は、前記溝部の前記先端側の幅よりも狭く形成されており、前記基部は、前記圧電振動片を外部に実装するマウント電極が外表面に形成されたマウント部と、前記マウント部と前記一対の振動腕部との間に位置するように前記マウント部と前記一対の振動腕部とに連設され、前記一対の励振電極と前記マウント電極とを接続する引き出し電極が外表面に形成された中間部と、を有し、前記マウント部の幅は、前記中間部の幅よりも広く形成されており、前記マウント部の側面と前記中間部の側面とは、マウント部と中間部との段差部において、平面視した際に前記長手方向に対して傾斜する傾斜面を介して連設されていることを特徴とする。
本発明によれば、振動腕部に形成された溝部の基端側の幅は、溝部の先端側の幅よりも狭く形成されている。これにより、振動腕部の基端側の剛性を確保できる。また、本発明では、マウント部と中間部との段差部において、ウエハの結晶方向に沿いやすい傾斜面で連接されているので、マウント部と中間部との傾斜面におけるエッチング残りのばらつきを少なくできる。これにより、中間部を精度よく形成することができる。したがって、良好なドライブレベル特性が得られる理想的な長さに実効値を調整できるので、高いドライブレベル特性を確保することができる。さらに、実効値を理想的な長さとすることで振動漏れを抑制できる。
【0014】
また、前記溝部の前記基端側の端部は、前記基部と前記一対の振動腕部との接続部よりも前記先端側に配置されていることが望ましい。
本発明によれば、溝部の基端側の端部は基部と振動腕部との接続部よりも先端側に配置されているため、振動腕部の基端側の剛性を上げることができる。したがって、ドライブレベル特性をさらに向上することができる。
【0015】
また、前記振動腕部の前記基端側の幅は、前記振動腕部の前記先端側の幅よりも広く形成されていることが望ましい。
本発明によれば、振動腕部の基端側の幅を振動腕部の先端側の幅よりも広く形成することで、振動腕部の基端側の剛性をさらに上げることができる。したがって、ドライブレベル特性をさらに向上することができる。
【0016】
また、本発明の圧電振動子は、上述の圧電振動片を有することを特徴とする。
本発明によれば、高いドライブレベル特性を確保することができる圧電振動子を提供することができる。
【0017】
本発明の発振器は、上述の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする。
本発明の電子機器は、上述の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする。
本発明の電波時計は、上述の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする。
【0018】
本発明にかかる発振器、電子機器および電波時計によれば、高いドライブレベル特性を確保することができる圧電振動子を備えているので、性能が良好な発振器、電子機器および電波時計を製造することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、振動腕部に形成された溝部の基端側の幅は、溝部の先端側の幅よりも狭く形成されている。これにより、振動腕部の基端側の剛性を確保できる。また、本発明では、マウント部と中間部との段差部において、ウエハの結晶方向に沿いやすい傾斜面で連接されているので、マウント部と中間部との傾斜面におけるエッチング残りのばらつきを少なくできる。これにより、中間部を精度よく形成することができる。したがって、良好なドライブレベル特性が得られる理想的な長さに実効値を調整できるので、高いドライブレベル特性を確保することができる。さらに、実効値を理想的な長さとすることで振動漏れを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】圧電振動片の平面図である。
【図2】圧電振動片の基部の拡大図である。
【図3】図1のA−A線における断面図である。
【図4】エッチング時間とドライブレベル特性の関係を表すグラフである。
【図5】第1変形例の圧電振動片の平面図である。
【図6】第2変形例の圧電振動片の平面図である。
【図7】第3変形例の圧電振動片の平面図である。
【図8】圧電振動子の外観斜視図である。
【図9】圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態の平面図である。
【図10】図9のB−B線における断面図である。
【図11】圧電振動子の分解斜視図である。
【図12】発振器の一実施形態を示す構成図である。
【図13】電子機器の一実施形態を示す構成図である。
【図14】電波時計の一実施形態を示す構成図である。
【図15】ドライブレベル特性の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(圧電振動片)
最初に、圧電振動片について図面を参照して説明する。
図1は圧電振動片の平面図である。
図2は圧電振動片の基部の拡大図である。
図3は図1のA−A線における断面図である。
なお、以下の説明では、圧電振動片の長手方向をX方向とし、先端側を+X側とし、基端側を−X側とする。また、圧電振動片の幅方向をY方向とし、一方側を+Y側とし、他方側を−Y側とする。
図1に示すように、圧電振動片1は、水晶やタンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
【0022】
(振動腕部)
図1に示すように、本実施形態の圧電振動片1は、一対の振動腕部3a,3bを備えている。一対の振動腕部3a,3bは、中心軸Oに沿ってX方向に延在し、Y方向に平行配置されている。一対の振動腕部3a,3bの主面(表面および裏面)上には、振動腕部3a,3bのX方向の−X側から+X側に向かって、縦長の一対の溝部5が形成されている。
