説明

大気圧プラズマ

霧化された表面処理剤を、希プロセスガスで発生された非平衡大気圧プラズマ中に混合し、かつ処理される表面を、該霧化された表面処理剤を含む該大気圧プラズマに接触させて配置する表面のプラズマコーティング方法において、該表面上に形成される該コーティングの粒子含有量を、プロセスガスに少ない割合で窒素を混合することにより、減量することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセスガスで非平衡大気圧プラズマを発生する方法およびその発生された非平衡大気圧プラズマで表面をプラズマ処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物質が連続的にエネルギーを供給されると、その温度は上昇し、典型的には固体から液体に、その後気体状態に変わる。エネルギーを供給し続けると、その系はさらなる状態変化を受け、気体の中性原子あるいは分子がエネルギー衝突により分解され、負の電荷を帯びた電子、正または負の電荷を帯びたイオンおよび他の種を生成する。集団的な挙動を示す帯電した粒子のこの混合物は「プラズマ」と呼ばれる。それらの電荷により、プラズマは外部の電磁場に大いに影響され、電磁場によって容易に制御することができる。さらに、プラズマはそれらの高エネルギー含量により、液体またはガス処理によるような物質の他の状態をとおして不可能または困難である処理を可能にする。
【0003】
用語「プラズマ」は、多数桁で変動する密度および温度の系の非常に広範囲に及ぶ。あるプラズマは非常に高温で、その微小種(イオン、電子など)すべてが近似の熱平衡にあり、系への投入エネルギーは原子/分子レベルの衝突をとおして広く分配される。しかしながら、他のプラズマ、特に衝突が比較的めったに起こらない低圧(例えば100Pa)でのプラズマは大きく異なる温度の成分種を有し、「非熱平衡」プラズマと呼ばれる。この非熱プラズマでは、自由電子は数千ケルビン度と非常に熱く、しかし一方中性およびイオン性種は冷たいままである。自由電子はほとんど無視できる質量であるので、系全体の熱含量は小さく、プラズマは室温近くで作用し、従ってサンプルへの損傷を与える熱負荷を負わすことなく、温度感受性材料、例えばプラスチックまたはポリマーへの処理を可能にする。しかし、熱い電子は、高エネルギー衝突をとおして、強い化学的および物理的反応性となり得る高い化学ポテンシャルエネルギーを有するフリーラジカルおよび励起種の豊富な源を作りだす。それは低温操作と高反応性との組合せであり、そのことが非熱プラズマを、製造および材料加工のための技術的に重要かつ非常に強力な手段にし、もしプラズマなしに達成できるとするなら非常に高い温度または有毒かつ攻撃的な化学品を必要とすることになる処理を達成可能にする。
【0004】
非熱平衡プラズマは、多くの工学的応用例えば表面活性化、表面清浄、物質エッチングおよび表面コーティングにおいて効果的である。マイクロエレクトロニクス業界は低圧グロー放電プラズマを半導体、金属および誘電体加工での最先端技術かつ高資本コストエンジニアリングツールに発展させた。同様な低圧グロー放電型プラズマは、接着・結合力の増強する表面活性化、高品質な脱グリース化・清浄および高機能コーティングの堆積を提供して、ますます他の業種に浸透してきた。
【0005】
大気圧プラズマ放電、例えば大気圧誘電体バリア放電および大気圧グロー放電は別の均質なプラズマ源であり、大気圧で作動するにもかかわらず、真空プラズマ法の多くの利点を有する。特に、それらは均質な(均一な)実質的に非フィラメント状拡散プラズマ放電を大気圧または大気圧前後で提供可能である。欧州特許第0790525号は写真用接着促進のための大気圧グロー放電系を記載し、そこではヘリウムプロセスガスが単独または0.1〜8%の窒素および/または0.1〜8%の酸素との組み合わせのいずれかで用いられている。欧州特許第0790525号は表面活性化の手段としてこの系を利用し、コーティング用途について論じられていない。
【0006】
そのような大気圧プラズマ放電系の使用は1980年代に著しく発展した。例えばKanazawa S.,Kogoma M.,Moriwaki T.,Okazaki S.,著J.Phys.D:Appl.Phys.,21,838−840(1988)およびRoth J.R.,著Industrial Plasma Engineering第2巻 Application to Nonthermal Plasma Processing,Institute of Physics Publishing,2001、37−73頁に記載されているとおりである。国際公開第01/059809号および国際公開第02/035576号は一連のプラズマ生産システムを記載し、それらは大気圧で約10mm離された平行に互いに対立する平板電極間に50〜80kHz RFボルトを印加して、均一で均質なプラズマを提供する。大気圧・温度は、開放周囲長(Open perimeter)、連続的、オンライン処理への適合性を保証する。
【0007】
コロナおよびフレームは他のプラズマ処理系であるが、かなり限界がある。フレーム系は典型的に熱平衡である。フレーム系は堆積コーティングでは非常に効果的であるが、高温で作動し、金属やセラミックなどの基材にのみ適する。コロナ系は、典型的に平板電極に支持される基材を有し、コロナ放電が点と平板電極間に発生されるフィラメント性の不均質放電であるので、頻繁に不均一な表面処理となる。
【0008】
米国特許第5,198,724号および同第5,369,336号は、「低温」または非熱平衡大気圧プラズマジェットを記載する。大気圧プラズマジェットの製造に使われる系は、陰極として機能するRF出力金属針とそれを囲む外側シリンダー状陽極からなっていた。米国特許第6,429,400号はブローン大気圧グロー放電を発生する系を記載する。これは電気的絶縁管によって外側電極と分離された中央電極を含む。
【0009】
米国特許第5,837,958号は、同軸金属電極に基づく大気圧プラズマジェットを記載する。そこでは中央電極および誘電体被覆された接地電極が使われている。接地電極の一部がむき出しにされて裸リング電極をガス出口付近に形成する。ガス流(空気またはアルゴン)は上部から入り、渦を形成するように向けられる。その渦がアークを閉じ込ませ、焦点を合わせられてプラズマジェットを形成する。広範囲をまかなうために、多くのジェットが組み合わせられて範囲を増やすことができる。
