説明

基板把持機構および基板把持方法

【課題】より簡単な構成で基板を把持することができる基板把持機構を提供する。
【解決手段】基板把持機構は、基台1と、基台1に支持され、該基台1に対して上下方向に相対移動可能な複数の基板支持部材2と、基板支持部材2の上端にそれぞれ設けられた基板把持部28と、基板支持部材2を上下動させる駆動機構20と、少なくとも1つの基板支持部材2および基台1のうちのいずれか一方に取り付けられた第1の磁石31と、少なくとも1つの基板支持部材2および基台1のうちの他方に取り付けられた第2の磁石32とを備える。第1の磁石31の磁石は、基板支持部材2の上下動に伴って、第2の磁石32と近接した位置となるように配置され、第1の磁石31と第2の磁石32が近接したときに、第1の磁石31と第2の磁石32との間に発生する磁力により基板把持部28が基板Wの端部を押圧する方向に基板支持部材2を移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板把持機構および基板把持方法に関し、特に半導体ウェハなどの基板の洗浄装置や乾燥装置に好適に組み込まれる基板把持機構に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程では、研磨処理やめっき処理の後に基板の洗浄処理や乾燥処理が行われる。例えば、基板の洗浄処理では、基板を基板把持機構で把持しつつ基板を回転させ、この状態で基板に洗浄液を供給する。従来の基板把持機構としては、アクチュエータなどによりチャックを駆動して基板を把持する機構が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−058226号公報
【特許文献2】特開平11−090355号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来の基板把持機構の改良に関するものであり、より簡単な構成で基板を把持することができる基板把持機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成するために、本発明の一態様は、基台と、前記基台に支持され、該基台に対して上下方向に相対移動可能な複数の基板支持部材と、前記基板支持部材の上端にそれぞれ設けられた基板把持部と、前記基板支持部材を上下動させる駆動機構と、前記基板支持部材の下降と連動して、少なくとも1つの前記基板支持部材上の前記基板把持部を基板に押圧し、前記基板支持部材の上昇と連動して、前記基板把持部を基板から離間させる押圧機構とを備えることを特徴とする基板把持機構である。
【0006】
本発明の好ましい態様は、前記押圧機構は、前記基板支持部材の上下動と連動して、前記少なくとも1つの基板支持部材をその軸心周りに回転させる回転機構であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記基板把持部は、前記基板支持部材の軸心から偏心して配置された円筒状のクランプであることを特徴とする。
【0007】
本発明の好ましい態様は、前記押圧機構は、前記少なくとも1つの前記基板支持部材および前記基台のうちのいずれか一方に取り付けられた第1の磁石と、前記少なくとも1つの前記基板支持部材および前記基台のうちの他方に取り付けられた第2の磁石とを備え、前記第1の磁石は、前記基板支持部材の上下動に伴って、前記第2の磁石と近接した位置となるように配置され、前記第1の磁石と前記第2の磁石が近接したときに、前記第1の磁石と前記第2の磁石との間に発生する磁力により前記基板把持部が基板の周端部を押圧する方向に前記基板支持部材を移動させることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記第2の磁石が取り付けられている前記少なくとも1つの前記基板支持部材または前記基台には、第3の磁石がさらに取り付けられており、前記第1の磁石は、前記基板支持部材の上下動に伴って、前記第2の磁石および前記第3の磁石のいずれか一方と近接した位置となるように配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の好ましい態様は、前記第1の磁石と前記第2の磁石が近接したときに、前記第1の磁石と前記第2の磁石との間に発生する磁力により前記基板把持部が基板の周端部を押圧する方向に前記基板支持部材をその軸心周りに回転させ、前記第1の磁石と前記第3の磁石が近接したときに、前記第1の磁石と前記第3の磁石との間に発生する磁力により前記基板把持部が基板から離間する方向に前記基板支持部材をその軸心周りに回転させることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記第2の磁石および前記第3の磁石は、互いに上下方向に離間して配置されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の好ましい態様は、前記少なくとも1つの基板支持部材には、その軸心に沿って延びる溝が形成されており、前記基台には、前記溝に緩やかに係合する突起部が設けられていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記押圧機構は、前記少なくとも1つの基板支持部材に形成された螺旋溝と、前記基台に設けられた、前記螺旋溝に係合するピンとを有することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記複数の基板支持部材は少なくとも4つの基板支持部材であり、前記基板支持部材のうちの互いに対向する2つの基板支持部材は、回転することなく上下動することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記基台および前記複数の基板支持部材を回転させる機構をさらに備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の他の態様は、基台と、前記基台に支持された複数の基板支持部材と、前記基板支持部材の上端にそれぞれ設けられた基板把持部および位置決め部と、前記基板支持部材の少なくとも1つをその軸心周りに回転させる回転機構とを備え、前記基板把持部は、前記基板支持部材の軸心から偏心して配置され、前記位置決め部は、前記基板支持部材と同心の円に沿って湾曲する側面を有することを特徴とする基板把持機構である。
【0011】
本発明の他の態様は、基板を把持する方法において、複数の基板支持部材の上端に設けられた基板把持部により基板を押圧することで該基板を把持する把持工程と、該複数の基板支持部材を上昇させて前記基板把持部を基板から離間させる離間工程とを有し、前記把持工程と前記離間工程とが、前記複数の基板支持部材を上下動させる動作により行われることを特徴とする。
本発明の他の態様は、基板を把持する方法において、複数の基板支持部材上に基板を載置する工程と、前記複数の基板支持部材を下降させて、該複数の基板支持部材の上端に設けられた基板把持部により基板を押圧することで該基板を把持する把持工程と、前記複数の基板支持部材を上昇させて、前記基板把持部を基板から離間させる離間工程とを有し、前記把持工程と前記離間工程とが、前記複数の基板支持部材を上下動させる動作により行われることを特徴とする。
【0012】
本発明の好ましい態様は、前記把持工程は、前記複数の基板支持部材の少なくとも1つを回転させることにより、前記基板把持部を基板に押圧することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記複数の基板支持部材のうちの互いに対向する2つの基板支持部材は、回転することなく上下動することを特徴とする。
【0013】
本発明の他の態様は、基板を把持しながら洗浄する方法において、回転カバーに覆われた複数の基板支持部材の上端に設けられた基板把持部により基板を押圧することで該基板を把持する把持工程と、前記基板把持部に把持された基板を回転させながら、該基板上に洗浄液を供給して該基板を洗浄する洗浄工程と、前記複数の基板支持部材を上昇させて前記基板把持部を基板から離間させる離間工程とを有し、前記把持工程と前記離間工程とが、前記複数の基板支持部材を上下動させる動作により行われることを特徴とする。
本発明の他の態様は、基板を把持しながら乾燥する方法において、回転カバーに覆われた複数の基板支持部材の上端に設けられた基板把持部により基板を押圧することで該基板を把持する把持工程と、前記基板把持部に把持された基板を回転させながら、該基板上にイソプロピルアルコールを含む蒸気を供給して該基板を乾燥する乾燥工程と、前記複数の基板支持部材を上昇させて前記基板把持部を基板から離間させる離間工程とを有し、前記把持工程と前記離間工程とが、前記複数の基板支持部材を上下動させる動作により行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、基板支持部材の上下動に伴って基板の把持力が発生するので、電動アクチュエータなどを不要とすることができ、簡単な構成の基板把持機構が実現される。本発明に係る基板把持機構は、基板を回転させながら洗浄液を基板に供給する洗浄装置や、基板を回転させて基板を乾燥させる乾燥装置などに適用することができる。本基板把持機構は構造が簡素で軽量であるため、回転体の回転負荷が低減され、基板把持機構の長寿命化が実現される。さらに、洗浄液の飛散が少ないという利点も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る基板把持機構を示す縦断面図である。図2は第1の実施形態に係る基板把持機構を示す平面図である。
