説明

基板処理装置及び基板処理方法

【課題】基板の被処理面の背面に使用済みの処理液等の回り込みを防止する。
【解決手段】基板の被処理面を水平に支持した状態で当該被処理面と平行に回転するテーブルを有し、このテーブルに支持された当該基板Wの被処理面に所定の処理液を供給した後、この処理液を当該基板Wの外周方向に払拭することにより基板処理を行う装置の当該テーブルに、当該基板Wを着脱自在に嵌装するための基板装着部を形成しておく。この基板装着部に嵌装された基板Wをベルヌーイ吸着させるために当該基板Wの被処理面の背面に向けてN2ガス等を噴出供給して、このベルヌーイ吸着により生じる当該基板Wの変位力により、当該処理液の払拭路と当該被処理面の背面を通過した気体の排出路とを遮へいする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハ又はガラス基板等の基板を支持した状態で水平方向に回転するテーブルを用いて、純水あるいは薬液の処理液で表面処理を行う基板処理装置及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程の一つであるフォトレジスト工程では、一般に、半導体ウエハ又はガラス基板(以下、これらを単に「基板」と称する)等の被処理面にレジストを塗布し、所定のパターンを露光した後、薬液を液盛することにより、レジストパターンを作成する。その後、レジストの溶解物を現像液と共に基板表面から除去するために、純水等で洗浄する等の表面処理が行われている。
具体例を挙げると、回転するテーブルを備えた処理装置において、テーブルの鉛直軸の中心と処理対象の基板の中心とを一致させ、その基板を水平に載置して純水あるいは薬液等の処理液を、テーブルの中心部付近、つまり基板の中心部付近に供給する。そして、遠心力により付勢された処理液を基板の被処理面全体に行き渡わせることにより表面処理を進めている。
【0003】
しかし、従来のこの種の基板処理装置では、処理対象の基板をテーブルの表面に設けられた複数個の基板支持ピンにより、テーブルの表面から少し浮かせた状態で支持したり、ベルヌーイ効果によってテーブルに非接触状態で支持したりしている。このため、表面処理に用いられた使用済みの処理液等やパーティクルを含むミストなどが基板の被処理面の背面にも回り込んでしまい、背面を汚染してしまうという問題がある。さらに、1回の処理で複数種類の処理液を用いる場合では、先に供給された処理液が基板の被処理面の背面に回り込んで残ってしまい、次に供給された処理液と混ざってしまい基板を汚染するなどの、クロス・コンタミネーション(cross-contamination:相互混入による汚染)が発生する恐れもある。
また、例えばテーブルの表面に直に基板を載置した場合でも、表面処理に用いられた使用済みの処理液等が基板の側面を通過してテーブルの表面との境界部分に滞留し、毛細管現象によって基板の被処理面の背面へと回り込むこともある。
【0004】
回り込み防止の観点からは、特許文献1に開示された、基板の下面へ処理液を供給して基板を処理する装置がある。回転ベース部材の支持部材によって支持された基板に近接吸着手段を近付け、ベルヌーイの原理により基板に対して上向きの力を作用させる。このとき、支持部材は上下方向への基板の移動を許容するように基板を支持しており、基板は、近接吸着手段に吸い寄せられて上方へ移動し、近接吸着手段の下面に近接、例えば0.1mm程度まで近接するようにしている。
【0005】
また、特許文献2に開示された装置は、基板にはベルヌーイの効果により基板支持ヘッドに吸着しようとする力を作用させ、基板支持ヘッドの少なくとも後端部をベース部材の対向面の略中央部に設けられた窪部に配置可能にして、対向面と基板の他方主面の周縁部とを十分に近接させる。このように、基板を非接触で支持しながら基板の他方主面の周縁部と対向面とを基板全周にわたって均一に近接するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−280342号公報
【特許文献2】特開2006−19454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されている方法では、基板の径方向外側へと流れる気体と、基板から振り切られた使用済の処理液とが基板の外周端部で合流してしまうため、パーティクルを含むミストが発生したり、使用済の処理液等が基板の側面に沿って巻き上げられて、基板の側面を汚染してしまうという問題がある。さらに、基板の側面を覆っている使用済み処理液等は、気体が吹き出される際の圧力や、処理液の供給又は停止のタイミング、回転ベース部材の回転停止のタイミングなどによっては基板の裏面に回り込む可能性も残り、回り込み防止の観点からは必ずしも十分とは言えない。また、特許文献2に開示されている装置であっても、基板の径方向外側へと流れる気体と、基板から振り切られた使用済の処理液とが基板の外周端部で合流してしまうため、パーティクルを含むミストが発生したり、使用済の処理液やパーティクルを含むミストなどにより基板の側面を汚染してしまうという問題や、基板の裏面に回り込む可能性も残るという問題がある。
