説明

基板処理方法および基板処理装置

【課題】安定して基板上に処理液の液膜を保持させることができる基板処理方法および基板処理装置を提供すること。
【解決手段】基板処理装置は、基板を水平に保持する基板保持手段と、前記基板保持手段に保持された基板の上面周縁部を選択的に疎水化させる疎水化手段と、前記基板保持手段に保持された基板の上面に処理液を供給する処理液供給手段と含む。この基板処理装置による基板の処理では、基板の主面の周縁部を選択的に疎水化させる疎水化工程(S101)と、前記疎水化工程が実行された後に、水平に保持された基板に処理液を供給して、当該基板の主面を覆う処理液の液膜を形成する液膜形成工程(S102)とが実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板処理方法および基板処理装置に関する。処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの製造工程では、半導体ウエハや液晶表示装置用ガラス基板などの基板を1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置が用いられる。枚葉式の基板処理装置は、たとえば、基板を水平に保持して回転させる基板保持機構と、基板保持機構に保持された基板の上面に処理液を供給する処理液ノズルとを備えている。特許文献1には、複数の挟持部材によって基板の周端面を挟持して当該基板を保持する挟持式の基板保持機構が開示されている。また、特許文献2には、基板の下面を吸着して当該基板を保持するバキューム式の基板保持機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−206359号公報
【特許文献2】特開2009−206358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
枚葉式の基板処理装置において処理液によって基板を処理するための一つの方法は、基板の周囲に処理液を飛散させながら処理する方法(以下、単に「振り切り処理」という。)である。処理液により基板を処理するための他の方法は、基板上に処理液の液膜を保持させる方法(以下、単に「パドル処理」という。)である。
振り切り処理は、たとえば、基板保持機構によって基板を回転させながら、処理液ノズルから基板の上面中央部に向けて処理液を吐出させることにより行われる。処理液ノズルから吐出された処理液は、基板の上面中央部に着液し、基板の回転による遠心力を受けて基板上を外方に広がっていく。そして、基板の上面周縁部に達した処理液は、基板の周囲に飛散して基板上から排出される。したがって、基板上の処理液が後続の処理液に置換されながら、基板の上面全域に処理液が供給され、基板の上面が処理される。
【0005】
一方、パドル処理は、たとえば、基板保持機構によって基板の回転速度を零または低速にしながら、処理液ノズルから基板の上面中央部に向けて処理液を吐出させることにより行われる。処理液ノズルから吐出された処理液は、基板の上面中央部に着液し、後続の処理液によって押されて基板上を外方に広がっていく。また、基板上の処理液に作用する遠心力が零または小さいので、基板に供給された処理液は、基板の周囲に飛散せずに基板上に溜まる。したがって、基板上には、処理液の液膜が形成される。そして、この液膜の外周部が基板の上面周縁部に達した後は、基板への処理液の供給が停止され、基板上に処理液の液膜が保持された状態が所定時間にわたって維持される。このようにして、基板の上面全域に処理液が供給され、基板の上面が処理される。
【0006】
前述のように、振り切り処理では、基板上から処理液が排出されながら基板が処理される。したがって、処理液の消費量が多い。一方、パドル処理は、基板上に処理液の液膜が形成された後、基板への処理液の供給が停止される。したがって、振り切り処理に比べて処理液の消費量が少ない。しかしながら、パドル処理では、処理液の液膜が基板上に安定して保持されず、基板上から処理液が零れてしまう場合がある。特に、半導体ウエハのように基板の周縁部にノッチが形成されている場合や、挟持式の基板保持機構によって基板の周縁部を保持している場合には、基板上から処理液が零れ易い。
【0007】
より具体的には、基板上に保持された処理液の液膜は、たとえば、基板の回転や、基板処理装置の振動などにより、基板上で揺れ動いたり、基板上を僅かに移動したりする場合がある。このような場合に、液膜の外周部がノッチに被さると、基板上の処理液がノッチを通って次々と零れてしまう。また、液膜の外周部が挟持部材に触れると、基板上の処理液が挟持部材を伝って次々と零れてしまう。すなわち、ノッチや挟持部材が零れの起点となってしまう。そのため、処理液の液膜が基板上に安定して保持されない場合がある。
【0008】
パドル処理において基板上から処理液が零れることを防止するために、たとえば、基板への処理液の供給量を減少させて、液膜の大きさを小さくすることが考えられる。しかし、この場合には、基板の上面のうち処理液の液膜によって覆われる範囲が小さくなるので、基板の上面全域が処理されない場合がある。
また、パドル処理において基板上から処理液が零れることを防止する別の方法としては、たとえば、基板の周囲を取り囲む包囲部材を設けることが考えられる。しかし、この場合には、液膜の外周部が包囲部材の内周面に接すると、包囲部材に付着している異物が、液膜を介して基板に移るおそれがある。そのため、基板の汚染を防止するために、包囲部材を洗浄する必要がある。したがって、包囲部材を洗浄する必要があるし、場合によっては、包囲部材を洗浄するために処理液を使用しなければならない。
【0009】
この発明は、かかる背景のもとでなされたものであり、安定して基板上に処理液の液膜を保持させることができる基板処理方法および基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板(W)の主面の周縁部を選択的に疎水化させる疎水化工程(S101、S201、S301)と、前記疎水化工程が実行された後に、水平に保持された基板に処理液を供給して、当該基板の主面を覆う処理液の液膜を形成する液膜形成工程(S102、S202、S302)とを含む、基板処理方法である。なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
【0011】
この発明によれば、基板の主面の周縁部が選択的に疎水化される。すなわち、基板の主面のうち周縁部だけが疎水化される。これにより、基板主面の周縁部に対して、選択的に撥水作用が与えられる。そして、基板の周縁部が選択的に疎水化された状態で、水平に保持された基板の上面(主面)に処理液が供給される。基板に供給された処理液は、基板の上面に沿って広がっていき、基板の上面周縁部の手前に達する。そして、基板の上面周縁部の手前に達した処理液は、基板の上面周縁部に付与された撥水作用によって弾かれ、外方への移動が規制される。したがって、基板の上面に供給された処理液は、基板上から排出されにくくなり、基板上に溜まりやすくなる。これにより、基板の上面のほぼ全域を覆う処理液の液膜が形成される。そして、この処理液の液膜が安定して保持される。すなわち、基板の上面のほぼ全域を覆う処理液の液膜が安定して保持された状態でパドル処理が行われる。したがって、処理液が基板上面から零れることを抑制または防止できるから、基板を処理するときの処理液の消費量を低減することができる。また、基板の周囲を取り囲む包囲部材が設けられている場合とは異なり、このような包囲部材から基板に異物が移るおそれがない。したがって、基板の汚染を抑制または防止しつつ、処理液の零れを抑制または防止することができる。
【0012】
請求項2記載の発明は、前記疎水化工程は、基板の主面の周縁部に選択的に疎水性被膜(R1)を形成する疎水性被膜形成工程(S101、S301)を含む、請求項1記載の基板処理方法である。
この発明によれば、基板の主面の周縁部に選択的に疎水性被膜が形成される。これにより、基板の主面の周縁部が選択的に疎水化される。したがって、液膜形成工程において、基板の上面周縁部(主面周縁部)の手前に達した処理液は、疎水性被膜の撥水作用によって弾かれ、かつ疎水性被膜により堰き止められて、外方への移動が規制される。これにより、基板の上面のほぼ全域を覆う処理液の液膜が形成され、基板の上面が処理液によって処理される。
【0013】