溝部5は、X方向に沿って、振動腕部3a,3bと基部4との接続部から、振動腕部3a,3bの中間部を若干越える範囲にわたって形成されている。これにより、一対の振動腕部3a,3bは、それぞれ図3に示すようにA−A線における断面形状がH型となっている。
【0023】
また、溝部5の−X側端部の幅は、溝部5の+X側端部の幅よりも狭く形成されている。具体的には、溝部5の+X側において、溝部5の全長の約2/3程度にわたって、溝部5の幅が一定に形成されている。また、溝部5の−X側において、溝部5の全長の約1/3程度にわたって、溝部5の幅が+X側から−X側に向かって漸次テーパ状に狭くなるように形成されている。
溝部5の−X側を狭く形成することにより、振動腕部3a,3bと基部4との接続部付近で、振動腕部側面3c,3dと溝部側面5aとの間に形成される領域S1〜S4を広く確保することができる。したがって、後述する引き出し電極14a,14bを領域S1〜S4に形成する際に、隣接する励振電極10,11が短絡するのを確実に防止することができる。また、溝部5の−X側を狭く形成することにより、領域S1〜S4のY方向における肉厚を厚くすることができるので、振動腕部3a,3bの−X側の剛性が向上する。このため、溝部5を一定幅で形成した場合と比較して、CI値を低く抑制するのと同時に、後述するようにドライブレベル特性を向上させることができる。
【0024】
図1に示すように、振動腕部3a,3bおよび溝部5の外表面には、励振電極10,11(第1の励振電極10および第2の励振電極11)が形成されている。励振電極10,11は、例えば、クロム(Cr)等の単層の導電性膜により形成される。励振電極10,11は、電圧が印加されときに振動腕部3a,3bを互いに接近又は離間する方向に所定の共振周波数で振動させる電極である。一対の励振電極10,11は、一対の振動腕部3a,3bの表面にそれぞれ電気的に切り離された状態でパターニングされて形成されている。具体的には、図1に示すように、第1の励振電極10が、主に−Y側の振動腕部3aの溝部5内と+Y側の振動腕部3bの側面上とに形成され、第2の励振電極11が、主に+Y側の振動腕部3bの溝部5内と−Y側の振動腕部3aの側面上とに形成されている。前述のとおり、領域S1〜S4を広く確保することができるので、振動腕部3a,3bと基部4との接続部付近において、隣接する第1の励振電極10、第2の励振電極11および引き出し電極14a,14bが短絡するのを確実に防止することができる。
【0025】
また、図1に示すように、振動腕部3a,3bの先端部には、所定の周波数の範囲内で振動するように調整(周波数調整)を行うための粗調膜15aおよび微調膜15bからなる重り金属膜15が形成されている。この重り金属膜15を利用して周波数調整を行うことで、一対の振動腕部3a,3bの周波数をデバイスの公称周波数の範囲内に収めることができるようになっている。
【0026】
(基部)
本実施形態の圧電振動片1は、一対の振動腕部3a,3bの−X側を一体的に固定する基部4を有している。基部4は、振動腕部3a,3bに隣接している。そして、基部4に、振動腕部3a,3bの−X側を接続することにより、振動腕部3a,3bが支持されている。
基部4の−X側にはマウント部4aが配置されている。マウント部4aの外表面上には、一対のマウント電極12,13が形成されている。マウント電極12,13は、クロムと金との積層膜であり、水晶と密着性の良いクロムを下地層として成膜した後に、表面に金の薄膜を仕上げ層として成膜することにより形成される。ただし、この場合に限られず、例えば、クロムとニクロムを下地層として成膜した後に、表面にさらに金の薄膜を仕上げ層として成膜しても構わない。
【0027】
また、基部4の+X側には中間部4bが配置されている。中間部4bの外表面上には、マウント電極12,13と励振電極10,11とを接続する引き出し電極14a,14bが形成されている。引き出し電極14a,14bは、マウント電極12,13の下地層と同じ材料のクロムにより、単層膜で形成されている。これにより、マウント電極12,13の下地層を成膜するのと同時に、引き出し電極14a,14bを成膜することができる。ただし、この場合に限られず、例えば、ニッケルやアルミニウム、チタン等により引き出し電極14a,14bを成膜しても構わない。
【0028】
また、図2に示すように、マウント部4aの幅W1は、中間部4bの幅W2よりも広く形成されている。そのため、マウント部4aと中間部4bとの接続部では、マウント部4aのX方向に沿った側面と中間部4bのY方向に沿った端部とが交差して、段差部6が形成される。ここで、本実施形態では、この段差部6をテーパ状として、X方向に対して傾斜角度θを有する傾斜面4cを形成している。傾斜角度θは、ウエハの結晶方向に沿いやすい30°から60°の範囲内で設定される。本実施形態では、傾斜角度θは45°で設定されている。これにより、ウエハの結晶方向により一致させることができる。よって、後述するようにエッチング時間が変化したとしても、エッチング残り量のばらつきを小さくすることができる。したがって、中間部4bの長さをさらに均一な長さに調整することができ、振動漏れによる特性への影響をより安定させることができる。
【0029】
傾斜面4cを形成する理由は以下のとおりである。
