説明

形状測定装置並びに深さ測定装置及び膜厚測定装置

【課題】試料表面の変位量が大きくても、フェーズラッピングの問題が生ずることなく、試料の微細な表面形状を高分解能で測定できる形状測定装置を実現する。
【解決手段】白色光源から出射した照明光は、入射光をシャーリングする第1の光路と入射光に対して可変光路長ないし可変位相量を導入してフリンジスキャンを行う第2の光路とを有する干渉光学系及び対物レンズを経て試料に入射する。試料上には、シャーリングされた参照ビームにより形成される第1の照明領域とフリンジスキャンされた測定ビームにより形成される第2の照明領域が形成される。第1及び第2の照明領域から出射した反射光は、対物レンズ及び干渉光学系を介して2次元撮像装置に入射し、2つの照明領域の画像が合成された干渉画像が形成される。フリンジスキャンにより、2つの画像を構成する反射光間に白色干渉が発生し、干渉信号を検出することで、試料の形状又は孔の深さが測定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色干渉法を利用して試料の表面形状を測定する形状測定装置に関するものである。
また、本発明は、白色干渉法を利用して試料の表面に形成された孔の深さを測定する深さ測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化に伴い、半導体ウェハに形成されるビィアホール等の凹部のアスペクト比が一段と大きくなり、微細なビィアホールの深さを高分解能で測定できる深さ測定装置の開発が強く要請されている。例えば、現在開発中の半導体デバイスにおいては、シリコン基板中に直径が30μmで深さが100μmのビィアホールを0.1μmの分解能で測定することが要求されている。このような微細な凹部の深さを測定する方法として、光ビームを用いて測定することが考えられる。しかし、高アスペクト比の孔の深さを測定する場合、高NAの対物レンズを使用できないため、コンフォーカル光学系の特徴を利用して孔の深さを測定することができない。また、底面にエッチィングストッパが形成されていないビィアホールや、レーザ加工により形成されるビィアホールもあり、このようなビィアホールの底面は平坦ではないため、凹部底面からの反射光が微弱であり、底面からの反射光を正確に検出できないのが実情である。
【0003】
試料の表面形状を測定する表面形状測定装置として、白色光源から出射した照明光を対物レンズを介して試料表面に向けて投射し、参照光と測定光との干渉により形成される干渉縞をCCDカメラで撮像して、試料の表面形状を測定する装置が既知である(例えば、特許文献1参照)。この既知の表面形状測定装置では、参照光の光路長と測定光の光路長との間に連続的に変化する光路長差を導入し、多数枚の干渉縞を撮像し、干渉光のピーク位置と一致するピーク位置を有する特性関数を推定し、特性関数のピーク位置の高さに基づいて試料表面の形状が測定されている。
【0004】
高アスペクト比の孔の深さを測定する装置として、白色干渉と共焦点光学系とを組み合わせた深さ測定装置が既知である(例えば、特許文献2参照)。この既知の深さ測定装置では、深さ測定されるべき孔が形成されている基板の表面側から白色光の照明ビームを投射し、共焦点光学系を利用して孔の底面からの反射光を受光している。そして、光検出器から出力信号を用い、相互相関関数を利用して白色干渉による干渉信号が検出されている。
【特許文献1】特開2001−66122号公報
【特許文献2】特開2009−36563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載の形状測定装置では、測定光と参照光との干渉により形成される干渉縞から表面形状を測定しているので、高分解能の測定が期待される。しかしながら、試料の表面側から照明ビームを投射しているため、高アスペクト比の孔の深さを測定する場合、孔の底面に到達する照明ビームの光量が微弱であり、高アスペクト比の微細なビィアホールの深さを測定することは極めて困難であった。
【0006】
白色干渉と共焦点光学系とを組み合わせた深さ測定装置は、高アスペクト比の孔の深さを高分解能で測定できる利点がある。しかしながら、孔が形成されている表面側から照明ビームを投射しているので、孔の底面から十分な強度の反射光が得にくく、検出感度を改善することが要請されている。また、TSV等の半導体製造技術では、孔の深さを測定できるだけでなく、孔の底面の形状を測定することも強く要請されている。しかしながら、特許文献2に記載の深さ測定装置は、高アスペクト比の孔の深さは測定できるものの、孔の底面の形状を検出することができない問題があった。
【0007】
さらに、試料表面の形状を測定する技術として、マッハツェンダ光学系を利用した形状測定技術が既知である。しかしながら、マッハツェンダ光学系を用いる場合、微細な形状変化を測定することができるものの、位相が不連続となるフェーズラッピングの問題があり、光軸方向の変位量が大きい試料の形状測定には限界があった。
【0008】
本発明の目的は、試料表面の変位量が大きくても、フェーズラッピングの問題が生ずることなく、試料の微細な表面形状を高分解能で測定できる形状測定装置を実現することにある。
本発明の別の目的は、高アスペクト比の孔の深さを測定できると共に孔の底面の3次元画像を同時に撮像できる深さ測定装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による形状測定装置は、光ビームを発生する光源と、
入射光をシャーリングする第1の光路及び入射光に対してフリンジスキャンを行う第2の光路を有し、シャーリングされた第1の照明ビームとフリンジスキャンされた第2の照明ビームとを出射させる干渉光学系と、
前記第2の光路に導入されるフリンジスキャン量を検出するセンサ手段と、
干渉光学系から出射した第1及び第2の照明ビームを試料に向けて投射する対物レンズと、
前記試料から出射した反射光を、前記対物レンズ及び干渉光学系を介して受光する光検出手段と、
前記光検出手段からの出力信号を用いて、前記第1の照明ビームにより形成された試料からの反射光と第2の照明ビームにより形成された試料からの反射光との白色干渉により発生する干渉信号を検出する干渉信号検出手段、及び、前記センサ手段からの出力信号を用いて、干渉信号が発生する時点おけるフリンジスキャンにより導入された光路差を検出する光路差検出手段を有し、検出された光路差から試料の形状情報を出力する信号処理装置とを具えることを特徴とする。
【0010】
