説明

基板ヒータ

【課題】ヒータの低背化と昇温及び冷却の短時間化を図ることができる基板ヒータを提供する。
【解決手段】基板ヒータ1は、ウエハWを載置するヒータプレート2と、ヒータプレート2の下面に設けられたヒータ電極3と、ヒータプレート2と等しい熱伝導率を有する緩衝プレート4と、冷却プレート5と、複数のピストン6とを備える。緩衝プレート4とヒータプレート2とは、その間に間隔d1の第1の空間S1を画成している。また、冷却プレート5は、緩衝プレート4を支持する複数のシャフト42に、昇降自在に組み付けられている。ピストンロッド61は、冷却プレート5を緩衝プレート4の下方に位置させて、間隔d2の第2の空間S2を緩衝プレート4と冷却プレート5との間に形成する。また、ピストン6は、冷却プレート5を上昇させて、緩衝プレート4に接触させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体製造装置等で加工される基板の温度を調節するための基板ヒータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の基板ヒータとしては、例えば、半導体製造用の熱CVD装置、プラズマCVD装置、プラズマエッチング装置等に実装して、ウエハの温度を調節するヒータがある(例えば、特許文献1参照)。
図10に示すように、このヒータ100は、シャフト110上にウエハ載置盤120を取り付け、ヒータ電極130をウエハ載置盤120内に収納した構成になっており、シャフト110を装置の床210等に起立固定させることで、装置に実装される。
かかる状態で、ウエハWをウエハ載置盤120上に載置し、ヒータ電極130の電圧をオン又はオフすることで、ウエハを昇温又は冷却することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】登録実用新案第3156031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来の技術では、次のような問題がある。
ヒータ電極130を収納したウエハ載置盤120をシャフト110に直接接続した構成になっているので、ヒータ電極130によるウエハ載置盤120の熱が、シャフト110を通じて装置の床210に伝搬して、装置を高温に加熱するおそれがある。
そこで、従来のヒータ100では、シャフト110を長くして装置200側の加熱を抑えるように工夫をしている。
しかしながら、このように、ヒータ100のシャフト110を長くすると、ヒータ100が高くなるので、装置自体も高くなり、大型化してしまう。また、ヒータ電極130の電圧をオン又はオフするだけで、ウエハを昇温又は冷却するようにしているので、ウエハWを所望温度まで昇温又は冷却する時間が長くかかり、スループットが非常に悪い。
【0005】
この発明は、上述した課題を解決するためになされたもので、ヒータの低背化と昇温及び冷却の短時間化を図ることができる基板ヒータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1の発明に係る基板ヒータは、基板を載置するためのヒータプレートと、ヒータプレートに設けられたヒータ電極と、ヒータプレートとほぼ等しい熱伝導率を有し、且つヒータプレートの下方に所定間隔をおいて対向配置されて、ヒータプレートとの間に断熱用の第1の空間を形成する緩衝プレートと、緩衝プレートの下方に昇降自在に対向配置され、内部に冷媒が流れる冷却プレートと、冷却プレートを上昇させて、緩衝プレートに接触させることができ、又は、当該冷却プレートを下降させて、冷却プレートと緩衝プレートとの間に断熱用の第2の空間を形成することができる昇降機構とを備える構成とした。
かかる構成により、基板ヒータを半導体製造装置内に実装し、基板をヒータプレートに載置させると共に、冷却プレートを、昇降機構によって下降させ、冷却プレートと緩衝プレートとの間に断熱用の第2の空間を形成することができる。
かかる状態で、ヒータ電極の電圧をオンにすると、ヒータプレートが加熱し、基板がヒータプレートを通じて所定温度まで昇温される。
このとき、ヒータプレート内の熱は、基板が載置された上面側に向かうと共に、緩衝プレート側を向く下面側にも向かう。この下面側に向かう熱は、緩衝プレートを通じて半導体製造装置に至り、装置を加熱するおそれがある。
しかし、この発明の基板ヒータでは、ヒータプレートと緩衝プレートとが所定間隔で対向配置され、断熱用の第1の空間が、ヒータプレートと緩衝プレートとの間に形成されているので、ヒータプレートの下面側に向かった熱の大部分は、この第1の空間によって阻止される。