圧電振動片1は、水晶のウエハをエッチング加工することにより形成される。このとき、段差部6を形成しようとすると、段差部6の隅部にエッチング残り6aが発生するおそれがある。具体的には、エッチング加工は、圧電振動片の外形に対応して形成されたエッチング保護膜をマスクとし、マスクされていない領域を選択的に除去している。時間の経過とともにエッチングが進行して、マスク形状にならって段差部6の隅部が形成される。ここで、段差部6を形成するマウント部4aの+X側の側面はX方向に略直交しており、ウエハの結晶方向に逆らっているため、エッチングが進行しにくい。このため、エッチング時間が短い場合には段差部6の隅部にエッチング残り6aが多く発生し、エッチング時間が長い場合には段差部6の隅部にエッチング残り6aが多少発生する。
【0030】
上述のように、エッチング残り6aのばらつきが発生すると、実効値Lにバラつきが生じる。特に、エッチング時間によりエッチング残り6aの量が変化するため、エッチング時間によって得られる実効値Lが変化する。これにより、中間部4bの長さを均一な長さに調整するのが困難となり、振動漏れによる特性への影響が安定しないという問題が発生する。そして、実効値Lのばらつきにより振動漏れの特性が変化すると、圧電振動片1の振動モードも変化し、さらにドライブレベル特性も変化する。このように、実効値Lにバラつきが生じ、狙った実効値Lとは異なった実効値L1が得られると、ドライブレベル特性が悪化すると考えられる。
【0031】
図4は、エッチング時間とドライブレベル特性の関係を表すグラフである。
図4において、F1は段差部6に傾斜面4cを設けた場合(本実施形態)のドライブレベル特性のグラフであり、F2は段差部6に傾斜面4cを設けていない場合(従来手法)のドライブレベル特性のグラフである。Tはエッチング時間を表し、Δfは振動周波数の変動値を表している。なお、Δfの絶対値が小さいほどドライブレベル特性が良好である。
従来手法の場合は、エッチング時間Tがばらつくと実効値Lのばらつきが発生する。そのため、従来手法の場合のドライブレベル特性F2は、特定のエッチング時間T2でのみ最適な実効値Lが得られ、良好なドライブレベル特性が得られる。したがって、特定のエッチング時間T2からエッチング時間がずれると、Δfがマイナス側に大きくなりドライブレベル特性が悪化する。
【0032】
一方、本実施形態の場合は、段差部6をテーパ状としているため、マウント部4aと中間部4bとは、ウエハの結晶方向に沿いやすい傾斜面4cで連接される。したがって、マウント部4aと中間部4bとの傾斜面4cにおいて、エッチング時間の変化に伴って傾斜面4cの形成具合が左右され難い。つまり、エッチング時間を長く或いは短くしても、傾斜面4cの傾斜角度が変化し難く、エッチング時間のばらつきによるエッチング残りのばらつきを少なくできる。そのため、本実施形態の場合のドライブレベル特性F1は、エッチング時間T1からT3の広範囲に渡って最適な実効値Lが得られ、良好なドライブレベル特性が得られる。このように、傾斜面4cを形成することで、良好なドライブレベル特性が得られる。以上の理由から、段差部6をテーパ状として傾斜面4cを形成している。
【0033】
本実施形態によれば、図1に示すように、振動腕部3a,3bに形成された溝部5の−X側の幅は、溝部5の+X側の幅よりも狭く形成されている。これにより、振動腕部3a,3bの−X側の剛性を確保できる。また、本発明では、図2に示すように、マウント部4aと中間部4bとの段差部6において、ウエハの結晶方向に沿いやすい傾斜面4cで連接されているので、マウント部4aと中間部4bとの傾斜面4cにおけるエッチング残りのばらつきを少なくできる。これにより、中間部4bを精度よく形成することができる。したがって、振動腕部3a,3bの−X側の剛性を確保しつつ、良好なドライブレベル特性が得られる理想的な長さに実効値Lを調整できるので、高いドライブレベル特性を確保することができる。さらに、エッチング時間による実効値Lのばらつきを抑制して、実効値Lを理想的な長さとすることができるので、効果的に振動漏れを抑制できる。
【0034】
(実施形態の第1変形例、溝部の基端側における端部の位置変更)
次に、実施形態の第1変形例について説明する。
図5は、実施形態の第1変形例の説明図である。
上述の実施形態では、溝部5の−X側の端部5bが基部4と振動腕部3a,3bとの接続部近傍に配置されていた(図1参照)。しかし、第1変形例では、図5に示すように溝部5の−X側の端部5bが基部4と振動腕部3a,3bとの接続部よりも若干+X側に配置されている点で異なっている。なお、溝部5以外の構成は上述した実施形態と同一であるため説明を省略する。
第1変形例では、溝部5の−X側の端部5bは、基部4と振動腕部3a,3bとの接続部よりも+X側に配置されている。具体的には、図5に示すように、基部4と振動腕部3a,3bとの接続部から、+X側に距離αだけ離間した位置に溝部5の−X側の端部5bが配置されている。このため、基部4と振動腕部3a,3bとの接続部から+X側に向かって距離αの範囲には溝部5が形成されていないので、+Y方向および厚み方向で振動腕部3a,3bの肉厚を厚く確保することができる。これにより、振動腕部3a,3bの−X側に溝部5が形成されている場合と比較して、前記距離αの範囲において振動腕部3a,3bの剛性を向上させることができる。したがって、振動腕部3a,3bの−X側の剛性をさらに確保しつつ、高いドライブレベル特性が確保できる長さに実効値Lを調整できるので、ドライブレベル特性をさらに向上することができる。
【0035】
(実施形態の第2変形例、振動腕部の基端側の形状変更)
次に、実施形態の第2変形例について説明する。
図6は、実施形態の第2変形例の説明図である。
