説明

圧電発振器とその製造方法

【課題】
本発明の目的は、取り扱いが簡便で、かつ、生産性にも優れた小型の圧電発振器を提供することにある。
【解決手段】
圧電素板11に励振用電極12を形成した圧電振動子13と、発振回路を形成した半導体集積部品37と蓋体4とから構成する圧電発振器において、半導体集積部品37のデータ書込部31は半導体集積部品37の側面に沿って形成されており、半導体集積部品37と圧電振動子13を直接実装し電気的な接続と固着がなされており、半導体集積部品37の周囲に絶縁封止部材10を介して蓋体4が接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯用通信機器等の電子機器に用いられる圧電発振器とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、携帯用通信機器等の電子機器に圧電発振器が用いられている。
【0003】
かかる従来の圧電発振器としては、例えば図5に示す如く、内部に図中には示されていないが、圧電振動子が収容されている第1の容器体23を、キャビティー部25内に前記の圧電振動子の振動に基づいて発振出力を制御する半導体集積部品26やコンデンサ等の電子部品素子が収容されている第2の容器体21上に取着させた構造のものが知られており、かかる圧電発振器をマザーボード等の外部配線基板上に載置させた上、第2の容器体21の下面に設けられている外部端子を外部配線基板の配線に半田接合することにより外部配線基板上に実装される。
【0004】
なお、第1の容器体23や第2の容器体21は、通常、セラミック材料によって形成されており、その内部や表面には配線導体が形成され、従来周知のセラミックグリーンシート積層法等を採用することにより製作される。
【0005】
また、前記半導体集積部品26の内部には、圧電振動子の温度特性に応じて作成された温度補償データに基づいて圧電発振器の発振周波数を補正するための温度補償回路が設けられており、圧電発振器を組み立てた後、上述の温度補償データを半導体集積部品26のメモリ内に格納すべく、第2の容器体21の下面や外側面等には温度補償データ書込用の温度補償制御端子27が設けられていた。この温度補償制御端子27に温度補償データ書込装置のプローブ針を当てて半導体集積部品26内のメモリに温度補償データを入力することにより、温度補償データが半導体集積部品26のメモリ内に格納される。
【特許文献1】特開2004−228895号公報
【0006】
なお、出願人は前記した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を、本件出願時までに発見するに至らなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、圧電発振器が小型化されると第2の容器体21内に収容される半導体集積部品26も小型化が必要となるが半導体集積部品26の小型化にも限界があった。よって、従来の第2の容器体21の構造では半導体集積部品26を収納するのが困難となり、圧電発振器の小型化の障害となっていた。
【0008】
本発明は上記欠点に鑑み考え出されたものであり、従ってその目的は、取り扱いが簡便で、かつ、生産性にも優れた小型の圧電発振器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の圧電発振器は、圧電素板に励振用電極を形成した圧電振動子と、発振回路を形成した半導体集積部品と蓋体とから構成する圧電発振器において、前記半導体集積部品のデータ書込部は前記半導体集積部品の側面に沿って形成されており、前記半導体集積部品と前記圧電振動子を直接実装し電気的な接続と固着がなされており、前記半導体集積部品の周囲に絶縁封止部材を介して蓋体が接合されていることを特徴とする。なお、データ書込部では温度補償データの書込端子として利用するものである。
【0010】
また、本発明の圧電発振器の製造方法は、圧電素板に励振用電極を形成した圧電振動子と、発振回路を形成した半導体集積部品と蓋体とから構成する圧電発振器の製造方法において、前記半導体集積部品の外周部に絶縁性封止部材を形成する工程と、前記半導体集積部品に直接前記圧電振動子を実装し固着する工程と、前記絶縁性封止部材に合致するように前記蓋体を搭載し炉中で接合する工程とにより構成することを特徴とする。
【0011】
また本発明の圧電発振器は上記構成において、絶縁性封止部材にガラスを成分とする封止材を使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の圧電発振器によれば、半導体集積部品のデータ書込部は半導体集積部品の側面に沿って形成されており、半導体集積部品と圧電振動子を直接実装し電気的な接続と固着がなされており、半導体集積部品の周囲に絶縁封止部材を介して蓋体が接合されていることにより、半導体集積部品に従来は半導体集積部品を収容する容器体に機能させていた圧電振動子と半導体集積部品との電気的接続機能を半導体集積部品に持たせることが可能となり、半導体集積部品を収容する容器体を不要とすることが可能となり、またさらに半導体集積部品と圧電振動子を直接実装し電気的な接続と固着がなされていることから、前記圧電振動子を収容する容器も不要となり、圧電振動子、半導体集積部品、蓋体のみの最低限必要な部材だけで圧電発振器を構成することが可能となり、圧電発振器の低背化及び工数削減が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図においての同一の符号は同じ対象を示すものとする。
【0014】
図1は本発明の実施形態にかかる圧電発振器の断面図である。図1に図示する圧電発振器は大略的に言って、蓋体4と、圧電振動子13、半導体集積部品37とで構成されている。図1に図示する圧電発振器は、半導体集積部品37に圧電振動子13を搭載し、半導体集積部品37の下面には外部端子電極9が設けられ、その底面にはマザーボード等の実装基板と電気的接続を行う金属バンプ電極5が半導体集積部品37の四隅部と半導体集積部品37の電極パッド38と対応する位置に形成されている。
【0015】
図2は本発明の圧電発振器の底面図を示したものである。また、図3は本発明の実施形態である圧電発振器の半導体集積部品37に圧電振動子13を搭載する前の半導体集積部品37の上面図であり、図4は半導体集積部品37に圧電振動子13を搭載した状態を示す半導体集積部品37の上面図である。図3より絶縁性封止部材10は半導体集積部品37の上面の外周を取り囲むように形成されている。