【0008】
本発明は、基板の被処理面の背面に使用済みの処理液等が回り込んで背面が汚染されてしまうことを防止し、また、クロス・コンタミネーションの発生を抑止することができる基板処理技術を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、基板処理装置及び基板処理方法を提供する。
本発明の基板処理装置は、基板の被処理面を水平に支持した状態で前記被処理面と平行に回転するテーブルを有し、このテーブルに支持された前記基板の被処理面に所定の処理液を供給した後、この処理液を前記基板の外周方向に払拭することにより基板処理を行う装置であって、前記テーブルは、前記基板を着脱自在に嵌装するための基板装着部と、この基板装着部に嵌装された前記基板をベルヌーイ吸着させるために当該基板の被処理面の背面に向けて所定の気体を噴出する噴出機構と、前記ベルヌーイ吸着により生じる前記基板の変位力により、前記処理液の払拭路と前記被処理面の背面を通過した気体の排出路とを遮へいする遮へい機構と、を備えている。
この基板処理装置によれば、遮へい機構により処理液の払拭路と基板の被処理面の背面を通過した気体の排出路とが遮へいされるため、当該被処理面を通過して払拭された処理液(以下、使用済み処理液という場合もある)が当該基板の被処理面の背面に回り込んで、当該背面が汚染されてしまうことを防止することができる。また、使用済み処理液と気体とが基板の外周端部で合流しないため、当該基板の近傍でパーティクルを含むミストが発生してしまうことも抑止することができる。
さらに、所定の気体を噴出して基板をテーブルに近接状態に吸着させるベルヌーイ吸着を採用することで、当該基板の被処理面の背面側空間の圧力が負圧になることを防ぎ、使用済み処理液が当該背面側空間に向けて吸い込まれて、当該基板の被処理面の背面に回り込んで、当該背面が汚染されてしまうことを防止することができる。
【0010】
ある実施の態様では、前記払拭路と前記排出路とが前記基板の外周に至るまで分離されて形成されている。
払拭路と排出路とがそれぞれ分離されて形成されることにより、より確実に使用済み処理液等が基板の被処理面の背面に回り込んで、背面が汚染されてしまうことを防止することができる。さらに、使用済み処理液と気体とが合流することで生じるパーティクルを含むミストの発生も抑止することができる。また、気体をテーブル外方へ排出するように排出路を形成することで、排出路の終端、つまり排出口から使用済み処理液が侵入してしまうことも防止される。
【0011】
他の実施の態様では、前記テーブルは、前記被処理面とテーブル表面とがほぼ水平となるように前記基板を鉛直方向に変位させ、且つ、前記基板の鉛直方向の中心軸と前記基板装着部の鉛直方向の中心軸とが同一軸になる基板を水平方向に変位させる位置決め機構をさらに備える。
これにより、基板を基板装着部に嵌装させる際の位置決めが容易になり、より確実に早く基板をテーブルに支持させることができる。さらに、位置決め機構は、ベルヌーイ吸着により生じる基板の変位力により基板の位置決めを行うため、位置決め機構の構成をシンプル化でき、且つ、使用されるエネルギーコストも削減することができる。
【0012】
帯電防止を図る観点からは、前記位置決め機構と前記テーブルとの少なくとも一方の前記基板と接触する部分を接地電位の導電性部材で構成しても良い。
【0013】
他の実施の態様では、前記テーブルの中央部表面には、テーブルの回転軸をその中心軸とする突起部が形成されており、前記基板装着部は、前記突起部の基端から前記テーブルの外周方向に所定距離だけ離れた前記テーブルの表面に、それぞれ前記突起部の先端から等距離に複数設けられており、前記噴出機構は、各基板装着部に支持された基板の被処理面の背面側に設けられており、 前記テーブルと共に回転する前記突起部の先端に向けて鉛直下方に供給された前記処理液が、前記突起部の先端を経由してテーブルの回転による遠心力で付勢されて、すべての基板の中心部付近を含めた被処理面に到達するように構成されている。
