説明

塗布方法及び塗布装置

【課題】液面の位置を正確に検出して、高品質な塗膜を形成することができるスリットコート式の塗布方法及び塗布装置を提供する。
【解決手段】液槽に貯留された塗布液をノズルから流出させると共に当該ノズルと基板を前記基板の塗布面の面方向に相対移動させて塗布液を基板に塗布する塗布方法において、前記液槽の液面77に対して鉛直方向下方から検査光76を照射して液面77からの反射光78を受光して反射光78の受光位置から液面77の位置を検出する際に、前記検査光76が透過する第1透過部74及び前記反射光78が透過する第2透過部75の少なくとも何れか一方を前記液面77に対して傾斜させて液面77の位置を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルの先端から所定の塗布液を流出して基板表面に塗布膜を形成するスリットコート式の塗布方法及び塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハーやガラス基板等の基板にレジスト材料や絶縁材料などの所定の塗布溶液(溶剤)を塗布する塗布装置としては、例えば、毛細管現象により塗布ヘッドのノズルの先端から塗布溶液を流出させて、基板表面に塗布溶液を塗布するものがある。具体的には、例えば、塗工液が貯留された貯留容器内に口金ノズルを配し、毛細管現象により口金ノズルの先端から塗工液を流出させて被塗工物の表面に塗工液を塗布するものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−164795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような塗布装置では、基板に塗布溶液を塗布する際、高品質の塗膜を均一に形成するためには、ノズルを有する塗布ヘッド(口金ノズル)に貯留される塗布溶液の量を正確に把握する必要があるが、フロートなどの液面検出装置を配置するスペースはなく、また、液面の上方に近接して基板や基板の搬送装置が配置されているので液面検出センサーを配置することはできない。
【0005】
よって、液面の鉛直方向下方からレーザー光を用いて液面を非接触で検出する必要があるが、乱反射等の影響により液面の位置を正確に把握することができないという問題がある。
【0006】
このような問題は、液面の下方からレーザー光を用いて液面の位置を検出する際に同様に発生するものである。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、液面の位置を正確に検出して、高品質な塗膜を形成することができるスリットコート式の塗布方法及び塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決する本発明は、液槽に貯留された塗布液をノズルから流出させると共に当該ノズルと基板を前記基板の塗布面の面方向に相対移動させて塗布液を基板に塗布する塗布方法において、前記液槽の液面に対して鉛直方向下方から検査光を照射して液面からの反射光を受光して反射光の受光位置から液面の位置を検出する際に、前記検査光が透過する第1透過部及び前記反射光が透過する第2透過部の少なくとも何れか一方を前記液面に対して傾斜させて液面の位置を検出することを特徴とする塗布方法にある。
かかる本発明の塗布方法では、検査光が透過する第1透過部及び反射光が透過する第2透過部の少なくとも何れか一方を液面に対して傾斜させているので、検査光や反射光の透過部での乱反射が低減され、液面の位置を正確に把握することができる。
【0009】
ここで、前記傾斜は、前記液面と平行な面から前記検査光又は前記反射光と直交する面方向への傾斜であるのが好ましい。これによると、検査光又は反射光が第1透過部又は第2透過部を透過する際に乱反射し難くなり、乱反射が低減される。
【0010】
また、前記検査光を前記第1透過部に対して直交するように照射し、前記反射光を前記第2透過部に直交して透過させるのが好ましい。これにより、検査光が第1透過部を透過する際に乱反射が生じ難くなり、また、反射光が第2透過部を透過する際に乱反射が生じ難くなるので、乱反射に起因した信号が検出されなくなり、液面をより正確に検出できる。