そして、この第1の空間によって阻止されずに緩衝プレートに至った熱は、冷却プレートを通じて装置側に向かおうとする。
しかしながら、この発明では、冷却プレートと緩衝プレートとの間に断熱用の第2の空間が形成されているので、緩衝プレートに至った熱は、この第2の空間によって阻止される。
そして、万が一、この第2の空間によって阻止されずに、装置側に向かう熱が存在する場合には、冷却プレート内部に冷媒を流しておくことで、第2の空間を伝わってきた熱をこの冷却プレートによって冷却することができる。
このように、この発明の基板ヒータによれば、基板の加熱時に、装置側に向かう熱を、第1及び第2の空間という二重の断熱構造によって、阻止することができる。さらに、冷却プレートを用いることで、第1及び第2の空間と冷却プレートという三重の断熱構造によって、ほぼ完全に阻止することができる。
【0007】
そして、基板への加熱を中止又は終了する場合には、ヒータ電極をオフにすると共に、冷却プレートを、昇降機構によって上昇させ、冷却プレートを緩衝プレートに完全に接触させる。
かかる状態で、冷却プレート内部に冷媒を流しておくことで、緩衝プレート、第1の空間、ヒータプレートが、冷却プレートによって順次冷却されていく。
このとき、緩衝プレートの熱伝導率が、ヒータプレートの熱伝導率とほぼ等しいので、ヒータプレートの冷却を速やかに行われる。
ところで、冷却プレートを、ヒータプレートに直接接触させて冷却させることも考えられるが、冷却プレートを高温のヒータプレートに直接接触させて、急激に冷却すると、ヒータプレートが破損するおそれがある。このため、この発明では、ヒータプレートを直接冷却せず、緩衝プレート、第1の空間、ヒータプレートの順で下方から漸次冷却するので、急冷によるヒータプレートの破損を防止することができる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の基板ヒータにおいて、ヒータプレートと緩衝プレートとを、窒化アルミニュウムで形成した構成とする。
【0009】
請求項3の発明に係る基板ヒータは、基板を載置するためのヒータプレートと、ヒータプレートに設けられたヒータ電極と、ヒータプレートよりも小さな熱伝導率を有し、且つヒータプレートの下方に所定間隔をおいて対向配置されて、ヒータプレートとの間に断熱用の空間を形成する断熱プレートとを備える構成とした。
かかる構成により、基板ヒータを半導体製造装置内に実装し、基板をヒータプレートに載置させた後、ヒータ電極の電圧をオンにすると、ヒータプレートが加熱し、基板がヒータプレートを通じて所定温度まで昇温される。
このとき、ヒータプレート内の熱は、基板が載置された上面側に向かうと共に、断熱プレート側を向く下面側にも向かう。この下面側に向かう熱は、断熱プレートを通じて半導体製造装置に至り、装置を加熱するおそれがある。
しかし、この発明の基板ヒータでは、ヒータプレートと断熱プレートとが所定間隔で対向配置され、断熱用の空間が形成されているので、ヒータプレートの下面側に向かった熱の大部分は、この空間によって阻止される。また、断熱プレートがヒータプレートよりも小さな熱伝導率を有しているので、断熱プレートに至った熱は、この断熱プレートによって阻止される。
このように、この発明の基板ヒータによれば、基板の加熱時に、装置側に向かう熱を、断熱用の空間と断熱プレートという二重の断熱構造によって、阻止することができる。
そして、基板への加熱を中止又は終了する場合には、ヒータ電極をオフにすることで、基板とヒータプレートとを、自然冷却することができる。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3に記載の基板ヒータにおいて、ヒータプレートを、窒化アルミニュウムで形成し、断熱プレートを、ベスペルで形成した構成とする。
【発明の効果】
【0011】
以上詳しく説明したように、請求項1の発明に係る基板ヒータによれば、基板の加熱時に、装置側に向かう熱を、第1及び第2の空間という二重の断熱構造によって、阻止することができ、さらに、冷却プレートを用いることで、三重の断熱構造によって、ほぼ完全に阻止することができるので、ヒータプレートと装置との距離を大きくするために、基板ヒータの高さを高くする必要がなく、しかも、基板ヒータを、薄い板状のプレートと空間とで構成することができるので、基板ヒータ全体の低背化を図ることができる。この結果、基板ヒータを実装する半導体製造装置等の装置の小型化が可能となる。さらに、従来の技術と異なり、冷却プレートによってヒータプレートや基板を積極的に冷却することができる構成であるので、基板昇温の短時間化だけでなく、冷却の短時間化をも図ることができるという優れた効果を有する。
