説明

多結晶シリコン洗浄装置及び洗浄方法

【課題】多結晶シリコンを収納した容器を洗浄槽との間で円滑かつ確実に搬送することができ、作業効率を向上させて安定した品質を維持できる多結晶シリコン洗浄装置及び洗浄方法を提供する。
【解決手段】多結晶シリコンSを容器3に収納した状態で洗浄槽21〜27に浸漬して洗浄する多結晶シリコンの洗浄装置1であって、洗浄槽21〜27の内底部に容器3を載置状態に保持するガイド枠5を有しており、ガイド枠5には上方から容器3の導入を案内する複数のガイド板52が上方に向かうにしたがってガイド枠5の保持中心から離間する方向に傾斜して設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体用単結晶シリコン及び太陽電池用シリコンの原料である塊状もしくは棒状の多結晶シリコンを洗浄する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスに用いられる単結晶シリコンは、主にチョクラルスキー法により製造される。チョクラルスキー法は、原料である塊状または棒状の多結晶シリコンを石英坩堝内で融解させ、得られた融液に種結晶を浸漬し、この種結晶を引き上げて単結晶シリコンを成長させる方法である。良質な単結晶シリコンを得るためには、原料の塊状または棒状の多結晶シリコンの表面に付着する不純物を極めて少なくすることが求められる。そのため、原料の多結晶シリコンを薬液等で洗浄して、表面に付着した不純物を除去することが行われている。
【0003】
多結晶シリコンを洗浄する方法として、例えば、特許文献1には、フッ化水素と硝酸との混合液である酸液中に多結晶シリコンの塊を浸漬させることで、多結晶シリコン表面をエッチング反応によって溶解して表面に付着した不純物を除去する方法が提案されている。特許文献1においては、各洗浄槽への搬送は、ベルトコンベア等の搬送装置に載せられた状態で隣り合う洗浄槽のしきいを外して行われる。そのため、搬送時に洗浄液(エッチング液)を全て排出する必要があり、各洗浄槽間の搬送毎に洗浄液の供給と排出とを行わなければならず、効率的ではなかった。
【0004】
また、特許文献2には、酸洗処理した多結晶シリコンを搬送機によって複数設けられた洗浄槽に順次浸漬させながら純水洗浄し、不純物を除去する方法が提案されている。特許文献2においては、洗浄段階毎に各洗浄槽から多結晶シリコンを収納した運搬箱やコンテナなどの容器を吊り上げるなどして、次の段階の洗浄槽へ搬送するため、効率的に多結晶シリコンを洗浄することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−187900号公報
【特許文献2】特開2007−313454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば、このような各洗浄槽間の容器の搬送は、ロボットハンドによるチャッキング等によりなされている。一般的に、1つの容器を各洗浄槽間に渡って移送しながら洗浄する場合、1つのロボットハンドを使用して最後まで同じロボットハンドと容器との組合せで移送することも可能であるが、連続的に容器を各洗浄槽間にわたって移送処理する場合には、ロボットハンドを多数準備する必要があり、装置構成が大規模になる。
このため、例えば複数の洗浄槽間の移送を2つのロボットハンドで処理する場合、容器の移し替えが必要になり、洗浄槽内に移送した後に以降の移送処理を別のロボットハンドで移送する場合には、ロボットハンドによる容器のチャッキング解除、及び再度別のロボットハンドによるチャッキングが行われる必要がある。
【0007】
また、例えば酸液による洗浄においては、容器を洗浄槽内に入れてチャッキングを解除すると、洗浄槽内での酸液と容器内の多結晶シリコンが激しく反応して泡立つ等して容器の配置がずれたり、あるいは、洗浄槽内の酸液の循環などを行う際に、容器の配置がずれたりする場合がある。このように、洗浄槽内に浸漬した容器を再度引き上げる際に、容器とロボットハンドとのチャッキング位置がずれた場合、洗浄装置を停止させ、洗浄槽内の液を抜くなどして、容器の配置を所定の位置に戻したり、あるいは、再度最初から洗浄操作を行ったり、復旧の手間がかかるばかりでなく、生産性を低下させる等して問題であった。