前記疎水性被膜形成工程は、基板の主面の周縁部だけに疎水性被膜を形成する工程(S101、S301)であることが好ましい。ただし、前記疎水性被膜形成工程は、基板の主面の周縁部、および周縁部以外の部分に疎水性被膜を形成する工程と、前記周縁部以外の部分に形成された疎水性被膜を除去する工程とを含む工程であってもよい。より具体的には、前記疎水性被膜形成工程は、基板の主面全域に疎水性被膜を形成する工程と、前記周縁部以外の部分に形成された疎水性被膜を除去する工程とを含む工程であってもよい。
【0014】
請求項3記載の発明は、前記疎水化工程は、基板を疎水化させる疎水化処理液を基板の主面の周縁部に選択的に供給する疎水化処理液供給工程(S201)を含む、請求項1記載の基板処理方法である。
この発明によれば、基板を疎水化させる疎水化処理液が、基板の主面の周縁部に選択的に供給される。これにより、基板の主面の周縁部が選択的に疎水化される。すなわち、疎水性被膜を形成する場合と異なり、基板の主面の周縁部自体が疎水化される。したがって、たとえば、不要になった疎水性被膜を除去する工程が不要である。
【0015】
請求項4記載の発明は、前記疎水性被膜形成工程は、基板の主面の周縁部に選択的に液状の疎水性材料を噴霧する噴霧工程(S101、S301)を含む、請求項2記載の基板処理方法である。
この発明によれば、液状の疎水性材料が基板の主面の周縁部に選択的に噴霧される。すなわち、霧状になった疎水性材料が基板の主面の周縁部に選択的に吹き付けられて、疎水性被膜が形成される。したがって、疎水性材料が液状のまま(微細な液滴でない状態で)基板に供給される場合に比べて、単位時間当たりの基板への疎水性材料の供給量が少ない。そのため、疎水性被膜の膜厚を容易に精密に制御することができる。また、液膜形成工程において基板の主面に供給された処理液は、疎水性被膜の内側に溜まる。したがって、疎水性被膜の膜厚を精密に制御することにより、基板上に保持される処理液の量を精密に制御することができる。さらに、単位時間当たりの基板への疎水性材料の供給量が少ないので、非常に薄い疎水性被膜を形成することができる。したがって、不要になった疎水性被膜を容易に除去することができる。さらにまた、処理液による基板の処理では、基板を回転させて遠心力によって基板上から処理液を排出する場合がある。このような場合に、疎水性被膜の膜厚が非常に小さければ、基板上から処理液を容易に排出させることができる。
【0016】
請求項5記載の発明は、前記疎水性被膜形成工程は、基板の主面の周縁部に選択的にレジスト膜(R1)を形成するレジスト膜形成工程(S101、S301)を含む、請求項2または4記載の基板処理方法である。
この発明によれば、フォトレジストが基板の主面の周縁部に選択的に供給されることにより、疎水性被膜としてのレジスト膜が基板の主面の周縁部に選択的に形成される。フォトレジストは、基板の処理において一般的に用いられる材料であり、一般的に疎水性を有する材料であるから、このようなフォトレジストを用いることにより、簡単に基板の主面の周縁部を疎水化させることができる。すなわち、たとえば、基板にフォトレジストを供給するためのレジスト供給機構が基板処理装置に備えられている場合には、このレジスト供給機構を利用して簡単に基板の主面の周縁部を疎水化させることができる。
【0017】
請求項6記載の発明は、基板を水平に保持する基板保持手段(8)と、前記基板保持手段に保持された基板の上面周縁部を選択的に疎水化させる疎水化手段(11、22、23、211、222、223)と、前記基板保持手段に保持された基板の上面に処理液を供給する処理液供給手段(9、10、18、19、20、21)と含む、基板処理装置(1、201、301)である。この発明によれば、請求項1の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の第1実施形態に係る基板処理装置のレイアウトを示す図解的な平面図である。
【図2】この発明の第1実施形態に係る基板処理装置に備えられた処理部の概略構成を示す図解的な側面図である。
【図3】この発明の第1実施形態に係る基板処理装置による基板の第1処理例を説明するためのフローチャートである。
【図4】前記第1処理例が行われているときの基板の状態を示す側面図である。
【図5】この発明の第2実施形態に係る基板処理装置に備えられた処理部の概略構成を示す図解的な側面図である。
【図6】この発明の第2実施形態に係る基板処理装置による基板の第2処理例を説明するためのフローチャートである。
【図7】この発明の第3実施形態に係る基板処理装置に備えられた処理部の概略構成を示す図解的な側面図である。
【図8】この発明の第3実施形態に係る基板処理装置に備えられた処理部の概略構成を示す図解的な平面図である。
【図9】超音波機構に備えられた付与装置の概略構成を示す断面図である。
【図10】この発明の第3実施形態に係る基板処理装置による基板の第3処理例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の第1実施形態に係る基板処理装置1のレイアウトを示す図解的な平面図である。
この基板処理装置1は、半導体ウエハ等の基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、インデクサブロック2と、インデクサブロック2に結合された処理ブロック3とを備えている。
【0020】
インデクサブロック2は、キャリア保持部4と、インデクサロボットIRと、インデクサロボット移動機構5(以下では、「IR移動機構5」という。)とを備えている。キャリア保持部4は、複数枚の基板Wを収容できるキャリアCを保持することができる。キャリアCは、所定の配列方向U(以下「キャリア配列方向U」という。)に沿って配列された状態で、キャリア保持部4に保持される。IR移動機構5は、キャリア配列方向Uに沿ってインデクサロボットIRを水平移動させることができる。したがって、IR移動機構5は、インデクサロボットIRを各キャリアCに対向させることができる。
【0021】
また、インデクサロボットIRは、第1上アームの先端に取り付けられた第1上ハンドH1と、第1下アームの先端に取り付けられた第1下ハンドH2とを備えている。第1上ハンドH1および第1下ハンドH2は、互いに干渉しないように高さをずらして配置されている。図1では、第1上ハンドH1および第1下ハンドH2が上下に重なり合っている状態が示されている。インデクサロボットIRは、各ハンドH1,H2によって基板Wを保持することができる。インデクサロボットIRは、各キャリアCに基板Wを搬入する搬入動作、および基板Wを各キャリアCから搬出する搬出動作を行うことができる。
【0022】
一方、処理ブロック3は、それぞれ基板Wを一枚ずつ処理する複数(たとえば4つ以上)の処理部6と、センターロボットCRとを備えている。複数の処理部6は、平面視においてセンターロボットCRを取り囲むように配置されている。各処理部6では、たとえば、洗浄、エッチング、剥離等の処理が基板Wに行われる。
センターロボットCRは、第2上アームの先端に取り付けられた第2上ハンドH3と、第2下アームの先端に取り付けられた第2下ハンドH4とを備えている。第2上ハンドH3および第2下ハンドH4は、互いに干渉しないように高さをずらして配置されている。図1では、第2上ハンドH3および第2下ハンドH4が上下に重なり合っている状態が示されている。センターロボットCRは、各ハンドH3,H4によって基板Wを保持することができる。
【0023】
センターロボットCRは、鉛直軸線まわりに回転(自転)可能に構成されている。第2上ハンドH3および第2下ハンドH4は、センターロボットCRの回転によって、各処理部6に対向させられる。センターロボットCRは、各処理部6に対して基板Wを搬入する搬入動作、および基板Wを各処理部6から搬出する搬出動作を行うことができる。さらに、センターロボットCRは、インデクサロボットIRから基板Wを受け取ることができ、基板WをインデクサロボットIRに渡すことができる。
【0024】
各キャリアCに収容された未処理の基板Wは、インデクサロボットIRによって搬出される。そして、この未処理の基板Wは、インデクサロボットIRからセンターロボットCRに渡される。さらに、この未処理の基板Wは、センターロボットCRによって何れかの処理部6に搬入される。
一方、各処理部6で処理された基板Wは、センターロボットCRによって搬出される。そして、この基板Wが別の処理部6でさらに処理される場合には、センターロボットCRは、この基板Wを別の処理部6に搬入する。また、基板Wに行われるべき全ての処理が完了している場合には、この基板W(処理済みの基板W)は、センターロボットCRからインデクサロボットIRに渡される。その後、この処理済の基板Wは、インデクサロボットIRによって何れかのキャリアC内に搬入される。