【0011】
また、前記基板の塗布面が、当該基板の鉛直方向下側の面であるのが好ましい。これにより、基板が液槽の上方に近接して配置されていても、液面の位置を正確に検出することができる。
【0012】
さらに本発明は、鉛直方向下側の面に基板を保持する保持テーブルと、該保持テーブルに保持された前記基板の表面に相対向して配置され所定の塗布液が貯留された液槽と、該液槽内に貯留された前記塗布液を前記基板の表面に向かって流出するノズルを有する塗布ヘッドとを具備し、前記保持テーブルと前記塗布ヘッドを前記基板の塗布面の面方向に相対移動させて前記基板に塗布する塗布装置において、前記液槽の液面に対して鉛直方向下方から検査光を照射して液面からの反射光を受光して反射光の受光位置から液面の位置を検出する液面検出手段を具備し、前記検査光が透過する第1透過部及び前記反射光が透過する第2透過部の少なくとも何れか一方が前記液面に対して傾斜していることを特徴とする塗布装置にある。
かかる本発明の塗布装置では、検査光が透過する第1透過部及び反射光が透過する第2透過部の少なくとも何れか一方を液面に対して傾斜させている液面検出手段を具備するので、検査光や反射光の透過部での乱反射が低減され、液面の位置を正確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施形態のスリットコート式塗布装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】一実施形態のスリットコート式塗布装置の概略構成を示す断面図である。
【図3】一実施形態のスリットコート式塗布装置の概略構成を示す断面図である。
【図4】一実施形態の液面検出の結果の一例を示す模式図である。
【図5】一実施形態の液面検出の結果の比較例を示す模式図である。
【図6】一実施形態の塗布方法を示す概略図である。
【図7】一実施形態の塗布方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るスリットコート式塗布装置の概略構成を示す斜視図であり、図2は、スリットコート式塗布装置の概略構成を示す断面図である。図示するように、本実施形態に係るスリットコート式塗布装置10は、例えば、シリコンウェハー、半導体基板等の基板1が保持される保持テーブル20と、保持テーブル20の基板1側に設けられて塗布溶液2が貯留される第1の液槽30と、この第1の液槽30内に配される塗布ヘッド40と、第1の液槽30と同様に塗布溶液2が貯留される第2の液槽50とを具備する。なお、これら保持テーブル20、塗布ヘッド40が配された第1の液槽30及び第2の液槽50は、図示しない密封された装置本体内に配置されている。
【0015】
保持テーブル20は、鉛直方向下側の面に、基板1をその表面が鉛直方向下向きとなるように保持する構成となっている。この保持テーブル20による基板1の保持方法は、特に限定されないが、例えば、真空ポンプ等の吸引による方法が挙げられる。また保持テーブル20は、例えば、図示しない駆動モーター等のテーブル駆動手段によって基板1の面内方向で移動自在に設けられている。
【0016】
第1の液槽30は、塗布ヘッド40が内部に配された状態で所定量の塗布溶液2を貯留可能な容積を有し、その上面には塗布ヘッド40の先端部が露出される開口部31が設けられている。また第1の液槽30は、図示しないが、支持機構により鉛直方向移動可能に支持されている。
【0017】
なおこの第1の液槽30には、第1の液槽30内に塗布溶液2を供給するための供給パイプ32と、塗布溶液2を排出するための排出パイプ33が接続されている。供給パイプ32には、図示しないがポンプ等の送液手段を介して塗布溶液2が備蓄される備蓄タンクに接続されており、所定のタイミングでこの備蓄タンクから塗布溶液2が補充されるようになっている。一方、排出パイプ33には、図示しないがバルブ等の開閉手段が設けられており、必要に応じてこの開閉手段を開放することで、第1の液槽30内の塗布溶液2が排出パイプ33から外部に排出されるようになっている。
【0018】
塗布ヘッド40は、厚さ方向に貫通するスリット状のノズル41が設けられており、このノズル41が鉛直方向上側に向かって開口するように第1の液槽30内に支持されている。
