説明

基板処理装置

【課題】基板表面に処理液を物理的に作用させることによって基板に対する処理を実行するにあたり、どのような処理液を用いた場合であっても、基板にダメージを与えることなく処理を実行することを可能とする基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板処理装置100は、複数の基板を、処理液中に浸漬させることにより基板Wに対する超音波洗浄処理を実行する処理部1を備える。制御部5は、処理液供給部2から処理部1に対して処理液の供給を開始するに先だって、当該供給される処理液が基板にダメージを与えにくい適正処理液であるか否かを、当該処理液の分子密度の値と分子密度閾値との比較によって判断する。処理液が適正処理液でないと判断された場合には、処理液調整部3において処理液に窒素ガスを溶解させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体基板、液晶表示装置用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、光ディスク用基板等(以下、単に「基板」という)に対して各種の処理液(化学薬品または有機溶剤等の薬液や純水等のリンス液)を用いて所定の処理(例えば、洗浄処理(異物除去処理、剥離処理等を含む)、エッチング処理、乾燥処理、液置換処理、現像処理等)を行う基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板の洗浄処理に用いられる処理液には様々な種類が存在し、洗浄工程の目的に応じて適宜選択される。例えば、異物の除去を目的とする洗浄処理の場合はSC1(アンモニア水と過酸化水素水と水との混合液)が処理液として用いられ、残膜の剥離を目的とする洗浄処理の場合は剥離に適した有機溶媒等が処理液として用いられる。
【0003】
ところで、基板に対する各種の処理を行うにあたっては、処理効果を高めるための様々な技術が提案されているが、そのひとつとして、基板表面に処理液を物理的に作用させることによって処理を実行する方法(以下においてこのような処理態様を「物理作用処理」と総称する。)が提案されている。物理作用処理としては、例えば、基板表面上の異物の除去性能や残膜の剥離性能を向上させるべく、超音波振動が付与された洗浄液によって基板を洗浄する方法(超音波洗浄)や、気体と混合された洗浄液のミスト(液滴の噴流)によって基板を洗浄する方法(2流体洗浄)が提案されている。
【0004】
また、洗浄処理において、処理液中に不活性ガス(例えば、窒素ガス)を溶解させることによって、洗浄効果を高める技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−79990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、物理作用処理においては、処理液を物理的に基板表面に作用させることによって基板に対する処理液の作用効果を向上させることができるという利点がある半面、処理液が物理的に基板表面に作用するために、基板表面に物理的なダメージ(例えば、基板表面に形成されたパターンの倒壊等)が与えられてしまうという問題があった。
【0007】
この発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、基板表面に処理液を物理的に作用させることによって基板に対する処理を実行するにあたり、どのような処理液を用いた場合であっても、基板にダメージを与えることなく処理を実行することを可能とする基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、液体の分子密度と、当該液体を基板表面に物理的に作用させることによって基板に対する処理を実行した際に基板に発生するダメージと、の関係に基づいて、ダメージが所定値以下となる分子密度閾値を取得する分子密度閾値取得手段と、基板処理に用いる予定の所定の処理液の分子密度の値が前記分子密度閾値以下の場合に、前記所定の処理液は基板にダメージを与えにくい適正処理液であると判断する処理液評価手段と、前記所定の処理液に対して所定の気体を溶解させる気体溶解手段と、前記所定の処理液が適正処理液であると判断された場合には前記所定の処理液をそのまま基板処理に用いる実行処理液として取得し、前記所定の処理液が適正処理液であると判断されなかった場合には、前記所定の処理液に対して前記気体溶解手段によって前記所定の気体を溶解させて得られた処理液を実行処理液として取得する実行処理液取得手段と、基板表面に前記実行処理液を物理的に作用させることによって基板に対する処理を実行する処理部と、を備える。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の基板処理装置であって、前記処理部が、基板を収容して内部を密閉空間にすることが可能なチャンバと、前記チャンバ内に配置され、前記実行処理液を貯留可能な処理槽と、前記実行処理液を前記処理槽中に貯留させた状態とする処理液準備手段と、前記処理槽に貯留された前記実行処理液に超音波振動を付与する超音波振動付与手段と、を備える。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2に記載の基板処理装置であって、前記所定の気体を溶解させて得られた実行処理液を含む環境を加圧して、当該実行処理液を加圧状態におく処理液加圧手段、を備える。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1に記載の基板処理装置であって、前記処理部が、基板を保持する保持機構と、前記保持機構を回転させることにより、前記保持機構に保持された基板を回転させる回転駆動源と、前記実行処理液に超音波振動を付与する超音波振動付与手段と、前記超音波振動が付与された前記実行処理液をノズル先端の吐出口より前記保持機構に保持された基板の表面に吐出する吐出 ノズルと、を備える。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1に記載の基板処理装置であって、前記処理部が、基板を保持する保持機構と、前記保持機構を回転させることにより、前記保持機構に保持された基板を回転させる回転駆動源と、前記実行処理液と所定の気体とを混合してミストを形成し、形成された前記ミストをノズル先端の吐出口より前記保持機構に保持された基板の表面に吐出する2流体 ノズルと、を備える。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1から5のいずれかに記載の基板処理装置であって、前記分子密度閾値が、処理液の分子密度と、前記基板に発生するダメージとの関係に近似する自然対数曲線において、ダメージ値が所定の上限ダメージ値の(1/e)n倍(eは自然対数の底、nは自然数)となる分子密度の値である。
【0014】
請求項7の発明は、請求項1から5のいずれかに記載の基板処理装置であって、前記分子密度閾値の値が、0.035mol/cm3である。
【0015】
請求項8の発明は、請求項1から5のいずれかに記載の基板処理装置であって、前記分子密度閾値の値が、0.03mol/cm3である。
【0016】
請求項9の発明は、請求項1から5のいずれかに記載の基板処理装置であって、前記分子密度閾値の値が、0.02mol/cm3である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1〜9に記載の発明によると、基板処理に用いる予定の所定の処理液が適正処理液であるか否かを分子密度を用いて判断し、適正処理液であると判断された処理液はそのまま処理部において基板処理に用い、適正処理液であると判断されなかった処理液には所定の気体を溶解させてから基板処理に用いる。すなわち、後者の処理液については、気体を溶解させることによって、処理液が基板に与えるダメージを低く抑える。したがって、どのような処理液を用いた場合であっても、基板にダメージを与えることなく処理を実行することができる。
