説明

外観検査方法、および外観検査装置

【課題】前方散乱光と後方散乱光のどちらか一方を他方に比べてより効率よく選ぶこと。
【解決手段】被検査体に対面する対物レンズと、この対物レンズを通じて被検査体に照明光の光束を照射する光源と、光源と対物レンズとの光路に置かれ、かつ照明光の光軸を中心として光透過領域と光不透過領域を点対称に設けた照明側空間フィルタと、対物レンズで集められた被検査体からの反射集光を受光するイメージセンサーと、対物レンズと前記イメージセンサーとの光路に置かれ、かつ回折・散乱光を含む反射光から前方散乱光または後方散乱光を選ぶ受光側空間フィルタを備え、受光側空間フィルタは、反射光の光軸を中心として光透過領域と光不透過領域を点対称に設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対物レンズを通して照明光を被検査体の試料に照射し、試料からの反射光・回折光・散乱光を同一の対物レンズで集光して試料の検査像を結像させる反射像観察光学系を有する外観検査方法または外観検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
照明光を試料に照射して粒子など試料上の微小な物体の画像を検出する場合、このような微小な物体からの反射光は一般に、背景となる試料表面からの反射光に比べて非常に弱いため、できる限り検出したい微小な物体以外からの反射光・回折光・散乱光などを除去する必要がある。
【0003】
これら微小物体からの散乱光の特性として、例えば非特許文献1(朝倉書店1968年10月25日発行の光学技術ハンドブック)の1116ページに記載されているように、散乱光の配光は粒子が小さい時は前方散乱光と後方散乱光が等しいが、粒子が大きくなると前方散乱光の方が強くなる、ということが一般に知られている。
【0004】
そこで、この特性を利用して、照明に用いる光の波長と同程度かやや小さい径の物体のみを効率よく検出し、それ以外の反射・回折・散乱成分をできる限り抑制したい場合には、前方散乱光をより多く捕捉することが望ましいことが分かる。また、照明に用いる光の波長よりも十分に小さい径の物体のみを効率よく検出したい場合には、前方散乱光と後方散乱光は同じ程度で発生するが、より大きな径の物体からの散乱光が前方散乱光をより多く発生することを考慮すると、これと弁別して検出するためには後方散乱光のみを選ぶのが望ましいことが分かる。
【0005】
このような試料面上の微小な物体の画像を得る手段としては対物レンズの拡大作用によって試料の反射像を得る反射像観察光学系が用いられる。このような反射像観察光学系としては、対物レンズを通して照明光を試料に照射し、試料からの反射光・回折光・散乱光を同一の対物レンズで捕捉して試料像を結像させる方式と、対物レンズ外から照明光を試料に照射し、試料からの回折光・散乱光を対物レンズで捕捉して試料像を結像させる方式の2方式が一般に用いられている。
【0006】
後者の対物レンズ外から照明光を照射する方式は試料からの正反射光を除外して回折光・散乱光のみからなる画像(暗視野像)を観察する場合に用いられる。この方式の光学系においては、例えば特許文献1や特許文献2のように試料上の微小な物体からの散乱光のうち前方散乱光と後方散乱光とを異なる効率で捕捉するための技術が用いられている。対物レンズ外から照明光を照射する方式では、例えば特許文献1や特許文献2のように、照明光が特定の入射方向や入射角となるように構成されており、これらを任意に変化させることは一般に困難である。
【0007】
これに対し、前者の対物レンズを通して照明光を試料に照射する方式は、照明光によって試料から生じる正反射光・回折光・散乱光の全てを捕捉して得られる画像(明視野像)を得る場合に用いられることが多い。
【0008】
この対物レンズを通して照明光を試料に照射する方式では、垂直入射から対物レンズの開口の最外周を用いた大きな入射角まで広い範囲で照明光の入射角を容易に制御できることから、より広い観察対象を扱える利点がある。
【0009】
しかしながら、従来のこの方式では、照明光束は対物レンズの光軸に対して回転対称となるように構成されていたため、試料上の物体からの散乱光に対し、前方散乱光と後方散乱光とを均等に捕捉することしかできず、微小な物体を効率よく検出できない問題があった。
【0010】
【特許文献1】特開平8−304296号公報
【特許文献2】特開2000−105203号公報
【非特許文献1】朝倉書店1968年10月25日発行の光学技術ハンドブック