処理液は、突起部の先端から鉛直下方に供給され、突起部の先端から等距離に複数支持されている基板の被処理面に到達するので、被処理面に処理液が直接供給されることはなく、しかも、テーブルの回転により生じる遠心力により付勢されて被処理面に到達することとなるため、基板の被処理面の中心部付近であっても、処理液のムラが生じることがなく、処理結果の均一化が図られる。また、複数の基板の被処理面が同時に処理されるので、単一枚数の基板を処理する場合に比べて作業効率が格段に高まる。
【0014】
本発明の基板処理方法は、水平方向に回転するテーブルを備えた装置で行う基板処理方法であって、処理対象となる基板を、その表面である被処理面がテーブル表面と平行となるように位置決めした後、前記被処理面の背面に向けて所定の気体を噴出して基板を前記テーブル表面にベルヌーイ吸着させ、前記被処理面を所定の処理液で基板処理を行うとともに、前記ベルヌーイ吸着により生じる前記基板の変位力により、基板処理後の前記処理液の払拭路と前記被処理面の背面を通過した気体の排出路とを遮へいする、基板処理方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基板の被処理面の背面に使用済みの処理液等が回り込んで背面が汚染されてしまうことを防止することができるようになり、また、クロス・コンタミネーションの発生を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態の基板処理装置のテーブル部の概略平面図。
【図2】第1実施形態のテーブル部の概略上面図。
【図3】(a)(b)はクランプヒンジの動きを示した模式図。
【図4】第1実施形態において遠心力により付勢された処理液と気体との移動状態を示した縦断面図。
【図5】基板処理装置において実行される基板処理方法の全体手順説明図。
【図6】第2実施形態の基板処理装置のテーブル部の概略平面図。
【図7】第2実施形態のテーブル部の概略上面図。
【図8】第2実施形態において遠心力により付勢された処理液と気体との移動状態を示した縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の基板処理装置は、半導体ウエハやガラス基板のような基板を処理対象基板とし、この基板の一方の表面を洗浄及び乾燥のような被処理面とする。
基板処理装置は、基板の被処理面を水平に支持した状態で、被処理面と平行に回転するテーブルを有しており、このテーブル上の被処理面に向けて、薬液、洗浄液その他の液体(処理液)を供給し、所定の基板処理を行う。
この基板処理装置は、テーブルの構造と、そのテーブルの駆動制御方法に主たる特徴がある。以下、この基板処理装置の実施の形態例を説明する。
【0018】
[第1実施形態]
図1は、テーブルを有する基板処理装置1の周辺部材の構成例を示す概略縦断面図である。図1に示す基板処理装置1は、テーブルの他、処理液を基板Wの被処理面に向けて供給するためのノズルNと、テーブルを回転させるためのモータ14と、後述するベルヌーイノズル16と、このベルヌーイノズル16と配管17とを介して接続されている図示しない噴出機構と、ノズルNと接続されている図示しない処理液供給機構と、モータ14を含む各機構を制御するためのコンピュータとを含む制御部30とを主として備える。
【0019】
テーブルは、テーブル主体10と、基板Wを着脱自在に嵌装することができる基板装着部が形成されたウエハステージ11と、基板Wを基板装着部に嵌装する際の基板Wの位置決めのために、ウエハステージ11に設けられた複数のエッジクランプ15と、基板Wをテーブル主体10に近接状態に吸着させるために、基板装着部に嵌装された基板Wの被処理面の背面に向けてN2(窒素)ガスやドライエアなどを噴出供給するベルヌーイノズル16とを含んで構成されている。
テーブル主体10には、基板装着部に嵌装された基板Wの被処理面の背面と対向している面(テーブル主体10の面)には導電性樹脂部12が形成されており、N2ガス等の噴出供給などにより生じる静電気の拡散や帯電防止が図られている。
本明細書では、ベルヌーイ吸着により生じる、基板Wをテーブル主体10に近接状態に吸着させる力を「変位力」と呼ぶ。
【0020】
ベルヌーイノズル16は、基板装着部に嵌装された際の基板Wの中心軸から、その外周方向へ向かって45度傾斜させた状態でテーブル主体10に備えられている。つまり、基板Wの被処理面の背面には、斜め45度下方からN2ガス等が噴出供給される。これにより基板Wはベルヌーイ吸着される。
このベルヌーイ吸着により生じる基板Wの変位力により、基板Wが基板装着部に嵌装させることで、後述する処理液の払拭路とN2ガス等の排出路とを遮へいすることが、遮へい機構の主たる機能である。
N2ガス等を噴出供給する角度は、基板Wのサイズや重量、テーブルの回転速度等に応じて変更することもできる。