【0019】
そして、第1の液槽30内の塗布溶液2が、毛細管現象によって塗布ヘッド40の下端側からノズル41内に流れ込み、第1の液槽30内の圧力に応じて、塗布ヘッド40の先端面40a(ノズル41の上端側の開口)から所定量の塗布溶液2が突出する。この塗布ヘッド40は、図示しないが鉛直方向移動可能に第1の液槽30に支持されている。つまり、塗布ヘッド40は、第1の液槽30の移動に伴って移動すると共に、第1の液槽30とは独立して鉛直方向移動可能に設けられている。
【0020】
そして、このような塗布ヘッド40を、例えば、塗布溶液2の動粘度、塗布溶液2の基板1に対する濡れ性、基板1に塗布する塗布溶液2の厚さ(塗布膜の厚さ)等を考慮して適宜移動させ、後述するように塗布ヘッド40の先端と基板1の表面との間隔を調整することで、基板1の表面に均一な膜厚の塗布膜を形成する。
【0021】
第2の液槽50は、第1の液槽30と同様に塗布溶液2が貯留されており、連通パイプ60を介して第1の液槽30に接続されている。つまり、第1の液槽30と第2の液槽50との間では、連通パイプ60を介して塗布溶液2の移動が常に可能な状態となっている。したがって、第1の液槽30内の塗布溶液2の液面と第2の液槽50内の塗布溶液2の液面とは、基本的には同一高さとなっている。
【0022】
ここで、第1の液槽30には、その内部に貯留された塗布溶液2の液面の高さを検出するために、液面検出部70が設けられている。
【0023】
液面検出部70は、第1の液槽30に隣接して液面検出用の補助槽71を具備し、第1の液槽30と補助槽71とは、両者が同一液面となるように連通部72で連通されている。よって、補助槽71の液面は、第1の液槽30の液面であり、請求項での液槽の液面に相当する。
【0024】
補助槽71の下側には、レーザー光からなる検査光を液面に向かって照射して液面からの反射光を受光して反射光の受光位置から液面の位置を検出する検出センサー73が設けられており、補助槽71の底部には検出センサー73からの検出光を透過させるための第1透過部74と反射光を透過させるための第2透過部75とが設けられている。
【0025】
ここで、液面検出部70の図2の断面に直交する断面を図3に示す。図3に示すように、透明部材からなる第1透過部74及び第2透過部75は、それぞれ検査光76及び検査光76の液面77での反射光78と直交又は略直交するように傾斜している。すなわち、検査光76は、液面77に対して傾斜して照射されるが、第1透過部74は、液面77と平行な面に対して傾斜して検査光76に対して直交する面となっている。これにより、透過部が液面77と平行な面の場合と比較して検査光76の第1透過部74を透過する際の乱反射光がほぼ排除される。ここで、乱反射光とは、透過の際に透過部により屈折された光なども含むものであり、検査光76が1本のレーザー光として液面77に到達することになる。
【0026】
なお、第1透過部74が液面77と平行な面から傾斜すれば、特に、検査光76と直交する方向に傾斜すれば、検査光76と正確に直交しなくても、同様な効果が得られることになり、本発明は、第1透過部74が検査光76と正確に直交していない場合も含むものである。また、傾斜の程度は、検査光76の入射角と同程度となるのが好ましいが、だいたい20°以下の範囲で設定される。
【0027】
また、第2透過部75の傾斜に関しても第1透過部74と同様であり、反射光78に対して直交するようになっている。すなわち、反射光78は液面77に対して傾斜して反射されるが、第2透過部75は、液面77と平行な面に対して傾斜して反射光78に対して直交する面となっている。これにより、透過部が液面77と平行な面の場合と比較して反射光78の第2透過部75を透過する際の乱反射光がほぼ排除される。ここで、乱反射光とは、透過の際に透過部により屈折された光なども含むものであり、1本の反射光78であればそのまま検出センサー73に受光されることになる。
【0028】
かかる液面検出部70では、検出センサー73からレーザー光からなる検査光76を照射し、液面77からの反射光78の受光位置から液面77の位置を検出するが、反射光78が理想的には1本になり、すなわち、本来の反射光78とは別の擬似的な光の受光が排除されるので、液面77の位置をより正確に検出することができる。