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、試料上に存在する種々の構造体から生じる散乱光のうち、前方散乱光と後方散乱光のどちらか一方を他方に比べてより効率よく捕捉することを可能とした反射像観察光学系を有する外観検査方法または外観検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、被検査体に対面する対物レンズを通じて照明光の光束を被検査体に照射し、被検査体から反射する回折・散乱光を含む反射光を前記対物レンズで集光し、この集光から前方散乱光または後方散乱光を選ぶようにしたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、前方散乱光と後方散乱光のどちらか一方を他方に比べてより効率よく選ぶことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1には本発明の実施例である反射像観察光学系を搭載した外観検査装置の構成を示す。
【0015】
本実施例の外観検査装置は、水平2次元方向に移動可能なXYステージ1上に設置された垂直方向と、水平2次元上で回転移動可能なZθステージ2上に被検査試料である半導体ウェーハ3が固定されている。
【0016】
半導体ウェーハ3の上方には、照明用の光源4からの照明光を半導体ウェーハ3側へ向けるハーフミラー6があり、半導体ウェーハ3上で反射された照明光は、対物レンズ5を経て半導体ウェーハ3を照明する。半導体ウェーハ3からの反射光は対物レンズ5、ハーフミラー6を経て、検出光としてイメージセンサー7で受光される構成となっている。また別のハーフミラー8で分岐された光は自動焦点検出手段9に入り、最適焦点位置を算出し、Zステージに移動指令を与え、最適フォーカスで画像が検出できるようになっている。イメージセンサー7で受光された検出光はA/D変換器10を通じてデジタル画像信号に変換され、最初の走査領域で検出した画像信号を画像記録手段11に参照画像として記録させた後、次に検出された検出画像を画像比較手段12にて比較する。画像比較手段12で算出された結果をもとに欠陥位置判定手段13により欠陥位置を特定する。
【0017】
図2に図1に示した反射像観察光学系のより詳細な構成を示す。
【0018】
照明用の光源4から照射した光は、照明側瞳面に配置された照明側空間フィルタ14の透明領域を透過する。照明側空間フィルタ14の前/後にレンズ141、142が置かれる。レンズ141は入射側、レンズ142は放出側である。
【0019】
照明側空間フィルタ14を透過した照明光は、ハーフミラー6で反射され、対物レンズ5を経て、半導体ウェーハ3を照明する。半導体ウェーハ3からの反射光は再び同一の対物レンズ5で集光され、ハーフミラー6を透過する。透過した光は、結像側瞳面に配置された受光側空間フィルタ15により光束を抽出して、画像検出系のイメージセンサー7に試料像を結像させる構成となっている。受光側空間フィルタ15の前/後にレンズ150、151が置かれる。レンズ150は入射側、レンズ151は放出側である。
【0020】
図3に、反射像観察光学系の光路上に配置する照明側空間フィルタ14、および受光側空間フィルタ15の一例を示す。図3の(A)は照明側空間フィルタ、図3の(B)(C)は受光側空間フィルタを示す。(B)と(C)は、光透過領域と光不透過領域の位置を切り替えたところを示している。
【0021】
照明側空間フィルタ14、および受光側空間フィルタ15は、光軸を中心として光透過領域と光不透過領域が交互に設けられている。図3に示す例では光透過領域が3個、光不透過領域が3個で、全体として6個の放射状領域に分割されている。
【0022】
照明側空間フィルタ14の光透過領域aが、光不透過領域bよりも狭い開き角度になっている。受光側空間フィルタ15も、光透過領域a’が、光不透過領域b'よりも狭い開き角度になっている。また、照明側空間フィルタ14、および受光側空間フィルタ15は、中央部、すなわち光軸の領域が光不透過の部分となっている。
【0023】
図4は対物レンズ周辺での光の経路の拡大図である。
【0024】
図2に示すように光源4より照射された照明光は、照明側瞳面に配置された照明側空間フィルタ14の光透過領域aを通過して、半導体ウェーハ3の表面に照射される。半導体ウェーハ3から反射した反射光は、再び対物レンズ5で集光される。
【0025】
照明側空間フィルタ14の光透過領域aを通過した照明光は、図4(1)に示すように対物レンズ5を通じて半導体ウェーハ3上の粒子301に斜めに照射される。粒子301の直径Dが光波長λに比べD/λ=0.1以下と十分小さい場合は、後方散乱光の発生量が多く、前方散乱光の発生量が少ない。そして、結像側の受光側空間フィルタ15が図3の(B)のような場合、図4(1)に示すように試料表面で反射された前方散乱光が受光側空間フィルタ15の不透過領域b'により遮蔽され、後方散乱光が透過領域a’を通過して画像検出系に到達する。