また、請求項3の発明に係る基板ヒータによれば、基板の加熱時に、装置側に向かう熱を、断熱用の空間と断熱プレートという二重の断熱構造によって、阻止することができるので、ヒータプレートと装置との距離を大きくするために、基板ヒータの高さを高くする必要がなく、しかも、基板ヒータを、薄い板状の2枚のプレートと1つの空間とで構成することができるので、基板ヒータ全体をさらに低背化することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】発明の第1実施例に係る基板ヒータを示す断面図である。
【図2】ヒータ電極を示すヒータプレートの裏面図である。
【図3】流通路を示す冷却プレートの断面図である。
【図4】冷却プレートを緩衝プレートに接触させた状態を示す断面図である。
【図5】基板ヒータを半導体製造装置内に実装した状態を示す概略図である。
【図6】昇温時の作用を説明するための概略図である。
【図7】降温又は冷却時の作用を説明するための概略図である。
【図8】発明の第2実施例に係る基板ヒータを示す断面図である。
【図9】実施例の一変形例を示す概略図である。
【図10】従来の基板ヒータを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の最良の形態について図面を参照して説明する。
【0014】
(実施例1)
図1は、この発明の第1実施例に係る基板ヒータを示す断面図である。
図1に示すように、この実施例の基板ヒータ1は、ヒータプレート2と、ヒータ電極3と、緩衝プレート4と、冷却プレート5と、昇降機構としての複数のピストン6とを備えている。
【0015】
ヒータプレート2は、窒化アルミニウムを主成分とする円盤状の部材であり、その上面2aを、基板であるウエハWの載置面としている。そして、このヒータプレート2の大きさは、特に限定されるものではないが、この実施例では、直径300〜340mm、厚さ7〜15mmに設定されている。
【0016】
ヒータ電極3は、ヒータプレート2を通じて、ウエハWを昇温させるための電極である。 図2は、ヒータ電極3を示すヒータプレート2の裏面図である。
図2に示すように、ヒータ電極3は、タングステン製の薄膜パターンであり、ヒータプレート2の下面2bの全面に亘って形成されている。
具体的には、ヒータ電極3の一方端部31が、ヒータプレート2の略中央に位置し、ヒータ電極3は、この一方端部31から端を発し、いわゆる一筆書きの要領でヒータプレート2のほぼ全面にわたって形成された後、その他方端部32が、一方端部31の隣に配置されている。そして、このヒータ電極3の一方端部31と他方端部32とが、電圧電源30の両極にそれぞれ接続されている。
したがって、電圧電源30のスイッチ34をオン、オフすることにより、ヒータプレート2を昇温、降温させることができるようになっている。
このようなヒータ電極3は、ガラス等の絶縁材35によってコーティングされている。
【0017】
図1に示す緩衝プレート4は、第1の空間S1を形成する部材であり、また、後述する冷却プレート5を接触させるための部材でもある。
具体的には、この緩衝プレート4も、ヒータプレート2と同様に、窒化アルミニウムを主成分とする円盤状の部材であり、ヒータプレート2と等しい熱伝導率を有する。そして、その大きさも、ヒータプレート2と同様に、直径300〜340mm、厚さ7〜15mmに設定されている。
【0018】
このような緩衝プレート4は、ヒータプレート2の下方に間隔d1をおいて対向配置され、複数のボルト41によって、ヒータプレート2に固定されると共に、装置の床210等に立設可能な複数のシャフト42の上端に固定されている。ここで、ボルト41は、ヒータプレート2からの熱を可能な限り緩衝プレート4に伝えないようにするため、熱伝導率が小さな42アロイで形成されている。
また、間隔d1は、特に限定されるものではないが、期待する断熱効果を考慮して設定される。この実施例では、間隔d1を0.1mm〜5.0mmに設定した。これにより、間隔d1の第1の空間S1が、ヒータプレート2と緩衝プレート4との間に画成された状態になっている。つまり、ヒータ電極3の真下に、間隔d1の第1の空間S1が配設され、ヒータ電極3から下方に放射される熱が、この第1の空間S1によって断熱されるようになっている。さらに、シャフト42は、熱伝導率の悪いチタン製の部材で形成されており、これにより、熱がシャフト42を通じて床210側に伝わることを防止している。