【0010】
米国特許第6,465,964号は、大気圧プラズマジェット発生の別の系を記載する。それには、一対の電極がシリンダー状管の周りに配置されている。プロセスガスは管の上部から入り、底から出る。交流電場が二つの電極間に供給されると、プロセスガスが管内で電極の間を通ることによりプラズマが発生して、これが出口で大気圧プラズマジェットを生じさせる。前記電極の位置が電場を軸方向で形成することを確実にする。
【0011】
国際公開第02/28548号は、霧化された液体および/または固体コーティング材料を大気圧プラズマ放電またはそれから得られるイオン化されたガス流に導入することにより、基材上にコーティングを形成する方法を記載する。国際公開第02/098962号は、低表面エネルギー基材を液状または気体の形態でケイ素化合物に暴露し、続いてプラズマまたはコロナ処理、特に大気圧パルスグロー放電または誘電バリア放電を用いて酸化または還元にて後処理することによる基材のコーティングを記載する。国際公開第03/085693号は、プラズマ発生に適応する1個以上の平行電極配列、プロセスガスを導入する手段、および反応剤の霧化および導入用噴霧器を有する大気圧プラズマ発生アセンブリを記載する。そのアセンブリはプロセスガスおよび反応剤用唯一の出口が電極間のプラズマ領域を通るようになっている。
【0012】
国際公開第03/097245号および国際公開第03/101621号は霧化されたコーティング材料を基材上に塗布してコーティングを形成することを記載する。霧化されたコーティング材料は、超音波ノズルまたはネブライザーなどの噴霧器から離れると、励起媒体(プラズマ)を通って基材に行く。基材は励起媒体から遠く離れて配置される。プラズマはパルス法で発生される。
【0013】
国際公開第2006/048649号は、霧化された表面処理剤を含む非平衡大気圧プラズマを発生する方法を記載する。そこでは、無線周波数高電圧が入口および出口を有する誘電体ハウジング内に配置された1個以上の電極に、プロセスガスが入口から電極を通って出口に流させながら、印加され、その電圧は電極で非平衡大気圧プラズマを発生させるのに十分高い。霧化された表面処理剤は誘電体ハウジング内でプラズマに混合される。プラズマは少なくともハウジングの出口に拡がり、処理される表面はプラズマ出口に隣接して配置され、プラズマ出口に対して移動することができる。国際公開第2006/048650号は、少なくとも一部は誘電材料で形成された管がハウジングの出口から外側に向かって伸び、管の末端がプラズマ出口を形成する同様な方法を記載する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
非平衡大気圧プラズマを用いての表面処理において、できるだけ均一な表面処理を成し遂げるには普通できるだけ均一なプラズマであることが望ましい。本発明により、ヘリウムまたはアルゴンプラズマに窒素を加えると実質的にフィラメント状プラズマ(filamentary plasma)を形成する系の傾向を低減することが分かった。上記に掲げた公開特許文献の一部は、混合プロセスガスで非平衡大気圧プラズマを形成できることを述べているが、プロセスガスとして純ガスを用いるのが標準的技法である。
【0015】
プラズマがフィラメント状モードで作動されると、実行された表面処理は、高エネルギー処理の局所領域ならびに結果として表面損傷および平坦でない表面処理を生成するであろう。プロセスガスとしてヘリウムまたはアルゴンを用いて生成した大気圧プラズマに多少の窒素を加えると、より拡散、非フィラメント状モードでプラズマを安定化することができる。フィラメントがないので、基材の損傷および平坦でない表面処理の産出を防ぐ。
【0016】
プラズマの不均一性の改良が、少ない割合の窒素を含有するプロセスガスからのプラズマ放電でフィラメントまたは放電縞(striation)の減少を、純希プロセスガスからの放電と比較して、観察することにより肉眼で見ることができる。導電性または半導性基材をプラズマに接触させて配置すると、不均一性の改良を基材表面でスパークの減少で見ることができる。
【0017】
意外にも、少しの窒素の添加は非平衡大気圧プラズマをより堆積されたコーティングに、例えば国際公開第2006/048649および国際公開第2006/048650号に記載されているように、霧化された表面処理剤をプラズマジェット中に取り込むことによって、著しい効果をももたらすことを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0018】
従って、本発明の一つの態様によれば、霧化された表面処理剤を、希プロセスガスで発生された非平衡大気圧プラズマまたはそこから生じる励起および/もしくはイオン化ガス流中に混合し、かつ処理される表面を、そこに(すなわち、希プロセスガスで発生された非平衡大気圧プラズマまたはそこから生じる励起および/またはイオン化ガス流中に)混合され霧化された表面処理剤を受けられるように配置する表面のコーティング方法であって、表面上に形成されるコーティングの粒子含有量を、プロセスガス中に少ない割合の窒素を混合することより、減量することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の使用に適する非平衡大気圧プラズマ発生装置の斜視図である。
【図2】図1の装置の部分的断面図である。
【図3】本発明の使用に適する別の非平衡大気圧プラズマ発生装置の概略断面図である。
【図4】本発明の使用に適するさらに別の非平衡大気圧プラズマ発生装置の概略断面図である。
【0020】
好ましくは、非平衡大気圧プラズマが、希ガスと霧化された表面処理剤とを含むプロセスガス中で発生させられるか、または霧化された表面処理剤を、希プロセスガスで発生された非平衡大気圧プラズマに導入することもできる。好ましくは、処理される表面は、大気圧プラズマまたはそこから生じる励起および/もしくはイオン化ガス流に接触して配置されることにより、さらに活性化される。
【0021】