【0029】
このような液面検出は、以下で説明するような塗布工程を行う前の塗布溶液2の補充の際や塗布工程での液面高さ調整などの際に行うものである。
【0030】
ここで、上述したように、第1の液槽30内に備蓄タンクから塗布溶液2を補充する際に、液面高さを検出した結果を図4に示す。図4(a)は、補充開始時の液面高さを示すものであり、図4(b)は補充途中の液面高さ、図4(c)は補充終了間際の液面高さである。図4は間欠的にピークを示したが、実際には連続的に測定されるものであり、(a)から(c)まででの液面の移動は約1mm程度であるが、図示のようにピークが1つとして検出され、液面高さが正確に把握できるものである。
【0031】
これに対し、第1透過部及び第2透過部を液面と平行にした場合の測定結果の例を図5に示す。図5は、補充の途中でピークが乱れた状態を示している。このように、液面位置を示すピークが複数検出されてしまい、液面77の位置を正確に把握できなくなり、塗布溶液2が溢れてしまうなどの不都合が生じる。
【0032】
このように、本実施形態では、第1透過部74及び第2透過部75をそれぞれ検査光76及び反射光78と略直交するように傾斜させることにより、液面77の位置を正確に把握することができるが、第1透過部74及び第2透過部75の何れか一方を傾斜させて他方を液面77と平行としても、正確さは多少劣るものの、同様な効果が得られる。また、このように一方のみを傾斜させる場合には、上述した作用効果を考慮すると、第1透過部74を傾斜させるのが効果が顕著となると予想される。
【0033】
また、本実施形態では、第1の液槽30に隣接して補助槽71を設けたが、スペースが許せば、第1の液槽30に直接、透過部74,75や検出センサー73を設けてもよい。また、補助槽71を設けたとしても、連通部72の構成も上述したものに限定されず、例えば、隔壁全体が連通していてもよい。
【0034】
さらに、本実施形態では、第1の液槽30の液面検出のための液面検出部70を説明したが、これに追加して又はこれに代わって第2の液槽50の液面を検出する液面検出部を設けてもよいことはいうまでもない。
【0035】
そして、詳しくは後述するが、本発明のスリットコート式塗布装置10では、この第2の液槽50の高さ、つまり第2の液槽50内の塗布溶液2の塗布面の高さを、塗布ヘッド40の移動に応じて適宜制御している(高さ制御手段)。すなわち、第2の液槽50の高さを制御して第2の液槽50の移動による第1の液槽30内の圧力変化を抑えることで、塗布ヘッド40のノズル41から流出する塗布溶液2の量を適宜調整している。
【0036】
このため第2の液槽50の容積は、比較的大きいことが好ましく、少なくとも第1の液槽の容積よりも大きいことが望ましい。これにより、第2の液槽50の移動による第1の液槽30内の圧力変化を比較的容易に抑えることができる。
【0037】
また、第1の液槽30内の圧力変化は、振動によっても変化する場合がある。このため第2の液槽50は、例えば、第1の液槽30から可及的に離れた位置に、第2の液槽50の移動に伴う振動が第1の液槽30に伝搬しないように配設されていることが好ましい。
【0038】
以下、このようなスリットコート式塗布装置を用いた塗布方法について説明する。なお、図6及び図7は、スリットコート式塗布装置の動作を示す概略図である。
【0039】
まず図6(a)に示すように、保持テーブル20の下面に基板1を固定し、塗布ヘッド40の先端面40aと基板1の表面との間隔d1が所定の間隔となるように、第1の液槽30を上昇させる。このとき、塗布ヘッド40は第1の液槽30に固定されており、第1の液槽30に対する塗布ヘッド40の高さは、先端面40aから所定量の塗布溶液2が突出されるように調整されている。
【0040】
また第1の液槽30と同時に第2の液槽50を上昇させる。すなわち、第1の液槽30内の塗布溶液2の液面と、第2の液槽50内の塗布溶液2の液面との高さを一致させた状態で、第1の液槽30内の塗布溶液2の液面高さh1を変化させることなく、第1及び第2の液槽30,50を上昇させる。これにより、塗布ヘッド40の先端面40aに突出する塗布溶液の高さh2が一定に保持される。
【0041】
