説明

封止用液状エポキシ樹脂組成物、電子部品装置及びウエハーレベルチップサイズパッケージ

【課題】印刷成形性が良好でボイド数が少なく、反りが小さく、強度、耐リフロー性、耐温度サイクル及び耐湿信頼性に優れる封止用液状エポキシ樹脂組成物、及びこれにより封止された素子を備えた電子部品装置およびウエハーレベルチップサイズパッケージを提供する。
【解決手段】(A)液状ビスフェノール型エポキシ樹脂、(B)シリコーンゴム微粒子、(C)シリコーン変性エポキシ樹脂、(D)芳香族アミン硬化剤、(E)カップリング剤、(F)無機充填剤、(G)有機溶剤を含有した封止用液状エポキシ樹脂組成物であって、(B)シリコーンゴム微粒子が、液状エポキシ樹脂中でアルケニル基含有オルガノポリシロキサンとSiH基含有オルガノハイドロジェンポリシロキサンのヒドロシリル化反応により架橋生成させたものである封止用液状エポキシ樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用液状エポキシ樹脂組成物、及びこの封止用液状エポキシ樹脂組成物で封止した素子を備えた電子部品装置およびウエハーレベルチップサイズパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品装置の低コスト化、小型・薄型・軽量化、高性能・高機能化を図るために素子の配線の微細化、多層化、多ピン化、パッケージの小型薄型化による高密度実装化が進んでいる。これに伴い、ICの素子とほぼ同じサイズの電子部品装置、すなわち、CSP(Chip Size Package)が広く用いられるようになってきている。
【0003】
その中で、ウエハー段階で樹脂封止を行うウエハーレベルチップサイズパッケージが究極のパッケージとして注目されている。このウエハーレベルチップサイズパッケージは、半導体素子として微細配線が施され、かつ、その表面に外部接続端子引出し用の再配線及び電極が形成され、該電極上にバンプが形成もしくはリードが接続されたシリコンウエハーの表面をエポキシ樹脂組成物で封止し、バンプもしくはリードにはんだ付けを行った後、該シリコンウエハーを個々の素子に切断、製品とするものである。この方式は、ウエハー段階で、固形のエポキシ樹脂組成物を用いたトランスファーモールド成形や、液状のエポキシ樹脂組成物を用いた印刷成形により多数の素子を一度に封止し個片化するため、素子を個片化してから封止する方法に比べ大幅な生産合理化が可能となる。しかしながら、ウエハーレベルチップサイズパッケージにおいては、封止したウエハーが反りやすく、この反りがその後の搬送、研削、検査、個片化等の各工程で問題となっており、デバイスによっては素子特性に変動が生じる問題がある。ウエハー径は、更なるコストダウンを図るため益々大きくなる傾向にあり、ウエハー径が大きくなればなるほど反りが大きくなるため、ウエハーの反りを小さくすることがウエハーレベルチップサイズパッケージを普及させる上で重要な課題となっている。
【0004】
また、印刷成形法によるウエハーレベルチップサイズパッケージの製造においては、減圧処理工程で液状エポキシ樹脂組成物中の残存エアーを除去する際の破泡性や脱泡性に優れ、硬化物中の残存ボイドが少ないことが要求される。一方、従来から、トランジスタ、IC等の電子部品装置の素子封止の分野では、生産性、コスト等の面から樹脂封止が主流となり、エポキシ樹脂成形材料が広く用いられている。この理由としては、エポキシ樹脂が電気特性、耐湿性、耐熱性、機械特性、インサート品との接着性等の諸特性にバランスがとれているためである。ウエハーの反りは、このエポキシ樹脂組成物の成形収縮や、シリコンウエハーとエポキシ樹脂組成物の熱膨張係数のミスマッチによって発生する応力が影響するものであり、パッケージの信頼性も低下させる恐れがある。そのため、このような用途に用いるエポキシ樹脂組成物には低応力化が必要となり、一般には、エポキシ樹脂組成物の成形収縮を下げたり、無機充填剤を高充填し熱膨張係数を小さくしたり、可撓化剤や可撓性樹脂を用い弾性率を小さくすることが有効とされている。
【0005】
例えば、特許文献1記載では、ナフタレン骨格型エポキシ樹脂又はビフェニル骨格型エポキシ樹脂を含有し、シリコーンパウダーとシリコーンオイルを添加した液状エポキシ樹脂組成物が開示されている。また、特許文献2及び特許文献3では、シリコーン変性エポキシ樹脂を主成分とし、常温での弾性率が5GPa以下の液状樹脂組成物が開示されている。
【特許文献1】特許第3397176号公報
【特許文献2】特開2003−238651号公報
【特許文献3】特開2003−238652号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、無機充填剤を高充填することにより熱膨張係数をウエハーに近づける手法だけでは、硬化物自体の弾性率が高くなるために応力低減が不十分となり低反りには限界がある。上記特許文献1記載のシリコーンパウダーとシリコーンオイルを添加する手法では、粒子の平均粒径が3〜10μm程度のシリコーンゴムを粉体状態で添加するために、硬化物中にサブミクロンオーダーの粒径で均一分散することが困難であり、ウエハーの反りを十分に小さくすることができない問題が生じる場合がある。また、粉体状態で多量に添加すると著しく増粘するばかりか分散自体が困難となるために、応力低減に効果的な量のシリコーンパウダーを添加できなくなり、同様にウエハーの反りを十分に小さくすることができない問題が生じる。また、シリコーンパウダーとシリコーンオイルから成るシリコーン成分中におけるシリコーンオイルの量は、液状エポキシ樹脂組成物の粘度を下げて流動性を最適化するために65〜85質量%に設定する必要があり、シリコーン成分の大部分がシリコーンオイルから成る。
ウエハーの反りを小さくするためにシリコーンパウダーの量を増やすと、それ以上にシリコーンオイルの量も増えるために、機械的強度が低下し、研削時やウエハーダイシング時に封止樹脂がかけたりする問題が生じ易くなる。
【0007】
また、上記特許文献2及び特許文献3記載のシリコーン樹脂をベース樹脂に用いる手法では、硬化物の弾性率が低下し応力緩和により反りを小さくすることができる。しかしながら、シリコーン樹脂の量が増えるとチクソトロピック性が発現し易くなり、添加量によってはチクソトロピック性の指標である揺変指数(低回転での粘度/高回転での粘度の比)が著しく高くなり、印刷時の広がり性や減圧脱泡性が低下し成形性に問題が生じる場合がある。また、樹脂組成物の主成分が低弾性体の柔らかい樹脂骨格から成るため、機械的強度が低下し、封止樹脂を均一に研削することが困難になったり、ウエハーダイシング時に封止樹脂がかけたりする問題が生じ易くなる。