【0018】
特に、請求項3に記載の発明によると、所定の気体を溶解させて得られた実行処理液を加圧状態におくので、加圧しない状態に比べて実行処理液の飽和溶存気体量を大きくすることができる。すなわち、処理液により多量の気体を溶解させることが可能となるので、処理液の処理効果をより高めるとともに、処理液が基板に与えるダメージをより低く抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
〈A.第1の実施の形態〉
〈1.構成〉
この発明の第1の実施の形態に係る基板処理装置100について説明する。基板処理装置100は、基板表面に処理液(化学薬品または有機溶剤等の薬液や純水等のリンス液)を物理的に作用させることによって基板に対する表面処理を実行する処理装置である。より具体的には、基板表面に超音波エネルギーを付与した処理液を作用させて基板の表面を洗浄する処理(超音波洗浄処理)を実行するバッチ式の処理装置である。ただし、ここでいう「洗浄処理」には、異物除去を目的とする洗浄処理、残膜剥離を目的とする洗浄処理、基板構造内液置換を目的とする洗浄処理等が含まれるものとする。
【0020】
図1を参照する。図1は、基板処理装置100の構成を示す図である。基板処理装置100は、処理部1と、処理液供給部2と、処理液調整部3と、加圧部4とを備えている。また、CPUやメモリ等を備えるコンピュータにより構成される制御部5と、基板処理装置100のオペレータが所定の操作指示を入力する操作部6(例えば、タッチパネルやキーボード等によって構成される。)と、オペレータからの操作指示内容や、基板処理装置100の動作状況などを表示する表示部7(例えば、ディスプレイ等によって構成される。)を備えている。
【0021】
〔1−1.処理部〕
処理部1について図2、図3を参照しながら説明する。図2、図3は主として処理部1を示す図である。図2は処理部1を基板Wと平行な平面で切断した縦断面図であり、図3は基板Wと垂直な平面で切断した縦断面図である。処理部1は、複数の基板W(この実施の形態において単に基板Wという)を、処理液中に浸漬させることにより基板Wの表面処理を行う装置であり、チャンバ11と、処理槽12と、リフタ13と、伝播槽14と、伝播水供給部15とを主として備えている。
【0022】
チャンバ11は、その内部に、処理槽12、リフタ13および伝播槽14等を収納する筺体である。チャンバ11の上部は、スライド式開閉機構(図示省略)によって開閉可能とされている。上部を開放した状態では、開放部分から基板Wを搬出入することができ、上部を閉鎖した状態では、その内部を密閉空間とすることができる。
【0023】
処理槽12は、基板を浸漬するための処理液を貯留する容器であり、その底部には、一対の吐出部121が設けられている。吐出部121は、処理液供給経路Sと接続されており、処理液供給部2から供給された処理液を処理槽12の内部へ向けて吐出する複数の吐出口(図示省略)が形成されている。処理槽12の上面は開放されており、処理槽12の外側面の上端には外槽122が設けられている。外槽122は、配管123を介して排液ラインに接続されている。このため、吐出部121から吐出された処理液は処理槽12内を上方へ向かって流れ、やがて上部の開口から外槽122へオーバーフローする。そして、外槽122へオーバーフローした処理液は配管123を介して排液ラインへ排出される。
【0024】
リフタ13は、処理槽12に貯留された処理液中に基板Wを浸漬させるための昇降機構である。基板処理装置100の搬入部70にセットされた基板Wは、図示しない搬送ロボットによってリフタ13まで搬送され、リフタ13上に載置される。リフタ13は、リフタヘッド131と保持板132との間に3本の保持棒133を備えている。保持棒133には複数の保持溝(図示省略)が刻設されており、基板Wはその保持溝に起立姿勢で保持される。リフタ13には、サーボモータやタイミングベルトを有するリフタ駆動部134が接続されている。リフタ駆動部134を動作させると、リフタ13は昇降移動し、基板Wは処理槽12内の浸漬位置(図2、図3の位置)と処理槽12上方の引き上げ位置との間で移動する。なお、リフタ駆動部134は、制御部5と接続されており、制御部5から与えられる信号に基づいて動作する。
【0025】
伝播槽14は、超音波振動の伝播媒体となる伝播水を貯留するための容器である。伝播槽14は、処理槽12の下方に配置されており、伝播槽14に貯留された伝播水に処理槽12の底部が浸漬される。伝播槽14の低部裏面には、超音波振動子141が取り付けられている。超音波振動子141に接続された超音波発振器142を動作させると、超音波振動子141が発振して、超音波振動が発生する。超音波振動子141から発生した超音波振動は、伝播槽14の底部、伝播槽14内の伝播水中、処理槽12の底部、処理槽12内の処理液中を順に伝播して行き、処理液中に浸漬された基板Wへ到達する。なお、超音波発振器142は、制御部5と接続されており、制御部5から与えられる信号に基づいて動作する。
【0026】
伝播水供給部15は、伝播水供給源151と伝播槽14とを結ぶ配管152を有している。伝播水供給源151から供給される伝播水は、伝播槽14へ貯留される。
【0027】
〔1−2.処理液供給部〕
再び図1を参照しながら処理液供給部2について説明する。処理液供給部2は、超音波洗浄処理に用いることが可能な複数種類の洗浄液(以下において「候補処理液」という。)のうちから選択した1の処理液(処理に用いる予定の処理液であり、以下において「選択処理液」ともいう。)を、処理液供給経路Sを通じて処理部1に供給する。この実施の形態においては、候補処理液として、IPA、アセトン、硫酸、メタノール、純水等を用いることができる。
【0028】
処理液供給部2は、複数(図1においては4つ)の処理液供給源21a,21b,21c,21dを備えている。処理液供給源21a,21b,21c,21dのそれぞれには、互いに異なる種類の候補処理液が貯留されている。処理液供給源21a,21b,21c,21dのそれぞれは、配管22a,22b,22c,22dを介して処理液供給経路Sに接続されている。また、配管22a,22b,22c,22d上には、それぞれ開閉弁23a,23b,23c,23dが介挿されている。なお、開閉弁23a,23b,23c,23dは、それぞれ制御部5と接続されており、制御部5から与えられる信号に基づいて開閉制御される。
【0029】
制御部5は、基板処理を実行するにあたって、候補処理液のうちから処理に用いる予定の1の処理液を選択処理液として選択し、当該選択処理液を貯留する処理液供給源(以下において、単に「処理液供給源21」と示す。)に接続された開閉弁(以下において、単に「開閉弁23」と示す。)を所定のタイミングで開放する。開閉弁23が開放されると、処理液供給源21に貯留された選択処理液が、処理液供給経路Sを通じて処理部1に供給される。なお、処理に用いる処理液の選択は、例えば、オペレータからの指示入力を受け付けることによって行われる。
【0030】
〔1−3.処理液調整部〕
〈処理液調整部の構成〉
処理液調整部3について図1および図4〜図6を参照しながら説明する。処理液調整部3は、処理液供給部2から供給されて処理液供給経路Sを流れる処理液に、工場のユーティリティー等として備わる窒素ガス供給源Nから、配管301を経て供給される窒素ガスを溶解させて、処理液の窒素ガス濃度を所望の目標濃度に調整する。処理液調整部3は、第1窒素濃度計31と、濃度可変部32と、第2窒素濃度計33とを主として備えている。
【0031】