【0019】
冷却プレート5は、緩衝プレート4の下方に対向は位置され、緩衝プレート4を下方から支持する複数のシャフト42に、昇降自在に組み付けられている。
具体的には、冷却プレート5は、アルミニュウムなどで形成されており、その大きさは、直径300〜340mm、厚さ10〜20mmに設定されている。 そして、冷却プレート5を上下に貫通する複数の孔52が、冷却プレート5に穿設され、各孔52が各シャフト42に嵌め込まれて、冷却プレート5が自在に昇降することができるようになっている。
かかる冷却プレート5は、ヒータプレート2を冷却するためのプレートであり、そのため、冷媒を流す流通路51が内部に形成されている。
【0020】
図3は、流通路51を示す冷却プレート5の断面図である。
図3に示すように、流通路51の一方端開口51aが、冷却プレート5の外縁部側に位置し、流通路51がこの一方端開口51aから端を発し、いわゆる一筆書きの要領で冷却プレート5のほぼ全ての内部にわたって形成された後、その他方端開口51bが、冷却プレート5の中央部から一方端開口51aの隣まで引き出されている。そして、この流通路51の一方端開口51aと他方端開口51bとが、ポンプ50にそれぞれ接続され、冷媒が、ポンプ50の駆動力によって流通路51内を循環するようになっている。
【0021】
図1に示す昇降機構としての複数のピストン6は、装置の床210等に固定されて、冷却プレート5を下側から支持することができるようになっている。
具体的には、ピストン6のピストンロッド61がフランジ63を介して冷却プレート5の下面に接続され、ピストン6のシリンダ62が床210等に固定されるようになっている。
【0022】
常時は、ピストンロッド61は、シリンダ62内に引っ込んだ状態になっており、かかる状態では、冷却プレート5が、緩衝プレート4の下方に間隔d2をおいて対向する。 この間隔d2は、特に限定されるものではないが、期待する断熱効果を考慮して設定される。この実施例では、間隔d2を0.1mm〜10mmに設定した。これにより、間隔d2の第1の空間S2が、緩衝プレート4と冷却プレート5との間に画成された状態になっている。つまり、緩衝プレート4の真下に、間隔d2の第2の空間S2が配され、緩衝プレート4から下方に伝わる熱が、この第2の空間S2によって断熱されるようになっている。
【0023】
また、ピストン6は、冷却プレート5を上昇させて、緩衝プレート4に接触させる機能を有している。
図4は、冷却プレート5を緩衝プレート4に接触させた状態を示す断面図である。
図4に示すように、ピストン6のピストンロッド61をシリンダ62に対して上方に延出させていくと、冷却プレート5が 緩衝プレート4側に向かって上昇した後、冷却プレート5の上面5a全体が緩衝プレート4の下面4b全体に接触する。
かかる状態では、先ず、緩衝プレート4が、冷媒が冷却プレート5の流通路51に流れている冷却プレート5によって冷却され、次に、ヒータプレート2が、第1の空間S1やボルト41を通じて、この緩衝プレート4によって冷却される。
つまり、冷却プレート5をヒータプレート2に直接接触させて、冷却プレート5を急激に冷却するのではなく、冷却プレート5の冷気を、緩衝プレート4によって一度緩衝させた後、ヒータプレート2に伝える。
【0024】
次に、この実施例の基板ヒータ1が示す作用及び効果について説明する。
図5は、基板ヒータ1を半導体製造装置内に実装した状態を示す概略図である。
図5において、半導体製造装置200は、例えば、ECR(Electron Cyclotron Resonance)プラズマCVD装置であり、このような装置においては、基板ヒータ1は、装置200内の床210に実装される。
具体的には、基板ヒータ1を、磁石201の真下に配し、ヒータプレート2を上側にして、複数のシャフト42と複数のピストン6とを装置200の床210に固定する。
そして、ウエハWをヒータプレート2に載置させると共に、冷却プレート5を、ピストン6によって下降させ、断熱用の第2の空間S2(図1参照)を冷却プレート5と緩衝プレート4との間に形成する。
かかる状態で、装置200を駆動することで、ウエハW上へのポリシリコン成膜などの作業を行うことができる。