本発明による形状測定装置では、干渉光学系と白色干渉とを組み合わせて形状測定が行われるので、フェーズラッピングの問題が生ずることなく、試料の表面形状を高分解能で測定することが可能である。特に、本発明では、空間的にはコヒーレンドであり、時間的にはインコヒーレントな照明光を用いているので、数10μm程度の深さの孔が形成されている試料や数10μmを超える大きさの凹凸形状が形成されている試料であっても、フェーズラッピングが生ずることなく、形状測定することが可能である。さらに、フリンジスキャンにより導入される光路長は、数nm程度の分解能を有するので、極めて高い分解能で形状測定することが可能である。
【0011】
本発明による形状測定装置の好適実施例は、試料として、表面とその反対側の裏面とを有する半導体基板を用い、前記光源は基板に対して透明な光ビームを発生し、前記対物レンズは半導体基板の裏面に向けて第1及び第2の照明ビームを投射し、前記2次元撮像装置は、半導体基板の裏面とは反対側の表面で反射し、半導体基板の内部を透過し裏面から出射した反射光を受光し、
当該形状測定装置は、半導体基板の裏面側から、裏面とは反対の表面に形成された表面形状を測定することを特徴とする。このように、試料として半導体基板を用い、半導体基板の裏面側から照明ビームを投射することにより、半導体基板の裏面側から見た基板表面の形状測定を行うことが可能である。
【0012】
本発明による形状測定装置の別の好適実施例は、試料として、孔が形成されている表面と反対側の裏面とを有するシリコン基板を用い、前記第1の照明ビームはシリコン基板の孔が形成されていないエリアに第1の照明領域を形成し、第2の照明ビームはシリコン基板の孔が形成されているエリアに第2の照明領域を形成し、
前記干渉信号検出手段は、第1の照明領域から出射した反射光と第2の照明領域の孔の周囲のエリアから出射した反射光との白色干渉により発生する第1の干渉信号と、第1の照明領域から出射した反射光と第2の照明領域の孔の底面から出射した反射光との白色干渉により発生する第2の干渉信号とを検出し、
前記信号処理装置は、第1の干渉信号が検出された時点の導入光路長と第2の干渉信号が検出された時点における導入光路長との差分に基づいて孔の深さ情報を出力することを特徴とする。このように、シリコン基板の裏面側から照明ビームを投射することにより、孔の内部に照明ビームを投射することなく、孔の深さと形状を同時に測定することが可能である。特に、高アスペクト比の孔の深さを測定する場合であっても、孔の内部に照明ビームを投射せず、孔の底面に向けて照明ビームを投射しているので、照明ビームが孔の側面でけられ、孔の底面からの反射光の光量が微弱となる問題が解消される。
【0013】
本発明による深さ測定装置は、基板に形成された孔の深さを測定する深さ測定装置であって、
光ビームを発生する光源と、
入射光をシャーリングする第1の光路及び入射光に対してフリンジスキャンを行う第2の光路を有し、シャーリングされた第1の照明ビームとフリンジスキャンされた第2の照明ビームを出射させる干渉光学系と、
フリンジスキャンにより前記第2の光路に導入されるフリンジスキャン量を検出するセンサ手段と、
前記干渉光学系から出射した第1及び第2の照明ビームを試料に向けて投射する対物レンズと、
前記試料から出射した反射光を、前記対物レンズ及び干渉光学系を介して受光する2次元撮像装置と、
前記撮像装置からの出力信号を用いて、前記第1の照明ビームにより形成される基板からの反射光と第2の照明ビームにより形成される基板からの反射光との白色干渉により発生する干渉信号を検出する干渉信号検出手段、前記センサ手段からの出力信号を用いて干渉信号が発生する時点おけるフリンジスキャンにより導入された光路差を検出する光路差検出手段、及び、前記干渉信号が検出された時点における光路差に基づいて孔の深さ及び形状を算出する手段を有する信号処理装置とを具えることを特徴とする。
【0014】
本発明による膜厚測定装置は、基板に形成された薄膜の厚さを測定する膜厚測定装置であって、
複数の波長域の光を含む光ビームを発生する白色光源と、
入射光をシャーリングする第1の光路及び入射光に対してフリンジスキャンを行う第2の光路を有し、シャーリングされた第1の照明ビームとフリンジスキャンされた第2の照明ビームを出射させる干渉光学系と、
前記第2の光路に導入されるフリンジスキャン量を検出するセンサ手段と、
前記干渉光学系から出射した第1及び第2の照明ビームを試料に向けて投射する対物レンズと、
前記試料から出射した反射光を、前記対物レンズ及び干渉光学系を介して受光する光検出手段と、
前記光検出手段からの出力信号を用いて、前記第1の照明ビームにより形成される基板からの反射光と第2の照明ビームにより形成される基板からの反射光との白色干渉により発生する干渉信号を検出する干渉信号検出手段、前記センサ手段からの出力信号を用いて、干渉信号が発生する時点おけるフリンジスキャンにより導入された光路差を検出する光路差検出手段と、第1の干渉信号が検出された時点の導入光路差と第2の干渉信号が検出された時点の光路差との差分を検出し、検出された差分に基づいて膜厚情報を出力する手段とを有する信号処理装置とを具えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、時間的にインコヒーレントな照明ビームを用い、干渉光学系と白色干渉とを組み合わせた光学装置を用いて形状測定が行われるので、フェーズラッピングの問題が生ずることなく、試料の形状を高分解能で測定することが可能である。
さらに、本発明による深さ測定装置は、基板に形成された孔の深さを測定できると共に孔の底面の3次元画像を撮像することが可能である。特に、基板の裏面側から照明ビームを投射する場合、孔の内部に照明ビームを投射することなく高アスペクト比の孔の深さを測定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による形状測定装置の光学系の構成を示す図である。
【図2】シャーリングされた照明ビームとフリンジスキャンされた照明ビームが試料上に形成する照明領域を示す図である。
【図3】試料からの反射光が撮像装置に入射する光路を示す図である。
【図4】撮像装置上に形成される4つの画像を示す図である。
【図5】干渉信号の発生状況を示す図である。
【図6】深さ測定装置の信号処理装置の一例を示す図である。
【図7】孔の深さを算出するための説明図である。