【0016】
図1および図2に示すように、本基板把持機構は、4つのアーム1aを有する基台1と、各アーム1aの先端に支持された4本の円筒状の基板支持部材2とを備えている。基台1は回転軸5の上端に固定されており、この回転軸5は軸受6によって回転自在に支持されている。軸受6は回転軸5と平行に延びる円筒体7の内周面に固定されている。円筒体7の下端は架台9に取り付けられており、その位置は固定されている。架台9はフレーム10に固定されている。回転軸5は、プーリー11,12およびベルト14を介してモータ15に連結されており、モータ15を駆動させることにより、基台1はその軸心を中心として回転するようになっている。符号Wは、半導体ウェハなどの基板である。
【0017】
円筒体7の周囲には、基板支持部材2を持ち上げるリフト機構20が配置されている。このリフト機構20は、円筒体7に対して上下方向にスライド可能に構成されている。リフト機構20は、基板支持部材2の下端に接触する接触プレート20aを有している。円筒体7の外周面とリフト機構20の内周面との間には、第1の気体チャンバ21と第2の気体チャンバ22が形成されている。これら第1の気体チャンバ21と第2の気体チャンバ22は、それぞれ第1の気体流路24および第2の気体流路25に連通しており、これら第1の気体流路24および第2の気体流路25の端部は、図示しない加圧気体供給源に連結されている。第1の気体チャンバ21内の圧力を第2の気体チャンバ22内の圧力よりも高くすると、図3に示すように、リフト機構20が上昇する。一方、第2の気体チャンバ22内の圧力を第1の気体チャンバ21内の圧力よりも高くすると、図1に示すように、リフト機構20が下降する。
【0018】
図4(a)は、図2に示す基板支持部材2およびアーム1aの一部を示す平面図であり、図4(b)は、図2のA−A線断面図であり、図4(c)は図4(b)のB−B線断面図である。基台1のアーム1aは、基板支持部材2をスライド自在に保持する保持部1bを有している。なお、この保持部1bはアーム1aと一体に構成してもよい。保持部1bには上下に延びる貫通孔が形成されており、この貫通孔に基板支持部材2が挿入されている。貫通孔の直径は基板支持部材2の直径よりも僅かに大きく、したがって基板支持部材2は基台1に対して上下方向に相対移動可能となっており、さらに基板支持部材2は、その軸心周りに回転可能となっている。
【0019】
基板支持部材2の下部には、スプリング受け2aが取り付けられている。基板支持部材2の周囲にはスプリング27が配置されており、スプリング受け2aによってスプリング27が支持されている。スプリング27の上端は保持部1b(基台1の一部)を押圧している。したがって、スプリング27によって基板支持部材2には下向きの力が作用している。基板支持部材2の外周面には、貫通孔の直径よりも大きい径を有するストッパー2bが形成されている。したがって、基板支持部材2は、図4(b)に示すように、下方への移動がストッパー2bによって制限される。
【0020】
基板支持部材2の上端には、基板Wが載置される支持ピン29と、基板Wの周端部に当接する基板把持部としての円筒状のクランプ28とが設けられている。支持ピン29は基板支持部材2の軸心上に配置されており、クランプ28は基板支持部材2の軸心から離間した位置に配置されている。したがって、クランプ28は、基板支持部材2の回転に伴って基板支持部材2の軸心周りに回転可能となっている。
【0021】
基台1の保持部1bには第1の磁石31が取り付けられており、この第1の磁石31は基板支持部材2の側面に対向して配置されている。一方、基板支持部材2には第2の磁石32および第3の磁石33が配置されている。これら第2の磁石32および第3の磁石33は、上下方向に離間して配列されている。これらの第1〜第3の磁石31,32,33としては、ネオジム磁石が好適に用いられる。
【0022】
図5は、第2の磁石32と第3の磁石33の配置を説明するための模式図であり、基板支持部材2の軸方向から見た図である。図5に示すように、第2の磁石32と第3の磁石33とは、基板支持部材2の周方向においてずれて配置されている。すなわち、第2の磁石32と基板支持部材2との中心とを結ぶ線と、第2の磁石32と基板支持部材2の中心とを結ぶ線とは、基板支持部材2の軸方向から見たときに所定の角度αで交わっている。
【0023】