なお本実施形態では、第1の液槽30を鉛直方向に上昇させることで、塗布ヘッド40の先端面40aと基板1の表面との間隔を調整しているが、勿論、第1の液槽30を固定したまま、保持テーブル20を鉛直方向に下降させるようにしてもよい。
【0042】
次に、塗布ヘッド40の先端面40aから塗布溶液2を突出させた状態で、図6(b)に示すように、塗布ヘッド40のみを上昇させて塗布溶液2を基板1の表面に接触させる。塗布ヘッド40の上昇に伴って塗布溶液2の液面高さh2が若干減少することがあるため、塗布ヘッド40の先端面40aと基板1の表面との間隔d1が、塗布溶液2の液面高さh2の半分程度の間隔となるまで、塗布ヘッド40を上昇させることが好ましい。
【0043】
例えば、塗布ヘッド40の先端面40aから突出する塗布溶液2の液面高さh2が20μm程度である場合(図6(a))、塗布ヘッド40の先端面40aと基板1の表面との間隔d1が10μm程度となるように塗布ヘッド40を上昇させることが好ましい。これにより、塗布溶液2を基板1の表面に確実に接触させることができる。
【0044】
次に、図7(a)に示すように、塗布ヘッド40を下降させて塗布ヘッド40の先端面40aと基板1の表面との間隔d1を調整する。すなわち、基板1の表面に形成する塗布膜の厚さに応じて塗布ヘッド40と基板1の表面との間隔d1を調整する。例えば、160000Åの厚さの塗布膜を形成する場合、塗布ヘッド40を下降させて、塗布ヘッド40の先端面40aと基板1の表面との間隔が180μm程度になるように調整する。
【0045】
次いで、このように間隔d1を調整した状態で、図7(b)に示すように、保持テーブル20を基板1の面方向(水平方向)に直線移動させることで、基板1の表面への塗布溶液2の塗布が開始される。すなわち基板1の表面に対する塗布膜3の形成が開始される。そして、保持テーブル20の移動に伴って、塗布溶液2が塗布ヘッド40のノズル41から連続的に流出し、基板1の全面に塗布膜3が形成される。
【0046】
ここで、上述したように塗布ヘッド40を下降させると(図7(a))、この塗布ヘッド40が第1の液槽30の塗布溶液2内に沈み込むことで、第1の液槽30内に圧力変化が生じる。すなわち、第1の液槽30内の圧力が上昇して塗布ヘッド40のノズル41内に流入する塗布溶液2の量が増加してしまう。
【0047】
このため、上述したように塗布ヘッド40を下降させた後、保持テーブル20を移動させて塗布溶液2の塗布を開始すると(図7(b))、基板1の表面に形成される塗布膜3の厚さが部分的に厚くなってしまう虞がある。なおこのような膜厚の変化は、塗布溶液2の粘度等の条件によっても異なるが、塗布開始後暫くして発生する。
【0048】
このような塗布膜3の膜厚変化を防止するために、本発明では、塗布ヘッド40を下降させる際(図7(a))、塗布ヘッド40の下降に応じて第2の液槽50を同時に下降させることで、第1の液槽30内の圧力(第1の液槽30内の塗布溶液2の液面高さ)の上昇を防止している。これにより、塗布ヘッド40のノズル41内に流入する塗布溶液2の増加を防止することができる。つまり塗布ヘッド40の先端面40aから流出する塗布溶液2の増加を防止することができる。よって、基板1の表面に、均一な膜厚で塗布膜3を形成することができる。
【0049】
また、このように第2の液槽50を設けて、この第2の液槽50の高さを適宜制御することで、塗布膜3の膜厚を均一化できる塗布装置を、例えば、サックバックバルブ等を設けるのに比べて比較的安価で実現することができる。
【0050】
なお本実施形態では、第2の液槽50の高さを、塗布ヘッド40の移動に応じて制御するようにしたが、さらに第1の液槽30内の塗布溶液2の液面高さh1に応じて制御するようにしてもよい。
【0051】
例えば、基板1の表面に塗布膜3が形成されていくにつれて、第1の液槽30に貯留されている塗布溶液2の量は減少する。ただし、本発明のスリットコート式塗布装置10では、第1の液槽30内の塗布溶液2の減少に伴って第2の液槽50から第1の液槽30に塗布溶液2が補充されるため、減少量はそれほど多くはない。しかしながら、第2の液槽50から塗布溶液2が補充されたとしても第1の液槽30内の塗布溶液2は徐々に減少し、第1の液槽30内の圧力も徐々に減少することになる。このとき、塗布溶液2の動粘度、塗布溶液2の基板1に対する濡れ性等の条件にもよるが、第1の液槽30内の圧力の減少に伴って塗布ヘッド40のノズル41から流出する塗布溶液2の量も徐々に減少することが考えられる。