上述の実施形態では、振動腕部3a,3bは略同一の幅で形成されていた(図1参照)。しかし、第2変形例では、図6に示すように、振動腕部3a,3bの−X側の幅が+X側の幅よりも広く形成されている点で異なっている。なお、振動腕部3a,3b以外の構成は上述した実施形態と同一であるため説明を省略する。
第2変形例では、基部4と振動腕部3a,3bとの接続部から+X側に向かって距離βの範囲において、+X側からに−X側に行くに従い振動腕部3a,3bの幅が漸次広がるように形成されている。このように、振動腕部3a,3bの−X側の幅を振動腕部3a,3bの+X側の幅よりも広く形成することで、前記距離βの範囲において振動腕部3a,3bの剛性を上げることができる。したがって、振動腕部3a,3bの−X側の剛性をさらに確保しつつ、高いドライブレベル特性が確保できる長さに実効値Lを調整できるので、ドライブレベル特性をさらに向上することができる。
【0036】
(実施形態の第3変形例、段差状の溝部)
次に、実施形態の第3変形例について説明する。
図7は、実施形態の第3変形例の説明図である。
上述の実施形態では、溝部5の幅を漸次テーパ状に狭くすることにより、溝部5の−X側の幅を他の部分の幅よりも狭く形成していた。しかし、第3変形例では、図7に示すように、溝部5の−X側の幅を所定位置から段差状に狭くなるように形成している点で異なっている。なお、溝部5の形状以外の構成は上述した実施形態と同一であるため説明を省略する。
第3変形例では、溝部5の−X側の幅は、基部4と振動腕部3a,3bとの接続部から+X側に向かって、距離γの位置から段差状に急激に狭くなるように形成されている。このように溝部5の幅を段差状に狭くしても、実施形態の溝部5の幅を漸次テーパ状に狭くしたときと同様の効果が得られる。すなわち、溝部5の−X側を狭く形成することにより、振動腕部3a,3bと基部4との接続部付近で、振動腕部側面3c,3dと溝部側面5aとの間に形成される領域S1〜S4を広く確保することができる。また、領域S1〜S4のY方向における肉厚を厚くすることができるので、振動腕部3a,3bの−X側の剛性が向上する。したがって、溝部5を一定幅で形成した場合と比較して、CI値を低く抑制するのと同時に、ドライブレベル特性を向上させることができる。
【0037】
(圧電振動子)
次に、本実施形態の圧電振動片を用いた圧電振動子について説明する。
図8は圧電振動子の外観斜視図である。
図9は圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態の平面図である。
図10は図2のB−B線における断面図である。
図11は図1に示す圧電振動子の分解斜視図である。
なお、ベース基板31のリッド基板32との接合面を第1面Uとし、ベース基板31の外側の面を第2面Sとして説明する。また、図11においては、図面を見易くするために励振電極10,11、引き出し電極14a,14b、マウント電極12,13および重り金属膜15の図示を省略している。
図8から図11に示すように、本実施形態の圧電振動子30は、ベース基板31およびリッド基板32が接合膜37を介して陽極接合されたパッケージと、パッケージのキャビティCに収納された圧電振動片1と、を備えた表面実装型の圧電振動子30である。
図8、図10および図11に示すように、ベース基板31およびリッド基板32は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる陽極接合可能な基板であり、略板状に形成されている。リッド基板32におけるベース基板31との接合面側には、圧電振動片1を収容するキャビティ用凹部32aが形成されている。
【0038】
リッド基板32におけるベース基板31との接合面側の全体に、陽極接合用の接合膜37が形成されている。すなわち接合膜37は、キャビティ用凹部32aの内面全体に加えて、キャビティ用凹部32aの周囲の額縁領域に形成されている。本実施形態の接合膜37はシリコン膜で形成されているが、接合膜37をアルミニウム(Al)やCr等で形成することも可能である。後述するように、この接合膜37とベース基板31とが陽極接合され、キャビティCが真空封止されている。
【0039】
図10に示すように、圧電振動子30は、ベース基板31を厚さ方向に貫通し、キャビティCの内側と圧電振動子30の外側とを導通する貫通電極35,36を備えている。貫通電極35,36は、ベース基板31を貫通する貫通孔33,34内に配置されている。
貫通孔33,34の中心軸に垂直な方向の断面形状は、円形状となるように形成されている。また、図9および図10に示すように、貫通孔33,34は、圧電振動子30を形成したときにキャビティC内に収まるように形成される。より詳しく説明すると、貫通孔33,34は、圧電振動片1の基部4側に対応した位置に一方の貫通孔33が形成され、振動腕部3a,3bの+X側に対応した位置に他方の貫通孔34が形成される。
【0040】
貫通電極35,36は、例えば貫通孔33,34に金属ピン(不図示)を挿入したのち、貫通孔33,34と金属ピンとの間にガラスフリットを充填して焼成することで形成される。このように、金属ピンとガラスフリットとで貫通孔33,34を完全に塞ぐことができるので、キャビティC内の気密を維持しつつ、後述する引き回し電極38,39と外部電極40,41とを導通させる役割を担っている。
【0041】
図9から図11に示すように、ベース基板31の第1面U側には、一対の引き回し電極38,39がパターニングされている。一対の引き回し電極38,39のうち、一方の引き回し電極38は、一方の貫通電極35の真上に位置するように形成されている。また、他方の引き回し電極39は、一方の引き回し電極38に隣接した位置から、振動腕部3a,3bに沿って+X側に引き回しされた後、他方の貫通電極36の真上に位置するように形成されている。