第1窒素濃度計31は、処理液供給源2から供給された処理液(選択処理液)の窒素ガス濃度を測定する。第1窒素濃度計31について図4を参照しながらより具体的に説明する。図4は、第1窒素濃度計31の測定原理を概念的に示すための図である。第1窒素濃度計31は、処理液供給経路S上にインラインで配置され、一定時間ごとに窒素濃度を測定する。すなわち、第1窒素濃度計31は、処理液供給経路Sを矢印AR1のように流れる処理液の一部を、分岐管311によって矢印AR2のように分岐させ、一定時間ごとに測定槽312にサンプリングする。そして、ヒータ313によって測定槽312内にサンプリングされた処理液を加熱し、測定子314によってその温度変化を測定する。そして、得られた温度変化のデータから、サンプリングされた処理液の熱伝導度を求める。すなわち、窒素ガスの溶解濃度が高いほど熱伝導度も高くなるという相関関係に基づいて、サンプリングした処理液の窒素ガス濃度を得る。
【0032】
濃度可変部32は、処理液に窒素ガスを溶解させ、あるいは処理液から窒素ガスを脱気させる。濃度可変部32は、気体透過性および液体不透過性を有する中空子分離膜を介して、処理液への窒素ガスの溶解および処理液からの窒素ガスの脱気を行うことにより、処理液の窒素ガス濃度を変化させる。
【0033】
濃度可変部32に窒素ガスを供給する配管301上には、窒素ガス供給源Nから供給される窒素ガスの圧力を測定する第1圧力計302と、その流量を測定する流量計303と、窒素ガスの供給流量を調整可能な第1バルブ304とが配置されている。さらに、処理液調整部3には、濃度可変部32から窒素ガスを脱気する目的のために真空排気可能な真空ポンプ305が備わっており、濃度可変部32から真空ポンプ305への窒素ガス脱気経路306上には、真空ポンプ305によって得られる圧力、すなわち真空度を測定する第2圧力計307と、真空度を調整可能な第2バルブ308とが配置されている。第1バルブ304および第2バルブ308の開閉度を調整することにより、窒素ガス流量および真空度を調整でき、さらには処理液への不活性ガスの溶解速度と、処理液からの不活性ガスの脱気速度とを調整することが可能となる。
【0034】
濃度可変部32について図5を参照しながらより具体的に説明する。図5は、濃度可変部32の構成を模式的に示す図である。濃度可変部32は、濃度可変処理を担う本体部321と、第1端部324aに備えられ、処理液供給経路Sから図示を省略する給液口を介して本体部321内へ供給される処理液を矢印AR3に示すように送出する送出口322と、本体部321の側面に備えられ、濃度可変処理がなされた処理液を矢印AR7に示すように送出する送出口323と、第1端部324aおよび第2端部324bに備えられ、それぞれが独立に気体を供給あるいは排気可能な第1気体出入部325a、325bおよび第2気体出入部326a、326bとを主として備えている。なお、本実施の形態の場合は、第1気体出入部325a、325bからは矢印AR5に示すように窒素ガスが加圧供給され、第2気体出入部326a、326bにおいては矢印AR6に示すように真空排気がなされる。
【0035】
本体部321の長手方向の中心には、送出口322と接続され、処理液をその周囲に矢印AR4のように供給可能な給液管327が備わっている。また給液管327の周囲には、細筒状の中空子分離膜328が多数、本体部321の給液管327に沿って同心円上に配置されている。なお、詳細な図示は省略するが、中空子分離膜328には、その端部が第1気体出入部325a、325bと接続されている第1中空子分離膜328aと、第2気体出入部326a、326bと接続されている第2中空子分離膜328bとがある。
【0036】
本実施の形態においては、上述のように第1気体出入部325a、325bからは窒素ガスが加圧供給されているので、給液管327から供給される処理液で本体部321内部が満たされると、第1中空子分離膜328aにおいては、内外の圧力差によって窒素ガス分子のみが第1中空子分離膜328a外へと透過して処理液内に溶解する。また、第2気体出入部326a、326bにおいては、真空排気がなされているので、第2中空子分離膜328b内部は減圧されており、内外の圧力差によって、処理液内の溶存気体分子と水蒸気の気体成分が第2中空子分離膜328b外から透過して脱気される。
【0037】
このように、本体部321において窒素ガスの溶解および脱気を施されて、窒素ガス濃度を変化せしめられた処理液が、送出口323から矢印AR7のように送出されることとなる。
【0038】
再び図1を参照する。第2窒素濃度計33は、濃度可変部32を経た処理液の窒素ガス濃度を測定する。第2窒素濃度計33は、第1窒素濃度計31と同一の構成および機能を有している。
【0039】
なお、第1窒素濃度計31、第2窒素濃度計33、第1圧力計302、第2圧力計307、第1バルブ304および第2バルブ308のそれぞれは、制御部5と接続されており、制御部5から与えられる信号に基づいて制御される。制御部5は、第1窒素濃度計31、第2窒素濃度計33、第1圧力計302、第2圧力計307などから得られる測定値に基づいて、第1バルブ304および第2バルブ308の開閉を制御する。これによって、目標とする窒素ガス濃度を有する処理液が得られることとなる。制御部5における処理液の窒素ガス濃度の制御方法については、以下に詳細に説明する。
【0040】
〈窒素ガス濃度の制御〉
制御部5は、処理液供給部2から供給される処理液(選択処理液)の窒素ガス濃度を第1窒素濃度計31により、濃度可変部32を経た処理液を第2窒素濃度計33によりそれぞれ逐次測定し、それらの測定の結果に基づいて、濃度可変部32における窒素ガスの溶解あるいは脱気をフィードバック制御する。具体的には、配管301上に備えられた第1バルブ304と、窒素ガス脱気経路306上に備えられた第2バルブ308の開閉が制御の対象となる。
【0041】
いま、第1窒素濃度計31における窒素ガス濃度の測定値を第1測定値C1、第2窒素濃度計33における窒素ガス濃度の測定値を第2測定値C2、目標とする窒素ガス濃度を目標値Ct、目標値Ctに対する第1測定値C1の差を濃度差ΔC1、目標値Ctに対する第2測定値C2の差を濃度差ΔC2とすると、時刻τにおいて、
F1(τ)=f1(ΔC1、ΔC2) (式1)
F2(τ)=f2(ΔC1、ΔC2) (式2)
なる関係を満たす配管301を流れる窒素ガス流量F1、および窒素ガス脱気経路306を流れる窒素ガス流量F2が与えられるように、第1バルブ304および第2バルブ308の開閉が制御される。(式1)は、第2測定値C2が目標値Ctよりも小さいとき、すなわちΔC2<0のときに用いられ、(式2)は、第2測定値C2が目標値Ctよりも大きいとき、すなわちΔC2>0のときに用いられる。また、ここで、関数f1およびf2は、圧力−溶存窒素ガス濃度関係、圧力−流量関係、圧力−圧力昇圧時間関係などから定まる関数である。なお、(式1)および(式2)においてΔC1が変数とされているのは、処理液供給部2から供給される処理液の窒素ガス濃度、すなわち第1測定値C1には変動があり、従ってΔC1の値も変化するので、制御部5による第1バルブ304の調整は、このΔC1の変動をも加味して行われる必要があるからである。
【0042】
図6は、第1測定値C1、第2測定値C2、および目標値Ctの関係と、それに応じてなされるべき制御について説明するための図である。図6に示すように、それぞれの値の関係は、次の4つの場合に大別される。
【0043】
(a)Ct>C1かつCt≧C2;
(b)C2>Ct≧C1;
(c)C1>CtかつC2≧Ct;
(d)C1≧Ct>C2
【0044】
図6(a)においては、第1測定値C1、および第2測定値C2は、いずれも目標値Ctに比べ小さい。この場合は、さらに処理液の窒素ガス濃度を高める必要があるので、式1を満たしつつ、差ΔC2が0となるまで第2測定値C2を増加させる制御が行われる。具体的には、式1を満たしつつ、濃度可変部32における窒素ガス供給圧力が高まるように制御部5が第1バルブ304を調整することによって、窒素ガスの処理液への溶解が促進されることになる。
【0045】
一方、既述したように、窒素ガス濃度の測定は、測定原理上一定の時間間隔をおいてなされるので、測定と測定との間で、濃度可変部32における処理液への窒素ガスの溶解が進んだ場合や、第1測定値C1が処理液供給源2に起因する要因により増加した場合などは、図6(a)の状態から図6(b)に示すような、第2測定値C2が目標値Ctをオーバーシュートする場合が生じうる。この場合はΔC2>0となるので、制御部5は速やかに、濃度可変部32において式2に従った脱気処理が行われるように、第1バルブ304および第2バルブ308の制御を行う。