【図8】本発明を膜厚測定装置に適用した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明による形状測定装置の一例を示す図である。本例では、シリコン基板の表面形状を測定対象とし、表面形状の一例として、基板の表面に形成された孔の深さを測定する。勿論、孔の深さだけでなく、各種測定対象物の表面形状や段差を測定することができる。本例では、シリコン基板の裏面側からシリコン基板を透過する波長域の照明ビームを投射し、基板の裏面側から見た孔の深さを測定する。照明光源として、例えば中心波長が1310nmの光ビームを放出する第1のSLED1と中心波長が1550nmの光ビームを放出する第2のSLED2を用いる。第1及び第2のSLED1及び2は共に発光点の直径が約10μm程度であり、空間的にはコヒーレントな点光源として作用する。また、第1及び第2のSLEDから出射した2本の光ビームの混合ビームのコヒーレント長は約4.1μm程度であり、時間的にはインコヒーレントな照明光を形成する。尚、1310nm及び1550nmの照明光は共にシリコン基板を透過する。
【0018】
第1及び第2のSLED1及びSLED2から放出された光ビームは、1310nmの波長光を透過し1550nmの波長光を反射するダイクロイックミラー3に入射し、1本の照明ビームに合成される。この照明ビームは、コリメータレンズ4により平行光束に変換され、視野絞り5を通過してビームスプリッタ6に入射する。本例では、ビームスプリッタ6としてハーフミラーを用いる。尚、ビームスプリッタとして、偏光ビームスプリッタと1/4波長板との組み合わせを用いることも可能である。ビームスプリッタ6で反射した照明ビームは、レンズ7を介してマッハツェンダ型の干渉光学系8に入射する。
【0019】
干渉光学系8は、入射光に対して所定量のシャーリング量(横ずらし量)を導入する第1の光路(シャーリング光路)8aと、入射光についてフリンジスキャンを行って連続的に光路差ないし位相差を変化させる第2の光路(フリンジスキャン光路)8bを有する。干渉光学系8に入射した照明ビームは、第1のハーフミラー9に入射し、第1及び第2のサブビームに分割される。第1のハーフミラー9を透過した透過ビームは、参照ビームとしてシャーリング光路8aを進行する。第1のハーフミラーで反射した反射ビームは測定ビームとしてフリンジスキャン光路8bを進行する。シャーリング光路8aは全反射ミラー10と第1の楔組11とを有し、フリンジスキャン光路8bは第2の楔組12と全反射ミラー13とを有する。
【0020】
シャーリング光路8aを伝搬する参照ビームは、全反射ミラー10で反射し、第1の楔組11に入射する。第1の楔組11は、光軸を中心にして互いに反対方向に同期して回転する2つの楔11a及び11bを有し、2つの楔を回転することにより入射した参照ビームに所定のシャーリング量を導入する。導入されるシャーリング量は、測定される孔のサイズを考慮し、例えば孔の直径よりも大きい量に設定する。シャーリング(横ずらし)された参照ビームは第2のハーフミラー14で反射し、干渉光学系から出射する。
【0021】
測定ビームは、第2の楔組12に入射する。第2の楔組12は、第1の楔12a及び第2の楔12bを有する。第1の楔12aには、例えばサーボモータで構成されるアクチュエータ15が連結され、アクチュエータを駆動することにより光軸と直交する方向に移動してフリンジスキャンを行う。尚、アクチュエータとして、ピエゾ素子を用いることもできる。第1の楔12aの変位量は、変位量センサであるエンコーダ16により測定される。すなわち、第1の楔12aを光軸方向と直交する方向に連続的に変位させてフリンジスキャンすることにより、測定ビームに連続的に変化する位相差ないし光路差が導入され、導入されたフリンジスキャン量は楔12aの変位量から検出することができる。
【0022】
第2の楔組12から出射した測定ビームは、全反射ミラー13で反射し、第2のハーフミラー14を透過し、干渉光学系から出射する。
【0023】
マッハツェンダ光学系8から出射した参照ビームの主光線は実線で示し、測定ビームの主光線は破線で示す。第1及び第2のサブビームは、リレーレンズ17及び18、及び対物レンズ19を通過してシリコン基板20に入射する。参照ビームは、所定量だけシャーリング(横ずらし)され、測定ビームは横ずらしされていないため、参照ビームと測定ビームは、シリコン基板上のシャーリング方向にずれた位置をそれぞれ照明する。
【0024】
本例では、点光源として作用する第1及び第2のSLED1及び2、マッハツェンダ光学系8及び対物レンズの瞳を共役な関係に配置する。よって、参照ビーム及び測定ビームは、シリコン基板に対してコリメートされた状態、すなわち、シリコン基板の表面に対して垂直に入射する。
【0025】
図2は、参照ビーム及び測定ビームのシリコン基板20上における照明状態を示す。図2(A)はシリコン基板20を照明ビームの進行方向から見た線図的平面図であり、図2(B)は深さ測定されるべき孔30を含む面で切って示す断面図である。シャーリング光路を進行し横ずらしされた参照ビームがシリコン基板20上に形成する照明領域を第1の照明領域として符号31で示し、フリンジスキャン光路を進行し横ずらしされていない測定サブビームが形成する照明領域を第2の照明領域として符号32で示す。第2の照明領域32は深さ測定されるべき孔30が含まれるように設定する。本例では、第1の照明領域31と第2の照明領域32とが互いにオーバラップしないようにシャーリング量を設定する。
【0026】
本例で用いられるシリコン基板20の厚さは、例えば770μm程度であり、測定対象であるシリコン基板に形成された孔30は、アスペトク比が大きく、例えば直径が5μmで、その深さdは50μm程度とする。また、対物レンズ19は短焦点レンズを用い、その焦点は、孔30の底面30aに合焦させる。よって、シリコン基板21の裏面21aは対物レンズの焦点から大きく離れているため、シリコン基板の裏面20aからの反射光は光路でけられ、ほとんど撮像装置に入射しない。図2(B)を参照するに、対物レンズ19から出射し、第1の照明領域31を形成する参照ビームは、シリコン基板の裏面20aに垂直に入射し、シリコン基板の内部を透過し、一部の照明光はシリコン基板の表面20bで反射する。この反射光は再びシリコン基板の内部を進行し、裏面20aから出射し、対物レンズ19により集光される。また、第2の照明領域32を形成する測定ビームは、シリコン基板の裏面20aに垂直に入射し、シリコン基板の内部を透過し、一部の照明光はシリコン基板に形成された孔30の底面30aで反射する。また、孔30の外側の周囲のエリアに入射した光はシリコン基板の表面20bで反射する。これらの反射光は、シリコン基板の裏面20aから出射し、対物レンズ19により集光される。
【0027】