【0042】
そして、これら一対の引き回し電極38,39上にそれぞれ金等からなる先細り形状のバンプBが形成されており、バンプBを利用して圧電振動片1の一対のマウント電極12,13が実装されている。これにより、圧電振動片1の一方のマウント電極13が、一方の引き回し電極38を介して一方の貫通電極35に導通し、他方のマウント電極12が、他方の引き回し電極39を介して他方の貫通電極36に導通するようになっている。
【0043】
またベース基板31の第2面Sには、一対の外部電極40,41が形成されている。一対の外部電極40,41は、ベース基板31のX方向の両端部に形成され、一対の貫通電極35,36に対してそれぞれ電気的に接続されている。
【0044】
このように構成された圧電振動子30を作動させる場合には、ベース基板31に形成された外部電極40,41に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片1の第1の励振電極10および第2の励振電極11に電圧を印加することができるので、一対の振動腕部3a,3bを接近および離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部3a,3bの振動を利用して、時刻源や制御信号のタイミング源、リファレンス信号源等として圧電振動子30を利用することができる。
【0045】
(発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図12を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器110は、図12に示すように、圧電振動子30を、集積回路111に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器110は、コンデンサ等の電子素子部品112が実装された基板113を備えている。基板113には、発振器用の集積回路111が実装されており、この集積回路111の近傍に、圧電振動子30の圧電振動片が実装されている。これら電子素子部品112、集積回路111及び圧電振動子30は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0046】
このように構成された発振器110において、圧電振動子30に電圧を印加すると、圧電振動子30内の圧電振動片が振動する。この振動は、圧電振動片が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路111に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路111によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子30が発振子として機能する。
また、集積回路111の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0047】
本実施形態の発振器110によれば、高いドライブレベル特性を確保することができる圧電振動子30を備えているので、性能が良好な発振器110を製造することができる。
【0048】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図13を参照して説明する。なお電子機器として、前述した圧電振動子30を有する携帯情報機器120を例にして説明する。
始めに本実施形態の携帯情報機器120は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0049】
次に、本実施形態の携帯情報機器120の構成について説明する。この携帯情報機器120は、図13に示すように、圧電振動子30と、電力を供給するための電源部121とを備えている。電源部121は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部121には、各種制御を行う制御部122と、時刻等のカウントを行う計時部123と、外部との通信を行う通信部124と、各種情報を表示する表示部125と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部126とが並列に接続されている。そして、電源部121によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0050】
制御部122は、各機能部を制御して音声データの送信や受信、現在時刻の計測、表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部122は、予めプログラムが書き込まれたROMと、該ROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、該CPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0051】
計時部123は、発振回路やレジスタ回路、カウンタ回路、インターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子30とを備えている。圧電振動子30に電圧を印加すると圧電振動片が振動し、該振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部122と信号の送受信が行われ、表示部125に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0052】