更に、ガラス転移温度や強度の低下により耐湿信頼性が低下するという欠点がある。ウエハーレベルチップサイズパッケージに使用される封止用液状エポキシ樹脂組成物には、優れた成形性、高強度、高信頼性を発現させながら低応力化を図り、ウエハーの反りを抑えることが望ましいが、有効な解決策は見出されていない。
【0008】
本発明はかかる状況に鑑みなされたもので、印刷成形時の破泡性や脱泡性に優れ、また、ウエハーレベルチップサイズパッケージ等の低反り性が要求される電子部品装置に適用しても反りが小さく抑えられ、かつ強度、耐熱衝撃性、耐湿性等の信頼性に優れた封止用エポキシ樹脂組成物、及びこの封止用エポキシ樹脂組成物で封止した素子を備えた電子部品装置及びウエハーレベルチップサイズパッケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の(1)〜(11)に関する。
(1) (A)液状ビスフェノール型エポキシ樹脂、(B)シリコーンゴム微粒子、(C)シリコーン変性エポキシ樹脂、(D)芳香族アミン硬化剤、(E)カップリング剤、(F)無機充填剤、(G)有機溶剤を含有した封止用液状エポキシ樹脂組成物であって、
(B)シリコーンゴム微粒子が、液状エポキシ樹脂中でアルケニル基含有オルガノポリシロキサンとSiH基含有オルガノハイドロジェンポリシロキサンのヒドロシリル化反応により架橋生成させたものである封止用液状エポキシ樹脂組成物。
【0010】
(2) (A)液状ビスフェノール型エポキシ樹脂、(B)シリコーンゴム微粒子、(C)シリコーン変性エポキシ樹脂、(D)芳香族アミン硬化剤、(E)カップリング剤、(F)無機充填剤、(G)有機溶剤を含有した封止用液状エポキシ樹脂組成物であって、(B)シリコーンゴム微粒子の粒径が0.1〜2μmである封止用液状エポキシ樹脂組成物。
【0011】
(3) (C)シリコーン変性エポキシ樹脂が一般式(I)で示されるシロキサン構造を有するものである前記(1)又は(2)に記載の封止用液状エポキシ樹脂組成物。
【化1】

(ここで一般式(I)中のRはアルキル基又はフェニル基であり、同一でも異なっていても良く、nは1以上の整数である。)
(4) (B)シリコーンゴム微粒子の配合割合が(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量に対して13〜40質量%、(C)シリコーン変性エポキシ樹脂の配合割合がエポキシ樹脂成分の全量に対して5〜35質量%、かつ(C)シリコーン変性エポキシ樹脂の配合割合が(B)成分と(C)成分との合計量に対して8〜64質量%である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の封止用液状エポキシ樹脂組成物。
(5) (B)シリコーンゴム微粒子が、ビニル基含有オルガノポリシロキサンとSiH基含有オルガノハイドロジェンポリシロキサンのヒドロシリル化反応により架橋生成させたものであり、アミノ基又はエポキシ基と反応することができる官能基を有する前記(1)〜(4)のいずれかに記載の封止用液状エポキシ樹脂組成物。
(6) (B)シリコーンゴム微粒子の官能基がエポキシ基である前記(5)記載の封止用液状エポキシ樹脂組成物。
(7) (D)芳香族アミン硬化剤がジエチルトルエンジアミン又は3,3´−ジエチル−4,4´−ジアミノジフェニルメタンである前記(1)〜(6)のいずれかに記載の封止用液状エポキシ樹脂組成物。
(8) (F)無機充填剤の配合割合が、(A)成分〜(F)成分の合計量に対して80〜94質量%である前記(1)〜(7)のいずれかに記載の封止用液状エポキシ樹脂組成物。
(9) 前記(1)〜(8)のいずれかに記載の封止用液状エポキシ樹脂組成物により封止された素子を備えた電子部品装置。
(10) ウエハーレベルチップサイズパッケージの封止に用いられる前記(1)〜(8)のいずれかに記載の封止用液状エポキシ樹脂組成物。
(11) 前記(1)〜(8)のいずれかに記載の封止用液状エポキシ樹脂組成物により封止された素子を備えたウエハーレベルチップサイズパッケージ。
【発明の効果】
【0012】
印刷成形時の破泡性や脱泡性に優れ、また、ウエハーレベルチップサイズパッケージ等の低反り性が要求される電子部品装置に適用しても反りが小さく抑えられ、かつ強度、耐熱衝撃性、耐湿性等の信頼性に優れた封止用エポキシ樹脂組成物、及びこの封止用エポキシ樹脂組成物で封止した素子を備えた電子部品装置及びウエハーレベルチップサイズパッケージを提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明において用いられる(A)液状ビスフェノール型エポキシ樹脂は、ビスフェノール骨格を有し常温で液状であれば特に制限はなく、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型のエポキシ樹脂等が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。この液状ビスフェノール型エポキシ樹脂の一部または全部は、後述するアルケニル基含有オルガノポリシロキサンとSiH基含有オルガノハイドロジェンポリシロキサンのヒドロシリル化反応生成物との混合物として用いることができる。なお、(A)液状ビスフェノール型エポキシ樹脂には後述する(C)シリコーン変性したエポキシ樹脂は除く。
【0014】
(A)液状ビスフェノール型エポキシ樹脂の量は、本発明の効果を達成するために、エポキシ樹脂成分全量に対して65〜95質量%に設定されることが好ましい。65質量%未満では、ウエハーの反り低減と所望のガラス転移温度の達成を両立することが困難となり、耐湿性も低下する。95質量%を超えると、印刷時の破泡性、脱泡性が低下する傾向がある。
【0015】
本発明において用いられる(B)シリコーンゴム微粒子は、液状エポキシ樹脂中でアルケニル基含有オルガノポリシロキサンとSiH基含有オルガノハイドロジェンポリシロキサンのヒドロシリル化反応により架橋形成させたものであるのが好ましい。これにより、粒径が微細なため、硬化物中の分散性の良いシリコーンゴム微粒子を得ることができる。液状ビスフェノール型エポキシ樹脂中で前記反応をさせることが、最終的に得られる封止用液状エポキシ樹脂組成物の粘度、その硬化物のガラス転移温度、接着性、強度及び成形後のウエハー反り等のバランスの点から好ましい。また、オルガノポリシロキサン内のアルケニル基をビニル基とすることが、より好ましい。