更に、チャッキング位置がずれた場合、所定時間以上洗浄液内に容器が浸漬されていることより、酸液による多結晶シリコンのエッチングが必要以上に進み、多結晶シリコンのロスが生じることで、安定したエッチング品質を維持することが難しいという問題があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、多結晶シリコンを収納したバスケット状の容器を各洗浄槽間で円滑かつ確実に搬送することができ、作業効率を向上させて安定した品質を維持できる多結晶シリコン洗浄装置及び洗浄方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の多結晶シリコン洗浄装置は、多結晶シリコンをバスケット状の容器に収納した状態で洗浄槽に浸漬して洗浄する多結晶シリコンの洗浄装置であって、洗浄槽の内底部に前記容器を載置状態に保持するガイド枠を有しており、該ガイド枠には上方から前記容器の導入を案内する複数のガイド板が上方に向かうにしたがって前記ガイド枠の保持中心から離間する方向に傾斜して設けられていることを特徴とする。
【0010】
この多結晶シリコン洗浄装置においては、洗浄槽内への容器の導入を案内するガイド板が設けられていることから、ガイド板の傾斜面に沿って確実に所定位置に容器を配置することができる。また、容器を洗浄槽内に入れてチャッキングを解除した後も容器はガイド枠によって保持されるので、多結晶シリコンと洗浄液との反応等によって動くことがなく、常に定位置に支持される。そして、一定時間の浸漬後、洗浄槽内に浸漬した容器を再度引き上げる際には、容器が所定位置に配置されていることから、確実に容器を再度把持して搬送することが可能となり、一連の動作を確実かつ容易に行うことができる。
【0011】
また、本発明の多結晶シリコン洗浄装置において、前記ガイド枠の下部及び側部に、該ガイド枠内外を連通する開口部が設けられているとよい。
さらに、本発明の多結晶シリコン洗浄装置において、前記洗浄槽の内底部に、洗浄液を供給する供給パイプが設けられているとよい。
【0012】
この場合、ガイド枠に設けられた開口部から容器の外底面及び側面に向けて新鮮な洗浄液を取り込むことができる。洗浄液に酸液を用いた場合、多結晶シリコンと酸液との反応により生ずる気泡が上昇することに伴い、ガイド枠に設けられた開口部を通って側方および下方から新鮮な酸液が容器の内部に供給され、多結晶シリコンと酸液とのエッチング反応を促進させて付着した不純物の除去効率を向上させるとともに、エッチングの量のばらつきを低減させることができる。また、洗浄液に純水を用いて多結晶シリコン表面に付着している酸液を除去する場合には、多結晶シリコン塊表面に純水を素早く接触させ、酸液の除去ができることより、エッチング量のばらつきを低減できる。
【0013】
また、本発明の多結晶シリコンの洗浄方法は、前述の多結晶シリコン洗浄装置を用いて、多結晶シリコンをバスケット状の容器に収納した状態で洗浄槽に浸漬して洗浄する方法であって、前記容器を前記ガイド枠に載置して浸漬状態で静置する操作と、前記容器を前記ガイド枠から浮かせた状態で、液面付近で複数回上下移動する操作とを交互に行うことを特徴とする。
容器の上下移動によるピストン運動によって新鮮な酸液を容器内に効率的に取り込んで循環させることができるとともに、上下移動時の振動および酸液との抵抗で容器内の多結晶シリコン同士の接触している箇所の位置関係を変更することができ、エッチング反応を促進することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、多結晶シリコンを収納した容器を各洗浄槽内で確実にチャッキングして各洗浄槽間での搬送を円滑にすることができ、生産性の低下を回避することができる。また、容器内の多結晶シリコンのエッチング量を安定して維持することができる
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の多結晶シリコン洗浄装置を示す概略図である。