本発明では、参照ビームを反射させる反射面を基準面と、測定ビームを反射させる反射面ないし反射部位を測定面ないし測定部位とする。そして、基準面からの反射光と測定面又は測定部位からの反射光との白色干渉法を利用して孔の深さを測定し、又は試料の表面形状や段差を測定する。第1の照明領域31に入射しシリコン基板の表面20bで反射した反射光と、第2の照明領域32に入射し孔30の底面30aで反射した反射光及び孔の周囲の基板表面20bで反射した反射光とを対比する。第1の照明領域に入射しシリコン基板の表面20bで反射した反射光と第2の照明領域に入射し孔30の周囲の基板表面20bで反射した反射光は共に同一の光路長を有し、同相関係にある。一方、第1の照明領域31に入射し基板の表面20bで反射した反射光と、第2の照明領域32に入射し孔の底面30aで反射した反射光とは、孔の深さdの2倍の光路長差2dが形成される。そこで、本発明では、孔30の底面30aからの反射光とシリコン基板の表面20bからの反射光との白色干渉により孔30の深さを測定する。すなわち、参照ビームを反射させるシリコン基板の表面20bを基準面とし、孔30の周囲の基板表面を第1の測定面とし、孔30の底面30aを第2の測定面とし、基準面からの反射光と第1及び第2の測定面からの反射光との白色干渉により孔30の深さdを測定する。ここで、SLED1及び2から出射する照明光のコヒーレント長は約4.1μm程度であり、孔の深さは50μm程度であるから、フェーズラッピングの問題が生ずることなく、孔の深さを測定することが可能である。
【0028】
再度図1を参照して説明する。シリコン基板20の表面20bで反射した反射参照ビーム及び孔30の底面30aで反射した反射測定ビームは、対物レンズ19により集光され、照明ビームとは反対方向に進行する。すなわち、リレーレンズ18及び17を経てマッハツェンダ光学系8に入射する。そして、マッハツェンダ光学系のシャーリング光路8a及びフリンジスキャン光路8bを逆方向に進行し、第1のハーフミラー9を介して出射する。その後、結像レンズとして作用するレンズ7及びビームスプリッタ6を介して撮像装置21に入射する。尚、撮像装置21は、例えばビジコンのような近赤外領域に感度を有する2次元CCDカメラで構成する。
【0029】
図3を参照しながら、照明領域31及び32から出射した反射光がいかなる光路を進行して撮像装置21に入射するかを説明する。図3(A)は参照ビームが形成する第1の照明領域31から出射する反射参照ビームの光路を示し、図3(B)は測定ビームが形成する照明領域32から出射する反射測定ビームの光路を示す。初めに、図3(A)を参照しながら、反射参照ビームについて説明する。反射参照ビームは、第2のハーフミラー14により2分割され、その反射光はシャーリング光路8aを逆方向に進行し第1のハーフミラー9を経てマッハツェンダ光学系から出射する。その間に、第1の楔組11により、照明光源からシリコン基板に向かう照明ビームとは反対向きにシャーリングされる。従って、当該反射ビームは、マッハツェンダ光学系を出射し、シャーリングされていない照明ビームと同一の光路に沿って逆方向に進行し、レンズ7及びビームスプリッタ6を介して撮像装置21に入射する。この反射光の伝搬光路を実線で示す。
【0030】
次に、第1の反射ビームの第2のハーフミラー14を透過した透過光について説明する。この透過光は、フリンジスキャン光路8bを逆方向に進行し、第1のハーフミラー9を経てマッハツェンダ光学系から出射する。この透過光は、第2の楔組のうち、一方の楔の移動によりフリンジスキャンされ、レンズ7及びビームスプリッタ6を経て撮像装置21に入射する。この透過光は、シリコン基板の横ずらしされた位置から出射するため、撮像装置上において横ずらしされた位置に結像する。この透過光の伝搬光路を破線で示す。
【0031】
次に、図3(B)を参照しながら、反射参照ビームについて説明する。反射測定ビームは、光軸上を進行してマッハツェンダ光学系に入射する。マッハツェンダ光学系の第2のハーフミラー14で反射した反射光は、シャーリング光路8aを逆方向に進行し第1のハーフミラー9を経てマッハツェンダ光学系から出射する。その間に、第1の楔組11により、照明光源からシリコン基板に向かう照明ビームとは反対向きにシャーリングされる。従って、当該反射光は、レンズ7及びビームスプリッタ6を介して撮像装置21に入射し、横ずらしされた位置に結像する。この反射光の伝搬光路を破線で示す。
【0032】
次に、第1の反射ビームの第2のハーフミラー14を透過した透過光について説明する。この透過光は、フリンジスキャン光路8bを逆方向に進行し、第1のハーフミラー9を経てマッハツェンダ光学系から出射する。この透過光は、第2の楔組により再び光路差が導入され、レンズ7及びビームスプリッタ6を経て撮像装置21に入射する。この透過光はシャーリングされていないので、マッハツェンダ光学系を出射し、照明ビームと同一の光路に沿って逆方向に進行し、レンズ7及びビームスプリッタ6を介して撮像装置21に入射する。この透過光の伝搬光路を実線で示す。尚、この透過光は、フリンジスキャン光路を2回通過するため、2倍の光路差が導入される。
【0033】
図1を参照するに、撮像装置21から出力される画像信号は、増幅器22を介して信号処理装置23に供給する。また、フリンジスキャン光路中に配置された第2の楔組12の第1の楔12aのフリンジスキャン量を測定するエンコーダ16からの出力信号も信号処理装置23に供給する。信号処理装置23は、これらの信号を用いてシリコン基板に形成された孔の深さdを算出する。
【0034】
図4は、撮像装置上に形成される第1及び第2の照明領域の画像を線図的に示す。図4(A)は、第1の照明領域31から出射する反射参照ビームが形成する2つの画像40及び41を示す。図3において説明したように、反射参照ビームは、横ずらしされていない反射画像40と横ずらしされた反射画像41を撮像装置上に形成する。また、図4(B)は、第2の照明領域32から出射する反射測定ビームが形成する2つの画像42及び43を示す。反射測定ビームも、横ずらしされていない反射画像42と横ずらしされた反射画像43を形成する。図4(C)は、反射測定ビーム及び反射参照ビームにより撮像装置22上に形成される画像を示す。撮像装置上には、反射参照ビームにより形成される参照画像と反射測定ビームにより形成される測定画像とが合成された干渉画像と、干渉画像の両側にそれぞれ形成された反射測定ビームによる画像及び反射参照ビームによる画像とが形成される。本発明では、干渉画像を構成する参照画像を形成する反射参照ビームと、測定画像を形成する反射測定ビームとの白色干渉を利用して孔30の深さdを測定する。
【0035】