(B)成分は、アミノ基又はエポキシ基と反応することができる官能基を有するものがより好ましい。この官能基は、例えばカルボキシル基、水酸基、イソシアネート基、チオール基、エポキシ基、アミノ基等が挙げられ、なかでも、エポキシ基が好ましい。
【0016】
液状エポキシ樹脂中でエポキシ基を付与させたシリコーンゴム微粒子を調製する具体的な例としては、例えば米国特許第4,853,434号公報に開示されているような、液状ビスフェノール型エポキシ樹脂中で、ビニル基含有オルガノポリシロキサンとSiH基含有オルガノハイドロジェンポリシロキサン、エチレンオキシド鎖を有するエポキシ化アリルアルコール、及びアリルグリシジルエーテルを、ヘキサクロロ白金酸等の白金系触媒存在下、混合後分散装置で分散させ、次いで110℃×2時間攪拌してヒドロシリル化反応架橋させ、エポキシ基を有するシリコーンゴム微粒子を生成したものが挙げられる。このようなシリコーンゴム微粒子の、工業的に入手可能な市販品としては、ALBIDUR EP2240(Hanse Chemie社製商品名、ビスフェノールA型エポキシ樹脂中に微粒子が分散している。)等がある。このように本発明では(A)液状ビスフェノール型エポキシ樹脂等の液状エポキシ樹脂との混合物として配合するのが好ましい。
【0017】
シリコーンゴム微粒子は球状であることが好ましく、粒径は0.1μm以上2μm以下であることが好ましく、更に好ましくは0.1μm以上1μm以下である。このシリコーンゴム微粒子を用いることにより、本発明で得られる封止用液状エポキシ樹脂組成物中でのシリコーンゴム微粒子の平均粒径を小さくし、分散性を向上させ、更にシリコーンゴム微粒子含有量を増やすことが可能となる。
【0018】
(B)シリコーンゴム微粒子の量は、本発明の効果を達成するために、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量に対して13〜40質量%に設定されることが好ましい。13質量%未満では、十分な低応力化が図れないために反りが大きくなる傾向があり、40質量%を超えると、硬化物の強度や耐湿性が低下する傾向がある。
【0019】
本発明において用いられる(C)シリコーン変性エポキシ樹脂は、印刷塗布後の破泡性、脱泡性及び成形時の低応力性を向上させるためのものであり、液状であることが好ましく、また、下記の一般式(I)で示されるシロキサン構造を有することが好ましい。
【化2】

ここで一般式(I)中のRはアルキル基又はフェニル基であり、同一でも異なっていても良く、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、フェニル基等が挙げられるが、特にメチル基が好ましい。一般式(I)中のnは1以上の整数である。一般式(I)で示されるシロキサン構造を有するシリコーン変性エポキシ樹脂として、工業的に入手可能な市販品としては、ALBIFLEX296、ALBIFLEX348、XP544(Hanse Chemie社製商品名)等がある。
【0020】
また、その他の(C)シリコーン変性エポキシ樹脂としては、上記一般式(I)で示されるシロキサン構造を有するエポキシ樹脂と、フェノール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基等のエポキシ基と反応することができる置換基を有し、かつシロキサン構造を有さない化合物と反応して得られるもの、また、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂のようなシロキサン構造を有さないエポキシ樹脂と、フェノール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基等のエポキシ基と反応することができる置換基を有し、かつ一般式(I)で示されるシロキサン構造を有する化合物と反応して得られるものが挙げられる。
【0021】
中でも、下記の一般式(II)で示されるエポキシ樹脂とビスフェノール類とを反応したものが好ましい。
【化3】

ここでRはアルキル基又はフェニル基であり、同一でも異なっていても良く、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、フェニル基等が挙げられるが、特にメチル基が好ましい。また、nは1以上の整数であり、25以下が好ましく、15以下がより好ましい。一般式(II)で示されるエポキシ樹脂として工業的に入手可能な市販品としては、KF−105、X22−163A(信越化学工業株式会社製商品名)、TSL9906(GE東芝シリコーン株式会社製商品名)等があり、エポキシ当量は1000g/eq.以下が好ましく、600g/eq.以下がより好ましい。
【0022】
反応に用いられるビスフェノール類としては、一分子中にフェノール性水酸基を2個有するものであれば特に制限はなく、例えば、ハイドロキノン、レゾルシノール、カテコール等の単環二官能フェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS等のビスフェノール類、4,4´−ジヒドロキシビフェニル等のジヒドロキシビフェニル類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル等のジヒドロキシフェニルエーテル類及びこれらのフェノール骨格の芳香環に直鎖アルキル基、分岐アルキル基、アリール基、メチロール、アリル基、環状脂肪族基等を導入したもの、これらのビスフェノール骨格の中央にある炭素原子に直鎖アルキル基、分岐アルキル基、アリル基、置換基のついたアリル基、環状脂肪族基、アルコキシカルボニル基等を導入した多環二官能フェノール類などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
シリコーン変性エポキシ樹脂は、例えば、一般式(II)で示されるエポキシ樹脂とビスフェノール類を混合し、必要に応じて、触媒を添加し、更に必要に応じて有機溶剤を添加し加熱反応させることにより得られる。触媒としては以下のものが例示される。1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ〔4,3,0〕ノネン−5、5,6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕ウンデセン−7等のシクロアミジン化合物、その誘導体、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール等の3級アミン類、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン類、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等。反応する際のエポキシ樹脂とビスフェノール類との当量比は、エポキシ当量/水酸基当量の比が1〜5であることが好ましい。