【0046】
図6(c)は、第1測定値C1、および第2測定値C2が、いずれも目標値Ctに比べ大きい場合である。この場合は、処理液の窒素ガス濃度を低減する必要があるので、式2を満たしつつ、差ΔC2が0となるまで第2測定値C2を減少させる制御が行われる。具体的には、式2を満たしつつ制御部5が第2バルブ11を調整することによって、窒素ガスの処理液からの脱気が促進されることになる。
【0047】
また、図6(d)は、図6(c)の場合から、第2測定値C2が目標値Ctをオーバーシュートした場合に相当する。この場合はΔC2<0となるので、制御部5は速やかに、濃度可変部32において式1に従った溶解処理が行われるように、第1バルブ304および第2バルブ308の制御を行う。
【0048】
以上のような制御を行うことにより、本実施の形態においては、処理部1に対し供給すべき処理液の窒素ガス濃度を、所定の目標濃度に保つことができる。
【0049】
〔1−4.加圧部〕
再び図1を参照する。加圧部4は、窒素ガスを溶存させた処理液を含む環境の全て(すなわち、処理液供給経路Sおよびチャンバ11)を加圧状態におく機能部であり、例えば、チャンバ11内部を加圧する加圧ポンプと、処理液供給経路S内を加圧する加圧器とを備える。加圧部4は、配管41を介して窒素ガス供給源Nと接続されており、窒素ガス供給源Nから供給される窒素ガスをチャンバ11内部に充填することにより、チャンバ11を所定の圧力状態まで加圧する。また、処理液供給経路Sの内部を加圧器により所定の圧力状態まで加圧する。なお、加圧部4は、制御部5と接続されており、窒素ガスを溶存させた処理液を含む環境は、制御部5から与えられる信号に基づいて所定の圧力状態とされる。
【0050】
〔1−5.窒素ガスを溶存させるか否かの判断処理に関する構成〕
上述の通り、基板処理装置100は、処理液供給経路Sを流れる処理液の窒素ガス濃度を目標濃度に調整する機能部である処理液調整部3を備える。処理液に窒素ガスを溶解させることによって、処理液の処理効果を高めるとともに、処理液を基板表面に物理的に作用させた場合に処理液が基板に与えるダメージを緩和することができる。
【0051】
制御部5は、基板に対する超音波洗浄処理を実行するに先だって、処理に用いる予定の処理液(選択処理液)が、「適正処理液」であるか否かを判断する。そして、選択処理液が適正処理液であると判断されなかった場合に、処理液調整部3を制御して、当該処理液に対して窒素ガスを溶解させる。ただし、「適正処理液」とは、当該処理液を基板表面に物理的に作用させた場合(この実施の形態においては、超音波洗浄処理に用いた場合)に、基板にダメージを与えにくい(より具体的には基板に発生するダメージが所定値以下となる)処理液である。
【0052】
処理液が適正処理液であるか否かを判断する構成について図7を参照しながら説明する。図7は、処理液が適正処理液であるか否かの判断に関する構成を示す図である。基板処理装置100は、当該判断に関する構成として、分子密度閾値取得部51と処理液評価部52とを有している。これら各部は、例えば、制御部5がROM上のプログラムを実行することにより実現される。
【0053】
〈分子密度閾値取得部51〉
分子密度閾値取得部51は、処理液が適正処理液であるか否かの判断基準となる「分子密度閾値Q」の値を取得する。「分子密度閾値Q」は、以下に説明する一連の処理によって特定される値である。分子密度閾値Qの取得は、例えば、オペレータに操作部6から直接に分子密度閾値Qの数値を入力させ、当該入力操作に基づいて分子密度閾値Qの値を取得することによって行われる。また、ネットワーク等を介して接続された外部端末装置から分子密度閾値Qの値を受信して取得する構成としてもよい。さらにまた、後述する試験データの値を取得し、後述する一連の処理を制御部5にて実行することによって、試験データの値から分子密度閾値Qを算出してもよい。分子密度閾値取得部51が取得した分子密度閾値Qは、メモリに格納される。
【0054】
〈分子密度閾値Q〉
ここで、分子密度閾値Qについて説明する。本発明の発明者によると、処理液の分子密度と、当該処理液を基板表面に物理的に作用させることによって基板に対する処理を実行した場合に基板に発生するダメージとの間には相関があることが見いだされている。この相関関係を用いると、処理液の分子密度の値を指標として処理液が基板Wに対してダメージを与えにくいか否かを評価することが可能となる。より具体的には、この相関関係から、処理液が適正処理液であるか否かの判定基準となる値である分子密度閾値Qを特定することができる。以下において、分子密度閾値Qを特定する工程について、図8を参照しながら説明する。図8は、分子密度閾値Qを特定する工程の流れを示す図である。
【0055】
はじめに、少なくとも2以上の液体(例えば、任意の処理液)を試料とし、これら試料となる液体それぞれの「分子密度(mol/cm3)」と、当該液体を基板表面に物理的に作用させることによって基板に対する処理を実行した際(この実施の形態においては、当該処理液を用いて超音波洗浄処理を実行した際)に基板に発生する「ダメージ」との相関関係を取得する。より具体的には、分子密度とダメージとの関係を示すグラフである分子密度相関グラフVを準備する(ステップS1)。
【0056】
「分子密度(mol/cm3)」とは、液体の単位体積当たりに存在する分子の個数であり、液体の密度(g/cm3)を当該液体を構成する分子の分子量(g/mol)で割って得られる値である。複数種類の分子が含まれる液体の場合は、分子量として、平均的な分子量(すなわち、液体に分子量M1の物質がa%、分子量M2の物質がb%含まれる場合、平均的な分子量Mav=(a×M1+b×M2)/100))を用いて分子密度を算出すればよい。
【0057】
「ダメージ」とは、試料となる液体のそれぞれを用いて、所定の条件下で超音波洗浄処理を実行した場合に得られる処理後基板に発生しているパターンの損傷の度合いを示す試験データである。例えば、処理後基板において倒壊したパターンの数を計数することによって得られる試験データである。なお、試験データを取得する際の超音波洗浄処理の処理条件(具体的には、超音波振動数、処理時間等)は、選定した処理液によって実際に実行する超音波洗浄処理の処理条件と近いことが望ましい。
【0058】
図9には、発明者によって取得された分子密度相関グラフVが示されている。ただし、図9に示される分子密度相関グラフVにおける「ダメージ」の値は、ライン幅が80nm、ライン間スペースが1500nm、ライン数が3400本のパターンが形成された基板に対して40KHZの超音波を付与しながら超音波洗浄処理を実行した場合に、処理後の基板において倒壊したパターンの割合(%)によって規定されている。また、試料となる液体としては、水(H2O)、各種濃度の硫酸(H2SO4)、リン酸(H3PO4)、 硝酸(HNO3)、アセトン(CH3COCH3)、IPA((CH32CHOH)、メタノール(CH3OH)、エチレングリコール(C262)、HFE(ハイドロフルオロエーテル)、MNP(C59NO)等が用いられている。
【0059】
続いて、ステップS1で得られた分子密度相関グラフVに基づいて、分子密度閾値Qを特定する(ステップS2〜ステップS4)。
【0060】
上述した通り、本発明の発明者によると、処理液の分子密度と、基板に発生するダメージとの間には相関があることが見いだされている。より具体的には、分子密度と基板に発生するダメージとの間の関係は、自然対数曲線に近似可能であることが確認されている。すなわち、ダメージyと、分子密度xとの間には、(式3)で規定される関係があることが見いだされている。ただし、(式3)においてa,bは定数であり、eは自然対数の底である。
【0061】
y=axebx (式3)
【0062】