【0016】
図1において蓋体4は、例えば、ガラス−セラミック、アルミナセラミックス等のセラミック材料または42アロイやコパール、リン青銅等の金属材料から成る蓋体4から成り、蓋体4の内側に位置する半導体集積部品37の上面に導電性接着剤14を介して圧電振動子13が実装される。ここで蓋体4はその内部に、具体的には、半導体集積部品37の上面に圧電振動子13を収容して気密封止するためのものである。
【0017】
一方、半導体集積部品37の上面に搭載される圧電振動子13は、所定の結晶軸でカットした圧電素板11の両主面に一対の励振用電極12を被着・形成してなり、外部からの変動電圧が一対の励振用電極12を介して圧電振動子13に印加されると、所定の周波数で厚みすべり振動を起こす。
【0018】
また一方で図1、図2に図示するように、上述した半導体集積部品37の下面には、四隅部に外部端子電極9が形成されている。これら四隅部の外部端子電極9の長辺側には、半導体集積部品37の電極パッド38から接続されたデータ書込部31が形成されており、データ書込部31は半導体集積部品37の側面で温度補償制御端子32と接続されている。要するに、データ書込部31では温度補償データの書込端子として利用するものである。また、半導体集積部品37の表面(回路形成面)の配線は半導体集積部品37の側面を経由して圧電振動子13と対応する電極同士が電気的に接続されている。また、上述のようにデータ書込部31は図1、図2に示すように半導体集積部品37の側面の温度補償制御端子32に接続され、温度補償制御端子32により温度補償データ等の書込が可能となる。
【0019】
ここで半導体集積部品37はその回路形成面(表面)に、周囲の温度状態を検知する感温素子、圧電振動子13の温度特性を補償する温度補償制御端子32を有し、温度補償制御端子32からの温度補償データに基づいて前記圧電振動子13の振動特性を温度変化に応じて補正する温度補償回路、温度補償回路に接続されて所定の発振出力を生成する発振回路等が設けられており、発振回路で生成された発振出力は、外部に出力された後、例えばクロック信号等の基準信号として利用されることとなる。
【0020】
次に上述した圧電発振器の製造方法について、本発明の実施形態である図2〜図4を用いて説明する。 まず、図3に図示するような、半導体ウエハ基板から切断された半導体集積部品37を準備する。次に、図3に図示するように半導体集積部品37の外周部に絶縁性封止部材10を形成する。次に図4に示すように半導体集積部品37に直接圧電振動子13を導電性接着剤14を介して実装し固着する。次に絶縁性封止部材10に合致するように蓋体4を搭載しリフロー炉を通過させ接合することで図1に示す圧電発振器が完成する。
【0021】
ここで用いる蓋体4としては、例えば、ガラス−セラミック、アルミナセラミックス等のセラミック材料または42アロイやコバール,リン青銅等の金属から成る厚みが60μm〜100μmの金属板が用いられる。このような蓋体4ではセラミック材料を用いる場合にも、外部からのノイズ対策として蓋体4の内側に電極膜を形成するのが好ましい。また、蓋体4と半導体集積部品37との封止に用いる絶縁性封止部材10としてはガラスを主成分とする低融点のガラス部材を用いているのが好ましい。
【0022】
ここで、本発明の特徴部分は上述のように、圧電発振器を構成する部材が蓋体4と圧電振動子13と半導体集積部品37の圧電発振器の機能を実現する必要最低限の部材で構成可能となるため、部材コスト削減、工数削減が可能となり、さらに圧電振動子13と半導体集積部品37を収容する容器も不要となるので、小型化、低背化も可能となる。
【0023】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更改良等が可能である。
【0024】
例えば上述の実施形態においては、半導体集積部品37のデータ書込部31は半導体集積部品37の側面に沿って形成されているが半導体集積部品37の内層に形成しても構わない。この場合も本発明の技術的範囲に含まれることは言うまでも無い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態にかかる圧電発振器の概略の断面図である。
【図2】本発明の圧電発振器の底面図である。
【図3】本発明の実施形態である圧電発振器の半導体集積部品に圧電振動子を搭載する前の半導体集積部品の上面図である。
【図4】図3に圧電振動子を搭載した状態を示す半導体集積部品の上面図である。
【図5】従来の圧電発振器の概略の斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
4・・・蓋体
5・・・金属バンプ電極
9・・・外部端子電極
10・・・絶縁性封止部材
11・・・圧電素板
12・・・励振用電極
13・・・圧電振動子
14・・・導電性接着剤
31・・・データ書込部
32・・・温度補償制御端子
37・・・半導体集積部品
38・・・電極パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素板に励振用電極を形成した圧電振動子と、発振回路を形成した半導体集積部品と蓋体とから構成する圧電発振器において、
前記半導体集積部品のデータ書込部は前記半導体集積部品の側面に沿って形成されており、前記半導体集積部品と前記圧電振動子を直接実装し電気的な接続と固着がなされており、前記半導体集積部品の周囲に絶縁封止部材を介して蓋体が接合されていることを特徴とする圧電発振器。
【請求項2】
圧電素板に励振用電極を形成した圧電振動子と、発振回路を形成した半導体集積部品と蓋体とから構成する圧電発振器の製造方法において、
前記半導体集積部品の外周部に絶縁性封止部材を形成する工程と、前記半導体集積部品に直接前記圧電振動子を実装し固着する工程と、前記絶縁性封止部材に合致するように前記蓋体を搭載し炉中で接合する工程とにより構成することを特徴とする圧電発振器の製造方法。
【請求項3】
請求項1と請求項2に記載の絶縁性封止部材にガラスを成分とする封止材を使用することを特徴とする圧電発振器とその製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−324933(P2007−324933A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−152855(P2006−152855)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】