【0026】
前述のように小さな径の粒子の観察には、正反射光と前方反射光を排除して後方散乱光を効率的に取得する方法がよいため暗視野像の観察とする。この場合、前方散乱光により検出した画像に比べ、より鮮明な画像を得ることができる。
【0027】
照明側空間フィルタ14の光透過領域aを通過した照明光は、図4の(2)に示すように対物レンズ5を通じて半導体ウェーハ3上の粒子302に斜めに照射される。粒子302の直径Dが光波長λに比べD/λ=1.3以上とやや大きい場合は、前方散乱光の発生量が多く、後方散乱光の発生量が少ない。そして、結像側の受光側空間フィルタ15が図3の(C)のような場合、試料表面で反射された後方散乱光が受光側空間フィルタ15の不透過領域b'により遮蔽され、前方散乱光が透過領域a’を通過して画像検出系に到達する。
【0028】
大きな径の粒子の観察には、後方散乱光を排除して前方散乱光を効率的に取得する方法がよいため明視野像の観察とする。この場合、後方散乱光を検出して得られる画像に比べ、より鮮明な画像を得ることができる。
【0029】
このように結像側瞳面に配置した受光側空間フィルタ15の光透過領域と光透過領域とを切り替えることにより、試料である半導体ウェーハ3の表面からの前方散乱光または、後方散乱光のうちの一方を他方に比べてより高い効率で選ぶことができる。
【0030】
照明光の波長と同程度かやや大きい直径の粒子を効率よく検出するときは、前方散乱光を後方散乱光よりも多く選び、照明光の波長より十分小さい直径の粒子を効率よく検出するときは後方散乱光を前方散乱光よりも多く選ぶように受光側空間フィルタの光透過領域を切り替える。
【0031】
以上の光学系を搭載した外観検査装置より、異物等の半導体ウェーハ上の欠陥が検出される。図5を引用して更に説明を加える。図5は外観検査装置により得られる画像の例を示すとともに欠陥抽出の方法を示す概念図である。、
検出画像Aと先に検出した参照画像Bを比較して差画像ABを得る。図5の(1)は、差画像ABに差分が存在しないので、欠陥がないと判断される。また図5の(2)は、差画像ABに差分が存在する。この例では検出画像Aに欠陥Cが存在し、参照画像Bに欠陥が存在しない場合を示す。
【0032】
このような検出画像による半導体ウェーハ3の欠陥抽出に上述した光学系を用いることによって鮮明な画像で欠陥個所を容易に検出できるようになる。上述した光学系は散乱光を効率よく得るようにしているので、半導体ウェーハに付着するゴミ等の異物粒子の検査に好適である。
【0033】
上記の実施例では、受光側空間フィルタの切り替えについて述べたが、受光側空間フィルタの切り替えに代えて照明側空間フィルタを切り替えるようにしても同様な結果を提供できる。
【0034】
また、上記の実施例では、受光側空間フィルタ、および照明側空間フィルタが6分割のものを例示したが、光軸を中心として奇数の2倍の個数に領域が分割され、交互に透過領域と不透過領域が配置されてる構成であれば、本発明の効果が達成できるよに配置と個数を選択することによって空間フィルタとして採用できる。
【0035】
また、一般に欠陥検査の対象である半導体ウェーハなどの試料は水平・垂直方向のパターン構造となっており、2分割した空間フィルタを採用する場合は、パターン構造による垂直・水平の両方向の散乱光の影響が大きくなるため、空間フィルタの分割個数はできるだけ多いことが望ましい。
【0036】
また本発明の実施例では、空間フィルタを照明側瞳面と結像側瞳面に配置したが、試料からの散乱光を効率よく透過、遮光することができれば、空間フィルタの個数や、配置場所は適宜選択可能である。
【0037】
また、照明側空間フィルタ14の光透過領域aが、光不透過領域bよりも狭い角度になっており、受光側空間フィルタ15も、光透過領域a’が、光不透過領域b'よりも狭い角度になっている理由は、後方散乱光、または前方散乱光の縁周りの光成分をカットするためであり、検出画像の縁周りをより鮮明な画像にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】外観検査装置の構成図。
【図2】反射像観察光学系のより詳細な構成図。
【図3】受光側空間フィルタ、および照明側空間フィルタを示す平面図。
【図4】対物レンズ周辺での光の経路の拡大図。
【図5】外観検査装置による欠陥抽出の方法を示す概念図。
【符号の説明】