一つの好ましい実施態様では、霧化された表面処理剤を、希プロセスガスで発生された非平衡大気圧プラズマに混合し、かつ処理される表面を、霧化された表面処理剤を含む大気圧プラズマと接触させて配置し、表面上に形成されるコーティングの粒子含有量を、プロセスガス中に少ない割合の窒素を混合することにより、減量されることを特徴とする表面のプラズマコーティング方法が提供される。
【0022】
霧化された表面処理剤は、典型的に液状で、例えば重合性前駆体であり得る。重合性前駆体はプラズマジェットに、好ましくはエーロゾルとして導入されると、制御されたプラズマ重合が起こり、プラズマ出口に隣接して配置された任意の基材上にポリマーの堆積が得られる。さまざまな機能性コーティングを種々の基材上に堆積させることができる。これらのコーティングは基材にグラフトされ、前駆体分子の化学的機能を保有する。フィラメント状プラズマが用いられると、堆積コーティングは著しい量の粒子を含有し、コーティングは透明かつ平坦ではない。現在の理論に関係していないとはいえ、この粒子形成は、重合を加速して、プラズマ内で重合体粒子の形成を引き起こす高エネルギーフィラメントによるものであり、得られた粒子は堆積されたコーティングに取り込まれるものと思われる。多少の窒素をプラズマに添加すると著しく少ない粒子を含むコーティングの堆積を容易にする。
【0023】
コーティングの減量された粒子含有量は、コーティングの増加された透明度および減少された表面粗度により測定することができる。粒子を一切含まないコーティングは一般的に澄んだ透明であり、一方、粒子を含有するコーティングは白っぽく、より不透明な外観である。コーティングの光の透過度を測定することができる。より少ない粒子を含有する表面のより低い表面粗度は手触りで、または装置にて測定可能である。
【0024】
非平衡大気圧プラズマはプラズマジェットまたは他の拡散プラズマ放電またはグロー放電プラズマでもよく、一般に「低温」プラズマ、ここで「低温」とは200℃以下、好ましくは100℃以下を意味することを意図している。低温プラズマは、衝突が比較的まれで(例えばフレームベース系のような熱平衡プラズマと比較すると)、非常に異なる温度でそれらの構成成分種を有するプラズマ(それ故、一般名「非熱平衡」プラズマ)である。ピンまたはポイント型電極を有するプラズマジェット型放電の場合、放電はガスのイオン化およびイオン・カスケードの間に電子に起因する電極周囲のグローであるコロナ放電の形式であり得る。真のコロナ系では、製造されたフィラメントはポイント電極から基材表面まで伸びているが、ピンまたはポイント型電極を有するプラズマジェットで見られるコロナ放電系では、マイクロフィラメントをポイント電極近くに観察することができる。そのようなマイクロフィラメントは基材までは伸びておらず、よってそのようなプラズマジェット装置は真のコロナ型放電系ではない。
【0025】
非平衡大気圧プラズマを発生させるための本発明による好ましい一つの装置において、例えば、国際公開第2006/048649号に記述されているように、入口と出口とを有する誘電体ハウジング内で少なくとも一つの電極に、前記プロセスガスが入口から電極を通って出口へ流れるようにさせながら、無線周波数高電圧が印加される。プラズマは好ましくはフレーム状ジェットとして電極からハウジングの出口へ伸びている。処理される表面は、プラズマと接触するように出口に隣接して配置され、かつプラズマ出口に対して移動される。本発明の方法は、特に、実質的に平行な2個の電極間で大気圧プラズマを発生する装置よりも均一な非フィラメント状プラズマ拡散放電を達成するのがより難しい型の装置に適用できる。
【0026】
そのような装置は単極だけを有する。対電極の欠落にもかかわらず、装置はそれでもプラズマジェットを生じさせる。ヘリウムのような作業用ガスの近くで印加された電極の存在は強いRF磁場を発生するのに十分である。プラズマはこのRF磁場の効果に起因する気体原子および分子の励起によって形成される。気体はイオン化され、化学的ラジカル、紫外線放射、励起中性(excited neutrals)およびイオンを生じ、それらはプラズマイオン化プロセスを生じさせ、外部プラズマジェットを形成することができる。地金電極を使うことができる。例えば、単極は、プロセスガスおよび任意に霧化された表面処理剤が流れるプラスチック管のような誘電体ハウジング内に収納するのがよい。電力が電極に印加されると、電場が形成し、プロセスガスはイオン化される。金属電極の使用はプラズマ形成を促進する。プラズマのイオン化を高めるために電極は塗装されるか、または放射性元素を取り込むのがよい。
【0027】
あるいは、プラズマジェット装置は、対電極を有することなく中空単極からなるのでもよい。プロセスガスは電極の中心を通って吹き出される。RF出力が印加され、それが電極近くに強電磁場の形成をもたらす。それが気体をイオン化させて、プラズマが形成され、電極を通って運ばれ、プラズマジェットとして出て行く。この設計の狭い特質が、3次元的形状の基材に機能性コーティングを堆積するために、周囲条件下で発生される狭い集束プラズマを可能にする。
【0028】
より一般的には、1個の電極または複数電極はピン、板状、同心管もしくはリング、または針状の形状をとることができ、それらを経由して気体が装置内に導入される。単極が用いられ得、または複数の電極を用いることもできる。それら電極は誘電体で覆うこともでき、また覆わなくてもよい。多数の電極が用いられるなら、誘電体被覆された電極および被覆されない電極の組合せでもよい。1個の電極は接地されてもよく、あるいはどの電極も接地されていない(浮遊電位)。どの電極も接地されないなら、同じ極性を有してもよいし、反対の極性を有してもよい。同軸電極構造を用いることもでき、それは一番目の電極が二番目の電極内に同軸状に配置されている。一つの電極が印加され、他の電極は接地することもでき、かつアークを防ぐために誘電体層を含めることができる。
【0029】
非平衡大気圧プラズマは、2個の電極間に前記プロセスガス雰囲気を有する同電極間で発生させることができる。例えば、プラズマは、2個の電極間の隙間で、電極の長さに対して垂直な方向にプロセスガスを前記隙間に流しながら発生され、電極間の隙間から外側に伸びるプラズマナイフを形成することができる。
【0030】