【0025】
基板処理装置1には、制御部7が設けられている。基板処理装置1は、制御部7によって制御される。より具体的には、インデクサロボットIR、センターロボットCR、IR移動機構5および各処理部6などの基板処理装置1に備えられた構成は、制御部7によって制御される。
図2は、この発明の第1実施形態に係る基板処理装置1に備えられた処理部6の概略構成を示す図解的な側面図である。
【0026】
各処理部6は、1枚の基板Wを水平に保持して回転させるスピンチャック8(基板保持手段)と、スピンチャック8に保持された基板Wの上面(表面または裏面)に薬液を供給する薬液ノズル9と、スピンチャック8に保持された基板Wの上面にリンス液を供給するリンス液ノズル10と、スピンチャック8に保持された基板Wの上面に疎水性材料を供給する疎水化ノズル11と、スピンチャック8に保持された基板Wの上面から疎水性材料を除去する除去液を供給する除去液ノズル12とを備えている。スピンチャック8およびこれらのノズル9〜12は、図示しない隔壁で区画された処理室13内に配置されている。
【0027】
スピンチャック8は、鉛直に延びる回転軸14と、回転軸14の上端に水平に取り付けられた円盤状のスピンベース15と、このスピンベース15上に配置された複数の挟持部材16と、回転軸14に結合されたスピンモータ17とを備えている。複数の挟持部材16は、スピンベース15の上面周縁部において基板Wの外周形状に対応する円周上で適当な間隔を空けて配置されている。複数の挟持部材16は、互いに協働して1枚の基板Wを水平な姿勢で挟持することができる。複数の挟持部材16によって基板Wが保持された状態で、スピンモータ17の駆動力が回転軸14に入力されることにより、保持された基板Wがその中心を通る鉛直な軸線まわりに回転する。
【0028】
薬液ノズル9は、たとえば、連続流の状態で薬液(たとえば水溶液)を吐出するストレートノズルである。薬液ノズル9は、その吐出口が下方に向けられた状態で、スピンチャック8よりも上方に配置されている。薬液ノズル9は、固定ノズルであってもよいし、スキャンノズルであってもよい。すなわち、薬液ノズル9は、処理室13内の所定位置に固定されていてもよいし、薬液の着液位置が基板Wの上面中央部と基板Wの上面周縁部との間で移動するように、処理室13内で移動できるように構成されていてもよい。この実施形態では、薬液ノズル9は、薬液ノズル9から吐出された薬液が基板Wの上面中央部に着液するように処理室13内の所定位置に固定されている。薬液ノズル9には、薬液供給管18が接続されている。薬液ノズル9には、この薬液供給管18を介して薬液が供給される。薬液供給管18には、薬液ノズル9への薬液の供給および供給停止を切り換えるための薬液バルブ19が介装されている。薬液ノズル9に供給される薬液としては、たとえば、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(たとえばクエン酸、蓚酸など)、有機アルカリ(たとえば、TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなど)、界面活性剤、腐食防止剤のうちの少なくとも1つを含む液が挙げられる。
【0029】
リンス液ノズル10は、たとえば、連続流の状態でリンス液を吐出するストレートノズルである。リンス液ノズル10は、その吐出口が下方に向けられた状態で、スピンチャック8よりも上方に配置されている。リンス液ノズル10は、固定ノズルであってもよいし、スキャンノズルであってもよい。この実施形態では、リンス液ノズル10は、リンス液ノズル10から吐出されたリンス液が基板Wの上面中央部に着液するように処理室13内の所定位置に固定されている。リンス液ノズル10には、リンス液供給管20が接続されている。リンス液ノズル10には、このリンス液供給管20を介してリンス液が供給される。リンス液供給管20には、リンス液ノズル10へのリンス液の供給および供給停止を切り換えるためのリンス液バルブ21が介装されている。リンス液ノズル10に供給されるリンス液としては、たとえば、純水(脱イオン水)、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水や、希釈濃度(たとえば、10〜100ppm程度)の塩酸水などが挙げられる。
【0030】
疎水化ノズル11は、たとえば、液状の疎水性材料を噴霧するスプレーノズルである。疎水化ノズル11は、その吐出口が下方に向けられた状態で、スピンチャック8よりも上方に配置されている。疎水化ノズル11は、固定ノズルであってもよいし、スキャンノズルであってもよい。この実施形態では、疎水化ノズル11は、疎水化ノズル11から吐出された霧状の疎水性材料が基板Wの上面周縁部に供給されるように処理室13内の所定位置に固定されている。疎水化ノズル11には、疎水化供給管22が接続されている。疎水化ノズル11には、この疎水化供給管22を介して疎水性材料が供給される。疎水化供給管22には、疎水化ノズル11への疎水性材料の供給および供給停止を切り換えるための疎水化バルブ23が介装されている。疎水化ノズル11に供給される疎水性材料としては、たとえば、フォトレジスト液(以下、単に「レジスト液」という。)や液状のワックスなどが挙げられる。レジスト液およびワックスは、いずれも疎水性(たとえば親油性)を有する材料である。
【0031】
除去液ノズル12は、たとえば、連続流の状態で除去液を吐出するストレートノズルである。除去液ノズル12は、その吐出口が下方に向けられた状態で、スピンチャック8よりも上方に配置されている。除去液ノズル12は、固定ノズルであってもよいし、スキャンノズルであってもよい。この実施形態では、除去液ノズル12は、除去液ノズル12から吐出された除去液が基板Wの上面周縁部に供給されるように処理室13内の所定位置に固定されている。より具体的には、除去液ノズル12は、基板Wの上面周縁部に向けて基板Wの径方向外向きに除去液を吐出するように処理室13内の所定位置に固定されている。除去液ノズル12には、除去液供給管24が接続されている。除去液ノズル12には、この除去液供給管24を介して除去液が供給される。除去液供給管24には、除去液ノズル12への除去液の供給および供給停止を切り換えるための除去液バルブ25が介装されている。疎水化ノズル11に供給される疎水性材料としてレジスト液が用いられている場合には、たとえば、有機溶剤が除去液として除去液ノズル12に供給される。除去液ノズル12に供給される有機溶剤としては、たとえば、アセトンが挙げられる。
【0032】
この実施形態では、薬液ノズル9、薬液供給管18、薬液バルブ19、リンス液ノズル10、リンス液供給管20、およびリンス液バルブ21によって処理液供給手段が構成されている。また、この実施形態では、疎水化ノズル11、疎水化供給管22、および疎水化バルブ23によって疎水化手段が構成されている。
図3は、この発明の第1実施形態に係る基板処理装置1による基板Wの第1処理例を説明するためのフローチャートである。また、図4は、第1処理例が行われているときの基板Wの状態を示す側面図である。以下では、図2および図3を参照して、第1処理例について説明する。また、第1処理例の説明において図4を適宜参照する。
【0033】
未処理の基板Wは、センターロボットCRによって何れかの処理部6の処理室13内に搬入される。そして、この基板Wは、デバイス形成面である表面をたとえば上に向けてスピンチャック8に渡される。未処理の基板Wが処理室13内に搬入されるとき、ノズルなどの処理室13内に配置された可動部品は、センターロボットCRや基板Wとの衝突を避けるためにスピンチャック8の上方から退避されている。
【0034】