基板支持部材2が、図4(b)に示す下降位置にあるとき、第1の磁石31と第2の磁石32とが互いに対向する。このとき、第1の磁石31と第2の磁石32との間には吸引力が働く。この吸引力は、基板支持部材2にその軸心周りに回転する力を与え、その回転方向は、クランプ28が基板Wの周端部を押圧する方向である。したがって、図4(b)に示す下降位置は、基板Wを把持するクランプ位置ということができる。
【0024】
なお、第1の磁石31と第2の磁石32とは、十分な把持力が発生する程度に互いに近接してさえいれば、基板Wを把持するときに必ずしも互いに対向していなくてもよい。例えば、第1の磁石31と第2の磁石32とが互いに傾いた状態で近接している場合でも、それらの間に磁力は発生する。したがって、この磁力が基板支持部材2を回転させて基板Wを把持させるのに十分な程度に大きければ、第1の磁石31と第2の磁石32は必ずしも互いに対向していなくてもよい。
【0025】
図6(a)は、リフト機構20により基板支持部材2を上昇させたときの基板支持部材2およびアーム1aの一部を示す平面図であり、図6(b)は、リフト機構20により基板支持部材2を上昇させたときの図2のA−A線断面図であり、図6(c)は図6(b)のC−C線断面図である。
リフト機構20により基板保持部1b材を図6(b)に示す上昇位置まで上昇させると、第1の磁石31と第3の磁石33とが対向し、第2の磁石32は第1の磁石31から離間する。このとき、第1の磁石31と第3の磁石33との間には吸引力が働く。この吸引力は基板支持部材2にその軸心周りに回転する力を与え、その回転方向は、クランプ28が基板Wから離間する方向である。したがって、図6(a)に示す上昇位置は、基板をリリースするアンクランプ位置ということができる。この場合も、第1の磁石31と第3の磁石33とは、基板Wの把持を開放するときに必ずしも互いに対向していなくてよく、クランプ28を基板Wから離間させる方向に基板支持部材2を回転させる程度の回転力(磁力)を発生する程度に互いに近接していればよい。
【0026】
第2の磁石32と第3の磁石33とは基板支持部材2の周方向においてずれた位置に配置されているので、基板支持部材2の上下移動に伴って基板支持部材2には回転力が作用する。この回転力によってクランプ28に基板Wを把持する力と基板Wを開放する力が与えられる。したがって、基板支持部材2を上下させるだけで、基板Wを把持し、かつ開放することができる。このように、第1の磁石31、第2の磁石32、および第3の磁石33は、基板支持部材2をその軸心周りに回転させてクランプ28により基板Wを把持させる把持機構(回転機構)として機能する。この把持機構(回転機構)は、基板支持部材2の上下動によって動作する。
【0027】
リフト機構20の接触プレート20aは基板支持部材2の下方に位置している。接触プレート20aが上昇すると、接触プレート20aの上面が基板支持部材2の下端に接触し、基板支持部材2はスプリング27の押圧力に抗して接触プレート20aによって持ち上げられる。接触プレート20aの上面は平坦な面であり、一方、基板支持部材2の下端は半球状に形成されている。本実施形態では、リフト機構20とスプリング27とにより、基板支持部材2を上下動させる駆動機構が構成される。なお、駆動機構としては、上述の実施形態に限らず、例えば、サーボモータを用いた構成とすることもできる。
【0028】
図7(a)は、クランプ位置にある基板支持部材2を別の角度から見た側面図であり、図7(b)は図7(a)のD−D線断面図である。図8(a)は、アンクランプ位置にある基板支持部材2を別の角度から見た側面図であり、図8(b)は図8(a)のE−E線断面図である。
基板支持部材2の側面には、その軸心に沿って延びる溝40が形成されている。この溝40は円弧状の水平断面を有している。基台1のアーム1a(本実施形態では保持部1b)には、溝40に向かって突起する突起部41が形成されている。この突起部41の先端は、溝40の内部に位置しており、突起部41は溝40に緩やかに係合している。
【0029】
この溝40および突起部41は、基板支持部材2の回転角度を制限するために設けられている。より具体的には、図7(b)および図8(b)に示すように、基板支持部材2がクランプ位置とアンクランプ位置との間を回転するとき、突起部41は溝40に接触しない。したがって、基板支持部材2は、上述した磁石間に作用する磁力により自由に回転することができる。一方、基板支持部材2がクランプ位置およびアンクランプ位置を越えて回転しようとすると、突起部41が溝40に接触し、これにより基板支持部材2が過度に回転することが防止される。このように、突起部41および溝40はストッパーとして機能するので、基板支持部材2が上下動したときには、第2の磁石32および第3の磁石33のうちのいずれか一方が必ず第1の磁石31の近傍に位置する。