ポリシリコン成膜の作業では、ポリシリコンの成長温度を考慮して、ウエハWの温度を所定の温度迄昇温する必要がある。
かかる場合には、図1に示すヒータ電極3の電圧電源30をスイッチ34を用いてオンにする。すると、ヒータプレート2がヒータ電極3によって加熱され、ウエハWがヒータプレート2を通じて所定温度まで昇温される。
【0025】
図6は、昇温時の作用を説明するための概略図である。
図6に示すように、ヒータ電極3を加熱すると、矢印で示すように、上方に放射された熱T1が、ヒータプレート2を通じてウエハWを加熱する。また、ヒータ電極3から下方に放射された熱T2は、ヒータプレート2と緩衝プレート4との間に設けられた第1の空間S1によって、断熱される。
そして、この第1の空間S1によって阻止されずに緩衝プレート4に至った熱T2やヒータプレート2からボルト41を通じて緩衝プレート4に至った熱T1は、冷却プレート5と緩衝プレート4との間に設けられた第2の空間S2によって断熱される。
また、万が一、この第2の空間S2によって阻止されずに、床210側に向かう熱が存在した場合においても、この熱は、冷媒が流通路51を循環する冷却プレート5によって冷却される。
このように、この実施例の基板ヒータ1によれば、ウエハWの加熱時に、装置200の床210側に向かう熱を、第1及び第2の空間S1,S2という二重の断熱構造によって、断熱することができる。さらに、冷却プレート5を用いることで、第1及び第2の空間S1,S2と冷却プレート5という三重の断熱構造によって、ほぼ完全に断熱することができる。
【0026】
そして、ウエハWの熱を降温又は冷却する場合には、ヒータ電極3の電圧電源30をスイッチ34(図1参照)を用いてオフにする。
図7は、降温又は冷却時の作用を説明するための概略図である。
上記のようにヒータ電極3をオフにすると共に、図7に示すように、冷却プレート5を、ピストン6によって上昇させ、冷却プレート5を緩衝プレート4に完全に接触させる。
かかる状態で、冷却プレート5内部の流通路51に冷媒を循環させておくことで、冷却プレート5の冷気Cは、緩衝プレート4に直接伝わった後、第1の空間S1、ヒータプレート2に順次伝わっていく。
すなわち、冷却プレート5をヒータプレート2に直接接触させて急激に冷却するのでなく、ピストン6からの冷気Cを、緩衝プレート4、第1の空間S1、ヒータプレート2の順で下方から漸次伝えるので、ヒータプレート2やウエハWが破損することはない。
【0027】
以上のように、この実施例の基板ヒータ1によれば、ウエハWの加熱時に、装置200側に向かう熱を、第1及び第2の空間S1や冷却プレート5によってほぼ完全に断熱することができる構成としたので、図5に示すように、基板ヒータ1の高さを高くする必要がない。これに対して、従来のヒータ100では、二点鎖線で示すように、床210への熱の伝搬を抑えるために、シャフト110を長くしなければならないため、このヒータ100を実装する装置200の高さを、実施例の基板ヒータ1を実装する装置200の高さよりもHも高くしなければならない。このように、この実施例の基板ヒータ1によれば、基板ヒータ1の低背化による半導体製造装置200の小型化を図ることができる。
【0028】
(実施例2)
次に、この発明の第2実施例について説明する。
図8は、この発明の第2実施例に係る基板ヒータを示す断面図である。
図8に示すように、この実施例の基板ヒータ1′は、冷却プレート5とピストン6とを備えず、基板ヒータの更なる低背化が図られている点が、第1実施例と異なる。
具体的には、基板ヒータ1′は、ヒータプレート2と、絶縁材35でコーティングされらヒータ電極3と、断熱プレート4′とを備えている。
【0029】
ヒータプレート2とヒータ電極3との構造は、上記第1実施例で説明したとおりであるが、断熱プレート4′は、上記第1実施例で用いた緩衝プレート4と異なる。
断熱プレート4′は、緩衝プレート4と同様に、ヒータプレート2との間に断熱用の空間Sを形成する部材であるが、ベスペルを主成分とした円盤状の部材であり、ヒータプレート2よりも小さな熱伝導率を有する。その大きさは、直径300〜340mm、厚さ10〜20mmに設定されている。
【0030】
この断熱プレート4′も、ヒータプレート2の下方に間隔d1をおいて対向配置され、複数のボルト41によって、ヒータプレート2に固定されると共に、装置の床210等に立設可能な複数のシャフト42の上端に固定されている。
【0031】
この実施例の基板ヒータ1′も、ヒータ電極3の電圧電源30をスイッチ34を用いてオンにすることで、ウエハWをヒータプレート2を通じて所定温度まで昇温させることができる。