【0021】
制御部30は、ノズルNの位置決め、ノズルNからの処理液の供給開始又は停止制御、ノズルNから噴出供給される処理液の単位時間当たりの供給量制御、ベルヌーイノズル16からのN2ガス等の供給開始又は停止制御、ベルヌーイノズル16から噴出供給されるN2ガス等の単位時間当たりの供給量制御、モータ14の始動開始や始動停止制御等を主として行う。
制御部30により制御されたモータ14の回転力は、駆動部13を介してテーブル主体10に伝達され、これによりテーブルが回転し、あるいは回転を停止する。この制御部30による制御手順については、後述する。
【0022】
処理液は、制御部30の制御によりテーブルの回転速度が所定値に達した状態で、ノズルNから所定時間、基板Wの被処理面に向けて、鉛直下方に供給される。
【0023】
図2は、ウエハステージ11の基板装着部に基板Wが嵌装された状態のテーブルの上面図である。テーブル主体10の回転軸と、ウエハステージ11の中心軸及び、基板Wの中心軸のそれぞれが一致するように構成されている。
図2の基板Wの中央付近の一点鎖線で囲まれている範囲は、基板Wと導電性樹脂部12とを取り除いた状態で示している。図2に示されるように、基板Wの外周方向に向けて、複数のベルヌーイノズル16が放射状に設けられている。ベルヌーイノズル16は、基板Wのサイズや重量、テーブルの回転速度等に応じて近接状態が維持できるような任意の本数、形状のものを設けることができる。
【0024】
ウエハステージ11は、環状に形成されている。そして、その内周側には基板Wを嵌装するための基板装着部が形成されている。基板装着部は、処理対象である基板を嵌装した際に、ウエハステージ11の内周側面と基板の外周側面との間に隙間が生じないような形状に形成されている。例えば、処理対象の基板が方形状であれば、基板装着部も基板のサイズと同じ方形状に形成する。
ウエハステージ11は、また、ウエハステージ支え18を介してテーブル主体10と接続されている。
【0025】
本実施形態例では、テーブル主体10とウエハステージ11とを分けて、それぞれをテーブルの構成要素としているが、これらを一体的に形成しても良い。
また、本実施形態例では、テーブル主体10とウエハステージ11とを同じ直径を持つ円形状のものとして例示しているが、この形状、サイズに限るものではない。例えば、処理対象の基板のサイズがテーブル主体10よりも相対的に大きい場合であれは、ウエハステージ11のみを基板のサイズに合わせて大型化することで対処することができる。その際に、ウエハステージ11とテーブル主体10とが分離可能に形成されていれば、コストを抑えながらも多様な形状、サイズの基板の処理が可能になる。
【0026】
図2に示す各エッジクランプ15は、エッジクランプ15に備わるピン19を介して、ウエハステージ11に接続されている。本実施形態例では、ウエハステージ11は、6個のエッジクランプ15で構成された位置決め機構を備えている。また、各エッジクランプ15は、所定の範囲内であればピン19を支点にして回動することができるように構成されている。以下、回動によるエッジクランプ15の姿勢の変化について、図3を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
図3(a)は、エッジクランプ15に基板Wが載置され、この基板Wがベルヌーイ吸着されていない状態、つまりベルヌーイノズル16からN2ガス等が噴出供給されていないときの、エッジクランプ15の様子を示している。図3(b)は、基板Wがベルヌーイ吸着された状態のときのエッジクランプ15の様子を示している。
ここで、エッジクランプ15の、基板Wの被処理面の背面と接触して基板Wを鉛直方向に変位させる部位を「上下送り面部」と呼び、基板Wの外周面と接触して基板Wを水平方向に変位させる部位を「左右送り面部」と呼ぶことにする。
エッジクランプ15に基板Wが載置されていない状態、つまり負荷が何もかかっていない状態では、図3(a)で示すような、上下送り面部の一端をウエハステージ11の表面から上方に突出させた状態でエッジクランプ15は静止している。
【0028】
図3(a)に示すように、エッジクランプ15は、基板Wが載置されても姿勢の変化を開始せず、基板Wを支持した状態が保たれる。基板Wの変位力が、基板Wを介してエッジクランプ15に伝達されて初めて、その姿勢の変化が開始されるように構成される。このような構成は、例えば、ウエハステージ11の裏面と、この面に対向するエッジクランプ15の面との間に図示しない弾性部材を設けたり、ピン19を支点にしてテーブル10の外周側(図3では左側)のエッジクランプ15の質量を相対的に重くしたりするなどし、且つ、基板Wを介してエッジクランプ15にかかる変位力と合わせてそれぞれを調整することで実現される。