【0039】
1…XYステージ、2…Zθステージ、3…半導体ウェーハ、4…光源、6…ハーフミラー、5…対物レンズ、8…ハーフミラー、7…イメージセンサー、9…自動焦点検出手段、10…A/D変換器、11…画像記録手段、12…画像比較手段、13…欠陥位置判定手段、14…照明側空間フィルタ、15…受光側空間フィルタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査体に対面する対物レンズを通じて照明光の光束を被検査体に照射し、被検査体から反射する回折・散乱光を含む反射光を前記対物レンズで集光し、この集光から前方散乱光または後方散乱光が選択されることを特徴とする外観検査方法。
【請求項2】
請求項1記載の外観検査方法において、
前記対物レンズは、前記被検査体の照射面に対して光軸が垂直になるように置かれ、
前記照射面に照射する前記光束を前記光軸に対して傾むけたことを特徴とする外観検査方法。
【請求項3】
請求項1記載の外観検査方法において、
前記選択された前方散乱光または前記後方散乱光の画像データを画像処理して前記被検査体の欠陥を検査する外観検査方法。
【請求項4】
被検査体に対面する対物レンズと、
この対物レンズを通じて被検査体に照明光の光束を照射する光源と、
前記対物レンズで集められた前記被検査体からの反射集光を受光するイメージセンサーと、
前記対物レンズと前記イメージセンサーとの光路に置かれ、かつ回折・散乱光を含む前記反射集光から前方散乱光または後方散乱光を選ぶ採光選択手段を備えたことを特徴とする外観検査装置。
【請求項5】
被検査体に対面する対物レンズと、
この対物レンズを通じて被検査体に照明光の光束を照射する光源と、
前記光源と前記対物レンズとの光路に置かれ、かつ照明光の光軸を中心として光透過領域と光不透過領域を点対称に設けた照明側空間フィルタと、
前記対物レンズで集められた前記被検査体からの反射集光を受光するイメージセンサーと、
前記対物レンズと前記イメージセンサーとの光路に置かれ、かつ回折・散乱光を含む前記反射集光から前方散乱光または後方散乱光を選ぶ受光側空間フィルタを備え、
前記受光側空間フィルタは、前記反射集光の光軸を中心として光透過領域と光不透過領域を点対称に設けたことを特徴とする外観検査装置。
【請求項6】
請求項5記載の外観検査装置において、
前記後方散乱光を前記受光側空間フィルタの前記光透過領域で透過させ、前記前方散乱光を前記受光側空間フィルタの前記光不透過領域で遮断することを特徴とする外観検査装置。
【請求項7】
請求項5記載の外観検査装置において、
前記前方散乱光を前記受光側空間フィルタの前記光透過領域で透過させ、前記後方散乱光を前記受光側空間フィルタの前記光不透過領域で遮断することを特徴とする外観検査装置。
【請求項8】
請求項5記載の外観検査装置において、
前記照明側空間フィルタ、および前記受光側空間フィルタの前記光透過領域と前記光不透過領域が放射状に交互に配置されていることを特徴とする外観検査装置。
【請求項9】
請求項5記載の外観検査装置において、
前記光透過領域と前記光不透過領域の数が同数であることを特徴とする外観検査装置。
【請求項10】
請求項9記載の外観検査装置において、
前記光透過領域の数と前記受光側空間フィルタの前記光透過領域の数が奇数であることを特徴とする外観検査装置。
【請求項11】
請求項5記載の外観検査装置において、
前記照明側空間フィルタの前記光透過領域と前記受光側空間フィルタの前記光透過領域が同数、前記照明側空間フィルタの前記光不透過領域と前記受光側空間フィルタの前記光不透過領域が同数であることを特徴とする外観検査装置。
【請求項12】
請求項5記載の外観検査装置において、
前記光不透過領域の幅が前記光透過領域の幅よりも大きいことを特徴とする外観検査装置。
【請求項13】
請求項5記載の外観検査装置において、
前記照明側空間フィルタまたは前記受光側空間フィルタの前記光透過領域と前記光不透過領域の位置を切り替えることを特徴とする外観検査装置。
【請求項14】
請求項5記載の外観検査装置において、
照明側空間フィルタまたは前記受光側空間フィルタの中央部を光不透過としたことを特徴とする外観検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−29955(P2006−29955A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−208664(P2004−208664)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】