【0030】
ここで、上述のように構成された基板把持機構の動作について説明する。
基板把持機構は図6(b)に示すアンクランプ位置で待機している間、基板Wは搬送ロボットなどの搬送機構(図示せず)により支持ピン29の上に載置される。その後、リフト機構20が下降し、スプリング27の押圧力により基板支持部材2が図4(b)に示すクランプ位置まで下降する。基板支持部材2が下降する間、第2の磁石32が第1の磁石31に対向し、これにより基板支持部材2が回転する。この基板支持部材2の回転によってクランプ28の側面が基板Wの周端部に当接し、基板Wがクランプ28によって保持される。支持ピン29の先端と基板Wとの接触面積は極めて小さく、同様にクランプ28の側面と基板Wとの接触面積は極めて小さいので、基板W以外の部材との接触による基板Wの汚染を防止することができる。ここで、基板Wと接触する部分の部材としては、帯電防止のために、導電性部材(好適には、鉄、アルミニウム、SUS)や、PEEK、PVC等の炭素樹脂を使用することが好ましい。
【0031】
モータ15を駆動すると、基板Wは基板支持部材2と一体に回転する。回転が停止するとき、4つの基板支持部材2とリフト機構20の4つの接触プレート20aとの位置合わせが行われる。すなわち、それぞれの基板支持部材2が接触プレート20aの上方に位置するように、基台1の回転が停止される。そして、基板支持部材2をリフト機構20によって上昇させると、基板支持部材2はその軸心周りに回転し、クランプ28が基板Wから離間する。これにより、基板Wは単に支持ピン29上に載置されているだけの状態となり、搬送機構によって基板把持機構から取り出される。
【0032】
図9(a)は、基板支持部材2及びクランプ(基板把持部)28の変形例を示す拡大平面図であり、図9(b)は図9(a)に示す基板支持部材2及びクランプ28の側面図である。なお、図9(a)および図9(b)は基板支持部材2の一部のみを示す。
【0033】
基板支持部材2の上端には、基板Wの周端部に当接する基板把持部としての円筒状のクランプ28と、該クランプ28から基板支持部材2の軸心に向かって延びる位置決め部46とが設けられている。位置決め部46の一端はクランプ28の側面に一体的に接続され、他端は基板支持部材2の軸心上に位置している。この位置決め部46の中心側の端部は、基板支持部材2と同心の円に沿って湾曲した側面46aを有している。すなわち、位置決め部46の中心側端部の水平断面は、基板支持部材2と同心の円の一部から構成されている。基板支持部材2の上端は、下方に傾斜するテーパ面となっている。
【0034】
図10(a)は基板を把持した状態を示す平面図であり、図10(b)は基板の把持を開放した状態を示す平面図である。基板Wは、基板支持部材2の上端(テーパ面)上に載置され、そして、基板支持部材2を回転させることにより、クランプ28を基板Wの周端部に当接させる。これにより、図10(a)に示すように、基板Wがクランプ28に把持される。基板支持部材2を反対方向に回転させると、図10(b)に示すように、クランプ28が基板Wから離れ、これにより基板Wが開放される。このとき、基板支持部材2の回転に伴って、基板Wの周端部は位置決め部46の中心側端部の側面46aに摺接する。したがって、位置決め部46の側面46aによって、基板支持部材2の回転に伴って基板Wの位置が変位することが防止され、その後の基板搬送の安定性を向上させることができる。
【0035】
図11(a)は、本発明の第2の実施形態に係る基板把持機構の一部を示す断面図であり、図11(b)は図11(a)に示す基板支持部材を示す側面図である。なお、特に説明しない本実施形態の構成および動作は第1の実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。
【0036】
基板支持部材2の側面には、螺旋溝47が形成されている。この螺旋溝47は基板支持部材2の軸心に対してやや傾斜した部分を有している。またこの螺旋溝47の上部および下部は、基板支持部材2の軸心と平行に延びている。保持部1bには螺旋溝47に緩やかに係合するピン48が設けられている。このような構成によれば、基板支持部材2が上下動すると、螺旋溝47とピン48との係合により基板支持部材2がその軸心周りに所定の角度だけ回転する。基板支持部材2が回転すると、クランプ28は基板Wの周端部に接触および離間する方向に移動する。したがって、本実施形態では、螺旋溝47およびピン48が、基板支持部材2をその軸心周りに回転させてクランプ28により基板Wを把持させる把持機構(回転機構)として機能する。この把持機構(回転機構)は、基板支持部材2の上下動によって動作する。