電極への電源は、プラズマ発生用として知られている高または無線周波数電源、すなわち1kHz〜300kHzの範囲にある。最も好ましい範囲は非常に低い周波数(VLF)3kHz〜30kHz帯であり、低周波数(LF)30kHz〜300kHz範囲もまたしゅびよく用いることもできる。10kHzから40kHzの範囲内および特に18kHz〜28kHz範囲内の周波数が最も好ましい。非熱平衡プラズマ装置に用いられる高または無線周波数電源は、連続モードまたはパスルモード、例えばRF発生器からの出力をトリガーするためパルス信号発生器126を用いて、のいずれかで作動することができる。一つの適する電力供給は、ハイデン・ラボラトリーズ社(Haiden Laboratories Inc.)のPHK−2Kユニットで、それは二極パルス波、高周波および高電圧発生器である。それは通常の正弦波高周波数電力供給よりも早い上昇および下降時間(<3μs)を有する。ユニットの周波数は1〜100kHzの間で変化する。
【0031】
プロセスガスの主部分を形成する希ガスは例えばヘリウムまたはアルゴンであり得る。プロセスガスとしてヘリウムを使用すると、通常、アルゴンよりも低い電圧でプラズマは燃すことができるので、ヘリウムが好ましい。無線周波数高電圧を誘電体ハウジング内に配置された少なくとも1個の電極に、希プロセスガスをハウジングの入口から電極を通って出口へ流れるようにさせながら、印加することを含む方法で、ヘリウムまたは他の希ガスの流速は好ましくは0.5〜10または25標準リットル/分の範囲内である。
【0032】
プロセスガスに混合される窒素の量は、ほとんどの場合、少なくとも0.2容量%、好ましくは少なくとも0.5容量%である。窒素の量は10容量%まで、またはそれ以上でもよい。窒素の最適量は用いる希ガスおよびその流速、RF発生器からの印加される出力ならびに用いる表面処理剤および処理される表面の化学的性質により変動し得る。一般的に窒素の高い濃度はより高い出力で必要となる。25kV以下、例えば10〜25kVでは、窒素の好ましい濃度は0.2〜5容量%となる。25kV超では、窒素の好ましい濃度は0.5〜10容量%となる。大抵の条件下では窒素の最適濃度はヘリウムプロセスガスの1〜5容量%の範囲内である。プロセスガスはさらに望まれるなら二酸化炭素などの気体を含有することができ、そのようなさらなる気体は好ましくはプロセスガスの5容量%未満で用いられる。
【0033】
大気圧プラズマに混合されることができる表面処理剤の例として、重合性有機コーティング形成材料、特に、メタクリラート、アクリラート、スチレン、ニトリル、アルケンおよびジエンを含むオレフィン系不飽和材料、例えばメチルメタクリラート、エチルメタクリラート、プロピルメタクリラート、ブチルメタクリラートおよび他のアルキルメタクリラート、ならびに対応するアクリラート、ポリ(エチレングリコール)アクリラートおよびメタクリラート、グリシジルメタクリラート、アリルメタクリラート、ヒドロキシエチルメタクリラート、ヒドロキシプロピルメタクリラート、ジアルキルアミノアルキルメタクリラート、およびフルオロアルキル(メタ)アクリラート、例えば、式
【0034】
【化1】

【0035】
のへプタデシルフルオロデシルアクリラート(HDFDA)のような有機官能性メタクリラートおよびアクリラート、メタクリル酸、アクリル酸、フマル酸およびエステル類、イタコン酸(およびエステル類)、無水マレイン酸、スチレン、α−メチルスチレン、ハロゲン化アルケン、例えば、塩化ビニルおよびフッ化ビニルのようなハロゲン化ビニル、ならびにフッ素化アルケン、例えば、パーフルオロアルケン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチレン、プロピレン、アリルアミン、ハロゲン化ビニリデン、ブタジエン、N−イソプロピルアクリルアミド、メタアクリルアミドのようなアクリルアミド、リン含有化合物、例えば、ジメチルアリルホスホナート、およびアクリル官能性オルガノシロキサンおよび/またはトリメトキシシリルプロピルメタクリラートのようなアクリル官能性シランが挙げられる。
【0036】
あるいは、表面処理剤は有機ケイ素化合物でもよい。適する有機ケイ素化合物としてシラン(例えば、シラン、アルキルシラン、アルキルハロシラン、テトラエトキシシランなどのようなアルコキシシランまたはグリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのようなエポキシアルキルシラン)および直鎖状(例えば、ポリジメチルシロキサンまたはポリ水素メチルシロキサン)および環状シロキサン(例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサンまたはテトラメチルシクロテトラシロキサン)、それには有機官能性直鎖状または環状シロキサン(例えば、ハロ官能性およびハロアルキル官能性直鎖状およびトリ(ノノフルオロブチル(nonofluorobutyl))トリメチルシクロシロキサンなどの環状シロキサン)。例えば有機ケイ素化合物などを含む大気圧プラズマで表面上に形成されるコーティングは、通常、ポリオルガノシロキサンを含む。異なるケイ素含有材料の混合物は、例えば、特定の要求(例として、熱的特性、屈折率のような光学特性、および粘弾性特性)を基材コーティングの物理的特性に合わせるため用いることができる。
【0037】
あるいは、表面処理剤は、縮合および/または開環重合により重合される有機コーティング形成材料、例えばエポキシ化合物、例としてグリシドール、スチレンオキシド、ブタジエンモノオキシド、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリシジルメタクリラート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(およびそのオリゴマー)もしくはビニルシクロヘキセンオキシド、または導電性重合体に重合される複素環式化合物、例えばピロールおよびチオフェンならびにそれらの誘導体でもよい。
【0038】