通信部124は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部127、音声処理部128、切替部129、増幅部130、音声入出力部131、電話番号入力部132、着信音発生部133及び呼制御メモリ部134を備えている。
無線部127は、音声データ等の各種データを、アンテナ135を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部128は、無線部127又は増幅部130から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部130は、音声処理部128又は音声入出力部131から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部131は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0053】
また、着信音発生部133は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部129は、着信時に限って、音声処理部128に接続されている増幅部130を着信音発生部133に切り替えることによって、着信音発生部133において生成された着信音が増幅部130を介して音声入出力部131に出力される。
なお、呼制御メモリ部134は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部132は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0054】
電圧検出部126は、電源部121によって制御部122等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部122に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部124を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部126から電圧降下の通知を受けた制御部122は、無線部127、音声処理部128、切替部129及び着信音発生部133の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部127の動作停止は、必須となる。更に、表示部125に、通信部124が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0055】
すなわち、電圧検出部126と制御部122とによって、通信部124の動作を禁止し、その旨を表示部125に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部125の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部124の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部136を備えることで、通信部124の機能をより確実に停止することができる。
【0056】
本実施形態の携帯情報機器120によれば、高いドライブレベル特性を確保することができる圧電振動子30を備えているので、性能が良好な携帯情報機器120を製造することができる。
【0057】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図14を参照して説明する。
本実施形態の電波時計140は、図14に示すように、フィルタ部141に電気的に接続された圧電振動子30を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、前述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0058】
以下、電波時計140の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ142は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ143によって増幅され、複数の圧電振動子30を有するフィルタ部141によって濾波、同調される。
本実施形態における圧電振動子30は、前記搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部148、149をそれぞれ備えている。
【0059】
更に、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路144により検波復調される。
続いて、波形整形回路145を介してタイムコードが取り出され、CPU146でカウントされる。CPU146では、現在の年や積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC148に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部148、149は、前述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0060】
なお、前述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計140を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子30を必要とする。
【0061】
本実施形態の電波時計140によれば、高いドライブレベル特性を確保することができる圧電振動子30を備えているので、性能が良好な電波時計140を製造することができる。