【図2】図1の洗浄装置の一部を構成する洗浄槽を説明する図であり、(a)は上面図、(b)は縦断面図である。
【図3】図1に示すガイド枠を説明する図であり、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【図4】吊り上げ機の動きを説明する要部拡大図である。
【図5】図1の洗浄装置の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の多結晶シリコン洗浄装置の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
この実施形態の多結晶シリコン洗浄装置1は、多結晶シリコンロッドを切断または破砕することにより細分化して得られた塊状もしくは棒状の多結晶シリコンSを洗浄する装置である。
多結晶シリコン洗浄装置は複数の洗浄槽により構成されるが、本実施形態の多結晶シリコン洗浄装置1は、図1に示すように、例えば、洗浄液である酸液を満たした五つの洗浄槽21〜25と、純水を満たした二つの洗浄槽26,27とが一直線上に並べられたものである。これら洗浄槽21〜27は、その配列方向に沿う寸法より、これと直交する方向の寸法が、長く形成されている。酸液には、例えば、フッ化水素と硝酸との混合液が用いられる。
【0017】
多結晶シリコン洗浄装置1の上方には、多結晶シリコンSを収納した容器3を各洗浄槽21〜27に順次搬送するための搬送手段4が設けられている。この容器3は、底板と四方の側板とにより上方を開放した箱状をなしているが、これらの底板及び側板に多数の貫通孔を有しており、バスケット状に形成されている。
搬送手段4には、例えば、各洗浄槽21〜27の上方に設けられたレール40に沿って移送可能に支持される吊り上げ機41が備えられる。この吊り上げ機41に、多結晶シリコンSを収納した容器3が上下動可能に吊り下げられる構成とされており、容器3を把持して、各洗浄槽21〜27の上方から上げ降ろしすることにより、所定時間、洗浄槽21〜27内の洗浄液に浸漬させるようになっている。
【0018】
容器3は、例えば、樹脂製で上方を開口状態とした直方体の箱状に形成され、多数の貫通孔(図示略)が側板及び底板に設けられ、上端にフランジ31を有している。この容器3には、洗浄中に容器3内の多結晶シリコンSが飛び出さないように、必要に応じて、貫通孔の開いた蓋を取り付けることができる。
図2に示すように、吊り上げ機41には二つの容器3が吊り下げ可能とされており、これら容器3は、各洗浄槽21〜27内に、レール40に直交する方向(各洗浄槽の長さ方向)に並んで浸漬されるようになっている。なお、容器3は二つに限らず、例えば、洗浄槽の長さ方向に三つ以上並べて吊り下げるようにしてもよい。
また、吊り上げ機41は、容器3の上部に設けられたフランジ31を保持する樹脂製の保持ハンド42を備え、この保持ハンド42によって容器3を把持した状態で、上下移動することができる。
【0019】
そして、各洗浄槽21〜27には、図2に示すように、容器3を載置して保持するガイド枠5と、洗浄液が供給される供給パイプ6と、この洗浄槽21〜27の上部から溢水する洗浄液を回収するオーバーフロー部8とが設けられている。
【0020】
ガイド枠5は、図3に示すように、4枚の垂直な平板を井桁状に組み合わせてなる枠部の中心部を、その四つの交差部を結ぶ角筒より大きい角形断面で所定深さまで切欠することにより、容器3を収容可能な角形の凹部51が上方を開放した状態に形成されている。この凹部51より下方には、凹部51の内底面を構成する縦板52が井桁状に組まれたまま残っており、また凹部51の四隅部には、その凹部51の切欠によって残る帯板状の縦フレーム53が90°配置で2本ずつ配置されている。なお、凹部51の側方は、縦フレーム53を残して開放した状態に形成されており、90°配置で2本ずつ設けられた縦フレーム53の間に配置される凹部51の四隅の開口部51aと、並行して配置された縦フレーム53の間で凹部51の各辺に配置される開口部51bとで、縦フレーム53を残して周方向のほぼ全域で連通可能な状態とされている。
【0021】