【0037】
図12は、第1の実施形態に係る基板把持機構に回転カバー50を取り付けた例を示す縦断面図である。図12の左半分は、基板を把持している状態を示し、右半分は、基板の把持を開放している状態を示している。なお、図12では、回転軸5、円筒体7、リフト機構20などは模式的に記載されているが、それらの詳細な構成は図1に示されている通りである。また、図12は回転カバー50の縦断面を示している。
【0038】
図12に示すように、回転カバー50は、基台1の上面に固定され、基板Wを囲むように配置されている。回転カバー50の縦断面形状は径方向内側に傾斜している。回転カバー50の上端は基板Wに近接しており、回転カバー50の上端の内径は、基板Wの直径よりもやや大きく設定されている。また、回転カバー50の上端には、基板支持部材2の外周面形状に沿った切り欠き50aが各基板支持部材2に対応して形成されている。回転カバー50の底面には、斜めに延びる液体排出孔51が形成されている。
【0039】
このような回転カバー50が取り付けられた基板把持機構は、液体を使用する基板処理装置に好適に適用することができる。例えば、基板を回転させながら、基板の上面に洗浄液を供給する基板洗浄装置に上記基板把持機構を適用することができる。基板の上面に供給された洗浄液(例えば純水)は、遠心力によって基板の周端部から飛び出し、基板と同一の回転速度で回転する回転カバー50の内周面に捉えられる。回転カバー50の内周面は傾斜しているので、洗浄液は遠心力によって強制的に下方に流れ、そして、回転カバー50の液体排出孔51から下方に排出される。このように、回転カバー50は基板と一体に回転するので液体の跳ね返りが少なく、したがって基板上にウォーターマークが形成されることを防止することができる。基板を洗浄するために、図12に示す基板把持機構を用いることで、複数の基板支持部材2の上端に設けられた基板把持部28によって基板Wを押圧することで基板Wを把持し、基板把持部28に把持された基板Wを回転させながら、基板W上に洗浄液を供給して基板Wを洗浄し、ついで、複数の基板支持部材2を上昇させて基板把持部28を基板Wから離間させるまでの一連の操作が、複数の基板支持部材2を上下動させる動作により行われるようにすることができ、機械的な悪影響を与えるような外力を加えることなく基板を洗浄することができる。
【0040】
上述した基板把持機構は、基板洗浄装置以外にも様々なタイプの処理装置に適用することができる。例えば、図12に示す基板把持機構を、ロタゴニタイプの乾燥装置に適用することができる。このロタゴニ乾燥は、並列する2つのノズルからそれぞれIPA蒸気(イソプロピルアルコールとNガスとの混合気)と純水を回転する基板の表面に供給しながら、2つのノズルを基板の径方向に沿って移動させて基板の表面を乾燥させる方法である。このロタゴニ乾燥は、ウォーターマークの形成を抑制する乾燥方法として注目されている。基板Wを乾燥するために、図12に示す基板把持機構を用いることで、複数の基板支持部材2の上端に設けられた基板把持部28によって基板Wを押圧することで基板Wを把持し、基板把持部28に把持された基板Wを回転させながら、基板W上にイソプロピルアルコールを含むIPA蒸気を供給して基板Wを乾燥し、ついで、複数の基板支持部材2を上昇させて基板把持部28を基板から離間させるまでの一連の操作が、複数の基板支持部材2を上下動させる動作により行われるようにすることができ、悪影響を与えるような機械的な外力を加えずに基板を取り扱うことができる。さらに、乾燥時に、遠心力で飛散する水滴などの影響を低減させることが可能となる。
【0041】
上述した実施形態に係る基板把持機構は、4つの基板支持部材すべてが回転による基板把持力を発生するように構成されているが、例えば、4つのうちの互いに対向する2つは上下方向にのみ移動可能で、その軸心周りには回転しないように構成することもできる。この場合は、回転しない2本の基板支持部材を基板の位置決めとして機能させることができる。また、基板支持部材は3つでもよく、または5つ以上の基板支持部材を有してもよい。3つの基板支持部材を設ける場合は、そのうちの1つのみに上述した回転機構(磁石または螺旋溝)を設けることができる。
【0042】
さらに、上述した第1の実施形態では、第1の磁石31が基台1に取り付けられ、第2の磁石32および第3の磁石33が基板支持部材2に取り付けられているが、本発明はこの配置に限定されない。例えば、第1の磁石31を基板支持部材2に取り付け、第2の磁石32および第3の磁石33を基台1に取り付けてもよい。