一般に、ポリシロキサンコーティング形成用有機ケイ素化合物を含有する大気圧プラズマにおいて、フィラメント形成を減らすために、希プロセスガスに基づく窒素のより高い濃度が、ポリアクリラートコーティング形成用モノマーを含有するプラズマに対するよりも必要である。例えば、表面処理剤がシロキサンであるなら、ヘリウム大気圧プラズマは低印加電圧(最高25kVまで、例として20〜25kV)で窒素1容量%にて安定化し得る。もし印加電圧を例えば30kVに上げると、プラズマ中のフィラメント形成の最適減少および基材上に形成されたポリシロキサンコーティングの平滑性を与えるために、3〜5容量%の窒素が必要となる。しかし、表面処理剤が例えばフルオロアクリラートなどの重合性フルオロモノマーであるなら、0.5〜1容量%の窒素のヘリウムプロセスガスへの添加が大気圧プラズマ中のフィラメント形成を実質的に減らす。
【0039】
典型的に、表面処理剤は霧化された形態で導入される液体である。表面処理剤、例えばコーティング前駆体の濃度は、好ましくはプロセスガスの標準リットル当たり液状表面処理剤0.1〜30μlの範囲である。
【0040】
表面処理剤の噴霧器は、プロセスガスが流れるハウジング内に配置することができる。例として、空気ネブライザーまたは超音波噴霧器などの霧化装置は、プロセスガス用入口を有する誘電体ハウジング内の2個の電極の間に前記装置の出口があって、前記ガスが噴霧器からの霧化された液体とおよそ平行に電極間を流れるように、配置されるのがよい。噴霧器は好ましくは表面処理剤を霧化する気体を用いる。プラズマを発生させるのに用いられるプロセスガスは表面処理剤を霧化するための霧化気体として用いることができる。あるいは、噴霧器が、霧化された表面処理剤を電極およびプロセスガス入口のプラズマ下流中に供給するように配置されることもできる。複数の噴霧器が、例えば混和しない二つの異なるコーティング形成材料から共重合体コーティングを基材上に形成するために用いられ得る。
【0041】
噴霧器は、例えば空気ネブライザー、特にBurgener Research Inc.(カナダ国オンタリオ州ミシサーガ)で販売され、または米国特許第6634572号に記載されたものなどのような並列経路ネブライザーがよい。あるいは、噴霧器は、ポンプが液状表面処理剤を超音波ノズルに運び、続いて霧化される表面上に液状フィルムを形成するところの超音波噴霧器でもよい。超音波が液状フィルムに定常波を形成させ、その結果液滴が形成される。噴霧器は好ましくは10〜100μmまで、より好ましくは10〜50μmの液滴サイズを生成する。本発明の使用に適する噴霧器はSono−Tek社(米国ニューヨーク州ミルトン)からの超音波ノズルである。あるいは、噴霧器として、例えばエレクトロスプレー技術、静電帯電を通して非常に細かい液状エーロゾルを発生する方法が挙げられる。最も一般的なエレクトロスプレー装置は、鋭くとがった中空金属管を、その管からポンプでくみ上げられた液体とともに用いている。高電圧電源装置は前記管の出口に接続されている。電源装置にスイッチを入れ、適切な電圧に調整されると、管からポンプでくみ上げられた液体が、細かい連続性の霧の液滴へ変わる。インクジェット技術は、キャリアガスを必要とせずに、熱的、圧電性、静電気性および超音波法を用いて、液滴を発生することにも用いることができる。
【0042】
前記非平衡大気圧プラズマが、誘電体ハウジング内に配置された少なくとも1個の電極に、前記プロセスガスをハウジングの入口から電極を通って出口へ流れるようにさせながら、無線周波数高電圧を印加することにより発生されときは、少なくとも一部が誘電材料で形成された管がハウジングの出口から外側に伸びており、それにより管の末端がプラズマの出口を形成し、プラズマは電極から前記プラズマ出口まで伸びている。この方法において、長い管の使用は非平衡大気圧プラズマ放電ジェットをかなりの距離、例えば少なくとも150mmまたは300mmを超えても安定化させられ得る。これは、例え電極と基材との間があまりにも小さくてプラズマが破壊されて、印加された電極と基材との間で高温アークを形成する傾向があっても、導電性または半導性基板を処理するときに有利である。希プロセスガスに少ない割合の窒素を含有させるとアーク放電を減少させると同時に、管内のプラズマジェットを伸ばすのにさらに有利である。
【0043】
非平衡プラズマを伸ばす前記管は少なくとも一部が誘電材料例えばプラスチック、例としてポリアミド、ポリプロピレンまたはPTFEで形成される。前記管は、好ましくはプラズマ出口が基材に対して移動できるように柔軟である。300mmを超える長さのプラズマジェットを安定化するためには、パイプの隣接した一つに接続する好ましくは鋭い端を持つ導電性円筒を用いることは有益である。それら円筒は好ましくはアースされていない。好ましくは、それらリングは両側に丸く鋭い端を有する。それら金属円筒の内部を通るので、プロセスガスは金属に接する。プラズマ領域内で作り出されたフリー電子が鋭い導電性端近くに強い電場を誘発し、パイプ内のプロセスガスをさらにイオン化する。円筒の他の側の鋭い端は強い電場を作り出し、それが次のパイプ部分のガスのイオン化を開始する。このようにパイプ内のプラズマは伸ばされる。国際公開第2006/048650号に記載されているとおり、必要ならば、多数の金属コネクタの使用することで、数メートルを超えてプラズマを伸ばすことができる。
【0044】
本発明の方法は、国際公開第02/028548または国際公開第03/085693号の実施例に記載されているとおり、1個以上の平行電極配列を有するアセンブリでのプラズマ発生にも適用することができる。国際公開第2004/068916号に記載されているとおり、電極は内外壁を有するハウジングを含み、内壁は無孔な誘電材料から形成されており、ハウジングは非金属導電性材料を保有する。アセンブリは、垂直に配置され平行に隙間を介した平面電極の第一および第二対を、一つの電極に隣接する各対の間に誘電体板と、電極間の第一または第二プラズマ領域に霧化されたコーティング材料を導入する噴霧器(74)とともに備える。アセンブリは、電極間の一つまたは両方のプラズマ領域を通して基材を運ぶ手段を備える。大気圧プラズマ放電の均一性はそれらのアセンブリではほとんど問題とならないので、窒素の使用はそのような平行電極アセンブリでは少ない付加利益を与えることであろう。
【0045】