容器3は、ガイド枠5の角形の凹部51内に収容されると、凹部51の内底面を構成する縦板52の上端面に載置され、凹部51の四隅部に残る縦フレーム53により側面が支持され、水平方向の移動が拘束されるようになっている。そして、ガイド枠5の凹部51には、容器3の上方からの導入を案内する4枚のガイド板54が、凹部51の各辺に一枚ずつ、かつ、上方に向かうにしたがってガイド枠5の中心(保持中心)から離間する方向に傾斜して設けられる。これにより、各ガイド板54の両上端部54aは、上方に向かうにしたがって互いに離間した状態に設けられる。また、凹部51の下方の縦板52の下部は切り取られており、四隅部を残してガイド枠5の内外を連通する開口部55が形成される。なお、凹部51の内底面からガイド板54の上端までの距離は、容器3の高さ寸法より小さく設定される。
【0022】
供給パイプ6は、各洗浄槽21〜27の内側面に沿って挿入され、内底面2a上に水平に延びて設けられており、その内底面2a上において、上方に向けて複数の孔61が開けられ、新鮮な洗浄液を洗浄槽21〜27の内底面から噴き上げるように供給する。洗浄槽21〜27に供給された洗浄液は、洗浄槽21〜27の上部から溢水し、オーバーフロー部8へ流れ込んで排液口8aから回収される。また、洗浄槽21〜27には、排液口8aとは別に排液口(図示略)が設けられるとともに、洗浄液を循環させる循環系(図示略)が設けられる。
【0023】
次に、このように構成した多結晶シリコン洗浄装置1によって多結晶シリコンSを洗浄する方法について説明する。
多結晶シリコンSは、シーメンス法の場合、棒状に製造されるが、適宜の大きさに切断あるいは破砕され、カットロッドと称される短尺の棒状物または不定形な塊状物とされる。これら棒状あるいは塊状物をほぼ大きさを揃えて容器3に入れた状態で図示しないコンベア等によって1番目の洗浄槽21の近傍に移送し、容器3の上方から搬送手段4の吊り上げ機41を下降させ、保持ハンド42により容器3のフランジ31を把持する。
図2(b)の二点鎖線Aで示すように、搬送手段4により二つの容器3を保持して洗浄槽21の上方へ移動させ、搬送手段4を下降させて洗浄槽21内のガイド枠5の凹部51に容器3を載置させ、洗浄液の酸液Wに浸漬させる。
ガイド枠5には、洗浄槽21内への容器3の導入を案内するガイド板54が設けられていることから、ガイド板54の傾斜面に沿わせて下降させられることで、ガイド枠5の凹部51に容器3を配置することができる。
【0024】
搬送手段4は、容器3を洗浄槽21内に浸漬した後、洗浄槽21内のガイド枠5に容器3を載置して、洗浄槽21内に浸漬状態で静置する操作と、容器3を液面付近で複数回上下移動する操作とを交互に行うようにする。
多結晶シリコンSは、浸漬により次の反応式に基づきエッチングされる。
Si+2HNO → SiO+2HNO
SiO+6HF → HSiF+2H
容器3の上下移動の操作は、図4に示すように、ガイド枠5の凹部51の内底面から若干の隙間h1をあけ、容器3を浮かせた状態で行われ、図4の実線Xで示す位置から二点鎖線Yで示す位置までの間(距離h2)で、容器3を複数回移動させることにより行われる。この容器3の上下移動時において、容器3を引き上げる際には、容器3内には上方から下方へ酸液Wが押し流されるとともに、ガイド枠5内の圧力が容器3の引き上げに伴い低下することにより、新たな酸液Wが下方からガイド枠5内に取り込まれる。また、容器3を降下する際には、ガイド枠5内の酸液Wが容器3の押圧によりガイド枠5外に開口部51a,51b,55を経由して押し出されるとともに、容器3内に新鮮な酸液が勢いよく供給される。このように、容器3の上下動によるピストン運動によって反応に寄与した酸液と新鮮な酸液とを効率的に循環させることができる。
そして、前述の容器3の上下移動により新鮮な酸液Wが容器3内に送り込まれることで、多結晶シリコンSのエッチングを促すとともに、上下移動時の振動および酸液Wとの抵抗で容器3内の多結晶シリコンS同士の接触している箇所の位置関係を変更することができ、その接触部分のエッチングがされにくい箇所のエッチング反応を促進することができる。
【0025】