これをふまえて、ステップS1で得られた分子密度相関グラフVに基づいて分子密度閾値Qを特定する工程についてより具体的に説明する。はじめに、ステップS1で得られた分子密度相関グラフVに近似する自然対数曲線Lを特定する(ステップS2)。すなわち、(式3)の定数a、bを特定する。例えば、ステップS1で図9に示す分子密度相関グラフVが得られている場合、ステップS2で、L:y=axebx (a=30、b=100)と特定される(図10)。
【0063】
続いて、上限とすべきダメージ値(上限ダメージ値Y)の値を取得する(ステップS3)。例えば、ダメージ値が大きいことがわかっている処理液(例えば、H2O)のダメージの値を上限ダメージ値Yとして採用する。H2Oのダメージ値は、ステップS1で分子密度相関グラフVを得る際に用いた試験データの値から取得することができる。例えば、ステップS1で図9に示す分子密度相関グラフVが得られているとすると、H2Oのダメージ値を上限ダメージ値Yとして採用する場合、上限ダメージ値Yの値は「100」となる。
【0064】
続いて、ステップS2で特定された自然対数曲線Lから、ダメージ値が上限ダメージ値Yの(1/e)倍となる分子密度の値M1を算出し、当該分子密度の値M1を分子密度閾値Qとして取得する(ステップS3)。すなわち、ダメージ値が上限ダメージ値Yの(1/e)倍以下となる分子密度閾値Qを特定する。例えば、自然対数曲線L:y=axebx (a=30、b=100)が得られている場合、図10に示すように、ステップS3で、ダメージ値yが上限ダメージ値Y(Y=100)の(1/e)倍となる値(100/e=36.8)を与える分子密度の値M1=0.035が分子密度閾値Qとして取得される。
【0065】
また、被処理基板Wの状態などに応じて、より厳しい分子密度閾値Qを取得する構成としてもよい。この場合、ステップS2で特定された自然対数曲線Lから、ダメージ値が上限ダメージ値Yの(1/e)2倍となる分子密度の値M2を算出し、当該分子密度の値M2を分子密度閾値Qとして取得する。例えば、自然対数曲線L:y=axebx (a=30、b=100)が得られている場合、図11に示すように、ステップS3で、ダメージ値が上限ダメージ値Y(Y=100)の(1/e)2倍となる値(100/e2=13.5)を与える分子密度の値M2=0.03が分子密度閾値Qとして取得される。
【0066】
また、さらに厳しい分子密度閾値Qのを取得する構成としてもよい。この場合、ステップS2で特定された自然対数曲線Lから、ダメージ値が上限ダメージ値Yの(1/e)3倍となる分子密度の値M3を算出し、当該分子密度の値M3を分子密度閾値Qとして取得する。例えば、自然対数曲線L:y=axebx (a=30、b=100)が得られている場合、図12に示すように、ステップS3で、ダメージ値が上限ダメージ値Y(Y=100)の(1/e)3倍となる値(100/e3=4.9)を与える分子密度の値M3=0.02が分子密度閾値Qとして取得される。
【0067】
つまり、ステップS4では、ステップS1で特定された自然対数曲線Lから、ダメージ値が上限ダメージ値Yの(1/e)n倍(nは自然数(1,2,3,・・))となる分子密度の値を算出して、分子密度閾値Qとして取得する。nの値は、被処理基板Wの状態などに応じて決定することができる。nの値を相対的に大きくすれば、取得される分子密度閾値Qの値が小さくなる。つまり、後述するステップS5において、基板Wにダメージを与えるおそれが低い処理液のみを限定的に選定することが可能となる。以上のステップS1〜S4によって、分子密度閾値Qが特定される。
【0068】
〈処理液評価部52〉
再び図7を参照する。処理液評価部52は、分子密度閾値取得部51が取得した分子密度閾値Qに基づいて、処理に用いる予定の処理液(選択処理液)が適正処理液であるか否かを判断する。より具体的には、選択処理液の分子密度の値が分子密度閾値Q以下の場合には当該選択処理液は適正処理液であると判断し、分子密度閾値Qよりも大きい場合には適正処理液でないと判断する。なお、選択処理液の分子密度の値(すなわち、処理液供給部2の備える複数種類の候補処理液のそれぞれの分子密度の値)は、分子密度データDMとして予めメモリに格納されているとする。
【0069】
例えば、メモリに格納された分子密度閾値Qの値が「0.03」の場合、選択処理液が分子密度が「0.556(mol/cm3)」のH2O(分子量18(g/mol)、密度1(g/cm3))であるとすると、処理液評価部52は当該選択処理液は適正処理液でないと判断する。また、選択処理液が分子密度が「0.0129(mol/cm3)」のIPA(分子量60(g/mol)、密度0.781(g/cm3))であるとすると、当該選択処理液は適正処理液であると判断する。
【0070】
〈2.処理動作〉
続いて、基板処理装置100における基板Wの洗浄処理について図13を参照しながら説明する。図13は、基板処理装置100における基板Wの洗浄処理の流れを示す図である。
【0071】
基板処理装置100は、基板Wが搬入される前(複数の基板Wを順に処理する場合には、ある基板Wの処理が終了した後、後続の基板Wの搬入が開始されるまでの間)には、図示しない純水供給源からの処理槽12内に純水を供給し、処理槽12の上部から外槽122へ純水をオーバーフローさせ、配管123を経由して排液ラインへ排出させることによって、基板Wが搬入される前の処理槽12内を浄化する。
【0072】
一方、伝播水供給部15では、伝播水供給源151からの伝播水が、伝播槽14へ供給されている。伝播水の供給は、基板処理装置100に基板Wが搬入される前から、基板処理装置100における基板Wの処理が完了するまで、常時継続される。
【0073】
前工程の装置から搬送されてきた基板Wは、基板処理装置100の搬入部70にセットされる。搬入部70にセットされた基板Wは、搬送ロボットによって搬入部70から取り出され、処理槽12へ向けて搬送される(ステップS101)。
【0074】
基板Wが搬送経路上の所定位置に到達すると、制御部5が、処理液供給部2の開閉弁のうち、選択処理液に接続された開閉弁を開放して処理部1に対して処理液の供給を開始する(ステップS102)。より具体的には、候補処理液のうちから1の処理液を選択処理液として選択し、当該選択処理液を貯留する処理液供給源に接続された開閉弁を開放する。すると、処理液供給源に貯留された選択処理液が、処理液供給経路Sを通じて処理部1に供給される。
【0075】
ただしここで、選択処理液の供給を開始するに先だって、処理液評価部52が分子密度閾値取得部51の取得した分子密度閾値Qに基づいて選択処理液が適正処理液であるか否かを判断しておく。より具体的には、まず、分子密度閾値取得部51によって取得されている分子密度閾値Qの値をメモリから取得するとともに、選択処理液の分子密度の値をメモリに格納された分子密度データDMから読み出す。そして、選択処理液の分子密度の値が分子密度閾値Q以下であるか否かを判定し、分子密度閾値Q以下である場合には選択処理液は適正処理液であると判断する。
【0076】
選択処理液が適正処理液であると判断されなかった場合(ステップS103でNO)、制御部5は処理液調整部3を制御して、処理液供給経路Sを流れる処理液に窒素ガスを溶解させて、処理液の窒素ガス濃度を目標濃度に調整する(ステップS104)。さらにこの場合、処理液供給経路Sの加圧が必要か否かを判断する(ステップS105)。すなわち、窒素ガスの目標濃度が、所定の値(例えば、常圧における飽和溶存気体量)よりも大きい場合には加圧が必要と判断する。加圧が必要と判断された場合、制御部5は加圧部4を制御して、処理液供給経路Sを加圧する(ステップS106)。より具体的には、飽和溶存気体量が目標濃度よりも大きくなるような圧力状態にまで処理液供給経路Sを加圧する。
【0077】
一方、選択処理液が適正処理液であると判断された場合(ステップS103でYES)、制御部5は処理液に対して窒素ガスを溶解させる必要はないと判断して、ステップS104〜ステップS106の処理は実行せずにステップS107の処理に移行する。
【0078】