図4(D)は、シャーリング量に関して、より具体的な実施例を示す。図4(A)〜(C)に示す例では、視野絞りを狭く設定し、横ずらしされていない画像40と横ずらし画像41とが空間的に分離するように設定した。しかし、実際の観察においては、目的とする観察エリアを容易に探索できることが望ましい。そこで、本例では、視野絞りは、試料から出射した反射光が撮像装置の受光面のほぼ全体に入射するように設定する。この場合、図4(D)に示すように、横ずらしされていない画像40と横ずらしされた画像41とが撮像装置の受光面上で部分的に重なり合うことになる。このように、シャーリングされた画像とシャーリングされていない画像とが撮像装置上で部分的に重なり合っても形状測定は可能である。
【0036】
次に、孔の深さ測定又は形状測定の手法について説明する。干渉光学系8のシャーリングを行う第1の光路中に挿入した第1の楔組11とフリンジスキャンを行う第2の光路中に挿入した第2の楔組12の光路長に関して、初期条件として、フリンジスキャン楔12について測定の基準点を設定する。そして、エンコーダ16を用いて基準点からの楔12aの変位量を測定し、フリンジスキャンにより導入される導入光路長を測定する。基準点を設定する際、フリンジスキャン楔12により導入される光路差(導入光路長)とシャーリング楔11により導入される光路長とが同一になるように設定することができる。或いは、フリンジスキャン楔12により導入される光路差がシャーリング楔11により導入される光路長よりも所定の光路長だけ短くなるように、又は所定の光路長だけ長くなるように設定することもできる。すなわち、第2の光路の光路長が第1の光路の光路長よりも短くなるよう又は長くなるように基準点を設定することも可能である。本例では、第2の光路の光路長が第1の光路の光路長よりも短くなるように基準点を予め設定する。この状態において、アクチュエータ15を駆動し、第2の楔組の第1の楔12aの光路への挿入量を徐々に増大してフリンジスキャンを行い、測定ビーム及び反射測定ビームに導入される光路差を徐々に増大させる。そして、センサ手段として機能するエンコーダ16からの出力信号を用いて、フリンジスキャンにより導入される基準点からの導入光路差(導入光路長)を検出する。
【0037】
フリンジスキャン開始後において、参照画像40及び測定画像42を形成する反射光間には予め設定した所定の光路長差が存在するため、白色干渉が発生せず、干渉光は発生しない。一方、フリンジスキャンにより第2の光路に導入されたる光路差が徐々に長くなると、第2の光路の光路長が第1の光路の光路長に近づく。一方、参照ビームが入射するシリコン基板の表面と孔30の周囲の表面とは同一面であるから、測定画像の孔30の周囲の画像部分を形成する反射光の光路長は、参照画像を形成する反射光の光路長と同一となり、同相条件を満たすようになる。そして、2つの反射光の光路長が一致し同相条件を満たすと、白色干渉が発生し、高輝度の干渉光が発生する。この干渉光の発生により撮像装置21の孔30の周囲エリアの像を撮像する撮像素子から第1の干渉信号が出力される。すなわち、干渉画像の孔の周囲を形成する画像部分から干渉光が発生し、第1の干渉信号が発生する。
【0038】
さらにフリンジスキャンを続行すると、測定画像の孔の底面からの反射光の光路長が参照画像を形成する反射光の光路長に近づき、同相条件を満たすと、第2の干渉光が発生し、孔30の底面30aを撮像する撮像素子から第2の干渉信号が出力される。この状態を図5に示す。第1の干渉信号と第2の干渉信号の波形のピーク又は干渉エンベロープ波形のピークとの間のフリンジスキャン量、すなわちフリンジスキャンにより導入される光路差Dは、図2に示す孔の深さdに対応する。従って、測定ビームに導入されるフリンジスキャン量(楔の変位量)から導入される光路差を算出することにより、孔の深さdが算出される。
【0039】
さらに、孔30の底面30aが光軸方向に変位し、例えば湾曲面や段差等を形成している場合、底面30aの3次元形状も検出される。すなわち、スキャンにより導入される光路差が徐々に変化し、孔の底面の各部位から出射した反射光と参照画像の反射光とが同相条件を満たすと、各部位ごとに干渉信号が発生する。従って、干渉信号が発生した時点のフリンジスキャンにより導入された導入光路差を各画素ごとに算出することにより、孔30の底面の3次元画像情報を出力することが可能である。
【0040】
図6は、シリコン基板に形成された孔30の深さdを出力すると共に孔の底面の3次元画像を出力する信号処理装置の一例を示す図である。本発明による形状測定装置は、試料表面の高さを画素ごとに測定できるので、試料の表面形状だけでなく、試料に形成された孔の深さを測定できると共に孔の底面及び孔の周囲の3次元画像を撮像することも可能である。コントローラ50を用いて各構成要素を制御する。コントローラ50は、第2の楔組の第1の楔12aを変位させるアクチュエータ15を駆動するための駆動信号をアクチュエータ駆動回路51に供給する。この駆動信号により、アクチュエータ15は第2の楔組12の第1の楔12aを基準位置から光軸と直交する方向に連続的に変位させる。この楔12aの変位に伴ってフリンジスキャンが行われ、第2の光路(フリンジスキャン光路)を進行する光、すなわち、光源から試料に向かう照明光及び試料から撮像装置に向かう反射光に対して連続的に変化する光路差が導入される。
【0041】
コントローラ50は読出回路52に読出制御信号を供給し、フリンジスキャンに対応して2次元撮像装置21の各画素に蓄積された電荷を所定の周波数で読み出す。すなわち、読み出された画像信号は増幅器22により増幅され、A/D変換器53によりデジタル信号に変換され、画像メモリ54に蓄積される。そして、試料の2次元画像は、例えばモニタ上に表示することができる。
【0042】
楔12aの変位に対応して順次読み出された画像信号は、最大輝度値検出手段55に供給される。最大輝度値検出手段55は、順次入力する画像信号の輝度値を各画素ごとに順次比較し、各画素ごとに干渉信号の発生を検出する。すなわち、画像信号のピーク値の発生は、白色干渉により形成される干渉光の発生に対応する。従って、画像信号中のピーク輝度値の発生を検出することにより、白色干渉による干渉信号の発生を検出することができる。最大輝度値検出手段55は、ピークを検出すると、ピーク検出信号をZメモリ56に供給する。また、エンコーダ16から出力されるフリンジスキャン楔12の基準位置からの変位量を示す変位量信号もZメモリ56に供給する。Zメモリは、最大輝度値検出手段55から出力されるピーク検出信号及びエンコーダ16から出力される変位量信号を受け取り、干渉信号が発生した時点におけるフリンジスキャン楔12の基準位置からの変位量を画素ごとに記憶する。
【0043】