そして、ヒータ電極3から下方に放射された熱は、ヒータプレート2と断熱プレート4′との間の空間Sによって、断熱される。
さらに、この空間Sによって阻止されずに断熱プレート4′に向かう熱やボルト41を通じて断熱プレート4′に向かう熱は、小さな熱伝導率のベスペルで形成された断熱プレート4′によって断熱される。
このように、この実施例の基板ヒータ1′によれば、ウエハWの加熱時に、装置側に向かう熱を、断熱用の空間Sと断熱プレート4′という二重の断熱構造によって、阻止することができる。
また、この実施例のように、断熱プレート4′がシャフト42によって装置の床210の上方に配されている場合には、断熱プレート4′と床210との間に空間S′が形成される。熱が断熱プレート4′から床210に向かう場合には、この熱が空間S′によって断熱されることとなる。
そして、基板への加熱を中止又は終了する場合には、ヒータ電極3のスイッチ34をオフにすることで、ウエハWとヒータプレート2とを、自然冷却することができる。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1実施例と同様であるので、その記載は省略する。
【0032】
なお、この発明は、上記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内において種々の変形や変更が可能である。
例えば、上記実施例では、ヒータ電極3をヒータプレート2の下面に設けたが、図9に示すように、ヒータ電極3をヒータプレート2の内部に設けた基板ヒータもこの発明の範囲に含まれる。
また、吸着電極を基板ヒータ1や基板ヒータ1′のヒータプレート2内に設けることにより、静電チャックとしてして使用する装置も、この発明の基板ヒータに該当することは勿論である。
【符号の説明】
【0033】
1,1′…基板ヒータ、 2…ヒータプレート、 2a,5a…上面、 2b,4b…下面、 3…ヒータ電極、 4…緩衝プレート、 4′…断熱プレート、 5…冷却プレート、 6…ピストン、 30…電圧電源、 34…スイッチ、 35…絶縁材、 41…ボルト、 42…シャフト、 50…ポンプ、 51…流通路、 52…孔、 61…ピストンロッド、 62…シリンダ、 63…フランジ、 200…装置、 210…床、 S…空間、 S1…第1の空間、 S2…第2の空間、 W…ウエハ、 d1,d2…間隔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を載置するためのヒータプレートと、
上記ヒータプレートに設けられたヒータ電極と、
上記ヒータプレートとほぼ等しい熱伝導率を有し、且つ上記ヒータプレートの下方に所定間隔をおいて対向配置されて、ヒータプレートとの間に断熱用の第1の空間を形成する緩衝プレートと、
上記緩衝プレートの下方に昇降自在に対向配置され、内部に冷媒が流れる冷却プレートと、
上記冷却プレートを上昇させて、上記緩衝プレートに接触させることができ、又は、当該冷却プレートを下降させて、冷却プレートと緩衝プレートとの間に断熱用の第2の空間を形成することができる昇降機構と
を備えることを特徴とする基板ヒータ。
【請求項2】
請求項1に記載の基板ヒータにおいて、
上記ヒータプレートと緩衝プレートとを、窒化アルミニュウムで形成した、
ことを特徴とする基板ヒータ。
【請求項3】
基板を載置するためのヒータプレートと、
上記ヒータプレートに設けられたヒータ電極と、
上記ヒータプレートよりも小さな熱伝導率を有し、且つ上記ヒータプレートの下方に所定間隔をおいて対向配置されて、ヒータプレートとの間に断熱用の空間を形成する断熱プレートと、
を備えることを特徴とする基板ヒータ。
【請求項4】
請求項3に記載の基板ヒータにおいて、
上記ヒータプレートを、窒化アルミニュウムで形成し、
上記断熱プレートを、ベスペルで形成した、
ことを特徴とする基板ヒータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−84764(P2012−84764A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231194(P2010−231194)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(591012266)株式会社クリエイティブ テクノロジー (25)
【Fターム(参考)】