【0024】
また、一般式(II)で示されるエポキシ樹脂中のシロキサン鎖長nが1〜3程度の、短鎖シロキサンのエポキシ樹脂とビスフェノール類の反応から得られるシリコーン変性エポキシ樹脂は、界面活性作用が弱く破泡性に劣る傾向にあるため単独で用いるよりも、長鎖シロキサンを有するシリコーン変性エポキシ樹脂と併用することが好ましい。
この場合は、長鎖シロキサンを有するシリコーン変性エポキシ樹脂と混合したり、ビスフェノール類と反応させる時に、長鎖シロキサンを有するエポキシ樹脂と一緒に反応させたりする。反応時の長鎖シロキサンを有するエポキシ樹脂の当量Aと短鎖シロキサンを有するエポキシ樹脂の当量Bとの当量比A/Bは0.2〜5であることが好ましく、0.3〜3がより好ましい。0.2未満では破泡性、脱泡性が不十分となる傾向があり、5を超えると得られたシリコーン変性エポキシ樹脂の反応性が低下する傾向がある。
【0025】
(C)シリコーン変性エポキシ樹脂の量は、本発明の効果を達成するために、エポキシ樹脂成分の全量たとえば(A)成分と(C)成分の合計量に対して5〜35質量%、及び(B)成分と(C)成分の合計量に対して8〜64質量%に設定されることが好ましい。より好ましくは、エポキシ樹脂成分の全量に対して10〜35質量%、及び(B)成分と(C)成分の合計量に対して10〜60質量%である。エポキシ樹脂成分の全量に対して5質量%未満では、十分な界面活性作用が働かないために破泡性、脱泡性が低下する傾向があり、また、低応力性も小さくなる傾向がある。35質量%を超えると揺変指数の増加による成形性の低下、接着強度や機械的強度の低下、ガラス転移温度の低下、さらに耐湿性の低下が生じ易くなる。同様に、(B)成分と(C)成分の合計量に対して8質量%未満では、十分な界面活性作用が働かないために破泡性、脱泡性が低下する傾向があり、また、低応力性も小さくなる傾向がある。64質量%を超えると揺変指数の増加による成形性の低下、接着強度や機械的強度の低下、ガラス転移温度の低下、さらに耐湿性の低下が生じ易くなる。
【0026】
本発明において用いられる(D)芳香族アミン硬化剤としては、特に制限はなく、エポキシ樹脂の硬化剤として一般に使用されているものを用いることができる。例えば、ジエチルトルエンジアミン、3,3´−ジエチル−4,4´−ジアミノジフェニルメタン、3,3´,5,5´−テトラメチル−4,4´−ジアミノジフェニルメタン、3,3´−ジイソプロピル−5,5´−ジメチル−4,4´ジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。市販品としては、エピキュアW、エピキュアZ(ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名)、カヤハードA−A、カヤハードA−B、カヤハードA−S、カヤボンドC−200S、カヤボンドC−300S(日本化薬株式会社製商品名)、ARADUR5200 US(バンティコ株式会社製商品名)、MIPA、MEPA(Lonza社製商品名)等が入手可能で、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、反りをより小さく抑える観点からはジエチルトルエンジアミン、3,3´−ジエチル−4,4´−ジアミノジフェニルメタンが特に好ましい。
【0027】
(D)芳香族アミン硬化剤は、アミンの中で、一液タイプの樹脂組成物にした場合にポットライフが低下しにくいため好ましい。(A)液状ビスフェノール型エポキシ樹脂、(C)シリコーン変性エポキシ樹脂と(D)芳香族アミン硬化剤との当量比は、それぞれの未反応分を少なく抑えるために、エポキシ樹脂に対して硬化剤を0.8〜1.4当量の範囲に設定することが好ましく、0.9〜1.2当量がより好ましい。0.8〜1.4当量の範囲からはずれた場合、未反応のアミノ基が存在したり、硬化反応が不十分となったりして信頼性が低下する傾向がある。ここで、芳香族アミンの当量はエポキシ基1個に対しアミノ基の活性水素1個が反応するものとして計算される。
【0028】
本発明において用いられる(E)カップリング剤としては、特に制限はなく、エポキシシラン、アミノシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン、アルキルシラン、メルカプトシラン、イソシアネートシラン等の各種シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート類を用いることができる。具体的には、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(γ−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルジメトキシシラン、γ−ジブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N−(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート等のチタネート系カップリング剤が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
カップリング剤の配合量は、(E)カップリング剤と(F)無機充填剤の合計量に対して0.1〜2.0質量%が好ましく、0.4〜1.5質量%がより好ましい。0.1質量%未満では充填剤の分散性向上効果が得られない傾向があり、2.0質量%を超えると硬化物中にボイドが発生し易い傾向がある。
【0030】