本発明の方法はプラズマコーティング導電性および半導性基材、特に例えばシリコンおよび窒化ガリウム半導体ウェハー、プリント基板、フレキシブルディスプレーを含むディスプレー、および電子部品例えばレジスター、ダイオード、コンデンサー、トランジスター、発光ダイオード、レーザーダイオード、集積回路(IC)、ICダイ、ICチップ、メモリ素子、論理素子、コネクタ、キーボード、太陽電池および燃料電池などの電子産業で使われる基板に特に有用である。例えば、ポリオルガノシロキサン誘電体コーティングはシリコンウエハー上に形成でき、または疎油性かつ疎水性フルオロポリマーコーティングは回路基板上に形成することができる。誘電体コーティング層は光起電装置の半導体基板の裏面に堆積させることができる。
【0046】
本発明によりコーティングできる他の材料として、コンタクトレンズを含むレンズなどの光学部品、軍事、航空宇宙および運送装置およびそれらの部品、例えばガスケット、シール、異形材(profiles)、ホースおよび電子・診断部品、台所、浴室および調理器具を含む家庭用品、オフィス装置ならびに実験器具が挙げられる。適するコーティングとして、国際公開第2005/110626号に記載されているように、例えば表面活性化、抗菌性、摩擦低減(潤滑)、生体適合性、耐腐食、疎油性、疎水性、バリアー、自己洗浄、もしくはプリント接着用コーティング、または活性物質を含有するコーティングが塗布され得る。
【0047】
本発明のさらなる実施態様では、希プロセスガス雰囲気に接触する少なくとも1個の電極に無線周波数高電圧を印加することにより希プロセスガスで発生する非平衡大気圧プラズマの均一性を改善するために、プロセスガス中における少ない割合の窒素の使用を提供する。希プロセスガスに接触する少なくとも1個の電極に無線周波数高電圧を印加することにより希プロセスガス中で発生する非平衡大気圧プラズマの均一性を改善するための、プロセスガス中における少ない割合の窒素の使用。好ましくは希ガスがヘリウムまたはアルゴンである。
【0048】
プロセスガスに接触する少なくとも1個の電極に無線周波数高電圧を印加することによりプロセスガス中で非平衡大気圧プラズマを発生する本発明による方法は、前記プロセスガスが希ガスおよび窒素とを、窒素10容量部に対し希ガス90容量部から窒素0.2容量部に対し99.8容量部までの割合で含むことを特徴とする。
【0049】
添付の図面を参照して本発明を説明する。図1および2の装置は、2個の向かい合った電極11,12間に約4mmの隙間13を有する電極を含む。電極11,12は高圧RF波長電源(図示されていない)に接続されている。一つの電極11は誘電材料で覆われており、他の電極12はプラズマ形成を容易にするため粗面化された表面を有した。それらの電極は、プロセスガスチャンバー18を取り囲むハウジング17に取り付けられたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ハウジング14,15内に埋め込まれた。ハウジング17はプロセスガス用入口19,20および霧化された表面処理剤用入口21を有する。チャンバー18は異なるプロセスガスおよび/またはプロセスガスと霧化された表面処理剤の混合チャンバーとして機能することができる。プロセスガスチャンバー18からの唯一の出口は隙間13を通してである。RF高電圧が電極11,12に印加およびプロセスガスがチャンバー18に供給されると、非平衡大気圧プラズマが隙間13中に形成され、プラズマナイフとして電極の外側に向かって伸びて、それを基材処理に用いられ得る。
【0050】
純ヘリウムがプロセスガスとして用いられたときは、プラズマフレームが生成され、電極11,12から約30mm伸びた。フレームの緻密な観察で、ガスがチャンバー18から出るときに前記ガスによってプラズマ隙間13から噴き出された複数のマイクロ放電を含むことを明らかにした。
【0051】
窒素の少量、例えば4容量%がヘリウムに加えられると、それはプラズマに顕著な影響をもたらした。マイクロ放電が消え、電極11,12間のプラズマ隙間13に均一な拡散放電と思われるもので置き換えられた。プラズマは、プラズマナイフとして電極を超えて伸びたが、プラズマナイフは純ヘリウム放電により発生されたものと同じくらいの長さではなかった;それは約15mmであった。プラズマナイフは基材を活性化するのに用いられ得る。霧化された表面処理剤がプロセスガスとともにチャンバー18に供給されると、プラズマナイフは基材上にコーティングを堆積させるに用いることができる。プロセスガス中に窒素を用いて金属基材上に堆積されたコーティングは、プロセスガスとして窒素なしにヘリウムを用いて堆積したコーティングよりも平滑であった。
【0052】
図3の装置において、シャフト31はPTFEシリンダー32の真中に、ヘリウムプロセスガスおよび任意に霧化された表面処理剤の流れを表示された方向に運ぶために、穴があけられた。2個の小さい孔33,34が主軸31のどちらかの側に掘られた。金属線がそれらサイドシャフト33,34のそれぞれに挿入され電極35,36を形成した。RF高電圧がそれら電極間に印加されると、プラズマがシャフト31内で形成され、気体流によって吹き出されてジェットを形成した。
【0053】
純ヘリウムがシャフト31を通過し、RF出力が18kHzで、100WのRF発生器からの要求の50%出力で電極35、36に印加されると、均質なプラズマが生成されて長く安定なジェットを形成した。印加電力を高くすると、プラズマはフィラメント状になった。ヘリウムガス流に5容量%の窒素を加えると100WのRF発生器からの要求の80%までの出力で均一な拡散モードを安定にし、フィラメント状プラズマモードの形成を防ぐことが分かった。
【0054】
図4のプラズマジェットは、コーティング前駆体が細かなエーロゾル霧として導入されて通る噴霧器44を取り囲む金属電極41,42の電極アセンブリを含んでいた。プラズマプロセスガスは電極41,42を取り囲む開口部46,47を通る。電極は互いに離され、かつ誘電体スクリーン48,49によりネブライザーから離されており、かつ装置はチューブ状の誘電体ハウジング51内に収容される。誘電的に覆われかつ接地されている対電極53がハウジング51の出口52の周りに配置されている。
【0055】
RF出力の電極41、42へ印加は噴霧器44のプラズマ下流を生成する。重合性コーティング前駆体を噴霧器44を通過させると、噴霧器からのエアロゾルがプラズマを通り、重合反応が起こる。ポリマーコーティングがハウジング51の出口52に隣接して配置された55のように基材に堆積することができる。