Zメモリ56に記憶された変位量データは、ΔZ演算手段57に供給する。ΔZ演算手段は、白色干渉による干渉信号が発生する楔12aの基準点からの変位量を試料表面におけるZ軸方向の高さ情報ないし距離情報に変換する。ここで、演算される距離情報の基準点として、例えば参照ビームにより形成される第1の照明領域に位置する反射面の光軸方向の位置を用い、当該基準位置からの光軸方向の距離を算出することができる。また、ΔZ演算手段57は、楔の変位量を距離情報に変換するに際し、光学楔の屈折率及び空気の屈折率を用いて屈折率補正を行う。
【0044】
算出された試料表面の各画素ごとの光軸方向の距離情報は、深さ演算手段58に供給する。深さ演算手段58は、孔30の周囲の画素の干渉信号の光軸方向の発生位置と孔の底面の画素の干渉信号の光軸方向の発生位置との差を算出し、算出された差を孔30の深さとして出力する。この際、孔30の画像を形成する複数の画素の平均値を求め、平均深さを出力することもできる。
【0045】
算出された試料表面の光軸方向の距離情報は、基準位置からの高さ情報として3次元画像形成手段59にも供給する。3次元画像形成手段59は、各画素の2次元アドレス情報と画素ごとに算出された試料表面の高さ情報とを用いて試料表面の3次元画像を形成する。形成された3次元画像は、モニタ上に表示する。このように、本発明による形状測定装置及び深さ測定装置は、試料表面に形成された孔の深さを測定できると共に孔の底面の3次元画像を形成することが可能である。
【0046】
次に、孔の深さを測定する演算方法について説明する。図7は、シリコン基板20の表面20bに形成された孔30の深さdを算出する演算方法を説明するための模式図である。測定ビーム60は干渉光学系8の楔12aを透過し、孔30及びその周囲に入射する。測定ビームのビーム部分60aは、孔30の底面30aで反射し、再び楔12aを透過して撮像装置に入射する。また、測定ビームのビーム部分60bは孔30の周囲のシリコン基板の表面20bで反射し、再び楔12aを透過して撮像装置に入射する。また、参照ビームは、干渉光学系を通過し、シリコン基板20の表面20bで反射し、再び干渉光学系を通過して撮像装置に入射する。ここで、シリコン基板の屈折率をnとし、楔12aの屈折率をnとし、空気の屈折率をnとし、楔の頂角をθとする。測定ビーム60は孔30及びその周囲に入射し、孔の底面30aで反射した反射光を符号60aで示し、孔の周囲のシリコン基板の表面で反射した反射光を符号60bで示す。また、シリコン基板の表面20bに入射した参照ビームの反射光を符号61で示す。図7(A)は、測定ビーム60の孔の周囲のシリコン基板の表面20bで反射した反射光60bと参照ビームの反射光61とが互いに同相条件を満たし第1の干渉信号が発生した状態を示す。また、図7(B)は、測定ビームの孔30の底面30aに入射したビーム部分による反射光60aと測定ビーム61とが同相条件を満たし第2の干渉信号が発生した状態を示す。
【0047】
図7(A)に示す第1の干渉信号が発生した時点における測定ビーム60の孔の底面からの反射光60bと参照ビーム61のシリコン基板表面からの反射光との間の光路差ΔΦ1は、光路を往復するため、以下の式で与えられる。
ΔΦ1=2n×d (1)
【0048】
第1の干渉信号が発生してから第2の干渉信号が発生するまでのフリンジスキャンによる楔12aの変位量をXとする。また、第1の干渉信号が発生する時点における測定ビームが透過する楔12aの厚さをS1とし、第2の干渉信号が発生する時点における測定ビームが透過する楔12aの厚さをS2とする。第1の干渉信号が発生してから第2の干渉信号が発生するまでのフリンジスキャンにより測定ビームに導入された光路差をΔSとすると、光路差ΔSは以下の式で与えられる。
ΔS=2(n−n)×(S2−S1) (2)
【0049】
ここで、ΔΦ1=2n×dはΔSに等しい条件を満たすので、以下の式が成立する。
ΔΦ1=2n×d=2(n−n)×(S2−S1) (3)
上式より、楔の厚さの差(s2−s1)は以下の式で与えられる。
S2−S1=(n×d)/(n−n) (4)
ここで、フリンジスキャンによる楔の変位量Xは、以下の式で与えられる。
X=(S2−S1)/θ (5)
従って、孔30の深さdは以下の式で与えられる。
d=X・θ・(n−n)/n (6)
(6)式において、n、n、n及びθは既知であるから、フリンジスキャン量Xを測定することにより孔の深さdが算出される。
【0050】
図8は本発明を膜厚測定装置に応用した例を示す。図1で用いた構成要素と同一の構成要素には同一符号を付して説明する。本例では、シリコン基板20の表面20aに形成された薄膜71の膜厚を測定する。薄膜71として、例えばシリコン基板20を背面研磨する際に、シリコン基板をサポート基板に接着する際に用いられる接着剤層とする。対物レンズ19から参照ビーム80及び測定ビーム81が出射し、シリコン基板20の裏面20aに入射する。参照ビーム70は横ずらしされ、シリコン基板の内部を進行し、その表面20bと空気との界面で反射し、裏面20aを通過し、対物レンズ19により集光される。測定ビーム80は、シリコン基板の裏面20aを通過し、基板の内部を伝搬し、一部の光はシリコン基板の表面20bと接着剤層71との界面で反射し、再びシリコン基板の内部を伝搬し、対物レンズにより集光される。別の一部の光はシリコン基板と接着剤層との界面を通過し、接着剤層71の内部を透過し、接着剤層と空気との界面72で反射し、再び接着剤層71及びシリコン基板の内部を伝搬し、基板の裏面20aから出射し、対物レンズ19により集光される。
【0051】
対物レンズにより集光された3種類の反射光は、光路を逆方向に進行し、図4に示すように、撮像装置21上に3つの反射光から成る画像を形成する。すなわち、参照ビーム80により形成され、シリコン基板の表面20aと空気との界面で反射した反射光による画像と、測定ビームにより形成され、シリコン基板の表面と接着剤層との界面で反射した反射光による干渉画像と、同じく測定ビームにより形成され、接着剤層の表面と空気との界面で反射した反射光による画像の3つの画像から成る画像が形成される。
【0052】