【0029】
基板Wの変位力が伝達されたエッジクランプ15は、図3(b)に示すように、その姿勢を変化させながら基板Wを鉛直方向に変位させ、ウエハステージ11と基板Wの被処理面とが水平になったときにその姿勢の変化を停止する。図3(b)に示す例では、上下送り面部と基板Wの被処理面の背面とが平行して接触したときに、ウエハステージ11の表面と基板Wの被処理面とが水平になるように構成されている。また、処理対象である基板の厚みが変わった場合などの、この水平状態での基板Wの被処理面の背面と、この面に対向するテーブル主体10(導電性樹脂部12)との間の距離の調整は、基板Wをベルヌーイ吸着することができる範囲内で、例えばテーブル主体10(導電性樹脂部12)の厚みや、ウエハステージ支え18の鉛直方向の高さを調整することで行える。
【0030】
さらに、エッジクランプ15は、その姿勢を変化させながら基板Wを水平方向に変位させて、基板Wが基板装着部に嵌装されたときにその姿勢の変化を停止する。図3(b)に示す例では、左右送り面部と基板Wの外周面とが平行して接触したときに、基板Wが基板装着部に嵌装されるように構成される。
エッジクランプ15の姿勢の変化の停止は、例えばウエハステージ11の裏面に、この面に対向するエッジクランプ15の所定の面が当接したときに停止するように構成することができる。このようにして、基板Wは、基板装着部に嵌装され、テーブルに支持されることになる。
また、基板Wがエッジクランプ15(位置決め機構)に載置された状態で、基板Wが水平になるように位置決め機構を構成することで、よりスムースに基板Wを基板装着部に嵌装させることもできる。
【0031】
また、テーブル主体10、ウエハステージ11、エッジクランプ15、ウエハステージ支え18その他帯電可能な部材は、接地電位の導電性部材で構成することが好ましい。これにより、基板処理時の帯電を防止することができる。
【0032】
図4は、基板Wの被処理面に向けて供給された処理液と、基板Wの被処理面の背面に向けて噴出供給されたN2ガスのそれぞれが移動する様子を模式的に示したものである。図4に示すように、処理液は、テーブルの回転による遠心力で付勢され、テーブルの外周方向へと拡がりながら基板Wの被処理面を移動し、ウエハステージ11の外周方向へと払拭される。また、N2ガスは、噴出供給された際の圧力及び、テーブルの回転による遠心力とで付勢されて、基板Wの被処理面の背面とテーブル主体10(導電性樹脂部12)との空間を通過しながらテーブルの外周方向へと移動し、テーブルの外周から排出される。
【0033】
図4に示す、基板Wの被処理面側の空間内を処理液が辿る経路が払拭路であり、基板Wの被処理面の背面側の空間内をN2ガスが辿る経路が排出路であり、基板装着部に基板Wが嵌装されることで、払拭路と排出路とが遮へいされる。
また、このように遮蔽されることで、払拭路と排出路とはそれぞれ分離されて形成されることになり、使用済み処理液とN2ガス等とが、基板Wの外周端部で合流することも無くなる。
本実施形態例では、使用済み処理液等がテーブル外方へと払拭される方向と、N2ガス等がテーブル外方へと排出される方向とを同一方向にすることで、それぞれの勢いを打ち消し合うことなく、相乗的に効率よく使用済み処理液の払拭、及び、N2ガス等の排出ができるように構成された例を示しているが、例えばテーブルの鉛直下方に向けてN2ガス等を排出させることも可能である。
また、処理液が払拭路を辿れるような遠心力による付勢は、テーブルの回転速度の他、処理液の粘度や処理液の供給圧力、基板Wの被処理面の面積等を考慮して設定される。N2ガス等を噴出供給する際の圧力は、遠心力による付勢も踏まえて、基板Wをベルヌーイ吸着でき、且つ、N2ガス等が排出路を辿れるような圧力に設定される。
【0034】
<基板処理のための制御手順>
図5は、本実施形態にかかる基板処理装置1による基板処理方法、特に、制御部30による主要な制御手順の説明図である。
制御部30は、基板処理装置1を操作するオペレータの基板処理の開始指示の入力受付を契機に制御を開始する(ステップS100)。所定の初期処理後、図示しない基板搬送手段により基板Wを搬入させて、エッジクランプ15(位置決め機構)に基板Wを載置させる(ステップS101)。制御部30は、ベルヌーイノズル16からN2ガスが噴出供給されるように噴出機構に指示を出し、ベルヌーイ吸着により基板Wを変位させて基板装着部に嵌装させる(ステップS102)。制御部30は、図示しないセンサ部を通じて基板Wの嵌装状態を確認し、適切に嵌装されていることを確認した場合は(ステップS103:Yes)、テーブルの回転を開始するようにモータ14へ指示を出す(ステップS104)。これにより、テーブルが、水平に回転を開始する。