また、酸液の濃度により激しいエッチング反応が起きる場合は、気泡が発生し、これが均一なエッチングを阻害するが、容器3を上下動することで気泡を分散させることにより、均一なエッチングが可能となる。また、容器3をガイド枠5に静置した際にも、凹部51の周囲は縦フレーム53を残して開放状態とされているので、図5に示す破線矢印Bのように、凹部51の上方だけでなく、側方からも気泡が放散され易くなっている。さらに、ガイド板54の両上端部54a間が離間して設けられていることから、この間からも気泡を放散させることができ、多結晶シリコンSの表面のエッチングのバラツキを低減することができる。そして、多結晶シリコンSと酸液Wとの反応により生ずる気泡が容器3内を上昇することに伴い、実線矢印Cのように、ガイド枠5に設けられた開口部55を通じて容器3の外底面32から新鮮な酸液Wを取り込むことができるとともに、凹部51側方の開口部51a,51bを通じても酸液Wを取り込むことができるので、洗浄槽21内の酸液Wの循環を妨げることなく、多結晶シリコンSと酸液Wとのエッチング反応を促進させて付着している不純物の除去効率を向上させることができる。
【0026】
なお、洗浄槽21内のガイド枠5に容器3を載置して、所定時間、浸漬状態に静置する際には、その浸漬の間、保持ハンド42によるチャッキングを解除して、吊り上げ機41を洗浄槽21から引き上げておくことにより、吊り上げ機41の酸液Wによる腐食及び劣化を防止することができる。
そして、洗浄後、洗浄槽21内に浸漬した容器3を再度引き上げる際には、容器3が所定位置のガイド枠5上に配置されていることから、確実に容器3を把持して搬送することが可能である。
【0027】
また、洗浄槽21は、多結晶シリコンSの洗浄中にも常に酸液Wを供給し、洗浄槽21の上部からオーバーフロー部8へと酸液Wを溢水させる。
洗浄槽21内において酸液Wを内底面2aに配置された供給パイプ6から供給して上部からオーバーフローさせることにより、多結晶シリコンSの塊から離脱して酸液W中に浮遊する不純物やシリコン片、容器3の切削片等の微粉末を酸液Wとともに洗浄槽21から排出させることができる。したがって、酸液W中の微粉末が多結晶シリコン塊に再付着するのを防止し、効率のよい洗浄が可能となる。なお、オーバーフローして回収された酸液は、フィルタを通して不純物やシリコン片、容器3の切削片などが除去され、再利用される。
【0028】
続いて、隣接する各洗浄槽21〜27に、順次、容器3を浸漬していくことにより、多結晶シリコンSを徐々にエッチングしながら表面の不純物を除去することができる。そして、多結晶シリコン洗浄装置1は、これら一連の洗浄処理を、搬送手段4によって容器3を搬送しながら各洗浄槽21〜27に順次浸漬させることにより行うことができ、連続的な操業が可能であり、生産効率に優れている。
【0029】
以上説明したように、本発明の多結晶シリコン洗浄装置1によれば、各洗浄槽21〜27内に設けられたガイド枠5に、容器3の取り込みを案内するガイド板54が設けられていることから、ガイド板54の傾斜面に沿って確実に所定位置に容器3を配置することができる。また、容器3は凹部51によってガイド枠5上に保持されるので、多結晶シリコンSと酸液Wとの反応等によって動くことがなく、常に定位置に支持される。そして、洗浄後、洗浄槽内に浸漬した容器3を再度引き上げる際には、容器3が所定位置のガイド枠5上に配置されていることから、確実に容器3を再度把持して搬送することが可能となり、操作性がよい。
【0030】
なお、各ガイド板54は、図3(b)に示す垂直方向に対する傾斜角度θが、10°〜35°の範囲に設定されることが好ましい。
傾斜角度θが10°より小さいと、チャッキング位置がずれた状態で洗浄槽内に容器3を浸漬させる際に、容器3の下部とガイド板54の先端部とが接触し易くなる。容器3の下部とガイド板54の先端部とが接触した場合には、その接触時の衝撃で、ガイド板54や容器3の破損、又は容器3が傾いて洗浄槽内に落下する等のトラブルになるおそれがある。また、洗浄液に酸液を使用した際のエッチングによる気泡の分散効果が小さくなる。
傾斜角度θが35°より大きいと、ガイド板54の傾斜面と容器3の下部との接触時に加わる衝撃が大きくなり、容器3のガイド枠5への導入案内がスムーズに行われずに、ガイド板54の摩耗や破損が生じ易くなる。