すなわち、制御部5は、選択処理液が適正処理液であると判断された場合には、当該選択処理液をそのまま基板処理に用いる実行処理液として取得する。一方、選択処理液が適正処理液であると判断されなかった場合には、処理液調整部3(および、必要な場合には加圧部4)を制御して、当該選択処理液に対して窒素ガスを溶解させて得られた処理液を実行処理液として取得する。ステップS102〜ステップS106の処理が実行されることにより、基板処理に用いる実行処理液が取得され、当該取得された実行処理液は、処理液供給源21から処理液供給経路Sを通じて処理槽12内へ供給され、処理槽12内の純水と置換する。なお、処理槽12内が実行処理液に完全に置換された後も、処理槽12内から基板Wが搬出されるまで実行処理液の供給は継続される。
【0079】
処理槽12へ搬送された基板Wは、処理槽12の上方で待機するリフタ20の保持棒23上に載置される。基板Wが保持棒23上に載置されると、リフタ20が降下し、基板Wは、処理槽12内に貯留された処理液中に浸漬される(ステップS107)。
【0080】
続いて、チャンバ11の上部が閉鎖され、その内部が密閉空間とされる(ステップS108)。なおこのとき、窒素ガスの目標濃度が所定の値(例えば、常圧状態における飽和溶存気体量)よりも大きい場合には、制御部5は加圧部4を制御して、チャンバ11内を加圧する。より具体的には、窒素ガスを充填させることによって、飽和溶存気体量が目標濃度よりも大きくなるような圧力状態にまでチャンバ11を加圧する。
【0081】
処理槽12内の実行処理液中に基板Wが浸漬されると、制御部5は超音波発振器142を動作をさせて、超音波振動子141を振動させる(ステップS109)。超音波振動子141から発生した超音波振動は、伝播槽14の底部、伝播槽14内の伝播水、処理槽12の底部、処理槽12内の実行処理液を順に伝播し、実行処理液中に浸漬された基板Wへ到達する。基板Wに付着したパーティクルは、超音波振動の衝撃を受けて基板Wの表面から遊離する。また、処理槽12内には、上方へ向かう実行処理液の流れが形成されている。このため、基板Wの表面から遊離したパーティクルは、実行処理液の流れに乗って処理槽12の上部へ運搬される。パーティクルは、処理槽12の上部において実行処理液とともに外槽122へ運搬され、配管123を介して排液ラインへ排出される。
【0082】
超音波振動の付与を所定時間継続した後、基板処理装置100は、超音波振動子141の動作を停止させ、実行処理液の供給のみを継続する(ステップS110)。実行処理液中に残存するパーティクルは、実行処理液の流れに乗って外槽122へ運搬され、配管123を介して排液ラインへ排出される。これにより、処理槽12内に残存するパーティクルが基板Wへ再付着することが防止される。
【0083】
その後、実行処理液の供給を停止し、リフタ20を上昇させて処理槽12内から基板Wを引き上げ、基板Wを搬出する(ステップS111)。以上をもって、基板処理装置100における基板Wの洗浄処理が終了する。基板Wを処理槽12の上方に引き上げた状態で、または基板Wを他装置へ搬送した後に、基板Wに対して乾燥処理が行われる。
【0084】
〈3.効果〉
この実施の形態によると、処理液評価部52が、分子密度閾値取得部51が取得した分子密度閾値Qおよび処理液の分子密度の値に基づいて、選択処理液が適正処理液であるか否かを分子密度を用いて判断する。そして、選択処理液が適正処理液であると判断された場合は当該選択処理液をそのまま実行処理液として取得して基板処理に用いる。一方、選択処理液が適正処理液であると判断されなかった場合は、当該選択処理液に対して所定の気体を溶解させた処理液を実行処理液として取得して基板処理に用いる。すなわち、選択処理液が適正処理液でない場合は、処理液中に気体を溶解させることによって、処理液が基板に与えるダメージを低く抑えることができる。したがって、どのような処理液を用いて超音波洗浄処理を実行した場合であっても、物理的作用の欠点を解消しつつ、その効果を得ることができる。すなわち、基板に対するダメージを与えることなく、処理液の作用効果を高めて効果的に基板を処理することができる。
【0085】
また、上記の方法によると、選択処理液に気体を溶解させるべきか否かを、選択処理液の分子密度の値と分子密度閾値Qとを比較するだけで判断することができる。つまり、分子密度という指標のみを用いて、簡易かつ正確に、処理液に気体を溶解させるべきか否かを判断することができる。
【0086】
また、処理液を加圧状態とすると、ヘンリーの法則に従って、処理液に溶解可能な気体量(飽和溶存気体量)を大きくすることができる。一般に、処理液の窒素ガス濃度を高くするほど処理液が基板Wに対して与えるダメージは低減されるとともに、処理液の処理効果が高くなる。しかしながら、処理液の飽和溶存気体量は、圧力・温度・処理液の種類などによって規定される。例えば、処理液がH2Oの場合、1(atm)、25(℃)における飽和溶存気体量は約17(ppm)であり、窒素ガスは最大で約17(ppm)までしか溶解させることができない。特に処理液に超音波を付与する場合、超音波が付与されることによって処理液に溶存している窒素ガスが気体となって処理液中に浮遊しやすい状態となるため、17(ppm)よりもさらに小さい濃度しか許容されない。というのも、図18に示すように、処理液中に窒素ガスの気泡が生じてしまうと(16(ppm)の場合参照)、超音波エネルギーの伝播効率が低下して十分な洗浄効果を得ることができなくなってしまうからである。
【0087】
この実施の形態に係る基板処理装置100においては、加圧部4を備えることによって、処理液を含む環境を加圧することができる。これによって、処理液の飽和溶存気体量を大きくすることが可能となる。例えば、加圧部4が処理液を含む環境を2(atm)まで加圧すると、処理液の飽和溶存気体量は倍になる。つまり、処理液調整部3における窒素ガス濃度の目標値としてとりうる最大値が倍の値まで増加する。処理液に高濃度の窒素ガスを溶解させることによって、処理液の処理効果を高めるとともに、処理液が基板に与えるダメージを低減させることができる。
【0088】
〈B.第2の実施の形態〉
〈1.構成〉
この発明の第2の実施の形態に係る基板処理装置200について図14を参照しながら説明する。図14は、基板処理装置200の構成を示す図である。基板処理装置200は、基板処理装置100と同様、基板Wに対して超音波洗浄処理を実行する装置である。ただし、基板処理装置100が複数の基板Wに対して一度に基板処理を実行するバッチ式の処理装置であったのに対し、基板処理装置200は一枚ずつの基板Wに対して基板処理を実行する枚葉式の処理装置である点が相違する。以下においては、第1の実施の形態に係る基板処理装置100と相違する点を説明し、相違しない点については説明を省略する。また、同じ構成部を示す際に、第1の実施の形態の説明で用いた参照符号を用いることがある。
【0089】
基板処理装置200は、処理部201と、処理液供給部202と、処理液調整部203と、制御部205と、操作部206と、表示部207とを備えている。処理液供給部202、処理液調整部203、操作部206および表示部207の各部の構成は、第1の実施の形態に係る処理液供給部2、処理液調整部3、操作部6および表示部7(図1参照)と同様であるのでその説明を省略する。また、第1の実施の形態と同様、制御部205によって、処理液が適正処理液であるか否かを判断する構成(図7参照)が実現されている。
【0090】
〔処理部〕
処理部201は、基板Wの表面に処理液供給部2から供給された処理液に供給することにより基板Wの表面処理を行う装置であり、基板保持部211と、処理液回収部212と、吐出ノズル213とを備えている。
【0091】
基板保持部211は、円板形状のスピンベース2111と、その上面に立設した複数のチャックピン2112とを有する。チャックピン2112は、円形の基板Wを保持するために、スピンベース2111の周縁部に沿って3箇所以上設けられている。基板Wは複数のチャックピン2112の基板支持部2112a上に載置され、外側面をチャック部2112bに押圧されて、保持される。スピンベース2111の下面側中心部には、回転軸2113が垂設されている。回転軸2113の下端は電動モーター2114に連結されており、電動モーター2114を駆動させると、回転軸2113、スピンベース2111、およびスピンベース2111上に保持された基板Wは、一体的に水平面内で回転する。