【0043】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲とすべきである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る基板把持機構を示す縦断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る基板把持機構を示す平面図である。
【図3】リフト機構が上昇した状態を示す縦断面図である。
【図4】図4(a)は、図2に示す基板支持部材およびアームの一部を示す平面図であり、図4(b)は、図2のA−A線断面図であり、図4(c)は図4(b)のB−B線断面図である。
【図5】第2の磁石と第3の磁石の配置を説明するための模式図である。
【図6】図6(a)は、リフト機構により基板支持部材を上昇させたときの基板支持部材およびアームの一部を示す平面図であり、図6(b)は、リフト機構により基板支持部材を上昇させたときの図2のA−A線断面図であり、図6(c)は図6(b)のC−C線断面図である。
【図7】図7(a)は、クランプ位置にある基板支持部材を別の角度から見た側面図であり、図7(b)は図7(a)のD−D線断面図である。
【図8】図8(a)は、アンクランプ位置にある基板支持部材を別の角度から見た側面図であり、図8(b)は図8(a)のE−E線断面図である。
【図9】図9(a)は、基板支持部材及びクランプの変形例を示す拡大平面図であり、図9(b)は図9(a)に示す基板支持部材及びクランプの側面図である。
【図10】図10(a)は基板を把持した状態を示す平面図であり、図10(b)は基板の把持を開放した状態を示す平面図である。
【図11】図11(a)は、本発明の第2の実施形態に係る基板把持機構の一部を示す断面図であり、図11(b)は図11(a)に示す基板支持部材を示す側面図である。
【図12】本実施形態に係る基板把持機構に回転カバーを取り付けた例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 基台
2 基板支持部材
5 回転軸
6 軸受
7 円筒体
9 架台
10 フレーム
11,12 プーリー
14 ベルト
15 モータ
20 リフト機構
21 第1の気体チャンバ
22 第2の気体チャンバ
24 第1の気体流路
25 第2の気体流路
27 スプリング
28 クランプ(基板把持部)
29 支持ピン
31 第1の磁石
32 第2の磁石
33 第3の磁石
40 溝
41 突起部
46 位置決め部
47 螺旋溝
48 ピン
50 回転カバー
51 液体排出孔



【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
前記基台に支持され、該基台に対して上下方向に相対移動可能な複数の基板支持部材と、
前記基板支持部材の上端にそれぞれ設けられた基板把持部と、
前記基板支持部材を上下動させる駆動機構と、
前記基板支持部材の下降と連動して、少なくとも1つの前記基板支持部材上の前記基板把持部を基板に押圧し、前記基板支持部材の上昇と連動して、前記基板把持部を基板から離間させる押圧機構とを備えることを特徴とする基板把持機構。
【請求項2】
前記押圧機構は、前記基板支持部材の上下動と連動して、前記少なくとも1つの基板支持部材をその軸心周りに回転させる回転機構であることを特徴とする請求項1に記載の基板把持機構。
【請求項3】
前記基板把持部は、前記基板支持部材の軸心から偏心して配置された円筒状のクランプであることを特徴とする請求項2に記載の基板把持機構。
【請求項4】
前記押圧機構は、
前記少なくとも1つの前記基板支持部材および前記基台のうちのいずれか一方に取り付けられた第1の磁石と、
前記少なくとも1つの前記基板支持部材および前記基台のうちの他方に取り付けられた第2の磁石とを備え、
前記第1の磁石は、前記基板支持部材の上下動に伴って、前記第2の磁石と近接した位置となるように配置され、
前記第1の磁石と前記第2の磁石が近接したときに、前記第1の磁石と前記第2の磁石との間に発生する磁力により前記基板把持部が基板の周端部を押圧する方向に前記基板支持部材を移動させることを特徴とする請求項1に記載の基板把持機構。
【請求項5】
前記第2の磁石が取り付けられている前記少なくとも1つの前記基板支持部材または前記基台には、第3の磁石がさらに取り付けられており、
前記第1の磁石は、前記基板支持部材の上下動に伴って、前記第2の磁石および前記第3の磁石のいずれか一方と近接した位置となるように配置されていることを特徴とする請求項4に記載の基板把持機構。
【請求項6】
前記第1の磁石と前記第2の磁石が近接したときに、前記第1の磁石と前記第2の磁石との間に発生する磁力により前記基板把持部が基板の周端部を押圧する方向に前記基板支持部材をその軸心周りに回転させ、