この状態においてフリンジスキャンを開始すると共に撮像装置から出力される画像信号を順次検出する。尚、フリンジスキャンの基準点として、第2の楔組の楔12aの位置を調整し、フリンジスキャン光路の光路長がシャーリング光路の光路長よりも短くなるように設定する。フリンジスキャンの開始後、3つの反射光間に比較的長い光路長差が存在するため白色干渉は生じない。フリンジスキャンを続け、フリンジスキャン光路を伝搬する光に導入される光路長を増大すると、測定ビームのうち接着剤層と空気との界面72で反射した反射光の光路長が参照ビームによる反射光の光路長に近づき、同相条件を満たす。このとき、第1の干渉光が発生し、撮像装置から第1の干渉信号が発生する。さらにフリンジスキャンを続けると、シリコン基板と接着剤層と界面で反射した反射光が参照ビームによる反射光の光路長に近づく。そして、同相条件を満たすと、第2の干渉信号が発生する。ここで、フリンジスキャンにより第1の干渉信号と第2の干渉信号との間に導入された光路長Dは、接着剤層71の厚さtに対応する。よって、2つの干渉信号が発生する間に導入された光路長に基づき、接着剤層の屈折率と光学楔の屈折率とを用いて屈折率補正することにより、基板に形成された薄膜の厚さtを測定することができる。
【0053】
本発明は上述した実施例だけに限定されず種々の変形や変更が可能である。例えば、上述した実施例では、白色光源として互いに波長の異なる照明ビームを放出する2つのSLEDを用いが、キセノンランプや水銀ランプ等の各種白色光を放出する光源を用いることも可能である。さらに、白色光源として、2つのSLEDとファイバカップラとの組み合わせを用いることも可能である。
【0054】
上述した実施例では、形状測定の対象としてシリコン基板を用いたが、シリコン基板に限定されず、各種基板やその他の対象物の形状を測定することができる。また、上述した実施例では、基板の裏面側から照明ビームを投射し、基板の表面側の形状を測定する例について説明したが、測定対象物の表面側から照明ビームを投射し、表面からの反射光を用いて表面形状を測定することも可能である。また、干渉信号の検出方法として、波形の自己相関関数を用いることもできる。
【符号の説明】
【0055】
1 第1のSLED
2 第2のSLED
3 ダイクロイックミラー
4 コリメータレンズ
5 視野絞り
6 ビームスプリッタ
7 レンズ
8 マッハツェンダ光学系
9 第1のハーフミラー
10,13 全反射ミラー
11 第1の楔組
12 第2の楔組
14 第2のハーフミラー
15 アクチュエータ
16 エンコーダ
17,18 リレーレンズ
19 対物レンズ
20 シリコン基板
21 撮像装置
22 増幅器
23 信号処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームを発生する光源と、
入射光をシャーリングする第1の光路及び入射光に対してフリンジスキャンを行う第2の光路を有し、前記光源から出射した光ビームを受光してシャーリングされた第1の照明ビームとフリンジスキャンされた第2の照明ビームとを出射させる干渉光学系と、
前記第2の光路に導入されるフリンジスキャン量を検出するセンサ手段と、
干渉光学系から出射した第1及び第2の照明ビームを試料に向けて投射する対物レンズと、
前記試料から出射した反射光を、前記対物レンズ及び干渉光学系を介して受光する光検出手段と、
前記光検出手段からの出力信号を用いて、前記第1の照明ビームにより形成された試料からの反射光と第2の照明ビームにより形成された試料からの反射光との白色干渉により発生する干渉信号を検出する干渉信号検出手段、及び、前記センサ手段からの出力信号を用いて、干渉信号が発生する時点おけるフリンジスキャンにより導入された光路差を検出する光路差検出手段を有し、検出された光路差から試料の形状情報を出力する信号処理装置とを具えることを特徴とする形状測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の形状測定装置において、前記第1の照明ビームは試料上に第1の照明領域を形成し、前記第2の照明ビームは試料上に第1の照明領域から横ずらしされた第2の照明領域を形成し、前記光検出手段は、第1の照明領域から出射した反射光と第2の照明領域から出射した反射光を前記対物レンズ及び干渉光学系を介して受光し、
前記干渉信号検出手段は、第1の照明領域から出射した反射光と第2の照明領域から出射した反射光との白色干渉により発生する干渉信号を検出することを特徴とする形状測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の形状測定装置において、前記光検出手段として2次元撮像装置を用い、当該2次元撮像装置には、前記第1の照明領域から出射する反射光により形成される参照画像と、第2の照明領域から出射する反射光により形成される測定画像とが合成された合成画像が形成され、
前記干渉信号検出手段は、前記参照画像を形成する反射光と測定画像を形成する反射光との白色干渉により形成される干渉信号を画素ごとに検出し、前記光路差検出手段は、干渉信号が検出された時点における導入光路差を画素ごとに出力し、
前記信号処理装置は試料の3次元形状情報を出力することを特徴とする形状測定装置
【請求項4】
請求項3に記載の形状測定装置において、前記光源は、空間的にコヒーレントで時間的にインコヒーレントな光ビームを発生することを特徴とする形状測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の形状測定装置において、前記試料として、表面とその反対側の裏面とを有する半導体基板を用い、前記光源は基板に対して透明な光ビームを発生し、前記対物レンズは半導体基板の裏面に向けて第1及び第2の照明ビームを投射し、前記2次元撮像装置は、半導体基板の裏面とは反対側の表面で反射し、半導体基板の内部を透過し裏面から出射した反射光を受光し、
当該形状測定装置は、半導体基板の裏面側から、裏面とは反対の表面に形成された表面形状を測定することを特徴とする形状測定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の形状測定装置において、前記試料として、孔が形成されている表面と反対側の裏面とを有するシリコン基板を用い、前記第1の照明ビームはシリコン基板の孔が形成されていないエリアに第1の照明領域を形成し、第2の照明ビームはシリコン基板の孔が形成されているエリアに第2の照明領域を形成し、
前記干渉信号検出手段は、第1の照明領域から出射した反射光と第2の照明領域の孔の周囲のエリアから出射した反射光との白色干渉により発生する第1の干渉信号と、第1の照明領域から出射した反射光と第2の照明領域の孔の底面から出射した反射光との白色干渉により発生する第2の干渉信号とを検出し、
前記信号処理装置は、第1の干渉信号が検出された時点の導入光路長と第2の干渉信号が検出された時点における導入光路長との差分に基づいて孔の深さ情報を出力することを特徴とする形状測定装置。
【請求項7】