【0062】
なお、この発明は上述した実施の形態に限られるものではない。
本実施形態では、表面実装型の圧電振動子に本発明の圧電振動片を採用している。しかし、これに限らず、例えばシリンダーパッケージタイプの圧電振動子に本発明の圧電振動片を採用しても構わない。
【符号の説明】
【0063】
1・・・圧電振動片 4・・・基部 4a・・・マウント部 4b・・・中間部 4c・・・傾斜面 3(3a,3b)・・・振動腕部 5・・・溝部 6・・・段差部 10,11・・・励振電極 12,13・・・マウント電極 14a,14b・・・引き出し電極 30・・・圧電振動子 110・・・発振器 120・・・携帯情報機器(電子機器) 140・・・電波時計 S40・・・実装工程
【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向に並んで配置された一対の振動腕部と、
前記振動腕部の両主面上に、前記振動腕部の長手方向の基端側から前記長手方向の先端側に向かって形成された溝部と、
前記振動腕部および前記溝部の外表面に形成された励振電極と、
前記一対の振動腕部の前記基端側が接続された基部と、
を備えた圧電振動片であって、
前記溝部の前記基端側の幅は、前記溝部の前記先端側の幅よりも狭く形成されており、
前記基部は、
前記圧電振動片を外部に実装するマウント電極が外表面に形成されたマウント部と、
前記マウント部と前記一対の振動腕部との間に位置するように前記マウント部と前記 一対の振動腕部とに連設され、前記一対の励振電極と前記マウント電極とを接続する引 き出し電極が外表面に形成された中間部と、
を有し、
前記マウント部の幅は、前記中間部の幅よりも広く形成されており、
前記マウント部の側面と前記中間部の側面とは、マウント部と中間部との段差部において、平面視した際に前記長手方向に対して傾斜する傾斜面を介して連設されていることを特徴とする圧電振動片。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電振動片であって、
前記溝部の前記基端側の端部は、前記基部と前記一対の振動腕部との接続部よりも前記先端側に配置されていることを特徴とする圧電振動片。
【請求項3】
請求項1または2に記載の圧電振動片であって、
前記振動腕部の前記基端側の幅は、前記振動腕部の前記先端側の幅よりも広く形成されていることを特徴とする圧電振動片。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の圧電振動片を有することを特徴とする圧電振動子。
【請求項5】
請求項4に記載の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項6】
請求項4に記載の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項4に記載の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。
【請求項1】
幅方向に並んで配置された一対の振動腕部と、
前記振動腕部の両主面上に、前記振動腕部の長手方向の基端側から前記長手方向の先端側に向かって形成された溝部と、
前記振動腕部および前記溝部の外表面に形成された励振電極と、
前記一対の振動腕部の前記基端側が接続された基部と、
を備えた圧電振動片であって、
前記溝部の前記基端側の幅は、前記溝部の前記先端側の幅よりも狭く形成されており、
前記基部は、
前記圧電振動片を外部に実装するマウント電極が外表面に形成されたマウント部と、
前記マウント部と前記一対の振動腕部との間に位置するように前記マウント部と前記 一対の振動腕部とに連設され、前記一対の励振電極と前記マウント電極とを接続する引 き出し電極が外表面に形成された中間部と、
を有し、
前記マウント部の幅は、前記中間部の幅よりも広く形成されており、
前記マウント部の側面と前記中間部の側面とは、マウント部と中間部との段差部において、平面視した際に前記長手方向に対して傾斜する傾斜面を介して連設されていることを特徴とする圧電振動片。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電振動片であって、
前記溝部の前記基端側の端部は、前記基部と前記一対の振動腕部との接続部よりも前記先端側に配置されていることを特徴とする圧電振動片。
【請求項3】
請求項1または2に記載の圧電振動片であって、
前記振動腕部の前記基端側の幅は、前記振動腕部の前記先端側の幅よりも広く形成されていることを特徴とする圧電振動片。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の圧電振動片を有することを特徴とする圧電振動子。
【請求項5】
請求項4に記載の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項6】
請求項4に記載の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項4に記載の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−39509(P2012−39509A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179510(P2010−179510)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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