本発明において用いられる(F)無機充填剤としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ、炭酸カルシウム、クレー、酸化アルミナ等のアルミナ、窒化珪素、炭化珪素、窒化ホウ素、珪酸カルシウム、チタン酸カリウム、窒化アルミ、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、又はこれらを球形化したビーズ、ガラス繊維などが挙げられる。さらに、難燃効果のある無機充填剤としては水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛等が挙げられる。これらの無機充填剤は単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも線膨張係数低減の観点からは溶融シリカが、高熱伝導性の観点からはアルミナが好ましく、充填剤の形状は高充填化及び液状エポキシ樹脂組成物の微細間隙への流動性・浸透性の観点から球形が好ましい。また、シリカは、封止用エポキシ樹脂組成物の流動性やポットライフの点からは、あらかじめ(E)成分のカップリング剤で処理されたものが好ましい。
【0031】
(F)無機充填剤の平均粒径は、特に球形シリカの場合、1〜10μmの範囲が好ましく、2〜7μmの範囲がより好ましい。ここで平均粒径は、レーザー回折法による寸法で表示する。平均粒径が1μm未満では液状樹脂へ充填剤を高濃度に分散することが困難になる傾向があり、10μmを超えると粗粒成分が多くなり、微細間隙への充填不足、印刷時のスジ状の不良又は表面平滑性が低下する傾向がある。
【0032】
(F)無機充填剤の量は、本発明の効果を達成するために、(A)成分〜(F)成分の合計量に対して80〜94質量%の範囲に設定されることが好ましい。配合量が80質量%未満では熱膨張係数の低減効果が低くなり反りが大きくなる傾向があり、94質量%を超えると粘度が上昇するため塗布作業性が低下する傾向があり、粘度を下げるために添加する有機溶剤の量を増やすとボイドや著しい膜減りなどの不具合を招く傾向がある。
【0033】
本発明において用いられる(G)有機溶剤は、シリコーン変性エポキシ樹脂の配合量の増大による硬化物の機械的強度の低下を生じさせずに、エポキシ樹脂組成物の印刷成形性に最適な粘度及び揺変指数を付与させるための成分である。この有機溶剤としては、加熱硬化時の急激な揮発によるボイド形成を避けたり、印刷作業中での溶剤揮発を抑えたりする点からは沸点が170℃以上のものが好ましく、沸点が200℃以上のものがより好ましい。また、真空印刷により塗膜を形成する場合には、エポキシ樹脂組成物が常時真空下で扱われるため溶剤が徐々に揮発し粘度変化が生じる懸念がある。この場合には、有機溶剤の沸点は240℃〜300℃の範囲のものが好ましい。具体的には、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールフェニールエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、ブチルカルビトールアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート、γ−ブチロラクトン等が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
(G)有機溶剤の量は、(A)成分〜(G)成分の合計量に対して1〜10質量%の範囲に設定されることが好ましく、3〜8質量%がより好ましい。配合量が1質量%未満では粘度が高くなり塗布作業性や印刷性が低下したり、膜の均一性に欠けたり、また未充填が生じやすくなる。10質量%を超えると粘度が下がりすぎ流れやすくなるため、印刷後、樹脂組成物がウエハー裏面へ流れたり、硬化後ボイドや著しい膜減りが発生したりするなどの不具合を招く懸念がある。
【0035】
さらに、本発明の液状エポキシ樹脂組成物には、IC等の半導体素子の耐湿性及び耐熱性を向上させる観点から、必要に応じてイオントラップ剤を使用することができる。イオントラップ剤としては特に制限はなく、従来公知のものを用いることができるが、例えば、ハイドロタルサイト類や、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ビスマス等の元素の含水酸化物等が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。イオントラップ剤の配合量は、ハロゲンイオン等の陰イオンやナトリウム等の陽イオンを捕捉できる十分量であれば特に制限はないが、エポキシ樹脂に対して1〜10質量%が好ましい。
【0036】
さらに、本発明の液状エポキシ樹脂組成物には、(A)、(C)成分の他に芳香環を有する液状エポキシ樹脂、脂肪族の液状エポキシ樹脂等を必要に応じて添加してもよい。工業的に入手可能な市販品としては、E630(ジャパンエポキシレジン株式会社商品名)、ELM-100(住友化学工業株式会社商品名)、HP4032D(大日本インキ化学工業株式会社商品名)、SR-16HL(阪本薬品工業株式会社商品名)等がある。その他の添加剤として、硬化促進剤、染料、顔料、カーボンブラック等の着色剤、リン酸エステル、メラミン、メラミン誘導体、トリアジン環を有する化合物、シアヌル酸誘導体、イソシアヌル酸誘導体等の窒素含有化合物、シクロホスファゼン等の燐窒素含有化合物、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化モリブデン、フェロセン等の金属化合物、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン等の酸化アンチモン、ブロム化エポキシ樹脂などの従来公知の難燃剤などを必要に応じて配合することができる。
【0037】
本発明の液状エポキシ樹脂組成物は、上記各種成分を均一に分散混合できるのであれば、いかなる手法を用いても調製できるが、一般的な手法として、所定の配合量の成分を秤量し、三本ロール、らい潰機、プラネタリーミキサー、ホモミキサー等によって分散混練を行う方法を挙げることができる。また、適当量の液状ビスフェノール型エポキシ樹脂、シリコーンゴム微粒子、無機充填剤、カップリング剤、有機溶剤等の配合成分を予備分散及び予備加熱させたマスターバッチを用いる手法が、均一分散性や流動性の点から好ましい。
【0038】
本発明で得られる封止用液状エポキシ樹脂組成物の25℃での粘度は10Pa・s〜100Pa・s、揺変指数は1.5以下が好ましく、粘度20Pa・s〜70Pa・s、揺変指数1.3以下がより好ましい。10Pa・s未満では、印刷後に樹脂組成物がウエハー端部や裏面へ流れてしまう傾向があり、100Pa・sを超えると広がり性や充填性が低下する傾向がある。また、揺変指数が1.5を超えると広がり性や脱泡性が低下する。