次に、基板Wの上面(表面)の周縁部を疎水化させる疎水化処理が行われる(ステップS101)。より具体的には、制御部7によりスピンモータ17が制御されて、基板Wが所定の回転速度(たとえば数十〜数百rpm)で回転させられる。その後、制御部7により疎水化バルブ23が開かれて、疎水性材料の一例であるレジスト液が疎水化ノズル11から噴霧される。これにより、霧状のレジスト液が、基板Wの上面周縁部(非デバイス形成領域)の全周に供給される。そのため、レジスト液が基板Wの上面周縁部で固まって、図4に示すように、全周にわたって連続した環状のレジスト膜R1が基板Wの上面周縁部に形成される。これにより、疎水化処理が行われ、基板Wの上面周縁部が選択的に疎水化され、当該上面周縁部に撥水作用が付与される。レジスト膜R1は、基板Wの上面周縁部のうち、外周縁からたとえば数十μm〜数mm内側の位置よりも外側の環状の領域を覆っている。レジスト膜R1によって覆われた領域は、非デバイス形成領域の一部または全部である。また、レジスト膜R1の厚みは、たとえば、数μm〜数mmであり、レジスト膜R1の幅(基板Wの径方向への長さ)は、たとえば、数十μm〜数mmである。この実施形態では、レジスト膜R1の厚みは、10μmであり、レジスト膜R1の幅は、1mmである。
【0035】
次に、薬液の液膜を基板W上に保持させた状態で薬液処理を進める薬液によるパドル処理が行われる(ステップS102)。より具体的には、制御部7によりスピンモータ17が制御されて、基板Wの回転が停止、または基板Wの回転速度が低速(たとえば10〜30rpm程度)に変更される。その後、制御部7により薬液バルブ19が開かれて、薬液ノズル9から基板Wの上面中央部に向けて薬液が吐出される。薬液バルブ19から吐出された薬液は、基板Wの上面中心部に着液し、外方に向かって基板W上を広がっていく。これにより、基板Wに供給された薬液が、基板Wの上面周縁部の手前に達する。
【0036】
前述のように、基板Wの上面周縁部には、レジスト膜R1が形成されている。したがって、基板Wの上面周縁部の手前に達した薬液は、レジスト膜R1が障壁となって外方への移動が規制される。さらに、レジスト膜R1は、疎水性を有している。そのため、基板Wの上面周縁部の手前に達した薬液は、疎水性を有するレジスト膜R1の撥水作用によって弾かれて外方への移動が規制される。さらにまた、基板Wの回転速度が零または低速であるので、基板W上の薬液に作用する遠心力は、零であるか、または小さい。そのため、基板Wの上面周縁部の手前に達した薬液は、遠心力によってレジスト膜R1を乗り越えることができない。したがって、基板Wに供給された薬液は、基板W上から排出されずに基板W上に溜まる。これにより、図4に示すように、基板Wの上面のほぼ全域を覆う薬液の液膜が形成される。そして、制御部7により薬液バルブ19が閉じられて、基板W上で薬液の液膜が保持された状態が所定時間にわたって維持される。このようにして、薬液の液膜を基板W上に保持させた状態で薬液処理を進める薬液によるパドル処理が基板Wの上面に行われる。
【0037】
次に、基板Wの周囲に薬液を飛散させながら当該基板Wを処理する薬液処理が行われる(ステップS103)。より具体的には、制御部7によりスピンモータ17が制御されて、基板Wが所定の回転速度(たとえば数十〜数百rpm)で回転させられる。その後、制御部7により薬液バルブ19が開かれて、薬液ノズル9から基板Wの上面中央部に向けて薬液が吐出される。薬液ノズル9から吐出された薬液は、基板Wの上面中央部に着液し、基板Wの回転による遠心力を受けて基板W上を外方に広がっていく。これにより、基板Wの上面全域に薬液が供給される。また、基板Wの回転速度が薬液によるパドル処理のときよりも速いので、基板W上の薬液に作用する遠心力は、薬液によるパドル処理のときよりも大きい。そのため、基板W上の薬液は、遠心力によってレジスト膜R1を乗り越えて基板Wの周囲に飛散する。これにより、基板Wの周囲に薬液を飛散させながら当該基板Wを処理する薬液処理が行われる。そして、薬液処理が所定時間にわたって行われると、制御部7により薬液バルブ19が閉じられて、薬液ノズル9からの薬液の吐出が停止される。
【0038】
次に、リンス液の一例である純水によって基板Wを洗い流すリンス処理が行われる(ステップS104)。より具体的には、制御部7によりスピンモータ17が制御されて、基板Wが所定の回転速度(たとえば数十〜数百rpm)で回転させられる。その後、制御部7によりリンス液バルブ21が開かれて、リンス液ノズル10から基板Wの上面中央部に向けて純水が吐出される。リンス液ノズル10から吐出された純水は、基板Wの上面中央部に着液し、基板Wの回転による遠心力を受けて基板W上を外方に広がっていく。これにより、基板Wの上面全域にリンス液が供給される。また、基板Wの回転速度が薬液によるパドル処理のときよりも速いので、基板W上の薬液および純水に作用する遠心力は、薬液によるパドル処理のときよりも大きい。そのため、基板W上の薬液および純水は、遠心力によってレジスト膜R1を乗り越えて基板Wの周囲に飛散する。したがって、基板W上の薬液は、次々と基板Wに供給される純水によって押し流されて、基板Wの周囲に排出される。これにより、リンス処理が行われ、純水によって基板Wが洗い流される。そして、リンス処理が所定時間にわたって行われると、制御部7によりリンス液バルブ21が閉じられて、リンス液ノズル10からの純水の吐出が停止される。
【0039】
次に、基板Wを乾燥させる乾燥処理(スピンドライ)が行われる(ステップS105)。より具体的には、制御部7によりスピンモータ17が制御されて、基板Wが高回転速度(たとえば数千rpm)で回転させられる。これにより、基板Wに付着している純水に大きな遠心力が作用して、当該純水が基板Wの周囲に振り切られる。このようにして、基板Wから純水が除去され、基板Wが乾燥する(乾燥処理)。
【0040】
次に、除去液の一例であるアセトンによってレジスト膜R1を除去する除去処理が行われる(ステップS106)。より具体的には、制御部7によりスピンモータ17が制御されて、基板Wが所定の回転速度(たとえば数十〜数百rpm)で回転させられる。その後、制御部7により除去液バルブ25が開かれて、除去液ノズル12から基板Wの上面周縁部(非デバイス形成領域)に向けて外向きにアセトンが吐出される。除去液ノズル12からアセトンが外向きに吐出されるから、吐出されたアセトンは、基板Wの上面周縁部の内側の領域に殆ど供給されず、主としてレジスト膜R1に供給される。したがって、除去液ノズル12から吐出されたアセトンは、デバイス形成領域に影響を与えることなく、レジスト膜R1に供給される。そして、基板上のレジスト膜R1は、アセトンの供給により基板W上から完全に除去される。これにより、基板上からレジスト膜R1を除去する除去処理が行われる。そして、除去処理が所定時間にわたって行われると、制御部7により除去液バルブ25が閉じられて、除去液ノズル12からのアセトンの吐出が停止される。さらに、スピンモータ17の回転が停止され、スピンチャック8による基板Wの回転が停止される。その後、処理済みの基板WがセンターロボットCRによって処理室13から搬出される。必要であれば、前記除去処理の後に、リンス液ノズル10から純水を吐出してリンス処理を行い、さらに、リンス液吐出を停止して基板Wを高速回転させるスピンドライ処理が追加されてもよい。
【0041】
この第1処理例では、たとえば、ベーキングやイオン注入のようなレジスト膜R1の除去が困難になる処理が行われていない。したがって、アセトンのような比較的除去力の弱い除去液であっても、レジスト膜R1が基板W上から簡単に除去される。より具体的には、基板W上にパターンを形成するためにレジストマスクを形成するときには、フォトレジストを塗布した後に、このフォトレジストを硬化させるためのベーキング処理が行われる。また、レジストマスクを用いたイオン注入処理やドライエッチング処理が行われると、レジストマスクは、イオンが注入されることによって変質して一層硬化する。このような硬化したレジストの除去には、アッシング処理や、SPM(sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture:硫酸過酸化水素水)などの強力な除去力を有する除去液を用いた処理を適用しなければならない。一方、この第1処理例では、レジスト膜R1の除去が困難になる処理が行われていない。したがって、比較的除去力の弱いアセトンであっても、レジスト膜R1が基板W上から簡単に除去される。これにより、基板W上からレジスト膜R1が完全に除去される。
【0042】
以上のように本実施形態では、基板Wの上面周縁部が、レジスト膜R1によって選択的に疎水化されて撥水性が付与される。そして、薬液によるパドル処理において、基板Wの上面周縁部が疎水化された状態で、基板Wの上面に薬液が供給される。したがって、基板W上に保持された薬液が基板Wの上面周縁部から零れることが抑制または防止される。これにより、基板Wの上面のほぼ全域を覆う薬液の液膜が安定して保持された状態で、薬液によるパドル処理が行われる。したがって、基板Wを処理するときの薬液の消費量を低減することができる。また、基板Wの周囲を取り囲む包囲部材が設けられている場合とは異なり、このような包囲部材から基板Wに異物が移るおそれがない。したがって、基板Wの汚染を抑制または防止しつつ、薬液の零れを抑制または防止することができる。