【0092】
処理液回収部212は、基板W上面に供給された処理液を回収するための部材であって、スピンベース2111上に保持された基板Wの周囲を取り囲むガード部材2121を備えている。ガード部材2121は、内方にくの字形に開いた断面形状を有しており、基板Wから周囲に飛散したリンス液を内壁面に受けるようになっている。ガード部材2121の底面の一部には排液口2122が設けられている。ガード部材2121に受けられたリンス液はガード部材2121の内壁面を伝って排液口2122から排液ラインへ排出される。
【0093】
吐出ノズル213は、処理液供給経路Sと接続されており、処理液供給部202から供給された処理液をスピンベース2111に保持された基板Wの上面に向けて吐出供給する。
【0094】
図15を参照する。図15は吐出ノズル213の断面図である。吐出ノズル213には、超音波振動子2131が埋め込まれている。超音波振動子2131に接続された超音波発振器2132を動作させると、超音波振動子2131が発振して、超音波振動が発生する。超音波振動子2131から発生した超音波振動は、処理液供給経路Sから吐出ノズル213に流入した処理液中に伝播し、当該処理液が吐出ノズル213から基板表面に吐出されることによって基板Wへ到達する。なお、超音波発振器2132は、制御部205と接続されており、制御部205から与えられる信号に基づいて動作する。
【0095】
〈2.処理動作〉
続いて、基板処理装置200における基板Wの洗浄処理について図16を参照しながら説明する。図16は、基板処理装置200における基板Wの洗浄処理の流れを示す図である。
【0096】
前工程の装置から搬送されてきた基板Wは、図外の搬送ロボットによってスピンベース2111上に載置される。スピンベース2111上に載置された基板Wはチャックピン2112によって把持される(ステップS201)。
【0097】
基板Wがチャックピン2112によって把持されると、制御部205が、電動モーター2114を駆動させてスピンベース2111とともに基板Wを回転させるとともに、処理液供給部2の開閉弁のうち、選択処理液に接続された開閉弁を開放して処理部201に対して処理液(選択処理液)の供給を開始する(ステップS202)。
【0098】
ただしここで、選択処理液の供給を開始するに先だって、処理液評価部52(図7参照)が分子密度閾値取得部51の取得した分子密度閾値Qに基づいて選択処理液が適正処理液であるか否かを判断しておく。
【0099】
選択処理液が適正処理液であると判断されなかった場合(ステップS203でNO)、制御部205は処理液調整部203を制御して、処理液供給経路Sを流れる処理液に窒素ガスを溶解させて、処理液の窒素ガス濃度を目標濃度に調整する(ステップS204)。
【0100】
一方、選択処理液が適正処理液であると判断された場合(ステップS203でYES)、制御部205は処理液に対して窒素ガスを溶解させる必要はないと判断して、ステップS204の処理は実行せずにステップS205の処理に移行する。
【0101】
すなわち、制御部205は、選択処理液が適正処理液であると判断された場合には当該選択処理液をそのまま基板処理に用いる実行処理液として取得し、選択処理液が適正処理液であると判断されなかった場合には、処理液調整部203を制御して、当該選択処理液に対して窒素ガスを溶解させて得られた処理液を実行処理液として取得する。ステップS202〜ステップS204の処理が実行されることにより、基板処理に用いる実行処理液が取得され、当該取得された実行処理液は、処理液供給源21から処理液供給経路Sを通じて吐出ノズル213へ供給される。
【0102】
吐出ノズル213への実行処理液の供給が開始されると、制御部205は超音波発振器2132を動作させて、超音波振動子2131を振動させる(ステップS205)。超音波振動子2131から発生した超音波振動は、処理液供給経路Sから吐出ノズル213に流入した実行処理液中に伝播し、吐出ノズル121から実行処理液が基板Wの上面に吐出されることによって、基板Wへ到達する。基板Wの上面に吐出された実行処理液は基板Wの回転に伴う遠心力によって基板Wの周辺に向けて流れて基板Wの上面の全域に行き渡る。これにより、基板Wの上面が洗浄され、基板Wに付着したパーティクルは、超音波振動の衝撃を受けて基板Wの表面から遊離する。
【0103】
実行処理液の供給を所定時間継続することによって、基板処理装置100における基板Wの洗浄処理が実行される。洗浄処理が終了すると、続いて、振り切り乾燥処理(スピンドライ処理)が実行される(ステップS206)。すなわち、制御部205が、開閉弁23を閉じて処理部201に対する実行処理液の供給を停止するとともに、電動モーター2114を駆動させてスピンベース2111とともに基板Wを回転させる(ステップS207)。基板Wに付着している水滴が回転の遠心力によって振り切られることにより、振り切り乾燥処理が進行する。
【0104】
スピンドライ処理を開始してから所定時間が経過すると、制御部205が、電動モーター2114を駆動停止させてスピンベース2111および基板Wの回転を停止させる。この状態にて、図示を省略する搬送ロボットが処理済の基板Wをスピンベース2111から取り出して搬出する(ステップS207)。なお、乾燥処理は基板Wを他装置へ搬送した後に行われてもよい。
【0105】
〈3.効果〉
この実施の形態によると、第1の実施の形態と同様、どのような処理液を用いて超音波洗浄処理を実行した場合であっても、基板に対するダメージを与えることなく、処理液の作用効果を高めて効果的に基板を処理することができる。
【0106】
〈C.第3の実施の形態〉
〈1.構成〉
この発明の第3の実施の形態に係る基板処理装置について説明する。この実施の形態に係る基板処理装置は、基板Wに対して物理作用処理(より具体的には、基板表面にミスト化させた処理液作用させて基板の表面を洗浄する処理(2流体洗浄処理))を実行する枚葉式の処理装置である。この実施の形態に係る基板処理装置は、第2の実施の形態に係る基板処理装置200とほぼ同様の構成を備えるが、吐出ノズル213に換えて、2流体ノズル301を備える点が相違する。以下においては、第2の実施の形態に係る基板処理装置200と相違する点を説明し、相違しない点については説明を省略する。また、同じ構成部を示す際には、第2の実施の形態の説明で用いた参照符号(図14参照)を用いる。
【0107】
〔2流体ノズル〕
2流体ノズル301について図17を参照しながら説明する。図17は2流体ノズル301の断面図である。2流体ノズル301は、処理液供給経路Sと接続されており、処理液供給部2から供給された処理液をスピンベース2111(図14参照)に保持された基板Wの上面に向けて吐出供給する。
【0108】
2流体ノズル301は、管状の液体吐出部311と、液体吐出部311の外周部に一体的に形成された気体吐出部312とを有している。液体吐出部311の軸心部分には、処理液供給経路Sから供給された処理液を吐出する処理液吐出口311aが形成されている。また、気体吐出部312には、窒素ガス供給源Nから配管313を介して供給される窒素ガスを吐出する気体吐出口312aが形成されている。気体吐出口312aは、処理液吐出口311aと同心環状に形成され、処理液吐出口311aの吐出先の1点を指向するように傾斜を有して形成されている。
【0109】
このため、処理液吐出口311aから吐出された処理液は、気体吐出口312aから吐出された窒素ガスの衝突を受けて、霧状に粉砕される。これにより、処理液がミスト化され、処理液のミストが基板W表面へ噴射される。すなわち、この2流体ノズル301は、処理液に窒素ガスを衝突させ、処理液のミスト(液滴の噴流)を形成する役割を果たす。
【0110】
〈2.処理動作〉