【0035】
テーブルの回転開始指示後、規定時間(第1時間)が経過したことを図示しないタイマによって検知すると、制御部30は、ノズルNの位置決めを指示するとともに処理液供給機構に対して処理液の供給を開始させるように指示を出す(ステップS105)。これにより、処理液がノズルNから基板Wの被処理面に向けて供給される。
処理液の供給開始指示後、規定時間(第2時間)が経過したことをタイマによって検知すると、制御部30は、処理液供給機構に対して処理液の供給停止を指示する(ステップS106:Yes)。処理液の供給停止(ステップS107)により、テーブル上の基板Wの被処理面には、空気だけが流入し、残った処理液をテーブル外方へ払拭させる。これにより、乾燥処理が行われる。
【0036】
さらに規定時間(第3時間)が経過したことをタイマによって検知すると、制御部30は、テーブルの回転を止めるように、モータ14へ停止指示を出す(ステップS108)。モータ14が停止したことを検知すると、制御部30は、噴出機構にN2ガスの供給の停止を指示する(ステップS109)。これにより、基板Wはベルヌーイ吸着が解除され、図示しない基板搬送手段により基板Wを搬出させて一連の処理を完了する。
【0037】
このように、基板処理装置1では、遮へい機構により処理液の払拭路と基板Wの被処理面の背面を通過した気体の排出路とが遮へいされるため、被処理面を通過して払拭された使用済み処理液等が基板Wの被処理面の背面に回り込んで、背面が汚染されてしまうことを防止することができる。また、使用済み処理液とN2ガス等とが基板Wの外周端部で合流しないため、基板Wの近傍でのパーティクルを含むミストの発生も抑止することができる。さらに、N2ガス等を噴出して基板Wをテーブルに近接状態に吸着させるベルヌーイ吸着を採用することで、基板Wの被処理面の背面側空間の圧力が負圧になることを防ぎ、使用済み処理液等が背面側空間に向けて吸い込まれて、基板Wの被処理面の背面に回り込んで、背面が汚染されてしまうことを防止することができる。
また、基板Wの被処理面側の空間の圧力に対して、基板Wの被処理面の背面側の空間の圧力を相対的に高くすることで、背面側の空間に向けて使用済み処理液等が吸引されてしまうことをより確実に防止することもできる。
【0038】
また、払拭路と排出路とをそれぞれ分離して形成することにより、使用済み処理液等が基板Wの被処理面の背面に回り込んで、背面が汚染されてしまうことをより確実に防止することができる。また、払拭路と排出路とが交差しないように分離して形成することで、より確実に防止することが可能になる。また、使用済み処理液と気体とが合流してしまうことにより生じるパーティクルを含むミストの発生も抑止することができる。
さらに、N2ガス等をテーブル外方へ排出するように排出路を形成することで、排出路の終端、つまり排出口から使用済み処理液が侵入してしまうことも防止される。また、払拭路を辿り使用済み処理液等がテーブル外方へと払拭される方向と、N2ガス等がテーブル外方へと排出される方向とを同じ方向にすることで、それぞれの勢いを打ち消し合うことなく、相乗的に効率よく使用済み処理液の払拭及び、N2ガス等の排出ができる。
【0039】
エッジクランプ15(位置決め機構)により、基板Wを基板装着部に嵌装させる際の位置決めが容易になる。そのため、より確実に早く基板Wの支持が可能になる。また、予め基板Wを水平にしてエッジクランプ15(位置決め機構)に載置する必要がなく、これを制御するためのコストが低減できると共に、基板Wが傾いた状態のまま基板装着部に嵌装されてしまうことも防止することができる。
さらに、ベルヌーイ吸着により生じる基板Wの変位力により、エッジクランプ15の姿勢を変化させているため、位置決め機能の構成をシンプル化でき、且つ、使用されるエネルギーコストも削減することができる。
【0040】
また、テーブル主体10、ウエハステージ11、エッジクランプ15、ウエハステージ支え18その他帯電可能な部材を接地電位の導電性部材で構成することで、基板処理時の帯電を防止することができる。
【0041】
[第2実施形態]
次に、一回の処理で複数枚の基板Wの処理を施す場合の実施形態例を説明する。
図6は、第2実施形態の基板処理装置の構成例を示す略縦断面図であり、主として特徴的な部分を掲示してある。第1実施形態で説明したものと重複する部分については、同じ符号を用い、重複説明を省略する。
本例で説明する基板処理装置2は、一回で処理する基板Wの枚数に対応する組のエッジクランプ15及び、基板装着部を備えたウエハステージ21を含んで構成されているテーブル主体20を備えている。