【0043】
また、本実施形態では、レジスト液が基板Wの上面周縁部に選択的に噴霧されて塗布される。すなわち、霧状になったレジストが基板Wの上面周縁部に選択的に吹き付けられて、レジスト膜R1が形成される。したがって、レジストが液状のまま(微細な液滴でない状態で)基板Wに供給される場合に比べて、単位時間当たりの基板Wへのレジストの供給量が少ない。そのため、レジスト膜R1の膜厚を容易に精密に制御することができる。また、薬液によるパドル処理において基板Wの上面に供給された薬液は、レジスト膜R1の内側に溜まる。したがって、レジスト膜R1の膜厚を精密に制御することにより、薬液によるパドル処理において、基板W上に保持される薬液の量を精密に制御することができる。さらに、単位時間当たりの基板Wへのレジストの供給量が少ないので、非常に薄いレジスト膜R1を形成することができる。したがって、除去処理において、不要になったレジスト膜R1を容易に除去することができる。さらにまた、基板Wを回転させて基板W上の処理液を排出させる処理において、基板W上から処理液を容易に排出させることができる。
【0044】
また、本実施形態では、疎水性材料としてレジストが用いられている。レジストは、基板Wの処理において一般的に用いられる材料であるから、このような材料を用いることにより、簡単に基板Wの上面周縁部を疎水化させることができる。すなわち、たとえば、基板Wにレジストを供給するためのレジスト供給機構が基板処理装置1に備えられている場合には、このレジスト供給機構を利用して簡単に基板Wの上面周縁部を疎水化させることができる。
【0045】
図5は、この発明の第2実施形態に係る基板処理装置201に備えられた処理部206の概略構成を示す図解的な側面図である。この図5において、前述の図1〜図4に示された各部と同等の構成部分については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
この第2実施形態と前述の第1実施形態との主要な相違点は、疎水化ノズル11および除去液ノズル12に代えて、基板Wを疎水化させる疎水化処理液を基板Wに供給するための疎水化ノズル211が設けられていることである。
【0046】
疎水化ノズル211は、たとえば、連続流の状態で疎水化処理液を吐出するストレートノズルである。疎水化ノズル211は、その吐出口が下方に向けられた状態で、スピンチャック8よりも上方に配置されている。疎水化ノズル211は、固定ノズルであってもよいし、スキャンノズルであってもよい。この実施形態では、疎水化ノズル211は、疎水化ノズル211から吐出された疎水化処理液が基板Wの上面周縁部に供給されるように処理室13内の所定位置に固定されている。より具体的には、疎水化ノズル211は、基板Wの上面周縁部に向けて基板Wの径方向外向きに疎水化処理液を吐出するように処理室13内の所定位置に固定されている。疎水化ノズル211には、疎水化供給管222が接続されている。疎水化ノズル211には、この疎水化供給管222を介して疎水化処理液が供給される。疎水化供給管222には、疎水化ノズル211への疎水化処理液の供給および供給停止を切り換えるための疎水化バルブ223が介装されている。疎水化バルブ223の開閉は、制御部7(図1参照)によって制御される。疎水化ノズル211に供給される疎水化処理液としては、たとえば、フッ酸や、フッ酸を含む処理液が挙げられる。
【0047】
この実施形態では、疎水化ノズル211、疎水化供給管222、および疎水化バルブ223によって疎水化手段が構成されている。
図6は、この発明の第2実施形態に係る基板処理装置201による基板Wの第2処理例を説明するためのフローチャートである。以下では、図5および図6を参照して、第2処理例について説明する。
【0048】
未処理の基板Wは、センターロボットCR(図1参照)によって何れかの処理部206の処理室13内に搬入される。そして、この基板Wは、デバイス形成面である表面をたとえば上に向けてスピンチャック8に渡される。未処理の基板Wが処理室13内に搬入されるとき、ノズルなどの処理室13内に配置された可動部品は、センターロボットCRや基板Wとの衝突を避けるためにスピンチャック8の上方から退避されている。
【0049】
次に、基板Wの上面(表面)の周縁部を疎水化させる疎水化処理が行われる(ステップS201)。より具体的には、制御部7によりスピンモータ17が制御されて、基板Wが所定の回転速度(たとえば数十〜数百rpm)で回転させられる。その後、制御部7により疎水化バルブ223が開かれて、疎水化処理液の一例であるフッ酸が、疎水化ノズル211から基板Wの上面周縁部に向けて外向きに吐出される。疎水化ノズル211からフッ酸が外向きに吐出されるから、吐出されたフッ酸は、基板Wの上面周縁部の内側の領域に殆ど供給されず、主として基板Wの上面周縁部に供給される。したがって、疎水化ノズル211から吐出されたフッ酸は、デバイス形成領域に影響を与えることなく、基板Wの上面周縁部に供給される。これにより、疎水化処理が行われ、基板Wの上面周縁部が選択的に疎水化され、この上面周縁部に選択的に撥水作用が付与される。より具体的には、基板Wの上面周縁部のうち、外周縁からたとえば数十μm〜数mm内側の位置よりも外側の環状の領域が疎水化される。フッ酸の供給により疎水化された領域は、非デバイス形成領域の一部または全部である。
【0050】
次に、薬液の液膜を基板W上に保持させた状態で薬液処理を進める薬液によるパドル処理が行われる(ステップS202)。より具体的には、制御部7によりスピンモータ17が制御されて、基板Wの回転が停止、または基板Wの回転速度が低速(たとえば10〜30rpm程度)に変更される。その後、制御部7により薬液バルブ19が開かれて、薬液ノズル9から基板Wの上面中央部に向けて薬液(たとえば水溶液)が吐出される。薬液バルブ19から吐出された薬液は、基板Wの上面中心部に着液し、外方に向かって基板W上を広がっていく。これにより、基板Wに供給された薬液が、基板Wの上面周縁部の手前に達する。
【0051】
前述のように、基板Wの上面周縁部は、フッ酸によって疎水化されている。したがって、基板Wの上面周縁部の手前に達した薬液は、疎水化された基板Wの上面周縁部の撥水作用によって弾かれて外方への移動が規制される。さらに、基板Wの回転速度が零または低速であるので、基板W上の薬液に作用する遠心力は、零であるか、または小さい。そのため、基板Wの上面周縁部の手前に達した薬液は、遠心力によって外方に移動することができない。したがって、基板Wに供給された薬液は、基板W上から排出されずに基板W上に溜まる。これにより、基板Wの上面のほぼ全域を覆う薬液の液膜が形成される。そして、制御部7により薬液バルブ19が閉じられて、基板W上で薬液の液膜が保持された状態が所定時間にわたって維持される。このようにして、薬液の液膜を基板W上に保持させた状態で薬液処理を進める薬液によるパドル処理が基板Wの上面に行われる。
【0052】
次に、基板Wの周囲に薬液を飛散させながら当該基板Wを処理する薬液処理が行われる(ステップS203)。より具体的には、制御部7によりスピンモータ17が制御されて、基板Wが所定の回転速度(たとえば数十〜数百rpm)で回転させられる。その後、制御部7により薬液バルブ19が開かれて、薬液ノズル9から基板Wの上面中央部に向けて薬液が吐出される。薬液ノズル9から吐出された薬液は、基板Wの上面中央部に着液し、基板Wの回転による遠心力を受けて基板W上を外方に広がっていく。これにより、基板Wの上面全域に薬液が供給される。また、基板Wの回転速度が薬液によるパドル処理のときよりも速いので、基板W上の薬液に作用する遠心力は、薬液によるパドル処理のときよりも大きい。そのため、基板W上の薬液は、遠心力によって基板Wの上面周縁部を超えて基板Wの周囲に飛散する。これにより、基板Wの周囲に薬液を飛散させながら当該基板Wを処理する薬液処理が行われる。そして、薬液処理が所定時間にわたって行われると、制御部7により薬液バルブ19が閉じられて、薬液ノズル9からの薬液の吐出が停止される。
【0053】