【0056】
図4の装置が、ハウジング51の出口52に隣接する基材55なしに、または誘電体基材55とともに稼働されると、プラズマは、対電極53の有無を問わず、かつ隙間46,47と通して供給された希プロセスガスが窒素を含んでいるか否かを問わず、非フィラメント状である。基材55が導電性または半導性であるときは、供給された純ヘリウムまたは純アルゴンプロセスガスで形成されたプラズマは電極41,42と基材55との間でフィラメント状放電を形成する傾向がある。この結果、平坦でない表面処理となる。その系は、平坦で、透明かつ接着性のコーティングを堆積しない。代わりに、高出力の局所領域は粒子の形成を生じさせる。接地された対電極53が存在すると、代わりの接地経路を提供し、フィラメントの多くを取り除ける。しかし、鋭い部分で導電性または半導体基材55を処理、または供給された純ヘリウムもしくは純アルゴンプロセスガスとともに高出力で稼働すると、系はまだ時おりアークする傾向があった。
【0057】
開口部46,47を通るプロセスガス流に窒素が加えられると、稼働中に対電極53の有無を問わず、フィラメント形成を抑制することが分かった。プロセスガスの主成分を形成する希ガスがヘリウムで、かつ希プロセスガスがアルゴンであると、プラズマは非フィラメント状放電として安定化された。プロセスガス流への窒素の添加と接地された対電極53の使用との組み合わせは、導電性基材55があるときでさえ、フィラメント状を含まないプラズマを生成し、プラズマジェットが様々な導電性および半導性基材にコーティングすることを可能にした。
【0058】
本発明は次の実施例により例証される。
【実施例】
【0059】
<実施例1>
ハウジング51の出口周囲に配置され、誘電的に覆われかつ接地された対電極53を有する図4の装置を用いて、プラズマが形成された。ヘリウムが7標準リットル/分(slm)で導入され、窒素が50標準立方センチメートル/分(sccm)でプロセスガス供給開口部46,47を通って供給された。RF出力が18kHzの周波数で100WのRF発生器からの要求の80%出力で印加された。これでフィラメント状でなく均一なプラズマが生成された。フルオロカーボン前駆体、ヘプタデカフルオロデシルアクリラートがプラズマに5μl/分で噴霧された。プラズマはフィラメント状でなく均一なままであった。
【0060】
プラズマは、その後、45mm/秒の速度で、ステンレス基板上および電子印刷回路板(PCB)上を通過した。いずれの場合もプラズマは、アークまたはフィラメント形成の形跡もなく安定かつ平滑な疎油性コーティングを基板上に堆積した。ステンレスにおいて、生成されたコーティングは、90°の水接触角および50°のテトラデカン接触角を有した。
【0061】
<実施例2>
図4のプラズマジェット装置を用いて、次の加工パラメーターでシロキサンコーティングがシリコンウエハー基板55上に堆積された。
プラズマ出力:18kHzで100WのRF発生器からの要求の90%出力
ヘリウム流:5slm
CO2流:50sccm
コーティング前駆体:15μl/分で噴霧されたテトラメチルシクロテトラシロキサン
【0062】
窒素がプロセスガスに加えなかったときは、系はフィラメント状放電を生成した。得られたコーティングは、白色で、かなりの粉末粒子を含有していた。窒素が250sccmで加えられると、コーティングは、粉末と透明なコーティングとの混合物を含有していた。窒素気体流を350sccmに増大させると、プラズマは均一でフィラメントを含まないように見え、透明なコーティングが粒子の兆候もなくウェハー上に堆積された。
【0063】
プラズマ出力が50%に落とされた場合、窒素が何も加えられないときは、白色で微粒子コーティングがなおも生成された。透明なコーティングは、140sccm以上350sccmまでの窒素の流速で堆積された。
【0064】
出力が60%まで増加し、窒素の流速が140sccmで保たれていれば、コーティングは粒子のいくらかの痕跡を含むことが分かった。出力を60%で保持し続ける場合、200sccmの窒素をプロセスガス流に加えることにより透明なコーティングが形成できることが分かった。
【0065】
<実施例3>
さらなる一連のコーティングが図4に示された装置を用いて堆積された。テトラメチルシクロテトラシロキサン前駆体が再び90マイクロリッター/分の流速で系内に導入された。100W電源の全出力にスイッチが入れられ、ヘリウムガスが10リッター/分で導入されてプラズマを生成した。加えられる窒素(500mL/分まで)の種々の流速で、コーティングはその後リコンウエハー上に堆積された。実験は3および5mmの距離の基板に対し2個の異なるプラズマを用いて繰り返された。
【0066】
コーティングされた時点で、シリコンウエハー基板上に堆積されたフィルムの表面粗度を測定するために、Digital Instrument Dimension 5000原子間力顕微鏡が用いられた。測定は、自由振動振幅の〜0.9倍の振幅設定点でタッピングモード(Tapping Mode)を用いて取得された。二乗平均平方根(RMS)粗さパラメーターが、20ミクロン×20ミクロンのスキャンサイズを用いて1サンプルあたり異なる三カ所で測定された。結果を下記表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
これら結果は窒素の存在下で著しい改善を示すことが認められるであろう。粗さは、窒素濃度が増加するにしたがってコーティングが非常に平坦化し粗さがゼロに近づくまで減少することが明らかに見られる。このことは、窒素濃度の増加につれ、粒子形成および取り込みにおける著しい減少を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
霧化された表面処理剤を、希プロセスガスで発生された非平衡大気圧プラズマまたはそこから生じる励起および/もしくはイオン化ガス流中に混合し、かつ処理される表面を、そこに混合され霧化された表面処理剤を受けられるように配置する表面のコーティング方法であって、表面上に形成されるコーティングの粒子含有量を、プロセスガス中に少ない割合の窒素を混合することにより、減量することを特徴とする表面のコーティング方法。