【0031】
また、上記の洗浄方法では、容器3を酸液Wの液面付近で複数回上下移動する操作を行うようにしており、この上下移動によるピストン運動によって新鮮な酸液を容器3内に効率的に取り込んで循環させることができるとともに、上下移動時の振動および酸液Wとの抵抗で容器3内の多結晶シリコンS同士の接触している箇所の位置関係を変更することができ、その接触部分のエッチングがされにくい箇所のエッチング反応を促進することができる。
さらに、多結晶シリコンSと酸液Wとの反応により生ずる気泡が上昇することに伴い、ガイド枠5に設けられた開口部55から容器3の外底面32に向けて新鮮な酸液Wを取り込むことができるので、この開口部55を通って下方から新鮮な酸液Wが容器3内に供給され、多結晶シリコンSと酸液Wとのエッチング反応を均一に促進させて付着した不純物の除去効率を向上させることができる。
【0032】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、洗浄槽の数、洗浄槽内のガイド枠の数、使用する酸液の種類等は一例であり、使用状況に応じて変更可能である。
また、各洗浄槽内の供給パイプは、図2(a)に示すように、内底面上に水平に伸びた直線状の構造以外に、ガイド枠の外周部に沿ってU字状に配置する構造としてもよい。さらに、供給パイプは、複数本を配置する構成としてもよい。また、供給パイプの孔は、上記実施形態のように上方に向けた孔61が開けられる構造以外に、供給パイプ側面や、斜め上方に洗浄液が噴き出すような位置に設ける等、適宜設定することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 多結晶シリコン洗浄装置
2a 内底面
3 容器
4 搬送手段
5 ガイド枠
6 供給パイプ
8 オーバーフロー部
8a 排液口
21〜27 洗浄槽
31 フランジ
32 外底面
40 レール
41 吊り上げ機
42 保持ハンド
51 凹部
51a,51b 開口部
52 縦板
53 縦フレーム
54 ガイド板
55 開口部
61 孔
S 多結晶シリコン
W 酸液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多結晶シリコンをバスケット状の容器に収納した状態で洗浄槽に浸漬して洗浄する多結晶シリコンの洗浄装置であって、洗浄槽の内底部に前記容器を載置状態に保持するガイド枠を有しており、該ガイド枠には上方から前記容器の導入を案内する複数のガイド板が上方に向かうにしたがって前記ガイド枠の保持中心から離間する方向に傾斜して設けられていることを特徴とする多結晶シリコン洗浄装置。
【請求項2】
前記ガイド枠の下部及び側部に、該ガイド枠内外を連通する開口部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の多結晶シリコン洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄槽の内底部に、洗浄液を供給する供給パイプが設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の多結晶シリコン洗浄装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の多結晶シリコン洗浄装置を用いて、多結晶シリコンをバスケット状の容器に収納した状態で洗浄槽に浸漬して洗浄する方法であって、前記容器を前記ガイド枠に載置して浸漬状態で静置する操作と、前記容器を前記ガイド枠から浮かせた状態で、液面付近で複数回上下移動する操作とを交互に行うことを特徴とする多結晶シリコンの洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−211073(P2012−211073A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−67586(P2012−67586)
【出願日】平成24年3月23日(2012.3.23)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】