次に、リンス液の一例である純水によって基板Wを洗い流すリンス処理が行われる(ステップS204)。より具体的には、制御部7によりスピンモータ17が制御されて、基板Wが所定の回転速度(たとえば数十〜数百rpm)で回転させられる。その後、制御部7によりリンス液バルブ21が開かれて、リンス液ノズル10から基板Wの上面中央部に向けて純水が吐出される。リンス液ノズル10から吐出された純水は、基板Wの上面中央部に着液し、基板Wの回転による遠心力を受けて基板W上を外方に広がっていく。これにより、基板Wの上面全域にリンス液が供給される。また、基板Wの回転速度が薬液によるパドル処理のときよりも速いので、基板W上の薬液および純水に作用する遠心力は、薬液によるパドル処理のときよりも大きい。そのため、基板W上の薬液および純水は、遠心力によって基板Wの上面周縁部を超えて基板Wの周囲に飛散する。したがって、基板W上の薬液は、次々と基板Wに供給される純水によって押し流されて、基板Wの周囲に排出される。これにより、リンス処理が行われ、純水によって基板Wが洗い流される。そして、リンス処理が所定時間にわたって行われると、制御部7によりリンス液バルブ21が閉じられて、リンス液ノズル10からの純水の吐出が停止される。
【0054】
次に、基板Wを乾燥させる乾燥処理(スピンドライ)が行われる(ステップS205)。より具体的には、制御部7によりスピンモータ17が制御されて、基板Wが高回転速度(たとえば数千rpm)で回転させられる。これにより、基板Wに付着している純水に大きな遠心力が作用して、当該純水が基板Wの周囲に振り切られる。このようにして、基板Wから純水が除去され、基板Wが乾燥する(乾燥処理)。そして、乾燥処理が所定時間にわたって行われた後は、スピンモータ17の回転が停止され、スピンチャック8による基板Wの回転が停止される。その後、処理済みの基板WがセンターロボットCRによって処理室13から搬出される。
【0055】
以上のように本実施形態では、基板Wを疎水化させる疎水化処理液の一例であるフッ酸が、基板Wの上面周縁部に選択的に供給される。これにより、基板Wの上面周縁部が選択的に疎水化される。したがって、薬液によるパドル処理において、基板Wの上面周縁部の手前に達した薬液は、疎水化された基板Wの上面周縁部によって弾かれて外方への移動が規制される。これにより、基板Wの上面のほぼ全域を覆う薬液の液膜が安定して保持された状態で、薬液によるパドル処理が行われる。また、レジスト膜R1を形成する場合と異なり、基板Wの上面周縁部自体が疎水化されるので、不要になったレジスト膜R1を除去する工程が不要である。
【0056】
図7は、この発明の第3実施形態に係る基板処理装置301に備えられた処理部306の概略構成を示す図解的な側面図である。また、図8は、この発明の第3実施形態に係る基板処理装置301に備えられた処理部306の概略構成を示す図解的な平面図である。この図7および図8において、前述の図1〜図6に示された各部と同等の構成部分については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0057】
この第3実施形態と前述の第1実施形態との主要な相違点は、基板Wに超音波を付与するための超音波機構26が設けられていることである。
超音波機構26は、基板Wに超音波を付与する付与装置27と、付与装置27を移動させる移動装置28とを備えている。図7に示すように、付与装置27は、スピンチャック308の基板保持位置の下方に配置されている。付与装置27は、基板Wに対して下方から超音波を付与することができる。また、図8に示すように、付与装置27は、たとえば、平面視において基板Wよりも小さい。したがって、付与装置27は、基板Wの一部に超音波を付与する。移動装置28は、基板Wの全域に超音波が付与されるように付与装置27を移動させる。より具体的には、移動装置28は、基板Wに対する超音波の付与位置が基板Wの中央部と基板Wの周縁部との間で移動するように付与装置27を基板Wの径方向に移動させる。したがって、超音波が付与装置27から基板Wに付与されるときに、スピンチャック308によって基板Wを回転させながら、移動装置28によって付与装置27を移動させることにより、基板Wの全域に超音波を付与することができる。移動装置28は、たとえば、ボールねじ機構である。移動装置28は、付与装置27に結合されたボールナット29と、ボールナット29に対応するボールねじ30と、ボールねじ30を回転させるモータ31と、図示しない複数のボールとを備えている。付与装置27および移動装置28は、制御部7(図1参照)によって制御される。
【0058】
また、スピンチャック308は、スピンベースに相当するリングギヤ32と、リングギヤ32に対応するピニオン33と、ピニオン33を回転させるスピンモータ317とを備えている。リングギヤ32は、外歯車であり、水平に配置されている。付与装置27は、リングギヤ32の内側に配置されている。また、ピニオン33は、リングギヤ32の側方に配置されている。ピニオン33は、スピンモータ317の上方に配置されている。ピニオン33は、鉛直軸線まわりに回転するように構成されている。また、複数の挟持部材16は、リングギヤ32の上面において基板Wの外周形状に対応する円周上で適当な間隔を空けて配置されている。各挟持部材16は、リングギヤ32に一体回転可能に連結されている。スピンモータ317がピニオン33を回転させると、ピニオン33の回転がリングギヤ32に伝達され、リングギヤ32および複数の挟持部材16が一体回転する。したがって、複数の挟持部材16によって基板Wが保持された状態で、スピンモータ317がピニオン33を回転させると、保持された基板Wがその中心を通る鉛直な軸線まわりに回転する。スピンモータ317は、制御部7によって制御される。
【0059】
図9は、超音波機構26に備えられた付与装置27の概略構成を示す断面図である。
付与装置27は、振動子35と、ハウジング36とを備えている。振動子35は、超音波を発生させるためのものである。振動子35は、ハウジング36内に収容されている。また、ハウジング36は、ハウジング36の上面がスピンチャック308に保持された基板Wの下面に近接するように配置されている。ハウジング36は、振動子35を収容する収容空間37と、この収容空間37に連通するバッファ空間38と、このバッファ空間38にそれぞれ連通する2つの経路39とを備えている。バッファ空間38は、ハウジング36の上面に形成された開口40を通じて外部に連通している。バッファ空間38には、一方の経路39を介して伝搬水が供給される。また、バッファ空間38に貯留された伝搬水は、他方の経路39を介して排出される。伝搬水としては、たとえば、純水が挙げられる。
【0060】
付与装置27によって超音波が基板Wに付与されるときは、伝搬水によってバッファ空間38が満たされる。これにより、バッファ空間38に貯留された伝搬水が基板Wの下面に接する。そして、伝搬水が基板Wの下面に接する状態で、一方の経路39からバッファ空間38への伝搬水の供給と、バッファ空間38から他方の経路39への伝搬水の排出が行われる。すなわち、伝搬水がバッファ空間38を絶えず流動しながら、バッファ空間38に貯留された伝搬水が基板Wの下面に接する。そして、この状態で、振動子35から超音波が発生される。したがって、振動子35により発生された超音波は、バッファ空間38内の伝搬水を介して基板Wに伝達される。
【0061】
図10は、この発明の第3実施形態に係る基板処理装置301による基板Wの第3処理例を説明するためのフローチャートである。以下では、図7および図10を参照して、第3処理例について説明する。
未処理の基板Wは、センターロボットCR(図1参照)によって何れかの処理部306の処理室13内に搬入される。そして、この基板Wは、デバイス形成面である表面をたとえば上に向けてスピンチャック308に渡される。未処理の基板Wが処理室13内に搬入されるとき、ノズルなどの処理室13内に配置された可動部品は、センターロボットCRや基板Wとの衝突を避けるためにスピンチャック308の上方から退避されている。
【0062】
次に、基板Wの上面(表面)の周縁部を疎水化させる疎水化処理が行われる(ステップS301)。より具体的には、制御部7によりスピンモータ317が制御されて、基板Wが所定の回転速度(たとえば数十〜数百rpm)で回転させられる。その後、制御部7により疎水化バルブ23が開かれて、疎水性材料の一例であるレジスト液が疎水化ノズル11から噴霧される。これにより、霧状のレジスト液が、基板Wの上面周縁部(非デバイス形成領域)の全周に供給される。そのため、レジスト液が基板Wの上面周縁部で固まって、全周にわたって連続した環状のレジスト膜R1(図4参照)が基板Wの上面周縁部に形成される。これにより、疎水化処理が行われ、基板Wの上面周縁部が選択的に疎水化され、この上面周縁部に撥水性が付与される。