【0042】
図6は、テーブル20を有する基板処理装置2の周辺部材の構成例を示す概略縦断面図である。図6に示す基板処理装置2は、テーブル主体20の中央部表面には、テーブル20の回転軸をその中心軸とする突起部22が、その先端が鉛直上方に向かって形成されている。突起部22の形状は、ウエハステージ21から突出した部位が略円錐状であり、その先端は、ウエハステージ21及び、基板Wの被処理面の高さに対して相対的に高い位置となる。この突起部22の略円錐状の基端からテーブル外周方向に所定距離だけ離れたウエハステージ21には、突起部28の先端から等距離に、一回で処理する基板Wの枚数に対応する数の基板装着部と位置決め機構とが設けられている。各基板装着部及び、位置決め機構は、各基板Wの相対位置(例えばそれぞれの中心位置等)が、それぞれ突起部22の先端から等距離になる位置に設けられる。
【0043】
突起部22の先端には、図示しない処理液供給機構に接続されたノズルNの処理液供給口が対向するように位置決めされる。これにより、処理液が、テーブル主体20と共に回転する突起部22の先端に向けて鉛直下方に供給されて、ウエハステージ21の各基板装着部に嵌装されたすべての基板Wの被処理面に、ほぼ同じ量が同じ時間に到達する。
【0044】
図7は、複数枚の基板Wがウエハステージ21の各基板装着部に嵌装された状態のテーブルの上面図である。図7では、一例として6枚の基板Wが一回の処理で処理できるようにウエハステージ21の各基板装着部に嵌装されている。
【0045】
ウエハステージ21の表面には、また、突起部22を経由した処理液又空気の流入を受け入れる一方、隣設して嵌装された基板Wの被処理面を経由した処理液又は空気の流入を遮るための一定の高さの遮り板23が形成されている。遮り板23の長さは、例えば基板Wの直径以上であり、その高さは、他の基板Wへの処理液の干渉を遮る高さである。遮り板23は、少なくとも嵌装された基板Wの数存在し、それぞれ、隣設して嵌装された基板W間のスペースに、突起部22の基端からウエハステージ21の外周方向に、放射状(直線又は曲線)に形成されている。
【0046】
テーブル主体20が水平方向に回転を開始すると、遮り板23が、ラジアルファンのような送風効果をウエハステージ21に生じさせる。すなわち、突起部22付近から取り込まれた空気が、隣り合う遮り板23の内壁より形成される空間を経て、ウエハステージ21の外周端部方向へ向かう流れをその表面上に生じさせる。そのため、突起部22の先端に供給された処理液は、テーブルが回転することによって生じる遠心力に加え、この送風効果によって大きく付勢されて、ウエハステージ21の外方に移動させられる。
遮り板23が無ければ、同等の付勢力を処理液に与えようとしたときに、テーブルの回転速度を高めたり、高速回転によるテーブル補強等のコスト負担が必要となるが、本実施形態の構造によって、それが回避される。
【0047】
図8は、突起部22に向けて供給された処理液が、基板Wの被処理面を移動する様子と、基板Wの被処理面の背面に向けて噴出供給されたN2ガスが移動する様子とを模式的に示したものである。図8に示すように、処理液は、テーブルの回転による遠心力で付勢されてテーブルの外周方向へと拡がりながら各基板Wの被処理面を移動し、ウエハステージ21の外周方向に向けて払拭される。また、N2ガスは、噴出供給された際の圧力及びテーブルの回転による遠心力で付勢されて、基板Wの被処理面の背面とテーブル主体20との空間をテーブルの外周方向へと移動し、テーブルの外周から排出される。
図8に示す、基板Wの被処理面側の空間内を処理液が辿る経路が払拭路であり、基板Wの被処理面の背面側の空間内をN2ガスが辿る経路が排出路である。
基板装着部に各基板Wがそれぞれ嵌装されることで払拭路と排出路とは遮へいされる。また、このように遮蔽されることで、払拭路と排出路とはそれぞれ分離されて形成されることになり、使用済み処理液とN2ガス等とが、基板Wそれぞれの外周端部で合流することも無くなる。
【0048】
このように、基板処理装置2では、処理液の払拭路と基板Wの被処理面の背面を通過した気体の排出路とが遮へいされるため、被処理面を通過して払拭された使用済み処理液等が基板Wの被処理面の背面に回り込んで、背面が汚染されてしまうことを防止することができる。
また、処理液が、水平方向に回転するテーブルの中央表面部の突起部22を介して、遠心力等によって付勢された状態で、基板Wの被処理面に到達するようにしたので、各基板Wの被処理面の中心部付近を含めたすべての部位において処理液をほぼ均等の量及び速度で移動させることが可能となる。そのため、複数の基板Wのすべてにおいて基板処理の結果の均質化を図ることができ、また、基板処理の均質化に必要な条件設定を簡素化することもできる。