前記第1の磁石と前記第3の磁石が近接したときに、前記第1の磁石と前記第3の磁石との間に発生する磁力により前記基板把持部が基板から離間する方向に前記基板支持部材をその軸心周りに回転させることを特徴とする請求項5に記載の基板把持機構。
【請求項7】
前記第2の磁石および前記第3の磁石は、互いに上下方向に離間して配置されていることを特徴とする請求項5に記載の基板把持機構。
【請求項8】
前記少なくとも1つの基板支持部材には、その軸心に沿って延びる溝が形成されており、
前記基台には、前記溝に緩やかに係合する突起部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の基板把持機構。
【請求項9】
前記押圧機構は、
前記少なくとも1つの基板支持部材に形成された螺旋溝と、
前記基台に設けられた、前記螺旋溝に係合するピンとを有することを特徴とする請求項1に記載の基板把持機構。
【請求項10】
前記複数の基板支持部材は少なくとも4つの基板支持部材であり、
前記基板支持部材のうちの互いに対向する2つの基板支持部材は、回転することなく上下動することを特徴とする請求項2に記載の基板把持機構。
【請求項11】
前記基台および前記複数の基板支持部材を回転させる機構をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の基板把持機構。
【請求項12】
基台と、
前記基台に支持された複数の基板支持部材と、
前記基板支持部材の上端にそれぞれ設けられた基板把持部および位置決め部と、
前記基板支持部材の少なくとも1つをその軸心周りに回転させる回転機構とを備え、
前記基板把持部は、前記基板支持部材の軸心から偏心して配置され、
前記位置決め部は、前記基板支持部材と同心の円に沿って湾曲する側面を有することを特徴とする基板把持機構。
【請求項13】
基板を把持する方法において、
複数の基板支持部材の上端に設けられた基板把持部により基板を押圧することで該基板を把持する把持工程と、
該複数の基板支持部材を上昇させて前記基板把持部を基板から離間させる離間工程とを有し、
前記把持工程と前記離間工程とが、前記複数の基板支持部材を上下動させる動作により行われることを特徴とする基板把持方法。
【請求項14】
基板を把持する方法において、
複数の基板支持部材上に基板を載置する工程と、
前記複数の基板支持部材を下降させて、該複数の基板支持部材の上端に設けられた基板把持部により基板を押圧することで該基板を把持する把持工程と、
前記複数の基板支持部材を上昇させて、前記基板把持部を基板から離間させる離間工程とを有し、
前記把持工程と前記離間工程とが、前記複数の基板支持部材を上下動させる動作により行われることを特徴とする基板把持方法。
【請求項15】
前記把持工程は、前記複数の基板支持部材の少なくとも1つを回転させることにより、前記基板把持部を基板に押圧することを特徴とする請求項13または14に記載の基板把持方法。
【請求項16】
前記複数の基板支持部材のうちの互いに対向する2つの基板支持部材は、回転することなく上下動することを特徴とする請求項15に記載の基板把持方法。
【請求項17】
基板を把持しながら洗浄する方法において、
回転カバーに覆われた複数の基板支持部材の上端に設けられた基板把持部により基板を押圧することで該基板を把持する把持工程と、
前記基板把持部に把持された基板を回転させながら、該基板上に洗浄液を供給して該基板を洗浄する洗浄工程と、
前記複数の基板支持部材を上昇させて前記基板把持部を基板から離間させる離間工程とを有し、
前記把持工程と前記離間工程とが、前記複数の基板支持部材を上下動させる動作により行われることを特徴とする方法。
【請求項18】
基板を把持しながら乾燥する方法において、
回転カバーに覆われた複数の基板支持部材の上端に設けられた基板把持部により基板を押圧することで該基板を把持する把持工程と、
前記基板把持部に把持された基板を回転させながら、該基板上にイソプロピルアルコールを含む蒸気を供給して該基板を乾燥する乾燥工程と、
前記複数の基板支持部材を上昇させて前記基板把持部を基板から離間させる離間工程とを有し、
前記把持工程と前記離間工程とが、前記複数の基板支持部材を上下動させる動作により行われることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−295751(P2009−295751A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147220(P2008−147220)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】