ここで粘度はE型粘度計(3°コーン使用)の5rpmでの値とし、揺変指数は1rpmでの粘度/5rpmでの粘度の比とする。
【0039】
また、本発明で得られる封止用液状エポキシ樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度は50℃以上であり、動的粘弾性における損失正接の極大値を示す温度が100℃以上であり、ガラス転移温度以下の線膨張係数が15ppm/℃以下であり、常温における弾性率が10〜26GPaであることが好ましい。シリコーン変性エポキシ樹脂の量が過剰で、ガラス転移温度が50℃未満であり、動的粘弾性における損失正接の極大値を示す温度が100℃未満であると、機械的強度や耐湿信頼性の低下を招く傾向があり、無機充填剤の量が不十分で、ガラス転移温度以下の線膨張係数が15ppm/℃を超えると反りの増大を招く傾向がある。また、シリコーン変性エポキシ樹脂の量が過剰で、常温における弾性率が10GPa未満では機械的強度や耐湿信頼性の低下を招く傾向があり、26GPaを超えると反りの増大を招く傾向がある。ここでガラス転移温度及び線膨張係数は、熱機械分析装置を用いて測定した時の熱膨張挙動から求めることができ、損失正接の極大値を示す温度及び弾性率は、動的粘弾性測定装置(周波数10Hz)を用いて測定した時の動的粘弾性挙動から求めることができる。
【0040】
本発明で得られる液状エポキシ樹脂組成物により素子を封止して得られる電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハー等の支持部材に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、抵抗アレイ、コイル、スイッチ等の受動素子などの素子を搭載し、必要な部分を本発明の液状エポキシ樹脂組成物で封止して得られる電子部品装置などが挙げられる。中でも、本発明の液状エポキシ樹脂組成物は低反り性、高信頼性を要求される電子部品装置に有効であり、特にウエハーレベルチップサイズパッケージに好適である。本発明の液状エポキシ樹脂組成物を用いて素子を封止する方法としては、ディスペンス方式、注型方式、印刷方式等が挙げられるが、特に印刷方式が好適である。
【実施例】
【0041】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
(製造例1:シリコーン変性エポキシ樹脂)
窒素導入管、温度計、冷却管及びメカニカルスターラーを取り付けた1リットルのフラスコに、エポキシ樹脂KF−105(信越化学工業株式会社製商品名)200g、エポキシ樹脂TSL9906(GE東芝シリコーン株式会社製商品名)74.8g、テルペンジフェノール YP−90(ヤスハラケミカル株式会社製商品名)67g、触媒として1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7 DBU(サンアプロ株式会社製商品名)2.8gをそれぞれ入れ、窒素雰囲気下、150℃で5時間反応させた。このようにしてエポキシ当量830g/eq.の液状のシリコーン変性エポキシ樹脂1を得た。
【0042】
(製造例2:液状エポキシ樹脂とシリコーンゴム微粒子との混合物)
0.5リットルのフラスコに、シリコーンゴム微粒子(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製商品名トレフィルE−601;平均粒径5μm)80g、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製商品名YDF8170C)240gを入れ、攪拌機で回転速度700rpm下、100℃で5時間攪拌混合し、液状エポキシ樹脂とシリコーンゴム微粒子との混合物2を得た。
【0043】
(製造例3:同上)
0.5リットルのフラスコに、製造例2と同じシリコーンゴム微粒子(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製商品名トレフィルE−601)50g、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製商品名YDF8170C)93gを入れ、攪拌機で回転速度700rpm下、100℃で5時間攪拌混合し、液状ビスフェノール型エポキシ樹脂とシリコーンゴム微粒子の混合物3を得た。
【0044】
(実施例1〜10及び比較例1〜6)
以下の成分をそれぞれ表1及び表2に示す質量部で配合し、三本ロール、次いでらい潰機にて混練分散した後、真空脱泡して、実施例1〜10及び比較例1〜6の封止用液状エポキシ樹脂組成物を作製した。
【0045】
(A)液状ビスフェノール型エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(三井化学株式会社製商品名エポミックR140P)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製商品名YDF8170C)を使用した。
(B)シリコーンゴム微粒子と(A)液状ビスフェノール型エポキシ樹脂との混合物として、
アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとSiH基含有オルガノハイドロジェンポリシロキサンのヒドロシリル化反応により架橋した、エポキシ基を有するシリコーンゴム微粒子が、液状ビスフェノール型エポキシ樹脂中に分散されている、シリコーンゴム微粒子含有液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂;混合物1(Hanse Chemie社製商品名ALBIDUR EP2240、シリコーンゴム微粒子含有量40質量%、シリコーンゴム微粒子粒径0.1〜1.0μm)、
比較のために製造例2及び3で得た平均粒径5μmのシリコーンゴム微粒子と液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合物2(シリコーンゴム微粒子含有量25質量%)、混合物3(シリコーンゴム微粒子含有量35質量%)を使用した。
【0046】
(C)シリコーン変性エポキシ樹脂として製造例1で得たシリコーン変性ポキシ樹脂1、シリコーン変性ポキシ樹脂2(Hanse Chemie社製商品名ALBIFLEX296)を使用した。