請求項6に記載の形状測定装置において、前記信号処理装置は、孔の深さ情報を出力すると共に、孔の底面の3次元画像情報を出力することを特徴とする形状測定装置。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の形状測定装置において、前記干渉光学系は、第1及び第2の光路を有するマッハツェンダ型の干渉光学系により構成され、
前記第1の光路は光軸を中心にして回転可能な2つの光学楔を有し、少なくとも一方の光学楔を回転することにより入射光に所望のシャーリング量が導入され、
前記第2の光路は2つの光学楔を有し、一方の光学楔は光軸に対して直交する方向に移動可能に設定され、当該光学楔を光軸と直交する方向に移動させることによりフリンジスキャンが行われて、入射光に対して連続的に変化する光路差が導入されることを特徴とする形状測定装置。
【請求項9】
請求項4から8までのいずれか1項に記載の形状測定装置において、前記光源は、互いに波長の異なる照明ビームを放出すると共に点光源として作用する2つのLED を含み、前記対物レンズから出射する第1及び第2の照明ビームは、試料表面に対してほぼ垂直に入射することを特徴とする形状測定装置。
【請求項10】
基板に形成された孔の深さを測定する深さ測定装置であって、
光ビームを発生する光源と、
入射光をシャーリングする第1の光路及び入射光に対してフリンジスキャンを行う第2の光路を有し、前記光源から出射した光ビームを受光してシャーリングされた第1の照明ビームとフリンジスキャンされた第2の照明ビームを出射させる干渉光学系と、
フリンジスキャンにより前記第2の光路に導入されるフリンジスキャン量を検出するセンサ手段と、
前記干渉光学系から出射した第1及び第2の照明ビームを試料に向けて投射する対物レンズと、
前記試料から出射した反射光を、前記対物レンズ及び干渉光学系を介して受光する2次元撮像装置と、
前記撮像装置からの出力信号を用いて、前記第1の照明ビームにより形成される基板からの反射光と第2の照明ビームにより形成される基板からの反射光との白色干渉により発生する干渉信号を検出する干渉信号検出手段、前記センサ手段からの出力信号を用いて干渉信号が発生する時点おけるフリンジスキャンにより導入された光路差を検出する光路差検出手段、及び、前記干渉信号が検出された時点における光路差に基づいて孔の深さを算出する手段を有する信号処理装置とを具えることを特徴とする深さ測定装置。
【請求項11】
請求項10に記載の深さ測定装置において、前記第1の照明ビームは試料上に第1の照明領域を形成し、前記第2の照明ビームは、試料上に第1の照明領域から横ずらしされ深さ測定されるべき孔を含むエリアに第2の照明領域を形成し、前記撮像装置には、前記第1の照明領域から出射する反射光により形成される参照画像と、第2の照明領域から出射する反射光により形成される測定画像とが合成された干渉画像が形成され、
前記干渉信号検出手段は、第1の照明領域から出射した反射光と第2の照明領域の孔の周囲のエリアから出射した反射光との白色干渉により発生する第1の干渉信号と、第1の照明領域から出射した反射光と第2の照明領域の孔の底面から出射した反射光との白色干渉により発生する第2の干渉信号とを検出し、
前記第1の干渉信号が検出された時点の光路差と第2の干渉信号が検出された時点における光路差との差分に基づいて孔の深さ情報を出力することを特徴とする深さ測定装置。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の深さ測定装置において、前記信号処理装置は、孔の深さ情報を出力すると共に孔の底面の3次元画像情報を出力することを特徴とする深さ測定装置。
【請求項13】
請求項10、11又は12に記載の深さ測定装置において、前記基板として孔が形成されている表面とその反対側の裏面とを有するシリコン基板が用いられ、前記白色光源はシリコン基板に対して透明な光ビームを発生し、前記対物レンズは、シリコン基板の裏面に向けて第1及び第2の照明ビームを投射し、前記参照画像はシリコン基板の表面で反射し裏面から出射した反射光により形成され、前記測定画像は孔の底面で反射し裏面から出射した反射光及び孔の周囲の表面で反射し裏面から出射した反射光により形成されることを特徴とする深さ測定装置。
【請求項14】
請求項10、11、12又は13に記載の深さ測定装置において、前記光源は、波長が互いに相違する光ビームをそれぞれ放出する2つのLEDを含むことを特徴とする深さ測定装置。
【請求項15】
請求項14に記載の深さ測定装置において、前記2つのLEDは点光源として作用し、これら光源、干渉光学系、及び対物レンズは共役な関係に配置され、前記対物レンズから出射する第1及び第2の照明ビームは、シリコン基板に対してほぼ垂直に入射することを特徴とする深さ測定装置。
【請求項16】
基板に形成された薄膜の厚さを測定する膜厚測定装置であって、
複数の波長域の光を含む光ビームを発生する白色光源と、
入射光をシャーリングする第1の光路及び入射光に対してフリンジスキャンを行う第2の光路を有し、シャーリングされた第1の照明ビームとフリンジスキャンされた第2の照明ビームを出射させる干渉光学系と、
前記第2の光路に導入されるフリンジスキャン量を検出するセンサ手段と、
前記干渉光学系から出射した第1及び第2の照明ビームを試料に向けて投射する対物レンズと、
前記試料から出射した反射光を、前記対物レンズ及び干渉光学系を介して受光する光検出手段と、
前記光検出手段からの出力信号を用いて、前記第1の照明ビームにより形成される基板からの反射光と第2の照明ビームにより形成される基板からの反射光との白色干渉により発生する干渉信号を検出する干渉信号検出手段、前記センサ手段からの出力信号を用いて、干渉信号が発生する時点おけるフリンジスキャンにより導入された光路差を検出する光路差検出手段と、第1の干渉信号が検出された時点の導入光路差と第2の干渉信号が検出された時点の光路差との差分を検出し、検出された差分に基づいて膜厚情報を出力する手段とを有する信号処理装置とを具えることを特徴とする膜厚測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−2934(P2013−2934A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133829(P2011−133829)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【特許番号】特許第4997406号(P4997406)
【特許公報発行日】平成24年8月8日(2012.8.8)
【出願人】(000115902)レーザーテック株式会社 (184)
【Fターム(参考)】