また、一回の表面処理の制御で複数枚の基板Wの被処理面を同時に処理できるので、一枚当たりにかかる処理時間の効率化も図れることとなる。
【0049】
また、遮り板23によって、ウエハステージ21の表面に空気の流れが発生するので、遠心力により付勢された処理液が、さらに送風効果によっても付勢され、基板Wの被処理面の一部に滞留することなく、よりスムースに被処理面上を移動させることができる。処理液の供給停止後は、空気の流れによって迅速に被処理面を乾燥させることができる。
【符号の説明】
【0050】
1、2・・・基板処理装置、10、20・・・テーブル主体、11、21・・・ウエハステージ、12・・・導電性樹脂部、13・・・駆動部、14・・・モータ、15・・・エッジクランプ、16・・・ベルヌーイノズル、17・・・配管、18・・・ウエハステージ支え、19・・・ピン、22・・・突起部、23・・・遮り板、30・・・制御部、N・・・ノズル、W・・・基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の被処理面を水平に支持した状態で前記被処理面と平行に回転するテーブルを有し、このテーブルに支持された前記基板の被処理面に所定の処理液を供給した後、この処理液を前記基板の外周方向に払拭することにより基板処理を行う装置であって、
前記テーブルは、
前記基板を着脱自在に嵌装するための基板装着部と、
この基板装着部に嵌装された前記基板をベルヌーイ吸着させるために当該基板の被処理面の背面に向けて所定の気体を噴出する噴出機構と、
前記ベルヌーイ吸着により生じる前記基板の変位力により、前記処理液の払拭路と前記被処理面の背面を通過した気体の排出路とを遮へいする遮へい機構と、を備える
基板処理装置。
【請求項2】
前記払拭路と前記排出路とが前記基板の外周に至るまで分離されて形成されている、
請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記テーブルは、
前記被処理面とテーブル表面とがほぼ水平となるように前記基板を鉛直方向に変位させ、且つ、前記基板の鉛直方向の中心軸と前記基板装着部の鉛直方向の中心軸とが同一軸になるまで当該基板を水平方向に変位させる位置決め機構をさらに備える、
請求項1又は2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記位置決め機構と前記テーブルとの少なくとも一方の前記基板と接触する部分が接地電位の導電性部材で構成されている、
請求項3記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記テーブルの中央部表面には、当該テーブルの回転軸をその中心軸とする突起部が形成されており、
前記基板装着部は、前記突起部の基端から前記テーブルの外周方向に所定距離だけ離れた前記テーブルの表面に、それぞれ前記突起部の先端から等距離に複数設けられており、
前記噴出機構は、各基板装着部に支持された基板の被処理面の背面側に設けられており、
前記テーブルと共に回転する前記突起部の先端に向けて鉛直下方に供給された前記処理液が、前記突起部の先端を経由して当該テーブルの回転による遠心力で付勢されて、すべての基板の中心部付近を含めた被処理面に到達するように構成されている、
請求項1乃至4いずれかの項記載の基板処理装置。
【請求項6】
水平方向に回転するテーブルを備えた装置で行う基板処理方法であって、
処理対象となる基板を、その表面である被処理面がテーブル表面と平行となるように位置決めした後、前記被処理面の背面に向けて所定の気体を噴出して当該基板を前記テーブル表面にベルヌーイ吸着させ、前記被処理面を所定の処理液で基板処理を行うとともに、前記ベルヌーイ吸着により生じる前記基板の変位力により、基板処理後の前記処理液の払拭路と前記被処理面の背面を通過した気体の排出路とを遮へいする、
基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−93407(P2013−93407A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233765(P2011−233765)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【特許番号】特許第5006464号(P5006464)
【特許公報発行日】平成24年8月22日(2012.8.22)
【出願人】(500487837)ミクロ技研株式会社 (16)
【Fターム(参考)】