【請求項2】
霧化された表面処理剤を、希プロセスガスで発生された非平衡大気圧プラズマ中に混合し、かつ処理される表面を、霧化された表面処理剤を含む大気圧プラズマと接触させて配置する表面プラズマコーティングを含み、該表面上に形成される該コーティングの粒子含有量を、プロセスガス中に少ない割合の窒素を混合することにより、減量することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非平衡大気圧プラズマが、希ガスと霧化された表面処理剤とを含むプロセスガス中で発生される請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記霧化された表面処理剤が、希ガス中で発生された非平衡大気圧プラズマ中に導入される請求状1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記霧化された表面処理剤が、重合性材料を含み、かつ前記表面上に形成された前記コーティングが、霧化された表面処理剤の重合体を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記重合性材料が、有機ケイ素化合物であり、かつ前記コーティングがポリオルガノシロキサンを含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記非平衡大気圧プラズマが、入口および出口を有する誘電体ハウジング内で、前記プロセスガスを該入口から電極を通って該出口へ流れるようにさせながら、該ハウジングに配置された少なくとも1個の電極に無線周波数高電圧を印加することにより発生され、プラズマは、該電極から該ハウジングの該出口へ伸びており、かつ処理される表面が、プラズマに接するように該出口に隣接して配置されるとともに前記プラズマ出口に対して移動することを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも一部が誘電材料で形成された管が、ハウジングの出口から外側に伸びており、それにより前記管の端がプラズマ出口を形成し、かつプラズマが前記電極から前記プラズマ出口へ伸びており、かつ処理される前記表面が、プラズマに接するように前記プラズマ出口に隣接して配置されるとともに前記プラズマ出口に対して移動することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記非平衡大気圧プラズマが、プロセスガスに接触する少なくとも1個の電極に無線周波数高電圧を印加することにより、前記プロセスガス中で発生され、前記プロセスガスが、希ガスおよび窒素を、窒素10容量部に対し希ガス90容量部から窒素0.2容量部に対し希ガス99.8容量部までの割合で含むことを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記無線周波数高電圧が、入口と出口とを有する誘電体ハウジング内に配置された少なくとも1個の電極に、前記プロセスガスを該入口から電極を通って該出口へ流れるようにさせながら、印加されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記無線周波数印加電圧が、10kVから25kVまでの範囲にあり、かつ前記プロセスガスが、ヘリウムおよび窒素を、窒素5容量部に対し希ガス95容量部から窒素0.5容量部に対し希ガス99.5容量部までの割合で含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記無線周波数印加電圧が、25kVから40kVまでの範囲にあり、かつ前記プロセスガスが、ヘリウムおよび窒素を、窒素10容量部に対し希ガス90容量部から窒素1容量部に対し希ガス99容量部までの割合で含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
霧化された表面処理剤が、前記プロセスガスに混合され、それによりプラズマ処理が、前記表面処理剤から誘導されるコーティングで前記表面を覆うことを特徴とする請求項9、10または11に記載の方法。
【請求項14】
希ガス雰囲気に接触する少なくとも1個の電極に無線周波数高電圧を印加することにより希プロセスガス中で非平衡大気圧プラズマを発生させるとともに、霧化された表面剤を該プラズマ中に混合することにより表面をコーティングする方法において、前記希ガスが少ない割合で窒素を含み、その窒素の量は前記表面上に形成されるコーティングの粒子含有量を減量するのに十分な量である改良。
【請求項15】
霧化された表面処理剤を、希プロセスガスで発生された非平衡大気圧プラズマまたはそこから生じる励起および/もしくはイオン化ガス流中に混合し、かつ処理される表面を、そこに混合され霧化された表面処理剤を受けられるように配置する表面のコーティング方法でのプロセスガス中における、前記表面上に形成されるコーティングの粒子含有量を減量するための、少ない割合での窒素の使用。
【請求項16】
前記霧化された表面処理剤を、希プロセスガスで発生される非平衡大気圧プラズマ中に混合し、かつ処理される表面を、前記霧化された表面処理剤を含む大気圧プラズマに接触させて配置することを特徴とする請求項15に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−539694(P2010−539694A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524465(P2010−524465)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際出願番号】PCT/EP2008/061716
【国際公開番号】WO2009/034012
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(502286568)ダウ・コーニング・アイルランド・リミテッド (11)
【氏名又は名称原語表記】Dow Corning Ireland Limited
【住所又は居所原語表記】HLB Nathans, Nathan House, Lavitts Quay, Cork, Ireland
【Fターム(参考)】