【0063】
次に、薬液の液膜を基板W上に保持させた状態で薬液処理を進める薬液によるパドル処理が行われる(ステップS302)。より具体的には、制御部7によりスピンモータ317が制御されて、基板Wの回転が停止、または基板Wの回転速度が低速(たとえば10〜30rpm程度)に変更される。その後、制御部7により薬液バルブ19が開かれて、薬液ノズル9から基板Wの上面中央部に向けて薬液が吐出される。薬液バルブ19から吐出された薬液は、基板Wの上面中心部に着液し、外方に向かって基板W上を広がっていく。これにより、基板Wに供給された薬液が、基板Wの上面周縁部の手前に達する。
【0064】
前述のように、基板Wの上面周縁部には、レジスト膜R1が形成されている。したがって、基板Wの上面周縁部の手前に達した薬液は、レジスト膜R1が障壁となって外方への移動が規制される。さらに、レジスト膜R1は、疎水性を有している。そのため、基板Wの上面周縁部の手前に達した薬液は、疎水性を有するレジスト膜R1の撥水作用によって弾かれて外方への移動が規制される。さらにまた、基板Wの回転速度が零または低速であるので、基板W上の薬液に作用する遠心力は、零であるか、または小さい。そのため、基板Wの上面周縁部の手前に達した薬液は、遠心力によってレジスト膜R1を乗り越えることができない。したがって、基板Wに供給された薬液は、基板W上から排出されずに基板W上に溜まる。これにより、基板Wの上面のほぼ全域を覆う薬液の液膜が形成される。そして、制御部7により薬液バルブ19が閉じられて、基板W上で薬液の液膜が保持された状態が所定時間にわたって維持される。このようにして、薬液の液膜を基板W上に保持させた状態で薬液処理を進める薬液によるパドル処理が基板Wの上面に行われる。
【0065】
次に、薬液の液膜を基板W上に保持させた状態で、基板Wに超音波を付与する超音波処理が行われる(ステップS303)。より具体的には、制御部7によりスピンモータ317が制御されて、基板Wが所定の回転速度(基板W上の薬液膜を保持できる低速回転速度。たとえば30rpm)で回転させられる。その後、制御部7により超音波機構26の付与装置27が制御されて、薬液の液膜を基板W上に保持させた状態で、超音波が基板Wの一部に付与される。さらに、制御部7により超音波機構26の移動装置28が制御されて、基板Wに対する超音波の付与位置が基板Wの中央部と基板Wの周縁部との間で移動するように付与装置27が移動される。これにより、基板Wの上面のほぼ全域を覆う薬液の液膜が基板W上に保持された状態で、基板Wの全域に超音波が付与される(超音波処理)。そして、超音波処理が所定時間にわたって行われると、制御部7により超音波機構26の付与装置27が制御されて、超音波の発生が停止される。
【0066】
次に、基板Wの周囲に薬液を飛散させながら当該基板Wを処理する薬液処理が行われる(ステップS304)。より具体的には、制御部7によりスピンモータ317が制御されて、基板Wが所定の回転速度(たとえば数十〜数百rpm)で回転させられる。その後、制御部7により薬液バルブ19が開かれて、薬液ノズル9から基板Wの上面中央部に向けて薬液が吐出される。薬液ノズル9から吐出された薬液は、基板Wの上面中央部に着液し、基板Wの回転による遠心力を受けて基板W上を外方に広がっていく。これにより、基板Wの上面全域に薬液が供給される。また、基板Wの回転速度が薬液によるパドル処理のときよりも速いので、基板W上の薬液に作用する遠心力は、薬液によるパドル処理のときよりも大きい。そのため、基板W上の薬液は、遠心力によってレジスト膜R1を乗り越えて基板Wの周囲に飛散する。これにより、基板Wの周囲に薬液を飛散させながら当該基板Wを処理する薬液処理が行われる。そして、薬液処理が所定時間にわたって行われると、制御部7により薬液バルブ19が閉じられて、薬液ノズル9からの薬液の吐出が停止される。
【0067】
次に、リンス液の一例である純水によって基板Wを洗い流すリンス処理が行われる(ステップS305)。より具体的には、制御部7によりスピンモータ317が制御されて、基板Wが所定の回転速度(たとえば数十〜数百rpm)で回転させられる。その後、制御部7によりリンス液バルブ21が開かれて、リンス液ノズル10から基板Wの上面中央部に向けて純水が吐出される。リンス液ノズル10から吐出された純水は、基板Wの上面中央部に着液し、基板Wの回転による遠心力を受けて基板W上を外方に広がっていく。これにより、基板Wの上面全域にリンス液が供給される。また、基板Wの回転速度が薬液によるパドル処理のときよりも速いので、基板W上の薬液および純水に作用する遠心力は、薬液によるパドル処理のときよりも大きい。そのため、基板W上の薬液および純水は、遠心力によってレジスト膜R1を乗り越えて基板Wの周囲に飛散する。したがって、基板W上の薬液は、次々と基板Wに供給される純水によって押し流されて、基板Wの周囲に排出される。これにより、リンス処理が行われ、純水によって基板Wが洗い流される。そして、リンス処理が所定時間にわたって行われると、制御部7によりリンス液バルブ21が閉じられて、リンス液ノズル10からの純水の吐出が停止される。
【0068】
次に、基板Wを乾燥させる乾燥処理(スピンドライ)が行われる(ステップS306)。より具体的には、制御部7によりスピンモータ317が制御されて、基板Wが高回転速度(たとえば数千rpm)で回転させられる。これにより、基板Wに付着している純水に大きな遠心力が作用して、当該純水が基板Wの周囲に振り切られる。このようにして、基板Wから純水が除去され、基板Wが乾燥する(乾燥処理)。
【0069】
次に、除去液の一例であるアセトンによってレジスト膜R1を除去する除去処理が行われる(ステップS307)。より具体的には、制御部7によりスピンモータ317が制御されて、基板Wが所定の回転速度(たとえば数十〜数百rpm)で回転させられる。その後、制御部7により除去液バルブ25が開かれて、除去液ノズル12から基板Wの上面周縁部(非デバイス形成領域)に向けて外向きにアセトンが吐出される。除去液ノズル12からアセトンが外向きに吐出されるから、吐出されたアセトンは、基板Wの上面周縁部の内側の領域に殆ど供給されず、主としてレジスト膜R1に供給される。したがって、除去液ノズル12から吐出されたアセトンは、デバイス形成領域に影響を与えることなく、レジスト膜R1に供給される。そして、基板上のレジスト膜R1は、アセトンの供給により基板W上から完全に除去される。これにより、基板上からレジスト膜R1を除去する除去処理が行われる。そして、除去処理が所定時間にわたって行われると、制御部7により除去液バルブ25が閉じられて、除去液ノズル12からのアセトンの吐出が停止される。さらに、スピンモータ317の回転が停止され、スピンチャック308による基板Wの回転が停止される。その後、処理済みの基板WがセンターロボットCRによって処理室13から搬出される。必要であれば、前記除去処理の後に、リンス液ノズル10から純水を吐出してリンス処理を行い、さらに、リンス液吐出を停止して基板Wを高速回転させるスピンドライ処理が追加されてもよい。
【0070】
以上のように本実施形態では、超音波処理において、基板Wの上面のほぼ全域が薬液の液膜によって覆われた状態で基板Wの全域に超音波が付与される。したがって、基板Wの上面に付着している異物を超音波による振動によって液膜中に移動させることができる。そして、基板W上から薬液の液膜を除去することにより、基板Wの上面全域から異物を除去することができる。これにより、基板Wの清浄度を高めることができる。
【0071】
基板Wの上面に超音波を付与しても、基板Wの上面が薬液の液膜に覆われていない場合、または基板Wの上面のほほ全域が完全に薬液の液膜に覆われていない場合には、基板Wの上面に付着している異物が液膜中に移動できない場合がある。そのため、薬液とともにこの異物を基板Wから除去することができない。したがって、本実施形態のように、基板Wの上面のほぼ全域を薬液の液膜によって覆うことにより、基板Wの上面全域から確実に異物を除去することができる。
【0072】
また、本実施形態では、基板Wの下面には、絶えず流動する伝搬水を介して超音波が付与される。したがって、基板Wの下面に付着している異物を伝搬水中に移動させることができる。そして、この異物を流動する伝搬水とともに除去することができる。さらに、超音波機構26の付与装置27は、基板Wの下面全域に超音波が付与されるように移動される。したがって、基板Wの下面全域から異物を除去することができる。これにより、基板Wの清浄度を高めることができる。