【0052】
このため、第1の液槽30内の塗布溶液2の量(液面高さh1)に応じて、第2の液槽50の高さをさらに制御するようにしてもよい。具体的には、保持テーブル20を移動させて塗布溶液2の塗布を開始した後、図6(b)中に矢印で示すように、第1の液槽30内の塗布溶液2の量(液面高さ)の低下に伴って、第2の液槽50を上昇させるようにしてもよい。これにより、第2の液槽50から第1の液槽30内に塗布溶液2が流入して、第1の液槽30内の塗布溶液2の液面高さの低下が抑えられ、塗布ヘッド40のノズル41からは、常に略一定の量の塗布溶液2が流出する。したがって、均一な膜厚の塗布膜3を基板1の表面に良好に形成することができる。
【0053】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能なことは言うまでもない。
【0054】
すなわち、上述した実施形態では、塗布ヘッドが第1の液槽中に設けられていたが、このような構成に限定されるものではなく、例えば、第1の液槽を設けずに塗布ヘッドが直接上述した第2の液槽に連結されている塗布装置に上述したような液面検出部を設けてもよく、この場合にも同様に液面を正確に検出してより高品質の塗布膜が得られるという効果を奏する。
【符号の説明】
【0055】
1 基板、 2 塗布溶液、 3 塗布膜、 10 スリットコート式塗布装置、 20 保持テーブル、 30 第1の液槽、 40 塗布ヘッド、 41 ノズル、 50 第2の液槽、 60 連通パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液槽に貯留された塗布液をノズルから流出させると共に当該ノズルと基板を前記基板の塗布面の面方向に相対移動させて塗布液を基板に塗布する塗布方法において、
前記液槽の液面に対して鉛直方向下方から検査光を照射して液面からの反射光を受光して反射光の受光位置から液面の位置を検出する際に、前記検査光が透過する第1透過部及び前記反射光が透過する第2透過部の少なくとも何れか一方を前記液面に対して傾斜させて液面の位置を検出することを特徴とする塗布方法。
【請求項2】
前記傾斜は、前記液面と平行な面から前記検査光又は前記反射光と直交する面方向への傾斜であることを特徴とする請求項1に記載の塗布方法。
【請求項3】
前記検査光を前記第1透過部に対して直交するように照射し、前記反射光を前記第2透過部に直交して透過させることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布方法。
【請求項4】
前記基板の塗布面が、当該基板の鉛直方向下側の面であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の塗布方法。
【請求項5】
鉛直方向下側の面に基板を保持する保持テーブルと、該保持テーブルに保持された前記基板の表面に相対向して配置され所定の塗布液が貯留された液槽と、該液槽内に貯留された前記塗布液を前記基板の表面に向かって流出するノズルを有する塗布ヘッドとを具備し、前記保持テーブルと前記塗布ヘッドを前記基板の塗布面の面方向に相対移動させて前記基板に塗布する塗布装置において、前記液槽の液面に対して鉛直方向下方から検査光を照射して液面からの反射光を受光して反射光の受光位置から液面の位置を検出する液面検出手段を具備し、前記検査光が透過する第1透過部及び前記反射光が透過する第2透過部の少なくとも何れか一方が前記液面に対して傾斜していることを特徴とする塗布装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−194515(P2010−194515A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45377(P2009−45377)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】