この実施の形態に係る基板処理装置における基板Wの洗浄処理は、第2の実施の形態に係る基板処理装置200における洗浄処理とほぼ同様の流れで実行される。ただし、基板処理装置200においては、処理液の供給が開始されると、制御部205は超音波発振器2132を動作させて超音波振動子2131を振動させ、超音波振動が付与された処理液を吐出ノズル121から基板の上面に吐出していたが(図16のステップS205)、この実施の形態に係る基板処理装置においては、処理液の供給が開始されると、制御部は気体吐出口312から窒素ガスを吐出させて処理液吐出口311aから吐出された処理液に衝突させる。これによって、処理液のミストが形成され、基板Wに付着したパーティクルは、処理液の衝撃を受けて基板Wの表面から遊離する。
【0111】
〈3.効果〉
この実施の形態によると、第1の実施の形態と同様、どのような処理液を用いて2流体洗浄処理を実行した場合であっても、基板に対するダメージを与えることなく、処理液の作用効果を高めて効果的に基板を処理することができる。
【0112】
〈D.変形例〉
上記の各実施の形態では、処理液調整部3、203において処理液に溶解させるガスとして、窒素ガスを用いる構成としているが、キセノン(Xe)、アルゴン(Ar)などの不活性ガスを用いてもよい。
【0113】
また、上記の各実施の形態では、処理部1,201において洗浄処理を行う構成としているが、処理液を用いて基板に所定の処理を行うものであれば、エッチング処理、剥離処理、乾燥処理、現像処理等どのような種類でもよい。
【0114】
また、上記の各実施の形態によると、分子密度が分子密度閾値Q以下である場合に当該被選定処理液を適正処理液と判断しているが、分子密度が分子密度閾値Q未満である場合に当該被選定処理液を適正処理液と判断してもよい。
【0115】
また、上記の第1、第2の実施の形態においては、周波数が16kHz以上の音波である超音波振動を使用したが、周波数が700kHz以上のいわゆる「メガソニック」を利用すれば、より効率よく基板W上のパーティクルを除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】第1の実施の形態に係る基板処理装置の構成を示す図である。
【図2】処理部を基板と平行な平面で切断した縦断面図である。
【図3】処理部を基板と垂直な平面で切断した縦断面図である。
【図4】第1窒素濃度計の測定原理を概念的に示すための図である。
【図5】濃度可変部の構成を模式的に示す図である。
【図6】第1測定値、第2測定値、および目標値の関係と、それに応じてなされるべき制御について説明するための図である。
【図7】処理液が適正処理液であるか否かの判断に関する構成を示す図である。
【図8】分子密度閾値を特定する工程の流れを示す図である。
【図9】分子密度相関グラフを示す図である。
【図10】分子密度相関グラフから得られた自然対数曲線を示す図である。
【図11】分子密度相関グラフから得られた自然対数曲線を示す図である。
【図12】分子密度相関グラフから得られた自然対数曲線を示す図である。
【図13】第1の実施の形態に係る基板処理装置における基板の洗浄処理の流れを示す図である。
【図14】第2の実施の形態に係る基板処理装置の構成を示す図である。
【図15】吐出ノズルの断面図である。
【図16】第2の実施の形態に係る基板処理装置における基板の洗浄処理の流れを示す図である。
【図17】2流体ノズルの断面図である。
【図18】音圧と出力との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0117】
1 処理部
2 処理液供給部
3 処理液調整部
4 加圧部
5 制御部
51 分子密度閾値取得部
52 処理液評価部
100,200 基板処理装置
141,2131 超音波振動子
213 吐出ノズル
301 2流体ノズル
Q 分子密度閾値
V 分子密度相関グラフ
L 自然対数曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の分子密度と、当該液体を基板表面に物理的に作用させることによって基板に対する処理を実行した際に基板に発生するダメージと、の関係に基づいて、ダメージが所定値以下となる分子密度閾値を取得する分子密度閾値取得手段と、
基板処理に用いる予定の所定の処理液の分子密度の値が前記分子密度閾値以下の場合に、前記所定の処理液は基板にダメージを与えにくい適正処理液であると判断する処理液評価手段と、
前記所定の処理液に対して所定の気体を溶解させる気体溶解手段と、
前記所定の処理液が適正処理液であると判断された場合には前記所定の処理液をそのまま基板処理に用いる実行処理液として取得し、前記所定の処理液が適正処理液であると判断されなかった場合には、前記所定の処理液に対して前記気体溶解手段によって前記所定の気体を溶解させて得られた処理液を実行処理液として取得する実行処理液取得手段と、
基板表面に前記実行処理液を物理的に作用させることによって基板に対する処理を実行する処理部と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記処理部が、
基板を収容して内部を密閉空間にすることが可能なチャンバと、
前記チャンバ内に配置され、前記実行処理液を貯留可能な処理槽と、
前記実行処理液を前記処理槽中に貯留させた状態とする処理液準備手段と、
前記処理槽に貯留された前記実行処理液に超音波振動を付与する超音波振動付与手段と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記所定の気体を溶解させて得られた実行処理液を含む環境を加圧して、当該実行処理液を加圧状態におく処理液加圧手段、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記処理部が、
基板を保持する保持機構と、
前記保持機構を回転させることにより、前記保持機構に保持された基板を回転させる回転駆動源と、
前記実行処理液に超音波振動を付与する超音波振動付与手段と、
前記超音波振動が付与された前記実行処理液をノズル先端の吐出口より前記保持機構に保持された基板の表面に吐出する吐出 ノズルと、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記処理部が、
基板を保持する保持機構と、
前記保持機構を回転させることにより、前記保持機構に保持された基板を回転させる回転駆動源と、
前記実行処理液と所定の気体とを混合してミストを形成し、形成された前記ミストをノズル先端の吐出口より前記保持機構に保持された基板の表面に吐出する2流体 ノズルと、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の基板処理装置であって、
前記分子密度閾値が、
処理液の分子密度と、前記基板に発生するダメージとの関係に近似する自然対数曲線において、ダメージ値が所定の上限ダメージ値の(1/e)n倍(eは自然対数の底、nは自然数)となる分子密度の値であることを特徴とする基板処理装置。
【請求項7】
請求項1から5のいずれかに記載の基板処理装置であって、
前記分子密度閾値の値が、0.035mol/cm3であることを特徴とする基板処理装置。
【請求項8】
請求項1から5のいずれかに記載の基板処理装置であって、
前記分子密度閾値の値が、0.03mol/cm3であることを特徴とする基板処理装置。
【請求項9】
請求項1から5のいずれかに記載の基板処理装置であって、
前記分子密度閾値の値が、0.02mol/cm3であることを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−244271(P2008−244271A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−84650(P2007−84650)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】