(D)芳香族アミン硬化剤として、芳香族アミン1(3,3´−ジエチル−4,4´−ジアミノジフェニルメタン、日本化薬株式会社製商品名カヤハードA−A)、及び芳香族アミン2(ジエチルトルエンジアミン、ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名エピキュアW)、比較のための硬化剤として酸無水物(日立化成工業株式会社製商品名MHAC−HR)を使用した。
【0047】
硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製商品名キュアゾール2E4MZ)、(E)カップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製商品名KBM403)、(F)無機充填剤として平均粒径4μmの球状シリカ及び平均粒径0.5μmの球状シリカの混合物(平均粒径4μm)、(G)有機溶剤として、有機溶剤1(トリエチレングリコールモノブチルエーテル)、有機溶剤2(ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート/トリエチレングリコールモノブチルエーテル混合物、質量部70/30)、着色剤としてカーボンブラック、イオントラップ剤としてIXE500(東亞合成株式会社商品名)を使用した。
【0048】
【表1】

ただし、表1および表2において
※1:(A)液状ビスフェノール型エポキシ樹脂(混合物内のものを含む)
※2:混合物内の(B)シリコーンゴム微粒子
※3:(C)シリコーン変性エポキシ樹脂/((A)液状ビスフェノール型エポキシ樹脂+(C)シリコーン変性エポキシ樹脂)
※4:(B)シリコーンゴム微粒子/((A)液状ビスフェノール型エポキシ樹脂+(B)シリコーンゴム微粒子+(C)シリコーン変性エポキシ樹脂)
※5:(C)シリコーン変性エポキシ樹脂/((B)シリコーンゴム微粒子+(C)シリコーン変性エポキシ樹脂)
※6:(F)無機充填剤/((A)〜(F)の合計)
※7:(G)有機溶剤/((A)〜(G)の合計)
【0049】
【表2】

【0050】
作製した実施例及び比較例の液状エポキシ樹脂組成物を次の各試験により評価した。なお、各種試験用硬化物は、芳香族アミン1を用いる場合は、液状エポキシ樹脂組成物を130℃、1時間、次いで180℃、3時間の加熱条件で、芳香族アミン2を用いる場合は、液状エポキシ樹脂組成物を130℃、1時間、次いで200℃、3時間の加熱条件で作製した。また、酸無水物を用いる場合は、100℃、1時間、次いで150℃、2時間の加熱条件で作製した。評価結果を表3及び表4に示した。
【0051】
(1)粘度、揺変指数
E型粘度計(株式会社東京計器製)を用いて、25℃、5rpmでの粘度(Pa・s)及び揺変指数(1rpmでの粘度/5rpmでの粘度の比)を測定した。
(2)反り
8インチシリコンウエハー(厚み約730μm)上に、開口197mmφ、厚さ300μmのメタルマスクを用い、印刷成形法により液状エポキシ樹脂組成物を約200μm厚に加熱硬化した。そして、硬化後15時間経ってから、定盤上にウエハー端部の一箇所を固定し浮上った最大高さを測定した。
(3)ガラス転移温度及び線膨張係数
液状エポキシ樹脂組成物を150μm厚のシート状に硬化し、このシートを4.5mm×20mm(サンプル間長15mm)の短冊状に切り取り試験片とした。そして、熱機械分析装置TMA4000(株式会社マック・サイエンス製)を用いて引張荷重5g、昇温速度5℃/min、温度範囲10〜210℃で測定し、熱膨張挙動の変曲点よりガラス転移温度を、また、ガラス転移温度以下の直線部から線膨張係数を求めた。
(4)損失正接の極大値(tanδmax)の温度及び弾性率
液状エポキシ樹脂組成物を290μm厚のシート状に硬化し、このシートを4mm×34mm(サンプル間長25mm)の短冊状に切り取り試験片とした。そして、動的粘弾性測定装置DVE型(株式会社レオロジ製)を用いて周波数10Hz、昇温速度3℃/min、温度範囲20〜250℃の条件で測定し、損失正接の極大値(tanδmax)を示す温度と25℃の弾性率(GPa)を読取った。
【0052】
(5)ダイシェア強度
ポリイミドを塗布した8mm角のシリコンウエハー上に、3mmφの穴を切り抜いた厚さ1mmのシリコーンラバーシート枠を用いて、液状エポキシ樹脂組成物を円柱状に硬化した。そして、ボンドテスターシリーズ4000(デイジ社製)を用いて、ヘッド位置が基材から50μm、ヘッドスピード50μm/sで測定し、硬化物とポリイミド界面の剥離強度又は硬化物の破壊強度を測定した。また、試験片を130℃、85%RHの条件で300h処理後同様な試験を行い、加湿試験後の剥離強度又は硬化物の破壊強度を測定した。
(6)ボイド性
ポリイミドを塗布した8インチシリコンウエハー(厚み約730μm)上に、開口197mmφ、厚さ250μmのメタルマスクを用い、減圧下で印刷成形法により液状エポキシ樹脂組成物を約160μm厚に加熱硬化した。そして、顕微鏡観察によりウエハー全面の硬化物中のボイドを数えた。
(7)ダイシング性
上記(6)と同様にして作製したシリコンウエハーを、オートマッチックダイシングソーDAD341(ディスコ社製)により5mm角にダイシングし、硬化物の外観及びウエハー断面の顕微鏡観察を行い、外観不良(かけ、クラック等)が生じている試験片の数/測定試験片の数で評価した。
(8)耐リフロー性
上記(6)と同様にして作製したシリコンウエハーを5mm角のサイズに切断し、この試験片を85℃/85%RHの条件で飽和吸湿後、260℃リフロー処理を20回行った。そして、硬化物の外観及びウエハー断面の顕微鏡観察を行い、外観不良(かけ、クラック等)又は剥離が生じている試験片の数/測定試験片の数で評価した。
(9)耐温度サイクル性
上記(8)と同様にして作製した試験片を−50℃/150℃、各15分のヒートサイクルで1000サイクル処理し、硬化物の外観及びウエハー断面の顕微鏡観察を行い、外観不良(かけ、クラック等)又は剥離が生じている試験片の数/測定試験片の数で評価した。
(10)耐湿信頼性
ポリイミドを塗布したシリコンウエハー上に、ライン/スペースが15μm/25μm、厚さ5μmで電解めっきCu膜を櫛歯電極状に形成させたテストエレメントグループ(TEG)を作製した。次いで、櫛歯電極部を液状エポキシ樹脂組成物で約90μmの厚さに硬化・封止したTEGを、135℃、85%RH環境下、4V印加で300時間導通試験を行い、不良パッケージ数/測定パッケージ数で評価した。
【0053】
【表3】

【0054】
【表4】

【0055】