【0073】
また、本実施形態では、基板Wに対する超音波の付与位置が移動されることにより、基板Wの全域に超音波が付与される。したがって、基板Wの全域に同時に超音波を付与する構成に比べて、均一な大きさの超音波を基板Wに付与することができる。これにより、基板Wから均一に異物を除去することができる。
また、本実施形態では、超音波機構26は、スピンチャック308の基板保持位置の下方に配置されている。したがって、超音波機構26は、基板Wの上面に形成される薬液膜には接しないので、この超音波機構26から基板W上面に汚染が転移するおそれもない。これにより、基板Wの上面の清浄度を一層高めることができる。
【0074】
この発明は、以上の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。たとえば、前述の第1〜第3処理例では、基板Wの上面周縁部を全周にわたって疎水化させる場合について説明したが、基板Wの上面周縁部が部分的に疎水化されてもよい。より具体的には、たとえば、レジスト膜R1、または疎水化処理液(第2処理例では、フッ酸)によって疎水化された領域が、周方向に複数個に分割されていてもよい。この場合、複数の分割体または複数の分割領域の間に、処理液の外方への移動を規制できる(たとえば表面張力によって液の流出を規制できる)程度の隙間が設けられていてもよい。ただし、基板Wが半導体ウエハであり、基板Wの周縁部にノッチが形成されている場合には、基板Wの上面周縁部のうち、少なくともノッチの内側が疎水化されることが好ましい。また、基板Wの周縁部を保持する挟持式の基板保持手段(スピンチャック8、308)が備えられている場合には、基板Wの上面周縁部のうち、少なくとも各挟持部材16に対向する位置が疎水化されることが好ましい。これにより、基板W上面から処理液が零れることを抑制または防止できる。
【0075】
また、前述の第1〜第3処理例では、薬液を用いてパドル処理が行われる場合について説明したが、リンス液を用いてパドル処理が行われてもよい。たとえば、第1処理例(図3参照)において、薬液処理(S103)が行われた後に、リンス液によるパドル処理が行われ、その後、乾燥処理(S105)が行われてもよい。
また、前述の第1〜第3の処理例では、基板Wを回転しながら薬液を供給する薬液処理(振り切り処理)S103,S203,S304が行われているが、この薬液処理を省き、薬液パドル処理の後にリンス処理S104,S204,S305を行うようにしてもよい。
【0076】
また、前述の第1および第3処理例では、基板Wの上面周縁部にレジスト液を噴霧する場合について説明したが、レジスト液は、液状のまま(微細な液滴でない状態で)基板Wに供給されてもよい。この場合、レジスト液は、疎水性ノズルから基板Wの上面周縁部に向けて外向きに吐出されることが好ましい。
また、前述の第1および第3処理例では、基板Wの上面周縁部だけにレジスト膜R1が形成される場合について説明したが、基板Wの上面周縁部以外の領域にもレジスト膜R1が形成されてもよい。より具体的には、たとえば、基板Wの上面全域にレジスト膜R1が形成されてもよい。この場合、基板Wの上面周縁部以外の領域を覆うレジスト膜R1の一部が除去されることにより、基板Wの上面周縁部が選択的に疎水化されてもよい。
【0077】
また、前述の第1〜第3実施形態に係る基板処理装置1、201、301では、挟持式の基板保持手段(スピンチャック8、308)が備えられている場合について説明したが、これに限らず、たとえば、基板Wの下面(裏面)を真空吸着することにより基板Wを水平な姿勢で保持し、さらにその状態で鉛直な軸線まわりに回転することにより、その保持した基板Wを回転させることができる真空吸着式の基板保持手段(バキュームチャック)が備えられていてもよい。
【0078】
また、前述の第1〜第3実施形態に係る基板処理装置1、201、301では、水平に保持され回転させられている基板Wに処理液や、疎水性材料、除去液を供給して当該基板Wを処理するものを取り上げたが、回転していない状態(非回転状態)の基板Wに処理液等を供給して基板Wを処理するものであってもよい。より具体的には、たとえば、ノズルを移動させることにより、基板Wの所定領域に処理液や、疎水性材料、除去液を供給して基板Wを処理してもよい。なお、前記非回転状態の基板Wとは、回転も移動もしていない状態(静止状態)の基板Wであってもよいし、回転せずに所定の方向に移動している状態(移動状態)の基板Wであってもよい。
【0079】
また、前述の第1〜第3実施形態に係る基板処理装置1、201、301では、基板Wに対する一連の処理(たとえば、S101〜S106。図3参照)が同一の処理部6、206、306において行われる場合について説明したが、各基板処理装置1、201、301において、複数の処理部6、206、306を用いて基板Wに対する一連の処理が行われてもよい。より具体的には、第1実施形態に係る基板処理装置1において、レジスト液を噴霧するための処理部6およびレジスト膜R1を除去するための処理部6がそれぞれ1つずつ設けられ、薬液処理などのその他の処理を行う処理部6が2つ設けられていてもよい。そして、基板Wがこれらの処理部6に搬入されることにより、基板Wに対する一連の処理が行われてもよい。むろん、基板処理装置に備えられるべき処理部の数は4個に限らず、1個〜3個であってもよいし、5個以上であってもよい。
【0080】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 基板処理装置
9 薬液ノズル(処理液供給手段の一部)
10 リンス液ノズル(処理液供給手段の一部)
11 疎水化ノズル(疎水化手段の一部)
18 薬液供給管(処理液供給手段の一部)
19 薬液バルブ(処理液供給手段の一部)
20 リンス液供給管(処理液供給手段の一部)
21 リンス液バルブ(処理液供給手段の一部)
22 疎水化供給管(疎水化手段の一部)
23 疎水化バルブ(疎水化手段の一部)
201 基板処理装置
211 疎水化ノズル(疎水化手段の一部)
222 疎水化供給管(疎水化手段の一部)
223 疎水化バルブ(疎水化手段の一部)
301 基板処理装置
R1 レジスト膜(疎水性被膜)
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の主面の周縁部を選択的に疎水化させる疎水化工程と、
前記疎水化工程が実行された後に、水平に保持された基板に処理液を供給して、当該基板の主面を覆う処理液の液膜を形成する液膜形成工程とを含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記疎水化工程は、基板の主面の周縁部に選択的に疎水性被膜を形成する疎水性被膜形成工程を含む、請求項1記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記疎水化工程は、基板を疎水化させる疎水化処理液を基板の主面の周縁部に選択的に供給する疎水化処理液供給工程を含む、請求項1記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記疎水性被膜形成工程は、基板の主面の周縁部に選択的に液状の疎水性材料を噴霧する噴霧工程を含む、請求項2記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記疎水性被膜形成工程は、基板の主面の周縁部に選択的にレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程を含む、請求項2または4記載の基板処理方法。
【請求項6】
基板を水平に保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持された基板の上面周縁部を選択的に疎水化させる疎水化手段と、
前記基板保持手段に保持された基板の上面に処理液を供給する処理液供給手段と含む、基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−71198(P2011−71198A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219110(P2009−219110)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】