本発明における(B)シリコーンゴム微粒子及び(C)シリコーン変性エポキシ樹脂を含まない比較例1、2では、ボイド数が多く、反りが大きく、耐温度サイクル性に劣る。(B)シリコーンゴム微粒子を、液状ビスフェノール型エポキシ樹脂中でヒドロシリル化反応により架橋生成させた細粒のものの代わりに、粒径が大きいパウダー状で添加し、かつシリコーン変性エポキシ樹脂の配合量を増やした比較例3では、低反り性に優れるが、強度が弱くダイシング性及び耐湿信頼性に著しく劣る。また、(B)シリコーンゴム微粒子を、液状ビスフェノール型エポキシ樹脂中でヒドロシリル化反応により架橋生成させた細粒のものの代わりに粒径の大きいパウダー状で添加した比較例4では、反りが大きくなる傾向があり、この反りを改善するためにシリコーンゴム微粒子の添加量を多くした比較例5では、樹脂組成物の製造が困難となり、十分な低反り性を有する材料を得ることができない。(D)芳香族アミン硬化剤の替わりに酸無水物を硬化剤として用いた比較例6では、高温高湿処理後の強度及び耐リフロー性が著しく低下し、耐湿信頼性も著しく劣る。これに対して、本発明の実施例1〜9は、いずれも印刷成形性は良好でボイド数が少なく、反りも小さく、高温高湿処理後でも接着力、強度が維持され、ダイシング性、耐リフロー性、耐温度サイクル及び耐湿信頼性にも優れる。
【0056】
図1には、実施例3のエポキシ樹脂組成物硬化物(無機充填剤未含有)の破断面のSEM観察写真を示した。シリコーンゴム微粒子に由来する0.1〜1.0μmの球状ドメインが観察され、シリコーンゴム微粒子が硬化物中にサブミクロンオーダーで微細分散していることが明らかとなった。
【0057】
本発明になる封止用液状エポキシ樹脂組成物は、実施例で示したように印刷成形性は良好でボイド数が少なく、反りも小さく、高温高湿処理後でも接着力、強度が高く維持されるので、この液状エポキシ樹脂組成物を用いて封止すれば、ウエハーレベルチップサイズパッケージの製造において搬送、研削、検査、個片化等の各工程の要求を満たすことが可能で、かつ耐リフロー性、耐温度サイクル及び耐湿信頼性に優れるウエハーレベルチップサイズパッケージを得ることができるので、その工業的価値は大である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明のエポキシ樹脂組成物硬化物(無機充填剤未含有)の一例の破断面のSEM観察写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)液状ビスフェノール型エポキシ樹脂、(B)シリコーンゴム微粒子、(C)シリコーン変性エポキシ樹脂、(D)芳香族アミン硬化剤、(E)カップリング剤、(F)無機充填剤、(G)有機溶剤を含有した封止用液状エポキシ樹脂組成物であって、
(B)シリコーンゴム微粒子が、液状エポキシ樹脂中でアルケニル基含有オルガノポリシロキサンとSiH基含有オルガノハイドロジェンポリシロキサンのヒドロシリル化反応により架橋生成させたものである封止用液状エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
(A)液状ビスフェノール型エポキシ樹脂、(B)シリコーンゴム微粒子、(C)シリコーン変性エポキシ樹脂、(D)芳香族アミン硬化剤、(E)カップリング剤、(F)無機充填剤、(G)有機溶剤を含有した封止用液状エポキシ樹脂組成物であって、(B)シリコーンゴム微粒子の粒径が0.1〜2μmである封止用液状エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
(C)シリコーン変性エポキシ樹脂が一般式(I)で示されるシロキサン構造を有するものである請求項1又は2に記載の封止用液状エポキシ樹脂組成物。
【化1】

(ここで一般式(I)中のRはアルキル基又はフェニル基であり、同一でも異なっていても良く、nは1以上の整数である。)
【請求項4】
(B)シリコーンゴム微粒子の配合割合が(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量に対して13〜40質量%、
(C)シリコーン変性エポキシ樹脂の配合割合がエポキシ樹脂成分の全量に対して5〜35質量%、
かつ(C)シリコーン変性エポキシ樹脂の配合割合が(B)成分と(C)成分との合計量に対して8〜64質量%である請求項1〜3のいずれかに記載の封止用液状エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
(B)シリコーンゴム微粒子が、ビニル基含有オルガノポリシロキサンとSiH基含有オルガノハイドロジェンポリシロキサンのヒドロシリル化反応により架橋生成させたものであり、アミノ基又はエポキシ基と反応することができる官能基を有する請求項1〜4のいずれかに記載の封止用液状エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
(B)シリコーンゴム微粒子の官能基がエポキシ基である請求項5記載の封止用液状エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
(D)芳香族アミン硬化剤がジエチルトルエンジアミン又は3,3´−ジエチル−4,4´−ジアミノジフェニルメタンである請求項1〜6のいずれかに記載の封止用液状エポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
(F)無機充填剤の配合割合が、(A)成分〜(F)成分の合計量に対して80〜94質量%である請求項1〜7のいずれかに記載の封止用液状エポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の封止用液状エポキシ樹脂組成物により封止された素子を備えた電子部品装置。
【請求項10】
ウエハーレベルチップサイズパッケージの封止に用いられる請求項1〜8のいずれかに記載の封止用液状エポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれかに記載の封止用液状エポキシ樹脂組成物により封止された素子を備えたウエハーレベルチップサイズパッケージ。

【図1】
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【公開番号】特開2007−23272(P2007−23272A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−166444(P2006−166444)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】